JP2024003755A - 補強フィルム、デバイスの製造方法および補強方法 - Google Patents

補強フィルム、デバイスの製造方法および補強方法 Download PDF

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Abstract

【課題】端面からの粘着剤のはみ出しが少なく加工性に優れ、かつ粘着剤を光硬化する前は被着体からのはく離が容易であり、粘着剤を光硬化することにより被着体と強固に接着可能である補強フィルムを提供する。【解決手段】補強フィルム(10)は、フィルム基材(1)の一主面上に固着積層された粘着剤層(2)を備える。粘着剤層は、架橋構造を有するアクリル系ベースポリマー、光硬化剤および光重合開始剤を含む光硬化性組成物からなり、光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートを含む。粘着剤層の押込み弾性率Xを粘着剤層の表面力Yで割った値X/Yは30以上が好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、フィルム基材と光硬化性の粘着剤層とが固着積層された補強フィルムに関する。さらに、本発明は、補強フィルムが表面に貼り合わせられたデバイスの製造方法、および被着体の表面に補強フィルムを固着積層する補強方法に関する。
ディスプレイ等の光学デバイスや電子デバイスの表面には、表面保護や耐衝撃性付与等を目的として、粘着性フィルムが貼着される場合がある。このような粘着性フィルムは、通常、フィルム基材の主面に粘着剤層が固着積層されており、この粘着剤層を介してデバイス表面に貼り合わせられる。
デバイスの組み立て、加工、輸送等の使用前の状態において、デバイスまたはデバイス構成部品の表面に粘着性フィルムを仮着することにより、被着体の傷つきや破損を抑制できる。特許文献1には、フィルム基材上に光硬化性の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える補強フィルムが開示されており、光硬化性の粘着剤組成物の具体例(組成21)として、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、0.5重量部のエポキシ系架橋剤および30重量部の光硬化剤(多官能アクリレート)を配合した例が示されている。
この補強フィルムの粘着剤は、被着体との貼り合わせ直後は低粘着性の仮着状態であるため、被着体からのはく離が容易である。そのため、被着体からのリワークが可能であるとともに、被着体の補強を必要としない箇所(非補強対象領域)から補強フィルムを位置選択的にはく離除去することも可能である。補強フィルムの粘着剤は、光硬化により被着体と強固に接着するため、被着体の表面にフィルム基材が永久接着した状態となり、デバイスの表面保護等を担う補強材として利用可能である。
特開2020-41113号公報
特許文献1には、粘着剤を光硬化する前の接着力(初期接着力)を小さくする方法の1つとして、光硬化剤の量を多くすることが記載されており、液状の光硬化剤が粘着剤層表面にブリードアウトして、接着阻害層(Weak Boundary Layer; WBL)を形成するために、初期接着力が小さくなることが記載されている。しかし、初期接着力を低下させるために光硬化剤の含有量を大きくすると、粘着剤が柔らかくなり、補強フィルムを切断加工する際に、切断刃に粘着剤が付着しやすく、加工性が乏しい。また、端面からはみ出した粘着剤が、周囲の汚染の原因となる場合がある。
特許文献1には、粘着剤の初期接着力を小さくするための他の手段として、架橋剤の配合量を多くすることが記載されている。架橋剤の量を増大させることにより、粘着剤のゲル分率が高くなり、凝集力が高められるために、初期接着力を低下可能であるとともに、加工性も改善できる。しかし、架橋剤の量が多いと、粘着剤を光硬化しても接着力が十分に上昇しない場合がある。
すなわち、特許文献1に開示されている補強フィルムでは、粘着剤組成物における架橋剤の量や、光硬化剤(多官能(メタ)アクリレート)の量を調整することにより、初期接着力の低下、粘着剤のはみ出し抑制(加工性向上)、および光硬化後の高接着力の3つの特性を調整可能であるが、これら3つの全てを満足することは困難である。
本発明は、上記3つの要求特性を同時に満足し得る補強フィルムの提供を目的とする。
上記課題に鑑みて本発明者らが検討の結果、所定の組成を有する光硬化性粘着剤を用いることにより、加工性向上を図りつつ、初期接着力の低下と光硬化後の高接着力とを両立可能であることを見出し、本発明に至った。
本発明の補強フィルムは、フィルム基材の一主面上に固着積層された粘着剤層を備える。粘着剤層は、アクリル系ベースポリマー、光硬化剤および光重合開始剤を含む光硬化性組成物からなる。アクリル系ベースポリマーは、モノマーユニットとして、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーからなる群から選択される1以上を含有し、ベースポリマーのヒドロキシ基および/またはカルボキシ基と架橋剤が結合することにより架橋構造が導入されている。
一実施形態において、アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを含む。アクリル系ベースポリマーは、カルボキシ基含有モノマーに由来するカルボキシ基に、エポキシ系架橋剤が結合することにより、架橋構造が形成されたものであってもよい。
粘着剤層を構成する光硬化性組成物は、光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートを含む。粘着剤層を構成する光硬化性組成物は、アクリル系ベースポリマー、光硬化剤および光重合開始剤に加えて、重量平均分子量が1000~30000のアクリル系オリゴマーを含んでいてもよい。
粘着剤層の押込弾性率Xを粘着剤層の表面力Yで割った値X/Yは、30以上であることが好ましい。押込弾性率Xは、粘着剤層に、押し込み速度:5μm/s、押し込み深さ5μmで圧子を押し込むナノインデンテーション測定により得られる荷重-変位曲線における最大荷重Pmaxを、圧子の接触投影面積Aで割った値である。表面力Yは、中央を湾曲させたポリエチレンテレフタレートフィルムの湾曲部分を、粘着剤層に接触面積が0.002mとなるように接触させた状態で、移動速度4200mm/minでポリエチレンテレフタレートフィルムを引き上げた際の最大荷重を、接触面積(0.002m)で割った値である。
補強フィルムは、粘着剤層を光硬化する前(粘着剤が未硬化の状態)は、被着体としてのポリイミドフィルムに対する接着力が0.3N/25mm以下であることが好ましい。また、補強フィルムは、粘着剤層を光硬化した後のポリイミドフィルムに対する接着力が3N/25mm以上であることが好ましい。光硬化後の接着力は、光硬化前の接着力の10倍以上であってもよい。
光硬化剤としてのウレタン(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基の官能基当量が80~150g/eqであってもよい。ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものであってもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートの具体例として、ジイソシアネートのイソシアネート基と、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物のヒドロキシ基とが、ウレタン結合を形成した化合物が挙げられる。ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物の例として、ペンタエリスリトール骨格を有するものが挙げられる。
光硬化性の粘着剤組成物は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、ウレタン(メタ)アクリレートの含有量が0.5~15重量部であることが好ましく、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートの含有量が5~40重量部であることが好ましい。アクリル系ベースポリマーは、ポリマー100重量部に対して、0.4~1.3重量部の架橋剤を用いて架橋構造が導入されていることが好ましい。
粘着剤組成物は、X/Yが前述の範囲となるように、上記範囲内で光硬化剤の量および架橋剤の量を調整することが好ましい。
被着体としてのデバイスの表面に上記の補強フィルムを貼り合わせて仮着した後、粘着剤層を光硬化することにより、補強フィルム付きデバイスが得られる。補強フィルムを被着体に仮着した後、粘着剤層を光硬化する前に、被着体に仮着された補強フィルムを切断し、被着体上の一部の領域(非補強対象領域)から、補強フィルムをはく離除去してもよい。
本発明の補強フィルムは、粘着剤層が光硬化性組成物からなり、被着体との貼り合わせ後に粘着剤層を光硬化することにより、被着体との接着力が上昇する。粘着剤層を構成する組成物が、光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートを含むことにより、補強フィルムの加工性向上を図りつつ、初期接着力の低下と光硬化後の高接着力とを両立できる。
補強フィルムの積層構成を示す断面図である。 補強フィルムの積層構成を示す断面図である。 補強フィルムが貼設されたデバイスを示す断面図である。
図1は、補強フィルムの一実施形態を表す断面図である。補強フィルム10は、フィルム基材1の一主面上に粘着剤層2を備える。粘着剤層2は、フィルム基材1の一主面上に固着積層されている。粘着剤層2は光硬化性組成物からなる光硬化性粘着剤であり、紫外線等の活性光線の照射により硬化して、被着体との接着力が上昇する。
図2は、粘着剤層2の主面上にはく離ライナー5が仮着された補強フィルムの断面図である。図3は、デバイス20の表面に補強フィルム10が貼設された状態を示す断面図である。
粘着剤層2の表面からはく離ライナー5をはく離除去し、粘着剤層2の露出面をデバイス20の表面に貼り合わせることにより、デバイス20の表面に補強フィルム10が貼設される。この状態では、粘着剤層2は光硬化前であり、デバイス20上に補強フィルム10(粘着剤層2)が仮着された状態である。粘着剤層2を光硬化することにより、デバイス20と粘着剤層2との界面での接着力が上昇し、デバイス20と補強フィルム10とが固着される。
「固着」とは積層された2つの層が強固に接着しており、両者の界面でのはく離が不可能または困難な状態である。「仮着」とは、積層された2つの層間の接着力が小さく、両者の界面で容易にはく離できる状態である。
図2に示す補強フィルムでは、フィルム基材1と粘着剤層2とが固着しており、はく離ライナー5は粘着剤層2に仮着されている。フィルム基材1とはく離ライナー5をはく離すると、粘着剤層2とはく離ライナー5との界面ではく離が生じ、フィルム基材1上に粘着剤層2が固着した状態が維持される。はく離後のはく離ライナー5上には粘着剤は残存しない。
図3に示す補強フィルム10が貼設されたデバイスは、粘着剤層2の光硬化前においては、デバイス20と粘着剤層2とが仮着状態である。デバイス20からフィルム基材1をはく離する際には、粘着剤層2とデバイス20との界面ではく離が生じ、フィルム基材1上に粘着剤層2が固着した状態が維持される。デバイス20上には粘着剤が残存しないため、リワークが容易である。粘着剤層2を光硬化後は、粘着剤層2とデバイス20との接着力が上昇するため、デバイス20からフィルム1をはく離することは困難であり、両者をはく離すると粘着剤層2の凝集破壊が生じる場合がある。
[補強フィルムの構成]
<フィルム基材>
フィルム基材1としては、プラスチックフィルムが用いられる。フィルム基材1と粘着剤層2とを固着するために、フィルム基材1の粘着剤層2付設面は離型処理が施されていないことが好ましい。
フィルム基材1の厚みは、例えば4~500μm程度である。剛性付与や衝撃緩和等によりデバイスを補強する観点から、フィルム基材1の厚みは12μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、45μm以上がさらに好ましい。補強フィルムに可撓性を持たせハンドリング性を高める観点から、フィルム基材1の厚みは300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。機械強度と可撓性とを両立する観点から、フィルム基材1の圧縮強さは、100~3000kg/cmが好ましく、200~2900kg/cmがより好ましく、300~2800kg/cmがさらに好ましく、400~2700kg/cmが特に好ましい。
フィルム基材1を構成するプラスチック材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。ディスプレイ等の光学デバイス用の補強フィルムにおいては、フィルム基材1は透明フィルムであることが好ましい。また、フィルム基材1側から活性光線を照射して粘着剤層2の光硬化を行う場合、フィルム基材1は、粘着剤層の硬化に用いられる活性光線に対する透明性を有することが好ましい。機械強度と透明性とを兼ね備えることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂が好適に用いられる。被着体側から活性光線を照射して粘着剤層を硬化する場合は、被着体が活性光線に対する透明性を有していればよく、フィルム基材1は活性光線に対して透明でなくてもよい。
フィルム基材1の表面には、易接着層、易滑層、離型層、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層等の機能性コーティングが設けられていてもよい。なお、前述のように、フィルム基材1と粘着剤層2とを固着するために、フィルム基材1の粘着剤層2付設面には離型層が設けられていないことが好ましい。
<粘着剤層>
フィルム基材1上に固着積層される粘着剤層2は、ベースポリマー、光硬化剤および光重合開始剤を含む光硬化性組成物からなる。粘着剤層2は、光硬化前はデバイスやデバイス部品等の被着体との接着力が小さいため、はく離が容易である。粘着剤層2は、光硬化により被着体との接着力が向上するため、デバイスの使用時においても補強フィルムがデバイス表面からはく離し難く、接着信頼性に優れる。
光硬化性の粘着剤は一般的な保管環境では硬化はほとんど進行せず、紫外線等の活性光線の照射により硬化する。そのため、本発明の補強フィルムは、粘着剤層2の硬化のタイミングを任意に設定可能であり、工程のリードタイム等に柔軟に対応できるとの利点を有する。
補強フィルムが、ディスプレイ等の光学デバイスに用いられる場合、粘着剤層2の全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。粘着剤層2のヘイズは、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.7%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
(ベースポリマー)
ベースポリマーは粘着剤組成物の主構成成分であり、粘着剤層の接着力等を決定する主要素である。光学的透明性および接着性に優れ、かつ接着力や貯蔵弾性率の制御が容易であることから、粘着剤組成物は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有するものが好ましく、粘着剤組成物の50重量%以上がアクリル系ポリマーであることが好ましい。
アクリル系ポリマーとしては、主たるモノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むものが好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が分枝を有していてもよく、環状アルキル基(脂環式アルキル基)を有していてもよい。
鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル等の二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環上に置換基を有するものであってもよい。また、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の、脂環構造と不飽和結合を有する環構造との縮合環を含む(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、55重量%以上がさらに好ましい。
アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するモノマー成分を含有することが好ましい。ベースポリマーに架橋構造が導入されることにより、凝集力が向上し、粘着剤層2の接着力が向上するとともに、リワークの際の被着体への糊残りが低減する傾向がある。
架橋可能な官能基を有するモノマーとしてはヒドロキシ基含有モノマーや、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。ベースポリマーのヒドロキシ基やカルボキシ基は、後述の架橋剤との反応点となる。例えば、イソシアネート系架橋剤を用いる場合は、ベースポリマーの共重合成分として、ヒドロキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。エポキシ系架橋剤を用いる場合は、ベースポリマーの共重合成分として、カルボキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル等が挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。中でも、粘着剤の凝集性増大により、接着力および接着保持力が向上しやすいことから、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
アクリル系ベースポリマーがカルボキシ基含有モノマーを含む場合、ベースポリマーに導入されたカルボキシ基は、エポキシ系架橋剤等の架橋剤との架橋点になり得る。また、アクリル系ベースポリマーがカルボキシ基を含む場合、光硬化剤としてウレタン(メタ)アクリレートを含む粘着剤の凝集力が高められ、初期接着力が小さくなる傾向がある。
アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対するヒドロキシ基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーの合計量が、1~30重量%であることが好ましく、2~25重量%であることがより好ましく、3~20重量%であることがさらに好ましい。中でも、カルボキシ基含有モノマーの含有量が上記範囲であることが好ましく、特に、アクリル酸またはメタクリル酸の含有量が上記範囲であることが好ましい。
アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分として、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタム等の窒素含有モノマーを含有していてもよい。
アクリル系ベースポリマーは、上記以外のモノマー成分を含んでいてもよい。アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分として、例えば、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマー、スルホ基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー等を含んでいてもよい。
アクリル系ベースポリマーは、窒素原子を実質的に含まないものであってもよい。ベースポリマーの構成元素中の窒素の割合は、0.1モル%以下、0.05モル%以下、0.01モル%以下、0.005モル%以下、0.001モル%以下、または0であってもよい。窒素原子を実質的に含まないベースポリマーを用いることにより、被着体にプラズマ処理等の表面活性化処理を行った場合の、光硬化前の粘着剤層の接着力(初期接着力)の上昇が抑制される傾向がある。
ベースポリマーの構成モノマー成分として、シアノ基含有モノマー、ラクタム構造含有モノマー、アミド基含有モノマー、モルホリン環含有モノマー等の窒素原子含有モノマーを含まないことにより、窒素原子を実質的に含まないベースポリマーが得られる。なお、ベースポリマーに架橋構造が導入されている場合は、架橋構造導入前のポリマーが窒素原子を実質的に含まないものであればよく、架橋剤は窒素原子を含んでいてもよい。ベースポリマーが窒素原子を実質的に含まない場合は、粘着剤の凝集性を高める観点から、ベースポリマーはモノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。
粘着剤に優れた接着性を持たせる観点から、アクリル系ベースポリマーのガラス転移温度は、-10℃以下が好ましく、-15℃以下がより好ましく、-20℃以下がさらに好ましい。アクリル系ベースポリマーのガラス転移温度は、-25℃以下または-30℃以下であってもよい。アクリル系ベースポリマーのガラス転移温度は、一般に-100℃以上であり、-80℃以上または-70℃以上であってもよい。
ガラス転移温度は、粘弾性測定における損失正接tanδが極大となる温度(ピークトップ温度)である。粘弾性測定によるガラス転移温度に代えて、理論Tgを適用してもよい。理論Tgは、アクリル系ベースポリマーの構成モノマー成分のホモポリマーのガラス転移温度Tgと、各モノマー成分の重量分率Wから、下記のFoxの式により算出される。
1/Tg=Σ(W/Tg
Tgはポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Wはセグメントを構成するモノマー成分iの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgはモノマー成分iのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)である。ホモポリマーのガラス転移温度としては、Polymer Handbook 第3版(John Wiley & Sons, Inc., 1989年)に記載の数値を採用できる。上記文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのTgは、動的粘弾性測定によるtanδのピークトップ温度を採用すればよい。
ベースポリマーが構成モノマー成分として、高Tgモノマーを含むことにより、粘着剤の凝集力が向上し、光硬化前はリワーク性に優れ、光硬化後は高い接着燐来性を示す傾向がある。高Tgモノマーとは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が高いモノマーを意味する。ホモポリマーのTgが40℃以上のモノマーとしては、シクロヘキシルメタクリレート(Tg:83℃)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(Tg:60℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:155℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:97℃)、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、1-アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃)、1-アダマンチルアクリレート(Tg:153℃)等の(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸(Tg:228℃)、アクリル酸(Tg:106℃)等の酸モノマー等が挙げられる。
アクリル系ベースポリマーは、ホモポリマーのTgが40℃以上のモノマーの含有量が、構成モノマー成分全量に対して1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましい。適度な硬さを有しリワーク性に優れる粘着剤層を形成するためには、ベースポリマーのモノマー成分として、ホモポリマーのTgが80℃以上のモノマー成分を含むことが好ましく、ホモポリマーのTgが100℃以上のモノマー成分を含むことがより好ましい。アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対するホモポリマーのTgが100℃以上のモノマーの含有量が、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましく、2重量%以上であることが特に好ましい。一方、粘着剤に適度の柔軟性を持たせる観点から、ホモポリマーのTgが40℃以上のモノマーの含有量は、構成モノマー成分全量に対して、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、20重量%以下または10重量%以下でもよい。同様の観点から、ホモポリマーのTgが80℃以上のモノマーの含有量は、構成モノマー成分全量に対して、30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましく、15重量%以下、10重量%以下または5重量%以下であってもよい。
上記モノマー成分を、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の各種公知の方法により重合することによりベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーが得られる。粘着剤の接着力、保持力等の特性のバランスや、コスト等の観点から、溶液重合法が好ましい。溶液重合の溶媒としては、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20~80重量%程度である。溶液重合に用いられる重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系等の各種公知のものを使用できる。分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。反応温度は通常50~80℃程度、反応時間は通常1~8時間程度である。
アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量は、10万~200万が好ましく、20万~150万がより好ましく、30万~100万がさらに好ましい。なお、ベースポリマーに架橋構造が導入される場合、ベースポリマーの分子量とは、架橋構造導入前の分子量を指す。
(架橋剤)
粘着剤に適度の凝集力を持たせ、接着力を発現させるとともに、光硬化前の粘着剤層の被着体からのはく離性を確保する観点から、ベースポリマーには架橋構造が導入されることが好ましい。例えば、ベースポリマーを重合後の溶液に架橋剤を添加し、必要に応じて加熱を行うことにより、架橋構造が導入される。架橋剤は、1分子中に2個以上の架橋性官能基を有する。架橋剤は1分子中に3個以上の架橋性官能基を有するものであってもよい。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、ベースポリマー中に導入されたヒドロキシ基やカルボキシ基等の官能基と反応して架橋構造を形成する。ベースポリマーのヒドロキシ基やカルボキシ基との反応性が高く、架橋構造の導入が容易であることから、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが用いられる。イソシアネート系架橋剤は、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するものであってもよい。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、三井化学製「タケネートD101E」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートHL」)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学製「タケネートD110N」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、東ソー製「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物が用いられる。エポキシ系架橋剤は、1分子中に3個以上または4個以上のエポキシ基を有するものであってもよい。エポキシ系架橋剤のエポキシ基はグリシジル基であってもよい。エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤として、ナガセケムテックス製の「デナコール」、三菱ガス化学製の「テトラッドX」「テトラッドC」等の市販品を用いてもよい。
ベースポリマーが窒素原子を実質的に含まない場合であっても、架橋剤は窒素原子を含んでいてもよい。例えば、窒素原子を実質的に含まないベースポリマーに、イソシアネート架橋剤により架橋構造を導入してもよい。ベースポリマーが窒素原子を実質的に含まない場合は、エポキシ系架橋剤等の窒素原子を含まない架橋剤を用いることにより、プラズマ処理等の表面活性化処理による初期接着力の上昇が抑制される傾向がある。
光硬化剤としてウレタン(メタ)アクリレートを含む場合は、粘着剤の凝集性を高め、加工性を向上する観点から、アクリル系ベースポリマーが(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有モノマーに由来するカルボキシ基を有し、架橋剤としてエポキシ系架橋剤を用いる系が好ましい。
架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01~10重量部程度である。架橋剤の使用量が少ない場合は、粘着剤の凝集力が小さく、粘着剤の流動やせん断破壊が生じやすいため、補強フィルムの端面からの粘着剤のはみ出しや、切断加工時の切断刃への粘着剤の移着による汚染等が生じ、加工性に劣る傾向がある。架橋剤の使用量を増大させると、粘着剤の凝集力が増大するため、加工性が向上する。また、架橋剤の使用量の増加に伴って、粘着剤のゲル分率が増大し、粘着剤を光硬化する前の状態において、被着体に対する接着力が小さいため、補強フィルムを被着体から容易にはく離できる。一方、架橋剤の使用量の増大に伴って、粘着剤を光硬化しても被着体に対する接着力が上昇し難く、被着体に対する接着力が不足する場合がある。
これらを踏まえて、粘着剤の加工性、光硬化前の粘着剤の低接着力化(補強フィルムのはく離容易性)、および光硬化後の接着力の増大の観点から、架橋剤の使用量を設定すればよい。架橋剤の使用量を大きくすれば、粘着剤の加工性および光硬化前の粘着剤の低接着力化に有利であり、架橋剤の使用量を小さくすれば、光硬化後の接着力の増大に有利である。これらの要求特性を同時に満足する観点から、架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.4~1.3重量部が好ましく、0.5~1重量部がより好ましい。
架橋構造の形成を促進するために架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、有機金属錯体(キレート)、金属とアルコキシ基との化合物、および金属とアシルオキシ基との化合物等の有機金属化合物;ならびに第三級アミン等が挙げられる。特に、常温の溶液状態での架橋反応の進行を抑制して粘着剤組成物のポットライフを確保する観点から、有機金属化合物が好ましい。有機金属化合物の金属としては、鉄、錫、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛、チタン、鉛、コバルト、等が挙げられる。架橋触媒の使用量は、一般には、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して0.5重量部以下である。
(光硬化剤)
粘着剤層2を構成する粘着剤組成物は、ベースポリマーに加えて、光硬化剤として、1分子中に2個以上の光重合性官能基を有する化合物を含有する。光硬化剤を含有する粘着剤組成物は光硬化性を有し、被着体との貼り合わせ後に光硬化を行うと、被着体との接着力が向上する。
光重合性官能基としては、光ラジカル反応による重合性を有するものが好ましく、光硬化剤としては1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく、アクリル系ベースポリマーとの相溶性が高いことから、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明においては、光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートと、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレートとを併用する。すなわち、粘着剤層2を構成する光硬化性組成物は、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート、およびウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレートを含む。以下では、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレートを「ウレタン(メタ)アクリレート」と記載する。また、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートを、単に「多官能(メタ)アクリレート」と記載する場合がある。
(多官能(メタ)アクリレート)
ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレンオキサイド鎖の両端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等のポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートは、アルキレンオキサイド変性されたポリオールと(メタ)アクリル酸のエステルであってもよい。アルキレンオキサイド変性されたポリオールと(メタ)アクリル酸のエステルとしては、ビスフェノールAアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド変性ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記の中でも、アクリル系ベースポリマーと適度の相溶性を示すことから、多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレンオキサイド鎖の両端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、およびアルキレンオキサイド変性されたポリオールと(メタ)アクリル酸のエステルが好ましい。アルキレンオキサイドとしては、(ポリ)エチレンオキサイドまたは(ポリ)プロピレンオキサイドが好ましく、アルキレンオキサイドの鎖長(繰り返し単位数:n)は、1~15程度が好ましい。
アクリル系ベースポリマーとの相溶性の観点から、光硬化剤としての多官能(メタ)アクリレートの分子量は、1500以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましく、400以下が特に好ましい。ベースポリマーとの相溶性と光硬化後の接着力向上とを両立する観点から、多官能(メタ)アクリレートの官能基当量(g/eq)は500以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下がさらに好ましく、200以下が特に好ましく、180以下、170以下または160以下であってもよい。一方、多官能(メタ)アクリレートの官能基当量が過度に小さいと、光硬化後の粘着剤層の架橋点密度が高くなり、接着性が低下する場合がある。そのため、光硬化剤の官能基当量は80以上が好ましく、100以上がより好ましく、120以上がさらに好ましく、130以上、140以上または150以上であってもよい。
光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートを2種以上併用してもよい。例えば、アクリル系ベースポリマーに対する相溶性が相対的に低い多官能(メタ)アクリレートと、アクリル系ベースポリマーに対する相溶性が相対的に高い多官能(メタ)アクリレートとを併用することにより、光硬化前は被着体に対する接着力がより小さくはく離が容易であり、光硬化後は被着体に対する接着力がより大きくはく離し難い補強フィルムが得られる場合がある。
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に、1個以上のウレタン結合と、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、好ましくは1分子中に2個以上のウレタン結合を含む。
2個以上のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物との反応により得られ、ポリイソシアネートのイソシアネート基と(メタ)アクリル化合物のヒドロキシ基が結合して、ウレタン結合を形成する。
ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートのいずれでもよい。ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましい。
芳香族系ポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソソアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)が特に好ましい。トリレンジイソシアネートは、2,4-トリレンジイソソアネート、および2,6-トリレンジイソシアネートのいずれでもよく、両者の混合物でもよい。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が特に好ましい。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシへキシル、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1個のヒドロキシ基と1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート等の1個のヒドロキシ基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物としては、1個のヒドロキシ基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール骨格を有する化合物が特に好ましい。
ジイソシアネートと、1分子中に1個のヒドロキシ基および2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に2個のウレタン結合と4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の数は、6個以上または8個以上であってもよく、12個以下または10個以下であってもよい。
上記のウレタン(メタ)アクリレートは、共栄社化学、新中村化学、根上工業、日本合成化学、ダイセル・オルネクス、昭和電工マテリアルズ等から市販されているものを用いてもよい。
初期接着力の低下、粘着剤のはみ出し抑制(加工性向上)、および光硬化後の高接着力の3つの特性を同時に満足させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートの分子量は、500~1500が好ましく、600~1300がより好ましく、700~1100がより好ましい。同様の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の官能基当量(g/eq)は、80~150が好ましく、100~135がより好ましく、120~130であってもよい。
(光硬化剤の含有量)
粘着剤組成物における光硬化剤の含有量(ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートの合計)は、ベースポリマー100重量部に対して、6重量部以上が好ましく、8重量部以上がさらに好ましく、10重量部以上がさらに好ましく、12重量部以上または15重量部以上であってもよい。光硬化剤の配合量を上記範囲とすることにより、光硬化前は被着体からのはく離が容易であり、光硬化により被着体と強固に接着可能な補強フィルムが得られる。
光硬化剤の量が多いほど、光硬化前の粘着剤と被着体との接着力が小さい傾向があり、はく離性に優れる。一方、光硬化剤の量が過度に多い場合は、粘着剤の凝集力が不足し、加工性低下の原因となる。また、凝集力不足を補うために架橋剤の使用量を多くすると、光硬化による接着力の上昇が不十分となる傾向がある。そのため、光硬化剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、40重量部以下がより好ましく、35重量部以下がさらに好ましく、30重量部以下または25重量部以下であってもよい。
上記の様に、架橋剤の使用量および光硬化剤の使用量を調整することにより、加工性、光硬化前の接着力、および光硬化後の接着力を調整できる。しかし、光硬化剤としてウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートのみを用いる場合は、これら3つの要求特性を同時に満足することは困難である。これに対して、光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとを併用することにより、これらの3つの特性を同時に満足するように、粘着剤の組成を調整することが可能となる。
上記の様に、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートの量を増大させると、粘着剤の凝集力が低下して加工性が悪化する場合がある。ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートの量を増大させる代わりに、ウレタン(メタ)アクリレートを追加すると、粘着剤の加工性および光硬化前の低接着性(はく離容易性)を保持したまま、光硬化後の接着力を増大させることが可能である。そのため、光硬化剤としてウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートのみを含む系では達成困難な複数の要求特性を同時に満足することが可能となる。
特に、アクリル系ベースポリマーが、モノマー成分としてのカルボキシ基含有モノマーに由来するカルボキシ基を有する場合に、上記の複数の特性を同時に満足する組成が得られやすい。1つの可能性として、ベースポリマーのカルボキシ基が、ウレタン(メタ)アクリレートのウレタン結合部分と水素結合を形成するため、ウレタン(メタ)アクリレートは粘着剤層のバルク部分に取り込まれやすく、これに伴ってウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートが粘着剤層の表面(接着界面)近傍に偏在し、光硬化剤の量が少ない場合でもWBLが形成されやすく、初期接着力が低減することが考えられる。また、ベースポリマーのカルボキシ基が、ウレタン(メタ)アクリレートのウレタン結合部分と水素結合を形成すること、およびこれに伴って光硬化剤の量が低減されることにより、粘着剤の凝集性が高められるため、粘着剤の流動が抑制され、加工性の向上に寄与していると考えられる。すなわち、ウレタン(メタ)アクリレートは、光硬化前は初期接着力の低減および凝集力の増大に寄与するとともに、多官能(メタ)アクリレートと共に光硬化反応に関与するため、光硬化後の粘着剤の接着力上昇にも寄与していると考えられる。
上記を実現する観点から、粘着剤組成物におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、1.5重量部以上がさらに好ましく、2重量部以上または2.5重量部以上であってもよい。
一方、ウレタン(メタ)アクリレートは、一般には、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートに比べて、アクリル系ベースポリマーとの相溶性が小さいため、水素結合の形成等による凝集力向上に寄与する範囲を超えてウレタン(メタ)アクリレートを使用すると、粘着剤の凝集を阻害する要因にもなり得る。ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、15重量部以下が好ましく、13重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましく、8重量部以下、6重量部以下または5重量部以下であってもよい。
上記の通り、粘着剤組成物が光硬化剤としてウレタン(メタ)アクリレートを含むことにより、各特性を満足できる。しかし、光硬化剤がウレタン(メタ)アクリレートのみである場合は、光硬化を行っても被着体との接着力がほとんど上昇しない。
粘着剤層2を構成する組成物が、光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートと、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレートとを併用することにより、加工性を向上し、かつ粘着剤を光硬化する前は被着体に対する接着力が低く、被着体からのはく離が容易であり、粘着剤を光硬化すると、被着体に対する接着力が大幅に上昇し、被着体に対して補強フィルムが強固に接着する。
光硬化前および光硬化後の粘着剤層と被着体との接着性を適切な範囲に調整する観点から、粘着剤組成物におけるウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートの含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、5~40重量部が好ましく、10~35重量部がより好ましく、15~30重量部がさらに好ましい。
ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートの含有量が小さい場合は、光硬化による接着力の増加率が小さい傾向があるが、架橋剤の使用量を低減させることにより接着力の増加率が上昇する。一方、多官能(メタ)アクリレートの含有量が小きい場合は加工性が低下する傾向があるが、架橋剤の使用量を増加させることにより加工性を改善できる。すなわち、ウレタン(メタ)アクリレートを含む系では、多官能(メタ)アクリレートの量および架橋剤の量を調整することにより、加工性、光硬化前の接着力、および光硬化後の接着力の3つの特性全てを満足する補強フィルムが作製可能である。
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、活性光線の照射により活性種を発生し、光硬化剤の硬化反応を促進する。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)を用いることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、波長450nmよりも短波長の可視光または紫外線の照射によりラジカルを生成するものが好ましく、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体等が挙げられる。光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
粘着剤層2における光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.02~3重量部がより好ましく、0.03~2重量部がさらに好ましい。粘着剤層2における光重合開始剤の含有量は、光硬化剤100重量部に対して、0.02~20重量部が好ましく、0.05~10重量部がより好ましく、0.1~7重量部がさらに好ましい。
(オリゴマー)
粘着剤組成物は、ベースポリマーに加えてオリゴマーを含んでいてもよい。例えば、粘着剤組成物は、アクリル系ベースポリマーに加えてアクリル系オリゴマーを含んでいてもよい。オリゴマーとしては、重量平均分子量が1000~30000程度のものが用いられる。アクリル系オリゴマーは、主たる構成モノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する。
アクリル系オリゴマーは、接着力向上に寄与し得る。前述のように、粘着剤組成物が光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートと、ウレタン(メタ)アクリレートを含む場合、光硬化前の粘着剤層では、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートが粘着剤層の表面近傍に偏在してWBLが形成されやすく、初期接着力の支配要因となるため、アクリル系オリゴマーの有無は初期接着力には大きく影響しない。一方、光硬化後の粘着剤層においては、低分子量のアクリル系オリゴマーが可塑剤的に作用するため、粘着剤の濡れ広がり性向上等により、接着力が高くなる傾向がある。
光硬化後の粘着剤層2の接着力を高める観点から、アクリル系オリゴマーは、アクリル系ベースポリマーとの相溶性が高いものが好まし。相溶性の観点から、アクリル系オリゴマーは、アクリル系ベースポリマーと組成の差が小さく、ガラス転移温度の差が小さいことが好ましい。アクリル系オリゴマーのガラス転移温度とアクリル系ベースポリマーのガラス転移温度との差は、±100℃以内が好ましく、±50℃以内がより好ましく、±30℃以内または±20℃以内であってもよい。アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は、30℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましく、-20℃以下、-30℃以下、―40℃以下または-50℃以下であってもよい。アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は、一般に-100℃以上であり、-80℃以上または-70℃以上であってもよい。アクリル系オリゴマーは、アクリル系ベースポリマーと同様に架橋可能な官能基を含んでいてもよい。
粘着剤組成物におけるオリゴマーの含有量は特に限定されない。粘着剤組成物がアクリル系ベースポリマーに加えてアクリル系オリゴマーを含有する場合、光硬化前の粘着剤層の特性(初期接着力、後述のX/Yの値等)を大きく変化させることなく、光硬化後の粘着剤層の接着力を高める観点から、ベースポリマー100重量部に対するオリゴマーの量は、0.1~20重量部が好ましく、0.3~15重量部がより好ましく、0.5~10重量部、0.8~7重量部または1~5重量部であってもよい。
(その他の添加剤)
上記例示の各成分の他、粘着剤層中は、シランカップリング剤、粘着性付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で含有していてもよい。
[補強フィルムの作製]
フィルム基材1上に光硬化性の粘着剤層2を積層することにより、補強フィルムが得られる。粘着剤層2は、フィルム基材1上に直接形成してもよく、他の基材上でシート状に形成された粘着剤層をフィルム基材1上に転写してもよい。
上記の粘着剤組成物を、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコート等により、基材上に塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥除去することにより粘着剤層が形成される。乾燥方法としては、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃、より好ましくは50℃~180℃、さらに好ましくは70℃~170℃である。乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、より好ましくは5秒~15分、さらに好ましくは10秒~10分である。
粘着剤層2の厚みは、例えば、1~300μm程度である。粘着剤層2の厚みが大きいほど被着体との接着性が向上する傾向がある。一方、粘着剤層2の厚みが過度に大きい場合は、光硬化前の流動性が高く、ハンドリングが困難となる場合がある。そのため、粘着剤層2の厚みは3~100μmが好ましく、5~50μmがより好ましく、6~40μmがさらに好ましく、8~30μmが特に好ましい。薄型化の観点から、粘着剤層2の厚みは、25μm以下、20μm以下または18μm以下であってもよい。
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合は、溶媒の乾燥と同時、または溶媒の乾燥後に、加熱またはエージングにより架橋を進行させることが好ましい。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類によって適宜設定され、通常、20℃~160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。溶媒を乾燥除去するための加熱が、架橋のための加熱を兼ねていてもよい。
架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入後も、光硬化剤は未反応の状態を維持している。そのため、高分子量成分と光硬化剤とを含む光硬化性の粘着剤層2が形成される。フィルム基材1上に粘着剤層2を形成する場合は、粘着剤層2の保護等を目的として、粘着剤層2上にはく離ライナー5を付設することが好ましい。粘着剤層2上にはく離ライナー5を付設後に架橋を行ってもよい。
他の基材上に粘着剤層2を形成する場合は、溶媒を乾燥後に、フィルム基材1上に粘着剤層2を転写することにより補強フィルムが得られる。粘着剤層の形成に用いた基材を、そのままはく離ライナー5としてもよい。
はく離ライナー5としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが好ましく用いられる。はく離ライナーの厚みは、通常3~200μm、好ましくは10~100μm程度である。はく離ライナー5の粘着剤層2との接触面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、もしくは脂肪酸アミド系等の離型剤、またなシリカ粉等による離型処理が施されていることが好ましい。はく離ライナー5の表面が離型処理されていることにより、粘着剤層2とはく離ライナー5との界面ではく離が生じ、フィルム基材1上に粘着剤層2が固着した状態が維持される。はく離ライナー5は、離型処理面および非処理面のいずれか一方または両方に帯電防止処理が施されていてもよい。はく離ライナー5に帯電防止処理が施されていることにより、粘着剤層からはく離ライナーをはく離した際の帯電を抑制できる。
[補強フィルムの特性および補強フィルムの使用]
本発明の補強フィルムは、デバイスまたはデバイス構成部品に貼り合わせて用いられる。補強フィルム10は、粘着剤層2がフィルム基材1と固着されており、被着体との貼り合わせ後光硬化前は、被着体への接着力が小さい。そのため、光硬化前は被着体からの補強フィルムのはく離が容易である。
補強フィルムが貼り合わせられる被着体は特に限定されず、各種の電子デバイス、光学デバイスおよびその構成部品等が挙げられる。補強フィルムを貼り合わせる前に、清浄化等を目的として、被着体の表面の活性化処理を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、グロー放電処理等が挙げられる。
補強フィルムを貼り合わせることにより、適度な剛性が付与されるため、ハンドリング性向上や破損防止効果が期待される。デバイスの製造工程において、仕掛品に補強フィルムが貼り合わせられる場合は、製品サイズに切断される前の大判の仕掛品に補強フィルムを貼り合わせてもよい。ロールトゥーロールプロセスにより製造されるデバイスのマザーロールに、補強フィルムをロールトゥーロールで貼り合わせてもよい。
補強フィルムは被着体の全面に貼り合わせられてもよく、補強を必要とする部分(補強対象領域)にのみ選択的に貼り合わせられてもよい。また、補強を必要とする部分(補強対象領域)と補強を必要としない領域(非補強対象領域)の全体に補強フィルムを貼り合わせた後、非補強対象領域に貼り合わせられた補強フィルムを切断除去してもよい。
例えば、デバイスまたはその仕掛品のマザーロールに、補強フィルムをロールトゥーロールで貼り合わせた後、補強フィルムが貼り合わせられたマザーロールを個別の製品に切断分離し、ハーフカットにより補強フィルムのみを切断して、非補強対象領域の補強フィルムをはく離することにより、補強対象領域に補強フィルムが貼り合わせられたデバイスが得られる。
切断方法は特に限定されず、ロータリーカッター、押し込み刃(例えばトムソン刃)、レーザーカッター等の適宜の切断方式を採用できる。加工性が改善された補強フィルムでは、端面からの粘着剤のはみ出しが少なく、切断刃等への粘着剤の付着等の不具合が生じ難いため、工程の歩留まりを改善できる。
優れた加工性を実現する観点から、補強フィルムは、粘着剤層の押込弾性率Xを粘着剤層の表面力Yで割った値X/Yが、30以上であることが好ましい。X/Yは、33以上がより好ましく、35以上がさらに好ましく、37以上、39以上または40以上であってもよい。加工性の観点において、X/Yの上限は特に限定されない、一方、X/Yが過度に大きい場合は、粘着剤が硬く(粘性が低く)、被着体に対する接着力が不足する場合があるため、X/Yは、70以下が好ましく、65以下がより好ましく、60以下であってもよい。
押込弾性率Xは、粘着剤層に、押し込み速度:5μm/s、押し込み深さ5μmの条件で圧子を押し込むナノインデンテーション測定により得られる荷重-変位曲線における最大荷重Pmaxを、圧子の接触投影面積Aで割った値である。押込硬度は、粘着剤の硬さを表す指標であり、押込硬度が大きいほど、粘着剤の凝集力が高く、粘着剤の流動が抑制されるとともに、切断時のせん断力等による粘着剤の「ちぎれ」が抑制される傾向がある。そのため、押込硬度Xが大きいほど加工性に優れる傾向がある。
表面力Yは、中央を湾曲させてU字状としたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの湾曲部分を、接触面積が所定値となるように粘着剤層に接触させた後、PETフィルムを引き上げて粘着剤層からはく離し、その際の試験力(ロードセルにかかる負荷)から算出される。PETフィルムと粘着剤層の接触面積は0.002mとし、PETフィルムの移動速度は4200mm/minとする。PETフィルムを引き上げて粘着剤層からPETフィルムをはく離した際の最大荷重を、接触面積(0.002m)で割った値が表面力Yである。
表面力Yは、粘着剤の投錨力・タック性を表す指標であり、表面力Yが大きいほど、タック性が強く、粘着剤に接触した物質に粘着剤がくっつきやすい傾向がある。逆に表面力Yが小さい場合は、タック性が小さく、粘着剤に物質が接触してもくっつきにくい。そのため、切断加工の際に切断刃が粘着剤層に接触しても、表面力Yが小さければ、切断刃に粘着剤が付着し難く、加工性に優れる傾向がある。
押込弾性率Xを表面力Yで割った値X/Yが大きいほど、凝集力が高く粘着剤のちぎれが抑制され、タック性が低く粘着剤の付着が抑制される傾向がある。そのため、X/Yが大きいほど粘着剤の加工性が高い。
粘着剤組成物における架橋剤の量が大きく光硬化剤の量が小さいほど、X/Yが大きく、加工性に優れる傾向がある。粘着剤組成物が光硬化剤としてウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートのみを含む場合は、X/Yが30以上となるように架橋剤および光硬化剤の量を調整すると、光硬化後の接着力が十分に大きくならず、光硬化性の粘着剤を備える補強フィルムとしての要求特性を満足することが困難である。これに対して、光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレーとを併用することにより、X/Yを30以上として加工性を高めつつ、初期接着力の低下と光硬化後の高接着力とを両立可能である。
なお、粘着剤組成物が光硬化剤としてウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートおよびウレタン(メタ)アクリレートを含む場合でも、X/Yが30未満となる場合がある。この場合は、架橋剤の使用量の増大、および/または多官能(メタ)アクリレートの量の減少により、初期接着力の低下と光硬化後の高接着力とを両立しながら、X/Yを高めることが可能である。
粘着剤が光硬化前であれば、補強フィルムは被着体表面に仮着された状態であり、接着力が小さいため、被着体の表面から補強フィルムを容易にはく離除去できる。被着体からのはく離を容易とする観点から、光硬化前の粘着剤層2と被着体との接着力(初期接着力)は、0.3N/25mm以下が好ましく、0.2N/25mm以下がより好ましく、0.15N/25mm以下または0.1N/25mm以下であってもよい。保管やハンドリングの際の補強フィルムのはく離を防止する観点から、初期接着力は、0.005N/25mm以上が好ましく、0.01N/25mm以上がより好ましい。接着力は、ポリイミドフィルムを被着体として、引張速度300mm/分、はく離角度180°のピール試験により求められる。特に断りがない限り、接着力は25℃での測定値である。初期接着力は、貼り合わせ後、25℃で30分静置した試料を用いて測定する。
被着体に補強フィルムを貼り合わせた後、粘着剤層2に活性光線を照射することにより、粘着剤層を光硬化させる。活性光線としては、紫外線が好ましい。活性光線の照射強度や照射時間は、粘着剤層2の組成や厚み等に応じて適宜設定すればよい。粘着剤層2への活性光線の照射は、フィルム基材1側および被着体側のいずれの面から実施してもよく、両方の面から活性光線の照射を行ってもよい。
光硬化に伴って、粘着剤層の被着体に対する接着力が上昇する。デバイスの実用時の接着信頼性の観点から、光硬化後の粘着剤層2と被着体との接着力は、3N/25mm以上が好ましく、4N/25mm以上がより好ましく、5N/25mm以上がさらに好ましく、6N/25mm以上であってもよい。補強フィルムは、光硬化後の粘着剤層が、ポリイミドフィルムに対して上記範囲の接着力を有することが好ましい。光硬化後の粘着剤層2と被着体との接着力は、光硬化前の粘着剤層2と被着体との接着力の10倍以上、20倍以上または30倍以上であってもよい。
補強フィルムの粘着剤は、X/Yが30以上であり、かつ光硬化前の接着力(初期接着力)および光硬化後の接着力が上記範囲となるように、架橋剤および光硬化剤の量を調整すればよい。その最適値は、必ずしも一概に規定できるものではないが、一例として、以下の指標に基づいて組成を調整すれば、X/Yが30以上であり、かつ初期接着力の低下と光硬化後の高接着力とを両立することが可能である。
光硬化剤としてのウレタン結合を含まない多官能(メタ)アクリレートの含有量が、ベースポリマー100重量部に対して5~10重量部の場合、架橋剤の使用量は、0.3~0.9重量部が好ましく、0.4~0.7重量部がより好ましい。ウレタン結合を含まない多官能(メタ)アクリレートの含有量が、ベースポリマー100重量部に対して10重量部を超え25重量部以下の場合、架橋剤の使用量は、0.4~1.1重量部が好ましく、0.5~1重量部がより好ましい。ウレタン結合を含まない多官能(メタ)アクリレートの含有量が、ベースポリマー100重量部に対して25重量部を超え35重量部以下の場合、架橋剤の使用量は、0.7~1.3重量部が好ましく、0.8~1.2重量部がより好ましい。なお、これらの範囲は、粘着剤の組成を調整する際の目安であり、上述の各知見を踏まえて、各成分の配合量を調整すればよい。
本発明の補強フィルムは、粘着剤層2が光硬化性であり、硬化のタイミングを任意に設定可能である。補強フィルムの加工やリワーク等の処理は、被着体に補強フィルムを貼設後、粘着剤を光硬化するまでの間の任意のタイミングで実施可能である。
補強フィルムを貼り合わせることにより、被着体に適度な剛性が付与されるとともに、応力が緩和・分散されるため、製造工程において生じ得る種々の不具合を抑制し、生産効率を向上し、歩留まりを改善できる。上記の通り、粘着剤層が、光硬化として、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートと、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレートの両方を含むことにより、光硬化前後の接着力を適切な範囲に調整しつつ、補強フィルムの加工性を良好とすることが可能であり、工程の歩留まりを改善できる。
粘着剤層を光硬化後は、被着体に対して高い接着力を示し、補強フィルムがデバイス表面からはく離し難く、接着信頼性に優れるとともに、高い耐衝撃性が付与される。そのため、完成後のデバイスの使用において、デバイスの落下、デバイス上への重量物の載置、デバイスへの飛来物の衝突等により、不意に外力が負荷された場合でも、補強フィルムが貼り合わせられていることにより、デバイスの破損を防止できる。
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<ベースポリマーの調製>
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)95重量部およびアクリル酸(AA)5重量部、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、ならびに溶媒として酢酸エチル233重量部を投入し、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、60℃に加熱し、7時間反応させて、重量平均分子量60万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。
<粘着剤組成物の調製>
アクリル系ポリマーの溶液に、架橋剤として4官能のエポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製「テトラッドC」)0.5重量部、光硬化剤として、新中村化学工業製「NKエステル A200」5重量部、および共栄社化学製「UA-306T」3重量部、ならびに光重合開始剤(IGM Resins製「Omnirad 651」)0.3重量部を添加して、粘着剤組成物を調製した。
<粘着剤溶液の塗布および架橋>
表面処理がされていない厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材(三菱ケミカル製「T100-75S」)上に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが13μmとなるように、ファウンテンロールを用いて塗布した。130℃で1分間乾燥して溶媒を除去後、粘着剤の塗布面に、はく離ライナー(表面がシリコーン離型処理された厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面を貼り合わせた。その後、25℃の雰囲気で4日間のエージング処理を行い、架橋を進行させ、PETフィルム基材上に粘着シートが固着積層され、その上にはく離ライナーが仮着された補強フィルムを得た。
[実施例2~18、比較例1~5]
粘着剤組成物の配合(架橋剤の量、光硬化剤の種類および量)を表1に示す様に変更した。それ以外は実施例1と同様にして、補強フィルムを作製した。
表1における光硬化剤の詳細は下記の通りである。
A200:ポリエチレングリコール#200(n=4)ジアクリレート(新中村化学工業製「NKエステル A200」、官能基当量:154g/eq)
UA306T:ペンタエリスリトールトリアクリレート-トリレンジイソシアネート付加物(共栄社化学製「UA-306T」、官能基当量:128g/eq)
DPH:ジペンタエリスリトールポリアクリレート(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物;新中村化学工業製「NKエステル A-DPH」、官能基当量:97g/eq)
[実施例21~26]
アクリル系ポリマーの溶液に、架橋剤、光硬化剤および光重合開始剤に加えて、液状のアクリル系オリゴマー(東亞合成製「ARUFON UP-1190」、重量平均分子量:1700、ガラス転移温度:-50℃)を添加して、表1に示す組成の粘着剤組成物を調製した。それ以外は実施例1と同様にして、補強フィルムを作製した。
[評価]
<押込弾性率>
実施例および比較例の補強フィルムから、はく離ライナーをはく離除去し、ナノインデンテーションシステム(Hysitron製「TI950 TriboIndenter」)のステージ上に固定し、下記の条件により粘着剤層に押し込み深さ5μmで圧子を押し込み、荷重-変位曲線を測定した。
圧子:Conical-spherical圧子(先端の曲率半径:10μm)
測定温度:室温(25℃)
試験方法:単一押し込み測定
圧子アプローチ速度:5μm/s
押し込み速度:5μm/s
引き抜き速度:5μm/s
得られた荷重-変位曲線における最大荷重Pmaxを、圧子の接触投影面積Aで割った値Pmax/Aを、粘着剤層の押込弾性率Xとした。
<表面力>
幅50mm×長さ100mmに切り出した補強フィルムのPETフィルム基材側の面を、両面接着テープ(日東電工製「No.531」)を介して測定用治具に貼り合わせた後、はく離ライナーをはく離除去して、粘着剤層を表面に露出させた。幅50mm×長さ100mmに切り出した表面処理がされていない厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル製「T100-75S」)を、長さ方向の中央部で湾曲させてU字状とし、長さ方向の両端を、オートグラフ(島津製作所製「AG―X plus」)の測定用チャックで保持した。測定用チャックを下方に移動させて、PETフィルムのU字に湾曲させた部分を粘着剤層に当接させた後、PETフィルムと粘着剤層の接触面積が0.002mとなるまでさらに測定用チャックを下降させた。その後、移動速度4200mm/minで測定用チャックを引き上げて、試験を実施した。試験中にロードセルにかかった最大負荷を、接触面積(0.002m)で割った値を、表面力Yとして算出した。
<粘着剤のはみ出し>
幅50mm×長さ100mmに切り出した補強フィルムを、PETフィルム基材側の面が上となるように光学顕微鏡(オリンパス製「RX51」)のガラスステージ上に載置し、試料の4辺の全長にわたって観察し、補強フィルムの端面(PETフィルム基材の端面)からの粘着剤のはみ出し量を測定した。はみ出し量の最大値が、10μm未満であったものを「A」、10μm以上20μm未満であったものを「B」、20μm以上であったものを「C」とした。
<ポリイミドフィルムに対する接着力>
厚み25μmのポリイミドフィルム(宇部興産製「ユーピレックスS」)を、両面接着テープ(日東電工製「No.531」)を介してガラス板に貼付し、測定用ポリイミドフィルム基板を得た。幅25mm×長さ100mmに切り出した補強フィルムの表面から、はく離ライナーをはく離除去し、測定用ポリイミドフィルム基板にハンドローラを用いて貼り合わせた。
この試料を25℃で30分静置した後、補強フィルムのPETフィルム基材の端部をチャックで保持して、引張速度300mm/分で、180°ピール試験を行い、ピール強度(光硬化前の接着力)を測定した。
測定用ポリイミドフィルム基板に補強フィルムを貼り合わせてから30分経過後に、補強フィルム側(PETフィルム基材側)から、波長365nmのLED光源を用いて積算光量4000mJ/cmの紫外線を照射して粘着剤層を光硬化した。この試験サンプルを用い、上記と同様に、180°ピール試験を行い、光硬化後の接着力を測定した。
得られた結果から、光硬化後と光硬化前の接着力の比(光硬化に伴う粘着力の増加率)を算出した。
各実施例および比較例の補強フィルムの粘着剤の組成(架橋剤の量、ならびに光硬化剤の種類および量)、および評価結果を表1に示す。
Figure 2024003755000002
光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能アクリレート(A200)のみを含む比較例2では、粘着剤を光硬化後のポリイミドフィルムに対する接着力が3N/25mm未満であり、光硬化後の接着性が劣っていた。比較例2よりも、架橋剤の量および多官能アクリレートの量を増加させた比較例3では、比較例2に比べて初期接着力が低く、粘着剤のはみ出しも抑制されていたが、比較例2と同様、光硬化後の接着力が不足していた。
なお、データを示していないが、比較例2に対して多官能アクリレートのみを増量した場合は、光硬化後の接着力は上昇するが、粘着剤の凝集力が低下するために、粘着剤のはみ出し量が増大し、加工性が悪化する。また、比較例2に対して架橋剤のみを増量した場合は、粘着剤のはみ出しが抑制され、初期接着力が低下するが、光硬化後の接着力が比較例2よりもさらに低下する。
光硬化剤としてウレタンアクリレート(UA306T)のみを含む比較例4も、比較例1,2と同様、光硬化後の接着力が不十分であった。
これに対して、光硬化剤として、ウレタン結合を有さない多官能アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートの両方を含む実施例1~18では、初期接着力が低く、光硬化により接着力が大幅に増大しており、さらに粘着剤のはみ出しが抑制されており、加工性に優れることが分かる。
多官能アクリレート(A200)を30重量部含む比較例1では、初期接着力が低く、光硬化により接着力が大幅に増大していたが、粘着剤のはみ出しが多く、加工性に劣っていた。なお、比較例1と、実施例10,16、18との対比から、光硬化剤の種類および量が同等であれば、架橋剤の量が大きいほど、粘着剤のはみ出しが抑制されることが分かる。また、比較例1と、実施例1,3,5,7,9の対比から、架橋剤の種類および量が同等であれば、多官能アクリレートの含有量が小さいほど、粘着剤のはみ出しが抑制されることが分かる。
また、上記の各実施例・比較例では、粘着剤の押込弾性率Xを表面力Yで割った値X/Yが大きいほど、粘着剤のはみ出しが抑制される傾向がみられた。比較例1では、架橋剤の量が少なく、多官能アクリレートの含有量が大きいために、粘着剤の凝集力が低く、その結果、押込弾性率Xが小さいために、X/Yの値が小さく、他の例に比べて粘着剤のはみ出しが大きかったと考えられる。
比較例5は、実施例5のウレタンアクリレート(1分子中のアクリロイル基の数:6)を、6官能アクリレートと5官能アクリレートの混合物であるDPHに置き換えたものに相当する。実施例5と比較例5との対比から、粘着剤のはみ出しを抑制しつつ、光硬化前の低接着性と光硬化後の高接着力とを両立するためには、光硬化剤として、多官能(メタ)アクリレートに加えて、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが重要であることが分かる。
上記の各実施例・比較例の結果から、光硬化剤として、多官能(メタ)アクリレートに加えて、ウレタン(メタ)アクリレートを含み、かつX/Yが大きくなるように、粘着剤組成物における架橋剤および光硬化剤の量を調整することにより、粘着剤のはみ出し抑制(補強フィルムの加工性向上)、初期接着力の低減(光硬化前の軽はく離化)、および光硬化後の高接着力のすべてを満足する補強フィルムが得られることが分かる。
粘着剤組成物が、アクリル系ポリマー100重量部に対して5重量部のアクリル系オリゴマーを含む実施例21では、アクリル系オリゴマーを含まない実施例7と同等の初期接着力を有し、実施例7に比べて光硬化後の接着力が大きくなっていた。実施例11と実施例22との対比、実施例12と実施例23および実施例24との対比、実施例13と実施例25との鯛に、ならびに実施例15と実施例26との対比においても同様の傾向がみられた。
これらの結果から、粘着剤組成物がアクリル系オリゴマーを含むことにより、X/Yの値を大きく変化させることなく、粘着剤のはみ出しを抑制し、初期接着力が低く、さらに光硬化後の接着力がさらに向上した補強フィルムが得られることが分かる。
1 フィルム基材
2 粘着剤層
10 補強フィルム
5 はく離ライナー
20 被着体

Claims (17)

  1. フィルム基材と、前記フィルム基材の一主面上に固着積層された粘着剤層とを備え、
    前記粘着剤層は、アクリル系ベースポリマー、2以上の光重合性官能基を有する光硬化剤、および光重合開始剤を含む光硬化性組成物からなり、
    前記アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分として、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーからなる群から選択される1以上を含み、前記アクリル系ベースポリマーには、前記ヒドロキシ基および/または前記ヒドロキシ基に結合した架橋剤による架橋構造が導入されており、
    前記光硬化剤は、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートを含み、
    前記粘着剤層の押込弾性率Xを前記粘着剤層の表面力Yで割った値X/Yが、30以上である、
    補強フィルム:
    ただし、
    押込弾性率Xは、粘着剤層に、押し込み速度:5μm/s、押し込み深さ5μmで圧子を押し込むナノインデンテーション測定により得られる荷重-変位曲線における最大荷重Pmaxを圧子の接触投影面積Aで割った値であり、
    表面力Yは、中央を湾曲させたポリエチレンテレフタレートフィルムの湾曲部分を、粘着剤層に接触面積が0.002mとなるように接触させた状態で、移動速度4200mm/minでポリエチレンテレフタレートフィルムを引き上げた際の最大荷重を接触面積で割った値である。
  2. 前記粘着剤層の光硬化前のポリイミドフィルムに対する接着力が0.3N/25mm以下である、請求項1に記載の補強フィルム。
  3. 前記粘着剤層の光硬化後のポリイミドフィルムに対する接着力が3N/25mm以上である、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  4. 前記粘着剤層の光硬化後のポリイミドフィルムに対する接着力が、前記粘着剤層の光硬化前のポリイミドフィルムに対する接着力の10倍以上である、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  5. 前記ウレタン(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基の官能基当量が80~150g/eqである、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  6. 前記ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  7. 前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートのイソシアネート基と、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物のヒドロキシ基とが、ウレタン結合を形成した化合物である、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  8. 前記ジイソシアネートが、トリレンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項7に記載の補強フィルム。
  9. 前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物が、ペンタエリスリトール骨格を有する、請求項7に記載の補強フィルム。
  10. 前記アクリル系ベースポリマーが、モノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを含む、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  11. 前記アクリル系ベースポリマーは、前記カルボキシ基含有モノマーに由来するカルボキシ基に、エポキシ系架橋剤が結合することにより、架橋構造が形成されている、請求項10に記載の補強フィルム。
  12. 前記光硬化性組成物は、前記アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、ウレタン(メタ)アクリレートを、0.5~15重量部含む、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  13. 前記光硬化性組成物は、前記アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートを、5~40重量部含む、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  14. 前記アクリル系ベースポリマーは、ポリマー100重量部に対して、0.4~1.3重量部の架橋剤を用いて架橋構造が導入されている、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  15. 前記光硬化性組成物は、さらに重量平均分子量が10000~30000のアクリル系オリゴマーを含む、請求項1または2に記載の補強フィルム。
  16. 表面に補強フィルムが貼り合わせられたデバイスの製造方法であって、
    請求項1または2に記載の補強フィルムの前記粘着剤層を被着体の表面に仮着した後、
    前記粘着剤層に活性光線を照射して、前記粘着剤層を光硬化することにより、前記補強フィルムと前記被着体との接着力を上昇させる、デバイスの製造方法。
  17. 被着体の表面に補強フィルムを貼り合わせる補強方法であって、
    被着体の表面に、請求項1または2に記載の補強フィルムの前記粘着剤層を仮着し、
    前記粘着剤層に活性光線を照射して、前記粘着剤層を光硬化することにより、前記補強フィルムと前記被着体との接着力を上昇させる、補強方法。

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