JP2023512070A - 皮膚疾患を微生物治療するための組成物及び方法 - Google Patents

皮膚疾患を微生物治療するための組成物及び方法 Download PDF

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Abstract

本開示は、スキンケア組成物、スキンケア製剤、及び頭皮障害の治療を提供するための方法に関する。より詳細には、本開示は、フケ症を含む頭皮障害を治療するための、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、方法及び組成物に関する。

Description

本開示は、スキンケア組成物、スキンケア製剤、及び頭皮障害の治療を提供するための方法に関する。より詳細には、本開示は、フケ症などの頭皮障害を治療するための方法並びに少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む組成物に関する。
電子的に提出された配列表の参照
ASCIIテキストファイルとして本出願と共に電子的に提出する配列表(名称:20210127_NB41714PCT_ST25;サイズ:2KB;作成日:2021年1月27日)の内容は本出願の一部を構成し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
皮膚は、生物を乾燥から保護するだけでなく、生物を有害であることが多い外部の物質の侵入からも保護するバリアとして機能している。
皮膚は多様な微生物群集の生息地でもあり、その大部分は、共生(非病原性常在(nonpathogenic permanent resident))又は通過(一過性(temporary resident))生物である。病原体と相互作用する場合は、微生物のみが利益を享受し、その一方で、宿主は最終的に危害を被る。皮膚上に生息する多くの皮膚病原体は、通常、共生生物として見ることができるが、微生物叢の乱れ(microbial dysbiosis)(又は微生物の不均衡)、宿主の遺伝子変異、及び免疫状態が引き金となって、共生型から病原型へと変化することがある(非特許文献1)。
表皮は皮膚組織の最外領域を構成し、それ自体が、環境に対する実際の保護外皮を形成している。表皮の外層(角質層(Stratum corneum、Horny layer))は環境と接する部分であり、角質層の独特な構造が、皮膚を保護すると共に、決まった量の水と結合することによって自身の柔軟性を安定化させている(非特許文献2)。
空間的には、皮膚の微生物叢は表皮の下側の区画まで広がっていることもある(非特許文献3)。皮脂腺の密度が高い領域である顔、胸、及び背中などの部位では、プロピオニバクテリウム属菌(Propionibacterium)やマラセチア属菌(Malassezia)などの脂肪を好む微生物の増殖が活性化される。
マラセチア属菌(Malassezia)は、皮膚微生物叢の主要な真菌であり、ほぼ全ての人の頭皮に見られ、これらに限定されるものではないが、脂漏性皮膚炎、フケ症、及び癜風などの最も一般的な皮膚疾患に関与している。フケ症とは、皮膚の脂漏に慣用されている用語である。主に関係しているのはマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta、M.restricta)及びマラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa、M.globosa)であり、有病率は人口のほぼ50%と非常に高い(非特許文献4)。治療には、抗菌剤ではなく抗真菌剤を適用することにより、疾患を改善することができる。その元となる病原性の機序は完全には解明されていない。皮膚バリア機能が損なわれると、疾患の過程が促進される(非特許文献5)。
マラセチア属菌種(Malassezia species、Malassezia spp)は脂肪酸合成酵素を持たないため、炭素源を皮脂の脂質に頼る必要がある。これらはまた、不飽和FA(例えば、オレイン酸)を有効に利用するためのデルタ2,3-エノイル-CoAイソメラーゼも欠損している。マラセチア属菌種(Malassezia species)は皮脂の脂肪を餌とし(トリグリセリドを分解して刺激性を有する脂肪酸にする1種又は複数種のリパーゼを分泌することによる)、皮脂の脂肪が分解されると、副産物として脂肪酸(オレイン酸など)が放出される。多くの人は遊離脂肪酸に対する感受性が高い。その理由は、遊離脂肪酸は、過剰増殖及びスケーリングを誘発する可能性や、炎症にも関与しているアラキドン酸の放出を誘発し、それに頭皮が反応して刺激を感じる可能性があるためである。この刺激に反応して、頭皮には腫れ、発赤、及び痒みが生じ始め、体が刺激源を取り去ろうとするため、皮膚細胞は通常よりも速く体から剥がれ落ちる。皮膚が剥がれ落ちることによって、目に見える薄片が頭皮に現れる。これがフケである。
Findley,K.and Grice,E.A.,The Skin Microbiome:A Focus on Pathogens and Their Association with Skin Disease.PLoS Pathog.2014,10 P.M.Elias,Structure and Function of the Stratum Corneum Permeability Barrier,Drug Dev.Res.13,1988,97,105 Nakatsuji,T et al.,The Microbiome Extends to Subepidermal Compartments of Normal Skin.Nat.Commun.2013,4 Schommer,N.N.;Gallo,R.L.,Structure and Function of the Human Skin Microbiome.Trends Microbiol.2013,21,660,668 Harding,C.Ret al.,Dandruff:a condition characterized by decreased levels of intercellular lipids in scalp stratum corneum and impaired barrier function.Arch.Dermatol.Res.2002,294,221,230
頭皮障害の治療を提供するための方法及びスキンケア組成物、例えば、これらに限定されるものではないが、頭皮のフケが多い状態を治療するための方法及び組成物を見出すことが依然として求められている。
本開示は、頭皮障害の治療を提供するための組成物及び方法に関する。より詳細には、本開示は、フケ症を含む頭皮障害を治療するための方法及び少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む組成物に関する。
予期せぬことに、本発明者らは、微生物、特にヤロウィア(Yarrowia)属の微生物が、フケを誘発するマラセチア属菌種(Malassezia species)、特にマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の脂質分解活性により生成した遊離脂肪酸を消費することができ、それにより、それを必要としている対象のフケが多い状態を軽減することが可能になることを確認した。更に本発明者らは、予期せぬことに、ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物が、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減し、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去し、且つマラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減できることを確認した。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であり、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一態様において、頭皮障害は、頭皮のフケが多い状態(脂漏性皮膚炎)、頭皮環境叢(ecoflora)のバランスの乱れ、頭皮の不快感、癜風、乾燥肌、皮膚刺激感、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であり、前記組成物は前記頭皮障害を軽減及び/又は治療し、この組成物は、サピエン酸(C16:1 cis-6)、パルミチン酸(C16:0)、ミリスチン酸(C14:0)、ペトロセリン酸(C18:1 cis-6)、ペンタデシル酸(C15:0)、ステアリン酸(C18:0)、ラウリン酸(C12:0)、レイック酸(leic acid)、及びこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される脂質を分解する。
一実施形態において、組成物は、頭皮障害の治療に使用するための、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含むスキンケア組成物であり、前記組成物は前記頭皮障害を軽減及び/又は治療し、この組成物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減する。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であり、前記組成物は前記頭皮障害を軽減及び/又は治療し、この組成物は、マラセチア属菌種(Malasseziaspecies)のバイオフィルムを除去する。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であり、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療し、この組成物はマラセチア属菌種(Malasseziaspecies)のバイオフィルム形成を防止又は低減する。
一実施形態において、組成物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 9773、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 18942、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20177、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CBS2073、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Phaff#50-47、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物である。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するための有効量のスキンケア組成物と、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分とを含むスキンケア製品であり、前記組成物は前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、組成物は、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分と、本明細書に記載するスキンケア製剤を、スキンケア製剤の総重量に対し少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、最大で10%と、を含む、ローション、セラム、ゼリー、クリーム、ゲル、エマルション、マスク、パッチ、又はスティックからなる群から選択される、スキンケア製品である。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法である。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法である。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、本明細書に記載するスキンケア組成物を含むスキンケア製品を前記対象に局所投与することを含む、方法である。
更に本明細書においては、本明細書に記載する組成物と、それを使用するための取扱説明書と、を含む、皮膚状態を治療するためのキットを提供する。幾つかの実施形態において、キットは、組成物を適用するように構成された1又は複数の塗布具を更に含む。
本開示の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者によってより容易に理解されるであろう。明確化のために別々の実施形態に関連して上に記載した及び後に記載する、本開示の特定の特徴を、組み合わせて単一の構成要素として提供することもできることを理解すべきである。反対に、簡潔化のために単一の実施形態に関連して記載した本開示の様々な特徴を、別々に又は任意のサブコンビネーションで提供することもできる。下記において、本発明の1つの幅広い態様との関連で言及される実施形態は、上に記載した本発明の他の幅広い態様のそれぞれに等しく適用できることが理解されるであろう。文脈に他の指示がない限り、以下に記載する実施形態は、組み合わせてもよいことが更に理解されるであろう。
頭皮障害
本開示の趣旨における「頭皮障害」という用語は、頭皮のフケが多い状態(脂漏性皮膚炎)、頭皮の環境叢の乱れ、頭皮の不快感、癜風、乾燥肌、皮膚刺激感、又はこれらの任意の組合せを包含する。
本開示の趣旨における「フケが多い状態」という用語は、頭皮の過度の乾燥又は過度の皮脂分泌によって現れ、場合によって、乾燥した若しくは脂肪性の(greasy)若しくは油性の(oily)フケが存在するか、若しくは掻痒さえ存在する、及び/又は表皮の炎症が存在することを特徴とし得る状態を指す。
乾燥したフケが多い状態は、頭皮が乾燥症であることを示しており、角質層の過度に速い再生が組み合わさっていることもある。乾性フケ片は、一般に、小さな白色又は灰色の薄片の形態にあり、頭皮全体及び衣服の上に広がり、見た目を不快にする。
頭皮の乾燥に伴う痒みは、紅斑、掻痒症、又は炎症さえ引き起こす可能性がある。
脂肪性若しくは油性のフケが多い状態は、脂漏性皮膚炎の一形態である。脂漏性皮膚炎に罹患している人は、紅斑が生じた頭皮が大きな脂肪性若しくは油性の黄色の鱗屑で覆われており、これが包みを形成するように蓄積する。頭皮には掻痒があり、患部に灼熱感を生じることも多い。この現象は、病原性微生物、特にマラセチア属菌種(Malassezia species、Malassezia spp.)が存在することによって増幅され得る。本明細書に記載するマラセチア属菌種(Malassezia species)としては、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta、M.restricta)及びマラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa、M.globosa)が挙げられるが、これらに限定されない。皮脂から脂肪酸を遊離する性質を有するこれらの微生物は、表皮のバリア機能を損傷し、炎症を生じさせる可能性がある。
頭皮がフケが多い状態にあると、皮膚のバリアはバランスを失い、その健全性及び水和作用が損なわれ、環境叢が乱れる。頭皮の皮膚には刺激及び掻痒が生じ、脆く、水分が低下し、感染しやすくなる。
予期せぬことに、本発明者らは、微生物、特にヤロウィア(Yarrowia)属の微生物が、フケを誘発するマラセチア属菌種(Malassezia species)の脂質分解活性により生成した遊離脂肪酸を消費できることを見出した。本開示に従い、微生物、特にヤロウィア(Yarrowia)属微生物を使用することにより、フケを誘発するマラセチア属菌種(Malassezia species)、特にマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の脂質分解活性により産生される遊離脂肪酸を低減することができ、それにより、それを必要としている対象のフケが多い状態を軽減することが可能になる。脂肪酸は、脂肪を好む他の細菌により産生される場合もある。脂肪酸の発生を低減することにより、遊離脂肪酸によって引き起こされるフケ症及び他の皮膚疾患を軽減することができる。
この低減は、頭皮を掻く局面の低減及びその結果としてのバリア機能の損傷の低減によって現れ得る。そうなると皮膚の刺激感及び掻痒感が減り、そして存在するフケが減るか、又は消失さえする。
微生物、その断片、その細胞溶解物、その発酵物、及びその代謝物
驚くべきことに、且つ予期せぬことに、本明細書に記載する結果から、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)及びマラセチア・グロボーサ(M.globosa)を一緒に増殖させると、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の存在下におけるマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖が大幅に低減される(例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)がマラセチア属菌種(Malassezia sp.)を阻害する)ことが示され、これは、ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物をフケが多い状態の微生物治療に使用できることを示している。本明細書に記載するように(表2、実施例3)、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)は無細胞培地でリパーゼ活性を発現した(リパーゼを分泌したことを示している)が、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)は、無細胞上清中で有意なリパーゼ活性を示さなかった。これは、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物のリパーゼ活性の大部分は細胞結合型(cell-bound)又は細胞内型(cell-associated)であったためと推定される。これは、驚くべきことであると共に、微生物治療にとって好ましい特徴である。その理由は、微生物治療が終了した後にリパーゼ活性は皮膚上に残存せず、遊離脂肪酸の蓄積を引き起こさないことになるためである。本明細書に記載するように、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)のリパーゼ活性により生成したオレイン酸の遊離脂肪酸(FFA)は、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)によってではなく、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)によって効率的に消費され(実施例5、表4)、このことは、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)がオレイン酸を利用できず(したがって、オレイン酸上で増殖できないか又は増殖が弱い)、その一方で、オレイン酸がヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に効率的に取り込まれたことを示す結果(実施例2、表1)とも一致している。オレイン酸の遊離脂肪酸(FFA)は炎症誘発性と見なされているので、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物がFFAを効率的に除去することは、炎症誘発性のオレイン酸FAAにより引き起こされるフケ症又は他の皮膚疾患に対抗する微生物治療の重要な特性である。
更に本発明者らは、予期せぬことに、ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物が、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減させ、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去し、且つマラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減できることを確認した。
本明細書において使用される「微生物」は、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、及び他の微視的生物を指す。
幾つかの実施形態において、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物を、それらの複製能を欠損させるための処理、例えば、熱曝露、乾燥、ガンマ線照射、又は紫外線照射に付すことができる。非複製性ヤロウィア(Yarrowia)属微生物は、死細胞又は細胞分裂できなくなった生細胞であり得る。非複製性ヤロウィア(Yarrowia)属微生物は、無傷細胞又は部分的若しくは完全に細胞溶解に付した細胞であり得る。幾つかの実施形態において、非複製性細胞は、無傷細胞及び細胞溶解物の混合物を含むことができる。
本明細書において使用される「プロバイオティクス」又は「プロバイオティクス微生物」という用語は、本明細書において互換的に使用され、十分な量で(局所的又は経口的に)投与すると、宿主生物に有益に作用する、即ち、宿主生物のフケが多い状態を軽減するなどの、1又は複数の実証可能な利益を与える生きた微生物(例えば、細菌又は酵母を含む)を指す。
一態様において、本発明に使用するのに適した微生物として、ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物が挙げられる。
一実施形態において、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 9773、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 18942、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20177、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CBS2073、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Phaff#50-47、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される少なくとも1種の微生物である。
本明細書において使用される用語「断片(fraction)」又は「少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物(microorganism of the genus Yarrowia)の断片」又は「少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属微生物(microorganism of Yarrowia)の断片」又は「その断片」は、より詳細には、前記完全な微生物から類推して、頭皮のフケが多い状態の治療に効力を示す前記微生物の断片を指す。少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の断片としては、前記少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物から得られる代謝物(ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の代謝物とも称する)が挙げられる。一態様において、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の断片は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の代謝に由来し、頭皮障害の治療に有効性も示す、1種又は複数種の代謝物(活性化合物)を含む。
本明細書において使用される「代謝物」又は「少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の代謝物」又は「その代謝物」又は「ヤロウィア(Yarrowia)属微生物代謝物(Yarrowia metabolite)」又は「活性代謝物」という用語は、互換的に使用され、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の代謝に由来する、頭皮障害の治療に有効性も示す任意の物質を指す。一態様において、1種又は複数種の代謝物は、頭皮障害の治療に使用するための、最小1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の培養(発酵)中に産生されたものである。頭皮障害の治療に使用するためのこのような少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の代謝物としては、一次代謝物(正常な成長、発達、及び繁殖に直接関与する代謝物)、可溶性代謝物、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、二次代謝物、ポリヌクレオチド、及び多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の製剤に断片を直接使用してもよいこと、又は活性物質(代謝物)の1種若しくは複数種を、使用前に任意の好適な手段によって断片から単離してもよいことは明らかであろう。
一実施形態によれば、本発明に使用するのに適したヤロウィア(Yarrowia)属微生物代謝物及び/又は断片は、溶解物の形態で投与することができる。
本明細書において使用される「細胞溶解物」又は「溶解物」という用語は、任意の好適な手段で溶解された細胞を指す。用語「細胞溶解物」又は「溶解物」は、従来、生体細胞を、細胞溶解(lysis)として知られる現象を介して破壊又は分解(dissolution)し、このようにして、対象の微生物の細胞内に天然に含まれる細胞内生体構成成分を放出させることにより得られる物質を指す。本開示の趣旨における用語「溶解物」は、対象とする微生物の溶解により得られた溶解物全体又はその断片のみを分け隔てなく指すために用いられる。したがって、使用される溶解物は、全部又は一部が、細胞内生体構成成分から、並びに細胞壁及び細胞膜の構成成分から形成されている。有利には、本発明に使用される溶解物は、対象の微生物の溶解を介して得られた全細胞溶解物(whole lysate)であり得る。この細胞溶解は、任意の好適な手段により達成することができる。これらに限定されるものではないが、浸透圧ショック、ヒートショック、超音波処理(ultrasonication、sonication)、ホモジナイゼーション、剪断、化学的溶解、又は遠心分離型の機械的応力などにより達成することができる。
一態様において、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の細胞溶解物は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の代謝に由来し、頭皮障害の治療に有効でもある1種又は複数種の代謝物(活性化合物)を含む。
細胞溶解物を本発明の製剤に直接使用してもよいこと、又は活性物質(代謝物)の1種又は複数種を、使用前に任意の好適な手段によって細胞溶解物から単離してもよいことは明らかであろう。
溶解物は、様々な形態、溶液の形態、又は粉末形態で使用することができる。微生物は、本発明による組成物中に、生きた形態、半活性(semi-active)若しくは不活性化形態、又は死んだ形態で含まれ得る。
本発明の趣旨における「不活性化された」又は「死んだ」微生物とは、培養物中にもはやコロニーを形成することができない微生物である。死んだ又は不活性化された微生物は、細胞膜が無傷であっても破壊されていてもよい。死んだ又は不活性化された微生物は、当業者に知られている任意の方法により得られたものとすることができる。
幾つかの実施形態において、細胞片は使用前に取り除かれる。一実施形態において、細胞溶解物は使用前に濾過される。一実施形態において、細胞は、例えば、超音波処理、ホモジナイゼーション、剪断、又は化学的溶解により溶解される。
本明細書において使用される用語「発酵物」は、1種又は複数種の生きた微生物株を栄養培地中で増殖させた組成物と理解されたい。一態様において、「発酵物」は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の細胞培養物から細胞を除去した上清を指す。一実施形態において、細胞は遠心分離により除去される。一実施形態において、発酵物(細胞培養物の上清)は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の細胞を培養した培養培地を濾過することにより得られる。
一態様において、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の発酵物は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の代謝に由来し、頭皮障害の治療に有効でもある、1種又は複数種の代謝物(活性化合物)を含む。
発酵物を本発明の製剤に直接使用してもよいこと、又は活性物質(代謝物)の1種又は複数種を、使用前に任意の好適な手段によって発酵物から単離してもよいことは明らかであろう。
一態様において、発酵物は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の発酵中に産生された可溶性代謝物などの1種又は複数種の代謝物を含むことができるが、これらに限定されない。
一実施形態において、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物(microorgansim)の培養(発酵)に由来する発酵物を、本発明の方法及び/又は使用に用いることができる。
発酵物の調製に使用される栄養培地は、選択された微生物を増殖させるのに適した必要な栄養素を含む任意の培地である。好適な栄養素としては、アミノペプチド、ペプチド、酵母エキス、及び/又はビタミン類が挙げられるが、これらに限定されない。培地は、乳などの乳製品、穀類、果物、及び/又は野菜を基材とすることができる。
本明細書において使用される用語「可溶性代謝物」は、代謝物又は細胞を取り除いた細胞培養物の上清中に存在する代謝物を指す。一実施形態において、培養物は、少なくともOD600が約0.5となる細胞密度まで増殖させる。一実施形態において、細胞は遠心分離により除去される。一実施形態において、上清は濾過される。上清を本発明の製剤に直接使用してもよいこと、又は代謝物の1種又は複数種を、使用前に任意の好適な手段によって上清から単離してもよいことは明らかであろう。
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の細胞を全部又は実質的に全部除去したヤロウィア(Yarrowia)属微生物発酵物を含むことができる。細胞を増殖培地から分離するための方法は当該技術分野においてよく知られており、物理的方法、例えば、細胞ペレット及び培養物上清を生成するための遠心分離、濾過、限外濾過、タンジェンシャルフロー濾過、全量濾過、又は逆浸透の力を利用することができる。これに替えて、又はこれに加えて、分離方法は、リガンドに基づく、例えば、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物に特異的に結合する抗体を含む方法とすることができる。抗体は磁気ビーズなどの固体支持体に結合させることができる。
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、それらを増殖させた培地から部分的に又は実質的に分離されたヤロウィア(Yarrowia)属微生物を含む。ヤロウィア(Yarrowia)属微生物は、生きていてもよいし、又は非複製性(例えば熱処理によって、例えば不活性化されたもの)であってもよい。細胞は、細胞の生存能力が保存される条件下で凍結乾燥、即ち、フリーズドライに付すことができる。凍結乾燥の方法は当該技術分野においてよく知られている。
一実施形態において、発酵物は、生存不能細胞(例えば、無傷細胞)から本質的になる、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物を含むことができる。
他の実施形態において、発酵物は、生存細胞(例えば、無傷の培養不能細胞)から本質的になる、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物を含むことができる。
発酵物に関連する用語「から本質的になる」は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の少なくとも90%が指定された特性(例えば、無傷の生存不能細胞)を有するか又は生存細胞(例えば、無傷の培養不能細胞)であることを含む。好適には、少なくとも95%が指定された特性を有する。好適には、少なくとも97%が指定された特性を有する。好適には、少なくとも99%が指定された特性を有する。幾つかの実施形態においては、少なくとも100%が指定された特性を有する。
本明細書において使用される用語「無細胞発酵物」(「発酵物上清」と同義)は、発酵物が、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の生存細胞を実質的に含まないことを意味する。
一実施形態において、組成物は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の発酵に由来する発酵物上清を有効量含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であり、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、本発明の組成物並びに方法及び/又は使用に使用するための発酵物は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の生存細胞を実質的に含まなくてもよく、通常、生存細胞は0(又は実質的に0)個/mLの発酵物である。
フケが多い状態などの皮膚疾患を治療するためのスキンケア組成物及びスキンケア製品
本明細書で使用される場合、用語「スキンケア組成物」は、スキンケア効果(skin care benefit)を提供することができる少なくとも1種のスキンケア有益剤(skin care benefit agent)を含む組成物を指す。
本明細書において使用される用語「スキンケア有益剤」又は「活性剤」は、互換的に使用され、スキンケア効果をもたらすことができるヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又は前記微生物の断片及び/又は前記微生物の細胞溶解物及び/又は前記微生物の発酵物及び/又は前記微生物の代謝物を指す。
本明細書において使用される用語「スキンケア効果」は、皮膚に局所的に適用した場合に、活性剤(又は有効量の前記活性剤を含むスキンケア組成物及び/若しくはスキンケア製品)によってもたらされる有益な効果を指す。本発明の一態様において、スキンケア効果は、フケが多い状態の防止、フケが多い状態の軽減、フケが多い状態の治療、皮膚(頭皮)上でのマラセチア属菌種(Malassezia species)の発生の低減、皮膚(頭皮)上のマラセチア属菌種(Malassezia species)が形成するバイオフィルムの除去、皮膚(頭皮)上のマラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成の防止若しくは低減、皮膚のバリア機能の向上、皮膚保湿(皮膚の保湿を維持、回復、及び/又は強化することによる、皮膚の脱水からの保護)、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される。
本明細書において使用される用語「バイオフィルム」は、表面に付着した細胞外高分子マトリックス内に包埋された微生物の群落を指す。細胞外高分子マトリックスは概して、細胞外DNA、タンパク質、及び多糖類から構成される高分子の集塊である。バイオフィルムは、1種又は複数種の微生物を有し得、水を更に含み、捕捉された他の粒状物を含み得る。微生物は、グラム陽性菌若しくはグラム陰性菌(好気性又は嫌気性);藻類、原生動物、及び/又は酵母若しくは糸状菌であり得る。一実施形態において、バイオフィルムは、1種又は複数種のマラセチア属菌種(Malassezia species)を含む生存細胞である。
本明細書において使用される用語「表面」は、バイオフィルムの付着が可能になるのに十分な固まり(mass)を有する任意の構造体を意味する。表面としては、硬質表面及び軟質表面が挙げられる。硬質面としては、金属、ガラス、セラミックス、木材、鉱物(岩石、石、大理石、御影石)、コンクリートなどの骨材、プラスチック、複合材料、硬質ゴム材、及び石膏が挙げられるが、これらに限定されない。他の表面は、皮膚、頭皮、又はケラチンなどの生物学的表面であり得る。
スキンケア用の更なる有益剤としては、フケ防止活性剤を挙げることができる。
フケ防止活性剤としては、例えば、角質溶解剤、例えば、サリチル酸及びその様々な形態にある硫黄、角化調整剤、例えば、亜鉛ピリチオン、ピリジンチオン塩、トリハロカルバミド、トリクロサン、アゾール化合物、抗真菌性ポリマー、アラントイン、ステロイド、例えば、局所用コルチコステロイド、タール又はポリタール(polytar)(コールタール)、ウンデシレン酸、フマル酸、アリルアミン、及びこれらの混合物、シクロピロックス、オクトピロックス、ピロクトンオラミン、プロピオン酸クロベタゾール、ベタメタゾン吉草酸エステル、ティーツリー油、タイム及びイヌハッカの混合油、局所用抗真菌剤、例えば、硫化セレン、イミダゾール(例えば、ケトコナゾール)、ヒドロキシピリドン(例えば、シクロピロックス)、自然療法薬、例えば、メラレウカ属植物(Melaleuca sp.)油、アロエベラ、及びプロバイオティクス微生物(Indian J.Dermatol,2010 Apr-Jun;55(2):130-134)が挙げられる。
一態様において、スキンケア有益剤(活性剤)は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物からなる。スキンケア有益剤としては、脂質消費型競争(lipid consumption competition)を介してフケを誘発する微生物の増殖を阻害する少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/若しくはその断片及び/若しくはその細胞溶解物及び/若しくはその発酵物及び/若しくはその代謝物、リパーゼ阻害剤、小分子、又はこれらの組合せのいずれか一つが挙げられる。少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物のスキンケア有益剤は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去する剤(活性物質)及びマラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する剤(活性物質)を更に含む。
一態様において、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物からなるスキンケア有益剤(活性剤)は、スキンケア組成物に配合される。
本発明において使用するためのスキンケア組成物は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の少なくとも1種の代謝物、及び/又はヤロウィア(Yarrowia)属微生物の少なくとも1種の細胞溶解物を含むことができることが理解されるであろう。
本発明に従い使用するためのスキンケア組成物は、例えば、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を、少なくとも約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、約10.0重量%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約25.0重量%、約30.0重量%、約35.0重量%、約40.0約45.0重量%、約50.0重量%含むことができることは更に明らかであろう。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であり、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であり、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一態様において、頭皮障害は、頭皮のフケが多い状態(脂漏性皮膚炎)、頭皮環境叢のバランスの乱れ、頭皮の不快感、癜風、乾燥肌、皮膚刺激感、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であり、前記組成物は前記頭皮障害を軽減及び/又は治療し、この組成物は、サピエン酸(C16:1 cis-6)、パルミチン酸(C16:0)、ミリスチン酸(C14:0)、ペトロセリン酸(C18:1 cis-6)、ペンタデシル酸(C15:0)、ステアリン酸(C18:0)、ラウリン酸(C12:0)、レイック酸(leic acid)、及びこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される脂質を分解する。
一実施形態において、組成物は、頭皮障害の治療に使用するための、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含むスキンケア組成物であり、前記組成物は前記頭皮障害を軽減及び/又は治療し、この組成物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減する。
一実施形態において、スキンケア組成物又はスキンケア製剤は、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分と、本明細書に記載するスキンケア製剤を、スキンケア製剤の総重量に対し重量基準で少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、最大で10%とを含む、ローション、セラム、ゼリー、クリーム、ゲル、エマルション、マスク、パッチ、又はスティックである。
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、単離されたヤロウィア(Yarrowia)属微生物と皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分である担体との組合せを含むことができる。ヤロウィア(Yarrowia)属微生物は、生きていてもよいし、又は非複製性(例えば熱処理によって、例えば不活性化されたもの)であってもよい。投与量は変化し得るが、約10~約1012cfu/g乾燥重量相当、例えば、1×10cfu/g、5×10cfu/g、1×10cfu/g、5×10cfu/g、1×10cfu/g、5×10cfu/g、1×10cfu/g、5×10cfu/g、1×10cfu/g、5×10cfu/g、1×10cfu/g、5×10cfu/g、1×10cfu/g、5×10cfu/g、1×10cfu/g、5×10cfu/g、1×1010cfu/g、5×1010cfu/g、1×1011cfu/g、5×1011cfu/g、1×1012cfu/g乾燥重量の範囲とすることができる。
幾つかの実施形態において、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物は、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分と混合する前又は後に、従来の安定化技法を用いて安定化させることができる。
一実施形態において、スキンケア組成物は、皮膚に投与するためのスキンケア製品/製剤に配合される。
本発明に使用するためのスキンケア組成物は、1種又は複数種のプロバイオティック細菌に加えて、ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を更に含むことができることが更に理解されるであろう。
スキンケア組成物は、防腐剤、pH調整剤、抗酸化剤、及びキレート剤からなる群から選択される追加の化合物を含むことができる。
防腐剤としては、パラベン、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェニルエチルアルコール、エチルラウリルアルギン酸塩(Lauryl ethyl arginate)(LAE)、及びこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
pH調整剤としては、弱酸、強酸、pHを調整することができる任意の化合物、例えばクエン酸(これに限定されない)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載するスキンケア組成物又は任意の有効量の前記スキンケア組成物を、製剤及び製品に使用することができる。
本明細書において使用される「スキンケア製品」は、本明細書に記載の有効量のスキンケア組成物を含む製品を指し、例えば、化粧製品、水溶液、エマルション、セラム、ゼリー、マスク、パッチ、ローション、局所保湿剤、クリーム、パスタ剤、芳香のある軟膏(balm)、軟膏、ポマード、ゲル、液体、スプレー、フォーム、キット、又はこれらの組合せのいずれか一つが挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態において、スキンケア製品は、皮膚/頭皮に局所的に適用するために配合される。
一実施形態において、組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するための有効量のスキンケア組成物と、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分とを含むスキンケア製品であり、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、スキンケア製品は、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分と、本明細書に記載するスキンケア製剤を、スキンケア製剤の総重量に対し重量基準で少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、最大で10%とを含む、ローション、セラム、ゼリー、クリーム、ゲル、エマルション、マスク、パッチ、又はスティックである。
一実施形態において、スキンケア製品は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物を含む製品であって、微生物及び/又は前記微生物を含むスキンケア組成物は、ゲル、エマルション、ヒドロゲル、ルース若しくはコンパクトパウダー、懸濁液若しくは溶液、スプレー、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される少なくとも1つの形態に配合される。
本発明に使用するための局所用製剤は、クリーム、ローション、スプレー、溶液、ゲル、軟膏、パスタ剤、プラスター剤、化粧料(paint)、生体接着剤、懸濁液などの頭皮又は皮膚表面に適用するのに適した任意の形態とすることができ、並びに/又はリポソーム、ミセル、及び/若しくはマイクロスフェアを含有するように調製することができる。この種の製剤は、体表面に製剤を適用したとき及びその後に、体表面から蒸発する水分を製剤内に保持するように、密封性の覆い(occlusive overlayer)と併用することができる。
局所用製剤としては、当該技術分野において知られている皮膚科用媒体中に活性成分が溶解又は分散しているもの(例えば、水性又は非水性ゲル、軟膏、油中水又は水中油エマルション)が挙げられる。この種の媒体の構成要素は、水、水性緩衝液、非水性溶媒(エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、グリコフロール、又はグリセロールなど)、油(例えば、流動パラフィンなどの鉱油、天然若しくは合成トリグリセリド、又はジメチコンなどのシリコーン油)を含むことができる。特に、製剤の性質に加えてその意図されている用途及び適用部位に応じて、採用する皮膚科用媒体は、次に示す一覧から選択される1種又は複数種の成分(例えば、水性ゲルに配合する場合は、水以外の成分)を含むことができる:可溶化剤又は溶媒(例えば、αβ-シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン又はアルコール若しくはポリオール、例えば、エタノール、プロピレングリコール、若しくはグリセロール);増粘剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はカルボマー);ゲル化剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー);防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、クロルブトール、ベンゾエート、ソルビン酸カリウム、又はEDTA若しくはその塩);及びpH緩衝剤(リン酸二水素塩及びリン酸水素塩の混合物又はクエン酸及びリン酸水素塩の混合物など)。
スキンケア製品としては、溶媒としての水と、以下に限定されないが、活性剤、香料、着色剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、又はこれらの組合せのいずれか一つなどの水溶性添加剤(溶質)とを含む液体ローション(真溶液)が挙げられる。
スキンケア製品としては、エマルションなどの分散体(以下に限定されないが、以下のものなど:液体中液体[油中水型W/O、O/W、W/O/W]、懸濁液[固体/液体型又は液体/固体型]、エアロゾル[液体/気体型又は固体/気体型]、フォーム/ムース[気体/液体型又は気体/エマルション型又は気体/固体型])が挙げられる。水中油型[O/W]エマルションの例としては、水相、乳化剤、脂肪相及び少なくとも1種の添加剤の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。水相は、水、湿潤剤、及び安定剤(以下に限定されないが、合成ポリマー、カルボマー、天然ポリマー、キサンタンガム、アカシアガム、カラギーナン、ジェラン、又はこれらの組合せのいずれか一つなど)を含むことができる。乳化剤としては、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、両性乳化剤、シリコーン乳化剤、自己乳化剤(auto emulsifying agent)が挙げられるが、これらに限定されない。脂肪相(親油性成分)としては、ロウ、バター、脂肪酸エステル、トリグリセリド、植物油、鉱油(パラフィン)、シリコーン、及び増粘剤/油ゲル化剤(oil jellifying agent)が挙げられるが、これらに限定されない。添加剤としては、防腐剤、香料(殆どの場合、親油性)、着色剤、抗酸化剤、キレート剤、活性剤、pH調整剤(クエン酸、乳酸、AHA)、中和剤/NaOHなどの強塩基性剤、トリメチルアミン(アクリルポリマーをゲル化するため)及び粉末が挙げられるが、これらに限定されない。
スキンケア製品としては、水相(水、湿潤剤、活性剤を含む)、ゲル化剤(以下に限定されないが、合成ポリマー、天然ポリマー、キサンタンガム、アカシアガム、カラギーナン、ジェランなど)、及び添加剤(以下に限定されないが、芳香剤、高HLB界面活性剤、着色剤、活性剤、防腐剤系、pH調整剤、中和剤、粉末など)を含む水性ゲルが挙げられる。
スキンケア製品としては、水相(水、湿潤剤)、界面活性剤、添加剤(以下に限定されないが、香料、高HLB界面活性剤、着色剤、活性剤、防腐剤系、pH調整剤、中和剤、粉末など)、及び任意選択によるゲル化剤(以下に限定されないが、合成ポリマー、天然ポリマー、キサンタンガム、アカシアガム、カラギーナン、ジェランなど)を含む、清浄化剤/界面活性剤系(以下に限定されないが、シャンプー、シャワージェル、ミセラーウォーターなど)が挙げられる。
本明細書に記載するように、本明細書に記載する少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含むスキンケア製品又は製剤は、フケが多い状態の防止、フケが多い状態の軽減、フケが多い状態の治療、皮膚/頭皮上におけるマラセチア属菌種(Malassezia species、Malassezia spp.)の発生の低減、皮膚のバリア機能の向上、皮膚保湿(皮膚の保湿を維持、回復、及び/又は強化することによる、皮膚の脱水からの保護)、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択されるスキンケア効果を提供する。
本発明のスキンケア製品(製剤)には、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される担体を組み込むこともでき、これは当該技術分野において使用されている任意の担体とすることができる。その例として、水、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、単糖類、二糖類、多糖類、炭化水素系油、脂肪及び油、ロウ、脂肪酸、シリコーン油、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、並びにこの種の担体の水系混合物及びエマルション系混合物が挙げられる。
本明細書において使用される用語「皮膚科学的に許容される」又は「皮膚科学的に許容される担体」又は「スキンケア的に許容される」又は「スキンケア的に許容される担体」は、皮膚科用又はスキンケア製剤に、望ましくない生物学的効果又は製剤の他の成分との望ましくない相互作用を引き起こすことなく組み込むことができる化合物又は組成物を指す。
本明細書において使用される「担体」又は「媒体」は、局所的に適用される組成物中に組み込むのに適した担体材料を指す。本明細書において有用な担体及び媒体としては、無毒であり、それを含有している製剤の他の成分と有害な形で相互作用しない、当該技術分野において知られている任意の材料が挙げられる。
用語「水性」は、水を含むか又は皮膚若しくは粘膜組織に適用した後に水を含むようになる製剤を指す。
本明細書に記載のスキンケア製品は、1種又は複数種の皮膚科学的又はスキンケア的に許容される公知の成分又はそれ以外の、スキンケアに使用するのに有効な成分を更に含むことができる。但し、任意成分が本明細書に記載の必須成分と物理的及び化学的に適合性があるか、さもなければ製品の安定性、審美性、又は性能を過度に損なわないことを条件とする。このような任意成分の非限定的な例は、International Skin Care Ingredient Dictionary,Ninth Edition,2002,and CTFA Skin Care Ingredient Handbook,Tenth Edition,2004.に開示されている。
一態様では、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される成分は、約10重量%~約99.9重量%、或いは約50重量%~約95重量%、或いは約75重量%~約95重量%の皮膚科学的に許容される担体を含む、皮膚科学的に許容される担体である。組成物と一緒に使用するのに適した担体としては、例えば、ムース、トニック、ゲル、皮膚保湿剤、及びローションの配合に使用されるものを挙げることができる。担体は、水;有機油;シリコーン、例えば、揮発性シリコーン、アミノ又は非アミノシリコーンガム又は油、及びこれらの混合物;鉱油;植物油、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、菜種油、ヤシ油、小麦胚芽油、甘扁桃油、アボカド油、マカダミア油、アプリコット油、ベニバナ油、ククイ油、アマナズナ油、テリハボク種子油、レモン油、及びこれらの混合物;ロウ;並びに有機化合物、例えば、C~C10アルカン、アセトン、メチルエチルケトン、揮発性有機C~C12アルコール、C~C20酸及びC~Cアルコールのエステル、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、及びミリスチン酸イソプロピル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、C10~C30脂肪アルコール、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコール;C10~C30脂肪酸、例えば、ラウリン酸及びステアリン酸;C10~C30脂肪アミド、例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド;C10~C30脂肪アルキルエステル、例えば、C10~C30脂肪アルキルベンゾエート;ヒドロキシプロピルセルロース;並びにこれらの混合物を含み得る。一態様では、担体は、水、脂肪アルコール、揮発性有機アルコール、及びこれらの混合物を含む。当業者であれば他の担体を配合することができる。
本明細書に記載のスキンケア製品は、組成物に所望の粘度を付与するのを助けるゲル化剤を約0.1%~約10%、或いは約0.2%~約5.0%更に含み得る。好適な任意選択的なゲル化剤の非限定的な例としては、架橋カルボン酸ポリマー;非中和型架橋カルボン酸ポリマー;非中和型架橋修飾カルボン酸ポリマー;架橋エチレン/無水マレイン酸コポリマー;非中和型架橋エチレン/無水マレイン酸コポリマー(例えば、Monsantoから市販されているEMA 81);非中和型架橋アルキルエーテル/アクリレートコポリマー(例えば、Allied Colloidsから市販されているSALCARE(商標)SC90);ポリアクリル酸ナトリウムの非中和型架橋コポリマー、鉱油、及びPEG-1トリデセス-6(例えば、Allied Colloidsから市販されているSALCARE(商標)SC91);メチルビニルエーテル及び無水マレイン酸の非中和型架橋コポリマー(例えば、International Specialty Productsから市販されているSTABILEZE(商標)QM-PVM/MAコポリマー);疎水化変性された非イオン性セルロースポリマー;疎水化変性されたエトキシ化ウレタンポリマー(例えば、Union Carbideから市販されているアルカリ膨潤性ポリマーであるUCARE(商標)Polyphobe Series);並びにこれらの組合せが挙げられる。これに関連する用語「非中和型」は、任意選択のポリマー及びコポリマーゲル化剤材料が非中和型酸モノマーを含有していることを意味する。
皮膚科学的又はスキンケア的に許容される媒体(medium)は、脂肪物質を、製品の総重量に対して一般に約10~約90重量%の割合で含有することができ、ここで脂肪相は、少なくとも1種の液体、固体、又は半固体の脂肪物質を含有する。脂肪物質としては、油、ロウ、ガム状物質、及びいわゆるペースト状脂肪物質が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、製品は、油中水型又は水中油型エマルションなどの安定した分散液の形態であってもよい。更に、スキンケア製品は、1種又は複数種の従来のスキンケア用又は皮膚科用添加剤又は補助剤、例えば、以下に限定されないが、抗酸化剤、防腐剤、充填剤、界面活性剤、UVA及び/又はUVBサンスクリーン剤、香料、増粘剤、湿潤剤、及びアニオン性、非イオン性、又は両性ポリマー、並びに染料又は顔料(着色剤)を含有し得る。
皮膚科学的に許容される担体は、少なくとも1種の乳化剤、少なくとも1種の界面活性剤、又はこれらの任意の組合せを含有する保湿製剤であってもよい。
一実施形態において、スキンケア製品は、第1スキンケア組成物及び第2スキンケア組成物を含む製品であり、第1スキンケア組成物は、有効量少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物からなる第1活性剤を含み、第2スキンケア組成物は、少なくとも有効量の、少なくとも1種の局所投与用第2活性剤(フケ防止活性剤、スキンコンディショニング剤、スキンケア活性成分材料など)を含む。
スキンケア組成物及びスキンケア製品は、サンスクリーン剤、保湿剤、湿潤剤、皮膚に有益な物質、界面活性剤などの付着性付与剤、閉塞剤、水分バリア、潤滑剤、皮膚軟化剤、抗老化剤、帯電防止剤、研磨剤、抗微生物剤、コンディショナー、スクラブ剤、香料、粘度付与剤、塩、脂質、リン脂質、ビタミン類、気泡安定剤、pH調整剤、防腐剤、懸濁化剤、シリコーン油、シリコーン誘導体、精油、油、脂肪、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ロウ、ポリオール、炭化水素、及びこれらの混合物を含む、スキンケア活性成分の材料を更に含み得る。
スキンケア組成物又はスキンケア製品に含まれ得る他の成分としては、皮膚疾患を治療又は予防するための、スキンケア効果を提供するための、又は皮膚に保湿効果を提供するための少なくとも1つの活性成分、例えば、酸化亜鉛、ワセリン、白色ワセリン、鉱油、タラ肝油、ラノリン、ジメチコン、硬質脂肪、ビタミンA、アラントイン、カラミン、カオリン、グリセリン、又はコロイド状オートミール、及びこれらの組合せ、1種又は複数種の天然保湿因子(例えば、セラミド、ヒアルロン酸、グリセリン、スクワラン、アミノ酸、コレステロール、脂肪酸、トリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ糖脂質、尿素、リノール酸、グリコサミノグリカン、ムコ多糖、乳酸ナトリウム、又はピロリドンカルボン酸ナトリウムなど)、グリセリド、杏仁油、キャノーラ油、スクワラン、スクワレン、ヤシ油、トウモロコシ油、ホホバ油、ホホバワックス、レシチン、オリーブ油、ベニバナ油、ゴマ油、シア脂、大豆油、甘扁桃油、ヒマワリ油、ティーツリー油、シア脂、ヤシ油、コレステロール、コレステロールエステル、ワックスエステル、脂肪酸、及びオレンジ油が挙げられるが、これらに限定されない。
スキンケア製品に一般に使用されている、任意の数の皮膚科学的に許容される材料もまた、スキンコンディショニング剤及び皮膚着色剤などの本スキンケア製品に組み入れることができる。
本明細書で定義されるスキンコンディショニング剤としては、皮膚を引き締める収斂剤;死んだ皮膚細胞を除去するスクラブ剤;滑らか、柔軟、且つしなやかな外観を維持するのを助ける皮膚軟化剤;皮膚表層の水分含量を増加させる湿潤剤;皮膚表面からの水の蒸発を遅らせる閉塞剤;及び乾燥若しくは損傷した皮膚の外観を強化するか、又は剥落を減少させ、しなやかさを回復させる種々の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。スキンコンディショニング剤は当該技術分野においてよく知られており(例えば、Green et al.(国際公開第01/07009号パンフレット)を参照)、様々な供給元から市販されている。スキンコンディショニング剤の好適な例としては、ラクトビオン酸、グルコン酸、アルファ-ヒドロキシ酸、ベータ-ヒドロキシ酸、ポリオール、ヒアルロン酸、D,L-パンテノール、ポリサリチレート、ビタミンAパルミテート、ビタミンEアセテート、グリセリン、ソルビトール、シリコーン、シリコーン誘導体、ラノリン、天然油、キシリトール、フコース、ラムノース、及びトリグリセリドエステルが挙げられるが、これらに限定されない。スキンコンディショニング剤としては、ポリサリチル酸、プロピレングリコール(CAS番号57-55-6、Dow Chemical、Midland、MI)、グリセリン(CAS番号56-81-5、Proctor & Gamble Co.、Cincinnati、OH)、グリコール酸(CAS番号79-14-1、DuPont Co.、Wilmington、DE)、乳酸(CAS番号50-21-5、Alfa Aesar、Ward Hill、MA)、リンゴ酸(CAS番号617-48-1、Alfa Aesar)、クエン酸(CAS番号77-92-9、Alfa Aesar)、酒石酸(CAS番号133-37-9、Alfa Aesar)、グルカル酸(CAS番号87-73-0)、ガラクタル酸(CAS番号526-99-8)、3-ヒドロキシ吉草酸(CAS番号10237-77-1)、サリチル酸(CAS番号69-72-7、Alfa Aesar)、及び1,3プロパンジオール(CAS番号504-63-2、DuPont Co.、Wilmington、DE)が挙げられる。ポリサリチル酸は、Whiteらによる米国特許第4,855,483号明細書に記載されている方法によって調製することができ、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。グルカル酸は、Merbouhらによって記載されている方法(Carbohydr.Res.336:75-78(2001))により合成することができる。3-ヒドロキシ吉草酸は、Bramucciによる国際公開第02/012530号パンフレットに記載されているように調製することができる。
スキンケア組成物及びスキンケア製品は、着色剤/染料、香料、活性剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、及び抗酸化剤などのスキンケア添加剤を含むことができるが、これらに限定されない。
一実施形態において、スキンケア製品は、第1スキンケア組成物及び第2スキンケア組成物を含み、第1スキンケア組成物は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物からなる有効量の第1活性剤を含み、第2スキンケア組成物は、少なくとも有効量の、フケ防止活性剤から選択される少なくとも1種の局所投与用第2活性剤を含む。この種のフケ防止活性剤としては、例えば、角質溶解剤、例えば、サリチル酸及びその様々な形態にある硫黄、角化調整剤、例えば、亜鉛ピリチオン、ピリジンチオン塩、トリハロカルバミド、トリクロサン、アゾール化合物、抗真菌性ポリマー、アラントイン、ステロイド、例えば、局所用コルチコステロイド、タール又はポリタール(コールタール)、ウンデシレン酸、フマル酸、アリルアミン、及びこれらの混合物、シクロピロックス、オクトピロックス、ピロクトンオラミン、プロピオン酸クロベタゾール、ベタメタゾン吉草酸エステル、ティーツリー油、タイム及びイヌハッカの混合油、局所用抗真菌剤、例えば、硫化セレン、イミダゾール(例えば、ケトコナゾール)、ヒドロキシピリドン(例えば、シクロピロックス)、自然療法薬、例えば、メラレウカ属植物(Melaleuca sp.)油、アロエベラ、及びプロバイオティクス微生物(Indian J.Dermatol,2010 Apr-Jun;55(2):130-134)が挙げられる。
一実施形態において、スキンケア製品は、第1スキンケア組成物及び第2スキンケア組成物を含み、第1スキンケア組成物は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物からなる有効量の第1活性剤を含み、第2スキンケア組成物は、少なくとも有効量の、フケ防止活性剤から選択される少なくとも1種の局所投与用第2活性剤を含み、第1スキンケア組成物は、ゲル、エマルション、ヒドロゲル、ルース若しくはコンパクトパウダー、懸濁液若しくは溶液、又はスプレー溶液からなる群から選択される少なくとも1種の形態に配合される。
本明細書に記載するスキンケア組成物及びスキンケア製品はまた、1又は複数のスキンケア効果を提供するキット、例えば、これらに限定されるものではないが、フケが多い状態を防止又は軽減するためのキットの一部とすることもできる。
一態様において、キットは、フケが多い状態を治療するための少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物と、それを必要とする対象に投与するための書面による説明書とを含むキットである。
一態様において、キットは、それを必要とする対象のフケが多い状態を治療するためのスキンケア製品を含むキットであり、前記スキンケア製品は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物と、前記スキンケア製品を、それを必要とする対象に投与するための書面による説明書とを含む。
頭皮障害を微生物治療するための方法
本明細書においては、それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法を更に提供する。
一態様において、頭皮障害は、頭皮のフケが多い状態(脂漏性皮膚炎)、頭皮環境叢のバランスの乱れ、頭皮の不快感、癜風、乾燥肌、皮膚刺激感、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
一態様において、微生物は局所投与される。
一実施形態において、微生物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 9773、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 18942、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20177、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CBS2073、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Phaff#50-47、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物である。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法である。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であって、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法である。
本明細書に記載するスキンケア組成物及びスキンケア製品を、頭皮障害を治療するための方法に使用することができる。
一実施形態において、方法は、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物を投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であり、前記スキンケア組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含み、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、方法は、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物を投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であり、前記スキンケア組成物は、有効量のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含み、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、方法は、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア製品を投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であり、前記スキンケア製品は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含み、前記スキンケア製品は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、方法は、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア製品を投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であり、前記スキンケア製品は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含み、前記スキンケア製品は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する。
一態様において、スキンケア組成物又はスキンケア製品は局所投与される。
更に本明細書においては、本明細書に記載する組成物と、それを使用するための取扱説明書とを含む、皮膚状態を治療するためのキットを提供する。幾つかの実施形態において、キットは、組成物を適用するように構成された1又は複数の塗布具を更に含む。
フケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法
本明細書においては、それを必要とする対象のフケが多い状態を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法を更に提供する。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法である。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法である。
一態様において、微生物は局所投与される。
一態様において、微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 9773、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 18942、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20177、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CBS2073、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Phaff#50-47、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物である。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法であり、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、単一の組成物に配合される。
一態様において、微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、局所投与される。
一実施形態において、方法は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であり、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、単一の組成物に配合され、この組成物は、対象の皮膚又は頭皮に投与される。
一実施形態において、方法は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であり、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、単一の組成物に配合され、組成物は、スキンケア用賦形剤(skin care excipient)、酪酸、グルコース、グリコーゲン、リン酸アスコルビルマグネシウム、セチルアルコール、ジメチコン、ミリスチン酸イソプロピル、グリセロール、プロピレングリコール、クオタニウム-52、エタノール、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される化合物を更に含む。
本明細書に記載するスキンケア組成物及びスキンケア製品は、フケが多い状態を治療するための方法に使用することができる。
一実施形態において、方法は、フケが多い状態の治療に使用するためのスキンケア組成物を投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であり、前記スキンケア組成物は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含み、前記組成物は、前記フケが多い状態を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、方法は、フケが多い状態の治療に使用するためのスキンケア製品を投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であり、前記スキンケア組成物は、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含み、前記組成物は、前記フケが多い状態を軽減及び/又は治療する。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法であり、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減する。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法であり、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去する。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法であり、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する。
一態様において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減する方法であって、本明細書に記載するスキンケア組成物を含むスキンケア製品を局所的に投与することを含む、方法である。
一態様において、方法は、本明細書に記載するスキンケア組成物を含むスキンケア製品を局所投与することを含む、それを必要とする対象における頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であり、スキンケア製品は、前記スキンケア製品の総重量に対し、重量基準で、前記スキンケア組成物を少なくとも1%、2%、3%、4%、最大で5%含む、ローション、セラム、ゼリー、クリーム、ゲル、エマルション、固形化粧料、マスク、パッチ、及びスティックからなる群から選択される。
一実施形態において、方法は、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法である。
一態様において、本明細書に記載するフケが多い状態を治療するための方法は、マラセチア属菌種(Malassezia species)を阻害する。
一態様において、記載する方法は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物は、サピエン酸(C16:1 cis-6)、パルミチン酸(C16:0)、ミリスチン酸(C14:0)、ペトロセリン酸(C18:1 cis-6)、ペンタデシル酸(C15:0)、ステアリン酸(C18:0)、ラウリン酸(C12:0)、オレイン酸、及びこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される脂質を分解する、方法である。
一般的な定義
引用した全ての特許及び非特許文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本開示において、多数の用語及び略語が使用される。特に具体的に明記しない限り、下記の定義が適用される。
本明細書で使用される場合、本発明の1つの要素又は成分に先行する冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、その要素若しくは成分の事例(すなわち、出現)の数に関して非制限的であることが意図されている。このため、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、1つ又は少なくとも1つを含むと読まれるべきであり、要素又は成分の単数語形は、その数が明らかに単数であることを意味しない限り複数形も含む。
量、濃度、又はその他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましいより高い値及び好ましいより低い値のリストとして与えられる場合、これは、範囲が別個に開示されているか否かに関わらず、任意の範囲の上限若しくは好ましいより高い値及び任意の範囲の下限若しくは好ましいより低い値の任意の対で形成されるあらゆる範囲を具体的に開示していると理解すべきである。数値の範囲が本明細書に示されている場合、他に特に明記しない限り、その範囲は、それらの端点、並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図する。本発明の範囲が範囲を規定するときに列挙された特定の値に限定することは意図されない。
本出願に明記される様々な範囲での数値の使用は、特に明確に示さない限り、述べられた範囲内の最小値及び最大値が両方とも単語「約」によって先行されるかのように近似値として述べられている。このように、述べられた範囲の上下のわずかな変動を用いて、この範囲内の値と同じ結果を実質的に達成することができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間の各値及びあらゆる値を含む連続的な範囲を意図している。本明細書で使用される場合、使用される成分又は反応物質の量を修飾する「約」という用語は、例えば、現実世界において濃縮物又は使用溶液を作成するために使用される典型的な計量及び液体取扱い手順を通して;これらの手順における偶発的誤差を通して;組成物を作成するため、又は本方法を実施するために使用される成分の製造、入手源又は純度における差などを通して発生する可能性がある数量における変動を意味している。用語「約」はまた、特定の初期混合物から生じる組成物についての異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。用語「約」によって修飾されているか否かに関わりなく、特許請求の範囲は、量に関する均等物を含む。
本明細書において使用される用語「投与する」又は「投与(すること)」は、1種又は複数種の微生物(微生物株)、スキンケア組成物、スキンケア製剤、及び/又はスキンケア製品を、頭皮障害の治療を必要とする対象に導入する行為を意味する。
1種又は複数種の微生物(微生物株)、スキンケア組成物、スキンケア製剤、及び/又はスキンケア製品の対象への投与は、1種又は複数種の微生物(微生物株)、スキンケア組成物、スキンケア製剤、及び/又はスキンケア製品を、頭皮、皮膚表面、及びin-vitro又はin-vivoの皮膚細胞に適用又は導入することを含む。
本明細書で使用される場合、用語「生物学的汚染物質」は、以下に限定されないが、微生物、胞子、ウイルス、プリオン、及びこれらの混合物を含む、望ましくない及び/又は病原性の生物学的実体の1つ以上を指す。
本明細書で使用される場合、用語「~を含む(comprising)」は、特許請求の範囲で言及された既定の特徴、整数、工程、又は成分の存在を意味するが、1又は複数の他の特徴、整数、工程、成分、又はそれらの群の存在又は添加を排除するものではない。用語「~を含む(comprising)」は、用語「本質的に~からなる(consisting essentially of)」及び「~からなる(consisting of)」に包含される実施形態を含むことを意図する。同様に、用語「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、用語「~からなる(consisting of)」に包含される実施形態を含むことを意図する。
本明細書で使用される場合、用語「実施形態」又は「開示」は、限定的であることを意味するものではなく、特許請求の範囲で定義されるか又は本明細書に記載される実施形態のいずれにも一般に適用される。これらの用語は、本明細書において互換的に用いられる。
本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」は、製剤中、活性成分の担体として使用される不活性な物質を指す。賦形剤は、活性成分の貯蔵安定性など、製剤中の活性成分を安定化するために使用され得る。賦形剤はまた、活性成分を含有する製剤の増量のために使用されることもある。「活性成分」としては、本明細書に記載のスキンケア有益剤が挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、所望の効果を得るのに十分な量を指す。所望の効果としては、頭皮障害の予防、軽減、及び/又は治療、例えば、フケが多い状態の予防、軽減及び又は治療が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防(すること)」、「予防」、及びその文法的変化形は、障害又は状態(頭皮障害など)及び/若しくはそれに付随する症状の1若しくは複数の発症又は再発を部分的に若しくは完全に遅延若しくは妨げる方法、又は対象が障害若しくは状態を獲得若しくは再獲得することを妨げる方法、又は対象が障害若しくは状態及び/若しくはそれに付随する症状の1若しくは複数を獲得若しくは再獲得するリスクを低減する方法を指す。
本明細書において、特定の特色(trait)、特性(characteristic)、特徴(feature)、生物学的プロセス、又は現象に関し使用される用語「低減(軽減)(すること)」「低減(軽減)する」、及びその文法的変化形は、その特定の特色、特性、特徴、生物学的プロセス、又は現象が少なくなることを指す。特色、特性、特徴、生物学的プロセス、又は現象は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、又は100%を超えて少なくなり得る。
用語「重量パーセント」、「重量百分率(重量%)」及び「重量-重量百分率(%w/w)」は、本明細書においては互換的に用いられる。重量パーセントは、組成物、混合物、溶液、又は製品中に含まれる質量を基準とした材料の百分率を指す。
「16SrRNA」又は「16SリボソームRNA」は、原核生物のリボソームの小サブユニットを構成するrRNAを意味する。細菌の場合、この配列を利用して、分類学的操作単位を同定及び特徴付けることができる。
用語「ITS」又は「内部転写スペーサー」は、リボソームによる転写産物内の、成熟化の過程で切り出され、分解される領域である。これらの配列は、真菌又は酵母の系統解析及び/又は同定に利用することができる。
保湿剤、ローション、又はボディローションという用語は、油と水の低~中粘度エマルションを指し、殆どは水中油型であるが、油中水型のものもあり、スキンケア用途における主要な効果としては、皮膚を水和するか又は皮膚の水分喪失を減少させる。殆ど全ての保湿剤は、皮膚軟化剤、閉塞剤、及び湿潤剤の組合せを含有する。皮膚軟化剤は、主に脂質及び油であり、水和し、皮膚の外観を改善する。多種多様な好適な皮膚軟化剤が知られており、本明細書で使用することができる(International Skin Care Ingredient Dictionary and Handbook,eds.Wenninger and McEwen,pp.1656-61、1626、及び1654-55(The Skin Care,Toiletry,and Fragrance Assoc.,Washington,D.C.,7th Edition,1997))(「ICI Handbook」と呼ばれる)は、適切な材料の多くの例を含む)。ワセリン、ラノリン、及び蜜蝋などの閉塞剤は、皮膚上に疎水性バリアを作り出すことによって、経表皮水分蒸散量を減少させる。グリセロール及び尿素などの湿潤剤は、外部環境から水を引き付け、真皮から表皮への水の吸収を増強することができる。更に、保湿製剤は、エマルションの安定性を維持するために乳化剤を含有し、且つ増粘剤を使用して所望の粘度及び皮膚感触を達成することができる。香料、染料、防腐剤、治療剤、タンパク質、及び安定剤などの多種多様な他の成分が、他の消費者が好む属性を付与するために一般に添加される。
本明細書で使用される場合、参照配列に関する用語「配列同一性(%)(percent(%)sequence identity)」又は「配列類似性(%)(percent(%)sequence similarity)」は、配列同一性が最大になるように、必要に応じてギャップを挿入して配列を最適にアラインメントさせた後の、参照ポリヌクレオチド配列中の残基と同一である、候補配列中のヌクレオチド残基の百分率と定義される。
本明細書で使用される場合、微生物「株」は、成長又は増殖しても遺伝子的に変化しないままである微生物(細菌又は真菌など)を指す。同一の微生物の多様性も包含される。
本明細書で使用される場合、用語「生物学的に純粋な株」は、他の微生物株を、株の複製を妨げるか又は通常の技法で検出されるのに十分な量で含まない株を意味する。本明細書に記載する生物及び培養物に関連して使用される「単離された」は、生物学的に純粋な株のみならず、天然に見られるものとは異なる形で増殖又は維持された生物の任意の培養物も包含する。
一態様では、本明細書に記載の皮膚細胞は、ヒト皮膚細胞又は動物皮膚細胞などの哺乳動物皮膚細胞である。
本明細書で使用される場合、用語「配列同一性」又は「配列類似性」は、2つのポリヌクレオチド配列、即ち、候補配列及び参照配列が、候補配列の全長に亘り同一である(即ち、配列同一性100%)又は類似している(即ち、ヌクレオチド対ヌクレオチド基準で)ことを意味する。候補配列と参照配列との比較において、2つの配列を最適にアラインメントした場合、候補配列は、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して、付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。配列同一性を求めるための配列の最適なアラインメントは、当該技術分野において知られているALIGN若しくはMegalign(DNASTAR)などの公開されている任意の数のローカルアラインメントアルゴリズムを用いて、又は精査することにより、実施することができる。
本明細書全体を通して与えられるあらゆる数値の上限が、あらゆるより低い数値の限界を、あたかもそのようなより低い数値の限界が本明細書で明示されていたかのように含むことが意図されている。本明細書全体を通して与えられる全ての数値の下限は、全てのより高い数値の限界を、あたかもそのようなより高い数値の限界が本明細書で明示されていたかのように含むであろう。本明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を、あたかもそのようなより狭い数値範囲が本明細書で全て明示されていたかのように含むであろう。
本明細書において別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同様の意味を有する。
本明細書に開示される組成物及び方法の非限定的な例として、以下に示すものが挙げられる。
1.有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であって、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する、スキンケア組成物。
2.頭皮障害は、頭皮のフケが多い状態(脂漏性皮膚炎)、頭皮環境叢のバランスの乱れ、頭皮の不快感、癜風、乾燥肌、皮膚刺激感、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、実施形態1に記載のスキンケア組成物。
3.1種又は複数種のフケ防止活性剤を更に含む、実施形態1に記載のスキンケア組成物。
4.組成物は、サピエン酸(C16:1 cis-6)、パルミチン酸(C16:0)、ミリスチン酸(C14:0)、ペトロセリン酸(C18:1 cis-6)、ペンタデシル酸(C15:0)、ステアリン酸(C18:0)、ラウリン酸(C12:0)、オレイン酸、及びこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される脂質を分解する、実施形態1に記載のスキンケア組成物。
5.組成物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減させる、実施形態1に記載のスキンケア組成物。
6.組成物は、マラセチア属菌種(Malasseziaspecies)のバイオフィルムを除去する、請求項1に記載のスキンケア組成物。
7.組成物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する、請求項1に記載のスキンケア組成物。
8.賦形剤、防腐剤、pH調整剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物を更に含む、実施形態1に記載のスキンケア組成物。
9.ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 9773、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 18942、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20177、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CBS2073、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Phaff#50-47、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物を含む、実施形態1に記載のスキンケア組成物。
10.実施形態1~9のいずれか一つに記載の有効量のスキンケア組成物の、スキンケア製品における使用。
11.実施形態1~9のいずれか一つに記載の有効量のスキンケア組成物と、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分とを含む、スキンケア製品。
11b.製品は、局所投与用に配合されている、実施形態11に記載のスキンケア製品。
12.スキンケア組成物の前記有効量は、前記スキンケア製品の総重量に対し、重量基準で少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、最大で10%である、実施形態11に記載のスキンケア製品。
12b.第1スキンケア組成物及び第2スキンケア組成物を含むスキンケア製品であって、第1スキンケア組成物は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物からなる有効量の第1活性剤を含み、第2スキンケア組成物は、少なくとも有効量の、フケ防止活性剤から選択される少なくとも1種の局所投与用第2活性剤を含む、スキンケア製品。
12c.第1スキンケア組成物は、ゲル、エマルション、ヒドロゲル、ルース若しくはコンパクトパウダー、懸濁液若しくは溶液、又はスプレー溶液からなる群から選択される少なくとも1種の形態に配合される、実施形態10bに記載のスキンケア製品。
12d.少なくとも1種の第2組成物は、ヘアローション、シャンプー、ヘアコンディショナー、もつれ解消剤(detangler)、ヘアクリーム又はゲル、整髪用スプレー、ヘアセット用ローション、トリートメント用(treating)ローション、染料組成物、毛髪修復(restructuring)用ローション、パーマネントウェーブ用組成物、脱毛防止用ローション又はゲル、寄生虫駆除用シャンプー又は薬用シャンプー、及び頭皮ケア製品からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素である、実施形態10bに記載のスキンケア製品。
13.それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法。
13b.それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法。
13c.それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含むスキンケア製品を前記対象に局所投与することを含む、方法。
14.頭皮障害は、頭皮のフケが多い状態(脂漏性皮膚炎)、頭皮環境叢のバランスの乱れ、頭皮の不快感、癜風、乾燥肌、皮膚刺激感、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、実施形態13に記載の方法。
15.微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又は代謝物は、局所投与される、実施形態13に記載の方法。
15B.微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、局所投与される、実施形態13cに記載の方法。
16.それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法。
16b.それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含むスキンケア製品を前記対象に局所投与することを含む、方法。
17.微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその代謝物は、局所投与される、実施形態16に記載の方法。
18.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、単一の組成物に配合される、実施形態16に記載の方法。
18b.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物及び/又はその代謝物は、少なくとも皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種の又は複数種の成分を更に含む組成物中にある、実施形態16に記載の方法。
19.組成物は、対象の皮膚又は頭皮に投与される、実施形態16に記載の方法。
20.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 9773、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 18942、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20177、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CBS2073、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Phaff#50-47、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、実施形態16に記載の方法。
21.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)を阻害する、実施形態16に記載の方法。
21b.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減する、実施形態16に記載の方法。
21c.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の断片は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減する、実施形態16に記載の方法。
21d.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の細胞溶解物は、マラセチア属菌種(Malasseziaspecies)の増殖を低減する、実施形態16に記載の方法。
1921e.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の発酵物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減する、実施形態16に記載の方法。
21f.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減する、実施形態16に記載の方法。
22.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去する、実施形態16に記載の方法。
22b.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の断片は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去する、実施形態16に記載の方法。
22c.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の細胞溶解物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去する、実施形態16に記載の方法。
22d.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の発酵物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去する、実施形態16に記載の方法。
22e.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去する、実施形態16に記載の方法。
23.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する、実施形態16に記載の方法。
23b.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の断片は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する、実施形態16に記載の方法。
23c.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の細胞溶解物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する、実施形態16に記載の方法。
23d.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の発酵物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の形成を防止又は低減する、実施形態16に記載の方法。
23e.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物の代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する、実施形態16に記載の方法。
24.少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、サピエン酸(C16:1 cis-6)、パルミチン酸(C16:0)、ミリスチン酸(C14:0)、ペトロセリン酸(C18:1 cis-6)、ペンタデシル酸(C15:0)、ステアリン酸(C18:0)、ラウリン酸(C12:0)、オレイン酸、及びこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される脂質を分解する、実施形態16に記載の方法。
25.組成物は、スキンケア製品として投与され、前記スキンケア製品は、前記スキンケア組成物を、前記スキンケア製品の総重量に対し、重量基準で少なくとも1%、2%、3%、4%、最大で5%含む、ローション、セラム、ゼリー、クリーム、ゲル、エマルション、マスク、パッチ、又はスティックである、実施形態16~24のいずれか一つに記載の方法。
26.それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減する方法であって、実施形態1~9のいずれか一つに記載のスキンケア組成物を含むスキンケア製品を前記対象に局所投与することを含む、方法。
27.スキンケア製品は、前記スキンケア組成物を、前記スキンケア製品の総重量に対し、重量基準で少なくとも1%、2%、3%、4%、最大で5%含む、ローション、セラム、ゼリー、クリーム、ゲル、エマルション、固形化粧料、マスク、パッチ、及びスティックからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
28.有効量の第1化粧活性剤及び有効量の少なくとも1種の第2化粧活性剤を投与することを含む、それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、第1化粧活性剤は、少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物からなる、方法。
29.第1及び第2化粧活性物質は、対象の皮膚又は頭皮に投与される、実施形態28に記載の方法。
30.第1化粧活性剤及び少なくとも1種の第2化粧活性剤は、単一の組成物中に配合される、実施形態28に記載の方法。
31.第1化粧活性剤及び少なくとも1種の第2活性剤は、別々の組成物中に配合される、実施形態28に記載の方法。
32.少なくとも1種の第2化粧活性剤は、少なくとも1種のフケ防止活性剤を含む、実施形態28に記載の方法。
33.少なくとも1種の第2化粧活性剤は、亜鉛ピリジンチオン、サリチル酸、二硫化セレン、タイム及びイヌハッカの混合油、オクトピロックス、及びプロバイオティクス微生物からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を含む、実施形態28に記載の。
34.少なくとも1種の第2化粧活性剤は、角質溶解剤、例えば、サリチル酸及びその様々な形態にある硫黄、角化調整剤、例えば、亜鉛ピリチオン、ピリジンチオン塩、トリハロカルバミド、トリクロサン、アゾール化合物、抗真菌ポリマー、アラントイン、ステロイド、例えば、局所用コルチコステロイド、タール又はポリタール(コールタール)、ウンデシレン酸、フマル酸、アリルアミン、及びこれらの混合物、シクロピロックス、オクトピロックス、ピロクトンオラミン、プロピオン酸クロベタゾール、ベタメタゾン吉草酸エステル、ティーツリー油、タイム及びイヌハッカの混合油、局所用抗真菌剤、例えば、硫化セレン、イミダゾール(例えば、ケトコナゾール)、ヒドロキシピリドン、例えば(例えば、シクロピロックス)、自然療法薬、例えば、メラレウカ属植物(Melaleuca sp.)油、アロエベラ、並びにプロバイオティクス微生物からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を含む、28に記載の方法。
35.頭皮のフケが多い状態は、フケ症と、頭皮の乾燥、頭皮の過脂漏症(hyperseborrhoea)、環境叢のバランスの乱れ、痒掻、頭皮の炎症、又は頭皮のバリア機能のバランスの乱れとを併発している、実施形態16に記載の方法。
36.フケが多い状態を治療するための化粧用組成物又は皮膚科用組成物を調製するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物及び/又はその断片を、少なくとも1種の美容用又は皮膚科用賦形剤と組み合せることを含む、方法。
37.ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の細胞の発酵物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であって、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する、組成物。
38.ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の細胞の全部又は実質的に全部が発酵物から除去されている、実施形態37に記載のスキンケア組成物。
39.発酵物は、培養物上清である、実施形態37に記載の組成物。
40.皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分を更に含む、実施形態37に記載の組成物。
41.実施形態37~40のいずれか一つに記載のスキンケア組成物を含むスキンケア製品。
42.頭皮障害の治療に使用するためのヤロウィア(Yarrowia)属微生物の発酵物。
43.実施形態36に記載の使用のためのヤロウィア(Yarrowia)属微生物発酵物であって、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の細胞の全部又は実質的に全部が発酵物から除去されている、発酵物。
44.実施形態36に記載の使用のためのヤロウィア(Yarrowia)属微生物発酵物であって、発酵物は、培養物上清である、発酵物。
45.実施形態42~44のいずれか一つに記載の発酵物を含むスキンケア製品。
46.ヤロウィア(Yarrowia)属微生物の細胞の代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であって、前記代謝物は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物(microorgansim)の代謝に由来し、前記頭皮障害の治療に有効性も示し、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する、スキンケア組成物。
47.皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分を更に含む、実施形態40に記載のスキンケア組成物。
48.実施形態46又は47に記載のスキンケア組成物を含むスキンケア製品。
49.頭皮障害の治療に使用するためのヤロウィア(Yarrowia)属微生物の代謝物であって、前記代謝物は、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物(microorgansim)の代謝に由来し、前記頭皮障害の治療に有効性も示す、代謝物。
以下の実施例では、他に特に明記しない限り、部及び百分率は重量によるものであり、度は摂氏である。これらの実施例は、本開示の実施形態を示しているが、単に例示するためにのみ提供されていることを理解すべきである。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者であれば様々な用法及び条件に適合させるために本開示に様々な変更及び修正を加えることができる。そのような修正もまた、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
本明細書における以下の略語は、以下のような測定単位、手法、特性、又は化合物に対応する:「sec」又は「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」又は「hr」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「ppm」は百万分率を意味し、「wt」は重量を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「conc.」は濃度を意味し、「Trt」は処理を意味する。
実施例1
材料及び方法
酵母株
酵母は、ATCC(American Type Culture Collection)、CBS(CBS-KNAW culture collection)、又はPhaff Yeast Culture Collection(UC Davis)からのものを用いた。使用した株は、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)(CBS 7966)、マラセチア・フルフル(M.furfur)(CBS 1878)、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)(ATCC 20362、ATCC 9773、ATCC 18942、ATCC 20177、CBS 2073、Phaff #50-47)である。
増殖培地
細胞を、バクトペプトン10g/L、酵母エキス2g/L、乾燥ウシ胆汁8g/L、グリセロール10ml/L、モノステアリン酸グリセロール0.5g/L、Tween-60 5ml/L、オリーブ油又はパーム油20ml/Lを含む改変Leeming&Notman(mLN)培地で培養した。合成増殖培地の場合は、酵母ニトロゲンベース(アミノ酸不含)6.7g/L、リン酸二カリウム6g/L、リン酸二水素カリウム4g/L、及び炭素源として異なる量の脂質、及び乳化剤としてTween-40、-60、又は-80。固形培地の場合は、寒天15g/Lを加えた。培地をオートクレーブで110℃で20分間滅菌した。
リパーゼ活性測定
オレイン酸4-メチルウンベリフェリル(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)をリパーゼの基質として使用し、DMSOに5mg/mlとなるように溶解して原液とした。次いでこれをDMSOに0.5mg/mlとなるように溶解し、96ウェルプレートで各反応に50μlずつ使用した。濾過(0.22ミクロンのフィルタ)した細胞培養物100μlを各ウェルに添加し、5回ピペッティングすることにより混合した。蛍光強度をTecan Spark(登録商標)マイクロプレートリーダーを用いて37℃で10分毎に1時間測定した。励起波長及び発光波長を355及び460nmとし、ゲインを55とした。
qPCRによる細胞計数
定量PCR、即ちqPCRを利用して、単独及び複合培養条件下で、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及びマラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)を3つの時点;1日目、4日目、及び7日目に定量した。全てのマラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)種を検出するために、Clavaud et al.(2013),PLOS One,8:10に記載されているqPCR測定を用いた。使用したプライマー/プローブを以下に示す;フォワードプライマー1:5’ CTAAATATCGGGGAGAGACCGA(SEQ ID NO:1)、リバースプライマー2:5’ GTACTTTTAACTCTCTTTCCAAAGTGCTT(SEQ ID NO:2)、MGBプローブ1:FAM-TTCATCTTTCCCTCACGGTAC-MGB(SEQ ID NO:3)。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のqPCR測定は、SNF1遺伝子をターゲットとしており、次に示すプライマー/プローブを含む;フォワードプライマー3:5’ ACACCATTCCCCCCTATCTGT(SEQ ID NO:4)、リバースプライマー4:5’ TGACCACCAGCATCTGTTGAA(SEQ ID NO:5)、プローブ2:5’ 6FAM-TGCCGGCGCAAAACACCTG-TAMRA(SEQ ID NO:6)。マラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の両方の代表的な株のゲノムDNAを使用して、絶対定量用の検量線を作成した。
単独又は複合培養したヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及びマラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)の培養物1mlを各時点で遠心分離し、酵母をペレット化した。次いで、細胞ペレットを利用してゲノムDNAを抽出した。Qiagen DNeasy PowerSoil Pro DNA キット(QiagenTM、Germantown、MD)を使用して、製造業者の指示に従いDNAを抽出した。各サンプルから得られた精製ゲノムDNA1.5μlを、マラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)又はヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を検出するための別々の2つの反応において、それぞれ、以下に示すものと混合した;ABI Universal Taq Man Mix w/o UNG 10μl、100μMのフォワード及びリバースプライマー0.2μl、Taq Manプローブ0.05μl、並びに分子生物学グレードの水8.05μl。各サンプルについて、Quantstudio 7 Instrumentを用いて3反復で次に示すようにqPCR反応を行った:10min、95℃+40サイクル(95℃、15sec+60℃、60sec)。増幅を行いながら蛍光データを収集した。
マラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の両方に関し、既知量のゲノムDNA(gDNA)及びそれらのqPCRから得られた対応するCt値に基づき、線形回帰分析を用いて検量線を作成した。次いでこれらの検量線を用いて、3つの時点のそれぞれから得られたサンプル中の各微生物の複製数を求めた。3反復で行ったqPCR反応の平均値を報告した。
ガスクロマトグラフィー(GC)による培地中の脂質の同定及び定量
オレイン酸及びパルミチン酸の分析用標準物質として、NuCheck Prpe,IncからのU46A(C18:1)及びN16A(C16:0)を用いた。各化合物について、後段での定量化に用いるための検量線を作成した;標準物質は重量基準でヘキサン中で調製した。GC分析時に注入する量のばらつきを補正するために、ヘキサン溶媒に内部標準としてミリスチン酸(C14:0、Sigma #70079)を加えた(ヘキサン100mL当たり62mgを加えた)。
Agilent Technologies 7890Aガスクロマトグラフを使用して、遊離脂肪酸の分離及び定量化を行った。これは、7683Bデュアルインジェクションタワー(dual injector tower)(フロント/バック)、G2614Aオートサンプラー、及び水素炎イオン化型検出器(FID)を備えるものとした。キャリアガスとしてヘリウムを使用し、FIDの燃料ガス及び助燃ガスはVWR 26000-034水素発生器を用いて供給した。
Agilent J&W DB-FFAPカラム、ニトロテレフタル酸修飾ポリエチレングリコール(PEG)カラム(30m×0.25mmID×0.25μm)を用いて分析を実施した。測定方法は次に示す通りである。注入口を250℃に設定し、セプタムを3mL/minでパージし、100:1のスプリットモードで1μLを注入した。温度プログラムは、80℃で2分間、次いで8℃/分で250℃にし、10分間保持するものとした(50℃で3分間ポストラン)。ヘリウムキャリアガスを使用し、流量を1.8mL/minとし、FIDを300℃に設定し、H及び空気の流量をそれぞれ40mL/min及び450mL/minとし、メイクアップガスの流量を41.5mL/minとした。
マラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を7日間培養し、培養継続中の複数の培養物を分取し、サンプルとして分析した。培養物1mLを分取し、後にGC-FIDでC16:0及びC18:1の含有量を分析する時点まで-80℃で凍結させた。分析時には、サンプルを周囲温度で解凍させた。各サンプルを30~60秒間激しくボルテックスで均質化した後、250μLを2mL容のマイクロ遠心管に分取した。これらを250μLのヘキサンで抽出した。GC注入時のばらつきを確認するために、ヘキサンに内部標準としてC14:0をスパイクした。マイクロ遠心管用カローセル型ホルダーを利用して、サンプルをボルテックスミキサーで10分間振盪し;次いでサンプルを周囲温度で15分間静置した後、1900×gで5分間遠心分離した。抽出された遊離脂肪酸を含む上層であるヘキサン相を、後段でGC-FIDにより分析するためにガラスバイアルに移し替えた。本方法により、パルミチン酸及びオレイン酸をそれぞれ19.4min及び21.6minの保持時間で分離し、定量化することができた。GC分析の精度を、17.8minにピークが現れる内部標準であるミリスチン酸を用いて検証したところ、測定全体を通して、ピーク面積の変動は2~5%であった。
実施例2
異なる脂質培地におけるマラセチア属菌種(Malassezia spp)及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の培養 本実施例においては、炭素源として脂質を用いた異なる増殖培地におけるマラセチア・グロボーサ(M.globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の増殖表現型を明らかにする。表1に示すように、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株は全て、試験に供した脂質で非常に良好に増殖し、マラセチア・フルフル(M.furfur)は、良好又は中程度に増殖した。一方、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)は、試験を行った全ての条件、特にオレイン酸(増殖せず)又はオリーブ油(弱い増殖又は増殖せず)上で増殖性が低く、パーム油又はパルミチン酸エチル上では弱い増殖性しか示さなかった。オリーブ油は、主として不飽和脂肪酸(86%)、特にオレイン酸(78%)から構成されている。パーム油は、主としてパルミチン酸(44%)及びオレイン酸(40%)から構成されている。
表1に、異なる脂質プレート上での酵母株の増殖表現型を示す。使用した脂質及び乳化剤を最上段に示す。細胞をプレート上に筋状に塗り付け、32℃で3日間培養した。+++良好な増殖;++中程度の増殖;+弱い増殖;-増殖せず。
Figure 2023512070000001
皮脂腺の産生物である皮脂は、脂質、主としてトリグリセリド、遊離脂肪酸、ワックスエステル、及びスクワレンの混合物である。脂肪酸の中でも、皮脂の脂質の主成分はサピエン酸及びパルミチン酸であり、それぞれ約30%を占める。オレイン酸は少量成分であり、約2~5%である(Akaza,et al.(2014),J.Dermatology 41:1069)。
表1に示す結果は、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)がオレイン酸エステル(オレイン酸)を利用することができず(したがって、その上では増殖できないか又は増殖が弱い)、パルミチン酸エステル上では僅かに増殖できたことを示している。
それとは対照的に、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrrowia lipolitca)株は全て、オレイン酸エステル及びパルミチン酸エステル上で増殖可能であった。
実施例3
異なる脂質培地におけるマラセチア属菌種(Malassezia spp.)及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のリパーゼ活性
分泌されたリパーゼの活性を測定するために、細胞培養物の分取物(1ml)を回収し、細胞を0.22ミクロンのフィルタで取り除いた。濾過した培養物上清中のリパーゼの基質としてオレイン酸4-メチルウンベリフェリル(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を使用し、蛍光により活性を測定した。
表2に、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の細胞培養物上清のリパーゼ活性を示す。細胞を、パルミチン酸エチル1ml/L及びTween-40を0.5ml/L含む合成培地で、32℃で2日間(ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica))又は5日間(マラセチア・グロボーサ(M.globosa))振盪培養した。リパーゼ活性により加水分解されたオレイン酸4-メチルウンベリフェリルにより生じた蛍光を、活性として示した。細胞なし(培地)はバックグラウンドシグナルを示す対照である。
Figure 2023512070000002
表2に示すように、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)は、無細胞培地中で最も高いリパーゼ活性を示した(分泌型)。他方、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC 20362株及びCBS 2073株は、無細胞上清中で有意なリパーゼ活性を示さず、これらのリパーゼ活性の大部分が細胞結合型又は細胞内型であることを示唆している。ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)Phaff #50-47株は培養物上清中で若干のリパーゼ活性を示した。
実施例4
マラセチア・グロボーサ(M.globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の競合増殖試験
本実施例は、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)を一緒に又は別々に増殖させた場合の経時的なバイオマス変化について記載するものである。マラセチア・グロボーサ(M.globosa)は脂肪酸合成酵素を持たないため、増殖させるためには培地中に脂質が必要であるが、培地に脂質及び乳化剤を添加することにより培地はミセル又は脂質の小滴を形成し、そのため、光学濃度による細胞増殖の監視が難しくなる。マラセチア・グロボーサ(M.globosa)はまた、液体培地中では細胞塊として増殖し、したがって、培養物の分取物をプレート上に広げてコロニーを計数する方法では細胞増殖が正確に測定されない。より正確な細胞増殖測定を行うために、qPCR法を用いて、DNA含有量により細胞増殖を監視した。
表3に、パーム油を含む改変Leeming&Notman培地を使用し、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の酵母を組み合わせて増殖競合させるか又は単独で増殖させた結果を示す。7日間の3つの異なる時点で培養物を分取し、酵母の増殖をqPCRで測定した。結果は、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖は、2種の酵母を一緒に増殖させると、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)を単独で増殖させた場合と比較して、影響を受ける/10倍を超えて低減されることを示していた。一方、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の増殖は、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)が存在しても、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)単独で増殖させた場合と比較して、実質的に影響を受けなかった。
表3に、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)及びヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)(ATCC 20362)を一緒に又は別々に増殖させた場合の、qPCRに基づく細胞数を示す。パーム油20ml/Lを含む100mlのmLN培地中で7日間増殖させたマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の培養物を、2つの50mlの培養物に分割し、一方の50mlの分にはヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)をOD600が0.1になるまで加え(共培養)、もう一方の50mlの分には加えなかった(マラセチア・グロボーサ(M.globosa)単独)。「ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipoytica)単独」培養物は、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)をOD600が0.1になるまで接種した新鮮なmLN培地50mlとした。各細胞培養物の分取物1mlからゲノムDNAを作製し、qPCR分析に使用した。
Figure 2023512070000003
驚くべきことに、且つ予期せぬことに、表3に示すように、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)を含む培地中にヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)が存在することによって、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖が有意に低下し(例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)がマラセチア属菌種(Malassezia spp)を阻害する)、このことは、これをフケの多い状態の微生物治療に使用することができることを示している。
実施例5
ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の脂質消費に関するGC分析
本実施例では、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)及びマラセチア・グロボーサ(M.globosa)により消費されるオレイン酸及びパルミチン酸について記載する。これは、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)のリパーゼ活性により生成したオレイン酸の遊離脂肪酸(FFA)が、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)により消費されたことを示すものである。培地中のFFAの量を測定するためにガスクロマトグラフィー(GC)を使用した。
細胞の培養にはパーム油を含む改変Leeming&Notman(mLN)培地を使用した。マラセチア・グロボーサ(M.globosa)を100mlのmLN培地中、32℃で7日間振盪培養し、培養物の上清を遠心分離により回収し、2つの50ml分に分割し、250mlのフラスコに移し替えた。一方の50mlの培養物上清には、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の一晩培養物500μlを、最終OD600が0.1になるまで添加した。GC分析用として、遠心分離の前後にサンプル(1ml)を回収した。マラセチア・グロボーサ(M.globosa)の大部分を遠心分離により取り除いたが、上清から全てのマラセチア・グロボーサ(M.globosa)細胞が除去された訳ではなかった。ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)を添加するか又は添加していないマラセチア・グロボーサ(M.globosa)培養物上清を、32℃で振盪しながらインキュベートした。1、2、3、4、及び7日間インキュベートした後、GC分析用として1ml分取して回収した。
表4にGC分析の結果を示す。遠心分離により大部分のマラセチア・グロボーサ(M.globosa)を除去すると、パルミチン酸及びオレイン酸は両方とも有意に低下した。これは、一部のFFAが細胞内にあり、遠心分離の際に沈降したことに起因する可能性がある。「マラセチア・グロボーサ(M.globosa)上清」及び「マラセチア・グロボーサ(M.globosa)上清+ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)」のパルミチン酸及びオレイン酸のFFAの量を遠心分離(0日目)後に比較した。
「マラセチア・グロボーサ(M.globosa)上清」の場合、パルミチン酸及びオレイン酸のFFAの量は、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)細胞の大部分が遠心分離により除去されたので、4日目まで殆ど変化しなかった。しかしながら、7日目のサンプル中のFFAは明らかに低下していた。他方、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)を「マラセチア・グロボーサ(M.globosa)上清」に添加すると、パルミチン酸及びオレイン酸は両方とも速やかに消費され、オレイン酸がパルミチン酸よりも速く消費された。
表4に、GCにより定量された遊離脂肪酸を示す。マラセチア・グロボーサ(M.globosa)をパーム油20ml/Lを含む100mlmLN培地中で7日間増殖させ、遠心分離した後、2つの50mlの上清分取物に分割した。一方の50mlの分取物には、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)をOD600が0.1になるまで加え(マラセチア・グロボーサ(M.globosa)上清+ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica))、もう一方の50ml分にはヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)を加えなかった(マラセチア・グロボーサ(M.globosa)上清)。32℃で振盪しながらインキュベートする間に、表に示したようにサンプルを採取し、パルミチン酸及びオレイン酸のFFAを分析した。0日目のサンプルと比較したFFAの相対量を括弧内に示す。
Figure 2023512070000004
驚くべきことに、且つ予期せぬことに、表3(実施例4)に示す結果は、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)及びマラセチア・グロボーサ(M.globosa)を一緒に培養すると、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の存在下でマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖が有意に低下した(例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)がマラセチア属菌種(Malassezia spp)を阻害する)ことを示しており、これは、ヤロウィア(Yarrowia)属の微生物をフケが多い状態の微生物治療に使用できることを示している。表2に示すように、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)は、無細胞培地中でリパーゼ活性を示した(リパーゼが分泌されたことを示す)が、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)は無細胞培地中で有意なリパーゼ活性を示さず、これはおそらく、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物のリパーゼ活性の大部分は細胞結合型又は細胞内型であったためと推定される。これは、驚くべきことであると共に、微生物治療として好ましい特徴である。その理由は、微生物治療が終了した後にリパーゼ活性は皮膚上に残存せず、遊離脂肪酸の蓄積を引き起こさないことになるためである。表4の結果はまた、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)のリパーゼ活性により生成したオレイン酸の遊離脂肪酸(FFA)が、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)によって効果的に消費されたが、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)によっては消費されなかったことも示しており、これは、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)がオレイン酸を利用できない(したがってオレイン酸上で増殖できないか又は増殖が弱い)が、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowialipolytica)によって効果的に取り込まれたことを示す結果(表1)とも一致している。オレイン酸の遊離脂肪酸(FFA)は炎症誘発性と見なされているので、ヤロウィア(Yarrowia)属微生物がFFAを効率的に除去することは、炎症誘発性のオレイン酸FAAにより引き起こされるフケ症又は他の皮膚疾患に対抗する微生物治療の重要な特性である。
実施例6
ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)細胞を含まない培地の上清(無細胞発酵物)によるマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖阻害に関するフローサイトメトリー解析
皮膚疾患に加担しているマラセチア属菌種(Malassezia species、Malassezia spp.)は、脂質を合成するための脂肪酸合成酵素を持たず、したがって、増殖するために宿主の皮脂脂質に頼っている(Xu et al.,(2007)PNAS,104:18730)。マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖培地として、バクトペプトン10g/L、酵母エキス2g/L、乾燥ウシ胆汁8g/L、グリセロール10ml/L、モノステアリン酸グリセロール0.5g/L、Tween-60を5ml/L、及びパーム油20ml/Lを含む改変Leeming&Notman(mLN)培地を使用した。
脂質及び界面活性剤をmLN培地中に存在させると脂質の乳濁液になることに加えて、マラセチア属菌種(Malassezia spp.)が細胞塊の表現型を示すため、光学濃度測定によるか又は培養物の分取物をプレート上に広げてコロニーを計数することによって細胞増殖を監視することは困難である。この問題を回避するために、細胞染色色素を使用するフローサイトメトリーにより、脂質乳濁培地における細胞増殖を定量的に測定した。ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)無細胞培養物上清を作用させた(challenged)場合のマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖を監視するためのフローサイトメトリー解析を次に示すように実施した。
まず、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica、Y.lipolytica)培養物から異なる種類の発酵物を産生させるために、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC 20362株を、YPD(10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、20g/Lグルコース)、YPG(10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、20ml/Lグリセロール)、パーム油20ml/Lを含むmLN、又はオリーブ油20ml/Lを含むmLN培地中で、初期OD600を0.1とし、250rpmで振盪しながら32℃で5日間培養した。ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の細胞培養物を0.22μmのフィルタで2回濾過して細胞を除去することにより、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の無細胞培養物上清(無細胞発酵物とも称する)を調製し、-20℃で凍結させて保存した。
ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)無細胞発酵物によるマラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa、M.globosa)の増殖阻害を監視するために、3日間培養したマラセチア・グロボーサ(M.globosa)接種培養物を、パーム油20ml/Lを含む新鮮なmLN培地で10倍希釈した。希釈した培養物を、次いで更に0.2Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で5倍希釈した。200μlのヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)無細胞培養物上清又は培地のみを、深底の96ウェルプレート(Biotix,SanDiego,CA)で、希釈したマラセチア・グロボーサ(M.globosa)培養物800μlに加え、湿度を85%と一定にして、350rpmで振盪しながら32℃でインキュベートした。
異なる時点で、各培養物から50μlずつ分取し、Qsonica Q700(Qsonica、Newtown、CT)を使用して、振幅を5とし、1秒間のオン/オフサイクルで30秒間温和な超音波処理に付した。超音波処理した細胞培養物20μlを、pH7.4のリン酸干渉生理食塩水(PBS)50μl、希釈した(1:1,000、PBS中)Cyto BC Green(Invitrogen)10μl、希釈した(1:1,000、PBS中)ヨウ化プロピジウム(Invitrogen)10μl、及び希釈した(1:200、PBS中)コンカナバリンA(Invitrogen)10μlと混合し、室温で20分間インキュベートした。サンプルを、Novocyte Quanteon(Acea)を使用してフローサイトメトリーで分析した。細胞膜透過性DNA/RNAインターカレーティング色素であるSytoBCを、488のレーザーで励起し、530/帯域幅30のフィルタを用いて検出した。alexaFluor 640で標識したマンノース結合性レクチンであるコンカナバリンAを637nmのレーザーで励起し、660/帯域幅20のフィルタを用いて検出した。乳化した液滴に由来するイベントは、これらのチャンネルでは比較的シグナル強度が低いのに対し、マンノース含有量が高く、核酸含有量が高いイベントをマラセチア属菌(Malassezia)細胞と判定した。高sytoBC、高ConAイベントでゲーティングすることにより、マラセチア属菌(Malassezia)細胞数を決定し、各サンプルのイベント/μl値を記録した。
表5に、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC 20362から得られた様々な無細胞培養物上清又は抗真菌剤であるアムホテリシンB(2.5μg/ml)を添加したマラセチア・グロボーサ(M.globosa)培養物のフローサイトメトリー解析を示す。各培地対照と比較した、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖阻害率を表5に示す。数値は2反復サンプルの平均値である。
Figure 2023512070000005
試験に供した全てのヤロウィア属菌(Yarrowia)発酵物に関し、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)無細胞培養物上清を添加することによって、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖は、それぞれの培地のみの対照と比較して、経時的に低下した。ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)無細胞培養物上清の中でも、YPD発酵物は、3日間インキュベートした後のマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖に対する効果が最も高く、培地対照と比較して細胞数が81%低下した。
実施例7
2種の異なるヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)株由来の無細胞培養物上清によるマラセチア・グロボーサ(M.globosa)増殖阻害のフローサイトメトリー解析
ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)無細胞培養物上清を作用させた場合のマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖を、フローサイトメトリー解析法を用いて監視した。ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC 20362株又はATCC 9773株を、YPD(10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、20g/Lグルコース)、YPG(10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、20ml/Lグリセロール)、パーム油20ml/L含有mLN(10g/Lバクトペプトン、2g/L酵母エキス、8g/L乾燥ウシ胆汁、10ml/Lグリセロール、0.5g/Lモノステアリン酸グリセロール、5ml/LTween-60)、又はオリーブ油20ml/L含有mLN中で、初期OD600を0.1とし、250rpmで振盪させながら32℃で5日間培養した。ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の細胞培養物を0.22μmフィルタで2回濾過して細胞を除去することにより、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の無細胞培養物上清(無細胞発酵物とも称する)を調製し、-20℃で保存した。
マラセチア・グロボーサ(M.globosa)接種培養物を、パーム油20ml/Lを含む新鮮なmLN培地で10倍希釈した。次いで、希釈した培養物を更に0.2Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で5倍希釈した。200μlのヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)無細胞培養物上清又は培地のみを、深底の96ウェルプレート(Biotix、SanDiego、CA)を用いて、希釈したマラセチア・グロボーサ(M.globosa)培養物800μlに加え、湿度を85%と一定にして、350rpmで振盪しながら32℃でインキュベートした。3日間インキュベートした後、各培養物から50μlを分取し、実施例6に記載したように細胞染色色素を使用して、フローサイトメーターで分析した。
各培地対照と比較した、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖阻害率を、表6に示す。数値は2反復のサンプルの平均値である。
Figure 2023512070000006
ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)の無細胞発酵物(無細胞培養物上清)を添加することにより、それぞれの培地のみの対照と比較して、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖が低減された。ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)無細胞培養物上清の中でも、ATCC 20362及びATCC 9773のYPD発酵物から得られた無細胞培養物上清が、3日間インキュベートした後のマラセチア・グロボーサ(M.globosa)の増殖に対する効果が最も高く、培地対照と比較して約65~69%低減させた。
実施例8
ヤロウィア属微生物(Yarrowia)発酵物によるマラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムの除去
皮膚は独特な環境にあり、微生物は多くの場合バイオフィルムとして存在する(Brandwein,et al.,NPJ Biofilms Microbiomes 2:3,2016)。バイオフィルムは皮膚の上皮表面又は毛包の内側に形成され得る。バイオフィルムは、細胞に加えて、エキソ多糖類、タンパク質、及びDNAなどの細胞外成分から構成されている。この複雑な構造が、特定の化合物に対する物理的及び化学的バリアとなり得る。しかしながら、それよりも重要なのは、バイオフィルム状態にある微生物の生理機能が、浮遊状態にある微生物のそれとは大きく異なることである。これは、それらの環境ストレスに対抗する能力及び様々な抗微生物治療に抵抗する能力に関し特に当てはまり、このことが注目すべき治療上の課題となっている(Koo,et al.,Nature Reviews Microbiology 15:740-755, 2017)。
健康な皮膚及び不健康な皮膚の単離された酵母であるマラセチア属菌種(Malassezia species)が両方とも、in vitroでバイオフィルムを形成することが示された(Angiolella,et al.,Med Mycol.0:1-7,2020)。マラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa、M.globosa)のこのような単離物は、バイオフィルムを形成するだけでなく、非常に高い付着力及び/又は疎水性を示す可能性もある。バイオフィルム形態にあるマラセチア属菌種(Malassezia species)が、自身の抗真菌剤に対する感受性を有意に低下させることが示されている(Figueredo,et al.,Medical Mycology 8:863-867,2013;Bumroogthai,et al.,Medical Mycology 54:544-549,2016)。バイオフィルムの付着性及び疎水性が、マラセチア属微生物(Malassezia)の病原性因子であると示唆されている(Allen,et al.,J.of Clinical & Experimental Dermatology Research 6:311,2015;Angiolella,et al.,Medical Mycology 56:110-116,2018)。つまり、マラセチア属微生物(Malassezia)のバイオフィルムを除去する戦略は、この群の生物によって引き起こされる様々な皮膚状態の治療に有益となる可能性がある。
本実施例においては、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)ATCC MYA-4612を、以下に記載するようにバイオフィルム試験の開発に使用した。
マラセチア・グロボーサ(M.globosa)ATCC MYA-4612を、パーム油20ml/Lを含むmLN培地(実施例6に記載)中、ロータリーシェーカーを用いて100rpmの速度で32℃で培養した。3日間インキュベートした後、培養物25μlを、炭素源としてパーム油を用いたmLN培地150μlを含むポリスチレン製96ウェルプレートのウェルに接種した。プレートを振盪せずに32℃で48時間インキュベートすることにより、マラセチア・グロボーサ(M.globosa)を、懸濁細胞(浮遊細胞)及びマイクロタイタープレートのウェル壁に付着した固着性バイオフィルム細胞の両方として増殖させた。
バイオフィルムが形成された後、増殖培地及び付着していない細胞を除去し、ウェルを1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄した。PBSは、pH調整された超高純度グレードのリン酸緩衝液及び生理食塩水の混合物であり、1×作用濃度に希釈したものは、137mM NaCl、2.7mM KCl、8mM NaHPO、及び2mM KHPOを含有している。洗浄後、バイオフィルムを除去する効果を評価するために2種の異なるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(ATCC 20362及びATCC 9773)株の無細胞上清(無細胞発酵物)250μlを添加した。対照として250μlの1×PBSも添加した。
実施例7に記載したように、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC 20362株又はATCC 9773株を、YPD(10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、20g/Lグルコース)、YPG(10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、20ml/Lグリセロール)、パーム油20ml/L含有mLN(10g/Lバクトペプトン、2g/L酵母エキス、8g/L乾燥ウシ胆汁、10ml/Lグリセロール、0.5g/Lモノステアリン酸グリセロール、5ml/L Tween-60)、又はオリーブ油20ml/L含有mLN中で、初期OD600を0.1として、250rpmで振盪させながら32℃で5日間増殖させた。ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の細胞培養物を0.22μmのフィルタで2回濾過して細胞を除去することにより、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の無細胞培養物上清(無細胞発酵物とも称する)を調製し、-20℃で保存した。
本実施例では、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の発酵物を、オリーブ油20ml/Lを含むmLN培地で生成した。ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の発酵物又は1×PBSを加えた後、バイオフィルム除去反応させるために、バイオフィルムのプレートを32℃で15分間振盪せずにインキュベートした。インキュベート後、上清又はPBSを除去した。ウェルに残存しているバイオフィルムの量を染色後に定量した。バイオフィルムの染色は、水に溶解した0.1%クリスタルバイオレット250μlを添加することにより行った。プレートを室温で3分間インキュベートした。染色後、250μlの1×PBSを各ウェルに加え、結合していない染料を除去した。この処理をもう一度繰り返した。洗浄後、250μlの70%エタノールを各ウェルに加え、室温で5分間インキュベートすることにより色素を遊離させた。マイクロタイタープレートリーダーを用いて570nmで色素の強度を測定した。ODの読み取り値を用いて、各処理後に残存しているバイオフィルムの量を定量化した。PBSで処理したウェルは、バイオフィルム除去率を算出するための基準として使用した。
マラセチア属菌(Malassezia)が形成したバイオフィルムをヤロウィア属微生物(Yarrowia)株由来の培養物上清(発酵物)で除去した結果を表8に示す。
Figure 2023512070000007
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362株由来の無細胞発酵物(上清)を加えることにより、PBS培地の対照と比較して、バイオフィルムが52%低減され、一方、ATCC 9773株由来の上清を加えることにより、PBS培地の対照と比較して、73%低減された。この実験から、2種の異なるヤロウィア属菌(Yarrowia)株由来の無細胞発酵物の、マラセチア属菌(Malassezia)バイオフィルムの除去における有効性が示された。
実施例9
ヤロウィア属微生物(Yarrowia)発酵物によるマラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成の防止及び低減
先に述べたように、頭皮を含む皮膚表面の微生物叢は、主としてバイオフィルム群落として存在している。実施例8に記載したように、既に形成されている病原性バイオフィルムを除去することが重要であるのと同様に、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム成長を防止及び低減することも、脂漏性皮膚炎の治療のための他の戦略である。本実施例では、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)発酵物がマラセチア属菌(Malassezia)のバイオフィルム形成を防止する能力を評価した。
Malassezia globosa(マラセチア・グロボーサ(M.globosa))ATCC MYA-4612をバイオフィルム成長試験に使用した。実施例6に記載したように、出発培養物として、この菌株を、パーム油20ml/Lを含むmLN培地中、ロータリーシェーカーを用いて100rpmの速度で32℃で3日間培養した。典型的なバイオフィルム成長試験においては、溶液90μlを含むポリスチレン製96ウェルプレートのウェルに培養物10μlを接種した。この溶液は、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)発酵物を含む又は含まない、パーム油20ml/Lを含むmLN培地とした。最終体積を100μlとした。パーム油濃度を20ml/Lとした。
実施例7に記載したように、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC 20362株又はATCC 9773株を、YPD(10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、20g/Lグルコース)、YPG(10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、20ml/Lグリセロール)、パーム油20ml/L含有mLN(10g/Lバクトペプトン、2g/L酵母エキス、8g/L乾燥ウシ胆汁、10ml/Lグリセロール、0.5g/Lモノステアリン酸グリセロール、5ml/L Tween-60)、又はオリーブ油20ml/L含有mLN中で、初期OD600を0.1として、250rpmで振盪させながら32℃で5日間増殖させた。ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の細胞培養物を0.22μmのフィルタで2回濾過して細胞を除去することにより、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)の無細胞培養物上清(無細胞発酵物とも称する)を調製し、-20℃で保存した。
本実施例においては、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)発酵物をYPDを用いて生成した。低減試験には異なる濃度の発酵物(5、10、及び20μl)を使用した。対照として、等しい濃度のYPD培地(5、10、及び20μl)を使用した。バイオフィルム試験プレートを32℃で振盪せずに48時間インキュベートすることにより、マイクロタイタープレートのウェル壁にマラセチア・グロボーサ(M.globosa)のバイオフィルムを成長させた。
バイオフィルムが形成された後、増殖培地及び付着していない細胞を除去し、ウェルを1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄した。PBSは、pH調整されたリン酸緩衝液及び生理食塩水の混合物であり、1×作用濃度に希釈したものは、137mM NaCl、2.7mM KCl、8mM NaHPO、及び2mM KHPOを含有している。ウェルに残存しているバイオフィルムの量を、水に溶解した0.1%のクリスタルバイオレット150μlを添加して染色することにより定量した。色素を添加した後、室温で3分間インキュベートした。染色後、150μlの1×PBSを各ウェルに加え、結合していない染料を除去した。この処理をもう一度繰り返した。洗浄後、150μlの70%エタノールを各ウェルに加え、室温で5分間インキュベートすることにより色素を遊離させた。マイクロタイタープレートリーダーを用いて570nmで色素の強度を測定した。ODの読み取り値を用いて、各処理後に残存しているバイオフィルムの量を定量化した。YPD培地対照で処理したウェルは、ヤロウィア属微生物(Yarrowia)上清によるバイオフィルム除去率を算出するための基準として使用した。
ヤロウィア属微生物(Yarrowia)株由来の培養物上清(発酵物)を用いた場合のマラセチア属菌(Malassezia)バイオフィルム形成結果を表9に示す。
Figure 2023512070000008
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株由来の上清5μlを加えることにより、マラセチア・グロボース(Malassezia globose)によるバイオフィルム形成を約35%阻害した。上清20μlを加えることにより、バイオフィルム形成が80%を超えて阻害された。この実験は、マラセチア属菌(Malassezia)が関与する状態の治療にヤロウィア属微生物(Yarrowia)株由来の上清が強力な効果を示すことを実証するものである。

Claims (27)

  1. 有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、頭皮障害の治療に使用するためのスキンケア組成物であって、前記組成物は、前記頭皮障害を軽減及び/又は治療する、スキンケア組成物。
  2. 前記頭皮障害は、頭皮のフケが多い状態(脂漏性皮膚炎)、頭皮環境叢のバランスの乱れ、頭皮の不快感、癜風、乾燥肌、皮膚刺激感、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、請求項1に記載のスキンケア組成物。
  3. 1種又は複数種のフケ防止活性剤を更に含む、請求項1に記載のスキンケア組成物。
  4. 前記組成物は、パルミチン酸、オレイン酸、及びこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、脂質を分解する、請求項1に記載のスキンケア組成物。
  5. 前記組成物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減させる、請求項1に記載のスキンケア組成物。
  6. 前記組成物は、マラセチア属菌種(Malasseziaspecies)のバイオフィルムを除去する、請求項1に記載のスキンケア組成物。
  7. 前記組成物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する、請求項1に記載のスキンケア組成物。
  8. 賦形剤、防腐剤、pH調整剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物を更に含む、請求項1に記載のスキンケア組成物。
  9. ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 9773、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 18942、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20177、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CBS2073、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Phaff#50-47、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を含む、請求項1に記載のスキンケア組成物。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の有効量のスキンケア組成物の、スキンケア製品における使用。
  11. 請求項1~9のいずれか一項に記載の有効量のスキンケア組成物と、皮膚科学的又はスキンケア的に許容される1種又は複数種の成分とを含む、スキンケア製品。
  12. 前記スキンケア組成物の前記有効量は、前記スキンケア製品の総重量に対して重量基準で少なくとも約1%、2%、3%、4%、最大で5%である、請求項11に記載のスキンケア製品。
  13. それを必要とする対象の頭皮障害を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法。
  14. 前記頭皮障害は、頭皮のフケが多い状態(脂漏性皮膚炎)、頭皮環境叢のバランスの乱れ、頭皮の不快感、癜風、乾燥肌、皮膚刺激感、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又は代謝物は、局所投与される、請求項13に記載の方法。
  16. それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減するための方法であって、有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物を前記対象に投与することを含む、方法。
  17. 前記微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその代謝物は、局所投与される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、単一の組成物に配合される、請求項16に記載の方法。
  19. 前記組成物は、前記対象の皮膚又は頭皮に投与される、請求項16に記載の方法。
  20. 前記少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 9773、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 18942、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC 20177、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CBS2073、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Phaff#50-47、又はこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
  21. 前記少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)の増殖を低減する、請求項16に記載の方法。
  22. 前記少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルムを除去する、請求項16に記載の方法。
  23. 前記少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、マラセチア属菌種(Malassezia species)のバイオフィルム形成を防止又は低減する、請求項16に記載の方法。
  24. 前記少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、パルミチン酸、オレイン酸、及びこれらの組合せのいずれか一つからなる群から選択される脂質を分解する、請求項16に記載の方法。
  25. 前記有効量の少なくとも1種のヤロウィア(Yarrowia)属の微生物及び/又はその断片及び/又はその細胞溶解物及び/又はその発酵物及び/又はその代謝物は、スキンケア組成物又はスキンケア製品として投与される、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
  26. それを必要とする対象の頭皮のフケが多い状態を治療及び/又は軽減する方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載のスキンケア組成物を含むスキンケア製品を前記対象に局所投与することを含む、方法。
  27. 前記スキンケア製品は、前記スキンケア組成物を、前記スキンケア製品の総重量に対し、重量基準で少なくとも1%、2%、3%、4%、最大で5%含む、ローション、セラム、ゼリー、クリーム、ゲル、エマルション、固形化粧料、マスク、パッチ、及びスティックからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
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