JP2023536465A - 宿主防御機構の恒常性の調節用の標準化バイオフラボノイド組成物 - Google Patents

宿主防御機構の恒常性の調節用の標準化バイオフラボノイド組成物 Download PDF

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Abstract

宿主防御機構の恒常性の確立及び調節用のバイオフラボノイド組成物として、少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物と、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物を含む組成物を開示する。所期組成物は、呼吸器疾患及び病態に有効である。

Description

加齢は自然現象であり、時間の経過に伴って心身両面の機能に影響を与える複雑な変性過程であり、宿主防御応答不良は、老化に最もよく見られる変化の1つである。高齢者に起きる宿主防御応答低下の基礎メカニズムを解明することがその緩和に繋がる第一歩である。D-ガラクトース誘発胸腺損傷・免疫老化マウスモデル等の化学的に誘発した加齢加速モデルは、加齢が免疫系に及ぼす影響を研究するために好ましい選択肢の1つである。化学的に誘発した動物加齢モデルにおいて、動物は、高齢者に頻繁に認められる宿主防御応答低下に似た免疫老化を示す(Azman 2019)。D-ガラクトース誘発加齢モデルは、抗加齢研究で広く使用され、十分に検証されている動物モデルの1種である。D-ガラクトースは体内で正常な濃度ではグルコースに変換されるが、高濃度になると、アルドースとヒドロペルオキシドに変換され易く、酸素に由来するフリーラジカルの生成に繋がる。タンパク質及びペプチドの遊離アミンと反応して非酵素的糖化により終末糖化産物(AGE)を生成する可能性もある。このモデルでこれらの活性酸素種(ROS)が蓄積し、AGEが増加すると、正常な臓器及び宿主防御恒常性が不均衡になり、その結果、酸化ストレス、全身性炎症、免疫応答低下、ミトコンドリア機能不全、及び(例えば、胸腺細胞の)アポトーシスを生じ、最終的に加齢プロセスが加速する。これらの変化は、老化及び加齢の自然発生的病理学的特徴に数えられる。
敗血症は、感染に対する宿主防御応答の調節不全により生じる重篤な臓器機能障害であり、臓器不全に至る恐れがある。敗血症は、主にマクロファージ/単球に仲介される状態であり、TNF-α、IL-1、IL-6及びγインターフェロン等の数種の初期サイトカインと、HMGB1等の後期メディエーターの過剰産生に起因する。高移動度群ボックス1タンパク質(HMGB1)は、損傷刺激又はサイトカインにより細胞から放出又は分泌され得る核内又は細胞質内因性ダメージ関連分子パターン(DAMP)タンパク質である。核内HMGB1は、ゲノム完全性を維持する役割を担う構築的クロマチン結合因子であるが、活性化又は損傷した細胞から放出される細胞外HMGB1は、酸化損傷や病原体感染等の種々のストレスに応答して炎症と免疫機能障害をもたらすメディエーターである。HMGB1は、内因性及び外因性炎症シグナルに応答して活性化されたマクロファージ及び単球から放出されるので、敗血症の重要なメディエーターであり(Wang et al.,1999)、宿主防御機構の不均衡を増大し、多臓器不全に繋がり、最終的に死に至る恐れがある。HMGB1の後期持続放出により炎症応答を十分に惹き起こすことができるため、死を免れた患者も炎症応答を継続する可能性がある(Gentile and Moldawer,2014)。
刺激を受けた単核細胞から能動的に放出されると、あるいは壊死細胞から受動的に放出されると、HMGB1は、隣接細胞との細胞内恒常性バランス低下に立ち向かい、宿主免疫応答を活性化させるように機能するアラーミン(危険信号)として作用する。HMGB1は、感染部位への免疫細胞の移動を助けるケモカインとして機能すると共に、他の免疫細胞を活性化させて炎症性サイトカインを分泌させるDAMPとして機能することにより、自然免疫応答の活性化に重要な役割を果たす(Yang et al.,2001)。炎症性サイトカインが低(最適)濃度で産生される場合には、ウイルス又は微生物侵入に対する防御機能を発揮するが、「サイトカインストーム」の場合のように過剰に産生されると、有害な炎症応答を仲介することにより宿主に有害となり得る。大半の場合、免疫不全症又は免疫低下等の基礎疾患のある宿主や高齢者では、これらの炎症性サイトカインストームにより急性全身性炎症症候群を生じると思われる。患者が死を免れたとしても、遅延型炎症仲介を後発する可能性があり、持続的な炎症応答、免疫抑制応答及び異化応答を生じる恐れがある。HMGB1は、全炎症性細胞を含む多数の細胞種の化学誘引物質として機能する以外に、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、及びマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)を炎症性細胞に分泌させるので、NFκBシグナル伝達の活性化により「サイトカインストーム」に関与していると考えられる(Bianchi and Manfredi,2007)。細胞外HMGB1が破滅的な炎症応答を誘起する可能性があり、敗血症と急性肺傷害の進行を促進することも多くの研究で報告されている(Entezari et al.,2014)。内毒素刺激から数分以内に分泌されるTNF-α及びIL-1βとは対照的に、HMGB1はインビトロ及びインビボのどちらでも数時間後に分泌され、後期炎症を仲介すると判断される。実際に、敗血症の発症から24時間後にHMGB1中和抗体を投与すると、致死性内毒素血症に対する防御が得られ、HMGB1が致死性敗血症の後期メディエーターとして主要な役割を果たしていることが分かる(Wang et al.,1999)。臨床面では、持続的な高濃度のHMGB1と、敗血症の後期の対象又は敗血症で死亡した対象の間には強い関連があることも立証されている(Angus et al.,2007)。最近、クロロキンとその類似体(ヒドロキシクロロキン)がCOVID-19に対する臨床的有効性とウイルスクリアランスに有益であることが数件の臨床試験により示されている(Andersson et al.2020,Gao et al.,2020;Gautret et al.,2020)。マウス敗血症モデルで試験した処、抗マラリア薬であるクロロキンは致死を防ぎ、その防御作用は、マクロファージ、単球及び内皮細胞からのHMGB1放出の阻害を介し、HMGB1サイトカイン様活性を防ぎ、NF-κB活性化を阻害した(Yang et al.,2013)。食物性抗酸化物質は、気道内のHMGB1の蓄積の抑制によりマクロファージ機能を強化することにより、高酸素誘発急性炎症性肺傷害を著しく軽減したと報告されている(Patel et al,2020)。以上に鑑み、本願の保護対象の本文に記載する遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する天然バイオフラボノイド組成物は、HMGB1とNF-κBを阻害し、敗血症致死を防ぎ、AGE形成を阻害し、内因性抗酸化酵素を誘導し、マクロファージ貪食作用を促進し、細菌クリアランスを増加し、急性肺傷害を防ぎ、呼吸器及び肺健康の維持と保護に安全な歴史的用法を適用でき、ウイルス、微生物感染症(例えば、COVID-19)及びPM2.5大気汚染物質、大気中のPM10粒子、大気汚染物質、光化学スモッグ、タバコ、電子タバコからの煙、娯楽用マリファナの煙に起因する肺傷害等の病態を予防及び治療することが確認された。
アセンヤクノキ(Acacia catechu Willd)(マメ科:Farbaceae)は、通称名カッチツリー、ハイル(Khair)、ハディラ(Khadira)で知られており、インド及び他のアジア地域で伝統的生薬として使用されている(Hazral et al.,2017)。この植物は、中木(15mまで)の落葉樹である。樹皮は暗灰褐色で細長い片に剥がれ、葉は羽状で葉軸の基部に1対の棘があり、花は淡黄色で筒状穂状花序であり、豆果は無毛、扁平で楕円形である。インドのアーユルヴェーダ薬局方によると、アセンヤクノキの心材は淡紅色で樹齢と共に赤褐色からほぼ黒色に変化し、白っぽい辺材に囲まれ、割れにくく、無味で収斂性があると記載されている。樹齢約8年以上の中型の樹木がアセンヤクノキエキスの抽出用に採集される。アセンヤクノキ(材木)と、ガンビールノキ(Uncaria gambir)(つる性植物)と、カシューナッツ殻(果皮)の外見は非常に異なるので、植物材料供給と植物認証が、第一の仕入先選定基準の主眼である。アセンヤクノキは、アーユルヴェーダ医学で咽喉、口腔及び歯肉に使用されており、咳と下痢にも使用されている。外用では、収斂剤や、皮膚の潰瘍、腫れ物及び発疹の冷却用として利用されている。創傷治療には粉末が使用されている。アセンヤクノキは動物脾臓内の抗体産生細胞数を増加することが分かっており、免疫系を増強し、マクロファージの貪食作用を亢進し、炎症性サイトカインの放出を抑制すると思われる(Sunil et al,2019)。
コガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)(シソ科:Lamiaceae)は、通称名チャイニーズスカルキャップ(黄ゴン:Huang Qin)で知られ、中国薬局方に示されているように、アジアの数か国で使用されている伝統的生薬である。この植物は多年草であり、茎は横に這ってから直立し、紫色がかっている。葉柄は短く、槍形、有毛で中位の緑色の葉をつける。初夏から初秋にかけて上部が濃い青色の唇形で下部が淡い青色の総状花序をなす有毛の花をつける。春又は夏の間に、2年生の根を採集し、商業用目的で風乾する。中国薬局方によると、根は、長さ8~25cm、直径1~3cmのようである。根は、茶色がかった黄色又は暗黄色であり、外側には根を掘った跡がまばらに残る。上部はもじゃもじゃしており、捩れた縦皺又は不規則な網目があり、下部は縦筋と細かい皺がある。組織は硬くて脆く、割れ易く、割れ目は黄色く、芯が赤褐色であり、古い根樹皮の中心部は暗褐色又は褐色がかった黒色であり、萎凋又は空洞化している。殆ど臭いがなく、味は苦い。乾燥した根は、通常では10%未満のバイカリン等のバイオフラボノイドを含有している。コガネバナエキスに使用される根は、中国薬局方の同定・定量法に基づいてTLC法とHPLC法により試験される。
コガネバナは、古典的中国医学書である「神農本草經(Shen Nong Ben Cao)」に後漢王朝(西暦200年頃又は約2200年前)から記録されている。2件の中国伝統医学(Traditional Chinese Medicine:TCM)データベース(World Traditional Medicine Patent Database(WTM)とSaphron TCMデータベース)の解析に基づくTCMにおける呼吸器感染症の治療用の上位30位の薬草の最近のリストによると、黄ゴン(Radix Scutellaria)は二番目に多く利用されている薬草に位置付けられており、呼吸器感染症の治療用の全TCM組成物に38%の頻度で含まれている(Ge et al.2010)。
黄ゴンは、SARS流行中の2003年に中国政府により推奨されたTCM組成物に含まれていた。バイカリン(Yuan et al,2009)とタツナミソウ属(Scutellaria)植物に由来するフラボノイド(Zhong,et al.,2006)の使用は、その後、SARSとCOVID-19の治療用として特許登録された(Song et sl.2020)。近年の黄ゴンの科学研究によると、抗酸化、抗炎症、アレルギー反応の抑制及び抗細菌活性に関連する生物学的機能を有するこの薬草の生物活性成分(Bejar et al.,2004)として、バイオフラボノイド、特にバイカリンとバイカレインが同定された(Shen et al,2021)。感染にはウイルスが宿主細胞と結合してこの細胞から発芽することが不可欠であるが、バイカリンとバイカレインは、ウイルスがこの結合・発芽に必要とするタンパク質を阻害することにより、強い抗ウイルス活性も示した(Yu et al,2011)。A型インフルエンザH1N1ウイルス(ブタインフルエンザ)に感染したマウスにおいて、黄ゴンからの抽出物は、疾患重症度を軽減するようにその炎症応答を調節し、肺組織損傷を軽減し、最終的にその生存率を上昇させた(Zhi et al,2019)。
フラボノイドは、広く流通販売されている天然物群である。フラボノイドを摂取すると、非脳血管性認知症の危険に逆の関係があることが実証されている。作用機序は不明であるが、フラボノイドの抗酸化作用によると推測されている(Commenges et al.2000)。ポリフェノールフラボンは、cox-2、核内因子κBB(NFκB)及びbcl-X(L)を含む遺伝子にmRNAレベルで作用することにより、形質転換大腸細胞においてプログラム細胞死、分化及び成長阻害を誘導する(Wenzel et al.2000)。cox-2転写活性の抑制にはB環上のヒドロキシル基の数が重要であると報告されている(Mutoh et al.2000)。
遊離B環フラボノイドは比較的少ない。合成又は天然源から単離された全9,396種のフラボノイドのうち、遊離B環フラボノイドは231種しか知られていない(The Combined Chemical Dictionary,Chapman and Hall/CRC,Version 5:1 June 2001)。遊離B環フラボノイドは、種々の生物活性を有することが報告されている。例えば、ガランギン(3,5,7-トリヒドロキシフラボン)は、抗酸化剤及びフリーラジカルスカベンジャーとして作用し、抗遺伝毒性及びがん化学予防の有望な候補であると考えられている(Heo et al.2001)。この化合物は、チロシナーゼモノフェノラーゼの阻害剤であり(Kubo et al.2000)、ウサギ心臓カルボニルレダクターゼの阻害剤であり(Imamura et al.2000)、抗微生物活性(Afolayan and Meyer 1997)と抗ウイルス活性(Meyer et al.1997)を有する。バイカレインと他の2種の遊離B環フラボノイドは、ヒト乳がん細胞に対して抗増殖活性を有する(So et al.1997)。
一般的に、フラボノイドはその可用性に基づいてランダムに活性を試験されている。特定の生物活性にB環上の置換が必要であるという主張は散見されており、例えば、p-糖タンパク質との高親和性結合(Boumendjel et al.2001)、強心作用(Itoigawa et al.1999)、リノール酸ヒドロペルオキシドに誘発される毒性に対する内皮細胞保護作用(Kaneko and Baba 1999)、COX-1阻害化活性(Wang,2000)及びプロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ(Kalkbrenner et al.1992)にB環置換が必要であるとされている。極少数の文献が、遊離B環フラボノイドの非置換B環の意義について言及している。一例は、NADPHキノンアクセプターオキシドレダクターゼを阻害する2-フェニルフラボンの潜在的抗凝固剤としての使用である(Chen et al.2001)。
種々の遊離B環フラボノイドの抗炎症活性に関連して報告されている作用機序には、諸説が唱えられている。コガネバナの主な生物活性遊離B環フラボノイドは、炎症性サイトカインを抑制すると報告されている(Liao,et al,2021)。遊離B環フラボノイドであるクリシン(Liang et al.2001)、ウォゴニン(Chi et al.2001)及びガランギン(Raso et al.2001)の抗炎症活性は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)の活性化による誘導性シクロオキシゲナーゼ及び一酸化窒素合成酵素の抑制に関係があり、脱顆粒及びAA放出に影響を与えるとされている(Tordera et al.1994)。オロキシリン、バイカレイン及びウォゴニンは、シクロオキシゲナーゼには影響を与えずに12-リポキシゲナーゼ活性を阻害すると報告されている(You et al.1999)。より最近では、ウォゴニン、バイカリン及びバイカレインの抗炎症活性は、一酸化窒素阻害剤とリポ多糖により誘導される誘導性一酸化窒素合成酵素及びcox-2遺伝子発現の阻害により生じると報告されている(Chen et al.2001)。オロキシリンがNFκB活性化の抑制により作用することも報告されている(Chen et al.2001)。最後に、ウォゴニンは、マクロファージにおける誘導性PGE産生を阻害すると報告されている(Wakabayashi and Yasui 2000)。
カテキンは、文献で十分に立証されている生物活性フラボノイドの1種である(Bae et al.2020)。カテキンとその異性体であるエピカテキンは、IC50値40μmol/Lでプロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼを阻害する(Kalkbrenner et al.1992)。アツナ・ラケモサ(Atuna racemosa)、シジギウム・コリノカルプム(Syzygium carynocarpum)、シジギウム・マラチェンセ(Syzygium malaccense:マレーフトモモ)、及びヴァンタネア・ペルヴィアナ(Vantanea peruviana)の4種の植物種から単離された(+)-カテキン及びガロカテキンを含む5種のフラバン-3-オール誘導体は、COX-2に対する阻害活性がCOX-1と同等以下であり、IC50値は3.3μM~138μMである(Noreen et al.1998)。セイバ・ペンタンドラ(Ceiba pentandra:カポック)の樹皮から単離された(+)-カテキンは、IC50値80μMでCOX-1を阻害する(Noreen et al.1998)。市販の純(+)-カテキンは、実験条件に応じて約183~279μMのIC50値でCOX-1を阻害するが、COX-2に対する選択性はない(Noreen et al.1998)。
今日までに、約330種の化合物が種々のアカシア属(Acacia)種から単離されている。水溶性植物色素の1種であるフラバンは、アカシア属から単離された最大分類の化合物である。約180種の異なるフラボノイドが同定されており、そのうち111種がフラバンである。テルペノイドは、アカシア属種から単離された2番目に大きい分類の化合物であり、48種の化合物が同定されている。アカシア属から単離された他の分類の化合物としては、アルカロイド(28種)、アミノ酸/ペプチド(20種)、タンニン(16種)、糖質(15種)、含酸素複素環(15種)及び脂肪族化合物(10種)が挙げられる。(Buckingham,The Combined Chemical Dictionary,Chapman and Hall CRC,version 5:2,Dec.2001)。
緑茶カテキンをSprague Dawley雄性ラットの飼料に補充すると、血小板ホスホリパーゼAの活性レベルが低下し、血小板中シクロオキシゲナーゼ濃度が有意に低下した(Yang et al.1999)。カテキンとエピカテキンは、ヒト大腸がんDLD-1細胞においてcox-2遺伝子転写を若干抑制することが報告されている(IC50=415.3μM)(Mutoh et al.2000)。赤ワインに由来する(+)-カテキンの神経保護作用は、シクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ又は一酸化窒素合成酵素等の細胞内酵素に対する阻害作用よりもむしろカテキンの抗酸化性によるものである(Bastianetto et al.2000)。緑茶と紅茶から精製されたエピガロカテキン-3-ガレート(EGCG)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキン-3-ガレート(ECG)、及びテアフラビン等のカテキン誘導体は、ヒト大腸粘膜及び大腸腫瘍組織においてアラキドン酸のシクロオキシゲナーゼ及びリポキシゲナーゼ依存性代謝の阻害を示し(Hong et al.2001)、COX-2発現とPGE産生を誘導する(Park et al.2001)。
II型肺胞上皮細胞でNF-κB、MAPK及びPI3K-Aktシグナル伝達経路を介するLPS誘発炎症性応答を抑制する作用について、アセンヤクノキ抽出物とコガネバナ抽出物の研究が最近発表された(Feng et al.,2019)。米国特許第9,061,039号、8,535,735号、7,972,632号及び7,192,611号、発明の名称「強力なCOX-2阻害剤としての遊離B環フラボノイドの同定(Identification of Free-B-Ring Flavonoids as Potent COX-2 Inhibitors)」と、米国特許第9,168,242号、8,568,799号、8,124,134号、7,108,868号、発明の名称「アカシア属からのCOX-2と5-リポキシゲナーゼの二重阻害剤の単離(Isolation of a Dual COX-2 and 5-Lipoxygenase Inhibitor from Acacia)」には、遊離B環フラボノイド又はフラバンを含有する組成物の単離、精製及び使用方法が夫々記載されている。COX/LOX二重阻害剤に基づく遊離B環フラボノイドとフラバンの併用組成物並びに関節ケア、精神の鋭敏さ、口腔ケア及びスキンケア等におけるその使用については、米国特許第9,849,152号、9,655,940号、9,061,039号、8,535,735号、7,674,830号、7,514,469号、発明の名称「治療剤としての遊離B環フラボノイドとフラバンの混合物の製剤(Formulation of a mixture of Free-B-Ring flavonoids and flavans as a therapeutic agent)」、米国特許第8,652,535号、8,034,387号、7,695,743号、発明の名称「認知低下及び年齢関連記憶障害の予防及び治療用の遊離B環フラボノイドとフラバンの混合物の製剤(Formulation of a mixture of Free-B-Ring flavonoids and flavans for use in the prevention and treatment of cognitive decline and age-related memory impairments)」、米国特許第9,622,964号、8,790,724号、発明の名称「スキンケア用のシクロオキシゲナーゼ(COX)とリポキシゲナーゼ(LOX)の二重阻害剤の製剤(Formulation of dual cyclooxygenase(COX)and lipoxygenase(LOX)inhibitors for skin care)」、米国特許第8,945,518号、発明の名称「口腔疾患の予防及び治療用のエイコサノイド系とサイトカイン系の二重阻害剤の製剤(Formulation of Dual Eicosanoid System and Cytokine System Inhibitors for the Use in the Prevention and Treatment of Oral Diseases)」、並びに米国特許第7,531,521号、発明の名称「糖質誘発疾患及び病態の予防及び治療用製剤(Formulation for prevention and treatment of carbohydrate induced diseases and conditions)」に記載されており、その開示内容全体を本願に援用する。
米国特許第9061039号明細書 米国特許第8535735号明細書 米国特許第7972632号明細書 米国特許第7192611号明細書 米国特許第9168242号明細書 米国特許第8568799号明細書 米国特許第8124134号明細書 米国特許第7108868号明細書 米国特許第9849152号明細書 米国特許第9655940号明細書 米国特許第9061039号明細書 米国特許第8535735号明細書 米国特許第7674830号明細書 米国特許第7514469号明細書 米国特許第8652535号明細書 米国特許第8034387号明細書 米国特許第7695743号明細書 米国特許第9622964号明細書 米国特許第8790724号明細書 米国特許第8945518号明細書 米国特許第7531521号明細書
Azman 2019 Wang et al.,1999 Gentile and Moldawer,2014 Yang et al.,2001 Bianchi and Manfredi,2007 Entezari et al.,2014 Angus et al.,2007 Andersson et al.2020 Gao et al.,2020 Gautret et al.,2020 Yang et al.,2013 Patel et al,2020 Hazral et al.,2017 Sunil et al,2019 World Traditional Medicine Patent Database(WTM) Saphron TCMデータベース Ge et al.2010 Yuan et al,2009 Zhong,et al.,2006 Song et sl.2020 Bejar et al.,2004 Shen et al,2021 Yu et al,2011 Zhi et al,2019 Commenges et al.2000 Wenzel et al.2000 Mutoh et al.2000 The Combined Chemical Dictionary,Chapman and Hall/CRC,Version 5:1 June 2001 Heo et al.2001 Kubo et al.2000 Imamura et al.2000 Afolayan and Meyer 1997 Meyer et al.1997 So et al.1997 Boumendjel et al.2001 Itoigawa et al.1999 Kaneko and Baba 1999 Wang,2000 Kalkbrenner et al.1992 Chen et al.2001 Liao,et al,2021 Liang et al.2001 Chi et al.2001 Raso et al.2001 Tordera et al.1994 You et al.1999 Wakabayashi and Yasui 2000 Bae et al.2020 Noreen et al.1998 Buckingham,The Combined Chemical Dictionary,Chapman and Hall CRC,version 5:2,Dec.2001 Yang et al.1999 Bastianetto et al.2000 Hong et al.2001 Park et al.2001 Feng et al.,2019
宿主防御機構の恒常性の確立及び調節用のバイオフラボノイド組成物として、少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物と、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物を含む組成物を開示する。所期組成物は、呼吸器疾患及び病態に有効である。
転換点のレバーとしてHMGB1を使用する宿主防御恒常性概念を示す。 宿主防御機構の恒常性を維持するための標準化組成物の新規性を示す。 バイオフラボノイド組成物がHMGB1及びNFκBの経路を妨害すると思われるゲート(⊥)の模式図を示す。 UP894-IIの存在下で24時間高酸素に曝露した場合の細胞生存率を示す。室内気対照(0時間)と比較して*p<0.05。溶媒対照と比較して#P<0.05、####P<0.001。 UP894-IIが、高酸素下のマクロファージ貪食機能低下を抑制することを示す。各数値は、2本ずつ実施した各群2種類の独立した実験の平均±SEMを表す。有意性は、95%O(0μg/ml)対照群と比較する。 UP894-IIは、RAW264.7細胞における高酸素誘発HMGB1放出を抑制する。各数値は、2本ずつ実施した2種類の独立した実験の平均±SEMを表す。室内気対照(RA)と比較して***p<0.001。溶媒対照と比較して#p<0.05、##P<0.01、###P<0.001。 250mg/kgのUP446を投与したLPS誘発ラットに由来する肺組織のH&E染色を示す。A=正常対照、B=溶媒対照、C=酪酸ナトリウム、D=UP446(250mg/kg)。倍率100倍。 SARS-CoV-2に感染したhACE2トランスジェニックマウスの肺HMGB1発現変化倍率を示す。
詳細な説明
宿主防御機構の恒常性の調節用組成物及び方法として、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)に由来する1種以上の遊離B環フラボノイドと、アセンヤクノキ(Acacia catechu)に由来する1種以上のフラバンの組み合わせを含む組成物及び方法を開示する。HMGB1を調節し、酸化ストレスを抑制し、粘膜免疫、特に免疫系及び呼吸器系の免疫グロブリンとT細胞の産生を誘導することにより、宿主防御機構の恒常性を維持するための組成物も開示する。哺乳動物において自然免疫防御細胞の最前線としてのマクロファージの貪食活性を治療、管理、促進、保護し、大気汚染、SARS-CoV-2等のウイルス及び微生物感染により生じる病原ストレス及び酸化ストレスへの曝露が増大している集団、特に加齢や、呼吸器系の慢性炎症性障害を含む慢性炎症性障害を抱える宿主に重要な宿主防御機構を提供する方法として、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することを含む方法も開示する。
本願の保護対象は、宿主防御恒常性の相乗的調節に関し、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する標準化バイオフラボノイド組成物を使用し、細胞外タンパク質であるHMGB1の調節、酸化ストレスの抑制、及び粘膜免疫、特に免疫グロブリンとT細胞の産生の誘導により、宿主の免疫機能、呼吸器健康及び肺機能を改善する。IgAは血清中に2番目に多く存在する抗体であり、上皮細胞への微生物及びウイルス接着を阻害すると共に、細菌、大気汚染物質及びウイルスを中和することにより、肺及び全身感染に対して抵抗する防御の最前線である。なお、所期組成物は、予想される効果を達成するために、微生物感染又はウイルスの直接阻害により作用又は機能するものではない。所期実施形態は、宿主の防御機能により微生物又はウイルス感染を抑制するように、宿主の自己防御機構の恒常性を調節するものである。
本願の保護対象では、宿主防御機構の恒常性を肺と全身に指定した。本願の保護対象は、胃腸管及び尿生殖路で全身粘膜恒常性を維持すると予想されるが、本願の保護対象の本文に示すデータによると、その主機能は、主にHMGB1の調節と、免疫グロブリンA(IgA)等の呼吸器防御粘膜免疫の最前線の誘導により、呼吸器系の構造完全性及び機能を保護する点にあることが確認された。本願の保護対象の肺保護作用は、リポ多糖(LPS)誘発急性肺傷害モデルと高酸素下の微生物感染モデルを使用して生きた宿主でインビボにて評価すると共に、高酸素下で機能を低下させたマクロファージを使用してインビトロにて評価した。高酸素下で機能を低下させたマクロファージにおいて遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物を試験した処、HMGB1の放出を阻害することによりマクロファージの貪食活性(自然免疫防御)が亢進した。これらの結果のインビボでの裏付けとして、前記バイオフラボノイド組成物は、気道及び肺の細菌クリアランスの増加を示し、気道内のHMGB1の蓄積を有意に抑制し、高酸素と微生物感染に曝露したマウスの肺における総タンパク質を低下させ、呼吸器と肺の保護に利用できると判断された。LPS誘発急性肺傷害モデルでも本願の保護対象の同様の呼吸器及び肺保護作用が認められ、前記バイオフラボノイド組成物を補充すると、炎症の主徴が軽減され、バイオマーカーと肺傷害が低下した。インフルエンザワクチン免疫下及び非免疫下のリポ多糖(LPS)誘発敗血症モデルとD-ガラクトース誘発加齢加速モデルで、本願の保護対象の全身宿主防御恒常性作用も評価した。試験した全モデルにおいて、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する本願の保護対象は、宿主防御機構の統計的に有意な改善を示し、宿主防御恒常性を局所又は全身で回復するのに利用できることが検証された。
宿主防御機構の恒常性の確立及び調節用のバイオフラボノイド組成物として、少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物と、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物を含む組成物を開示する。所期組成物は、呼吸器疾患及び病態に有効である。以下に記載するように、前記組成物における少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物と、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物は、各抽出物の重量基準で1%~98%の範囲であり、最適重量比は80:20である。所期実施形態は更に、少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、コガネバナの根に由来して高濃度化及び標準化されており、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、アセンヤクノキの心材に由来して高濃度化及び標準化されている実施形態を含む。
所期保護対象は、遊離B環フラボノイドとフラバンを併用するバイオフラボノイド組成物を含み、前記組成物は、夫々高酸素と微生物感染に曝露した宿主と、D-ガラクトース誘発加齢加速モデルにおいて、細胞外HMGB1分泌の阻害を肺洗浄液から局所作用として示すと共に、脾臓ホモジネートから全身作用として示した。HMGB1やNFκB等の主要な免疫又は炎症応答バイオマーカーと、免疫老化に関連するインビボ変化に基づき、本発明の組成物の客観的評価を実施した。遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物は、HMGB1とNFκBを調節することにより、インビボで生存率を上昇させながら、マクロファージ貪食作用をインビトロで有意に亢進し、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1β、IL-6、CRP及びCINC3を低減することが実証され、宿主防御機構の恒常性を回復、調節及び維持するために利用できると判断された。同様に、本願に開示する遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物は、自然免疫応答と適応免疫応答の刺激(補体C3の増加、CD3+T細胞、CD8+細胞傷害性T細胞、CD3-CD49b+ナチュラルキラー細胞、NKp46+ナチュラルキラー細胞及びCD4+TCRγδ+ガンマデルタT細胞の増加)、抗酸化能の増強(終末糖化産物の減少、グルタチオンペルオキシダーゼの増加)並びに胸腺等の主要な免疫器官の加齢関連機能低下及び構造損傷からの保護により立証されるように、免疫老化の逆転を示すことも分かった。
所期組成物は、免疫応答を最適化すること又はそのバランスをとることにより哺乳動物の免疫恒常性を維持する;加齢及び免疫器官老化による免疫低下を改善する;慢性炎症及び炎症による免疫低下を予防する;インフルエンザワクチン接種及びCOVID-19ワクチン接種に対して健全な免疫応答を維持するのを助ける;ウイルス感染及び細菌感染に対して健全な免疫機能を維持するのを助ける;あるいは、大気汚染により誘発される酸化ストレス損傷から免疫系を保護する。更に、所期実施形態は、内因性又は外因性応答攻撃トリガーとしてのHMGB1を調節し、恒常性を回復するように宿主防御応答をシフトさせる組成物を含み、前記HMGB1は、免疫老化、又は炎症、又は酸化ストレスにより劣化した免疫細胞、ウイルス若しくは微生物、大気汚染物質で汚染された免疫細胞、宿主呼吸器細胞、若しくは心血管細胞により放出される。
最も重要な点として、本願に開示する遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する新規バイオフラボノイド組成物を補充すると、主要な粘膜防御関連免疫グロブリンであるIgAが誘導されることがヒト臨床試験で証明された。IgAは、呼吸器の粘膜表面に存在する最も重要な抗体クラスであり、粘膜表面を微生物と外来抗原の侵入から保護する役割を担う。本願の保護対象のバイオフラボノイド組成物は、無作為化二重盲検プラセボ対照比較ヒト臨床試験において、本願の保護対象に開示するバイオフラボノイド組成物の補充の結果として、免疫グロブリンIgAを有意に上昇させることが分かった。本願の保護対象に示す遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446を56日間毎日補充後の被験者と、28日目にインフルエンザワクチン接種で免疫感作して合計56日間補充した被験者では、IgAが増加した。IgAの増加は、胃腸管、呼吸器及び尿生殖路の流入口で粘膜保護が強化されたことを示す。
本願の保護対象において2種類の薬用植物であるコガネバナとアセンヤクノキに由来するこれらの標準化バイオフラボノイド抽出物を併用する利点についても、LPS誘発敗血症モデルでインビボにて試験した処、本願の保護対象の本文に記載するように、予想外の相乗作用が認められた。一般に、宿主防御機構をレバーとみなし、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物をピボット点とみなすと、レバーの片側の異化性HMGB1をダウンレギュレートすると共に、反対側の粘膜免疫、特に(IgA)の産生の誘導を促進することにより、宿主防御恒常性又は肺保護が達成された。
所期実施形態において、前記組成物における前記標準化バイオフラボノイド抽出物は、COの超臨界流体、水、酸性水、塩基性水、アセトン、メタノール、エタノール、プロペノール、ブタノール、アルコール・水混液、混合有機溶媒、又はそれらの組み合わせを含む任意の適切な溶媒で抽出されている。
遊離B環フラボンとフラボノールは、下記一般構造:
Figure 2023536465000001
により示されるように、芳香族B環に置換基をもたない特定の類のフラボノイドであり、上記式中、
、R、R、R、及びRは、独立して-H、-OH、-SH、OR、-SR、-NH、-NHR、-NR、-NR 、単一又は複数の糖の組合せ(限定されないが、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース及びそれらの化学的誘導体が挙げられる)の炭素配糖体、酸素配糖体、窒素配糖体又は硫黄配糖体を含み、実施形態によってはこれらから構成される群から選択され;
Rは、炭素原子数1~10のアルキル基であり;
Xは、薬学的に許容される対アニオンの群から選択され、限定されないが、ヒドロキシルイオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、フッ化物イオン、炭酸イオン等が挙げられる。
所期実施形態において、少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物は、0.5%~99.5%の1種以上の遊離B環フラボノイドを含む。他の実施形態において、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物は、0.5%~99.5%のカテキンを含有する。
所期実施形態において、前記遊離B環フラボノイドは、バイカリン、バイカレイン、バイカレイングリコシド、ウォゴニン、ウォゴニングルクロニド、ウォゴニングリコシド、オロキシリン、オロキシリングリコシド、オロキシリングルクロニド、クリシン、クリシングリコシド、クリシングルクロニド、スクテラリン及びスクテラリングリコシド、ノルウォゴニン、ノルウォゴニングリコシド、ガランギンの少なくとも1種、又はそれらの組み合わせを含む。
実施例1に実証するように、有機溶媒又は水性溶媒を使用して植物から遊離B環フラボノイドを抽出した。抽出収率は、抽出しようとする特定の植物種と植物部分により異なり、バイオマス総量の一桁前半~約25%までの範囲である。抽出物中の遊離B環フラボノイドを単離、同定し、UV分光光度計やPDA検出器を高圧カラムクロマトグラフィー(HPLC)と組み合わせた分析法で定量することができる。溶媒抽出物中の遊離B環フラボノイドの含量は、1%未満の低量から>35%の高量までであった(実施例1の表2)。更に、実施例2では遊離B環フラボノイドの高濃度化と標準化を実証し、コガネバナの根の有機溶媒抽出物から抽出溶媒と抽出条件の最適化、抽出物溶液の中和、沈殿及び濾過後に、目的の遊離B環フラボノイド含量を約35%から60~90%まで増加させた。実施例2では、コガネバナの根に由来する主遊離B環フラボノイドとして75%以上のバイカリンを含有するRM405が生成された。酸性溶液で中和後に塩基性水性抽出物溶液を沈殿させる方法、又は水中で再結晶させる方法、又は種々の樹脂を担体とするカラムクロマトグラフィーにより、タツナミソウ属(Scutellaria)の根又は茎又は全草に由来する標準化バイオフラボノイド抽出物を得ることができ、20%~99%の遊離B環フラボノイド純度までバイオフラボノイドを2~3倍に高濃度化することができる。
フラバンは、以下の一般構造:
Figure 2023536465000002
により表される化合物を含み、上記式中、
、R、R、R及びRは独立してH、-OH、-SH、-OCH、-SCH、-OR、-SR、-NH、-NRH、-NR、-NR 、上記置換基のエステル(限定されないが、没食子酸エステル、酢酸エステル、ケイ皮酸エステル、ヒドロキシケイ皮酸エステル、トリヒドロキシ安息香酸エステル及びカフェイン酸エステルが挙げられる);単一又は複数の糖の組合せ(限定されないが、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース及びその化学的誘導体が挙げられる)の炭素配糖体、酸素配糖体、窒素配糖体又は硫黄配糖体;二量体、三量体及び他の多量化フラバンを含み、実施形態によってはこれらから構成される群から選択され;
Rは、炭素原子数1~10のアルキル基であり;
Xは、薬学的に許容される対アニオンの群から選択され、限定されないが、ヒドロキシルイオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、フッ化物イオン、及び炭酸イオン等が挙げられる。
ある種の所期実施形態において、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物は、カテキン、エピカテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピテアフラビン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビンガレートのうちの少なくとも1種、又はそれらの組み合わせを含む。
カテキンは、アセンヤクノキ(Acacia catechu)、ガンビールノキ(Uncaria gambir)、カシューナッツ殻、緑茶中に主に存在するフラバンであり、以下の構造を有する。
Figure 2023536465000003
実施例3に実証するように、有機溶媒、水性溶媒、及びアルコール溶媒抽出により、種々の植物からフラバン抽出物を生成した。これらの植物抽出物中の総フラバンとしてのカテキンとエピカテキンの含量をHPLC法により定量し、結果を表4に示した。アセンヤクノキ心材に由来する標準化フラバン抽出物(RM406)を水性抽出により生成した後、濃縮、沈殿及び再結晶し、フラバン含量を約10%から65%まで高濃度化及び標準化した。植物抽出物溶液の濃縮後に沈殿させる方法、又はエタノール/水溶媒中で再結晶させる方法、又は種々の樹脂を担体とするカラムクロマトグラフィーにより、アセンヤクノキ若しくはガンビールノキの心材若しくは樹皮若しくは全草又はカシューナッツ殻に由来する標準化バイオフラボノイド抽出物を得ることができ、10%~99%のフラバン純度までバイオフラボノイドを2~8倍に高濃度化することができる。
実施例4は、カテキンとエピカテキンとしての総フラバン含量が>65%であるアカシア属(Acacia)抽出物(実施例3のRM406)と、バイカリン、バイカレイン等としての遊離B環フラボノイド含量が>75%であるタツナミソウ属(Scutellaria)抽出物(実施例2のRM405)の2種類の標準化抽出物と、賦形剤としてマルトデキストリンを併用することにより、UP446と呼ぶバイオフラボノイド組成物を製造する方法を実証した。個々の遊離B環フラボノイドとフラバンとしての主成分及び副次成分バイオフラボノイド含量を定量し、表5に示したが、総バイオフラボノイド含量は86%であった。表6は、コガネバナの根(UP446)又は茎(UP223)等の種々の遊離B環フラボノイド源と、アセンヤクノキの心材(UP894-II)又はガンビールノキの全草(UG0408)等の種々のフラバン源に由来する4種類の異なるバイオフラボノイド組成物を示した。これらの組成物のブレンド比は、各標準化抽出物中のバイオフラボノイド含量により異なり、目的の用途と生物学的機能性に応じて調整した。本願の保護対象では、UP446とUP894-IIを利用し、2種類の異なるバイオフラボノイド種を併用する利点の予想外の相乗作用と、宿主防御恒常性の調節における予想外の機能性を明らかにし、免疫機能の改善、呼吸器健康及び肺機能の保護に繋がることを示した。
宿主防御恒常性を厳密に維持することは、外部から侵入する微生物、ウイルス、真菌類、汚染物質を防御し、死細胞を除去し、再建・再生機能を開始するために、ヒトの生理機能に不可欠である。免疫機能が過剰に刺激されると、アレルギー反応や、破壊的な自己免疫疾患を生じる可能性がある。加齢、酸化ストレス、心理的ストレス、全身性炎症に加え、糖尿病、肥満症、代謝症候群等の多くの慢性疾患は、宿主防御恒常性の転換点をシフトさせ、宿主防御機能の低下に繋がる可能性がある。毎日のバランスのとれた栄養、運動、ストレス管理に加え、抗酸化性、抗炎症性及び免疫調節性の(宿主防御機能のアンバランスの状態に応じて免疫抑制性又は免疫刺激性の)天然化合物や、抗ウイルス剤、抗生物質、ステロイド及びDTHEの処方薬の補充等の周知の健康的な生活習慣は、宿主防御機構を好ましい方向に戻すために有益なバランス効果を発揮することができる。バイオフラボノイドを含む多くのポリフェノールは、感染又はワクチン接種に対する宿主防御応答の開始に不可欠なサイトカイン産生を抑制することが報告されているため、免疫抑制剤として分類されていた。そのため、宿主防御機構を支援するためにポリフェノールを実世界で利用することは、臨床試験で証明されていなかった。
宿主防御機構の恒常性を維持するために不可欠な転換点が何であるか、また、病原物質に対する宿主防御機構応答の下方スパイラルプロセスに向かうシフトを加速し得る転換点因子としての役割を果たす主要な生物学的、生理的及び病理学的経路及びバイオマーカーが存在するか否かに関する情報は残念ながら非常に少なく、また、その解明についても注目されていない。このような転換点を突き止めることは重要である。転換点を破壊方向から遠ざけ、宿主防御機構の恒常性を回復させることができる組成物を製造するために、活性化合物を見出すことができるか否かは、より重要である。HMGB1は、細胞内恒常性バランスの低下に関するアラーミンとして作用し、破壊的な宿主防御機能低下に繋がるコロナウイルス、SARS-CoV-2等のウイルス、微生物感染、及びPM2.5汚染物質下で非常に強い生体応答を助けることができるこのようなバイオマーカーであると確信する。
長時間酸化ストレスに曝露した動物及びヒトの気道では、核内タンパク質HMGB1濃度が圧倒的に高い(健康な対照に比較して100倍)。HMGB1は、ヌクレオソームの構造を安定化させ、DNAのコンフォメーション変化を仲介することにより転写を調節する核内タンパク質として当初は同定された。核内のその役割とは対照的に、細胞外HMGB1は顕著な炎症応答を誘導する。興味深いことに、気道に高濃度の細胞外HMGB1が蓄積すると、マクロファージ機能の低下により細菌及びウイルス感染に対する宿主防御機構が直接低下し得ることは、数件の肺感染症動物モデルでエビデンスが集積されている。
そこで、70~80%の遊離B環フラボノイドと15~20%のフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物UP894-II(表6)を利用し、高酸素ストレス下のマクロファージに及ぼすその効果を評価した。実施例5に示すように、8~128μg/mLのUP894-IIでは、24時間高酸素曝露下のマクロファージ生存率は変化しなかった(図4)。実施例6の図5に実証するように、UP894-IIは、3.7μg/mLという低濃度でマクロファージの貪食活性を用量相関的且つ統計的に有意に亢進した。驚くべきことに、酸素ストレス下のマクロファージの貪食活性のUP894-IIによるこのような保護は、UP894-IIの投与下のマクロファージにおける高酸素誘発HMGB1放出の低下と密接に相関しており、全く同一の用量相関であった(実施例7の図6)。
つまり、本願に開示するバイオフラボノイド組成物であるUP894-IIにより気道内のHMGB1濃度が低下又はその活性が阻止された結果、自然免疫防御細胞の最前線としてのマクロファージの貪食活性が保護され、大気汚染、SARS-CoV-2等のウイルス及び細菌感染により生じる病原ストレス及び酸化ストレスへの曝露が増大している集団、特に慢性炎症性障害を抱える宿主に重要な宿主防御機構が提供された。
本願の保護対象の本文に記載するように、(実施例9~12のLPS誘発敗血症モデル、実施例13~21のLPS誘発急性肺傷害モデル、及び実施例35~39の高酸素曝露微生物感染急性肺傷害モデル等の)複数のインビボ試験で、本願に開示する遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物の客観的投与・応答作用を評価した。本願の保護対象のこれらの実施例に示すデータによると、前記標準化組成物を敗血症又は急性肺傷害被験対象に経口投与すると、顕著な宿主防御恒常性作用が得られた。
実施例10及び11で実証するLPS誘発生存率試験から得られたデータでコルビーの常用式を使用し、タツナミソウ属抽出物に由来する遊離B環フラボノイドと、アカシア属抽出物に由来するフラバンを併用する有意義な価値を評価し、確認した。コルビー法によると、2種以上の材料を含む標準化製剤は、実測値が予想値よりも高いときに予想外の相乗作用があると推定される。本願の保護対象において、バイオフラボノイド組成物が死亡率の低下と生存率の上昇に予想外の相乗作用を有することの確認が意図された。実施例12に示すように、遊離B環フラボノイド抽出物とフラバン抽出物を併用することにより、死亡率の低下又は生存率の上昇に予想外の相乗作用が認められた。前記組成物を投与した場合に認められた有益な効果は、指定した比のその成分の各々で得られる効果を単純に合計した予想効果を上回った(表13)。LPS感作の144時間後に、生存率(SR%)が正常対照に比較して統計的に有意に上昇したのは、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物のみであった(表10)。実際に、投与から24時間後に、バイオフラボノイド組成物で動物の死亡は認められなかった(生存率100%)が、タツナミソウ属(RM405)とアカシア属(RM406)を単独投与した群では、夫々15.4%と30.8%の死亡率が認められた(実施例11の表10)。これらの薬用植物の有益な用途については報告されているが、本発明者らの知る限り、これらの薬用植物に由来する標準化抽出物の組み合わせを投与し、LPS誘発敗血症における死亡率の低下と生存率の上昇という予想外のアウトカムを生じたのは今回が最初である。これらの予想外のアウトカムに加え、他の好ましい自然免疫応答及び適応免疫応答、特にヒト臨床試験で認められたIgAの増加と、本願の保護対象に記載する細胞外HMGB1の低下により、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物は、宿主免疫応答の方向をバランスのとれた活性に導き、総合的な宿主防御恒常性をもたらすというユニークな独自性を備える。
実施例13は、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する標準化バイオフラボノイド組成物が、ラットのリポ多糖(LPS)誘発急性炎症性肺傷害の軽減に及ぼす効果を実証した。HMGB1のバランスをとることにより宿主防御恒常性が改善された結果として、バイオマーカーである血清中TNF-α(実施例14)及びIL-1β(実施例15)、気管支肺胞洗浄液(BAL)中のIL-6(実施例16)、CRP(実施例19)、IL-10(実施例20)及び総タンパク質(実施例18)、並びに肺ホモジネート中のCINC-3(実施例17)の濃度が有意に変化し、これらの変化はその後、肺組織の組織学的試験により確認された。実施例21において、本願に開示する組成物を投与した動物では、肺損傷の総合的重症度の統計的に有意な低下が認められた。実施例11及び12では、LPS誘発敗血症モデルで各薬用植物の単独投与に比較してタツナミソウ属抽出物に由来する遊離B環フラボノイドとアカシア属抽出物に由来するフラバンを製剤化する利点を評価した処、予想外の相乗作用も認められた。本願の保護対象からのデータは、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物が、バランスを整え、上流の細胞外HMGB1と後続するNFκBシグナル伝達及びサイトカインストームを含む悪循環を断ち切ることにより、宿主防御機構の恒常性を維持するのを助けることを示唆している。したがって、前記組成物のこれらの主要な特徴は、限定されないが、大気汚染、季節性インフルエンザ又はウイルス(例えば、COVID-19)及び細菌感染時等の敗血症又は急性若しくは慢性傷害から呼吸器機能を保護するためにバランスのとれた宿主防御機構を必要とする新規用途に繋がると思われる。
LPSを肺に直接点滴注入すると、部分的にNFκBの活性化を介して、肺胞マクロファージが有意量のHMGB1を放出することにより常在自然免疫応答が活性化され、TNF-α、IL-1β及びIL-6等の一次サイトカインと炎症性タンパク質CRPの産生増加に繋がることが知られている。これらのサイトカインは単独で又は協働して顕著な肺病態を惹き起こし、疾患病理に不可欠なサイトカイン及びケモカインカスケードの活性化を誘起する可能性がある。例えば、急性炎症応答時に、走化性サイトカインは、LPS誘発急性肺傷害で好中球の肺動員に重要な役割を果たす好中球化学誘引物質(CINC-3)を誘導した。HMGB1の抑制は、肺の急性炎症応答に関与するこれらの主要なサイトカインと走化性因子を制御するために、免疫恒常性の主要な転換点である。HMGB1のバランスは、肺病態における主要な現象であり、サイトカインストーム介入と急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の重症度の軽減に重要な臨床関連性がある。
間質空間へのタンパク質又はフィブリン漏出は、肺浮腫における重要な要素であり、滲出液の増加は疾患重症度の指標となる。前記組成物を投与すると、LPS誘発急性肺傷害と、高酸素曝露・PA感染マウス急性肺傷害のいずれにおいても気管支肺胞洗浄液中の総タンパク質が低下し、前記組成物は肺病態の緩和に意義があると判断された。血清、BAL及びホモジネート中のバイオマーカーのこれらの有意な変化から、前記組成物の投与ストラテジーは、肺損傷の総合重症度の統計的に有意な低下に繋がることが実証され、このような低下は、その後、病理組織学的評価により確認された。本願に示すHMGB1濃度及びNFκBの低下、気道及び肺細菌クリアランスの増加、肺総タンパク質の低下、サイトカインの低下、病理組織学的データの改善、並びにIgAの誘導に基づき、前記バイオフラボノイド組成物は実際に、免疫恒常性の転換点を調節し、サイトカインストーム抑制と急性炎症性肺傷害重症度の低下に有効であることが明らかである。
そこで、本願の保護対象では、本願に開示する遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物を高酸素感作・緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(PA)感染マウスで陽性対照としてのレスベラトロールと比較して評価した(実施例35)。このモデルで、先ず7日間投与後のマウスの生存率を上昇する能力について、60%以上の遊離B環フラボノイドと10%以上のフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物であるUP446(表6)を試験した。室内気(RA)に維持したマウスの死亡率が9%であったのに対し、PA接種前に2日間高酸素に曝露したマウスでは64.29%の死亡率が認められた(表36)。他方、2日間高酸素に曝露する前に7日間レスベラトロール(RES)とUP446を予防投与した後、PAを接種したマウスは、死亡率が夫々27.27%と28.57%であった(表36)。次に、PA誘発肺感染症と高酸素誘発酸化ストレスを併有する酸化ストレス/肺感染誘発急性肺傷害のマウスモデルを使用して前記バイオフラボノイド組成物を試験し、肺感染により誘発して酸化ストレスで悪化させた急性肺傷害の抑制におけるUP446の効果を調べた(実施例36)。遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する前記バイオフラボノイド組成物は、高酸素とPA感染に曝露したマウスにおいて、a)気道内のHMGB1の蓄積の低下(実施例39の表40);b)気道及び肺細菌クリアランスの増加(実施例37及び38の表38及び39);並びにc)BAL総タンパク質の低下により反映される肺傷害の改善(実施例36の表37)に統計的に有意な結果を生じた。これは、肺を冒す微生物感染に対する宿主防御の改善においてUP446が有意に高い能力をもつことに相関する。更に、UP446は、肺及び気道内の細菌感染に対する宿主防御を改善した。これらの効果は、敗血症性ショックと全身性炎症応答の予防に重要な役割を果たす。酸化ストレスとウイルス又は微生物感染により宿主防御機能が低下している集団は増大しつつあるが、本試験からのデータは、遊離B環フラボノイドとフラバンの組成物であるUP446がこのような集団に有益であることを如実に示している。
実施例22において加齢加速モデルで実証したように、マウスにD-ガラクトースを投与し、加齢表現型を誘発した。D-ガラクトース誘発から4週間後に、本願に開示する遊離B環フラボノイドとフラバンの組成物であるUP446を2種類の濃度で4週間マウスに投与した後、免疫感作としてインフルエンザワクチンを接種し、複数のアッセイで宿主防御機構を測定し、UP446が対照マウスと同様のバランスのとれた宿主防御表現型に寄与したか否かを調べた。有意義なアウトカムを以下に特筆する。
A)実施例23及び表23において、正常対照群と両濃度のUP446+D-Gal投与群の胸腺指数は、D-Gal群よりも有意に高く、UP446は、免疫応答を生じる生体の能力に影響を与えると思われる胸腺退縮、即ち、加齢に伴う胸腺サイズの低下の逆転に寄与したと判断された。
B)実施例24及び表24では、免疫群間で液性免疫に有意な変化があることが分かった。D-Gal+UP446(200mg/kg)群では、D-Gal単独群に比較して補体C3が有意に増加し、UP446投与群ではD-Gal群に比較して免疫後の液性免疫応答が延長したと判断された。
C)実施例28では、種々の群からの全血中の白血球を測定した処、免疫マウス群間で重要な差があることが分かった。免疫UP446+D-Gal群では、免疫D-Gal単独群に比較してCD49b+細胞(表28)とNKp46+ナチュラルキラー細胞(表29)が増加した。これらのデータから、UP446はナチュラルキラー細胞集団の増大を助長し、自然免疫細胞の百分率が上昇したと判断された。
D)非免疫マウス群間でも大差があることが分かった。D-Gal+UP446群は、CD3+T細胞の増加に向かう強い傾向があり(表25中、P=0.055)、CD8+細胞傷害性T細胞(表27)、NKp46+ナチュラルキラー細胞(表28)、CD4+TCRγδ+ガンマデルタT細胞(表30)、及びIL12p70(表31)がD-gal単独群に比較して有意に増加した。実施例25~30で実証されたこれらのデータによると、本願に開示するバイオフラボノイド組成物であるUP446は、非免疫マウスにおいて不活性化された免疫系をプライミングし、免疫細胞集団を増大し、免疫「レディネス」を増強すると思われる。
E)抗酸化経路を監視するために、抗酸化酵素とバイオマーカーを試験した。D-Galモデルにより誘導される加齢表現型は、終末糖化産物(AGE)の増加に基づいており、高齢動物で見られるようなレベルと同様の酸化ストレス及び損傷を生じる(Azman KF,2019)。抗酸化経路を亢進することにより、酸化ストレスの作用を抑制できると思われる。先ず、実施例31では免疫マウスと非免疫マウスの血清試料中のAGEの濃度を測定した。非免疫D-Gal+UP446群(両濃度)からのマウス血清中のAGEは、D-gal単独群に比較して低下していることが分かった(表32)。したがって、UP446を投与した動物は、フリーラジカル濃度、具体的にはD-Galモデルの加齢表現型に寄与するフリーラジカル濃度が低いと判断された。次に、実施例32では免疫動物からのマウス血清中のグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)の活性に注目した。免疫D-Gal群に比較して、両濃度の免疫UP446+D-Gal群はGSH-Px活性が有意に高いことが分かり(表33)、UP446を投与した動物では、フリーラジカルを中和する能力が増強されたと判断された。
F)免疫群の動物の脾臓中のタンパク質濃度も分析した。脾臓は、免疫系の主要な臓器の一つである。脾臓は、高濃度の白血球を含んでおり、血液中の免疫細胞種の濃度を制御する。実施例33では、炎症に応答して活性化される炎症性転写因子であるNFκBを測定した処、NFκBはD-Gal+UP446高用量投与群で低下していることが分かった(表34)。このことから、NFκBの濃度の低下が、宿主防御恒常性時に炎症応答を調節するためのUP446の1つの機構であると判断された。HMGB1は、転写因子であるアラーミンタンパク質であり、非炎症条件下では核内タンパク質であるが、核外に出ると、細胞外空間に分泌され、炎症シグナルを更に増幅する。実施例34で実証するように、非免疫D-Gal+UP446高用量群では、HMGB1濃度がD-Gal群に比較して著しく低下することが分かった(表35中、P=0.053)。これらの結果はいずれも、UP446を投与すると、非免疫マウス脾臓中の酸化ストレスと炎症が抑制されることを示すものであった。
抗酸化防御系機能障害及び免疫系障害として部分的に反映される組織及び臓器の漸進的劣化は、加齢の特徴である。加齢のフリーラジカル理論によると、加齢と組織及び臓器の加齢関連変性構造・機能障害の主要な寄与因子は、酸化損傷(フリーラジカルと抗酸化剤のアンバランス)である(Azman and Zakaria 2019)。終末糖化産物(AGE)の増加は加齢プロセスを加速させることが知られており、免疫応答不良と抗酸化防御系障害を特徴とするD-ガラクトース誘発加齢加速モデルにおいて加齢メカニズムの主要経路であるとみなされている。D-ガラクトース誘発動物モデルを使用して本願の保護対象でこれらの自然現象を再現した処、D-Gal+溶媒を投与したマウスでは、酸化ストレス増加、抗酸化酵素活性低下及び免疫応答低下が認められた。これに対して、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物を補充すると、加齢関連構造及び機能変化が逆転した。バイオフラボノイド組成物であるUP446を補充すると、血清中AGEの統計的に有意な用量相関的な低下を生じ、最大の低下率は、高用量群の58%の低下率であった(実施例31の表32)。更に、酸化損傷に対する細胞の最も有効な防御機構は、主にグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)等の内因性酵素性抗酸化剤の作用を伴う。実際に、バイオフラボノイド組成物は強力な抗酸化ブースト作用を発揮し、全投与量で統計的にGSH-Pxが有意に増加した(実施例31の実施例33)。粘膜免疫の誘導、免疫器官の保存、AGEの低下、及び内因性抗酸化酵素の増加を勘案すると、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物は、加齢関連免疫調節不全と抗酸化防御系機能不全を予防する。
化学的に加齢させたマウスにバイオフラボノイド組成物を補充すると、自然免疫が強化された。ナチュラルキラー細胞の活性化と増大は、宿主防御恒常性を維持するための主要な免疫調節方法である。ナチュラルキラー細胞は、広範な病的感作;大気汚染物質;ウイルス、微生物及び真菌感染;並びに細胞酸化・ホルモン障害に対して、プライミング又は事前活性化なしに迅速に応答することが知られている自然免疫系の重要な成分である。ナチュラルキラー細胞は、細胞表面分子の変化を検出してその細胞傷害性エフェクター機構を展開するために、細胞完全性の監視を行う。ナチュラルキラー(NK)細胞は、細胞傷害性リンパ球及び免疫調節性サイトカインの産生細胞として機能する。刺激後、NK細胞は大量のサイトカイン、主にγインターフェロン(IFN-γ)と腫瘍壊死因子(TNF)を産生する。NK細胞により産生されるこれらのサイトカイン等は、初期免疫応答時に直接作用すると共に、T細胞とB細胞に仲介される後期適応免疫応答の重要なモジュレーターである。バイオフラボノイド組成物の経口投与の結果として、本願の所期保護対象でNK細胞が著しく増加したことは、前記保護対象が自然免疫調節に重要な影響を与えることを明白に示すものであり、その即時的かつ有効な免疫誘発活性が、免疫恒常性の基礎を築くのに関与していることを示唆している。ナチュラルキラー細胞としての自然免疫のこの活性化は、バイオフラボノイド組成物が呼吸器を保護し、粘膜恒常性を維持するための応答を誘導する別の一面である。
免疫調節、免疫監視の促進及び免疫恒常性を担うことが知られているCD4+TCRγδ+ガンマデルタT細胞で認められた誘導レベルにより、本願の保護対象の粘膜免疫調節及び宿主防御恒常性活性が確認された。γδT細胞は、肺と腸を含む生体内の多くの流入口に主に存在するユニークなT細胞亜集団であり、発生初期にこのような場所に移動し、常在細胞として存続する。その戦略的な解剖学的位置(呼吸器系及び胃腸系の粘膜層)により、γδT細胞は、感染細胞を直接殺傷し、他の免疫細胞を動員し、貪食作用を活性化させ、病原体又は汚染物質が全身区画に移行するのを制限するという点で、その自然免疫様応答に基づく防御の最前線を提供する。これらの細胞は、二次感作で急速に集団を増大し、病原体に特異的な防御を提供することが知られている。呼吸器及び腸管におけるそれらの理想的な位置により、呼吸器及び腸上皮完全性の維持にも役立つ。一般に、γδT細胞の生理的役割としては、細胞外及び細胞内病原体又は汚染物質に対する防御免疫、自然免疫応答と適応免疫応答の監視、調節、組織治癒及び上皮細胞維持、並びに生理的臓器機能の調節が挙げられる。γδT細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞と共通する特徴があり、どちらも通常では自然免疫の成分とみなされ、形質転換/損傷細胞を認識し、抗ウイルス防御に顕著な役割を果たし、下流の適応免疫応答を助長し、強力な細胞溶解性リンパ球である。更に、γδT細胞は、抗原提示細胞の役割もある(Ribot et al.,2021;Bonneville et al.,2010)。本願の保護対象におけるバイオフラボノイド組成物であるUP446により、これらの急速に応答する免疫細胞(γδT細胞とNK細胞)が誘導され、粘膜免疫調節と宿主防御恒常性をもたらした。
以上をまとめると、遊離B環フラボノイドとフラバンの組成物であるUP446を投与したD-Galマウスでは、D-Gal単独群に比較して有意な変化が認められ、加齢動物の宿主防御機構が正常対照マウスの表現型に近付くように逆転し、又は少なくとも宿主防御系プライミング及び活性化が亢進していると判断された。免疫D-Gal+UP446群における胸腺指数、血清中補体、ナチュラルキラー細胞、及びグルタチオンペルオキシダーゼ活性は、D-gal単独群よりも高く、UP446投与群の宿主防御系は、D-Gal誘発加齢単独群よりもワクチン接種に良好に応答することができたと判断された。非免疫D-Gal+UP446群におけるCD8+細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、及びCD4+TCRγδ+ガンマデルタT細胞は、D-gal単独群よりも高く、AGE濃度とNFκB濃度はD-gal群に比較して低下しており、自然免疫応答と適応免疫応答の双方がプライミングされ、酸化ストレスと炎症が軽減されたと判断された。これらの結果から、遊離B環フラボノイドとフラバンの組成物であるUP446は、宿主防御系を感染に対してプライミングするように、ワクチン接種又は感染の活動中と予防手段のいずれにおいても宿主防御系を活性化させるのを助けるのに有用であることが明らかである。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、最近出現したRNAウイルスであり、無症候性感染から、肺傷害、炎症、呼吸窮迫、多臓器不全、死に至るまでの様々な臨床アウトカムをもたらすコロナウイルス病2019(COVID-19)パンデミックの原因である。SARS-CoV-2に感染した肺に分泌される細胞外HMGB1は、COVID-19の重症肺炎症における治療標的であるとみなされている(Andersson et al 2020)。HMGB1放出の阻害によりSARS-CoV-2ウイルス接着、急性呼吸不全及び敗血症を治療するために生薬が検討されている(Wyganowska-Swiatkowska et al.2020)。ウイルスの主要な流入口としてのヒトアンギオテンシンI変換酵素2(hACE2)とSARS-CoV-2スパイクタンパク質の結合に鑑み、モデル誘発及び介入の効果を上げるために、ヒトACE2を発現するトランスジェニックマウスモデルをSARS-CoV-2で感作した。実施例40に示すように、SARS-CoV-2ウイルスを感染させて溶媒を投与したトランスジェニックマウスは、無感染の正常トランスジェニック対照マウスに比較して肺HMGB1タンパク質発現の統計的に有意な2倍の増加を示した。これに対して、SARS-CoV-2ウイルスを感染させたトランスジェニックマウスに、70~80%の遊離B環フラボノイドと15~20%のフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物であるUP894-IIを補充すると、肺組織内のHMGB1タンパク質の発現が無感染正常対照トランスジェニックマウスのレベルまで低下した(図8)。バイオフラボノイド組成物投与の結果としてのこの肺HMGB1発現レベルの低下は、SARS-CoV-2を感染させて溶媒を投与したトランスジェニックマウスに比較して統計的に有意であった。HMGB1は、宿主免疫応答の複雑なシーケンスを活性化させることが知られている主要な後期アラーミンであり、抑制しないと、サイトカインストーム、宿主防御恒常性バランス障害に繋がり、延いては入院COVID-19患者に見られるような有害な臨床徴候を惹き起こす。SRS-Cov2に感染させたこのトランスジェニックマウスの肺組織におけるHMGB1の発現が顕著且つ統計的に有意に低下したことから、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物により、宿主防御機構が改善され、恒常性平衡が誘導され、SARS-CoV-2コロナウイルス感染に起因するサイトカインストーム致死率と、関連する肺及び他の臓器の損傷が軽減されると判断された。
恐らく、60%以上の遊離B環フラボノイドと10%以上のフラバンを含有するユニークなバイオフラボノイド組成物であるUP446からの宿主防御機構の調節の最も顕著な一次アウトカムは、実施例41でヒト臨床試験から実証された健康なボランティアにおける血清IgAの変化であった。二重盲検プラセボ対照比較臨床試験において、健康な中年の被験者(表42)に、その免疫系をインフルエンザワクチン(表41)で感作する前に28日間、250mgのUP446を1日2回又はプラセボを毎日補充した。被験者は更に28日間UP446又はプラセボを摂取し続け、ベースライン、28日間摂取後、及び56日間摂取後(ワクチン接種の28日後)に採血し、宿主防御バイオマーカー測定を実施した。8週間摂取後に、バイオフラボノイド組成物であるUP446を摂取した被験者では、インフルエンザワクチン接種前後で免疫グロブリンA等の粘膜免疫指標がプラセボ群に比較して有意に増加していることが分かった。UP446摂取群では、0日から56日までと28日から56日までのIgAの変化が自己群間比較で有意に高かった。補充期間を通して、バイオフラボノイド組成物であるUP446を摂取した被験者は、プラセボ群に比較してインフルエンザワクチン接種後のIgA濃度の顕著な上昇を示した。これらのデータは、健全な呼吸器系の主要な免疫グロブリンであり、粘膜防御に最も重要な免疫グロブリンであると考えられているIgAが、ヒトにおける宿主防御機構の恒常性改善の主要な指標の1つであることを明白に示している。
呼吸器系(即ち、肺及び上気道)は、呼吸中に吸い込まれる種々の病原体や汚染物質に高頻度で曝露されて、その流入口となる好発部位である粘膜表面積が大きい(400~500m)。多数の大気中の微生物、微粒子、汚染物質及び環境抗原により絶えず攻撃されるため、呼吸器の粘膜表面は、呼吸器感染及び傷害から保護するするために堅牢な非特異的及び特異的防御機構に携わる必要がある。生理的防御(咳、くしゃみ、及び粘液線毛クリアランス)と、肺胞マクロファージによる粒子及び微生物の除去以外に、粘膜液性免疫応答、より具体的には、呼吸器におけるIgA産生の誘導が、呼吸器系の保護の最重要点である。IgAは、非特異的自然免疫因子と協調し、潜在的に有害な炎症応答を誘導せずに外来物質に対する呼吸器/肺防御の有効な最前線として機能すると考えられている。実際に、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物は、マクロファージ貪食活性を亢進することにより自然免疫応答に対応すると同時に、粘膜免疫、特にIgAの産生を刺激することにより適応免疫応答を促進する。呼吸器の粘膜における主要クラスの免疫グロブリンであるIgAは、呼吸器及び肺防御に最も重要な免疫グロブリンであり、a)粘膜表面を微生物と外来抗原の侵入から保護し、b)細菌産物を中和し、c)IgAを介する分泌経路により粘膜表面に侵入した病原体又は抗原を排除し、d)微生物を凝集させ、細菌運動を妨害し、e)トランスサイトーシス中にウイルス抗原と相互作用し、ウイルス合成又は集合を妨害することにより、ウイルスを細胞内で中和することが知られている(Pilette et al.,2001)。本願の保護対象の本文に記載し、特に実施例41に示すヒト臨床試験で立証するように、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物を補充すると、粘膜免疫が誘導され、特にヒト臨床試験でIgAの産生が増加し、高酸素マクロファージの貪食活性が亢進しており、本願の保護対象の主要な役割が、肺の保護と、粘膜免疫恒常性の維持であることを示唆している。
要約すると、細胞培養と動物モデルの両方を使用し、COVID-19患者を治療するために日常的に使用されている酸素療法中に酸化ストレスに長時間曝露されると、HMGB1が劇的に放出され、免疫反応のバランスが転換し、自然免疫の低下を誘導し、マクロファージ機能が低下し、その結果、呼吸器と肺に侵入する病原体を除去する宿主防御が低下し、呼吸器の急性炎症と肺傷害を招き、延いては死に至ることを示す。これらのモデルシステムを使用し、HMGB1が、酸化ストレスにより誘発される肺感染症易罹患性の原因の基礎にある新規な細胞・分子機構であることを実証し、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物が、図1及び図2に示すように、これらの宿主でHMGB1をシフトさせることにより、自然免疫を改善し、呼吸器機能低下を緩和することを実証した。遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物の投与例では、細胞外HMGB1の蓄積が抑制され、呼吸器機能が改善され、細菌及びウイルス感染に対して自然免疫が強化され、宿主防御機構の恒常性の改善により炎症応答が抑制された。
遊離B環フラボノイドとフラバンによりHMGB1を調節する本願の保護対象は、限定されないが、図3に示すように、a)細胞質移行を阻止すること若しくは小胞媒介性の放出を阻止することによってHMGB1の能動的若しくは受動的放出を標的として、若しくは核内の分子内ジスルフィド結合形成を阻害することにより、HMGB1放出を阻害すること又はその作用を妨害する、b)放出時のHMGB1を直接標的とし、その作用を中和する、c)Toll様受容体(TLR)-2/4/7/9及び終末糖化産物受容体(RAGE)等のHMGB1パターン認識受容体をブロックするか、若しくはそのシグナル伝達を阻害する結果として発現することができる。感染、炎症及び細胞死における酸化ストレス仲介HMGB1放出の阻害は、1)活性化された免疫細胞におけるCRM1によるHMGB1の核外輸送、2)壊死におけるPARP1によるHMGB1放出、3)アポトーシスにおけるカスパーゼ3/7によるHMGB1放出、4)オートファジーにおけるATG5によるHMGB1放出、5)パイロトーシスにおけるPKRによるHMGB1放出、及び6)ネトーシスにおけるPAD4によるHMGB1放出を標的とすることができる。遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物の作用は、HMGB1のクラスター形成又は自己会合の防止により発現することもでき、イオン強度(イオン強度の増加と共にHMGB1四量体の濃度が低下する)、pH(pH4.8で自己会合度最高)、金属イオン、特に亜鉛(低用量Zn2+の配合はHMGB1四量体形成を促進する)、及び酸化還元環境(細胞外環境に似た酸化性条件下では、HMGB1は主に四量体として存在し、細胞内環境のような還元性条件下では、より多くの二量体種が存在する)等の特定の物理化学的因子を標的とすることにより達成することができる。前記バイオフラボノイド組成物は、物理化学的微小環境を変化させることにより、HMGB1四量体の形成を防止し、TLR及びRAGEに対するHMGB1の結合親和性を妨害する。
以上及び以下の記載では、本開示の種々の実施形態を十分に理解できるようにするために、所定の特定の事項について記載する。しかし、当業者に自明の通り、これらの事項を用いなくても制限なしに本願の保護対象を実施することができる。
本願の記載において、全濃度範囲、百分率範囲、比の範囲又は整数範囲は、特に指定しない限り、明記する範囲内の全整数値と、適切な場合にはその分数(例えばある整数の10分の1や100分の1)を含むものと理解すべきである。また、ポリマーサブユニット、サイズ又は厚さ等の全物理的特徴に関して本願中に明記する全数値範囲は、特に指定しない限り、明記する範囲内の全整数を含むものと理解すべきである。本願で使用する「約」、「含む」、「から構成される」、及び「から本質的に構成される」なる用語は、特に指定しない限り、指定範囲、数値又は構造の平均±20%を意味する。本願で使用する不定冠詞は、列挙する要素の「1以上」を意味すると理解すべきである。選択肢(例えば、「又は」や「及び/又は」)の使用は、その選択肢のいずれか一方、両方、又は任意のそれらの組み合わせを意味すると理解すべきである。文脈が矛盾しない限り、本明細書と特許請求の範囲の随所において、「含む」及びその変形である「(単数形の)含む」や「含んでいる」と、「包含する」や「有する」及びその変形等の同義語は、広義の包括的な意味で解釈すべきであり、即ち、「含むが、これらに限定されない」と言う意味である。
本明細書の随所において「1つの実施形態」又は「1実施形態」と言う場合には、この実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、組成又は特性が本願の保護対象の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の随所の各所で「1つの実施形態において」又は「1実施形態において」なる表現を用いる場合には、必ずしも全てが同一の実施形態を意味するものではない。
また、「プロドラッグ」なる用語は、本開示の活性化合物を任意の担体に共有結合させ、このようなプロドラッグを哺乳動物対象に投与したときにインビボで放出するものを意味する。本開示の化合物のプロドラッグは、日常的操作又はインビボで開裂して本開示の親化合物に戻るように、本開示の化合物に存在する官能基を修飾することにより製造することができる。プロドラッグとしては、本開示の化合物のいずれかの基にヒドロキシ基、アミノ基又はメルカプト基を結合し、本開示の化合物のプロドラッグを哺乳動物対象に投与したときに、開裂して夫々遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基又は遊離メルカプト基を形成するものが挙げられる。プロドラッグの例としては、本開示の化合物におけるアルコール部分の酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体又はアミン官能基のアミド誘導体等が挙げられる。
「安定な化合物」及び「安定な構造」とは、反応混合物から有用な純度まで単離し、妥当な貯蔵寿命を有する有効な治療剤に製剤化するために十分に堅牢な化合物を意味する。
「バイオマーカー」又は「マーカー」成分又は化合物とは、本願に開示する植物、植物抽出物又は2~3種の植物抽出物の併用組成物に固有の1種以上の化学成分又は化合物であって、本発明の組成物の品質、コンシステンシー、完全性、安全性、又は生物学的機能を制御するために利用されるものを意味する。
「哺乳動物」は、ヒトに加え、実験動物又は家族ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)等の家庭動物及び、野生動物等の非家庭動物を含む。
「任意の」又は「任意に」とは、この語により修飾される要素、成分、事象又は環境が存在してもしなくてもよく、これらの要素、成分、事象又は環境が存在する場合と存在しない場合があることを意味する。例えば、「任意に置換されたアリール」とは、このアリール基が置換されていてもいなくてもよく、置換アリール基と置換されていないアリール基の両方を含むことを意味する。
「薬学的又は栄養補強的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤」は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によりヒト又は家庭動物で使用するのに許容されるとして承認されているあらゆる補助剤、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、フレーバーエンハンサー、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶剤、又は乳化剤を含む。所期実施形態において、前記組成物は、更に薬学的又は栄養補強的に許容される活性成分、補助剤、担体、希釈剤又は賦形剤を含有しており、前記薬学的製剤又は栄養補強的製剤は、前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物中に約0.1重量パーセント(重量%)~約99.9重量%の活性化合物を含有している。
「薬学的又は栄養補強的に許容される塩」は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。「薬学的又は栄養補強的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性及び性質を維持し、生物学的又は他の点で不適切ではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、及び酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、樟脳酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、サイクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、蓚酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸等の有機酸と共に形成される塩を意味する。
「薬学的又は栄養補強的に許容される塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的有効性及び性質を維持し、生物学的又は他の点で不適切ではない塩基付加塩を意味する。これらの塩は、無機塩基又は有機塩基を遊離酸に付加することにより製造される。無機塩基から誘導される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等が挙げられる。所定の実施形態において、前記無機塩はアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩である。有機塩基から誘導される塩としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられ、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等の塩が挙げられる。特に有用な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
結晶化により本開示の化合物の溶媒和物を形成することが多い。本願で使用する「溶媒和物」なる用語は、本開示の化合物1分子以上と、溶媒1分子以上を含む凝集物を意味する。溶媒は水とすることができ、その場合には、溶媒和物は水和物とすることができる。あるいは、溶媒は有機溶媒でもよい。したがって、本願の保護対象の化合物は水和物として存在することができ、一水和物、二水和物、ヘミ水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物等と、対応する溶媒和物が挙げられる。本開示の化合物は真の溶媒和物とすることができるが、本開示の化合物は単に偶発的な水を保持しているだけもよいし、水と多少の偶発的的な溶媒の混合物でもよい。
「薬学的組成物」又は「栄養補強的組成物」とは、本開示の化合物と、この生物活性化合物を哺乳動物(例えば、ヒト)に送達するために当技術分野で一般に許容されている媒体から成る製剤を意味する。例えば、本開示の薬学的組成物は、単独組成物として製剤化又は使用してもよいし、政府機関により審査・承認された処方薬、市販(OTC)薬、植物性薬品、生薬、天然薬、ホメオパシー剤、又は他の任意形態のヘルスケア製品における成分又は医薬品有効成分(API)として製剤化又は使用してもよい。典型的な本開示の栄養補強的組成物は、単独組成物として製剤化又は使用してもよいし、食品、機能食品、飲料、バー、食品フレーバー、医療食、栄養補助食品又は生薬製品における栄養成分又は生物活性成分として製剤化又は使用してもよい。当技術分野で一般に許容されている媒体は、この目的で薬学的又は栄養補強的に許容される全ての担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
本願で使用する「高濃度化」とは、抽出又は他の製造工程の前に植物材料又は他の原料の重量中に存在する1種以上の活性化合物の量に比較して、1種以上の活性化合物を少なくとも2倍から約1000倍まで増加させた植物抽出物又は他の製剤を意味する。所定の実施形態において、抽出又は他の製造工程の前の植物材料又は他の原料の重量は、乾燥重量、湿潤重量又はその組み合わせとすることができる。所期実施形態において、前記標準化バイオフラボノイド抽出物は、個々による又は組み合わせでの、溶媒沈殿、中和、溶媒分配、限外濾過、酵素消化、シリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナオキサイド、ポリアミド、イオン交換樹脂、CG161樹脂を担体とするカラムクロマトグラフィー、又はそれらの組み合わせにより高濃度化されている。
本願で使用する「主活性原料成分」又は「主活性成分」とは、植物抽出物若しくは他の製剤中に存在するか、又は植物抽出物若しくは他の製剤中で高濃度化させた1種以上の活性化合物であり、少なくとも1種の生物活性を発揮できるものを意味する。所定の実施形態において、高濃度化抽出物の主活性原料成分は、前記抽出物中で高濃度化させた1種以上の活性バイオフラボノイド化合物となるであろう。一般に、前記バイオフラボノイド組成物中の1種以上の主活性成分は、他の抽出物成分に比較して、1種以上の測定可能な生物活性又は作用の大半(即ち、60%超、又は50%超、又は20%超又は10%超)を、直接的又は間接的に提供するであろう。所定の実施形態において、主活性バイオフラボノイドは、抽出物の過半数に満たない重量百分率(例えば、抽出物に含まれるバイオフラボノイドの50%未満、25%未満、又は10%未満又は5%未満又は1%未満)の副次成分でもよいが、所望の生物活性の大半を提供することができる。遊離B環フラボノイドの1種としてのバイカリン等の主活性成分を含有する本開示の全バイオフラボノイド組成物は更に、副次活性成分であるフラバンとしてエピカテキンを含有していてもよく、前記副次活性成分は、高濃度化した組成物の薬学的又は栄養補強活性に寄与してもしなくてもよいが、主活性成分の濃度には寄与せず、副次活性成分は、主活性原料成分の不在下で単独では有効でなくてもよい。
「有効量」又は「治療有効量」とは、ヒト等の哺乳動物に投与したときに、(1)自然免疫の刺激、(2)適応免疫の強化、特にCD4+及びCD8+、補体C3、CD3+T細胞、CD8+細胞傷害性T細胞、CD3-CD49b+ナチュラルキラー細胞、NKp46+ナチュラルキラー細胞及びCD4+TCRγδ+ガンマデルタT細胞の増加、(3)慢性全身性炎症と酸化ストレスの抑制、(4)HMGB1誘発サイトカインストーム損傷に対する免疫細胞、呼吸器細胞及び肺細胞の保護、(5)酸化ストレスを抑制し、NF-kbを低減し、終末糖化産物を低減し、グルタチオンペルオキシダーゼを増加し、活性酸素種を中和し、酸化ストレスに起因する呼吸器、肺及び免疫系の構造完全性の毀損及び機能低下を予防するための強力な抗酸化剤としての機能の提供、(6)自然免疫応答と適応免疫応答の恒常性の維持、(7)液性免疫応答と細胞性免疫応答におけるマクロファージの貪食指数の上昇、(8)NF-kB、NFAT、及びSTAT3等の転写因子の活性化の阻害、(9)リンパ球活性化と炎症性サイトカイン遺伝子発現(IL-2、iNOS、TNF-α、COX-2、及びIFN-γ)の阻害、(10)IL-1β、IL-6及びTNF-α等の炎症性サイトカイン濃度の低下、(11)COX-2、NOS-2、及びNF-κBの発現のダウンレギュレーション、(12)ホスホリパーゼA2及びTXA2シンターゼ活性を阻害することによるエイコサノイド生成の阻害、(13)Th1細胞とTh17細胞の応答抑制、(14)ICAMとVCAMの発現低下による好中球走化性低下、(15)MAPKリン酸化、接着分子発現、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT-3)の阻害、並びに(16)転写因子NRF2の活性化とヘムオキシゲナーゼ-1の誘導のいずれか1種以上を含む免疫機能の改善をもたらすように宿主防御機構恒常性の転換点をシフトさせるために十分な本開示のバイオフラボノイド化合物又は組成物の量を意味する。
2~3種の植物抽出物を種々に組み合わせて宿主防御機構の恒常性を調節するための組成物(限定されないが、例えば、本開示における遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するUP446又はUP894-2)により調節される宿主防御機能と肺構造完全性及び機能に関連する「バイオマーカー」としては、限定されないが、特定のウイルス株に対するヘマグルチニン阻害(HI)力価、IgA、IgG、IgM、CD3+、CD4+、CD8+、CD45+、TCRγδ+、CD3-CD16+56+、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL17A、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-27、IL-31、TNF-α、TNF-β/LTA150、G-CSF、CCL2/3/5、IP-10、CXCL10、CRP、HMGB1、Nrf-2、INF-α/β/γ、NF-κB、PDGF-BB、MIP-1α、Dダイマー、アンギオテンシンII、心筋トロポニン、VEGF、PDGF、アルブミン、SOD、MDA、8-イソプロスタグランジンF2α、カタラーゼ(CAT)、終末糖化産物(AGEP)、グルタチオンペルオキシダーゼ、iNOS、COX1、COX2、LO5、LO12、LO13が挙げられる。
本願で使用する「ウイルス」としては、限定されないが、高病原性鳥インフルエンザ(A型H5N1ウイルス株)、A型インフルエンザ(H1N1、H3N2、H5N1)、B型インフルエンザ/ワシントン/02/2019様ウイルス、B型インフルエンザ/プーケット/3073/2013様ウイルス、A型、B型、C型及びD型肝炎ウイルス、コロナウイルスSARS-CoV、SARS-CoV-2(COVID-19)、MERS-CoV(MERS)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、エンテロウイルスA71(EV71)、パラインフルエンザ並びにアデノウイルスが挙げられる。
本願で使用する「微生物」としては、限定されないが、呼吸器系に感染する病原細菌が挙げられ、最も一般的な細菌病原体としては、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ヘモフィラス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae:インフルエンザ菌)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa:)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、及びモラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)が挙げられ、上気道及び下気道感染症における主要な肺真菌病原体としては、アスペルギルス属菌(Aspergillus)、クリプトコッカス属菌(Cryptococcus)、ニューモシスチス属菌(Pneumocystis)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ブラストミセス属菌(Blastomyces)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jiroveci)、カンジダ属菌(Candida)種(spp.)及び風土病性真菌類が挙げられ、咽頭炎と扁桃炎の主要な細菌病原体としては、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)が挙げられる。感冒やインフルエンザ等のウイルス性疾患に罹患後に細菌感染症が発症する場合もある。
本願で使用する「呼吸器及び肺」としては、限定されないが、空気を肺に送り、肺から宿主の他の全臓器に酸素を送る気道、宿主体外から宿主呼吸器系内に空気を取り込む開口部である口と鼻、宿主頭部の骨の間の空洞部であり、宿主が吸い込んだ空気の温度と湿度を調節するのを助ける副鼻腔、宿主の口と鼻から気管(喉笛)に空気を送る管である咽頭(喉)、宿主の喉と肺を繋ぐ通路である気管、宿主の喉笛の底部から各肺に通じる管である気管支、空気から酸素を取り出し、宿主の血液中に送る2部分から成る臓器である肺、二酸化炭素を肺に送り、肺から宿主の全臓器及び他の組織に酸素を送る血流、宿主が吸い込んだ空気を宿主の肺の内外に移動させるのを助ける筋肉と骨が挙げられる。
「呼吸器感染症」は、普通感冒の症状を含み、鼻詰まり、鼻水、くしゃみ、軽度発熱、頭痛、咽喉痛、胸部圧迫感、喘鳴、乾咳及び喘咳、倦怠感、息切れ、うっ血、嗄声、嚥下痛及び嚥下困難、リンパ節腫脹、顔面圧痛(特に、目の下又は鼻梁)が挙げられる。普通感冒がウイルス感染から細菌感染に進行している警告徴候をいくつか挙げると、10~14日間以上継続する症状、100.4度を超える発熱、数日間改善せずに悪化する発熱、扁桃の白い膿をもった斑点、後鼻漏を伴う副鼻腔炎、鼻詰まり/鼻閉、歯痛、咳、緑色を帯びた鼻汁、顔面圧痛(特に、目の下又は鼻梁)、口臭、倦怠感、発熱が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「肺感染症」又は「肺炎」は、最も一般的な細菌又はウイルス下気道感染症である。大気汚染物質、タバコ、電子タバコ又は娯楽用マリファナの喫煙により生じる場合もある。片肺又は両肺の気嚢に炎症を起こす感染症であり、これらの気嚢には粘液又は膿がたまる。肺炎の症状としては、限定されないが、痰又は膿を伴う咳、発熱、悪寒、呼吸困難、強い胸痛、脱水症状、倦怠感、食欲不振、皮膚べとつき及び発汗、速呼吸、浅呼吸、息切れ、喘鳴、高心拍数、及び血中酸素飽和度低下が挙げられる。「肺感染症」又は「肺炎」は、胸部X線写真、CTスキャン、血液検査、及び唾液培養により診断することができる。常在マクロファージは、肺を外来病原体から保護するように機能し、病原体の炎症応答によりトリガーされ、肺炎に見られる病理組織学的及び臨床的所見の原因となる。マクロファージは、これらの病原体を飲み込み、シグナル分子又はTNF-a、IL-6及びIL-1等のサイトカインをトリガーし、好中球等の炎症性細胞を感染部位に動員する。マクロファージは更に、これらの抗原をT細胞に提示し、細胞性防御機構と液性防御機構の両方をトリガーし、補体を活性化させ、これらの生物に対する抗体を形成するように機能する。この結果、肺実質の炎症を生じ、肺胞壁の毛細血管が「染み出し」やすくなり、滲出うっ血を惹き起こし、肺炎の発病に至る。
「治療有効量」又は「栄養効果量」を構成する本開示の化合物、抽出物又は組成物の量は、生物活性化合物、又は栄養成分、又は治療する病態とその重症度のバイオマーカー、投与方式、投与期間若しくは栄養補助食品補充期間、又は治療する対象の年齢により異なるが、当技術分野における通常の知識を有する者が自身の知識と本開示に照らして日常的に決定することができる。所定の実施形態において、「有効量」又は「治療有効量」又は「栄養効果量」は、哺乳動物の体重に対する量(即ち、0.005mg/kg、0.01mg/kg、又は0.1mg/kg、又は1mg/kg、又は5mg/kg、又は10mg/kg、又は20mg/kg、又は50mg/kg、又は100mg/kg、又は200mg/kg又は500mg/kg)として表すことができる。動物とヒトの総体表面積及び体重の差を考慮してFDAガイドラインを利用することにより、動物試験における「有効量」又は「治療有効量」又は「栄養効果量」からヒト等価1日用量を推定することができる。
本願で使用する「栄養補助食品」は、恒常性、バランス、自然状態若しくは生物学的プロセス、又は構造的及び機能的完全性に関連する特定の病態、生物学的機能若しくは表現型状態若しくは防御機構のアンバランス若しくは低下若しくは抑制若しくは過剰刺激を改善、促進、増進、管理、制御、維持、最適化、修飾、抑制、阻害、確立又は予防する製品である(即ち、疾患を診断、治療、緩和、治癒又は予防するためには使用されない)。例えば、宿主防御機構に関しては、ワクチンの効力を強化し、マクロファージの貪食活性を強化し、NK細胞の自然殺傷活性を改善し、炎症性サイトカインの産生レベルを調節し、炎症と組織損傷を軽減し、抗体の応答と産生を誘導し、抗体依存性細胞傷害作用を強化し、T細胞増殖を刺激し、免疫抑制細胞である制御性t細胞の生成を促進し、免疫細胞と肺細胞をHMGB1誘発サイトカインストーム損傷から保護し、NFκBの無制御な活性化を抑制し、臓器又は組織を酸化ストレスから保護する免疫刺激剤に特異的な免疫補助剤として、適応免疫又は自然免疫の何らかの成分を調節、維持、管理、均衡、抑制又は刺激するために「栄養補助食品」を使用することができる。所定の実施形態において、栄養補助食品は特殊分類の栄養補助食品、天然栄養、食品、機能食品、医療食であり、医薬品ではない。
本願で使用する「治療する」又は「治療」とは、該当疾患又は病態をもつヒト等の哺乳動物における前記該当疾患又は病態の治療を意味し、(i)特に、哺乳動物に前記疾患又は病態の素因があるが、まだその疾患等をもつと診断されていない場合に、前記疾患又は病態が前記哺乳動物に発生するのを予防すること;(ii)前記疾患又は病態を抑制すること、即ち、その発生を止めること;(iii)前記疾患又は病態を緩和又は修飾すること、即ち、前記疾患又は病態の退縮を生じること;又は、(iv)根底にある疾患又は病態に対処せずに、前記疾患又は病態に起因する症状を緩和すること(例えば、咳と発熱を緩和すること、疼痛を緩和すること、炎症を抑えること、肺浮腫を抑制すること、肺炎を緩和すること);(v)免疫恒常性の調節のバランスをとること、あるいは前記疾患又は病態の表現型を変化させることを含む。
本願で使用する「疾患」及び「病態」なる用語は同義に使用する場合もあるし、特定の病的状態又は病態の原因物質が不明である(したがって、病因がまだ突き止められていない)ため、まだ疾患として認められず、多少の特定の症状群が臨床医により確認されているが、望ましくない病態又は症候群としてしか認められていないという意味で同義でない場合もある。疾患又は病態は、ウイルス感染症(SARS、COVID-19、MERS、肝炎、インフルエンザ)や微生物感染症のように急性の場合もあるし、大気汚染や煙への曝露に起因する肺損傷のように慢性の場合もある。恒常性のアンバランスにより免疫機能が低下した結果、疾患又は病態を生じたり、哺乳動物が感染症に罹患し易くなったり、ウイルス若しくは細菌感染又は大気汚染物質に直接的又は間接的に関連する二次的な臓器及び組織損傷に繋がる可能性もある。
本願で使用する「統計的有意性」なる用語は、スチューデントのt検定を使用して計算した場合にp値が0.050以下であることを意味し、特定の事象又は測定結果が偶然に生じたとは考えにくいことを示す。
投与の目的では、本願の保護対象の化合物を粗化合物として投与してもよいし、薬学的又は栄養補強的又は食品組成物として製剤化してもよい。本願の保護対象の薬学的又は栄養補強的組成物は、本願の保護対象に記載する構造の化合物と、薬学的又は栄養補強的又は従来の食品に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含有している。本願に記載する構造の化合物は、特定の該当疾患若しくは病態を治療するため、又は天然栄養を補充するために有効な量、即ち、宿主防御機構の恒常性を確立するため、又は自然免疫若しくは適応免疫若しくは免疫恒常性全般若しくは本願に記載する他の関連する効能のいずれかを促進するために十分であり、一般に宿主への毒性がないか、又は許容されるような量で前記組成物中に存在する。
純形態又は適切な薬学的若しくは栄養補強的組成物としての本開示の化合物若しくは組成物、又はその薬学的若しくは栄養補強的に許容される塩の投与は、同様の用途の薬剤に許容される投与方式のいずれかにより実施することができる。本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、本開示の化合物に適切な薬学的又は栄養補強的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を加えることにより製造することができ、固形、半固形、液状又は気体状の製剤に製剤化することができ、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液剤、飲料、坐剤、注射剤、吸入剤、ジェル剤、クリーム剤、ローション剤、チンキ剤、サシェ剤、即席飲料、マスク剤、マイクロスフェア剤、及びエアゾール剤が挙げられる。本願に開示するバイオフラボノイド組成物は、他の食品成分と共に従来の食品、機能食品、栄養食品、医療食として製剤化することもできる。このような薬学的又は栄養補強的組成物の典型的な投与経路としては、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、経直腸、経膣、又は鼻腔内が挙げられる。本願で使用する非経口なる用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は輸液技術を含む。
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、前記組成物を患者に投与すると、前記組成物に含まれる活性成分が生体利用性になるように製剤化される。対象又は患者又は哺乳動物に投与される組成物は、1用量単位以上の形態をとり、例えば、錠剤1錠を1用量単位とすることができ、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物の組成物をエアゾール剤として充填した容器は複数の用量単位を保持することができる。このような剤形の実際の製造方法は当業者に公知であり、又は容易に理解されよう。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)参照。投与する組成物はいずれにせよ、本願の保護対象の教示に従って該当疾患又は病態を治療するために、治療有効量の本開示の化合物又はその薬学的若しくは栄養補強的に許容される塩を含有するであろう。
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は固形でも液状でもよい。1態様において、前記担体は粒状であり、したがって、前記組成物は例えば錠剤又は散剤形態である。前記担体は液状でもよく、前記組成物は例えば、経口シロップ剤、注射液剤、又は例えば吸入投与に有用なエアゾール剤である。
経口投与用の場合、前記薬学的又は栄養補強的組成物は固形又は液状であり、半固形、半液状、懸濁剤及びジェル形態は本願で固形又は液状とみなす剤形に含まれる。
経口投与用固形組成物として、前記薬学的又は栄養補強的組成物は散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤等の剤形に製剤化することができる。このような固形組成物は、一般的に1種以上の不活性希釈剤又は可食性担体を含有する。更に、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、シクロデキストリン、微結晶セルロース、トラガカントガム又はゼラチン等の結合剤;澱粉、ラクトース又はデキストリン等の賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムやSterotex等の滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素等の滑剤;ショ糖やサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバー等のフレーバー剤;及び着色剤の1種以上を添加してもよい。
前記薬学的又は栄養補強的組成物がカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)の剤形である場合には、上記種類の材料に加え、ポリエチレングリコールや油類等の液状担体を含有することができる。
前記薬学的又は栄養補強的組成物は液剤の形態でもよく、例えば、エリキシル剤、チンキ剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤又は懸濁剤とすることができる。前記液剤は、2例を挙げると、経口投与用又は注射による送達用とすることができる。経口投与用の場合には、有用な組成物は本願の化合物に加え、甘味剤、保存剤、色素/着色剤及びフレーバーエンハンサーの1種以上を含有する。注射投与用組成物では、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝液、安定剤及び等張剤の1種以上を添加することができる。
本開示の液状の薬学的又は栄養補強的組成物は、溶液剤、懸濁剤等の剤形のいずれであるかに関係なく、以下の補助剤、即ち、注射用水、生理食塩水等の食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、溶媒又は懸濁媒として利用できる合成モノ又はジグリセリド等の不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶剤等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールやメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝液;及び塩化ナトリウムやデキストロース等の張度調節剤の1種以上を含有することができる。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又はマルチドーズバイアルに封入することができる。生理食塩水が一般に有用な補助剤である。注射用の薬学的又は栄養補強的組成物は無菌とする。
本開示の非経口又は経口投与用の液状の薬学的又は栄養補強的組成物は、適切な投与量が得られるような量の本開示の化合物を含有すべきである。
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は局所投与用としてもよく、その場合には、前記担体は適宜、溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、又はジェル基剤を含むことができる。前記担体は、例えば、ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜ろう、鉱油、水及びアルコール等の希釈剤、乳化剤及び安定剤の1種以上を含むことができる。局所投与用の薬学的又は栄養補強的組成物には、増粘剤を添加してもよい。経皮投与用の場合には、前記組成物は、経皮パッチやイオントフォレシス装置を含むことができる。
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は経直腸投与用とすることもでき、例えば、直腸内で溶けて薬物を放出する坐剤の形態とすることができる。直腸投与用の前記組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油性担体を含有することができる。このような担体としては、ラノリン、カカオ脂及びポリエチレングリコールが挙げられる。
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、固形又は液状用量単位の物理的形状を変える種々の材料を含むことができる。例えば、前記組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含むことができる。コーティングシェルを形成する材料は、一般的に不活性であり、例えば、糖、シェラック及び他の腸溶性コーティング剤から選択することができる。あるいは、活性成分をゼラチンカプセルに封入してもよい。
固形又は液状の本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、本開示の化合物と結合して前記化合物の送達を補助する物質を含むことができる。この機能を行うことができる適切な物質としては、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、タンパク質又はリポソームが挙げられる。
固形又は液状の本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、例えば、生体利用性を改善するために粒子のサイズを小さくすることができる。賦形剤の有無を問わずに組成物中における粉末、顆粒、粒子、マイクロスフェア等のサイズは、サイズと嵩密度を改善するように、マクロ(例えば、目視可能又は少なくとも100μmのサイズ)、マイクロ(例えば、約100μm~約100nmの範囲のサイズとすることができる)、ナノ(例えば、100nm以下のサイズとすることができる)、及びその中間の任意のサイズ又は任意のその組み合わせとすることができる。
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、エアゾール剤として投与することができる用量単位から構成することもできる。エアゾールなる用語は、コロイド状のシステムをはじめ、加圧パッケージから構成されるシステムに至る種々のシステムを表すために使用される。液化ガス若しくは圧縮ガス又は活性成分を分配する適切なポンプシステムにより送達を行うことができる。本開示の化合物のエアゾール剤は、活性成分を送達するために、単相、二相又は三相系で送達することができる。エアゾール剤の送達は必要な容器、アクチベーター、バルブ、内側容器等を含み、一体的にキットを形成することができる。当業者は、過度の実験を経ずに最適なエアゾール剤を決定することができる。
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、薬学又は栄養補強分野で周知の手法により製造することができる。例えば、本開示の化合物に滅菌蒸留脱イオン水を加えて溶液を形成することにより、注射投与用の薬学的又は栄養補強的組成物を製造することができる。均一な溶液又は懸濁液の形成を助けるために界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤は、本開示の化合物と非共有結合的に相互作用し、水性送達系における前記化合物の溶解又は均一な懸濁を助ける化合物である。
本開示の化合物又はその薬学的若しくは栄養補強的に許容される塩は治療有効量を投与されるが、このような有効量は、利用される特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性と作用時間、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与方式及び時期、排泄速度、薬物併用、特定の障害又は病態の重症度、並びに治療を受ける対象等の種々の因子により異なるであろう。
本開示の化合物又は薬学的若しくは栄養補強的に許容されるその誘導体は更に、食品、水及び1種以上の他の治療剤と同時に投与してもよいし、その前に投与してもよいし、その後に投与してもよい。このような併用療法は、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る組成物と、1種以上の他の活性剤を含有する単一の薬学的又は栄養補強的製剤を投与する方法に加え、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る遊離B環フラボノイドとフラバンの組成物と各活性剤を夫々別々の薬学的又は栄養補強的製剤として投与する方法を含む。例えば、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る組成物及び別の活性剤を錠剤又はカプセル剤等の単一の経口投与組成物として一緒に患者に投与することもできるし、各活性剤を別々の経口投与製剤として投与することもできる。別々の投与製剤を使用する場合には、本開示の化合物と1種以上の他の活性剤を本質的に同一時点で、即ち、同時に投与することもできるし、時間をずらせて別々に、即ち、逐次投与することもでき、併用療法はこれらの全てのレジメンを含むものと理解されたい。
当然のことながら、本願の記載では、表記する式の置換基又は変数を組み合わせて安定な化合物が得られる場合に限り、このような組み合わせが許容される。
また、当業者に自明の通り、本願に記載する方法では、中間化合物の官能基を適切な保護基で保護することが必要な場合がある。このような官能基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基及びカルボン酸基が挙げられる。ヒドロキシ基の適切な保護基としては、トリアルキルシリル基又はジアリールアルキルシリル基(例えば、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基又はトリメチルシリル基)、テトラヒドロピラニル基、ベンジル基等が挙げられる。アミノ基、アミジノ基及びグアニジノ基の適切な保護基としては、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。メルカプト基の適切な保護基としては、C(O)-R”(式中、R”はアルキル、アリール又はアリールアルキルである。)、p-メトキシベンジル基、トリチル基等が挙げられる。カルボン酸基の適切な保護基としては、アルキル基、アリール基又はアリールアルキルエステル基が挙げられる。保護基は標準技術に従って付加又は除去することができ、このような技術は当業者に公知であり、本願に記載する通りである。保護基の使用については、Green,T.W.and P.G.M.Wutz,Protective Groups in Organic Synthesis(1999),3rd Ed.,Wileyに詳細に記載されている。当業者に自明の通り、保護基はWang樹脂、Rink樹脂又は2-クロロトリチルクロリド樹脂等のポリマー樹脂でもよい。
同様に当業者に自明の通り、本願の保護対象の化合物のこのような保護誘導体は、そのままの状態では薬理活性を有していなくてもよいが、哺乳動物に投与した後、体内で代謝されて薬理的に活性な本開示の化合物を形成することができる。したがって、このような誘導体は、「プロドラッグ」と言うことができる。本願の保護対象の化合物の全てのプロドラッグが本開示の範囲に含まれる。
更に、遊離塩基又は遊離酸形態で存在する本開示の全化合物又は抽出物は、当業者に公知の方法により適切な無機塩基、有機塩基、無機酸又は有機酸で処理することにより、その薬学的又は栄養補強的に許容される塩に変換することができる。本開示の化合物の塩は、標準技術によりその遊離塩基又は遊離酸形態に変換することができる。
上記実施形態のいずれにおいても、抽出物又は化合物の混合物を含む組成物は、特定の重量比で混合することができる。例えば、限定されないが、夫々バイカリンとカテキンを含むバイオフラボノイドを含有するタツナミソウ属抽出物とアカシア属抽出物を夫々4:1の重量比でブレンドすることができる。所定の実施形態において、本開示の2種類の抽出物又は化合物の(重量)比は、約0.5:5~約5:0.5の範囲である。3種類以上(例えば、3種、4種、5種)の抽出物又は化合物を使用する場合にも同様の範囲が適用される。典型的な比としては、0.5:1、0.5:2、0.5:3、0.5:4、0.5:5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:2、2:3、2:4、2:5、3:1、3:2、3:3、3:4、3:5、4:1、4:2、4:3、4:4、4:5、5:1、5:2、5:3、5:4、5:5、1:0.5、2:0.5、3:0.5、4:0.5、又は5:0.5が挙げられる。他の実施形態では、本願に開示するタツナミソウ属抽出物の個々の遊離B環フラボノイド抽出物とアカシア属のフラバン抽出物を非限定的な1例として4:1のブレンド比で配合し、UP446と呼ぶ組成物とした。
他の実施形態では、タツナミソウ属とアカシア属の個々の抽出物を種々に組み合わせてこのような配合物(限定されないが、例えば、UP446、又はUP223、又はUP894-II、又はUG0408)とし、認められる生物学的機能の利点/不利点及び予想外の相乗作用/拮抗作用と、宿主防御機構の恒常性の有効な調節と、サイトカインストーム、酸化ストレス及び敗血症に起因する臓器損傷の軽減について、インビトロ、又はエクスビボ又はインビボモデルで評価した。各抽出物中の化学成分の多様性と、各抽出物中の異なる種類の生物活性フラボノイド化合物からの異なる作用機序と、生物学的及び栄養学的出力を最大にするように組成物中のバイオフラボノイド化合物のADMEを向上する可能性により、インビトロ、又はエクスビボ又はインビボモデルで測定された予想外の相乗作用に基づき、フラバン又は遊離B環フラボノイドの個々の抽出物を特定のブレンド比で含む最良の組成物を選択した。
上記実施形態のいずれにおいても、バイオフラボノイド化合物としての遊離B環フラボノイドとフラバンについて標準化された抽出物の混合物を含む組成物は、所定の百分率レベル又は比で存在することができる。所定の実施形態において、タツナミソウ属根抽出物粉末又はアカシア属心材抽出物を含む組成物は、0.1%~99.9%若しくは約10%~約40%若しくは約60%~約80%の遊離B環フラボノイド、0.1%~99.9%若しくは約1%~約10%若しくは約5%~約50%のフラバン、又はそれらの組み合わせを含有することができる。所定の実施形態において、タツナミソウ属の遊離B環フラボノイド抽出物粉末又はアカシア属のフラバン抽出物を含む組成物は、約0.01%~約99.9%のバイカリン又はカテキンを含有することができ、あるいは少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%、95%のバイカリン又はカテキンを含有することができる。
所定の例において、本開示の組成物は、薬学的又は栄養補強的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含むように製剤化することができ、前記薬学的製剤又は栄養補強的製剤は、約0.05重量パーセント(重量%)、又は0.5重量パーセント(重量%)、又は5%、又は25%、又は50%又は80%~約99重量%の抽出物混合物の活性成分又は主活性成分を含有する。他の実施形態において、前記薬学的製剤又は栄養補強的製剤は、約0.05重量パーセント(重量%)~約90重量%のバイオフラボノイド、約0.5重量%~約80重量%のバイカリン、約0.5重量%~約86重量%の総バイオフラボノイド、約0.5重量%~約90重量%、約0.5重量%~約70重量%、約1.0重量%~約60重量%、約1.0重量%~約20重量%、約1.0重量%~約10重量%、約3.0重量%~約9.0重量%、約5.0重量%~約10重量%、約3.0重量%~約6重量%の抽出物混合物の主活性成分等を含有する。上記製剤のいずれかにおいて、本開示の組成物は、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤又は顆粒剤として製剤化される。
本願では、本願に開示する化合物の変換物も想定される。このような生成物は、例えば、投与した化合物の主に酵素的過程による酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化等により得られる。したがって、想定される化合物は、所期化合物又は組成物の代謝産物を生じるために十分な時間にわたって前記化合物又は組成物を哺乳動物に投与することを含む方法により生成される化合物である。このような生成物は、一般的に、本開示の化合物を放射性標識して又は放射性標識せずにラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウマ、サル、又はヒト等の動物に検出可能な用量で投与し、代謝が生じるために十分な時間を経た後に、尿、血液又は他の生体試料からその変換物を単離することにより同定される。
所期化合物、薬用組成物及び組成物は更に、少なくとも1種の薬学的又は栄養補強的又は美容的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。本願で使用する「薬学的又は栄養補強的又は美容的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤」なる用語は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によりヒト又は家庭動物で使用するのに許容されるとして承認されているあらゆる補助剤、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、フレーバーエンハンサー、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶剤、又は乳化剤を含む。所期化合物、薬用組成物及び組成物は、少なくとも1種の薬学的又は栄養補強的又は美容的に許容される塩を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。本願で使用する「薬学的又は栄養補強的又は美容的に許容される塩」なる用語は、酸付加塩と塩基付加塩を含む。
遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する所期組成物は、アサ(Cannabis sativa)フルスペクトラム抽出物、CBDオイル又はCBD/THC、ターメリック抽出物又はクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、アロエ・ベラ(Aloe vera)葉ゲル粉末、ポリア・ココス(Poria cocos)抽出物、ローズマリー抽出物、ロスマリン酸、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物又はカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、フィロデンドロン樹皮抽出物、ホップ抽出物、ボスウェリア属(Boswellia)抽出物、ローズヒップ抽出物、ソフォラ属(Sophora)抽出物、ウィタニア・ソムニフェラ(Withania somnifera:アシュワガンダ)、ブプレウルム・ファルカツム(Bupleurum falcatum:ミシマサイコ)、ラディックス・ブプレウリ(Radix Bupleuri:サイコ)、ラディックス・グリシリザ(Radix Glycyrrhiza)、フルクトゥス・フォルシティアエ(Fructus Forsythiae:レンギョウ)、パナックス・クインクエフォリウム(Panax quinquefolium:アメリカニンジン)、パナックス・ジンセン・シー・エイ・マイヤー(Panax ginseng C.A.Meyer:オタネニンジン)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、イノノツス・オブリクウス(Inonotus obliquus:カバノアナタケ)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、リキウム・バルバルム(Lycium barbarum:ナガバクコ)、フェリナス・リンテウス(Phellinus linteus:メシマコブ)(子実体)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)(子実体)、シアモプシス・テトラゴノロブス(Cyamopsis tetragonolobus:クラスタマメ)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)、クラドシフォン・オカムラヌス・トキダ(Cladosiphon okamuranus Tokida:オキナワモズク)、ウンダリア・ピンナティフィダ(Undaria pinnatifida:ワカメ)、ハッカ属(Mentha)又はペパーミント抽出物、ジンジャー又はブラックジンジャー抽出物、緑茶又はブドウ種子ポリフェノール、オメガ3又はオメガ6脂肪酸、クリルオイル、γ-リノレン酸、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ濃縮物、アスタキサンチン、ピクノジェノール、レスベラトロール、アスコルビン酸、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、アミノ酸、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、メントール、カルシウム塩、シリカ、ヒスチジン、グルコン酸銅、CMC、β-シクロデキストリン、セルロース、デキストロース、生理食塩水、水、油類、UCII、サメ及びウシ軟骨、キノコ類、海藻類、酵母類、褐藻類、アガベネクター、褐海藻、発酵性食物繊維、穀類、ナマコ、アガベ、アーティチョーク、アスパラガス、リーキ、ニンニク、タマネギ、ライムギ、オオムギ穀粒、コムギ、ナシ、リンゴ、グアバ、マルメロ、プラム、セイヨウスグリ、オレンジ及び他の柑橘果樹類の1種以上から選択される少なくとも1種の他の活性成分、補助剤、賦形剤又は担体を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。
遊離B環フラボノイドとフラバンを含有する所期組成物は、少なくとも1種の他の天然フェノール性活性成分を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。ある種の実施形態において、少なくとも1種の生物活性成分は、植物粉末又は植物抽出物等を含むこと、又はそれらから構成することができる。上記免疫抑制性の天然フェノール性化合物を含有する植物種としては、限定されないが、ピペル・ロングム・リンネ(Piper longum Linn:ヒハツ)、コプティス・キネンシス・フランシェ(Coptis chinensis Franch:トウオウレン)、アンジェリカ・シネンシス・(オリバー)ディールス(Angelica sinensis(Oliv.)Diels:カラトウキ)、トキシコデンドロン・ベルニシフルウム(Toxicodendron vernicifluum:ウルシ)、グリシルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra:スペインカンゾウ)、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa:ウコン)、サルビア・ロスマリヌス(Salvia Rosmarinus:ローズマリー)、ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis:ローズマリー)、ジンジベル・オフィシナリス(Zingiber officinalis:ショウガ)、ポリガラ・テヌイフォリア(Polygala tenuifolia:イトヒメハギ)、モルス・アルバ(Morus alba:マグワ)、フムルス・ルプルス(Humulus lupulus:ホップ)、ロニセラ・ジャポニカ(Lonicera Japonica:スイカズラ)、サルビア・オフィシナリス・エル(Salvia officinalis L.:セージ)、センテラ・アジアティカ(Centella asiatica:ツボクサ)、ボスウェリア・カルテリ(Boswellia carteri)、メンタ・ロンギフォリア(Mentha longifolia:ナガバハッカ)、ピセア・クラシフォリア(Picea crassifolia)、シトラス・ノビリス・ルーレイロ(Citrus nobilis Lour)、シトラス・アランチウム・エル(Citrus aurantium L:ダイダイ)、カメリア・シネンシス・エル(Camellia sinensis L:チャノキ)、プエラリア・ミリフィカ(Pueraria mirifica)、プエラリア・ロバタ(Pueraria lobata:クズ)、グリキネ・マクス(Glycine max:ダイズ)、トウガラシ属種(Capsicum species)、ファロピア・ジャポニカ(Fallopia japonica:イタドリ)が挙げられる。種々の果樹及び野菜、例えば、トマト、アブラナ科野菜、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、マルベリー、リンゴ、トウガラシ等にも多くのフェノール性化合物を検出することができる。
前記遊離B環フラボノイドは、バイカリン、バイカレイン、バイカレイングリコシド、ウォゴニン、ウォゴニングルクロニド、ウォゴニングリコシド、オロキシリン、オロキシリングリコシド、オロキシリングルクロニド、クリシン、クリシングリコシド、クリシングルクロニド、スクテラリン及びスクテラリングリコシド、ノルウォゴニン及びノルウォゴニングリコシド、ガランギン又はその任意の組み合わせの1種以上から構成される。本願の保護対象の方法に従って使用することができる遊離B環フラボノイドとしては、上記一般構造により表される化合物が挙げられる。前記組成物中の標準化遊離B環バイオフラボノイドは、トランスジェニック微生物、P450酵素、糖転移酵素又は酵素組み合わせ、微小細菌により、小炭素単位から合成、代謝、生分解、生体内転換、生体内変換、生合成される。
1種以上の遊離B環フラボノイドは、デスモス属(Desmos)、アキロクリネ属(Achyrocline)、オロキシルム属(Oroxylum)、ブケナヴィア属(Buchenavia)、ヤマハハコ属(Anaphalis)、マメカミツレ属(Cotula)、ヒメチチコグサ属(Gnaphalium)、ヘリクリサム属(Helichrysum)、ヤグルマギク属(Centaurea)、ヒヨドリバナ属(Eupatorium)、バッカリス属(Baccharis)、シラキ属(Sapium)、タツナミソウ属(Scutellaria)、モルサ属(Molsa)、コレブルーケア属(Colebrookea)、イヌゴマ属(Stachys)、ハナハッカ属(Origanum)、ジジフォラ属(Ziziphora)、クロモジ属(Lindera)、アクチノダフネ属(Actinodaphne)、アカシア属(Acacia)、デリス属(Derris)、カンゾウ属(Glycyrrhiza)、ナツフジ属(Millettia)、クロヨナ属(Pongamia)、テフロシア属(Tephrosia)、パンノキ属(Artocarpus)、イチジク属(Ficus)、ギンシダ属(Pityrogramma)、チャイロエビガラシダ属(Notholaena)、マツ属(Pinus)、ニレ属(Ulmus)、ハナミョウガ属(Alpinia)の少なくとも1種、又はそれらの組み合わせを含む高等植物属に由来して高濃度化及び標準化されている。
1種以上の遊離B環フラボノイドは、スクテラリア・バイカレンシス(Scutellaria baicalensis:コガネバナ)、スクテラリア・バルバタ(Scutellaria barbata:セイタカナミキソウ)、スクテラリア・オルトカリクス(Scutellaria orthocalyx)、スクテラリア・ラテリフローラ(Scutellaria lateriflora:ブルースカルキャップ)、スクテラリア・ガレリクラータ(Scutellaria galericulata:マーシュスカルキャップ)、スクテラリア・ヴィスキデューラ(Scutellaria viscidula)、スクテラリア・アモエナ(Scutellaria amoena)、スクテラリア・レーデリアナ(Scutellaria rehderiana)、スクテラリア・リキアンゲンシス(Scutellaria likiangensis)、スクテラリア・ガレリクラータ(Scutellaria galericulata:マーシュスカルキャップ)、スクテラリア・インディカ(Scutellaria indica:タツナミソウ)、スクテラリア・セッシリフォリア(Scutellaria sessilifolia)、スクテラリア・ヴィスキデューラ(Scutellaria viscidula)、スクテラリア・アモエナ(Scutellaria amoena)、スクテラリア・レーデリアナ(Scutellaria rehderiana)、スクテラリア・リキアンゲンシス(Scutellaria likiangensis)、スクテラリア・オリエンタリス(Scutellaria orientalis)、オロキシルム・インディカム(Oroxylum indicum)、パッシフローラ・カエルレア(Passiflora caerulea:トケイソウ)、パッシフローラ・インカルナータ(Passiflora incarnata:チャボトケイソウ)、プレウロトゥス・オストレアトゥス(Pleurotus ostreatus:ヒラタケ)、ラクタリウス・デリシオスス(Lactarius deliciosus:アカハツタケ)、スイルス・ベリーニ(Suillus bellinii)、カモミール、ニンジン、キノコ、蜂蜜、プロポリス、パッションフラワー、及びインディアントランペットフラワーの少なくとも1種、又はそれらの組み合わせを含む植物種に由来して高濃度化及び標準化されている。
フラバンは、カテキン、エピカテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピテアフラビン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビンガレートのうちの1種以上、又は任意のそれらの組み合わせから構成される。本願の保護対象の方法に従って使用することができるフラバンとしては、上記一般構造により表される化合物が挙げられる。前記組成物中の標準化フラバンバイオフラボノイドは、トランスジェニック微生物、P450酵素、糖転移酵素又は酵素組み合わせ、微小細菌により、小炭素単位から合成、代謝、生分解、生体内転換、生体内変換、生合成される。
本願の保護対象のフラバンは、アカシア属(Acacia)植物から選択される1種以上の植物から単離される。好ましい実施形態において、前記植物は、アカキア・カテキュ(Acacia catechu:アセンヤクノキ(ブラックカテチュー))、セネガリア・カテキュ(Senegalia catechu)、アカキア・コンチナ(Acacia concinna:ソムポイ)、アカキア・ファルネシアナ(Acacia farnesiana:キンゴウカン)、アカキア・セネガル(Acacia Senegal:アラビアガム)、アカキア・スペキオーサ(Acacia speciosa)、アカキア・アラビカ(Acacia arabica:アラビアゴムモドキ)、アカキア・カエシア(Acacia caesia)、アカキア・ペナータ(Acacia pennata:チャオム)、アカキア・シヌアータ(Acacia sinuata)、アカキア・メアルンシ(Acacia mearnsii:ブラックワトル)、アカキア・ピクナンタ(Acacia picnantha:ゴールデンワトル)、アカキア・デアルバタ(Acacia dealbata:フサアカシア)、アカキア・アウリキュリフォルミス(Acacia auriculiformis:カマバアカシア)、アカキア・ホロセリケア(Acacia holoserecia:ストラップワトル)、アカキア・マンギウム(Acacia mangium)、アナカルディウム・オッキデンタレ(Anacardium occidentale:カシューナッツ殻)、ウンカリア・ガンビル(Uncaria gambir:ガンビールノキ(ホワイトカテチュー))、ウンカリア・リンコフィラ(Uncaria rhynchophylla:カギカズラ)、カメリア・シネンシス(Camellia sinensis:チャノキ)、カメリア・アッサミカ(Camellia assumica:アッサムチャ)、エウテルペ・オレラケア(Euterpe oleracea:アサイー)、カエサルピニア・デカペタラ(Caesalpinia decapetala:ジャケツイバラ)、デロニクス・レジア(Delonix regia:ホウオウボク)、ギンコ・ビローバ(Ginkgo biloba:イチョウ)、アケル・ルブルム(Acer rubrum:アメリカハナノキ)、ココス・ヌキフェラ(Cocos nucifera:ココヤシ)、リモニウム・ブラシリエンセ(Limonium Brasiliense)、アセロラバガス、ヴィテラリア・パラドクサ(Vitellaria paradoxa:シアーバターノキ)、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera:ヨーロッパブドウ)、ローソニア・イネルミス(Lawsonia inermis:ヘンナ)、アルトカルプス・ヘテロフィルス(Artocarpus heterophyllus:パラミツ)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa:ムラサキウマゴヤシ)、ロツス・ジャポニクス(Lotus japonicus:ミヤコグサ)、ロツス・ウリギノスス(Lotus uliginosus:ネビキミヤコグサ)、エイセニア・ビシクリス(Eisenia bicyclis:アラメ)、ヘディサルム・スルフレセンス(Hedysarum sulfurescens)、ロビニア・シュードアカキア(Robinia pseudoacacia:ニセアカシア)、リンゴ、アンズ、プルーン、サクランボ、ブドウの葉、イチゴ、マメ類、レモン、チャ、紅茶、緑茶、ルイボス茶、オオムギ穀粒、緑藻類(カサノリ:Acetabularia ryukyuensis)、紅藻類(Chondrococcus hornemannii)、チョコレート(ココア)、生コーヒー豆から構成される群、又はそれらの組み合わせを含み、実施形態によってはこれらから選択される。
ある種の実施形態において、本開示の遊離B環フラボノイド又はフラバン化合物又は抽出物は、植物又は海洋資源、例えば、実施例及び本願の他の随所で言及する植物資源から単離することができる。前記化合物の単離に適した植物部分としては、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、果実、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、幹細胞又はその任意の組み合わせが挙げられる。ある種の関連する実施形態において、前記化合物又は抽出物は植物資源から単離され、明記した置換基のいずれかを含むように合成的に修飾される。この点に関して、植物から単離された化合物の合成的修飾は、当技術分野で公知の多数の技術を使用して実施することができ、限定されないが、トランスジェニック微生物、P450酵素、糖転移酵素又は酵素組み合わせ、微小細菌により、小炭素単位から全有機合成、代謝、生分解、生体内転換、生体内変換、生合成される、このような技術は、当技術分野における通常の知識を有する者の知識の範囲内に十分に含まれる。
本願の保護対象の他の実施形態は、遊離B環フラボノイドとフラバンを含有し、2~3種の植物抽出物を種々に組み合わせて宿主防御機構の恒常性を調節するための標準化バイオフラボノイド組成物(限定されないが、例えば、本開示の実施例で例証するUP446又はUP894-II)の使用方法に関し、限定されないが、免疫応答を最適化する方法又はそのバランスをとる方法;ウイルス感染及び細菌感染に対して健全な免疫機能を維持するのを助ける方法;大気汚染により誘発される酸化ストレス損傷から免疫系を保護する方法;ウイルス感染、細菌感染及び大気汚染から正常かつ健全な肺機能を保護する方法;健全な炎症応答を支援する方法;感染に対するサイトカイン及びサイトカイン応答の健全なレベルを維持する方法;TNF-α、IL-1β、IL-6、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、IL-1α、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL17A、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-27、IL-31、TNF-β/LTA、CRP、及びCINC3等の抗炎症性サイトカインを増加及び維持する方法;酸化応答を制御し、酸化ストレスを緩和する方法;SOD及びNRf2を増加することにより抗酸化能を増強する方法;終末糖化産物を低減する方法;グルタチオンペルオキシダーゼを増加する方法;活性酸素種を中和し、酸化ストレスに起因する呼吸器、肺及び免疫系の構造完全性の毀損及び機能低下を予防する方法;肺浄化及び解毒能を維持する方法;肺構造完全性及び酸素交換能を保護する方法;呼吸器通過を維持し、肺胞の酸素吸収能を強化する方法;酸化ストレスに起因する肺損傷を軽減する方法;肺の微小循環を促進し、正常な凝固機能を保護する方法;白血球の活性及び数を増加する方法;ナチュラルキラー(NK)細胞機能を強化する方法;Tリンパ球及びBリンパ球の数を増加する方法;CD4+及びCD8+細胞数を増加する方法;CD3+、CD4+NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、CD4+TCRγδ+ガンマデルタT細胞及びCD8+細胞数を増加する方法;マクロファージ貪食活性を保護及び促進する方法;正常な抗体産生を支援又は促進する方法;呼吸器における健全な肺微生物叢又は共生システムを維持する方法;限定されないが、身体の痛み、咽喉痛、咳、軽微な咽喉及び気管支刺激、鼻閉、副鼻腔うっ血、副鼻腔圧迫感、鼻水、くしゃみ、嗅覚低下、味覚低下、筋肉痛、頭痛、発熱及び悪寒を含む感冒/インフルエンザ様症状を緩和又は軽減する方法;痰(粘液)を緩くし、気管支分泌物を薄めて咳をし易くする方法;気管支刺激の重症度を軽減する方法;ウイルス感染、微生物感染及び大気汚染に起因する肺損傷又は浮腫又は炎症性細胞浸潤の重症度を軽減する方法;感冒/インフルエンザ又は汚染シーズンを通して気管支系及び快適な呼吸を支援する方法;肺線維症を予防又は治療する方法;普通感冒/インフルエンザの持続期間又は重症度を軽減する方法;呼吸器系のウイルス感染及び細菌感染の重症度又は持続期間を軽減する方法;ウイルス、微生物及び大気汚染物質に起因する呼吸器感染症を予防又は治療又は治癒治療する方法;呼吸器感染症の進行を管理又は治療又は予防又は逆転する方法;肺及び呼吸器系全体の修復及び再生機能を促進及び増強及び若返らせる方法等を含む。
[実施例1]植物からの遊離B環フラボノイドの調製と定量
スクテラリア・オルトカリクス(Scutellaria orthocalyx)根、又はスクテラリア・バイカレンシス(Scutellaria baicalensis:コガネバナ)根又はスクテラリア・ラテリフローラ(Scutellaria lateriflora:ブルースカルキャップ)全草に由来する植物材料を2mm以下の粒度まで粉砕した。乾燥粉砕した植物材料(60g)を次に三角フラスコに移し、メタノール:ジクロロメタン(1:1)(600mL)を加えた。混合物を1時間振盪し、濾過し、バイオマスを再びメタノール:ジクロロメタン(1:1)(600mL)で抽出した。有機抽出物を合一し、減圧蒸発させ、有機抽出物を得た(下表1参照)。有機抽出後、バイオマスを風乾し、超純水(600mL)で1回抽出した。水溶液を濾過し、凍結乾燥し、水性抽出物を得た(下表1参照)。
Figure 2023536465000004
種々の植物種に由来する有機抽出物及び水性抽出物中の遊離B環フラボノイドの存在と量を確認し、表5に示す。Luna C-18カラム(250×4.5mm,5μm)を使用し、22分間で80%→20%の0.1%リン酸/アセトニトリルグラジエントを使用して遊離B環フラボノイドをHPLCにより定量分析した。UV検出器を使用して254nmで遊離B環フラボノイドを検出し、保持時間を遊離B環フラボノイド標準と比較することにより同定した。
Figure 2023536465000005
[実施例2]植物に由来する標準化遊離B環フラボノイド抽出物の生成
スクテラリア・バイカレンシス(Scutellaria baicalensis:コガネバナ)の根を水で洗い、小片に薄切りした。洗って薄切りした根を抽出装置に投入し、90~95℃の温度の熱水で2回抽出した。根1kgにつき、約8Lの水を加え、90~95℃で約1時間抽出する。抽出物溶液を採取後、根を再び90~95℃の水6L/kgで更に1時間抽出する。抽出物溶液を採取し、1回目の抽出物溶液と合一した。抽出物溶液を濾過した後、溶液のpHを塩酸水又は硫酸水で約2に調整した。酸性水溶液を約2時間静置した後、沈殿を濾過し、精製水で洗浄した。沈殿した抽出物を80~90℃で乾燥した。乾燥した粉末を摩砕し、ブレンドした。抽出収量は、根10~15kgから高濃度化バイオフラボノイド抽出物1キログラムであった。上記実施例1と同様にHPLC法によりバイオフラボノイドの含量を定量した処、バイカリン含量が75%以上であり、乾燥損失が5%未満であるRM405と呼ぶ標準化抽出物が生成された。80メッシュ通過率が80%となるようにRM405の粒度を制御した。鉛、ヒ素、Pb、Cd、及びHgとしての重金属の潜在的汚染をICP-MSにより分析した。USP/AOAC/KFDA要件を満たすように、大腸菌群、糸状菌、酵母の潜在的汚染と、一般生菌数も測定した。
酸性溶液で中和後に塩基性水性抽出物溶液を沈殿させる方法、又は水中で再結晶させる方法、又は種々の樹脂を担体とするカラムクロマトグラフィーにより、タツナミソウ属(Scutellaria)の根、又は茎又は全草に由来する標準化バイオフラボノイド抽出物を得ることができ、バイオフラボノイドを20%~99%の純度まで2~10倍に高濃度化することができる。
[実施例3]アセンヤクノキ(Acacia catechu)とカシューナッツ殻に由来する標準化バイオフラボノイド抽出物の生成
アセンヤクノキ(粉砕した樹皮500mg)を以下の溶媒システム、即ち、(1)100%水、(2)80:20水:メタノール、(3)60:40水:メタノール、(4)40:60水:メタノール、(5)20:80水:メタノール、(6)100%メタノール、(7)80:20メタノール:THF、(8)60:40メタノール:THFで抽出した。抽出物を濃縮し、減圧乾燥した。乾燥抽出物中のフラバン含量をHPLC法により以下のように定量し、結果を表4に示す。
乾燥粉砕したカシューナッツ(Anacardium occidentale)殻粉末(60g)を100mlステンレス鋼製チューブに入れ、ASE350自動抽出装置を80℃、圧力1500psiで使用し、70%エタノールDI水溶液を溶媒として2回抽出した。抽出物溶液を自動濾過し、採取した。有機抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで減圧蒸発させ、粗70%エタノール抽出物(R00883-70E,23.78g,抽出収率39.63%)を得た。
以下の分析方法を使用し、日立HPLC/PDAシステムでC18逆相カラム(Phenomenex,米国,Luna 5μm,250mm×4.6mm)によりアセンヤクノキ心材又はカシューナッツ殻に由来するバイオフラボノイド抽出物中の遊離カテキンの量を定量した。移動相A:0.1%リン酸水溶液、及び移動相B:アセトニトリルを流速1.0ml/分で溶出に使用し(表3)、カラム温度35℃で275nmのUV吸光度を測定した。Sigma-Aldrich社からカテキン参照標準を購入した。濃度0.5mg/mlのカテキン(C1251)と0.1mg/mlのエピカテキン(E1753)を添加したMeOH:0.1%HPO(1:1)に参照標準を溶解した。メスフラスコで50%メタノール/0.1%HPO中2mg/mlの濃度で試験試料を調製し、溶解するまで(約10分間)超音波処理した後、室温まで冷却し、十分に混合し、0.45μmナイロンシリンジフィルターで濾過した。20μL試料をHPLCに注入することによりHPLC分析を実施した。
Figure 2023536465000006
カテキンとエピカテキンを標準として使用し、保持時間とPDAデータに基づいて化学成分を定量した。アセンヤクノキ抽出物からのカテキン定量結果を表4に示す。表4に示すように、80%メタノール/水で溶媒抽出して生成したフラバン抽出物は、フラバン成分濃度が最良であった。カシューナッツ殻の70%エタノール抽出物中のバイオフラボノイド含量は、カテキン9.4%とエピカテキン6.1%である。
Figure 2023536465000007
アセンヤクノキ心材から樹皮を取り除き、水で洗い、小片に薄切りした。洗って薄切りした心材を抽出装置に投入し、約115℃の温度の熱水で2回抽出した。アセンヤクノキ1kgにつき、約4Lの水を加え、105~115℃で約5時間抽出する。抽出溶液を濾過した後、50~60℃で減圧濃縮した。濃縮した溶液を約5℃の温度に7~10日間保冷した後、沈殿を濾過し、湿潤ケーキを凍結し、約-20℃で1日間乾燥した。乾燥した粉末を粉砕し、篩別し、90℃で10時間乾燥後にブレンドした。心材に対する最終抽出物の抽出比は、アセンヤクノキ心材20kgからバイオフラボノイド抽出物約1kgであった。バイオフラボノイドの含量をHPLC法により以下のように定量した処、カテキンとエピカテキンの合計含量が65%以上であり、乾燥損失が5%未満であるRM406と呼ぶ標準化抽出物が生成された。80メッシュ通過率が80%となるようにRM406の粒度を制御した。鉛、ヒ素、Pb、Cd、及びHgとしての重金属の潜在的汚染をICP-MSにより分析した。USP/AOAC/KFDA要件を満たすように、大腸菌群、糸状菌、酵母の潜在的汚染と、一般生菌数も測定した。
植物抽出物溶液の濃縮後に沈殿させる方法、又はエタノール/水溶媒中で再結晶させる方法、又は種々の樹脂を担体とするカラムクロマトグラフィーにより、アセンヤクノキ若しくはガンビールノキ(Uncaria gambir)の心材若しくは樹皮若しくは全草又はカシューナッツ殻に由来する標準化バイオフラボノイド抽出物を得ることができ、バイオフラボノイドを10%~99%の純度まで2~10倍に高濃度化することができる。
[実施例4]標準化バイオフラボノイド組成物の製剤化
カテキンとエピカテキンとしての総フラバン含量が>65%であるアカシア属(Acacia)抽出物(実施例3のRM406)と、バイカリン、バイカレイン等としての遊離B環フラボノイド含量が>75%であるタツナミソウ属(Scutellaria)抽出物(実施例2のRM405)の2種類の標準化抽出物と、賦形剤としてマルトデキストリンの3成分を使用し、UP446と呼ぶバイオフラボノイド組成物を製剤化した。フラバンと遊離B環フラボノイドの比は、適応症と機能性に基づいて調整することができる。賦形剤の量は、各成分中の実際の有効成分含量に基づいて調整する。製剤仕様と成分の各バッチのQCに基づいて、製剤の各バッチのブレンド表を作成する必要がある。製剤仕様に合わせて2~5%の範囲の過剰量の有効成分が推奨される。遊離B環フラボノイド抽出物:フラバン抽出物:マルトデキストリンのブレンド比を80:17:3としたUP446(ロット番号G1702)の1バッチのブレンド表を以下に示す。
Figure 2023536465000008
カテキンとエピカテキンとしての総フラバン含量が>65%であるアカシア属心材抽出物に由来する標準化抽出物と、バイカリン、バイカレイン等としての遊離B環フラボノイド含量が>75%であるタツナミソウ属茎抽出物に由来する標準化抽出物を使用し、UP223と呼ぶバイオフラボノイド組成物を製剤化した。遊離B環フラボノイド抽出物:フラバン抽出物のブレンド比は90:10とする。
カテキンとエピカテキンとしての総フラバン含量が>90%であるアカシア属心材抽出物に由来する標準化抽出物と、バイカリン、バイカレイン等としての遊離B環フラボノイド含量が>90%であるタツナミソウ属根抽出物に由来する標準化抽出物を使用し、UP894-IIと呼ぶバイオフラボノイド組成物を製剤化した。遊離B環フラボノイド抽出物:フラバン抽出物のブレンド比は4:1とし、バイカリン含量は70~80%とし、総カテキンは15~20%とする(表6)。
Figure 2023536465000009
[実施例5]MTTアッセイを使用し、UP894-IIの存在下で24時間高酸素曝露条件下の細胞生存率を測定した。
実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP894-II(0~256μg/ml)、又はその溶媒の存在下で24時間、RAW264.7細胞を室内気(21%酸素O)に維持するか、又は95%Oに曝露した。製造業者によって記載されているようにMTTアッセイにより細胞生存率を測定した。
播種時の読み取り値としたT0対照に比較すると、T24室内気対照群では有意に多い生存細胞が認められた。室内気対照群に比較すると、O対照群(95%O)の細胞生存率は有意に低下した。溶媒であるDMSOを0.16%と0.32%の濃度で投与した場合には、O下の細胞生存率に影響はなかった。酸化ストレスにより低下したマクロファージ機能を製剤UP894-IIが改善できるか否かを調べるために、先ず、正常培養条件下又は高酸素条件下で細胞生存率に対するこの製剤の用量曲線を作成した。添付のグラフ(図4)は、3回の独立した実験の代表的な結果である。128μg/ml未満の用量のUP894-IIでは、DMSO対照群に比較して細胞生存率が有意に変化しなかった。そこで、128μg/ml未満の用量でマクロファージ機能を強化する効果についてUP894-IIを試験した。
[実施例6]UP894-IIは、マクロファージの貪食活性を亢進した。
実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP894-II(0~100μg/ml)の存在下で24時間、RAW264.7細胞を室内気(21%O)に維持するか、又は95%Oに曝露した。次に細胞をFITC標識ラテックスミニビーズと共に1時間インキュベートし、ファロイジンとDAPIで染色し、夫々アクチン細胞骨格と核を可視化した。貪食活性の定量では、少なくとも各群200個の細胞を計数し、細胞1個当たりのビーズ数を21%O(0μg/ml)対照群に対する百分率として表した。UP894-IIを3.7μg/ml、11.1μg/ml、33.3μg/ml及び100μg/mlで試験した。これらの用量は細胞生存率アッセイに基づいて決定した。
図5に示すように、種々の濃度のUP894-II又は溶媒単独の存在下で培養マクロファージを高酸素に24時間曝露した。画像から明らかなように、高酸素曝露によりマクロファージ貪食活性は著しく低下した。UP894-IIは、3.7μg/mlという低用量でもマクロファージ機能を著しく強化した。これらの結果は、UP894-IIが酸化ストレス下で肺機能を強化するための良好な候補となり得ることを示唆している。
[実施例7]UP894-IIは、マクロファージにおける高酸素誘発HMGB1放出を抑制する。
実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP894-II(0~33.3μg/ml)の存在下で24時間、RAW264.7細胞を室内気(21%O)に維持するか、又は95%Oに曝露した。培地中のHMGB1濃度をウェスタンブロット分析により分析した。ブロットは、各群のHMGB1濃度を表す画像であり、2レーン毎にその真下の棒グラフに対応する。
室内気対照群(21%O)に比較すると、高酸素対照群(95%O)のHMGB1放出は有意に増加した。溶媒であるDMSOでは、高酸素対照群に比較してHMGB1放出が有意に変化しなかった。これに対して、UP894-IIを投与すると、3.7μg/ml、11.1μg/ml及び33.3μg/mlで測定した場合にHMGB1濃度は、用量相関的で統計的に有意に低下した(75.9%~89.7%)(図6)。
環境大気汚染から発生する粒子は、活性酸素種(ROS)の生成により生体系に外因性酸化ストレスを与え、宿主防御低下と炎症に繋がり、肺傷害を生じることが知られている。HMGB1はROSと協働して肺傷害病理に主要な役割を果たし、肺胞マクロファージアポトーシスを生じ、部分的にNF-kBの活性化を介して肺胞マクロファージ貪食作用を抑制し、炎症性サイトカイン及びケモカインのアップレギュレーションに繋がり、サイトカインストームを惹き起こす。これらの因子が連動すると、汚染誘発肺傷害、ウイルス又は細菌感染時に肺に有害な病的変化を生じる可能性がある。この2因子の連動の実例として、実際に、COVID-19患者の治療に日常的に使用されている酸素療法中に酸化ストレスに長時間曝露されると、自然免疫が低下し、マクロファージ機能が低下し、その結果、肺に侵入する病原体を除去する能力が低下し、急性炎症性肺傷害を生じる可能性がある。このため、COVID-19患者や炎症性障害を抱える患者のように、サイトカインストームにより生じる酸化ストレスに曝露される集団は増大しつつあるが、気道内のHMGB1濃度を低下させること又はその活性を阻止することは、このような集団に重要な治療及び予防ストラテジーとなり得る。したがって、本実施例に示すデータによると、標準化バイオフラボノイド組成物であるUP894-IIは、従来報告されている重要な用途に加え、これらの明確に定義される機構によりこのような新規用途にも利用できると考えられる。本願の保護対象では、この概念を実証し、以下の実施例に記載するように、複数の疾患モデルで上記標準化組成物の効果を立証した。
[実施例8]動物及び飼育
USDAで認可されている販売業者からCD-1マウスとSprague Dawleyラットを購入した。8週齢の雄性CD-1マウスとSDラットをCharles River Laboratories,Inc.(Wilmington,MA)から購入した。到着後、動物を馴化させ、試験に使用した。動物を温度制御室(71~72°F)に入れて12時間明暗サイクルで飼育し、飼料と水を自由に摂取させた。
動物をポリプロピレンマウスケージに3~5匹ずつ収容し、尾に固有の番号を付けて個々に識別した。各ケージにマウス又はラットワイヤーバー蓋とフィルタートップ(Allentown,NJ)を被せた。プロジェクト番号、試験品名、用量レベル、群名、動物番号及び雌雄別をケージカードに記入し、個々のケージに付けて識別した。Harlan T7087ソフトトウモロコシ穂軸床材を使用し、少なくとも週2回交換した。動物に新鮮な水とHarlan社(Harlan Teklad,370W,Kent,WA)から市販されている齧歯類用チャウ飼料#T2018を自由に摂取させた。
[実施例9]リポ多糖(LPS)誘発敗血症モデル
このモデルは、動物の生存率をエンドポイント測定として使用している(Wang et al.,1999)。リポ多糖(LPS)は、グラム陰性菌の外膜の必須成分であり、エンドトキシンショックに繋がる恐れのある全身性炎症プロセスの開始における主要な寄与因子である。エンドトキシンショックは、主にマクロファージ/単球に仲介される状態であり、TNF-α、IL-1、IL-6及びγインターフェロン(IFN-γ)等の数種の初期サイトカインと、後期メディエーターであるHMGB1の過剰産生に起因する。半数致死量のLPS(25mg/kg)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Lifeline,ロット番号07641)に溶解して投与後、動物は内毒素血症を発症し、8時間で血清中にHMGB1が検出され、LPS投与から16~32時間後にピークプラトーレベルに達するであろう。無治療の場合、マウスは24時間以内に死亡し始めるであろう。本試験では、LPS注入後4日間マウスをモニターした。LPS+酪酸ナトリウム(SB;Aldrich,St.Louis,MO;ロット番号MKCG7272)、LPS+溶媒(0.5%CMC;Spectrum,New Brunswick,NJ;ロット番号1IJ0127)及びLPS+実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446について、生存率を比較した。以下の群を試験した。
Figure 2023536465000010
このモデルで、10mL/kgの量のPBSと共に25mg/kgの致死量のLPS(大腸菌055:B5由来;Sigma,St.Louis,MO;ロット番号081275)を腹腔内注入する前に、実施例4に示したバイオフラボノイド組成物であるUP446をマウスに1週間(7日間)事前投与した。動物を毎時観察した。酪酸ナトリウムは、HMGB1放出の抑制によりマウスにおけるLPS誘発損傷を改善したという事実に鑑み、この化合物を本試験の陽性対照として選択した(Li et al.,2018)。
[実施例10]標準化バイオフラボノイド組成物は、致死量の内毒素下で動物生存率を改善した。
LPSの腹腔内注入から3時間後に、マウスは内毒素血症の初期徴候を示し始めた。マウスの探索行動は累減し、起毛(立毛)、可動性低下、嗜眠、及び下痢を伴った。これらの徴候と症状は、全投与群に存在しているようであったが、重症度は溶媒投与群でより顕著であった。
溶媒投与群の2匹と、陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群の1匹は、LPS注入から24時間後に死亡していることが分かった。これらの群の生存率を求めた処、夫々62.5%と75%であることが分かった(表8)。実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446を投与したマウスは、LPS注入から24時間後の生存率が100%であった。UP446、SB及び溶媒を投与したマウスでは、LPS注入から34時間後に夫々87.5%、62.5%及び50%の生存率が認められた。LPS注入から48時間後に、UP446を投与したマウスで恐らく最も顕著な結果が認められた。この時点で、溶媒を投与したマウスの生存率は僅か12.5%であったが、UP446を投与したマウスは、75%の生存率を示した。陽性対照である酪酸ナトリウム群でも、この時点で半数が死亡していた。3日目(LPS注入から72時間後)に、UP446、SB及び溶媒の各群の生存率は、夫々62.5%、50%及び12.5%であった。溶媒対照群の全マウスは、LPS注入から82時間後に死亡しており、この群の生存率は0%であった。
他方、UP446とSBを投与したマウスは、50%の生存率を示し、LPS注入から96時間後と120時間後も変わらなかった。これらの生存率は、溶媒を投与した動物に比較してUP446(p=0.001)とSB(p=0.01)のいずれも統計的に有意であった(表8)。これらの群の生存動物は、それらの良好な健康状態の漸進的改善を示した。マウスは肉体的に良好なようであり、次第に正常な行動を再開した。
Figure 2023536465000011
[実施例11]LPS誘発敗血症モデルにおける標準化バイオフラボノイド組成物とその成分の比較
タツナミソウ属抽出物に由来する遊離B環フラボノイドとアカシア属(Acacia)抽出物に由来するフラバンを併用し、特定の比でUP894-IIとする利点については、実施例4で実証したが、この利点をリポ多糖(LPS)誘発内毒素血症で評価した。実施例3に示した60%以上のバイカリンを含有するタツナミソウ属抽出物RM405と、実施例4に示した10%以上のカテキンを含有するアカシア属抽出物RM406を、LPS注入前に7日間、夫々200mg/kgと50mg/kgの用量で雄性CD-1マウス(n=13)に投与した。8日目に、10mL/kgのPBSに溶解した25mg/kgのLPSをマウスに腹腔内(i.p.)注入した。UP894-II投与群のマウスには、250mg/kgの1日用量のUP894-IIを投与した。試験期間中、全マウスに夫々の投与物質を毎日投与し続け、LPS注入後6日目に終了した。半数致死量のLPS(25mg/kg)の腹腔内投与後、動物は数時間以内に敗血症を発症すると予想される。無治療の場合、マウスは24時間以内に死亡し始めるであろう。動物を毎時観察した。本試験では、LPS注入後6日間マウスをモニターした。
Figure 2023536465000012
LPS+酪酸ナトリウム(SB)、LPS+溶媒(0.5%CMC)、LPS+UP894-II、LPS+タツナミソウ属抽出物(RM405)及びLPS+アカシア属抽出物(RM406)について、生存率を比較した。正常対照動物にはPBS単独を腹腔内投与し、溶媒対照には溶媒0.5%CMC単独を経管投与した。酪酸ナトリウム(SB)は、HMGB1放出の抑制によりマウスにおけるLPS誘発損傷を改善したという事実に鑑み、この化合物を本試験の陽性対照として選択した(Li et al.,2018)。
組成物(UP894-II)の生存率と死亡率を同一製剤に含まれる等価用量の個々の抽出物と比較し、コルビーの式(Colby,1967)を使用して併用の潜在的な相加作用、拮抗作用又は相乗作用を調査した。これらの植物抽出物のブレンドが予想外の相乗作用を生じるためには、実測阻害値が計算値を上回ることが必要である。
LPSの腹腔内注入から数時間後に、マウスは敗血症の初期徴候を示し始めた。マウスの探索行動は累減し、起毛(立毛)、可動性低下、嗜眠、下痢、及び振戦を伴い、眼瞼閉鎖を伴うものもあった。これらの徴候と症状は、全投与群に存在していたが、重症度は溶媒投与群とアカシア属抽出物(RM406)投与群でより顕著であった。
LPS注入から24時間後に、溶媒投与群及びアカシア属抽出物(実施例4に示したRM406)投与群の4匹と、陽性対照群、SB群及びタツナミソウ属抽出物(実施例3に示したRM405)群の2匹は死亡していることが分かった。この時点におけるこれらの群の生存率を求めた処、溶媒群とアカシア属抽出物(RM406)群では69.2%であり、タツナミソウ属抽出物(RM405)群とSB群では84.6%であることが分かった(表10)。UP894-IIを投与したマウスは、LPS注入から24時間後の生存率が100%であった。LPS注入から36時間後に、UP894-II、タツナミソウ属抽出物(RM405)、溶媒、SB及びアカシア属抽出物(RM406)を投与したマウスの生存率は、夫々84.6%、61.5%、53.9%、53.9%及び53.9%であった。LPS注入から48時間後に、UP894-IIを投与したマウスで最も顕著な結果が認められ、この時点で、溶媒を投与したマウスの生存率は僅か15.4%であったが、UP894-IIを投与したマウスは69.2%の生存率を示した。タツナミソウ属抽出物(RM405)、アカシア属抽出物(RM406)及びSBを投与したマウスは、LPS注入から48時間後に夫々46.2%、38.5%及び46.2%の生存率を示した。
3日目(LPS注入から72時間後)に、投与群の生存率は、UP894-2、タツナミソウ属抽出物(RM405)、アカシア属抽出物(RM406)及びSBで夫々53.9%、30.8%、15.4%及び46.2%であった。
Figure 2023536465000013
Figure 2023536465000014
Figure 2023536465000015
溶媒を投与したマウスの生存率は、LPS注入から48時間後の時点から残りの試験期間中、15.4%のままであった。これに対して、アカシア属抽出物(RM406)を投与したマウスは、LPS注入の96時間後まで死亡し続けた。7日間の観察期間の終わりまでに、アカシア属抽出物(RM406)群の生存率は僅かに7.7%であった。他方、UP894-IIとタツナミソウ属抽出物(RM405)を投与したマウスは、LPS注入後3日目の時点から残りの観察期間中、夫々53.9%と30.8%の生存率を維持した。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群は30.8%の生存率で試験を終了した。溶媒対照に比較して生存率が統計的に有意であったのは、UP894-II群のみであった(p=0.01)。この群の生存動物は、それらの良好な健康状態の漸進的改善を示した。マウスは肉体的に良好なようであり、次第に正常な探索行動を再開した。
[実施例12]標準化バイオフラボノイド組成物では、予想外の相乗作用が認められた。
LPS誘発生存率試験を利用し、タツナミソウ属とアカシア属に由来する抽出物を特定の比で併用したときに、可能な相乗作用又は予想外の効果があるか否かをコルビー法により評価した。実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP894-IIを250mg/kgの用量でマウスに投与すると、生存率は理論的に計算した予想値よりも各分析時点で高かった(表13)。例えば、LPS注入から24時間後と144時間後の予想生存率は、夫々95.3%と36.1%であったが、UP894-IIの実測生存率は、夫々100%と53.9%であった。これらの結果は、タツナミソウ属とアカシア属に由来する遊離B環フラボノイド抽出物とフラバン抽出物の2種類の標準化抽出物を特定の比で併用すると、アカシア属抽出物又はタツナミソウ属抽出物を単独で使用するよりも、敗血症時に被験対象の生命を延長させるのに遥かに有利であることを示唆している。同じくコルビー法を使用し、これらの時点の予想死亡率についても検討した処、UP894-IIを投与したマウスの実測死亡率は推定値よりも遥かに低いことが分かり、併用療法の結果としてこれらの被験対象の生存予後が良好になることが確認された(表13)。
例えば、UP894-IIを投与したマウスの予想死亡率は、LPS注入から24時間後に41.4%であったが、実際には、ゼロであった。また、観察期間の終わりに被験対象の97.6%が死亡すると予想されたが、UP894-IIの実際の死亡率は46.2%に止まった。このように、この生存率試験では、タツナミソウ属抽出物とアカシア属抽出物を併用する利点をコルビーの式により評価した。この方法では、所定のエンドポイント測定の実測値が仮計算した予想値よりも大きいならば、2種以上のバイオフラボノイド抽出物を含む製剤は予想外の相乗作用があると推定される。
Figure 2023536465000016
LPS注入から24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後、96時間後、120時間後及び144時間後におけるタツナミソウ属抽出物(実施例3に示したRM405)(200mg/kg)及びアカシア属抽出物(実施例4に示したRM406)(50mg/kg)の生存率値と死亡率値を使用し、生存率と死亡率の計算値を求め、これらの特定時点における複合物UP894-II(250mg/kg)の生存率実測値と比較した。本試験では、タツナミソウ属抽出物(RM405)とアカシア属抽出物(RM406)の併用に予想外の相乗作用が確認された。UP894-II投与の有益な効果は、全試験時点でその成分の効果の総和を上回った。観察期間の終わり(即ち、LPS注入の7日後で上記抽出物及び組成物の経口投与の14日後)に、UP894-II投与群、タツナミソウ属抽出物(RM405)投与群及びアカシア属抽出物(RM406)投与群の生存率は、夫々53.9%、30.8%及び7.7%であり、これらの植物抽出物には、宿主をサイトカインストームから保護し、したがって、敗血症時の患者の生存率を上昇させるのに予想外の相乗作用があることを示唆している。
[実施例13]ラットのリポ多糖(LPS)誘発急性炎症性肺傷害の軽減に及ぼす標準化バイオフラボノイド組成物(UP446)の効果-試験デザイン
本試験は、実施例4に示した遊離B環フラボノイドとフラバンを含有するバイオフラボノイド組成物であるUP446を250mg/kg(高用量)と125mg/kg(低用量)で経口投与した場合に、LPS誘発急性肺傷害を緩和する直接影響を評価するようにデザインした。急性肺傷害は、肺胞上皮細胞及び毛細血管上皮細胞の損傷に起因する臨床症候群であり、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で見られるようなびまん性肺傷害を惹き起こす。本試験では、LPSによるモデル誘発前に7日間、試験物質をSprague Dawleyラットに経口投与した。8日目に、経口投与の1時間後に、0.1mL/100gのPBSに溶解したLPS10mg/kgを各ラットの気管内(i.t.)に点滴注入した。正常対照ラットには同一量のPBS単独を気管内投与した。
Figure 2023536465000017
LPSは全身応答と肺応答を誘発し、好中球やマクロファージ等の炎症性免疫細胞と、IL-1、IL-8、IL-6、MIP-2/CINC-3及びTNF-α等の炎症性サイトカインの蓄積に繋がり、HMGB1がマクロファージと単球により能動的に分泌され、又は壊死細胞から受動的に放出され、間質性肺浮腫、肺胞性肺浮腫及び上皮細胞損傷を生じることが知られている。
気管内LPS投与から24時間後に生存動物を屠殺した。剖検時に、PBS1.5mLを右肺葉に気管内注入した後、少なくとも3回静かに吸引することにより、気管支肺胞洗浄液(BAL)を採取した。回収した洗浄液をプールし、4℃にて1500rpmで10分間遠心し、サイトカイン(例えば、IL-6)と肺タンパク質濃度を測定するために使用した。この同一の右肺葉を組織ホモジナイゼーション用に各ラットから採取し、MIP-2/CINC-3活性分析に用いた。左肺葉を中性緩衝ホルマリンで固定し、公認病理医による解析用にNationwide Histologyに送り、病理組織学的評価に供した。剖検時に採取した血清を使用し、TNF-αやIL-1β等のサイトカインを測定した。10mg/kgのLPSの気管内点滴注入後に、全動物は感作後24時間生存した。急性肺感染症の病理に関与すると考えられる主要なサイトカイン及び化学誘引物質の測定と、病理組織学的解析からのデータを以下の実施例にまとめた。
[実施例14]バイオフラボノイド組成物は、血清中TNF-αの用量相関的な統計的に有意な低下を示した。
RandD Systems社製ラットTNF-α Quantikine ELISAキット(製品番号RTA00)を使用して、未希釈ラット血清中のTNF-αの存在量を以下のように測定した。TNF-α抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈血清を加えた。室温で2時間後に、血清中のTNF-αをプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したTNF-α抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、プレートに酵素基質を加えた。室温で30分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。TNF-α標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてTNF-αの濃度を計算した。
表15から明らかなように、溶媒を投与して気管内LPS感作したラットでは、血清中TNF-αの統計的に有意な上昇が認められた。実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446をラットに投与すると、この上昇は有意に低下した。250mg/kgと125mg/kgのUP446を経口投与したラットでは、統計的に有意な用量相関的な低下が認められた。血清中TNF-α濃度のこれらの低下を溶媒対照に対して計算した処、250mg/kgと125mg/kgのUP446投与群で夫々90.7%と69.8%であることが分かった。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)は、血清中TNF-α濃度の統計的に有意な(67.9%)低下を示した。
Figure 2023536465000018
[実施例15]標準化バイオフラボノイド組成物は、血清中IL-1βの用量相関的な統計的に有意な低下を示した。
RandD Systems社製ラットIL-1β Quantikine ELISAキット(製品番号RLB00)を使用して、未希釈ラット血清中のIL-1βの存在量を以下のように測定した。IL-1β抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈血清を加えた。室温で2時間後に、血清中のIL-1βをプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したIL-1β抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、プレートに酵素基質を加えた。室温で30分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。IL-1β標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてIL-1βの濃度を計算した。
この場合も、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446を投与したラットでは、IL-1βの用量相関的な統計的に有意な低下が認められた。溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットでは、血清中IL-1β濃度の統計的に有意な上昇が認められた。UP446を投与したラットは、夫々250mg/kgと125mg/kgを経口投与した場合に、IL-1β濃度の81.2%と61.8%の低下を示した(表16)。酪酸ナトリウム(SB)群は、血清中IL-1β濃度の65.3%の低下を示した。これらの低下は、UP446群と酪酸ナトリウム(SB)群のいずれも統計的に有意であった。
Figure 2023536465000019
[実施例16]標準化バイオフラボノイド組成物は、気管支肺胞洗浄液(BAL)中のIL-6濃度の用量相関的な統計的に有意な低下を示した。
RandD Systems社製ラットIL-6 Quantikine ELISAキット(製品番号R6000B)を使用して、未希釈ラット気管支肺胞洗浄液(BAL)中のIL-6の存在量を以下のように測定した。IL-6抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈BALを加えた。室温で2時間後に、BAL中のIL-6をプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したIL-6抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、プレートに酵素基質を加えた。室温で30分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。IL-6標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてIL-6の濃度を計算した。
上記TNF-αとIL-1βのデータに一致し、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446は、BAL中IL-6濃度の用量相関的な統計的に有意な低下を示した。高用量(250mg/kg)のUP446では、BAL中IL-6濃度は74.6%低下し、低用量のバイオフラボノイド組成物では、BAL中IL-6濃度の低下は58.3%であった(表17)。前記低下は、高用量と低用量のどちらのUP446でも、溶媒を投与した急性肺傷害ラットに比較して統計的に有意であった。酪酸ナトリウム(SB)群は、溶媒を投与した疾患モデルに比較してBAL中IL-6の統計的に有意でない37.7%の低下を示した。
Figure 2023536465000020
[実施例17]標準化バイオフラボノイド組成物を投与すると、CINC-3の統計的に有意な低下を生じた。
CINC-3/マクロファージ炎症性タンパク質2(MIP-2)は、ケモカインと呼ばれる走化性サイトカインのファミリーに属する。MIP-2は、CXCケモカインファミリーに属し、CXCL2と呼ばれ、CXCR1とCXCR2の結合により作用する。主にマクロファージ、単球及び上皮細胞により産生され、炎症源への走化性と好中球の活性化を担う。
モノクローナルCINC-3抗体をコーティングした96ウェルマイクロプレートのウェルに、各ラット肺ホモジネート試料(溶媒、酪酸ナトリウム(SB)、低用量UP446、高用量UP446群では各群10個、対照群では7個)50μLと、アッセイ希釈剤バッファー50μLを加え、2時間結合させた。プレートを5回洗浄した後、酵素標識したポリクローナルCINC-3を加え、2時間結合させた。ウェルを更に5回洗浄した後、基質溶液をウェルに加え、酵素反応を開始させ、遮光下に室温で30分間反応させた。酵素反応は青色色素を生じ、停止溶液を加えると、黄色に変化した。各ウェルの450nmの吸光度を読み取り(580nmで補正)、各ラット肺ホモジネート試料中のCINC-3の量を概算するためにCINC-3の標準曲線と比較した。
250mg/kgのUP446を1週間毎日経口投与すると、LPS誘発急性肺傷害におけるサイトカイン誘発好中球化学誘引物質-3(CINC-3)の統計的に有意な低下を生じた(表18)。PBS単独を気管内投与した正常対照ラットにおけるCINC-3の濃度はほぼゼロであった。これに対して、溶媒を投与した気管内LPS誘発急性肺傷害ラットは、肺ホモジネート中の平均CINC-3濃度が563.7±172.9pg/mLであった。250mg/kgのUP446を投与したラットでは、この濃度は平均値360.8±110.7pg/mLまで低下した。250mg/kgのUP446を投与したラットにおけるCINC-3濃度のこの36%の低下は、溶媒を投与した疾患モデルに比較して統計的に有意であった。低用量UP446群と酪酸ナトリウム(SB)群は、溶媒を投与したラットに比較して肺ホモジネート中のCINC-3濃度の低下がごく僅かであり、10.5%と17.7%に止まった。
Figure 2023536465000021
[実施例18]標準化バイオフラボノイド組成物は、気管支肺胞洗浄液(BAL)中の総タンパク質を低下させた。
ThermoFisher Scientific社製Pierce BCAタンパク質アッセイキット(製品番号23225)を使用して、気管支肺胞洗浄液(BAL)中の総タンパク量を以下のように測定した。BALを5倍に希釈し、マイクロプレートでビシンコニン酸(BCA)試薬と混合し、37℃で30分間インキュベートした。580nmの吸光度を読み取り、ウシ血清アルブミン標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてBAL中のタンパク質濃度を計算した。
溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットでは、BALからの肺総タンパク質濃度が正常対照ラットに比較して3倍上昇していることが分かった。250mg/kg及び125mg/kgのUP446をラットに1週間毎日経口投与すると、BAL中総タンパク質含量は、溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットに比較して夫々45.1%(溶媒に対してp=0.06)と36.6%(p=0.21)低下した(表19)。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群は、溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットに比較してBAL中総タンパク質濃度が30.2%(p=0.27)低下した。
Figure 2023536465000022
[実施例19]標準化バイオフラボノイド組成物は、気管支肺胞洗浄液(BAL)中のCRPの統計的に有意な低下を示した。
Abcam社製C反応性タンパク質(PTX1)ラットELISAキット(製品番号ab108827)を使用して、ラットBALの1,000倍希釈液中のCRPの存在量を以下のように測定した。CRP抗体をコーティングしたマイクロプレートにBALの1,000倍希釈液を加えた。プレートシェーカーに載せて室温で2時間後に、BAL中のCRPをプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。ビオチン化C反応性タンパク質抗体をプレートに加え、プレートシェーカーに載せて室温で1時間結合させた。洗浄を繰り返し、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼコンジュゲートをプレートに加えた。室温で30分間インキュベーション後、洗浄を繰り返し、色原性基質を加えた。室温で10分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。CRP標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてCRPの濃度を計算した。
溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットでは、正常対照ラットに比較してBAL中CRP濃度の統計的に有意な5.6倍の上昇が認められた。実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446を250mg/kgの用量でラットに1週間経口投与すると、BAL中CRP濃度は、溶媒を投与した疾患モデルに比較して42.4%低下した(表20)。この低下は統計的に有意であった(p≦0.05)。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群と低用量UP446群は、溶媒を投与した疾患ラットに比較して統計的に有意ではない若干のCRP濃度の低下を生じた。
Figure 2023536465000023
[実施例20]標準化バイオフラボノイド組成物は、気管支肺胞洗浄液(BAL)中のIL-10の統計的に有意な低下を示した。
RandD Systems社製ラットIL-10 Quantikine ELISAキット(製品番号R1000)を使用して、未希釈BAL中のIL-10の存在量を以下のように測定した。IL-10抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈BALを加えた。室温で2時間後に、血清中のIL-10をプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したIL-10抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、プレートに酵素基質を加えた。室温で30分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。IL-10標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてIL-10の濃度を計算した。
誘発前の7日間、UP446を250mg/kgと125mg/kgの用量で毎日経口投与後、LPSの気管内点滴注入から24時間後に屠殺した疾患ラットのBAL中の抗炎症性IL-10の濃度を測定した。IL-10濃度は、感染又は傷害時に宿主に必要な感染及び炎症応答の重症度に対応することが多い。表21から明らかなように、溶媒を投与したラットでは、IL-10の濃度が正常対照ラットに比較して80倍と有意に上昇していることが分かり、急性肺傷害の重症度が高いと判断された。これに対して、UP446群のラットは、BAL中IL-10の用量相関的な低下を示した。これらの低下率を計算した処、夫々250mg/kgと125mg/kgのUP446で、73.6%と49.2%であった。高用量(250mg/kg)のUP446では、低下率は統計的に有意であり、p≦0.05であった。少なくともこの特定のモデルでは、疾患重症度の軽減により宿主の炎症応答を弱め、したがって、恐らくHMGB1分泌を介する上流機構による炎症を弱める効果があり得るという事実により、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446の結果として抗炎症性サイトカインが低下したと説明することができる。この仮説の裏付けとして、UP446は、IL-1β、IL-6及びTNF-α等の炎症性サイトカインを統計的に有意に低下させ、炎症応答の有意低下に繋がり、IL-10等の抗炎症性サイトカインの必要性が宿主にさほど重要でなくなっている。実際に、正常対照群のIL-10濃度はほぼゼロであり、抗炎症性サイトカインの誘導が急性肺傷害の存在又は重症度に基づくことを示唆している。遊離B環フラボノイドとフラバンの組成物によるIL-10の有意低下により、宿主防御機構の確立が実証された。
Figure 2023536465000024
[実施例21]標準化バイオフラボノイド組成物は、肺損傷の総合重症度を低下させた。
H&E染色肺組織を使用し、気管内LPSの結果としての肺損傷の重症度を評価した。左肺葉を病理組織学的解析に使用した。表22と図7から明らかなように、溶媒投与群のラットは、気管内LPSに起因する肺損傷重症度(3.5倍上昇)、肺浮腫(2.5倍上昇)及び多形核(PMN)白血球の浸潤(2.4倍上昇)の統計的に有意な上昇を示した。250mg/kgの高用量UP446をラットに1週間毎日経口投与すると、溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットに比較して肺損傷の総合重症度の統計的に有意な20.8%の低下を生じた。同様に、高用量のUP446では、溶媒を投与したラットに比較して肺浮腫の低下の強い傾向(23.3%低下、p=0.08)が認められた。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群と、低用量UP446群は、溶媒を投与した疾患ラットに比較して病理組織学的評価の僅かな変化を生じた。
Figure 2023536465000025
[実施例22]内因性及び外因性攻撃トリガー応答としてのD-ガラクトース誘発免疫老化モデル
D-ガラクトースの全身投与は、免疫細胞老化の加速を誘発し、加齢マウスと同様に感作時の免疫応答に影響を与える。これらの現象は、高齢者の免疫応答プロファイルに似ていると推定される。実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物である新規保護対象UP446をこの実験的加齢マウスモデルで試験し、その免疫刺激効果を実証した。実験用CD-1マウス(12週齢)を購入し、2週間馴化後に加齢加速試験に使用した。マウスを免疫群4群と、非免疫群4群にランダムに割り当てた。免疫群は、G1=正常対照+溶媒(0.5%CMC)、G2=D-ガラクトース+溶媒、G3=D-ガラクトース+200mg/kgUP446及びG4=D-ガラクトース+100mg/kgUP446とした。非免疫投与群は、G1=正常対照+溶媒(0.5%CMC)、G2=D-ガラクトース+溶媒、G3=D-ガラクトース+200mg/kgUP446及びG4=D-ガラクトース+100mg/kgUP446とした。各投与群に10匹ずつ割り当てた。
マウスにD-ガラクトース500mg/kgを10週間毎日皮下注射し、加齢を誘発させた。誘発から4週間後に、免疫群と非免疫群の両方に0.5%CMCに懸濁した2種類の用量(低用量100mg/kgと高用量200mg/kg)のUP446の経口投与を開始した。8週目に、非免疫群のマウスを除く各マウスに、GSK社製Fluarix4価IM(2020~2021年シーズンインフルエンザワクチン)3μgを注射した。このワクチンは、0.5mLのヒト1回投与量当たり60μgのヘマグルチニン(HA)を含有していた。このワクチンは、単回免疫用に(H1N1、H3N2、B-ビクトリア系統及びB-山形系統等の)4種類のインフルエンザ株各15μgを含有するように製剤化されている。
2種類の用量のUP446を5週目から10週目まで6週間毎日経口経管投与した。剖検時(即ち、免疫から14日後)に、全血(1mL)を採取し、フローサイトメトリー免疫パネル用に110μLを分取し(氷上で保冷してFlow Contract Site Laboratory,Bothell,WAに輸送し)、残りの血液から抗体ELISAと酵素アッセイ(Unigen,Tacoma WA)用に血清を分離し(血清収量約400μL)、60μLをサイトカイン分析用にチューブ2本に入れ、(Fedexにより終夜かけてSirona DX,Portland,ORに)輸送した。各動物の胸腺と脾臓の重量を測定し、胸腺指数と脾臓指数を求めた。各群から胸腺と脾臓の代表的な画像を撮影した。剖検時に脾臓をドライアイスで保冷し、将来の使用に備えて-80℃に移した。パラホルムアルデヒドとスクロースで固定した胸腺を、老化関連β-ガラクトシダーゼ染色・分析のためにNationwide histologyに送った。
[実施例23]UP446は、胸腺指数の統計的に有意な上昇を生じた。
D-ガラクトースをマウスに繰り返し皮下投与すると、正常な加齢過程で生じる変化に似た免疫応答不良を生じる。胸腺は、D-galへの慢性曝露により影響を受ける最も重要な免疫器官の一つである。胸腺指数は、生体の免疫機能の強さの良好な指標である。胸腺指数が高いほど、非特異的免疫応答が正常で強い。免疫マウスでは、溶媒を投与したD-galマウスが正常対照マウスに比較して胸腺指数の有意な低下(30.3%)を示した。胸腺指数のこの低下は、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446を2種類の用量で投与することにより逆転した。200mg/kgと100mg/kgのUP446を経口投与したマウスは、溶媒を投与したD-gal群に比較して夫々47.4%と49.4%の胸腺指数の上昇を示した。この逆転は、どちらの用量のUP446でも、溶媒を投与したD-galマウスに比較して統計的に有意であった。同様に、200mg/kgと100mg/kgのUP446を投与した非免疫マウスも、胸腺指数の統計的に有意な上昇を示した。これらの上昇は、溶媒を投与したD-galマウスに比較して夫々27.4%と31.6%であることが分かった。本試験では、免疫状態に関係なく、UP446補充は、マウスをD-ガラクトースの注入による年齢関連胸腺退縮から保護することが確認された。
Figure 2023536465000026
[実施例24]バイオフラボノイド組成物は、補体C3を上昇させた。
試験の終わりに血清を採取し、補体系のC3成分等の液性免疫のマーカーについて評価した。表24から明らかなように、免疫正常対照群の補体C3は非免疫対照群に比較して有意に低下していた。免疫D-Gal+UP446群は、どちらも補体C3が免疫対照群よりも有意に高かった。非免疫D-Gal+UP446投与群では、非免疫D-Gal群に比較して補体C3が上昇する傾向があり、D-Gal+200mg/kgUP446(実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物)を投与した免疫群は、免疫D-Gal群に比較して補体C3が有意に上昇しており、ワクチン接種に応答性の免疫老化動物でUP446により液性免疫が強化されたことが実証された。
Figure 2023536465000027
[実施例25]全血中のCD3+T細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
CD3+CD45+細胞はT細胞集団である。全白血球(CD45+細胞)に対する百分率として表した場合、200mg/kgUP446+D-Galを投与した非免疫動物は、循環T細胞の百分率がD-gal群よりも高くなる傾向があることが分かり、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446は、非免疫動物におけるCD3+T細胞増大又は分化を亢進したと判断された。
Figure 2023536465000028
[実施例26]全血中のCD4+ヘルパーT細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
CD45+CD3+CD4+細胞はヘルパーT細胞であり、抗原提示細胞上の抗原を認識し、細胞分裂とサイトカイン分泌により応答する細胞である。全白血球(CD45+細胞)に対する百分率として表した場合、D-Galを投与した免疫動物は、インフルエンザワクチン接種から2週間後に、循環ヘルパーT細胞の百分率が対照群よりも有意に低いことが分かった。免疫D-Gal群と免疫D-Gal+UP446(200mg/kg)群も、CD4+ヘルパーT細胞が非免疫群に比較して有意に低かった。
Figure 2023536465000029
[実施例27]全血中のCD8+細胞傷害性T細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
CD45+CD3+CD8+細胞は細胞傷害性T細胞であり、病原体に対して細胞分裂とアポトーシス促進酵素の分泌により応答し、感染細胞を殺傷する細胞である。全白血球(CD45+細胞)に対する百分率として表した場合、D-Gal+UP446(200mg/kg)を投与した非免疫動物は、非免疫対照群と非免疫D-gal群の両者に比較してCD8+細胞傷害性T細胞が有意に上昇した。免疫D-Gal+UP446(200mg/kg)群は、細胞傷害性T細胞数が非免疫D-Gal+UP446(200mg/kg)群よりも有意に低かった。
Figure 2023536465000030
[実施例28]全血中のナチュラルキラー細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
マウスCD49b及びNKp46の2種類の異なるナチュラルキラー細胞マーカーを利用し、白血球集団におけるナチュラルキラー細胞の百分率を求めた。ナチュラルキラー細胞は、自然免疫系に関与している。活性化されると、サイトカインと顆粒を分泌し、免疫細胞を動員し、病原体に感染した細胞に細胞死を直接もたらすので、病原体に対する即時型免疫応答に重要であり、全身感染症の初期に活性である。CD49bは、大半のナチュラルキラー細胞と、ナチュラルキラーT(NKT)細胞であると思われるT細胞のサブセットに特異的に存在するインテグリンである。NKp46は、ナチュラルキラー細胞に排他的に存在し、NKT細胞を指示しない天然細胞傷害性受容体である。NKは一般にCD45+CD3-CD49b+NKp46+であるが、NKT細胞とNK様T細胞もCD3を発現するため、除外される(Goh W)(Narni-Mancinelli E)。全白血球(CD45+細胞)に対する百分率として表した場合、インフルエンザワクチン接種から2週間後に、免疫D-Gal群は、CD3-CD49b+NK細胞が免疫対照群とUP446投与群のいずれよりも有意に低かった(表28)。このことから、D-GalはNK細胞集団を減らし、自然免疫系が病原体と反応する能力を低下させるが、この作用は、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446により逆転されると判断された。
CD3-NKp46+集団に注目すると、D-Gal+UP446(100mg/kg)を投与した非免疫動物は、ナチュラルキラー細胞の百分率が非免疫D-gal群よりも有意に高く、免疫D-Gal+UP446(200mg/kg)群は、CD3-NKp46+細胞の百分率が免疫D-Gal群よりも有意に高かった(表29)。免疫D-Gal+UP446(200mg/kg)群は更に、非免疫D-Gal+UP446(200mg/kg)群よりもNK細胞が有意に高かった。
これらの結果から、一般に、D-Gal+UP446を投与すると、非免疫動物と免疫動物のどちらでもD-Gal単独投与に比較してナチュラルキラー細胞集団が増加すると判断された。したがって、UP446は、即時型自然免疫応答に関与する細胞集団を増加することにより、免疫系を病原体に対してプライミングするのを助けると判断される。
Figure 2023536465000031
Figure 2023536465000032
[実施例29]全血中のTCRγδ+ガンマデルタT細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
血液1μL当たりのCD4+TCRγδ+細胞の総数としてCD4+ガンマデルタT細胞集団を表した場合、非免疫D-Gal+UP446(200mg/kg)における細胞数は非免疫D-Gal群に比較して有意に高かった。D-Gal+UP446(200mg/kg)群におけるCD4+TCRγδ+細胞の増加は、免疫レディネス又はプライミングの亢進を示すものであると思われる。
Figure 2023536465000033
[実施例30]血清中サイトカインGM-CSF及びIl-12p70に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
インフルエンザワクチン接種から2週間後に免疫マウスから採取した血清をLuminex技術によるサイトカインプロファイリングのために輸送した。IL-12p70及びGM-CSFサイトカインは、各群全10本とも検出可能な濃度だった。D-Gal+UP446(100mg/kg)群におけるGM-CSFの低下は、D-Gal群と比較して有意に達しなかった(p=0.058)が、D-Gal+UP446(200mg/kg)群におけるIL-12p70の低下は、正常対照群と比較して統計的有意(p=0.010)に達し、D-Gal群とD-Gal+UP446(200mg/kg)群とでは差がなかったが、これは恐らくD-Gal群内の変動によるものと思われる。
Figure 2023536465000034
[実施例31]終末糖化産物(AGE)に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
D-galが加齢表現型を生じる機序は、フリーラジカル、特に終末糖化産物の生成を介する。そこで、抗酸化酵素濃度とフリーラジカル濃度を測定し、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446がマウスモデルのこの側面に影響を与えるか否かを調べようと試みた(Azman KF)。
非免疫血清試料と免疫血清試料中の終末糖化産物(AGE)を測定した。非免疫D-Gal+UP446群は、AGEが非免疫D-Gal群よりも有意に低いことが分かり、UP446を投与すると、正常な生理条件下で活性酸素種が減少すると判断された。
Figure 2023536465000035
[実施例32]グルタチオンペルオキシダーゼに及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
グルタチオンペルオキシダーゼは、酸素ラジカルを中和し、細胞構造、タンパク質、及び核酸の酸化損傷を防ぐ。活性酸素種は免疫シグナル伝達のセカンドメッセンジャーとして使用される(Ighodaro OM)。抗酸化酵素の発現亢進は、過剰の活性酸素種を中和する能力の指標である。
免疫マウス血清試料中のグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)の活性を測定した。免疫D-gal+UP446群は、どちらの濃度でも免疫D-gal群に比較してグルタチオンペルオキシダーゼ活性が有意に高いことが分かった。したがって、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446を投与後に、活性酸素種を中和する能力が増強されたと判断された。
Figure 2023536465000036
[実施例33]NFκBのタンパク質発現に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
200mg/kgのUP44を投与した非免疫群のマウスでは、NFκBの発現の統計的に有意な抑制が認められた。NFκBは、免疫細胞の活性化に関与する転写因子である。通常ではタンパク質間相互作用により不活性化されているが、宿主防御応答が活発になると、安定化され、核内に移行し、アップレギュレートされる。脾臓ホモジネートをSDS-PAGEで泳動させ、転写し、上記タンパク質をブロットした。バンド強度をデンシトメトリーにより測定し、着目タンパク質毎にβ-アクチンローディングコントロールに正規化した。各着目タンパク質の半定量を各群で比較した処、非免疫200mg/kgUP446+D-Gal群は、NFκB濃度がD-Gal単独群よりも有意に低いことが分かった。インフルエンザワクチン免疫群では、バイオフラボノイド組成物UP446+D-Gal群は、NFκBタンパク質の発現が正常対照群よりも有意に高く、宿主防御機構が誘導されたと判断された。
Figure 2023536465000037
[実施例34]HMGB1のタンパク質発現に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
細胞外HMGB1は、免疫応答の増強に関与するアラーミンタンパク質であり、核から分泌され、細胞質を経て循環へと至る。脾臓ホモジネートをSDS-PAGEで泳動させ、転写し、上記タンパク質をブロットした。バンド強度をデンシトメトリーにより測定し、着目タンパク質毎にβ-アクチンローディングコントロールに正規化した。各着目タンパク質の半定量を各群で比較した処、非免疫200mg/kgUP446+D-gal群は、HMGB1濃度が有意に低いことが分かった。
Figure 2023536465000038
[実施例35]緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に感染したマウスの高酸素誘発死亡率に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
本試験では、マウスを誘発前に1週間馴化させた。本願の保護対象に開示するバイオフラボノイド組成物であるUP446が動物死亡率を低下させ、その生存率を上昇させることができるか否かを調査するために、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446を250mg/kgの用量で7日間経口投与後、マウスを高酸素に(>90%酸素に72時間)曝露し、この曝露を3日間続けた後、緑膿菌(PA)をマウスに接種した。細菌接種後、マウスを48時間観察した。高酸素に予め曝露すると、室内気(表36、RA)に維持したマウスに比較して死亡率(O)が有意に高かった。高酸素に48時間曝露したマウスでは、PA接種から24時間後に実質的な死亡率となることが予想外に判明した。室内気(RA)に維持して同一量のPAを接種したマウスの死亡率が9%であったのに対し、PA接種前に2日間高酸素下で溶媒を投与したマウスでは、64%の死亡率が認められた。他方、2日間の高酸素曝露とその後のPA接種の前に、レスベラトロール(RES)とUP446を7日間予防投与したマウスは、接種から24時間後の死亡率が夫々27.3%と28.6%であった。これらの結果は、UP446が宿主を酸化ストレスと微生物感染から保護し、死亡率の低下に繋がったことを示唆している。実施例10~12のLPS誘発動物敗血症試験では、UP446補充により死亡率の統計的に有意な低下を生じたが、UP446で確認された本実施例の生存率データは、実施例10~12で記載したデータに一致する。
Figure 2023536465000039
[実施例36]細菌感染により誘発して酸化ストレスで悪化させた急性肺傷害に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
自然宿主防御恒常性の調節作用を調査するために、マウスにバイオフラボノイド組成物UP446を250mg/kgの用量で7日間経口投与した後、(UP446投与を持続しながら)>90%Oに48時間曝露した後、微生物緑膿菌(PA)を接種した。細菌接種から24時間後にマウスを安楽死させ、肺を洗浄し、肺洗浄液中の総タンパク質含量を測定した。微生物感染前に予め高酸素に曝露すると、これらのマウス(O)ではタンパク質浮腫が生じたことから判断されるように、室内気(RA)に維持したマウスに比較して有意に高い重症度の急性肺傷害を生じた。周知の抗酸化剤であるレスベラトロール(RES)はこの作用を有意に抑制した。UP446投与群のマウスの肺洗浄液中の総タンパク質含量の低下は、高酸素下で微生物を感染させて溶媒を投与した対照マウス(O)に比較して統計的に有意であった。これらの結果は、UP446が、二次細菌感染により誘発して酸化ストレスで悪化させた急性肺傷害を抑制できることを示唆している。
Figure 2023536465000040
[実施例37]肺組織内の細菌クリアランスに及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
高酸素に曝露すると、細菌感染症に対する宿主防御が低下し、微生物感染後に肺組織内の細菌負荷量が増加することは、Patelら,2013により過去に示されている。表38の結果によると、実際に、高酸素(O)に予め曝露することにより、室内気(RA)に維持したマウスに比較して細菌負荷量が増加している。レスベラトロールを投与したマウスと、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446を投与したマウスでは肺傷害が有意に抑制されたが、これらのマウスでは、細菌負荷量も有意に減少した。データによると、肺組織内の細菌負荷量の差は、高酸素下で溶媒を投与した微生物感染対照マウス(O)に比較して統計的に有意であった。これらの結果は、UP446が肺組織内の細菌負荷量を減少させるように自然宿主防御恒常性を調節できることを示唆している。
Figure 2023536465000041
[実施例38]気道内の細菌クリアランスに及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
上記実施例では、高酸素に曝露すると、細菌感染症に対する宿主防御が低下し、肺ホモジネートの細菌負荷量が増加することを示した。表39の結果によると、気道内の細菌負荷量は、マウスを高酸素(O)に予め曝露することにより、室内気(RA)に維持したマウスに比較して有意に増加した。レスベラトロール(RES)を投与したマウスでは肺傷害が有意に抑制されたが、気道細菌負荷量も有意に低かった。同様に、UP446を投与したマウスは、高酸素に曝露して溶媒単独を投与した細菌感染マウスに比較して気道内の細菌負荷量が有意に低かった。気道内の細菌負荷量のこれらの差は、高酸素に曝露して溶媒を投与した対照マウス(O)に比較して統計的に有意であった。これらの結果は、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446が、気道内の細菌負荷量を減少させるように自然宿主防御恒常性を調節できることを示唆している。
Figure 2023536465000042
[実施例39]気道内の細胞外HMGB1の蓄積に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
気道内の細胞外HMGB1の蓄積は自然免疫を低下させ、侵入する病原体とアポトーシス好中球を排除する能力の低下に繋がる可能性がある。その結果、急性呼吸器感染症、肺傷害、更には死に至る恐れがある(Entezari et al.,2012;Patel et al.,2013)。高酸素に曝露した細菌感染マウスにおける急性肺傷害がUP446により抑制されたのは、気道内の細胞外HMGB1の蓄積に対するその作用によるものか否かを調べるために、肺洗浄液中のHMGB1の濃度を測定した。従来示されているように、これらのマウスを長時間高酸素に曝露した後に微生物感染させると、気道内のHMGB1の蓄積が増加した。マウスを高酸素に曝露して微生物感染させると、HMGB1の濃度は4.8倍に上昇した。レスベラトロール(RES)又はUP446を前投与することにより、この上昇を抑えることができる。動物にRESとUP446を前投与すると、高酸素に曝露して細菌感染させ、溶媒を投与したマウスに比較して、HMGB1発現レベルが夫々74.9%と71.6%低下した。これらのデータは、本願に開示するバイオフラボノイド組成物であるUP446が、高酸素に曝露して細菌感染させたマウスの気道HMGB1の蓄積を低減できることを示唆している。これは、UP446が呼吸器系において微生物感染に対する宿主防御機構を改善する能力の有意増強に相関する。
Figure 2023536465000043
[実施例40]SARS-CoV-2に感染したhACE2トランスジェニックマウスの肺組織HMGB1に及ぼすバイオフラボノイド組成物の効果
hACE2トランスジェニックマウスに10TCID50/50μLのSARS-CoV-2ウイルスを鼻腔内スプレーにより感染させることにより、疾患モデルを誘発した(Bao et al.2020)。SARS-CoV-2ウイルス鼻腔内スプレーから2時間以内に、実施例4及び表6に示したバイオフラボノイド組成物であるUP894-IIを400mg/kgと200mg/kgの用量でマウスに経口投与した。合計5日間、毎日投与を維持した(即ち、0dpi~4dpi)。ウイルスに感染していない正常トランスジェニック対照マウスと、(ウイルスに感染した)疾患モデルに、溶媒(0.5%CMC)単独を10mL/kgの量で投与した。5dpiに剖検を実施した。組織HMGB1タンパク質発現をモニターするために右全肺をホモジナイズした。
肺組織を切り出し、液体窒素で瞬間凍結し、ホモジナイゼーションまで-80℃で保存した。溶解バッファー1mL当たり組織50mgの濃度で組織を溶解バッファーに懸濁し、ホモジナイズした。試料を氷上に30分間置き、5分毎にボルテックスした。試料を30分間遠心し、ペレットを捨てた。タンパク質をBCAアッセイで定量した。要約すると、0~10μg標準曲線とBCAワーキング溶液(50:1試薬A:B)を準備した。試料体積20μLをマイクロプレートでBCAワーキング溶液200μLと混合し、37℃で30分間インキュベートした。562nmのプレート吸光度を読み取り、標準曲線の吸光度に基づいてタンパク質の量を計算した。各試料のタンパク質40μgをドデシル硫酸ナトリウムローディングバッファーと混合し、95~100℃で5分間煮沸し、変性・還元タンパク質試料を得た。
ポリアクリルアミドゲルを準備し、調製したタンパク質試料をロードし、Tris-グリシンランニングバッファー(25mM Trisベース,190mMグリシン,0.1%SDS,pH8.3)で泳動させた。ゲルをトランスファーバッファー(25mM Trisベース,190mMグリシン,20%メタノール)に浸し、湿式転写法により転写した。膜をポンソーレッドで染色してタンパク質を可視化し、十分に転写されていることを確かめた。要約すると、0.1%Tween20を添加したTris緩衝生理食塩水(TBST)で膜を洗浄した。ポンソーレッド原液を10倍に希釈して加えた。膜をアジテーターで5分間インキュベートした後、バンドが明確になるまで十分に水洗した。
膜をブロックし、TBST中で4℃にて一次抗体(100~3000倍希釈液)と共に終夜インキュベートした。膜を5分間ずつ3回洗浄して未結合の一次抗体を除去した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した二次抗体(2000倍希釈液)と共に膜をTBST中で室温にて攪拌下に1時間インキュベートした。ECLウェスタンブロット検出キット(GE Healthcare Life Sciences,Piscataway,NJ,米国)を化学発光検出に使用して免疫ブロットを分析した。ImageJ(バージョン1.41,NIH,Baltimore,MD,米国)を使用して画像データの定量を実施した。
図8から明らかなように、SARS-CoV-2に感染させて溶媒を投与したトランスジェニックマウスは、ウイルスに感染していない正常なトランスジェニック対照マウスに比較して肺HMGB1タンパク質発現の2倍の増加を示した。溶媒投与群の肺HMGB1濃度の上昇は、無感染正常対照に比較して統計的に有意であった。これに対して、SARS-CoV-2ウイルスに感染したトランスジェニックマウスにバイオフラボノイド組成物であるUP894-IIを2種類の用量で投与すると、肺組織におけるHMGB1タンパク質の発現は、無感染正常対照トランスジェニックマウスのレベルまで低下することが分かった。高用量と低用量の両方のバイオフラボノイド組成物の投与の結果としての肺HMGB1発現レベルのこれらの低下は、SARS-CoV-2に感染させて溶媒を投与したトランスジェニックマウスに比較して統計的に有意であった。肺組織におけるHMGB1が低下したことから、本願に開示するバイオフラボノイド組成物により宿主防御機構が改善され、SARS-Cov-2コロナウイルス感染後の致死的サイトカインストームと関連する肺及び他の臓器の損傷の可能性が低下したと判断された。
[実施例41]ヒト臨床試験におけるバイオフラボノイド組成物UP446の評価
プロトコール:健康な成人における免疫機能の支援について被験品を調査するための無作為化三重盲検プラセボ対照並行群間臨床試験。本試験の目的は、60%以上の遊離B環フラボノイドと10%以上のフラバンを含有し、実施形態によってはこれらから構成され、実施例4及び表5及び6に示したように製造したUP446を被験品(IP)とし、健康な成人における免疫機能の支援に及ぼす効果を調査することであった。
無作為化三重盲検プラセボ対照並行群間試験において、インフルエンザワクチン接種の28日前と28日後に健康な成人集団における免疫機能を支援する効果について被験品を評価した。本試験は、インフルエンザワクチンをまだ接種していないが、接種する意志があり、インフルエンザワクチン接種歴を口頭で伝えることに同意しており、食事、投薬、栄養補助食品、運動及び睡眠を維持する各自の能力に応じて、全試験期間を通して可能な限り現在の生活習慣を維持し、新たな栄養補助食品を摂取しないことに同意しており、認定調査者(QI)が既往歴と検査結果を評価して健康であると判断され、試験に関連する問診票と日誌を完遂し、通院を完遂する意志があり、自由意思により本試験への参加に同意するインフォームドコンセントを書面で表明している40歳以上80歳以下の男女を対象とした。
FLUCELVAX(R)QUAD、医薬品識別番号(DIN)02494248は、サブタイプA及びBのインフルエンザの予防用に成人及び9歳以上の小児の免疫用にデザインされた4価ワクチン(QIV)である。
Figure 2023536465000044
以下の被験者は除外した。1.試験中に妊娠中、授乳中、又は妊娠計画中であった女性。2.UP446、プラセボ、又はインフルエンザワクチンの活性成分又は不活性成分に対してアレルギーがあることが分かっている参加者。3.2020年9月時点のベースライン以前又は28日目のワクチン接種以前にインフルエンザワクチンを接種していない参加者。4.ベースライン以前又は28日目のワクチン接種以前にCOVID-19であると診断されたことを自己申告している参加者。5.COVID-19ワクチンを接種済みの参加者。6.ベースラインから4週間以内で免疫抑制剤又は免疫刺激剤等の処方免疫調節剤(コルチコステロイドを含む)を現在使用中である。7.免疫系のブースト又は調節に関連する栄養補助食品又は生薬を現在使用中であり、ウォッシュアウトする意志のない参加者。
Figure 2023536465000045
Figure 2023536465000046
被験者が最長で56日間まで試験に参加することを期待した。1回目来院(スクリーニング、-45日~-4日)はインフォームドコンセントのため、2回目来院(ベースライン、0日)は適格性の確認と無作為化のために、被験者に試験に参加してもらった。
2回目来院(0日)、3回目来院(28日)、及び4回目来院(56日)では、試験の一次及び二次効果と安全性エンドポイントを評価した。スクリーニング来院時に人口統計学的情報と既往歴を記録した。インフルエンザワクチン接種(28日)まで毎日被験者に250mgのバイオフラボノイド組成物UP446を1日2回朝晩食事と共に摂取してもらい、更に4週間(56日まで)毎日250mgのUP446を1日2回摂取し続けてもらった。
一次試験アウトカムは、ベースラインから28日及び56日まで血液中のリンパ球集団(CD3+、CD4+、CD8+、CD45+、TCRγδ+、CD3-CD16+56+)と免疫グロブリン(IgG、IgM、及びIgA)により評価した免疫パラメーターの変化についてUP446とプラセボの差を評価した。
統計分析を実施し、人口統計学的特性とアウトカム測定値の平均値、中央値、標準偏差、最小値、最大値、割合(カテゴリカルな場合)を含む要約統計量を試料全体と試験群毎に得た。正規性の仮定が満足された場合には、分散分析(ANOVA)を使用し、2種類の摂取群(UP446とプラセボ)間の連続変数の平均の差を試験し、正規性の仮定が満足されなかった場合には、クラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)検定を使用した。必要に応じてカイ二乗検定と(細胞数が5個未満の場合には)フィッシャーの正確確率検定を使用し、カテゴリカル変数の差を調査した。反復測定分散分析(線形混合効果モデル)を使用し、摂取群間の経時的なアウトカム平均値の差を試験した。ベースライン値を共変量として各モデルに含めた。同様に反復測定分散分析(線形混合効果モデル)を使用し、(ベースラインから28日、56日及び28日から56日の)経時的なアウトカム変化の平均値の2摂取群間の差を試験し、ベースライン値を共変量として各モデルに含めた。LMM(群間及び群内)からペアワイズ統計的有意性を判定した。ボンフェローニ補正をペアワイズ比較に使用した。統計的有意性はp値≦0.05として定義される。Statistical Analysis Systemソフトウェアバージョン9.4(SAS Institute Inc.,Cary,NC,米国)を使用して分析を実施した。
予備臨床データ報告では、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物の経口摂取から免疫グロブリンA(IgA)等の一次エンドポイントに統計的に有意なアウトカムが認められた。表43から明らかなように、8週間摂取後に、バイオフラボノイド組成物UP446を摂取した被験者は、28日から56日までにプラセボを摂取した被験者に比較して粘膜免疫指標である免疫グロブリンA(IgA)の統計的に有意な増加を示した(P=0.0260)。UP446を摂取した参加者では、プラセボを摂取した参加者に比較してワクチン接種前後のIgAの変化が0.08755g/L高かった(p=0.0260)。群内では、UP446を補充した被験者は、0日から56日までに平均で0.05720g/L(p=0.0412)、28日から56日までに0.06280g/L(p=0.0252)という統計的に有意なIgAの増加を示した。これらのデータは、健全な呼吸器系の主要な免疫グロブリンであり、粘膜防御に最も重要な免疫グロブリンであると考えられているIgAが、ヒトの宿主防御機構の調節におけるバイオフラボノイド組成物の重要な活性であることを明白に示している。
Figure 2023536465000047
二次アウトカムは、以下の事項について、28日及び56日におけるUP446とプラセボの差を評価した。1.確認されたCOVID-19感染者数;2.確認されたインフルエンザ症例数;3.生活の質に及ぼすCOVID-19の影響問診票により評価した生活の質に及ぼすCOVID-19の影響;4.市販感冒・インフルエンザ薬使用。また、以下の事項については、56日におけるUP446とプラセボの差を評価した。1.COVID-19による入院者数;2.インフルエンザによる入院者数。
その他のアウトカムは、以下の事項について、ベースラインから28日及び56日の測定までの変化を調査し、実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物であるUP446とプラセボの差を評価した。1.赤血球沈降速度(ESR)とC反応性タンパク質(CRP);2.血液学的パラメーター:白血球(WBC)数と分画(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球)、網状赤血球数、赤血球(RBC)数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、RBC指数(平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、及び赤血球分布幅(RDW));3.補体C3及びC4タンパク質;4.改変版ウィスコンシン上気道症状調査票(Wisconsin Upper Respiratory Symptom Survey(WURSS)-24)の毎日症状スコアの曲線下面積(AUC)により測定した平均全般重症度指数;5.WURSS-24の毎日重症度症状スコアのAUCにより測定した平均症状重症度スコア;6.改変版WURSS-24問診票により評価した健康日数(「本日の体調はいかがですか?」という質問に対して0(無病)と回答された日数として定義する);7.改変版WURSS-24問診票により評価した有病日数(「本日の体調はいかがですか?」という質問に対して1~7(有病)のいずれかの数値と回答された日数として定義する);8.改変版WURSS-24問診票により評価した一般上気道感染症(UTRI)症状の頻度;9.改変版WURSS-24問診票により評価した一般UTRI症状の持続期間;10.改変版WURSS-24問診票により評価した一般UTRI症状の重症度;11.活力と生活の質(QoL)問診票により評価した活力と生活の質。
各被験者から血液試料を採取し、その後の分析でベースラインから28日及び56日までの以下の事項の変化について実施例4及び表6に示した標準化バイオフラボノイド組成物とプラセボの差を分析するために保存した。
1.サイトカイン(GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL17A、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-27、IL-31、TNF-α、TNF-β/LTA150)。
2.高移動度群ボックス1(HMGB1)タンパク質、核内因子カッパB(NF-κB)、核内因子エリスロイド2関連因子2(Nrf-2)。
3.8-イソプロスタグランジンF2α、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、マロンジアルデヒド(MDA)及び終末糖化産物(AGE)により評価した酸化ストレス。
4.特定のウイルス株に対するヘマグルチニン阻害(HI)力価。
有効性分析に加え、各血液試料を以下の属性について試験することにより安全性評価も実施する。1.臨床化学パラメーター:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、総ビリルビン、クレアチニン、電解質(Na+、K+、Cl-)、推算糸球体濾過量(eGFR)、グルコース;2.発現前及び発現後有害事象の発生率;3.バイタルサイン(血圧(BP)及び心拍数(HR))。
Figure 2023536465000048
Figure 2023536465000049
Figure 2023536465000050
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Figure 2023536465000054
Figure 2023536465000055

Claims (33)

  1. 宿主防御機構の恒常性の確立及び調節用のバイオフラボノイド組成物であって、少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物と、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物とを含む、前記組成物。
  2. 前記組成物における少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物と、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物とが、各抽出物の重量基準で1%~98%の範囲であり、最適重量比が80:20である、請求項1に記載の組成物。
  3. 少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)の根に由来して高濃度化及び標準化されており、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、アセンヤクノキ(Acacia catechu)の心材に由来して高濃度化及び標準化されている、請求項1に記載の組成物。
  4. 少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、0.5%~99.5%の1種以上の遊離B環フラボノイドを含む、請求項1に記載の組成物。
  5. 少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、0.5%~99.5%のカテキンを含む、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記遊離B環フラボノイドが、バイカリン、バイカレイン、バイカレイングリコシド、ウォゴニン、ウォゴニングルクロニド、ウォゴニングリコシド、オロキシリン、オロキシリングリコシド、オロキシリングルクロニド、クリシン、クリシングリコシド、クリシングルクロニド、スクテラリン及びスクテラリングリコシド、ノルウォゴニン、ノルウォゴニングリコシド、ガランギンのうちの少なくとも1種、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
  7. 少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、カテキン、エピカテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピテアフラビン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビンガレートのうちの少なくとも1種、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
  8. 少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、デスモス属(Desmos)、アキロクリネ属(Achyrocline)、オロキシルム属(Oroxylum)、ブケナヴィア属(Buchenavia)、ヤマハハコ属(Anaphalis)、マメカミツレ属(Cotula)、ヒメチチコグサ属(Gnaphalium)、ヘリクリサム属(Helichrysum)、ヤグルマギク属(Centaurea)、ヒヨドリバナ属(Eupatorium)、バッカリス属(Baccharis)、シラキ属(Sapium)、タツナミソウ属(Scutellaria)、モルサ属(Molsa)、コレブルーケア属(Colebrookea)、イヌゴマ属(Stachys)、ハナハッカ属(Origanum)、ジジフォラ属(Ziziphora)、クロモジ属(Lindera)、アクチノダフネ属(Actinodaphne)、アカシア属(Acacia)、デリス属(Derris)、カンゾウ属(Glycyrrhiza)、ナツフジ属(Millettia)、クロヨナ属(Pongamia)、テフロシア属(Tephrosia)、パンノキ属(Artocarpus)、イチジク属(Ficus)、ギンシダ属(Pityrogramma)、チャイロエビガラシダ属(Notholaena)、マツ属(Pinus)、ニレ属(Ulmus)、ハナミョウガ属(Alpinia)、又はそれらの組み合わせを含む高等植物属に由来して高濃度化及び標準化されている、請求項1に記載の組成物。
  9. 少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、スクテラリア・バイカレンシス(Scutellaria baicalensis:コガネバナ)、スクテラリア・バルバタ(Scutellaria barbata:セイタカナミキソウ)、スクテラリア・オルトカリクス(Scutellaria orthocalyx)、スクテラリア・ラテリフローラ(Scutellaria lateriflora:ブルースカルキャップ)、スクテラリア・ガレリクラータ(Scutellaria galericulata:マーシュスカルキャップ)、スクテラリア・ヴィスキデューラ(Scutellaria viscidula)、スクテラリア・アモエナ(Scutellaria amoena)、スクテラリア・レーデリアナ(Scutellaria rehderiana)、スクテラリア・リキアンゲンシス(Scutellaria likiangensis)、スクテラリア・ガレリクラータ(Scutellaria galericulata:マーシュスカルキャップ)、スクテラリア・インディカ(Scutellaria indica:タツナミソウ)、スクテラリア・セッシリフォリア(Scutellaria sessilifolia)、スクテラリア・ヴィスキデューラ(Scutellaria viscidula)、スクテラリア・アモエナ(Scutellaria amoena)、スクテラリア・レーデリアナ(Scutellaria rehderiana)、スクテラリア・リキアンゲンシス(Scutellaria likiangensis)、スクテラリア・オリエンタリス(Scutellaria orientalis)、オロキシルム・インディカム(Oroxylum indicum)、パッシフローラ・カエルレア(Passiflora caerulea:トケイソウ)、パッシフローラ・インカルナータ(Passiflora incarnata:チャボトケイソウ)、プレウロトゥス・オストレアトゥス(Pleurotus ostreatus:ヒラタケ)、ラクタリウス・デリシオスス(Lactarius deliciosus:アカハツタケ)、スイルス・ベリーニ(Suillus bellinii)、カモミール、ニンジン、キノコ、蜂蜜、プロポリス、パッションフラワー、インディアントランペットフラワー、又はそれらの組み合わせを含む植物種に由来して高濃度化及び標準化されている、請求項1に記載の組成物。
  10. 少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物が、アカキア・カテキュ(Acacia catechu:アセンヤクノキ(ブラックカテチュー))、セネガリア・カテキュ(Senegalia catechu)、アカキア・コンチナ(Acacia concinna:ソムポイ)、アカキア・ファルネシアナ(Acacia farnesiana:キンゴウカン)、アカキア・セネガル(Acacia Senegal:アラビアガム)、アカキア・スペキオーサ(Acacia speciosa)、アカキア・アラビカ(Acacia arabica:アラビアゴムモドキ)、アカキア・カエシア(Acacia caesia)、アカキア・ペナータ(Acacia pennata:チャオム)、アカキア・シヌアータ(Acacia sinuata)、アカキア・メアルンシ(Acacia mearnsii:ブラックワトル)、アカキア・ピクナンタ(Acacia picnantha:ゴールデンワトル)、アカキア・デアルバタ(Acacia dealbata:フサアカシア)、アカキア・アウリキュリフォルミス(Acacia auriculiformis:カマバアカシア)、アカキア・ホロセリケア(Acacia holoserecia:ストラップワトル)、アカキア・マンギウム(Acacia mangium)、アナカルディウム・オッキデンタレ(Anacardium occidentale:カシューナッツ殻)、ウンカリア・ガンビル(Uncaria gambir:ガンビールノキ(ホワイトカテチュー))、ウンカリア・リンコフィラ(Uncaria rhynchophylla:カギカズラ)、カメリア・シネンシス(Camellia sinensis:チャノキ)、カメリア・アッサミカ(Camellia assumica:アッサムチャ)、エウテルペ・オレラケア(Euterpe oleracea:アサイー)、カエサルピニア・デカペタラ(Caesalpinia decapetala:ジャケツイバラ)、デロニクス・レジア(Delonix regia:ホウオウボク)、ギンコ・ビローバ(Ginkgo biloba:イチョウ)、アケル・ルブルム(Acer rubrum:アメリカハナノキ)、ココス・ヌキフェラ(Cocos nucifera:ココヤシ)、リモニウム・ブラシリエンセ(Limonium Brasiliense)、アセロラバガス、ヴィテラリア・パラドクサ(Vitellaria paradoxa:シアーバターノキ)、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera:ヨーロッパブドウ)、ローソニア・イネルミス(Lawsonia inermis:ヘンナ)、アルトカルプス・ヘテロフィルス(Artocarpus heterophyllus:パラミツ)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa:ムラサキウマゴヤシ)、ロツス・ジャポニクス(Lotus japonicus:ミヤコグサ)、ロツス・ウリギノスス(Lotus uliginosus:ネビキミヤコグサ)、エイセニア・ビシクリス(Eisenia bicyclis:アラメ)、ヘディサルム・スルフレセンス(Hedysarum sulfurescens)、ロビニア・シュードアカキア(Robinia pseudoacacia:ニセアカシア)、リンゴ、アンズ、プルーン、サクランボ、ブドウの葉、イチゴ、マメ類、レモン、チャ、紅茶、緑茶、ルイボス茶、オオムギ穀粒、緑藻類(カサノリ:Acetabularia ryukyuensis)、紅藻類(Chondrococcus hornemannii)、チョコレート(ココア)、生コーヒー豆、又はそれらの組み合わせを含む植物種に由来して高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
  11. 少なくとも1種の遊離B環フラボノイドを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物と、少なくとも1種のフラバンを高濃度化した前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物とが、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、堅果、果皮、果実、子実体、キノコ、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、幹細胞、細胞培養組織、又は任意のそれらの組み合わせを含む植物部分から抽出され、高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
  12. 前記組成物における前記標準化バイオフラボノイド抽出物が、COの超臨界流体、水、酸性水、塩基性水、アセトン、メタノール、エタノール、プロペノール、ブタノール、アルコール・水混液、混合有機溶媒、又はそれらの組み合わせを含む任意の適切な溶媒で抽出されている、請求項1に記載の組成物。
  13. 前記標準化バイオフラボノイド抽出物が、トランスジェニック微生物、P450酵素、糖転移酵素若しくは酵素組み合わせ、微小細菌、又はそれらの組み合わせにより、小炭素単位から合成、代謝、生分解、生体内転換、生体内変換、生合成されている、請求項1に記載の組成物。
  14. 前記標準化バイオフラボノイド抽出物が、個々による又は組み合わせでの、溶媒沈殿、中和、溶媒分配、限外濾過、酵素消化、シリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナオキサイド、ポリアミド、イオン交換樹脂、CG161樹脂を担体とするカラムクロマトグラフィー、又はそれらの組み合わせにより高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
  15. 前記組成物が、薬学的又は栄養補強的に許容される活性成分、補助剤、担体、希釈剤又は賦形剤を含み、前記薬学的製剤又は栄養補強製剤が、前記少なくとも1種の標準化バイオフラボノイド抽出物中に約0.1重量パーセント(重量%)~約99.9重量%の活性化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
  16. 前記活性成分、補助剤、賦形剤又は担体が、アサ(Cannabis sativa)種子油若しくはCBD/THC、ターメリック抽出物若しくはクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、アロエ・ベラ(Aloe vera)葉ゲル粉末、ポリア・ココス(Poria cocos)抽出物、ローズマリー抽出物、ロスマリン酸、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物若しくはカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、フィロデンドロン樹皮抽出物、ホップ抽出物、ボスウェリア属(Boswellia)抽出物、ローズヒップ抽出物、緑茶抽出物、ソフォラ属(Sophora)抽出物、ウィタニア・ソムニフェラ(Withania somnifera:アシュワガンダ)、ブプレウルム・ファルカツム(Bupleurum falcatum:ミシマサイコ)、ラディックス・ブプレウリ(Radix Bupleuri:サイコ)、ラディックス・グリシリザ(Radix Glycyrrhiza)、フルクトゥス・フォルシティアエ(Fructus Forsythiae:レンギョウ)、パナックス・クインクエフォリウム(Panax quinquefolium:アメリカニンジン)、パナックス・ジンセン・シー・エイ・マイヤー(Panax ginseng C.A.Meyer:オタネニンジン)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、イノノツス・オブリクウス(Inonotus obliquus:カバノアナタケ)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、リキウム・バルバルム(Lycium barbarum:ナガバクコ)、フェリナス・リンテウス(Phellinus linteus:メシマコブ)(子実体)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)(子実体)、シアモプシス・テトラゴノロブス(Cyamopsis tetragonolobus:クラスタマメ)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)、クラドシフォン・オカムラヌス・トキダ(Cladosiphon okamuranus Tokida:オキナワモズク)、ウンダリア・ピンナティフィダ(Undaria pinnatifida:ワカメ)、ハッカ属(Mentha)若しくはペパーミント抽出物、ジンジャー若しくはブラックジンジャー抽出物、緑茶若しくはブドウ種子ポリフェノール、オメガ3若しくはオメガ6脂肪酸、クリルオイル、γ-リノレン酸、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ濃縮物、アスタキサンチン、ピクノジェノール、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、アミノ酸、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、メントール、カルシウム塩、シリカ、ヒスチジン、グルコン酸銅、CMC、β-シクロデキストリン、セルロース、デキストロース、生理食塩水、水、油類、サメ及びウシ軟骨、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
  17. 前記組成物が、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤又は顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、ガム剤、チューインガム剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤、液剤、チンキ剤、エアゾール剤、半固形剤、半液状剤、溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ジェル基剤として製剤化されている、請求項1に記載の組成物。
  18. 前記組成物が、呼吸器疾患及び病態に有効である、請求項1に記載の組成物。
  19. 前記組成物が、経口、局所、坐剤、静脈内、皮内、胃内、筋肉内、腹腔内、又は静脈内経路で投与される、請求項1に記載の組成物。
  20. 前記組成物が、哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することにより、前記哺乳動物における宿主防御機構の恒常性の調節を治療、管理、又は促進する、請求項1に記載の組成物。
  21. 前記組成物が、免疫応答を最適化すること又はそのバランスをとることにより哺乳動物の免疫恒常性を維持する;加齢及び免疫器官老化による免疫低下を改善する;慢性炎症及び炎症による免疫低下を予防する;インフルエンザワクチン接種又はCOVID-19ワクチン接種に対して健全な免疫応答を維持するのを助ける;ウイルス感染及び細菌感染に対して健全な免疫機能を維持するのを助ける;あるいは、大気汚染により誘発される酸化ストレス損傷から免疫系を保護する、請求項1に記載の組成物。
  22. 前記組成物が、内因性又は外因性応答攻撃トリガーとしてのHMGB1を調節し、恒常性を回復するように宿主防御応答をシフトさせ、前記HMGB1が、免疫老化、又は炎症、又は酸化ストレスにより劣化した免疫細胞、ウイルス若しくは微生物、大気汚染物質で汚染された免疫細胞、宿主呼吸器細胞、若しくは心血管細胞により放出される、請求項1に記載の組成物。
  23. 前記組成物が、細胞質移行を阻止すること若しくは小胞媒介性の放出を阻止することによってHMGB1の能動的若しくは受動的放出を標的として、若しくは核内の分子内ジスルフィド結合形成を阻害することにより、HMGB1放出を阻害すること又はその作用を妨害するか、又は放出時のHMGB1を直接標的とし、その作用を中和するか、又はToll様受容体(TLR)-2/4/7/9及び終末糖化産物受容体(RAGE)等のHMGB1パターン認識受容体をブロックするか、若しくはそのシグナル伝達を阻害するか、又は物理化学的微小環境を変化させ、HMGB1四量体の形成を防止し、TLR及びRAGEに対するHMGB1の結合親和性を妨害するか、あるいはHMGB1のクラスター形成又は自己会合を防止することにより、HMGB1を調節する、請求項1に記載の組成物。
  24. 前記組成物が、健全な炎症応答を支援する;感染に対するサイトカイン及びサイトカイン応答の健全なレベルを維持する;感染に対する補体C3及びC4タンパク質、サイトカイン及びサイトカイン応答の健全なレベルを維持する;TNF-α、IL-1β、IL-6、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、IL-1α、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL17A、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-27、IL-31、TNF-β/LTA、CRP、及びCINC3を低減、調節及び維持する、請求項1に記載の組成物。
  25. 前記組成物が、酸化応答を制御し、呼吸器系の酸化ストレスを緩和する;SOD及びNRF2を増加することにより抗酸化能を増強する;終末糖化産物を低減する;グルタチオンペルオキシダーゼを増加する;活性酸素種を中和し、酸化ストレスに起因する呼吸器、肺及び免疫系の構造完全性の毀損及び機能低下を予防する、請求項1に記載の組成物。
  26. 前記組成物が、AGE及びAGE-RAGE相互作用に起因する年齢関連慢性疾患を最小限に抑える又は予防する、例えば、糖尿病の場合において糖尿病合併症及び糖尿病細小血管合併症を予防する;心血管疾患の場合において冠動脈アテローム性動脈硬化症及び冠動脈疾患の重症度を予防する;腎疾患の場合において腎不全及び末期腎疾患を予防する;肥満症の場合において視床下部機能障害を予防する;がん発症、進行、遊走、浸潤及び転移を軽減する;腸内微生物叢関連疾患の場合において全身性内毒素血症、炎症及び多臓器傷害を予防する;神経変性疾患の場合においてニューロン死及び変性を予防する;アルツハイマー病の場合においてニューロンアポトーシス及び神経変性を予防する;パーキンソン病の場合において神経変性を予防する;肝疾患の場合において非アルコール性脂肪性肝疾患、炎症性肝損傷、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維症及び肝硬変の発症及び進行を予防する、請求項1に記載の組成物。
  27. 前記組成物が、自然免疫を改善する;適応免疫を改善する;白血球の活性及び数を増加する;ナチュラルキラー(NK)細胞機能を強化する;Tリンパ球及びBリンパ球の数を増加する;CD3+、CD4+NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、CD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞及びCD8+細胞数を増加する;並びにマクロファージ貪食活性を保護及び促進する、請求項1に記載の組成物。
  28. 前記組成物が、哺乳動物の正常な抗体IgG、IgM、IgA、特定のウイルス株産生に対するヘマグルチニン阻害(HI)力価等を支援又は促進する、請求項1に記載の組成物。
  29. 前記組成物が、高病原性鳥インフルエンザ(A型H5N1ウイルス株)、A型インフルエンザ(H1N1、H3N2、H5N1)、B型インフルエンザ/ワシントン/02/2019様ウイルス、B型インフルエンザ/プーケット/3073/2013様ウイルス、A型、B型、C型及びD型肝炎ウイルス、コロナウイルスSARS-CoV、SARS-CoV-2(COVID-19)、MERS-CoV(MERS)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、エンテロウイルスA71(EV71)、パラインフルエンザ並びにアデノウイルスを含むウイルスの感染を中和、抑制、予防、回復する、請求項1に記載の組成物。
  30. 前記組成物が、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ヘモフィラス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、アスペルギルス属菌(Aspergillus)、クリプトコッカス属菌(Cryptococcus)、ニューモシスチス属菌(Pneumocystis)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ブラストミセス属菌(Blastomyces)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jiroveci)、カンジダ属菌(Candida)種(spp.)及びストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)を含む微生物感染から呼吸器系を中和、抑制、予防、回復する、請求項1に記載の組成物。
  31. 前記組成物が、大気中のPM2.5粒子、大気中のPM10粒子、大気汚染物質、光化学スモッグ、タバコ、電子タバコからの煙、娯楽用マリファナの煙による呼吸器系の損傷を中和、抑制、予防、回復する、請求項1に記載の組成物。
  32. 前記組成物が、哺乳動物の呼吸器における健全な肺微生物叢又は共生システムを維持する;肺浄化及び解毒能を維持する;肺構造完全性及び酸素交換能を保護する;呼吸器通過を維持し、肺胞の酸素吸収能を強化する;ウイルス感染、細菌感染及び大気汚染から正常かつ健全な肺機能を保護する;酸化ストレスに起因する肺損傷を軽減する;並びに肺の微小循環を促進し、正常な凝固機能を保護する等の作用を有する、請求項1に記載の組成物。
  33. 前記組成物が、限定されないが、哺乳動物の身体の痛み、咽喉痛、咳、軽微な咽喉及び気管支刺激、鼻閉、副鼻腔うっ血、副鼻腔圧迫感、鼻水、くしゃみ、嗅覚低下、味覚低下、筋肉痛、頭痛、発熱及び悪寒を含む感冒/インフルエンザ様症状を緩和又は軽減する;痰(粘液)を緩くし、気管支分泌物を薄めて咳をし易くする;気管支刺激の重症度を軽減する;ウイルス感染、微生物感染及び大気汚染に起因する肺損傷又は浮腫又は炎症性細胞浸潤の重症度を軽減する;感冒/インフルエンザ又は汚染シーズンを通して気管支系及び快適な呼吸を支援する;肺線維症を予防又は治療する;普通感冒/インフルエンザの持続期間又は重症度を軽減する;呼吸器系のウイルス感染及び細菌感染の重症度又は持続期間を軽減する;ウイルス、微生物及び大気汚染物質に起因する呼吸器感染症を予防又は治療又は治癒治療する;呼吸器感染症の進行を管理又は治療又は予防又は逆転する;並びに、肺及び呼吸器系全体の修復及び再生機能を促進及び増強及び若返らせる等の作用を有する、請求項1に記載の組成物。
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