JP7328114B2 - 電子写真用部材、プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置 - Google Patents
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Description
このような電子写真装置には、これまで以上に高い画像品質や耐久性、より速い印刷速度が求められるようになってきている。このため、電子写真用部材への要求性能も高度化が進んでいる。
本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像の安定した形成に資するプロセスカートリッジの提供に向けたものである。
本開示のさらに他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
E1≧200MPa (1);
10MPa≦E2≦100MPa (2)
を同時に満たす電子写真用部材が提供される。
さらに、本開示の他の態様によれば、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像部材と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置とを有する画像形成装置であって、該現像部材が前記電子写真用部材である電子写真画像形成装置が提供される。
下記式(1)及び(2):
E1≧200MPa (1);
10MPa≦E2≦100MPa (2)
を同時に満たす。
架橋ウレタン樹脂は、ポリオールの水酸基とイソシアネート化合物を反応させることにより、ウレタン結合を架橋して形成することで得られる。ここでいう架橋の意味は、得られるウレタン樹脂の構造が直鎖構造ではなく、ポリオールかイソシアネート化合物のいずれか、あるいは両方が3個以上の反応性官能基を有していることにより、3次元網目状構造を形成するウレタン樹脂であることを示している。
そのために、表面層のマトリックスを構成する架橋ウレタン樹脂に対して、表面側の弾性率を高めるため、例えば、相互侵入高分子網目構造を形成する。
IPN構造の形成方法としては、いくつかの方法を挙げることができる。例えば、第一の成分のポリマーの網目を先に形成させておき、次に第二の成分のモノマーと重合開始剤で膨潤させた後で第二の成分のポリマーの網目を形成させる、逐次網目形成法。あるいは、それぞれ反応機構の異なる第一の成分のモノマーと、第二の成分のモノマー、さらに、各々の重合開始剤を混合し、同時に網目を形成させる、同時網目形成法などが挙げられる。
本態様においては、架橋ウレタン樹脂の表面から深さ方向に1μm程度の厚さの架橋ウレタン樹脂と架橋アクリル樹脂のIPN構造を形成する。高温環境においては、IPN構造導入による高強度化は削れによるキズとトナー劣化に伴うフィルミングの二律背反となる。即ち、IPN構造を外表面からの深さ方向に厚く形成する場合、削れによるキズを抑制できるが、トナーへの負荷が高くなり、フィルミングが悪化してしまう。
一方、IPN構造を外表面からの深さ方向で薄く形成する場合、トナーへの負荷が軽減し、フィルミングを抑制できるが、架橋アクリル樹脂量を少なくせざるを得ず、外表面の強度確保が十分ではなく、削れによるキズが悪化してしまう。高強度化の方法としては、例えば電子写真用部材の表面を構成するゴムの架橋密度を著しく高めるなどの手法を挙げることもできるが、こうした手法の場合、高強度化に伴い高硬度化が進む。このため、トナーへの負荷が高くなり、フィルミングが悪化してしまう。また、こうした手法で高強度化する場合、可撓性が落ちて脆化する場合があり、かえって削れによるキズを悪化させることとなる。
導電性の基体は、円柱状または中空円筒状の導電性の軸芯体、または、こうした軸芯体上にさらに一層、あるいは複数層の導電性の中間層を設けたものを用いることができる。軸芯体の形状は円柱状または中空円筒状であり、以下の導電性の材質で構成される。アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金;クロム、又はニッケルで鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂。軸芯体2の表面にはその外周の中間層3や表面層1等との接着性を向上させる目的で、公知の接着剤を塗布することもできる。
これら導電性付与剤は、中間層を前記のような適切な体積抵抗率に調整するのに必要な量が用いられるが、通常バインダー樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。
中間層用の各材料の混合は、一軸連続混練機、二軸連続混練機、二本ロール、ニーダーミキサー、トリミックス等の動的混合装置や、スタティックミキサー等の静的混合装置を用いて行うことができる。
表面層は、電子写真用部材の最外面に設けられている単層であり、ローラ形状の部材の場合は、最外周面に設けられる。表面層は、軸芯体上に直接形成することもできるが、軸芯体上に中間層を設けたものを基体として、その外周面に表面層を形成することもできる。表面層は、バインダー樹脂を含んでいる。また、バインダー樹脂としては、架橋ウレタン樹脂を含んでおり、IPN構造を形成する場合、該架橋ウレタン樹脂に架橋アクリル樹脂が相互侵入したIPN構造を有していることが好ましい。
以下に、架橋アクリル樹脂によりIPN構造を形成した表面層の実施形態について、その形成方法を説明する。
本実施形態の表面層は、以下の工程により形成することができる。
導電性の基体上に、バインダー樹脂としての架橋ウレタン樹脂を含む樹脂層を形成する工程;
該樹脂層の外表面に、液状のアクリルモノマーを含浸させる工程;及び
含浸されたアクリルモノマーを硬化させる工程。
表面層は架橋ウレタン樹脂をバインダーとして含むマトリックスを有している。架橋ウレタン樹脂は、柔軟性と強度に優れているため、バインダーとして好適である。ウレタン樹脂は、ポリオールとイソシアネート、必要に応じて鎖延長剤から得ることができる。ウレタン樹脂の原料たるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、およびこれらの混合物が挙げられる。ウレタン樹脂の原料たるイソシアネートとしては、例えば以下が挙げられる。トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、およびこれらの混合物。ウレタン樹脂の原料たる鎖延長剤としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオールの如き2官能性低分子ジオール、トリメチロールプロパンの如き3官能性低分子トリオール、およびこれらの混合物が挙げられる。また、上記の各種イソシアネート化合物と、各種ポリオールを、イソシアネート基が過剰な状態で予め反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有する、プレポリマータイプのイソシアネート化合物を用いてもよい。また、これらのイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を、MEKオキシムなどの各種ブロック剤でブロック化した材料を用いてもよい。
架橋アクリル樹脂は、高強度であるが、単独で用いると、硬く脆い場合がある。従って、単独膜として電子写真用部材の表面層に用いた場合は、その脆さ故に摺擦による削れによりキズが生じやすい。また、硬いため、トナーへの負荷が大きくなりやすく、フィルミングの原因となることがある。一方で、架橋ウレタン樹脂をマトリックスとして構成される表面層の極めて外表面近傍において、IPN構造として導入される場合は、硬さと脆さが発現しにくく、柔軟性を保持したまま高強度を付与することができる。
前述のように、アクリルモノマーは架橋ウレタン樹脂を含む樹脂層に含浸される。そのためには、適当な粘度を有する。即ち、高粘度では含浸しにくく、低粘度では含浸状態の制御が困難である。従って、アクリルモノマーの粘度は、25℃において5.0mPa・s以上、140mPa・s以下であることが好ましい。
アクリルモノマーの重合方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、加熱や紫外線照射などの方法が挙げられる。
加熱して重合する場合の重合開始剤としては、例えば、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレートの如き過酸化物;
2,2-アゾビスブチロニトリル、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メトキシプロピオンアミド)、ジメチル-2,2-アゾビス(イソブチレート)の如きアゾ化合物が挙げられる。
また、重合開始剤の配合量は、特定の樹脂を形成するための化合物(例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物)全量を100質量部としたときに、効率的に反応を進行させる観点から、0.5質量部以上10質量部以下で使用することが好ましい。
先ず、電子写真用部材の測定する断面の領域をクライオミクロトーム(商品名:EMFC6、ライカマイクロシステムズ社製)にて、-110℃に保持した状態でダイヤモンドナイフを用いて、薄片に切削して切り出す。さらに該薄片から100μm角、深さ方向の幅100μmの試料を作成する。ここで、図4に導電性の基体45上に形成した表面層44の断面概略図を示す。本開示では、図4に示すように、表面層44の外表面から深さ0.1μmまでを第1領域41、外表面から深さ1.0μmから1.1μmまでを第2領域42、外表面から深さ0.5μmから0.6μmまでを第3領域43と規定する。作成した試料の断面に現れる各々の領域において、架橋ウレタン樹脂をバインダーとして含むマトリックスの弾性率を測定する。測定には、SPM装置(商品名:MFP-3D-Origin、オックスフォード・インストゥルメンツ社製)と、探針(商品名:AC160、オリンパス社製)を使用する。このとき、フォースカーブを10回測定し、最高値と最低値を除く8点の算術平均として求め、Hertz理論で弾性率を算出することができる。第1領域41、第2領域42及び第3領域43における該マトリックスの弾性率をそれぞれE1、E2、E3とする。
IPN構造が形成されていることを確認するには、溶剤抽出による方法、IPN構造を形成する前後でのガラス転移点のシフトにより確認する方法などが挙げられるが、本開示においては、SPM弾性率および熱クロマトグラムのピークトップ温度から確認を行う。
先ず、電子写真用部材の測定する領域をSPM弾性率の測定と同様にクライオミクロトームを用いて、薄片に切削して切り出し、試料を準備する。具体的には、表面層の上記第1領域~第3領域から、それぞれ100μm角、深さ方向の幅0.1μmの試料を作成する。測定には、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(「Polaris Q」(商品名、Thermo Electron社製)に搭載されている、イオントラップ型質量分析装置を使用する。プローブの先端に位置するフィラメントに試料を固定し、イオン化チャンバーの中に直接挿入する。その後、一定の加熱速度で室温から温度1000℃まで急速に加熱する。加熱により分解し、蒸発した試料を電子ビームの照射によりイオン化し、質量分析計により検出する。このとき、加熱速度が一定の条件では、トータル・イオン・クロマトグラム(TIC)と呼ばれる質量スペクトルを持つ、TG-MS(熱重量-質量同時分析)法に類似した熱クロマトグラムが得られる。また、所定の質量のフラグメントに対する熱クロマトグラムも得ることができるため、所望の分子構造の分解温度に相当する、熱クロマトグラムのピーク温度を得ることができる。熱クロマトグラムのピーク温度は、樹脂の構造体における、架橋構造に相関があり、架橋が密になるほど、ピーク温度としては高温側にシフトすることとなる。
E1≧200MPa (1);
10MPa≦E2≦100MPa (2)。
(E1-E3)/E3>1 (3)。
A1>A2 (4)。
T1>T2 (5)。
式(5)において、T1は第1領域の架橋ウレタン樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度(℃)であり、T2は前述の第2領域に含まれる架橋ウレタン樹脂由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度(℃)である。上記式(5)を満たすとき、より効果的に表面層の外表面が高強度化されており、表面層の削れによるキズとフィルミングがより高い次元で抑制できる。
(T1-T2)>1.0 (6)。
T1>T3 (7)
|T1-T3|>|T3-T2| (8)。
また、表面層の補強効果を高める目的でフィラーを含有してもよい。
絶縁性フィラーとして以下のものが挙げられる。石英微粉末、シリカ粒子、ケイソウ土、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤。これらのフィラーの表面は有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサンで処理して疎水化しても良い。絶縁性フィラーとしては、表面層内の均一分散性が良好であることから、シリカ粒子が好適に用いられる。さらに、シリカ粒子の中でも、シリカ粒子の表面を疎水化処理したシリカ粒子が特に好適に用いられる。シリカ粒子の含有率は、表面層を形成する樹脂成分100質量部に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
表面層の補強性能及び導電性を考慮すると、シリカ粒子の一次粒子径は、個数平均一次粒径が10nm以上120nm以下の範囲内にあることが好ましく、15nm以上80nm以下の範囲内にあることがより好ましく、15nm以上40nm以下の範囲内にあることが特に好ましい。なお、個数平均一次粒径は、次のようにして測定される。走査電子顕微鏡でシリカ粒子を観察し、視野中の100個の粒子の粒子径を測定して平均粒子径を求める。
導電性フィラーとしては以下のものが挙げられる。カーボンブラック、グラファイト等の炭素系物質;アルミニウム、銀、金、錫-鉛合金、銅-ニッケル合金等の金属或いは合金;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀等の金属酸化物;各種フィラーに銅、ニッケル、銀等の導電性金属めっきを施した物質。導電性フィラーとしては、導電性の制御が容易であり、また安価であるといった理由から、カーボンブラックが特に好適に用いられる。中でも、表面層内の均一分散性が良好であることから、比較的一次粒子径が小さく、疎水傾向を維持しているものが特に好適に用いられる。表面層の補強性能及び導電性を考慮すると、カーボンブラックの一次粒子径は、個数平均一次粒径が20nm以上60nm以下の範囲内にあることが好ましい。カーボンブラックの表面特性については、pHが3.0以上8.0以下のものが好ましい。また、カーボンブラックの含有率は、表面層を形成する樹脂成分100質量部に対して5質量%以上45質量%以下であることが好ましい。
[その他の成分]
また、表面層には、これまでに記述したもの以外に、上記機能を阻害しない範囲で、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、分散剤、レベリング剤の如き各種添加剤を含有させることができる。
本開示の電子写真画像形成装置は、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置とを有する装置である。図2は、本開示の一態様に係る電子写真画像形成装置の概略を示す断面図である。
[1.導電性の基体の作製]
外径6mm、長さ270mmのSUS304製の芯金にプライマー(商品名:DY35-051、東レ・ダウコーニング社製)を塗布し、温度150℃で20分間加熱した。この芯金を内径12.0mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。
中間層の材料として、下記表1に示す材料を混練機(商品名:トリミックスTX-15、井上製作所社製)で混合した付加型シリコーンゴム組成物を温度115℃に加熱した金型内に注入した。材料注入後、温度120℃にて10分間加熱成型し、室温まで冷却後、金型から脱型し、芯金の外周に厚み3.0mmの中間層が形成された導電性の基体(弾性ローラ)を得た。
表面層の形成に当たっては、まず、樹脂層を形成する。樹脂層の材料として、下記表2中の、粗さ形成粒子以外の材料を撹拌混合した。その後、固形分濃度30質量%になるようにメチルエチルケトン(キシダ化学株式会社製)に溶解し、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。この混合液にメチルエチルケトンを加え固形分濃度25質量%に調整したものに表2の粗さ形成粒子の欄に示す材料を加え、ボールミルで攪拌分散して、樹脂層用塗料1を得た。前記弾性ローラを、この塗料中に浸漬して塗工することにより樹脂層の膜厚が約15μmとなるように塗布した。その後、温度135℃にて60分間加熱して、塗膜を乾燥、硬化して樹脂層を形成した。
[評価方法]
<SPM弾性率の測定>
前述したSPM弾性率の測定法により、第1領域~第3領域の弾性率E1~E3を求めた。さらに、下記式(3)の左辺に得られた弾性率E1及びE3を代入して(E1-E3)/E3の値を求めた。結果を表7に示す。
(E1-E3)/E3>1 (3)
前述したマイクロサンプリング質量分析法により、前述の第1領域~第3領域の各々の領域からサンプリングされる試料の熱クロマトグラムを得た。得られた熱クロマトグラムから、第1領域、第2領域、第3領域のそれぞれの領域における架橋ウレタン樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度、T1、T2、T3を得た。また、第1領域の第1の試料から架橋アクリル樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度A1、さらに、該第1の試料が含む架橋ウレタン樹脂を分解して得られる第2の試料から測定される該架橋アクリル樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度A2を得た。
なお、第2、第3領域については、ゴムロール鏡面加工機(商品名:SZC、水口製作所社製)を用いて、ローラ表面を所定の深さ分だけ研磨、除去して、新たに現れた面から、同様にミクロトームによる薄片への切削を行う。さらに該薄片からマイクロサンプリング質量分析用の試料(第3の試料及び第4の試料)を採取した。また、A2については、後述するピリジン分解法により、架橋ウレタンを分解した後に得られる第2の試料において、マイクロサンプリング質量分析法を行うことにより得た値である。いずれの値も、5回の測定によって得られた各ピーク温度を、算術平均して得られた値である。結果を表7に示す。
ピリジン分解法はウレタン結合を選択的に分解する方法である。架橋アクリル樹脂と架橋ウレタン樹脂のIPN構造を有するサンプルにおいて、ピリジン分解法を行うことで、架橋ウレタンに由来する構造を除去した後の、架橋アクリル樹脂を得ることができ、IPN構造の有無による熱クロマトグラムのピーク温度の変化をとらえることができる。ピリジン分解法は具体的には以下の方法で行う。
ミクロトームを用いて、現像ローラの表面から0.1μmの厚さで、サンプルを切り出し、500mg分を収集する。得られたサンプルに対して、ピリジン(和光純薬社製)と水を3:1で混合した混合液を、0.5mL加え、ステンレスジャケット付きフッ素樹脂(「テフロン」(登録商標))製密閉容器中で、130℃で15時間加熱することにより分解を行う。得られた分解物を減圧処理することにより、ピリジンを除去した。こうして得られたサンプルを用いて、上述のマイクロサンプリング質量分析法を行い、A2の値を得た。
(キズ評価)
現像ローラ1を、カラーレーザープリンタ(商品名:HP Color LaserJet Enterprise M652dn、HP社製)用のプロセスカートリッジに装着し、該プロセスカートリッジを該カラーレーザープリンタに装着して現像ローラ表面の削れによるキズの状態とフィルミング状態を評価した。評価結果を下記表7に示す。尚、評価には上記カラーレーザープリンタ用のシアンプロセスカートリッジ(商品名:HP 656X High Yield Cyan Original LaserJet Toner Cartridge、HP社製)を使用した。評価手順は以下の通りである。
温度30℃、相対湿度95%の高温高湿環境下に前記シアンプロセスカートリッジを16時間放置後、同環境下にて極めて多数枚印刷における評価を行うため、印字率0.2%の低印字画像を記録用紙に連続して出力した。但し、印字によりトナーが消費される為、5万枚出力する毎に、該プロセスカートリッジ内のトナー重量が100gになるようにトナーの補充を行った。20万枚の印刷が終了した後、プロセスカートリッジから、現像ローラ1を取り外し、ローラ表面をエアブローして表面にコートされているトナーを除去し、ローラの表面状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
評価基準
ランク「A」:表面に削れによるキズが確認できない。
ランク「B」:キズが確認できるが、最も大きいキズでも長さが1mm未満。
ランク「C」:1mm以上のキズの発生が確認できる。
またローラ表面をレーザー顕微鏡(商品名:VK-8700、キーエンス社製)で、20倍の対物レンズを用いて観察し、下記の基準でフィルミングの状態を評価した。
評価基準
ランク「A」:ローラの全表面積に対する固着トナーの面積が5%以下。
ランク「B」:ローラの全表面積に対する固着トナーの面積が5%超~15%以下。
ランク「C」:ローラの全表面積に対する固着トナーの面積が15%超。
実施例1と同様の方法により、表4に示す材料で、それぞれの樹脂層用塗料を調製し、表5に示す材料でそれぞれの含浸処理液を調製し、さらに表6に示す通りの組み合わせでそれぞれの現像ローラを作製した。得られた現像ローラについては、実施例1と同様の方法でそれぞれ評価を行った。評価結果を表7に示す。
樹脂層用塗料の粗さ形成粒子を混合する前の固形分濃度を20質量%とすることで、樹脂層の膜厚を5μmに変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法により、表4に示す材料で、樹脂層用塗料を調製し、表5に示す材料で含浸処理液を調製し、さらに表6に示す通りの組み合わせで現像ローラを作製した。得られた現像ローラについては、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表7に示す。
樹脂層用塗料の粗さ形成粒子を混合する前の固形分濃度を32質量%とすることで、樹脂層の膜厚を30μmに変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法により、表4に示す材料で、樹脂層用塗料を調製し、表5に示す材料で含浸処理液を調製し、さらに表6に示す通りの組み合わせで現像ローラを作製した。得られた現像ローラについては、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表7に示す。
実施例1と同様の方法により、表4に示す材料で、それぞれの樹脂層用塗料を調製し、表5に示す材料でそれぞれの含浸処理液を調製し、さらに表6に示す通りの組み合わせでそれぞれの現像ローラを作製した。得られた現像ローラについては、実施例1と同様の方法でそれぞれ評価を行った。評価結果を表7に示す。
特許文献1の実施例に記載される光重合性ポリマーAを含む合成液得た。具体的には、100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーンオイル(信越化学工業社製、「X-22-174DX」)1.66g(0.36mmol)と、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(ダイキン工業社製、「R-1620」)5.61g(13mmol)と、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(東京化成工業社製)1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル(純正化学工業社製)7.37g(73.64mmol)と、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)(富士フイルム和光純薬社製、「VE-73」)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)75gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度75℃にて7時間重合させて共重合体を生成させた。その後、この反応フラスコに2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、「カレンズMOI」)2.02g(13mmol)とビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(富士フイルム和光純薬社製)0.001gとを加えた後、内液の温度75℃にて10時間撹拌することにより、上記共重合体におけるメタクリル酸2-ヒドロキシエチルに基づく重合単位の水酸基と2-イソシアナトエチルメタクリレートのイソシアネート基とを反応させ、光重合性ポリマーAを含む溶液を得た。これを、含浸処理剤の材料として用いた以外は、実施例1と同様の方法により、表4に示す材料で、樹脂層用塗料を調製し、表5に示す材料で含浸処理液を調製し、さらに表6に示す通りの組み合わせで現像ローラを作製した。得られた現像ローラについては、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表7に示す。
アクリルモノマーの含浸と硬化処理を行わない以外は、実施例1と同様の方法により、表4に示す材料で、樹脂層用塗料を調製し、現像ローラを作製した。得られた現像ローラについては、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表7に示す。
特開2017-049282号公報の実施例に記載される表面改質剤Aを樹脂層用塗料の材料として用いて、表4に示す材料で、樹脂層用塗料を調製し、表6に示す通りの組み合わせで現像ローラを作製した。得られた現像ローラについては、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果を表7に示す。
※表中に記載される材料はそれぞれ以下のものである。
・「PTGL1000」:商品名;保土谷化学工業社製 ポリオール。
・「PTGL3500」:商品名;保土谷化学工業社製 ポリオール。
・「MR-400」(「ミリオネートMR-400」;商品名;東ソー社製 イソシアネート化合物(ポリメリックMDI)。
・「ME-8115LP」(「レザミンME-8115LP」);商品名;大日精化工業社製 熱可塑性ウレタン樹脂。
・「SUNBLACK X15」(商品名;旭カーボン社製 カーボンブラック(揮発分:2.1%)。
・「MSP-013」:商品名;テイカ社製 疎水処理シリカ。
・「50HB-100」(ニューポール 50HB-100):商品名;三洋化成工業社製 モノオール(ポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)グリコールモノブチルエーテル、分子量Mn=510)。
・「TSF4445」:商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製 変性シリコーン化合物
・「メガファックF430」:商品名;DIC社製 変性フッ素化合物
・表面改質剤A:特開2017-049282号公報の実施例に記載の表面改質剤A
・UCN-5090:製品名 「ダイミックビーズUCN-5090」 大日精化工業社製 架橋ウレタン樹脂粒子 平均粒径9μm
・UCN-5070:製品名 「ダイミックビーズUCN-5070」 大日精化工業社製 架橋ウレタン樹脂粒子 平均粒径7μm
・UCN-5150:製品名 「ダイミックビーズUCN-5150」 大日精化工業社製 架橋ウレタン樹脂粒子 平均粒径15μm
・C-200:製品名 「アートパールC-200透明」 根上工業社製 架橋ウレタン樹脂粒子 平均粒径32μm
・C-1000:製品名 「アートパールC-1000透明」 根上工業社製 架橋ウレタン樹脂粒子 平均粒径3μm
・CE-300TH(「アートパールCE-300TH」):商品名;根上工業社製 架橋ウレタン樹脂粒子、平均粒径23μm。
※表中に記載される材料はそれぞれ以下のものである。
・EBECRYL145:ダイセル・オルネクス社製 2官能アクリルモノマー
・TMPTA:ダイセル・オルネクス社製 3官能アクリルモノマー
・EBECRYL11:ダイセル・オルネクス社製 2官能アクリルモノマー
・ペンタエリスリトール トリアクリレート:新中村化学工業社製 3官能アクリルモノマー
・NKエステル9G:新中村化学工業社製 2官能アクリルモノマー
・NKエステル14G:新中村化学工業社製 2官能アクリルモノマー
・光重合性ポリマーA溶液(20質量%溶液): 特許文献1の実施例に記載の光重合性アクリルポリマー
・IRGACURE184:BASF社製 光重合開始剤
実施例1~15の電子写真用部材は、いずれも、表面層の弾性率E1及びE2が本開示で規定する式(1)及び(2)を同時に満足している。その結果、高温環境における極めて多数枚の印刷による耐久評価においても、削れによるキズの発生とフィルミングが抑えられている。
比較例1、3では、弾性率E1は式(1)を満たすが、弾性率E2が式(2)を満たさず、フィルミングが悪化した。比較例5では表面層が全体的に硬くなりすぎたため、キズ及びフィルミングのいずれも悪化した。比較例2、4、7、8では弾性率E1が式(1)を満たないため、キズが悪化した。比較例6では、表面層のマトリックスがバインダーとして熱可塑性ウレタン樹脂を含み、架橋ウレタン樹脂ではないためIPN構造が形成できず、キズ及びフィルミングのいずれも悪化した。
2:軸芯体
3:中間層
21:像担持体
22:帯電部材
23:露光光
24:現像部材
25:トナー供給ローラ
26:現像ブレード
27:中間転写ベルト
28:1次転写部材
29:2次転写部材
30:クリーニング部材
31:定着装置
32:記録用紙の搬送ルート
41:第1領域
42:第2領域
43:第3領域
44:表面層
45:導電性の基体
Claims (12)
- 導電性の基体と、
該基体上の単層の表面層と、
を有する電子写真部材であって、
該表面層は、架橋ウレタン樹脂をバインダーとして含むマトリックスを有し、
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該表面層の外表面から深さ0.1μmまでの第1領域における該マトリックスの弾性率をE1とし、
該外表面から深さ1.0μmから1.1μmまでの第2領域における該マトリックスの弾性率をE2としたとき、下記式(1)及び(2):
E1≧200MPa (1);
10MPa≦E2≦100MPa (2)
を満たすことを特徴とする電子写真用部材。 - 前記表面層の厚み方向の断面において測定される、前記表面層の外表面から深さ0.5μmから0.6μmまでの第3領域における前記マトリックスの弾性率をE3としたとき、前記E1およびE3が、下記式(3):
(E1-E3)/E3>1 (3)
を満たす請求項1に記載の電子写真用部材。 - 前記表面層は、架橋アクリル樹脂を含み、該架橋アクリル樹脂が前記架橋ウレタン樹脂と相互侵入高分子網目構造を形成している請求項1又は2に記載の電子写真用部材。
- 前記架橋アクリル樹脂を形成するモノマーが、官能基としてアクリロイル基、またはメタクリロイル基を複数個有する多官能モノマーであって、一分子中に含まれる、アクリロイル基とメタクリロイル基の存在数の合計が2個あるいは3個である請求項3に記載の電子写真用部材。
- 前記第1領域からサンプリングされる、第1の試料から測定される該架橋アクリル樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度をA1(℃)とし、
該第1の試料が含む架橋ウレタン樹脂を分解して得られる第2の試料から測定される該架橋アクリル樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度をA2(℃)としたとき、下記式(4):
A1>A2 (4)
を満たす請求項3又は4に記載の電子写真用部材。 - 前記第1領域からサンプリングされる、第1の試料から測定される該架橋ウレタン樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度をT1(℃)とし、
前記第2領域からサンプリングされる、第3の試料から測定される該架橋ウレタン樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度をT2(℃)としたとき、T1およびT2が下記式(5):
T1>T2 (5)
を満たす請求項1~5のいずれか一項に記載の電子写真用部材。 - 前記T1およびT2が、下記式(6):
(T1-T2)>1.0 (6)
を満たす請求項6に記載の電子写真用部材。 - 前記表面層の厚み方向の断面において測定される、前記表面層の外表面から深さ0.5μmから0.6μmまでの第3領域からサンプリングされる、第4の試料から測定される該架橋ウレタン樹脂に由来する熱クロマトグラムのピークトップ温度をT3(℃)としたときに、T1、T2およびT3が下記式(7)および式(8):
T1>T3 (7);
|T1-T3|>|T3-T2| (8)
を満たす請求項6又は7に記載の電子写真用部材。 - 前記表面層が、さらに、変性シリコーン化合物、変性フッ素化合物、のいずれか一種または複数種を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
- 電子写真装置の本体に着脱可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジであって、請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真用部材を有していることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
- 前記電子写真用部材を現像部材として具備している請求項10に記載の電子写真プロセスカートリッジ。
- 静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された該像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像部材と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置とを有する画像形成装置において、該現像部材が請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真用部材であることを特徴とする電子写真画像形成装置。
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