JP2024007328A - 電子写真部材、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置 - Google Patents

電子写真部材、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高温高湿環境下において長期に亘って電子画像の形成に供した場合にも、表面の摩耗の抑制と、トナーの劣化の抑制の双方をより高い次元で両立することができる電子写真部材の提供。【解決手段】導電性の基体と該基体上の単層の弾性層を有し、該弾性層がジメチルシロキサン構造を有するシリコーンゴムを含有し、該弾性層の第1の表面から第2の表面に向かって厚さ0.5μmの第1の領域41サンプリングされる第1の試料から測定されるジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT1、第2の表面から第1の表面に向かって厚さ1.0μmから1.5μmの第2の領域からサンプリングされる第2の試料から測定されるジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT2としたときT1>T2の関係を満たす電子写真部材。【選択図】図4

Description

本開示は、電子写真方式を採用した装置に組み込まれる、電子写真部材に関する。また、本開示は、該電子写真部材を用いたプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に向けたものである。
電子写真画像形成装置においては、像担持体が帯電部材により帯電され、露光光により静電潜像が形成される。次に、現像容器内のトナーがトナー供給部材及びトナー規制部材により現像部材上に塗布され、像担持体と現像部材との接触部又は近接した領域においてトナーによって像担持体に形成された静電潜像の現像が行われる。その後、像担持体上のトナーは、転写手段により記録紙に転写され、熱と圧力により定着される。また、転写後にも像担持体上に残留したトナーはクリーニングブレードによって除かれる。
このような電子写真画像形成装置に用いられる、現像部材、帯電部材、トナー供給部材及びトナー規制部材の如き電子写真部材に対しては、初期状態における性能が長期に亘る使用によっても低下しないこと、すなわち、優れた耐久性が求められている。さらに、近年の低消費電力化需要に伴い、低温でも定着させることができるトナーが使用されてきている。このようなトナーは相対的に劣化しやすい。そのため、トナーの劣化のより一層の抑制も求められている。
そこで、トナーの劣化のより一層の抑制のために、電子写真部材には、トナーに与えるストレスのより一層の低減を図る観点から、柔軟なシリコーンゴムが用いられることがある。シリコーンゴムは、主鎖のシロキサン結合がらせん構造を有し、このシリコーンゴム特有のらせん構造は主鎖がC-C結合からなる有機高分子にはみられない多彩な特性を発現する。これにより、天然ゴムや他の合成ゴムと比較して広い温度範囲で安定したゴム弾性を有し、また、耐熱性や耐寒性にも優れている。その一方で、シリコーンゴムは、耐摩耗性において未だ改善の余地がある。
特許文献1は、シリコーンゴムにシランカップリング剤を混合することにより、耐摩耗性を改善したシリコーンゴム弾性体とそれを用いた現像部材を開示している。
特開平4-76577号公報
本開示の少なくとも一つの態様は、高温高湿環境下において長期に亘って電子画像の形成に供した場合にも、表面の摩耗の抑制と、トナーの劣化の抑制の双方をより高い次元で両立することができる電子写真部材の提供に向けたものである。また、本開示の少なくとも一つの態様は、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資するプロセスカートリッジの提供に向けたものである。さらに、本開示の少なくとも一つの態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
本開示の少なくとも一つの態様によれば、導電性の基体、及び、該基体上の単層の弾性層、を有する電子写真部材であって、該弾性層は、ジメチルシロキサン構造を含むシリコーンゴムを含有し、該弾性層の該基体に対向する側を第2の表面とし、該弾性層の該第2の表面とは反対側の表面を第1の表面としたとき、該第1の表面から該第2表面に向かって厚さ0.5μmの第1の領域からサンプリングされる第1の試料から測定される該ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT1(℃)とし、該弾性層の該第2の表面から該第1の表面に向かって厚さ1.0μmから1.5μmまでの第2領域からサンプリングされる第2の試料から測定される該ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT2(℃)としたとき、T1及びT2が下記式(1)で示される関係を満たす電子写真部材が提供される。
式(1) T1 > T2。
さらに、本開示の少なくとも一つの態様によれば、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、上記の電子写真部材を有しているプロセスカートリッジが提供される。
さらに、本開示の少なくとも一つの態様によれば、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成するための現像部材と、該トナー画像を転写材に転写するための転写装置とを有し、該現像部材が上記の電子写真部材である電子写真画像形成装置が提供される。
本開示の少なくとも一態様によれば、シリコーンゴムを含有した弾性層を有した、摩耗による削れとトナー劣化によるフィルミングとの両方が抑制できる、耐久性に優れた電子写真部材を得ることができる。
さらに、本開示の少なくとも一態様によれば、高品位な電子写真画像の安定した形成に資するプロセスカートリッジを得ることができる。また、本開示の少なくとも一態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできる電子写真画像形成装置を得ることができる。
本開示の一態様に係る電子写真部材の一例を示す概念図である。 本開示の一態様に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。 本開示の一態様に係る電子写真画像形成装置の一例を示す概略構成図である。 本開示の一態様に係る電子写真部材の断面の一例を示す概略図である。
本発明者らは、特許文献1に記載の発明に係るシリコーンゴム材料を用いた現像ローラについて検討した。その結果、当該現像ローラは、優れた耐摩耗性を示したが、高温高湿環境下で多数枚の電子写真画像の形成に供したときに、当該現像ローラの外表面(トナー担持面)に劣化したトナーに起因するフィルミングが発生し、その結果として、電子写真画像の品位が低下することがあった。
当該現像ローラの外表面へのフィルミングの発生は、特許文献1に記載の発明に係るシリコーンゴムの硬度が、シランカップリング剤の作用で高くなったことに起因していると考えられる。すなわち、シリコーンゴムを含む弾性層の硬度が上昇したことにより、当該現像ローラから、トナーがより多くのストレスを受けたため、トナーの劣化が促進され、現像ローラの外表面にフィルミングが発生したものと本発明者らは推測している。
そこで、本発明者らは、トナーに加わるストレスの上昇の抑制を図りつつ、表面の耐摩耗性が向上した現像ローラを得るべく検討を重ねた。その結果、ジメチルシロキサン構造を含むシリコーンゴムを含む弾性層の外表面から深さ方向に0.5μmの領域(以降、単に「表面領域」ともいう)における該シリコーンゴムの分子の運動性を、該表面領域よりも深い領域に存在するシリコーンゴムの分子の運動性よりも低めることが、弾性層の柔軟性の維持と、外表面の耐摩耗性の向上との両立を図るうえで有効であることを見出した。
すなわち、本開示の少なくとも一の態様に係る電子写真部材は、導電性の基体、及び、該基体上の単層の弾性層、を有する。該弾性層は、ジメチルシロキサン構造を含むシリコーンゴムを含有する。そして、該弾性層の該基体に対向する側を第2の表面とし、該弾性層の該第2の表面とは反対側の表面を第1の表面としたとき、該第1の表面から該第2の表面に向かって厚さ0.5μmの第1の領域(表面領域)からサンプリングされる第1の試料から測定される該ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT1(℃)とし、該弾性層の該第2の表面から該第1の表面に向かって厚さ1.0μmから1.5μmまでの第2の領域からサンプリングされる第2の試料から測定される該ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT2(℃)としたとき、T1及びT2が下記式(1)で示される関係を満たすものである:
式(1) T1 > T2。
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る電子写真部材の少なくとも一つの実施形態について説明する。
図1は、導電性の基体2と、該基体の外周面の弾性層1とを有する電子写真部材の周方向の断面図である。該弾性層1と該導電性の基体2は、図4に示す弾性層44と導電性の基体45と同義であり、該弾性層44の該導電性の基体45に対向する側を第2の表面47、該弾性層44の該第2の表面47とは反対側の表面を第1の表面46とする。また、本開示では、図4に示すように、該第1の表面46から該第2の表面47に向かって厚さ0.5μmまでを第1の領域41と規定する。また、該第2の表面47から該第1の表面46に向かって厚さ1.0μmから1.5μmまでを第2の領域42と規定する。さらに、該第1の表面46から該第2の表面47に向かって厚さ10.0μmから10.5μmまでを第3の領域43と規定する。
本開示の少なくとも一つの実施形態に係る電子写真部材は、導電性の基体2、及び、該基体上の単層の弾性層1、を有する。該弾性層は、シリコーンゴムを含有している。ここで、第1の領域41からサンプリングされる第1の試料から測定されるジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT1(℃)とする。同様に、第2の領域42からサンプリングされる第2の試料から測定されるジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT2(℃)とする。本実施形態に係る弾性層は該T1及びT2について、下記式(1)で示される関係を満たす:
式(1) T1 > T2。
式(1)を満たす弾性層においては、T1-T2は、3.3℃~9.1℃の範囲であることが好ましく、3.3℃~6.1℃の範囲であることが特に好ましい。また、T1は、468.1℃~470.8℃の範囲が好ましい。
式(1)を満たす弾性層において、その厚さは、特に限定されないが、トナーに与えるストレスの緩和と、外表面の摩耗の防止とをより高いレベルで両立させる観点から、0.1mm~6.0mm、特には、0.3mm~6.0mm、さらには、1.0mm~6.0mmとすることが好ましい。
イオンサーモグラムのピークトップ温度の測定には、例えば、イオントラップ型質量分析装置(商品名:Polaris Q、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用することができる。
まず、該当測定領域をミクロトームで薄片状に削り出し、その薄片から測定サンプルを削り出す。得られた測定サンプルをDirect Exposureプローブの先端に位置するフィラメントに固定し、イオン化チャンバーの中に直接挿入する。その後、一定の加熱速度で室温から温度700℃まで急速に加熱する。加熱により分解し、蒸発した試料を電子ビームの照射によりイオン化し、質量分析計で検出する。このとき、加熱速度が一定の条件では、トータル・イオン・サーモグラム(TIT)と呼ばれる質量スペクトルを持つ、TG-MS(熱重量-質量同時分析)法に類似したサーモグラムが得られる。
例えば、データ取得及び解析ソフトウェア(商品名:Xcalibur、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いることにより、得られたサーモグラフから材料を特定することができる。また、所定の質量フラグメントに対するイオンサーモグラムも得ることができるため、所望の分子構造の分解温度に相当する、イオンサーモグラムのピークトップ温度を得ることができる。同一の分子構造についてのイオンサーモグラムのピークトップ温度の高温側へのシフトは、当該分子構造の分解がより高い温度でなければ生じなくなっていることを意味する。このような現象は、例えば、当該分子構造を有するポリマーの分子運動性の低下によって生じていることが考えられる。
これを本開示に係る弾性層についてみると、T1>T2であることは、第1領域に含まれるシリコーンゴムの分子運動性が、第2領域に含まれるシリコーンゴムの分子運動性よりも低下していることを意味する。このことにより、シリコーンゴムの柔軟性を維持しつつ、外表面の耐摩耗性が向上した弾性層を得ることができる。
第1領域に含まれるシリコーンゴムの分子運動性を、第2領域に含まれるシリコーンゴムの分子運動性よりも低くする方法は、例えば、表面領域に含まれるシリコーンゴムの架橋度を高める方法、及び、表面領域に含まれるシリコーンゴムの分子の周囲を他のポリマーで取り囲む方法、とからなる群から選択される少なくとも一方の方法を含む。
表面領域に含まれるシリコーンゴムの架橋度が、表面領域よりも深い領域に含まれるシリコーンゴムの架橋度よりも高い弾性層を得る方法としては、例えば、弾性層となるべきシリコーンゴム含有層の外表面側から、電子線(EB)を照射する方法が挙げられる。
また、表面領域に含まれるシリコーンゴムの周囲が他のポリマーで取り囲まれてなる弾性層を得る方法としては、例えば、弾性層となるべきシリコーンゴム含有層の外表面から、他のポリマーを溶解状態で含む液体を含浸させる方法、及び、他のポリマーの原料(モノマー、オリゴマー、プレポリマー等)を含む液体を含浸させたのち、該原料を硬化させる方法が挙げられる。以降、これらの方法を「含浸法」とも称することがある。
含浸法の一例は、上記の通り、シリコーンゴム含有層の外表面から他のポリマーの原料となるモノマーを表面領域に対応する領域に含浸させ、該対応する領域において該モノマーを硬化させる。その結果として得られる弾性層の表面領域は、シリコーンゴムと、該シリコーンゴムとは異なるポリマーとを含む。一方、弾性層の表面領域よりも深い領域の少なくとも一部においては、上記含浸の処理によっても該モノマーが含浸されないため、該モノマーに由来のポリマーは存在しない。
すなわち、含浸法によって得られる、本開示の一実施形態に係る電子写真部材としては、上記の式(1)の条件を満たし、かつ、前記第1の試料が、前記第2の試料が含まないポリマーを含む。該第1の試料から測定される該ポリマーに由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をC1(℃)とする。また、該第1の試料が含む該シリコーンゴムを分解して得られる第3の試料から測定される該ポリマーに由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をC2(℃)とする。本開示の一実施形態に係る電子写真部材は、これらC1及びC2が下記式(2)で示される関係を満たすことが好ましい
式(2) C1 > C2。
式(1)に加えて式(2)を満たす弾性層において、C1は、414.2℃~423.4℃の範囲が好ましく、C1―C2は、0.9℃~3.6℃の範囲が好ましく、T1は、468.1℃~470.8℃の範囲が好ましく、また、T1-T2は、3.3℃~9.1℃の範囲であることが好ましく、3.3℃~6.1℃の範囲であることが特に好ましい。
式(1)及び式(2)を満たす弾性層において、その厚さは、特に限定されないが、トナーに与えるストレスの緩和と、外表面の摩耗の防止とをより高いレベルで両立させる観点から、0.1mm~6.0mm、特には、0.3mm~6.0mm、さらには、1.0mm~6.0mmとすることが好ましい。
シリコーンゴムの分解方法としては、シリコーンゴムが有するシロキサン結合を選択的に分解する、テトラエトキシシラン(TEOS)法、アルカリ融解法、フロロシラン化法、オルトギ酸メチル(MOF)分解法等が挙げられる。これらの方法で、シリコーンゴムに由来するジメチルシロキサン構造を除去することで、ジメチルシロキサン構造が除去された該ポリマーを含む第3の試料を得ることができる。
該ポリマーに由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度は、該ポリマーの架橋度と相関がある。そのため、シリコーンゴム除去前のC1が、シリコーンゴム除去後のC2より高温であることは、ジメチルシロキサン構造除去前の方が除去後より架橋度が高い、つまり高硬度であることを示す。
よって、上記の式(1)と式(2)で示される両関係を満たす場合、該ポリマーが弾性層を構成しているシリコーンポリマー間の網目構造内およびらせん構造内に入り込んでいると考えられる。その結果、シリコーンゴムと該ポリマーとのお互いの網目構造が共有結合で結ばれることなくお互いに入り組み、絡み合った、相互侵入高分子網目構造(Interpenetrating Polymer Network structure)を形成していることを示唆する。以降、相互侵入高分子網目構造を、「IPN構造」と称する。
相互侵入高分子網目構造(IPN構造)とは、二種以上の高分子化合物の網目構造が共有結合で結ばれることなくお互いに入り組み、絡み合った構造と定義される。IPN構造を構成している材料同士は化学的な結合を有さないため、材料毎の特性を損なわず、一方で材料同士の絡み合いによる強度の向上が期待される。
本態様に係る弾性層中のIPN構造は、シリコーンゴムの3次元架橋構造の網目に、該ポリマーが入り込むことによって形成されている。IPN構造は、網目を形成する高分子化合物の分子鎖を切断しない限りほどけることはない。IPN構造の形成方法としては、いくつかの方法を挙げることができる。例えば、第一の成分のポリマーの網目を先に形成させておき、次に第二の成分のモノマーと必要により重合開始剤で膨潤させた後、第二の成分のポリマーの網目を形成させる、逐次網目形成法と呼ばれる方法が挙げられる。あるいは、それぞれ反応機構の異なる第一の成分のモノマーと、第二の成分のモノマー、さらに、各々の重合開始剤を混合し、同時に重合させて網目構造を形成させる、同時網目形成法などが挙げられる。
IPN構造を形成している第一の成分のシリコーンゴムと第二の成分のポリマーとは、基本的には共有結合を有さないため、ゴム弾性が損なわれず、その一方で、シリコーンゴムと第二の成分のポリマーとの絡み合いによる強度の向上が期待される。さらに、シリコーンゴム特有のらせん構造とIPN構造との性質が組み合わされることで、相乗効果をもたらすものと考えられる。
すなわち、弾性層は、その内部においてはシリコーンゴムの柔軟性を保持しつつ、IPN構造の形成により、ごく最表面のみが高硬度化している。その結果、弾性層は、耐摩耗性のより一層の向上と、トナーに対するストレスの低減と、を両立し得るものと考えられる。
さらに、IPN構造の形成には、分子量がより揃えられているシリコーンポリマーを主成分としたシリコーンゴムの使用が好ましい。該シリコーンゴムにIPN構造を形成させる場合、第二の成分のモノマーがより均一に染み込みやすく、分子量が不揃いなシリコーンゴムにIPN構造を形成するよりもシリコーンゴムの網目構造内に第二の成分のモノマーが入り込みやすい。その結果、均一にシリコーンゴムの分子運動を制限できるため、より高い次元で削れとフィルミングを抑制することできる。
第二の成分のポリマーは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂等が好ましい。アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂等のポリマー材料は、通常、高強度であるが、単独で用いると、硬く脆い場合がある。
したがって、単独膜として電子写真部材の表面層に用いた場合は、その脆さ故に摺擦により摩耗し削れを生じやすい。また、高硬度のため、トナーへの負荷が大きくなりやすく、トナー劣化やフィルミングの原因となることがある。一方で、らせん構造を有するシリコーンゴムとのIPN構造として導入される場合は、その結晶性が崩されるために、硬さと脆さが発現しにくい。
以下に、各樹脂材料とその含浸方法を説明する。各樹脂のモノマー成分を含む含浸のための処理液を含浸処理液という。
(1)アクリル樹脂
アクリル樹脂としては、例えば、構造式(I)で示されるような(メタ)アクリロイル基由来の構成単位を含む樹脂が挙げられる。
Figure 2024007328000002
(構造式(I)中、Aは水素原子又はメチル基を示し、Gは-O-R又は-NRを示す。R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は有機基を示し、RとRは連結して環を形成していてもよい。)
構造式(I)の存在は、例えば、熱分解GC/MS等の一般的な質量分析法にて(メタ)アクリロイル基由来の化合物の検出有無で判断が可能である。
アクリル樹脂は、アクリルモノマーとメタクリルモノマーのいずれか一方、あるいは両方の重合により形成されるものである。本明細書において、「アクリル」と「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と言うことがある。同様に、「アクリロイル」と「メタクリロイル」を合わせて「(メタ)アクリロイル」と言うことがある。
アクリルモノマーとしては、架橋構造を形成させるために、官能基としてアクリロイル基、又はメタクリロイル基を複数個有する多官能モノマーが好ましい。一方で、官能基が4個以上になる場合、アクリルモノマーの粘度が著しく高くなるため、シリコーンゴムを含有する弾性層表面へ染みこみにくく、結果として、IPN構造を形成しにくい。したがって、アクリルモノマーとしては、一分子中に存在する、アクリロイル基とメタクリロイル基の数の合計が2個あるいは3個であるモノマーが好ましく、より好ましくは、2個である2官能アクリルモノマーが挙げられる。
上記アクリルモノマーの分子量としては、200以上750以下の範囲であることが好ましい。この範囲の分子量のアクリルモノマーを用いることで、シリコーンゴムの網目構造に対して、IPN構造を形成しやすく、効果的に弾性層の強度を向上させることができる。
前記の通り、本開示に係る電子写真部材の製造工程においては、アクリルモノマーはシリコーンゴムを含有する弾性層に含浸させる。そのためには、アクリルモノマーは、シリコーンゴム中に含浸し得る程度の粘度を有するものであることが好ましい、具体的には、例えば、アクリルモノマーを含む含浸処理液の粘度は、温度25℃において5.0mPa・s以上、140mPa・s以下であることが好ましい。
溶媒としては、弾性層との親和性と、アクリルモノマーの溶解性の双方を満たす溶媒であれば自由に選択できる。例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、といったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルといったエステル類等が挙げられる。
上述の分子量範囲と粘度範囲を満たすアクリルモノマーを、1種類又は2種以上選択した含浸処理液を、弾性層に含浸して、重合させることで、シリコーンゴムとアクリル樹脂とのIPN構造を形成することができる。
アクリルモノマーの重合方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、加熱による熱重合や紫外線照射など光重合が挙げられる。
各重合方法に対しては、公知のラジカル重合開始剤やイオン重合開始剤を用いることができる。したがって、含浸処理液には上記アクリルモノマーとこれらの重合開始剤を含むものを用いる。
熱重合する場合の熱重合開始剤としては、例えば、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレートの如き過酸化物;
2,2-アゾビスブチロニトリル、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メトキシプロピオンアミド)、ジメチル-2,2-アゾビス(イソブチレート)の如きアゾ化合物が挙げられる。
紫外線を照射して光重合する場合の光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
なお、これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、重合開始剤の配合量は、特定の樹脂を形成するための化合物(例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物)全量を100質量部としたときに、効率的に反応を進行させる観点から、0.5質量部以上10質量部以下で使用することが好ましい。
加熱のための装置や紫外線照射のための装置は、公知のものを適宜用いることができる。紫外線を照射する光源としては、例えば、LEDランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、及び、低圧水銀ランプ等を用いることができる。重合の際に必要な積算光量については、使用する化合物や重合開始剤の種類や添加量に応じて、適宜、調整することができる。
(2)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂としては、例えば、構造式(II)で示される、エポキシ基に由来する基を有する樹脂が挙げられる。
Figure 2024007328000003
構造式(II)の存在は、例えば、熱分解GC/MS等の一般的な質量分析法にてエポキシ基由来の化合物の検出有無で判断が可能である。
エポキシ樹脂は、例えば、下記構造式(III)で示されるように、グリシジル基の開環付加重合により形成されたポリマーが好ましい。ここで、Rは2価の有機基であり、特にアルキレン基であることが好ましい。
Figure 2024007328000004
構造式(III)で示されるポリマーを提供するモノマーとしては、下記構造式(IV)で示されるように、主鎖中に前記構造式(III)中のR構造を持つ2官能のグリシジルエーテルモノマーを挙げることができる。
Figure 2024007328000005
構造式(IV)のグリシジルエーテルモノマーとしては、アルキルグリシジルエーテルが好適に用いられる。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタジオールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルが挙げられる。
グリシジルエーテルモノマーとしては、弾性層への含浸しやすさの観点から低分子のグリシジルエーテルであることが好ましい。また、同様の観点で低粘度のモノマーほど含浸させやすいため、主鎖に剛直な構造を持たず、低粘度である脂肪族のグリシジルエーテルモノマーが好ましい。前出のアルキルグリシジルエーテルモノマーの具体例は、これらの条件を満たすものである。
溶媒としては、弾性層との親和性と、グリシジルエーテルモノマーの溶解性の双方を満たす溶媒であれば自由に選択できる。例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、といったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル等が挙げられる。また、含浸処理液には、適宜重合開始剤を混合させることができる。重合開始剤の詳細については後述する。
上述のグリシジルエーテルモノマーを、1種類又は2種以上選択した含浸処理液を、弾性層に含浸して、重合させることで、シリコーンゴムとエポキシ樹脂とのIPN構造を形成することができる。
重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。具体的には、熱硬化や紫外線照射などの方法が挙げられる。特にグリシジルエーテルモノマーを紫外線照射により硬化させる方法は、グリシジルエーテルモノマーに過剰な熱が加わり、系外に揮発することなく効率的に系内で重合・硬化させることができるためより好ましい。
各重合方法に対しては、公知のラジカル重合開始剤やイオン重合開始剤などの重合開始剤を用いることができる。具体例としては、アクリル樹脂の重合開始剤と同様のものを挙げることができるが、芳香族スルホニウム塩を主体とするカチオン重合開始剤が好ましい。なお、これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、重合開始剤の配合量は、特定の樹脂を形成するための化合物(例えば、グリシジル基を有する化合物)全量を100質量部としたときに、効率的に反応を進行させる観点から、0.5質量部以上10質量部以下で使用することが好ましい。
なお、加熱のための装置や紫外線照射のための装置は、公知のものを適宜用いることができる。紫外線を照射する光源としては、例えば、LEDランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、及び、低圧水銀ランプ等を用いることができる。重合の際に必要な積算光量については、使用する化合物や重合開始剤の種類や添加量に応じて、適宜、調整することができる。
(3)ウレタン樹脂
ウレタン樹脂としては、例えば、構造式(V)で示されるウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。
Figure 2024007328000006
ウレタン結合の存在は、例えば、熱分解GC/MS等の一般的な質量分析法にてウレタン結合由来の化合物の検出有無で判断が可能である。
ウレタン樹脂は、イソシアネート化合物と水素基を有する物質との反応で生成する。
イソシアネート化合物としては、例えば、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3-ジメチルジフェニル-4,4′-ジイソシアネート(TODI)及び前記記載の多量体及び変性体などを挙げることができる。
水素基を有する物質としては、ポリオールなどの水酸基を有する化合物や、大気中の水分などが挙げられる。
溶媒としては、樹脂層との親和性と、イソシアネート化合物の溶解性の双方を満たす溶媒であれば自由に選択できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルといったエステル類等が挙げられる。
上述のイソシアネート化合物を、1種類又は2種以上選択した含浸処理液を、弾性層に含浸して、加熱し反応させることで、シリコーンゴムとウレタン樹脂とのIPN構造を形成することができる。
本開示に係る弾性層は、図4に示すように、第1の表面46から第2の表面47に向かって厚さ10.0μmから10.5μmまでの第3の領域43から第4の試料をサンプリングしたとき、第4の試料から測定されるジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT3(℃)としたとき、T1、T2及びT3は、下記式(3)及び式(4)
式(3) T1 > T3 ≧ T2
式(4) T1 > T3 + 1.0(℃)
の関係を満たすことが好ましい。
つまり、第1の領域は第3の領域よりも高硬度化されており、第3の領域は第2の領域と同等であるかより高硬度であることが好ましい。
現像ローラによるトナーに対するストレスをより低減するためには、弾性層の高硬度な領域の厚みが小さいことが好ましい。そのためには、第1の領域と第3の領域とのピークトップ温度差(T1-T3)は1.0(℃)以上あることが好ましい。すなわち、弾性層の外表面から深さ方向への高硬度な領域の厚さは、第1の領域と第3の領域のピークトップ温度の差(T1―T3)から想定できる。含浸法によって形成されてなる、式(1)の関係を満たす弾性層において、T1-T3=0℃である場合、他のポリマーの外表面からの含浸が、第3の領域にまで到達していると考えられる。つまり、弾性層の第1の表面から深さ10.5μmの第3の領域に至るまで、高硬度な領域であることを意味する。一方、T1-T3が大きい程、ポリマーの含浸は、外表面の極近傍に留まっていると考えられる。トナーに与えるストレスをより低減するためには、高硬度な領域が外表面の極近傍にのみ形成されていることが好ましい。したがって、T1-T3は、好ましくは、0.3℃~5.9℃、特には、0.8℃~5.9℃、さらには、1.3℃~5.9℃が好ましい。また、式(1)~式(4)の関係を満たす弾性層において、T1は、468.1℃~470.8℃の範囲が好ましく、また、T1-T2は、3.3℃~9.1℃の範囲であることが好ましく、3.3℃~6.1℃の範囲であることが特に好ましい。さらにまた、式(3)及び式(4)に加えて、式(2)を満たす弾性層においては、C1は、414.2℃~423.4℃の範囲が好ましく、C1―C2は、0.9℃~3.6℃の範囲が好ましい。
式(1)~式(4)の関係を満たす弾性層の厚さは、特に限定されないが、トナーに与えるストレスの緩和と、外表面の摩耗の防止とをより高いレベルで両立させる観点から、0.1mm~6.0mm、特には、0.3mm~6.0mm、さらには、1.0mm~6.0mmとすることが好ましい。
[導電性の基体]
導電性の基体2は、円柱状又は円筒状の導電性の軸芯体を用いることができる。また、導電性の弾性層を前記軸芯体の外周上に設けてもよく、その場合、導電性の弾性層と軸芯体とを導電性の基体とみなすこととする。
導電性の軸芯体は、導電性の外表面を有し、基体の表面は、その外周上に設けられる弾性層との接着性を向上させる目的で、公知の表面処理を施してもよく、また、接着層を設けてもよい。材質としては、以下の如き導電性の材料で構成することができる。
アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属又は合金;
クロム、又はニッケルで鍍金処理を施した鉄;
導電性を有する合成樹脂。
[弾性層]
弾性層1は、単層の弾性層であり、電子写真部材の外表面を構成する。該弾性層の材料としてシリコーンゴムが選択されるのは、電子写真部材に使用されるゴム材料として長期に亘って他の部材が当接した場合にも圧縮永久歪みを導電性の弾性層に生じさせにくいためである。
弾性層の厚さは、前記のとおり、特に限定されないが、トナーに与えるストレスの緩和と、外表面の摩耗の防止とをより高いレベルで両立させる観点から、0.1mm~6.0mm、特には、0.3mm~6.0mm、さらには、1.0mm~6.0mmとすることが好ましい。
シリコーンゴムは、その形態により2種類に分類される。一方は、高重合度の直鎖状ポリオルガノシロキサンを使用し、シリカ等の補強性充填材を配合してゴムパウンドを調製し、次いで架橋剤を添加して加熱硬化するミラブルシリコーンゴムと呼ばれるタイプである。他方は、ミラブル型に比べ、重合度の低いオルガノポリシロキサンを使用するタイプの液状シリコーンゴムに分類される。液状シリコーンゴムはさらに、室内で硬化するタイプと加熱により硬化するタイプに分けられる。シリコーンゴムの主成分である、シリコーンポリマーとしては、主に、ミラブルシリコーンゴムの場合は重合度が4,000~10,000程度、液状シリコーンゴムの場合は重合度が100~2,000程度のポリマーが使用される。
また、弾性層は、上記ゴム材料に電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤を配合して導電性の弾性層とすることができる。
電子導電性物質としては、例えば以下の物質が挙げられる。導電性カーボン、ゴム用カーボン、カラー(インク)用カーボンの如き導電性カーボンブラック、金属及びその金属酸化物が挙げられる。例えば、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラックの如き高導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MTの如きゴム用カーボン;カーボンブラック粉末に酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン;銅、銀、ゲルマニウムの如き金属及びその金属酸化物。この中でも、少量で導電性を制御しやすいことから導電性カーボンブラック〔導電性カーボン、ゴム用カーボン、カラー(インク)用カーボン〕が好ましい。
イオン導電性物質としては、例えば以下の物質が挙げられる。過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウムの如き無機イオン導電性物質;変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテートの如き有機イオン導電性物質。
また、弾性層には、必要に応じてさらに可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、硬化抑制剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、の如き各種添加剤を含有させることができる。充填剤としては、シリカ、石英粉末、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。これら任意成分は、弾性層の機能を阻害しない範囲の量で配合される。
<形成方法>
導電性の基体外周上に弾性層を形成する方法については、特に限定されず、型成形法、押出成形法、射出成形法、塗工成形法を挙げることができる。型成形法では、例えば、まず、円筒状の金型の両端に、金型内に軸芯体を保持するための駒を固定し、駒に注入口を形成する。次いで、金型内に軸芯体を配置し、弾性層用の材料を注入口より注入した後、該材料が硬化する温度で金型を加熱し、脱型する方法を挙げることができる。押出成形法では、例えば、クロスヘッド型押出機を用いて軸芯体と弾性層の材料を共に押し出して、該材料を硬化して、軸芯体の周囲に弾性層の主体となるシリコーンゴム層を形成する方法を挙げることができる。
電子写真部材をローラ部材とする場合、基体上にシリコーンゴム層を形成した後、クラウン形状に加工する研磨工程を実施してもよい。クラウン形状とは、基体(軸芯体)の長手方向の両端部のシリコーンゴム層をより多く研磨して、中央部のシリコーンゴム層の膜厚を厚くなるように形成した状態である。
また、研磨後のシリコーンゴム層にはコロナ処理、フレーム処理、エキシマ処理等表面改質方法によって前処理を施してもよい。前処理を施すことで、続く含浸処理における含浸性を所望の範囲に調整することができる。
その後、弾性層の表面領域を高硬度化するため、EB露光や含浸処理を行う。含浸処理液は、アクリルモノマーについて説明したように、適度な粘度を備えるように溶剤等で希釈して使用する。含浸処理液の含浸方法は特に限定されないが、浸漬塗工、リング塗工、スプレー塗工又はロールコートが利用できる。
含浸処理後は、各第2の成分のポリマーを反応させるため、紫外線照射処理や熱硬化処理を実施する。ローラ部材の場合は、ローラ部材を回転させながら紫外線照射をすることで、表面領域の架橋度を均等にすることができる。
<触媒化合物>
触媒化合物は、シリコーンポリマー同士の付加硬化反応を促進するために用いる触媒である。
触媒化合物としては、以下のようなものを挙げることができる。
白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、白金とアルケニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
触媒化合物は市販品を使用することができ、具体的には、SIP-6829.2、SIP-6832.2、SIP-6830.3、SIP-6831.2、SIP-6833.2(商品名、何れもGelest社製)などが挙げられる。
これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
シロキサン組成物における触媒化合物の含有量としては、硬化反応性の観点から、1質量ppm以上100質量ppm以下となる量が好ましい。
<その他の成分>
上記の触媒化合物以外にも、上記組成の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて補強性付与剤、硬化制御剤、導電剤、可塑剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤等の各種添加剤を含有することができる。
[電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置]
本態様に係る電子写真画像形成装置は、例えば、以下の構成を有する。
・静電潜像を担持するための像担持体;
・該像担持体を一次帯電するための帯電装置;
・一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置;
・該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置;及び
・該トナー像を転写材に転写するための転写装置。
図3は、本態様に係る電子写真画像形成装置の概略を示す断面図である。
図2は、図3の電子写真画像形成装置に装着されるプロセスカートリッジの拡大断面図である。このプロセスカートリッジは、感光ドラムなどの像担持体21と、帯電部材22を具備する帯電装置と、現像部材24、トナー供給部材25を具備し、かつ、トナー201を収容している現像装置20と、クリーニング部材30を具備するクリーニング装置とを内蔵している。そして、プロセスカートリッジは、図3の電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている。
像担持体21は、不図示のバイアス電源に接続された帯電部材22によって一様に帯電(一次帯電)される。この時の像担持体21の帯電電位は-800V以上-400V以下である。次に、像担持体21は、静電潜像を書き込むための露光光23を、不図示の露光装置により照射し、その表面に静電潜像が形成される。露光光23には、LED光、レーザー光のいずれも使用することができる。露光された部分の像担持体21の表面電位は-200V以上-100V以下である。
次に、現像部材24によって負極性に帯電したトナーが静電潜像に付与(現像)され、像担持体21上にトナー像が形成され、静電潜像が可視像に変換される。このとき、現像部材24には不図示のバイアス電源によって-500V以上-300V以下の電圧が印加される。なお、現像部材24は、像担持体21と0.5mm以上3mm以下のニップ幅をもって接触している。本実施形態のプロセスカートリッジにおいては、トナー規制部材であるトナー規制ブレード26と現像部材24との当接部に対して現像部材24の回転の上流側に、トナー供給部材25が回転可能な状態で現像部材24に当接される。
像担持体21上で現像されたトナー像は、中間転写ベルト27に1次転写される。中間転写ベルト27の裏面には1次転写部材28が当接しており、1次転写部材28に+100V以上+1500V以下の電圧を印加することで、負極性のトナー像を像担持体21から中間転写ベルト27に1次転写する。1次転写部材28はローラ形状であってもブレード形状であってもよい。
電子写真画像形成装置がフルカラー画像形成装置である場合、上記の帯電、露光、現像、1次転写の各工程を、イエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各色に対して行う。そのために、図3に示す電子写真画像形成装置では、前記各色のトナーを内蔵したプロセスカートリッジが各1個、合計4個が、電子写真画像形成装置本体に対し着脱可能な状態で装着されている。そして、上記の帯電、露光、現像、1次転写の各工程は、所定の時間差をもって順次実行され、中間転写ベルト27上に、フルカラー画像を表現するための4色のトナー像を重ね合わせた状態が作り出される。
中間転写ベルト27上のトナー像は、中間転写ベルト27の回転に伴って、2次転写部材29と対向する位置に搬送される。中間転写ベルト27と2次転写部材29との間には所定のタイミングで記録用紙の搬送ルート32に沿って記録用紙が搬送されてきており、2次転写部材29に2次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト27上のトナー像を記録用紙に転写する。このとき、2次転写部材29に印加されるバイアス電圧は、+1000V以上+4000V以下である。2次転写部材29によってトナー像が転写された記録用紙は、記録用紙の搬送ルート32によって定着装置31に搬送される。該定着装置31にて記録用紙上のトナー像を溶融させて記録用紙上に定着させた後、記録用紙を電子写真画像形成装置の外に排出することで、プリント動作が終了する。
なお、像担持体21から中間転写ベルト27に転写されることなく像担持体21上に残存したトナーは像担持体21表面をクリーニングするためのクリーニング部材30により掻き取られ、像担持体21の表面はクリーニングされる。
以下に、現像ローラを例として、具体的な実施例を挙げて本開示をさらに詳細に説明する。電子写真部材としての本開示の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
[研磨済ローラの作製]
外径6mm、長さ264mmのSUS304製の芯金表面にシリコーン系プライマー(商品名:プライマーNo.16、信越化学工業株式会社製)を塗布し、温度150℃で20分間加熱し、導電性の基体を調製した。
次に弾性層の形成に当たり、下記表1における材料を混合し、加圧ニーダーで混練して、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
Figure 2024007328000007
次いで、調製した導電性の基体と付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物とを、クロスヘッド型押出成形機にて一体分出し、ギヤオーブンを用いて、250℃、20分間加熱し、硬化した。その後、さらに、ギヤオーブンを用いて200℃で4時間加熱して二次硬化した後、常温にて24時間放置した。
次いで、導電性の基体の外周に形成された弾性層を、外径が10mm、クラウン量が20μmとなるように円筒研削盤にて研磨し、研磨済ローラを得た。クラウン量は、弾性層端部から10mmの位置の外径と、弾性層中央位置の外径との差であり、仕上がりのクラウン量が20μmとなるように弾性層端部の外径は10.000mm、中央部の外径は10.020mmとなるように研磨した。
なお、外径測定には、レーザー測長器(商品名:コント部材LS-7000、センサーヘッドLS-7030R、KEYENCE社製)を用いて、長手方向に10mmピッチで測定した。また、得られた研磨済ローラの表面粗さは、接触粗さ計(サーフコードSE3500、株式会社小坂研究所製)を用いて測定したところ、Ra=1.05μmであった。
[前処理]
次に、前処理として、研磨済ローラに、以下の処理を行った。使用する紫外線ランプとしては、エキシマUVランプ(商品名:GEL40XTS、ハリソン東芝ライティング社製)を使用し、研磨済ローラ表面の位置における172nm波長の照度を紫外線積算光量計(本体:UIT-250、受光部:VUV-S172、共にウシオ電機社製)で測定した。この際、照度が15mWとなるように距離の調整を行った。
積算光量が200mJとなるように積算時間として13秒照射を行い、前処理済ローラを得た。
[含浸処理]
続いて、含浸処理を行った。含浸処理用の含浸処理液の材料として、下記表2に示す材料を溶解混合した。前処理済ローラを、この含浸処理液中に5秒間浸漬し処理を行い、含浸処理液を含浸させた。その後常温で30分間風乾を行い、さらに90℃で1時間乾燥して、溶剤を揮発させた。
Figure 2024007328000008
次に含浸処理液を反応させるため、乾燥後のローラを回転させながら、紫外線ランプにて紫外線照射した。ローラは回転機構によって紫外線処理中は回転可能である。ローラの回転数は20rpmとして、回転させつつ、紫外線照射を行い、処理を行った。紫外線ランプとローラの間にはフィルターやランプの汚染防止のためのガラス板などを適宜配置してもよい。使用する紫外線ランプとしては、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス株式会社製)を使用した。ローラ表面の位置における365nm波長の照度を紫外線積算光量計(本体:UIT-250、受光部:UVD-S365、共にウシオ電機社製)で測定し、照度100mWとなるようにランプの出力及び距離を調整した。
この状態で積算光量が約15000mJ/cmとなるように、200秒紫外線を照射することによって、アクリルモノマーを硬化させて、現像ローラを得た。
得られた現像ローラについて、以下の評価を行った。
[評価方法]
<T1、T2、T3、C1、C2の測定>
まず、現像ローラの測定する領域をミクロトームで薄片に切削して切り出し、試料を準備する。本態様では、図4に示すように、第1の領域41、第2の領域42、第3の領域43と称する3つの領域から試料を準備する。第1の領域41は弾性層44の第1の表面から第2の表面に向かって厚さ0.5μmの領域、第2の領域42は第2の表面から第1の表面に向かって厚さ1.0μmから1.5μmまでの領域である。また、第3の領域43は第1の表面から第2の表面に向かって厚さ10.0μmから10.5μmまでの領域である。第1の領域から第1の試料、第2の領域から第2の試料、第3の領域から第4の試料をそれぞれ採取し、それぞれのトータルイオンサーモグラムを得た。トータルイオンサーモグラムは、上述のイオントラップ型質量分析装置(商品名:Polaris Q」 Thermo、Electron社製)を使用して測定した。得られたトータルイオンサーモグラムから、第1の領域、第2の領域、第3の領域のそれぞれにおけるジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度、T1、T2、T3を求めた。また、該第1の試料におけるトータルイオンサーモグラムからアクリル樹脂に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度C1を求めた。さらに、後述する、シリコーンゴムの分解法により、該第1の試料が含むシリコーンゴムを除去して得られる第3の試料におけるトータルイオンサーモグラムからアクリル樹脂に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度C2を得た。ここで、それぞれのピークトップ温度、T1、T2、T3、C1、C2は、それぞれ、現像ローラの中央で10サンプル、両端部で10サンプル、計30の切り出したサンプルを、測定したものの平均値とした。
なお、各領域のサンプルは、ミクロトーム(商品名:ウルトラミクロトーム、Leica microsystems社製)を用いて薄片を切り出した。
具体的には、まず、カミソリを用いて、現像ローラの表面から基体に向けた切り込みを入れ、弾性層の断面が露出したカマボコ状態のゴム片を切り出した。当該ゴム片を外表面である第1の表面が上面になるようにミクロトームの試料ホルダーに設置した。第1の領域よりダイヤモンドナイフで削り取ることで第1の試料を、第3の領域よりダイヤモンドナイフで削り取ることで第4の試料を採取した。
第2の試料については、当該ゴム片を弾性層の第2の表面が上面になるようにミクロトームの試料ホルダーに設置し、第2の領域よりダイヤモンドナイフで削り取ることで採取した。
<シリコーンゴムの分解法>
シリコーンゴムが有するシロキサン結合を選択的に分解するため、シリコーン樹脂溶解剤(商品名:eソルブ21RS、株式会社カネコ化学製)を使用した。
ミクロトームを用いて、上記の通り採取した第1の試料を、シリコーン樹脂溶解剤に浸漬してシリコーンゴムを溶解させた後フィルターにより濾過することで、シリコーンゴムに由来するジメチルシロキサン構造を除去した第3の試料を得た。
<耐久性評価>
現像ローラを、カラーレーザープリンタ用のプロセスカートリッジに装着し、カラーレーザープリンタ(商品名:Color Laser Jet Pro M452dw、ヒューレット・パッカード社製)を用いて現像ローラ表面の摩耗による削れの状態とフィルミング状態を評価した。評価結果を下記表4に示す。評価手順は以下の通りである。
温度30℃、相対湿度95%の高温高湿環境下に前記プロセスカートリッジをエージングとして16時間放置後、同環境下にて、印字率0.2%の低印字画像を記録用紙に連続して出力した。この印字操作を、レーザープリンターにカートリッジ交換ランプが点灯するまで行った。ランプ点灯後、さらに追加で500枚印字を行った後、プロセスカートリッジから、現像ローラを取り外し、ローラ表面をエアブローして表面にコートされているトナーを除去し、耐久後の現像ローラについて下記評価基準に従って評価した。
<評価基準>
耐久後の現像ローラにおいて両端のブレード端部当接位置を、外径測定に用いた、レーザー測長器(商品名:コント部材LS-7000、センサーヘッドLS-7030R、KEYENCE社製)で測定し、削れの状態を下記評価基準に従って評価した。
ランク「A」:耐久前のローラ外径に対し、耐久後ローラ外径の変化量が10μm以下。
ランク「B」:耐久前のローラ外径に対し、耐久後ローラ外径の変化量が10μm超~30μm以下。
ランク「C」:耐久前のローラ外径に対し、耐久後ローラ外径の変化量が30μm超、もしくは削れにより測定不可。
また耐久後の現像ローラ表面をレーザー顕微鏡(商品名:VK-8700、キーエンス社製)で、20倍の対物レンズを用いてトナーコートされていた部分をローラ軸方向に三分割し、周方向に各3点、各サンプルに対し計9点観察し、9点それぞれにおいて固着トナーの面積を求め、9点の値を平均したものをフィルミングの状態として、下記評価基準に従って評価した。
ランク「A」:ローラ表面積に対する固着トナーの面積が5%以下。
ランク「B」:ローラ表面積に対する固着トナーの面積が5%超~15%以下。
ランク「C」:ローラ表面積に対する固着トナーの面積が15%超。
以上の評価結果を表4に示す。
(実施例2)
紫外線照射時間を100秒に変更する以外は、実施例1と同様の方法により、現像ローラを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。
(実施例3)
含浸処理において、エポキシ樹脂によるIPN構造を導入するための含浸処理液を含浸する以外は、実施例2と同様の方法により、現像ローラを作製した。含浸処理液はグリシジルエーテルモノマー(商品名:エチレングリコールジグリシジルエーテル、東京化成工業株式会社製)5質量部、光重合開始剤(商品名:サンエイドSI-100L、三新化学工業株式会社製)0.1質量部、溶媒(メチルエチルケトン)100質量部を溶解混合したものを使用した。得られた現像ローラに対して、実施例1と同様の方法で評価を行った。
(実施例4)
含浸処理において、ウレタン樹脂によるIPN構造を導入するための含浸処理液を含浸する以外は、実施例2と同様の方法により、現像ローラを作製した。含浸処理液はイソシアネート化合物(商品名:ミリオネートMR-400、東ソー社製)14.3質量部、溶媒(酢酸エチル)100質量部を溶解混合したものを使用した。得られた現像ローラに対して、実施例1と同様の方法で評価を行った。
(実施例5、6、7)
浸漬時間を、15秒、30秒、60秒に変更する以外は、実施例2と同様の方法により、現像ローラを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。
(実施例8)
実施例1と同様の方法により得た研磨済ローラに、EB処理し、現像ローラを作製し、実施例1と同様の方法で評価を行った。EB処理には、最大加速電圧150kV・最大電子電流40mAの電子線照射装置(岩崎電気株式会社製)を用い、照射時には窒素ガスパージを行った。処理条件は加速電圧:150kV、電子電流:35mA、処理速度:1m/min、酸素濃度:100ppmであった。
(比較例1)
表1の組成にカップリング剤としてモノメチルトリメトキシシランを1質量部混合し、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を調製した。次いで、実施例1と同様の方法により得た研磨済ローラを、現像ローラとし、実施例1と同様の方法で評価を行った。
(比較例2)
実施例1と同様の方法により得た研磨済ローラを、現像ローラとし、実施例1と同様の方法で評価を行った。
Figure 2024007328000009
Figure 2024007328000010
〔評価結果の考察〕
実施例1~8の電子写真部材は、いずれも、単層の弾性層を有している。弾性層には、シリコーンゴムを含み、いずれもT1>T2の条件を満たしているため、フィルミングが抑えられていた。
さらに、実施例1~7と実施例8を比較すると、実施例1~7に係る電子写真ローラは、第1の領域が、第2の領域が含まないポリマーを含有し、かつC1>C2の条件を満たしている。弾性層の外表面である第1の表面から深さ0.5μmまでの第1の領域において、シリコーンゴムとポリマーとがIPN構造を構成していることが確認できた。その結果、高温高湿の過酷な環境下において、現像ローラとして、多数枚の電子写真画像の形成に供したときにも、外表面の摩耗の評価結果はランクAであり、フィルミングの評価結果もランクAまたはランクBであった。これらの結果から、実施例1~7に係る電子写真ローラは、極めて優れた耐摩耗性を有するとともに、トナーに与えるストレスも緩和できていたことが分かった。
実施例1~5と実施例6、7を比較すると、実施例1~5は(T1-T3)>1.0(℃)の条件を満たしていた。そのため、高温高湿の過酷な環境下において、現像ローラとして、多数枚の電子写真画像の形成に供したときにも、外表面の摩耗の評価結果はランクAであり、フィルミングの評価結果もランクAであった。これらの結果から、実施例1~5に係る電子写真ローラは、極めて優れた耐摩耗性を有するとともに、トナーに与えるストレスもより一層緩和できていたことが分かった。
また、実施例1と実施例2を比較すると、実施例1は実施例2に比べ、よりT1-T3の値がより大きかった。そのため、実施例1に係る電子写真ローラは、実施例2に係る電子写真ローラと比較して、フィルミングの抑制効果がより大きかった。
比較例1に係る電子写真ローラは、シランカップリング剤が配合されたシリコーンゴムを用いて形成された弾性層を有していた。この弾性層は、T1>T2の条件を満たしていない。そして、この弾性層は、シランカップリング剤によってシリコーンゴムが架橋していたため、弾性層全体が高硬度化していたと考えられる。その結果として、外表面の摩耗の評価結果に関しては評価ランクAであったが、フィルミングの評価ランクは、ランクCであった。
比較例2に係る電子写真ローラは、シランカップリング剤が混合されていないシリコーンゴムを用いて形成された弾性層を有していた。この弾性層は、T1>T2の関係を満たしていなかった。そして、この弾性層は、全体が柔軟であった。そのため、フィルミングの評価結果はランクAであったが、外表面の摩耗の評価結果に関しては評価ランクCであった。
本開示は以下の構成を含むものである。
[構成1]
導電性の基体、及び、該基体上の単層の弾性層、を有する電子写真部材であって、
該弾性層は、ジメチルシロキサン構造を含むシリコーンゴムを含有し、
該弾性層の該基体に対向する側を第2の表面とし、該弾性層の該第2の表面とは反対側の表面を第1の表面としたとき、
該第1の表面から該第2の表面に向かって厚さ0.5μmの第1の領域からサンプリングされる第1の試料から測定される該ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT1(℃)とし、
該弾性層の該第2の表面から該第1の表面に向かって厚さ1.0μmから1.5μmまでの第2の領域からサンプリングされる第2の試料から測定される該ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT2(℃)としたとき、
T1及びT2が下記式(1)で示される関係を満たす、ことを特徴とする電子写真部材:
式(1) T1 > T2。
[構成2]
T1-T2が、3.3℃~9.1℃の範囲である、構成1に記載の電子写真部材。
[構成3]
前記第1の試料が、前記第2の試料が含まないポリマーを含み、
該第1の試料から測定される該ポリマーに由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をC1(℃)とし、
該第1の試料が含む前記シリコーンゴムを分解して得られる第3の試料から測定される該ポリマーに由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をC2(℃)としたとき、
該C1及び該C2が下記式(2)で示される関係を満たす、構成1又は構成2に記載の電子写真部材:
式(2) C1 > C2。
[構成4]
C1-C2が、0.9℃~3.6℃の範囲である、構成3に記載の電子写真部材。
[構成5]
前記ポリマーが、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、構成3又は4に記載の電子写真部材。
[構成6]
前記弾性層の前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚さ10.0μmから10.5μmまでの第3の領域からサンプリングされる第4の試料から測定される前記ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT3(℃)としたとき、
前記T1、前記T2及び該T3が下記式(3)で示される関係を満たす、構成1~5のいずれか一項に記載の電子写真部材:
式(3) T1 > T3 ≧ T2。
[構成7]
T1-T3が、0.3℃~5.9℃の範囲である、構成6に記載の電子写真部材。
[構成8]
T1及びT3が下記式(4)で示される関係を満たす、構成6に記載の電子写真部材:
式(4) T1 > T3 + 1.0(℃)。
[構成9]
T1-T3が、1.3℃~5.9℃である、構成8に記載の電子写真部材。
[構成10]
前記弾性層の厚さが、0.1mm~6.0mmである、構成1~構成9のいずれか一項に記載の電子写真部材。
[構成11]
前記電子写真部材が、現像ローラである、構成1~構成10のいずれか一項に記載の電子写真部材。
[構成12]
電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジであって、構成1~11のいずれか一項に記載の電子写真部材を有していることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
[構成13]
トナーを収容している現像装置を有し、前記電子写真部材を現像ローラとして有している、構成12に記載の電子写真プロセスカートリッジ。
[構成14]
静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像部材と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置とを有する画像形成装置において、該現像部材が構成1~11のいずれか一項に記載の電子写真部材であることを特徴とする電子写真画像形成装置。
1:弾性層
2:導電性の基体
21:像担持体
22:帯電部材
24:現像部材
25:トナー供給部材
41:第1の領域
42:第2の領域
43:第3の領域
44:弾性層
45:導電性の基体
46:第1の表面
47:第2の表面

Claims (14)

  1. 導電性の基体、及び、該基体上の単層の弾性層、を有する電子写真部材であって、
    該弾性層は、ジメチルシロキサン構造を含むシリコーンゴムを含有し、
    該弾性層の該基体に対向する側を第2の表面とし、該弾性層の該第2の表面とは反対側の表面を第1の表面としたとき、
    該第1の表面から該第2の表面に向かって厚さ0.5μmの第1の領域からサンプリングされる第1の試料から測定される該ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT1(℃)とし、
    該弾性層の該第2の表面から該第1の表面に向かって厚さ1.0μmから1.5μmまでの第2の領域からサンプリングされる第2の試料から測定される該ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT2(℃)としたとき、
    T1及びT2が下記式(1)で示される関係を満たす、ことを特徴とする電子写真部材:
    式(1) T1 > T2。
  2. T1-T2が、3.3℃~9.1℃の範囲である、請求項1に記載の電子写真部材。
  3. 前記第1の試料が、前記第2の試料が含まないポリマーを含み、
    該第1の試料から測定される該ポリマーに由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をC1(℃)とし、
    該第1の試料が含む前記シリコーンゴムを分解して得られる第3の試料から測定される該ポリマーに由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をC2(℃)としたとき、
    該C1及び該C2が下記式(2)で示される関係を満たす、請求項1に記載の電子写真部材:
    式(2) C1 > C2。
  4. C1-C2が、0.9℃~3.6℃の範囲である、請求項3に記載の電子写真部材。
  5. 前記ポリマーが、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項3に記載の電子写真部材。
  6. 前記弾性層の前記第1の表面から前記第2の表面に向かって厚さ10.0μmから10.5μmまでの第3の領域からサンプリングされる第4の試料から測定される前記ジメチルシロキサン構造に由来するイオンサーモグラムのピークトップ温度をT3(℃)としたとき、
    前記T1、前記T2及び該T3が下記式(3)で示される関係を満たす、請求項1に記載の電子写真部材:
    式(3) T1 > T3 ≧ T2。
  7. T1-T3が、0.3℃~5.9℃の範囲である、請求項6に記載の電子写真部材。
  8. T1及びT3が下記式(4)で示される関係を満たす、請求項6に記載の電子写真部材:
    式(4) T1 > T3 + 1.0(℃)。
  9. T1-T3が、1.3℃~5.9℃である、請求項8に記載の電子写真部材。
  10. 前記弾性層の厚さが、0.1mm~6.0mmである、請求項1に記載の電子写真部材。
  11. 前記電子写真部材が、現像ローラである、請求項1に記載の電子写真部材。
  12. 電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジであって、請求項1~11のいずれか一項に記載の電子写真部材を有していることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
  13. トナーを収容している現像装置を有し、前記電子写真部材を現像ローラとして有している、請求項12に記載の電子写真プロセスカートリッジ。
  14. 静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像部材と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置とを有する画像形成装置において、該現像部材が請求項1~11のいずれか一項に記載の電子写真部材であることを特徴とする電子写真画像形成装置。
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