JP2023539474A - 加齢黄斑変性診断用バイオマーカーおよびこの用途 - Google Patents
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Abstract
本発明は加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のための情報を提供するためのマーカー組成物、キット、遺伝子パネル、方法に関する。本発明は加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のための情報を提供できる新しい道具であって、敏感度が優秀であるだけでなく生検を利用せずに手軽に分析できるため、加齢黄斑変性の早期診断などに便利に使われ得る。
Description
本発明は加齢黄斑変性の発生を予測したり診断できる、バイオマーカーおよびこの用途に関する。
黄斑変性は黄斑部分に変性が起きて視力障害を起こす目の疾患であり、発病初期には視野がぼやけたり、近いところの視力が歪んで見えたりして、進行すると失明に至ることになる。黄斑変性の主な原因は老化であり、その次に遺伝的な要因、そして、環境的要因としては紫外線、喫煙、高脂肪・高熱量の西洋化の献立などが挙げられている。
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration、AMD)は重症の非可逆的な視力喪失を引き起こし、50才以上の人口において失明の主な原因として知られている。加齢黄斑変性は乾性(atrophic)と湿性(exudative)の二つの類型に区分することができ、乾性は老廃物が黄斑部に積もるものであり、視力の変化が初期に発生し得るが単に老化による症状と知られている。また、湿性は重症に進行した形態の黄斑変性であり、異常な血管が黄斑と網膜の下で成長して滲出物や血液が流れ出て黄斑に損傷を加え、健康な細胞を破壊させて最終的には視力の喪失につながり得る。
加齢黄斑変性は一般的に、一度視力障害が始まると以前の視力を回復できない場合が多いので早期発見が非常に重要である。早期発見は眼科医による定期的な眼科検診を通じて可能であり、眼底検査を含む眼科的検診で加齢黄斑変性が疑われれば、蛍光眼底血管造影術、光干渉断層撮影などの眼科精密検査を施行して確診することができる。治療方法にはレーザー光凝固術(photocoagulation)、光線力学的療法(photodynamic therapy、PDT)、anti-VEGF製剤の硝子体腔内注入方法がある。
このような加齢黄斑変性は初期自覚症状がなく、他の原因と誤認する場合が多いので、初期発見が難しいだけでなく診断のためには高価な装備が必要であるという問題点がある。また、前記の診断方法は遂行方法が非常に不便で危険性があるため、被検者がこれを嫌がっているのが実情である。したがって、手軽で速かに加齢黄斑変性の発病可能性またはその可否を診断できる検査方法の開発が要求されている。
一方、クローン性造血(CH)は白血病関連遺伝子に体細胞突然変異を保有するクローン由来造血幹細胞(HSC)の拡張と定義される状態であり、これは次世代シーケンシング(NGS)により検出され得る(文献[Genovese G、Kahler AK、Handsaker RE、et al:Clonal hematopoiesis and blood-cancer risk inferred from blood DNA sequence.N Engl J Med 371:2477-87、2014];文献[Park SJ、Bejar R:Clonal hematopoiesis in cancer.Exp Hematol 83:105-112、2020];および文献[Jaiswal S、Ebert BL:Clonal hematopoiesis in human aging and disease.Science 366、2019]参照)。CHの発生は老化と関連があり、心血管疾患および血液悪性腫瘍の発病と相当な関連があると報告された。
本発明は、前述した従来技術の問題点を解決することをその目的とする。
本発明は、加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のためのバイオマーカーを提供することを他の目的とする。
本発明は、加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のための組成物、キット、またはパネルを提供することをさらに他の目的とする。
本発明は加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のための情報を提供する方法を提供することをさらに他の目的とする。
前記目的を達成するために、本発明者らは加齢黄斑変性の早期診断のためのバイオマーカーを確保するために研究した結果、クローン性造血(CH)誘発遺伝子変異の存在が重要な因子であることを確認することによって、本発明を完成した。
本発明の一側面は、個体から分離された生物学的試料を利用してクローン性造血誘発突然変異を検出できる製剤を含む、加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するための組成物を提供する。
本発明の他の側面は、前記組成物を含む加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するためのキットを提供する。
本発明のさらに他の側面は、前記組成物を含む加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するための遺伝子分析用パネルを提供する。
本発明のさらに他の側面は、個体から分離された生物学的試料の遺伝子分析を通じて個体にクローン性造血誘発突然変異が存在するかどうかを確認する段階を含む、加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のための情報を提供する方法を提供する。
本発明に係る加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のための情報を提供するマーカー組成物、キット、パネルおよび方法は加齢黄斑変性を診断したり予防したり治療できる新しい道具であって、敏感度が優秀であるだけでなく、生検を利用せずに手軽に分析できるため、特に加齢黄斑変性の早期診断、予防または治療に便利に使われ得る。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一側面は個体から分離された生物学的試料を利用してクローン性造血誘発突然変異を検出できる製剤を含む、加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するための組成物を提供する。
本明細書で使われた用語「クローン性造血(Clonal haematopoiesis)」は造血幹細胞に体細胞突然変異が発生して選択的増殖の機会を得ることになる場合、突然変異が発生したクローンが拡張して白血球の一定部分を占める現象を意味する。前記クローン性造血に関連した体細胞突然変異が発生する遺伝子(クローン性造血誘発突然変異)としては、APC、ASXL1、ASXL2、ATM、BCL11B、BCOR、BCORL1、BIRC3、BRAF、BRCC3、CARD11、CASP8、CBL、CD58、CD79B、CNOT3、CREBBP、CUX1、DDX3X、DNMT3A、EP300、ETV6、EZH2、FAM46C、FBXW7、FLT3、FOXP1、GNAS、GNB1、GPS2、HIST1H1C、IDH2、IKZF1、IKZF2、JAK1、JAK2、JAK3、JARID2、KDM6A、KIT、KLHL6、KMT2D、KRAS、LUC7L2、MAP3K1、MPL、MYD88、NF1、NFE2L2、NOTCH1、NOTCH2、NRAS、PDS5B、PDSS2、PHF6、PHIP、PIK3CA、PIK3R1、PPM1D、PRDM1、PRPF40B、PTEN、PTPN11、RAD21、RIT1、RPS15、SETD2、SETDB1、SF1、SF3A1、SF3B1、SMC1A、SMC3、SRSF2、STAG1、STAG2、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET1、TET2、TNFAIP3、TNFRSF14、TP53、U2AF1、VHL、WT1、ZRSR2およびCHEK2がある。
一具現例において、前記クローン性造血誘発突然変異はAPC、ASXL1、ASXL2、BCOR、CD58、CHEK2、CUX1、DNMT3A、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET2、TNFAIP3およびU2AF1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異であるかこれを含むことができる。
他の具現例において、前記突然変異はAPC、ASXL1、ASXL2、CD58、CHEK2、CUX1、DNMT3A、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET2、TNFAIP3およびU2AF1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異であるかこれを含むことができる。
さらに他の具現例において、前記突然変異はDNMT3A、TET2、ASXL1、APC、ASXL2、BCOR、CHEK2、CUX1、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、KMT2D、NF1、NOTCH2、RIT1、SETD2、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12およびTNFAIP3からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異であるかこれを含むことができる。
さらに他の具現例において、前記突然変異はDNMT3A、TET2、ASXL1、SETD2、KMT2D、NF1、NOTCH2、SF3B1、ASXL2、CHEK2、CUX1、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、RIT1、SRSF2、SUZ12、APC、STAT3およびTNFAIP3からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異であるかこれを含むことができる。
さらに他の具現例において、前記突然変異はDNMT3A、TET2およびASXL1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異であるかこれを含むことができる。
さらに他の具現例において、前記突然変異はDNMT3Aの突然変異であるかこれを含むことができる。
さらに他の具現例において、前記突然変異はTET2の突然変異であるかこれを含むことができる。
さらに他の具現例において、前記突然変異はDNMT3AおよびTET2、またはDNMT3A、TET2およびASXL1の突然変異であるかこれを含むことができる。
前記組成物により発生予測、診断または治療に必要な情報を提供できる加齢黄斑変性の病態は乾性および/または湿性を含むことができ、前記乾性の加齢黄斑変性は網膜にドルーゼンや網膜色素上皮の萎縮のような病変がさらに進行されて湿性の加齢黄斑変性に発展し得る。
本明細書で使われる用語「発生予測」は、臨床的症状で加齢黄斑変性と診断されない個体(subject)の中で加齢黄斑変性が発生する傾向または危険が増加したかそのような傾向または危険が相対的に高い個体を選別または確認することを意味する。
本明細書で使われる用語「診断」または「治療」は、当業界で通常的に意味する疾病または疾患の診断または治療を意味する。前記「診断」という用語は、加齢黄斑変性に対して個体の、すなわち検査対象者の感受性(susceptibility)を判定すること、一個体が加齢黄斑変性疾病または疾患を現在持っているかどうかを判定すること、または加齢黄斑変性に対する治療効能に対する情報を提供するために個体の治療状態をモニタリングすることを含む意味であり、最も狭い意味では、加齢黄斑変性の発病の有無を確認することを意味する。また、加齢黄斑変性の予防や治療のための早期診断や加齢黄斑変性の早期診断のための情報、例えば遺伝情報を提供することを含む。
本明細書で使われる用語「個体」は人間を含んだ哺乳動物を指称するが、これに限定されない。
本明細書で使われる用語「生物学的試料」とは、個体から収得した任意の生物学的標本であって、加齢黄斑変性の発病を確認しようとする個体から分離された血液、血清、血漿、リンパ液、唾液、喀痰、粘液、小便または大便のような試料などを含むが、これに制限されない。
一具現例において、前記突然変異は羅列された遺伝子が暗号化する蛋白質の活性を野生型に比べて低くしたり欠如させることができる。また、前記突然変異は体細胞突然変異(somatic mutation)であり得る。
前記突然変異はミスセンス(missense)突然変異、フレームシフト(frameshift)突然変異、ナンセンス(nonsense)突然変異またはスプライス(splice)突然変異、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換、これらの組み合わせなどの形態であり得る。
本明細書で使われた用語「ミスセンス突然変異」は、DNA鎖上のある部位に一つの塩基置換が起こり、mRNAの遺伝暗号が変わって本来のものとは異なるアミノ酸に指定されて蛋白質に影響を与えることになる遺伝子突然変異を指称する。
本明細書で使われた用語「フレームシフト突然変異」は、塩基が3に割れない個数に挿入されるか欠失して起こる遺伝子突然変異を指称する。
本明細書で使われた用語「ナンセンス突然変異」は、一つの塩基置換で本来のいずれか一つのアミノ酸を暗号化するコドンが、アミノ酸を暗号化しない終止コドンに変化して蛋白質の合成がそのコドンがある所で中断される遺伝子突然変異を指称する。
本明細書で使われた用語「スプライス突然変異」は、転写されたRNA分子内または個別的に転写されたRNA分子の間に代案的なスプライシング部位の使用を通じて発生する突然変異を指称する。
例えば、前記DNMT3A遺伝子の突然変異は、下記の表1に記載された変異のうち選択される一つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
前記TET2遺伝子の突然変異は下記の表2に記載された変異のうち選択される一つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
前記ASXL1遺伝子の突然変異は下記の表3に記載された変異のうち選択される一つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
前記APC、ASXL2、BCOR、CD58、CHEK2、CUX1、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TNFAIP3およびU2AF1遺伝子の突然変異は下記の表4に記載された変異であり得るが、これに制限されるものではない。
例えば、前記JAK2遺伝子14番エクソンの突然変異は、NM_004972.3で表示される塩基配列において1849番位置の塩基GがTに置換されるミスセンス突然変異であり得る。
一実施例において、前記突然変異を検出できる製剤は、例えば前記突然変異遺伝子、これから由来するmRNA、または前記突然変異遺伝子からコーディングされる蛋白質の発現を検出できる製剤を含むことができる。
前記遺伝子またはmRNA発現を検出できる製剤は、前記突然変異遺伝子またはmRNAに相補的に結合するヌクレオチド配列、例えば、センスおよびアンチセンスプライマー、プローブ、またはアンチセンス核酸であり得るが、これに限定されない。
本明細書で使われる用語「プローブ」とは、試料内の検出しようとする標的物質と特異的に結合できる物質であって、前記結合を通じて特異的に試料内の標的物質の存在を確認できる物質を意味する。プローブはオリゴヌクレオチドプローブ、単鎖DNAプローブ、二重鎖DNAプローブ、RNAプローブなどの形態で製作され得る。プローブの選択および混成化条件は当業界で公知になっているものに基づいて変形することができる。
本明細書で使われる用語「プライマー」とは、相補的な鋳型(template)と塩基対(base pair)を形成でき、鋳型鎖のコピーのための開始地点として機能をする核酸配列を意味する。プライマーの配列は必ずしも鋳型の配列と正確に同じである必要はなく、十分に相補的であるので鋳型と混成化され得るのであればよい。プライマーは適切な緩衝溶液および温度で重合反応のための試薬および異なる4つのヌクレオシド三リン酸(nucleoside triphosphate)の存在下でDNA合成を開始することができる。PCR条件、センスおよびアンチセンスプライマーの長さは当業界で公知になっているものに基づいて変形することができる。例えば、商業的に購入可能なプライマー設計用プログラムを使って設計することができる。
本明細書で使われる用語「アンチセンス核酸」は、ターゲットとする遺伝子変異体に対する相補的なヌクレオチド配列を有しているので、それと二量体を形成できる核酸基盤の分子を意味する。前記アンチセンス核酸は、前記ポリヌクレオチドまたはそのフラグメント、またはこれらに相補的なものであり得る。前記アンチセンス核酸は長さが10nt以上、より具体的には10~200nt、10~150nt、または10~100ntであるものであり得るが、検出特異性を増加させるために適切な長さを選択することができる。
前記プライマー、プローブまたはアンチセンス核酸を使って、突然変異の位置に特定の対立因子を有するヌクレオチド配列を増幅したりその存在を確認することができる。
前記製剤の例示として、次のようなプローブの配列情報を羅列することができる。
これは、DNMT3A、TET2、ASXL1、APC、ASXL2、BCOR、CHEK2、CUX1、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、KMT2D、NF1、NOTCH2、RIT1、SETD2、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12およびTNFAIP3の24個の遺伝子に対するNGSパネルの全体配列のうち、体細胞配列変異が検出された染色体配列に対するプローブ配列情報を例示的に提示したものであり、前記突然変異検出製剤はこれに制限されない。前記プローブ配列は配列番号1~65で表示した。
また、前記蛋白質を検出できる製剤は、前記蛋白質に特異的に結合できるモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメリック(chimeric)抗体、これら抗体のフラグメント(scFv)、またはアプタマー(aptamer)であり得るが、これに限定されない。
本発明の他の側面は前記組成物を含む加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するためのキットを提供する。
具体的には、前記キットは分析方法に適合な一種類またはそれ以上の他の構成成分の組成物、溶液または装置で構成され得る。例えば、前記キットはRT-PCR(Reverse transcription polymerase chain reaction)キット、DNAチップキット、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キット、蛋白質チップキットまたはラピッド(rapid)キットであり得る。
本発明の他の側面は前記組成物を含む加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するための遺伝子分析用パネルを提供する。
前記遺伝子分析用パネルは、複数個の目的遺伝子に対する突然変異が一つのパネルで構成された遺伝子変異検査方法である。前記遺伝子パネルはNGSに基づくことができる。
本発明の他の側面は、個体から分離された生物学的試料の遺伝子分析を通じて個体にクローン性造血誘発突然変異が存在するかどうかを確認する段階を含む、加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のための情報を提供する方法を提供する。
前記「クローン性造血誘発突然変異」、「個体」、「生物学的試料」、「加齢黄斑変性」、「発生予測」、「診断」および「治療」に対する説明は前述したものを参照する。
本発明に係る加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するために多様な統計処理方法が使われ得る。統計的処理方法として例えば、ロジスティック回帰分析方法が使われ得る。また、統計処理を通じて加齢黄斑変性に診断するために試験群と対照群間の有意差に関する信頼水準を決定することができる。統計処理に使われるデータは各マーカーに対して二重、三重または多重に分析された値である。このような統計的分析方法はバイオマーカーはもちろん、臨床および遺伝的データの統計的処理を通じて臨床的に有意な判断をするのに非常に有用である。
一実施例において、前記遺伝子群から選択される一つ以上の遺伝子で突然変異が確認される場合、前記個体の加齢黄斑変性の発病率が高いと判断することができる。具体的には、前記方法は前記一つ以上の遺伝子の突然変異が存在すれば加齢黄斑変性の発生可能性が高いと判断する段階を追加で含むことができる。
また、前記方法は前記遺伝子の突然変異が存在すれば、加齢黄斑変性の発病または進行の危険を減少させるために、患者において前記突然変異を抑制するか前記突然変異が存在する遺伝子の機能を回復または補充するための処置をする必要があると判断する段階を追加で含むことができる。例えば、前記方法を通じて特定加齢黄斑変性治療剤を投与する必要性に対するコンパニオン診断(companion diagnostics)関連情報を提供することができる。
本明細書で使われる用語「コンパニオン診断」とは、特定の治療薬物を特定患者に適用するための可能性を確認するための診断テストのうち一つを意味するもので、クローン性造血誘発突然変異の存在の有無を検出できる製剤またはこれで遂行される実験を通じて加齢黄斑変性治療対象を識別したりモニタリングすることを意味する。
前記遺伝子分析は次世代ゲノムシーケンシング分析法(Next Generation Sequencing、NGS)を利用することができる。例えば、次世代ゲノムシーケンシング分析法を活用して、全ゲノム塩基配列分析(Whole Genome Sequencing)、全エクソーム塩基配列分析(Whole Exome Sequencing)、RNA塩基配列分析(RNA Sequencing)等のデータ処理を通じて生成された情報を分析することができる。
本発明のさらに他の側面は、前述したようなクローン性造血誘発突然変異がある細胞株または動物モデルに加齢黄斑変性の予防または治療のための候補物質をテストすることを含む、加齢黄斑変性の予防または治療用物質をスクリーニングする方法を提供する。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1.患者群および試料収集
ソウル大学病院眼科で50才以上の加齢黄斑変性患者197人およびソウル大学病院カンナム検診センターで50才以上の正常対照群3278人の血液試料を収得した。本研究はソウル大学病院の医学研究倫理審議委員会(IRB)の承認を得て進めた(IRB No:2001-151-1097)。
実施例2.次世代塩基配列分析法を通じての体細胞変異検出
確保された血液試料に含まれている免疫細胞の体細胞突然変異(somatic mutation)を検出するために、ゲノムDNAを抽出して次世代塩基配列シーケンシング分析を遂行した。免疫細胞の一部で増殖した突然変異を測定して検出するためには、数十個の遺伝子の多様な位置で発生し得るので、予め定められていない突然変異の塩基配列を検出できなければならない。また、1~2%で存在する微細な突然変異を信頼性があるように検出できなければならない。このためには、次世代塩基配列シーケンシング(以下、NGS)技術が最も最適なプラットフォームである。免疫細胞に発生した突然変異を検出するための過程は下記の通りである。
1.末梢血DNA抽出
(1)検査対象の末梢血を2~3ml採取
(2)遠心分離を通じて白血球分画分離
(3)白血球分画からDNA抽出
2.NGS機器で解釈できるように末梢血DNAをNGSライブラリーに変換
(1)末梢血DNAを超音波や制限酵素を利用して適当な長さ(150~300 base pair)に切断
(2)切断されたDNAにNGS機器に合うadapter塩基配列付着
3.遺伝子パネルを利用したターゲットDNA選別
(1)89個の遺伝子標識子(Probe)ハイブリダイゼーション(Hybridization)
(2)ハイブリダイゼーションが起きたDNAのみ選別して抽出
4.NGSシーケンシング(塩基配列解読)および塩基配列分析
(1)選別されたNGSライブラリー(Targeted library)をNGS機器に入力
(2)目標とする量のデータ生産:平均塩基配列解読深さ(Mean Depth of coverage 800x以上)
(3)ヒトの標準ゲノム(hg19)と比較して突然変異塩基配列分別
(4)分別された塩基配列の機能予測および突然変異データベースマッチング
(5)結果判別
1.末梢血DNA抽出
(1)検査対象の末梢血を2~3ml採取
(2)遠心分離を通じて白血球分画分離
(3)白血球分画からDNA抽出
2.NGS機器で解釈できるように末梢血DNAをNGSライブラリーに変換
(1)末梢血DNAを超音波や制限酵素を利用して適当な長さ(150~300 base pair)に切断
(2)切断されたDNAにNGS機器に合うadapter塩基配列付着
3.遺伝子パネルを利用したターゲットDNA選別
(1)89個の遺伝子標識子(Probe)ハイブリダイゼーション(Hybridization)
(2)ハイブリダイゼーションが起きたDNAのみ選別して抽出
4.NGSシーケンシング(塩基配列解読)および塩基配列分析
(1)選別されたNGSライブラリー(Targeted library)をNGS機器に入力
(2)目標とする量のデータ生産:平均塩基配列解読深さ(Mean Depth of coverage 800x以上)
(3)ヒトの標準ゲノム(hg19)と比較して突然変異塩基配列分別
(4)分別された塩基配列の機能予測および突然変異データベースマッチング
(5)結果判別
この時、1~2%程度の微細な突然変異を信頼性があるように解読するために、NGS塩基配列データは平均塩基配列解読深さ(Depth of coverage)が800以上とならなければならず、ノイズを最小限に抑制しなければならない。
本実施例ではhybridization enrichment方式でシーケンシング対象領域を捕獲する方法が適用され、シーケンシングライブラリーはペアエンド(paired end)方式(forward/reverse reads適用、read length=150 base pairs)で製作して、イルミナシーケンサー(Nova-Seq)を利用して生産した。NGSデータは対象遺伝子の全体エクソンをシーケンシングデータで含み、製作したNGSターゲットパネル(特定のゲノム配列のみを対象にシーケンシング)は下記の総89個の遺伝子を含んだ:
APC、ASXL1、ASXL2、ATM、BCL11B、BCOR、BCORL1、BIRC3、BRAF、BRCC3、CARD11、CASP8、CBL、CD58、CD79B、CNOT3、CREBBP、CUX1、DDX3X、DNMT3A、EP300、ETV6、EZH2、FAM46C、FBXW7、FLT3、FOXP1、GNAS、GNB1、GPS2、HIST1H1C、IDH2、IKZF1、IKZF2、JAK1、JAK2、JAK3、JARID2、KDM6A、KIT、KLHL6、KMT2D、KRAS、LUC7L2、MAP3K1、MPL、MYD88、NF1、NFE2L2、NOTCH1、NOTCH2、NRAS、PDS5B、PDSS2、PHF6、PHIP、PIK3CA、PIK3R1、PPM1D、PRDM1、PRPF40B、PTEN、PTPN11、RAD21、RIT1、RPS15、SETD2、SETDB1、SF1、SF3A1、SF3B1、SMC1A、SMC3、SRSF2、STAG1、STAG2、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET1、TET2、TNFAIP3、TNFRSF14、TP53、U2AF1、VHL、WT1、ZRSR2およびCHEK2.
NGSデータは平均DOC(Depth of Coverage)が>=800xとなるように生産した。これは体細胞配列変異(Somatic variant)の最小検出限界(LOD、Limit of Detection)を対立遺伝子頻度(Variant Allele Frequency、VAF)>=1.5%で検出することを保障するためのNGSデータ品質基準として適用したものである。体細胞配列変異を構成するSNV、Insertion、Deletion検出は、出願人が直接具現して多くの研究で検証されたことのある検出分析ソフトウェア(inhouse software)を通じて遂行したし、有効な体細胞配列変異に対する判定は下記のような基準を適用した。
a)1.5%<=VAF<=30%値である配列変異
b)配列変異の証拠となる5'、3' readsがそれぞれ5個以上ずつ存在
c)配列変異による効果がframe shift、stop codon gain、またはsplice donor/acceptorであることまたはamino acid changeでありながら、がんゲノムデータベースで血液がん1回以上であるか固形がん10回以上検出であるものを潜在的なドライバー(Potential Driver、PD)と区分し、その他の体細胞配列変異をNon-PDに区分した。
d)1000Genome project、ESP6500、gnomAdのすべてにおいて0.2%以下の出現頻度
e)自らの配列検出頻度データベース基準Non-PDである場合、2%以下の出現頻度、PDである場合でも偽陽性VAF範囲から外れた信頼度(99.9%)配列変異のみ採択
以上の条件をすべて満足する配列変異を有効な体細胞配列変異に選別して実施例3に適用した。
実施例3.データ分析I
実施例3.1.陽性率を示す遺伝子の確認
実施例3.1.1.加齢黄斑変性患者に対する陽性率分析
前記加齢黄斑変性患者群197個のサンプルと正常対照群3278個のサンプルに対して、89個の遺伝子の陽性率を調査し、陽性率の差をカイ二乗検定で分析した。この時、陽性は対象遺伝子のうちいずれか一つでも対立遺伝子頻度(Variant allele fraction、VAF)1.5%以上の遺伝変異が検出される場合、陽性と定義した。分析結果を下記の表6に示した。
表6を参照すると、前記89個の遺伝子群に対する陽性率が加齢黄斑変性患者群で正常対照群より有意に高いことを確認した(36.0% vs 21.2%、p-value<0.001)。前記89個の遺伝子群でVAF 1.5%以上の体細胞配列変異を示した遺伝子を確認した結果、APC、ASXL1、ASXL2、BCOR、CD58、CHEK2、CUX1、DNMT3A、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET2、TNFAIP3およびU2AF1総30個の遺伝子が選別された。各遺伝子の検出頻度を図1に示した。これから前記遺伝子のうちいずれか一つ以上の遺伝子に体細胞配列突然変異がある場合、加齢黄斑変性危険が有意に高いことが分かる。
実施例3.1.2.湿性加齢黄斑変性患者に対する陽性率分析
前記実施例3.1.1.で分析した全体加齢黄斑変性患者群の197個のサンプルのうち、湿性加齢黄斑変性153個のサンプルに対して同一の分析を施行し、分析結果を下記の表7に示した。
表7を参照すると、前記89個の遺伝子群に対する陽性率が湿性加齢黄斑変性患者群で正常対照群より有意に高いことを確認した(39.2% vs 21.2%、p-value<0.001)。前記89個の遺伝子群でVAF 1.5%以上の体細胞配列変異を示した遺伝子を確認した結果、APC、ASXL1、ASXL2、CD58、CHEK2、CUX1、DNMT3A、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET2、TNFAIP3およびU2AF1総28個の遺伝子が選別された。これから前記遺伝子のうちいずれか一つ以上の遺伝子に体細胞配列突然変異がある場合に湿性加齢黄斑変性危険が有意に高いことが分かる。
実施例3.2.主要遺伝子に対する陽性率確認
実施例3.2.1.加齢黄斑変性患者に対する陽性率分析
加齢黄斑変性患者群と対照群に対してDNMT3A、TET2およびASXL1 3個の遺伝子に対する陽性率を調査し、陽性率の差をカイ二乗検定で分析した。分析結果を下記の表8に示した。
表8を参照すると、分析結果患者群の陽性率が対照群の陽性率より有意に高かった(25.9% vs 12.2%、p-value<0.001)。
実施例3.2.2.湿性加齢黄斑変性患者に対する陽性率分析
前記実施例3.2.1.で分析した全体加齢黄斑変性患者群の197個のサンプルのうち、湿性加齢黄斑変性153個のサンプルに対して同一の分析を施行し、分析結果を下記の表9に示した。
表9を参照すると、前記89個の遺伝子群に対する陽性率が湿性加齢黄斑変性患者群で正常対照群より有意に高いことを確認した(28.1% vs 12.2%、p-value<0.001)。またDNMT3A、TET2およびASXL1 3個の遺伝子が湿性加齢黄斑変性の可否に及ぼす影響を調べるために、年齢と性別および喫煙の有無を補正してロジスティック回帰分析を施行した。その結果、オッズ比は1.57(CI 1.02-2.40、p-value 0.0383)であり、DNMT3A、TET2またはASXL1遺伝子の体細胞配列変異が存在する場合、湿性加齢黄斑変性と有意な関連性を示した。
実施例3.3.個別遺伝子に対する陽性率確認
各個別遺伝子DNMT3AとTET2の陽性率を患者群と対照群で調査し、陽性率の差をカイ二乗検定で分析した。
実施例3.3.1.加齢黄斑変性患者に対するTET2陽性率分析
まず、TET2遺伝子の分析結果を下記の表10に示した。
表10を参照すると、TET2遺伝子の陽性率は患者群で対照群より有意に高かった(8.6% vs 2.4%、p-value<0.001)。また、TET2遺伝子が加齢黄斑変性の有無に及ぼす影響をロジスティック回帰分析で調査した。年齢、性別、喫煙の有無を補正して分析した結果、TET2遺伝子にVAF 1.5%以上の体細胞配列変異が存在する場合は年齢、性別、喫煙の有無を補正して分析した時に黄斑変性の危険が有意に増加することを確認した(OR 2.13、CI 1.11-4.11、p-value=0.0235)。
実施例3.3.2.湿性加齢黄斑変性患者に対するTET2陽性率分析
全体サンプルのうち、湿性加齢黄斑変性153個のサンプルに対して同一の分析を施行し、分析結果を下記の表11に示した。
表11を参照すると、TET2遺伝子の陽性率は患者群で対照群より有意に高かった(9.2% vs 2.4%、p-value<0.001)。また,TET2遺伝子が湿性加齢黄斑変性の可否に及ぼす影響を調べるために、年齢と性別および喫煙の有無を補正してロジスティック回帰分析を施行した。その結果、オッズ比は2.02(CI 0.99-4.16、p-value 0.0548)であり、TET2遺伝子の体細胞配列変異が存在する場合、湿性加齢黄斑変性の危険が増加する傾向を示した。
実施例3.3.3.加齢黄斑変性患者に対するDNMT3A陽性率分析
次に、DNMT3A遺伝子の分析結果を下記の表12に示した。
表12を参照すると、DNMT3A遺伝子の陽性率は患者群で対照群より有意に高かった(16.2% vs 8.8%、p-value<0.001)。
実施例3.3.4.湿性加齢黄斑変性患者に対するDNMT3A陽性率分析
全体サンプルのうち、湿性加齢黄斑変性153個のサンプルに対して同一の分析を施行し、分析結果を下記の表13に示した。
表13を参照すると、DNMT3A遺伝子の陽性率は患者群で対照群より有意に高かった(18.3% vs 8.8%、p-value<0.001)。
実施例4.データ分析II
実施例1で確保された試料を、VAFが2%以上の遺伝子変異が検出される場合を陽性と定義したことを除いては、実施例2と同一の方式で体細胞変異を検出、選別した。
実施例4.1.陽性率を示す遺伝子の確認
実施例4.1.1.加齢黄斑変性患者に対する陽性率分
前記加齢黄斑変性患者群197個のサンプルと正常対照群3278個のサンプルに対して、89個の遺伝子の陽性率を調査し、陽性率の差をカイ二乗検定で分析した。この時、陽性は対象遺伝子のうちいずれか一つでも対立遺伝子頻度(Variant allele fraction、VAF)2%以上の遺伝変異が検出される場合、陽性と定義した。分析結果を下記の表14に示した。
表14を参照すると、前記89個の遺伝子群に対する陽性率が加齢黄斑変性患者群で正常対照群より有意に高いことを確認した(29.4% vs 15.3%、p-value<0.001)。前記89個の遺伝子群でVAF 2%以上の体細胞配列変異を示した遺伝子を確認した結果、DNMT3A、TET2、ASXL1、APC、ASXL2、BCOR、CHEK2、CUX1、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、KMT2D、NF1、NOTCH2、RIT1、SETD2、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12およびTNFAIP3総24個の遺伝子が選別された。各遺伝子の検出頻度を図2に示した。これから前記遺伝子のうちいずれか一つ以上に体細胞配列突然変異がある場合、加齢黄斑変性の危険で高い有意性を示していることが分かる。
実施例4.1.2.湿性加齢黄斑変性患者に対する陽性率分析
前記実施例4.1.1で分析した全体加齢黄斑変性患者群の197個のサンプルのうち、湿性加齢黄斑変性153個のサンプルに対して同一の分析を施行し、分析結果を下記の表15に示した。
表15を参照すると、前記89個の遺伝子群に対する陽性率が湿性加齢黄斑変性患者群で正常対照群より有意に高いことを確認した(31.4% vs 15.3%、p-value<0.001)。前記89個の遺伝子群でVAF 2%以上の体細胞配列変異を示した遺伝子を確認した結果、DNMT3A、TET2、ASXL1、SETD2、KMT2D、NF1、NOTCH2、SF3B1、ASXL2、CHEK2、CUX1、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、RIT1、SRSF2、SUZ12、APC、STAT3およびTNFAIP3総21個の遺伝子が選別された。これから前記遺伝子のうち一つ以上に体細胞配列突然変異がある場合、湿性加齢黄斑変性の危険で高い有意性を示していることが分かる。
実施例4.2.主要遺伝子に対する陽性率確認
実施例4.2.1.加齢黄斑変性患者に対する陽性率分析
加齢黄斑変性患者群と対照群に対してDNMT3A、TET2およびASXL1 3個の遺伝子に対する陽性率を調査し、陽性率の差をカイ二乗検定で分析した。分析結果を下記の表16に示した。
表16を参照すると、分析結果患者群の陽性率が対照群の陽性率より有意に高かった(20.3% vs 9.4%、p-value<0.001)。
実施例4.2.2.湿性加齢黄斑変性患者に対する陽性率分析
前記実施例4.2.1.で分析した全体加齢黄斑変性患者群の197個のサンプルのうち、湿性加齢黄斑変性153個のサンプルに対して同一の分析を施行し、分析結果を下記の表17に示した。
表17を参照すると、前記89個の遺伝子群に対する陽性率が湿性加齢黄斑変性患者群で正常対照群より有意に高いことを確認した(21.6% vs 9.4%、p-value<0.001)。また、DNMT3A、TET2およびASXL1 3個の遺伝子が湿性加齢黄斑変性の可否に及ぼす影響を調べるために、年齢と性別および喫煙の有無を補正してロジスティック回帰分析を施行した。その結果、オッズ比は1.37(CI 0.86-2.20、p-value 0.1881)であり、DNMT3A、TET2またはASXL1遺伝子の体細胞配列変異が存在する場合、湿性加齢黄斑変性と有意な関連性を示した。
実施例4.3.個別遺伝子に対する陽性率確認
各個別遺伝子DNMT3AとTET2の陽性率を患者群と対照群で調査し、陽性率の差をカイ二乗検定で分析した。
実施例4.3.1.加齢黄斑変性患者に対するTET2陽性率分析
まず、TET2遺伝子の分析結果を下記の表18に示した。
表18を参照すると、TET2遺伝子の陽性率は患者群で対照群より有意に高かった(6.6% vs 1.8%、p-value<0.001)。また、TET2遺伝子が加齢黄斑変性の有無に及ぼす影響をロジスティック回帰分析で調査した。年齢、性別、喫煙の有無を補正して分析した結果、TET2遺伝子に体細胞配列変異が存在する場合、黄斑変性の危険が増加する傾向があることを確認した(OR 1.93、CI 0.90-4.16、p-value=0.0913)。
実施例4.3.2.湿性加齢黄斑変性患者に対するTET2陽性率分析
全体サンプルのうち、湿性加齢黄斑変性153個のサンプルに対して同一の分析を施行し、分析結果を下記の表19に示した。
表19を参照すると、TET2遺伝子の陽性率は患者群で対照群より有意に高かった(7.2% vs 1.8%、p-value<0.001)。またTET2遺伝子が湿性加齢黄斑変性の可否に及ぼす影響を調べるために、年齢と性別および喫煙の有無を補正してロジスティック回帰分析を施行した。その結果、オッズ比は1.83(CI 0.80-4.20、p-value 0.1519)であり、TET2遺伝子の体細胞配列変異が存在する場合、湿性加齢黄斑変性の危険が増加する傾向を示した。
実施例4.3.3.加齢黄斑変性患者に対するDNMT3A陽性率分析
次に、遺伝子の分析結果を下記の表20に示した。
表20を参照すると、DNMT3A遺伝子の陽性率は患者群で対照群より有意に高かった(11.7% vs 6.9%、p-value=0.011)。
実施例4.3.4.湿性加齢黄斑変性患者に対するDNMT3A陽性率分析
全体サンプルのうち湿性加齢黄斑変性77個のサンプルに対して同一の分析を施行し、分析結果を下記の表21に示した。
表21を参照すると、DNMT3A遺伝子の陽性率は患者群で対照群より有意に高かった(12.4% vs 6.9%、p-value=0.009)。
Claims (23)
- 個体から分離された生物学的試料を利用してクローン性造血誘発突然変異を検出できる製剤を含む
加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するための、組成物。 - 前記突然変異はAPC、ASXL1、ASXL2、BCOR、CD58、CHEK2、CUX1、DNMT3A、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET2、TNFAIP3およびU2AF1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項1に記載の組成物。 - 前記突然変異はAPC、ASXL1、ASXL2、CD58、CHEK2、CUX1、DNMT3A、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET2、TNFAIP3およびU2AF1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項1に記載の組成物。 - 前記突然変異はDNMT3A、TET2、ASXL1、APC、ASXL2、BCOR、CHEK2、CUX1、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、KMT2D、NF1、NOTCH2、RIT1、SETD2、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12およびTNFAIP3からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項1に記載の組成物。 - 前記突然変異はDNMT3A、TET2、ASXL1、SETD2、KMT2D、NF1、NOTCH2、SF3B1、ASXL2、CHEK2、CUX1、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、RIT1、SRSF2、SUZ12、APC、STAT3およびTNFAIP3からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項1に記載の組成物。 - 前記突然変異はDNMT3A、TET2およびASXL1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項1に記載の組成物。 - 前記突然変異はミスセンス(missense)突然変異、フレームシフト(frameshift)突然変異、ナンセンス(nonsense)突然変異またはスプライス(splice)突然変異である
請求項1に記載の組成物。 - 前記製剤は前記突然変異を検出するためのプライマー、プローブまたはアンチセンス核酸を含む
請求項1に記載の組成物。 - 前記加齢黄斑変性が湿性黄斑変性である
請求項1に記載の組成物。 - 請求項1~請求項9のいずれか一項に記載された組成物を含む
加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するためのキット。 - 請求項1~請求項9のいずれか一項に記載された組成物を含む
加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療に必要な情報を提供するための遺伝子分析用パネル。 - 個体から分離された生物学的試料の遺伝子分析を通じて個体にクローン性造血誘発突然変異が存在するかどうかを確認する段階を含む
加齢黄斑変性の発生予測、診断または治療のための情報を提供する方法。 - 前記突然変異はAPC、ASXL1、ASXL2、BCOR、CD58、CHEK2、CUX1、DNMT3A、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET2、TNFAIP3およびU2AF1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項12に記載の方法。 - 前記突然変異はAPC、ASXL1、ASXL2、CD58、CHEK2、CUX1、DNMT3A、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、JARID2、KMT2D、NF1、NOTCH2、PPM1D、RIT1、SETD2、SF1、SF3B1、SRSF2、STAT3、SUZ12、TBL1XR1、TET2、TNFAIP3およびU2AF1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項12に記載の方法。 - 前記突然変異はDNMT3A、TET2、ASXL1、APC、ASXL2、BCOR、CHEK2、CUX1、EP300、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、KMT2D、NF1、NOTCH2、RIT1、SETD2、SF3B1、SRSF2、STAG1、STAT3、SUZ12およびTNFAIP3からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項12に記載の方法。 - 前記突然変異はDNMT3A、TET2、ASXL1、SETD2、KMT2D、NF1、NOTCH2、SF3B1、ASXL2、CHEK2、CUX1、EZH2、GNB1、JAK1、JAK2、RIT1、SRSF2、SUZ12、APC、STAT3およびTNFAIP3からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項12に記載の方法。 - 前記突然変異はDNMT3A、TET2およびASXL1からなる群から選択される一つ以上の遺伝子の突然変異を含む
請求項12に記載の方法。 - 前記突然変異はミスセンス(missense)突然変異、フレームシフト(frameshift)突然変異、ナンセンス(nonsense)突然変異またはスプライス(splice)突然変異である
請求項12に記載の方法。 - 前記生物学的試料は血液、血清、血漿、リンパ液、唾液、喀痰、粘液、小便または大便である
請求項12に記載の方法。 - 前記遺伝子分析は次世代ゲノムシーケンシング分析法(Next Generation Sequencing)を利用する
請求項12に記載の方法。 - 前記突然変異が存在すれば加齢黄斑変性の発生可能性が高いと判断する段階を追加で含む
請求項12に記載の方法。 - 前記突然変異が存在すれば、加齢黄斑変性の発病または進行の危険を減少させるために、患者において前記突然変異を抑制するか前記突然変異が存在する遺伝子の機能を回復または補充するための処置をする必要があると判断する段階を追加で含む
請求項12に記載の方法。 - 前記加齢黄斑変性が湿性黄斑変性である
請求項12に記載の方法。
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