JP2024003791A - エリスリトール資化能欠損変異トリコデルマ属菌、及びこれを用いた目的物質の製造方法 - Google Patents

エリスリトール資化能欠損変異トリコデルマ属菌、及びこれを用いた目的物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エリスリトール資化能欠損変異トリコデルマ属菌、及び当該変異トリコデルマ属菌を用いた目的物質の製造。【解決手段】エリスリトール資化能が低下又は消失した変異トリコデルマ属菌であって、下記(A)~(D)からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドの発現が低下又は消失しており:(A)配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(B)配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(C)配列番号6のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;及び、(D)配列番号8のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、かつ、目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に連結されたエリスリトール誘導性プロモーターを導入されている、変異トリコデルマ属菌。【選択図】なし

Description

本発明は、エリスリトール資化能欠損変異トリコデルマ属菌、及びこれを用いた目的物質の製造方法に関する。
トリコデルマ属菌は、セルラーゼ、キシラナーゼなどの酵素を多量に生産することができ、セルロース分解酵素生産用微生物として以前より注目されてきた(非特許文献1)。例えば、トリコデルマ・リーセイは、タンパク質生産能力が高く、ヒトや他の微生物由来の異種タンパク質の生産への利用が期待される(非特許文献2を参照)。
微生物を用いて目的タンパク質を工業生産する際には、グルコースやセルロースなどの炭素源を多量に使用する。一方、高濃度の炭素源存在条件下では菌は浸透圧ストレスを受け、その結果タンパク質生産性を低下させる(非特許文献3)。浸透圧ストレスによる目的物質生産性の低下を防ぐために、培養中における菌の浸透圧ストレスを低減させることが望まれる。酵母及び糸状菌アスペルギルス・ニデュランスでは、浸透圧ストレスを受けると細胞内でグリセロールやエリスリトールなどの糖アルコールを生成して菌細胞の浸透圧耐性を高め、浸透圧ストレスを回避することが報告されている(非特許文献4、5)。
トリコデルマ・リーセイを用いてセルロース系原料からエリスリトールを生産する検討が従来行われている(非特許文献6)。一方で、トリコデルマ・リーセイがエリスリトールを資化し、かつその資化速度はグルコースと同等以上であることが報告されている(非特許文献7)。トリコデルマ属菌のエリスリトール資化経路は未解明であるが、本発明者らは、トリコデルマ属菌で働くエリスリトール誘導性プロモーターを発見した(特許文献1)。トリコデルマ属菌では、生産されたエリスリトールは再度資化され、細胞内にはエリスリトールは長時間保持されないと考えられる。実際、先行文献中においてもトリコデルマ・リーセイは数mg/L程度のエリスリトール生産しか達成できていない(非特許文献6)。特許文献2には、エリスリトール合成のための改変微生物において、トリコデルマ・リーセイのエリスルロースキナーゼ(配列番号19)、エリスリトールイソメラーゼ1及び2(配列番号23及び25)などをコードする遺伝子を不活性化させることが好ましいことが記載されている。
特願2021-178778 欧州特許出願公開第3929299号
化学と生物, 2012, 50(8):592-599, 2012 Appl Biochem Biotechnol, 2011, 165(5-6):1169-1177 Fungal Biol, 2010, 114(10):855-862 日本醸造協会誌, 2010, 105(10):618-627 J Bacteriol, 1986, 168(3):1358-1365 AMB Express, 2014, 4:34 Appl Environ Microbiol, 2006, 72(3):2126-2133
非特許文献4、5に記載される酵母及びアスペルギルスのように、トリコデルマ属菌においても細胞内にエリスリトールを効率的に蓄積させることができれば、培地中の炭素源に起因する菌細胞への浸透圧ストレスを低減でき、浸透圧ストレスによる目的物質の生産性低下を改善できると期待される。さらに、本発明者らは以前に、トリコデルマ属菌で働くエリスリトール誘導性プロモーターを発見し、また当該プロモーターが、トリコデルマ属菌のセルラーゼ発現プロセスを促進することなく目的物質の遺伝子の発現を誘導できるので、目的物質をより高純度で生産することを可能にすることを見出した(特許文献1)。当該エリスリトール誘導性プロモーターを用いた目的物質の生産においても、目的物質の発現を効率的に誘導するために、宿主トリコデルマ属菌にエリスリトールを蓄積させることが望ましい。
本発明は、エリスリトール資化能欠損変異トリコデルマ属菌、及び当該変異トリコデルマ属菌を用いた目的物質の製造方法を提供する。
一態様において、本発明は、エリスリトール資化能が低下又は消失した変異トリコデルマ属菌であって、下記(A)~(D)からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドの発現が低下又は消失しており:
(A)配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(C)配列番号6のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;及び
(D)配列番号8のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、
かつ、目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に連結されたエリスリトール誘導性プロモーターを導入されている、
変異トリコデルマ属菌、
を提供する。
別の一態様において、本発明は、前記変異トリコデルマ属菌を用いた目的物質の製造方法を提供する。
本発明により提供されるエリスリトール資化能欠損変異トリコデルマ属菌は、培養培地中の炭素源による浸透圧ストレスに対する耐性が向上しており、さらに、細胞内にエリスリトールをより高濃度で蓄積することができるので、エリスリトール誘導性プロモーターを用いた目的物質の製造に有利である。
エリスリトール、グルコース又はソルビトール添加後の遺伝子の相対発現量。(A)122079遺伝子、(B)68466遺伝子、(C)68606遺伝子、(D)68585遺伝子。0h:添加直後、2h:添加2時間後。 122079遺伝子、68466遺伝子、68606遺伝子、及び68585遺伝子欠損トリコデルマ属変異株の培養物に対するエリスリトール添加後における培養上清中エリスリトール濃度。 122079遺伝子、68466遺伝子、68606遺伝子、及び68585遺伝子欠損トリコデルマ属変異株における細胞内へのエリスリトール蓄積による122079遺伝子の発現量への影響。 122079遺伝子、68466遺伝子、68606遺伝子、及び68585遺伝子欠損トリコデルマ属変異株における細胞内へのエリスリトール蓄積による68466遺伝子の発現量への影響。 122079遺伝子、68466遺伝子、68606遺伝子、及び68585遺伝子欠損トリコデルマ属変異株における細胞内へのエリスリトール蓄積による68606遺伝子の発現量への影響。 122079遺伝子、68466遺伝子、68606遺伝子、及び68585遺伝子欠損トリコデルマ属変異株における細胞内へのエリスリトール蓄積による68585遺伝子の発現量への影響。
本明細書中で引用された全ての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,227:1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGENETY Ver.12のホモロジー解析プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.5%以上の同一性をいう。
本明細書における「1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列」とは、好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1個又は2個のアミノ酸残基が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列をいう。本明細書において、アミノ酸残基の「付加」には、配列の一末端及び両末端へのアミノ酸残基の付加が含まれる。本明細書における「1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列」とは、好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列をいう。本明細書において、ヌクレオチドの「付加」には、配列の一末端及び両末端へのヌクレオチドの付加が含まれる。
本明細書において、遺伝子に関する「上流」及び「下流」とは、該遺伝子の転写方向の上流及び下流をいう。例えば、遺伝子の「上流配列」「下流配列」とは、それぞれDNAセンス鎖において該遺伝子の5'側及び3'側に位置する配列をいう。例えば、「遺伝子の上流に連結されたプロモーター」とは、DNAセンス鎖において遺伝子の5'側にプロモーターが存在することを意味する。
本明細書において、遺伝子と、プロモーター等の制御領域との「作動可能な連結」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域の制御の下で発現し得るように連結されていることをいう。遺伝子と制御領域との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
本明細書において、細胞の機能や性状、形質に対して使用する用語「本来」とは、当該機能や性状、形質が当該細胞に元から存在していることを表すために使用される。対照的に、用語「外来」とは、当該細胞に元から存在するのではなく、外部から導入された機能や性状、形質を表すために使用される。例えば、「外来」ヌクレオチド又はDNAとは、細胞に外部から導入されたヌクレオチド又はDNAである。外来ヌクレオチド又はDNAは、それが導入された細胞と同種の生物由来であっても、異種の生物由来(すなわち異種ヌクレオチド又は異種DNA)であってもよい。
本明細書において、「エリスリトール資化関連遺伝子」とは、その発現が低下又は消失することで、トリコデルマ属菌細胞のエリスリトール資化能が低下又は消失する遺伝子として定義される。トリコデルマ属菌のエリスリトール資化能は、例えば以下の方法により測定することができる:エリスリトールを単一炭素源として含む培地でトリコデルマ属菌を培養し、該菌の生育速度を測定すること;エリスリトールを含む培地でトリコデルマ属菌を培養しながら、適時培地中のエリスリトール濃度を測定して、該菌へのエリスリトールの取り込み速度を求めること、エリスリトールを含む培地でトリコデルマ属菌を所定の時間培養した後、菌体内のエリスリトール量を測定して、菌に取り込まれたエリスリトールが別の物質に代謝されずにエリスリトールとして蓄積する量を求めること、など。
本明細書において、「プロモーター活性」とは、DNA(遺伝子)のmRNAへの転写を促進する活性を意味する。プロモーター活性は、適当なレポーター遺伝子を用いることにより確認することができる。例えば、プロモーターの下流に検出可能なタンパク質をコードするDNA、すなわち、レポーター遺伝子を連結し、そのレポーター遺伝子の遺伝子産物の生産量を測定することにより、プロモーター活性を確認可能である。レポーター遺伝子の例としては、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)遺伝子、β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β-ラクタマーゼ遺伝子、EtbC(2,3-dihydroxy-ethylbenzene 1,2-dioxygenase)をコードする遺伝子等の発色基質に対して作用する酵素の遺伝子や、GFP(Green Fluorescent Protein)をコードする遺伝子等の蛍光タンパク質の遺伝子、などが挙げられる。あるいは、プロモーター活性は、レポーター遺伝子から転写されたmRNAの発現量をシークエンシング、定量RT-PCR等で測定することによっても確認することができる。
本明細書において、「エリスリトール誘導性プロモーター」とは、エリスリトール存在下でプロモーター活性を有するプロモーターをいい、好ましくは、エリスリトール存在下で、エリスリトール非存在下、又はセルロース、グルコースもしくはソルビトール存在下の場合の40倍以上、好ましくは50倍以上、より好ましくは100倍以上、標的遺伝子(すなわち該プロモーターが作動可能に連結した遺伝子)のmRNAの発現を誘導することができるプロモーターをいう。
本発明者らは、トリコデルマ属菌から、エリスリトール非添加条件下ではほとんど発現せず、エリスリトール添加条件下において著しく発現が向上する遺伝子を特定した。これらの遺伝子を欠失させた菌株では、細胞内にエリスリトールが蓄積した。これらの遺伝子は、トリコデルマ属菌のエリスリトール資化に関わる遺伝子であると推定される。トリコデルマ属菌を用いた目的物質の生産において、上記のエリスリトール資化関連遺伝子を欠失させた変異トリコデルマ属菌をエリスリトール含有培地で培養して、細胞内にエリスリトールを蓄積させれば、培地中の炭素源に起因する浸透圧ストレスを低減することができ、浸透圧ストレスによるトリコデルマ属菌における目的物質の生産性低下を改善することができる。
また、トリコデルマ属菌などの糸状菌を用いた目的物質の生産においては、細胞本来のセルラーゼ生産プロセスを促進することなく、目的物質を生産することが望まれる。本発明者らは以前に、トリコデルマ属菌で働くエリスリトール誘導性プロモーターを発見した(特許文献1)。エリスリトールは、トリコデルマ属菌細胞が本来有するセルロース系バイオマス分解酵素の発現を誘導しない(特許文献1の実施例を参照)。上記のエリスリトール資化関連遺伝子を欠失させた変異トリコデルマ属菌に、該エリスリトール誘導性プロモーターと作動可能に連結させた目的遺伝子を導入し、これをエリスリトール含有培地で培養すれば、細胞内に蓄積したエリスリトールが、細胞本来のセルラーゼ発現誘導プロセスを促進することなく、該エリスリトール誘導性プロモーターを介して目的遺伝子の発現を選択的に誘導することを可能にする。したがって、本発明は、トリコデルマ属菌において目的物質をより高純度かつ高収量で生産することを可能にする。
本発明は、エリスリトール資化能欠損変異トリコデルマ属菌を提供する。本発明のエリスリトール資化能欠損変異トリコデルマ属菌(以下、単に「本発明の変異トリコデルマ属菌」とも称する)は、エリスリトール資化能が低下又は消失するように改変されたトリコデルマ属菌である。本発明の変異トリコデルマ属菌は、エリスリトール資化能(トリコデルマ属菌を培養する培地にエリスリトールを添加した2時間後の、該培地中におけるHPLCで測定したエリスリトール残存量に基づいて算出されるエリスリトール減少率)が、親トリコデルマ属菌(該エリスリトール資化能が欠損する改変をされる前のトリコデルマ属菌)と比べて、好ましくは50%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは90%以下に低下している。
好ましい一実施形態において、本発明の変異トリコデルマ属菌は、エリスリトール資化に関連するポリペプチドの発現が低下又は消失するように改変された変異トリコデルマ属菌である。別の好ましい一実施形態において、本発明の変異トリコデルマ属菌は、エリスリトール資化に関連する遺伝子の発現が低下又は消失するように改変された変異トリコデルマ属菌である。後述の実施例1に示すとおり、トリコデルマ属菌におけるエリスリトール資化関連遺伝子として以下の遺伝子が特定された。また、以下の遺伝子にコードされるポリペプチドは、トリコデルマ属菌におけるエリスリトール資化に関連するポリペプチドである。なお本明細書におけるトリコデルマ属菌の遺伝子の名称は、Ensembl Fungiデータベース(fungi.ensembl.org/Trichoderma_reesei/Info/Index/)に従って特定されている。
GENE ID SEQ ID:No 推定機能
GENE PEPTIDE
TRIREDRAFT_122079 1 2 predicted_protein
TRIREDRAFT_68466 3 4 glycerone_kinase
TRIREDRAFT_68606 5 6 triose-phosphate_isomerase
TRIREDRAFT_68585 7 8 galactose-6-phosphate_isomerase
したがって、本発明の変異トリコデルマ属菌において発現が低下又は消失しているエリスリトール資化に関連するポリペプチドの例としては、下記(A)~(D)が挙げられる:
(A)配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(C)配列番号6のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;及び
(D)配列番号8のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
配列番号2、4、6又は8のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドの例としては、それぞれ、配列番号2、4、6又は8のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。
また本発明の変異トリコデルマ属菌において発現が低下又は消失しているエリスリトール資化関連遺伝子の例としては、下記(a)~(d)が挙げられる:
(a)配列番号1のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;
(b)配列番号3のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;
(c)配列番号5のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;及び、
(d)配列番号7のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子。
配列番号1、3、5又は7のヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子の例としては、それぞれ、配列番号1、3、5又は7のヌクレオチド配列に対して1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列からなる遺伝子が挙げられる。
一実施形態において、本発明の変異トリコデルマ属菌においては、前記(A)~(D)からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドの発現が低下又は消失していればよい。別の一実施形態において、本発明の変異トリコデルマ属菌においては、前記(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が低下又は消失していればよい。一実施形態において、本発明の変異トリコデルマ属菌は、前記(a)~(d)のいずれかの遺伝子の発現量が、親トリコデルマ属菌と比べて、好ましくは50%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは90%以下に低下している。遺伝子の発現量は、リアルタイムPCRによって定量することができる。
本発明の変異トリコデルマ属菌の親トリコデルマ属菌の例としては、トリコデルマ・リーセイ、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・ハリジアウム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)などが挙げられ、好ましくはトリコデルマ・リーセイ及びその変異株が挙げられる。例えば、トリコデルマ・リーセイQM9414株及びその変異株、好ましくは、トリコデルマ・リーセイPC-3-7株(ATCC66589)、トリコデルマ・リーセイPCD-10株(FERM P-8172)、トリコデルマ・リーセイE1AB1株(JN13株という場合もある)又はそれらの変異株などを、親トリコデルマ属菌として好ましく用いることができる。E1AB1株は、トリコデルマ・リーセイPC-3-7株に対し、egl1プロモーターを用いてアスペルギルス・アキュリータス(Aspergillus aculeatus)由来のβ-グルコシダーゼ(BGL)を発現させた株である(Enzyme Microb Technol,2016,82:89-95、及びWO2013/115305の実施例1~3を参照)。
トリコデルマ属菌におけるエリスリトール資化に関連する遺伝子又はポリペプチドの発現を低下又は消失させるための方法としては、例えば、該トリコデルマ属菌細胞中のエリスリトール資化関連遺伝子を欠失又は不活性化させること、該遺伝子から転写されたmRNAを不活性化すること、又は該遺伝子のmRNAからタンパク質への翻訳を阻害すること、などが挙げられる。トリコデルマ属菌細胞中の標的遺伝子を欠失又は不活性化させる方法としては、該標的遺伝子のヌクレオチド配列の一部もしくは全部をゲノム中から除去するか又は他のヌクレオチド配列と置き換える方法、該標的遺伝子の配列中に他のポリヌクレオチド断片を挿入する方法、該標的遺伝子の転写開始領域又は翻訳開始領域に変異を与える方法、などが挙げられる。
好適には、該標的遺伝子のヌクレオチド配列の一部もしくは全部を欠失させる。より具体的な例としては、トリコデルマ属菌細胞のゲノム上のエリスリトール資化関連遺伝子、又はその転写開始領域もしくは翻訳開始領域を部位特異的に欠失又は不活性化させる方法、及び、トリコデルマ属菌細胞中の遺伝子にランダムな欠失又は不活性化変異を与えた後、所望の変異を有する細胞を選択する方法が挙げられる。ゲノム上の標的領域への突然変異導入や、ヌクレオチド配列の除去、置換もしくは挿入のための具体的な手法としては、部位特異的変異導入、相同組換え法、SOE(splicing by overlap extension)-PCR法(Gene,1989,77:61-68)などを挙げることができる。細胞中の遺伝子をランダムに欠失又は不活性化させる方法としては、不活性化した遺伝子をランダムにクローニングしたDNA断片を細胞に導入し、該細胞のゲノム上の遺伝子との間に相同組換えを起こさせる方法、細胞に紫外線、γ線等を照射して突然変異を誘発する方法などが挙げられる。必要に応じて、突然変異導入したトリコデルマ属菌について、エリスリトール資化能の評価、又は遺伝子解析を行い、所望の変異を有するものを選択する。エリスリトール資化能の評価の手順は、前述したとおりである。
細胞中の標的遺伝子のmRNAを不活性化させる方法としては、siRNAを用いた標的特異的なmRNA阻害が挙げられる。siRNAの基本的な手順は当業者によく知られており(例えば、特表2007-512808号公報参照)、またsiRNAのための試薬又はキットが市販されている。当業者は、公知の文献や市販の製品のマニュアルに基づいて、所望の標的特異的なsiRNAを調製し、標的mRNAを阻害することができる。
本発明の変異トリコデルマ属菌は、目的物質の製造に利用することができる。典型的には、本発明の変異トリコデルマ属菌を宿主として、これに目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子を導入し、発現させることで、目的物質を製造することができる。導入した遺伝子の発現を促進するために、該遺伝子を、トリコデルマ属菌で働くプロモーターと作動可能に連結させることが好ましい。
好ましい実施形態において、本発明の変異トリコデルマ属菌は、エリスリトール資化に関連するポリペプチドの発現が低下又は消失しており、かつ、目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に作動可能に連結されたエリスリトール誘導性プロモーターを導入された、組換えトリコデルマ属菌である。該エリスリトール誘導性プロモーターとしては、以下の(i)~(ii)から選択されるDNAであって、エリスリトール存在下でプロモーター活性を有するDNAが挙げられる。
(i)配列番号13~16のいずれかのヌクレオチド配列からなるDNA;及び、
(ii)配列番号13~16のいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるDNA;
配列番号13~16のヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるDNAの例としては、それぞれ、配列番号13~16のヌクレオチド配列に対して1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列からなるDNAが挙げられる。
配列番号13~16のプロモーターは、本発明者らにより見出された、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)由来のプロモーターであり、それぞれ、前述した配列番号1~4のエリスリトール資化関連遺伝子のプロモーターである(特許文献1)。配列番号13~16のプロモーターは、トリコデルマ属菌において初めて見出されたエリスリトール誘導性プロモーターである。
前記エリスリトール誘導性プロモーターの取得方法としては、特に制限されず、通常の化学合成法又は遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号13~16のヌクレオチド配列に基づいて、前記プロモーターDNAを人工合成することができる。DNAの人工合成には、例えば、GenScript社等から提供される市販のDNA合成サービスを利用することができる。あるいは、前記プロモーターは、トリコデルマ・リーセイ等のトリコデルマ属菌からクローニングすることができる。
前記エリスリトール誘導性プロモーターはまた、配列番号13~16のヌクレオチド配列のDNAに突然変異を導入することによって製造することができる。突然変異導入の手法としては、例えば、紫外線照射及び部位特異的変異導入法が挙げられる。突然変異導入したDNAからエリスリトール存在下でプロモーター活性を有するものを選択することによって、エリスリトール誘導性プロモーターを取得することができる。例えば、変異導入したDNAの下流にレポーター遺伝子を作動可能に連結し、エリスリトール存在下で該レポーター遺伝子の発現量解析を行うことにより、エリスリトール誘導性プロモーターのDNAを選択することができる。
前述の手法を用いることによって、配列番号13~16のヌクレオチド配列、又はそれらと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるエリスリトール誘導性プロモーター、又は、配列番号13~16の配列に対して1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列からなるエリスリトール誘導性プロモーターを取得することができる。
前記エリスリトール誘導性プロモーターに、目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子(以下、目的遺伝子という)を作動可能に連結する。例えば、目的遺伝子と、その上流に連結されたエリスリトール誘導性プロモーターとを含むDNA断片を構築することができる。該DNA断片には、前記プロモーター及び目的遺伝子の他に、該プロモーターの転写活性を向上させるようなシスエレメント、又はターミネーターが含まれていてもよい。さらに、該DNA断片は、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性マーカー遺伝子などの選択マーカー遺伝子を含んでいてもよい。好ましくは、該目的遺伝子と該エリスリトール誘導性プロモーターとを含むDNA断片は、該目的遺伝子を発現するためのエリスリトール誘導性遺伝子発現カセットである。該DNA断片は、両末端に制限酵素認識配列を有するように構築することができる。該制限酵素認識配列を使用して、該DNA断片をベクターに導入することができる。例えば、ベクターを制限酵素で切断し、そこに、端部に制限酵素切断配列を有する該DNA断片を添加することによって、該目的遺伝子とエリスリトール誘導性プロモーターをベクターに導入することができる(制限酵素法)。
前記目的遺伝子とエリスリトール誘導性プロモーターを含むDNA断片は、宿主細胞のゲノムに直接導入してもよい。例えば、該DNA断片を、宿主細胞のゲノムにおける目的遺伝子の上流に導入してもよい。また例えば、前述した目的遺伝子とエリスリトール誘導性プロモーターとを含む遺伝子発現カセットを、宿主細胞のゲノムに導入してもよい。
あるいは、前記エリスリトール誘導性プロモーターを、目的遺伝子の発現を可能とする発現ベクターに組み込むことで、当該目的遺伝子の発現を転写レベルで向上させることができる発現ベクターが得られる。該発現ベクターにおいては、該エリスリトール誘導性プロモーターは、該目的遺伝子の上流に作動可能に連結され得る。該発現ベクターは、宿主細胞のゲノムに導入するためのベクターであっても、ゲノム外に保持されるベクターであってもよい。宿主細胞内で複製可能なものが好ましい。
ベクターの例としては、pBluescript II SK(-)(Stratagene)、pUC18/19、pUC118/119等のpUC系ベクター(タカラバイオ)、pET系ベクター(タカラバイオ)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア)、pCold系ベクター(タカラバイオ)、pHY300PLK(タカラバイオ)、pUB110(Plasmid,1986,15(2):93-103)、pBR322(タカラバイオ)、pRS403(Stratagene)、pMW218/219(ニッポンジーン)、pRI909/910等のpRI系ベクター(タカラバイオ)、pBI系ベクター(クロンテック)、IN3系ベクター(インプランタイノベーションズ)、pPTR1/2(タカラバイオ)、pDJB2(Gene,1985,36:321-331)、pAB4-1(Mol Gen Genet,1987,206:71-75)、pLeu4(Gene,1989,84:335-343)、pPyr225(Mol Genet Genomics,2002,268:397-406)、pFG1(Curr Genet,1990,18:447-451)、酵母発現ベクターpNAN8142(Biosci Biotechnol Biochem,1996,60:383-389)、pMA91(Biosci Biotechnol Biochem,1998,62:1615-1618)、などが挙げられる。
本発明の変異トリコデルマ属菌に導入される目的遺伝子は、本発明の変異トリコデルマ属菌を用いて製造したい目的物質、又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子であればよい。該目的遺伝子は、異種発現産物をコードする異種遺伝子であっても、外部から導入された同種由来の遺伝子であっても、宿主である変異トリコデルマ属菌が本来有する発現産物をコードする遺伝子であっても、その他の任意のタンパク質、ペプチド、核酸などをコードする遺伝子であってもよい。目的物質の例としては、酵素、ホルモン、サイトカイン、その他生理活性ペプチド、トランスポーター、ノンコーディングRNAなどが挙げられる。酵素の例としては、酸化還元酵素(Oxidoreductase)、転移酵素(Transferase)、加水分解酵素(Hydrolase)、脱離酵素(Lyase)、異性化酵素(Isomerase)、合成酵素(Ligase又はSynthetase)、などが挙げられ、好ましい例としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等のセルロース系バイオマス分解酵素、エキソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、アラビナーゼ、ガラクターゼ、アミラーゼなどが挙げられ、より好ましくはセルラーゼ又はヘミセルラーゼである。該ヘミセルラーゼの例としては、キシラナーゼ、β-キシロシダーゼ、α-アラビノフラノシダーゼなどが挙げられ、このうちキシラナーゼが好ましい。
前記目的遺伝子とエリスリトール誘導性プロモーターを含む発現ベクター又はDNA断片を、一般的な形質転換法、例えばエレクトロポレーション法、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、パーティクル・ガン法、アグロバクテリウム法等を用いて宿主である本発明の変異トリコデルマ属菌に導入することによって、本発明の組換えトリコデルマ属菌を得ることができる。
得られた組換えトリコデルマ属菌をエリスリトール存在下で培養して、前記エリスリトール誘導性プロモーターの制御下で目的遺伝子を発現させ、目的物質を生産させる。目的物質の例は前述したとおりである。
前記組換えトリコデルマ属菌の培養条件は、該組換えトリコデルマ属菌の細胞の増殖及び目的物質の生産が可能な条件であれば特に限定されない。該培養に使用される培地は、炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンなど、トリコデルマ属菌の増殖及び目的物質の生産に通常必要な成分を含む限り、合成培地、天然培地のいずれでもよい。該培養物中のエリスリトールの濃度は、培地中の初期濃度として、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.1~10%(w/v)がより好ましい。
培地に添加する炭素源としては、トリコデルマ属菌細胞本来のセルラーゼ発現誘導プロセスの刺激を避けるため、セルラーゼ非誘導性炭素源を用いることが望ましい。例えば、グルコース、フラクトース等のセルラーゼ非誘導性の糖質、ソルビトールのような糖アルコール、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸のような有機酸類などを炭素源として使用することができる。細胞のカタボライト抑制をより低減しつつ、目的物質を生産するために、グルコース等のセルラーゼ非誘導性炭素源を流加しながら細胞を培養してもよい。このとき、該セルラーゼ非誘導性炭素源、例えばグルコースを、窒素源であるアンモニア水、又はアンモニウム塩を含有する水溶液に溶解させ、該溶解液を該培地に流加して培養することが、培養効率や培養中の泡立ちを抑制できる点から好ましい。
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アミン等の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物のような天然窒素源などが挙げられる。無機塩としては、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カリウムなどが挙げられる。ビタミンとしては、ビオチンやチアミンなどが挙げられる。さらに必要に応じて、前記組換えトリコデルマ属菌が生育に要求する物質を添加することができる。
培養は、好ましくは振とう培養や通気攪拌培養のような好気的条件で行う。培養温度は好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上であり、且つ好ましくは50℃以下、より好ましくは42℃以下、より好ましくは35℃以下である。また、好ましくは10~50℃、より好ましくは20~42℃、より好ましくは25~35℃である。培養時のpHは3~9、好ましくは4~5である。培養時間は、10時間~10日間、好ましくは2~7日間である。
培養後、培養物から目的物質を回収することにより、目的物質を取得することができる。必要に応じて、回収した目的物質をさらに精製してもよい。培養物から目的物質を回収又は精製する方法は、特に限定されず、公知の回収又は精製方法に従って行えばよい。例えば、培養物を回収し、必要に応じて超音波や加圧等による菌体破砕処理を行い、次いで傾斜法、ろ過、遠心分離などにより細胞成分を除去した後、残った目的物質を含む画分を回収すればよい。あるいは、目的物質をコードする遺伝子に、トリコデルマ属菌で機能する分泌シグナルペプチドを作動可能に連結させることによって、該目的物質を細胞外に分泌生産させることができる。
必要に応じて回収した画分を透析、塩析、イオン交換法、蒸留、溶剤抽出等の方法、又はこれらの組み合わせにかけることで、目的物質を精製することができる。本発明による目的物質の製造方法において、組換えトリコデルマ属菌の培養及び目的物質の回収は、回分式、半回分式及び連続式のいずれの方法で行ってもよい。
本発明の例示的実施形態として、以下の物質、製造方法、用途、方法等をさらに本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕エリスリトール資化能が低下又は消失した変異トリコデルマ属菌であって、下記(A)~(D)からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドの発現が低下又は消失している、変異トリコデルマ属菌:
(A)配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(C)配列番号6のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;及び
(D)配列番号8のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
〔2〕好ましくは、下記(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が低下又は消失している、〔1〕記載の変異トリコデルマ属菌:
(a)配列番号1のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;
(b)配列番号3のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;
(c)配列番号5のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;及び
(d)配列番号7のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子。
〔3〕好ましくは、エリスリトール資化能が親トリコデルマ属菌と比べて50%以下に低下している、〔1〕又は〔2〕記載の変異トリコデルマ属菌。
〔4〕好ましくは、前記エリスリトール資化能が、トリコデルマ属菌を培養する培地にエリスリトールを添加した2時間後の該培地中におけるHPLCで測定したエリスリトール残存量に基づいて算出される、エリスリトール減少率として規定される、〔3〕記載の変異トリコデルマ属菌。
〔5〕好ましくは、前記(a)~(d)のいずれかの遺伝子の発現量が親トリコデルマ属菌と比べて50%以下に低下している、〔2〕記載の変異トリコデルマ属菌。
〔6〕前記トリコデルマ属菌がトリコデルマ・リーセイ又はその変異株である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の変異トリコデルマ属菌。
〔7〕好ましくは、目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に連結されたエリスリトール誘導性プロモーターを導入されている、〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の変異トリコデルマ属菌。
〔8〕好ましくは、前記エリスリトール誘導性プロモーターが、下記(i)及び(ii)から選択されるDNAからなる、〔7〕記載の変異トリコデルマ属菌:
(i)配列番号13~16のいずれかのヌクレオチド配列からなるDNA;及び
(ii)配列番号13~16のいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるDNA。
〔9〕好ましくは、前記目的物質が、酵素、ホルモン、サイトカイン、生理活性ペプチド、トランスポーター、又はノンコーディングRNAである、〔7〕又は〔8〕記載の変異トリコデルマ属菌。
〔10〕前記酵素が、
好ましくは、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、脱離酵素、異性化酵素、又は合成酵素であり、
より好ましくは、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、エキソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、アラビナーゼ、ガラクターゼ、又はアミラーゼであり、
さらに好ましくは、セルラーゼ又はヘミセルラーゼであり、
かつ
該ヘミセルラーゼが、好ましくはキシラナーゼ、β-キシロシダーゼ、又はα-アラビノフラノシダーゼである、
〔9〕記載の変異トリコデルマ属菌。
〔11〕前記〔7〕~〔10〕のいずれか1項記載の変異トリコデルマ属菌を、エリスリトールを含有する培地で培養すること;及び
該培養で得られた培養物から目的物質を回収すること、
を含む、目的物質の製造方法。
〔12〕好ましくは、前記培地が初期濃度0.001~10%(w/v)のエリスリトールを含有する、〔11〕記載の方法。
〔13〕好ましくは、前記培地に含まれる炭素源がセルラーゼ非誘導性炭素源である、〔11〕又は〔12〕記載の方法。
〔14〕好ましくは、前記セルラーゼ非誘導性炭素源が、グルコース、フラクトース、糖アルコール、アルコール類、又は有機酸類である、〔13〕記載の方法。
〔15〕好ましくは、前記培養中に、アンモニア水又はアンモニウム塩を含有する水溶液にグルコースを溶解させた溶解液が前記培地に流加される、〔11〕又は〔12〕記載の方法。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 エリスリトール資化関連遺伝子の特定
(1)RNAseq解析による発現解析
トリコデルマ・リーセイ(T.reesei)PC-3-7株を胞子数1×105個/mLとなるように培地に植菌し、28℃、220rpmにて振とう培養した(プリス社製PRXYg-98R)。培地組成は以下の通りであった。3%セルロース、0.14%(NH42SO4、0.2% KH2PO4、0.03% CaCl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1% Bacto Peptone、0.05% Bacto Yeast extract、0.1% Tween80、0.1% Trace element 2、1.28%クエン酸水素二アンモニウム、50mM酒石酸バッファー(pH4.0)(%はいずれもw/v%)。Trace element 2は以下のとおり調製した:6mg H3BO3、26mg(NH46Mo724・4H2O、100mg FeCl3・6H2O、40mg CuSO4・5H2O、8mg MnCl2・4H2O、200mg ZnCl2を蒸留水にて100mLにメスアップした。上記条件で72時間培養した後、培地にエリスリトールを終濃度0.2w/v%となるように添加した。さらに8時間培養した後、菌を回収した。コントロールとして、エリスリトール非存在下で、上記条件で80時間培養した菌を用いた。
回収した菌から全RNAを抽出し(QIAGEN社RNeasy Plant Mini Kit使用)、抽出した全RNAをTruSeq RNA sample Prep v3キット(イルミナ)に供することで次世代シーケンサーライブラリ(cDNAライブラリ)を構築した。得られたcDNAライブラリをMiseq Reagent Kit(300cycle)(イルミナ)を用いたMiseqシステムによってシーケンシングした。得られたシーケンス情報を、CLC Genomics Workbenchを用いて、Ensembl Fungiデータベース(fungi.ensembl.org/Trichoderma_reesei/Info/Index/)から取得したT.reesei QM6aのCDS配列に対してマッピングした。各遺伝子について、マッピングされたリード数を遺伝子の長さと総リード数で補正した値であるRPKM(Reads Per Kilobase of exon per Million mapped reads)を求めた。得られたRPKMに基づいて各遺伝子の発現量を解析した。その結果、RPKM値がコントロールと比較してエリスリトール添加条件において50倍以上高発現しており、コントロール条件でほとんど発現していない遺伝子として、122079(TRIREDRAFT_122079)、68466(TRIREDRAFT_68466)、68606(TRIREDRAFT_68606)及び68585(TRIREDRAFT_68585)の4遺伝子が見出された(表1)。
Figure 2024003791000001
(2)リアルタイムPCRによる発現解析
(1)で見出された4遺伝子の発現誘導のエリスリトール特異性をリアルタイムPCRによって検証した。検証には、T.reesei PC-3-7株をegl1プロモーターでAaBGL1を高発現させるように改変して得られたT.reesei E1AB1株(Enzyme Microb Technol,2016,82:89-95)を用いた。E1AB1株を胞子数1×105個/mLとなるように植菌し、28℃、220rpmにて振とう培養した(プリス社製PRXYg-98R)。培地組成は以下の通りであった。1%グルコース、0.14%(NH42SO4、0.2% KH2PO4、0.03% CaCl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1% Bacto Peptone、0.05% Bacto Yeast extract、0.1% Tween80、0.1% Trace element 2、1.28%クエン酸水素二アンモニウム、50mM酒石酸バッファー(pH4.0)(%はいずれもw/v%)。Trace element 2の組成は前記(1)のとおりであった。上記条件で48時間培養した後、培地にエリスリトール、グルコース又はソルビトールを終濃度0.2w/v%となるように添加した。エリスリトール添加の直後(0h)及び2時間後(2h)に菌を回収した。コントロールには、培養48時間後に何も炭素源を添加せずに合計50時間培養した菌を用いた。
回収した菌から抽出したRNAを用いてcDNAを合成した(TaKaRa社PrimeScriptTM II 1st strand cDNA Synthesis Kit使用)。合成したcDNAを用いてリアルタイムPCR解析を行った。(アジレント・テクノロジー、Brilliant III Ultra-Fast SYBR Green QPCR Master Mixes使用)。リアルタイムPCRには表2のプライマーを使用した。相対定量法(ΔΔCt法)により各遺伝子の発現量を求めた。ノーマライズ遺伝子には解糖系酵素の1つであるホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子pgk1(TRIREDRAFT_21406)を用いた。
Figure 2024003791000002
pgk1遺伝子の発現量に対する各遺伝子の相対的発現量を図1(A)~(D)に示した。エリスリトールの添加直後(0h)と比較して、添加2時間後(2h)では4遺伝子の発現量が大幅に上昇した。一方、コントロール、及びグルコース又はソルビトール添加条件では、4遺伝子の発現量の上昇は認められなかった。このことから、122079、68466、68606及び68585の4遺伝子がエリスリトール特異的に発現誘導されることが示された。これら4遺伝子はエリスリトール資化関連遺伝子であると推定された。
実施例2 エリスリトール資化関連遺伝子欠損用プラスミドの構築
トリコデルマ・リーセイ(T.reesei)のゲノムDNAを鋳型としたPCRにて、以下の4つのDNA断片を調製した。断片1:122079遺伝子を含むDNA(配列番号9)、断片2:68466遺伝子を含むDNA(配列番号10)、断片3:68606遺伝子を含むDNA(配列番号11)、及び断片4:68585遺伝子を含むDNA(配列番号12)。これらのDNA断片をpUC118(タカラバイオ)のHincII制限酵素切断点に挿入し、プラスミドpUC-122079、pUC-68466、pUC-68606及びpUC-68585を構築した。構築した各プラスミドを鋳型として、以下の4つのDNA断片を調製した。断片5:pUC-122079を鋳型として増幅した約5.2kbpの断片、断片6:pUC-68466を鋳型として増幅した約5.0kbpの断片、断片7:pUC-68606を鋳型として増幅した約4.8kbpの断片、断片8:pUC-68585を鋳型として増幅した約4.8kbpの断片。形質転換用選択マーカーとして、T.reeseiのゲノムDNAを鋳型として断片9:pyr4遺伝子(TRIREDRAFT_74020)の上流約1.0kbpからORF及び下流約0.3kbpまでの領域(約2.7kbp)を調製した。さらに、選択マーカーの脱落のために断片9の上流及び下流にそれぞれ約0.7kbpの断片10と約1.0kbpの断片11を結合させることで、形質転換用選択マーカーカセットを調製した。調製した形質転換用選択マーカーカセットと断片5~8をそれぞれ結合させることで、遺伝子欠損用プラスミドpUC-Δ122079-pyr4、pUC-Δ68466-pyr4、pUC-Δ68606-pyr4 及びpUC-Δ68585-pyr4を構築した。DNA断片の結合はIn-Fusion HD Cloning kit(タカラバイオ)のプロトコルに従って実施し、使用したプライマーを表3に示す。
Figure 2024003791000003
構築したプラスミドをコンピテントセルE.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ)へと形質転換し、アンピシリン耐性株として得られた形質転換体の中から、コロニーPCRにより目的の遺伝子が挿入されたプラスミドを保持する菌株を選別した。選別した形質転換体はアンピシリン添加LB培地を用いて培養後(37℃、1日間)、得られた菌からプラスミドをNucleoSpin Plasmid EasyPure(マッハライ・ナーゲル)を用いて回収、精製した。
実施例3 エリスリトール資化関連遺伝子欠損変異トリコデルマ属株の作製
T.reesei E1AB1(Enzyme and Microbial Technology,2016,82:89-95)のΔpyr4株に対して、実施例2で構築したプラスミドの形質転換を行った。導入はプロトプラストPEG法(Biotechnol Bioeng.2012,109(1):92-99)で行った。形質転換体は、pyr4遺伝子を選択マーカーとして、選択培地(2% グルコース、1.1M ソルビトール、2% アガー、0.5%(NH42SO4、0.2% KH2PO4(pH5.5)、0.06% CaCl2・2H2O、0.06% CsCl2、0.06% MgSO4・7H2O、0.1% Trace element 1(%はいずれもw/v%)にて選抜した。Trace element 1は以下のとおり調製した:0.5g FeSO4・7H2O、0.2g CoCl2、0.16g MnSO4・H2O、0.14g ZnSO4・7H2Oを蒸留水にて100mLにメスアップした。選抜した形質転換体を植え継ぎにより安定化した後、コロニーPCRにより目的の遺伝子が安定に保持された菌株をさらに選別した。選別した変異株を、それぞれ122079欠損株(Δ122079)、68466欠損株(Δ68466)、68606欠損株(Δ68606)及び68585欠損株(Δ68585)とした。
実施例4 変異トリコデルマ属株のエリスリトール資化性の検証
(1)変異株の培養
実施例3で作製した変異トリコデルマ属株を培養し、エリスリトール資化性を検証した。前培養として、500mLのフラスコに培地を50mL仕込み、実施例2で作製した菌株の胞子を1×105個/mLとなるよう植菌し、28℃、220rpmにて振とう培養した(プリス社製PRXYg-98R)。培地組成は以下の通りである。1% グルコース、0.14%(NH42SO4、0.2% KH2PO4、0.03% CaCl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1% Bacto Peptone、0.05% Bacto Yeast extract、0.1% Tween 80、0.1% Trace element 2、50mM酒石酸バッファー(pH4.0)(%はいずれもw/v%)。Trace element 2は以下のとおり調製した:6mg H3BO3、26mg(NH46Mo724・4H2O、100mg FeCl3・6H2O、40mg CuSO4・5H2O、8mg MnCl2・4H2O、200mg ZnCl2を蒸留水にて100mLにメスアップした。
48時間の前培養後、ジャーファーメンターとしてBTR-25NA1S-8M(バイオット)を用いて本培養を行った。上記前培養液を1%(v/v%)植菌し、24時間培養を行った。炭素源としてはグルコースを2%の濃度で使用し、その他の培地成分は以下のものを使用した。0.42%(NH42SO4、0.2% KH2PO4、0.03% CaCl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1% Bacto Peptone、0.05% Bacto Yeast extract、0.1% Tween 80、0.1% Trace element 2、0.2% Antifoam PE-L。ジャーファーメンターの設定は以下の通りである。温度:28℃、通気量:0.5vvm、pH:4.5(5% アンモニア水で調整)、撹拌数:700rpm。培養24時間後に終濃度0.2% エリスリトールとなるようエリスリトールを添加し、添加後0、2、4、8時間の時点での培養上清及び菌を回収した。
(2)培養上清中のエリスリトールの定量
(1)で回収した培養液1mLを15,000rpm、4℃で5分間遠心し、上清をフィルターDISMIC-13CP(0.2μmセルロースアセテート膜、ADVANTEC)に通すことで菌体を除去した。HPLCに供する培養上清は、37mM硫酸にて適宜希釈した後、アクロプレップ96フィルタープレート(0.2μmGHP膜、日本ポール)を用いて不溶物の除去を行った。HPLCによる分析条件を以下に示す。
分析装置:Prominence-I LC-2030C 3D plus(島津製作所)
分析カラム:ICSep ICE ION 300 7.8mmI.D.×300mm(CONCISE SEPARATIONS)
溶離液:0.01N 硫酸
流速:0.5mL/分
カラム温度:50℃
検量線は、既知濃度のエリスリトール溶液を同様にして分析することで作成し、作成した検量線に基づいて培養上清中のエリスリトールの濃度を算出した。
E1AB1株では、エリスリトール添加後4時間目の時点で培養上清中のエリスリトールが完全に消失するのに対して、122079欠損株(Δ122079)、68466欠損株(Δ68466)、68606欠損株(Δ68606)及び68585欠損株(Δ68585)の全ての変異株で、添加後2時間目以降のエリスリトール資化速度がE1AB1株よりも低下しており、Δ122079、Δ68606及びΔ68585株では添加後8時間の時点でも培養上清中にエリスリトールが残存していた(図2)。このことから、122079遺伝子、68466遺伝子、68606遺伝子又は68585遺伝子を欠損させることで、糸状菌のエリスリトールの資化性が低下することが示された。
実施例5 欠損変異株の細胞内エリスリトール蓄積量の測定
実施例3で作製した変異株について、ガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)を用いて、菌細胞内へのエリスリトールの蓄積量を測定した。実施例4(1)でエリスリトール添加後4時間目と8時間目に回収した培養液5mLに冷エタノール7mLを添加し、速やかに-30℃にて冷却した。冷却した培養液を5,000g、4℃で5分間遠心し、上清を取り除いたところに冷60%メタノール5mLを加え、懸濁することで沈殿した菌を洗浄した。菌の洗浄操作を2回行った後、-80℃で凍結させた。凍結した菌を凍結乾燥させた。凍結乾燥した菌をマルチビーズショッカー(安井器械)を用いて破砕し、破砕した菌5mgに内部標準として37μMアジピン酸が含まれたメタノール0.5mLを加えてよく懸濁し、氷冷したクロロホルム0.5mLと水0.2mLを加えて良く撹拌した。14,000×g、4℃で5分間遠心し、上清0.5mLを回収した。得られた上清を遠心エバポレーターを用いて乾固させた。
乾固したサンプルに40mg/mLメトキシアミンを含むピリジンを20μL加え、30℃、800rpmで90分間反応させた後、MSTFA+1% TMCSを80μL加え、37℃、800rpmで30分間反応させた。反応後のサンプルを遮光条件で室温にてクーリングした後、GC-MS分析に供した。GC-MSの分析条件を以下に示す。
分析装置:Agilent 7890A GC system(Agilent Technologies)
カラム:DB-5MS+DG 30m×0.25mm×0.25μm(Agilent Technologies)
気化室温度:250℃
注入方法:スプリット注入(スプリット比 50:1)
オーブン温度:60℃で3.5分保持後、10℃/minで昇温、325℃で10分保持
カラム流量:ヘリウムガス 1.14mL/min
インターフェイス:250℃
イオン源:200℃
検量線は、既知濃度のエリスリトール溶液に100μMアジピン酸溶液を100μL添加したものを同様にして分析することで作成し、作成した検量線に基づいて菌細胞内のエリスリトール蓄積量を算出した。
E1AB1株及び欠損変異株の乾燥菌体1mg当たりの細胞内エリスリトール濃度(nmol/mg-dry cell)を求めた結果、E1AB1株ではエリスリトール添加後4時間目の時点で細胞内にエリスリトールがほとんど検出されず、8時間目の時点では検出限界以下の値となり、菌細胞内に取り込まれたエリスリトールが速やかに資化されていた(表4)。一方欠損変異株では、エリスリトール添加後4時間目の時点で細胞内へのエリスリトールの蓄積が認められ、8時間目の時点でも細胞内にエリスリトールがE1AB1株の約100倍以上検出され、菌細胞に取り込まれたエリスリトールが資化されずに細胞内に蓄積していた(表4)。以上の結果から、122079遺伝子、68466遺伝子、68606遺伝子又は68585遺伝子を欠損させることで、菌細胞内へのエリスリトールの蓄積量を増加させることができることが示された。
Figure 2024003791000004
実施例6 欠損変異株におけるエリスリトール資化関連遺伝子の発現解析
実施例3で作製した変異トリコデルマ属株について、細胞内へのエリスリトール蓄積によるエリスリトール資化関連遺伝子の発現量への影響をリアルタイムPCRによって検証した。実施例4(1)で回収した菌から抽出したRNAを用いてcDNAを合成した(TaKaRa社PrimeScriptTM II 1st strand cDNA Synthesis Kit使用)。合成したcDNAを用いてリアルタイムPCR解析を行った。(アジレント・テクノロジー、Brilliant III Ultra-Fast SYBR Green QPCR Master Mixes使用)。リアルタイムPCR用のプライマーには表2に示したものを用いた。相対定量法(ΔΔCt法)により各遺伝子の発現量を求めた。ノーマライズ遺伝子には解糖系酵素の1つであるホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子pgk1(TRIREDRAFT_21406)を用いた。
pgk1遺伝子の発現量に対する各遺伝子の相対的発現量を図3~6に示した。親株であるE1AB1株では、エリスリトール添加直後(0h)と比較して添加後2時間の時点で4つのエリスリトール資化関連遺伝子の発現量の上昇が認められたが、添加後4時間目以降では全ての遺伝子の発現量が添加後2時間の時点と比較して著しく低下した。一方、欠損変異株であるΔ122079、Δ68466、Δ68606及びΔ68585では、添加後2時間目において4つ遺伝子の発現の上昇が確認され、さらに添加後4時間目及び8時間目においてもE1AB1株とは異なり非常に高い発現量を示した。このことから、122079遺伝子、68466遺伝子、68606遺伝子又は68585遺伝子を欠損させることで、エリスリトール資化関連遺伝子の発現量及び発現持続性が向上することが示された。
実施例7 エリスリトール誘導性プロモーター連結遺伝子導入組換え株の作製
実施例3で作製した変異トリコデルマ属株に、エリスリトール誘導性プロモーターと連結したキシラナーゼXYN3遺伝子を導入して、エリスリトール誘導性にXYN3を発現する組換え株を作製した。
(1)遺伝子導入用プラスミドの構築
T.reeseiのゲノムDNAを鋳型としたPCRにて、以下の6つのDNA断片を調製した。
断片12:122079遺伝子の上流約1.0kbpのプロモーター領域(配列番号13)
断片13:68466遺伝子の上流約0.8kbpのプロモーター領域(配列番号14)
断片14:68606遺伝子の上流約0.8kbpのプロモーター領域(配列番号15)
断片15:68585遺伝子の上流約0.8kbpのプロモーター領域(配列番号16)
断片16:キシラナーゼ遺伝子xyn3(TRIREDRAFT_120229)のコード領域から下流0.5kbpまでの領域
断片17:pyr4遺伝子(TRIREDRAFT_74020)の上流約1.0kbpからORF及び下流約0.3kbpまでの領域(約2.4kbp)
断片の増幅に使用したプライマーを表5に示した。
Figure 2024003791000005
断片16及び17を結合してXYN3-pyr4を作製した。次いでXYN3-pyr4と断片1~4のそれぞれを結合した。得られた断片をそれぞれpUC118(タカラバイオ)のHincII制限酵素切断点に挿入することで、4つのベクターpUC-P122079-XYN3-pyr4、pUC-P68466-XYN3-pyr4、pUC-P68606-XYN3-pyr4及びpUC-P68585-XYN3-pyr4を構築した。DNA断片の結合はIn-Fusion HD Cloning kit(タカラバイオ)のプロトコルに従って実施した。構築したプラスミドをコンピテントセルE.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ)へと形質転換し、アンピシリン耐性株として得られた形質転換体の中から、コロニーPCRにより目的の遺伝子が挿入されたプラスミドを保持する菌株を選別した。選別した形質転換体はアンピシリン添加LB培地を用いて培養し(37℃、1日間)、得られた菌からプラスミドをNucleoSpin Plasmid EasyPure(マッハライ・ナーゲル)を用いて回収及び精製した。
(2)XYN3発現組換えトリコデルマ属株の作製
実施例3で作製した変異トリコデルマ属株に対して再度形質転換を行うために、0.2%の5-フルオロオロチン酸(5-FOA)一水和物が含まれるPDA培地を用いて再度5-FOA耐性を獲得し生育する株を選抜した。Δ122079、Δ68466、Δ68606及びΔ68585をそれぞれ5-FOA含有培地に塗布し、生育してきた株をΔ122079Δpyr4、Δ68466Δpyr4、Δ68606Δpyr4及びΔ68585Δpyr4として取得した。取得した株及びE1AB1Δpyr4に対して、(1)で作製したプラスミドをプロトプラストPEG法にて導入した。形質転換体は、pyr4遺伝子を選択マーカーとして、選択培地(2% グルコース、1.1M ソルビトール、2% アガー、0.5%(NH42SO4、0.2% KH2PO4(pH5.5)、0.06% CaCl2・2H2O、0.06% CsCl2、0.06% MgSO4・7H2O、0.1% Trace element 1(%はいずれもw/v%)にて選抜した。選抜した形質転換体を植え継ぎにより安定化した後、コロニーPCRにより目的の遺伝子が安定に保持された菌株をさらに選別した。
実施例8 組換え株による目的タンパク質生産
(1)組換え株の培養によるXYN3生産
実施例7で作製したΔ122079からの組換え株及びE1AB1からの組換え株を培養し、エリスリトール誘導によるタンパク質生産を行った。培養では、500mLのフラスコに培地を50mL仕込み、実施例7で作製した組換え株の胞子を1×105個/mLとなるよう植菌し、28℃、220rpmにて振とう培養した(プリス社製PRXYg-98R)。培地組成は以下の通りであった。1%グルコース、0.14%(NH42SO4、0.2% KH2PO4、0.03% CaCl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1% Bacto Peptone、0.05% Bacto Yeast extract、0.1% Tween80、0.1% Trace element 1。培養48時間後に、培地にエリスリトールを終濃度0.2w/v%となるように添加し、培養液を回収した。さらに4時間及び24時間培養した後、再度培養液を回収した。
(2)XYN3活性測定
(1)で回収した培養液中のキシラナーゼ(XYN3)活性をpNP(p-Nitrophenol)法にて測定した。培養上清を希釈して酵素溶液を調製した。1mM pNP-β-Xylobioside溶液(50mM Na-acetate buffer,pH5.0)を基質溶液とした。酵素溶液20μLに基質溶液80μLを加えて50℃で10分間反応後、100μLの1M Na2Co3溶液を加えて反応停止させた。その後420nmの吸光度を測定した。p-nitrophenolを用いて同様の操作を行うことで、検量線を作製した。1分間に1μmolのpNPを遊離させる酵素量を1Uと定義し、各培養液中のXYN3の活性を求めた。その結果、E1AB1株を宿主とする122079プロモーター誘導性XYN3発現株(E1AB1P122079)、68466プロモーター誘導性XYN3発現株(E1AB1P68466)及び68585プロモーター誘導性XYN3発現株(E1AB1P68585)では、エリスリトール添加直後0時間の時点と比較して、添加4時間後の時点でXYN3の活性が向上しているものの、24時間後の時点では4時間後と同等又は僅かに高い活性を示した(表6)。
一方、Δ122079を宿主とする122079プロモーター誘導性XYN3発現株(Δ122079P122079)、68466プロモーター誘導性XYN3発現株(Δ122079P68466)及び68585プロモーター誘導性XYN3発現株(Δ122079P68585)では、エリスリトール添加4時間後のXYN3活性がE1AB1株を宿主とするプロモーター誘導性XYN3発現株よりも高い活性を示し、さらに24時間後においては4時間後と比較して約2.5倍以上高い活性を示した(表6)。68606プロモーター誘導性XYN3発現株(Δ122079P68606)も、上昇率はわずかではあるが、エリスリトール添加によってXYN3活性が上昇した。さらに、Δ68466、Δ68606及びΔ68585を宿主とする68466プロモーター誘導性XYN3発現株(それぞれΔ68466P68466、Δ68606P68466及びΔ68585P68466)をそれぞれ実施例9の方法で培養し、培養上清中のXYN3活性を測定した結果、E1AB1株を宿主とするXYN3発現株(E1AB1P68466)と比較して高いXYN3活性を示した(表7)。さらに、上記欠損変異株Δ122079、Δ68466、Δ68606及びΔ68585の全てにおいて、4つのエリスリトール誘導性プロモーターP122079、P68466、P68606及びP68585の各々に連結された遺伝子がエリスリトールの添加に応答して転写が誘導され、発現が長時間にわたって維持されることが確認された。したがって、該欠損変異株において該エリスリトール誘導性プロモーターの下流に目的遺伝子を連結することで、エリスリトール存在下で目的遺伝子の転写を長時間にわたって誘導することが可能となると考えられた。以上の結果から、エリスリトール資化関連遺伝子欠損変異株は、エリスリトール誘導性プロモーターを用いてタンパク質発現を誘導させることで、高いタンパク質生産性を示すことが示された。
Figure 2024003791000006
Figure 2024003791000007

Claims (8)

  1. エリスリトール資化能が低下又は消失した変異トリコデルマ属菌であって、
    下記(A)~(D)からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドの発現が低下又は消失しており:
    (A)配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (B)配列番号4のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (C)配列番号6のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;及び
    (D)配列番号8のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    かつ、目的物質又はその合成に関わる酵素をコードする遺伝子と、該遺伝子の上流に連結されたエリスリトール誘導性プロモーターを導入されている、
    変異トリコデルマ属菌。
  2. 下記(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が低下又は消失している、請求項1記載の変異トリコデルマ属菌:
    (a)配列番号1のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;
    (b)配列番号3のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;
    (c)配列番号5のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子;及び
    (d)配列番号7のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる遺伝子。
  3. エリスリトール資化能が親トリコデルマ属菌と比べて50%以下に低下している、請求項1又は2記載の変異トリコデルマ属菌。
  4. 前記トリコデルマ属菌がトリコデルマ・リーセイ又はその変異株である、請求項1~3のいずれか1項記載の変異トリコデルマ属菌。
  5. 前記エリスリトール誘導性プロモーターが、下記(i)及び(ii)から選択されるDNAからなる、請求項1~4のいずれか1項載の変異トリコデルマ属菌:
    (i)配列番号13~16のいずれかのヌクレオチド配列からなるDNA;及び
    (ii)配列番号13~16のいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるDNA。
  6. 請求項1~5のいずれか1項記載の変異トリコデルマ属菌を、エリスリトールを含有する培地で培養すること;及び
    該培養で得られた培養物から目的物質を回収すること、
    を含む、目的物質の製造方法。
  7. 前記培地が初期濃度0.001~10%(w/v)のエリスリトールを含有する、請求項6記載の方法。
  8. 前記培地に含まれる炭素源がセルラーゼ非誘導性炭素源である、請求項6又は7記載の方法。
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