JP2016154483A - プロテインキナーゼ遺伝子変異株を利用した酵素類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、グルコース抑制が高度に解除された変異株を用いた有用物質の製造方法を提供すること。【解決手段】糸状菌又は酵母のタンパク質リン酸化酵素A(PKA)の機能が低下又は欠損する変異が導入されている変異株及を用いた、加水分解酵素若しくは酸化還元酵素の製造方法。【選択図】図3

Description

本発明は、糸状菌の変異株を用いた有用物質の製造方法に関する。
糸状菌が環境の糖類、タンパク質、脂質などの炭素源を資化するために生産する酵素はカーボンカタボライト抑制(資化されやすい炭素源の存在下で資化しにくい炭素源の利用に関わる遺伝子の発現が抑制されること)を受ける。特にアミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼなどの多糖分解酵素の高生産では、カーボンカタボライト抑制の解除は重要な課題である。なぜならば、これらの酵素の生産はその基質であるデンプン、セルロース、キシラン、マンナンにより誘導されるからであり、酵素生産培地にこれら多糖を添加する結果、誘導生産された酵素が誘導基質の多糖を分解し、強力なカーボンカタボライト抑制炭素源であるグルコース、キシロース、マンノースを生成するからである。
また、麹菌をはじめとする糸状菌で異種タンパク質の高生産を行う場合に利用される高発現プロモーターのほとんどは、炭素源資化に関わる遺伝子のプロモーターであるため、この場合に使用する宿主についてもカーボンカタボライト抑制が解除されていることが望ましい。
カーボンカタボライト抑制には、広域制御型転写抑制因子CreAが関与する遺伝子発現制御系が知られている。この制御系は、CreAに加えて脱ユビキチン化因子であるCreB及びCreCやアレスチン様アダプターであるCreDなどにより構成されており、CreBによるCreAの脱ユビキチン化を介してCreAが遺伝子発現を抑制すると考えられている(例えば、非特許文献1、2参照)。この実験的検証については、アスペルギルス(Aspergillus)、並びにトリコデルマ(Trichoderma)属糸状菌の研究例が挙げられる(例えば、非特許文献3、4、5参照)。なお、トリコデルマ属ではCreA、CreBに相当する因子はそれぞれCre1、Cre2と命名されている。CreAに依存しないカーボンカタボライト抑制系も存在することが知られており、実例としてはキシラナーゼやラムノシダーゼの例が挙げられる(例えば、非特許文献6、7、8参照)。このCreA非依存的カーボンカタボライト抑制系に関わる因子群に関しては、未知である。
アミラーゼやセルラーゼをはじめとする多糖分解酵素は、市場性の高い産業用酵素として知られている。これらの酵素の生産性向上の障壁の一つがカーボンカタボライト抑制であり、古くから知られているCreA依存的抑制系だけでなく、メカニズムが未知のCreA非依存的抑制系をも解除することにより、著しい酵素生産性の改善が期待できる。
Lockington and Kelly (2002) The WD40-repeat protein CreC interacts with and stabilizes the deubiquitinating enzyme CreB in vivo in Aspergillus nidulans. Mol Microbiol 43: 1173-1182. Boase and Kelly (2004) A role for creD, a carbon catabolite repression gene from Aspergillus nidulans, in ubiquitination. Mol Microbiol 53: 929-940. Hunter et al (2013) Deletion of creB in Aspergillus oryzae increases secreted hydrolytic enzyme activity. Appl Environ Microbiol 79: 5480-5487. Narakai-Setala et al (2009) Genetic modification of carbon catabolite repression in Trichoderma reesei for improved protein production. Appl Environ Microbiol 75:4853-4860. Denton and Kelly (2011) Disruption of Trichoderma reesei cre2, encoding an ubiquitin C-terminal hydrolase, results in increased cellulase activity. BMC Biotechnol 11:103. Orejas et al (1999) Carbon catabolite repression of the Aspergillus nidulans xlnA gene. Mol Microbiol 31:177-184. Orejas et al (2001) The wide-domain carbon catabolite repressor CreA indirectly controls expression of the Aspergillus nidulans xlnB gene, encoding the acidic endo-β-(1,4)-xylanase X24. J Bacteriol 183:1517-1523. Tamayo-Ramos et al (2012) L-Rhamnose induction of Aspergillus nidulans α-L-rhamnosidase genes is glucose repressed via a CreA-independent mechanism acting at the level of inducer uptake. Microbial Cell Factories 11:26.
本発明は、カーボンカタボライト抑制が高度に解除された糸状菌および酵母変異株を用いた、加水分解酵素ならびに酸化還元酵素等の酵素類の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、cAMP依存的プロテインキナーゼの一種であるプロテインキナーゼA(以下、「PKA」という場合がある)をコードする遺伝子の破壊株において、CreA非依存的カーボンカタボライト抑制が解除され、CreAの破壊株では達成できない高いレベルでのセルラーゼやマンナナーゼ生産が、グルコース存在下だけでなく様々な易資化性炭素源の存在下においても達成できることを見出した。また、グルコース存在下でアミラーゼの生産性が向上することも見出した。本発明は、かかる新規の知見に基づくものである。
従って、本発明は、以下の項に記載の発明を提供する:
項1.タンパク質リン酸化酵素A(PKA)の機能が低下又は欠損する変異が導入されている糸状菌又は酵母の変異株を用いた、酵素類の製造方法。
項2.前記変異株においてPKAをコードする遺伝子の一部又は全部が欠失している、項1の酵素類の製造方法
項3.糸状菌PKA変異株がアスペルギルス(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、ペニシリウム(Penicillium)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、アクレモニウム(Acremonium)属、ノイロスポラ(Neurospora)属又はフザリウム(Fusarium)属に属する、項1又は2の酵素類の製造方法。
項4.前記アスペルギルス属に属する菌がアスペルギルス ニドランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス リューチューエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)又はアスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)である、項3の酵素類の製造方法。
項5.酵母PKA変異株が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、ジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属に属する、項1又は2の製造方法。
項6.前記PKA変異株が、野生株と比較して、加水分解酵素及び/又は酸化還元酵素をコードする遺伝子の発現が亢進しているか、加水分解酵素活性及び/又は酸化還元酵素活性が増大している、項1〜5の酵素類の製造方法。
項7.前記加水分解酵素が多糖分解酵素、タンパク質分解酵素及び/又は脂質分解酵素である、項6の酵素類の製造方法。
項8.前記多糖分解酵素が、セルラーゼ、マンナナーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ及びペクチンリアーゼから成る群から選択される、項7の酵素類の製造方法。
項9.前記PKA変異株の野生型におけるPKAをコードする遺伝子が、配列番号1に示す塩基配列よりなるか、あるいは配列番号1と80%以上、好ましくは90%以上の配列同一性を有する塩基配列よりなる、項1〜8の酵素類の製造方法。
項10.前記PKA変異株の野生型におけるPKAが、配列番号2に示すアミノ酸配列よりなるか、あるいは配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列よりなる、項1〜8の酵素類の製造方法。
項11.前記PKA変異株の野生型におけるPKAをコードする遺伝子が、配列番号3に示す塩基配列よりなるか、あるいは配列番号3と80%以上、好ましくは90%の配列同一性を有する塩基配列よりなる、項1〜8の酵素類の製造方法。
項12.前記PKA変異株の野生型におけるPKAが、配列番号4に示すアミノ酸配列よりなるか、あるいは配列番号4に示すアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列よりなる、項1〜8の酵素類の製造方法。
項13.有機性材料の加水分解産物の製造方法であって、項1〜12のいずれかの糸状菌又は酵母のPKA変異株の培養物、又はその抽出物と有機性材料とを接触させる工程を含む、製造方法。
項14.前記加水分解産物が醤油、味噌、日本酒及び焼酎から成る群から選択される発酵生産物である、項13の製造方法。
本発明に用いるPKA機能が低下乃至欠損している変異株(PKA変異株)は、抑制炭素源の存在下において野生株やCreAの機能欠損株よりも有意に高い酵素生産性、特にセルラーゼ、マンナナーゼ生産性を示す。一方、CreAの機能欠損株は、アミラーゼ生産性の著しい向上を示すが、セルラーゼ、マンナナーゼ生産性の向上は微弱である。理論に拘束されることを意図するものではないが、この違いは、PKAの関与するカーボンカタボライト抑制がCreA非依存的なものであることを示している。従って、PKA変異株を利用することにより、セルラーゼ、マンナナーゼの生産を著しく向上させることが可能である。
本願実施例1におけるアスペルギルス ニドランスPKA遺伝子(pkaA)の破壊株構築の設計の概略を示す。 本願実施例1におけるアスペルギルス オリゼPKA遺伝子(pkaA)の破壊株構築の設計の概略を示す。 本願実施例2において、グルコースとカルボキシメチルセルロース(以下CMCとする)を含む寒天最少培地上でのセルラーゼ生産性(A)、グルコースとコンニャクマンナンを含む寒天最少培地上でのマンナナーゼ生産性(B)、及びグルコースとデンプンを含む寒天最少培地上でのアミラーゼ生産性(C)を、アスペルギルス ニドランス野生株、pkaA遺伝子破壊株、creA変異株で比較した結果を示す。 本願実施例4において、マンノース、キシロース、又はガラクトースを含むCMC寒天最少培地上でのセルラーゼ生産性をアスペルギルス ニドランス野生株、pkaA遺伝子破壊株、creA変異株で比較した結果を示す。 本願実施例4において、グルコース存在下又は不在下で、CMCを含む寒天最少培地上でのセルラーゼ生産性をアスペルギルス オリゼ野生株、pkaA遺伝子破壊株、creA破壊株で比較した結果を示す。 本願実施例4において、グルコース存在下又は不在下で、セロビオースとCMCを含む寒天最少培地上でのセルラーゼ生産性をアスペルギルス オリゼ野生株、pkaA遺伝子破壊株、creA破壊株で比較した結果を示す。 本願実施例5において、グルコースを含むコンニャクマンナン寒天最少培地上でのマンナナーゼ生産性をアスペルギルス オリゼ野生株、pkaA遺伝子破壊株、creA破壊株で比較した結果を示す。 本願実施例6において、セロビオースとCMCを含む液体最少培地で生産される全セルラーゼ活性、単位菌体あたりのセルラーゼ活性、乾燥菌体重量をアスペルギルス オリゼ野生株、pkaA遺伝子破壊株、creA破壊株で比較した結果を示す。 本願実施例7において、アビセルを含む液体最少培地で生産される全セルラーゼ活性をアスペルギルス オリゼ野生株、pkaA遺伝子破壊株、creA破壊株で比較した結果を示す 本願実施例8において、コンニャクマンナンを含む液体最少培地で生産される全マンナナーゼ活性、単位菌体あたりのマンナナーゼ活性、乾燥菌体重量をアスペルギルス オリゼ野生株、pkaA遺伝子破壊株、creA破壊株で比較した結果を示す。
本発明は、プロテインキナーゼA(PKA)の機能が低下乃至欠損している変異株を用いた酵素類又は有機性材料の加水分解産物の製造方法を提供する。PKAは基質タンパク質のセリン/スレオニン残基をリン酸化するcAMP依存的プロテインキナーゼである。PKAをコードする遺伝子としては、糸状菌の場合、例えばアスペルギルス ニドランスのPkaA(AN6305)、アスペルギルス オリゼのPkaA(AO090026000426)、アスペルギルス フミガタスのPkaC(Afu2g12200)、アスペルギルス ニガーのPkaC(An02g04270)、ノイロスポラ クラッサ(Neurospora crassa)のPkac-1(NCU06240)などが挙げられる。アスペルギルス ニドランスのPkaAを配列番号1に、そしてアスペルギルス オリゼのPkaAを配列番号3に示す。
PKAのアミノ酸配列は、糸状菌の各菌種間で保存されている。例示のため、アスペルギルス ニドランスのPKAを配列番号2に、そしてアスペルギルス オリゼのPKAを配列番号4に示す。
アスペルギルス ニドランスとそれ以外のアスペルギルス属糸状菌との間ではPKAは71〜77%程度の同一性がある。PKAはアスペルギルス間だけでなく、ペニシリウムとも60%程度の相同性がある。その他、アスペルギルス ニドランスのPKAとの比較で、トリコデルマ リーセイやノイロスポラ クラッサもそれぞれ約59%及び約50%の相同性を有している。
糸状菌のみならず酵母にも糸状菌のPKAと相同性の高い配列が存在しており、当該配列で表されるタンパク質はcAMP依存的プロテインキナーゼとして機能していると考えられる。
さらに、機能低下乃至欠損変異の対象となるPkaA遺伝子には、当該遺伝子と相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAからなる遺伝子、及び上記遺伝子と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上である配列相同性を示す塩基配列からなる遺伝子であって、プロテインキナーゼAの生産に関与するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子が含まれる。
ここで、ハイブリダイゼーションは、例えば、Molecular cloninng third.ed.(Cold Spring Harbor Lab.Press,2001)、又はカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al.,1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、温度60℃〜68℃において、ナトリウム濃度15〜900mM、好ましくは15〜600mM、さらに好ましくは15〜150mM、pH6〜8であるような条件を挙げることができる。
従って、配列番号1又は3に示す塩基配列を含むDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、該DNAの全塩基配列との相同性の程度が、全体の平均で、約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上である塩基配列を含有するDNA等を挙げることができる。
また、機能低下乃至欠損変異をされるPKA遺伝子には、配列番号2又は4に示すアミノ酸配列よりなるPKAと約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上である配列相同性を示すアミノ酸配列をコードするものであって、プロテインキナーゼAの生産に関与する遺伝子が含まれる。
2つの塩基配列又はアミノ酸配列における配列相同性を決定するために、配列は、比較に最適な状態に前処理される。例えば、一方の配列にギャップを入れることにより、他方の配列とのアラインメントの最適化を行う。その後、各部位におけるアミノ酸残基又は塩基が比較される。第一の配列におけるある部位に、第二の配列の相当する部位と同じアミノ酸残基又は塩基が存在する場合、それらの配列は、その部位において同一である。2つの配列における配列相同性は、配列間での同一である部位数の全部位(全アミノ酸又は全塩基)数に対する百分率で示される。
上記の原理に従い、2つの塩基配列又はアミノ酸配列における配列相同性は、例えば、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268、1990及びProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877、1993)により決定される。このようなアルゴリズムを用いたBLASTプログラムやFASTAプログラムは、主に与えられた配列に対し、高い配列相同性を示す配列をデータベース中から検索するために用いられる。これらは、例えば、米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイトにおいて利用可能である。
上記のような塩基配列の配列相同性又はコードするアミノ酸配列の配列相同性を示すようなDNAは、上記のようにハイブリダイゼーションを指標に得ることもでき、ゲノム塩基配列解析等によって得られた機能未知のDNA群又は公共データベースの中から、当業者が通常用いている方法により、例えば、前述のBLASTソフトウェアを用いた検索により発見することも容易である。さらに、機能低下乃至欠損変異を行うPKA遺伝子は、種々の公知の変異導入方法によって得ることもできる。
上記の各種方法により得たPKA遺伝子に対し、公知の方法を用いて機能低下乃至欠損変異させた糸状菌又は酵母を作製し、その変異株を本発明における酵素類の製造に使用することができる。
本明細書で使用する場合、「相同性」は同一性を指す場合がある。「同一性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つの塩基配列又はアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメントにおける、オーバーラップする全塩基又は全アミノ酸残基に対する、同一塩基又はアミノ酸残基の割合(%)を意味する。好ましくは、当該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方若しくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである。
本発明にて使用する変異株において、プロテインキナーゼA(PKA)の機能低下乃至欠損とは、易資化性炭素源が存在する条件下において、野生株と比較した場合に加水分解酵素活性を増大させるような変異を意味する。より具体的には、そのような変異として、ゲノム中のPKA遺伝子のコード領域の全部又は一部が欠失しているもの、コード領域の全部又は一部に別の核酸分子が挿入されているもの、当該コード領域の全部又は一部が別の核酸分子で置換されているもの等が挙げられる。また、PKAの機能低下乃至欠損には、上記コード領域への核酸分子の付加、欠失及び置換だけでなく、PKAが一定の条件下でのみ発現されるように設計された、コンディショナルな遺伝子欠損も含まれる。
PKA変異株の作製方法としては、公知の方法(例えば、非特許文献3〜5に記載の方法)を適宜用いて、PKAの破壊カセットの構築及びゲノム遺伝子への当該カセットの導入等により行うことができる。その他、変異の種類や方法は特に限定されず、例えば、当業者にとって公知の部位特異的に変異を導入する方法、ランダムに変異を導入する方法、変異原となる薬剤を作用させる方法、紫外線照射法、タンパク質工学的手法等を広く用いることができる。
本発明において利用するPKA変異株の作製に使用する糸状菌としては、例えば、アスペルギルス属、トリコデルマ属、ペニシリウム属、セファロスポリウム属、アクレモニウム属、ノイロスポラ属、フザリウム属等が挙げられる。これらのうち、アスペルギルス属が好ましい。
本発明において利用するPKA変異株の作製に用いるアスペルギルス属の糸状菌としては、例えば、アスペルギルス ニドランス、アスペルギルス オリゼ、アスペルギルス ニガー、アスペルギルス リューチューエンシス、アスペルギルス フミガタス、アスペルギルス ソーヤ等が挙げられ、アスペルギルス ニドランス、アスペルギルス オリゼ、又はアスペルギルス ニガーが好ましい。
本発明において利用するPKA変異株の作製に使用する酵母としては、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、ジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属等が挙げられる。
本発明にて使用する、PKA変異株は易資化性炭素源が存在する条件下において、糸状菌や酵母が通常産生する種々の酵素、例えばタンパク質分解系加水分解酵素や多糖分解系加水分解酵素、更には酸化還元酵素をコードする遺伝子の発現が有意に亢進しているか、このような加水分解酵素の活性が有意に増大している。限定することを意図するものではないが、PKA変異株において活性が増大する加水分解酵素として多糖分解酵素、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素などがある。より具体的には、このような加水分解酵素として、アミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ペプチターゼ、エステラーゼなどが挙げられる。酸化還元酵素の例としては、デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)、オキシダーゼ(酸化酵素)、レダクターゼ(還元酵素)、オキシゲナーゼ(酸素化酵素)等がある。
PKA変異株の効果、例えば向上した加水分解酵素活性を損なわない限り、培養物の調製の途中又はその前後の工程で変異株以外の菌を添加して培養物を処理してもよい。その他の工程については、所望とする用途に応じて当業者が適宜決定することができる。例えば、PKA変異株を用いて加水分解酵素を製造する場合、その製造方法は変異株を培養する工程、加水分解酵素等を菌株に生産させる工程、そして任意に、得られた酵素等を回収する工程、を含んでもよい。
変異株に生産させた酵素等の回収方法としては、特に限定されず、公知の方法(遠心分離、塩析、クロマトグラフィー等)を適宜用いることができる。
本発明における酵素類の製造で用いる培地としては、特に限定されず、糸状菌および酵母の培養に用いることができるものを広く使用することができる。例えば、CD最少培地、YPD培地、TSB培地、モルト培地、PDA培地、SD最少培地等が挙げられる。上記培地には、炭素源として、グルコース、デンプン、セルロース、キシラン、マンナン等を添加してもよい。かかる炭素源の添加量としては特に限定されないが、例えば、0.5〜10%、より好ましくは1〜4%の範囲で適宜設定できる。培養温度は特に限定されず、20〜45℃、より好ましくは25〜37℃の範囲で適宜設定できる。培養時間も特に限定されないが、例えば、12〜72時間、より好ましくは24〜48時間の範囲で適宜設定できる。
本発明による酵素類の製造方法は、バイオマスの分解によるバイオエタノールの生産(セルラーゼ等を高生産するよう遺伝子組換えをしたカビを使用するもの等)等にも適用することも可能である。
本発明は更に、PKA変異株を用いた、有機性材料の加水分解物の製造方法を提供する。本発明はPKA変異株を含む培養物又はその抽出物を、タンパク質や多糖を多く含む有機性材料の加水分解工程に使用することを特徴とする。例えば、タンパク質を含む材料として、穀物類、野菜類(例えば、大豆、小麦など)、肉類、魚類などが挙げられる。本明細書で使用する場合、「培養物」は変異株を添加した麹や、更には変異株を利用して得られる諸味等の発酵物を意味する。
本発明にて使用する培養物は、上記変異株と有機性材料とを接触させる工程を含む方法により製造することができる。変異株を添加するタイミングは特に限定されない。
本発明における有機性材料の加水分解物の製造方法は、向上した加水分解酵素活性により処理されることが必要な種々の分野、特に醸造・発酵産業での使用が想定される。例えば、本発明を醤油、味噌、日本酒、及び焼酎等の発酵生産に用いた場合には、原料の分解がより促進され、発酵生産物の生産性を向上させるうることが期待される。
以下、実施例に即して本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの記載によって、なんら制限されるものではない。
アスペルギルス ニドランス及びアスペルギルス オリゼのpkaA破壊株の構築
PkaAのカーボンカタボライト抑制への関与を調査するために、アスペルギルス ニドランス及びアスペルギルス オリゼのpkaA遺伝子破壊株を作製した。アスペルギルス ニドランスでは、pyroA遺伝子を選択マーカーとして用いたpkaA破壊のためのDNAフラグメントを構築し、得られたDNAフラグメントを親株に挿入した(図1)。
アスペルギルス オリゼでは、pyrG遺伝子(AO090011000868)を選択マーカーとして用いたpkaA破壊のためのDNAフラグメントを構築し、得られたDNAフラグメントを親株に挿入した(図2)。
細胞株及び培地
アスペルギルス ニドランスのpkaA遺伝子破壊には、ABPU1株(biA1 pyrG89;wA3;argB2;pyroA4)を親株として用いた。
アスペルギルス オリゼのpkaA破壊には、RkuptrP2−1ΔAF株(ΔpyrG,ku70::ptrA,Δaflatoxin cluster)(Takahashi et al, 2008, Appl. Environ. Microbiol. 74: 7684−7693)を親株として使用した。
なお、RkuptrP2−1ΔAF株は、ゲノム配列が公開されているアスペルギルス オリゼRIB40株の誘導体である(Machida et al, 2005, Nature. 438:1157−1161)。プラスミドDNAの構築には、Escherichia coli XL1−Blueを用いた。
アスペルギルス ニドランスの培養のための最少培地(MM)としては、0.085%NaNO3、0.052%KCl、0.152%KH2PO4、0.052%MgSO4・7H2O、0.15% trace element solution (0.004%Na247・10H2O、0.04%CuSO4・5H2O、0.08%FeSO4・H2O、0.08%MnSO4・4H2O、0.08%Na2MoO4・2H2O、0.8%ZnSO4・7H2O)を含み、炭素源として2%グルコースを含むpH6.5のものを使用した。
また、菌株の栄養要求性に応じて0.1%ウリジン、0.001%ビオチン、0.0526%アルギニン、0.00025%ピリドキシン塩酸塩を添加した。アスペルギルス オリゼの培養のための最少培地としては、0.1%KH2PO4、0.05%KCl、0.2%NaNO3、0.05%MgSO4・7H2O、0.001%FeSO4・7H2Oを含み、炭素源として2%のグルコースを含むpH5.5のものを使用した。アスペルギルス オリゼの培養のための完全培地には、2%デキストリン、1%ポリペプトン、0.5%KH2PO4、0.1%NaNO3、0.05%MgSO4・7H2O、0.1%カザミノ酸を含むpH6.0のデキストリン‐ペプトン培地を使用した。また、ウラシル要求性株の培養を行う際には、培地に終濃度が15mMになるようウリジンを添加した。
アスペルギルス ニドランスpkaA破壊用プラスミドDNAの構築
アスペルギルス ニドランスにおけるpkaA破壊のためのプラスミドを以下のように構築した。pkaAの5‘-フランキング領域を配列番号5と配列番号6をプライマーとして用い、テンプレートをアスペルギルス ニドランスABPU1株のクロモゾームDNAとしてPCRで増幅した。これを、NotIとSpeIで切断し、pBluescript II KS+のPstI-BamH I部位にアスペルギルス ニドランス由来のpyroA遺伝子を持つプラスミドpPyroAのNotI−SpeI部位に挿入した。
次に、3’-フランキング領域を配列番号7と配列番号8をプライマー、ABPU1株のクロモゾームDNAテンプレートとしてPCRで増幅し、ClaIとApaIで切断し、上記で作製したプラスミドのClaI−ApaI部位に挿入して、pkaA破壊カセットを有するプラスミドpDpkaAを取得した。
使用したプライマーの塩基配列を以下に示す。
A. オリゼpkaA破壊用ベクターのFusion PCRによる構築
A. オリゼのpkaA破壊用ベクターは、Fusion PCR法を用いて調製した。本方法でのベクターの作製手順は、1段階目のPCR(1st PCR)にてベクターの構成要素となるDNAフラグメント(DNAフラグメントL、P及びR)をそれぞれ増幅させ精製、混合したのち、これを鋳型としたFusion PCRを行うことで、各フラグメントが結合された形質転換用ベクターを得るというものである。
1st PCR用酵素にはTOYOBO社のKOD Plus Neoを、鋳型にはアスペルギルス オリゼ RIB40株由来のクロモゾームDNA(1反応あたり20 ng)を使用し、全量40 μLにて反応を実施した。また、使用したプライマーとしては、DNAフラグメントL(left−arm)の増幅には配列番号9と10を、フラグメントP(AOpyrGマーカー)の増幅には配列番号11と12を、そしてフラグメントR(right−arm)の増幅には配列番号13と14をそれぞれ使用した。1st PCRの温度サイクルの条件は、94℃ 2分間の加熱ののち、98℃ 10秒間、60℃ 10秒間、68℃ 5分間を35サイクルとした。
(下線は、Fusion PCR用の付加配列を示す)
得られた1st PCR産物全量を電気泳動後、QIAGEN社のゲル抽出キットを用い精製した。この精製DNAフラグメントを各20μLずつ混合し、そのうち16μLをFusion PCR用の鋳型として使用した。Fusion PCR実施時のプライマーとしては、配列番号9と配列番号14を使用した。
PCR用酵素は、1st PCRと同様にKOD Plus neoを使用し、全量320μLで反応を行った。Fusion PCRの温度サイクルの条件は、94℃2分間の加熱ののち、98℃10秒間、68℃10分間を35サイクルとした。
アスペルギルス ニドランスの形質転換
Balance and Turner (Balance, D. J., and Turner, G. 1985. Development of a high−frequency transforming vector for Aspergillus nidulans. Gene. 36:321−331.)の方法に従い、アスペルギルス ニドランスの形質転換を行った。
形質転換には、pDpkaAプラスミドをNotIとApaIで切断して取得したpkaA破壊カセットを使用した。
A. オリゼの形質転換
アスペルギルス オリゼの形質転換は、プロトプラスト−PEG法により実施した(Takahashi et al. 2004. Efficient gene disruption in the koji−mold Aspergillus sojae using a novel variation of the positive−negative method. Mol. Gen. Genomics, 272:344−32)。形質転換には、Fusion PCR法により増幅した320μLのDNAフラグメントを、2−プロパノール沈殿により10μLまで濃縮したものを、遺伝子破壊用カセットとして使用した。プロトプラストの再生には、1.2M のソルビトールを添加したA. オリゼ用最少培地を使用した。
形質転換体の確認
A. ニドランス及びA. オリゼの形質転換体を培養後、常法にしたがってクロモゾームDNAを抽出した。本クロモゾームDNAを用いたサザンブロット解析を行い、pkaA遺伝子破壊が正しく行われ、かつ、核が純化された状態であるかを確認した。その結果、A. アスペルギルス ニドランス及びA. オリゼともに、目的とする遺伝子破壊が正しく行われ、かつ、核が純化されている状態の菌株が複数得られていることが確認できた(Data not shown)。
pkaA破壊がアスペルギルス ニドランスのカーボンカタボライト抑制に与える影響
カーボンカタボライト抑制に対するpkaA遺伝子破壊の影響を調べるため、1%CMCと1%グルコース、1%コンニャクマンナンと0.5%グルコース、1%デンプンと1%グルコースを含む寒天最少培地上で各株を増殖させ、セルラーゼ、マンナナーゼ、アミラーゼ活性をそれぞれの多糖の解により形成されるクリアゾーン(ハロー)として検出した。
プレートアッセイの実験方法
A. ニドランス のpkaA破壊株は、実施例1にて作製したものを、creA変異株としてはCA4株(biA1 creA204;wA3;argB2)を使用した。また、本実施例においては、pkaA破壊株(ΔpkaA)、creA変異株(creA204)と同一の栄養要求性を持つABU株(biA1 pyrG89;wA3;argB2)を野生株 (WT)とし、これを比較対象として用いた。
セルラーゼアッセイ用のプレートには、実施例1に記載した最少培地のグルコースの代わりに、1%CMCと0.1%TritonX−100を含むものを用いた。
pkaA破壊株(ΔpkaA)、creA変異株(creA204)及びABU株(WT)の分生子懸濁液を、セルラーゼアッセイ用プレートにスポットして37℃で培養した。培養後、0.1% Congo Redを重層して染色し、1M NaCl溶液で脱色することにより、CMC分解活性をハローとして検出した。マンナナーゼのプレートアッセイもセルラーゼのプレートアッセイと同様の手法で行った。ただし、炭素源として0.5% コンニャクマンナンを用いた。アミラーゼのプレートアッセイでは炭素源として1%可溶性デンプンを用い、培養後ヨードデンプン反応でデンプン分解活性を検出した。
プレートアッセイ結果
野生株(WT)とcreA変異株(creA204)は、CMC、コンニャクマンナンでハローをほとんど形成せず、creA変異株ではデンプンで巨大なハローを形成した。一方、pkaA破壊株(ΔpkaA)は、CMC、コンニャクマンナンで巨大なハローを、デンプンでは微小なハローを形成した (図3)。
この結果は、pkaAの破壊がグルコースによるセルラーゼ、マンナナーゼ、アミラーゼ生産のカーボンカタボライト抑制の緩和を引き起こすこと、その効果はセルラーゼ、マンナナーゼ生産において顕著であること、CreAに依存した抑制とPkaAに依存した抑制は異なることを明確に示している。
グルコース以外の炭素源によるカーボンカタボライト抑制に対するアスペルギルス ニドランスpkaA破壊の影響
グルコース以外の炭素源によるカーボンカタボライト抑制に対するpkaA破壊の影響を調べるために、セルラーゼアッセイ用プレートに各種炭素源を添加した条件にてハロアッセイを実施した。
アッセイ方法
実施例2に記載したセルラーゼプレートアッセイ用の最少培地(1%CMCと0.1% TritonX−100を含む)に、1%グルコース、マンノース、フラクトース、キシロース、あるいはソルビトールを添加し、各菌株の分生子懸濁液をスポットして37℃で培養した。培養後、0.1%Congo Redを重層して染色し、1M NaCl溶液で脱色することにより、CMC分解活性をハローとして検出した。
ハロアッセイの結果を図4に示す。野生株(WT)は、CMC単独の培地においては明確なハローを形成するのに対し、グルコースだけでなく、マンノース、フラクトース、キシロースの添加によりハロー形成が消失し、ソルビトール添加でハロー径が減少した。creA変異株(creA204)ではグルコースだけでなく、マンノースの添加によりハロー形成が消失し、フラクトース、キシロースで微小なハローを形成、ソルビトールでは顕著なハローを形成した。一方、pkaA破壊株(ΔpkaA)ではグルコースに加えてマンノースで顕著なハローを形成し、他の抑制炭素源ではcreA変異株(creA204)と同等であった。
以上から、pkaA破壊は、グルコースとマンノースによるセルラーゼ生産抑制を高度に解除するとともに、フラクトース、キシロース、ソルビトールによる抑制もcreA変異と同等なレベルで解除することが明らかである。
pkaA破壊がアスペルギルス オリゼのセルラーゼ生産に与える影響
実施例2に示す通り、アスペルギルス ニドランスではpkaAの破壊が、本菌株のセルラーゼ生産時におけるカーボンカタボライト抑制を顕著に緩和することが明らかとなった。そこで、同様の現象が工業的に利用される菌株であるアスペルギルス オリゼでも見られるか検討を行った。なお、A. オリゼのもともとセルラーゼ生産量は、A.ニドランスと比べ弱いことが知られている。そのため本実施例では、CMCのみをセルラーゼの誘導物質として使用する実験に加え、CMCとともにセルラーゼ生産の誘導物質であるセロビオースを添加した条件での検討も実施した。
使用した菌株
アスペルギルス オリゼのpkaA破壊株(ΔAOpkaA)は実施例1にて作製したものを使用した。creA遺伝子破壊株(ΔAOcreA)は、配列番号15〜20に記すオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、実施例1のA. オリゼpkaA破壊株と同様の方法にて作製したものを用いた。creA破壊の親株には、RkuN16ptr1株(ΔpyrG,ku70::ptrA)(Takahashi et al, 2006, Mol Genet. Genomics. 275:460-470)を用いた。また、本実施例では、A. オリゼΔAOpkaA株及びΔAOcreA株と同様に、ku70がピリチアミン耐性遺伝子(ptrA)の挿入により破壊され、栄養要求性を持たないRkuptrP2-1ΔAF/P株 (ku70::ptrA,Δaflatoxin cluster)(Ogawa et al, 2010, Fungal. Genet. Biol. 47:10-18)を、A. オリゼの野生株(AOWT)とし、これを比較対象として用いた。
プレートアッセイの実験方法
セルラーゼのプレートアッセイには、0.1% KH2PO4、0.05% KCl、0.2% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O、0.001% FeSO4・7H2O、1.0% CMC、0.1% Triton X−100及び2% Agarを含むpH5.5の寒天培地を使用した。
セルラーゼ生産の誘導物資を含むアッセイ条件では、上記培地に終濃度が0.1%となるようセロビオースを添加したものを使用した。CMCのみ、若しくはCMCにセロビオースを添加したアッセイ用培地に対し、0から1.0%の範囲にてグルコースを添加したものを作製し、これにΔAOpkaA株、ΔAOcreA株及び野生株(AOWT株)の分生子懸濁液を接種し、30℃にて4日間培養した。培養終了後、プレートに0.125%のCongo−Redを重層し、室温にて1時間染色したのち、1.0MのNaCl溶液にて複数回洗浄し、セルラーゼ活性によって生じるハローを検出した。
セロビオースを含まない条件でのハロアッセイの結果を図5に示す。セルラーゼの誘導物質が存在しない条件での、A. oryzaeのセルラーゼ生産量は少ないため、いずれの株のハローも小さい状態であるが、ΔAOpkaA株のハローは0〜0.25%のグルコース濃度の範囲において、野生株よりも若干大きくなり、カーボンカタボライト抑制が緩和される傾向が見られた。一方、ΔAOcreAではグルコース濃度が上がるごとにハローのサイズは小さくなり、カーボンカタボライト抑制が緩和される傾向は見られなかった。
セロビオースを含む条件でのハロアッセイの結果を図6に示す。0%グルコース条件の野生株において、図5よりもハローが顕著に大きくなっていることが分かる。このことから、本実験条件にて添加したセロビオースが、A . オリゼのセルラーゼ(CMC分解酵素)の生産の誘導物質として機能していることが確認できた。また興味深いことに、0%グルコース条件のときのΔAOpkaA株のハローのサイズが、野生株と比較して顕著に大きくなっていることが確認された。
その原因としては、野生株ではグルコースを添加していない条件でも、セルラーゼの反応によって生じたグルコースによりカーボンカタボライト抑制が発生しているが、ΔAOpkaAではそのカーボンカタボライト抑制が緩和された状態にあると推察される。また、ΔAOpkaA株では0から0.5%のグルコース存在下で、野生株よりもセルラーゼのハローが明らかに大きくなる傾向が観測された。一方、そのような現象はΔAOcreA株では見られなかった。
以上のことから、A. オリゼでもA. ニドランスと同様に、セルラーゼ生産におけるカーボンカタボライト抑制には、CreAよりもPkaAのほうが強く関与していることが明らかとなった。
pkaA破壊がアスペルギルス オリゼのマンナナーゼ生産に与える影響
実施例2に示した通り、アスペルギルス ニドランスではマンナナーゼの生産のカーボンカタボライト抑制についても、PkaAがCreAよりも強く関与することが見出された。そこで、アスペルギルス オリゼでも同様の現象がみられるか検討を行った。
アッセイ方法
マンナンーゼアッセイには、実施例4に記したセルラーゼアッセイ用プレートの1%CMCを、0.8%コンニャクグルコマンナンに置き換えたものを使用した。本マンナナーゼアッセイ用培地に、0から2.0%の範囲にてグルコースを添加したものを作製し、これにΔAOpkaA株、ΔAOcreA株及びコントロールであるAOWT株の分生子懸濁液を接種し、30℃にて3日間培養した。培養終了後、実施例4に示すセルラーゼのプレートアッセイと同様に染色・脱色を行い、ハローを検出した。
マンナナーゼについてのアッセイの結果を図7に示す。ΔAOpkaA株では、0%グルコース条件において、セルラーゼ程ではないが野生株よりもハローのサイズが大きくなった。
また、ΔAOcreA株については、0.25%のグルコースが存在した時点で、ハローが完全に消失してしまったが、ΔAOpkaA株では0.25%グルコース条件でもハローのサイズは野生株よりも大きく、その傾向は1.0%グルコース存在下でも維持された。
以上のことから、A. オリゼのマンナナーゼ生産についても、A. ニドランスと同様に、PkaAのほうがCreAよりも強くカーボンカタボライト抑制に関与していることが明らかとなった。
1%CMCと0.1%セロビオースを炭素源とした液体培養条件でのアスペルギルス オリゼpkaA破壊株を用いたセルラーゼ生産試験
実施例4のプレートアッセイに示す通り、A. オリゼのpkaA破壊株は、グルコース添加していない条件においても、野生株よりセルラーゼ生産が多くなることが確認された。そこで、pkaA破壊株を液体培養によるセルラーゼ生産試験に供し、pkaA破壊株による酵素生産が液体培養時にも野生株と比べて増加するか検討を行った。なお、本実施例では、1%CMCと0.1%のセロビオースを炭素源とした条件にて試験を行った。
培養及び粗酵素液の調製方法
セルラーゼ生産試験用培地には、0.1%KH2PO4、0.05%KCl、0.2% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O、0.001% FeSO4・7H2O、1.0%CMC及び0.1%セロビオースを含むpH5.5のものを使用した。200mL三角フラスコに、上記培地を20mL加え、綿栓をし、オートクレーブにより滅菌した。
これに、ΔAOpkaA株、ΔAOcreA株及び野生株の分生子を1×107個ずつ接種し、30℃、160rpmで4日間培養した。培養終了後、培養液をミラクロス(カルビオケム社製)によりろ過し、培養液と菌体を分離した。得られた培養液の全回収液量を測定したのち、これを酵素活性測定用の粗酵素溶液として用いた。本試験については、各検体とも培養から独立した3連にて実施した。
乾燥菌体重量の測定
ミラクロスを10cm角に切ったのち重量を予め測定しておき、これを培養液のろ過に使用した。培養液のろ過後ミラクロス上に回収された菌体を、150mLの蒸留水により洗浄したのち、菌体の入ったミラクロスをペーパータオルにはさみ、上から強く押すことで菌体に含まれる水分を出来る限り除去した。これを−80℃にて1時間以上凍結させたのち凍結乾燥機にて一晩乾燥させた。乾燥終了後、乾燥菌体の入った状態のミラクロスの乾燥物総重量を測定した。
乾燥菌体重量は、以下の式に従い算出した。
乾燥菌体重量 = 乾燥物総重量(ミラクロス+乾燥菌体)−ミラクロスのみの重量
酵素活性測定法
回収した培養液400μLに、100mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を400μL加えて2倍に希釈するとともにpHを調整した。
基質溶液である2.0% AZO−CM−Cellulose (MEGAZYME社製のものをpH4.5の50mM酢酸ナトリウム緩衝液に溶解)150μLに、緩衝液により2倍希釈した粗酵素溶液(培養液)を150μL加え、ボルテックスミキサーにより10秒間撹拌したのち、40℃にて60分間反応させた。
反応液に750μLの反応停止液(2%酢酸ナトリウム/0.2%酢酸亜鉛溶液pH5.0と99.5%エタノールを1:4で混合したもの)を加えて、ボルテックスミキサーにより撹拌し、10分間室温で静置したのち、800 x g で10分間遠心分離した。この上清の、酵素反応により遊離したアゾ色素の吸収極大である590nmにおける吸光度を測定することにより、セルラーゼ活性を定量した。
吸光度測定値のセルラーゼのユニット(mU/mL)への換算には、MEGAZYME社のAZO−CM−Cellulose(Lot90504)の取扱い説明書に記載されている検量線を使用した。全セルラーゼ活性及び単位菌体あたりのセルラーゼ活性の算出には以下の式を使用した。

全セルラーゼ活性 = セルラーゼ活性測定値(mU/mL)× 希釈倍率(2.0)×全回収液量(mL)

単位菌体あたりのセルラーゼ活性 = 全セルラーゼ活性 (mU) ÷ 乾燥菌体重量 (mg)
活性測定結果
液体培養でのセルラーゼ生産試験の結果を、図8に示した。ΔAOcreA株では、全セルラーゼ活性量が野生株(AOWT株)よりも3.8倍増加していた。ΔAOpkaA株のセルラーゼ生産量はΔAOcreA株よりも多くなり、ΔAOcreA株の4.2倍、野生株と比較すると15.9倍もの高い活性が見られた。
また、乾燥菌体重量については、野生株とΔAOcreA株とでは有意な差はなかったが、ΔAOpkaA株では野生株よりも約1.8倍、菌体量が多くなった。単位菌体あたりの酵素生産量としては、ΔAOcreAでは野生株よりも3.8倍上昇していたが、ΔAOpkaA株ではこれをさらに上回り、野生株の8.8倍にまで大幅に増加した。
以上の通り、アスペルギルス オリゼにおけるpkaAの破壊は、液体培養でのセルラーゼ生産においても、creA破壊よりも大きな効果が有ることが確認された。
アビセルを炭素源とした液体培養条件でのアスペルギルス オリゼpkaA破壊株を用いたセルラーゼ生産試験
実施例6に記したCMCとセロビオースを炭素源とした実験において、アスペルギルス オリゼのpkaA破壊は、本菌のカーボンカタボライト抑制を緩和し、それにより本菌のセルラーゼ生産の増加を促すことが明らかとなった。そこで本実施例では、酵素産業でのセルラーゼ生産条件に近い状態で試験を行うことを目的とし、結晶性セルロースであるAvicel(登録商標))(シグマ-アルドリッチ社製)を炭素源としたセルラーゼ生産実験を行った。
培養及びアッセイ方法
酵素生産試験用培地には、実施例6に示した液体培地の1.0%CMCと0.1%セロビオースを、2%Avicel(登録商標)(シグマ-アルドリッチ社製)に置換したものを用いた。150mL容三角フラスコに、上記培地を20mL加え、綿栓をし、オートクレーブにより滅菌した。滅菌後の培地に、ΔAOpkaA株、ΔAOcreA株及び野生株の分生子を1×107個ずつ接種し、30℃、150rpmで4日間培養した。培養液をADVANTEC社のNo.5Aのろ紙によりろ過し、固形物(菌体+Avicel(登録商標))を除去した。
得られたろ液の全回収液量を測定したのち、これを酵素活性測定用の粗酵素溶液として用いた。セルラーゼ活性測定法及び全セルラーゼ活性の計算は、実施例6に記したものと同じ方法を用いた。
また、本実施例における実験条件では、菌体とアビセルを分離することができなかったため、乾燥菌体重量の測定及び単位菌体あたりのセルラーゼ活性の算出は行わなかった。
活性測定結果
セルラーゼ活性測定結果を図9に示す。ΔAOpkaA株の総セルラーゼ活性は、野生株よりも2.5倍上昇していたが、ΔAOcreA株の全セルラーゼ活性は野生株よりも1.3倍程度しか上昇していなかった。本実施例では、ΔAOpkaA株及びΔAOcreA株と、野生株との差が実施例6に示したデータよりも差が小さくなる傾向が見られた。しかしこれは、野生株のセルラーゼ生産量がCMCとセロビオースを炭素源として使用したとき(実施例6)よりも、大幅に高くなっているためであり(5.3倍Avicel(登録商標)培養が高い)、ΔAOpkaA株の全セルラーゼ活性自体は、実施例6と比べて15%程度減少するにとどまっていた。
以上の結果から、工業的酵素生産条件に近いAvicel(登録商標)を炭素源としたセルラーゼ生産条件でも、A. オリゼpkaAの破壊は、カーボンカタボライト抑制の緩和によるセルラーゼ生産の増加に対して大きな効果があることが分かった。
アスペルギルス オリゼpkaA破壊株を用いたマンナナーゼ生産試験
実施例2にて示した通り、アスペルギルス ニドランスのPkaAは、マンナナーゼ生産におけるカーボンカタボライト抑制にもCreA以上に関与していた。そこで、本現象がアスペルギルス オリゼのPkaAでも見られるのか検証した。
培養、粗酵素溶液の調製及び乾燥菌体重量測定方法
マンナナーゼ生産試験用培地には、0.1% KH2PO4、0.05% KCl、0.2% NaNO3、0.05% MgSO4・7H2O、0.001% FeSO4・7H2O、0.8%コンニャクグルコマンナン (MEGAZYME社製、Low Viscosity)を含むpH5.5のものを使用した。200mL三角フラスコに、上記培地を20mL加え、綿栓をし、オートクレーブにより滅菌した。これに、ΔAOpkaA株、ΔAOcreA株及び野生株の分生子を1×107個ずつ接種し、30℃、160rpmで3日間培養した。培養終了後、実施例6(CMCとセロビオースを炭素源としたときのセルラーゼ生産試験)と同じ方法にて粗酵素溶液(培養液)の回収を行い、全回収液量の測定を行った。また、乾燥菌体重量の測定についても、実施例6に記したものと同じ方法にて測定した。
マンナナーゼ活性測定法
回収した粗酵素溶液(培養液)500μLに、2.0Mの酢酸ナトリウム緩衝液 (pH4.5)を25μL加えて、pHを調整した(溶液は1.05倍希釈されたことになる)。基質溶液である2% Azo-カロブガラクトマンナン(MEGAZYME社製のものをpH4.5の50mM酢酸ナトリウム緩衝液に溶解)150μLに、pH調整を行った粗酵素溶液150μLを加え、ボルテックスミキサーにより10秒間撹拌したのち、40℃にて60分間反応させた。反応液に750μLの99.5%のエタノールを加えてボルテックスミキサーにより撹拌し、10分間室温で静置したのち、800 x g で10分間遠心分離した。この上清の、酵素反応により遊離したアゾ色素の吸収極大である590nmにおける吸光度を測定することにより、マンナナーゼ活性を定量した。
吸光度測定値のマンナナーゼのユニット(mU/mL)への換算には、MEGAZYME社のAzo-カロブガラクトマンナン(Lot 00601)の取扱い説明書に記載されている検量線を使用した。全マンナナーゼ活性及び単位菌体あたりのマンナナーゼ活性の算出には、以下の式を使用した。
全マンナナーゼ活性 =マンナナーゼ活性測定値(mU/mL)×希釈倍率(1.05)×総回収液量(mL)

単位菌体あたりのマンナナーゼ活性 = 全マンナナーゼ活性(mU)÷乾燥菌体重量 (mg)
酵素活性測定結果
コンニャクグルコマンナンを炭素源とした培養では、ΔAOcreA株では生育が非常に悪く、乾燥菌体重量が野生株の20%以下まで低下した。それにともない、ΔAOcreA株のマンナナーゼの生産量も極端に低いものとなった。一方、ΔAOpkaA株のコンニャクグルコマンナン上での生育は野生株と変わりは無く、マンナナーゼ生産量は野生株よりも35%程度増加していた。また、この活性上昇に伴い単位菌体あたりの酵素生産量についても野生株よりも35%程度増加していた。このように、A. オリゼのマンナナーゼ生産においても、pkaAの遺伝子破壊は正の効果を示すことが明らかとなった。
実施例2から8に示した通り、PkaAは、糸状菌アスペルギルス ニドランス及びアスペルギルス オリゼのカーボンカタボライト抑制に大きく寄与していることが明らかとなった。そのため、pkaA遺伝子を破壊した糸状菌は、カーボンカタボライト抑制が解除され、各種加水分解酵素類の生産が増強されると考えられる。このような糸状菌は、それを用いた酵素等の製造や有機性材料の加水分解産物の製造に利用することができ、産業上非常に有用である。

Claims (14)

  1. タンパク質リン酸化酵素A(PKA)の機能が低下又は欠損する変異が導入されている糸状菌又は酵母の変異株を用いた、酵素類の製造方法。
  2. 前記変異株においてPKAをコードする遺伝子の一部又は全部が欠失している、請求項1に記載の酵素類の製造方法
  3. 糸状菌PKA変異株がアスペルギルス(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、ペニシリウム(Penicillium)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、アクレモニウム(Acremonium)属、ノイロスポラ(Neurospora)属又はフザリウム(Fusarium)属に属する、請求項1又は2に記載の酵素類の製造方法。
  4. 前記アスペルギルス属に属する菌がアスペルギルス ニドランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス リューチューエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)又はアスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)である、請求項3に記載の酵素類の製造方法。
  5. 酵母PKA変異株が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、ジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属に属する、請求項1又は2に記載の酵素類の製造方法。
  6. 前記PKA変異株が、野生株と比較して、加水分解酵素及び/又は酸化還元酵素をコードする遺伝子の発現が亢進しているか、加水分解酵素活性及び/又は酸化還元酵素活性が増大している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酵素類の製造方法。
  7. 前記加水分解酵素が多糖分解酵素、タンパク質分解酵素及び/又は脂質分解酵素である、請求項6に記載の酵素類の製造方法。
  8. 前記多糖分解酵素が、セルラーゼ、マンナナーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ及びペクチンリアーゼから成る群から選択される、請求項7に記載の酵素類の製造方法。
  9. 前記PKA変異株の野生型におけるPKAをコードする遺伝子が、配列番号1に示す塩基配列よりなるか、あるいは配列番号1と80%以上、好ましくは90%以上の配列同一性を有する塩基配列よりなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の酵素類の製造方法。
  10. 前記PKA変異株の野生型におけるPKAが、配列番号2に示すアミノ酸配列よりなるか、あるいは配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列よりなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の酵素類の製造方法。
  11. 前記PKA変異株の野生型におけるPKAをコードする遺伝子が、配列番号3に示す塩基配列よりなるか、あるいは配列番号3と80%以上、好ましくは90%の配列同一性を有する塩基配列よりなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の酵素類の製造方法。
  12. 前記PKA変異株の野生型におけるPKAが、配列番号4に示すアミノ酸配列よりなるか、あるいは配列番号4に示すアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列よりなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の酵素類の製造方法。
  13. 有機性材料の加水分解産物の製造方法であって、請求項1〜12のいずれか1項に記載の糸状菌又は酵母のPKA変異株の培養物、又はその抽出物と有機性材料とを接触させる工程を含む、製造方法。
  14. 前記加水分解産物が醤油、味噌、日本酒及び焼酎から成る群から選択される発酵生産物である、請求項13に記載の製造方法。
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