本願の実施例の技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、本願の例又は実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本願を他の類似するシナリオに適用することができる。特に言語環境から明らかではないか又は明記されていない限り、図面において同じ符号は同じ構造又は操作を示す。図面は、例示及び説明のためのものに過ぎず、本願の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。図面は、原寸に比例して描かれるものではないことを理解されたい。
本願の説明を容易にするために、「中心」、「上表面」、「下表面」、「上」、「下」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「軸方向」、「径方向」、「外周」、「外部」などの用語によって示される位置関係は、図面に示される位置関係に基づくものであり、言及される装置、アセンブリ又はユニットが特定の位置関係を持たなければならないことを示すものではなく、本願を限定するものであると理解すべきではないことを理解されたい。
本明細書で使用される「システム」、「装置」、「ユニット」及び/又は「モジュール」は、レベルの異なる様々なアセンブリ、素子、部材、部分又は組立体を区別するための方法であることを理解されたい。しかしながら、他の用語が同じ目的を達成することができれば、上記用語の代わりに他の表現を用いることができる。
本願及び特許請求の範囲で使用されるように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「1つ」、「1個」、「1種」及び/又は「該」などの用語は、特に単数形を指すものではなく、複数形を含んでもよい。一般的には、用語「含む」及び「含有」は、明確に特定されたステップ及び要素を含むことを提示するものに過ぎず、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列ではなく、方法又は設備は、他のステップ又は要素を含む可能性がある。
本願では、フローチャートを使用して本願の実施例に係るシステムが実行する操作を説明する。先行及び後続の操作が必ずしも順序に従って正確に実行されるとは限らないことを理解されたい。その代わりに、各ステップを逆の順序で、又は同時に処理してもよい。また、他の操作をこれらのプロセスに追加してもよく、これらのプロセスから1つ以上の操作を除去してもよい。
本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置は、基体構造体及び積層構造体を含んでもよい。いくつかの実施例では、基体構造体は、内部に中空部分を有する規則的又は不規則的な立体構造であってもよく、例えば、中空のフレーム構造体であってもよく、矩形フレーム、円形フレーム、正多角形フレームなどの規則的な形状、及び任意の不規則的な形状を含むが、それらに限定されない。積層構造体は、基体構造体の中空部分に位置してもよく、基体構造体の中空部分の上方に少なくとも部分的にサスペンションして設置されてもよい。いくつかの実施例では、積層構造体の少なくとも一部の構造は、基体構造体に物理的に接続される。ここでの「接続」は、積層構造体及び基体構造体をそれぞれ製造した後、積層構造体及び基体構造体を溶接、リベット接続、係止、ボルトなどの方式で固定的に接続し、あるいは、製造中に、物理堆積(例えば、物理的気相堆積)又は化学堆積(例えば、化学的気相堆積)の方式で積層構造体を基体構造体に堆積することとして理解され得る。いくつかの実施例では、積層構造体の少なくとも一部の構造は、基体構造体の上表面又は下表面に固定されてもよく、基体構造体の側壁に固定されてもよい。例えば、積層構造体は、片持ち梁であってもよく、該片持ち梁は、板状構造体であってもよく、一端が基体構造体の上表面、下表面又は基体構造体の中空部分の所在する側壁に接続され、他端が基体構造体に接続又は接触しないことにより、基体構造体の中空部分にサスペンションして設置される。また例えば、積層構造体は、振動膜層(サスペンション膜構造体とも呼ばれる)を含んでもよく、サスペンション膜構造体は、基体構造体に固定的に接続され、積層構造体は、サスペンション膜構造体の上表面又は下表面に設置される。さらに例えば、積層構造体は、質量素子及び1つ以上の支持アームを含んでもよく、質量素子が1つ以上の支持アームにより基体構造体に固定的に接続され、該支持アームの一端が基体構造体に接続され、支持アームの他端が質量素子に接続されることにより、質量素子及び支持アームの一部の領域は、基体構造体の中空部分にサスペンションして設置される。本願で言及される「基体構造体の中空部分に位置する」又は「基体構造体の中空部分にサスペンションして設置される」ことは、基体構造体の中空部分の内部、下方又は上方にサスペンションして設置されることを意味してもよいと理解されるべきである。いくつかの実施例では、積層構造体は、振動ユニット及び音響変換ユニットを含んでもよい。具体的には、基体構造体は、外部の振動信号に基づいて振動することができ、振動ユニットは、基体構造体の振動に応答して変形し、音響変換ユニットは、振動ユニットの変形に基づいて電気信号を発生させる。ここでの振動ユニット及び音響変換ユニットについての説明は、積層構造体の動作原理を容易に説明するためのものに過ぎず、積層構造体の実際の構成及び構造を限定するものではないと理解されるべきである。実際には、振動ユニットは、必要とされなくてもよく、その機能を音響変換ユニットにより実現することも全く可能である。例えば、音響変換ユニットの構造に特定の変更を加えると、音響変換ユニットが基体構造体の振動に直接応答して電気信号を発生させてもよい。
振動ユニットとは、積層構造体における外力又は慣性力により変形しやすい部分であり、振動ユニットは、外力又は慣性力による変形を音響変換ユニットに伝達することができる。いくつかの実施例では、振動ユニットと音響変換ユニットとは、積層されて積層構造体を形成する。音響変換ユニットは、振動ユニットの上層に位置してもよく、振動ユニットの下層に位置してもよい。例えば、積層構造体が片持ち梁構造である場合、振動ユニットは、少なくとも1つの弾性層を含んでもよく、音響変換ユニットは、上から下へ順に設置された第1の電極層、圧電層及び第2の電極層を含んでもよく、弾性層は、第1の電極層又は第2の電極層の表面に位置し、弾性層は、振動中に変形することができ、圧電層は、弾性層の変形に基づいて電気信号を発生させ、第1の電極層及び第2の電極層は、該電気信号を収集することができる。また例えば、振動ユニットは、サスペンション膜構造体であってもよく、サスペンション膜構造体の特定領域の密度を変更するか又はサスペンション膜構造体に孔を開けるか又はサスペンション膜構造体にカウンタウェイト(質量素子とも呼ばれる)を設置するなどの方式で、音響変換ユニットの近くにあるサスペンション膜構造体が外力により容易に変形することにより、音響変換ユニットを駆動して電気信号を発生させる。さらに例えば、振動ユニットは、少なくとも1つの支持アーム及び質量素子を含んでもよく、質量素子は、支持アームにより基体構造体の中空部分にサスペンションして設置され、基体構造体が振動する場合、振動ユニットの支持アーム及び質量素子は、基体構造体に対して相対的に移動し、支持アームが変形して音響変換ユニットに作用して、電気信号を発生させる。
音響変換ユニットとは、積層構造体における、振動ユニットの変形を電気信号に変換する部分である。いくつかの実施例では、音響変換ユニットは、少なくとも2つの電極層(例えば、第1の電極層及び第2の電極層)及び圧電層を含んでもよく、圧電層は、第1の電極層と第2の電極層との間に位置してもよい。圧電層とは、外力を受けるときにその両端面に電圧を発生させることができる構造である。いくつかの実施例では、圧電層は、半導体堆積プロセス(例えば、マグネトロンスパッタリング、MOCVD)により得られた圧電ポリマーフィルムであってもよい。本明細書の実施例では、圧電層は、振動ユニットの変形応力により電圧を発生させることができ、第1の電極層及び第2の電極層は、該電圧(電気信号)を収集することができる。いくつかの実施例では、圧電層の材料は、圧電フィルム材料を含んでもよく、圧電フィルム材料は、堆積プロセス(例えば、マグネトロンスパッタリング堆積プロセス、化学的気相堆積プロセスなど)により製造されたフィルム材料(例えば、AIN、PZTフィルム材料)であってもよい。別のいくつかの実施例では、圧電層の材料は、圧電結晶材料及び圧電セラミック材料を含んでもよい。圧電結晶とは、圧電単結晶である。いくつかの実施例では、圧電結晶材料は、水晶、閃亜鉛鉱、方硼石、電気石、紅亜鉛鉱、GaAs、チタン酸バリウム及びその誘導体結晶、KH2PO4、NaKC4H4O6・4H2O(ロッシェル塩)など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。圧電セラミック材料とは、異なる材料の粉末間の固相反応と焼結により得られた微細結晶粒がランダムに集合して形成された圧電多結晶体であってもよい。いくつかの実施例では、圧電セラミック材料は、チタン酸バリウム(BT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸鉛バリウムリチウム(PBLN)、改質チタン酸鉛、窒化アルミニウム(AIN)、酸化亜鉛(ZnO)、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、圧電層の材料は、圧電ポリマー材料、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などであってもよい。
いくつかの実施例では、基体構造体及び積層構造体は、骨伝導音響伝達装置のハウジング内に位置してもよく、基体構造体は、ハウジングの内壁に固定的に接続され、積層構造体は、基体構造体に載置される。骨伝導音響伝達装置のハウジングが外力を受けて振動する場合(例えば、人が話すときに顔の振動によりハウジングを振動させる)、ハウジングの振動により基体構造体を振動させ、さらに、振動ユニットが変形する場合、音響変換ユニットの圧電層は、振動ユニットの変形応力を受けて電位差(電圧)を発生させ、音響変換ユニットにおけるそれぞれ圧電層の上表面と下表面に位置する少なくとも2つの電極層(例えば、第1の電極層及び第2の電極層)は、該電位差を収集して外部の振動信号を電気信号に変換することができる。単に例示的な説明として、本願の実施例に記載の骨伝導音響伝達装置は、イヤホン(例えば、骨伝導イヤホン又は空気伝導イヤホン)、メガネ、仮想現実装置、ヘルメットなどに適用されてもよく、骨伝導音響伝達装置は、人体の頭部(例えば、顔)、首、耳の近傍及び頭頂などの位置に配置されてもよく、骨伝導音響伝達装置は、人が話すときの骨の振動信号をピックアップして、電気信号に変換することにより、音声を収集することができる。なお、基体構造体は、骨伝導音響伝達装置のハウジングと独立した構造に限定されず、いくつかの実施例では、基体構造体は、骨伝導音響伝達装置のハウジングの一部であってもよい。
骨伝導音響伝達装置は、外部の振動信号を受信してから、積層構造体(音響変換ユニット及び振動ユニットを含む)により振動信号を電気信号に変換し、バックエンド回路により処理した後に電気信号を出力する。骨伝導音響伝達装置が外部の振動信号により動作し、外力の作用周波数がシステムの固有発振周波数と同じであるか又は非常に近いとき、振幅が激しく増大するという現象は、共振と呼ばれ、共振が発生するときの周波数は、「共振周波数」と呼ばれる。骨伝導音響伝達装置は、固有周波数を有し、外部の振動信号の周波数が該固有周波数に近い場合、積層構造体は、大きな振幅を発生させて、大きな電気信号を出力する。したがって、骨伝導音響伝達装置の外部振動に対する応答は、固有周波数の近くに共振ピークが発生すると表現される。したがって、骨伝導音響伝達装置の共振周波数は、実質的には数値的に固有周波数と等しい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の固有周波数とは、積層構造体の固有周波数であってもよい。いくつかの実施例では、積層構造体の固有周波数の範囲は、2.5kHz~4.5kHzである。いくつかの実施例では、人体の骨伝導信号が1kHzより大きくなった後に迅速に減衰するため、骨伝導音響伝達装置の共振周波数(又は、積層構造体の固有周波数)を1kHz~5kHzの音声周波数帯域の範囲に調整することが望ましい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の共振周波数は、2kHz~5kHzである。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の共振周波数は、2.5kHz~4.9kHzである。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の共振周波数を1kHz~4.5kHzの音声周波数帯域の範囲に調整してもよい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の共振周波数を2.5kHz~4.5kHzの音声周波数帯域の範囲に調整してもよい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の共振周波数を2.5kHz~3.5kHzの音声周波数帯域の範囲に調整してもよい。上記共振周波数範囲の調整によって、骨伝導音響伝達装置の共振ピークを1kHz~5kHzの音声周波数帯域の範囲にすることにより、骨伝導音響伝達装置が音声周波数帯域(例えば、共振ピークの周波数より小さい周波数帯域範囲、すなわち20Hz~5kHz)の振動に応答する感度を向上させることができる。
いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の共振周波数は、3.5kHz~4.7kHzである。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の共振周波数は、4kHz~4.5kHzである。
骨伝導音響伝達装置が質量-バネ-減衰システムモデルに等価することができるため、骨伝導音響伝達装置が動作するときに、質量-バネ-減衰システムが加振力により強制的に振動させられることに等価することができ、その振動法則が質量-バネ-減衰システムの法則に合致する。したがって、骨伝導音響伝達装置の共振周波数は、その内部アセンブリ(例えば、振動ユニット又は積層構造体)の等価剛性及び等価質量に関連し、骨伝導音響伝達装置の共振周波数は、その内部アセンブリの等価剛性と正の相関関係にあり、その内部アセンブリの等価質量と負の相関関係にある。等価剛性は、骨伝導音響伝達装置が質量-バネ-減衰システムモデルに等価した剛性であり、等価質量は、骨伝導音響伝達装置が質量-バネ-減衰システムモデルに等価した質量である。したがって、骨伝導音響伝達装置の共振周波数(又は、固有周波数)を調整することは、振動ユニット又は積層構造体の等価剛性及び等価質量を調整することに相当する。
骨伝導音響伝達装置は、動作するときに、質量-バネ-減衰システムモデルが加振外力により強制的に振動させられることに等価することができ、振動法則が質量-バネ-減衰システムモデルの法則に合致し、加振外力により、共振周波数f0の影響パラメータは、システム等価剛性k、システム等価質量m、システム等価相対減衰係数(減衰比)ξを含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例では、システム等価剛性kは、骨伝導音響伝達装置のシステムの共振周波数f0と正の相関関係にあり、システム等価質量mは、骨伝導音響伝達装置のシステムの共振周波数f0と負の相関関係にあり、システム等価相対減衰係数(減衰比)ξは、骨伝導音響伝達装置のシステムの共振周波数f0と負の相関関係にある。いくつかの実施例では、
は、骨伝導音響伝達装置のシステムの共振周波数f0と正の相関関係にある。いくつかの実施例では、周波数応答は、下記式を満たす。
式中、f0は、骨伝導音響伝達装置のシステムの共振周波数であり、kは、システム等価剛性であり、mは、システム等価質量であり、ξは、システム等価相対減衰係数(減衰比)である。
大部分の骨伝導音響伝達装置、特に圧電型の骨伝導音響伝達装置は、システム等価相対減衰係数ξが一般的に小さく、システムの共振周波数f0が主に等価剛性及び等価質量の影響を受ける。図8に示された骨伝導音響伝達装置を例とし、その支持アーム830は、振動システムにバネ及び減衰作用を提供し、質量素子840は、質量作用を提供する。したがって、支持アーム830は、主にシステム等価剛性kに影響を与え、同時にシステム等価質量mに影響を与え、質量素子840は、主にシステム等価質量mに影響を与え、同時にシステム等価剛性kに影響を与える。構造が複雑である骨伝導音響伝達装置に対して、その共振周波数f0を理論的に求める難度が高く、有限要素シミュレーションツールを用いて、対応する構造及びパラメータのモデルを確立することにより、骨伝導音響伝達装置の周波数応答を求めることができる。いくつかの実施例では、異なる材料を選択して以下に記載の電極層(第1の電極層及び第2の電極層を含む)、圧電層、弾性層及び質量素子などを製造することができ、骨伝導音響伝達装置の共振周波数f0を調整することができる。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の構造、例えば、支持アームに質量素子を追加した構造、片持ち梁の構造、サスペンション膜に孔を開けた構造、サスペンション膜に質量素子を追加した構造を設計することにより、骨伝導音響伝達装置の共振周波数f0を調整することができる。いくつかの実施例では、異なる部材のサイズを設計することにより、例えば、支持アーム、質量素子、片持ち梁、サスペンション膜などの長さ、幅、厚さなどのサイズを設計することにより、骨伝導音響伝達装置の共振周波数f0を調整することができる。
いくつかの実施例では、振動ユニット及び音響変換ユニットの構造パラメータを変更することにより、等価剛性及び等価質量を調整して、積層構造体の固有周波数を音声周波数帯域の範囲に低下させることができる。例えば、振動ユニットに孔を設置して振動ユニットの等価剛性を調整することができる。また例えば、振動ユニットに質量素子を設置して積層構造体の等価質量を調整することができる。また例えば、振動ユニットに支持アームを設置して積層構造体の等価剛性を調整することができる。振動ユニット及び音響変換ユニットの構造パラメータの調整に関するより多くの内容について、以下の説明を参照することができ、本明細書では説明を省略する。
図1は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の概略構成図である。図2は、図1に示された骨伝導音響伝達装置のA-Aでの断面図である。
図1及び図2に示すように、骨伝導音響伝達装置100は、基体構造体110及び積層構造体を含んでもよく、積層構造体の少なくとも一部は、基体構造体110に接続される。基体構造体110は、内部が中空のフレーム構造体であってもよく、積層構造体の一部の構造(例えば、積層構造体の基体構造体110と積層構造体との接続箇所から離れた一端)は、該フレーム構造体の中空部分に位置してもよい。なお、フレーム構造体は、図1に示された直方体状に限定されず、いくつかの実施例では、フレーム構造体は、角錐台、円柱体などの規則的又は不規則的な構造体であってもよい。いくつかの実施例では、積層構造体は、片持ち梁の形式で基体構造体110に固定的に接続されてもよい。さらに、積層構造体は、固定端及び自由端を含んでもよく、積層構造体の固定端は、フレーム構造体に固定的に接続され、積層構造体の自由端は、フレーム構造体に接続又は接触しないことにより、フレーム構造体の中空部分にサスペンションして設置されてもよい。いくつかの実施例では、積層構造体の固定端は、基体構造体110の上表面、下表面又は基体構造体110の中空部分の所在する側壁に接続されてもよい。いくつかの実施例では、基体構造体110の中空部分の所在する側壁には、積層構造体の固定端に適合する取付溝がさらに設置されることにより、積層構造体の固定端が基体構造体110に嵌合接続されてもよい。積層構造体と基体構造体110との間の安定性を向上させるために、いくつかの実施例では、積層構造体は、接続ベース140を含んでもよい。単に例示として、図1に示すように、接続ベース140は、積層構造体の表面の固定端に固定的に接続される。いくつかの実施例では、接続ベース140の固定端は、基体構造体110の上表面又は下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、接続ベース140の固定端は、基体構造体110の中空部分の所在する側壁に位置してもよい。例えば、基体構造体110の中空部分の所在する側壁には、固定端に適合する取付溝が形成されることにより、積層構造体の固定端と基体構造体110が取付溝により嵌合接続される。ここでの「接続」は、積層構造体及び基体構造体110をそれぞれ製造した後、積層構造体及び基体構造体110を溶接、リベット接続、接着、ボルト接続、係止などの方式で固定的に接続し、あるいは、製造中に、物理堆積(例えば、物理的気相堆積)又は化学堆積(例えば、化学的気相堆積)の方式で積層構造体を基体構造体110に堆積することとして理解され得る。いくつかの実施例では、接続ベース140は、積層構造体と独立した構造であってもよく、積層構造体と一体成形されてもよい。
いくつかの実施例では、積層構造体は、音響変換ユニット120及び振動ユニット130を含んでもよい。振動ユニット130とは、積層構造体における弾性変形可能な部分であり、音響変換ユニット120とは、積層構造体における振動ユニット130の変形を電気信号に変換する部分である。いくつかの実施例では、振動ユニット130は、音響変換ユニット120の上表面又は下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、振動ユニット130は、少なくとも1つの弾性層を含んでもよい。単に例示的な説明として、図1に示された振動ユニット130は、上から下へ順に設置された第1の弾性層131及び第2の弾性層132を含んでもよい。第1の弾性層131及び第2の弾性層132は、半導体材料で製造された板状構造であってもよい。いくつかの実施例では、半導体材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素などを含んでもよい。いくつかの実施例では、第1の弾性層131及び第2の弾性層132の材料は、同じであってもよく、異なってもよい。いくつかの実施例では、音響変換ユニット120は、少なくとも、上から下へ順に設置された第1の電極層121、圧電層122及び第2の電極層123を含み、弾性層(例えば、第1の弾性層131及び第2の弾性層132)は、第1の電極層121の上表面又は第2の電極層123の下表面に位置してもよい。圧電層122は、圧電効果に基づいて、振動ユニット130(例えば、第1の弾性層131及び第2の弾性層132)の変形応力により電圧(電位差)を発生させることができ、第1の電極層121及び第2の電極層123は、該電圧(電気信号)を導出することができる。いくつかの実施例では、圧電層の材料は、圧電フィルム材料を含んでもよく、圧電フィルム材料は、堆積プロセス(例えば、マグネトロンスパッタリング堆積プロセス、化学的気相堆積プロセスなど)により製造されたフィルム材料(例えば、AIN、PZTフィルム材料)であってもよい。別のいくつかの実施例では、圧電層122の材料は、圧電結晶材料及び圧電セラミック材料を含んでもよい。圧電結晶材料とは、圧電単結晶である。いくつかの実施例では、圧電結晶材料は、水晶、閃亜鉛鉱、方硼石、電気石、紅亜鉛鉱、GaAs、チタン酸バリウム及びその誘導体結晶、KH2PO4、NaKC4H4O6・4H2O(ロッシェル塩)など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。圧電セラミック材料とは、異なる材料の粉末間の固相反応と焼結により得られた微細結晶粒がランダムに集合して形成された圧電多結晶体であってもよい。いくつかの実施例では、圧電セラミック材料は、チタン酸バリウム(BT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸鉛バリウムリチウム(PBLN)、改質チタン酸鉛、窒化アルミニウム(AIN)、酸化亜鉛(ZnO)など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、圧電層122の材料は、圧電ポリマー材料、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などであってもよい。いくつかの実施例では、第1の電極層121及び第2の電極層123は、導電性材質構造である。例示的な導電性材質は、金属、合金材料、金属酸化物材料、グラフェンなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、金属及び合金材料は、ニッケル、鉄、鉛、白金、チタン、銅、モリブデン、亜鉛、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、合金材料は、銅亜鉛合金、銅錫合金、銅ニッケルケイ素合金、銅クロム合金、銅銀合金など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、金属酸化物材料は、RμO2、MnO2、PbO2、NiOなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
積層構造体と基体構造体110が相対的に移動する場合、積層構造体の振動ユニット130(例えば、第1の弾性層131又は第2の弾性層132)の異なる位置の変形程度は異なり、すなわち、振動ユニット130の異なる位置からの音響変換ユニット120の圧電層122に対する変形応力は異なり、骨伝導音響伝達装置100の感度を向上させるために、いくつかの実施例では、音響変換ユニット120を振動ユニット130の変形程度が大きい位置のみに設置することにより、骨伝導音響伝達装置100の信号対雑音比を向上させることができる。よって、音響変換ユニット120の第1の電極層121、圧電層122、及び/又は第2の電極層123の面積は、振動ユニット130の面積以下であってもよい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置100の信号対雑音比をさらに向上させるために、音響変換ユニット120によって被覆された振動ユニット130の面積は、振動ユニット130の面積の1/2以下である。好ましくは、音響変換ユニット120によって被覆された振動ユニット130の面積は、振動ユニット130の面積の1/3以下である。さらに好ましくは、音響変換ユニット120によって被覆された振動ユニット130の面積は、振動ユニット130の面積の1/4以下である。さらに、いくつかの実施例では、音響変換ユニット120の位置は、積層構造体と基体構造体110との接続箇所に近接してもよい。振動ユニット130(例えば、弾性層)が積層構造体と基体構造体110との接続箇所の近くに外力を受けるときに発生する変形の程度が大きく、音響変換ユニット120が積層構造体と基体構造体110との接続箇所の近くに受ける変形応力も大きく、音響変換ユニット120を変形応力が大きい領域に配置することにより、骨伝導音響伝達装置100の感度を向上させると共に、骨伝導音響伝達装置100の信号対雑音比を向上させることができる。なお、ここでの音響変換ユニット120が積層構造体と基体構造体110との接続箇所に近接してもよいことは、積層構造体の自由端に対するものであり、すなわち、音響変換ユニット120から積層構造体と基体構造体110との接続箇所までの距離は、音響変換ユニット120から自由端までの距離より小さい。いくつかの実施例では、音響変換ユニット120における圧電層122の面積及び位置を調整するだけで骨伝導音響伝達装置100の感度及び信号対雑音比を向上させることができる。例えば、第1の電極層121及び第2の電極層123は、振動ユニット130の表面を完全に又は部分的に被覆し、圧電層122の面積は、第1の電極層121又は第2の電極層123の面積以下であってもよい。いくつかの実施例では、圧電層122によって被覆された第1の電極層121又は第2の電極層123の面積は、第1の電極層121又は第2の電極層123の面積の1/2以下である。好ましくは、圧電層122によって被覆された第1の電極層121又は第2の電極層123の面積は、第1の電極層121又は第2の電極層123の面積の1/3以下である。さらに好ましくは、圧電層122によって被覆された第1の電極層121又は第2の電極層123の面積は、第1の電極層121又は第2の電極層123の面積の1/4以下である。いくつかの実施例では、第1の電極層121及び第2の電極層123が接続されて短絡が発生するという問題を防止するために、第1の電極層121の面積が圧電層122又は第2の電極層123の面積より小さくてもよい。例えば、圧電層122、第2の電極層123及び振動ユニット130は、面積が同じであり、第1の電極層121の面積は、振動ユニット130(例えば、弾性層)、圧電層122又は第2の電極層123の面積より小さい。このような場合、第1の電極層121の全領域が圧電層122の表面に位置し、かつ第1の電極層121の縁部が圧電層122の縁部から一定の間隔で離隔されるため、第1の電極層121は、圧電層122の縁部における材料の品質が低い領域を避けることにより、骨伝導音響伝達装置100の信号対雑音比をさらに向上させることができる。
いくつかの実施例では、出力電気信号を増大させて、骨伝導音響伝達装置100の信号対雑音比を向上させるために、圧電層122は、積層構造体の中性層の側に位置してもよい。中性層とは、積層構造体における、変形時に変形応力がほぼゼロである平面層である。いくつかの実施例では、圧電層122の単位厚さ当たりの応力及び応力変化勾配を調整する(例えば、増大させる)ことにより、骨伝導音響伝達装置100の信号対雑音比を向上させることができる。いくつかの実施例では、音響変換ユニット120(例えば、第1の電極層121、圧電層122、及び第2の電極層123)、振動ユニット130(例えば、第1の弾性層131、及び第2の弾性層132)の形状、厚さ、材料、及びサイズ(例えば、長さ、幅、及び厚さ)を調整することにより、骨伝導音響伝達装置100の信号対雑音比及び感度を向上させることができる。
いくつかの実施例では、積層構造体の反り変形問題を解決するために、積層構造体における各層の応力のバランスをとることにより、片持ち梁の中性層の上下部分が受ける応力のタイプ(例えば、引張応力、及び圧縮応力)を同じにし、大きさを等しくする必要がある。例えば、圧電層122がAIN材料層である場合、圧電層122は、片持ち梁の中性層の側に設置され、AIN材料層は、一般的に引張応力を受け、中性層の他側に位置する弾性層が受ける総合応力も引張応力であるべきである。
いくつかの実施例では、音響変換ユニット120は、他の層に良好な成長表面構造体を提供するシード層(図示せず)をさらに含んでもよく、シード層は、第2の電極層123の下表面に位置する。いくつかの実施例では、シード層の材料は、圧電層122の材料と同じであってもよい。例えば、圧電層122の材料がAlNである場合、シード層の材料もAlNである。なお、振動ユニット130が第2の電極層123の下表面に位置する場合、シード層は、第1の電極層121の上表面に位置してもよい。さらに、音響変換ユニット120がシード層を含む場合、振動ユニット130(例えば、第1の弾性層131、及び第2の弾性層132)は、シード層の圧電層122から離れた表面に位置してもよい。他の実施例では、シード層の材料は、圧電層122の材料と異なってもよい。
なお、積層構造体の形状は、図1に示された矩形に限定されず、三角形、台形、円形、半円形、1/4円形、楕円形、半楕円形などの規則的又は不規則的な形状であってもよく、本明細書では、さらに限定しない。また、積層構造体の数も図1に示された1つに限定されず、2つ、3つ、4つ以上であってもよい。様々な積層構造体は、基体構造体110の中空部分にサスペンションして並設されてもよく、積層構造体の各層の配列方向に沿って基体構造体110の中空部分に順にサスペンションして設置されてもよい。
図3は、本願のいくつかの実施例に示す別の骨伝導音響伝達装置の概略構成図である。図3に示された骨伝導音響伝達装置300は、図1に示された骨伝導音響伝達装置100とほぼ同じであり、その最大の相違点は、図3に示された骨伝導音響伝達装置300の積層構造体の形状がそれと異なることである。図3に示すように、骨伝導音響伝達装置300は、基体構造体310及び積層構造体を含み、積層構造体の形状は台形である。さらに、骨伝導音響伝達装置300の積層構造体の幅は、自由端から固定端まで徐々に小さくなる。他の実施例では、骨伝導音響伝達装置300の積層構造体の幅は、自由端から固定端まで徐々に大きくなってもよい。なお、ここでの基体構造体310の構造は、基体構造体110の構造と類似し、振動ユニット330の構造は、振動ユニット130の構造と類似する。音響変換ユニット320の第1の電極層321、圧電層322及び第2の電極層323、並びに振動ユニット330の第1の弾性層331及び第2の弾性層332などの各層の詳細について、図1における音響変換ユニット120及び振動ユニット130の各層の内容を参照することができる。また、音響変換ユニット120及び振動ユニット130における他の部材(例えば、シード層)は、図3に示された骨伝導音響伝達装置300に同様に適用され、本明細書では説明を省略する。
図4は、本願の別のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の概略構成図である。図4に示すように、骨伝導音響伝達装置400は、基体構造体410及び積層構造体を含んでもよく、積層構造体の少なくとも一部は、基体構造体410に接続される。いくつかの実施例では、基体構造体410は、内部が中空のフレーム構造体であってもよく、積層構造体の一部の構造(例えば、積層構造体の基体構造体410と積層構造体との接続箇所から離れた一端)は、該フレーム構造体の中空部分に位置してもよい。なお、フレーム構造体は、図4に示された直方体状に限定されず、いくつかの実施例では、フレーム構造体は、角錐台、円柱体などの規則的又は不規則的な構造体であってもよい。いくつかの実施例では、積層構造体は、片持ち梁の形式で基体構造体410に固定的に接続されてもよい。さらに、積層構造体は、固定端及び自由端を含んでもよく、積層構造体の固定端は、フレーム構造体に固定的に接続され、積層構造体の自由端は、フレーム構造体に接続又は接触しないことにより、フレーム構造体の中空部分にサスペンションして設置されてもよい。いくつかの実施例では、積層構造体の固定端は、基体構造体410の上表面、下表面又は基体構造体410の中空部分の所在する側壁に接続されてもよい。いくつかの実施例では、基体構造体410の中空部分の所在する側壁には、積層構造体の固定端に適合する取付溝がさらに設置されることにより、積層構造体の固定端が基体構造体410に嵌合接続されてもよい。ここでの「接続」は、積層構造体及び基体構造体410をそれぞれ製造した後、積層構造体及び基体構造体410を溶接、リベット接続、係止、ボルト接続などの方式で固定的に接続することとして理解され得る。いくつかの実施例では、製造中に、物理堆積(例えば、物理的気相堆積)又は化学堆積(例えば、化学的気相堆積)の方式で積層構造体を基体構造体410に堆積してもよい。いくつかの実施例では、基体構造体410に1つ又は複数の積層構造体を設置してもよく、例えば、積層構造体の数は、1つ、2つ、3つ、7つなどであってもよい。さらに、複数の積層構造体は、基体構造体410の周方向に沿って等間隔で均一に配列されてもよく、不均一に配列されてもよい。
いくつかの実施例では、積層構造体は、音響変換ユニット420及び振動ユニット430を含んでもよい。振動ユニット430は、音響変換ユニット420の上表面又は下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、振動ユニット430は、少なくとも1つの弾性層を含んでもよい。弾性層は、半導体材料で製造された板状構造であってもよい。いくつかの実施例では、半導体材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素などを含んでもよい。いくつかの実施例では、音響変換ユニット420は、電極層及び圧電層423を含んでもよく、電極層は、第1の電極421及び第2の電極422を含む。本明細書の実施例では、該圧電層423は、圧電効果に基づいて、振動ユニット430の変形応力により電圧(電位差)を発生させることができ、第1の電極421及び第2の電極422は、該電圧(電気信号)を導出することができる。いくつかの実施例では、第1の電極421及び第2の電極422は、圧電層423の同一の表面(例えば、上表面又は下表面)に間隔を隔てて設置され、電極層及び振動ユニット430は、圧電層423の異なる表面に位置する。例えば、振動ユニット430が圧電層423の下表面に位置する場合、電極層(第1の電極421及び第2の電極422)は、圧電層423の上表面に位置してもよい。また例えば、振動ユニット430が圧電層423の上表面に位置する場合、電極層(第1の電極421及び第2の電極422)は、圧電層423の下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、電極層及び振動ユニット430は、圧電層423の同じ側に位置してもよい。例えば、電極層は、圧電層423と振動ユニット430との間に位置する。いくつかの実施例では、第1の電極421は、第1の櫛歯状構造4210に折り曲げられてもよく、第1の櫛歯状構造4210は、複数の櫛歯構造を含んでもよく、第1の櫛歯状構造4210の隣接する櫛歯構造の間に第1の間隔を有し、該第1の間隔は、同じであってもよく、異なっていてもよい。第2の電極422は、第2の櫛歯状構造4220に折り曲げられてもよく、第2の櫛歯状構造4220は、複数の櫛歯構造を含んでもよく、第2の櫛歯状構造4220の隣接する櫛歯構造の間に第2の間隔を有し、該第2の間隔は、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1の櫛歯状構造4210は、第2の櫛歯状構造4220と嵌合して電極層を形成し、さらに、第1の櫛歯状構造4210の櫛歯構造が第2の櫛歯状構造4220の第2の間隔へ入り込み、第2の櫛歯状構造4220の櫛歯構造が第1の櫛歯状構造4210の第1の間隔へ入り込むことにより、互いに嵌合して電極層を形成してもよい。第1の櫛歯状構造4210及び第2の櫛歯状構造4220が互いに嵌合することにより、第1の電極421及び第2の電極422は、コンパクトに配列されるが、交差しない。いくつかの実施例では、第1の櫛歯状構造4210及び第2の櫛歯状構造4220は、片持ち梁の長手方向(例えば、固定端から自由端への方向)に沿って延在する。いくつかの実施例では、圧電層423は、好ましくは、圧電セラミック材料で製造され、圧電層423が圧電セラミック材料で製造される場合、圧電層423の分極方向は、片持ち梁の長手方向と一致し、圧電セラミックの圧電定数d33の特性を利用して、出力信号を大幅に強化し、感度を向上させる。圧電定数d33とは、圧電層423が機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する比例定数である。なお、図4に示された圧電層423は、他の材料で製造されてもよく、他の材料で製造された圧電層423の分極方向が片持ち梁の厚さ方向と一致する場合、音響変換ユニット420は、図1に示された音響変換ユニット120によって置き換えられてもよい。
積層構造体と基体構造体410が相対的に移動する場合、積層構造体の振動ユニット430の異なる位置の変形程度は異なり、すなわち、振動ユニット430の異なる位置からの音響変換ユニット420の圧電層423に対する変形応力は異なり、骨伝導音響伝達装置400の感度を向上させるために、いくつかの実施例では、音響変換ユニット420を振動ユニット430の変形程度が大きい位置のみに設置することにより、骨伝導音響伝達装置400の信号対雑音比を向上させることができる。よって、音響変換ユニット420の電極層及び/又は圧電層423の面積は、振動ユニット430の面積以下であってもよい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置400の信号対雑音比をさらに向上させるために、音響変換ユニット420によって被覆された振動ユニット430の面積は、振動ユニット430の面積以下である。好ましくは、音響変換ユニット420によって被覆された振動ユニット430の面積は、振動ユニット430の面積の1/2以下である。好ましくは、音響変換ユニット420によって被覆された振動ユニット430の面積は、振動ユニット430の面積の1/3以下である。さらに好ましくは、音響変換ユニット420によって被覆された振動ユニット430の面積は、振動ユニット430の面積の1/4以下である。さらに、いくつかの実施例では、音響変換ユニット420は、積層構造体と基体構造体410との接続箇所に近接してもよい。振動ユニット430(例えば、弾性層)が積層構造体と基体構造体410との接続箇所の近くに外力を受けるときに発生する変形の程度が大きく、音響変換ユニット420が積層構造体と基体構造体410との接続箇所の近くに受ける変形応力も大きいため、音響変換ユニット420を該変形応力が大きい領域に配置することにより、骨伝導音響伝達装置400の感度を向上させると共に、骨伝導音響伝達装置400の信号対雑音比を向上させることができる。なお、ここでの音響変換ユニット420が積層構造体と基体構造体410との接続箇所に近接してもよいことは、積層構造体の自由端に対するものであり、すなわち、音響変換ユニット420から積層構造体と基体構造体410との接続箇所までの距離は、音響変換ユニット420から自由端までの距離より小さい。いくつかの実施例では、音響変換ユニット420における圧電層423の面積及び位置を調整するだけで骨伝導音響伝達装置400の感度及び信号対雑音比を向上させることができる。例えば、電極層は、振動ユニット430の表面を完全に又は部分的に被覆し、圧電層423の面積は、電極層の面積以下であってもよい。好ましくは、圧電層423によって被覆された振動ユニット430の面積は、電極層の面積の1/2以下である。好ましくは、圧電層423によって被覆された振動ユニット430の面積は、電極層の面積の1/3以下である。さらに好ましくは、圧電層423によって被覆された振動ユニット430の面積は、電極層の面積の1/4以下である。いくつかの実施例では、圧電層423の面積は、振動ユニット430の面積と同じであってもよく、電極層の全領域が圧電層423に位置してもよく、電極層の縁部が圧電層423の縁部から一定の間隔で離隔されることにより、電極層の第1の電極421及び第2の電極422は、圧電層423の縁部における材料の品質が低い領域を避けることで、骨伝導音響伝達装置400の信号対雑音比をさらに向上させることができる。
いくつかの実施例では、出力電気信号を増大させ、骨伝導音響伝達装置400の信号対雑音比を向上させるために、音響変換ユニット420(例えば、第1の電極421、圧電層423、及び第2の電極422)、振動ユニット430(例えば、弾性層)の形状、厚さ、材料、及びサイズ(例えば、長さ、幅、及び厚さ)を調整することにより、骨伝導音響伝達装置400の信号対雑音比及び感度を向上させることができる。
いくつかの実施例では、出力電気信号を増大させ、骨伝導音響伝達装置400の信号対雑音比を向上させるために、第1の櫛歯状構造4210及び第2の櫛歯状構造4220の単一の櫛歯構造の長さ、幅、櫛歯構造間の間隔(例えば、第1の間隔及び第2の間隔)及び音響変換ユニット420全体の長さを調整することにより、出力電圧電気信号を増大させ、骨伝導音響伝達装置400の信号対雑音比を向上させることもできる。
図5は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の概略構成図である。図6は、図5に示された骨伝導音響伝達装置の部分構造の断面図である。図5及び図6に示すように、骨伝導音響伝達装置500は、基体構造体510及び積層構造体を含んでもよく、積層構造体の少なくとも一部の構造は、基体構造体510に接続される。いくつかの実施例では、基体構造体510は、内部が中空のフレーム構造体であってもよく、積層構造体の一部の構造は、該フレーム構造体の中空部分に位置してもよい。なお、フレーム構造体は、図5に示された直方体状に限定されず、いくつかの実施例では、フレーム構造体は、角錐台、円柱体などの規則的又は不規則的な構造体であってもよい。
いくつかの実施例では、積層構造体は、音響変換ユニット520及び振動ユニットを含んでもよい。いくつかの実施例では、振動ユニットは、音響変換ユニット520の上表面又は下表面に設置されてもよい。図5に示すように、振動ユニットは、サスペンション膜構造体530を含み、サスペンション膜構造体530は、周側により基体構造体510に接続されて基体構造体510に固定され、サスペンション膜構造体530の中心領域は、基体構造体510の中空部分にサスペンションして設置される。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体530は、基体構造体510の上表面又は下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体530の周側は、基体構造体510の中空部分の内壁に接続されてもよい。ここでの「接続」は、サスペンション膜構造体530及び基体構造体510をそれぞれ製造した後、サスペンション膜構造体530を機械的固定方式(例えば、強力接着、リベット接続、クリップ、嵌め込みなどの方式)で基体構造体510の上表面、下表面又は基体構造体510の中空部分の側壁に固定し、あるいは、製造中に、物理堆積(例えば、物理的気相堆積)又は化学堆積(例えば、化学的気相堆積)の方式でサスペンション膜構造体530を基体構造体510に堆積することとして理解され得る。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体530は、少なくとも1つの弾性層を含んでもよい。弾性層は、半導体材料で製造された膜状構造であってもよい。いくつかの実施例では、半導体材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素などを含んでもよい。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体530の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形、又は他の任意の形状であってもよい。
いくつかの実施例では、音響変換ユニット520は、サスペンション膜構造体530の上表面又は下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体530は、複数の孔5300を含んでもよく、複数の孔5300は、音響変換ユニット520の中心の周りで音響変換ユニット520の周方向に沿って分布する。サスペンション膜構造体530に複数の孔5300が設置されることにより、サスペンション膜構造体530の異なる位置の剛性を調整して、複数の孔5300の近くの領域でのサスペンション膜構造体530の剛性を低下させ、複数の孔5300から離れた領域でのサスペンション膜構造体530の剛性を相対的に大きくすることができ、サスペンション膜構造体530と基体構造体510が相対的に移動する場合、複数の孔5300の近くの領域でのサスペンション膜構造体530の変形程度が大きく、複数の孔5300から離れた領域でのサスペンション膜構造体530の変形程度が小さく、このとき、音響変換ユニット520をサスペンション膜構造体530上の複数の孔5300の近くの領域に配置すると、音響変換ユニット520による振動信号の収集に役立つことにより、骨伝導音響伝達装置500の感度を効果的に向上させ、また、骨伝導音響伝達装置500の各部材の構造が簡単であるため、製造又は組み立てが容易になることが理解できる。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体530上の孔5300は、円形孔、楕円形孔、方形孔、他の多角形孔などの任意の形状であってもよい。いくつかの実施例では、複数の孔5300の大きさ、数、間隔距離、及び位置を変更して、骨伝導音響伝達装置500の共振周波数(共振周波数を2kHz~5kHzにする)及び応力分布などを調整することにより、骨伝導音響伝達装置500の感度を向上させることもできる。なお、共振周波数は、上記2kHz~5kHzに限定されず、3kHz~4.5kHz又は4kHz~4.5kHzであってもよく、共振周波数の範囲は、様々な適用シーンに応じて適応的に調整することができ、本明細書ではさらに限定しない。
図5及び図6を参照して、いくつかの実施例では、音響変換ユニット520は、上から下へ順に設置された第1の電極層521、圧電層522及び第2の電極層523を含んでもよく、第1の電極層521と第2の電極層523の位置を逆にしてもよい。圧電層522は、圧電効果に基づいて、振動ユニット(例えば、サスペンション膜構造体530)の変形応力により電圧(電位差)を発生させることができ、第1の電極層521及び第2の電極層523は、該電圧(電気信号)を導出することができる。いくつかの実施例では、圧電層522の材料は、圧電結晶材料及び圧電セラミック材料を含んでもよい。圧電結晶とは、圧電単結晶である。いくつかの実施例では、圧電結晶材料は、水晶、閃亜鉛鉱、方硼石、電気石、紅亜鉛鉱、GaAs、チタン酸バリウム及びその誘導体結晶、KH2PO4、NaKC4H4O6・4H2O(ロッシェル塩)、砂糖など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。圧電セラミック材料とは、異なる材料の粉末間の固相反応と焼結により得られた微細結晶粒がランダムに集合して形成された圧電多結晶体である。いくつかの実施例では、圧電セラミック材料は、チタン酸バリウム(BT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸鉛バリウムリチウム(PBLN)、改質チタン酸鉛、窒化アルミニウム(AIN)、酸化亜鉛(ZnO)など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、圧電層522の材料は、圧電ポリマー材料、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などであってもよい。いくつかの実施例では、第1の電極層521及び第2の電極層523は、導電性材質構造である。例示的な導電性材質は、金属、合金材料、金属酸化物材料、グラフェンなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、金属と合金材料は、ニッケル、鉄、鉛、白金、チタン、銅、モリブデン、亜鉛など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、合金材料は、銅亜鉛合金、銅錫合金、銅ニッケルケイ素合金、銅クロム合金、銅銀合金など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、金属酸化物材料は、RuO2、MnO2、PbO2、NiOなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
図5に示すように、いくつかの実施例では、複数の孔5300は、円形領域を囲み、音響変換ユニット520の音圧出力効果を向上させるために、音響変換ユニット520は、サスペンション膜構造体530における複数の孔5300に近接する領域に設置されてもよく、さらに、音響変換ユニット520は、環状構造であり、複数の孔5300で囲まれた円形領域の内側に沿って分布してもよい。いくつかの実施例では、環状構造の音響変換ユニット520は、複数の孔5300で囲まれた円形領域の外側に沿って分布してもよい。いくつかの実施例では、音響変換ユニット520の圧電層522は、圧電リングであってもよく、圧電リングの上下表面に位置する第1の電極層521及び第2の電極層523は、電極リングであってもよい。いくつかの実施例では、音響変換ユニット520にリード構造5200がさらに形成され、該リード構造5200は、電極リング(例えば、第1の電極層521及び第2の電極層523)が収集した電気信号を後続の回路に伝送する。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置500の出力電気信号を改善するために、音響変換ユニット520(例えば、環状構造)の縁部から各孔5300の中心までの径方向の間隔は、100μm~400μmであってもよい。好ましくは、音響変換ユニット520(例えば、環状構造)の縁部から各孔5300の中心までの径方向の間隔は、150μm~300μmであってもよい。さらに好ましくは、音響変換ユニット520(例えば、環状構造)の縁部から各孔5300の中心までの径方向の間隔は、150μm~250μmであってもよい。
いくつかの実施例では、リード構造5200の形状、サイズ(例えば、長さ、幅、及び厚さ)、材質を調整することにより、骨伝導音響伝達装置500の出力電気信号を改善することもできる。
いくつかの代替的な実施例では、さらにサスペンション膜構造体530の異なる領域の厚さ又は密度を調整することにより、サスペンション膜構造体530の異なる位置の変形応力を変更してもよい。単に例示的な説明として、いくつかの実施例では、音響変換ユニット520は、環状構造とされ、環状構造の内側領域でのサスペンション膜構造体530の厚さは、環状構造の外側領域でのサスペンション膜構造体530の厚さより大きい。別のいくつかの実施例では、環状構造の内側領域でのサスペンション膜構造体530の密度は、環状構造の外側領域でのサスペンション膜構造体530の密度より大きい。サスペンション膜構造体530の異なる位置の密度又は厚さを変更することにより、環状構造の内側領域でのサスペンション膜の質量は、環状構造の外側領域でのサスペンション膜の質量より大きく、サスペンション膜構造体530と基体構造体510が相対的に移動する場合、音響変換ユニット520の環状構造の近くのサスペンション膜構造体530が発生した変形の程度が大きく、発生した変形応力も大きく、その結果、骨伝導音響伝達装置500の出力電気信号を改善する。
なお、複数の孔5300で囲まれた領域の形状は、図5に示された円形に限定されず、半円形、1/4円形、楕円形、半楕円形、三角形、長方形などの他の規則的又は不規則的な形状であってもよく、音響変換ユニット520の形状は、複数の孔5300で囲まれた領域の形状に応じて適応的に調整することができ、例えば、複数の孔5300で囲まれた領域の形状が長方形である場合、音響変換ユニット520の形状は、長方形であってもよく、長方形の音響変換ユニット520は、複数の孔5300で囲まれた長方形の内側又は外側に沿って分布してもよい。また例えば、複数の孔5300で囲まれた領域の形状が半円形である場合、音響変換ユニット520の形状は、半環状であってもよく、半環状の音響変換ユニット520は、複数の孔5300で囲まれた半環形の内側又は外側に沿って分布してもよい。いくつかの実施例では、図5に示されたサスペンション膜構造体530に孔を開けなくてもよい。
図7は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の概略構成図である。図7に示された骨伝導音響伝達装置700の構造は、図5に示された骨伝導音響伝達装置500の構造とほぼ同じであるが、図7に示された骨伝導音響伝達装置700の振動ユニットがサスペンション膜構造体730及び質量素子740を含むという点で相違する。
図7に示すように、骨伝導音響伝達装置700は、基体構造体710及び積層構造体を含んでもよく、積層構造体の少なくとも一部の構造は、基体構造体710に接続される。いくつかの実施例では、基体構造体710は、内部が中空のフレーム構造体であってもよく、積層構造体の一部の構造は、該フレーム構造体の中空部分に位置してもよい。なお、フレーム構造体は、図7に示された直方体状に限定されず、いくつかの実施例では、フレーム構造体は、角錐台、円柱体などの規則的又は不規則的な構造体であってもよい。
いくつかの実施例では、積層構造体は、音響変換ユニット720及び振動ユニットを含んでもよい。いくつかの実施例では、振動ユニットは、音響変換ユニット720の上表面又は下表面に設置されてもよい。図7に示すように、振動ユニットは、サスペンション膜構造体730及び質量素子740を含み、質量素子740は、サスペンション膜構造体730の上表面又は下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体730は、基体構造体710の上表面又は下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体730の周側は、基体構造体710の中空部分の内壁に接続されてもよい。ここでの「接続」は、サスペンション膜構造体730及び基体構造体710をそれぞれ製造した後、サスペンション膜構造体730を機械的固定方式(例えば、強力接着、リベット接続、クリップ、嵌め込みなどの方式)で基体構造体710の上表面、下表面又は基体構造体710の中空部分の側壁に固定し、あるいは、製造中に、物理堆積(例えば、物理的気相堆積)又は化学堆積(例えば、化学的気相堆積)の方式でサスペンション膜構造体730を基体構造体710に堆積することとして理解され得る。振動ユニットと基体構造体710が相対的に移動する場合、質量素子740とサスペンション膜構造体730の自体の重量が異なるため、サスペンション膜構造体730における質量素子740の所在する領域又はその近くの領域の変形程度は、サスペンション膜構造体730における質量素子740から離れた領域の変形程度より大きく、骨伝導音響伝達装置700の出力音圧を向上させるために、音響変換ユニット720は、質量素子740の周方向に沿って分布してもよい。いくつかの実施例では、音響変換ユニット720の形状は、質量素子740の形状と同じであってもよく、異なっていてもよい。好ましくは、音響変換ユニット720の形状が質量素子740の形状と同じであってもよいため、音響変換ユニット720の各位置がいずれも質量素子740に近接することができ、その結果、骨伝導音響伝達装置700の出力電気信号をさらに向上させる。例えば、質量素子740は、円柱状構造であり、音響変換ユニット720は、環状構造であってもよく、環状構造の音響変換ユニット720の内径が質量素子740の半径より大きいため、音響変換ユニット720は、質量素子740の周方向に沿って設置される。いくつかの実施例では、音響変換ユニット720は、第1の電極層、第2の電極層及び2つの電極層の間に位置する圧電層を含んでもよく、第1の電極層、圧電層及び第2の電極層は、質量素子740の形状に適合する構造体に組み合わせられる。例えば、質量素子740は、円柱状構造であり、音響変換ユニット720は、環状構造であってもよく、このとき、第1の電極層、圧電層及び第2の電極層は、いずれも環状構造であり、3者が上から下へ順に設置されて環状構造に組み合わせられる。
いくつかの実施例では、音響変換ユニット720と質量素子740は、それぞれサスペンション膜構造体730の異なる側に位置してもよく、サスペンション膜構造体730の同じ側に位置してもよい。例えば、音響変換ユニット720及び質量素子740は、いずれもサスペンション膜構造体730の上表面又は下表面に位置し、音響変換ユニット720は、質量素子740の周方向に沿って分布する。また例えば、音響変換ユニット720は、サスペンション膜構造体730の上表面に位置し、質量素子740は、サスペンション膜構造体730の下表面に位置し、このとき、質量素子740のサスペンション膜構造体730への投影は、音響変換ユニット720の領域内にある。
いくつかの実施例では、質量素子740の大きさ、形状、位置、及び圧電層の位置、形状、大きさを変更することにより、骨伝導音響伝達装置700の出力電気信号を改善することができる。いくつかの実施例では、サスペンション膜構造体730の形状、材料、及び大きさを変更することにより、骨伝導音響伝達装置700の音圧出力効果を向上させることもできる。ここでの音響変換ユニット720の第1の電極層、第2の電極層及び圧電層と図5における音響変換ユニット520の第1の電極層521、第2の電極層523及び圧電層522は、構造及びパラメータなどが類似し、サスペンション膜構造体730とサスペンション膜構造体530は、構造及びパラメータなどが類似し、リード構造7200とリード構造5200は、構造が類似し、本明細書ではさらに説明しない。
図8は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の概略構成図である。図9は、図8に示された骨伝導音響伝達装置の平面概略図である。図10は、図9に示された骨伝導音響伝達装置のC-Cでの断面図である。図8~図10に示すように、振動ユニットは、少なくとも1つの支持アーム830及び質量素子840を含み、質量素子840は、少なくとも1つの支持アーム830により基体構造体810に接続される。支持アーム830の数は、1つ、2つ、4つ、6つなどであってもよい。いくつかの実施例では、基体構造体810と支持アーム830との間、及び質量素子840と支持アーム830との間は、溶接、接着などの方式で接続されてもよい。いくつかの実施例では、基体構造体810及び支持アーム830は、同じ基材(例えば、シリコンウェハの基板)にマイクロナノ加工プロセスにより加工されてもよい。あるいは、基体構造体810、支持アーム830及び質量素子840の3者は、1つの基材(例えば、シリコンウェハの基板)にマイクロナノ加工プロセスにより加工されてもよい。いくつかの実施例では、音響変換ユニット820は、少なくとも1つの支持アーム830の上表面、下表面又は内部に位置してもよい。
図8に示すように、基体構造体810は、直方体フレーム構造である。いくつかの実施例では、基体構造体810の内部は、音響変換ユニット820及び振動ユニットを配置するための中空部分(例えば、図10に示された中空のキャビティ811)を含んでもよい。いくつかの実施例では、基体構造体810は、中空のキャビティ811を有するフレーム構造体を含んでもよく、支持アーム830と質量素子840は、いずれもキャビティ811内に設置され、支持アーム830は、一端が基体構造体810に接続され、他端が質量素子840に接続される。いくつかの実施例では、中空部分(例えば、中空のキャビティ811)の厚さ方向(図10において矢印で示した方向)に垂直な断面の形状は、円形、四角形(例えば、長方形、平行四辺形)、五角形、六角形、七角形、八角形などの他の規則的又は不規則的な形状であってもよい。いくつかの実施例では、厚さ方向に垂直な断面の形状が長方形の中空部分の任意の辺長のサイズは、0.8mm~2mmであってもよい。いくつかの実施例では、任意の辺長のサイズは、1mm~1.5mmであってもよい。いくつかの実施例では、基体構造体810の中空のキャビティ811の形状は、質量素子840の形状に対応してもよい。例えば、キャビティ811の厚さ方向に垂直な断面の形状が長方形である場合、質量素子840の厚さ方向に垂直な断面の形状も長方形である。
いくつかの実施例では、支持アーム830の数は、2つ以上であり、2つ以上の支持アーム830は、質量素子840の周りに設置される。例えば、支持アーム830の数は、2つ、3つ、4つ、6つ、7つなどであってもよい。いくつかの実施例では、質量素子840の厚さ方向に垂直な断面の形状は、多角形であり、支持アーム830の数は、多角形の辺の数に対応する。例えば、支持アーム830の数は、多角形の辺の数と等しくてもよい。また例えば、支持アーム830の数は、多角形の辺の数の数倍であってもよく、例えば、2倍、3倍、5倍などであってもよい。単に例示として、質量素子840の厚さ方向に垂直な断面が四角形である場合、支持アーム830の数は、4つである。4つの支持アーム830は、それぞれ四角形の四辺に接続されてもよい。あるいは、質量素子840の厚さ方向に垂直な断面が四角形である場合、支持アーム830の数は、8つである。2つずつの支持アーム830は、四角形の四辺のうちの1つに接続される。このような設置により、支持アーム830と質量素子840の応力をより均一にすることができる。いくつかの実施例では、各支持アーム830と質量素子840との接続箇所は、質量素子840の中心に対して回転対称に配置されてもよく、それにより支持アーム830と質量素子840の応力をより均一にする。
いくつかの実施例では、振動ユニットは、4つの支持アーム830及び質量素子840を含んでもよく、4つの支持アーム830は、一端が基体構造体810の上表面、下表面又は基体構造体810の中空部分の所在する側壁に接続され、他端が質量素子840の上表面、下表面又は周方向の側壁に接続される。いくつかの実施例では、質量素子840は、支持アーム830に対して上向き及び/又は下向きに突出してもよい。例えば、4つの支持アーム830の端部が質量素子840の上表面に接続される場合、質量素子840は、支持アーム830に対して下向きに突出してもよい。また例えば、4つの支持アーム830の端部が質量素子840の下表面に接続される場合、質量素子840は、支持アーム830に対して上向きに突出してもよい。さらに例えば、4つの支持アーム830の端部が質量素子840の周方向の側壁に接続される場合、質量素子840は、支持アーム830に対して上向き及び下向きに突出してもよい。いくつかの実施例では、質量素子840の上表面と支持アーム830の上表面とは、実質的に同一水平面にある。別のいくつかの実施例では、質量素子840の下表面と支持アーム830の下表面とは、実質的に同一水平面にある。別のいくつかの実施例では、質量素子840の上表面と支持アーム830の上表面は、実質的に同一水平面にあり、同時に質量素子840の下表面と支持アーム830の下表面は、実質的に同一水平面にある。いくつかの実施例では、支持アーム830の形状は、矩形であり、すなわち、支持アーム830の厚さ方向に垂直な断面の形状は、矩形である。矩形の対辺のうちの一辺は、質量素子840に接続され、対辺のうちの他辺は、基体構造体810に接続される。
いくつかの実施例では、図9に示すように、支持アーム830の長さXは、100μm~500μmである。いくつかの実施例では、支持アーム830の長さXは、150μm~350μmである。いくつかの実施例では、支持アーム830の幅Yは、150μm~400μmである。いくつかの実施例では、支持アーム830の幅Yは、250μm~350μmである。支持アーム830のサイズを設計調整することにより、支持アーム830の剛性を調整することができ、それにより骨伝導音響伝達装置800の共振周波数を調整する。
さらに、骨伝導音響伝達装置800は、音響変換ユニット820を含んでもよい。図10に示すように、音響変換ユニット820は、上から下へ順に設置された第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823を含んでもよく、第1の電極層821又は第2の電極層823は、支持アーム830(例えば、弾性層824)の上表面又は下表面に接続される。例えば、第1の電極層821の上表面が支持アーム830の下表面に接続されてもよく、第2の電極層823の下表面が支持アーム830の上表面に接続されてもよい。第1の圧電層822は、圧電効果に基づいて、振動ユニット(例えば、支持アーム830及び質量素子840)の変形応力により電圧(電位差)を発生させることができ、第1の電極層821及び第2の電極層823は、該電圧(電気信号)を導出することができる。骨伝導音響伝達装置800の共振周波数を特定の周波数範囲(例えば、2000Hz~5000Hz)内にするために、音響変換ユニット820(例えば、第1の電極層821、第2の電極層823及び第1の圧電層822)、振動ユニット(例えば、支持アーム830)の材料及び厚さを調整してもよい。
いくつかの実施例では、第1の電極層821の厚さは、80nm~250nmであってもよい。いくつかの実施例では、第1の電極層821の厚さは、100nm~150nmであってもよい。いくつかの実施例では、第2の電極層823の厚さは、80nm~250nmであってもよい。いくつかの実施例では、第2の電極層823の厚さは、100nm~200nmであってもよい。いくつかの実施例では、第1の圧電層822の厚さは、0.8μm~2μmであってもよい。いくつかの実施例では、第1の圧電層822の厚さは、0.8μm~1.5μmであってもよい。第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823の厚さを設計調整することにより、骨伝導音響伝達装置800の振動中に第1の圧電層822が受けた変形応力の大きさを調整することができ、それにより第1の圧電層822が受けた変形応力を大きくし、音響変換ユニット820に大きな電気信号を発生させる。
いくつかの実施例では、第1の電極層821及び第2の電極層823の材質は、Mo、Cu、Al、Ti、Auなどの半導体に一般的に用いられた金属材料の1種又は複数種の組み合わせであってもよい。いくつかの実施例では、第1の圧電層822の材質は、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛圧電セラミック(PZT)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、酸化亜鉛(ZnO)などであってもよい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置800に必要な機能に応じて、基材(例えば、シリコンウェハ)にマイクロナノ加工プロセスで骨伝導音響伝達装置800の構造を製造する。例えば、基材に電子ビーム蒸着法又は物理的気相堆積法(PVD)におけるマグネトロンスパッタリング法などの方式で第2の電極層823を製造することができる。次に、第2の電極層823に電子ビーム蒸着法又は物理的気相堆積法(PVD)におけるマグネトロンスパッタリング法などの方式で第1の圧電層822を製造することができる。最後に、第1の圧電層822に再び電子ビーム蒸着法又は物理的気相堆積法(PVD)におけるマグネトロンスパッタリング法などの方式で第1の電極層821を製造することができる。いくつかの実施例では、基材上にエッチングストッパ層を製造することができ(例えば、第2の電極層823を製造する前)、エッチングストッパ層により電極層(例えば、第1の電極層又は第2の電極層)のサイズを正確に制御しやすくすることができ、エッチングストッパ層は、さらに後続のエッチングプロセスが基材を損傷することを防止することができる。具体的には、化学的気相堆積法(CVD)又は熱酸化法などの方式で基材上にエッチングストッパ層を製造することができる。エッチングストッパ層の厚さは、100nm~2μmであってもよく、いくつかの実施例では、エッチングストッパ層の厚さは、300nm~1μmであってもよい。
いくつかの実施例では、第1の電極層821、第1の圧電層822及び/又は第2の電極層823の面積は、支持アーム830の面積以下であり、第1の電極層821、第1の圧電層822及び/又は第2の電極層823の一部又は全部は、少なくとも1つの支持アーム830の上表面又は下表面を被覆する。いくつかの実施例では、第1の圧電層822が第1の電極層821と支持アーム830との間に位置する場合(例えば、第1の電極層821及び第1の圧電層822が上から下へ支持アームの上表面に設置される場合、又は第1の電極層821及び第1の圧電層822が下から上へ支持アームの下表面に設置される場合)、第1の電極層821の面積は、第1の圧電層822の面積以下であり、第1の電極層821の全領域は、第1の圧電層822の表面に位置する。別のいくつかの実施例では、第1の電極層821の面積は、第1の圧電層822の面積と等しくてもよい。
いくつかの実施例では、音響変換ユニット820の第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823は、質量素子840の支持アーム830に接続された一端に位置する。別のいくつかの実施例では、音響変換ユニット820の第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823は、支持アーム830の基体構造体810に接続された一端に位置する。別のいくつかの実施例では、音響変換ユニット820の第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823は、質量素子840の支持アーム830に接続された一端に位置し、同時に音響変換ユニット820の第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823は、支持アーム830の基体構造体810に接続された一端に位置する。質量素子840の支持アーム830に接続された一端及び支持アーム830の基体構造体810に接続された一端は、振動ユニットの振動中に大きな変形応力を有するため、音響変換ユニット820の第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823をこれら2つの領域に設置することで、大きな電気信号を発生させる。
いくつかの実施例では、質量素子840は、第1の電極層821又は第2の電極層823の上表面又は下表面に位置してもよい。例えば、質量素子840は、第1の電極層821の上表面に位置してもよいか、又は質量素子840は、第2の電極層823の下表面に位置してもよい。別のいくつかの実施例では、質量素子840の上表面は、第1の電極層821の上表面と面一又は略面一であってもよい。別のいくつかの実施例では、質量素子840の下表面は、第2の電極層823の下表面と面一又は略面一であってもよい。別のいくつかの実施例では、質量素子840の上表面は、第1の電極層821の上表面と面一又は略面一であってもよく、同時に質量素子840の下表面は、第2の電極層823の下表面と面一又は略面一であってもよい。
いくつかの実施例では、図10に示すように、音響変換ユニット820は、少なくとも1つの弾性層824を含んでもよい。少なくとも1つの弾性層824は、上記第1の電極層821又は第2の電極層823の上表面及び/又は下表面に位置してもよい。例えば、少なくとも1つの弾性層824は、第1の電極層821の上表面に位置してもよく、又は弾性層824は、第2の電極層823の下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、支持アーム830が複数の弾性層824である場合、音響変換ユニット820は、複数の弾性層824の間に位置してもよい。弾性層824は、振動中に変形することができ、第1の圧電層822は、弾性層824の変形に基づいて電気信号を発生させることができ、第1の電極層821及び第2の電極層823は、該電気信号を収集することができる。いくつかの実施例では、弾性層824の厚さは、0.5μm~10μmであってもよい。いくつかの実施例では、弾性層824の厚さは、2~6μmである。弾性層824の厚さを設計調整することで、骨伝導音響伝達装置800の振動中に第1の圧電層822が受けた変形応力の大きさを調整することができる。
いくつかの実施例では、弾性層824の厚さは、第1の圧電層822の厚さの1~6倍である。いくつかの好ましい実施例では、弾性層824の厚さは、第1の圧電層822の厚さの1~3倍である。厚さをこのように設定することにより、第1の圧電層822が中性層831から離れ、第1の圧電層822が受けた変形応力の大きさを増大させることができる。
いくつかの実施例では、弾性層824は、半導体材料で製造された板状構造であってもよい。いくつかの実施例では、半導体材料は、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素などを含んでもよい。いくつかの実施例では、音響変換ユニットが2つ以上の弾性層824を含む場合、異なる弾性層824の材料は、同じであってもよく、異なってもよい。いくつかの実施例では、弾性層824は、単層構造(例えば、単一の材料で製造された層構造)であってもよい。単層構造の材料は、シリコン(Si)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiNx)又は炭化ケイ素(SiC)などを含んでもよいが、それらに限定されない。いくつかの実施例では、弾性層824は、多層構造(例えば、複数種の材料で構成された多層構造であり、各層の構造は、単一の材料で製造されてもよい)を含んでもよい。例えば、多層構造は、シリコン及び二酸化ケイ素の組み合わせ材料、シリコン及び窒化ケイ素の組み合わせ材料などで製造されてもよい。いくつかの実施例では、エッチングストッパ層又は基材に化学的気相堆積法(CVD)又は物理的気相堆積法(PVD)などの方法で1層又は複数層の弾性層824を製造することができる。
いくつかの実施例では、音響変換ユニット820は、ボンディングワイヤ電極層826(PAD層)を含んでもよく、ボンディングワイヤ電極層826は、第1の電極層821及び第2の電極層823に位置してもよく、外部ボンディングワイヤ(例えば、金線、アルミニウム線など)の方式で第1の電極層821及び第2の電極層823を外部回路に接続することにより、第1の電極層821と第2の電極層823との間の電圧信号をバックエンド処理回路に導出する。いくつかの実施例では、ボンディングワイヤ電極層826の材料は、銅箔、チタン、及び銅などを含んでもよい。いくつかの実施例では、ボンディングワイヤ電極層826の厚さは、100nm~200nmであってもよい。いくつかの実施例では、ボンディングワイヤ電極層826の厚さは、150nm~200nmであってもよい。ボンディングワイヤ電極層826の厚さを設計調整することで、骨伝導音響伝達装置800の振動中に第1の圧電層822が受けた変形応力の大きさを調整することができる。
いくつかの実施例では、ボンディングワイヤ電極層826は、基体構造体810に設置される。例えば、ボンディングワイヤ電極層826は、基体構造体810の上表面又は下表面に設置されてもよい。ボンディングワイヤ電極層826は、基体構造体810から電気信号を導出することができる。いくつかの実施例では、電気信号は、以下の電極リード860により第1の電極層821又は第2の電極層823から基体構造体810に導出されてもよい。ボンディングワイヤ電極層826は、金属剥離プロセス(LIFT-OFFプロセス)又は、先に堆積し、次にエッチングするなどの製造プロセスで製造されてもよい。ボンディングワイヤ電極層826は、第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823がいずれも製造された後に製造されてもよい。
いくつかの実施例では、音響変換ユニット820は、第1のシード層825をさらに含んでもよい。いくつかの実施例では、第1のシード層825は、第2の電極層823と支持アーム830との間に位置してもよい。いくつかの実施例では、第1のシード層825は、弾性層824と第1の電極層821との間又は弾性層824と第2の電極層823との間に位置してもよい。いくつかの実施例では、第1のシード層825の材料は、第1の圧電層822の材料と同じであってもよい。例えば、第1の圧電層822の材料がAlNである場合、第1のシード層825の材料もAlNである。いくつかの実施例では、第1のシード層825の材料は、第1の圧電層822の材料と異なってもよい。なお、上記骨伝導音響伝達装置800の共振周波数の特定の周波数範囲は、2000Hz~5000Hzに限定されず、4000Hz~5000Hz又は2300Hz~3300Hzなどであってもよく、特定の周波数範囲は、実際の状況に応じて調整されてもよい。また、質量素子840が支持アーム830に対して上向きに突出する場合、音響変換ユニット820は、支持アーム830の下表面に位置してもよく、第1のシード層825は、質量素子840と支持アーム830との間に位置してもよい。いくつかの実施例では、第1のシード層825の厚さは、10~120nmであってもよい。いくつかの実施例では、第1のシード層825の厚さは、40μm~80nmであってもよい。第1のシード層825の厚さを設計調整することで、骨伝導音響伝達装置800の振動中に第1の圧電層822が受けた変形応力の大きさを調整することができる。
第1のシード層825を設置することで、他の層に良好な成長表面構造体を提供することができる。例えば、弾性層824が電極層(第1の電極層821又は第2の電極層823)に安定して付着しにくい可能性があるため、電極層(第1の電極層821又は第2の電極層823)に第1のシード層825を付着してから、弾性層824を第1のシード層825に付着することにより、各層の間の安定的な接続を実現することができる。いくつかの実施例では、第1のシード層825は、弾性層824の上表面に製造されてもよい。第1のシード層825は、化学的気相堆積法(CVD)又は物理的気相堆積(PVD)などの方法で製造されてもよい。
いくつかの実施例では、弾性層824は、支持アーム830と第1の電極層821との間に設置されてもよく、第1のシード層825は、弾性層824と第1の電極層821との間に設置されてもよい。あるいは、弾性層824は、支持アーム830と第2の電極層823との間に設置されてもよく、第1のシード層825は、弾性層824と第2の電極層823との間に設置されてもよい。例えば、音響変換ユニット820が支持アーム830の上表面に設置される場合、弾性層824、第1のシード層825、第2の電極層823、第1の圧電層822及び第1の電極層821は、下から上へ順に設置される。あるいは、音響変換ユニット820が支持アーム830の下表面に設置される場合、弾性層824、第1のシード層825、第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823は、上から下へ順に設置される。このような設置により、大きな電気信号を発生させることを保証することができ、かつ音響変換ユニット820の各層の構造の間の接続が安定する。
図11は、図8に示された振動状態の骨伝導音響伝達装置の正面図であり、図12は、図11に示された骨伝導音響伝達装置のD-Dでの断面図である。図11及び図12に示すように、骨伝導音響伝達装置800の振動ユニット(例えば、支持アーム830)は、変形するときに中性層831が存在し、中性層831は、支持アーム830が変形するときに変形応力がゼロである。つまり、中性層831は、支持アーム830が変形するときに変形応力がゼロである位置の層である。圧電材料(すなわち、第1の圧電層822)の出力電気信号の大きさは、応力の大きさに関連し、厚さ方向の各層の厚さは、各層の同じ振動信号での応力分布に影響を与える。中性層831は、変形応力がゼロである位置の層であるため、支持アーム830が変形する過程において、厚さ方向に中性層831に近接するほど、変形応力が小さくなる。
前述の内容に基づいて、本願に係る実施例では、弾性層824及び他の層の構造の厚さ及び接続順序を設計することにより、第1の圧電層822と中性層831が重ならず、それにより、第1の圧電層822が変形応力を受けることができることを保証し、さらに第1の圧電層822が第1の電極層821及び/又は第2の電極層823と相互作用して電気信号を発生させることができる。さらに、本願の実施例における各層の厚さを設計することにより、第1の圧電層822ができるだけ中性層831から離れることができ、それにより、第1の圧電層822が受けた変形応力をできるだけ大きくし、出力された電気信号をできるだけ大きくし、装置の感度をできるだけ高くする。
いくつかの実施例では、質量素子840は、単層構造又は多層構造であってもよい。いくつかの実施例では、質量素子840は、多層構造であり、質量素子840の層数、各層の構造に対応する材料、及びパラメータは、支持アーム830の弾性層824及び音響変換ユニット820と同じであってもよく、異なっていてもよい。いくつかの実施例では、質量素子840の形状は、円形、半円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの規則的又は不規則的な形状であってもよい。いくつかの実施例では、質量素子840の厚さは、支持アーム830及び音響変換ユニット820の総厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。質量素子840が多層構造である場合の材料及びサイズについて、音響変換ユニット820を参照することができ、本明細書では説明を省略する。また、ここでの音響変換ユニット820の各層構造の材料及びパラメータは、図1、図3、図4、図5及び図7に示された骨伝導音響伝達装置に適用されてもよい。
いくつかの実施例では、質量素子840は、下から上へ順に設置された第3の電極層、第2の圧電層及び第4の電極層を含む。第3の電極層の材質、機能及び製造方法は、第1の電極層821の材質、機能及び製造方法と類似してもよく、第2の圧電層の材質、機能及び製造方法は、第1の圧電層822の材質、機能及び製造方法と類似してもよく、第4の電極層の材質、機能及び製造方法は、第2の電極層823の材質、機能及び製造方法と類似してもよく、ここでは説明を省略する。いくつかの実施例では、質量素子840は、下地層をさらに含んでもよい。下地層は、第3の電極層、第2の圧電層及び第4の電極層を載置し、かつ質量素子840の重量を増加させ、質量素子840の慣性を向上させ、さらに骨伝導音響伝達装置800の感度を向上させることができる。いくつかの実施例では、質量素子840は、下地層と第3の電極層との間に設置された第2のシード層をさらに含む。第2のシード層の材質、機能及び製造方法は、第1のシード層825の材質、機能及び製造方法と類似し、ここでは説明を省略する。いくつかの実施例では、下地層の厚さは、20μm~400μmである。いくつかの実施例では、下地層の厚さは、300μm~400μmであってもよい。いくつかの実施例では、下地層の厚さは、200μm~300μmであってもよい。
いくつかの実施例では、質量素子840の厚さ方向に垂直な断面の形状は、四角形である。いくつかの実施例では、質量素子840の厚さ方向に垂直な断面の形状は、矩形である。いくつかの実施例では、該矩形の少なくとも1つの辺の長さは、600μm~1200μmであってもよい。いくつかの実施例では、該矩形の少なくとも1つの辺の長さは、750μm~1050μmであってもよい。
いくつかの実施例では、質量素子840及び支持アーム830における音響変換ユニット820は、異なる基材(例えば、異なるシリコンウェハ)に製造されてもよく、同じ基材に製造されてもよい。いくつかの実施例では、質量素子840及び支持アーム830における音響変換ユニット820が異なる基材に製造される場合、質量素子840は、基材にフォトリソグラフィ、エッチングなどのプロセスにより製造されてもよい。次に、質量素子840が製造されたシリコン基材と支持アーム830及び基体構造体810が製造された基材とをウェハレベルで接合することができる。いくつかの実施例では、接合領域は、質量素子840の領域であってもよい。別のいくつかの実施例では、接合領域は、質量素子840の領域及び基体構造体810の一部の領域を含んでもよい。いくつかの実施例では、基体構造体810における接合領域の面積は、基体構造体810の厚さ方向に垂直な断面の面積の10%~90%を占めてもよい。いくつかの実施例では、ウェハ薄化プロセスを用いて、質量素子840が所在する基材の、質量素子840以外の余分な材料を除去することができる。別のいくつかの実施例では、支持アーム830が製造された基材に、さらに質量素子840を製造することができる。具体的には、支持アーム830が製造された基材の他側(支持アーム830が製造された側の対向側)に、接着剤の均一化及びフォトリソグラフィ現像処理などの操作を行って、ディープシリコンエッチングプロセスを用いて一定の深さまでエッチングすることができる。次に、さらにディープシリコンエッチングプロセスを用いて質量素子840をエッチングする。
いくつかの実施例では、音響変換ユニット820は、少なくとも、有効な音響変換ユニットを含んでもよい。有効な音響変換ユニットとは、最終的に電気信号を出力する音響変換ユニットの一部の構造である。いくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットは、第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823の3者の重なり領域を含んでもよい。例えば、第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823の形状及び面積がいずれも同じであり、かつ支持アーム830(又は弾性層824)を部分的に被覆すると、第1の電極層821、第1の圧電層822、及び第2の電極層823は、有効な音響変換ユニットである。また例えば、第1の電極層821及び第1の圧電層822が支持アーム830を部分的に被覆し、第2の電極層823が支持アーム830を完全に被覆すると、第1の電極層821、第1の圧電層822、及び第2の電極層823の第1の電極層821に対応する部分は、有効な音響変換ユニットを構成する。さらに例えば、第1の電極層821が支持アーム830を部分的に被覆し、第1の圧電層822及び第2の電極層823がいずれも支持アーム830を完全に被覆すると、第1の電極層821、第1の圧電層822の第1の電極層821に対応する部分、及び第2の電極層823の第1の電極層821に対応する部分は、有効な音響変換ユニットを構成する。さらに例えば、第1の電極層821、第1の圧電層822、及び第2の電極層823が支持アーム830を完全に被覆するが、第1の電極層821に絶縁チャネル(例えば、電極絶縁チャネル850)を設置することにより第1の電極層821を複数の個別の電極に分割すると、第1の電極層821における電気信号を導出する個別の電極部分及び対応する第1の圧電層822、第2の電極層823部分は、有効な音響変換ユニットである。第1の電極層821における電気信号を導出しない個別の電極領域と、第1の電極層821における電気信号を導出しない個別の電極領域と、絶縁チャネルに対応する第1の圧電層822及び第2の電極層823の領域とは、電気信号を提供せず、主に力学的作用を提供する。骨伝導音響伝達装置800の信号対雑音比を向上させるために、有効な音響変換ユニットを、支持アーム830の質量素子840に近接する箇所、又は支持アーム830と基体構造体810との接続箇所に近接する箇所に設置してもよい。いくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットを、支持アーム830の質量素子840に近接する位置に設置する。いくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットを、支持アーム830の質量素子840に近接する箇所、又は支持アーム830と基体構造体810との接続箇所に近接する箇所に設置する場合、有効な音響変換ユニットによって被覆された支持アーム830の面積と支持アーム830の面積(支持アーム830の厚さ方向に垂直な断面の面積)との比は、5%~40%である。いくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットによって被覆された支持アーム830の面積と支持アーム830の面積(支持アーム830の厚さ方向に垂直な断面の面積)との比は、25%~40%である。さらにいくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットによって被覆された支持アーム830の面積と支持アーム830の面積(支持アーム830の厚さ方向に垂直な断面の面積)との比は、30%~35%である。
信号対雑音比(SIGNAL-NOISERATIO、SNRと略称される)とは、電子装置又は電子システムにおける信号とノイズとの比である。骨伝導音響伝達装置において、信号対雑音比が大きければ大きいほど、骨伝導音響伝達装置の電気信号の強度が大きく、ノイズが小さく、骨伝導音響伝達装置の効果が高い。したがって、信号対雑音比は、骨伝導音響伝達装置の設計過程において非常に重要なパラメータであり、いくつかの実施例では、信号対雑音比SNRは、骨伝導音響伝達装置の感度Vs及び骨伝導音響伝達装置のノイズフロアVntrmsに関連する。いくつかの実施例では、信号対雑音比SNRは、骨伝導音響伝達装置の感度Vsと正の相関関係にあり、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアVntrmsと負の相関関係にある。いくつかの実施例では、信号対雑音比SNRは、
と正の相関関係にある。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置の信号対雑音比SNRは、以下の式(1)によって算出することができる。
式中、Vsは、骨伝導音響伝達装置の感度である。Vsは、圧電定数、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の内部応力に関連し、圧電定数は、圧電層の材料に関連し、圧電層の内部応力は、骨伝導音響伝達装置の構造及び外部荷重に関連する。いくつかの実施例では、モデルを確立した後、有限要素法の数値的な方法により、異なる骨伝導音響伝達装置の構造の対応する外部荷重での感度値Vsを求めることができる。Vntrmsは、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアであり、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアVntrmsは、増幅回路(ASIC)のノイズフロア値Vnarms及びトランスデューサ(音響変換ユニット)のノイズフロア値Vnsrmsなどのパラメータにより決定することができる。骨伝導音響伝達装置のノイズフロアVntrmsは、増幅回路(ASIC)のノイズフロア値Vnarms及びトランスデューサのノイズフロア値Vnsrmsの両方と正の相関関係にある。Vnarmsは、増幅回路(ASIC)のノイズフロア値であり、増幅回路の設計過程において算出されるか又はメーカーから知ることができる。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアVntrmsは、ボルツマン定数KB、華氏温度T、静電気力定数k、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の誘電損失tanδ、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の誘電率εr、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の厚さd、骨伝導音響伝達装置の有効な音響変換ユニットの面積S、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアの低周波遮断周波数f0、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアの高周波遮断周波数f1などのパラメータに関連してもよい。
いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアVntrmsは、ボルツマン定数KB、華氏温度T、静電気力定数k、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の誘電率εr、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の厚さd及び骨伝導音響伝達装置のノイズフロアの高周波遮断周波数f1などのパラメータと正の相関関係にあってもよい。骨伝導音響伝達装置のノイズフロアVntrmsは、骨伝導音響伝達装置の有効な音響変換ユニットの面積S、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアの低周波遮断周波数f0、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の誘電損失tanδと負の相関関係にあってもよい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアVntrmsは、以下の式(2)によって算出することができる。
Vntrms=f(Vnsrms、Vnarms)=f(KB、T、k、tanδ、εr、d、S、f1、f0、Vnarms、ASICゲイン)(2)
式中、ASICゲインは、増幅回路のゲインであり、増幅回路の設計過程において算出されるか又はメーカーから知ることができる。KBは、ボルツマン定数であり、Tは、華氏温度であり、kは、静電気力定数であり、tanδは、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の誘電損失であり、εrは、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の誘電率であり、dは、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の厚さであり、Sは、骨伝導音響伝達装置の有効な音響変換ユニットの面積であり、f0は、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアの低周波遮断周波数であり、f1は、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアの高周波遮断周波数である。
式(2)を式(1)に代入すると、骨伝導音響伝達装置の信号対雑音比SNRを決定する式(3)を得ることができる。
式(3)における各パラメータの意味について、以上の説明を参照する。上記式(3)において、圧電材料の誘電損失tanδ、及び圧電材料の誘電率εrは、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の材料に関連する。上記式(3)から分かるように、信号対雑音比は、有効な音響変換ユニットの面積、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の厚さ、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の材料、感度(感度が骨伝導音響伝達装置の材料及び構造の影響を受ける)などの要因に関連する。
本特許で提供された骨伝導音響伝達装置の信号対雑音比(SNR)に基づいて式を解くことにより、それぞれ電極層(第1の電極層821及び第2の電極層823)、圧電層(第1の圧電層822及び第2の圧電層)、弾性層824及び質量素子840などの材料を設計し、かつ骨伝導音響伝達装置の構造を設計し、それにより、設計案が共振周波数f0の範囲要件を満たすとともに、骨伝導音響伝達装置の信号対雑音比(SNR)を最大化することができる。例えば、支持アームに質量素子を追加した構造(又は片持ち梁の構造、孔を開けたサスペンション膜構造体、サスペンション膜に質量素子を追加した構造など)になるように設計し、骨伝導音響伝達装置の異なる部材のサイズを設計し、例えば、支持アーム830、質量素子840などの長さ、幅、厚さ及び有効な音響変換ユニットの面積などを設計する。単に例示として、支持アームに質量素子を追加した構造において、音響変換ユニット820、支持アーム830及び質量素子840の各部分の材料、サイズなどを設計することにより、支持アーム830の剛性と質量素子840の質量を調整して、支持アーム830に応力を集中させることができる。支持アーム830での応力集中により、骨伝導音響伝達装置の出力電気信号を増大させて、骨伝導音響伝達装置の出力感度及び信号対雑音比を最大化することができる。上記設計過程において、設計された骨伝導音響伝達装置が高い信頼性を有することを保証するために、材料、構造及び異なる部材のサイズを調整することにより、信号対雑音比SNRをSNRの最大値より小さくするように調整し、例えば、SNRをSNRの最大値の80%~100%に設計し、SNRをSNRの最大値の50%~100%に設計し、SNRをSNRの最大値の20%~100%に設計する。
有効な音響変換ユニットによって被覆された支持アーム830の面積が小さければ小さいほど、最終的に発生した電気信号の強度が大きいが、有効な音響変換ユニットの面積が小さくなると、その静電容量が小さくなり、最終的に出力されたノイズが増加する。有効な音響変換ユニットによって被覆された支持アーム830の面積と支持アーム830の面積(支持アーム830の厚さ方向に垂直な断面の面積)との比を上記比(例えば、25%~40%)に設定することにより、有効な音響変換ユニットによって発生した電気信号の強度を大きくにし、ノイズを小さくにすることができ、それにより骨伝導音響伝達装置800の音響伝達効果を向上させる。
骨伝導音響伝達装置800の信号対雑音比は、出力電気信号の強度と正の相関関係にあり、積層構造体が基体構造体810に対して相対的に移動する場合、支持アーム830と質量素子840との接続箇所及び支持アーム830と基体構造体810との接続箇所の変形応力は、支持アーム830の中間領域の変形応力より大きく、それに応じて、支持アーム830と質量素子840との接続箇所及び支持アーム830と基体構造体810との接続箇所の出力電圧の強度も支持アーム830の中間領域の出力電圧の強度より大きい。いくつかの実施例では、図13及び図14に示すように、音響変換ユニット820が支持アーム830の上表面又は下表面を完全に又はほぼ完全に被覆する場合、骨伝導音響伝達装置800の信号対雑音比を向上させるために、第1の電極層821に電極絶縁チャネル850を設置してもよく、電極絶縁チャネル850が第1の電極層821を2つの部分(又は複数の部分)に分割することにより、第1の電極層821の一部が質量素子840に近接し、第1の電極層821の他の一部が支持アーム830と基体構造体810との接続箇所に近接する。第1の電極層821及びその対応する第1の圧電層822、第2の電極層823における電極絶縁チャネル850により分割された2つの部分のうちの電気信号を導出する部分は、有効な音響変換ユニットである。いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル850は、支持アーム830の幅方向に沿って延在する直線であってもよい。いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル850の幅は、20μm以下であってもよい。いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル850の幅は、2μm~20μmであってもよい。いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル850の幅は、4μm~10μmであってもよい。
いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル850は、第1の電極層821又は第2の電極層823に設置される。例えば、音響変換ユニット820が支持アーム830の上表面に設置される場合、電極絶縁チャネル850は、第1の電極層821に設置され、音響変換ユニット820が支持アーム830の下表面に設置される場合、電極絶縁チャネル850は、第2の電極層823に設置される。電極絶縁チャネル850は、第1の電極層821又は第2の電極層823を2つ以上の電極領域に分割する。分割された電極領域の数は、2つ、3つ、5つなどであってもよい。電極絶縁チャネル850の幅を上記のように設計することで、従来の加工プロセスにより加工することができることを保証することができ、同時に骨導マイクロフォンのSNRへの影響をできるだけ低減することができる。
支持アーム830の基体構造体810に接続された一端から、支持アーム830の質量素子840に接続された一端までの応力は、引張応力から圧縮応力に変化するか、又は圧縮応力から引張応力に変化する。電極層(例えば、第1の電極層821)は、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の表面に分布して電荷を収集し、圧電層(例えば、第1の圧電層822)の異なる位置の応力が異なると、出力電荷量も異なり、骨伝導音響伝達装置の出力感度を最大化するために、電極絶縁チャネル850により電極層(例えば、第1の電極層821)を圧電層(例えば、第1の圧電層822)の表面に個別に被覆された複数枚の電極に分割することができる。信号を収集するときに、一部の個別の電極層の位置に基づいて適切な一部の個別の電極層を選択して信号を出力することができる。電極絶縁チャネル850を設計するとき、出力感度を大きくし、骨伝導音響伝達装置のノイズフロアを小さくするように、電気信号を導出する一部の電極層によって被覆された支持アーム830の面積をできるだけ大きくすることができ、それにより信号対雑音比(SNR)を増大させる。
なお、電極絶縁チャネル850は、支持アーム830の幅方向に沿って延在する直線に限定されず、曲線、折り曲げ線、波線などであってもよい。また、電極絶縁チャネル850、例えば、図14に示された電極絶縁チャネル850は、支持アーム830の幅方向に沿って延在しなくてもよく、電極絶縁チャネル850は、音響変換ユニット820を複数の部分に分割することができればよく、本明細書ではさらに限定しない。
図14に示すように、音響変換ユニット820の一部の構造(例えば、図13における電極絶縁チャネル850と質量素子840との間の音響変換ユニット)が支持アーム830の質量素子840に近接する位置に設置される場合、第1の電極層821及び/又は第2の電極層823は、電極リード860をさらに含んでもよい。第1の電極層821を例として、電極絶縁チャネル850は、第1の電極層821を2つの部分に分割し、第1の電極層821の一部は、質量素子840に接続されるか又は質量素子840に近接し、第1の電極層821の他の一部は、支持アーム830と基体構造体810との接続箇所に近接し、音響変換ユニット820の質量素子840に近接する部分の電圧を出力するために、電極絶縁チャネル850により支持アーム830と基体構造体810との接続箇所に近接する第1の電極層821から一部の領域(図14に示された第1の電極層821における支持アーム830の縁部に位置する領域)を分割してもよく、該一部の領域は、音響変換ユニット820の質量素子840に接続される部分又は質量素子840に近接する部分を、骨伝導音響伝達装置800の処理ユニットに電気的に接続する。いくつかの実施例では、電極リード860の幅L1は、20μm以下である。いくつかの実施例では、電極リード860の幅L1は、4μm~20μmであってもよい。いくつかの実施例では、電極リード860の幅L1は、4μm~10μmであってもよい。いくつかの実施例では、電極リード860は、支持アーム830の幅方向の任意の位置に位置してもよく、例えば、電極リード860は、支持アーム830の中央又は幅方向の縁部に近接する箇所に位置してもよい。いくつかの実施例では、電極リード860は、支持アーム830の幅方向の縁部に近接する位置に位置してもよい。電極リード860を設置することにより、音響変換ユニット820における導電線の使用を避けて、構造を簡略化し、後続の製造及び組立を容易にすることができる。
いくつかの実施例では、第1の電極層821には、電極領域と基体構造体810を接続する電極リード860がある。いくつかの実施例では、電極リード860は、音響変換ユニット820が発生した電気信号を基体構造体810に出力し、ボンディングワイヤ電極層826は、電気信号をさらに基体構造体810から導出することができる。電極リード860の幅を設計することにより、支持アーム830における電極領域を容易に計画することができ、同時に電極リード860の加工を容易にする。
支持アーム830の縁部に近接する領域でエッチングにより第1の圧電層822の圧電材料の表面が荒れて圧電材料の品質を低下させる可能性があることを考慮して、いくつかの実施例では、第1の圧電層822の面積が第2の電極層823の面積と同じである場合、第1の電極層821を品質の高い圧電材料領域内に位置させるために、第1の電極層821の面積を第1の圧電層822の面積より小さくし、それにより、第1の電極層821の縁部領域が第1の圧電層822の縁部領域を避けて、第1の電極層821と第1の圧電層822との間に電極収縮チャネル870(図15に示すように)を形成することができる。電極収縮チャネル870を設置することにより、第1の電極層821及び第2の電極層823は、第1の圧電層822の縁部の品質が低い領域を避け、それにより、骨伝導音響伝達装置800の信号対雑音比を向上させることができる。いくつかの実施例では、電極収縮チャネル870の幅は、2μm~20μmであってもよい。いくつかの実施例では、電極収縮チャネル870の幅は、2μm~10μmであってもよい。
いくつかの実施例では、第1の圧電層822の縁部には、電極収縮チャネル870が形成される。第1の電極層821は、第1の圧電層822の電極収縮チャネル870以内の領域に位置する。いくつかの実施例では、電極収縮チャネル870の幅は、20μmより小さい。いくつかの好ましい実施例では、電極収縮チャネル870の幅は、2~10μmであってもよい。電極収縮チャネル870の幅を設計することにより、支持アーム830における電極領域を容易に計画することができ、同時に電極収縮チャネル870の加工を容易にする。
いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置800は、本明細書の1つ以上の実施例における電極絶縁チャネル850、電極リード860及び電極収縮チャネル870の構造を同時に含んでもよい。電極絶縁チャネル850、電極リード860及び電極収縮チャネル870は、エッチングの方法で製造されてもよい。例えば、第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823に順にエッチングを行うこともできる。第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823に対するエッチングは、ドライエッチングを用いてもよく、ウェットエッチングを用いてもよい。弾性層824が設置される場合、さらに弾性層824に対してエッチングを行ってもよい。いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル850、電極リード860及び電極収縮チャネル870のエッチングが完了した後、ボンディングワイヤ電極層826を第1の電極層821に設置してもよい。
図16に示すように、質量素子840が支持アーム830に対して下向きに突出する場合を例として、音響変換ユニット820は、支持アーム830の長手方向に沿って延在する延在領域8210をさらに含んでもよく、該延在領域8210は、質量素子840の上表面に位置する。いくつかの実施例では、第1の電極層821、第1の圧電層822及び第2の電極層823の重なり領域は、質量素子840に向かって延在して質量素子840に延在領域8210を形成する。延在領域8210は、支持アーム830と質量素子840との接続箇所に応力が集中することを防止することができる。延在領域8210は、質量素子840の上表面に位置してもよく、質量素子840の下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、延在領域8210の質量素子840の上表面に位置する縁部位置には、電極絶縁チャネル850が設置されることにより、支持アーム830に応力が過剰に集中するという問題の発生を防止し、支持アーム830の安定性を向上させることができる。いくつかの実施例では、延在領域8210の長さ(厚さ方向に垂直な平面での長さであり、図16における長さW0を参照)は、支持アーム830の幅(厚さ方向に垂直な平面での幅であり、図16における幅W2を参照)より大きい。ここでの延在領域8210の長さは、支持アーム830に沿った幅に対応する。いくつかの実施例では、延在領域8210の長さ(厚さ方向に垂直な平面での長さであり、図16における長さW0を参照)は、4μm~30μmである。いくつかの実施例では、延在領域8210の長さは、4μm~15μmである。いくつかの実施例では、質量素子840における延在領域8210の幅(厚さ方向に垂直な平面での幅であり、図16における幅W1を参照)は、支持アーム830と質量素子840の縁部との接続部位の幅(厚さ方向に垂直な平面での幅であり、図16における幅W2を参照)の1.2倍~2倍である。いくつかの実施例では、質量素子840における延在領域8210の幅は、支持アーム830と質量素子840の縁部との接続部位の幅の1.2倍~1.5倍である。いくつかの実施例では、質量素子840における延在領域8210の幅は、支持アーム830と質量素子840の縁部との接続部位の幅と等しい。
図17は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の概略構成図であり、図18は、図17に示された骨伝導音響伝達装置のE-Eでの断面図である。図17及び図18に示された骨伝導音響伝達装置1700の全体構造は、図8に示された骨伝導音響伝達装置800の全体構造とほぼ同じであるが、支持アームの形状が異なるという点で相違する。図17に示すように、基体構造体1710は、直方体フレーム構造である。いくつかの実施例では、基体構造体1710の内部は、音響変換ユニット1720と振動ユニットを吊り下げるための中空部分を含んでもよい。いくつかの実施例では、中空部分の形状は、円形、四角形(例えば、長方形、平行四辺形)、五角形、六角形、七角形、八角形などの他の規則的又は不規則的な形状であってもよい。いくつかの実施例では、振動ユニットは、4つの支持アーム1730及び質量素子1740を含んでもよく、4つの支持アーム1730は、一端が基体構造体1710の上表面、下表面又は基体構造体1710の中空部分の所在する側壁に接続され、他端が質量素子1740の上表面、下表面又は周方向の側壁に接続される。いくつかの実施例では、質量素子1740は、支持アーム1730に対して上向き及び/又は下向きに突出してもよい。例えば、4つの支持アーム1730の端部が質量素子1740の上表面に接続される場合、質量素子1740は、支持アーム1730に対して下向きに突出してもよい。また例えば、4つの支持アーム1730の端部が質量素子1740の下表面に接続される場合、質量素子1740は、支持アーム1730に対して上向きに突出してもよい。さらに例えば、4つの支持アーム1730の端部が質量素子1740の周方向の側壁に接続される場合、質量素子1740は、支持アーム1730に対して上向き及び下向きに突出してもよい。いくつかの実施例では、質量素子1740の上表面は、支持アーム1730の上表面と同一水平面にあり、及び/又は、質量素子1740の下表面は、支持アーム1730の下表面と同一水平面にある。いくつかの実施例では、支持アーム1730の形状は、台形であり、すなわち、支持アーム1730の厚さ方向に垂直な断面の形状は、台形である。支持アーム1730の長さが小さい一端(台形の短辺)は、質量素子1740に接続され、支持アーム1730の長さが大きい一端(台形の長辺)は、基体構造体1710に接続される。別のいくつかの実施例では、支持アーム1730の長さが大きい一端(台形の長辺)は、質量素子1740に接続され、支持アーム1730の長さが小さい一端(台形の短辺)は、基体構造体1710に接続される。
いくつかの実施例では、台形の高さ(図17示された高さh)は、150μm~600μmである。いくつかの実施例では、台形の高さは、200μm~500μmである。いくつかの実施例では、台形の長辺の長さは、300μm~600μmである。いくつかの実施例では、台形の長辺の長さは、350μm~550μmである。いくつかの実施例では、台形の短辺の長さは、100μm~400μmである。いくつかの実施例では、台形の短辺の長さは、150μm~300μmである。さらにいくつかの実施例では、台形の短辺の長さは、150μm~250μmである。支持アーム1730の関連サイズ(例えば、台形の長辺の長さ、短辺の長さ、高さなど)を設計することにより、支持アーム1730の剛性を調整することができ、それにより骨伝導音響伝達装置1700の共振周波数を調整する。
いくつかの実施例では、音響変換ユニット1720は、第1の電極層1721、第1の圧電層1722、第2の電極層1723、弾性層1731、第1のシード層(1724)及びボンディングワイヤ電極層(図示せず)を含んでもよい。各層の材料、厚さ、設置順序、製造方式などは、いずれも図8に示された実施例と類似し、ここでは説明を省略する。
いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置1700の信号対雑音比を向上させるために、有効な音響変換ユニットを、支持アーム1730の質量素子1740に近接する箇所、又は支持アーム1730と基体構造体1710との接続箇所に近接する箇所に設置してもよい。いくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットを、支持アーム1730の質量素子1740に近接する位置に設置する。いくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットを、支持アーム1730の質量素子1740に近接する箇所、又は支持アーム1730と基体構造体1710との接続箇所に近接する箇所に設置する場合、有効な音響変換ユニットによって被覆された支持アーム1730の面積と支持アーム1730の面積との比は、5%~40%である。いくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットによって被覆された支持アーム1730の面積と支持アーム1730の面積(支持アーム1730の厚さ方向に垂直な断面の面積)との比は、10%~35%である。さらにいくつかの実施例では、有効な音響変換ユニットによって被覆された支持アーム1730の面積と支持アーム1730の面積(支持アーム1730の厚さ方向に垂直な断面の面積)との比は、15%~20%である。
骨伝導音響伝達装置1700の信号対雑音比は、出力電気信号の強度と正の相関関係にあり、積層構造体が基体構造体1710に対して相対的に移動する場合、支持アーム1730と質量素子1740との接続箇所及び支持アーム1730と基体構造体1710との接続箇所の変形応力は、支持アーム1730の中間領域の変形応力より大きく、それに応じて、支持アーム1730と質量素子1740との接続箇所及び支持アーム1730と基体構造体1710との接続箇所の出力電圧の強度も支持アーム1730の中間領域の出力電圧の強度より大きい。いくつかの実施例では、図19に示すように、音響変換ユニット1720が支持アーム1730の上表面又は下表面を完全に又はほぼ完全に被覆する場合、骨伝導音響伝達装置1700の信号対雑音比を向上させるために、第1の電極層1721に電極絶縁チャネル1750を設置してもよく、電極絶縁チャネル1750が第1の電極層1721を少なくとも2つの部分に分割することにより、第1の電極層1721の一部が質量素子1740に近接し、第1の電極層1721の他の一部が支持アーム1730と基体構造体1710との接続箇所に近接する。いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル1750は、支持アーム1730の幅方向に沿って延在する直線であってもよい。いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル1750の幅は、2μm~20μmであってもよい。いくつかの実施例では、電極絶縁チャネル1750の幅は、4μm~10μmであってもよい。
なお、電極絶縁チャネル1750は、支持アーム1730の幅方向に沿って延在する直線に限定されず、曲線、折り曲げ線、波線などであってもよい。また、電極絶縁チャネル1750、例えば、図20に示された電極絶縁チャネル1750は、支持アーム1730の幅方向に沿って延在しなくてもよく、電極絶縁チャネル1750は、音響変換ユニット1720を複数の部分に分割することができればよく、本明細書ではさらに限定しない。
図20に示すように、音響変換ユニット1720の一部の構造(例えば、図19における電極絶縁チャネル1750と質量素子1740との間の音響変換ユニット)が支持アーム1730の質量素子1740に近接する位置に設置される場合、第1の電極層1721及び/又は第2の電極層1723は、電極リード1760をさらに含んでもよい。第1の電極層1721を例として、電極絶縁チャネル1750は、第1の電極層1721を2つの部分に分割し、第1の電極層1721の一部は、質量素子1740に接続されるか又は質量素子1740に近接し、第1の電極層1721の他の一部は、支持アーム1730と基体構造体1710との接続箇所に近接し、音響変換ユニット1720の質量素子1740に近接する部分の電圧を出力するために、電極絶縁チャネル1750により支持アーム1730と基体構造体1710との接続箇所に近接する第1の電極層1721から一部の領域(図に示された第1の電極層1721における支持アーム1730の縁部に位置する領域であり、電極リード1760と記する)を分割してもよく、電極リード1760は、音響変換ユニット1720の質量素子1740に接続される部分又は質量素子1740に近接する部分を、骨伝導音響伝達装置1700の処理ユニットに電気的に接続する。いくつかの実施例では、電極リード1760の幅L2は、4μm~20μmであってもよい。いくつかの実施例では、電極リード1760の幅L2は、4μm~10μmであってもよい。いくつかの実施例では、電極リード1760は、支持アーム1730の幅方向の任意の位置に位置してもよく、例えば、電極リード1760は、支持アーム1730の中央又は幅方向の縁部に近接する箇所に位置してもよい。いくつかの実施例では、電極リード1760は、支持アーム1730の幅方向の縁部に近接する位置に位置してもよい。電極リード1760を設置することにより、音響変換ユニット1720における導電線の使用を避けて、構造を簡略化し、後続の製造及び組立を容易にすることができる。
支持アーム1730の縁部に近接する領域でエッチングにより第1の圧電層1722の圧電材料の表面が荒れて圧電材料の品質を低下させる可能性があり、いくつかの実施例では、第1の圧電層1722の面積が第2の電極層1723の面積と同じである場合、第1の電極層1721を第1の圧電層1722の品質の高い圧電材料領域内に位置させるために、第1の電極層1721の面積を第1の圧電層1722の面積より小さくし、それにより、第1の電極層1721の縁部領域が第1の圧電層1722の縁部領域を避けて、第1の電極層1721と第1の圧電層1722との間に電極収縮チャネルを形成することができる(該電極収縮チャネルの構造は、図15における電極収縮チャネル870の構造と類似する)。電極収縮チャネルを設置することにより、第1の電極層1721及び第2の電極層1723は、第1の圧電層1722の縁部の品質が低い領域を避け、それにより、骨伝導音響伝達装置1700の信号対雑音比を向上させることができる。いくつかの実施例では、電極収縮チャネルの幅は、2μm~20μmであってもよい。いくつかの実施例では、電極収縮チャネルの幅は、2μm~10μmであってもよい。
図20に示すように、いくつかの実施例では、質量素子1740が支持アーム1730に対して下向きに突出する場合を例として、音響変換ユニット1720は、支持アーム1730の長手方向に沿って延在する延在領域17210をさらに含んでもよく、該延在領域17210は、質量素子1740の上表面に位置する。いくつかの実施例では、第1の電極層1721、第1の圧電層1722及び第2の電極層1723の重なり領域は、質量素子1740に向かって延在して延在領域17210を形成する。延在領域17210は、質量素子1740の上表面に位置してもよく、質量素子1740の下表面に位置してもよい。いくつかの実施例では、延在領域17210の質量素子1740の上表面に位置する縁部位置には、電極絶縁チャネル1750が設置されることにより、支持アーム1730に応力が過剰に集中するという問題の発生を防止し、支持アーム1730の安定性を向上させることができる。いくつかの実施例では、延在領域17210の幅(厚さ方向に垂直な平面での幅であり、図20における幅W3を参照)は、支持アーム1730の幅(厚さ方向に垂直な平面での幅であり、図20における幅W4を参照)より大きい。ここでの延在領域17210の幅は、支持アーム1730の幅に対応する。いくつかの実施例では、延在領域17210の幅は、4μm~30μmである。いくつかの実施例では、延在領域17210の幅は、4μm~15μmである。いくつかの実施例では、質量素子1740における延在領域17210の幅は、支持アーム1730と質量素子1740の縁部との接続部位の幅の1.2倍~2倍である。いくつかの実施例では、質量素子1740における延在領域17210の幅は、支持アーム1730と質量素子1740の縁部との接続部位の幅の1.2倍~1.5倍である。本実施例における音響変換ユニット1720、第1の電極層1721、第2の電極層1723、第1の圧電層1722、振動ユニット、質量素子1740などの構造の材料、サイズなどのパラメータについては、図8~図16の内容を参照することができ、本明細書では説明を省略する。
図21は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の概略構成図であり、図22は、図21に示された骨伝導音響伝達装置の正面概略図である。図21及び図22に示された骨伝導音響伝達装置2100の全体構造は、図8に示された骨伝導音響伝達装置800の全体構造とほぼ同じであるが、支持アームの形状が異なるという点で相違する。図21に示すように、基体構造体2110は、直方体フレーム構造である。いくつかの実施例では、基体構造体2110の内部は、音響変換ユニットと振動ユニットを吊り下げるための中空部分を含んでもよい。いくつかの実施例では、振動ユニットは、4つの支持アーム2130及び質量素子2140を含んでもよく、4つの支持アーム2130は、一端が基体構造体2110の上表面、下表面又は基体構造体2110の中空部分の所在する側壁に接続され、他端が質量素子2140の上表面、下表面又は周方向の側壁に接続される。いくつかの実施例では、質量素子2140は、支持アーム2130に対して上向き及び/又は下向きに突出してもよい。例えば、4つの支持アーム2130の端部が質量素子2140の上表面に接続される場合、質量素子2140は、支持アーム2130に対して下向きに突出してもよい。また例えば、4つの支持アーム2130の端部が質量素子2140の下表面に接続される場合、質量素子2140は、支持アーム2130に対して上向きに突出してもよい。さらに例えば、4つの支持アーム2130の端部が質量素子2140の周方向の側壁に接続される場合、質量素子2140は、支持アーム2130に対して上向き及び下向きに突出してもよい。いくつかの実施例では、支持アーム2130の形状は、台形であり、すなわち、支持アーム2130の厚さ方向に垂直な断面の形状は、台形である。支持アーム2130の長さが大きい一端(台形の長辺)は、質量素子2140に接続され、支持アーム2130の長さが小さい一端(台形の短辺)は、基体構造体2110に接続される。別のいくつかの実施例では、支持アーム2130の長さが小さい一端(台形の短辺)は、質量素子2140に接続され、支持アーム2130の長さが大きい一端(台形の長辺)は、基体構造体2110に接続される。なお、図8~図10における音響変換ユニット820、第1の電極層821、第2の電極層823、第1の圧電層822、振動ユニット、質量素子840、延在領域8210、電極絶縁チャネル850、電極リード860、電極収縮チャネル870などの部材の構造、サイズ、厚さなどのパラメータについては、骨伝導音響伝達装置2100に適用することができ、本明細書ではさらに説明しない。
いくつかの好ましい実施例では、支持アームの厚さ方向に垂直な断面の形状が多角形(例えば、矩形又は台形など)である場合、質量素子を支持アームに対して上向き又は下向きに突出するように設置することができる。このように設置された質量素子は、支持アームが変形するときの変形応力をより大きくすることにより、音響変換ユニットから出力された電気信号の強度をより大きくすることができる。
図23は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の概略構成図であり、図24は、図23に示された骨伝導音響伝達装置の正面図であり、図25は、図24に示された骨伝導音響伝達装置のF-Fでの断面図である。図23~図25に示された骨伝導音響伝達装置2300の構造は、図8に示された骨伝導音響伝達装置800の構造とほぼ同じであるが、骨伝導音響伝達装置2300の支持アーム2330と骨伝導音響伝達装置800の支持アーム830との構造及び形状が異なるという点で相違する。いくつかの実施例では、基体構造体2310の内部は、音響変換ユニット2320と振動ユニットを吊り下げるための中空部分を含んでもよい。いくつかの実施例では、振動ユニットは、4つの支持アーム2330及び質量素子2340を含んでもよく、4つの支持アーム2330は、一端が基体構造体2310の上表面、下表面又は基体構造体2310の中空部分の所在する側壁に接続され、他端が質量素子2340の上表面、下表面又は周方向の側壁に接続される。いくつかの実施例では、質量素子2340は、支持アーム2330に対して上向き及び/又は下向きに突出してもよい。例えば、4つの支持アーム2330の端部が質量素子2340の上表面に接続される場合、質量素子2340は、支持アーム2330に対して下向きに突出してもよい。また例えば、4つの支持アーム2330の端部が質量素子2340の下表面に接続される場合、質量素子2340は、支持アーム2330に対して上向きに突出してもよい。さらに例えば、4つの支持アーム2330の端部が質量素子2340の周方向の側壁に接続される場合、質量素子2340は、支持アーム2330に対して上向き及び下向きに突出してもよい。いくつかの実施例では、質量素子2340の上表面は、支持アーム2330の上表面と同一水平面にあり、及び/又は、質量素子2340の下表面は、支持アーム2330の下表面と同一水平面にある。いくつかの実施例では、支持アーム2330の形状は、略L字状の構造であってもよい。図23に示すように、支持アーム2330は、第1の帯状部2331及び第2の帯状部2332を含んでもよく、第1の帯状部2331の一端部は、第2の帯状部2332の一端部に接続され、第1の帯状部2331と第2の帯状部2332は、一定の夾角を有する。いくつかの実施例では、該夾角の範囲は、75°~105°である。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の第1の帯状部2331と第2の帯状部2332との接続箇所から離れた一端が基体構造体2310に接続され、第1の帯状部2331の第1の帯状部2331と第2の帯状部2332との接続箇所から離れた一端が質量素子2340の上表面、下表面又は周側の側壁に接続され、それにより、質量素子2340は、基体構造体2310の中空部分にサスペンションして設置される。
いくつかの実施例では、図23~図25に示すように、支持アーム2330は、第1の帯状部2331及び第2の帯状部2332の2つの帯状部を含む。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331は、一端が質量素子2340に接続され、他端が第2の帯状部2332の一端に接続され、第2の帯状部2332の他端は、基体構造体2310に接続される。多角形の支持アームと比較して、第1の帯状部2331及び第2の帯状部2332を含む支持アーム2330を限られた空間内で長く設計することができるため、支持アーム2330の剛性は、小さくなり、それに応じて、質量素子2340の質量を小さく設定することができ(例えば、支持アーム2330に対して上向き及び下向きに突出する必要がなくなるため、質量素子2340の上向き又は下向きに突出する構造をさらに加工する必要がなくなる)、それにより質量素子2340の製造プロセスを簡略化することができる。
本実施例では、支持アーム2330及び質量素子2340は、上記紹介された製造プロセスで製造されてもよい。また、本実施例では、支持アーム2330に対して上向き又は下向きに突出する質量素子2340を設置する必要がなければ、支持アーム2330及び質量素子2340は、同時に同じ基材に製造され、それにより加工プロセスを簡略化する。
第1の帯状部2331と質量素子2340との接続箇所は、多角形の側辺の任意の位置、例えば、側辺の端部又は側辺の中点などに位置してもよい。いくつかの実施例では、(図24に示すように)第1の帯状部2331及び質量素子2340の接続箇所は、多角形の側辺の端部に位置する。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331の幅N1は、50μm~300μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331の幅N1は、80~200μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の幅N2は、50μm~300μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の幅N2は、80~200μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331の長さL1は、20μm~200μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331の長さL1は、30μm~100μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の長さL2は、800μm~1300μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の長さL2は、900μm~1200μmである。
いくつかの実施例では、第1の帯状部2331と第2の帯状部2332との間の夾角(長手方向の夾角)は、60°~120°であってもよい。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331と第2の帯状部2332との間の夾角(長手方向の夾角)は、75°~105°であってもよい。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331と第2の帯状部2332との間の夾角(長手方向の夾角)は、90°であってもよい(すなわち、第1の帯状部2331の長手方向は、第2の帯状部2332の長手方向に垂直である)。
いくつかの実施例では、第1の帯状部2331は、一端が質量素子2340に接続され、他端が第2の帯状部2332の途中位置に接続される(例えば、第1の帯状部2331の他端は、第2の帯状部2332の長手方向の中部に接続される)。第2の帯状部2332の一端は、基体構造体2310に接続される(又は、第2の帯状部2332の両端は、いずれも基体構造体2310に接続される)。理解されるように、このような方式で接続されると、支持アーム2330は、「T」字状である。
図30は、本願の別のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置2300の概略構成図である。図30に示された実施例と図24に示された実施例とは、支持アームと質量素子との接続位置が異なる点で相違する。図30に示すように、第1の帯状部2331と質量素子2340との接続箇所は、質量素子2340の多角形の側辺の中間領域(例えば、側辺の中点)に位置する。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331の幅N3は、100μm~400μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331の幅N3は、150~300μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の幅N4は、100μm~400μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の幅N4は、150~300μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331の長さL3は、20μm~200μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部2331の長さL3は、30μm~100μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の長さL4は、500μm~1000μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部2332の長さL4は、700μm~900μmである。
いくつかの実施例では、第1の帯状部2331と第2の帯状部2332との夾角は、多角形における隣接する2つの辺の夾角とほぼ同じであってもよい。例えば、多角形が正六角形である場合、隣接する2つの辺の間の夾角は、120°であってもよく、第1の帯状部と第2の帯状部との夾角は、約120°であってもよい。いくつかの実施例では、質量素子2340の厚さ方向に垂直な断面の形状が矩形である場合、第1の帯状部2331は、第2の帯状部2332に垂直である。このような設計により、骨伝導音響伝達装置2300のレイアウトは、よりコンパクトである。
図26は、図23に示された骨伝導音響伝達装置の概略構成図であり、図27は、図23に示された骨伝導音響伝達装置の別の概略構成図であり、図28は、図23に示された骨伝導音響伝達装置のさらに別の概略構成図であり、図29は、図23に示された骨伝導音響伝達装置のさらに別の概略構成図である。図26は、主に支持アーム2330が2つの帯状部を含む場合の電極絶縁チャネル2350を示し、図27は、主に支持アーム2330が2つの帯状部を含む場合の電極絶縁チャネル2350及び電極リード2360を示し、図28は、主に支持アーム2330が2つの帯状部を含む場合の電極収縮チャネル2370を示し、図29は、主に支持アーム2330が2つの帯状部を含む場合の延在領域2380を示す。図26~図29に示すように、いくつかの実施例では、音響変換ユニット2320は、多層構造であり、第1の電極層2321、第2の電極層2323、第1の圧電層2322、弾性層2324、シード層、ボンディングワイヤ電極層2326、延在領域2380、電極絶縁チャネル2350、電極リード2360、電極収縮チャネル2370などの構造を含んでもよい。音響変換ユニット2320の各層構造、質量素子2340などについては、本願の明細書の図8~図10における音響変換ユニット820、第1の電極層821、第2の電極層823、第1の圧電層822、振動ユニット、質量素子840、延在領域8210、電極絶縁チャネル850、電極リード860、電極収縮チャネル870などの部材の構造、サイズ、厚さなどのパラメータの説明を参照することができ、これらのパラメータの説明は、図23に示された骨伝導音響伝達装置2300に用いられてもよく、本明細書ではさらに説明しない。
図31は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置3100の概略構成図である。骨伝導音響伝達装置3100は、基体構造体3110を含む。図31に示すように、いくつかの実施例では、支持アーム3130は、第1の帯状部3131、第2の帯状部3132及び第3の帯状部3133の3つの帯状部を含み、第1の帯状部3131は、一端が質量素子3140に接続され、他端が第2の帯状部3132の一端に接続され、第2の帯状部3132の他端は、第3の帯状部3133の一端に接続され、第3の帯状部3133の他端は、基体構造体に接続される。このような構造設計により、支持アーム3130を限られた空間内でより長く設計することができるため、支持アーム3130の剛性は、より小さくなり、それに応じて、質量素子3140の質量をより小さく設定することができ(例えば、支持アームに対して上向き及び下向きに突出する必要がなくなる)、それにより質量素子3140の製造プロセスをさらに簡略化することができる。
第1の帯状部3131と質量素子3140との接続箇所は、多角形の側辺の任意の位置、例えば、側辺の端部又は側辺の中点などに位置してもよい。いくつかの実施例では、図31に示すように、第1の帯状部3131及び質量素子3140の接続箇所は、多角形の側辺の端部に位置する。いくつかの実施例では、第1の帯状部3131の幅N5は、50μm~300μmであってもよい。いくつかの実施例では、第1の帯状部3131の幅N5は、80μm~150μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部3132の幅N6は、50μm~300μmであってもよい。いくつかの実施例では、第2の帯状部3132の幅N6は、80μm~150μmである。いくつかの実施例では、第3の帯状部3133の幅N7は、50μm~300μmであってもよい。いくつかの実施例では、第3の帯状部3133の幅N7は、80μm~150μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部3131の長さL5は、20μm~200μmであってもよい。いくつかの実施例では、第1の帯状部3131の長さL5は、30μm~100μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部3132の長さL6は、600μm~1200μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部3132の長さL6は、800μm~1000μmである。いくつかの実施例では、第3の帯状部3133の長さL7は、800μm~1300μmであってもよい。いくつかの実施例では、第3の帯状部3133の長さL7は、900μm~1200μmである。
図32は、本願の別のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置3100の概略構成図である。図32に示すように、第1の帯状部3131及び質量素子3140の接続箇所は、多角形の側辺の中点に位置する。いくつかの実施例では、第1の帯状部3131の幅N8は、50μm~300μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部3131の幅N8は、80μm~150μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部3132の幅N9は、50μm~300μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部3132の幅N9は、80μm~150μmである。いくつかの実施例では、第3の帯状部3133の幅N10は、50μm~300μmである。いくつかの実施例では、第3の帯状部3133の幅N10は、80μm~150μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部3131の長さL8は、20μm~200μmである。いくつかの実施例では、第1の帯状部3131の長さL8は、30μm~100μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部3132の長さL9は、500μm~1000μmである。いくつかの実施例では、第2の帯状部3132の長さL9は、600μm~800μmである。いくつかの実施例では、第3の帯状部3133の長さL10は、800μm~1300μmである。いくつかの実施例では、第3の帯状部3133の長さL10は、900μm~1200μmである。
いくつかの実施例では、第1の帯状部3131と第2の帯状部3132との夾角、及び第2の帯状部3132と第3の帯状部3133との夾角は、多角形における隣接する2つの辺の夾角とほぼ同じであってもよい。例えば、多角形が正六角形である場合、隣接する2つの辺の間の夾角は、120°であってもよく、第1の帯状部3131と第2の帯状部3132との夾角は、約120°であってもよく、第2の帯状部3132と第3の帯状部3133との夾角は、約120°であってもよい。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置3100の構造をよりコンパクトにするために、質量素子3140の厚さ方向に垂直な断面は、矩形であり、第2の帯状部3132は、第1の帯状部3131に垂直であるか又は略垂直であり、第2の帯状部3132は、第3の帯状部3133に垂直であるか又は略垂直である。
いくつかの実施例では、支持アームは、より多くの帯状部、例えば、第4の帯状部、第5の帯状部などを含んでもよい。支持アームに含まされた帯状部の数は、支持アームの剛性に応じて具体的に設計されてもよい。
図33は、図32に示された骨伝導音響伝達装置3100の別の概略構成図である。図33には、電極絶縁チャネル3150が示される。いくつかの実施例では、音響変換ユニット3120は、多層構造であり、第1の電極層、第2の電極層、第1の圧電層、弾性層、シード層、電極絶縁チャネル3150、及び電極収縮チャネルなどの構造を含んでもよい。音響変換ユニット3120の各層構造、質量素子3140などについては、本願の明細書の図8~図10における音響変換ユニット820、第1の電極層821、第2の電極層823、第1の圧電層822、振動ユニット、質量素子840、延在領域8210、電極絶縁チャネル850、電極リード860、電極収縮チャネル870などの部材の構造、サイズ、厚さなどのパラメータの説明を参照することができ、本明細書ではさらに説明しない。
いくつかの実施例では、支持アーム及び音響変換ユニットの厚さの合計は、質量素子の厚さより小さい。理解されるように、音響変換ユニットが支持アームの上表面又は下表面に設置される場合、支持アーム及び音響変換ユニットの厚さの合計は、両者の厚さを加算した値であってもよい。音響変換ユニットが支持アームの内部に設置される場合、支持アーム及び音響変換ユニットの厚さの合計は、内部にある音響変換ユニットを含む支持アームの厚さであってもよい。支持アームの厚さ方向に垂直な断面の形状が矩形又は台形などの多角形である場合、支持アームの剛性が大きい可能性があるため、質量素子の質量を大きくするように、質量素子の厚さをそれに応じて大きく設置することができ、それにより骨伝導音響伝達装置の共振周波数を上記1つ以上の実施例において限定された範囲内にすることができる。いくつかの実施例では、支持アーム及び音響変換ユニットの厚さの合計は、質量素子の厚さ以上である。支持アームが2つの帯状部を含む(例えば、支持アームが第1の帯状部及び第2の帯状部を含む)場合、又は支持アームが3つの帯状部を含む(例えば、支持アームが第1の帯状部、第2の帯状部及び第3の帯状部を含む)場合、又は支持アームがより多くの帯状部を含む場合、支持アームの剛性が小さい可能性があるため、質量素子の質量を小さくするように、質量素子の厚さをそれに応じて小さく設置することができ、それにより骨伝導音響伝達装置の共振周波数を上記1つ以上の実施例において限定された範囲内にすることができる。
いくつかの実施例では、上記いずれか一項の実施例に係る骨伝導音響伝達装置において、ストッパ構造体(図示せず)をさらに含んでもよく、該ストッパ構造体は、板状構造である。いくつかの実施例では、ストッパ構造体は、基体構造体の中空部分に位置してもよく、ストッパ構造体は、積層構造体の上方又は下方に位置するとともに、積層構造体に対向して設置されてもよい。いくつかの実施例では、基体構造体が上下に貫通する構造体である場合、ストッパ構造体は、基体構造体の頂部又は底部に位置してもよい。ストッパ構造体と積層構造体の質量素子が間隔を隔てて設置され、大きな衝撃を受けるときに、ストッパ構造体が積層構造体の質量素子の振幅を制限することにより、振動が激しくて装置を損傷させることを避けることができる。いくつかの実施例では、ストッパ構造体は、剛性の構造(例えば、ストッパ)であってもよく、一定の弾性を有する構造(例えば、弾性クッション、緩衝片持ち梁、又は緩衝支持アームとストッパが同時に設置された構造など)であってもよい。
積層構造体は、固有周波数を有し、外部の振動信号の周波数が該固有周波数に近接する場合、積層構造体は、大きな振幅を発生させて、大きな電気信号を出力する。したがって、骨伝導音響伝達装置の外部振動に対する応答は、固有周波数の近くに共振ピークが発生すると表現される。いくつかの実施例では、積層構造体のパラメータを変更して、積層構造体の固有周波数を音声周波数帯域範囲内に調整することにより、骨伝導音響伝達装置の共振ピークを音声周波数帯域範囲内にし、骨伝導音響伝達装置の音声周波数帯域(例えば、共振ピークの前の周波数範囲)の振動に対する応答感度を向上させることができる。図34に示すように、積層構造体の固有周波数が低下した周波数応答曲線(図34における実線曲線)における共振ピーク3401に対応する周波数は、積層構造体の固有周波数を変更しない周波数応答曲線(図34における破線曲線)における共振ピーク3402に対応する周波数より小さい。周波数が共振ピーク3401の所在する周波数より小さい外部の振動信号について、実線曲線に対応する骨伝導音響伝達装置は、より高い感度を有する。
積層構造体の変位出力式は、以下のとおりである。
式中、Mは、積層構造体の質量であり、Rは、積層構造体の減衰であり、Kは、積層構造体の弾性係数であり、Fは、駆動力の振幅であり、Xaは、積層構造体の変位であり、ωは、外力の角周波数であり、ω0は、積層構造体の固有周波数である。外力の角周波数
であれば、ωM<Kω-1である。(Mを大きくするか、又はKを小さくするか、又はMを大きくすると共にKを小さくすることにより)積層構造体の固有周波数ω0を小さくすると、|ωM<Kω-1|は、小さくなり、対応する変位出力Xaは、大きくなる。加振力の周波数ω=ω0であれば、ωM=Kω-1である。振動-電気信号変換素子(積層構造体)の固有周波数ω0を変化させると、対応する変位出力Xaは変化しない。加振力の周波数ω>ω0であれば、ωM>Kω-1である。(Mを大きくするか、又はKを小さくするか、又はMを大きくすると共にKを小さくすることにより)振動-電気信号変換素子の固有周波数ω0を小さくすると、|ωM<Kω-1|は、大きくなり、対応する変位出力Xaは、小さくなる。
共振ピークが前倒しになるにつれて、音声周波数帯域においてピーク値が現れる。骨伝導音響伝達装置が信号をピックアップするときに共振ピーク周波数帯域において信号が多すぎて、通話効果を低下させる。いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置により収集された音声信号の品質を向上させるために、積層構造体に減衰構造層を設置してもよく、該減衰構造層は、振動中の積層構造体のエネルギー損失、特に共振周波数帯域での損失を増加させることができる。ここで、機械的品質係数の逆数1/Qを利用して減衰係数を以下のように説明する。
式中、Q-1は、品質係数の逆数であり、構造損失係数ηとも呼ばれ、Δfは、共振振幅の半分での周波数差値f1-f2(3dB帯域幅とも呼ばれる)であり、f0は、共振周波数である。
積層構造体の損失係数ηと減衰材料の損失係数tanδとの関係は、以下のとおりである。
式中、Xは、剪断パラメータであり、積層構造体の各層の厚さ、材料属性に関連する。Yは、剛性パラメータであり、積層構造体の各層の厚さ、ヤング率に関連する。
式(5)及び式(6)から分かるように、減衰構造層の材料と積層構造体の各層の材料を調整することにより、積層構造体の損失係数ηを適切な範囲に調整することができる。積層構造体の減衰構造層の減衰が大きくなるにつれて、機械的品質係数Qが小さくなり、対応する3dB帯域幅が大きくなる。減衰構造層の減衰は、異なる応力(変形)状態で異なり、例えば、応力が高いか又は振幅が大きいときに減衰が大きい。したがって、非共振領域における積層構造体の振幅が小さく、共振領域における振幅が大きいという特徴に基づいて、減衰構造層を増加させることにより、非共振領域における骨伝導音響伝達装置の感度を低下させないことを保証すると共に、共振領域のQ値を低下させ、骨伝導音響伝達装置の周波数応答を周波数帯域全体において平坦にすることができる。図35は、本願のいくつかの実施例に係る、減衰構造層を有する骨伝導音響伝達装置と減衰構造層を有さない骨伝導音響伝達装置の周波数応答曲線図である。図35に示すように、減衰構造層を有する骨伝導音響伝達装置が出力した電気信号の周波数応答曲線3502は、減衰構造層が設置されていない骨伝導音響伝達装置が出力した電気信号の周波数応答曲線3501より平坦である。
いくつかの実施例では、骨伝導音響伝達装置は、少なくとも1層の減衰構造層を含んでもよく、少なくとも1層の減衰構造層の周側は、基体構造体に接続されてもよい。いくつかの実施例では、少なくとも1層の減衰構造層は、積層構造体の上表面及び/又は下表面、又は積層構造体の多層の層状構造の間に位置してもよい。いくつかの実施例では、マクロサイズの積層構造体及び基体構造体について、減衰構造層を基体構造体又は積層構造体の表面に直接接着してもよい。いくつかの実施例では、MEMSデバイスについて、半導体プロセス、例えば、蒸着、スピンコーティング、マイクロアセンブリなどの方式で、減衰構造層を積層構造体及び基体構造体に接続してもよい。いくつかの実施例では、減衰構造層の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形などの規則的な形状であってもよい。いくつかの実施例では、減衰膜の材料、サイズ、厚さなどを選択することにより、骨伝導音響伝達装置の電気信号の出力効果を向上させることができる。
減衰構造層をより明確に説明するために、片持ち梁式の骨伝導音響伝達装置(例えば、図1に示された骨伝導音響伝達装置100、図3に示された骨伝導音響伝達装置300、図4に示された骨伝導音響伝達装置400)を例示的に説明する。図36は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の断面図である。図36に示すように、骨伝導音響伝達装置3600は、基体構造体3610、積層構造体3620及び減衰構造層3630を含んでもよい。さらに、積層構造体3620は、一端が基体構造体3610の上表面に接続され、他端が基体構造体3610の中空部分にサスペンションして設置され、減衰構造層3630は、積層構造体3620の上表面に位置する。減衰構造層3630の面積は、積層構造体3620の面積より大きくてもよく、すなわち、減衰構造層3630は、積層構造体3620の上表面を被覆するだけでなく、積層構造体3620と基体構造体3610との間の隙間を被覆することができる。いくつかの実施例では、減衰構造層3630の少なくとも一部の周側は、基体構造体3610に固定されてもよい。
図37は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の断面図である。図37に示すように、骨伝導音響伝達装置3700は、基体構造体3710、積層構造体3720及び2つの減衰構造層を含んでもよく、2つの減衰構造層は、第1の減衰構造層3730及び第2の減衰構造層3740を含む。さらに、第2の減衰構造層3740は、基体構造体3710の上表面に接続され、積層構造体3720の下表面は、第2の減衰構造層3740の上表面に接続され、積層構造体3720の一端は、基体構造体3710の中空部分にサスペンションして設置され、第1の減衰構造層3730は、積層構造体3720の上表面に位置する。第1の減衰構造層3730及び/又は第2の減衰構造層3740の面積は、積層構造体3720の面積より大きい。
図38は、本願のいくつかの実施例に係る骨伝導音響伝達装置の断面図である。図38に示すように、骨伝導音響伝達装置3800は、基体構造体3810、積層構造体3820及び減衰構造層3830を含んでもよい。さらに、減衰構造層3830は、基体構造体3810の上表面に位置する。積層構造体3820の下表面は、減衰構造層3830の上表面に接続され、積層構造体3820の一端は、基体構造体3810の中空部分にサスペンションして設置される。
なお、減衰構造層(例えば、減衰構造層3630)の位置は、上記図36~図38に示された積層構造体の上表面及び/又は下表面に限定されず、積層構造体の多層の層状構造の間に位置してもよい。例えば、減衰構造層は、弾性層と第1の電極層との間に位置してもよい。また例えば、減衰構造層は、第1の弾性層と第2の弾性層との間に位置してもよい。また、減衰構造層は、上記片持ち梁式の骨伝導音響伝達装置に限定されず、図5、図7、図8、図17、図21、図23及び図31に示された骨伝導音響伝達装置に適用されてもよく、本明細書では説明を省略する。
上記で基本概念を説明してきたが、当業者にとっては、上記詳細な開示は、単なる例として提示されているものに過ぎず、本願を限定するものではないことは明らかである。本明細書において明確に記載されていないが、当業者は、本願に対して様々な変更、改良及び修正を行うことができる。これらの変更、改良及び修正は、本願によって示唆されることが意図されているため、本願の例示的な実施例の精神及び範囲内にある。
さらに、本願の実施例を説明するために、本願において特定の用語が使用されている。例えば、「1つの実施例」、「一実施例」、及び/又は「いくつかの実施例」は、本願の少なくとも1つの実施例に関連した特定の特徴、構造又は特性を意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「一実施例」又は「1つの実施例」又は「1つの代替的な実施例」の2つ以上の言及は、必ずしもすべてが同一の実施例を指すとは限らないことを強調し、理解されたい。また、本願の1つ以上の実施例における特定の特徴、構造、又は特性は、適切に組み合わせられてもよい。
また、当業者には理解されるように、本願の各態様は、任意の新規かつ有用なプロセス、機械、製品又は物質の組み合わせ、又はそれらへの任意の新規かつ有用な改善を含む、いくつかの特許可能なクラス又はコンテキストで、例示及び説明され得る。よって、本願の各態様は、完全にハードウェアによって実行されてもよく、完全にソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)によって実行されてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実行されてもよい。以上のハードウェア又はソフトウェアは、いずれも「データブロック」、「モジュール」、「エンジン」、「ユニット」、「アセンブリ」又は「システム」と呼ばれてもよい。また、本願の各態様は、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを含む1つ以上のコンピュータ読み取り可能な媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。
また、特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、本願に記載の処理要素又はシーケンスの列挙した順序、英数字の使用、又は他の名称の使用は、本願の手順及び方法の順序を限定するものではない。上記開示において、発明の様々な有用な実施例であると現在考えられるものを様々な例を通して説明しているが、そのような詳細は、単に説明の目的のためであり、添付の特許請求の範囲は、開示される実施例に限定されないが、逆に、本願の実施例の趣旨及び範囲内にあるすべての修正及び等価な組み合わせをカバーするように意図されることを理解されたい。例えば、上述したシステムアセンブリは、ハードウェアデバイスにより実装されてもよいが、ソフトウェアのみのソリューション、例えば、既存の処理デバイス又はモバイルデバイスに説明されたシステムをインストールすることにより実装されてもよい。
同様に、本願の実施例の前述の説明では、本願の開示を簡略化して、1つ以上の発明の実施例への理解を助ける目的で、様々な特徴が1つの実施例、図面又はその説明にまとめられることがあることを理解されたい。しかしながら、このような開示方法は、特許請求される主題が各請求項で列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈すべきではない。実際に、実施例の特徴は、上記開示された単一の実施例のすべての特徴よりも少ない場合がある。
いくつかの実施例では、成分及び属性の数を説明する数字が使用されており、このような実施例を説明するための数字は、いくつかの例では修飾語「約」、「ほぼ」又は「概ね」によって修飾されるものであることを理解されたい。特に明記しない限り、「約」、「ほぼ」又は「概ね」は、上記数字が±20%の変動が許容されることを示す。よって、いくつかの実施例では、明細書及び特許請求の範囲において使用されている数値パラメータは、いずれも個別の実施例に必要な特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施例では、数値パラメータについては、規定された有効桁数を考慮すると共に、通常の丸め手法を適用するべきである。本願のいくつかの実施例では、その範囲を決定するための数値範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体的な実施例では、このような数値は、可能な限り正確に設定される。
本願において参照されているすべての特許、特許出願、公開特許公報、及び、論文、書籍、仕様書、刊行物、文書などの他の資料は、本願の内容と一致しないか又は矛盾する出願経過文書、及び(現在又は後に本願に関連する)本願の請求項の最も広い範囲に関して限定的な影響を有し得る文書を除いて、その全体が参照により本願に組み込まれる。なお、本願の添付資料における説明、定義、及び/又は用語の使用が本願に記載の内容と一致しないか又は矛盾する場合、本願における説明、定義、及び/又は用語の使用を優先するものとする。
最後に、本願に記載の実施例は、単に本願の実施例の原理を説明するものであることを理解されたい。他の変形例も本願の範囲内にある可能性がある。したがって、限定するものではなく、例として、本願の実施例の代替構成は、本願の教示と一致するように見なされてもよい。よって、本願の実施例は、本願において明確に紹介して説明された実施例に限定されない。