JP2008528001A - 癌マーカーおよび検出方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、癌マーカーおよびサンプル中の癌マーカーの検出方法に関する。サンプルは末梢血でありうる。癌マーカーは、最も一般的には、転移性癌に関連した突然変異型または異常DNA配列である。マーカーは、PCR、マイクロアレイ、または他の核酸もしくはペプチドに基づくアッセイを用いて検出することができる。これらの方法は、種々の診断目的のために用いることができ、そのような目的としては、癌(特に転移性癌)の初期診断、早期診断または後期診断、および癌の進行または治療の進行のモニタリングが挙げられる。癌マーカーはまた、癌マーカープロフィールを作成するのにも用いることができる。治療をこのプロフィールに基づいて進めることができる。さらに、血液を用いた方法は、たった1種類の腫瘍ではなく、体内の数種類の腫瘍のうち少なくとも1種類に見出される突然変異または異常の癌マーカープロフィールを提供する。本発明はまた、種々の方法を実施する上で用いるためのプライマーキットなどのキットおよびマイクロアレイも包含する。
【選択図】図1

Description

本発明は、被験体、例えば癌を有することが疑われるヒトの血液中で癌マーカーを検出する方法に関する。本発明は、さらに具体的には、血液中にマーカーを放出する転移性癌または他の癌を検出する方法に関する。それは、初期診断および予後診断、治療方針の決定、ならびに治療または疾患モニタリングに使用することができる。検出は、該癌マーカーに対応する癌検出試薬を使用して達成することができる。
癌は、体内の細胞が正常に機能せず、抑制されずに成長し始める場合に生じる。これらの機能不全は、細胞のDNAブループリントの突然変異に起因する。ゆえに、早期の癌診断では、疑わしい癌細胞の成長特性および物理的外観に的を絞っていたが、より最近の技術では細胞の内側の仕組みを検査し始めている。
すべての癌が同一の突然変異に起因するわけではない。癌を誘発す特定の突然変異に関して功を奏するいくつかの治療は、他のタイプの突然変異を有する癌に対して効果がなく、実際には、不適切に処方されると、良好であるよりも、害をおよぼすことがある。ゆえに、癌診断学が異なるタイプの癌を識別する能力は、異なるタイプの癌を適切に治療する能力に遅れをとらないことが必須である。現行の診断法は、新規治療の開発速度に追いつけなくなりつつある。
現行の癌診断法に伴う別の問題は、分析対象の組織サンプルの必要性にある。純粋なイメージング以外の、すべての現在成功している癌診断法は、癌細胞を患者の身体から取り出すことを必要とする。最も一般的には、これらの細胞は組織生検から取得される。有効ではあるが、組織生検は、高価で、時間がかかり、かつ患者に痛みを伴う。さらに、組織生検を計画および取得し、次いでそれを分析するために必要な期間によって治療が遅延し、生検プロセス自体が癌細胞を血流中に放出させ、転移の増加を生じさせる可能性がある。
さらに悪いことに、腫瘍の位置のせいで組織生検が可能でない場合もある。そのような場合には、外科手術を行って該腫瘍を取り出す後まで、癌の厳密な性質を決定することができない。これらの術後試験は、患者の追加治療の方針決定に依然として有用ではあるが、該腫瘍の性質を前もって決定できれば、患者に過酷な外科手術を受けさせる前に、非侵襲的治療、例えば化学療法を試みる可能性がより大きくなる。外科手術が必要な場合でさえ、患者は、より詳細な術前診断から依然として恩恵を受ける場合がある。そのような診断は、例えば、外科手術中に該腫瘍から遊離した癌細胞の転移性伝播の機会を最小化するように設計された薬物での術前治療を可能にしうる。さらに、それは、外科的技術、例えば腫瘍の周りの組織をどれだけ取り除くかに関する、より有益な指針を提供しうる。
現在、最も成功している細胞ベースの診断法のいくつかは非生検サンプルを利用する。例えば、PAPスメアは細胞の不規則性を探すものであるが、身体によって正常に剥がれ落ちた細胞を利用する。PAPスメアは、子宮頚癌になるプロセスにおける細胞の容易かつ非常に早期の検出を可能にすることによって、毎年、数千の生命を救い続けている。
生検に関連する問題および非常にシンプルな方法、例えばPAPスメアの成功のせいで、医学界は、別の容易に利用可能なサンプルである、血液、特に末梢血を使用する癌診断学のサーチに何年も費やしている。それらの努力はいくつかの成功を得た。例えば、前立腺癌の進行または再発は血液検査を使用して容易にモニターすることができる。しかし、現行の血液ベースの癌診断学、例えば前立腺癌試験は、依然として特定のタイプの癌に的を絞ったままである。多種多様な癌または癌一般を診断するために血液を使用可能な癌診断が依然として必要とされる。
組織ベースの癌診断学以外では、ほとんどの診断法はイメージング技術に依存する。その技術は、単純なX線イメージングからMRIおよび放射性イメージング(nuclear
imaging)にわたり、良好なイメージを得るために、癌または組織を標的にする造影剤を使用することが多い。しかし、最も強力なイメージング技術でさえ、直径が約2〜5mmより小さい腫瘍を検出することはできない。腫瘍が該サイズに達する時点までに、それは数千の細胞を含有する。さらに、これらの高度なイメージング技術は非常に高価であり、該患者が容易に除去できる小さい腫瘍以外に症状を有さない場合、癌の初期には使用することができない。むしろ、複雑な画像診断学は、大きな原発腫瘍を有していて、発達した転移性癌を有することが疑われる患者にしか行わないことが非常に多い。検出対象の小さい腫瘍は、実際には、癌が伝播した時に生じる転移である。ゆえに、多数の良性細胞を含有することが多い原発腫瘍とは異なり、該検出対象の小さい腫瘍は数千の悪性転移性細胞を含有し、その各々が身体の他の箇所で別の腫瘍の種になりうる。
明らかに、現行のイメージング技術による小さな転移性腫瘍の検出は、実に、重態の患者を救うための土壇場の努力である。これらの転移性細胞を、ずっと早期に、例えばそれらが血液を介して最初に伝わり始めた時に検出できれば、患者は、彼または彼女が有する可能性があるすべての転移性腫瘍に関する治療を受け始めることができ、それは、それらの腫瘍がまだ非常に小さすぎて、画像診断または任意の他の現行技術によって検出できないうちのことである。ゆえに、転移性腫瘍のずっと早期の診断、または転移性腫瘍についての非常に高い可能性の検出に関する必要性が存在する。
最近の癌診断のさらに別の欠点は、治療と組み合わせる能力に関する。組織サンプルを介していくつかの共通の突然変異が診断でき、患者の癌のタイプにいくらか特異的な治療の管理にそれらが使用される場合、このアプローチは少数のタイプの癌に関してしか適用可能でない。現在、広範囲のタイプの癌を検出できるか、あるいは多数のタイプの癌における治療の詳細な標的を提供できる診断法はない。
最後に、現行の癌診断学、特に組織生検に依存するものは、治療の進行または有効性のモニタリングにあたって非常に不十分である。治療を行う医師が、すべてのまたは相当な数の癌細胞または特定のタイプの癌細胞が根絶された時点を教えることができれば、数千ドルを節約することができ、おそらく患者の生命さえ救うことができよう。さらに、本質的に癌細胞は非常に急速に変化しうる。ゆえに、それらは追加の治療経過中でさえ突然変異し、かつて有用な薬物であったものを無力または有害にする可能性がある。細菌が抗生物質に耐性になるのと同じ程度に、本質的に、該癌細胞は該薬物に耐性になるであろう。癌治療は、治療の有効性または患者の癌細胞についての任意の追加の突然変異を示すこれらの変化および他の変化を検出できる診断法から、大きな恩恵を受けるであろう。
発明の概要
本発明は、癌マーカー、特に癌一般に関するマーカーのハイパーセット(hyperset)および特定のタイプの癌に関するマーカーのスーパーセット(supserset)、ならびに該ハイパーセットおよびスーパーセットのサブセット(subset)に関する。
本発明は、さらに、癌マーカーを検出するための癌検出試薬を使用して血液または組織をスクリーニングする方法に関する。癌検出試薬は、少なくとも17塩基長の短い核酸であり、被験体中の癌の存在と相関するが、健常組織と相関しないように決定された特定配列を有する。ゆえに、本発明は病理学ベースの診断学に関する。
血液がスクリーニングされる場合、それは任意のタイプの血液であってよいが、サンプルの取得を容易するために、ほとんどの場合、末梢血を使用することができる。本発明の態様を使用して組織中の癌を検出してよいが、本明細書中の説明では末梢血を重点的に取り扱う。その理由は、被験体からの末梢血サンプルの取得が比較的容易であり、かつ、単一の腫瘍ではなく動物全体の癌状態を表す能力を有するからである。しかし、末梢血に関して設計された技術を他の血液または組織とともに使用するために改変する方法は、当業者に自明である。
癌マーカーには、細胞の細胞DNAの転写された部分における任意の突然変異が含まれうる。これらの突然変異は、該突然変異DNA領域、または癌マーカーに対応する癌検出試薬を使用する、癌細胞のDNAまたはそのmRNAに基づく分析によって検出してよい。特定の実施形態では、PCR解析、マイクロアレイ解析、またはビーズベースの解析を癌マーカーアッセイに使用してよい。
該癌マーカーおよび対応する癌検出試薬は、公知の癌および癌細胞株由来の転写核酸配列のデータベースを調査し、該配列を正常なヒトトランスクリプトームと比較するための専売のソフトウェアを使用して特定された。ゆえに、これらの核酸配列は、癌を有さないヒトのトランスクリプトームと比較された場合の突然変異または異常性を表す。詳細には、該癌マーカーは癌由来のmRNA転写物中に存在し、健常なヒトトランスクリプトーム全体においては普遍的に不存在である。該癌マーカーは、癌細胞に限定されている転写配列しか含まないため、それらは癌関連突然変異に対応する。そのような突然変異には、癌を生じさせる体細胞突然変異が含まれるであろうし、あるいは被験体のゲノムに存在する稀な異常な変異も含まれうる。
前記癌マーカーに対応する癌検出試薬を、単独で、または組み合わせて使用して、被験体の癌マーカープロフィールを決定してよい。該癌検出試薬を使用して、癌を検出し、癌またはその治療の進行をモニターすることができる。さらに、該癌検出試薬を用いる試験を使用して、被験体内の1種以上の転移性癌細胞に存在するいくつかの突然変異または異常性を示す癌マーカープロフィールを提供してよい。反復試験により、被験体の癌マーカープロフィールの変化を検出することができ、おそらく、その変化は治療の有効性または種々の転移性細胞の発生を示すものである。
癌マーカーの多くは、種々の癌mRNA転写物中に反復して出現する配列であり、それによって該癌マーカーに一対多数の遺伝的関連性が付与される。これは1つの癌検出試薬によって、各々が同じ癌マーカーを有する複数の遺伝子を検出できることを意味し、該検出は単一遺伝子の発現レベルに依存しない。in
vitroおよびin situの両条件で、その最終結果は検出能力の向上であり、それは、比較的少数の転移癌細胞しか有さないサンプル中でさえ検出を促進する。
すべての癌マーカーがすべての癌患者の血液または腫瘍中で見出されるわけではない。代わりに、各患者は、典型的に、それらの血液または腫瘍中に存在する癌マーカーのサブセットを有する。多数の癌マーカーが、各々、1種以上の遺伝子と関連しているため、これらのサブセットは、自動的に、患者の癌の特性を反映する遺伝的プロフィールをもたらす。
特定の実施形態では、汎用の癌診断が提供されるであろう。詳細には、種々のタイプの癌の間で癌マーカーのいくつかの変異が存在し、複数のタイプの癌で非常に共通するマーカーもあることが決定されている。ゆえに、これらのマーカーを含む共通の診断アッセイが提供される。そのようなアッセイは、被験体が癌を有するかどうかがわからないか、あるいは被験体が有するかもしれない癌のタイプがわからない場合の、ルーチンのスクリーニングまたは早期診断に関して特に有用であろう。
さらに、特定のタイプの癌に特異的な癌マーカーが決定され、出現頻度に基づいて格付けされている。例えば、結腸癌において頻繁に認められる59マーカーのサブセットが突き止められ、それを使用して癌検出試薬が作成されている。これらの癌タイプ特異的マーカーセットを使用して、特定のタイプの癌に関する診断アッセイが提供される。これらのアッセイは、既存の癌の進行または治療のモニタリングにおいて特に有用であろう。それらは、特定のタイプの癌にかかりやすいことが既知の被験体におけるルーチンの診断にも有用であろう。
最後に、ほとんどの癌マーカーは2種以上の遺伝子において見出されている。ゆえに、該癌マーカーに厳格に合わせて作製されている癌検出試薬を使用する診断アッセイは汎用の癌検出に非常に強力であるが、どの遺伝子が罹患しているかを知るためには有用性が低い。罹患遺伝子について知ることは患者に関する予後または患者の治療に影響するであろう。ゆえに、本発明のさらに別の実施形態では、遺伝子選択的癌検出試薬が提供される。そのような試薬は、癌マーカーが特定されていれば、容易に開発することができる。該癌マーカー配列は特定の遺伝子において突き止められるであろう。そして該野生型遺伝子中に認められるフランキング配列(隣接配列)を癌検出試薬に含ませてよい。好ましくは、包含されるフランキング配列は、被験体中の該遺伝子または、該癌マーカー突然変異を有する遺伝子の特定を可能にするために十分な長さの配列であり、実行されるアッセイのタイプと依然として適合性である。
患者の癌細胞中に存在する突然変異の知識を治療の管理において使用することができる。例えば、特定のタイプの癌または特定遺伝子中の突然変異に対して有効であることが知られている薬物のみを処方してよく、あるいは患者の癌の原因となる突然変異に基づいてそれを回避してよい。さらに、患者特有の癌突然変異の知識を使用して新規クラスの制癌剤(cancer
drug)を開発してよく、それには診断された突然変異を標的にする患者に特異的な制癌剤が含まれる。これらの標的化された薬物は該突然変異体タンパク質、特に細胞表面タンパク質に影響するか、あるいはそれらは細胞の核酸、例えばmRNAに対して作用するであろう。
詳細な説明
本発明は、被験体由来のサンプル中の癌マーカーを検出するためのアッセイを使用する、被験体中の癌、特に転移性癌の検出に関する。特定の実施形態では、検出は、該癌マーカーに対応する癌検出試薬を使用して達成される。
本発明で使用される癌検出試薬は、主に、癌マーカーに対応する短いDNAまたは他の核酸オリゴマーの形式で提供される。これらの癌マーカーは、すべて、ヒトの癌性組織において以前に示されているものである。それらには、まさに該癌を生じさせた突然変異、癌への傾向を増加させた可能性が高い早期の突然変異、または遺伝子の異常な対立遺伝子変異体が含まれるであろう。多数のものは、細胞DNA、特に遺伝子のエキソンの転写された部分に位置する。しかし、本発明の癌マーカーは他の突然変異DNA領域にも対応する場合がある。さらに、該マーカーは、サンプル中のmRNAもしくはDNAを検出または増幅する技術を使用してサンプル中で検出することができる。しかし、該マーカーは、それらがコードするペプチドに関するアッセイによって検出してもよい。該ペプチドは該癌マーカー配列から予測してよい。
癌検出試薬には、一本鎖および相補的二本鎖核酸の両者が含まれうる。癌マーカーを特定するための癌検出試薬として使用するために適切な形式の核酸は、当業者には明らかである。
癌マーカーの特定
本発明の癌マーカーは、専売ソフトウェアおよび、癌性および健常細胞ならびに組織についての遺伝情報を記録している公共データベースの情報を使用して単離された。具体的には、専売ソフトウェアおよびスーパーコンピュータを使用して、癌細胞株由来のmRNAデータの任意の部分をすべての健常細胞株由来のすべての利用可能なmRNAデータと比較した。それは図3で図示される通りである。このプロセスにより、癌マーカーのデータベースが得られた。例えば図1および図2の2種である。
得られたデータベースは、共通癌マーカーハイパーセットと称され、それは数十万の癌マーカーの配列を含有し、該配列は、17merまたはそれ以上の長さの癌検出試薬とされ、癌タイプに基づくスーパーセットに分類することができる。スーパーセット中の各癌マーカーは、該スーパーセットの癌タイプに対応する癌細胞において少なくとも1回出現しなければならない。該スーパーセット間には重複が存在する。その理由は、癌マーカーが、通常、多数の異なる癌タイプに関するスーパーセットにおいて出現するからである。
癌ハイパーセット全体中の癌マーカーの総数は常に増加する。コンピュータソフトウェアは、現在、休みなしに作動中であり、毎月数千の新規癌マーカーが追加されている。さらに、新規の癌が出現すると、新規癌マーカーが作成される。現在利用可能なデータに基づいて、単一タイプの癌に関するスーパーセットは数万の癌マーカーを含有しうることが知られている。
該癌マーカーを含有するmRNA分子を単離するために使用される細胞株が知られており、これは癌を有するヒト被験体から得られたものであるため、ヒトにおける該癌マーカーの過去の出現としてこれらの細胞株をカウントすることが可能である。それは図4に示される通りである。これにより、各癌マーカーの出現の見込みを、癌細胞株におけるその過去の出現率に基づいて評価するシンプルな方法が得られる。
癌マーカーは特別な種類の癌突然変異を表す。該突然変異は、癌細胞に限定されている核酸内容を有する。そのような限定性が存在しない場合、該突然変異は癌マーカーと見なされない。それは図3に示される通りである。癌マーカーの選択に関するこの条件により、癌細胞の遺伝学の有用な差異を検出する癌検出試薬が得られる。これは、癌の診断および治療に関する重要な基準である。
複数遺伝子(Multi-Gene)の態様
本発明の癌マーカーおよび検出試薬は概して小さく、ゆえにゲノムマッピングに適していない。しかし、単離されていない癌マーカーを含有するmRNA分子はマップすることができる。この様式で、どの遺伝子が各癌マーカーと関連しているかを決定してよい。
多数の遺伝子が各癌マーカーと関連している場合がある。該遺伝子の数は、通常、公共データベース中で認められる各癌マーカーを含有する特有のmRNA分子の数と直接相関している。時には、データベース中の数百のmRNA分子が癌マーカーを含有し、数百のマップされた遺伝子が得られる。これは表1および表2において明らかである。
多数の癌マーカーが、現在、癌との関連性が知られていない遺伝子中に存在するが、癌において重要であることが知られている遺伝子中に存在するものもある。これらの癌マーカーは、SNP、潜在スプライシングおよび他の遺伝的欠損を示すことがよくある。例えば、図1はリンホトキシンβ受容体(LTBR)遺伝子において認められる癌検出試薬を示す。
図1は、同一の点突然変異が異なるタイプの癌を有する異なる被験体の同じ遺伝子中に存在することを示す。具体的には、図1は、8種の異なる癌細胞株および6種の異なる癌タイプ由来のLTBR
mRNA間のアライメントの一部分を示す。それは、対応する健常なLTBR mRNAに対してマップされている。図1で示されるように、8種の癌LTBRは、互いに、ならびに健常なLTBRとわずかに異なる。しかし、6959bpの位置では、癌LTBRは同一の変化を有し、各々はグアニン(G)を欠き、同一の癌マーカー、CCTGAGCAAACCTGAGCが生じる。細胞のLTBR核酸中のこのマーカーの存在は癌の存在の指標である。これは1対1の遺伝的関連性である。
図2は、同一の癌マーカーが、異なるタイプの癌を有する異なる被験体中、異なる遺伝子中の異なる突然変異に起因しうることを示す。具体的には、図2は、4種の異なる癌細胞株および4種の異なる癌タイプ由来のmRNA間のアライメントの一部分を示す。それは、17種の異なる遺伝子由来の対応する健常なmRNAに対してマップされている。該突然変異は遺伝子ごとに異なるが、最終結果は各遺伝子中に同一の癌マーカー、CGCATGCGTGGCCACCAが存在することである。該17遺伝子の各々におけるこのマーカーの存在は、対応する細胞または組織における癌の存在の指標である。この配列は、1対多数の遺伝的関連性を有する。
図1および図2に示される癌マーカーは、それらが出現する遺伝子間で、あるいはこれらの遺伝子が発現される組織において、いかなる共通の機能性にも依存しない。さらに、癌マーカーはいずれも、健常なヒトのトランスクリプトームでは認められていない。したがって、図面に示される遺伝子由来の転写産物だけでなく、任意のmRNA転写産物中のこれらのマーカーの存在は、宿主細胞中の癌の存在についての指標となる。該配列は癌細胞に限定されているmRNAであるため、それらは癌関連の突然変異を反映する。さらに、それらが検出されれば、どのセットの遺伝子がそれらを含有するかがただちにわかる。
癌マーカーは、多数の遺伝子および多数の癌で共通であるかもしれない。これは、すべての癌マーカーが、すべての癌細胞株または癌被験体に存在することを意味しない。このことは、2種の癌マーカーおよびそれらが存在する癌細胞株に関して図5で実証される。
マーカーの特異的サブセット
該癌マーカーハイパーセットおよびスーパーセットの分析により、いくつかの癌マーカーが種々の異なるタイプの癌で頻繁に見出されることがわかった。ゆえに、これらの癌マーカーを共通癌マーカーとして特定してよい。特定された共通癌マーカーは表1および表2に含まれる。これらの癌マーカーは高頻度の結腸癌マーカーとして最初に特定されたものであり、該目的で使用してもよい。
表1および表2は、結腸癌スーパーセットにおける最高評価の59種類の癌マーカーをリストする。これらの59種類の癌マーカーは高頻度の結腸癌マーカーサブセットを構成する。関連遺伝子も示されている。合計で、1000を超える遺伝子が該表に示されている。これは、該59種類の結腸癌マーカーが、検出能力の範囲内で使用された場合に、1000を超える遺伝子中の突然変異を検出できることを意味する。その感度はそれらの一対多数の遺伝的関連性によって可能になるものである。
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これらの59種類の癌マーカーには多数のSNPが含まれるが、それらには、より長い突然変異も含まれる。
他のタイプの癌に特異的な癌マーカースーパーセットも特定されている。肺癌に関する癌マーカーを表3に提供し、リンパ腫に関するものを表4に提供する。
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被験サンプル
本明細書中で考察される癌検出試薬を、癌マーカーを含有する可能性が高い任意のサンプルに対して使用してよい。しかし、好ましい実施形態では、マーカーは容易に取得可能な体液、例えば末梢血中で検出される。末梢血を使用すると、同一被験体中のいくつかの分化した腫瘍由来のマーカーを一度に検出することが可能になるという利点がさらに提供される。しかし、例えば1種類の腫瘍のみについての情報を求めている場合には、組織サンプルまたは他のサンプルが検査される場合もある。
癌組織サンプルおよび生検は、通常、複数の腫瘍が存在する場合でさえ、単一の腫瘍に由来する。初期の癌では、ほとんどの癌細胞は親腫瘍の娘の細胞であり、該腫瘍中の細胞と同一の突然変異を有することが多い。しかし、転移性癌細胞は異なる突然変異を有することが多い。さらに、転移性腫瘍は、初期には同様である場合でさえ、異なる発達経路にしたがい、異なる追加の突然変異を経時的に蓄積しうる。最後に、多数の癌治療が癌細胞において追加の突然変異を引き起こすことがよく知られている。したがって、後期の癌の癌細胞は初期のものと同一の突然変異を有さないことが多い。突然変異の変化は同一個体の転移性腫瘍間でも見られることが多い。
腫瘍は個別の突然変異を有する傾向があるため、当然、単一の腫瘍から採取された組織サンプルは被験体の癌の全体にわたって認められるすべての癌突然変異を含有するわけではない可能性が高いということになる。ゆえに、従来の方法論を使用して被験体体内のすべてまたはほとんどの突然変異をプロファイリングするには、複数の腫瘍由来のサンプルが必要とされる。対照的に、サンプルとして血液を使用する本発明の実施形態では、転移性癌中に存在するすべてまたはほとんどの突然変異が単一サンプル中で検出されるであろう。その理由は、それが複数の腫瘍由来の細胞を含有するからである。さらに、血液サンプルは、慣用の技術を使用して検出可能でない小さな転移性腫瘍由来の細胞を含有することもありうる。
診断用途
本発明の癌マーカーおよび対応する癌検出試薬は、転移性癌の診断、特に病理学ベースの診断に使用することができ、診断には、初期診断ならびに治療および疾患進行モニタリングが含まれ、標的の癌細胞死のモニタリングも含まれる。
好ましい実施形態では、被験体の癌マーカープロフィールを提供するために、本発明を使用して、複数の癌マーカーを検出する。被験マーカーは種々の要因に基づいて選択してよい。2種の要因としては、任意のタイプの癌の全体的な出現頻度、または特定の組織で発生する癌との関連性が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法は種々の診断目的で使用することができる。本明細書の目的では、「診断(diagnostic)」とは、被験体が疾患を有するかどうかについての最初の決定だけでなく、疾患の性質を検査するためのいずれの試験をも表す。例えば、本明細書中の診断の形態としては、癌が存在するかどうかを最初に決定するための、健常な被験体または症状を有する被験体におけるスクリーニング、被験体が癌を有することが決定された後の任意の時点での試験、治療の推奨またはその経過のモニタリングを支援するための試験、予後試験、任意の新規突然変異の発生を含む癌の発生をモニタリングするための試験、および転移性細胞の存在または不存在または根絶を決定するための試験が挙げられる。
例えば、本発明の方法を使用して、血液中に認められる癌細胞、特に転移性癌細胞または他の癌細胞の存在を検出することができる。該方法は、腫瘍が小さすぎてイメージングまたは他の技術によって検出できない時点でさえ、癌または転移性癌の初期診断に使用することができる。
本発明のスクリーニングを使用して、癌細胞の存在を示すだけでなく、これらの細胞に存在するいくつかまたはすべての突然変異または異常性を決定してもよい。存在する突然変異についての知識を治療の管理に使用してよい。例えば、特定のタイプの癌に対して有効であることが知られている薬物のみを処方してよく、あるいは被験体の癌の隠された突然変異に基づいてそれを回避してよい。さらに、被験体特有の癌突然変異の知識を使用して新規クラスの制癌剤を開発してよく、それには診断された突然変異を標的にする被験体特異的な制癌剤が含まれる。これらの標的化された薬物は突然変異体タンパク質、特に細胞表面タンパク質に影響するか、あるいはそれらは細胞の核酸、例えばmRNAに作用しうる。
さらに、該癌マーカー部位に隣接する領域を組み入れた追加の試験を使用して、所定の癌患者において癌マーカーによって影響されている具体的な遺伝子を決定してよい。表1および表2で明らかに示されるように、少数の遺伝子としか関連していない癌マーカーもあるが、ほとんどのものは多数の遺伝子において見出されている。これらの遺伝子の一部のものの機能は公知である。したがって、癌マーカーがどの遺伝子に位置するかを決定する能力によって、癌治療の管理に使用することができる追加の情報が提供される。
公共データが作成される方法を考慮すると、癌マーカーおよび癌細胞株間の任意の共通性またはその欠如に関して多くの機会および一致が予測される。しかし、図5で示唆されるように、一部の癌マーカーは一部の細胞株に出現し、他のものは異なる細胞株に出現する。これは、一部の癌マーカーが一部の癌被験体において見出され、他のものは異なる癌被験体において見出されることを示唆する。各癌被験体は、個別の癌プロフィールを構成し、かつ、該個別の癌においてどの遺伝子が突然変異しているかを明らかにする癌マーカーのサブセットを含有するmRNAを有することが予測される。ただし、十分に大規模な被験体プールを用いると、異なる被験体間で同一の癌プロフィールが観察される可能性があるが、それにもかかわらず、プール中のすべての被験体が同一の癌プロフィールを有することは予測されない。
癌における個別特性の程度は、はっきり理解されているわけではない。しかし、それにもかかわらず、図6に示されるように、個体性は癌タイプと相関すると思われる。癌マーカーハイパーセットは、癌細胞に限定されている長さ17merまたはそれ以上のすべてのmRNA分子を構成してよい。そして各癌タイプは、対応する癌マーカースーパーセットを有し、各癌被験体は癌マーカーサブセットを有し、それはそれらの個別の癌プロフィールと同義である。
表1および表2では、種々の異なる癌細胞中で認められる癌マーカーのセットが示されているため、不可能なわけではないが、単一の癌被験体においてそれらのすべてが見出されるわけではないと予測されるはずである。というよりは、表1および表2の59種類の癌マーカーまたはその一部の組み合わせは特定の被験体の癌に関する癌プロフィール作成において有用である。任意のアッセイまたはアッセイセットに多数の癌マーカーを含ませることによって、より完全な癌プロフィールが作成されるであろう。さらに、どの癌マーカーが被験体のmRNAに存在しないかについての知識は、さらに、予後診断を含む診断、ならびに癌進行および治療モニタリングに非常に有用であろう。例えば、それは該被験体に関する治療の選択において有用である。
癌被験体に関して、血液サンプルおよび本明細書中に記載の方法論を使用して癌プロフィールを作成してよい。図9は、そのような典型的な一方法論のステップを示す。ほとんどの場合、癌プロフィールは、被験体から血液サンプルを取得した後、数時間〜数日以内に取得される。
ほとんどの癌マーカーは一群の遺伝子と関連しているため、被験体の癌において、どの群の遺伝子が癌細胞に限定されている様式で突然変異しているかが迅速に決定される。任意の以後の治療では、この遺伝情報を特異的な癌細胞標的化に利用することができる。残念ながら、ほとんどの既存の治療はこの種の標的化能力を有さない。したがって、本発明の血液ベースの試験は、特異的な癌細胞標的化に関して該癌検出試薬を使用できる新規薬物療法に関する予備試験(precursory
test)でもありうる。
本発明の特定の実施形態では、3種の共通タイプのアッセイが提供される。第1のタイプのアッセイでは、複数のタイプの癌において共通の癌マーカーの存在または不存在に関してサンプルを検査する。好ましい実施形態では、癌マーカーの試験用サブセットは、共通癌ハイパーセットにおいて示される、癌におけるそれらの出現頻度に基づいて選択される。例えば、特定数以上の癌で見出されているすべての癌マーカーを選択してよい。あるいは、癌マーカーを出現頻度に関して格付けすることができ、それらのうちの特定数を選択してよい。例えば、診断アッセイで使用するために上位300種類の癌マーカーを選択する。
新規癌サンプルがハイパーセットに追加される場合、これは、癌マーカーが癌組織中で見出される相対頻度に対して重大な影響をほとんど有していない。このことは、該ハイパーセットが癌全体を代表していること、および、単に任意のタイプの癌において出現する可能性が、他のものよりはるかに高いいくつかの癌マーカーが存在することを示す。
共通癌マーカーハイパーセット由来の癌マーカーを検査する共通診断アッセイは、例えば、毎年の血液検査のようなルーチンのスクリーニングの一部分として使用することができる。それは、癌および多数の他の疾患のいずれとも一貫している症状、例えば体重減少を伴う個体に関して使用してもよい。
第2のタイプのアッセイは、特定のタイプの癌、例えば結腸癌に的を絞ったアッセイであってよい。共通アッセイと同様に、このアッセイは、特定の頻度を超える頻度で存在する癌マーカーのサブセットを探すものであってよく、あるいは、頻度によって格付けされたリスト中の特定数の上位マーカーを探すものであってよい。特定の癌に関する癌マーカースーパーセットもまた、新規データが追加された場合、高頻度マーカーについての相対頻度の変化をほとんど示さない。
この第2のタイプのアッセイは、特定タイプの癌を有することがわかっている被験体に関して使用してよい。それは、共通癌アッセイを使用して取得できるものより、該被験体の癌において存在する突然変異のより詳細な示唆を提供するであろう。それは、より詳細な予後診断または治療計画をさらに提供するであろう。
第3のタイプのアッセイでは、どの遺伝子が被験体の癌突然変異を起こしているかを決定する。このアッセイは任意の時点で使用してよいが、コストおよび効率のために、特定の癌マーカーに的を絞ることもでき、それらの癌マーカーを有することがあらかじめ示されている被験体に関してのみ使用してよい。しかし、いくつかの実施形態、例えば共通の癌マーカーに的を絞った実施形態では、癌マーカースクリーニングと同時に罹患遺伝子に関してスクリーニングすることが効率的であろう。
この第3のタイプのアッセイでは、癌マーカーの周りのフランキング核酸領域を検査することによっても特定の遺伝子を検出することができる。これらのフランキング領域は遺伝子ごとに異なる傾向がある。所定のアッセイ方法に好適で、罹患している可能性のある遺伝子を互いに識別できるフランキング領域は、当業者に明らかである。
癌マーカープロフィール
癌マーカープロフィールは個別の被験体に関して作成することができる。これらの被験体はヒトであることが最も多く、例えば癌を有するか、あるいは癌を有することが疑われるヒトである。しかし、被験体には他の哺乳動物も含まれる。被験体には患者が含まれる。特定の関連では、該被験体は腫瘍または疑われる腫瘍であってよい。
癌マーカープロフィールには、癌マーカーが何であるかおよびそれが該被験体において検出されたかどうかについての示唆が含まれる。癌マーカープロフィールは、一般に、2種以上の癌マーカーに関する情報を提供する。癌マーカープロフィールは、シンプルな陽性/陰性形式の結果を提供することができる。それらは、見出される癌マーカーの量を定量的または定性的に示す。最後に、癌マーカープロフィールには、癌マーカーが被験体内で見出される遺伝子または遺伝子群についての情報が含まれうる。
すべての哺乳動物は、年齢を経るごとに体細胞突然変異を蓄積する。実験では、健常組織が癌マーカーを含まないことが示されている。しかし、血液は身体内のどこかで見出される異常な細胞を含有することがよくあるため、成体の哺乳動物、または若年の哺乳動物でさえ、その血液中にいくつかの癌マーカーを示す可能性が高い。
被験体の血液中のいくつかの癌マーカーの存在は、該被験体が癌を有することを必ずしも示すわけではない。むしろ、癌マーカーの数、タイプ、または組み合わせが、該被験体が癌を有するかどうかを示す可能性が高い。任意の所定の癌マーカーセットに関して、健康な個体由来の血液を、癌を有することが既知の患者由来の血液と比較する通常の実験法では、どの癌マーカープロフィールが癌の指標であり、どの癌マーカープロフィールがそうでないかが容易に示されるはずである。さらに、健康な被験体が癌を発生するかどうか、どの時点で、かつ、どの、それらの癌マーカープロフィールが研究の過程にわたって存在したかを追跡する長期研究では、癌が発生する傾向の増加を示す癌マーカープロフィールが示されるはずであろう。この情報を使用して、予防措置または早期の癌治療を導くことができる。
診断プロトコルおよび例
サンプル中の癌マーカーは任意の適切な方法を使用して特定することができる。しかし、特定の実施形態では、末梢血サンプルのPCR解析によって癌マーカーを特定する。PCR解析にはRT−PCRが含まれる。RT−PCRでは、サンプル由来のmRNAがcDNAに変換される。次いでこのcDNAがPCRリダクションに付される。さらに、PCR解析は、フランキング領域の検出を含むように非常に容易に調整することができる、どの遺伝子が癌マーカーに罹患しているかについての分析が可能になる。
PCRリダクション
従来のPCRでは、5’および3’プライマー間に位置する1セットの核酸領域が増幅される。5’および3’プライマーの両者が使用されるため、新規に作成される核酸鎖は次のサイクルの鋳型として利用可能になる。すべてのプライマーおよびPCR条件は、増幅時に等しく有効なわけではなく、ゆえに一部のものでは、他のプライマーより高い割合で新規鋳型が作成される。該効果は、鋳型として働く新規鎖の能力と併せて、異なるプライマーが使用される場合に、増幅された配列を有する個別の核酸鎖の数に関する重大な差異を生じさせる。この差異は、元のサンプル中で利用可能であった鋳型鎖の実際の数ではなく、プライマーおよびPCR条件の効率に関連している。
あるサンプル中の異なる癌マーカーを含有するmRNA分子数のさらに正確な比較は、本明細書中で「PCRリダクション(PCR
Reduction)」と称される、改変されたタイプのPCRを使用して取得することができる。この方法論を使用すると、5’プライマーのみが提供される。これらのプライマーは、元の鋳型核酸とハイブリダイズできるが、PCRプロセスの一部分として生産される任意の鎖とはハイブリダイズできない。その理由は、そのような鎖が5’プライマーと同一であるが、相補的ではない配列を含有するからである。元の鋳型核酸のみが該PCR反応の鋳型として働きうるので、プライマーまたはPCR効率に起因する異なる癌検出試薬配列のコピー数の差異があまり顕著ではない。コピー数は元の鋳型の実際の数とずっと密接な相関を有する。
PCRリダクションでは、ポリメラーゼが鋳型鎖から脱落するまで重合が起こる。これにより、5’プライマーの後ろに続く末端(trailing
end)が生じるであろう。これらの後ろに続く末端はいくらか長さが変動するが、通常、該プライマーの数百塩基対以内ですべて終結する。ゆえに、すべてのPCR反応産物は、ゲル上の電気泳動によって、単一であるがわずかにぼやけたバンドとして分離するであろう。PCRリダクション方法論の一例を図7に示す。
本発明のいくつかの実施形態において癌マーカーを単独で増幅することは有用であろうが、上記PCRリダクション技術では、後ろに続く末端によって、容易なゲルベースの検出が可能になる。該検出は、小分子の癌検出試薬を単独で使用しても容易に達成することはできない。サンプル中に癌検出試薬配列が存在しないならば、該プライマーは鋳型を有さず、電気泳動後の予測される位置にバンドは現れない。一方、該癌検出試薬配列が存在すれば、ぼやけたバンドが現れる。慣用の技術を使用してこのバンドの強度を分析して、各検出試薬配列を含有するサンプル中の鋳型の相対的存在量を評価することができる。
PCRリダクションおよびゲルのみを使用して、どの遺伝子が特定の癌マーカーを含有するかを検出することは困難であるが、そのような情報は該PCRリダクション産物をさらに分析することによって決定することができる。例えば、異なる遺伝子に特異的なプライマーを使用する従来のPCRを該PCRリダクション産物に対して実施してよい。PCRリダクションプライマーは癌マーカーと相関しているが、数百塩基対までは転写が起こるため、後ろに続く末端は、通常、異なる遺伝子間の識別を可能にするために十分な長さになる。該PCRリダクション産物をシーケンシングして、どの遺伝子または遺伝子群が該癌マーカーを含有するかを決定することも可能である。
マイクロアレイ
別の実施形態では、癌マーカーに基づいてマイクロアレイを構築することができる。これらのマーカーを含む癌検出試薬をマイクロアレイ上に配置してよい。これらの癌検出試薬は、PCR法で使用されるものと異なるものであってよい。しかし、それらは、癌マーカーを有する核酸のみがハイブリダイズし、陽性の結果をもたらすように設計され、そのような条件で使用されるべきである。マイクロアレイベースのアッセイは、また、フランキング領域の検出に非常に適していて、特定の罹患遺伝子の特定を可能にする。Affymetrix(California)によって提供されるようなほとんどの既存のマイクロアレイを本発明とともに使用してよい。SNPまたは小さい欠失を特異的に検出できるマイクロアレイが特に有用である。それは、多数の癌マーカーがこれらの2つのカテゴリーの異常性に含まれるからである。
特定の実施形態では、上記3タイプのアッセイにほぼ対応する3タイプのマイクロアレイが提供される。具体的には、例えば汎用スクリーニングにおいて使用するための、共通癌マーカーマイクロアレイが提供される。各々が特定のタイプの癌に関する別のタイプのマイクロアレイであって、例えば、あるタイプの癌を有することが強く疑われることがわかっている被験体のより詳細な診断のためのものが提供されるであろう。最後に、癌マーカーを有している遺伝子を識別できる第三のタイプのマイクロアレイが提供される。このタイプのマイクロアレイは1つの癌マーカーに適合させることができ、あるいは多数の癌マーカーに関して特定の罹患遺伝子を検出することができる。
複数のタイプのアッセイを同一アレイ上で実行できるハイブリッドマイクロアレイがさらに可能である。例えば、単一マイクロアレイによって、癌マーカーを検出し、かつ、それらのマーカーに関する罹患遺伝子を決定することができるであろう。
他のアッセイ
追加の実施形態では、核酸解析の他の方法を使用してよい。例えば、Luminex(Texas)またはBecton-Dickinson(New
Jersey)による核酸解析に利用可能なアッセイのようなFACSビーズベースのアッセイを使用して、癌マーカーおよび遺伝子特定フランキング配列を検出してよい。
最後に、ペプチドベースのアッセイも可能である。癌マーカーがmRNA解析によって特定されたため、それらのほとんどが異常タンパク質として発現されることが予測される。これらのアッセイは、表面タンパク質中に認められることが多い癌マーカーに関して特に有用であろう。一方、細胞は容易に溶解でき、内部タンパク質に同様にアクセスすることが可能である。抗体を使用するペプチド解析は特に有用である。そのような抗体は、後に、治療において適用性を有するであろうからである。
キットおよびサービス
本発明の癌マーカーはキットを使用して検出することができる。これらのキットには、特定のタイプのアッセイに好適な癌検出試薬を含ませてよい。該アッセイにおいて有用な他の試薬を該キットに含ませてよい。該キットの使用により、被験体の癌マーカープロフィールが得られるであろう。キットは、医学的検査の任意の態様において使用するために設計してよい。該検査には、実験室での研究、商業的な診断用検査室試験、病院またはクリニックの検査室での試験、または診察室での試験が含まれる。キットは、特定の追加の設備、例えばPCRサイクラー、マイクロアレイリーダー、またはFACS装置を必要としてよい。
本発明は、検査サービスとして商業的に供給することもできる。例えば、サンプルを商業的な検査室に提供して、そして該検査室では、適切な癌検出試薬およびアッセイが使用されて、該サンプルに関する癌プロフィールが決定される。そして、その結果が該サンプルの提供者に返却されるであろう。
診断結果の使用
診断結果を使用して、癌を有するか、あるいは癌を発生する可能性が高いと思われる患者の治療を多数の様式で管理することができる。該患者には、多数の癌マーカーまたは特定の組み合わせの存在に基づいて予防的治療を提供してよい。該患者は、疾患の段階に応じて様々に治療することができる。疾患および癌マーカーの変化に応じて治療は異なるであろう。
治療自体には、慣用の治療、例えば化学療法が含まれうる。それには、患者の特定の癌プロフィールに基づく抗体またはアンチセンス治療が同様に含まれるであろう。患者の癌マーカーを使用して、癌マーカー特異的エピトープに対する抗体を作製することができる。それらを使用して、癌細胞の細胞機構を妨害するが、正常細胞を妨害しないアンチセンス分子を作製してもよい。
本発明の癌検出試薬は健常細胞トランスクリプトーム中には存在しないため、それらは癌細胞死を誘発するための癌特異的標的である。例えば、いくつかの癌検出試薬は主に細胞内に位置するペプチドに翻訳されるが、いくつかは細胞外または膜タンパク質を通常コードする配列に組み込まれる。そのような配列は当技術分野に周知であり、タンパク質およびその一部分の見込みの細胞内位置の予測と見なされる。したがって、特に細胞外領域を有するタンパク質では、癌検出試薬によってコードされるペプチドに特異的な抗体の投与は細胞死を誘発すると予測される。癌細胞のみがこれらのペプチドを提示するため、癌細胞のみが該抗体によって標的にされ、死滅する。
本発明とともに使用される抗体には、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、非ヒト抗体、ヒト抗体、およびヒト化抗体ならびにそれらの任意の機能的断片が含まれるであろう。
本発明の癌細胞死を誘発する方法において、単一の癌検出試薬を使用して、複数の遺伝子または遺伝子産物を標的にすることができるが、いくつかの実施形態では、複数の癌検出試薬を標的化して強力な効果を生じさせてよい。2種以上の癌検出試薬を標的化する複合物質は、また、複数の腫瘍を有する被験体に投与される場合に特に有用であろう。被験体の腫瘍は、すべての腫瘍が任意の1種類の癌検出試薬配列を含有するわけではないように分化している可能性がある。複数の癌検出試薬配列を標的にする物質を組み込むことによって、これらの分化した癌細胞をより効果的に死滅させることが可能になる。そのような複合アプローチは、慣用の方法を使用して検出されない可能性があるが、それにも関わらず、本発明の診断法を使用して癌プロフィールが作成された場合に検出可能な癌検出試薬配列を含有する新しいかまたは小さな腫瘍に対して特に強力である。
ゆえに、標的化癌細胞死は、3段階の方法に基づく本発明の選択方法にしたがって達成することができる。第一に、被験体に関する癌プロフィールを作成する。第二に、標的化癌細胞死薬剤を作成し、被験体の血液または他の組織サンプルに関して試験する。第三に、該物質を被験体に投与して、該被験体における癌細胞の標的化された細胞死を引き起こす。このプロセスは3週間程度で達成される。
継続モニタリングによって、被験体における任意の癌検出試薬の消失ならびに任意の新規のものの出現の検出が可能になる。そして、被験体に投与される該薬剤または薬剤の組み合わせは適宜変更することができる。
本発明の具体的な実施形態を実証するために以下に実施例を記載する。以下の実施例で開示される技術は、本発明者らによって発見された、本発明の実施において良好に機能する技術であることが当業者に理解されるはずである。しかし、当業者は、本開示内容を踏まえて、開示される具体的な実施形態において多数の変更を施すことができ、本発明の思想および範囲から逸脱することなく依然として同様または類似の結果が得られることを認識するはずである。
実施例1:方法、試薬および被験体の背景
これらの試験を達成するために、第4期の転移結腸癌を有する2人のボランティアを選択した。これらのボランティアは、本明細書中で、被験体Rおよび被験体Hと称される。被験体Rは女性である。被験体Rは、試験用の9mmの切除された腫瘍および60mLの末梢血サンプルを提供した。被験体Hは男性である。被験体Hは60mLの末梢血サンプルを提供した。
すべてのサンプルからcDNAライブラリーを構築した。さらに、健康な、癌を有さない個体由来の任意の組織サンプルのプールからcDNAライブラリーを構築した。このcDNAプールはこれらの実施例における正常な非癌性サンプルである。
実施例2:癌マーカーセット
専売のコンピュータプログラムを使用して、公共データベースに報告されている癌細胞由来のmRNAを、癌データベースに同様に報告されている正常なヒトmRNAと比較することによって、多数の癌マーカーを特定した。これらの癌マーカーを頻度によって格付けした。一般的に、公共データベースに報告するために使用される癌細胞の各サンプルは異なる患者から取得されたものであるため、該データベースにおける癌マーカーの各出現は、実際のヒト被験体における出現と相関している。ゆえに、該データベースにおける出現頻度は、癌マーカーが出現する過去および予測される将来の頻度とほぼ一致する。
調査対象の各タイプの癌について、頻度に基づいて癌マーカーを格付けした。さらに、本発明では、多数の癌マーカーが複数のタイプの癌で見出されることが多いことが示される。ゆえに、マーカーを、すべての調査対象の癌におけるそれらの総出現頻度に基づいて格付けした。
これまでに特定された、良好な共通癌マーカーでもあるいくつかの結腸癌マーカーを表1および表2に挙げる。
実施例3:血液サンプル調製
標準IV採血針を使用して紫のフタのEDTA含有真空試験管中に60mLの末梢血を採取した。ヘパリン含有試験管も好適である。そして、該血液を、後の処理まで4℃で保存した。RNA分解を少なくするためにできるだけ迅速に処理を完了した。
QIAamp RNA blood mini kitを使用してトータルRNAを単離した(Quiagen, California)。RNAの総回収量は約60μgであった。
後の試験では、血液サンプルをTrizol試薬(Invitrogen, California)を使用して調製し、約400μgが得られたことが示された。しかし、本実施例ではこれらのサンプルを使用しなかった。
血液は、あらかじめ分注された安定化試薬を含有する試験管、例えばPaxgene Blood RNA tubes(Quiagen,
California)に採取してもよい。Paxgene管は試験管あたり2.5mLの血液を保持し、該血液は、通常、室温で5日間安定なままである。Paxgene管は、RNA分解ならびに、血液の採取後に時折生じる遺伝子誘導を防ぐように特別に設計されている。
実施例4:PCR試験用プライマー
製造元から提供された典型的なプライマーデータは以下の通りである。
合成規模:200nmol
長さ:17mer
分子量(アンモニウム塩):5383.4
ODあたりの正確な重量(アンモニウム塩):32.34
ODあたりのナノモル(アンモニウム塩):6.12
ミリモル吸光係数:163.35
試験管中のトータルOD:20
総量(μg):646.76
総量(nmol):122.44
精製:脱塩式
融解温度(摂氏):56.0
5’末端:OH
3’末端:OH。
表2に示された59種類の共通癌マーカーの各々に関して、特定される該マーカーに関するPCRプライマーならびにPCR条件を提供する。
実施例5:cDNA合成
cDNA合成前に、DNAアーゼI消化によってトータルRNAから残留DNAを除去した。具体的には、10μLの総容量を有し、5μgのトータルRNA、1μLの10×バッファーおよび1μLのDNAアーゼIを含有する反応混合物を作成した。この混合物を室温で15分間維持し、次いで1μLの25mM
EDTAを加えた。そのEDTA混合物を65℃で15分間インキュベートした後、氷上に1分間置いた。その反応物を遠心分離によって回収した。
SuperScript III kit(Invitrogen, CA)を使用して、DNAアーゼI消化済みトータルRNAサンプルから第一鎖cDNA合成を行った。ポリTプライマーを使用した。しかし、ランダムプライマーを使用してもよい。ランダムプライマーは、癌マーカーがmRNAのポリT尾部のはるか上流に位置する場合に特に望ましいであろう。
約10μLのDNAアーゼI消化済みRNAを1μLの10mM dNTPおよび1μLのオリゴdT(0.5μg/μL)プライマーと混合した。このRNA/プライマー混合物を65℃で5分間インキュベートした後、氷上に1分間置いた。
2μLの10×RTバッファー、4μLの25mM MgCl、2μLの0.1M DTT、および1μLのRNAase
Out(Invitrogen, California)を含有する反応混合物を調製した。9μLの反応混合物をRNA/プライマー混合物に加えた。遠心分離によって混合物全体を回収した後、42℃で2分間インキュベートした。次いで1μL(50単位)のSuperscript
III RT(Invitrogen, California)を加え、得られた混合物を42℃で50分間インキュベートした。70℃で15分間または85℃で5分間インキュベートし、次いで氷上で冷却することによって、反応を停止させた。その反応物を遠心分離によって回収した。
最後に、1μLのRNAアーゼHを加え、サンプルを37℃で20分間インキュベートして、残留RNAを分解した。
各サンプルをこの様式で処理した。そして、作成された単一cDNAサンプルを、以後の各PCRリダクション反応用の出発材料として使用した。
実施例7:PCRリダクション
PCRリダクションを使用して、cDNA中の任意の癌マーカーを増幅した。上で説明されるように、PCRリダクションでは、サンプル中の癌マーカーを保持するmRNAの相対量についてのより正確な状況が提供される。その理由は、それら自体が増幅用の鋳型になることができる産物を生じないからである。もっと正確に言えば、一方のプライマーのみの使用により、該反応の全体にわたって元の鋳型のみが増幅に利用可能である。
20μLの総容量を有し、13.8μLのDEPC処理水、2μLの10×PCRバッファー(Mgを含まない)、1μLの25mM
MgCl、0.5μLの10mM dNTP混合物、1μLの20μMアンチセンスプライマー(癌検出試薬)、1.5μLのcDNAサンプル、および0.2μLの高フィデリティーの5単位/μL
Taq DNAポリメラーゼを含有するPCR反応混合物を作製した。
PCRを35サイクル実行した。まずPCR反応混合物を94℃で5分間変性させた。次いで、35サイクルの各サイクルは、94℃で30秒の変性、プライマーのアニーリング温度(アニーリング温度は表2に示される)での30秒のアニーリング、および72℃で1分の伸長を含む。完了次第、その反応物を4℃で維持した。
100〜500bpの範囲の増幅産物を取得するための条件を選択した。異なるサイズの産物を取得するために条件を変更することができる。
表2の癌マーカー3および5〜66に対応するアンチセンス癌検出試薬を使用して、末期症状の2人の被験体に関する血液および腫瘍組織の両方についてのPCR解析を実施した。
実施例8:PCR結果
サンプル中に癌マーカーが存在するかどうかを決定するために、PCRの完了後に、10μLのPCR反応混合物を1%アガロースゲルにロードし、電気泳動を実施した。次いで、そのゲルを画像化した。
PCR結果を表5に示す。表5に示されるように、特定されたマーカーは、一般的に正常な組織中に存在しない(正常な組織で出現したものは、体細胞突然変異が徐々に蓄積されたため、見かけの健常組織中に存在した癌マーカーである可能性も残るが、癌マーカーとしての包含から除いた)。
表5は、表1のアポトーシス配列を有するプライマー、3種の癌サンプル、および血管壁の健常対照サンプルを使用するシングルプライミングRT−PCRの結果を示す。表5のプラス記号は配列の存在を示し、マイナス記号は配列の不存在を示す。健常対照サンプル中で認められる配列を候補アポトーシス配列のプールから除き、他の配列を以後の細胞死試験に関して利用する。
Figure 2008528001

Figure 2008528001
表5は、また、血液の分析が、腫瘍組織の分析より多数の癌マーカーを実際に明らかにすることを示す。これは、異なる被験体由来および同一の被験体由来の血液および腫瘍を比較した場合に真実である。このことは、各被験体における複数の腫瘍の存在に起因する可能性が高い。異なる腫瘍は、長い間に異なる突然変異を蓄積している可能性が高い。腫瘍組織サンプルは単一の腫瘍における突然変異しか示すことができない。しかし、本発明の血液分析技術は、複数の腫瘍由来の突然変異を、それらの癌マーカーが該血液中に存在する限り、同時に明らかにすることができる。
以下のことを評価するためにこれらのヒトサンプル試験を行った:i)癌マーカーの妥当性;ii)それらの個体性;およびiii)コンピュータによる格付けに純粋に基づいて、ランダムな癌被験体に関するスーパーセットからそれらを選択する能力。後者の特徴は、ヒト試験サンプルの癌タイプに対応する各スーパーセット由来の数万の癌マーカーを試験することが現在実用的でないために、重要である。
表1は、これらのサンプルを試験するために使用された癌検出試薬の両鎖を示す(実際にはアンチセンス鎖だけが使用された)。癌マーカーは、また、被験体のDNAの両鎖に影響する。上記のように、癌マーカーは、データベースに含有される健康なヒトのトランスクリプトームによって排除され、どちらの鎖も出現しなかった。この設計制約、および癌検出試薬のサイズが小さいことによって、それらはin
vitroでのcDNAライブラリー診断学には最適である。結果的に、表1の各癌マーカーに関して癌検出試薬を作製した。
図8は、表1の癌検出試薬および、患者Rの腫瘍、患者Hの末梢血、および健常な非癌性被験体由来の任意の組織由来のcDNAを使用したPCRリダクションの結果を示す。健康な被験体の結果はレーン1に示され、患者Rの結果はレーン2に示され、患者Hの結果はレーン3に示されている。
図8に示されているぼやけたバンドは、後ろに続く末端の長さの変動に起因する。癌検出試薬の、「存在すれば癌」および「不存在ならば健康」の絶対的な性質に基づいて、シグナル=癌およびシグナルなし=健康として結果を解釈した。
図8に示されるように、表1の癌検出試薬は、ゲルのレーン1の健常cDNAから陽性の結果を決して生じなかった(癌検出試薬58以外の場合であり、58は上記のようにここでは排除されている)。
患者Rおよび患者Hは、両者が結腸癌を患っていたことを考慮すれば予測されたように、共通のマーカーを示した。しかし、異なる個体間で同様に予測されたように、それらの癌マーカープロフィールにはいくらかの差異が存在した。これは、これら2人の被験体の癌マーカープロフィールにおける個体性を示す。
最終的に、表1は、結腸癌スーパーセット由来の最高評価のマーカーのみを含む。図8で示されるように、特定のタイプの癌細胞株における癌マーカーのコンピュータ上の出現は、実際のヒト被験体に関する個別の癌マーカープロフィールを確立するために必要とされるin-vitro試験の量を低減するための実行可能な評価方法を提供する。
図8は、異なる癌検出試薬に関する種々の程度のバンド強度を示す。該アッセイにおいてPCRリダクションを使用したために、この強度は、当該サンプル中に存在する各癌マーカーを含有するmRNA転写産物の数を良好に反映するものである。この情報は、診断および治療目的で適用可能な標的を決定する際に役立つであろう。
明確にするために、表5は図8の結果を表に列挙して提供する。表5および図8は、表1の59種類の癌検出試薬を使用するPCRリダクションアッセイが、血液サンプル由来の転移癌細胞におけるそれらの代表的な癌マーカーを検出するために十分に高感度であることを示す。この感度は、該癌マーカーの一体多数の遺伝的関連性に起因するものと思われる。ゆえに、多くの場合、血液サンプルが提供されれば、癌病理学分析を促進するための組織サンプルまたは生検の追加の必要性はなくなる。
本発明の癌検出試薬は、一般的に、特定の腫瘍ではなく、癌細胞に限定されている突然変異を検出するように設計される。癌検出試薬は、血液中に循環している細胞の癌マーカーを検出できることが示されている。したがって、同一の被験体由来の腫瘍組織サンプルおよび血液サンプルに関するPCRリダクション試験が、血液中の増加した数の癌マーカーを示すことが予測される。実際には、組織サンプルのみに由来するいずれの癌マーカープロフィールも血液サンプルに劣る可能性が高い。その理由は、組織サンプルプロフィールが、実際には、単一の生検腫瘍に関するプロフィールであり、被験体の癌一般に関するプロフィールではないからである。このことは、患者Hの血液サンプルが患者Rの組織サンプルと比較して多くの数の突然変異を示す表5でいくらか見てとれる。
しかし、血液サンプルが組織サンプルより優れていることをさらに明確に示すために、同一の癌被験体由来の両タイプのサンプルを使用する比較PCRリダクションアッセイを行った。患者R由来のサンプルに関するこのアッセイの結果を表5に示す。実質的に、患者R1人に関しては、組織サンプルに関してより、血液サンプルに関して、より多数の癌検出試薬が陽性の結果をもたらした。さらに、組織サンプルは2004年3月に取得し、血液サンプルは2004年12月に取得した。その間、該被験体は広範な癌治療を受けた。12月の血液サンプル中の多数の突然変異は、(標準的な臨床観察によって確認されるように)癌治療の無効性を反映するだけでなく、患者Rの血液中を往来する高レベルの癌細胞をも反映する。この激しい往来は、非常に活性な癌と相関している可能性が非常に高い。それは、患者Rが従来の治療に応答していないこと、および彼女の症状が絶えず悪化していることによっても示される通りである。
実施例9:マイクロアレイ
血液サンプルは、癌マーカーの配列を有する一本鎖DNA分子を担持するマイクロアレイを使用して分析してもよい。これらのDNA分子は、さらに別のタイプの癌検出試薬である。そのようなマイクロアレイは、新規の癌マーカーを組み込む以外は、公知の技術を使用して作製することができる。例えば、癌マーカー3および5〜87を検出するためのマイクロアレイは、表1に列挙されるオリゴのいずれかの鎖由来の一本鎖DNAを担持する。次いで血液サンプルを、該マイクロアレイに載せ、特定の被験体の腫瘍がどの癌マーカーを提示するかを明らかにする公知の方法を使用して該マイクロアレイを読み取る。このアプローチの実行可能性を肯定するために、血液サンプルを腫瘍サンプルと比較して、予測通りに、該血液サンプル中より多くの数の癌マーカーが観察されるかどうかを調べてよい。さらに、その結果を、PCRを使用して取得される結果と比較してよい。マイクロアレイを使用して得られる結果は同一またはほとんど同一であるはずであり、該方法の種々の感度によって説明可能な任意の差異を有することが予測される。
特に、マイクロアレイは、Affymetrix(California)のようなマイクロアレイ製造元の標準的手順を使用して作製してよい。
本発明およびその利点を詳細に説明してきたが、特許請求の範囲で規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明において種々の変更、置換および改変を施すことができることが理解されるべきである。
健常細胞トランスクリプトーム由来の配列と比較した場合の、LTBR遺伝子中に認められる本発明のいくつかの突然変異体癌マーカーを示す。一塩基多型(SNP)の位置が示されている。 4種の異なる癌細胞株および4種の異なる癌タイプ由来のmRNA間のアライメントの一部分を示す。それは、17種の異なる遺伝子由来の対応する健常なmRNAに対してマップされている。 癌マーカーを検出する方法を示す。 サンプル癌検出試薬を示す。 癌細胞株間の2種の共通の癌マーカーの存在に関する差異を示す。 個別の癌マーカーおよび癌タイプ間の相関を示す。 癌検出試薬を使用するPCRリダクションのための方法を示す。 健常なヒトおよび2人の癌被験体の腫瘍または血液サンプル由来のcDNAに関してゲル上で分析された場合のPCRリダクションの結果を示す。 血液検査および癌マーカープロファイリングの方法を示す。

Claims (86)

  1. 少なくとも10種類の共通癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、癌検出試薬セット。
  2. 少なくとも50種類の共通癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項1に記載の癌検出試薬セット。
  3. 少なくとも100種類の共通癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項1に記載の癌検出試薬セット。
  4. 少なくとも10種類の結腸癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、癌検出試薬セット。
  5. 少なくとも50種類の結腸癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項4に記載の癌検出試薬セット。
  6. 少なくとも100種類の結腸癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項4に記載の癌検出試薬セット。
  7. 少なくとも10種類の肺癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、癌検出試薬セット。
  8. 少なくとも50種類の肺癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項7に記載の癌検出試薬セット。
  9. 少なくとも100種類の肺癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項7に記載の癌検出試薬セット。
  10. 少なくとも10種類のリンパ腫マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、癌検出試薬セット。
  11. 少なくとも50種類のリンパ腫マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項10に記載の癌検出試薬セット。
  12. 少なくとも100種類のリンパ腫マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項10に記載の癌検出試薬セット。
  13. 少なくとも10種類の乳癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、癌検出試薬セット。
  14. 少なくとも50種類の乳癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項13に記載の癌検出試薬セット。
  15. 少なくとも100種類の乳癌マーカーに対応する癌検出試薬を含んでなる、請求項13に記載の癌検出試薬セット。
  16. 癌マーカー3および55〜66のうち少なくとも50種を含んでなる、癌検出試薬セット。
  17. それぞれがサンプル中の癌マーカーの存在を検出するのに使用可能である、少なくとも50種類の癌検出試薬を含んでなる、マイクロアレイ。
  18. 癌マーカーが共通癌マーカーを含む、請求項17に記載のマイクロアレイ。
  19. 癌マーカーが結腸癌マーカーを含む、請求項17に記載のマイクロアレイ。
  20. 癌マーカーが肺癌マーカーを含む、請求項17に記載のマイクロアレイ。
  21. 癌マーカーがリンパ腫マーカーを含む、請求項17に記載のマイクロアレイ。
  22. 癌マーカーが乳癌マーカーを含む、請求項17に記載のマイクロアレイ。
  23. それぞれが癌マーカーに対応し、かつサンプル中の癌マーカーの存在を検出するのに使用可能である、少なくとも50種類のアンチセンスプライマーを含んでなる、PCRキット。
  24. 癌マーカーが共通癌マーカーを含む、請求項23に記載のPCRキット。
  25. 癌マーカーが結腸癌マーカーを含む、請求項23に記載のPCRキット。
  26. 癌マーカーが肺癌マーカーを含む、請求項23に記載のPCRキット。
  27. 癌マーカーがリンパ腫マーカーを含む、請求項23に記載のPCRキット。
  28. 癌マーカーが乳癌マーカーを含む、請求項23に記載のPCRキット。
  29. 以下のステップ:
    サンプルからmRNAを抽出するステップ;
    該mRNAからcDNAを作製するステップ;
    鋳型として該cDNAと、少なくとも10種類の異なる単独プライマーとを用いた少なくとも10回の別個のPCRリダクション反応を行うステップであって、別個の各PCRリダクション反応で異なる単独プライマーを用いるもの;および
    10回の別個のPCRリダクション反応のそれぞれの産物を解析して、プライマー増幅DNA分子の存在または不存在を決定するステップであって、いずれかのPCRリダクション反応でのプライマー増幅DNA分子の存在が癌マーカーの存在を示すもの;
    を含む、サンプル中の癌マーカーの検出方法であって、10種類の異なる単独プライマーがそれぞれ、異なる癌マーカーに対応するアンチセンス配列を有する、上記方法。
  30. サンプルが末梢血を含む、請求項29に記載の方法。
  31. サンプルが組織を含む、請求項29に記載の方法。
  32. サンプルが癌マーカーを有する癌細胞を含む、請求項29に記載の方法。
  33. 少なくとも50種類の異なる単独プライマーを用いて少なくとも50回の異なるPCRリダクション反応を行うことをさらに含む、請求項29に記載の方法。
  34. 少なくとも100種類の異なる単独プライマーを用いて少なくとも100回の異なるPCRリダクション反応を行うことをさらに含む、請求項29に記載の方法。
  35. 単独プライマーが5’プライマーを含む、請求項29に記載の方法。
  36. 単独プライマーが3’プライマーを含む、請求項29に記載の方法。
  37. PCRリダクション反応により生成されたいずれかのDNA分子が100〜500塩基対の長さを有する、請求項29に記載の方法。
  38. 解析が、アガロースゲルでのサンプルの電気泳動と、それに続く、PCRリダクション産物であるべき適切な長さのDNAバンドの視覚的検出とを含む、請求項29に記載の方法。
  39. 解析が、以下:
    PCRリダクションから得られた産物中のDNA分子の精製;および
    該DNA分子をシーケンスすること
    を含む、請求項29に記載の方法。
  40. DNA分子の配列が、癌マーカーが存在する遺伝子を示すものである、請求項29に記載の方法。
  41. 以下のステップ:
    癌マーカーが存在する可能性がある少なくとも2種類の異なる遺伝子に対応するプライマーを用いて、各PCRリダクション産物についてさらなる遺伝子検出PCR反応を行うステップであって、該プライマーは、PCR産物に基づいて該少なくとも2種類の遺伝子のそれぞれに癌マーカーが存在するかどうかを決定することを可能にするのに使用可能であるもの;および
    癌マーカーが、該少なくとも2種類の遺伝子のそれぞれに存在するかどうかを決定するステップ
    をさらに含む、請求項29に記載の方法。
  42. 10種類の異なる単独プライマーそれぞれが、異なる共通癌マーカーに対応するアンチセンス配列を有する、請求項29に記載の方法。
  43. 10種類の異なる単独プライマーそれぞれが、異なる結腸癌マーカーに対応するアンチセンス配列を有する、請求項29に記載の方法。
  44. 10種類の異なる単独プライマーそれぞれが、マーカー3および5〜66からなる群より選択される異なる結腸癌マーカーに対応するアンチセンス配列を有する、請求項29に記載の方法。
  45. 10種類の異なる単独プライマーそれぞれが、異なる肺癌マーカーに対応するアンチセンス配列を有する、請求項29に記載の方法。
  46. 10種類の異なる単独プライマーそれぞれが、異なるリンパ腫マーカーに対応するアンチセンス配列を有する、請求項29に記載の方法。
  47. 10種類の異なる単独プライマーそれぞれが、異なる乳癌マーカーに対応するアンチセンス配列を有する、請求項29に記載の方法。
  48. サンプル中の癌マーカーの存在または不存在を示す情報を含む、サンプルの癌マーカープロフィールを作成するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
  49. 以下のステップ:
    サンプルからサンプル核酸を単離するステップ;
    該サンプル核酸とマイクロアレイ上の相補的DNA分子との検出可能で特異的な結合を可能にするのに十分な条件下で、少なくとも10種類の対応する癌マーカーを検出および区別するのに使用可能なDNA分子を担持するマイクロアレイに、該サンプル核酸を載せるステップ;および
    マイクロアレイへのサンプル核酸の結合を検出するステップ
    を含む、サンプル中の癌マーカーの検出方法であって、マイクロアレイ上のDNA分子へのサンプル核酸の結合が、サンプル中の当該DNA分子に対応する癌マーカーの存在を示すものである、上記方法。
  50. サンプル核酸がmRNAを含む、請求項49に記載の方法。
  51. サンプル核酸が、サンプル中に存在するmRNAから作製したcDNAを含む、請求項49に記載の方法。
  52. 少なくとも50種類の対応する癌マーカーを区別するのに使用可能なDNA分子を担持するマイクロアレイをさらに含む、請求項49に記載の方法。
  53. 少なくとも100種類の対応する癌マーカーを区別するのに使用可能なDNA分子を担持するマイクロアレイをさらに含む、請求項49に記載の方法。
  54. 癌マーカーが存在する遺伝子を区別するのに使用可能なDNA分子を担持するマイクロアレイをさらに含む、請求項49に記載の方法。
  55. 癌マーカーが共通癌マーカーを含む、請求項49に記載の方法。
  56. 癌マーカーが結腸癌マーカーを含む、請求項49に記載の方法。
  57. 癌マーカーが、癌マーカー3および5〜66からなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
  58. 癌マーカーが肺癌マーカーを含む、請求項49に記載の方法。
  59. 癌マーカーがリンパ腫マーカーを含む、請求項49に記載の方法。
  60. 癌マーカーが乳癌マーカーを含む、請求項49に記載の方法。
  61. サンプルが末梢血を含む、請求項49に記載の方法。
  62. サンプルが組織を含む、請求項49に記載の方法。
  63. サンプル中の癌マーカーの存在または不存在を示す情報を含む、サンプルの癌マーカープロフィールを作成するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
  64. 以下のステップ:
    被験体からサンプルを取得するステップ;
    サンプル中の少なくとも10種類の癌マーカーの存在または不存在を検出することにより、癌マーカープロフィールを作成するステップであって、該癌マーカープロフィールが被験体における癌マーカーの存在または不存在を示す情報を含むもの;および
    該癌マーカープロフィールに基づいて、被験体が癌を有するかどうかを決定するステップ
    を含む、被験体における癌の診断方法。
  65. サンプルが末梢血を含む、請求項64に記載の方法。
  66. サンプルが腫瘍組織を含む、請求項64に記載の方法。
  67. 被験体がヒトである、請求項64に記載の方法。
  68. 検出ステップが、サンプルについてPCRリダクションを行うことを含む、請求項64に記載の方法。
  69. 検出ステップが、サンプルのマイクロアレイ解析を行うことを含む、請求項64に記載の方法。
  70. 少なくとも50種類の癌マーカーを検出することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
  71. 少なくとも100種類の癌マーカーを検出することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
  72. 癌マーカーが共通癌マーカーを含む、請求項64に記載の方法。
  73. 癌マーカーが結腸癌マーカーを含む、請求項64に記載の方法。
  74. 癌マーカーが、癌マーカー3および5〜66からなる群より選択される、請求項64に記載の方法。
  75. 癌マーカーが肺癌マーカーを含む、請求項64に記載の方法。
  76. 癌マーカーがリンパ腫マーカーを含む、請求項64に記載の方法。
  77. 癌マーカーが乳癌マーカーを含む、請求項64に記載の方法。
  78. 被験体が癌を有しているかどうかを決定するステップが、サンプル中に存在する癌マーカーの数を解析することを含む、請求項64に記載の方法。
  79. 被験体が癌を有しているかどうかを決定するステップが、サンプル中に存在する癌マーカーが何であるかを解析することを含む、請求項64に記載の方法。
  80. 診断が初期診断を含む、請求項64に記載の方法。
  81. 診断が、ルーチンの臨床スクリーニングの一部分を形成する、請求項64に記載の方法。
  82. 被験体が特定の種類を有していると疑われている、請求項64に記載の方法。
  83. 前記癌マーカープロフィールに基づいて、癌を有する患者に対する予後診断を行うことをさらに含む、請求項64に記載の方法。
  84. 前記癌マーカープロフィールに基づいて、癌を有する患者に対して治療を推奨することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
  85. 前記癌マーカープロフィールに基づいて、癌を有する患者の治療をモニタリングすることをさらに含む、請求項64に記載の方法。
  86. 前記癌マーカープロフィールと以前の癌マーカープロフィールとを比較することにより、被験体の癌における変化を検出することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
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