JP2019122386A - 選択的オートファジー経路の不活性化成分を含む糸状真菌細胞及びその使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】糸状真菌細胞の選択的オートファジー系が、部分的又は完全に不活性化された改変糸状真菌細胞、前記遺伝子改変糸状真菌細胞を作製する方法、及び前記改変糸状真菌細胞において目的の生物由来物質を生産する方法が開示される。【解決手段】破壊又は欠失したatg11活性を有する、遺伝子改変糸状真菌細胞、前記遺伝子改変糸状真菌細胞を作製する方法、及び前記改変糸状真菌細胞において目的の生物由来物質を生産する方法も開示される。【選択図】なし
Description
配列表の参照
本出願は、コンピュータで読み取り可能な形態の配列表を含む。該コンピュータで読み取り可能な形態は、参照により本明細書に組み込むものとする。
本出願は、コンピュータで読み取り可能な形態の配列表を含む。該コンピュータで読み取り可能な形態は、参照により本明細書に組み込むものとする。
本発明は、改変された糸状真菌細胞、及びこのような改変糸状真菌細胞を用いて、ポリペプチド(例えば、酵素)などの生物由来化合物を生産する方法に関する。
オートファジーは、細胞質成分及びオルガネラが液胞/リソソームを用いて消化される、真核細胞における系である。オートファジーは、飢餓の最中、並びに増殖及び発生、さらにはその他の様々なイベントにおいて養分循環に関連していた。オートファジーの機構は複雑で、atg1、atg2、atg3、atg4、atg5、atg6、atg7、atg8、atg9、atg10、atg11、atg12、atg13、atg14、atg15、atg16、atg17、atg18、atg19、atg20、atg21、atg22、atg23、atg24、atg25、atg26、atg27、atg28、atg29、atg30、及びatg31遺伝子と称する30超のオートファジー遺伝子の相互作用を含み得る。
オートファジー遺伝子及びオートファジー遺伝子の多くの役割について、酵母及び糸状真菌などの多数の真核細胞において研究されている。Marten et al.,“Autophagy in filamentous fungi,”Fungal Genetics and Biology,46(2009),1−8;Askew et al.,“Unexpected link between Metal Ion Deficiency and Autophagy in Aspergillus fumigatus,”Eukaryotic Cell,Dec.2007,2437−2447;Kitamoto et al.,“Functional anaylysis of the ATG8 Homologoue Aoatg8 and Role of Autophagy in Differentiation and Germination of Aspergillus oryzae,”Eukaryotic Cell,Aug.2006,1328−1336;Kitamoto K.& Kikuma T.,“Analysis of autophagy in Aspergillus oryzae by disruption of Aoatg13,Aoatg4,and Aoatg15 genes,”FEMS Microbiol Lett 316(2011)61−69;Klionsky et al.,“The Atg1 Kinase Complex Is Involved in the Regulation of Protein Recruitment to Initiate Sequestering Vesicle Formation for Nonspecific Autophagy in Saccharomyces cerevisiaes,”Molecular Biology of the Cell,Vol.19,Feb.2008,668−681;van der Klei,“Autophagy Deficiency Promotes β−Lactam Production in Penicilium chrysogenum,”Applied and Environmental Microbiology,Vol.77,No.4,Feb.2011,1413−1422;Klionsky et al.,“The Actin Cytoskeleton Is Required For Selective Types of Autophagy,but Not Nonspecific Autophagy,in the Yeast Saccharomyces cerevisiae,”Molecular Biology of the Cell,Vol.16,Dec.2005,5843−5865;Klionsky D.J.& Cheong H.,“Dual role of Atg1 in regulation of autophagy−specific PAS assembly in Saccharomyces cerevisiae,”Autophagy,4:5,July 2008,724−726;Chung et al.,“ATG1,and autophagy regulator,inhibit cell growth by negatively regulating S6 kinase,”EMBO reports,Vol.8,No.4,(2007),360−365;Mizushima,“The role of the atg1/ULK1 complex in autophagy regulation,”Current Opinion in Cell Biology,22:132−139(2010);Kitamoto et al.,“Functional analysis of Aoatg1 and detection of the Cvt pathway in Aspergillus oryzae,”(2012);Klionsky D.& Yorimitsu T.,“Atg11 Links Cargo to the Vesicle−forming Machinery in the Cytoplasm to Vaculoe Targeting Pathway,”Molecular Biology of the Cell,Vol.16,April 2005,159301605;及びK.Suzuki,“Selective autophagy in budding yeast,”Cell Death and Differentiation(2013)20,43−48。
しかし、オートファジー系及びオートファジー遺伝子の完全な役割は、十分に解明されていない。
本発明は、糸状真菌細胞の選択的オートファジー系が、部分的又は完全に不活性化された遺伝子改変糸状真菌宿主細胞、及びそのような改変宿主細胞におけるポリペプチドの生産に関する。糸状真菌細胞の選択的オートファジー系の不活性化によって、目的のポリペプチドなど、目的の生物由来物質の発現収量が増加する。特定の実施形態では、本発明は、部分的又は完全に不活性化された遺伝子改変糸状真菌宿主細胞を提供し、ここで、前記改変糸状真菌宿主細胞は、目的のポリペプチド(例えば、酵素)をコード化する遺伝子などの目的の生物由来物質をコードする遺伝子で形質転換されている。糸状真菌細胞における選択的オートファジー系の活性化は、糸状真菌細胞の選択的オートファジー経路に関与する1つ又は複数の遺伝子/タンパク質(atg遺伝子/タンパク質)を欠失又は破壊することによって、例えば、糸状真菌細胞に存在する内在性atg11活性を欠失させる、破壊する、又はサイレンシングする、並びに/あるいは、糸状真菌細胞の選択的オートファジー経路におけるatg11活性と直接若しくは間接的に関与する1つ又は複数の遺伝子/タンパク質を欠失又は破壊することなどによって、達成することができる。
本発明は、糸状真菌細胞のatg11活性が、例えば、該糸状真菌細胞に存在する内在性atg11遺伝子の発現を欠失又は破壊することにより、欠失、破壊又はサイレンシングされた遺伝子改変糸状真菌宿主細胞に関する。糸状真菌宿主細胞のatg11活性の欠失、破壊又はサイレンシングは、目的の生物由来物質、例えば、目的のポリペプチドの発現収率の増加をもたらす。特定の実施形態において、本発明は、欠失又は破壊又はサイレンシングされたatg11遺伝子を含む改変糸状真菌宿主細胞を提供し、この糸状真菌宿主細胞は、目的の生物由来物質をコード化する遺伝子、例えば、目的のポリペプチド(例えば、酵素)をコード化する遺伝子で形質転換されている。
本発明はまた、真菌細胞のatg11活性が欠失、破壊又はサイレンシングされた改変糸状真菌宿主細胞を生産する方法も提供する。具体的実施形態では、本発明は、糸状真菌宿主細胞を生産する方法であって、該糸状真菌細胞のatg11遺伝子を欠失させるか、又は破壊するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、目的の生物由来物質、例えば、目的のポリペプチドをコードする発現ベクターで糸状真菌細胞を形質転換するステップを含む、糸状真菌宿主細胞を生産する方法であって、前記糸状真菌細胞は、atg11遺伝子の欠失若しくは破壊若しくはサイレンシングを含むように改変されているか、又はそのようにさらに改変される、方法を提供する。
本発明はさらに、真菌細胞のatg11活性が欠失又は破壊されている改変糸状真菌宿主細胞を用いて、目的の生物由来化合物を生産する方法も提供し、これは、目的のポリペプチドの組換え生産を含む。特定の実施形態では、本発明は、目的のポリペプチドをコード化する遺伝子を含む糸状真菌細胞を培養するステップを含み、ここで、前記糸状真菌細胞のatg11遺伝子は、欠失又は破壊されている。培養は、目的の異種ポリペプチドの発現を誘導するのに好都合な条件下で行い、目的の異種ポリペプチドは、1つ以上の用途で用いるために、培地から回収してもよいし、あるいは、目的のポリペプチドを含有する培地又は発酵ブロスを1つ以上の用途に用いてもよい。
本発明の宿主細胞及び方法を適用して、目的とする任意の生物由来物質を生産することができる。特定の実施形態では、改変糸状真菌宿主細胞及び方法を適用して、目的のポリペプチド、例えば、ホルモン、酵素、受容体若しくはそれらの部分、抗体若しくはその部分、又はリポータなどを生産する。本発明の具体的実施形態は、本発明の改変糸状真菌宿主細胞及び方法を、目的の酵素を組換えにより生産するのに使用することに関する。
定義
Atg11:「atg11」という用語は、選択的オートファジーに関与するアダプタータンパク質であると考えられるオートファジー関連タンパク質を指す。atg11タンパク質及びコード化核酸配列の例は、当分野では公知であり、例えば、配列番号1に示す核酸配列によりコード化される配列番号2のアミノ酸を有するアスペルギルス・ニガー(Aspgerillus niger)atg11タンパク質がある。その他のatg11タンパク質及び遺伝子も特定決定されており、例えば、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)などが挙げられる。atg11遺伝子及びタンパク質は、真菌細胞において構造的かつ機能的に類似であるため、その他のatg11遺伝子及びタンパク質(atg11遺伝子及びタンパク質相同体)は、常用の分子生物学的方法を用いて、他の真菌宿主において同定することができる。また、当業者であれば、atg11配列の変異は様々な細胞系で起こり得るが、それはタンパク質の機能を改変するものではないことを理解されよう。
Atg11:「atg11」という用語は、選択的オートファジーに関与するアダプタータンパク質であると考えられるオートファジー関連タンパク質を指す。atg11タンパク質及びコード化核酸配列の例は、当分野では公知であり、例えば、配列番号1に示す核酸配列によりコード化される配列番号2のアミノ酸を有するアスペルギルス・ニガー(Aspgerillus niger)atg11タンパク質がある。その他のatg11タンパク質及び遺伝子も特定決定されており、例えば、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)などが挙げられる。atg11遺伝子及びタンパク質は、真菌細胞において構造的かつ機能的に類似であるため、その他のatg11遺伝子及びタンパク質(atg11遺伝子及びタンパク質相同体)は、常用の分子生物学的方法を用いて、他の真菌宿主において同定することができる。また、当業者であれば、atg11配列の変異は様々な細胞系で起こり得るが、それはタンパク質の機能を改変するものではないことを理解されよう。
生物由来物質:「生物由来物質」という用語は、糸状真菌宿主細胞に産生される目的とする任意の産物を指す。生物由来物質は、選択的オートファジー経路の部分的又は完全な不活性化、例えば、atg11の欠失若しくは破壊などにより、直接その収量が増加する発現産物、又は選択的オートファジー経路の不活性化、例えば、atg11活性の欠失若しくは破壊などにより、直接増大する発現産物の作用から作出される産物であってもよい。
cDNA:「cDNA」という用語は、真核又は原核細胞から得られた成熟型の、スプライス済みmRNA分子から逆転写により調製することができるDNA分子を意味する。cDNAは、対応するゲノムDNAに存在し得るイントロン配列を欠失している。最初の一次RNA転写物は、成熟型の、スプライス済みmRNAとして生成される前に、スプライシングを含む一連のステップを通してプロセッシングされるmRNAの前駆体である。
コード配列:「コード配列」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列を直接規定するポリヌクレオチドを意味する。コード配列の境界は、一般にオープンリーディングフレームにより決定され、ATG、GTG、又はTTGなどの開始コドンで始まり、TAA、TAG、又はTGAなどの停止コドンで終わる。コード配列は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、又はその組み合わせであってもよい。
制御配列:「制御配列」という用語は、成熟型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現に必要な核酸配列を意味する。各制御配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対してネイティブ(すなわち、同じ遺伝子由来)又は外来(すなわち、異なる遺伝子由来)でも、あるいは、互いにネイティブ又は外来であってもよい。このような制御配列として、限定はしないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモータ、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネータなどが挙げられる。最低でも、制御配列は、プロモータ、並びに転写及び翻訳停止シグナルを含む。制御配列は、制御配列と、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコード領域との連結を容易にする特定の制限部位を導入する目的で、リンカーを備える。「制御配列」という用語は、本明細書において、ポリペプチドの発現に必要であるか、又は有利な全ての構成要素を包含するように定義される。
制御配列は、適切なプロモータ配列、すなわち、核酸配列の発現のために宿主細胞により認識される核酸配列であってよい。プロモータ配列は、ポリペプチドの発現を媒介する転写制御配列を含む。プロモータは、最適な宿主細胞において転写活性を示す任意の核酸配列であってよく、例えば、突然変異体、短縮型、及びハイブリッドプロモータを含み、また、宿主細胞に対して相同的又は異種いずれかの細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られるものであってもよい。
糸状真菌宿主細胞において核酸構築物の転写を指令するのに好適なプロモータの例としては、以下:アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)アルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼ、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ、フザリウム・オキスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(国際公開96/00787号パンフレット)、並びにNA2−tpiプロモータ(アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性α−アミラーゼ及びアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来のプロモータのハイブリッド)の遺伝子から得られるプロモータ;並びにこれらの突然変異体、短縮型、及びハイブリッドプロモータがある。
制御配列はまた、好適な転写終結配列、すなわち、転写を終了するために宿主細胞によって認識される配列であってもよい。終結配列は、ポリペプチドをコード化する核酸配列の3’末端に作動可能に連結される。最適な宿主細胞において機能性である任意のターミネータを本発明で使用することができる。
糸状真菌宿主細胞の好ましいターミネータは、以下:アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アントラニレートシンターゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)α−グルコシダーゼ、及びフザリウム・オキスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
制御配列はまた、好適なリーダー配列、宿主細胞による翻訳に重要なmRNAの非翻訳領域である。リーダー配列は、ポリペプチドをコード化する核酸配列の5’末端に作動可能に結合される。最適な宿主細胞において機能性である任意のリーダー配列、例えば、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ及びアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)トリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子を本発明で使用することができる。Mcknight G.L.,O’Hara P.J.,Parker M.L.,“Nucleotide Sequence of the triosephosphate isomerase gene from Aspergillus nidulans:Implications for a differential loss of introns”,Cell 46:143−147(1986))。
制御配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわち、核酸配列の3’末端に作動可能に結合し、転写されるとき、ポリアデノシン残基を転写されたmRNAに付加するためのシグナルとして宿主細胞によって認識される配列である。最適な宿主細胞において機能性である任意のポリアデニル化配列を本発明で使用することができる。例として、以下:アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アントラニレートシンターゼ、フザリウム・オキスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ、及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)α−グルコシダーゼの遺伝子のポリアデニル化配列が挙げられる。
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に結合したアミノ酸配列をコード化し、コード化されたポリペプチドを細胞の分泌経路に向かわせる、シグナルペプチドコード領域であってもよい。核酸配列のコード配列の5’末端は、分泌されたポリペプチドをコード化するコード領域のセグメントを有する翻訳リーディングフレームに天然に連結している、シグナルペプチドコード領域を本質的に含んでいてもよい。あるいは、コード領域の5’末端は、コード配列に対して外来のシグナルペプチドコード領域を含んでいてもよい。コード配列がシグナルペプチドコード領域を天然に含んでいない場合には、外来のシグナルペプチドコード領域が必要となる場合がある。あるいは、ポリペプチドの分泌を増強するために、外来のシグナルペプチドコード領域で、天然のシグナルペプチドコード領域を単に置換してもよい。しかし、発現されたポリペプチドを最適な宿主細胞の分泌経路に向かわせる任意のシグナルペプチドコード領域を、本発明で使用してもよい。
糸状真菌宿主細胞の有効なシグナルペプチドコード領域は、以下:アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼ、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ、及びフミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼの遺伝子から得るシグナルペプチドコード領域である。
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域であってもよい。結果として得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(あるいは、場合によってはチモーゲン)として知られる。プロポリペプチドは一般に不活性であり、プロポリペプチドからのプロペプチドの触媒作用又は自己触媒開裂によって成熟した活性ポリペプチドに変換することができる。プロペプチドコード領域は、枯草菌(Bacillus subtilis)アルカリプロテアーゼ(aprE)、枯草菌(Bacillus subtilis)中性プロテアーゼ(nprT)、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)α因子、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼ、及びミセリオフトーラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)ラッカーゼ(国際公開第95/33836号パンフレット)の遺伝子から得ることができる。
シグナルペプチドとプロペプチド領域の両方がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合には、プロペプチド領域をポリペプチドのアミノ末端の次に配置し、シグナルペプチド領域はプロペプチド領域のアミノ末端の次に配置する。
欠失した、又は破壊された:「欠失した、又は破壊された」(及び「欠失又は破壊」)という用語は、評価対象の遺伝子又はタンパク質に対する改変を含まない同じ種の宿主細胞に対して、改変された宿主細胞におけるタンパク質機能又は活性の排除若しくは低減を指す。atg11タンパク質(又は選択的オートファジー経路の他の成分)のタンパク質機能又は活性の低減は、それが真菌宿主でのタンパク質の収量増大を可能にすれば、十分である。atg11タンパク質機能若しくは活性(又は選択的オートファジー経路の他の成分)の欠失又は破壊は、以下:1)発現を制御する上流又は下流調節配列(例えば、atg11遺伝子又はatg11遺伝子相同体)の欠失又は破壊、並びに2)ある遺伝子(例えば、atg11遺伝子タンパク質をコードする遺伝子)を非機能性にするような該遺伝子の突然変異(ここで、「突然変異」は、コード化タンパク質が、活性又は機能を有することができないようにする、該遺伝子への欠失、置換、挿入若しくは付加を含む)によって得ることができる。
発現:「発現」という用語は、限定はしないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含む、ポリペプチドの生産に関与するあらゆるステップを包含する。
発現ベクター:「発現ベクター」という用語は、ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを含み、その発現をもたらす制御配列に作動可能に連結される直鎖又は環状DNA分子を意味する。
糸状真菌:「糸状真菌」(又は「糸状菌」)という用語は、あらゆる糸状真菌宿主細胞を指し、亜門:真菌門(Eumycota)及び卵菌門(Oomycota)の全ての糸状形態を包含する(Hawksworth et al.,1995、前掲、に記載されている通り)。糸状真菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複雑な多糖類から構成される菌糸体細胞壁により特徴づけられる。栄養成長は菌糸の伸長によって行われ、炭素異化は偏性好気性である。対照的に、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母による栄養成長は、単細胞の葉状体の出芽によって行われ、炭素異化は発酵的であると考えられる。好ましい実施形態では、糸状真菌宿主細胞は、限定はしないが、以下の種:アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フザリウム(Fusarium)属、フミコラ(Humicola)属、ケカビ(Mucor)属、ミセリオフトーラ(Myceliophthora)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ペニシリウム(Penicillium)属、チエラビア(Thielavia)属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属、又はトリコデルマ(Trichoderma)属の細胞である。一実施形態では、糸状真菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)である。別の実施形態では、糸状真菌宿主細胞は、フザリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レティキュラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サムブチヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセキオイデス(Fusarium trichothecioides)、又はフザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)の細胞である。別の実施形態では、糸状真菌宿主細胞は、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の細胞である。
異種:目的のポリペプチドは、目的の糸状真菌宿主細胞に対してネイティブ又は異種のいずれであってもよい。「異種ポリペプチド」という用語は、本明細書において、真菌細胞に対してネイティブではないポリペプチド、ネイティブ配列を変更するように改変が施されたネイティブポリペプチド、又は組換えDNA技術による真菌細胞の操作の結果、発現が、量的に変更されたネイティブポリペプチドとして定義される。目的のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、目的のポリペプチドを産生することができる、多細胞生物及び微生物、例えば、細菌及び真菌などの任意の生物を起源とするものであってよい。
相同体:「相同体」という用語は、参照配列と共通の構造及び機能類似性を有する遺伝子又はタンパク質配列を指す。用語「相同体」は、共通の祖先からの進化のために構造的に類似する、異なる種の配列であるオルソログ、及び同じゲノム内の類似配列であるパラログの両方を包含する。
不活性化:「不活性化した」(又は「不活性化」)という用語は、評価対象の遺伝子又はタンパク質に対する改変を含まない同じ種の宿主細胞に対して、改変された宿主細胞における活性の部分的若しくは完全な排除を指す。
収量の増加:「収量の増加」という用語は、改変(例えば、atg11遺伝子若しくはタンパク質、又は評価対象のその他の遺伝子若しくはタンパク質に対する)を含まない同じ種の宿主細胞に対して、改変された真菌細胞が、目的のポリペプチドを産生する能力の増大を意味する。本発明によれば、上記細胞は、改変を含まない同じ種の宿主細胞と比較して、同じ時間量で、より多くの目的のポリペプチドを産生する。
導入:「導入」という用語は、ベクターが染色体組み込み体又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、ポリペプチドをコード化する核酸配列を含むベクターを真菌細胞に導入することを意味する。組み込みは、一般に、核酸配列が、細胞内に安定して維持される可能性がより高いため、有利であると考えられている。染色体へのベクターの組み込みは、相同的組換え、非相同的組換え、又は転位によって行われる。宿主細胞のゲノムへの組み込みの場合、ベクターは、相同的若しくは非相同的組換えによるゲノムへのベクターの安定な組み込みのために、ポリペプチドをコード化する核酸配列又は該ベクターの他の任意のエレメントを利用してもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞のゲノムへの、相同的組換えによる組み込みを指令する追加の核酸配列を含有してもよい。上記の追加核酸配列は、染色体における正確な場所で、宿主細胞ゲノムにベクターを組み込むことを可能にする。正確な場所での組み込みの可能性を増大するため、組み込みエレメントは、相同的組換えの確率を高めるために、対応する標的配列と高度に相同性である、100〜1,500塩基対、好ましくは400〜1,500塩基対、最も好ましくは800〜1,500塩基対など、十分な数の核酸を含有するのが好ましい。組み込みエレメントは、宿主細胞のゲノム内の標的配列と相同性である任意の配列であってもよい。これらの核酸配列は、宿主細胞のゲノム内の標的配列と相同性である任意の配列であってもよいし、さらに、組み込みエレメントは、非コード化又はコード化配列であってもよい。自律複製の場合、ベクターは、宿主細胞でベクターが自律的に複製できるようにする複製起点をさらに含んでもよい。組換え発現ベクターを構築するために、前述したエレメントを連結するのに用いる手順は、当業者には周知である(例えば、Sambrook,et al.,前掲参照)。
核酸構築物:「核酸構築物」という用語は、本明細書において、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又は天然には存在しない様式で組み合わせ、並置した核酸のセグメントを含むように改変された、一本鎖若しくは二本鎖いずれかの核酸分子として定義する。「核酸構築物」という用語は、核酸構築物が、コード配列の発現に必要な全ての制御配列を含む場合、用語「発現カセット」と同義語である。「コード配列」という用語は、本明細書に定義するように、mRNAに転写され、本発明の転写活性化因子に翻訳される配列である。コード配列の境界は、一般に、mRNAの5’末端のATG開始コドン及びmRNAの3’末端のオープンリーディングフレームのすぐ下流に位置する転写終結配列によって決定される。コード配列は、限定はしないが、DNA、cDNA、及び組換え核酸配列を含んでよい。
目的のポリペプチド:「目的のポリペプチド」という用語は、本明細書において、特定の長さのコード化産物を指し、従って、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質を包含する。ポリペプチドが天然に分泌されない場合、当分野では公知の技術に従い、シグナル配列を有するように、タンパク質をコード化する核酸配列を改変してもよい。分泌されるポリペプチドは、天然に発現されるが、本発明によって、より多くの量が発現される内在性ポリペプチドであってよいし、あるいは、ポリペプチドは、異種であってもよい。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、異種である。従って、ポリペプチドは、細胞に対してネイティブであってもよいが、例えば、目的のポリペプチドをコード化する核酸を含有する自己複製ベクターを用いた形質転換によって生産される。あるいは、組換え体は、ポリペプチドの1つ又は複数の追加コピーを組換え技術によりゲノムに組み込んだものであってもよい。ある実施形態では、目的のタンパク質では、以下:ペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、プロテアーゼ)、アミラーゼ(例えば、α−アミラーゼ又はグルコアミラーゼ)、カルボヒドラーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、エンドグルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、及びキシラナーゼからなる群から選択される。別の実施形態では、目的のタンパク質は、以下:ワクチン、サイトカイン、受容体、抗体、ホルモン、及び増殖因子などの因子からなる群から選択される。好ましい実施形態では、目的のポリペプチドは、細胞外分泌される。
目的のポリペプチドをコード化する核酸配列は、原核、真核、又は他の供給源から得てもよい。本発明の目的のために、所与の供給源に関して、本明細書で用いられる「〜から得られる」という用語は、ポリペプチドが、その供給源から、又はその供給源由来の遺伝子を挿入した細胞により産生されることを意味する。
目的のポリペプチドをコード化する核酸配列を単離、又はクローニングするのに用いる技術は、当分野では公知であり、ゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組み合わせを含む。このようなゲノムDNAからの核酸配列のクローニングは、例えば、公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用により実施することができる。例えば、Innis et al.,1990,PCR Protocols:A Guide to Methods and Application,Academic Press,New Yorkを参照のこと。クローニング手順は、ポリペプチドをコード化する核酸配列を含む所望の核酸断片の切除及び単離、ベクター分子への該断片の挿入、突然変異真菌細胞(ここで、核酸配列の複数のコピー若しくはクローンが複製される)への該組換えベクターの組み込みを含み得る。核酸配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成起源、又はこれらのいずれかの組み合わせであってよい。
組換え発現ベクター:「組換え発現ベクター」という用語は、組み換えDNA手順に好都合に付すことができ、ポリペプチドをコード化する核酸配列の発現をもたらし得る任意のベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)であってよい。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される真菌宿主細胞と該ベクターの適合性に応じて変わり得る。ベクターは、線状又は閉じた環状プラスミドであってもよい。ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外実体として存在し、その複製は染色体複製、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、又は人工染色体であるベクターであってよい。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を包含していてもよい。あるいは、ベクターは、糸状真菌細胞に導入されるときにゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるベクターであってもよい。さらに、ベクター系は、真菌細胞のゲノムに導入される全DNAを共に含む単一のベクター若しくはプラスミド、又は2つ以上のベクター若しくはプラスミド、又はトランスポゾンであってもよい。
好ましくは、ベクターは、形質転換細胞の容易な選択を可能にする、1つ又は複数の選択マーカを含有する。選択マーカは、遺伝子であり、その産物は、殺生物剤又はウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求体への原栄養性等を提供する。糸状真菌細胞で使用するための選択マーカは、限定はしないが、以下:amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸還元酵素)、pyrG(オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、及びtrpC(アントラニレートシンターゼ)、並びにその他の種に由来する同等物を含む群から選択することができる。アスペルギルス(Aspergillus)属細胞での使用に好適なのは、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)のamdS及びpyrG遺伝子、並びにストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子である。ベクターは、好ましくは、宿主細胞ゲノムへのベクターの安定な組み込み、又は細胞のゲノムとは独立した細胞中のベクターの自律複製を可能にするエレメントを含有する。
真菌細胞への発現ベクター又は核酸構築物の導入は、それ自体公知の方法で、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、及び細胞壁の再生から成る方法を含んでもよい。アスペルギルス(Aspergillus)属細胞の形質転換に好適な手順は、欧州特許第238 023号明細書及びYelton et al.,1984,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81:1470−1474に記載されている。フザリウム(Fusarium)種を形質転換する好適な方法は、Malardier et al.,1989,Gene 78:147−156又は国際公開第96/00787号パンフレットに記載されている。
組換え核酸:「組換え核酸」という用語は、一般に、ポリメラーゼ及びエンドヌクレアーゼによる核酸の操作により、天然には通常存在しない形態に、最初にin vitroで形成された核酸を意味する。一般に、核酸は、DNA、RNA又はmRNAを指し、遺伝子又は遺伝子断片を含む。従って、直鎖状の単離された核酸、又は通常結合していないDNA分子を連結することによりin vitroで形成した発現ベクターは、いずれも、本発明が目的とする組換え体とみなされる。いったん組換え核酸が作製され、宿主細胞又は生物に再導入されると、これは、非組換え的に、すなわち、in vitro操作ではなく、宿主細胞のin vivo細胞機序を用いて複製するが、このような核酸は、いったん組換えにより生産されたら、その後非組換え的に複製しても、やはり本発明が目的とする組換え体とみなされる。
組換えタンパク質:「組換えタンパク質」という用語は、組換え技術を用いて、すなわち、上に示したような組換え核酸の発現を通して作製されるタンパク質である。一般に、タンパク質及びペプチド又はポリペプチドという用語は、本明細書において、置換え可能に用いることができる。組換えタンパク質は、少なくとも1つ又は複数の特徴によって、天然に存在するタンパク質から識別される。例えば、野生型宿主では通常結合していたタンパク質及び化合物の一部又は全部からタンパク質を単離するか、又は精製してよく、従って、上記タンパク質は、実質的に純粋であり得る。例えば、単離タンパク質は、天然の状態では通常結合している材料の少なくとも一部又は全部を伴わず、好ましくは、所与のサンプル中の全タンパク質の少なくとも約0.5重量%、より好ましくは、少なくとも約5重量%を占める。実質的に純粋なタンパク質は、全タンパク質の少なくとも約75重量%を含み、少なくとも約80重量%が好ましく、少なくとも約90重量%が特に好ましい。一実施形態では、この定義は、その宿主細胞以外からのタンパク質の生産、又は組換え核酸により生産されるタンパク質を含む。あるいは、タンパク質は、増大した濃度レベルでタンパク質が生成されるように、誘導プロモータ又は高度発現プロモータの使用により、通常認められるより有意に高い濃度で生成することができる。あるいは、タンパク質は、以下に説明するように、エピトープタグの付加又はアミノ酸置換、挿入及び欠失のような、天然に存在しない形態であってもよい。
組換え細胞:「組換え細胞」という用語は、概して、組換え核酸又はポリペプチド(タンパク質)を含有するように操作された細胞を指す。これらの細胞への遺伝子の輸送は、例えば、これらの生物について記載されている従来の形質転換方法を用いて達成することができる。哺乳動物細胞宿主系トランスフェクションの一般的態様は、米国特許第4,399,216号明細書に記載されている。酵母への形質転換は、典型的に、Van Solingen et al.,J.Bact.,130:946(1977)及びHsiao et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:3829(1979)の方法に従い実施する。しかし、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどの、DNAを細胞に導入する他の方法。哺乳動物細胞を形質転換するための様々な技術については、Keown et al.,Methods in Enzymology,185:527−537(1990)及びMansour et al.Nature 336:348−352(1988)を参照されたい。
UPR調節タンパク質をコード化する核酸(例えば、cDNA、コード又はゲノムDNA)を複製可能なベクターに挿入してもよい。様々なベクターが一般に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態であってよい。適切な核酸配列を、様々な手順によりベクターに挿入することができる。一般に、当分野では公知の技術を用いて、DNAを適切な制限エンドヌクレアーゼに挿入する。ベクター成分は、一般に、限定はしないが、1つ又は複数のシグナル配列、複製起点、1つ又は複数のマーカ遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモータ、及び転写終結配列を含む。これらの成分の1つ又は複数を含む好適なベクターの構築には、当業者に周知である標準的連結技術を使用する。
選択マーカ:「選択マーカ」という用語は、本明細書において、その産物が、殺生物剤又はウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求体への原栄養性等を提供する遺伝子として定義され、これは、形質転換細胞の容易な選択を可能にする。糸状真菌宿主細胞で使用するための選択マーカとして、限定はしないが、以下:amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸還元酵素)、pyrG(オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、trpC(アントラニレートシンターゼ)、並びにその同等物が挙げられる。アスペルギルス(Aspergillus)属細胞での使用に好適なのは、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)のamdS及びpyrG遺伝子、並びにストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子である。また、これら選択マーカの機能性誘導体も本発明において有利であり、特に、低減した活性又は低減した安定性を有するために、選択物質の濃度を増加することなく、発現ベクターのより高いコピー数の選択を可能にする機能性誘導体が有利である。
選択オートファジー:「選択オートファジー」という用語は、糸状真菌細胞のatg11活性に依存するオートファジー系を指す。
配列同一性:2つのアミノ酸配列同士又は2つのヌクレオチド配列同士の関連性は、パラメータ「配列同一性」によって表される。本発明の目的のため、2つのアミノ酸配列同士の配列同一性は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276−277)(好ましくはバージョン5.0.0以降)のNeedleプログラムに組み込まれたNeedleman−Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443−453)を用いて決定する。用いるパラメータは、ギャップオープンペナルティー:10、ギャップ伸張ペナルティー:0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needle標識「最長同一性」(−nobriefオプションを用いて得られる)の出力は、同一性の割合(%)として用いられ、次のように計算される:
(同一残基×100)/(アライメント長−アライメントにおける合計ギャップ数)
(同一残基×100)/(アライメント長−アライメントにおける合計ギャップ数)
本発明の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド配列同士の配列同一性は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,前掲)(好ましくはバージョン5.0.0以降)のNeedleプログラムに組み込まれたNeedleman−Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,前掲)を用いて決定する。用いるパラメータは、ギャップオープンペナルティー:10、ギャップ伸長ペナルティー:0.5、及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needle標識「最長同一性」(−nobriefオプションを用いて得られる)の出力は、同一性の割合(%)として用いられ、次のように計算される:
(同一デオキシリボヌクレオチド×100)/(アライメント長−アライメントにおける合計ギャップ数)
(同一デオキシリボヌクレオチド×100)/(アライメント長−アライメントにおける合計ギャップ数)
本発明は、糸状真菌細胞の選択的オートファジー系が、部分的又は完全に不活性化されている遺伝子改変糸状真菌宿主細胞、そのような遺伝子改変糸状真菌細胞を作製する方法、及びそのような改変糸状真菌細胞において目的の生物由来物質を生産する方法を提供する。
糸状真菌細胞の選択的オートファジー系は、選択的オートファジー経路における特定の遺伝子/タンパク質の欠失又は破壊によって(部分的又は完全に)不活性化させることができる。特定の実施形態では、糸状真菌細胞における選択的オートファジー系の不活性化は、糸状真菌細胞に存在する内在性atg11活性を欠失させるか、又は破壊することによって達成することができる。別の実施形態では、糸状真菌細胞における選択的オートファジー系の不活性化は、糸状真菌細胞の選択的オートファジー経路においてatg11活性と直接又は間接的に関与する糸状真菌細胞の選択的オートファジー経路の1つ又は複数の遺伝子/タンパク質を欠失させるか、又は破壊することによって達成することができる。
本発明は、破壊又は欠失したatg11活性を含む遺伝子改変糸状真菌宿主細胞、そのような遺伝子改変糸状真菌細胞を作製する方法、及びそのような改変糸状真菌細胞において目的の生物由来物質を生産する方法を提供する。
本発明によれば、内在性atg11遺伝子を破壊するか、又は欠失させて、その結果、atg11活性を有するポリペプチドを全く産生しないか、その産生が低減した改変糸状真菌細胞を得ることによって、改変糸状真菌細胞を取得する。作出されたatg11欠失突然変異型細胞は、相同性若しくは異種ポリペプチド又は一次若しくは二次代謝物などの相同性及び/又は異種発現産物を発現させるための宿主細胞として特に有用である。従って、本発明はさらに、相同性又は異種産物を生産する方法であって、(a)産物の生産に好都合な条件下で改変真菌細胞を培養するステップ;及び(b)産物を回収するステップを含む方法にも関する。
atg11活性が低減した株の構築は、細胞におけるatg11ポリペプチドの発現に必要な核酸配列の修飾又は不活性化により、好都合に達成することができる。修飾又は不活性化しようとする核酸配列は、例えば、atg11活性を発揮するのに不可欠なポリペプチド又はその一部をコード化する核酸配列、例えば、配列番号1の核酸配列若しくはその一部、又は該核酸配列のコード配列からのポリペプチドの発現に必要な調節機能を有し得る核酸配列であってよい。こうした調節若しくは制御配列の例として、プロモータ配列、又はその機能性部分、すなわち、ポリペプチドの発現に作用するのに十分な部分が挙げられる。考えられる修飾のための他の制御配列は、このセクションに詳しく記載する。
核酸配列の修飾又は不活性化は、細胞を突然変異誘発に付し、atg11活性が低減又は排除された細胞を選択又はスクリーニングすることによって実施することができる。突然変異誘発(特異的又はランダムのいずれでもよい)は、例えば、好適な物理的若しくは化学的突然変異誘発因子の使用、好適なオリゴヌクレオチドの使用によるか、又はPCRによる突然変異誘発にDNA配列を付すことによって実施してよい。さらに、突然変異誘発は、これらの突然変異誘発因子の任意の組み合わせを用いて実施することもできる。
本発明の目的に好適な物理的又は化学的突然変異誘発因子の例としては、紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、O−メチルヒドロキシルアミン、硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS)、重硫酸ナトリウム、ギ酸、及びヌクレオチド類似体が挙げられる。こうした因子を用いる場合、突然変異誘発は、典型的に、突然変異誘発させようとする細胞を、好適な条件下、最適な突然変異誘発因子の存在下でインキュベートした後、atg11活性又は生産の低減を示す細胞を選択することにより実施する。
真菌細胞のatg11活性の生産の改変又は不活性化は、特に、該ポリペプチド又はその転写若しくは翻訳に必要な調節エレメントをコードする核酸配列における1つ又は複数のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去によって達成することができる。例えば、停止コドンの導入、開始コドンの除去、若しくはオープンリーディングフレームの変化をもたらすように、ヌクレオチドを挿入又は除去してよい。こうした改変又は不活性化は、当分野では公知の方法に従い、部位特異的突然変異誘発又はPCRによる突然変異誘発によって達成することができる。原則として、改変はin vivo、すなわち、改変しようとする核酸配列に対して直接実施することもできるが、以下に例示するように、in vitroで改変を実施するのが好ましい。
atg11活性を排除又は低減する好都合な方法の一例は、遺伝子置換又は遺伝子分断の技術に基づくものである。例えば、遺伝子分断法では、目的の内在性遺伝子又は遺伝子断片に対応する核酸配列をin vitroで突然変異させることにより、欠損核酸配列を作製し、次にこれを宿主細胞に形質転換することにより、欠損遺伝子を作製する。相同的組換えにより、欠損核酸配列が内在性遺伝子又は遺伝子断片に代わる。欠損遺伝子又は遺伝子断片がマーカをコード化することも望ましく、このマーカは、ポリペプチドをコード化する遺伝子が修飾又は破壊された形質転換体の選択に用いることができる。標的遺伝子を欠失させる、又は破壊するための方法は、例えば、以下により記載されている:Miller,et al(1985.Mol.Cell.Biol.5:1714−1721);国際公開第90/00192号パンフレット;May,G.(1992.Applied Molecular Genetics of Filamentous Fungi.J.R.Kinghorn and G.Turner,eds.,Blackie academic and Professional,pp.1−25);及びTurner,G.(1994.Vectors for Genetic Manipulation.S.D.Martinelli and J.R.Kinghorn,eds.,Elsevier,pp.641−665)。
あるいは、核酸配列の改変又は不活性化は、atg11ポリペプチドコード化配列と相補的なヌクレオチド配列を用い、確立されたアンチセンス技術により実施することができる。アンチセンス技術及びその応用については、例えば、米国特許第5,190,931号明細書に記載されている。
atg11活性の改変のための前記方法を、選択的オートファジー経路の他の成分を改変するのに適用してもよい。
本発明はさらに、親細胞の改変真菌細胞にも関し、この細胞は、atg11タンパク質をコード化する核酸配列若しくはその制御配列の破壊又は欠失を含み、これによって、親細胞により、atg11タンパク質の産生が低減した突然変異細胞が得られる。遺伝子改変により、真菌宿主細胞が、atg11活性を全く含まないか、あるいは、低減したatg11活性を有するように、例えば、宿主細胞により発現されるatg11活性のレベルが、個別に約50%超、好ましくは約85%超、約90%超、約95%超、約98%超、または約99%超低減されるように、糸状真菌宿主細胞のatg11活性は欠失しているか、又は破壊されている。atg11活性の有効な欠失又は破壊は、改変真菌宿主細胞が、目的の生物由来物質、例えば、目的のポリペプチドの収量を増加したかどうかを測定することによって評価することができる。
一態様において、本発明は、目的の異種ポリペプチドをコード化する核酸配列を含む糸状真菌宿主細胞において、目的のポリペプチドを生産する方法を提供し、本方法は、atg11欠失宿主細胞に、目的のポリペプチドをコード化する核酸配列を導入するステップ、好適な増殖培地で宿主細胞を培養するステップ、続いて、タンパク質産物を回収するステップを含む。宿主細胞は、要望される目的のポリペプチドの発現に必要な構造及び調節遺伝子領域を含む。こうした構造及び調節領域の性質は、該当するポリペプチド及び宿主細胞に大きく依存する。本発明の宿主細胞の遺伝子設計は、宿主細胞の形質転換又はトランスフェクションのための標準的組換えDNA技術を用いて、当業者により達成され得る(例えば、中でもSambrook et al.を参照されたい)。好ましくは、宿主細胞は、適切なクローニング用ビヒクル、すなわち要望されるタンパク質産物をコード化するDNA断片を含むプラスミド又はベクターの導入のための当分野では公知の方法により改変する。クローニング用ビヒクルは、自律的に複製するプラスミドとして宿主細胞に導入してもよいし、又は染色体に組み込んでもよい。好ましくは、クローニング用ビヒクルは、1つ又は複数の適切な調節領域に作動可能に連結した1つ又は複数の構造領域を含む。
本発明の実施形態では、例えば、atg11活性の欠失又は破壊により、(部分的若しくは完全に)不活性化した選択的オートファジー経路を含む糸状真菌宿主細胞は、1つ又は複数の内在性プロテアーゼの発現が低減されているか、又は完全に排除されたプロテアーゼ欠失又はプロテアーゼ欠損株であってもよい。特定の実施形態では、親株は、国際公開第00/39322号パンフレット、実施例1に記載のプロテアーゼ欠失アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)株BECh2であってもよく、これは、国際公開第98/12300号パンフレット、実施例1に記載のJaL228にも関連する。この株は、アルカリプロテアーゼAlpと中性メタロプロテアーゼNplを欠失している。他の修飾は、PepCと称するスブチリシンタイプのセリンプロテアーゼの破壊又は欠失を含んでもよく、任意選択で、カルシウム依存性、中性、セリンプロテアーゼ、KexBを欠失している。
本発明の一実施形態では、生物由来物質(例えば、目的のポリペプチド)の発現及び/又は分泌を増大するように、真菌宿主細胞に他の改変を施すことが望ましい場合もある。例えば、目的のポリペプチドの分泌を増大するのに有益な真菌細胞中の他のタンパク質の存在を増大するように、宿主細胞を改変してもよい。本発明の具体的実施形態では、糸状真菌宿主細胞中のUPR調節タンパク質の存在を増大するように、糸状真菌宿主細胞を改変する。別の実施形態では、糸状真菌宿主細胞中のhac1 UPR調節タンパク質(スプライス済み(例えば、hacAi)及び非スプライスバージョンを含む)及び/又はire1 UPR調節タンパク質の存在を増大するように、糸状真菌宿主細胞を改変する。例えば、以下を参照されたい:Schroder,M.et al,IRE1− and HAC1−independent Transcriptional Regulation in the Unfolded Protein Response of Yeast,Molecular Microbiology 49(3):591−606,2003;Cox et al.,“A Novel Mechanism for Regulating Activity of a Transcription Factor that Controls the Unfolded Protein Response,”Cell,vol.87,pp.391−404,Nov.1996;Clarke,H.et al,The Unfolded Protein Response Signal Transducer Ire1P Promotes Secretion of Heterologous Proteins in Saccharomyces cereviseae,J.Cell.Bioch.Suppl.,No.19B,p.209,1995;Penttila et al.,Activation mechanisms of the HAC1−mediated unfolded protein response in filamentous fungi.,Mol Microbiol.47(4):1149−61,2003;及びArcher et al.,HacA−Independent Induction of Chaperone−Encoding Gene bipA in Aspergillus niger Strains Overproducing Membrane ProteinsAppl Environ Microbiol.2006 January;72(1):953−955。
本発明の改変糸状真菌宿主細胞は、改変糸状真菌宿主細胞が、atg11活性の欠失又は破壊を含み、しかも、目的のポリペプチドを含む発現ベクターで形質転換されている、異種ポリペプチドの発現にとりわけ有用である。破壊又は欠失したatg11活性と、目的の異種ポリペプチドをコード化する核酸配列とを含む糸状真菌宿主細胞を培養して、目的のポリペプチドを生産することができる。用いる培養ブロス又は培地は、本発明の宿主細胞を培養するのに好適な任意の慣用培地であってよく、従来技術の原則に従って調製することができる。培地は、炭素及び窒素源、並びに他の無機塩を含有するのが好ましい。例えば、最少又は複合培地などの好適な培地は、供給業者から入手可能であり、あるいは、The American Type Culture Collection.Rockville Md.,USA.1970により公開されたThe Catalogue of Strainsのような公開レシピに従って調製することもできる。
発酵に好適なpHは、多くの場合、使用する宿主細胞の性質、増殖培地の組成、目的のポリペプチドの安定性などの要因に依存し得る。そのため、本発明の宿主細胞は、任意のpHで実施する任意の発酵工程を用いて培養してよいが、発酵工程のpHは、宿主細胞の酸性及び/又は中性プロテアーゼ活性が、ほぼ排除されるか、又は少なくとも有意に低減するようなものであることが有利である。従って、国際公開第90/00192号パンフレットに記載のようなアスパラギン酸プロテアーゼ活性の除去は、発酵pHを上昇させることによっても達成し得るが、これは、アルカリ性pH範囲で培養した宿主細胞からの要望されるタンパク質の収量に、それ以外の有利な作用を一切もたらさない。
発酵工程のpHが、5〜11、例えば、6〜10.5、7〜10、又は8〜9.5の範囲内であれば、pH範囲が7を超える酸性プロテアーゼ、例えば、アスパラギン酸及びセリンプロテアーゼ、並びに中性プロテアーゼの活性は低減されるか、又はブロックされる。
アルカリ発酵条件下で生産される酵素の例としては、エンドグルカナーゼ、フィターゼ及びタンパク質ジスルフィドイソメラーゼが挙げられる。しかし、アルカリpH範囲は、非修飾宿主細胞におけるアルカリプロテアーゼ活性を支持し、これは、潜在的に目的のポリペプチド産物の分解も引き起こし得る。その結果、このような場合、アルカリプロテアーゼをコード化する遺伝子の不活性化は、特に有利である。本発明のアルカリプロテアーゼ遺伝子の不活性化は、酸性、中性及びアルカリプロテアーゼ活性が、種によって変動するため、特定の細胞については特に有利である。
培養後、目的とする要望されるポリペプチドを、培養ブロスからのタンパク質単離及び精製の慣用的方法で回収するか、又は培養ブロスを用途に直接用いてもよい。十分に確立された精製手順は、遠心分離又は濾過により培地から細胞を分離するステップ、硫酸アンモニウムなどの塩を用いて、培地のタンパク質性成分を沈殿させるステップ、並びにイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー方法を含む。
本発明の特定の実施形態では、atg11活性の破壊又は欠失を適用して、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞を生産する。本発明のこの態様は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞の内在性atg11タンパク質活性の破壊又は欠失をさらに含む、目的の異種ポリペプチドをコード化する核酸配列を含むアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞を提供する。別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1に示す核酸配列によってコード化された、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。
また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号2と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列同一性を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号2と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列同一性を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号2と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列同一性を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号2と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列同一性を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列同一性を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列同一性を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号2と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列同一性を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号2と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列同一性を有するatg11タンパク質の破壊又は欠失を含む。
また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1と少なくとも50%同一である配列同一性を有するatg11遺伝子の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1と少なくとも60%同一である配列同一性を有するatg11遺伝子の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1と少なくとも70%同一である配列同一性を有するatg11遺伝子の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1と少なくとも80%同一である配列同一性を有するatg11遺伝子の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1と少なくとも90%同一である配列同一性を有するatg11遺伝子の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1と少なくとも95%同一である配列同一性を有するatg11遺伝子の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1と少なくとも98%同一である配列同一性を有するatg11遺伝子の破壊又は欠失を含む。また別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞は、配列番号1と少なくとも99%同一である配列同一性を有するatg11遺伝子の破壊又は欠失を含む。
特定の実施形態では、atg11活性の破壊又は欠失を適用して、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)宿主細胞において異種酵素を生産する。本発明のこの態様は、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)宿主細胞の内在性atg11タンパク質の破壊又は欠失をさらに含む、目的の異種ポリペプチドをコード化する核酸配列を含むアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)宿主細胞を提供する。
また別の実施形態では、atg11活性の破壊又は欠失を適用して、例えば、トリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞などのトリコデルマ(Trichoderma)属宿主細胞において異種酵素を生産する。本発明のこの態様は、トリコデルマ(Trichoderma)属宿主細胞の内在性atg11タンパク質の破壊又は欠失をさらに含む目的の異種ポリペプチドをコード化する核酸配列を含むトリコデルマ(Trichoderma)属宿主細胞を提供する。
改変された糸状真菌細胞(例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)若しくはトリコデルマ(Trichoderma)属宿主細胞)において生産され得る目的の異種ポリペプチドとしては、酵素、例えば、以下:ペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、プロテアーゼ)、アミラーゼ(例えば、α−アミラーゼ又はグルコアミラーゼ)、プルラナーゼカルボヒドラーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、エンド−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーセ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、及びキシラナーゼから成る群から選択される酵素などが挙げられる。
特定の実施形態では、酵素は、α−アミラーゼである。別の特定の実施形態では、酵素は、グルコアミラーゼである。別の特定の実施形態では、酵素は、フィターゼである。
atg11遺伝子の破壊又は欠失によって、atg11遺伝子の破壊又は欠失を含まない同一宿主と比較して、同じ時間量で、目的のポリペプチドの収量を増加する。
当業者が、本明細書をより明瞭に理解し、かつ実施することができるように、以下の調製物及び実施例を記載する。これらは、本発明の範囲及び/又は精神を限定するものとしてではなく、あくまで本発明を例示し、それらを代表するものとみなすべきである。
材料及び方法
別に指摘のない限り、DNA操作及び形質転換は、以下に記載されているような分子生物学の標準的方法を用いて実施した:Sambrook et al.(1989)Molecular cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor lab.,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel,F.M.et al.(eds.)“Current protocols in Molecular Biology”,John Wiley and Sons,1995;Harwood,C.R.,and Cutting,S.M.(eds.)“Molecular Biological Methods for Bacillus”.John Wiley and Sons,1990。
別に指摘のない限り、DNA操作及び形質転換は、以下に記載されているような分子生物学の標準的方法を用いて実施した:Sambrook et al.(1989)Molecular cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor lab.,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel,F.M.et al.(eds.)“Current protocols in Molecular Biology”,John Wiley and Sons,1995;Harwood,C.R.,and Cutting,S.M.(eds.)“Molecular Biological Methods for Bacillus”.John Wiley and Sons,1990。
購入した材料(大腸菌(E.coli)及びキット)
大腸菌(E.coli)DH5−α(Toyobo)をプラスミド構築及び増幅に用いる。増幅したプラスミドは、Qiagen Plasmid Kit(Qiagen)で回収する。連結は、DNA連結キット(Takara)又はT4DNAリガーゼ(Boehringer Mannheim)で実施する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、Expand TM PCRシステム(Boehringer Mannheim)を用いて実施する。PCR断片の精製及びアガロースゲルからのDNA断片の抽出のために、QIAquickTM Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いる。
大腸菌(E.coli)DH5−α(Toyobo)をプラスミド構築及び増幅に用いる。増幅したプラスミドは、Qiagen Plasmid Kit(Qiagen)で回収する。連結は、DNA連結キット(Takara)又はT4DNAリガーゼ(Boehringer Mannheim)で実施する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、Expand TM PCRシステム(Boehringer Mannheim)を用いて実施する。PCR断片の精製及びアガロースゲルからのDNA断片の抽出のために、QIAquickTM Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いる。
プラスミド
pBluescript II SK−(Stratagene ♯212206)
アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ(Pgpd)及びアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)トリプトファンシンターゼターミネータ(TtrpC)により駆動される、アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)pyrG遺伝子及び単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子(TK)を保有するpHUda801が、国際公開第2012/160093号パンフレットの実施例4に記載されている。
pBluescript II SK−(Stratagene ♯212206)
アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ(Pgpd)及びアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)トリプトファンシンターゼターミネータ(TtrpC)により駆動される、アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)pyrG遺伝子及び単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子(TK)を保有するpHUda801が、国際公開第2012/160093号パンフレットの実施例4に記載されている。
目的のアミログルコシダーゼを保有するpPE001は、欧州特許第12191号明細書に記載されている。
酵素遺伝子の発現のベクター用のプラスミドpRika147は、国際公開第2012/160093号パンフレットの実施例9に記載されている。
遺伝子
Atg11(DSMゲノムデータベースID;An02g07380)
Atg11(DSMゲノムデータベースID;An02g07380)
微生物株
表現型:pyrG−表現型/ウリジン栄養要求性を有するアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)発現宿主細胞を用いた。
表現型:pyrG−表現型/ウリジン栄養要求性を有するアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)発現宿主細胞を用いた。
MSSは、70gのスクロース、100gのダイズ粉末、3滴のプルロニック(pluronic)消泡剤、及び1リットルまでの脱イオン水から構成され、pHは6.0に調整した。
MU1は、260gのマルトデキストリン、3gのMgSO4・7H2O、6gのK2SO4、5gのKH2PO4、0.5mlのAMG金属溶液、3滴のプルロニック(pluronic)消泡剤、及び1リットルまでの脱イオン水から構成され、pHは4.5に調整した。
AMG金属溶液は、0.3gのクエン酸・H2O、0.68gのZnCl2、0.25gのCuSO4・5H2O、0.024gのNiCl2・6H2O、1.39gのFeSO4・7H2O、1.356gのMnSO4・5H2O及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の形質転換
親アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞の形質転換は、Yelton et al.,“Transformation of Aspergillus nidulans by using a trpC plasmid,”Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Mar;81(5):1470−4に記載されているように、糸状真菌での形質転換のための公知の一般的方法を用いて、以下のように達成した。
親アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞の形質転換は、Yelton et al.,“Transformation of Aspergillus nidulans by using a trpC plasmid,”Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Mar;81(5):1470−4に記載されているように、糸状真菌での形質転換のための公知の一般的方法を用いて、以下のように達成した。
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主細胞株は、該宿主細胞がpyrG欠失突然変異体である場合、10mMウリジンを補充した100mlのYPG培地に接種し、32℃、80rpmで16時間インキュベートした。ペレットを回収し、0.6M KClで洗浄した後、ml当たり20mgの最終濃度で、市販のβ−グルカナーゼ製剤(GLUCANEX(商標),Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)を含有する20mlの0.6M KClに再懸濁させた。プロトプラストが形成されるまで、懸濁液を32℃、80rpmでインキュベートしてから、STCバッファーで2回洗浄した。血球計数器でプロトプラストを係数した後、2.5×107プロトプラスト/mlの最終濃度まで、STC:STPC:DMSOの8:2:0.1溶液で調節した。約4μgのプラスミドDNAを100μlのプロトプラスト懸濁液に添加し、穏やかに混合した後、30分氷上でインキュベートした。1mlのSPTCを添加し、プロトプラスト懸濁液を37℃で20分インキュベートした。1Mスクロースなどの浸透性安定剤と、低融点アガロースとを含有する50℃の浸透性上層アガロースを10ml添加した後、混合物を、浸透性安定剤含有の最少培地(例えば、窒素源として3g/Lの硝酸ナトリウムを補充したCOVE 1966に記載の最少培地)に注ぎ込み、プレートを32℃で5日間インキュベートした。
培地の成分は、以下の通りである;
YPG培地は、15gのグルコース、4gの酵母エキス、1gのK2HPO4、0.5gのMgSO4・7H2O、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された(pH5.7)。
YPG培地は、15gのグルコース、4gの酵母エキス、1gのK2HPO4、0.5gのMgSO4・7H2O、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された(pH5.7)。
COVE微量金属溶液は、0.04gのNaB4O7・10H2O、0.4gのCuSO4・5H2O、1.2gのFeSO4・7H2O、0.7gのMnSO4・H2O、0.8gのNa2MoO2・2H2O、10gのZnSO4・7H2O、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
50×COVEA塩溶液は、26gのKCl、26gのMgSO4・7H2O、76gのKH2PO4、50mlのCOVE微量金属溶液、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
COVE培地は、342.3gのスクロース、20mlの50×COVE塩溶液、10mlの1Mアセトアミド、10mlの1.5M CsCl2、及び25gのノーブル(Noble)寒天、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
COVE−N(tf)は、342.3gのスクロース、3gのNaNO3、20mlのCOVE塩溶液、30gのノーブル(Noble)寒天、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
COVE−N上層アガロースは、342.3gのスクロース、3gのNaNO3、20mlのCOVE塩溶液、10gの低融点アガロース、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
COVE−Nは、30gのスクロース、3gのNaNO3、20mlのCOVE塩溶液、30gのノーブル(Noble)寒天、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
STCバッファーは、0.8Mソルビトール、25mMトリスpH8、及び25mM CaCl2から構成された。
STPCバッファーは、STCバッファー中の40%PEG4000から構成された。
D.J.Cove,“The Introduction and Repression of Nitrate Reductate in the Fungus Aspgergillus Nidualans,”Biochimica et Biophysca ACTA,(1966)51−56。
PCR増幅
5×PCRバッファー(MgCl2を含む) 20μl
2.5mM dNTPミックス 10μl
フォワードプライマー(100μM) 1μl
リバースプライマー(100μM) 1μl
エキスパンドハイフィデリティ(Expand High Fidelity)ポリメラーゼ(Roche) 1μl
鋳型DNA(50〜100ng/μl) 1μl
蒸留水 100μlまで
5×PCRバッファー(MgCl2を含む) 20μl
2.5mM dNTPミックス 10μl
フォワードプライマー(100μM) 1μl
リバースプライマー(100μM) 1μl
エキスパンドハイフィデリティ(Expand High Fidelity)ポリメラーゼ(Roche) 1μl
鋳型DNA(50〜100ng/μl) 1μl
蒸留水 100μlまで
グルコアミラーゼ生産のための実験室規模タンク培養
発酵は、フェドバッチ発酵として実施した(H.Pedersen,Glucoamylase production in batch,chemostat and fed−batch cultivations by an industrial strain of Aspergillus niger.Appl Microbiol Biotechnol.Mar;53(3):272−7,2000)。選択した株を液体培地中に前培養した後、増殖した菌糸体をタンクに移し、酵素生産のためにさらに培養する。培養は、グルコース及びアンモニウムを供給しながら、しかし、酵素生産を阻止するような過剰投与はせずに、34C、pH4.5で7日間実施した。酵素アッセイのために遠心分離後培養上清を用いた。
発酵は、フェドバッチ発酵として実施した(H.Pedersen,Glucoamylase production in batch,chemostat and fed−batch cultivations by an industrial strain of Aspergillus niger.Appl Microbiol Biotechnol.Mar;53(3):272−7,2000)。選択した株を液体培地中に前培養した後、増殖した菌糸体をタンクに移し、酵素生産のためにさらに培養する。培養は、グルコース及びアンモニウムを供給しながら、しかし、酵素生産を阻止するような過剰投与はせずに、34C、pH4.5で7日間実施した。酵素アッセイのために遠心分離後培養上清を用いた。
サザンハイブリダイゼーション
選択した形質転換体の菌糸体を100mlのYPG培地中で一晩の培養物から採取し、蒸留水ですすぎ、乾燥させた後、−80℃で凍結した。粉砕した菌糸体をプロテイナーゼK及びRNaseAと一緒に65℃で1時間インキュベートした。2回のフェノール/CHCl3抽出によりゲノムDNAを回収した後、EtOH沈殿させ、蒸留水で再懸濁させた。製造業者の指示に従い、PCR DIGプローブ合成キット(Roche Applied Science,Indianapolis IN)を用いて、非放射性プローブを合成した。製造業者の指示に従い、QIAquickTM Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.,Valencia,CA)を用いて、DIG標識プローブをゲル精製した。
選択した形質転換体の菌糸体を100mlのYPG培地中で一晩の培養物から採取し、蒸留水ですすぎ、乾燥させた後、−80℃で凍結した。粉砕した菌糸体をプロテイナーゼK及びRNaseAと一緒に65℃で1時間インキュベートした。2回のフェノール/CHCl3抽出によりゲノムDNAを回収した後、EtOH沈殿させ、蒸留水で再懸濁させた。製造業者の指示に従い、PCR DIGプローブ合成キット(Roche Applied Science,Indianapolis IN)を用いて、非放射性プローブを合成した。製造業者の指示に従い、QIAquickTM Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.,Valencia,CA)を用いて、DIG標識プローブをゲル精製した。
5マイクログラムのゲノムDNAを適切な制限酵素で16時間消化した(総量40μl、4U酵素/μlDNA)後、0.8%アガロースゲル上に流し込んだ。0.2M HClを用いた処理によりDNAをゲル中に断片化し、変性させ(0.5M NaOH、1.5M NaCl)、中和した(1Mトリス、pH7.5;1.5M NaCl)後、20×SSC中でHybond N+膜(Amersham)に移した。DNAを上記の膜にUV架橋させ、20mlのDIG Easy Hyb(Roche Diagnostics Corporation,Mannheim,Germany)中で42℃にて1時間プレハイブリダイズした。変性したプローブをDIG Easy Hybバッファーに直接添加し、42℃で一晩のハイブリダイゼーションを実施した。ハイブリダイゼーション後の洗浄(2×SSC中室温で5分を2回、0.1×SSC中68℃で15分を2回)に続いて、製造業者のプロトコルに従って、DIG検出システム及びCPD−Star(Roche)を用いた化学発光検出を実施した。標準マーカには、DIG標識DNA分子量マーカ(Molecular Weight Marker)II(Roche)を用いた。
グルコアミラーゼ活性
AmyloGlucosidase単位(AGU)でグルコアミラーゼ活性を測定した。AGUは、37℃、pH4.3、基質:マルトース23.2mM、バッファー:酢酸塩0.1M、反応時間5分の標準的条件下で毎分1マイクロモルのマルトースとハイブリダイズする酵素の量として定義される。自動分析装置を用いてもよい。存在する全てのα−D−グルコースがβ−D−グルコースに転化するように、ムタロターゼをグルコースデヒドロゲナーゼ試薬に添加した。グルコースデヒドロゲナーゼは、前述した反応において、β−D−グルコースと特異的に反応し、NADHを形成するが、これは、元のグルコース濃度の尺度として、光度計を用いて340nmで決定される。
AmyloGlucosidase単位(AGU)でグルコアミラーゼ活性を測定した。AGUは、37℃、pH4.3、基質:マルトース23.2mM、バッファー:酢酸塩0.1M、反応時間5分の標準的条件下で毎分1マイクロモルのマルトースとハイブリダイズする酵素の量として定義される。自動分析装置を用いてもよい。存在する全てのα−D−グルコースがβ−D−グルコースに転化するように、ムタロターゼをグルコースデヒドロゲナーゼ試薬に添加した。グルコースデヒドロゲナーゼは、前述した反応において、β−D−グルコースと特異的に反応し、NADHを形成するが、これは、元のグルコース濃度の尺度として、光度計を用いて340nmで決定される。
アミノグリコシダーゼインキュベーション:
基質: マルトース23.2mM
バッファー: 酢酸塩0.1M
pH: 4.30±0.05
インキュベーション温度: 37℃±1
反応時間: 5分
酵素作用範囲: 0.5〜4.0 AGU/mL
基質: マルトース23.2mM
バッファー: 酢酸塩0.1M
pH: 4.30±0.05
インキュベーション温度: 37℃±1
反応時間: 5分
酵素作用範囲: 0.5〜4.0 AGU/mL
発色反応:
GlucDH: 430U/L
ムタロターゼ: 9U/L
NAD: 0.21mM
バッファー: リン酸塩0.12M;0.15M NaCl
pH: 7.60±0.05
インキュベーション温度: 37℃±1
反応時間: 5分
波長: 340nm
GlucDH: 430U/L
ムタロターゼ: 9U/L
NAD: 0.21mM
バッファー: リン酸塩0.12M;0.15M NaCl
pH: 7.60±0.05
インキュベーション温度: 37℃±1
反応時間: 5分
波長: 340nm
実施例1:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)におけるatg11遺伝子の破壊
atg11遺伝子破壊プラスミドpHUda1493の構築
XbaI部位及びEcoRI部位をそれぞれ導入する次のプライマー3atg11F及び3atg11Rを、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ゲノムDNAデータベースAn02g07380のヌクレオチド配列情報に基づいて、アスペルギルス・ニガー(A.niger)atg11遺伝子のatg11開始コドンから+26800〜+4770の位置で3’フランキング領域を単離するためにデザインされた。
3atg11F:actagttctagagttgagacattggctcgt(配列番号3)
3atg11R:gaattcgctagccgtccagagacctaggg(配列番号4)
atg11遺伝子破壊プラスミドpHUda1493の構築
XbaI部位及びEcoRI部位をそれぞれ導入する次のプライマー3atg11F及び3atg11Rを、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ゲノムDNAデータベースAn02g07380のヌクレオチド配列情報に基づいて、アスペルギルス・ニガー(A.niger)atg11遺伝子のatg11開始コドンから+26800〜+4770の位置で3’フランキング領域を単離するためにデザインされた。
3atg11F:actagttctagagttgagacattggctcgt(配列番号3)
3atg11R:gaattcgctagccgtccagagacctaggg(配列番号4)
3atg11F及び3atg11Rのプライマーペアを用いて、鋳型としてのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株のゲノムDNAのPCR反応を実施した。反応産物を1.0%アガロースゲル上で単離し、2.0kb産物バンドをゲルから切除した。2.0kb増幅DNA断片をEcoRI及びXbaIで消化し、EcoRI及びXbaIで消化したpHUda801に連結することにより、pHUda1492を作出した。
NotI部位及びSpeI部位をそれぞれ導入する次のプライマー5atg11F及び5atg11Rを、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ゲノムDNAデータベースAn02g07380のヌクレオチド配列情報に基づいて、アスペルギルス・ニガー(A.niger)atg11遺伝子のatg開始コドンから−1970〜−10の位置で5’フランキング領域を単離するように設計した。
5atg11F:gcggccgcggtcggcgttcgaagg(配列番号5)
5atg11R:tactagtgggggtatcgaagtcttcggggc(配列番号6)
5atg11F:gcggccgcggtcggcgttcgaagg(配列番号5)
5atg11R:tactagtgggggtatcgaagtcttcggggc(配列番号6)
5atg11F及び5atg11Rのプライマーペアを用いて、鋳型としてのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株のゲノムDNAのPCR反応を実施した。反応産物を1.0%アガロースゲル上で単離し、2.0kb産物バンドをゲルから切除した。2.0kb増幅DNA断片をNotI及びSpeIで消化し、NotI及びSpeIで消化したpHUda1492に連結することにより、pHUda1493を作出した。
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)親株におけるatg11遺伝子の破壊
Yelton et al.,“Transformation of Aspergillus nidulans by using a trpC plasmid,”Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Mar;81(5):1470−4)に記載されているように、アスペルギルス・ニガー(A.niger)形質転換の標準的方法を用いて、pHUda1493をアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)親株に導入した。ランダムに選択した形質転換体を、2.5μMの5−フルオロ−2−デオキシウリジン(FdU)、すなわち、pHUda1493を保有する単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子(TK)を発現する細胞を死滅させる薬剤を含む最少培地プレートに接種した。2.5μMのFdUを含むこのようなプレート上でよく増殖する株を精製し、atg11遺伝子が正しく破壊されたどうかを確認するために、サザンブロッティング分析に付した。
Yelton et al.,“Transformation of Aspergillus nidulans by using a trpC plasmid,”Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Mar;81(5):1470−4)に記載されているように、アスペルギルス・ニガー(A.niger)形質転換の標準的方法を用いて、pHUda1493をアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)親株に導入した。ランダムに選択した形質転換体を、2.5μMの5−フルオロ−2−デオキシウリジン(FdU)、すなわち、pHUda1493を保有する単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子(TK)を発現する細胞を死滅させる薬剤を含む最少培地プレートに接種した。2.5μMのFdUを含むこのようなプレート上でよく増殖する株を精製し、atg11遺伝子が正しく破壊されたどうかを確認するために、サザンブロッティング分析に付した。
非放射性プローブを作製するための次のプライマーのセットを用いて、以下に記載する選択された形質転換体を分析した。これにより、3’atg11フランキング領域用のプローブ;フォワードプライマー:tggctcgtcagtctgaaga、リバースプライマー:tacacgcttgacgaccgcgtを作製する。
選択された形質転換体から抽出したゲノムDNAをSpeIにより消化した。正しい遺伝子破壊イベントによって、SpeI消化による12.7kbのサイズでのハイブリダイズシグナルは、前述したプローブ済みの5.9kbへとシフトした。正しい組込みイベントが為された株の中から、株Huda1493を選択した。
実施例2:目的の遺伝子を含有するatg11欠失組換え宿主細胞の生産
グルコアミラーゼ(AMG)発現プラスミドpHUda1479の構築
プライマーPE001−F及びPE001−RをそれぞれBam HI部位及びPml I部位に導入し、グルコアミラーゼ変異遺伝子を単離するように設計した。
PE001−F:
cggatccaccatgcgtctcactctattatc(配列番号7)
PE001−R:
accacgtgtcaaaactgccacacgtcgt(配列番号8)
グルコアミラーゼ(AMG)発現プラスミドpHUda1479の構築
プライマーPE001−F及びPE001−RをそれぞれBam HI部位及びPml I部位に導入し、グルコアミラーゼ変異遺伝子を単離するように設計した。
PE001−F:
cggatccaccatgcgtctcactctattatc(配列番号7)
PE001−R:
accacgtgtcaaaactgccacacgtcgt(配列番号8)
PE0011F及びPE001Rのプライマーペアを用いて、鋳型としてのプラスミドpPE001とのPCR反応を実施した。反応産物を1.0%アガロースゲル上で単離し、1.9kb産物バンドをゲルから切除した。1.9kb増幅DNA断片をBam HI及びPmlIで消化し、BamHI及びPmlIで消化したpRika147に連結することにより、pHUda1479を作出した。
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)転写因子hacA発現プラスミド発現プラスミドpHUda1292の構築
文献(The transcription factor hacA mediates the unfolded protein response in Aspergillus niger,and up−regulates its own transcription.Mulder HJ,Saloheimo M,Penttila M,Madrid SM.Mol Genet Genomics.2004 Mar;271(2):130−40.Epub 2004 Jan 17.)からの転写因子hacAに関する配列情報に基づき、次のプライマーを作製した。
hacA1:tttgctagccgacggggatgctttttgc(配列番号9)
hacA2:cttccatcatggtggatccttcaagcgtgacag(配列番号10)
hacA3:ctgtcacgcttgaaggatccaccatgatggaag(配列番号11)
hacA4:ccagcgacggacactgcaggatgttgtgtc(配列番号12)
hacA5:gacacaacatcctgcagtgtccgtcgctgg(配列番号13)
hacA6:ttcacgtgataaaattataaggatt(配列番号14)
文献(The transcription factor hacA mediates the unfolded protein response in Aspergillus niger,and up−regulates its own transcription.Mulder HJ,Saloheimo M,Penttila M,Madrid SM.Mol Genet Genomics.2004 Mar;271(2):130−40.Epub 2004 Jan 17.)からの転写因子hacAに関する配列情報に基づき、次のプライマーを作製した。
hacA1:tttgctagccgacggggatgctttttgc(配列番号9)
hacA2:cttccatcatggtggatccttcaagcgtgacag(配列番号10)
hacA3:ctgtcacgcttgaaggatccaccatgatggaag(配列番号11)
hacA4:ccagcgacggacactgcaggatgttgtgtc(配列番号12)
hacA5:gacacaacatcctgcagtgtccgtcgctgg(配列番号13)
hacA6:ttcacgtgataaaattataaggatt(配列番号14)
hacA1及び2、hacA3及び4、並びにhacA5及び6のプライマーペアを用いて、鋳型としてのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のゲノムDNAとのPCR反応を実施した。反応産物を1.0%アガロースゲル上で単離して、1.3、0.7及び0.7kb産物バンドをゲルから切除した。これら3つの断片を混合し、hacA1及び6のプライマーペアを用いた2回目のPCR反応のために使用した。反応産物を1.0%アガロースゲル上で単離し、2.7kb産物バンドをゲルから切除した。2.7kb増幅DNA断片をNheI及びPmlIで消化し、NheI及びPmlIで消化したpRika147に連結することにより、pHUda1292を作出した。
huda1493のpyrG遺伝子レスキュー
huda1493のatg11遺伝子座に導入したpyrG遺伝子を以下のようにレスキューした。株huda1493を、10mMウリジン及び1g/Lの5−フルオロト酸(5−FOA)を含有する最少培地にいったん接種した。pyrG遺伝子を欠失させた株を5−FOAの存在下で増殖させた;上記遺伝子を保持する株は、5−FOAを5−フルオロ−UMP、すなわち毒性中間体に変換するであろう。急速に増殖したコロニーを単離した。単離した株をhuda1493−3と名付けた。
huda1493のatg11遺伝子座に導入したpyrG遺伝子を以下のようにレスキューした。株huda1493を、10mMウリジン及び1g/Lの5−フルオロト酸(5−FOA)を含有する最少培地にいったん接種した。pyrG遺伝子を欠失させた株を5−FOAの存在下で増殖させた;上記遺伝子を保持する株は、5−FOAを5−フルオロ−UMP、すなわち毒性中間体に変換するであろう。急速に増殖したコロニーを単離した。単離した株をhuda1493−3と名付けた。
atg11遺伝子破壊株huda1493−3におけるAMG及びhacAの共発現
AMG及びhacAの改変された遺伝子コピーを有する株を作出するために、pHUda1292及びpHUda1479を用いて、競合的遺伝子交換を実施した。
AMG及びhacAの改変された遺伝子コピーを有する株を作出するために、pHUda1292及びpHUda1479を用いて、競合的遺伝子交換を実施した。
pHUda1292及びphuda1479をアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株huda1493−3及びその親株に同時導入した。形質転換体を、1%D−キシロース及び10μg/mlの5−フルオロシトシン(5FC)で補充した標準培地から選択した。ランダムに選択した形質転換体を、10μg/mlの5−フルオロシトシン(5FC)で補充した最少培地プレートに接種した。十分に増殖した株を精製した後、サザンブロッティング分析に付して、phuda1479のAMG遺伝子及びpHUda1292のhacA遺伝子が、NA1、NA2、SP288又はPAY遺伝子座に正しく導入されたかどうかを確認した。
非放射性プローブを作製するための次のプライマーセットを用いて、選択された形質転換体を分析した。
AMGコード領域については:
フォワードプライマー:ttatacatggactcgtgact(配列番号15)
リバースプライマー:agaatcacaggcatcgcagg(配列番号16)
hacAコード領域については:
フォワードプライマー:agaagagaaagtcatggggc(配列番号17)
リバースプライマー:agggcacttccttctccttc(配列番号18)
AMGコード領域については:
フォワードプライマー:ttatacatggactcgtgact(配列番号15)
リバースプライマー:agaatcacaggcatcgcagg(配列番号16)
hacAコード領域については:
フォワードプライマー:agaagagaaagtcatggggc(配列番号17)
リバースプライマー:agggcacttccttctccttc(配列番号18)
選択された形質転換体から抽出したゲノムDNAをSpeI及びPmlIにより消化した後、AMGコード領域でプローブした。正しい遺伝子導入イベントによって、SpeI及びPmlI消化による6.9kb(NA1)、3.6kb(SP288)、4.9kb(NA2)及び5.8kb(PAY)のサイズでのハイブリダイズシグナルは、前述のようにプローブ済みであるのが観測された。
選択された形質転換体から抽出したゲノムDNAをSphIにより消化した後、hacAコード領域でプローブした。正しい遺伝子導入イベントによって、SphI消化による8.6kb(NA1)、4.2kb(SP288)、5.3kb(NA2)、3.9kb(PAY)及び2.2kb(天然遺伝子)のサイズでのハイブリダイズシグナルが、前述のようにプローブ済みであるのが観測された。
NA1及びSE288遺伝子座にpHUda1479のAMG遺伝子を有し、NA2及びPAY遺伝子座にpHUda1292のhacA遺伝子を有する3つの形質転換体をhuda1493−3及び親株の両方から選択した。
実施例3:酵素生産に対するatg11遺伝子破壊の影響
2つの遺伝子座にAMG遺伝子を、また2つの遺伝子座に別のhacA遺伝子を導入する、親由来の3つの株及びhuda1493−3由来の他の3つの株を実験室サイズのタンクで発酵させ、前述した方法に従いその酵素活性(AGU活性)を測定した;結果を以下の表に示す。
2つの遺伝子座にAMG遺伝子を、また2つの遺伝子座に別のhacA遺伝子を導入する、親由来の3つの株及びhuda1493−3由来の他の3つの株を実験室サイズのタンクで発酵させ、前述した方法に従いその酵素活性(AGU活性)を測定した;結果を以下の表に示す。
Claims (20)
- 糸状真菌細胞の選択的オートファジー系の成分の破壊又は欠失を含む、糸状真菌宿主細胞。
- 請求項1に記載の糸状真菌細胞であって、前記細胞が、目的の異種ポリペプチドをコード化するヌクレオチドの配列と、前記糸状真菌細胞において前記異種ポリペプチドを産生するのに好適な遺伝子エレメントとを含む、発現ベクターを含む、糸状真菌細胞。
- 前記目的の異種ポリペプチドが、酵素である、請求項2に記載の糸状真菌細胞。
- 前記糸状真菌細胞のatg11活性の完全又は部分的不活性化を含む糸状真菌細胞。
- 請求項4に記載の糸状真菌細胞であって、前記細胞が、目的の異種ポリペプチドをコード化するヌクレオチドの配列と、前記糸状真菌細胞において前記異種ポリペプチドを産生するのに好適な遺伝子エレメントとを含む、発現ベクターを含む、糸状真菌細胞。
- 前記目的の異種ポリペプチドが、酵素である、請求項5に記載の糸状真菌細胞。
- 前記目的の異種ポリペプチドが、以下:ペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、プロテアーゼ)、アミラーゼ(例えば、α−アミラーゼ又はグルコアミラーゼ)、カルボヒドラーゼ、プルラナーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、エンドグルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、及びキシラナーゼからなる群から選択される酵素である、請求項5に記載の糸状真菌細胞。
- 前記目的の異種ポリペプチドが、グルコアミラーゼである、請求項5に記載の糸状真菌細胞。
- 前記目的の異種ポリペプチドが、アミラーゼである、請求項5に記載の糸状真菌細胞。
- 前記糸状真菌細胞が、以下:アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フザリウム(Fusarium)属、フミコラ(Humicola)属、ケカビ(Mucor)属、ミセリオフトーラ(Myceliophthora)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ペニシリウム(Penicillium)属、チエラビア(Thielavia)属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属、及びトリコデルマ(Trichoderma)属から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 前記糸状真菌細胞が、以下:アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、フザリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)フザリウム・レティキュラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サムブチヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセキオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、及びトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の細胞から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 前記糸状真菌細胞が、アスペルギルス(Aspergillus)属の細胞である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 前記糸状真菌細胞が、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)の細胞である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 前記破壊又は欠失が、前記atg11遺伝子の上流又は下流調節配列の欠失又は破壊を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 前記破壊又は欠失が、前記atg11遺伝子の欠失又は破壊を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 前記破壊又は欠失が、前記atg11遺伝子の欠失を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 前記糸状真菌細胞が、前記糸状真菌宿主細胞におけるhac1 UPR調節タンパク質の存在を増大させるような改変をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 前記糸状真菌細胞が、前記糸状真菌宿主細胞におけるire1 UPR調節タンパク質の存在を増大させるような改変をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞。
- 目的の異種ポリペプチドを生産する方法であって、目的の異種ポリペプチドの発現を誘導するのに好都合な条件下で、請求項1〜18のいずれか一項に記載の糸状真菌細胞を培養するステップを含む方法。
- 前記宿主細胞培地から前記目的のポリペプチドを回収するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
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