JP7285780B2 - 誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生 - Google Patents

誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生 Download PDF

Info

Publication number
JP7285780B2
JP7285780B2 JP2019539732A JP2019539732A JP7285780B2 JP 7285780 B2 JP7285780 B2 JP 7285780B2 JP 2019539732 A JP2019539732 A JP 2019539732A JP 2019539732 A JP2019539732 A JP 2019539732A JP 7285780 B2 JP7285780 B2 JP 7285780B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ace3
seq
protein
promoter
gene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019539732A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019528797A (ja
JP2019528797A5 (ja
Inventor
ウォード、マイケル
ルオ、ユン
オセアス ベンデズ、フェリペ
ヴァルコネン、マリ
サロヘイモ、マルック
アロ、ニナ
パクラ、ティーナ
Original Assignee
ダニスコ・ユーエス・インク
ヴィーティーティー テクニカル リサーチ センター オブ フィンランド リミテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ダニスコ・ユーエス・インク, ヴィーティーティー テクニカル リサーチ センター オブ フィンランド リミテッド filed Critical ダニスコ・ユーエス・インク
Publication of JP2019528797A publication Critical patent/JP2019528797A/ja
Publication of JP2019528797A5 publication Critical patent/JP2019528797A5/ja
Priority to JP2023084937A priority Critical patent/JP2023109919A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7285780B2 publication Critical patent/JP7285780B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • C12N9/24Hydrolases (3) acting on glycosyl compounds (3.2)
    • C12N9/2402Hydrolases (3) acting on glycosyl compounds (3.2) hydrolysing O- and S- glycosyl compounds (3.2.1)
    • C12N9/2405Glucanases
    • C12N9/2434Glucanases acting on beta-1,4-glucosidic bonds
    • C12N9/2437Cellulases (3.2.1.4; 3.2.1.74; 3.2.1.91; 3.2.1.150)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/80Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for fungi
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/37Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from fungi
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N1/00Microorganisms, e.g. protozoa; Compositions thereof; Processes of propagating, maintaining or preserving microorganisms or compositions thereof; Processes of preparing or isolating a composition containing a microorganism; Culture media therefor
    • C12N1/14Fungi; Culture media therefor
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
    • C12P21/02Preparation of peptides or proteins having a known sequence of two or more amino acids, e.g. glutathione
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12YENZYMES
    • C12Y302/00Hydrolases acting on glycosyl compounds, i.e. glycosylases (3.2)
    • C12Y302/01Glycosidases, i.e. enzymes hydrolysing O- and S-glycosyl compounds (3.2.1)
    • C12Y302/01004Cellulase (3.2.1.4), i.e. endo-1,4-beta-glucanase

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

関連出願の相互参照
本願は、2016年10月4日に出願された米国仮特許出願第62/403,787号明細書の優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
配列表
EFSを介し、添付して提出した配列表テキストファイルには、2017年10月2日に作成した、サイズが157キロバイトのファイル「NB41159WOPCT_SEQLISTING.txt」が含まれている。この配列表は、37C.F.R.§1.52(e)に適合しており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
分野
本開示は、一般に、分子生物学、生化学、タンパク質の産生および糸状菌の分野に関する。本開示の特定の実施形態は、1つ以上の目的タンパク質の産生を増加させるための、変異糸状菌細胞、その組成物、およびその方法に関する。より詳しくは、特定の実施形態において、本開示は、親糸状菌細胞由来の変異糸状菌(宿主)細胞に関し、この変異宿主細胞は、誘導基質の非存在下での1つ以上の目的タンパク質(POI)の発現/産生を可能にする遺伝子の改変を含む。
リグノセルロース植物物質の成分であるセルロースは、自然界に見られる最も豊富な多糖類である。同様に、糸状菌は植物バイオマスの効率的な分解菌であることが当該技術分野で知られており、実際、工業に関連したリグノセルロース分解酵素(以下、集合的に「セルラーゼ」酵素と呼ぶ)の主要な供給源である。例えば、糸状菌はセルロースのβ-(1,4)結合グリコシド結合を加水分解してグルコースを生成する細胞外セルラーゼ酵素(例えば、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、β-グルコシダーゼ)を産生することが知られている(すなわち、そのことにより、これらの糸状菌が増殖のためにセルロースを利用する能力を付与する)。
特に、糸状菌トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(T.リーゼイ(T.reesei);真菌ハイポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)のアナモルフ)は、セルラーゼ酵素の効率的な生産体であることが知られている(例えば、国際公開第1998/15619号パンフレット、同第2005/028636号パンフレット、同第2006/074005号パンフレット、同第1992/06221号パンフレット、同第1992/06209号パンフレット、同第1992/06183号パンフレット、同第2002/12465号パンフレットなどを参照されたい)。したがって、T.リーゼイ(T.reesei)などの糸状菌は、セルロース由来エタノール、布帛および衣類、洗剤、繊維、食品および飼料添加物、ならびに他の工業用途などの商品の製造に有用な酵素を産生する能力を有することから、これまで利用されてきた。
これらの工業関連酵素のトリコデルマ属(Trichoderma)中における発現(および産生)は、増殖に利用できる炭素源に依存することが知られている。より詳しくは、糸状菌によるセルラーゼ酵素の産生は、エネルギー消費プロセスであり、したがって、これらの酵素の効率的な産生を確実にするために、誘導および抑制の両機構が糸状菌の中で発達してきた。例えば、植物細胞壁物質の分解に必要な酵素(すなわち、セルラーゼ/ヘミセルラーゼ)をコードする種々の遺伝子は、「誘導」基質の存在下で「活性化」され、そして植物バイオマスよりも好ましい、容易に代謝される炭素源(例えば、D-グルコース)の存在下では「炭素カタボライト抑制」(以下、「CCR」)として知られる機構により「抑制」される。このように、セルラーゼ遺伝子はグルコースによって強く抑制され、セルロースおよび特定の二糖類(例えば、ソホロース、ラクトース、ゲンチオビオース)によって数千倍誘導される。例えば、主要なセロビオヒドロラーゼ1(cbh1)の発現レベルは、グルコース含有培地と比較して、セルロースまたはソホロースなどの誘導炭素源を含有する培地で数千倍「アップレギュレート」される(Ilmen et al.,1997)。さらに、「誘導された」T.リーゼイ(T.reesei)培養物に「抑制」炭素源を添加すると(セルロースまたはソホロース)誘導に打ち勝ち、セルラーゼ遺伝子発現のダウンレギュレーションをもたらすことが示された(el-Gogary et al.,1989;Ilmen et al.,1997)。このように、セルラーゼ系(酵素)を含む遺伝子(この系の遺伝子メンバーは相乗的に作用し、上記のように、セルロースの可溶性オリゴ糖への効率的な加水分解に必要である)の発現は、転写レベルで少なくとも調整および調節される。
より具体的には、ゲノムワイド分析で、T.リーゼイ(T.reesei)中に少なくとも10個のセルロース分解酵素および16個のキシラン分解酵素をコードする遺伝子の存在が明らかになった(Martinez et al、2008)。特に、最も豊富に分泌される酵素は、2つの主要なセロビオヒドロラーゼ(EC.3.2.1.91)、cbh1(セロビオヒドロラーゼ1)およびcbh2(セロビオヒドロラーゼ2)、ならびに2つの主要な特異的エンド-β-1,4-キシラナーゼ(EC3.3.1.8)、xyn1(エンド-1,4-β-キシラナーゼ1)およびxyn2(エンド-1,4-β-キシラナーゼ2)であり、本明細書では「主要な工業関連ヘミセルラーゼおよびセルラーゼ」または「MIHC」と呼ぶ。これらのMIHCは、セルロースおよびキシランを分解する追加の酵素と共に作用し、その結果、可溶性オリゴ糖および単糖、例えば、セロビオース、D-グルコース、キシロビオースおよびD-キシロースを生成する。さらに、ソホロースは、これらの酵素のいくつかのトランスグリコシル化活性の産物である(Vaheri et al,1979)。より詳しくは、これらの可溶性オリゴ糖および単糖(すなわち、セロビオース、D-グルコース、キシロビオース、D-キシロースおよびソホロース)はT.リーゼイ(T.reesei)中でのMICHの発現に影響することがこの文献で報告されている。例えば、D-グルコースの存在はCCRを引き起こし、これは、少量のMIHCの分泌をもたらす。ソホロースは、cbh1およびcbh2の発現のための最も強力なインデューサーであると考えられている。D-キシロースは、濃度に依存してxyn1およびxyn2の発現を調節する。
一般に、トリコデルマ属(Trichoderma)などの糸状菌による酵素/ポリペプチドの商業規模生産は、一般に、バッチ法、流加法、および連続フロープロセスなどの、固体培養または浸漬培養による。例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)における工業的セルラーゼ生産で最も問題であり、かつ高価な態様の1つは、トリコデルマ属(Trichoderma)宿主細胞に適切なインデューサー(すなわち、誘導基質)を提供することにある。例えば、研究室規模実験の場合と同様、商業規模のセルラーゼ(酵素)の生産は、固体セルロース(すなわち、誘導基質)上で真菌細胞を増殖させることによって、または「ラクトース」などの二糖インデューサー(すなわち、誘導基質)の存在下で細胞を培養することによって「誘導」される。
残念ながら、工業規模では、両「誘導」方法とも、セルラーゼ生産に関連する高コストをもたらすという欠点を有する。例えば、上記のように、セルラーゼ合成は、セルロース誘導とグルコース抑制の両方を受ける。このように、誘導性プロモーター制御下でのセルラーゼ酵素の収率に影響を及ぼす重要な因子は、セルロース基質とグルコース濃度との間の適切なバランスの維持である(すなわち、これは、調節された遺伝子産物の妥当な商業的収率を得るために重要である)。セルロースは有効で安価なインデューサーであるが、糸状菌細胞が固体セルロース上で増殖する場合、グルコース濃度の制御が問題となり得る。低濃度のセルロースでは、グルコースの産生が遅すぎて、活発な細胞増殖および機能の代謝要求を満たすことができない。他方、グルコース生成がその消費よりも速い場合、セルラーゼ合成はグルコース抑制によって停止され得る。したがって、基質添加を遅くし、かつグルコース濃度をモニタリングするために、高価なプロセス制御スキームが必要とされる(Ju and Afolabi,1999)。さらに、セルロース物質の固体特性のために、基質のゆっくりした連続的な送達を行うことは困難であり得る。
「誘導基質」としてのセルロースの使用に伴う問題のいくつかは、「ラクトース」、「ソホロース」または「ゲンチオビオース」などの可溶性「誘導基質」の使用によって克服することができる。例えば、「誘導基質」としてラクトースを使用する場合、ラクトースはインデューサーおよび炭素源として機能するよう、高濃度で提供されなければならない(例えば、Seiboth,et.al.,2002を参照されたい)。ソホロースはセルロースよりも強力なインデューサーであるが、ソホロースは高価であり、かつ製造が困難である。例えば、グルコース、ソホロースおよび他の二糖類の混合物(すなわち、グルコースの酵素変換により生成される)は、セルラーゼの効率的な生産のために使用することができるが、これはグルコースの単独使用よりも大きな(生産)コストを招く。このように、固体セルロースよりも取り扱いおよび制御が容易であるものの、誘導基質としてのソホロースの使用は、セルラーゼを製造するコストを法外に高価にする可能性がある。
上記に基づけば、生産のために費用のかかる誘導基質(例えば、ソホロース、ラクトースなど)の提供が必要または要件でない、糸状菌による酵素/ポリペプチドの費用効率の高い商業的規模生産のための、進行中で対処されていないニーズが当該技術分野に依然存在することは明らかである。より詳しくは、糸状菌宿主細胞により1種以上の内因性リグノセルロース分解酵素を商業規模で生産する(このような糸状菌細胞は誘導基質の非存在下でこれらの遺伝子の1種以上を発現し得る)ニーズが当該技術分野に残されている。さらに、そのような糸状菌宿主細胞中で発現し産生される、1つ以上の異種タンパク質産物(このようなタンパク質をコードする異種遺伝子が真菌宿主細胞に導入され、この細胞が誘導基質の非存在下でそのような異種遺伝子を発現し得る)を高い費用効率で産生するという、未だ対処されていないさらなるニーズが当該技術分野に存在している。
本開示の特定の実施形態は、産生のために高価な誘導基質(例えば、ソホロース、ラクトースなど)を提供することを必要または要件としない、糸状菌による酵素/ポリペプチドの商業規模の生産に関する。したがって、他の特定の実施形態は、1つ以上の目的タンパク質の産生を増加させるための、変異糸状菌細胞、その組成物、およびその方法に関する。例えば、本開示の特定の実施形態は、親糸状菌細胞に由来する変異糸状菌細胞に関し、この変異細胞は、配列番号6のAce3タンパク質に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードする、導入されたポリヌクレオチドコンストラクトを含み、この変異細胞は、変異細胞と親細胞が類似の条件下で培養された場合、親細胞と比較して誘導基質の非存在下でより多くの量の目的タンパク質(POI)を産生する。他の特定の実施形態では、変異細胞と親細胞が類似の条件下で培養された場合、変異細胞は親細胞と比較して誘導基質の存在下でより多くの量のPOIを産生する。
変異細胞の別の実施形態では、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有する、コードされたAce3タンパク質は、最後の4つのC末端アミノ酸として「Lys-Ala-Ser-Asp」を含む。別の実施形態では、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有する、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6に作動可能に連結し、かつ同配列に先行する配列番号98のN末端アミノ酸フラグメントを含む。変異細胞の、他の特定の実施形態では、Ace-3タンパク質は、配列番号12に対して約90%の配列同一性を有する。別の実施形態では、Ace3タンパク質をコードする導入されたポリヌクレオチドは、配列番号5に対して約90%の同一性を有するオープンリーディングフレーム(ORF)配列を含む。
変異細胞のさらに他の実施形態では、POIは内因性POIまたは異種POIである。このように、特定の実施形態では、変異細胞は、異種POIをコードする、導入されたポリヌクレオチドコンストラクトを含む。別の実施形態では、異種POIをコードするポリヌクレオチドコンストラクトは、セルロース誘導性遺伝子プロモーターの制御下で発現する。他の特定の実施形態では、内因性POIは、リグノセルロース分解酵素である。このように、他の実施形態では、リグノセルロース分解酵素は、セルラーゼ酵素、ヘミセルラーゼ酵素、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。他の特定の実施形態では、リグノセルロース分解酵素は、cbh1、cbh2、egl1、egl2、egl3、egl4、egl5、egl6、bgl1、bgl2、xyn1、xyn2、xyn3、bxl1、abf1、abf2、abf3、axe1、axe2、axe3、man1、agl1、agl2、agl3、glr1、swo1、cip1およびcip2からなる群から選択される。さらに他の実施形態では、異種POIは、α-アミラーゼ、アルカリα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、セルラーゼ、デキストラナーゼ、α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペントサナーゼ、キシラナーゼ、インベルターゼ、ラクターゼ、ナリンガナーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、酸プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、ブロメライン、中性プロテアーゼ、パパイン、ペプシン、ペプチダーゼ、レンネット、レニン、キモシン、スブチリシン、テルモリシン、アスパラギン酸プロテイナーゼ、トリプシン、リパーゼ、エステラーゼ、ホスホリパーゼ、ホスファターゼ、フィターゼ、アミダーゼ、イミノアシラーゼ、グルタミナーゼ、リゾチーム、ペニシリンアシラーゼ、イソメラーゼ、オキシドレダクターゼ、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、リアーゼ、アスパラギン酸β-デカルボキシラーゼ、フマラーゼ、ヒスタダーゼ、トランスフェラーゼ、リガーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ラッカーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リボヌクレアーゼおよびトランスグルタミナーゼからなる群から選択される。
変異細胞の別の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の5’に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の3’に作動可能に連結された天然のace3ターミネーター配列をさらに含む。他の特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞のゲノムに組み込まれる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞ゲノムのテロメア部位に組み込まれる。他の特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞ゲノムのグルコアミラーゼ(gla1)遺伝子座に組み込まれる。さらに他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、配列番号4、配列番号11または配列番号13に対して約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。したがって、他の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14のアミノ酸配列を含む。
他の実施形態では、変異細胞は、配列番号48の野生型キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質、または配列番号46の変異キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質をコードする、ポリヌクレオチドを発現する遺伝子改変を含む。他の特定の実施形態では、変異細胞は、内因性炭素カタボライトリプレッサー1(Cre1)タンパク質またはAce1タンパク質をコードする遺伝子の発現を減少または抑制する遺伝子改変を含む。さらに別の実施形態では、変異細胞は、Ace2タンパク質の発現を含む遺伝子改変を含む。他の実施形態では、糸状菌細胞は、子嚢菌門(Ascomycota)の亜門のチャワンタケ亜門(Pezizomycotina)細胞である。他の特定の実施形態では、糸状菌細胞は、トリコデルマ属(Trichoderma)種の細胞である。
他の実施形態では、開示は、配列番号6、配列番号12または配列番号14に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードする、ポリヌクレオチドORFに関する。
他の実施形態では、開示は、本開示の変異細胞によって産生されるリグノセルロース分解酵素に関する。他の実施形態では、開示は、本開示の変異細胞によって産生される異種POIに関する。
他の実施形態では、開示は、誘導基質の非存在下、トリコデルマ属(Trichoderma)種の真菌細胞中で、目的内因性タンパク質を産生する方法に関し、この方法は(i)5’から3’の方向に(a)プロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)第1の核酸配列に作動可能に連結した第2の核酸配列(第2の核酸配列は、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードし、最後の4つのC末端アミノ酸として「Lys-Ala-Ser-Asp」を含む)を含むポリヌクレオチドコンストラクトを真菌細胞に導入する工程と、(ii)真菌細胞の増殖およびタンパク質の産生に好適な条件下で(このような好適な増殖条件は誘導基質を含まない)工程(i)の細胞を発酵させる工程とを含む。本方法の特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、第2の核酸の3’に作動可能に連結された第3の核酸配列を含み、この第3の核酸配列は天然のace3ターミネーター配列を含む。別の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞のゲノムに組み込まれる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞ゲノムのテロメア部位に組み込まれる。他の特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞ゲノムのグルコアミラーゼ(gla1)遺伝子座に組み込まれる。本方法の他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、配列番号4、配列番号11または配列番号13に対して約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14のアミノ酸配列を含む。
本方法の特定の実施形態では、工程(i)のプロモーターは、rev3プロモーター(配列番号15)、bxlプロモーター(配列番号16)、tkl1プロモーター(配列番号17)、PID104295プロモーター(配列番号18)、dld1プロモーター(配列番号19)、xyn4プロモーター(配列番号20)、PID72526プロモーター(配列番号21)、axe1プロモーター(配列番号22)、hxk1プロモーター(配列番号23)、dic1プロモーター(配列番号24)、optプロモーター(配列番号25)、gut1プロモーター(配列番号26)、およびpki1プロモーター(配列番号27)からなる群から選択される。
本方法の関連する実施形態では、内因性POIはリグノセルロース分解酵素である。特定の実施形態では、リグノセルロース分解酵素は、セルラーゼ酵素、ヘミセルラーゼ酵素、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、セルラーゼ酵素は、cbh1、cbh2、egl1、egl2、egl3、egl4、egl5、egl6、bgl1、bgl2、swo1、cip1およびcip2からなる群から選択される。別の実施形態では、ヘミセルラーゼ酵素は、xyn1、xyn2、xyn3、xyn4、bxl1、abf1、abf2、abf3、axe1、axe2、axe3、man1、agl1、agl2、agl3およびglr1からなる群から選択される。
本方法の他の実施形態では、工程(i)は、異種POIをコードする、導入されたポリヌクレオチドコンストラクトをさらに含む。特定の実施形態では、異種POIをコードするポリヌクレオチドコンストラクトは、セルロース誘導性遺伝子プロモーターの制御下で発現する。特定の実施形態では、セルロース誘導性遺伝子プロモーターはcbh1、cbh2、egl1、egl2、xyn2またはstp1から選択される。
他の実施形態では、本方法は、配列番号48の野生型キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質、または配列番号46の変異キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質をコードする、ポリヌクレオチドを発現する遺伝子改変をさらに含む。他の実施形態では、本方法は、内因性炭素カタボライトリプレッサー1(Cre1)タンパク質またはAce1タンパク質をコードする遺伝子の発現を減少または抑制する遺伝子改変をさらに含む。さらに別の実施形態では、本方法は、Ace2タンパク質の発現を含む遺伝子改変をさらに含む。
他の実施形態では、本開示は、誘導基質の非存在下、トリコデルマ属(Trichoderma)種の真菌細胞中で目的内因性タンパク質を産生する方法に関し、この方法は、(i)5’から3’の方向に(a)プロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)第1の核酸配列に作動可能に連結した第2の核酸配列(この第2の核酸配列は、配列番号12に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードする)を含むポリヌクレオチドコンストラクトを真菌細胞に導入する工程と、(ii)真菌細胞の増殖およびタンパク質の産生に好適な条件下で(このような好適な増殖条件は誘導基質を含まない)工程(i)の細胞を発酵させる工程を含む。他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、第2の核酸の3’に作動可能に連結された第3の核酸配列を含み、この第3の核酸配列は天然のace3ターミネーター配列を含む。本方法の他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞のゲノムに組み込まれる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞のゲノムのテロメア部位に組み込まれる。他の特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞ゲノムのグルコアミラーゼ(gla1)遺伝子座に組み込まれる。本方法の別の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、配列番号4、配列番号11または配列番号13に対して約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。他の特定の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14のアミノ酸配列を含む。
したがって、他の実施形態の方法8では、内因性POIはリグノセルロース分解酵素である。特定の実施形態では、リグノセルロース分解酵素は、セルラーゼ酵素、ヘミセルラーゼ酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、セルラーゼ酵素は、cbh1、cbh2、egl1、egl2、egl3、egl4、egl5、egl6、bgl1、bgl2、swo1、cip1およびcip2からなる群から選択される。他の実施形態では、ヘミセルラーゼ酵素は、xyn1、xyn2、xyn3、xyn4、bxl1、abf1、abf2、abf3、axe1、axe2、axe3、man1、agl1、agl2、agl3およびglr1からなる群から選択される。
本方法の別の実施形態では、工程(i)は、異種POIをコードする、導入されたポリヌクレオチドコンストラクトをさらに含む。特定の実施形態では、異種POIをコードするポリヌクレオチドコンストラクトは、セルロース誘導性遺伝子プロモーターの制御下で発現する。本方法の、他の特定の実施形態では、工程(i)のプロモーターは、rev3プロモーター(配列番号15)、bxlプロモーター(配列番号16)、tkl1プロモーター(配列番号17、PID104295プロモーター(配列番号18)、dld1プロモーター(配列番号19)、xyn4プロモーター(配列番号20)、PID72526プロモーター(配列番号21)、axe1プロモーター(配列番号22)、hxk1プロモーター(配列番号23)、dic1プロモーター(配列番号24)、optプロモーター(配列番号25)、gut1プロモーター(配列番号26)、およびpki1プロモーター(配列番号27)からなる群から選択される。別の実施形態では、本方法は、配列番号48の野生型キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質、または配列番号46の変異キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質をコードする、ポリヌクレオチドを発現する遺伝子改変をさらに含む。他の特定の実施形態では、本方法は、内因性炭素カタボライトリプレッサー1(Cre1)タンパク質またはAce1タンパク質をコードする遺伝子の発現を減少または抑制する遺伝子の改変をさらに含む。さらに他の実施形態では、本方法はAce2タンパク質を発現する遺伝子の改変をさらに含む。
他の特定の実施形態では、本開示は誘導基質の非存在下、トリコデルマ属(Trichoderma)種の真菌細胞中で目的異種タンパク質を産生する方法に関し、この方法は(i)5’から3’の方向に(a)構成的プロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)第1の核酸配列に作動可能に連結した第2の核酸配列(この第2の核酸配列は、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードし、最後の4つのC末端アミノ酸として「Lys-Ala-Ser-Asp」を含む)を含むポリヌクレオチドコンストラクトを真菌細胞に導入する工程と、(ii)真菌細胞の増殖およびタンパク質の産生に好適な条件下で(このような好適な増殖条件は誘導基質を含まない)工程(i)の細胞を発酵させる工程とを含む。したがって、本方法の特定の実施形態では、真菌細胞は、異種POIをコードする、導入されたポリヌクレオチドコンストラクトを含み、このコンストラクトは、工程(i)の前、工程(i)の間、または工程(i)の後に真菌細胞に導入される)。別の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、第2の核酸の3’に作動可能に連結された第3の核酸配列を含み、この第3の核酸配列は天然のace3ターミネーター配列を含む。本方法の他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞のゲノムに組み込まれる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞のゲノムのテロメア部位に組み込まれる。他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞ゲノムのグルコアミラーゼ(gla1)遺伝子座に組み込まれる。
本方法の他の特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、配列番号4、配列番号11または配列番号13に対して約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、異種POIをコードするポリヌクレオチドコンストラクトは、セルロース誘導性遺伝子プロモーターの制御下で発現する。他の特定の実施形態では、異種POIは、α-アミラーゼ、アルカリα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、セルラーゼ、デキストラナーゼ、α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペントサナーゼ、キシラナーゼ、インベルターゼ、ラクターゼ、ナリンガナーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、酸プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、ブロメライン、中性プロテアーゼ、パパイン、ペプシン、ペプチダーゼ、レンネット、レニン、キモシン、スブチリシン、テルモリシン、アスパラギン酸プロテイナーゼ、トリプシン、リパーゼ、エステラーゼ、ホスホリパーゼ、ホスファターゼ、フィターゼ、アミダーゼ、イミノアシラーゼ、グルタミナーゼ、リゾチーム、ペニシリンアシラーゼ、イソメラーゼ、オキシドレダクターゼ、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、リアーゼ、アスパラギン酸β-デカルボキシラーゼ、フマラーゼ、ヒスタダーゼ、トランスフェラーゼ、リガーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ラッカーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リボヌクレアーゼおよびトランスグルタミナーゼからなる群から選択される。
本方法の他の実施形態では、工程(i)のプロモーターはrev3プロモーター(配列番号15)、bxlプロモーター(配列番号16)、tkl1プロモーター(配列番号17、PID104295プロモーター(配列番号18)、dld1プロモーター(配列番号19)、xyn4プロモーター(配列番号20)、PID72526プロモーター(配列番号21)、axe1プロモーター(配列番号22)、hxk1プロモーター(配列番号23)、dic1プロモーター(配列番号24)、optプロモーター(配列番号25)、gut1プロモーター(配列番号26)、およびpki1プロモーター(配列番号27)からなる群から選択される。さらに他の実施形態では、本方法は、配列番号48の野生型キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質、または配列番号46の変異キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質をコードする、ポリヌクレオチドを発現する遺伝子改変をさらに含む。別の実施形態では、本方法は、内因性炭素カタボライトリプレッサー1(Cre1)タンパク質またはAce1タンパク質をコードする遺伝子の発現を減少または抑制する遺伝子改変をさらに含む。さらに他の実施形態では、本方法は、Ace2タンパク質の発現を含む遺伝子改変をさらに含む。
別の実施形態では、本開示は、誘導基質の非存在下、トリコデルマ属(Trichoderma)種の真菌細胞中で目的異種タンパク質を産生する方法に関し、この方法は(i)5’から3’の方向に(a)構成的プロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)第1の核酸配列に作動可能に連結した第2の核酸配列(この第2の核酸配列は、配列番号12に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードする)を含むポリヌクレオチドコンストラクトを真菌細胞に導入する工程と、(ii)真菌細胞の増殖およびタンパク質の産生に好適な条件下で(このような好適な増殖条件は誘導基質を含まない)工程(i)の細胞を発酵させる工程とを含む。特定の実施形態では、真菌細胞は異種POIをコードする、導入されたポリヌクレオチドコンストラクトを含む(このコンストラクトは、工程(i)の前、工程(i)の間、または工程(i)の後に真菌細胞に導入される)。他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、第2の核酸の3’に作動可能に連結された第3の核酸配列を含み、この第3の核酸配列は天然のace3ターミネーター配列を含む。本方法の他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞のゲノムに組み込まれる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞のゲノムのテロメア部位に組み込まれる。他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、真菌細胞ゲノムのグルコアミラーゼ(gla1)遺伝子座に組み込まれる。さらに他の実施形態では、ポリヌクレオチドコンストラクトは、配列番号4、配列番号11または配列番号13に対して約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6、配列番号12または配列番号14のアミノ酸配列を含む。本方法の別の実施形態では、異種POIをコードするポリヌクレオチドコンストラクトは、セルロース誘導性遺伝子プロモーターの制御下で発現する。特定の実施形態では、異種POIは、α-アミラーゼ、アルカリα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、セルラーゼ、デキストラナーゼ、α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペントサナーゼ、キシラナーゼ、インベルターゼ、ラクターゼ、ナリンガナーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、酸プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、ブロメライン、中性プロテアーゼ、パパイン、ペプシン、ペプチダーゼ、レンネット、レニン、キモシン、スブチリシン、テルモリシン、アスパラギン酸プロテイナーゼ、トリプシン、リパーゼ、エステラーゼ、ホスホリパーゼ、ホスファターゼ、フィターゼ、アミダーゼ、イミノアシラーゼ、グルタミナーゼ、リゾチーム、ペニシリンアシラーゼ、イソメラーゼ、オキシドレダクターゼ、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、リアーゼ、アスパラギン酸β-デカルボキシラーゼ、フマラーゼ、ヒスタダーゼ、トランスフェラーゼ、リガーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ラッカーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リボヌクレアーゼおよびトランスグルタミナーゼからなる群から選択される。
本方法の他の実施形態では、工程(i)のプロモーターはrev3プロモーター(配列番号15)、bxlプロモーター(配列番号16)、tkl1プロモーター(配列番号17、PID104295プロモーター(配列番号18)、dld1プロモーター(配列番号19)、xyn4プロモーター(配列番号20)、PID72526プロモーター(配列番号21)、axe1プロモーター(配列番号22)、hxk1プロモーター(配列番号23)、dic1プロモーター(配列番号24)、optプロモーター(配列番号25)、gut1プロモーター(配列番号26)、およびpki1プロモーター(配列番号27)からなる群から選択される。さらに他の実施形態では、本方法は、配列番号48の野生型キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質、または配列番号46の変異キシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)タンパク質をコードする、ポリヌクレオチドを発現する遺伝子の改変をさらに含む。別の実施形態では、本方法は、内因性炭素カタボライトリプレッサー1(Cre1)タンパク質またはAce1タンパク質をコードする遺伝子の発現を減少または抑制する遺伝子の改変をさらに含む。さらに他の実施形態では、本方法はAce2タンパク質を発現する遺伝子の改変をさらに含む。
他の特定の実施形態では、本開示は、誘導基質の非存在下、内因性タンパク質の産生を増加させるためにトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)株を遺伝子的に改変する方法に関し、この方法は、(i)配列番号3のAce3-Sタンパク質、配列番号8のAce3-SCタンパク質または配列番号10のAce3-LCタンパク質をコードするace3遺伝子のゲノムコピーを含む、T.リーゼイ(T.reesei)株をスクリーニングし、同定する工程(同定されたT.リーゼイ(T.reesei)株は、配列番号6のAce3-Lタンパク質、配列番号14のAce3-LNタンパク質または配列番号12のAce3-ELタンパク質をコードするace3遺伝子のゲノムコピーを含まない)と、(ii)工程(i)で同定されたT.リーゼイ(T.reesei)株に、5’から3’の方向に、(a)プロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)第1の核酸配列に作動可能に連結した第2の核酸配列を含むポリヌクレオチドコンストラクト導入する工程(第2の核酸配列は、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードし、最後の4つのC末端アミノ酸として「Lys-Ala-Ser-Asp」を含む、または第2の核酸配列は、配列番号12に対して約90%の配列同一性を有するAce-3タンパク質をコードする)と、(iii)真菌細胞の増殖およびタンパク質の産生に好適な条件下(このような好適な増殖条件は誘導基質を含まない)で工程(ii)の細胞を発酵させる工程とを含む。
他の特定の実施形態では、本開示は、親糸状菌細胞に由来する変異糸状菌細胞に関し、この変異細胞は、代替プロモーターで置換された天然のace3遺伝子プロモーターを含み、この変異細胞は、変異細胞と親細胞が類似の条件下で培養された場合、誘導基質の非存在下で親細胞と比較してより多くの量の目的タンパク質(POI)を産生する。特定の実施形態では、代替プロモーターはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)プロモーターである。別の実施形態では、代替プロモーターは、rev3プロモーター(配列番号15)、bxlプロモーター(配列番号16)、tkl1プロモーター(配列番号17)、PID104295プロモーター(配列番号18)、dld1プロモーター(配列番号19)、xyn4プロモーター(配列番号20)、PID72526プロモーター(配列番号21)、axe1プロモーター(配列番号22)、hxk1プロモーター(配列番号23)、dic1プロモーター(配列番号24)、optプロモーター(配列番号25)、gut1プロモーター(配列番号26)、およびpki1プロモーター(配列番号27)からなる群から選択されるプロモーターである。
図1は、Ace3タンパク質コード領域の模式図を示す。より詳しくは、図1Aは、ゲノム中の同じDNA配列にアラインされた(図1A)T.リーゼイ(T.reesei)株QM6aおよびRUT-C30のアノテーションに基づく、Ace3タンパク質コード領域の模式図を示す。予測されるエクソンおよびイントロンを、それぞれ矢印および破線で示す。破線の垂直線は、RUT-C30ゲノムのナンセンス変異を示す。配列番号2のクローン化ace3-S(短い)オープンリーディングフレームおよび配列番号5のクローン化ace3-L(長い)オープンリーディングフレームは、本願に記載のようにスクリーニングし、試験した。図1Bに、T.リーゼイ(T.reesei)株RUT-C30由来のAce3-Lタンパク質(配列番号6)、T.リーゼイ(T.reesei)株QM6a由来のAce3-Sタンパク質(配列番号3)、Ace3-SCタンパク質(配列番号8)、Ace3-LNタンパク質(配列番号14)、Ace3-LCタンパク質(配列番号10)およびAce3-ELタンパク質(配列番号12)のアミノ酸アラインメントを示す。 図2は、Ace3発現ベクターpYL1(図2A)、pYL2(図2B)、pYL3(図2C)およびpYL4(図2D)の模式図を示す。 図3は、親および変異細胞を、20%ラクトース(lac)または20%グルコース(glu)を含有するsrMTP中の規定培地中で増殖させた場合の、T.リーゼイ(T.reesei)親および変異細胞上清のポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を示す。各レーンで、等容量の培養上清を使用した。Mは分子量マーカーであり、親T.リーゼイ(T.reesei)株を対照株とした。 図4は、1.5%グルコース/ソホロース(sop)または1.5%グルコース(glu)を補充した規定培地中、振盪フラスコ内で親および変異細胞を増殖させた場合の、T.リーゼイ(T.reesei)親および変異細胞上清のSDS-PAGEを示す。各レーンで、等容量の培養上清を使用した。培養上清の全タンパク質濃度を、各対応するレーンの下に示す。Mは分子量マーカーであり、KDはキロダルトンである。 図5は、炭素源としてグルコース/ソホロース(sop)またはグルコース(glu)を補充した規定培地中、2L発酵槽内で増殖させた、T.リーゼイ(T.reesei)親および変異細胞のSDS-PAGEを示す。Mは分子量マーカーであり、ゼロ(0)は種培養上清である。 図6は、ace3遺伝子座の天然プロモーター上流の5’領域を含むDNAフラグメント、loxP隣接ハイグロマイシンB耐性(選択マーカー)カセット、およびace3ORFの5’末端に作動可能に融合(連結)した目的プロモーターを含むDNAフラグメントを融合することによって作製されたプロモーター置換コンストラクトの模式図を示す。 図7は、dic1プロモーターを含むAce3発現ベクターpYL8の模式図を示す。 図8は、2.5%グルコース/ソホロース(「Sop」、誘導条件)または2.5%グルコース(「Glu」、非誘導条件)を補充した規定培地中、振盪フラスコ内で親および改変株を増殖させた場合の、T.リーゼイ(T.reesei)親およびその改変(娘)細胞上清のSDS-PAGEを示す。各レーンで、等容量の培養上清を使用した。Mは分子量マーカーであり、KDはキロダルトンである。 図9は、小規模(2L)発酵におけるタンパク質の産生を示す。T.リーゼイ(T.reesei)親株および娘株「LT83」を、炭素源としてグルコース/ソホロース(Sop、誘導条件)またはグルコース(Glu、非誘導条件)を含む規定培地中で増殖させた。発酵の終わりにグルコース/ソホロース上で親株によって産生された全タンパク質を任意で100に設定し、各時点で各株によって産生されたタンパク質の相対量をプロットした。 図10は、2.5%グルコース/ソホロース(「Sop」、誘導条件)または2.5%グルコース(「Glu」、非誘導条件)を補充した規定培地中、振盪フラスコ内で親および改変株を増殖させた場合の、T.リーゼイ(T.reesei)親およびその変異(娘)細胞上清のSDS-PAGEを示す。各レーンで、等容量の培養上清を使用した。Mは分子量マーカーであり、KDはキロダルトンである。 図11は、ace3遺伝子座の模式図を示す。ace3遺伝子座の5’末端(N末端)の矢印は、cDNA配列によって示唆される形態(矢印1)、RutC-30アノテーション形態(矢印2)およびQM6aアノテーション形態(矢印3)における異なる転写開始部位を示す。ace3遺伝子座の3’末端(C末端)の矢印は、RutC-30アノテーション形態(矢印4)およびQM6aアノテーション形態(矢印5)における異なる停止コドンを示す。 図12は、クローン化された異なるace3形態の模式図を示す。したがって、図12に示され、そして実施例6に記載されるように、以下のace3形態をクローン化し、試験した:1,713bpのエクソン3、148bpのイントロン3および177bpのエクソン4を含む配列番号1の「ace3-S」、1,713bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む配列番号7の「ace3-SC」、258bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpエクソン3、148bpイントロン3および144bpのエクソン4を含む配列番号4の「ace3-L」、258bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および177bpのエクソン4を含む配列番号9の「ace3-LC」、61bpのエクソン1、142bpのイントロン1、332bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む配列番号11の「ace3-EL」、ならびに258bpのエクソン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む配列番号13の「ace3-LN」。 図13は、ace3-SC遺伝子形態の核酸配列(配列番号7;1,713bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む)、ならびにコードされたAce3-SCタンパク質配列(配列番号8)を示す。ace3-SC遺伝子形態について図13に示すように、太字の黒色テキストで示されるヌクレオチドは、イントロン配列を表す。 図14は、ace3-S遺伝子形態の核酸配列(配列番号1;1,713bpのエクソン3、148bpのイントロン3および177bpのエクソン4を含む)ならびにコードされたAce3-Sタンパク質配列(配列番号3)を示す。ace3-S遺伝子形態について図14に示すように、太字の黒色テキストで示すヌクレオチドは、イントロン配列を表す。 図15は、ace3-L遺伝子形態の核酸配列(配列番号4;258bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む)、ならびにコードされたAce3-Lタンパク質配列(配列番号6)を示す。ace3-L遺伝子形態について図15に示すように、太字の黒色テキストで示すヌクレオチドは、イントロン配列を表す。 図16は、ace3-LC遺伝子形態の核酸配列(配列番号9、258bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および177bpのエクソン4を含む)、ならびにコードされたAce3-LCタンパク質配列(配列番号10)を示す。ace3-LC遺伝子形態について図16に示すように、太字の黒色テキストで示すヌクレオチドは、イントロン配列を表す。 図17は、ace3-EL遺伝子形態の核酸配列(配列番号11;61bpのエクソン1、142bpのイントロン1、332bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む)、ならびにコードされたAce3-ELタンパク質配列(配列番号12)を示す。ace3-EL遺伝子形態について図17に示すように、太字の黒色テキストで示すヌクレオチドは、イントロン配列を表す。 図18は、ace3-LN遺伝子形態の核酸配列(配列番号13;258bpのエクソン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む)、ならびにコードされたAce3-LNタンパク質配列(配列番号14)を示す。ace3-LN遺伝子形態について図18に示すように、太字の黒色テキストで示すヌクレオチドは、イントロン配列を表す。 図19は、gla1遺伝子座へのace3形態の組み込みのために設計されたDNAフラグメント配置の模式図を示す。 図20は、ベクターpMCM3282の模式図を示す。 図21は、ベクターpCHL760の模式図を示す。 図22は、ベクターpCHL761の模式図を示す。 図23は、誘導(「Glu/Sop」)および非誘導(「Glu」)培養条件下で、T.リーゼイ(T.reesei)親細胞(図23、細胞識別番号1275.8.1)および変異T.リーゼイ(T.reesei)(娘)細胞(図23、細胞識別番号2218、2219、2220、2222および2223)の浸漬培養(すなわち、振盪フラスコ)によって産生された分泌タンパク質のSDS-PAGEを示す。
生物学的配列の簡単な説明
以下の配列は、37C.F.R.§§1.821-1.825(“Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequence and/or Amino Acid Sequence Disclosures―the Sequence Rules”)に適合しており、WIPO標準ST.25(2009)、欧州特許条約(EPC)および特許協力条約(PCT)規則5.2および49.5(a-bis)、ならびに実施細則の第208章および附属書Cの配列表要件と一致している。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用した記号およびフォーマットは、37C.F.R.§1.822に規定された規則を順守している。
配列番号1は、配列番号3のAce3-Sタンパク質をコードする遺伝子を含む、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)野生型株QM6a核酸配列である。
配列番号2は、配列番号3のAce3-Sタンパク質をコードする核酸配列のオープンリーディングフレーム(ORF)である。
配列番号3は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(QM6a株)Ace3タンパク質のアミノ酸配列であり、以下「Ace3-S」と称する。
配列番号4は、配列番号6のAce3-Lタンパク質をコードする遺伝子を含む、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Rut-C30株の核酸配列である。
配列番号5は、配列番号6のAce3-Lタンパク質をコードする核酸配列のORFである。
配列番号6は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(Rut-C30株)Ace3タンパク質のアミノ酸配列であり、以下「Ace3-L」と称する。
配列番号7は、配列番号8のAce3-SCタンパク質をコードする遺伝子を含む、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の核酸配列である。
配列番号8は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Ace3タンパク質のアミノ酸配列であり、以下「Ace3-SC」と称する。
配列番号9は、配列番号10のAce3-LCタンパク質をコードする遺伝子を含む、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の核酸配列である。
配列番号10は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Ace3タンパク質のアミノ酸配列であり、以下「Ace3-LC」と称する。
配列番号11は、配列番号12のAce3-ELタンパク質をコードする遺伝子を含む、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の核酸配列である。
配列番号12は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Ace3タンパク質のアミノ酸配列であり、以下「Ace3-EL」と称する。
配列番号13は、配列番号14のAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子を含む、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の核酸配列である。
配列番号14は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Ace3タンパク質のアミノ酸配列であり、以下「Ace3-LN」と称する。
配列番号15は、rev3プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号16は、β-xylプロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号17は、tki1プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号18は、PID104295プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号19は、dld1プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号20は、xyn4プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号21は、PID72526プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号22は、axe3プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号23は、hxk1プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号24は、dic1プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号25は、optプロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号26は、gut1プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号27は、pki1プロモーター配列を含む核酸配列である。
配列番号28は、プライマーTP13の核酸配列である。
配列番号29は、プライマーTP14の核酸配列である。
配列番号30は、プライマーTP15の核酸配列である。
配列番号31は、プライマーTP16の核酸配列である。
配列番号32は、プライマーTP17の核酸配列である。
配列番号33は、プライマーTP18の核酸配列である。
配列番号34は、プライマーTP19の核酸配列である。
配列番号35は、プライマーTP20の核酸配列である。
配列番号36は、プライマーTP21の核酸配列である。
配列番号37は、プライマーTP22の核酸配列である。
配列番号38は、プライマーTP23の核酸配列である。
配列番号39はプライマーTP24の核酸配列である。
配列番号40は、プライマーTP25の核酸配列である。
配列番号41は、プライマーTP26の核酸配列である。
配列番号42は、プラスミドpYL1の核酸配列である。
配列番号43は、プラスミドpYL2の核酸配列である。
配列番号44は、プラスミドpYL3の核酸配列である。
配列番号45は、プラスミドpYL4の核酸配列である。
配列番号46は、T.リーゼイ(T.reesei)xyr1(A824V)変異タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号47は、T.リーゼイ(T.reesei)Ace2タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号48は、T.リーゼイ(T.reesei)野生型xyr1タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号49は、プライマーの核酸配列である。
配列番号50は、プライマーの核酸配列である。
配列番号51は、プライマーの核酸配列である。
配列番号52は、プライマーの核酸配列である。
配列番号53はプライマーの核酸配列である。
配列番号54は、プライマーの核酸配列である。
配列番号55は、プライマーの核酸配列である。
配列番号56は、プライマーの核酸配列である。
配列番号57は、プライマーの核酸配列である。
配列番号58は、プライマーの核酸配列である。
配列番号59は、プライマーの核酸配列である。
配列番号60は、プライマーの核酸配列である。
配列番号61は、プライマーの核酸配列である。
配列番号62は、プライマーの核酸配列である。
配列番号63は、プライマーの核酸配列である。
配列番号64はプライマーの核酸配列である。
配列番号65は、プライマーの核酸配列である。
配列番号66は、プライマーの核酸配列である。
配列番号67は、プライマーの核酸配列である。
配列番号68は、プライマーの核酸配列である。
配列番号69は、プライマーの核酸配列である。
配列番号70は、プライマーの核酸配列である。
配列番号71は、プライマーの核酸配列である。
配列番号72は、プライマーの核酸配列である。
配列番号73は、プライマーの核酸配列である。
配列番号74は、プライマーの核酸配列である。
配列番号75は、プライマーの核酸配列である。
配列番号76は、プライマーの核酸配列である。
配列番号77は、プライマーの核酸配列である。
配列番号78は、プライマーの核酸配列である。
配列番号79は、プライマーの核酸配列である。
配列番号80は、プライマーの核酸配列である。
配列番号81は、プライマーの核酸配列である。
配列番号82は、人工核酸配列である。
配列番号83は、人工核酸配列である。
配列番号84は、人工核酸配列である。
配列番号85は、人工核酸配列である。
配列番号86は、人工核酸配列である。
配列番号87は、人工核酸配列である。
配列番号88は、人工核酸配列である。
配列番号89は、人工核酸配列である。
配列番号90は、人工核酸配列である。
配列番号91は、人工核酸配列である。
配列番号92は、プライマーの核酸配列である。
配列番号93は、プライマーの核酸配列である。
配列番号94は、プライマーの核酸配列である。
配列番号95は、プライマーの核酸配列である。
配列番号96は、プライマーの核酸配列である。
配列番号97は、プライマーの核酸配列である。
配列番号98は、配列番号12のAce3-ELタンパク質のN末端配列の45(45)位のアミノ酸フラグメントを含むアミノ酸配列である。
配列番号99は、Ace3-SCタンパク質をコードする核酸配列のORFである。
配列番号100は、Ace3-LCタンパク質をコードする核酸配列のORFである。
配列番号101は、Ace3-ELタンパク質をコードする核酸配列のORFである。
配列番号102は、Ace3-LNタンパク質をコードする核酸配列のORFである。
I.概要
本開示の特定の実施形態は、1つ以上の目的タンパク質の産生を増加させるための、変異糸状菌細胞、その組成物、およびその方法に関する。より詳しくは、本開示の特定の実施形態は、誘導飼料(すなわち、ラクトース、ソホロース、ゲンチオビオース、セルロースなどの誘導基質)の非存在下で、1つ以上の目的タンパク質を産生することができる変異糸状菌細胞に関する。したがって、本開示の特定の実施形態は、親糸状菌細胞由来の変異糸状菌(宿主)細胞に関し、その変異宿主細胞は、誘導基質の非存在下で、(目的タンパク質をコードする)目的遺伝子の発現を可能にする遺伝子の改変を含む。(目的タンパク質をコードする)目的遺伝子は、内因性の糸状菌細胞遺伝子(例えば、cbh1、chb2、xyn1、xyn2、xyn3、egl1、egl2、egl3、bgl1、bgl2など)または糸状菌細胞に対して異種の遺伝子であり得る。
したがって、他の特定の実施形態では、本開示の変異真菌宿主細胞は、Ace3-Lタンパク質(配列番号6)、Ace3-ELタンパク質(配列番号12)およびAce3-LNタンパク質(配列番号14)からなる群から選択される、Ace3タンパク質をコードする「セルラーゼ発現の活性化因子3」(ace3)遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変を含む。他の実施形態では、本開示の変異真菌宿主細胞は、Ace3-Lタンパク質(配列番号6)、Ace3-ELタンパク質(配列番号12)およびAce3-LNタンパク質(配列番号14)からなる群から選択される、Ace3タンパク質をコードするポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)の発現を増加させる遺伝子改変を含む。したがって、特定の実施形態では、本開示の変異真菌宿主細胞は、Ace3-Lタンパク質(配列番号6)、Ace3-ELタンパク質(配列番号12)およびAce3-LNタンパク質(配列番号14)からなる群から選択される、Ace3タンパク質に対して、約90%~約99%の配列同一性を有するAce3タンパク質をコードするAce3遺伝子またはそのORFの発現/産生を増加させる遺伝子改変を含む。
特定の実施形態では、Ace3タンパク質(すなわち、Ace3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質)の発現を増加させる遺伝子改変は、糸状菌宿主細胞のゲノム(染色体)に組み込まれたace3発現カセットである。他の実施形態では、糸状菌細胞内でAce3タンパク質の発現を増加させる遺伝子改変は、ace3発現カセット(すなわち、Ace3-L、Ace3-ELまたは、Ace3-LNタンパク質をコードする)を含むエピソーム的に維持されたプラスミドコンストラクトである。他の実施形態では、糸状菌細胞内でAce3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質をコードするace3遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変は、テロメア部位に組み込まれたテロメアベクター/プラスミドである。特定の実施形態では、そのような発現カセットまたはプラスミドは、2つ以上のコピー数で存在する。他の特定の実施形態では、ace3遺伝子またはace3のORFは、異種プロモーターに作動可能に連結している。他の実施形態では、糸状菌細胞内でAce3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質をコードするace3遺伝子(またはそのORF)の発現を増加させる遺伝子改変は、Ace3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質をコードするace3遺伝子の発現を変化させる天然ace3プロモーター(すなわち、ace3遺伝子に天然に関連したace3プロモーター領域)の改変である。
II.定義
本組成物および方法をさらに詳細に説明する前に、以下の用語および語句を定義する。定義されない用語は、使用され、かつ当業者に知られている通常の意味と一致すべきである。
本明細書に引用されている全ての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
ある範囲の値が示されている場合、文脈上別段の明確な指示がなければ、その範囲の上限と下限の間にある下限値の単位の10分の1までの各介在値、およびその範囲内の任意の他の記載された値または介在値は、本組成物および方法の範囲内に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含まれ、また、記載された範囲における任意の具体的に除外された限界に従うことを条件として、本発明の組成物および方法に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界の一方または両方を除く範囲もまた、本発明の組成物および方法に含まれる。
いくつかの範囲は、本明細書では、「約」という用語が先行する数値で示される。「約」という用語は、本明細書では、それが先行する正確な数、ならびにそれが先行する数に近い、または近似する数についてのリテラルサポート(literal support)を提供するために使用される。数字が具体的に挙げられた数に近いまたは近似するかを決定する際に、挙げられていない近いまたは近似する数は、それが提示される文脈において、具体的に挙げられた数の実質的に等価な数を提供する数であり得る。例えば、数値に関連して「約」という用語は、その用語が文脈において特に明確に定義されていない限り、その数値の-10%~+10%の範囲を指す。別の例では、「約6のpH値」という句は、pH値が特に他に定義されていなければ、5.4~6.6のpH値を指す。
本明細書に示した見出しは、本明細書全体を参照することによって得ることができる本組成物および方法の様々な態様または実施形態を限定するものではない。したがって、すぐ下で定義する用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
この発明を実施するための形態によると、以下の略語および定義が適用される。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上別段の明確な指示がなければ、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酵素」への言及は、複数のそのような酵素を含み、「用量」への言及は、1つ以上の用量、および当業者に知られたその等価物への言及を含むなどである。
特許請求の範囲が、任意選択の要素を排除するように記載されていることにもさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求項の構成要素の列挙に関連して「唯一(solely)」、「ただ~のみ(only)」、「~を除いて(excluding)」、「~を含まない(not including)」などの排他的な用語の使用、または「否定的な」限定の使用のための先行文として機能することを意図している。
さらに、「~を含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用されるとき、「~を含む(comprising)」という用語の後の成分を「含むが、それに限定されない(including,but not limited to)」ことを意味することに留意されたい。「~を含む(comprising)」という用語の後の成分は必要または必須であるが、その成分を含む組成物は他の非必須または任意選択の成分をさらに含んでもよい。
「~から構成される(consisting of)という用語は、本明細書で使用されるとき、「~から構成される(consisting of)という用語の後の成分を「含み、かつそれに限定される(including and limited to)」ことを意味することに留意されたい。「~から構成される(consisting of)という用語の後の成分は、したがって、必要または必須であり、かつその組成物には他の成分は含まれない。
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載および例示する個々の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載する本組成物および方法の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離または組み合わせることができる別個の構成要素および特徴を有する。記載した方法はいずれも、記載した事象の順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実施することができる。
本明細書で使用されるとき、「子嚢菌真菌細胞」という用語は、菌界における子嚢菌門(Ascomycota)の任意の生物を指す。子嚢菌真菌細胞の例には、トリコデルマ属(Trichoderma)種、アスペルギルス属(Aspergillus)種、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)種、およびペニシリウム属(Penicillium)種などのチャワンタケ(Pezizomycotina)亜門内の糸状菌が含まれるが、それらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「糸状菌」という用語は、真菌類(Eumycota)亜門および卵菌類(Oomycota)亜門の全ての糸状形態の菌を指す。例えば、糸状菌には、限定されないが、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、エメリセラ属(Emericella)、フサリウム属(Fusarium)、フミコーラ属(Humicola)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、スキタリジウム属(Scytalidium)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、またはトリコデルマ属(Trichoderma)の種が含まれる。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アスペルギルス・アクレアツス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、またはアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)であり得る。
いくつかの実施形態では、糸状菌は、フザリウム・バクトリディオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クロックウェレンス(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンディ(Fusarium negundi)、フザリウムオキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レチクラタム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サンブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコテチオデス(Fusarium trichothecioides)またはフザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)である。いくつかの実施形態では、糸状菌は、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコーラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、シタリジウム・テルモフィルム(Scytalidium thermophilum)、またはチエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)である。
いくつかの実施形態では、糸状菌は、トリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)である。いくつかの実施形態では、糸状菌は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ATCC寄託番号56765としてAmerican Type Culture Collectionから入手可能な、T.リーゼイ(T.reesei)株「Rut-C30」由来のトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞である。いくつかの実施形態では、糸状菌は、US Department of Agriculture、Northern Regional Research Laboratoryの培養物コレクションからNRRL番号15709として入手可能な、T.リーゼイ(T.reesei)株「RL-P37」由来のトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞である。
本明細書で使用されるとき、「変異糸状菌細胞」、「変異真菌細胞」、「変異細胞」などという語句は、チャワンタケ(Pezizomycotina)亜門に属する親(対照)糸状菌細胞に由来する(すなわち、得られる)糸状菌細胞を指す。したがって、本明細書で定義される「変異」糸状菌細胞は「親」糸状菌細胞に由来するが、この「変異」細胞は、「親」細胞にはない少なくとも1つの遺伝子改変を含む。例えば、本開示の「変異糸状菌細胞」と「親糸状菌細胞」を比較する場合、「親」細胞は、少なくとも1つの遺伝子改変を含む「変異」細胞に対して、遺伝子的に改変されていない(親)「対照」細胞としての役割を果たす。
本明細書で使用されるとき、「遺伝子改変」という用語は、核酸配列の改変/変化を指す。改変には、限定されないが、核酸配列中の少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失、挿入または化学的修飾が含まれ得る。
本明細書の定義では、「遺伝子改変を含む変異細胞」および「Ace3-Lタンパク質、Ace3-ELタンパク質および/またはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変を含む変異細胞」という語句は、Ace3-Lタンパク質、Ace3-ELタンパク質および/またはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子またはORFの少なくとも1つのコピーを糸状菌細胞へ導入することを含むが、これに限定されない。したがって、外因的に導入された、Ace3-Lタンパク質、Ace3-ELタンパク質、および/またはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子またはORFの少なくとも1つのコピーを含む糸状菌細胞は、親真菌細胞(改変されていない)と比較して、遺伝子改変を含む変異真菌細胞である。
他の実施形態では、本開示の親真菌細胞は、本明細書で開示されるAce3タンパク質のいずれかをコードする内因性ace3遺伝子(すなわち、Ace3-Sタンパク質、Ace3-SCタンパク質、Ace3-Lタンパク質、Ace3-LCタンパク質、Ace3-ELタンパク質およびAce3-LNタンパク質をコードするace3遺伝子)の存在に関してスクリーニングされる。例えば、親真菌細胞が、Ace3-Lタンパク質、Ace3-ELタンパク質、またはAce3-LNタンパク質をコードするace3遺伝子の内因性コピーを含むと決定された場合、その改変真菌細胞は、遺伝子改変によって、例えば、ace3遺伝子の内因性プロモーターを異種プロモーターで置換することによって生成し得る。同様に、親真菌細胞がAce3-Sタンパク質、Ace3-SCタンパク質、またはAce3-LCタンパク質をコードするace3遺伝子の内因性コピーを含むと決定された場合、その変異真菌細胞は、遺伝子改変によって、例えば、本開示のAce3-Lタンパク質、Ace3-ELタンパク質、および/またはAce3-LNタンパク質をコードするポリヌクレオチドコンストラクトを真菌細胞に導入することによって生成することができ、これは、Ace3-S、Ace3-SC、またはAce3-LCタンパク質をコードする内因性ace3遺伝子の遺伝子改変をさらに含み得る。
他の実施形態では、本開示の変異糸状菌細胞は、さらなる遺伝子改変を含むであろう。例えば、特定の実施形態では、そのような変異糸状菌細胞(すなわち、本開示のAce3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子またはORFの外因的に導入されたコピーを含む)は、炭素カタボライトリプレッサータンパク質「Cre1」またはAce1リプレッサータンパク質をコードする遺伝子の発現および/または活性を低下させる遺伝子改変をさらに含む。
他の実施形態では、そのような変異糸状菌細胞(すなわち、本開示のAce3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子またはORFの外因的に導入されたコピーを含む)は、配列番号25または配列番号27に示されるキシラナーゼレギュレーター1(Xyr1)の少なくとも1つのコピーを導入する遺伝子改変をさらに含む。
本明細書で使用されるとき、「Ace3-L」タンパク質形態(配列番号6)および「Ace3-LN」タンパク質形態(配列番号14;図1Bを参照されたい)は、同一のアミノ酸配列を含む。しかしながら、見出し「Ace3-L」および「Ace3-LN」は、そのようなタンパク質形態をコードするその特定の遺伝子との比較のために、本開示の特定の実施形態で使用されるが、これは決して本開示を限定するものではない。
本明細書で使用されるとき、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載されているように、入ってくる配列(すなわち、細胞に導入されるポリヌクレオチド配列)のための、宿主および発現ビヒクルとして作用する能力を有する糸状菌細胞を指す。
「異種」核酸コンストラクトまたは配列は、それが発現される細胞に対して天然でないか、または天然の形態で存在しない配列の一部を有する。制御配列に関して、異種とは、現在発現を調節している同じ遺伝子に対して天然においては調節作用をしない制御配列(すなわち、プロモーターまたはエンハンサー)を指す。一般に、異種核酸配列は、それらが存在する細胞またはゲノムの一部に対して内因性ではなく、感染、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞に加えられたものである。「異種」核酸コンストラクトは、天然細胞に見出される制御配列/DNAコード配列の組み合わせと同一であるか、または異なる制御配列/DNAコード配列の組み合わせを含み得る。同様に、異種タンパク質は、天然において互いに同じ関係で見出されない2つ以上のサブ配列(例えば、融合タンパク質)を指すことが多い。
本明細書で使用されるとき、「DNAコンストラクト」または「発現コンストラクト」という用語は、少なくとも2つのDNAポリヌクレオチドフラグメントを含む核酸配列を指す。DNAまたは発現コンストラクトを用いて、核酸配列を真菌宿主細胞に導入することができる。このDNAはインビトロで(例えば、PCRで)または任意の他の好適な手法によって生成し得る。いくつかの好ましい実施形態では、DNAコンストラクトは目的配列(例えば、Ace3-Lタンパク質をコードする)を含む。特定の実施形態では、目的ポリヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、DNAコンストラクトは少なくとも1つの選択マーカーをさらに含む。さらなる実施形態では、DNAコンストラクトは、宿主細胞染色体に相同な配列を含む。他の実施形態では、DNAコンストラクトは、宿主細胞染色体とは非相同な配列を含む。
本明細書で使用されるとき、「セルラーゼ」、「セルロース分解酵素」または「セルラーゼ酵素」という用語は、エキソグルカナーゼ、エキソセロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼおよび/またはβ-グルコシダーゼなどの細菌酵素または真菌酵素を意味する。これらの異なるタイプのセルラーゼ酵素は、セルロースおよびその誘導体をグルコースに変換するのに相乗的に働く。例えば、多くの微生物、例えば、木材腐朽菌のトリコデルマ属(Trichoderma)、堆肥化細菌のテルモモノスポラ属(Thermomonospora)(現在は、テルモビフィダ属(Thermobifida))、バチルス属(Bacillus)、およびセルロモナス属(Cellulomonas);ストレプトミケス属(Streptomyces);ならびに真菌フミコーラ属(Humicola)、アスペルギルス属(Aspergillus)、およびフザリウム属(Fusarium)は、セルロースを加水分解する酵素を産生する。これらの微生物が産生する酵素は、セルロースのグルコースへの変換に有用な3種類の作用を有するタンパク質の混合物、すなわちエンドグルカナーゼ(EG)、セロビオヒドロラーゼ(CBH)、およびβ-グルコシダーゼ(BG)の混合物である。本明細書の定義では、「エンドグルカナーゼ」(EG)、「セロビオヒドロラーゼ」(CBH)および「β-グルコシダーゼ」(BG)という用語は、それぞれ、それらの略語「EG」、「CBH」および「BG」と互換的に使用される。
本明細書で使用されるとき、「炭素制限」という用語は、微生物が所望のタンパク質産物を辛うじて産生することができるだけの炭素は存在するが、生物の要求を完全に満たす、例えば、増殖を維持することができるだけの炭素は存在しない状態である。したがって、炭素の最大量はタンパク質の産生に使用される。
本明細書で使用されるとき、「プロモーター」という用語は、下流の遺伝子またはそのオープンリーディングフレーム(ORF)の転写を指示するように機能する核酸配列を指す。プロモーターは一般に、標的遺伝子が発現している宿主細胞に適切である。プロモーターは他の転写および翻訳調節核酸配列(「制御配列」とも呼ばれる)と共に、所与の遺伝子を発現させるために必要である。一般に、転写および翻訳調節配列には、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および転写停止配列、翻訳開始および翻訳停止配列、ならびにエンハンサーまたは活性化因子の配列が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。他の実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。
本明細書で使用されるとき、「プロモーター配列」は、発現目的のために特定の糸状菌によって認識されるDNA配列である。「プロモーター」は、核酸の転写を指示する核酸制御配列のアレイと定義される。本明細書で使用されるとき、プロモーターには、転写開始部位近傍の必要な核酸配列を、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAエレメントを、含む。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境および発生条件下で活性なプロモーターである。「誘導性プロモーター」は、環境的または発生的調節下で活性なプロモーターである。
「作動可能に連結された」という用語は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、または転写因子結合部位のアレイ)と、第2の核酸配列との機能的な連結を指し、発現制御配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指示する。したがって、核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に配置されたとき、「作動可能に連結されて」いる。例えば、分泌リーダー(すなわち、シグナルペプチド)をコードするDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結されており;プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結されており;またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結された」とは、連結されるDNA配列は隣接していることを意味し、分泌リーダーの場合では、隣接し、かつリーディングフェースにあることを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は、適当な制限部位でのライゲーションによって行われる。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法にしたがって、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。他の実施形態では、連結は、DNAを配列に依存せず瘢痕を残さない方法で結合するシームレスクローニング法によって行われる。シームレスクローニングは、通常、Gibson Assembly(NEB)、NEBuilder HiFi DNA Assembly(NEB)、Golden Gate Assembly(NEB)、およびGeneArt Seamless cloning and Assembly system(ThermoFisher Scientific)などの商業的に入手可能なシステムを用いて実行されるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「コード配列」という用語は、その(コードする)タンパク質産物のアミノ酸配列を直接特定するヌクレオチド配列を指す。コード配列の境界は、一般に、通常ATG開始コドンで始まるオープンリーディングフレームによって決まる。コード配列には、通常、DNA、cDNA、および組換えヌクレオチド配列が含まれる。
本明細書の定義では、「オープンリーディングフレーム」(以下「ORF」)は、(i)開始コドン、(ii)アミノ酸を示す一連の2以上のコドン、および(iii)終止コドンからなる連続するリーディングフレームを含む核酸または核酸配列(天然に存在するか、天然に存在しないか、または合成であるかにかかわらず)を意味し、ORFは、5’から3’の方向に読み取られる(または翻訳される)。
本明細書で使用されるとき、「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味し、これは、コード領域の前後の領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)配列または「リーダー」配列、および3’UTR配列または「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含んでいても含んでいなくてもよい。遺伝子は、酵素(例えば、プロテアーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、オキシダーゼ、リパーゼなど)などの商業的に重要な工業用タンパク質またはペプチドをコードし得る。目的遺伝子は、天然に存在する遺伝子、変異遺伝子または合成遺伝子であり得る。
細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用する場合の「組換え」という用語は、本明細書で使用されるとき、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種核酸または異種タンパク質の導入によって、または天然の核酸またはタンパク質の改変によって改変されていること、または細胞がそのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内には見出されない遺伝子を発現するか、またはさもなければ異常に発現する、過少発現する、もしくは全く発現しない天然遺伝子を発現する。
「ベクター」という用語は、本明細書では、1つ以上の細胞型に導入する核酸配列を保有するように設計されたポリヌクレオチドとして定義される。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージまたはウイルス粒子、DNAコンストラクト、カセットなどが含まれる。発現ベクターには、プロモーター、シグナル配列、コード配列および転写ターミネーターなどの調節配列が含まれ得る。
本明細書で使用される「発現ベクター」は、好適な宿主中でタンパク質を発現させることができる好適な制御配列に、作動可能に連結されたコード配列を含むDNAコンストラクトを意味する。このような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、転写を制御する任意選択的オペレーター配列、mRNA上の好適なリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー、ならびに転写および翻訳の終了を制御する配列が含まれ得る。
本明細書で使用されるとき、「分泌シグナル配列」という用語は、より大きなポリペプチドの成分として、そのより大きなポリペプチドに、それが合成された細胞の分泌経路を通過させるポリペプチド(すなわち、「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を意味する。より大きなポリペプチドは、通常、分泌経路を通る過程で切断され、分泌ペプチドが除去される。
本明細書で使用されるとき、「誘導」という用語は、「インデューサー」(すなわち、誘導基質)の存在に応じて、極めて大きい速度で糸状菌細胞中での目的タンパク質(以下、「POI」)の合成をもたらす遺伝子の転写の増加を指す。POIをコードする「目的遺伝子」(以下、「GOI」)または「目的ORF」の「誘導」を測定するために、変異糸状菌(宿主)細胞を候補誘導基質(インデューサー)で処理し、誘導基質(インデューサー)で処理していない親糸状菌(対照、非改変)細胞と比較する。したがって、(未処理の)親(対照)細胞に100%の相対タンパク質活性値を割り当てると、変異宿主細胞においてPOIをコードするGOIの誘導は、活性値(すなわち、対照細胞に対する値)が100%より大きい、110%より大きい、より好ましくは150%より大きい、より好ましくは200~500%(すなわち、対照に対して2~5倍高い)、またはより好ましくは1000~3000%高いときに達成される。
本明細書で使用されるとき、「インデューサー(inducer)」、「インデューサー(inducers)」、「誘導基質(inducing substrate)」または「誘導基質(inducing substrates)」は互換的に使用され、糸状菌細胞に「増加した量」のポリペプチド(例えば、酵素、レセプター、抗体など)を産生させる、または誘導基質が存在しない場合に産生するもの以外の化合物/物質を産生させる任意の化合物を指す。誘導基質の例には、ソホロース、ラクトース、ゲンチビオースおよびセルロースが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「誘導飼料」という用語は、少なくとも「誘導基質」を含む、糸状菌細胞に与える組成物を指し、そのような誘導飼料は、POIの産生を誘導する。
本明細書で使用されるとき、「単離(された)」または「精製(された)」という用語は、それが天然に結合している少なくとも1つの成分から除去される核酸またはアミノ酸を指す。
本明細書での定義では、「目的タンパク質」または「POI」という用語は、糸状菌細胞において発現することが所望されるポリペプチドを指す。そのようなタンパク質は、酵素、基質結合タンパク質、表面活性タンパク質、構造タンパク質などであり得、高レベルで発現させることができ、商業化を目的とすることができる。目的タンパク質は、内因性遺伝子または異種遺伝子(すなわち、変異細胞および/または親細胞に対して)によってコードすることができる。目的タンパク質は、細胞内で、または分泌(細胞外)タンパク質として発現させることができる。
本明細書で使用されるとき、「ポリペプチド」および「タンパク質」(ならびに/またはそれらのそれぞれの複数形)という用語は、互換的に使用され、ペプチド結合によって連結したアミノ酸残基を含む任意長のポリマーを指す。本明細書では、アミノ酸残基に対する従来の1文字コードまたは3文字コードが使用される。ポリマーは直鎖状または分枝状であってよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。これらの用語はまた、天然に、または介入(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合などの他の任意の操作もしくは修飾)によって改変されているアミノ酸ポリマーを包含する。また、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、および当該技術分野で知られている他の修飾を含むポリペプチドも、この定義内に含まれる。
本明細書で使用されるとき、機能的にかつ/または構造的に類似したタンパク質は、「関連タンパク質」であると見なされる。そのようなタンパク質は、属および/または種が異なる生物、あるいは異なる分類の生物(例えば、細菌および真菌)に由来し得る。関連タンパク質はまた、一次配列分析によって決定されるか、二次または三次構造分析によって決定されるか、または免疫学的交差反応性によって決定される相同体を包含する。
本明細書で使用されるとき、「実質的に活性を有しない」という語句、または類似の語句は、特定の活性が混合物中で検出できないか、または混合物の意図する目的を妨害しない量で存在することを意味する。
本明細書で使用されるとき、「誘導ポリペプチド」という用語は、N末端およびC末端のいずれかまたは両方への1つ以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列中の1つまたは多数の異なる部位での1つ以上のアミノ酸の置換、タンパク質の一方もしくは両方の末端での、またはアミノ酸配列中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失、ならびに/あるいはアミノ酸配列中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の挿入によって、タンパク質から得られるか、または得ることができるタンパク質を指す。タンパク質誘導体の調製は、天然のタンパク質をコードするDNA配列を改変し、そのDNA配列を好適な宿主に形質転換し、その改変DNA配列を発現させて誘導タンパク質を形成することによって達成することができる。
関連(および誘導)タンパク質には、「変異タンパク質」が含まれる 変異タンパク質は、少ない数のアミノ酸残基における置換、欠失、および/または挿入によって、参照/親タンパク質(例えば、野生型タンパク質)とは異なる。変異タンパク質と親タンパク質との間の異なるアミノ酸残基の数は、1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、またはそれ以上のアミノ酸残基であり得る。変異タンパク質は、参照タンパク質と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%、またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を共有し得る。変異タンパク質はまた、選択されたモチーフ、ドメイン、エピトープ、保存領域などにおいて、参照タンパク質と異なっていてもよい。
本明細書で使用されるとき、「相同タンパク質」という用語は、参照タンパク質と類似の活性および/または構造を有するタンパク質を指す。相同体が必ずしも進化的に関連しているということではない。したがって、この用語は異なる生物から得られる同一の、類似の、または対応する酵素(すなわち、構造および機能に関して)を包含することが意図されている。いくつかの実施形態では、参照タンパク質に類似の四次、三次および/または一次構造を有する相同体を特定することが望ましい。いくつかの実施形態では、相同タンパク質は、参照タンパク質と類似の免疫応答を誘導する。いくつかの実施形態では、相同タンパク質は、所望の活性を有する酵素を産生するように遺伝子操作される。
配列間の相同性の程度は、当該技術分野で周知の任意の好適な方法を使用して決定し得る(例えば、Smith and Waterman,1981;Needleman and Wunsch,1970;Pearson and Lipman,1988;Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,Madison,WI)のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTAなどのプログラム;ならびにDevereux et al.,1984を参照されたい)。
本明細書で使用されるとき、「実質的に類似(の)」および「実質的に同一(の)」という句は、少なくとも2つの核酸またはポリペプチドとの関連では、通常、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが対照(すなわち、野生型)配列と比較して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約75%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、もしくは少なくとも約99%の同一性、またはそれ以上を有する配列を含むことを意味する。配列同一性は、BLAST、ALIGN、およびCLUSTALなどの既知のプログラムにより、標準的なパラメータを用いて決定することができる。
本明細書で使用されるとき、「遺伝子」という用語は、タンパク質またはRNAの発現をコードし、かつ指示する核酸を指す場合、「対立遺伝子」という用語と同義である。糸状菌の栄養型は一般に一倍体であるため、特定の表現型を与えるには、特定の遺伝子の単一コピー(すなわち、単一の対立遺伝子)で十分である。
本明細書中で使用されるとき、「野生型」および「天然」という用語は、互換的に使用され、そして天然に見出されるような遺伝子、タンパク質、真菌細胞または菌株を指す。
本明細書で使用されるとき、「遺伝子の欠失」は、宿主細胞のゲノムからの遺伝子の除去を指す。遺伝子が遺伝子のコード配列に直接隣接して位置しない制御エレメント(例えば、エンハンサーエレメント)を含む場合、遺伝子の欠失は、コード配列の欠失を指し、また、場合により、例えばプロモーター配列および/またはターミネーター配列(これらに限定されない)を含む隣接エンハンサーエレメントの欠失を指す。
本明細書で使用されるとき、「遺伝子の破壊」は、細胞が宿主細胞内で機能的遺伝子産物、例えば、タンパク質を産生するのを実質的に妨げる任意の遺伝子操作または化学的操作、すなわち、変異を広く指す。例示的な破壊方法には、ポリペプチドコード配列、プロモーター、エンハンサー、もしくは別の調節エレメントを含む、遺伝子の任意の部分の完全または部分的な欠失、またはその変異誘発が含まれ、変異誘発は置換、挿入、欠失、逆位、ならびにそれらの組み合わせおよびバリエーションを包含し、その変異はいずれも機能的遺伝子産物の産生を実質的に妨げる。遺伝子はまた、RNAi、アンチセンス、CRISPR/Cas9、または遺伝子発現を消失、減少または低減する任意の他の方法を使用して破壊することができる。
本明細書で使用されるとき、「本開示のAce3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させる「遺伝子改変」を含む変異[宿主]細胞」という語句は、そのようなAce3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNタンパク質をコードするace3遺伝子形態(またはそのORF)を含むプラスミドまたは染色体組み込みカセットを宿主細胞に導入すること(例えば、形質転換により)を含む。他の特定の実施形態では、例えば、親真菌細胞がAce3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNタンパク質をコードする内因性遺伝子形態を天然に含む場合、「Ace3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させる「遺伝子改変」を含む、変異[宿主]細胞」という語句は、天然/野生型ace3遺伝子プロモーターを異種プロモーターで置換することを含む。
本明細書で使用されるとき、「好気性発酵」は、酸素の存在下における増殖を指す。
本明細書で使用されるとき、「細胞ブロス」という用語は、液体培養/浸漬培養における培地および細胞を集合的に指す。
本明細書で使用されるとき、「細胞量」という用語は、液体培養/浸漬培養において存在する細胞成分(無傷細胞および溶解細胞を含む)を指す。細胞量は、乾燥重量または湿潤重量で表すことができる。
本明細書で使用されるとき、「機能性ポリペプチド/タンパク質」は、酵素活性、結合活性、表面活性特性などの活性を有し、かつ、その活性を消失または減少させるために、変異誘発されたり、切断されたり、またはその他の改変がなされていないタンパク質である。機能性ポリペプチドは、明細書に記載されているように、熱的に安定または不安定であり得る。
本明細書で使用されるとき、「機能性遺伝子」は、活性な遺伝子産物、すなわち、一般的にはタンパク質を産生するために、細胞成分が使用し得る遺伝子である。機能性遺伝子は、細胞成分が活性遺伝子産物を産生するために使用することができないか、または細胞成分が活性遺伝子産物を産生するために使用する能力が低下するように改変された、破壊された遺伝子とは正反対である。
本明細書で使用されるとき、「目的タンパク質」は、糸状菌細胞の浸漬培養において産生が所望されるタンパク質である。一般に、目的タンパク質は、工業、医薬、動物の健康、ならびに食品および飲料の用途において商業的に重要なものであり、大量に生産することが望ましい。目的タンパク質は、糸状菌細胞によって発現される、数え切れないほどの他のタンパク質と区別されるべきであり、それらは一般に産物として目的物ではなく、主にバックグラウンドのタンパク質混入物と考えられる。
本明細書で使用されるとき、「変異真菌宿主細胞」は、変異細胞によって産生されるタンパク質の量が親細胞と比較して、少なくとも5%増加、少なくとも10%増加、少なくとも15%増加、またはそれ以上の増加であるなら、「親真菌細胞」よりも「バイオマス1単位量当たり実質的により多くのタンパク質」を産生している(ここで、このタンパク質の量はタンパク質産生が測定される細胞のバイオマスの総量に対して正規化されたものであり、バイオマスは湿潤重量(例えば、細胞ペレット)または乾燥重量で表すことができる)。
III.Activator of Cellulase Expression 3(ace3)
最近、セルラーゼ/ヘミセルラーゼ産生が「誘導された」(すなわち、異なる誘導組成物;例えば、ソホロース、ラクトースの添加によって)トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)培養物(Hakkinen et al.,2014)からの転写プロファイリングデータが調べられ、セルラーゼおよびヘミセルラーゼ遺伝子発現の推定「レギュレーター」が同定され、また調節タンパク質をコードする候補遺伝子が同定された。Hakkinen et al.(2014)は、遺伝子ID番号77513(遺伝子ID番号はT.リーゼイ(T.reesei)データベース2.0と同じである)として、この候補遺伝子を同定し(Hakkinen et al.図2および表2を参照されたい)、この候補遺伝子を「Activator of Cellulase Expression 3」(以下、「ace3」)と命名し、コードされたタンパク質(すなわち、候補転写因子)を「Ace3」と命名した。より詳しくは、Hakkinen et al.(2014)の研究では、T.リーゼイ(T.reesei)QM6a株(genome.jgi.doe.gov/Trire2/Trire2.home.htmlを参照されたい)の、公的に利用可能なゲノム配列に基づく予測されたace3 ORF(配列番号:2)が使用されたが、このQM6aの予測されたアノテーション(遺伝子ID 77513)は、2つのエクソンおよび1つのイントロンからなる(例えば、図1を参照されたい))。
本明細書中に記載し、そして下記実施例の項でさらに記述するように、本開示の出願人らは、T.リーゼイ(T.reesei)「RUT-C30株」アノテーションに基づくace3 ORFに対して、Hakkinen et al.,2014に記載のクローン化ace3 ORF(すなわち、Ace3のT.リーゼイ(T.reesei)「QM6a株」アノテーションに基づく)を比較し評価したとき、驚くべき予期しなかった結果を見出した。例えば、下記実施例1に記載のように、配列番号6のより長いAce3タンパク質(本明細書では「Ace3-L」と呼ぶ)をコードする、配列番号4のT.リーゼイ(T.reesei)「RUT-C30株」ace3遺伝子(または配列番号5のORF)に対して、配列番号1のT.リーゼイ(T.reesei)「QM6a株」ace3遺伝子(および配列番号2のORF)は、配列番号3のより短いAce3タンパク質(本明細書では「Ace3-S」と呼ぶ)をコードする。
対照的に、T.リーゼイ(T.reesei)Rut-C30株の公的に利用可能なゲノム配列(genome.jgi.doe.gov/TrireRUTC30_1/TrireRUTC30_1.home.htmlを参照されたい)から予測されるace3 ORF(遺伝子ID 98455)は、3つのエクソンと2つのイントロンを含み、より長いタンパク質配列(すなわち、T.リーゼイ(T.reesei)QM6a由来のAce3-Sと比較して)を含む(図1A)。より詳細には、「RUT-C30」モデルによって予測される開始コドンは「QM6a」モデルのそれより上流に位置し、C末端にナンセンス変異があり(Poggi-Parodi et al.,2014)、より長いN末端配列およびより短いC末端配列をもたらす(例えば、図1Bを参照されたい)。
同様に、下記実施例6に記載するように、ace3遺伝子コード領域の5’末端の位置は明らかではなく、したがって、出願人は本明細書に記載のように、ace3遺伝子の5’末端をさらに評価した。上で簡潔に述べたように、Joint Genome Institute(JGI)におけるDNA配列のアノテーションは、DNA配列が同じであっても、変異株Rut-C30と野生型株QM6aとでは異なった。QM6aの場合、コード領域の5’末端は、エクソン3の上流にあり、イントロン2内にあることが示唆された(図11に示すように)。Rut-C30の場合、コード領域の5’末端はエクソン2内にある(図11)。
ゲノムDNA配列および追加のcDNA配列のさらなる分析により、「エクソン1」および「イントロン1」が存在する可能性のあることが示唆された(図11に示すように)。さらに、Rut-C30のace3コード領域の3’末端は、野生型分離株QM6aの配列と比較して、未成熟終止コドンを作り出す変異を含んでいた(図11)。したがって、実施例6に記載のように、出願人は図12に示すように、ace3遺伝子のこれらの異なる可能な形態の過剰発現の効果を調べた。
さらに、下記実施例に記載のように、出願人は、「pYL1」、「pYL2」、「pYL3」および「pYL4」(図2A~2Dプラスミドマップを参照されたい)と命名された4つの異なるace3発現ベクターの1つを用いて、T.リーゼイ(T.reesei)細胞を形質転換することによって、Ace3-Sタンパク質(配列番号3)およびAce3-Lタンパク質(配列番号6)をコードする遺伝子を構築し(実施例1)かつテストした(実施例2~4)。より詳細には(実施例1)、これらの発現ベクターは、E.コリ(E.coli)における複製と選択のための細菌ColE1 oriおよびAmpR遺伝子を有するベクター骨格を含む。さらに、発現ベクター(図2A~2Dを参照されたい)はT.リーゼイ(T.reesei)pyr2選択マーカー、およびその天然ターミネーターを有するace3 ORFコード配列(ace3-Lまたはace3-S)に作動可能に連結した異種T.リーゼイ(T.reesei)プロモーター配列(すなわち、hxk1またはpki1プロモーター)を含む。
続いて、生成された安定なT.リーゼイ(T.reesei)形質転換体(すなわち、変異宿主細胞A4-7、B2-1、C2-28およびD3-1)を、「誘導」および「非誘導」の両条件下で、徐放性マイクロタイタープレート(srMTP)(実施例2)、振盪フラスコ(実施例3)および小規模発酵(実施例4)において試験/スクリーニングし、培養上清を回収し、そしてポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した(図3~図5を参照されたい)。これらの実施例に示すように、試験した宿主細胞の全て(すなわち、親、変異A4-7、変異B2-1、変異C2-28および変異D3-1)は、誘導基質(すなわち、ソホロースまたはラクトース)の存在下で多量のタンパク質を分泌した。対照的に、驚くべきことに、誘導基質(すなわち、ソホロースまたはラクトース)の非存在下、「グルコース」が唯一の炭素源である場合、ace3-L ORFを発現する変異宿主細胞(すなわち、変異A4-7およびC2-28)のみが分泌タンパク質を産生することができ、親(対照)細胞およびace3-S ORFを発現する変異宿主細胞(すなわち、変異B2-1およびD3-1)は検出可能な分泌タンパク質を産生しないことが観察された。
他の実施形態では、本開示は、ace3-L(実施例5)発現コンストラクトの発現を駆動する13種の異なるプロモーターを使用し、「非誘導」条件下でタンパク質の産生が増強されることをさらに示す。例えば、試験した13のプロモーターには、(i)ホルムアミダーゼ遺伝子(rev3;タンパク質ID 103041)プロモーター(配列番号15)、(ii)β-キシロシダーゼ遺伝子(bxl;タンパク質ID 121127)プロモーター(配列番号16)、(iii)トランスケトラーゼ遺伝子(tkl1;タンパク質ID 2211)プロモーター(配列番号17)、(iv)機能の知られていない遺伝子(タンパク質ID 104295)プロモーター(配列番号18)、(v)オキシドレダクターゼ遺伝子(dld1;タンパク質ID 5345)プロモーター(配列番号19)、(vi)キシラナーゼIV遺伝子(xyn4;タンパク質ID 111849)プロモーター(配列番号20)、(vii)α-グルクロニダーゼ遺伝子(タンパク質ID 72526)プロモーター(配列番号21)、(viii)アセチルキシランエステラーゼ遺伝子1(axe1;タンパク質ID 73632)プロモーター(配列番号22)、(ix)ヘキソースキナーゼ遺伝子(hxk1;タンパク質ID 73665)プロモーター(配列番号23)、(x)ミトコンドリアキャリアタンパク質遺伝子(dic1;タンパク質ID 47930)プロモーター(配列番号24)、(xi)オリゴペプチドトランスポーター遺伝子(opt;タンパク質ID 44278)プロモーター(配列番号25)、(xii)グリセロールキナーゼ遺伝子(gut1;タンパク質ID 58356)プロモーター(配列番号26)および(xiii)ピルビン酸キナーゼ遺伝子(pki1;タンパク質ID 78439)プロモーター(配列番号27)が含まれた。表3に示すように、親T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、ソホロースインデューサーの存在下でのみ、分泌タンパク質を産生した。対照的に、13の異なるプロモーターのいずれか1つで駆動されるAce3-Lを含み、かつ発現させる、変異(娘)T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、誘導条件下および非誘導条件下の両方で類似量の分泌タンパク質を産生した。また、実施例5に記載のように、T.リーゼイ(T.reesei)親株およびその形質転換体を、振盪フラスコ実験および小規模発酵でさらに試験した。図8に示すように、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、ソホロース(「Sop」)インデューサーの存在下でのみ分泌タンパク質を産生したが、娘株LT83は誘導(「Sop」)および非誘導(「Glu」)の両条件下で、類似量の分泌タンパク質を産生した。同様に、図9に示すように、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)株は、ソホロースインデューサー(「Sop」)の存在下でのみ分泌タンパク質を産生したが、娘株LT83は誘導(「Sop」)および非誘導(「Glu」)条件の両方で、類似量の分泌タンパク質を産生した。
本開示の実施例6には、ace3遺伝子の異なる可能な形態を過剰発現することの効果の実験的研究が記載されている(例えば、変異株Rut-C30/野生型株QM6aゲノム配列アノテーションの上記議論、図11および図12を参照されたい)。したがって、図12に示したace3の異なる形態は、T.リーゼイ(T.reesei)ace3遺伝子の過剰発現ベクターが、T.リーゼイ(T.reesei)のグルコアミラーゼ遺伝子座(gla1)にace3の標的化組み込みを可能にするよう設計されている場合に、T.リーゼイ(T.reesei)内で過剰発現されたものである。したがって、表5に示すコンストラクトは、異なる形態のace3遺伝子を有することによって異なる。 同様に、24ウェルマイクロタイタープレート中、炭素源として2%ラクトースまたは2%グルコースを含む液体培地で表7の株を増殖させ、培養上清から全分泌タンパク質の量を測定した。ace3-L、ace3-ELおよびace3-LN形態の過剰発現(すなわち、RutC-30C末端変異を有する)は、両培地(すなわち、2%ラクトースまたは2%グルコース)共に、全タンパク質の産生が改善された(表8)。炭素源としてラクトースを有する培地では、ace3遺伝子の全ての形態の過剰発現は、全タンパク質の産生をある程度改善したが、改善のレベルは、ace3遺伝子のace3-L、ace3-ELおよびace3-LN形態を過剰発現する株で最も高かった(表8)。したがって、ace3遺伝子のace3-L、ace3-ELおよびace3-LN形態を過剰発現する場合、「非誘導条件」で(すなわち、グルコースを炭素源として使用したとき)高レベルの分泌タンパク質が観察されることが明らかである。
本開示の実施例7には、ace3遺伝子座の天然プロモーターの上流の5’領域を含むDNAフラグメント、loxP隣接ハイグロマイシンB耐性選択マーカーカセット、およびace3オープンリーディングフレームの5’末端に作動可能に融合した目的プロモーターを含むフラグメントを融合することによって作製されたプロモーター置換コンストラクト(図6を参照されたい)について記載されている。例えば、特定の実施形態では、プロモーター置換コンストラクトは、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞内の内因性ace3遺伝子プロモーターを代替プロモーターで置換するために使用される。
本開示の実施例8には、目的内因性非リグノセルロース遺伝子プロモーターを、目的リグノセルロース遺伝子プロモーターで置換することが記載されている。例えば、T.リーゼイ(T.reesei)グルコアミラーゼ発現コンストラクトを、DNAポリヌクレオチドフラグメントから組み立てた(ここで、T.リーゼイ(T.reesei)グルコアミラーゼをコードするORF配列は、5’(上流)T.リーゼイ(T.reesei)cbh1プロモーターに作動可能に連結し、3’(下流)T.リーゼイ(T.reesei)cbh1ターミネーターに作動可能に連結し、このコンストラクトは選択マーカーとしてT.リーゼイ(T.reesei)pyr2遺伝子をさらに含んだ)。培養過程でT.リーゼイ(T.reesei)グルコアミラーゼ酵素を分泌することができる形質転換体を同定するために、変異(娘)T.リーゼイ(T.reesei)細胞(すなわち、Ace3-Lタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変を含む)を、グルコアミラーゼ発現コンストラクトで形質転換し、形質転換体を選択し、炭素源としてグルコースを含む液体培地中で(すなわち、ソホロースまたはラクトースなどの誘導基質なしで)培養した。図10に示すように、親T.リーゼイ(T.reesei)細胞はグルコース/ソホロース(誘導条件)を含む規定培地で1,029μg/mLのグルコアミラーゼを産生し、グルコース(非誘導条件)を含む規定培地では、わずかに38μg/mLのグルコアミラーゼを生成するのみであったが、dic1プロモーターで駆動されるace3-Lを含む改変(娘)株「LT88」は、「誘導」(「Sop」)条件で3倍高いグルコアミラーゼを産生し(すなわち、親(対照)株と比較して)、「非誘導」(「Glu」)条件において2.5倍高いグルコアミラーゼを産生した(すなわち、親(対照)株と比較して)。したがって、これらの結果は、Ace3-L ORFを含む変異(娘)細胞は、インデューサーの非存在下で細胞外タンパク質を産生するだけでなく、これらの変異細胞はまたそのような誘導条件下で、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)細胞よりも多くの総タンパク質を産生することを示している。
実施例9には、天然に関連した異種の目的遺伝子プロモーターを、目的リグノセルロース遺伝子プロモーターで置換することが記載されている。例えば、ブティアウクセラ属(Buttiauxella)種のフィターゼ(すなわち、異種GOI)をコードするORFが、5’末端でT.リーゼイ(T.reesei)cbh1プロモーターに、かつ3’末端でT.リーゼイ(T.reesei)cbh1ターミネーターに作動可能に連結され、このDNAコンストラクトは選択マーカーをさらに含む。培養過程でブティアウクセラ属フィターゼ酵素を分泌することができる形質転換体を同定するために、変異T.リーゼイ(T.reesei)細胞(すなわち、Ace3-Lタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変を含む)を、フィターゼ発現コンストラクトで形質転換し、形質転換体を選択し、炭素源としてグルコースを含む液体培地中で(すなわち、ソホロースまたはラクトースなどの誘導基質なしで)培養する。
本開示の実施例10には、T.リーゼイ(T.reesei)pki1プロモーターの下で発現するストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)cas9遺伝子、およびU6プロモーターの下で発現されるガイドRNAを含む、天然ace3プロモーター置換ベクターの構築が記載されている。例えば、cas9媒介ace3プロモーター置換ベクター(pCHL760およびpCHL761)をT.リーゼイ(T.reesei)親細胞に形質転換し、ace3プロモーター置換株の機能性を試験するために、振盪フラスコ中、50mlの浸漬培養でインデューサー基質(ソホロース)の存在下および非存在下で細胞を増殖させた。SDS-PAGEに見られるように、親細胞(図23、ID 1275.8.1)では、グルコース/ソホロース(誘導)の場合と比較して、グルコース(非誘導)を含む規定培地では分泌タンパク質の産生は非常に少なかった。対照的に、形質転換体2218、2219、2220、2222および2223は、誘導条件下および非誘導条件下で類似した量の分泌タンパク質を産生し、hxk1またはdic1プロモーターを有する変異細胞(すなわち、ace3遺伝子座で天然ace3プロモーターを置換)が、インデューサーの非存在下で細胞外タンパク質を産生したことを示した。
このように、本明細書中で考察し記載するように、本開示の特定の態様は、1種以上の内因性糸状菌リグノセルロース分解酵素(すなわち、セルロース分解酵素、例えば、セロビオヒドロラーゼ、キシラナーゼ、エンドグルカナーゼなど)の産生に関する。より詳細には、本開示の特定の実施形態は、誘導基質の完全な非存在下で、本開示の変異宿主細胞(すなわち、Ace3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNタンパク質の発現を増加させる遺伝子改変を含む変異宿主細胞)中で、このような内因性酵素を産生することに関する。本開示の変異宿主細胞、組成物および方法は、特に、本開示のそのような変異宿主細胞が、そのようなセルロース分解酵素を産生するために誘導基質を必要としないという事実のために(すなわち、誘導基質の存在下でのみそのようなセルロース分解酵素を産生する親細胞とは対照的に)、前述のセルロース分解酵素を産生するコスト/経費を大きく削減するのに特に有用である。
例えば、特定の実施形態では、本開示は、誘導基質の非存在下で1種以上の内因性の目的タンパク質、および/または誘導基質の非存在下で1種以上の異種の目的タンパク質を発現/産生することができる変異真菌宿主細胞に関する。したがって、特定の実施形態では、本開示の変異真菌宿主細胞(すなわち、Ace3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNの発現を増加させる遺伝子改変を含む)は、内因性の目的非リグノセルロースタンパク質および/または異種の目的タンパク質を発現するようにさらに改変される。例えば、特定の実施形態では、内因性の目的非リグノセルロースタンパク質をコードする遺伝子は、変異真菌宿主細胞において改変される。したがって、特定の実施形態では、内因性の目的非リグノセルロースタンパク質をコードする遺伝子(またはORF)と天然に関連したプロモーターは、リグノセルロースタンパク質をコードする糸状菌遺伝子由来のプロモーター(例えば、目的の非リグノセルロースタンパク質をコードする内因性遺伝子に作動可能に連結された5’-リグノセルロース遺伝子プロモーター)で置換される。同様に、他の特定の実施形態では、本開示の変異真菌宿主細胞(すなわち、Ace3-Lタンパク質、Ace3-ELおよび/またはAce3-LNの発現を増加させる遺伝子改変を含む)は、異種の目的タンパク質を発現するように改変される。したがって、他の特定の実施形態では、異種の目的タンパク質をコードする遺伝子と天然に関連したプロモーターは、リグノセルロースタンパク質をコードする糸状菌遺伝子由来のプロモーター(例えば、異種の目的タンパク質をコードする異種遺伝子に作動可能に連結した5’-リグノセルロース遺伝子プロモーター)で置換される。
したがって、特定の実施形態では、本開示は親糸状菌細胞に由来する変異糸状菌細胞に関し、この変異細胞は、親細胞と比較して、Ace-Lタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変を含み、このコードされたAce3-Lタンパク質は配列番号6のAce3-Lタンパク質に対して約90%の配列同一性を有する。例えば、特定の実施形態では、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有する、コードされたAce3タンパク質は、最後の4つのC末端アミノ酸として「Lys-Ala-Ser-Asp」を含む。他の実施形態では、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有する、コードされたAce3タンパク質は、配列番号6に作動可能に連結し、かつ同配列に先行する配列番号98のN末端アミノ酸フラグメントをさらに含む。別の実施形態では、Ace-3タンパク質は、配列番号12に対して約90%の配列同一性を有する。
他の特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号4、配列番号11または配列番号13に対して、約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号5、配列番号101または配列番号102に対して、約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
IV.糸状菌宿主細胞
本開示の特定の実施形態では、Ace3-Lポリペプチドをコードする遺伝子またはORFの発現を増加させる遺伝子改変を含む、変異糸状菌細胞(すなわち、親糸状菌細胞に由来する)が提供される。より詳しくは、特定の実施形態では、変異糸状菌細胞(すなわち、親(対照)細胞に対して)は、配列番号6のAce3-Lタンパク質をコードする遺伝子(またはORF)の発現を増加させる遺伝子改変を含む。好ましい実施形態では、配列番号6のAce3-Lタンパク質をコードする遺伝子(またはORF)の発現を増加させる遺伝子改変を含む、そのような変異真菌細胞は、誘導基質の非存在下で、内因性の目的タンパク質の少なくとも1つを産生することができる。他の実施形態では、配列番号6のAce3-Lタンパク質をコードする遺伝子(またはORF)の発現を増加させる遺伝子改変を含む、そのような変異真菌細胞は、誘導基質の非存在下で、異種の目的タンパク質の少なくとも1つを産生することができる。
したがって、特定の実施形態では、本開示の操作および使用のための糸状菌細胞には、アスコマイコタ門(Ascomycota)、チャワンタケ亜門(Pezizomycotina)、特に栄養菌糸状態を有する真菌由来の糸状菌が含まれる。そのような生物には、限定されないが、トリコデルマ属(Trichoderma)種、アスペルギルス属(Aspergillus)種、フザリウム属(Fusarium)種、スケドスポリウム属(Scedosporium)種、ペニシリウム属(Penicillium)種、クリソスポリウム属(Chrysosporium)種、セファロスポリウム属(Cephalosporium)種、タラロマイセス属(Talaromyces)種、ゲオスミチア属(Geosmithia)種、マイセリオフトーラ属(Myceliophthora)種、およびニューロスポラ属(Neurospora)種を含む、商業的に重要な産業用および医薬用タンパク質の産生に使用される糸状菌細胞が含まれる。
特定の糸状菌には、限定されないが、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(以前はトリコデルマ・ロンギブラチアツム(Trichoderma longibrachiatum)およびヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)として分類)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・イタコニクス(Aspergillus itaconicus)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニデユランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・ソーヤエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、スケドスポリウム・プロリフィカンス(Scedosporium prolificans)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、ペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)、タラロマイセス(ゲオスミチア)・エメルソニイ(Talaromyces(Geosmithia)emersonii)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)およびクリソスポリウム・ルクノウエンセ(Chrysosporium lucknowense)が含まれる。
V.組換え核酸および分子生物学
特定の実施形態では、本開示は、Ace3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子またはORFの発現を増加させる遺伝子改変を含む変異糸状菌宿主細胞に関する。上記のように、そのような変異宿主細胞は、誘導基質の非存在下で、1つ以上の目的タンパク質を産生し得る(すなわち、非改変親(対照)細胞とは対照的に)。
したがって、特定の実施形態では、本開示は、Ace3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子またはORF含む組換え核酸に関する。特定の実施形態では、組換え核酸は、糸状菌宿主細胞内でAce3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質を産生するためのポリヌクレオチド発現カセットを含む。他の実施形態では、ポリヌクレオチド発現カセットは、発現ベクター内に含まれる。特定の実施形態では、発現ベクターはプラスミドである。他の実施形態では、組換え核酸、ポリヌクレオチド発現カセットまたはその発現ベクターは、配列番号4、配列番号5、配列番号11、配列番号101、配列番号13または配列番号102に対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、組換え核酸、ポリヌクレオチド発現カセットまたはその発現ベクターは、配列番号6に対して約90%の配列同一性を有するAce3-Lタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
他の特定の実施形態では、組換え核酸(またはそのポリヌクレオチド発現カセットもしくはその発現ベクター)は、1つ以上の選択マーカーをさらに含む。糸状菌に使用するための選択マーカーには、限定されないが、alsl、amdS、hygR、pyr2、pyr4、pyrG、sucA、ブレオマイシン耐性マーカー、ブラスチシジン耐性マーカー、ピリチアミン耐性マーカー、クロリムロンエチル耐性マーカー、ネオマイシン耐性マーカー、アデニン経路遺伝子、トリプトファン経路遺伝子、チミジンキナーゼマーカーなどが含まれる。特定の実施形態では、選択マーカーはpyr2であり、その成分および使用方法は、国際公開第2011/153449号パンフレットに一般的に記載されている。したがって、特定の実施形態では、本開示のAce3タンパク質をコードするポリヌクレオチドコンストラクトは、それに作動可能に連結された、選択マーカーをコードする核酸配列を含む。
別の実施形態では、組換え核酸、ポリヌクレオチドコンストラクト、ポリヌクレオチド発現カセットまたはその発現ベクターは、Ace3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質をコードする遺伝子(またはORF)の発現を駆動する異種プロモーターを含む。より詳しくは、特定の実施形態では、異種プロモーターは構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである。特定の実施形態では、異種プロモーターは、rev3プロモーター、bxlプロモーター、tkl1プロモーター、PID104295プロモーター、dld1プロモーター、xyn4プロモーター、PID72526プロモーター、axe1プロモーター、hxk1プロモーター、dic1プロモーター、optプロモーター、gut1プロモーターおよびpki1プロモーターからなる群から選択される。特定の理論または作用機序に拘束されることを望むものではないが、本明細書では、グルコース制限条件下でより高い発現レベル(すなわち、過剰グルコース濃度に対して)を与える、rev3、bxl、tkl、PID104295、dld1、xyn4、PID72526、axe1、hxk1、dic1、opt、gut1およびpki1などのプロモーターは、本開示に特に有用であると考える。したがって、特定の実施形態では、組換え核酸(またはポリヌクレオチドコンストラクト、ポリヌクレオチド発現カセットもしくはその発現ベクター)は、Ace3タンパク質をコードする核酸配列の5’に作動可能に連結したプロモーターを含む。
別の実施形態では、組換え核酸(またはポリヌクレオチドコンストラクト、ポリヌクレオチド発現カセット、またはその発現ベクター)は、天然ace3ターミネーター配列をコードする核酸配列をさらに含む。したがって、特定の実施形態では、組換え核酸(またはポリヌクレオチドコンストラクト、ポリヌクレオチド発現カセット、またはその発現ベクター)は、Ace3タンパク質をコードする核酸配列の5’に作動可能に連結したプロモーター、およびAce3タンパク質をコードする核酸配列の3’に作動可能に連結した天然ace3ターミネーター配列を含む(例えば、5’-Pro-ORF-Term-3’。ここで「Pro」は構成的プロモーターであり、「ORF」はAce3をコードし、「Term」は天然ace3ターミネーター配列である)。
したがって、特定の実施形態では、本開示の真菌宿主細胞を形質転換するために、糸状菌の形質転換および真菌の培養のための標準的な手法(これは、当業者によく知られている)が使用される。したがって、真菌宿主細胞へのDNAコンストラクトまたはベクターの導入法には、形質転換、エレクトロポレーション、核マイクロインジェクション、形質導入、トランスフェクション(例えば、リポフェクション媒介およびDEAE-デキストリン媒介トランスフェクション)、リン酸カルシウムDNA沈殿物とのインキュベーション、DNA被覆微粒子を用いる高速銃、遺伝子銃またはバイオリスティック形質転換、プロトプラスト融合などの手法が含まれる。一般的な形質転換技術は当該技術分野で知られている(例えば、Ausubel et al.,1987、Sambrook et al.,2001および2012、ならびにCampbell et al.,1989を参照されたい)。トリコデルマ属(Trichoderma)内での異種タンパク質の発現は、例えば、米国特許第6,022,725号明細書;同第6,268,328号明細書;Harkki et al.,1991およびHarkki et al.,1989に記載されている。アスペルギルス属(Aspergillus)株の形質転換については、Cao et al.(2000)も参照されたい。
一般に、トリコデルマ属(Trichoderma)種の形質転換は、通常、105~107/mL、特に2×106/mLの密度で透過性処理を施したプロトプラストまたは細胞を使用する。適切な溶液中(例えば、1.2Mソルビトールおよび50mM CaCl2)の100μLの容量のこれらのプロトプラストまたは細胞を、所望のDNAと混合する。一般に、高濃度のポリエチレングリコール(PEG)が取り込み溶液に添加される。ジメチルスルホキシド、ヘパリン、スペルミジン、塩化カリウムなどの添加剤もまた、形質転換を促進するために取り込み溶液に添加し得る。同様の手順は、他の真菌宿主細胞についても利用可能である。例えば、米国特許第6,022,725号明細書および同第6,268,328号明細書を参照されたい(これらは両者とも参照により組み込まれる)。
特定の実施形態では、本開示は、糸状菌宿主細胞に対して内因性である1つ以上の目的タンパク質の発現および産生に関する(すなわち、Ace3-Lの発現を増加させる遺伝子改変を含む、本開示の変異真菌宿主細胞によって、内因性タンパク質が産生される)。他の実施形態では、本開示は、糸状菌宿主細胞に対して異種である1つ以上の目的タンパク質の発現および産生に関する。したがって、本開示は一般に、組換え遺伝学の分野におけるルーチンの手法に頼っている。本開示で使用する一般的な方法を開示する基本的なテキストには、Sambrook et al.,(2nd Edition,1989);Kriegler(1990)およびAusubel et al.,(1994)が含まれる。
したがって、特定の実施形態では、目的タンパク質をコードする異種遺伝子またはORFが糸状菌(宿主)細胞に導入される。特定の実施形態では、異種遺伝子またはORFは、典型的には、複製および/または発現のために糸状菌(宿主)細胞に形質転換される前に、中間ベクターにクローニングされる。これらの中間ベクターは、例えば、プラスミドまたはシャトルベクターなどの原核生物ベクターであり得る。特定の実施形態では、異種遺伝子またはORFの発現は、その天然のプロモーターの制御下にある。他の実施形態では、異種遺伝子またはORFの発現は、異種構成性プロモーターまたは異種誘導性プロモーターであり得る異種プロモーターの制御下に置かれる。
当業者は、自然(天然)のプロモーターは、その機能を変化させることなく、1つ以上のヌクレオチドの置換、置換、付加または削除によって改変できることを知っている。本発明の実施は、プロモーターに対するそのような改変を包含するが、それらを強いるものではない。
発現ベクター/コンストラクトは、通常、異種配列の発現に必要な全ての追加のエレメントを含む転写ユニットまたは発現カセットを含有する。例えば、典型的な発現カセットは、目的タンパク質をコードする異種核酸配列に作動可能に連結した5’プロモーターを含有し、転写物、リボソーム結合部位、および翻訳終結の効率的なポリアデニル化に必要な配列シグナルをさらに含み得る。カセットの追加のエレメントには、エンハンサーと、ゲノムDNAが構造遺伝子として使用される場合には、機能性スプライスドナー部位およびアクセプター部位を有するイントロンが含まれ得る。
プロモーター配列に加えて、発現カセットはまた、効率的な終結を提供するために、構造遺伝子の下流に転写終結領域を含み得る。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得てもよく、または異なる遺伝子から得てもよい。本発明においては、任意の真菌ターミネーターは、機能的である可能性が高いが、好ましいターミネーターには、トリコデルマ属(Trichoderma)cbhI遺伝子由来のターミネーター、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)trpC遺伝子(Yelton et al.,1984;Mullaney et al.,1985)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)もしくはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ遺伝子(Nunberg et al.,1984;Boel et al.,1984)、および/またはムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)カルボキシルプロテアーゼ遺伝子(欧州特許第0215594号明細書)が含まれる。
遺伝子情報を細胞に輸送するために使用される特定の発現ベクターは、特に重要ではない。真核細胞または原核細胞における発現に使用される、従来のベクターのいずれも使用し得る。標準的な細菌発現ベクターには、バクテリオファージλおよびM13、ならびにpBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23Dなどのプラスミド、MBP、GST、およびLacZなどの融合発現系が含まれる。便宜的な単離方法を提供するために、組換えタンパク質にエピトープタグ、例えば、c-mycを添加することもできる。
発現ベクター中に含むことができるエレメントには、また、レプリコン、組換えプラスミドを保有する細菌の選択を可能にする抗生物質耐性をコードする遺伝子、または異種配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域における固有の制限部位があり得る。当該技術分野で知られている多くの耐性遺伝子のいずれもが好適であり得るため、選択された特定の抗生物質耐性遺伝子は確定的ではない。原核生物配列は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)におけるDNAの複製または組み込みを妨害しないように選択することが好ましい。
本発明の形質転換方法は、形質転換ベクターの全部または一部の、糸状菌ゲノムへの安定な組み込みをもたらし得る。しかしながら、自己複製する染色体外形質転換ベクターの維持をもたらす形質転換も考えられる。
多くの標準的なトランスフェクション方法を使用して、大量の異種タンパク質を発現するトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞株を作製することができる。トリコデルマ属(Trichoderma)のセルラーゼ産生株にDNAコンストラクトを導入するための出版された方法には、Lorito,Hayes,DiPietro and Harman,1993,Curr.Genet.24:349-356;Goldman,VanMontagu and Herrera-Estrella,1990,Curr.Genet.17:169-174;Penttila,Nevalainen,Ratto,Salminen and Knowles,1987,Gene 6:155-164が、アスペルギルス属(Aspergillus)については、Yelton,Hamer and Timberlake,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474が、フザリウム属(Fusarium)については、Bajar,Podila and Kolattukudy,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8202-8212は、ストレプトミケス属(Streptomyces)については、Hopwood et al.,1985,The John Innes Foundation,Norwich,UKが、そしてバチルス属(Bacillus)については、Brigidi,DeRossi、Bertarini,Riccardi and Matteuzzi,1990,FEMS Microbiol.Lett.55:135-138)が含まれる。
外来ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入する既知の手順はいずれも使用し得る。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション法、ポリブレン法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、バイオリスティックス法、リポソーム法、マイクロインジェクション法、血漿ベクター法、ウイルスベクター法、および宿主細胞にクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来遺伝子物質を導入する方法として知られる他の任意の方法の使用が含まれる(例えば、上記のSambrook et al.を参照されたい)。米国特許第6,255,115号明細書に記載されているような、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)媒介トランスフェクション法も有用である。使用する特定の遺伝子工学の手順が、異種遺伝子を発現し得る宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子を首尾よく導入し得ることのみが必要である。
発現ベクターが細胞に導入された後、トランスフェクトされた細胞は、セルラーゼ遺伝子プロモーター配列の制御下で遺伝子の発現に有利な条件下で培養される。形質転換細胞の大きなバッチは、本明細書に記載のようにして培養することができる。最後に、標準的な手法を用いて培養物から生成物を回収する。
このように、本明細書における発明は、その発現が天然に存在するセルラーゼ遺伝子、融合DNA配列、および種々の異種コンストラクトを含む、セルラーゼ遺伝子プロモーター配列の制御下にある、所望のポリペプチドの発現および増強された分泌を提供する。本発明はまた、このような所望産物を高レベルで発現および分泌させる方法を提供する。
VI.目的タンパク質
上記のように、本開示の特定の実施形態は、変異糸状菌細胞(親糸状菌細胞に由来する)に関し、この変異細胞は、Ace3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質をコードする、遺伝子の発現を増加(親細胞と比較して)させる遺伝子改変を含み、このコードされたAce3-L、Ace3-ELまたはAce3-LNタンパク質は、配列番号6のAce3-Lタンパク質に対して約90%の配列同一性を有し、かつ変異細胞は、誘導基質の非存在下で、少なくとも1つの目的タンパク質(POI)を発現する。
本開示の特定の実施形態は、誘導基質の非存在下において、タンパク質(すなわち、目的タンパク質)の細胞内産生および/または細胞外産生を増強するために特に有用である。目的タンパク質は、内因性タンパク質(すなわち、宿主細胞において内因性)または異種タンパク質(すなわち、宿主細胞において天然でない)であり得る。本開示にしたがって産生することができるタンパク質には、限定されないが、ホルモン、酵素、成長因子、サイトカイン、抗体などが含まれる。
例えば、目的タンパク質には、限定されないが、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、β-グルカナーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ類、アラビナーゼ、アラビノシダーゼ、アラビノフラノシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルカナーゼ、グルカンライザーゼ、エンド-β-グルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルクロニダーゼ、インバーターゼ、イソメラーゼなどが含まれ得る。
特定の実施形態では、目的タンパク質には、限定されないが、国際公開第03/027306号パンフレット、同第200352118号パンフレット、同第200352054号パンフレット、同第200352057号パンフレット、同第200352055号パンフレット、同第200352056号パンフレット、同第200416760号パンフレット、同第9210581号パンフレット、同第200448592号パンフレット、同第200443980号パンフレット、同第200528636号パンフレット、同第200501065号パンフレット、同第2005/001036号パンフレット、同第2005/093050号パンフレット、同第200593073号パンフレット、同第200674005号パンフレット、同第2009/149202号パンフレット、同第2011/038019号パンフレット、同第2010/141779号パンフレット、同第2011/063308号パンフレット、同第2012/125951号パンフレット、同第2012/125925号パンフレット、同第2012125937号パンフレット、同第/2011/153276号パンフレット、同第2014/093275号パンフレット、同第2014/070837号パンフレット、同第2014/070841号パンフレット、同第2014/070844号パンフレット、同第2014/093281号パンフレット、同第2014/093282号パンフレット、同第2014/093287号パンフレット、同第2014/093294号パンフレット、同第2015/084596号パンフレットおよび同第2016/069541号パンフレットに開示されている酵素が含まれる。
タンパク質の産生の最適条件は、宿主細胞の選択および発現されるタンパク質の選択によって変化する。そのような条件は、ルーチンの実験および/または最適化によって、当業者には容易に確かめ得る。
目的タンパク質は、発現後に精製または単離することができる。目的タンパク質は、どのような他の成分が試料中に存在するかによって、当業者に知られた様々な方法で単離または精製し得る。標準的な精製方法には、電気泳動手法、分子的手法、免疫学的手法、クロマトグラフィー手法、例えば、イオン交換、疎水性、親和性、および逆相HPLCクロマトグラフィー、ならびにクロマトフォーカシングが含まれる。例えば、目的タンパク質は、標準的な抗目的タンパク質抗体カラムを用いて精製し得る。タンパク質濃度と関連して、限外ろ過およびダイアフィルトレーション手法もまた有用である。必要な精製の程度は、目的タンパク質の使用目的により異なる。ある場合には、タンパク質の精製は不要である。
他の特定の実施形態では、本開示の遺伝子的に改変された真菌細胞(すなわち、ace3-Lの発現を増加させる遺伝子改変を含む変異真菌宿主細胞)が、増加したレベルの目的タンパク質を産生する能力を有することを確認するために、種々のスクリーニング法を実施し得る。発現ベクターは、検出可能な標識として機能する標的タンパク質へのポリペプチド融合物をコードし得る、または標的タンパク質自体が選択可能なもしくはスクリーニング可能なマーカーとして機能し得る。標識タンパク質は、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング(Cold Spring Harbor Protocolsウェブサイトで入手可能な方法)、ELISA、または標識がGFPである場合、全細胞蛍光法もしくはFACSによって検出し得る。例えば、6-ヒスチジンタグは標的タンパク質への融合体として含まれ、そしてこのタグはウェスタンブロッティングによって検出される。標的タンパク質が十分に高いレベルで発現する場合、クマシー/銀染色と組み合わされたSDS-PAGEを、変異宿主細胞において親(対照)細胞を越える発現の増加を検出するために実施することができ、この場合は標識を必要としない。さらに、細胞1個あたりのタンパク質の活性または量、培地1ミリリットルあたりのタンパク質の活性または量の増加を検出するなどの他の方法を使用して、目的タンパク質の改善されたレベルを確認することができ、これにより、またはこれらの方法の組み合わせにより、より長時間、培養または発酵を効率的に継続することが可能になる。
比生産性の検出は、タンパク質の産生を評価する別の方法である。比生産性(Qp)は、次式により求めることができる:
Qp=gP/gDCW・hr
(式中、「gP」はタンク内で生成されたタンパク質のグラム数であり、「gDCW」はタンク内の乾燥細胞重量(DCW)のグラム数であり、「hr」は生成時間と増殖時間を含む、接種時からの発酵時間(時間)である)。
他の実施形態では、変異真菌宿主細胞は(改変されていない)親細胞と比較して、少なくとも約0.5%、例えば、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.7%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、少なくとも約2.0%、少なくとも約2.5%、もしくは少なくとも約3%、またはそれ以上の目的タンパク質を産生することができる。
VII.発酵
特定の実施形態では、本開示は、変異真菌細胞の発酵を含む、目的タンパク質を産生する方法(ここで、変異真菌細胞は、目的タンパク質を分泌する)を提供する。一般に、当該技術分野でよく知られた発酵方法が、変異真菌細胞を発酵させるために使用される。いくつかの実施形態では、真菌細胞は、バッチまたは連続発酵条件下で増殖させる。古典的なバッチ発酵は、クローズドシステムであり、培地の組成は発酵の開始時に設定され、発酵中に変更されない。発酵の開始時に、培地に所望の生物を接種する。この方法では、系にいかなる成分も添加することなく醗酵を行うことができる。一般には、バッチ発酵は炭素源の添加に関して「バッチ」であると見なされ、pHおよび酸素濃度などの因子を制御することが頻繁に行われる。バッチシステムの代謝産物およびバイオマス組成は、発酵が停止される時まで絶えず変化する。バッチ培養内で、細胞は静的誘導期を経て高増殖対数期に進み、最終的に増殖速度が低下または停止する静止期に進む。未処理のまま放置すると、静止期にある細胞は最終的には死滅する。一般に、対数期の細胞は、生成物の大部分の産生を担っている。
標準的なバッチシステムの好適なバリエーションは、「流加発酵」システムである。一般的なバッチシステムのこのバリエーションでは、発酵が進行するにつれて基質が少しずつ添加される。流加システムは、カタボライト抑制が細胞の代謝を阻害する可能性が高い場合、および培地中の基質量が限られた量であることが望ましい場合に有用である。流加システムでは、実際の基質濃度の測定は困難であり、したがって、pH、溶存酸素、およびCO2などの廃ガスの分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチ発酵および流加発酵は、当該技術分野において一般的であり、よく知られている。
連続発酵は規定の発酵培地をバイオリアクターに連続的に添加し、処理のために等量の馴化培地を同時に除去するオープンシステムである。連続発酵は、一般に、培養物を一定の高密度に維持し、細胞は主として対数増殖期にある。連続発酵は、細胞の増殖および/または産生物の濃度に影響する1つ以上の因子の調節を可能にする。例えば、一実施形態では、炭素源または窒素源などの制限栄養素は一定比率で維持され、他の全てのパラメータは調節することができる。他のシステムでは、培地の濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響する多くの因子を連続的に変化させることができる。連続システムは、定常状態の増殖条件を維持しようとする。したがって、培地を取り出すことによる細胞損失は、発酵中の細胞増殖速度とバランスさせなければならない。連続発酵プロセスで栄養素および増殖因子を調節する方法、ならびに産生物形成速度を最大化するための手法は、工業微生物学の分野においてはよく知られている。
本開示の特定の実施形態は、真菌を培養するための発酵手順に関する。セルラーゼ酵素の産生のための発酵手順は、当該技術分野で知られている。例えば、セルラーゼ酵素は、バッチ、流加および連続フロープロセスなどの、固体または浸漬培養によって産生することができる。培養は一般に、水性無機塩培地、有機増殖因子、炭素およびエネルギー源物質、分子状酸素、および、当然に、使用される糸状菌宿主の出発接種材料を含む増殖培地中で行われる。
適切な微生物増殖を確実にし、微生物変換プロセスで細胞による炭素およびエネルギー源の吸収を最大にし、発酵培地において最大細胞密度で最大細胞収率を達成するには、炭素およびエネルギー源、酸素、吸収可能な窒素、ならびに微生物接種材料に加えて、好適な量の無機栄養素を適切な割合で供給する必要がある。
水性無機培地の組成は、当該技術分野で知られているように、使用する微生物および基質に部分的に依存して、広範囲にわたって変えることができる。無機培地には、窒素に加えて、好適な量のリン、マグネシウム、カルシウム、カリウム、硫黄、およびナトリウムが、好適な可溶性の吸収可能なイオン性の複合形態で含まれ、また、好ましくは、銅、マンガン、モリブデン、亜鉛、鉄、ホウ素、およびヨウ素などのいくつかの微量元素も、これもまた好適な可溶性の吸収可能な形態で含まれるが、これらは全て当該技術分野で知られていることである。
発酵反応は、微生物種が盛んに増殖するのを助けるのに有効な好適な酸素分圧で、発酵槽の内容物を維持するために提供される、空気、酸素富化空気、または実質的に純粋な分子状酸素などの分子状酸素含有ガスによって必要な分子状酸素が供給される好気的プロセスである。
発酵温度はいくらか変えることができるが、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)などの糸状菌の場合、温度は一般に約20℃~40℃の範囲内、一般に好ましくは約25℃~34℃の範囲内である。
微生物はまた、吸収可能な窒素源を必要とする。吸収可能な窒素源は、任意の窒素含有化合物、または微生物による代謝利用に好適な形態で窒素を放出することができる任意の化合物であり得る。タンパク質加水分解物などの、様々な有機窒素源化合物を使用することができるが、通常、アンモニア、水酸化アンモニウム、尿素などの安価な窒素含有化合物、およびリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、または他の様々なアンモニウム化合物などの各種アンモニウム塩を利用することができる。アンモニアガス自体は、大規模な操作に便利であり、好適な量で水性発酵物(発酵培地)をバブリングして使用することができる。同時に、そのようなアンモニアは、pH制御を助けるために用いることもできる。
水性微生物発酵物(発酵混合物)のpH範囲は、約2.0~8.0の例示的な範囲であるべきである。糸状菌では、pHは、通常、約2.5~8.0の範囲であり、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)では、pHは、通常、約3.0~7.0の範囲である。微生物の好ましいpH範囲は、使用する培地および特定の微生物にある程度まで依存し、したがって、当業者ならば容易に決定できることであるが、培地の変化と共にいくらか変化する。
制限因子として炭素含有基質を制御することができるようなやり方で醗酵を行うことが好ましく、それによって炭素含有基質の細胞への良好な転換が提供され、相当量の未転換基質による細胞の汚染が回避される。後者は、水溶性基質では、微量の残存物は容易に洗い流せるので、問題にならない。しかしながら、非水溶性基質の場合には問題となる可能性があり、好適な洗浄工程などの追加の生成物処理工程が必要になる。
上記のように、このレベルに到達する時間は重要ではなく、特定の微生物および実施する発酵プロセスによって変化し得る。しかしながら、発酵培地中の炭素源濃度の決定方法、および所望の炭素源レベルが達成されているか否かの決定方法は、当該技術分野ではよく知られている。
発酵はバッチまたは連続操作として行うことができ、流加操作は、制御の容易さ、均一な量の生成物の生産、および全ての装置の最も経済的な使用という点で非常に好ましい。
必要ならば、水性無機培地を発酵槽に供給する前に、炭素およびエネルギー源物質の一部または全部および/またはアンモニアなどの吸収可能な窒素源の一部を水性無機培地に加えることができる。
反応器に導入される流れの各々は、所定の速度に制御するか、炭素およびエネルギー基質の濃度、pH、溶存酸素、発酵槽排ガス中の酸素または二酸化炭素、乾燥細胞重量により測定可能な細胞密度、透光度などの、モニタリングによって決定可能な必要性に応じて制御することが好ましい。炭素およびエネルギー源の効率的な利用と一致して、可能な限り迅速な細胞増殖速度を得、基質の供給に対して可能な限り高い微生物細胞の収率を得るために、各種材料の供給速度は変化させることができる。
バッチまたは好ましい流加操作においては、全ての装置、反応器、または発酵手段、槽または容器、配管、付随する循環または冷却装置などは、最初に、通常、蒸気を使用して、例えば、約121℃で少なくとも約15分間、滅菌する。次いで、酸素を含む必要な栄養素の全て、および炭素含有基質を存在下で、滅菌した反応器に選択された微生物の培養物を接種する。使用する発酵槽の種類は重要ではない。
発酵ブロスからの酵素(例えば、セルラーゼ)の回収および精製もまた、当業者に知られた手順によって行うことができる。発酵ブロスは、一般に、細胞残屑、例えば、細胞、種々の懸濁固体および他のバイオマス混入物質、ならびに所望のセルラーゼ酵素産物を含み、これらは、当該技術分野で知られた手段によって発酵ブロスから除去することが好ましい。
そのような除去に好適なプロセスには、無細胞ろ液を生成するための、例えば、遠心分離、ろ過、透析、精密ろ過、回転真空ろ過、または他の知られたプロセスなどの従来の固液分離手法が含まれる。結晶化の前に、限外ろ過、蒸発または沈殿などの手法を使用して、発酵ブロス、または細胞を含まないろ液をさらに濃縮することが好ましい。
上清またはろ液のタンパク質成分の沈澱が、塩、例えば硫酸アンモニウムによって行われ、続いて、各種のクロマトグラフィー法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、または類似の分野で認められている方法によって精製が行われ得る。
以下の実施例は本開示の実施形態を示しているが、それらは例示としてのみ与えられていることを理解されたい。上記の議論およびこれらの実施例から、当業者は種々の使用および条件に適合させるために、本開示の種々の変更および修正を行うことができる。このような修正もまた、特許請求の範囲に記載された発明の範囲に含まれるものとする。
実施例1
糸状菌細胞内でのace3過剰発現の生成
1A.概要
本実施例では、ace3遺伝子を発現する変異トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞(すなわち、例示的な糸状菌)を、プロトプラスト形質転換を用い、pyr2遺伝子、異種プロモーター、およびace3遺伝子を含む核酸により、親T.リーゼイ(T.reesei)細胞を形質転換することによって作製した。図1および図2に概ね示すように、2つの異なるプロモーターおよび2つの異なるバージョンのace3 ORF(図1;ace3-SCおよびace3-L)を4つの異なる組み合わせで用い、4つの異なるace3-発現ベクターを構築した(図2A~2D)。hxk1(ヘキソキナーゼをコードする遺伝子)およびpki1(ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子)のプロモーターが、ace3の構成的発現を駆動するために選択されたが、他のプロモーターもまた使用することができ、当業者によって選択され得る。
1B.トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)宿主細胞
以下の実施例に示すT.リーゼイ(T.reesei)親宿主細胞は、Sheir-Neiss and Montenecourt,1984により一般的に記述されているように、T.リーゼイ(T.reesei)pyr2遺伝子が欠失したT.リーゼイ(T.reesei)株RL-P37(NRRL寄託番号15709)に由来した。
1C.Ace3発現ベクターの構築
上の本開示の[発明を実施するための形態]に記載されているように、Ace3は、誘導条件下(すなわち、ラクトースの存在下)のセルラーゼおよびヘミセルラーゼの産生に必要であることが最近示されたT.リーゼイ(T.reesei)転写因子である(Hakkinen et al.,2014)。より詳しくは、Hakkinen et al.(2014)は、T.リーゼイ(T.reesei)株QM6a(genome.jgi.doe.gov/Trire2/Trire2.home.htmlを参照されたい)の、公的に利用可能なゲノム配列に基づく予測ace3 ORFを使用したが、このQM6aの予測アノテーション(タンパク質ID 77513)は、2つのエクソンと1つのイントロンからなる(例えば、図1を参照されたい))。
さらに、T.リーゼイ(T.reesei)Rut-C30株の公的に利用可能なゲノム配列(genome.jgi.doe.gov/TrireRUTC30_1/TrireRUTC30_1.home.htmlを参照されたい)から予測されたace3 ORF(タンパク質ID 98455)は、3つのエクソンと2つのイントロンを含むより長いタンパク質配列(すなわち、T.リーゼイ(T.reesei)QM6a由来の(短い)ace3-Sに対して)を含む(図1)。より詳しくは、「RUT-C30」モデルによって予測された開始コドンは「QM6a」モデルのそれより上流に位置し、C末端にナンセンス変異があり(Poggi-Parodi et al.,2014)、より長いN末端配列およびより短いC末端タンパク質配列をもたらす(図1)。
本実施例では、短いace3 ORF(QM6aアノテーションに基づくが、タンパク質のC末端を切断するRUT-C30ナンセンス変異を含む(Ace3-S))および長いace3 ORF(RUT-C30アノテーションに基づく(Ace3-L))の両方をクローニングした。図1に示すように、短いace3(Ace3-S)および長いace3(Ace3-L)ORFはいずれも、RUT-C30に見られるC末端のナンセンス変異を含む(図1)。ace3 ORFの発現を駆動するために、異種ヘキソースキナーゼ(hxk1)プロモーターおよび異種ピルビン酸キナーゼ(pki1)プロモーターを試験した。
したがって、標準的な分子生物学的手順を用い、4つのAce3発現ベクターpYL1、pYL2、pYL3およびpYL4(図2A~2D)を、構築した。これらの発現ベクターは、E.コリ(E.coli)の複製と選択のための細菌ColE1 oriおよびAmpR遺伝子を有するベクター骨格を含む。T.リーゼイ(T.reesei)pyr2選択マーカーに加えて、T.リーゼイ(T.reesei)プロモーター配列(すなわち、hxk1またはpki1プロモーター)およびその天然ターミネーターを有するace3 ORF(ace3-Lまたはace3-SC)も存在する。Q5 High-fidelity DNA polymerase(New England Biolabs)および下記の表1に示すプライマーを使用して、T.リーゼイ(T.reesei)ゲノムDNAから、T.リーゼイ(T.reesei)プロモーターおよびace3 ORFをPCR増幅した。
各ベクターのフラグメントをPCR増幅するために使用した特異的プライマーは、以下の通りである。ベクターpYL1を構築するために、hxk1プロモーターはプライマー対TP13(配列番号7)およびTP14(配列番号8)を用いて増幅し、Ace3-L ORFはプライマーTP15(配列番号9)およびTP16(配列番号10)を用いて増幅し、ベクター骨格はプライマー対TP17(配列番号11)およびTP18(配列番号12)を用いて増幅した。プラスミドpYL1の完全配列を配列番号21として提供する。
ベクターpYL2を構築するために、hxk1プロモーターはプライマー対TP13(配列番号7)およびTP19(配列番号13)を用いて増幅し、Ace3-SC ORFはプライマーTP20(配列番号14)およびTP16(配列番号10)を用いて増幅し、ベクター骨格はプライマー対TP17(配列番号11)およびTP18(配列番号12)を用いて増幅した。プラスミドpYL2の完全配列を配列番号22として提供する。
ベクターpYL3を構築するために、pki1プロモーターはプライマー対TP21(配列番号15)およびTP22(配列番号16)を用いて増幅し、Ace3-L ORFはプライマーTP23(配列番号17)およびTP16(配列番号10)を用いて増幅し、ベクター骨格はプライマー対TP17(配列番号11)およびTP24(配列番号18)を用いて増幅した。プラスミドpYL3の完全配列を配列番号23として提供する。
ベクターpYL4を構築するために、pki1プロモーターはプライマー対TP21(配列番号15)およびTP25(配列番号19)を用いて増幅し、Ace3-SC ORFはプライマーTP26(配列番号20)およびTP16(配列番号10)を用いて増幅し、ベクター骨格はプライマー対TP17(配列番号11)およびTP24(配列番号18)を用いて増幅した。プラスミドpYL4の完全配列を配列番号24として提供する。
各ベクターについて、上記3つのPCRフラグメントを組み立て、Gibson assembly cloning kit(New England Biolabs;カタログ番号E5510S)を用いて、製造業者のプロトコルにしたがってNEB DH5αコンピテント細胞に形質転換した。得られたベクターの配列をサンガー配列決定法を用いて決定し、それらのマップを図2A~2Dに示す。
Figure 0007285780000001
1D.T.リーゼイ(T.reesei)の形質転換
pYL1、pYL2、pYL3およびpYL4の発現ベクターを、PacI酵素(New England Biolabs)を用いて線状化し、ポリエチレングリコール(PEG)媒介プロトプラスト形質転換によってT.リーゼイ(T.reesei)親宿主細胞を形質転換した(Ouedraogo et al.,2015;Penttila et al.,1987)。形質転換体をVogel最小培地寒天プレート上で増殖させ、pyr2マーカーによって獲得したウリジン原栄養性について選択した。Vogel寒天プレート上に2回連続してトランスファーすることによって安定な形質転換体を得、その後、胞子懸濁液の平板希釈法により単一コロニーを得た。pYL1、pYL2、pYL3およびpYL4を有する変異(すなわち、改変)宿主細胞を、それぞれ変異A4-7、変異B2-1、変異C2-28および変異D3-1と命名した。
実施例2
徐放性マイクロタイタープレート(srMTP)中でのタンパク質産生
本実施例は、非誘導条件下で酵素を分泌する形質転換体(実施例1を参照されたい)を同定するために使用するスクリーニング方法を記載する。例えば、実施例1から得られた安定な形質転換体を、徐放性マイクロタイタープレート(srMTP)中で試験した。使用したsrMTPは、20%グルコース(重量/重量)または20%ラクトース(重量/重量)を含有する24ウェルPDMSエラストマープレートであり、国際公開第2014/047520号パンフレットに記載の通り調製した。
「非誘導」および「誘導」の両条件で、実施例1に記載の親および変異T.リーゼイ(T.reesei)宿主細胞を試験した。「非誘導条件」では、20%グルコース(重量/重量)を含有するsrMTP中で、2.5%グルコース(重量/体積)を補充した規定培地の1.25ml液体ブロス中で細胞を増殖させた。「誘導条件」では、20%ラクトース(重量/重量)を含有するsrMTP中で、2.5%グルコース/ソホロース(重量/体積)を補充した規定培地(ソホロースおよびラクトースはセルラーゼ酵素発現の強力なインデューサーとして働く)の1.25ml液体ブロス中で細胞を増殖させた。
グルコース/ソホロースの調製は、米国特許第7,713,725号明細書に記載のように行った。規定培地は、国際公開第2013/096056号パンフレットに一般的に記載されているように調製し、9g/Lのカザミノ酸、5g/Lの(NH4)2SO4、4.5g/LのKH2PO4、1g/LのMgSO4・7H2O、1g/LのCaCl2・2H2O、33g/LのPIPPS緩衝液(pH5.5)、0.25ml/LのT.リーゼイ(T.reesei)微量成分を含んだ。T.リーゼイ(T.reesei)微量成分は、191.41g/lのクエン酸・H2O、200g/LのFeSO4・7H2O、16g/LのZnSO4・7H2O、0.56g/LのCuSO4・5H2O、1.2g/LのMnSO4・H2Oおよび0.8g/LのH3BO3を含有する。全てのsrMTPを、280rpmで連続的に振盪しながら、28℃で約120時間インキュベートした。
インキュベーション後、全ての培養物からの上清を回収し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分析した。90℃で15分間、等容量の培養上清を還元環境に供した後、MOPS-SDS緩衝液を含む4~12%のNuPage(商標)(Invitrogen、Carlsbad CA)ポリアクリルアミドゲルにローディングダイを添加し、溶解させた。SimplyBlue(商標)(Invitrogen)でゲルを染色し、画像化した(図3を参照されたい)。
図3に示すように、試験した全ての宿主細胞は、インデューサー(すなわち、培地中のソホロースおよびsrMTP中のラクトース)の存在下で大量のタンパク質を分泌した。しかしながら、グルコースが唯一の炭素源であって、インデューサー(すなわち、ソホロースおまたはラクトース)の非存在下では、Ace3-L ORFを発現する変異宿主細胞(すなわち、変異A4-7および変異C2-28)のみが分泌タンパク質を産生することができ、Ace3-SC ORFを発現する親宿主細胞および変異細胞(すなわち、変異B1-1および変異D3-1)はPAGEの検出限界を超える細胞外タンパク質を産生しなかった。この結果は、Ace3-Lが(すなわち、Ace3-Sとは対照的に)、T.リーゼイ(T.reesei)においてインデューサーなしのタンパク質産生をできることを明確に示している。
分泌タンパク質の相対濃度を、参照として精製酵素を用いたZorbax C3逆相(RP)分析により決定した。例えば、上記の宿主細胞の分泌タンパク質プロファイルをこの方法を用いて分析し、全ての宿主細胞(すなわち、親細胞および変異細胞)が誘導条件下で、類似のセルラーゼタンパク質プロファイル(セルラーゼは、約40%のCBH1、20%のCBH2、10%のEG1および7%のEG2からなる)を産生することが観察された。非誘導条件下では、親細胞およびAce3-S発現変異宿主細胞でセルラーゼ酵素は検出されなかった。対照的に、驚くべきことに、Ace3-L発現変異宿主細胞(すなわち、変異A4-7およびC2-28)は、誘導条件下と類似の比率のセルラーゼ酵素を産生することがわかった。
簡単に記載すると、この分析方法は次のように行った:上清サンプルを50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で希釈し、20ppmのEndoHを加えて脱グリコシル化し、37℃で3時間インキュベートした。10μlの90%アセトニトリルを100μlのEndoH処理サンプルに加え、0.22μmフィルターを通過させた後、注入した。Agilent Zorbax300 SB C3 RRHD 1.8um(2.1×100mm)カラムを備えた、DAD検出(Agilent Technologies)HPLCを有するAgilent1290を使用した。カラムは、60℃、流量1.0mL/minで操作し、ランニングバッファーAとしてMiliQ水中0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)およびランニングバッファーBとしてアセトニトリル中0.07%のTFAを使用した。DAD検出器は4nmのウインドウで220nmおよび280nmで操作した。注入容量は10μLであった。
さらに、注目すべきことに、Ace3-L発現変異宿主細胞は、グルコースを含むsrMTPで約20~30%の総細胞外タンパク質を産生した(すなわち、ラクトースを含むsrMTPで産生された総細胞外タンパク質と比較して)。この比較的低い発現は、グルコースを含むsrMTP中での高いグルコース供給速度に起因し得る。例えば、最大のセルラーゼおよびヘミセルラーゼ産生速度が低い増殖速度で多く観察されることは、十分に立証されている(Arvas et al.,2011)。それにもかかわらず、srMTP増殖アッセイは、タンパク質産生について安定なコロニーをスクリーニングするための比較的高スループットのアッセイであった。
総合すると、Ace3-L ORFを発現する変異T.リーゼイ(T.reesei)宿主細胞は、比較的低いタンパク質産生速度ではあるが、インデューサーの非存在下でセルラーゼおよびヘミセルラーゼを産生することができた。より詳しくは、この低産生速度は、下記の実施例3および実施例4に示すように、宿主細胞の産生能力よりもむしろ、srMTP増殖方法に関連した。
実施例3
振盪フラスコ内でのタンパク質の産生
上で示したsrMTPの結果をさらに調査し、検証するために、インデューサー基質の存在下および非存在下、振盪フラスコにおける50mL浸漬培養で、親宿主細胞およびAce3-L発現変異宿主細胞を増殖させた。より詳しくは、誘導条件(すなわち、炭素源としてのグルコース/ソホロース)および非誘導条件(すなわち、炭素源としてのグルコース)の両条件下の浸漬(液体)培養で、親T.リーゼイ(T.reesei)宿主細胞、変異A4-7細胞および変異C2-28細胞を増殖させ、それらのそれぞれの細胞外(分泌)タンパク質産生レベルを比較した。簡単に記載すると、底部バッフルを有する250mL三角フラスコ中の50mLのYEGブロスに、各宿主細胞(すなわち、T.リーゼイ(T.reesei)親宿主細胞、変異A4-7宿主細胞および変異C2-28宿主細胞)の菌糸を別々に加えた。YEGブロスは、5g/Lの酵母抽出物および22g/Lのグルコースを含有する。細胞培養物を48時間増殖させ、続いてさらに24時間、新鮮なYEG中で二次培養した。次いで、これらの種培養物を、底部バッフルを有する250mL振盪フラスコ中の、1.5%のグルコースを補充した50mLの規定培地(非誘導条件)、または1.5%のグルコース/ソホロースを含む50mLの規定培地(誘導条件)に接種した。
全ての振盪フラスコを、200rpmで継続的に振盪しながら、28℃でインキュベートした。インキュベーションの3日後、全ての細胞培養物からの上清を回収し、上記実施例2に記載のようにPAGEを用いて分析した。Bio-Rad試薬(Thermo Scientific(登録商標);カタログ番号23236)、および標準として牛血清アルブミン(BSA)の5倍希釈を使用し、595nmで、Bradford色素結合アッセイによって上清中の総タンパク質を測定した。高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によりグルコース濃度を測定したが、インキュベーション3日後の培養物中にグルコースは検出されなかった。
図4に示すように、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、グルコース/ソホロース(誘導性)を含む規定培地中で464μg/mLの全分泌タンパク質を産生したが、グルコース(非誘導性)を含む規定培地中ではわずかに140μg/Lの全分泌タンパク質を産生しただけであった。対照的に、変異A4-7細胞およびC2-28細胞は、誘導および非誘導条件下で類似した量の分泌タンパク質を産生し、その両方が、ソホロース(誘導)により親(対照)細胞で産生された分泌タンパク質よりも多かった。したがって、これらの結果は、Ace3-L ORFを有する変異細胞(すなわち、変異A4-7およびC2-28細胞)は、インデューサーの非存在下で細胞外タンパク質を産生するだけでなく、これらの変異細胞はまたそうした誘導条件下で、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)細胞よりも多く全タンパク質を産生することを示している。
実施例4
小規模流加発酵におけるタンパク質の生産
本実施例は、変異Ace3-L発現細胞(すなわち、変異A4-7およびC2-28細胞)が、インデューサー基質の存在下および非存在下の小規模醗酵で類似量のセルラーゼおよびヘミセルラーゼ酵素を産生したことを示す。より詳しくは、T.リーゼイ(T.reesei)の発酵を概ね米国特許第7,713,725号明細書に記載のように、2Lバイオリアクター内、クエン酸塩最小培地中で種培養物を使用して実施した。より具体的には、発酵の間、全ての培養物からの上清を異なる時点で回収し、等容量の培養上清をPAGE分析に供した。図5に示すように、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、ソホロースインデューサーの存在下でのみ、分泌タンパク質を産生した。対照的に、変異A4-7およびC2-28細胞(図5)は、誘導および非誘導の両方の条件下で、類似量のタンパク質を産生した。
実施例5
Ace3発現のための異種プロモーター
本実施例は、ace3-Lの発現を駆動する13の異なるプロモーターを使用し、「非誘導」条件下でタンパク質の産生が増強されることを示す。より詳しくは、プロトプラスト形質転換を用い、pyr2遺伝子、異種プロモーター、およびace3-L遺伝子を含むテロメアベクターで親T.リーゼイ(T.reesei)細胞を形質転換することにより、ace3-L遺伝子を発現するT.リーゼイ(T.reesei)細胞を作製した。
したがって、ace3-L ORFの発現を駆動する13のT.リーゼイ(T.reesei)プロモーターを選択した。試験した13種のプロモーターには、限定されないが、(i)ホルムアミダーゼ遺伝子(rev3;タンパク質ID 103041)プロモーター(配列番号15)、(ii)β-キシロシダーゼ遺伝子(bxl;タンパク質ID 121127)プロモーター(配列番号16)、(iii)トランスケトラーゼ遺伝子(tkl1;タンパク質ID 2211)プロモーター(配列番号17)、(iv)機能の知られていない遺伝子(タンパク質ID 104295)プロモーター(配列番号18)、(v)オキシドレダクターゼ遺伝子(dld1;タンパク質ID 5345)プロモーター(配列番号19)、(vi)キシラナーゼIV遺伝子(xyn4;タンパク質ID 111849)プロモーター(配列番号20)、(vii)α-グルクロニダーゼ遺伝子(タンパク質ID 72526)プロモーター(配列番号21)、(viii)アセチルキシランエステラーゼ遺伝子1(axe1;タンパク質ID 73632)プロモーター(配列番号22)、)(ix)ヘキソースキナーゼ遺伝子(hxk1;タンパク質ID 73665)プロモーター(配列番号23)、(x)ミトコンドリアキャリアタンパク質遺伝子(dic1;タンパク質ID 47930)プロモーター(配列番号24)、(xi)オリゴペプチドトランスポーター遺伝子(opt;タンパク質ID 44278)プロモーター(配列番号25)、(xii)グリセロールキナーゼ遺伝子(gut1;タンパク質ID 58356)プロモーター(配列番号26)および(xiii)ピルビン酸キナーゼ遺伝子(pki1;タンパク質ID 78439)プロモーター(配列番号27)が含まれる。タンパク質ID(PID)番号は、genome.jgi.doe.gov/Trire2/Trire2.home.htmlからのものである。したがって、上記13のプロモーターは、その遺伝子が、グルコース濃度が高い場合には、一般に増殖中、低レベルで発現され、グルコース濃度が低い場合またはソホロース誘導条件下では、より高いレベルで発現されるので、発現を駆動するために選択された。
下記表2に、標準的な分子生物学的手順を用いて構築した13のプロモーターおよびその発現ベクターをまとめる。より詳しくは、本実施例で試験した発現ベクター(表2)は、E.コリ(E.coli)の複製および選択のための細菌ColE1 oriおよびAmpR遺伝子、ならびにサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)の複製および選択のための2μ oriおよびUra3遺伝子を有するベクター骨格を含む。さらに、T.リーゼイ(T.reesei)テロメア配列(「TrTEL」)、T.リーゼイ(T.reesei)pyr2選択マーカー、T.リーゼイ(T.reesei)プロモーター配列、およびその天然ターミネーター配列を有するace3-L ORFが存在する。代表的なベクターマップとして、dic1プロモーターを含むベクターpYL8を図7に示す。したがって、他のベクター(例えば、pYL9、pYL12など)は、異なるプロモーター配列を除いて、図7に示したものと同じ配列を有する。
Figure 0007285780000002
この発現ベクターを、ポリエチレングリコール(PEG)媒介プロトプラスト形質転換によってT.リーゼイ(T.reesei)親宿主細胞(非機能性pyr2遺伝子を含む)に挿入(形質転換)した(Ouedraogo et al.,2015;Penttila et al.,1987)。形質転換体をVogel最小培地寒天プレート上で増殖させ、pyr2マーカーによって獲得したウリジン原栄養性で選択した。Vogel寒天プレート上で2回連続してトランスファーすることによって安定な形質転換体を得、続いて非選択的PDAプレート上で2回連続して増殖させ、Vogel寒天プレート上で1回増殖させ、その後、胞子懸濁液を平板希釈することによって単一コロニーを得た。
「非誘導」および「誘導」の両条件で、上記親および形質転換した(娘)T.リーゼイ(T.reesei)宿主細胞を試験した。例えば、「非誘導条件」で、標準の24ウェルマイクロタイタープレート(MTP)中、2.5%グルコース(重量/体積)を補充した規定培地の1.25ml液体ブロス中で細胞を増殖させた。「誘導条件」では、MTP中、2.5%グルコース/ソホロース(重量/体積)を補充した規定培地の1.25ml液体ブロス(ソホロースがセルラーゼ酵素発現の強力なインデューサーとして働く)中で細胞を増殖させた。インキュベーションに続いて、全培養物からの上清を回収し、Bio-Rad試薬(Thermo Scientific(登録商標);カタログ番号23236)および標準として牛血清アルブミン(BSA)の5倍希釈を使用し、595nmでBradford色素結合アッセイにより全分泌タンパク質を測定した。
表3に示すように、親T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、ソホロースインデューサーの存在下でのみ、高レベルの分泌タンパク質を産生した。対照的に、13の異なるプロモーターで駆動されたAce3-Lを含み、かつ発現させる変異(娘)T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、誘導条件下および非誘導条件下の両方で類似した量の分泌タンパク質を産生した。表3に示すように、各改変(娘)株のタンパク質レベルは、グルコース/ソホロース(Glu/Sop)誘導条件下で親株(LT4)によって産生されたタンパク質(濃度)に対する比として示されている。
Figure 0007285780000003
さらに、実施例3で一般的に記載した振盪フラスコ実験で、T.リーゼイ(T.reesei)親株および上記のその形質転換体をさらに試験した。例えば、T.リーゼイ(T.reesei)娘株「LT83」(ここで、娘株LT83は、dic1プロモーター(配列番号28)で駆動されるace3-L ORFを含む)の代表的な結果を図8に示す。図8に示すように、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、ソホロース(「Sop」)インデューサーの存在下でのみ分泌タンパク質を産生したが、娘株LT83は誘導(「Sop」)および非誘導(「Glu」)の両条件下で、類似した量の分泌タンパク質を産生した。
同様に、実施例4で一般的に記載したようにして、小規模発酵を行った。より詳しくは、図9に示すように、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)株は、ソホロースインデューサー(「Sop」)の存在下でのみ分泌タンパク質を産生したが、娘株LT83は誘導(「Sop」)および非誘導(「Glu」)の両条件下で、類似した量の分泌タンパク質を産生した。
実施例6
T.リーゼイ(T.reesei)ACE3過剰発現コンストラクトのクローニング
T.リーゼイ(T.reesei)のゲノム配列は、Joint Genome Institute(https://genome.jgi.doe.gov/)から公的に入手可能であるが、ace3コード領域の5’末端の位置が明らかでない。例えば、Joint Genome InstituteにおけるDNA配列のアノテーションは、DNA配列が同じであっても、変異株Rut-C30(genome.jgi.doe.gov/TrireRUTC30_1/TrireRUTC30_1.home.html)と野生型株QM6a(genome.jgi.doe.gov/Trire2/Trire2.home.html)とでは異なった。QM6aの場合、ace3コード領域の5’末端は、図11の矢印3で示すようにエクソン3の上流(5’末端)、イントロン2内にあると示唆された。Rut-C30の場合、ace3コード領域の5’末端はエクソン2内にある(図11、矢印2)。ゲノムDNA配列および追加のcDNA配列のさらなる分析により、図11に示すようにエクソン1およびイントロン1が存在する可能性のあることが示唆された。さらに、Rut-C30のace3コード領域の3’末端は、野生型分離株QM6aの配列(図11、矢印5)と比較して、未成熟終止コドン(図11、矢印4)を作り出す変異を含んでいる。したがって、本実施例では、ace3遺伝子のこれらの異なる可能な形態を過剰発現することの効果を、本明細書に記載するように実験的に研究した(例えば、図11、図12、および図13~18を参照されたい)。
したがって、図12に示すace3の異なる形態が、T.リーゼイ(T.reesei)において過剰発現した。ここで、T.リーゼイ(T.reesei)ace3遺伝子のための過剰発現ベクターは、T.リーゼイ(T.reesei)のグルコアミラーゼ遺伝子座(gla1)にace3の標的組み込みを可能にするように設計された。より詳細には、全てのプラスミド(ベクター)コンストラクトで、T.リーゼイ(T.reesei)ace3遺伝子は、T.リーゼイ(T.reesei)dic1プロモーターの制御下、天然のace3ターミネーターにより発現した。これらのベクターは、T.リーゼイ(T.reesei)形質転換体の選択のために、pyr4マーカーをその天然のプロモーターおよびターミネーターと共にさらに含む。gla1遺伝子座に組み込んだ後のpyr4遺伝子の切除を可能にするために、pyr4プロモーターの反復が含まれた。E.コリ(E.coli)中での複製と増幅を可能にするベクター骨格は、EcoRI-XhoI消化pRS426であった(Colot et al,2006)。標的組み込みに必要なT.リーゼイ(T.reesei)gla1遺伝子座の5’末端および3’末端フランク、dic1プロモーター、異なる形態のace3コード領域、およびターミネーターを、表4に示すプライマーを用いてPCRにより作製した。フランキングフラグメントの鋳型は、野生型T.リーゼイ(T.reesei)QM6a(ATCC寄託番号13631)由来のゲノムDNAであった。
Figure 0007285780000004
dic1プロモーター、ace3遺伝子およびターミネーターについては、鋳型は、これらのフラグメントを保持する先のプラスミドpYL8(実施例5を参照されたい)であった。選択マーカー(pyr4)は、NotI消化を有する先のプラスミドから得た。所望のDNAフラグメントを生成するために使用したPCRプライマーを表4に示す。PCR産物および消化フラグメントを、アガロースゲル電気泳動を用いて分離した。製造業者のプロトコルにしたがって、ゲル抽出キット(Qiagen)を用いてゲルから正しいフラグメントを単離した。プラスミドは、PCT/EP2013/050126号明細書(国際公開第2013/102674号パンフレットとして公開)に記載されている酵母相同組換え法を用い、上記のフラグメントにより構築した。プラスミドを酵母からレスキューし、E.コリ(E.coli)に形質転換した。少数のクローンを選択し、プラスミドDNAを単離し、配列を決定した。プラスミドの概要を表5に示す。
Figure 0007285780000005
したがって、表5に示されるコンストラクトは、異なる形態のace3遺伝子を有することによって異なる。SC形態は、エクソン3および4、ならびにイントロン3を含む遺伝子の短い形態である(図12および図13、配列番号7を参照されたい)。より詳しくは、配列番号7のSC形態は、1,713bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む。SC形態の(3’末端)C末端(すなわち、エクソン4)は、T.リーゼイ(T.reesei)RutC-30株と同じ変異を有する。
S形態は、エクソン3および4、ならびにイントロン3を含む遺伝子の短い形態であるが、エクソン4の(3’末端)C末端に変異を有しない(図12および図14、配列番号1を参照されたい)。より詳しくは、S形態は、1,713bpのエクソン3、148bpのイントロン3および177bpのエクソン4を含む。これらの両形態(すなわち、「SC」および「S」)において、翻訳開始コドンは、T.リーゼイ(T.reesei)QM6a株のアノテーションにあるように、長いイントロン2(図12を参照されたい)にあり、「SC」および「S」の両形態は、推定DNA結合ドメインのコード領域の一部を欠いている。
L形態は、エクソン2、3および4、ならびにイントロン2(長いイントロン)およびイントロン3を含む遺伝子の長い形態である(例えば、図12および図15、配列番号4を参照されたい)。より詳しくは、L形態は、258bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む。L形態の(3’末端)C末端は、T.リーゼイ(T.reesei)RutC-30株と同じ変異を有する。
LC形態は、エクソン2、3および4、ならびにイントロン2(長いイントロン)およびイントロン3を含む遺伝子の長い形態である(例えば、図12および図16、配列番号9を参照されたい)。より詳しくは、LC形態は、258bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および177bpのエクソン4を含む。LC形態は、C末端に変異がない。「L」および「LC」の両形態では、翻訳開始コドンはRut-C30株に対してJGIでアノテートされているように、エクソン2にある。
EL形態は、エクソン1、2、3および4、ならびにイントロン1、イントロン2(長いイントロン)およびイントロン3を含むace3遺伝子の特に長いバージョンである(例えば、図12および図17、配列番号11を参照されたい)。より詳しくは、EL形態は、61bpのエクソン1、142bpのイントロン1、332bpのエクソン2、423bpのイントロン2、1,635bpのエクソン3、148bpのイントロン3および144bpのエクソン4を含む。EL形態の(3’末端)C末端は、T.リーゼイ(T.reesei)RutC-30株と同じ変異を有する。
LN形態は、エクソン2、3および4、ならびにイントロン3を含むがイントロン2を欠く遺伝子の長い形態である(例えば、図12および図18、配列番号13を参照されたい)。LN形態の(3’末端)C末端は、T.リーゼイ(T.reesei)RutC-30株と同じ変異を有する。したがって、上記のように、ace3のL、LC、LNおよびEL形態は、完全な推定DNA結合ドメインをコードする。
T.リーゼイ(T.reesei)RL-P37株への形質転換
表5に示した全てのプラスミドをMssIで消化して、標的組み込みのためにフラグメントを放出させ、アガロースゲル電気泳動で分離した。例えば、図19は、T.リーゼイ(T.reesei)の形質転換に使用される代表的なフラグメント内のDNA配列の配置を示す図である。ゲル抽出キット(Qiagen)を用い、製造業者のプロトコルにしたがって、ゲルから正しいフラグメントを単離した。約10μgの精製フラグメントを使用して、T.リーゼイ(T.reesei)RL-P37株のpyr4-変異体のプロトプラストを形質転換した。プロトプラストの調製および形質転換は、国際公開第2013/102674号パンフレットに記載されているように、pyr4選択を使用して行った。
形質転換体を選択培地プレート上に画線した。増殖クローンを、表6に列挙したプライマーを用い、正確な組み込みについてPCRによりスクリーニングした。予想されたシグナルを与えるクローンを単細胞クローンに精製し、表6に列挙したプライマーを用いるPCRにより、そしてまたサザンブロッティングにより、正確な組み込みおよびクローン純度について再スクリーニングした(データは示さず)。
Figure 0007285780000006
異なるace3形質転換体の培養
24ウェルマイクロタイタープレートにおいて、炭素源として2%ラクトースまたは2%グルコースを含む液体培地中で表7に示す株を増殖させた。培地の他の成分は、0.45%KH2PO4、0.5%(NH4)2SO4、0.1%MgSO4、0.1%CaCl2、0.9%カザミノ酸、0.048%クエン酸×H2O、0.05%FeSO4×7H2O、0.0003%MnSO4×H2O、0.004%ZnSO4×7H2O、0.0002%H3BO3および0.00014%CuSO4×5H2Oであった。pHを5.5に維持するために、100mMのPIPPS(Calbiochem)を含めた。
Figure 0007285780000007
湿度80%のInfors HT microtonシェーカー中、28℃、800RPMで培養を行った。3~7日目に培養物のサンプリングを行った。Bio Rad Protein Assayを用い、製造業者のプロトコルにしたがって、培養上清から全分泌タンパク質の量を測定した。両培地で、RutC-30C末端に突然変異を有するace3L、ELおよびLN形態の過剰発現により、全タンパク質の産生が改善された。炭素源としてラクトースを有する培地では、ace3遺伝子の全形態の過剰発現により、全タンパク質の産生はある程度改善されたが、改善のレベルは、ace3遺伝子のL、ELおよびLN形態を過剰発現する株で最も高かった。ace3遺伝子のL、ELまたはLN形態を過剰発現する形質転換体と共に、グルコース(すなわち、非誘導条件)を使用したとき、高レベルの分泌タンパク質(表8)が観察されたことは明らかである。
Figure 0007285780000008
実施例7
内因性Ace3異種プロモーターのノックイン
プロモーター置換コンストラクト(図6を参照されたい)を、ace3遺伝子座の天然プロモーター上流の5’領域を含むDNAフラグメント、loxP隣接ハイグロマイシンB耐性選択マーカーカセット、およびace3オープンリーディングフレームの5’に作動可能に融合した目的プロモーターを含むフラグメントを融合することによって作製した(例えば、糸状菌で使用するための遺伝子/プロモーター置換についてより詳しい記載のあるPCT出願のPCT/US2016/017113号明細書を参照されたい)。
したがって、上記のプロモーター置換コンストラクトでトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞を形質転換し、形質転換体を単離し、診断PCRのためにゲノムDNAを抽出して、天然ace3遺伝子座におけるプロモーター置換コンストラクトの相同組換えを確認する。この方法を使用して、ハイグロマイシンB耐性カセットおよび任意の目的プロモーターにより、天然ace3プロモーターが置換された形質転換体を同定し得る。続いて、ハイグロマイシンB耐性カセットを、creリコンビナーゼの作用によって除去する(Nagy、2000)。
ace3遺伝子座における相同組み込みの効率は、国際公開第2016/100272号パンフレット、国際公開第2016/100571号パンフレット、および国際公開第2016/100568号パンフレットに例示されているように、好適に設計されたガイドRNAによって天然ace3プロモーターへと導かれたcas9の作用によって向上させ得る。
条件付きプロモーター置換(CPR)戦略は、Hu et al.(2007)の刊行物でアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)について記載されており、これは、A.フミガツス(Afumigatus)NiiA窒素調節可能プロモーター(pNiiA)を使用し、選択された遺伝子の内因性プロモーターを欠失および置換する戦略を一般的に記載している。したがって、特定の実施形態では、類似の方法を使用して、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)におけるace3遺伝子の内因性プロモーターを代替プロモーターで置き換えることができる。
実施例8
内因性非リグノセルロース目的遺伝子プロモーターの、リグノセルロース目的遺伝子プロモーターによる置換
トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)グルコアミラーゼ発現コンストラクトを、DNAポリヌクレオチドフラグメントから組み立てた(例えば、米国特許第7,413,879号明細書を参照されたい)。ここで、T.リーゼイ(T.reesei)グルコアミラーゼをコードするORF配列は、5’(上流)T.リーゼイ(T.reesei)cbh1プロモーターに作動可能に連結され、3’(下流)T.リーゼイ(T.reesei)cbh1ターミネーターに作動可能に連結された。このDNAコンストラクトは、選択マーカーとしてT.リーゼイ(T.reesei)pyr2遺伝子をさらに含んだ。
したがって、本開示の変異(娘)T.リーゼイ(T.reesei)細胞(すなわち、Ace3-Lタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変を含む)を、グルコアミラーゼ発現コンストラクトで形質転換した。培養中にT.リーゼイ(T.reesei)グルコアミラーゼ酵素を分泌することができる、それらの形質転換体を同定するために、形質転換体を選択し、炭素源としてグルコースを含む液体培地で(すなわち、ソホロースまたはラクトースなどの誘導基質を含まない)培養した。
したがって、T.リーゼイ(T.reesei)グルコアミラーゼ発現(親)株(対照)、および改変T.リーゼイ(T.reesei)(娘)グルコアミラーゼ発現株(すなわち、Ace3-L ORFを含み、発現する)を振盪フラスコ内で増殖させ、全ての細胞培養物の上清を回収し、上記実施例2および実施例3で一般的に記載したように、PAGEを用いて分析した。
より詳しくは、図10に示すように、親T.リーゼイ(T.reesei)細胞は、グルコース/ソホロースを含む規定培地中(誘導条件)で1,029μg/mLのグルコアミラーゼを産生したが、グルコースを含む規定培地中(非誘導条件)ではわずかに38μg/Lのグルコアミラーゼを産生しただけであった。対照的に、dic1プロモーターから駆動されるace3-Lを含む改変(娘)株「LT88」は、「誘導」(「Sop」)条件下で3倍高いグルコアミラーゼを産生(すなわち、誘導条件下の親(対照)株と比較して)し、かつ「非誘導」(「Glu」)条件下で2.5倍高いグルコアミラーゼを産生(すなわち、誘導条件下の親(対照)株と比較して)し、または非誘導条件下の親(対照)株と比較して、「非誘導」(「Glu」)条件下で67倍高いグルコアミラーゼを産生した。したがって、これらの結果は、Ace3-L ORFを含む改変(娘)細胞は、インデューサーの非存在下で細胞外タンパク質を産生するだけでなく、これらの変異細胞はそのような誘導条件下で、親(対照)T.リーゼイ(T.reesei)細胞よりも多く、全タンパク質を産生することを示している。
実施例9
天然に関連した異種の目的遺伝子プロモーターの、リグノセルロース目的遺伝子プロモーターによる置換
フィターゼ発現コンストラクトを、以下のようにDNAポリヌクレオチドフラグメントから組み立てる(例えば、米国特許第8,143,046号明細書を参照されたい)。ブティアウクセラ属(Buttiauxella)種のフィターゼをコードするORFは、5’末端でT.リーゼイ(T.reesei)cbh1プロモーターに作動可能に連結し、かつ3’末端でT.リーゼイ(T.reesei)cbh1ターミネーターに作動可能に連結している。DNAコンストラクトは、選択マーカー、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)amdS遺伝子をさらに含む。変異T.リーゼイ(T.reesei)細胞(すなわち、Ace3-Lタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変を含む)を、フィターゼ発現コンストラクトで形質転換する。培養中にブティアウクセラ属(Buttiauxella)フィターゼ酵素を分泌することができる形質転換体を同定するために、形質転換体を選択し、炭素源としてグルコースを含む液体培地中で(すなわち、ソホロースまたはラクトースなどの誘導基質を含まない)培養した。
実施例10
天然ace3プロモーター置換ベクターの構築
本実施例では、2つのace3プロモーター置換ベクターpCHL760およびpCHL761を、標準的な分子生物学的手順を用いて構築した。ベクター骨格pMCM3282(図20)は、大腸菌(E.coli)中での複製および選択のために、pMB1 oriおよびAmpR遺伝子を含んだ。さらに、N.クラッサ(N.crassa)cpc1プロモーターおよびA.ニデュランス(A.nidulans)trpCターミネーターの下で発現する、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のためのhphハイグロマイシン選択マーカーを含んだ。プロモーター置換のために、ベクターは、T.リーゼイ(T.reesei)pki1プロモーター下で発現する、トウモロコシ用に最適化されたストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)cas9コドン、およびU6プロモーター下で発現するガイドRNAを含んだ(例えば、国際公開第2016/100568号パンフレットおよび国際公開第2016/100272号パンフレットを参照されたい)。
したがって、pMCM3282をEcoRVで消化し、ace3天然プロモーターを置換するT.リーゼイ(T.reesei)hxk1またはdic1プロモーター領域に隣接する、T.リーゼイ(T.reesei)ace3遺伝子座からの約1kbの5’末端および3’末端相同配列を有する3つのフラグメントを、Gibson assemblyによってpMCM3282/EcoRVにクローン化し、pCHL760(図21)およびpCHL761(図22)を得た。
Q5 High-fidelity DNAポリメ―ラーゼ(New England Biolabs)および下記の表9に記載のプライマーを使用して、T.リーゼイ(T.reesei)ゲノムDNAから、hxk1またはdic1と共に5’ace3相同配列および3’ace3相同配列をPCR増幅した。
Figure 0007285780000009
より詳しくは、各ベクターのフラグメントをPCR増幅するために使用した特定のプライマーは次の通りである。pCHL760を構築するために、プライマー対CL1840およびCL1791を用いて5’上流相同領域を増幅し、プライマー対CL1794およびCL1831を用いて、3’下流相同領域を増幅し、プライマー対CL1792およびCL1793を用いてdic1プロモーターを増幅した。
pCHL761を構築するために、プライマー対CL1840およびCL1800を用いて5’上流相同領域を増幅し、プライマー対CL1803およびCL1831を用いて、3’下流相同領域を増幅し、プライマー対CL1801およびCL1802を用いてdic1プロモーターを増幅した。
ベクターpMCM3282(図20)は、5’から3’方向に、T.リーゼイ(T.reesei)U6プロモーター、E.コリ(E.coli)ccdBカセット、およびCas9結合に関与する一本鎖ガイドRNA(sgRNA)の構造領域を含み、U6遺伝子由来のイントロンを含む。ccdBカセットを、トリコデルマ属(Trichoderma)ace3遺伝子内の5つの異なる標的部位に特異的な配列で置換した。最終ace3プロモーター置換ベクターを構築するための、pCHL760(図21)およびpCHL761(図22)へのガイドRNA配列の挿入。
したがって、異なるsgRNA配列の産生のために、AarI制限部位を有する以下の表10に示すオリゴヌクレオチドを設計した。
Figure 0007285780000010
より詳細には、CL1821およびCL1822、CL1823およびCL1824、CL1825およびCL1826、CL1827およびCL1828、CL1829およびCL1830をアニールして、二本鎖DNAを作製し、それらを、タイプIISシームレスクローニング法を使用して、AarI部位でpCHL760およびpCHL761に個々にクローニングした。正しく挿入されたガイドRNA配列を有する最終プラスミドは、毒性のccdB遺伝子を失っていた。
T.リーゼイ(T.reesei)の形質転換
pCHL760およびpCHL761のcas9媒介ace3プロモーター置換ベクターを、ポリエチレングリコール(PEG)媒介プロトプラスト形質転換法によりT.リーゼイ(T.reesei)親細胞に形質転換した。ハイグロマイシン耐性形質転換体を選択するために、ハイグロマイシンを含むVogel最小培地寒天上で形質転換体を増殖させた。これらの形質転換体のいくつかは、プラスミドを取り込んではいたが、ゲノムDNAへの安定な組み込みがなく、不安定であった。形質転換体をVogelの非選択的寒天培地に移し、プラスミドおよびハイグロマイシン耐性マーカーを無くした。
dic1プロモーター置換形質転換体についてスクリーニングするために、ゲノムDNAを抽出し、プライマー対CL1858およびCL1848(所望の組み込みについて予想されるサイズの産物は2,412bpであった)ならびにCL1853およびCL1818(所望の組み込みについて予想されるサイズの産物は2,431bpであった)を用いてPCRした(例えば、表11を参照されたい)。続いて、PCR産物をDNA配列の決定により分析し、所望のプロモーターの組み込みを確認した。
hxk1プロモーター置換形質転換体についてスクリーニングするために、プライマー対CL1858およびCL1898(所望の組み込みについて予想されるサイズの産物は1,784bpであった)ならびにCL1853およびCL1850(所望の組み込みについて予想されるサイズの産物は2,178bpであった)を用いてPCRし、続いてPCR産物のDNA配列決定により、正しい組み込みを確認した(例えば、表11を参照されたい)。
Figure 0007285780000011
振盪フラスコ中でのタンパク質の産生
ace3プロモーター置換株の機能性を試験するために、インデューサー基質(ソホロース)の存在下および非存在下、振盪フラスコ内、50mlの浸漬培養で細胞を増殖させた。誘導条件(炭素源としてグルコース/ソホロース)および非誘導条件(炭素源としてのグルコース)の両条件下の(液体培養で、親T.リーゼイ(T.reesei)宿主細胞(ID番号1275.8.1)、変異細胞ID番号2218、2219、2220、2221、2222および2223を増殖させ、それらのそれぞれの細胞外分泌タンパク質産生レベルを比較した。簡単に記載すると、底部バッフルを有する250mL三角フラスコ中の50mLのYEGブロスに、各宿主細胞(すなわち、T.リーゼイ(T.reesei)親宿主細胞およびその変異細胞)の菌糸を別々に加えた。YEGブロスは、5g/Lの酵母抽出物および22g/Lのグルコースを含有した。細胞培養物を48時間増殖させ、続いてさらに24時間、新鮮なYEG中で二次培養した。次いで、これらの種培養物を、底部バッフルを有する250mLの振盪フラスコ中、2.5%のグルコースを補充した50mLの規定培地(非誘導条件)、または2.5%のグルコース/ソホロースを含む50mLの規定培地(誘導条件)に接種した。全ての振盪フラスコを、200rpmで継続的に振盪しながら、28℃でインキュベートした。インキュベーションの4日後、全ての細胞培養物からの上清を回収し、図23に示されているようにSDS-PAGEを用いて分析した。
上記SDS-PAGEに見られるように、親細胞(図23、ID1275.8.1)では、グルコース/ソホロース(誘導)の場合と比較して、グルコース(非誘導)を含む規定培地では分泌タンパク質の産生は非常に少なかった。対照的に、形質転換体2218、2219、2220、2222および2223は、誘導および非誘導条件下で類似量の分泌タンパク質を産生した。したがって、これらの結果は、ace3遺伝子座において天然ace3プロモーターを置換したhxk1またはdic1プロモーターを有する変異細胞がインデューサーの非存在下で細胞外タンパク質を産生したことを示している。
参考文献
欧州特許出願第215,594号明細書
欧州特許出願第244,234号明細書
欧州特許出願公開第0215594号明細書
PCT/EP2013/050126号明細書
PCT/US2016/017113号明細書
国際公開第03/027306号パンフレット
国際公開第1992/06183号パンフレット
国際公開第1992/06209号パンフレット
国際公開第1992/06221号パンフレット
国際公開第1992/10581号パンフレット
国際公開第1998/15619号パンフレット
国際公開第2002/12465号パンフレット
国際公開第2003/52054号パンフレット
国際公開第2003/52055号パンフレット
国際公開第2003/52056号パンフレット
国際公開第2003/52057号パンフレット
国際公開第2003/52118号パンフレット
国際公開第2004/16760号パンフレット
国際公開第2004/43980号パンフレット
国際公開第2004/48592号パンフレット
国際公開第2005/001036号パンフレット
国際公開第2005/01065号パンフレット
国際公開第2005/028636号パンフレット
国際公開第2005/093050号パンフレット
国際公開第2005/28636号パンフレット
国際公開第2005/93073号パンフレット
国際公開第2006/074005号パンフレット
国際公開第2006/74005号パンフレット
国際公開第2009/149202号パンフレット
国際公開第2010/141779号パンフレット
国際公開第2011/038019号パンフレット
国際公開第2011/063308号パンフレット
国際公開第2011/153276号パンフレット
国際公開第2012/125925号パンフレット
国際公開第2012/125951号パンフレット
国際公開第2012125937号パンフレット
国際公開第2013/102674号パンフレット
国際公開第2014/047520号パンフレット
国際公開第2014/070837号パンフレット
国際公開第2014/070841号パンフレット
国際公開第2014/070844号パンフレット
国際公開第2014/093275号パンフレット
国際公開第2014/093281号パンフレット
国際公開第2014/093282号パンフレット
国際公開第2014/093287号パンフレット
国際公開第2014/093294号パンフレット
国際公開第2015/084596号パンフレット
国際公開第2016/069541号パンフレット
国際公開第2016/100272号パンフレット
国際公開第2016/100568号パンフレット
国際公開第2016/100571号パンフレット
米国特許第6,022,725号明細書
米国特許第6,268,328号明細書
米国特許第7,413,879号明細書
米国特許第7,713,725号明細書
米国特許第8,143,046号明細書
Alexopoulos,C.J.,Introductory Mycology,New York:Wiley,1962.
Allen and Mortensen,Biotechnol.Bioeng.,2641-45,1981.
Arvas,M.,Pakula,T.,Smit,B.,Rautio,J.,Koivistoinen,H.,Jouhten,P.,Lindfors,E.,Wiebe,M.,Penttila,M.,and Saloheimo,M.,“Correlation of gene expression and protein production rate-a system wide study”,BMC Genomics 12,616,2011.
Ausbel et al.,“Current Protocols in Molecular Biology”,Green Publishing Associates/Wiley Interscience,New York,1987.
Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates/Wiley Interscience,New York,1994.
Boel et al.,EMBO J.3:1581-1585,1984.
Campbell et al.,Curr.Genet.,16:53-56,1989.
Cao et al.,Science,9:991-1001,2000.
Colot et al.,PNAS 103(27):10352-10357,2006.
Devereux et al.,Nucleic Acids Res.12:387-395,1984.
el-Gogary et al.,“Mechanism by which cellulose triggers cellobiohydrolase I gene expression in Trichoderma reesei”,PNAS,86(16)-6138-6141,1989.
Hakkinen,M.,Valkonen,M.J.,Westerholm-Parvinen,A.,Aro,N.,Arvas,M.,Vitikainen,M.,Penttila,M.,Saloheimo,M.,and Pakula,T.M.,“Screening of candidate regulators for cellulase and hemicellulase production in Trichoderma reesei and identification of a factor essential for cellulase production”,Biotechnol Biofuels 7,14,2014.
Harkki et al.,BioTechnol.,7:596-603,1989.
Harkki et al.,Enzyme Microb.Technol.,13:227-233,1991.
Hu et al.,“Essential gene identification and drug target prioritization in Aspergillus fumigatus”PLoS Pathog.,3(3),2007.
Ilmen et al.,“Regulation of cellulase gene expression in the filamentous fungus Trichoderma reesei”,Applied and Environmental Microbiology,63(4)-1298-1306,1997.
Ju and Afolabi,Biotechnol.Prog.,91-97,1999.
Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual,1990.
Martinez et al.,“Genome sequencing and analysis of the bio-mass-degrading fungi Trichoderma reesei (syn.Hypocrea jecorina)”,Nature Biotechnology,26:533-560,2008.
Mullaney et al.,MGG 199:37-45,1985.
Nagy,“Cre recombinase:the universal reagent for genome tailoring”,Genesis 26(2),99-109,2000.
Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443,1970.
Nunberg et al.,Mol.Cell Biol.4:2306,1984.
Ouedraogo,J.P.,Arentshorst,M.,Nikolaev,I.,Barends,S.,and Ram,A.F.,“I-SceI-mediated double-strand DNA breaks stimulate efficient gene targeting in the industrial fungus Trichoderma reesei”Applied microbiology and biotechnology 99,10083-10095,2015.
Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988.
Penttila,M.,Nevalainen,H.,Ratto,M.,Salminen,E.,and Knowles,J.,“A versatile transformation system for the cellulolytic filamentous fungus Trichoderma reesei”,Gene 61,155-164,1987.
Poggi-Parodi,D.,Bidard,F.,Pirayre,A.,Portnoy,T.,Blugeon,C.,Seiboth,B.,Kubicek,C.P.,Le Crom,S.,and Margeot,A.,“Kinetic transcriptome analysis reveals an essentially intact induction system in a cellulase hyper-producer Trichoderma reesei strain”,Biotechnol Biofuels 7,173,2014.
Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring,New York,1989.
Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,4th Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring,New York,2012.
Seiboth,et.al.,Mol.Genet.Genomics,124-32,2002.
Sheir-Neiss and Montenecourt,“Characterization of the secreted cellulases of Trichoderma reesei wild type and mutants during controlled fermentations”,Applied Microbiology and Biotechnology,20(1):46-53,1984.
Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981.
Vaheri et al.,“Transglycosylation products of the cellulase system of Trichoderma reesei”,Biotechnol.Lett.,1:41-46,1979.
Yelton et al.,PNAS USA 81:1470-1474,1984.

Claims (8)

  1. 親糸状菌細胞由来の変異糸状菌細胞であって、配列番号6のAce3タンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ最後の4つのC末端アミノ酸として「Lys-Ala-Ser-Asp」を含むAce3タンパク質をコードする下流(3’)の核酸に作動可能に連結した上流(5’)の異種プロモーターを含む、導入されたポリヌクレオチドコンストラクトを含み、前記導入されたポリヌクレオチドコンストラクトを含まない前記親細胞と比較して、誘導基質の非存在下でもPAGEで検出可能なレベルで目的タンパク質(POI)を産生し、前記ポリヌクレオチドコンストラクトは、前記変異糸状菌細胞の遺伝子座に組み込まれている、変異細胞。
  2. 前記変異細胞は、前記親細胞と比較して、誘導基質の存在下でより多くの量の目的タンパク質(POI)をさらに産生するか、または前記変異細胞は、異種POIをコードする導入されたポリヌクレオチドコンストラクトを含む、請求項1に記載の変異細胞。
  3. 前記POIは、内因性POIまたは異種POIである、請求項1または2に記載の変異細胞。
  4. 前記内因性POIは、リグノセルロース分解酵素である、請求項3に記載の変異細胞。
  5. 前記リグノセルロース分解酵素は、(a)セルラーゼ酵素、ヘミセルラーゼ酵素、またはそれらの組み合わせからなる群、または(b)cbh1、cbh2、egl1、egl2、egl3、egl4、egl5、egl6、bgl1、bgl2、xyn1、xyn2、xyn3、bxl1、abf1、abf2、abf3、axe1、axe2、axe3、man1、agl1、agl2、agl3、glr1、swo1、cip1およびcip2からなる群から選択される、請求項4に記載の変異細胞。
  6. 前記異種POIは、α-アミラーゼ、アルカリα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、セルラーゼ、デキストラナーゼ、α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペントサナーゼ、キシラナーゼ、インベルターゼ、ラクターゼ、ナリンガナーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、酸プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、ブロメライン、中性プロテアーゼ、パパイン、ペプシン、ペプチダーゼ、レンネット、レニン、キモシン、スブチリシン、テルモリシン、アスパラギン酸プロテイナーゼ、トリプシン、リパーゼ、エステラーゼ、ホスホリパーゼ、ホスファターゼ、フィターゼ、アミダーゼ、イミノアシラーゼ、グルタミナーゼ、リゾチーム、ペニシリンアシラーゼ;イソメラーゼ、オキシドレダクターゼ、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、リアーゼ、アスパラギン酸β-デカルボキシラーゼ、フマラーゼ、ヒスタダーゼ、トランスフェラーゼ、リガーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ラッカーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リボヌクレアーゼおよびトランスグルタミナーゼからなる群から選択される、請求項2または3に記載の変異細胞。
  7. 前記ポリヌクレオチドコンストラクトは、前記変異糸状菌細胞のゲノムのテロメア部位またはグルコアミラーゼ(gla1)遺伝子座に組み込まれている、請求項1に記載の変異細胞。
  8. 前記ポリヌクレオチドコンストラクトは、配列番号4に対して90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、または前記コードされたAce3タンパク質は、配列番号6に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の変異細胞。
JP2019539732A 2016-10-04 2017-10-03 誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生 Active JP7285780B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2023084937A JP2023109919A (ja) 2016-10-04 2023-05-23 誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201662403787P 2016-10-04 2016-10-04
US62/403,787 2016-10-04
PCT/US2017/054983 WO2018067599A1 (en) 2016-10-04 2017-10-03 Protein production in filamentous fungal cells in the absence of inducing substrates

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023084937A Division JP2023109919A (ja) 2016-10-04 2023-05-23 誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2019528797A JP2019528797A (ja) 2019-10-17
JP2019528797A5 JP2019528797A5 (ja) 2020-11-12
JP7285780B2 true JP7285780B2 (ja) 2023-06-02

Family

ID=60245185

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019539732A Active JP7285780B2 (ja) 2016-10-04 2017-10-03 誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生
JP2023084937A Pending JP2023109919A (ja) 2016-10-04 2023-05-23 誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023084937A Pending JP2023109919A (ja) 2016-10-04 2023-05-23 誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生

Country Status (6)

Country Link
US (2) US10876103B2 (ja)
EP (1) EP3523415A1 (ja)
JP (2) JP7285780B2 (ja)
KR (1) KR102593668B1 (ja)
CN (1) CN109790510B (ja)
WO (1) WO2018067599A1 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110760537A (zh) * 2018-07-27 2020-02-07 中国农业科学院饲料研究所 用于快速筛选重组菌株的重组表达载体及应用
CN113302303A (zh) * 2018-11-28 2021-08-24 诺维信公司 经修饰的丝状真菌宿主细胞
US20220259270A1 (en) * 2019-07-16 2022-08-18 Centro Nacional De Pesquisa Em Energia E Materiais Modified trichoderma fungal strain for the production of an enzyme cocktail
JP2022553854A (ja) * 2019-11-08 2022-12-26 ダニスコ・ユーエス・インク タンパク質生産性が増強された表現型を含む糸状菌株及びその方法
JPWO2021100631A1 (ja) * 2019-11-18 2021-05-27
CN113106114B (zh) * 2020-01-13 2024-04-12 中国科学院分子植物科学卓越创新中心 调控里氏木霉蛋白表达效率的因子、调控方法及应用
EP4139332A1 (en) 2020-04-22 2023-03-01 Danisco US Inc. Compositions and methods for enhanced protein production in filamentous fungal cells
JP2022161526A (ja) 2021-04-09 2022-10-21 花王株式会社 改変糸状菌、及びそれを用いたタンパク質の製造方法
CN116813728A (zh) * 2023-07-07 2023-09-29 山东大学 一种真菌木质纤维素降解酶合成调控蛋白突变体及其应用

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007530065A (ja) 2004-04-02 2007-11-01 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 改善された相同的組換え効率を有する糸状菌変異体
WO2011151512A2 (en) 2010-06-04 2011-12-08 Teknologian Tutkimuskeskus Vtt Method for protein production in filamentous fungi
JP2014503185A (ja) 2010-10-20 2014-02-13 ダニスコ・ユーエス・インク 熱安定性トリコデルマ(trichoderma)セルラーゼ

Family Cites Families (60)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0625577A1 (en) 1985-08-29 1994-11-23 Genencor International, Inc. Heterologous polypeptides expressed in filamentous fungi, processes for their preparation, and vectors for their preparation
GB8610600D0 (en) 1986-04-30 1986-06-04 Novo Industri As Transformation of trichoderma
WO1992006221A1 (en) 1990-10-05 1992-04-16 Genencor International, Inc. Methods for treating cotton-containing fabrics with cellulase
ES2170748T3 (es) 1990-10-05 2002-08-16 Genencor Int Procedimientos para el tratamiento de tejidos que contienen algodon con celulasa.
WO1992006183A1 (en) 1990-10-05 1992-04-16 Genencor International, Inc. Methods for treating cotton-containing fabrics with cellulase
ES2182818T5 (es) 1990-12-10 2015-07-06 Danisco Us Inc. Sacarificación mejorada de celulosa por clonación y amplificación del gen de beta-glucosidasa de Trichoderma reesei
US6017870A (en) 1996-10-09 2000-01-25 Genencor International, Inc. Purified cellulase and method of producing
CA2286307A1 (en) 1997-04-07 1998-10-15 Unilever Plc Agrobacterium mediated transformation of moulds, in particular those belonging to the genus aspergillus
US6268328B1 (en) 1998-12-18 2001-07-31 Genencor International, Inc. Variant EGIII-like cellulase compositions
DE60143086D1 (de) 2000-08-04 2010-10-28 Genencor Int Mutierte trichoderma reesei egiii cellulasen, dafür kodierende dna und verfahren zu deren herstellung
US6982159B2 (en) 2001-09-21 2006-01-03 Genencor International, Inc. Trichoderma β-glucosidase
US7049125B2 (en) 2001-12-18 2006-05-23 Genencor International, Inc. EGVIII endoglucanase and nucleic acids encoding the same
US7045332B2 (en) 2001-12-18 2006-05-16 Genencor International, Inc. BGL4 β-glucosidase and nucleic acids encoding the same
US7045331B2 (en) 2001-12-18 2006-05-16 Genencor International, Inc. EGVII endoglucanase and nucleic acids encoding the same
US7005289B2 (en) 2001-12-18 2006-02-28 Genencor International, Inc. BGL5 β-glucosidase and nucleic acids encoding the same
US7056721B2 (en) 2001-12-18 2006-06-06 Genencor International, Inc. EGVI endoglucanase and nucleic acids encoding the same
EP2295559B1 (en) 2002-08-16 2015-09-16 Danisco US Inc. Novel variant Hyprocrea jecorina CBH1 cellulases with increase thermal stability comprising substitution or deletion at position T255
CN102604916A (zh) 2002-09-10 2012-07-25 金克克国际有限公司 使用高浓度糖混合物诱导基因表达
WO2004043980A2 (en) 2002-11-07 2004-05-27 Genencor International, Inc. Bgl6 beta-glucosidase and nucleic acids encoding the same
US7407788B2 (en) 2002-11-21 2008-08-05 Danisco A/S, Genencor Division BGL7 beta-glucosidase and nucleic acids encoding the same
JP2007534294A (ja) 2003-03-21 2007-11-29 ジェネンコー・インターナショナル・インク Cbh1相同体及び変異体cbh1セルラーゼ
US7459299B2 (en) 2003-04-01 2008-12-02 Danisco A/S, Genencor Division Variant Humicola grisea CBH1.1
EP1862540B1 (en) 2003-05-29 2011-09-14 Genencor International, Inc. Novel trichoderma genes
JP5114194B2 (ja) 2004-03-25 2013-01-09 ジェネンコー・インターナショナル・インク セルラーゼ融合タンパク質及びこれをコードする異種セルラーゼ融合構築体
US8097445B2 (en) 2004-03-25 2012-01-17 Danisco Us Inc. Exo-endo cellulase fusion protein
US7413887B2 (en) 2004-05-27 2008-08-19 Genecor International, Inc. Trichoderma reesei glucoamylase and homologs thereof
DK2302049T3 (en) 2004-12-30 2017-05-01 Danisco Us Inc CBH2 CELLULASE VARIETIES OF HYPOCREA JECORINA
US20070231819A1 (en) * 2006-03-15 2007-10-04 Christopher Lawrence Targeted and non-targeted gene insertions using a linear minimal element construct
US8143046B2 (en) 2007-02-07 2012-03-27 Danisco Us Inc., Genencor Division Variant Buttiauxella sp. phytases having altered properties
US20090253173A1 (en) * 2008-04-08 2009-10-08 Danisco Us Inc., Genencor Division Filamentous fungi with inactivated protease genes for altered protein production
WO2009149202A2 (en) 2008-06-06 2009-12-10 Danisco Us Inc., Genencor Division Compositions and methods comprising cellulase variants with reduced affinity to non-cellulosic materials
CN104862293A (zh) 2009-06-03 2015-08-26 丹尼斯科美国公司 具有改善的表达、活性和/或稳定性的纤维素酶变体,及其用途
MX2012003091A (es) 2009-09-23 2012-04-30 Danisco Us Inc Enzimas de glicosil hidrolasa novedosas y usos de las mismas.
CN105316303B (zh) 2009-11-20 2019-05-31 丹尼斯科美国公司 具有改善的特性的β-葡萄糖苷酶I变体
CN101831452B (zh) * 2010-04-22 2012-09-05 中国农业科学院生物技术研究所 通过重组瑞氏木霉以诱导型方式高效表达和生产t4溶菌酶的方法
US8962295B2 (en) 2010-06-01 2015-02-24 California Institute Of Technology Stable, functional chimeric cellobiohydrolase class I enzymes
JP2013533737A (ja) * 2010-06-03 2013-08-29 ダニスコ・ユーエス・インク 糸状菌宿主株及びdna構築物並びにその使用方法
SG192098A1 (en) 2011-03-17 2013-08-30 Danisco Us Inc Method for reducing viscosity in saccharification process
RU2013146240A (ru) 2011-03-17 2015-04-27 ДАНИСКО ЮЭс ИНК. Ферменты гликозил-гидролазы и их применение для гидролиза биомассы
RU2013146341A (ru) 2011-03-17 2015-04-27 ДАНИСКО ЮЭс ИНК Композиции целлюлазы и способы их применения для улучшенного превращения лигноцеллюлозной биомассы в ферментируемые сахара
CN102311951B (zh) * 2011-07-13 2013-03-20 深圳大学 里氏木霉组成型表达盒、表达载体、重组菌株及其应用
CA2857755A1 (en) 2011-12-21 2013-06-27 Danisco Us Inc. Improving fungal gene expression using insulator dna sequences
EP3358000A3 (en) 2012-01-05 2018-12-19 Glykos Finland Oy Protease deficient filamentous fungal cells and methods of use thereof
WO2014047520A1 (en) 2012-09-20 2014-03-27 Danisco Us Inc. Microtiter plates for controlled release of culture components to cell cultures
CA2889193A1 (en) 2012-10-31 2014-05-08 Danisco Us Inc. Beta-glucosidase from neurospora crassa
EP2914717A1 (en) 2012-10-31 2015-09-09 Danisco US Inc. Beta-glucosidase from magnaporthe grisea
JP2015533293A (ja) 2012-10-31 2015-11-24 ダニスコ・ユーエス・インク 組成物及び使用方法
CN104870643A (zh) 2012-12-12 2015-08-26 丹尼斯科美国公司 纤维二糖水解酶的变体
CN104870638A (zh) 2012-12-12 2015-08-26 丹尼斯科美国公司 纤维二糖水解酶的变体
WO2014093294A1 (en) 2012-12-12 2014-06-19 Danisco Us Inc. Variants of cellobiohydrolases
WO2014093282A1 (en) 2012-12-12 2014-06-19 Danisco Us Inc. Variants of cellobiohydrolases
EP3290515A1 (en) 2012-12-12 2018-03-07 Danisco US Inc. Variants of cellobiohydrolases
KR20160035587A (ko) * 2013-07-10 2016-03-31 노파르티스 아게 복수개의 프로테아제 결핍 사상형 진균 세포들 및 그의 이용방법
CN105829530A (zh) 2013-12-04 2016-08-03 丹尼斯科美国公司 包含β-葡萄糖苷酶多肽的组合物及其使用方法
US20170349922A1 (en) 2014-10-27 2017-12-07 Danisco Us Inc. Compositions and methods related to beta-glucosidase
CN107667171A (zh) 2014-12-16 2018-02-06 丹尼斯科美国公司 真菌基因组修饰系统及使用方法
WO2017177289A1 (en) 2016-04-15 2017-10-19 Vtt International Oy Process for conversion of biomass into fermentable sugars with integrated enzyme
CN106978360B (zh) * 2017-04-24 2020-08-04 上海交通大学 一株高产纤维素酶里氏木霉重组菌株及其应用
CN113106114B (zh) * 2020-01-13 2024-04-12 中国科学院分子植物科学卓越创新中心 调控里氏木霉蛋白表达效率的因子、调控方法及应用
EP4139332A1 (en) * 2020-04-22 2023-03-01 Danisco US Inc. Compositions and methods for enhanced protein production in filamentous fungal cells

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007530065A (ja) 2004-04-02 2007-11-01 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 改善された相同的組換え効率を有する糸状菌変異体
WO2011151512A2 (en) 2010-06-04 2011-12-08 Teknologian Tutkimuskeskus Vtt Method for protein production in filamentous fungi
JP2014503185A (ja) 2010-10-20 2014-02-13 ダニスコ・ユーエス・インク 熱安定性トリコデルマ(trichoderma)セルラーゼ

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
Aisha Ellahi et al.,The Chromatin and Transcriptional Landscape of Native Saccharomyces cerevisiae Telomeres and Subtelomeric Domains.,Genetics,2015年03月30日,Vol.200, No.2,p.505-521,doi: 10.1534/genetics.115.175711
Grant A. Bitter and Kevin M. Egan,Expression of interferon-gamma from hybrid yeast GPD promoters containing upstream regulatory sequences from GAL1-GAL10 intergenic region.,Gene,1988年09月30日,Vol.69, No.2,p.193-207,doi: 10.1016/0378-1119(88)90430-1
Kuo A. et al.,ORF Names=M419DRAFT_98455,UniProtKB/TrEMBL,version 16,2016年09月07日,https://www.uniprot.org/uniprot/A0A024SEE4.txt?version=16
M Cameron Limon et al.,The effects of disruption of phosphoglucose isomerase gene on carbon utilisation and cellulase production in Trichoderma reesei Rut-C30.,Microb. Cell Fact.,2011年05月24日,Vol.10,Article 40,doi: 10.1186/1475-2859-10-40

Also Published As

Publication number Publication date
US20220145278A1 (en) 2022-05-12
EP3523415A1 (en) 2019-08-14
CN109790510A (zh) 2019-05-21
US20190309276A1 (en) 2019-10-10
US10876103B2 (en) 2020-12-29
CN109790510B (zh) 2024-04-12
WO2018067599A1 (en) 2018-04-12
JP2023109919A (ja) 2023-08-08
KR20190057088A (ko) 2019-05-27
KR102593668B1 (ko) 2023-10-24
JP2019528797A (ja) 2019-10-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7285780B2 (ja) 誘導基質の非存在下における糸状菌細胞内でのタンパク質の産生
DK2576796T3 (en) Filamentous fungal host strains and DNA constructs, as well as procedures for their use
JP7280269B2 (ja) タンパク質の産生増加のための変異及び遺伝子改変バチルス属(bacillus)細胞、並びにその方法
EP3384002A1 (en) Method of producing proteins in filamentous fungi with decreased clr2 activity
US20230174998A1 (en) Compositions and methods for enhanced protein production in filamentous fungal cells
US20240102070A1 (en) Fungal strains comprising enhanced protein productivity phenotypes and methods thereof
EP3384003A1 (en) Method of producing proteins in filamentous fungi with decreased clri activity
WO2018093752A1 (en) Filamentous fungi with improved protein production
KR102489871B1 (ko) 진균 숙주 주, dna 구성물, 및 사용 방법
US20210301276A1 (en) Mutant and genetically modified filamentous fungal strains comprising enhanced protein productivity phenotypes and methods thereof
WO2024102556A1 (en) Filamentous fungal strains comprising enhanced protein productivity phenotypes and methods thereof
WO2023102315A1 (en) Compositions and methods for enhanced protein production in fungal cells
KR20240110854A (ko) 진균 세포에서의 향상된 단백질 생산을 위한 조성물 및 방법
CN117716039A (zh) 用于增强真菌细胞中的蛋白质产生的组合物和方法
WO2024137350A2 (en) Recombinant fungal strains and methods thereof for producing consistent proteins
WO2023039358A1 (en) Over expression of foldases and chaperones improves protein production
CN117881772A (zh) 编码新型核酸酶的多核苷酸、其组合物及其从蛋白质制剂中消除dna的方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190604

A524 Written submission of copy of amendment under article 19 pct

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A524

Effective date: 20190604

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201002

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201002

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210716

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210720

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211020

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220111

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220404

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220610

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221004

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20230104

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20230104

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230215

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230209

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230303

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230425

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230523

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7285780

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150