JP2023181991A - 球状シリカ粉末の製造方法 - Google Patents

球状シリカ粉末の製造方法 Download PDF

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肇 片山
Hajime Katayama
浩大 福本
Kodai Fukumoto
雅史 近藤
Masafumi Kondo
博道 加茂
Hiromichi KAMO
慎之介 有光
Shinnosuke Arimitsu
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AGC Inc
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Abstract

【課題】比表面積が小さい球状シリカ粒子を効率よく製造できる、球状シリカ粉末の新規な製造方法を提供すること。【解決手段】球状で多孔質のシリカ前駆体を、粒子同士が接する状態で焼成することを含む、球状シリカ粉末の製造方法とする。【選択図】なし

Description

本発明は、球状シリカ粉末の製造方法に関する。
シリカ(SiO)を主成分とするシリカ粒子は、従来、プリント配線基板やパッケージ配線基板等の電子材料、レンズや光学フィルム等の光学材料、触媒や触媒担体等の機能材料、塗料や化粧品等の顔料等の様々な用途に利用されている。
用いられるシリカとしては、表面のシラノール基が他成分に影響したり、スラリーの粘度上昇につながったり、しっとりとした感触が得られることから、表面積が小さいものが求められている。
近年、通信分野における情報通信量の増加に伴い、電子機器や通信機器等において高周波数帯の信号の活用が広がっており、高周波数帯用のデバイスに用いられる材料に関しては、低い誘電正接を有する材料が求められている。シリカは誘電率が小さく(3.9)、熱膨張率が小さく(3~7.9ppm/℃)、低誘電率かつ低熱膨張率を有するフィラーの材料として有望であり、高周波数帯の誘電体デバイス等においての使用が期待される。
シリカ粒子は、例えば、火炎溶融法、気相法、気相酸化法、湿式法、沈降法等により得られ、その製造方法についても種々検討がされている。
例えば、特許文献1では、多孔質シリカゲルを高温の気体中に分散させて焼成し無孔質化することにより単分散性の無孔質球状シリカを得る方法が提案されている。
特許文献2には、造粒されたシリカ粉末に球状化処理を施した後、洗浄し乾燥することにより合成非晶質シリカ粉末を得ることが記載されている。
特許第2921058号公報 特許第5686099号公報
特許文献1に記載の方法では、処理量が増えると気体中での温度ムラが大きくなる虞があり、均一な処理がし難くなる。よって、狭い条件範囲の処理には適さず、品質を揃えた球状シリカ粉末を得るのが難しい。また、本法では細孔容積が小さな粒子を得られるものの、低比表面積の粒子を得ることは難しい。
また、特許文献2に記載の方法は、得られるシリカ粉末の表面に、アルゴン-酸素プラズマ中に蒸発したシリカ粉末の微粉が付着しており、低比表面積の粉末を得るにはこの付着粉末を洗浄し除去する必要がある。
そこで本発明は、従来の球状シリカ製造技術の上記問題点を克服して、比表面積が小さい球状シリカ粒子を効率よく製造できる、球状シリカ粉末の新規な製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、球状で多孔質のシリカ前駆体をその粒子同士が接する状態で焼成することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、下記(1)~(5)に関する態様を含む。
(1)球状で多孔質のシリカ前駆体を、粒子同士が接する状態で焼成することを含む、球状シリカ粉末の製造方法。
(2)前記シリカ前駆体は、以下の超音波処理を行ったとき、超音波処理する前のシリカ前駆体の体積基準の累積50%粒子径Dに対する超音波処理した後のシリカ前駆体の体積基準の累積50%粒子径Dの比D/Dが0.9以上である、前記(1)に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
超音波処理:前記シリカ前駆体に蒸留水を加えて0.05質量%スラリーとし、周波数45kHzで2分間超音波分散処理を施す。
(3)前記シリカ前駆体は、230℃で12時間乾燥したときの重量の減少率が10%以下である、前記(1)又は(2)に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
(4)前記シリカ前駆体を、静置による熱処理及び回転炉による熱処理のうちの少なくとも1つの熱処理により焼成する、前記(1)又は(2)に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
(5)焼成後に、さらに、粒子の平均円形度が0.90を下回らないような解砕を行う、前記(1)又は(2)に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
本発明によれば、球状で多孔質のシリカ前駆体をその粒子同士が接する状態で焼成することにより、狭い条件範囲の処理でも比表面積が小さく、品質が一定な球状シリカ粉末を効率よく製造できる。得られた球状シリカ粉末は、粒子形状が球状であるので、樹脂との混合性に優れ、また樹脂組成物の加工性にも優れる。本発明の製造方法により得られた球状シリカ粉末は、電子材料や光学材料のフィラーをはじめ、塗料や化粧品の材料としても利用でき、誘電正接が十分に小さいので、特に電子材料としての使用に適する。
以下、本発明について説明するが、以下の説明における例示によって本発明は限定されない。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
本実施形態の球状シリカ粉末の製造方法(以下、単に本製造方法ともいう。)は、球状で多孔質のシリカ前駆体を、粒子同士が接する状態で焼成することを含む。シリカ前駆体をその粒子同士が接する状態で焼成すると、小さな容積で焼成することが可能となるので、例えばシリカ前駆体を気体中に分散させて焼成する場合と比べて焼成時の温度ムラや時間ムラが小さくなり、よって、品質の一定な球状シリカ粉末が得られる。シリカ前駆体を気体中に分散させる噴霧燃焼法では火炎中央部から原料粉体を吹き込む場合であっても、同時に吹き込むガスの温度、原料の分散状態、火炎を通過する部分の違いによる温度差、火炎を通過するまでの時間の差、装置内の気流(流速)分布に伴う冷却されるまでの時間、これらすべてが焼成条件のばらつきにつながる。温度が低い、あるいは、時間が短いと表面積の大きな多孔質部分が残留し、比表面積や誘電正接が低い粒子が得られない。温度が高すぎると粒子表面が溶融し粒子同士が合一し、微粒子が表面に付着した表面を形成する現象が生じ、温度が低い場合と同様に低比表面積で誘電正接の小さな粒子が得られない。シリカ前駆体をその粒子同士が接する状態で焼成することで各シリカ前駆体における焼成条件を均一にし、一定の品質を保てる。
(シリカ前駆体)
本製造方法に用いるシリカ前駆体は多孔質のものを用いる。シリカ前駆体が多孔質であるとは、シリカ前駆体中に孔が均等に分布していることをいう。
原料に多孔質シリカ粒子を用いることで、無孔質の原料を粉砕したものを焼成して作る粒子に比べて、粒子の形状や粒度分布などが制御されたものを得ることが容易になる。
<シリカ前駆体の比表面積>
シリカ前駆体の比表面積は、200~1000m/gの範囲であるのが好ましい。比表面積が200m/g以上であると粒子の焼結を抑えた状態で焼成後の比表面積を低減できる。また、比表面積が1000m/g以下であるとシリカ前駆体粒子の強度が十分高い。また、シリカ前駆体の比表面積が前記範囲であると、焼成時に粒子同士が接した状態で加熱された場合でも粒子同士が強固に結合することなく、球状粒子が得られる。比表面積は、400m/g以上であるのがより好ましく、500m/g以上がさらに好ましく、700m/g以上が特に好ましく、また、950m/g以下であるのがより好ましく、900m/g以下がさらに好ましい。
比表面積は、比表面積・細孔分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社製「BELSORP-miniII」、マイクロメリティック社製「トライスターII」等)を用いた窒素吸着法に基づく多点BET法により求められる。
<シリカ前駆体の細孔容積>
シリカ前駆体の細孔容積は、0.1~2.0ml/gの範囲であるのが好ましい。細孔容積が0.1ml/g以上であると焼成時のシリカ無孔質化時に粒子の見かけ体積が減少し、粒子間の空隙が増加し焼結が生じにくい、あるいは、焼結強度の弱い粉体が得られる。細孔容積が2.0ml/g以下であると焼成前の仕込み時のかさ密度が低くなり過ぎるのを抑制し、生産性を向上できるとともに、焼成時にシリカ粒子が十分に収縮し、比表面積を十分小さくできる。また、シリカ前駆体の細孔容積が前記範囲であると、焼成時に粒子同士が接した状態で加熱された場合でも粒子同士が強固に結合することなく、球状粒子が得られる。細孔容積は、0.3ml/g以上であるのがより好ましく、0.6ml/g以上がさらに好ましく、0.7ml/g以上が特に好ましく、また、1.8ml/g以下であるのがより好ましく、1.5ml/g以下がさらに好ましく、1.2ml/g以下が特に好ましい。
<シリカ前駆体の平均細孔径>
シリカ前駆体の平均細孔径は、1.0~50.0nmであるのが好ましい。平均細孔径が1.0nm以上であると粒子内部まで均質に無孔質化でき、内部に気泡が残らず誘電正接を下げられる。平均細孔径が50.0nm以下であると焼成により細孔を残さずにシリカ粒子を緻密化(低比表面積化)できるので誘電正接を下げられる。平均細孔径は、2.0nm以上であるのがより好ましく、3.0nm以上がさらに好ましく、4.0nm以上が特に好ましく、また、40.0nm以下であるのがより好ましく、30.0nm以下がさらに好ましく、20.0nm以下が特に好ましい。
細孔容積および平均細孔径は、比表面積・細孔分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社製「BELSORP-miniII」、マイクロメリティック社製「トライスターII」等)を用いた窒素吸着法に基づくBJH法により求められる。
<シリカ前駆体の円形度>
本製造方法に用いるシリカ前駆体は球状であり、その平均円形度は、0.90以上であるのが好ましい。平均円形度が0.90以上であると実質的に球状のため粒子の比表面積を小さくできるとともに、粒子の振動で凸部がかけたりせず活性面が露出しないのでシリカ粒子を低誘電化できる。平均円形度は、0.92以上であるのがより好ましく、0.95以上が特に好ましく、また、真球に近くなる程望ましいので、最も好ましくは1.00である。
円形度は、粒子を走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JCM-7000」)により撮影し、画像解析ソフト、例えば粒子画像解析装置(例えば、マルバーン社製「Morphologi4」)に付属の画像解析ソフトを用いて粒子の面積と周長を求め、下記式に当てはめて算出することにより求められる。なお、20個の粒子の円形度の平均値を求めたものを平均円形度とする。
円形度=投影面積の等しい円の周長/粒子の周長
投影面積の等しい円の周長:ある粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ
粒子の周長:粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ
<シリカ前駆体の粒度分布>
シリカ前駆体の体積基準の累積50%粒子径(D50、以下単に「50%粒子径」ともいう。)は、1~500μmであるのが好ましい。50%粒子径(D50)が1μm以上であると比表面積を低減させるために焼成を行った後も球状粒子とすることができ、500μm以下であると成型が容易な樹脂へのフィラーとして利用しやすい。50%粒子径(D50)は、1μm以上であるのが好ましく、1.2μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましく、また、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、20μm以下が特に好ましく、10μm以下が殊更に好ましく、5μm以下が最も好ましい。
50%粒子径(D50)は、レーザー回折式の粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製「MT3300EXII」)や電気的検知法(コールターカウンター法)の粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製「Multisizer4e」)等により求められる。
シリカ前駆体は、以下の超音波処理を行ったとき、超音波処理する前のシリカ前駆体の50%粒子径Dに対する超音波処理した後のシリカ前駆体の50%粒子径Dの比D/Dが0.9以上であるのが好ましい。
超音波処理:前記シリカ前駆体に蒸留水を加えて0.05質量%スラリーとし、周波数45kHzで2分間超音波分散処理を施す。
前記比D/Dは焼成工程前に粒子同士が強く凝集している度合いを示し、比D/Dが0.9以上であるとシリカ前駆体の粒子同士の凝集が強くなり過ぎず、焼成時に焼結しにくくなるため好ましい。比D/Dは、0.95以上であるのがより好ましく、0.97以上がさらに好ましく、0.98以上が特に好ましい。また、超音波処理前後でシリカ前駆体の50%粒子径(D50)が変化しないのが好ましいため、上限は1.0が好ましい。
<シリカ前駆体の乾燥重量減少>
また、本製造方法に用いるシリカ前駆体は、230℃で12時間乾燥したときの重量の減少率が10%以下であるのが好ましい。重量の減少率が10%以下であると、シリカ前駆体をその粒子同士が接した状態で焼成したときに粒子同士の焼結が起こり難く、球状のシリカ粉末が得られやすい。
重量の減少率は、9%以下であるのがより好ましく、8%以下がさらに好ましく、6%以下が特に好ましく、また、230℃で12時間乾燥しても重量変化がないものが望ましいため、下限は特に限定されない。
<シリカ前駆体の強熱減量>
また、シリカ前駆体の強熱減量は、5.0~15.0質量%であるのが望ましい。強熱減量は、シリカ前駆体に付着している付着水と、シリカ前駆体に含まれるシラノール基の縮合により発生する水との総和となっており、シリカ前駆体が適度なシラノール基を持つことで、焼成時に縮合が進み、シラノール基が減りやすくなる。強熱減量が多過ぎると、焼成時の収率が低下し、生産性が悪化することから、シリカ前駆体の強熱減量は、15.0質量%以下が好ましく、13.0質量%以下がより好ましく、12.0質量%以下が最も好ましい。強熱減量が少な過ぎると、焼成時にシラノール基が残りやすくなるため、シリカ前駆体の強熱減量は、5.0質量%以上が好ましく、6.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上が最も好ましい。
ここで、強熱減量は、JIS K0067(1992)に準拠して、シリカ前駆体1gを、850℃で0.5時間加熱乾燥したときの質量減量として求める。
<シリカ前駆体の入手方法>
シリカ前駆体は、製造により得てもよいし、市販品を用いてもよい。
シリカ前駆体の製造方法としては、例えば、湿式法、造粒法等が挙げられる。湿式法は、液体原料あるいは液体の溶媒を用いて多孔質シリカを作る方法全般のことをいう。造粒法は、シリカ微粒子を用いてバインダー等を用いて球形に成型する方法である。
これらの中でも、粒度分布を制御することが可能で球状粒子をつくることが可能な湿式法を用いることで、粉砕等により粒子の形状を整える必要が無く、微粒子も混在しないため、結果として焼成後に比表面積の小さい粒子が得られる。
球状粒子が合成可能な湿式法としては、例えば、噴霧法、エマルション・ゲル化法等が挙げられる。噴霧法は、シリカゾルをスプレードライで乾燥させ、球状の多孔質粒子を得る方法である。エマルション・ゲル化法としては、例えば、シリカ前駆体を含む分散相と連続相とを乳化し、得られたエマルションをゲル化して球状のシリカ前駆体を得る。乳化方法としては、シリカ前駆体を含む分散相を連続相に微小孔部または多孔質膜を介して供給しエマルションを作製する方法が好ましい。これによって、均一な液滴径のエマルションを作製して、結果として均一な粒子径の球状シリカが得られる。このような乳化方法としては、マイクロミキサー法や膜乳化法が用いられる。例えば、マイクロミキサー法は国際公開第2013/062105号に開示されている。
得られたシリカ前駆体の含水量が多く、230℃で12時間乾燥したときの重量の減少率が10%を超えるときは10%以下になるまで乾燥させるのが好ましい。
乾燥手段としては、例えば、スプレードライヤー、乾燥機での静置乾燥、乾燥空気の通風処理等が挙げられる。
また、シリカ前駆体同士が焼結し大きな塊となっている場合は、解砕してもよい。ただし、焼結が強すぎる場合には、解砕しても球状粒子にならず、粉砕処理され球状粒子が得られない。
(球状シリカ粉末の製造方法)
本製造方法は、上記のシリカ前駆体をその粒子同士が接する状態で焼成することを含む。焼成によりシリカ前駆体を焼き締め、比表面積を低減し、表面のシラノール基量を減らし、誘電正接を低下させる。シリカ前駆体同士が接する状態で焼成することで粒子を密な状態に配置でき、焼成時の温度ムラや時間ムラを小さくできる。
<焼成手段>
焼成手段としては特に限定されないが、静置による熱処理、回転炉による熱処理等が挙げられる。静置による熱処理には、静置式の電気炉、ローラーハースキルン、トンネル炉に分類される連続炉等が使用できる。回転炉による熱処理には、水平回転炉(ロータリーキルン)、回転式管状炉等が使用できる。これらの中でも、焼成の均一性の観点から、連続炉あるいは、回転炉による熱処理により焼成するのが好ましく、静置による熱処理及び回転炉による熱処理のうちの少なくとも1つの熱処理により焼成するのがより好ましい。
<焼成温度>
焼成温度は、700℃以上であるのが好ましく、800℃以上がより好ましく、900℃以上がさらに好ましく、1000℃以上が特に好ましい。また、温度が高くなり過ぎると、粒子が強い焼結をおこしやすくなり、樹脂組成物中での粒ゲージが大きくなるため、1600℃以下であるのが好ましく、1500℃以下がより好ましく、1400℃以下がさらに好ましい。すなわち、焼成温度は700~1600℃の範囲が好ましい。
<焼成時間>
焼成時間は、使用する焼成装置や焼成時間に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0.5~50時間で行うのが好ましく、1~10時間がより好ましい。
<焼成雰囲気>
焼成時の雰囲気は、酸素を含む雰囲気であっても、酸素を含まない雰囲気であってもよい。湿式法で球形化する場合には、乳化剤等の有機物を利用することが多く、したがってシリカ前駆体中に有機物が残存する場合が多い。有機物をわずかに含むシリカ前駆体を焼成する場合に、酸素が少ない条件では有機物が炭化してしまうため、誘電正接の上昇や着色の原因になる。よって、シリカ前駆体が有機物を含む場合は、好ましくは、酸素を含む雰囲気、より好ましくは大気雰囲気下で焼成を行う。
<解砕>
球状シリカ粉末は、焼成後に粒子同士が弱く焼結している場合があるので、その場合は解砕を行ってもよい。解砕は本発明の効果を損なわないよう、球形度や比表面積を保つために粒子の平均円形度が0.90を下回らないように行うのが好ましい。また、解砕処理により比表面積が上昇しないのが好ましい。解砕処理で比表面積が大きく増大することは、一部の球状粒子が粉砕されていることや、表面に微細な損壊が生じて微粉が発生していることを意味する。比表面積の上昇は、樹脂へ分散したときの粘度上昇や、誘電正接の悪化につながるため好ましくない。
解砕は、例えば、サイクロンミル、ジェットミル等の解砕装置を用いて行うことができ、また、振動篩を用いても解砕が可能である。
<表面処理>
焼成により得られた球状シリカ粉末は、シランカップリング剤で表面処理してもよい。この工程により、球状シリカ粉末の表面に存在するシラノール基とシランカップリング剤とが反応し、表面のシラノール基が減少して、誘電正接を低く抑えられる。また、粒子の表面が疎水化して樹脂に対する親和性が改善するため、樹脂に対する分散性が向上する。
表面処理の条件は特に制限はなく、一般的な表面処理条件でよく、湿式処理法や乾式処理法が用いられる。均一な処理を行う観点から、湿式処理法が好ましい。
<シランカップリング剤>
表面処理に用いるシランカップリング剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
具体的に表面処理剤としては、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、CF(CFCHCHSi(OCH、CF(CFCHCHSiCl、CF(CFCHCHSi(CH)(OCH、CF(CFCHCHSi(CH)C1、CF(CFCHCHSiCl、CF(CFCHCHSi(OCH、CFCHCHSiCl、CFCHCHSi(OCH、C17SON(C)CHCHCHSi(OCH、C15CONHCHCHCHSi(OCH、C17COCHCHCHSi(OCH、C17-O-CF(CF)CF-O-CSiCl、C-O-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CONH-(CHSi(OCH等のフッ素含有シランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物等が挙げられる。
<処理量>
シランカップリング剤の処理量としては、球状シリカ粉末100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上がさらに好ましく、また5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下がより好ましい。すなわち、シランカップリング剤の処理量は、球状シリカ粉末100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲が好ましい。
シランカップリング剤で処理する方法としては、例えば、球状シリカ粉末にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、球状シリカ粉末を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
なお、球状シリカ粉末の表面がシランカップリング剤で処理されていることはIRによるシランカップリング剤の置換基によるピークの検出により確認できる。また、シランカップリング剤の付着量は、炭素量により測定できる。
本製造方法により得られる球状シリカ粉末は、非晶質の中実シリカである。
(球状シリカ粉末の物性)
<粒径分布D50>
球状シリカ粉末は、50%粒子径(D50)が1μm以上であるのが好ましい。50%粒子径(D50)が1μm以上であると、誘電正接を有意に低減できる。また、50%粒子径(D50)が大きくなり過ぎると粒ゲージの値が大きくなるので、球状シリカ粉末を含有させた樹脂組成物を、例えば、シートに製膜する際には、シートの最小厚みが厚くなってしまうので、50%粒子径(D50)は、500μm以下が好ましい。50%粒子径(D50)は、1.2μm以上であるのがより好ましく、1.5μm以上が特に好ましく、また、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、20μm以下が特に好ましく、10μm以下が殊更に好ましく、5μm以下が最も好ましい。すなわち、球状シリカ粉末の50%粒子径(D50)は、1~500μmの範囲が好ましい。
<最大粒子径Dmax>
球状シリカ粉末の体積基準における最大粒子径(Dmax)は、50%粒子径(D50)の150倍以下であるのが好ましく、100倍以下がより好ましく、さらに好ましくは50倍以下、特に好ましくは10倍以下である。最大粒子径(Dmax)が50%粒子径(D50)の150倍以下であるとシートを加工したときの欠陥になりにくい。また、最大粒子径(Dmax)は、50%粒子径(D50)の1.2倍以上であるのが好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2倍以上がさらに好ましい。すなわち、球状シリカ粉末の最大粒子径(Dmax)は、50%粒子径(D50)の1.2~150倍の範囲が好ましい。
<粗大粒子数>
本製造方法において、シリカ前駆体の焼成によりシリカ前駆体同士が焼結することがある。シリカ前駆体の粒度分布から類推される粒子径Aμm以上の粒子の個数比率よりも、焼成後のシリカ粒子の粒子径Aμm以上の粒子の個数比率が大きいことは、粒子同士が強固に焼結していることを示し、樹脂へ分散させたときに球状粒子ではなく、合一した粗大粒子としてふるまうことになり、樹脂の粘度上昇や、表面欠陥などの原因になる。
本製造方法において、特に、50%粒子径(D50)が5μm以下の球状シリカ粉末の場合、10μm以上の粒子の個数比率が3000個数ppm未満の範囲にあるのが好ましい。50%粒子径(D50)が5μm以下の球状シリカ粉末において10μm以上の粒子の個数比率が3000個数ppm未満であると粗大粒子がほとんど含まれず薄膜化したシート中での欠陥を低減できる。10μm以上の粒子の個数比率は、2000個数ppm以下であるのがより好ましく、1000個数ppm以下がさらに好ましく、500個数ppm以下が特に好ましい。
50%粒子径(D50)及び最大粒子径(Dmax)は、上記した電気的検知法(コールターカウンター法)で測定でき、粒子の個数比率は、測定された粒径分布より算出できる。
<比表面積>
球状シリカ粉末の比表面積は、4.0m/g以下であるのが好ましい。比表面積が4.0m/g以下であると、スラリー化したときの粘度上昇を抑制でき、さらに誘電正接も小さくできる。また、比表面積は0.2m/g以上であると、球状シリカ粉末を樹脂組成物に含有させた際に、樹脂との接点が十分にあるので、樹脂とのなじみがよくなるので好ましく、0.2m/g未満のものは、実質的に得ることが困難である。比表面積は、3.5m/g以下であるのがより好ましく、3.0m/g以下がさらに好ましく、2.0m/g以下が特に好ましい。すなわち、比表面積は、0.2~4.0m/gの範囲が好ましい。
比表面積は、上記した同様の方法で測定できる。
<比表面積Aと50%粒子径D50の積A×D50>
比表面積は、粒子径にも相関し、一般的には粒子径が小さくなると比表面積は大きくなる。本製造方法により得られる球状シリカ粉末は、比表面積A(m/g)と50%粒子径(D50)(μm)の積A×D50が20μm・m/g以下であるのが好ましい。積A×D50が20μm・m/g以下であると、同じ粒子径の粒子よりもスラリー化したときの粘度上昇を抑制できるとともに、誘電正接を下げられる。積A×D50は、10μm・m/g以下であるのがより好ましく、さらに好ましくは5μm・m/g以下である。積A×D50は、理論値が2.7μm・m/g[比表面積=6/(シリカの真密度2.2(g/cm)×50%粒子径(D50)(μm))より導出]であり、これ以下の値は現実的に達成不可である。すなわち、積A×D50は、2.7~20μm・m/gの範囲が好ましい。
<円形度>
球状シリカ粉末の平均円形度は、0.90以上であるのが好ましい。平均円形度が0.90以上であると実質的に球状のため粒子の比表面積を小さくできるとともに、粒子の振動で凸部がかけたりせず活性面が露出しないのでシリカ粒子を低誘電化できる。平均円形度は、0.92以上であるのがより好ましく、0.93以上がさらに好ましく、0.95以上が特に好ましく、また、真球に近くなる程望ましいので、最も好ましくは1.00である。
平均円形度は上記した方法と同様の方法により算出できる。
<誘電正接>
本製造方法により得られる球状シリカ粉末は、粉末での誘電正接が、周波数1GHzにおいて0.0020以下であるのが好ましく、0.0010以下がより好ましく、0.0008以下がさらに好ましく、0.0007以下が特に好ましく、0.0006以下が殊更に好ましく、0.0005以下が最も好ましい。特に粉体の誘電正接や誘電率の測定において、周波数10GHz以上ではサンプルスペースが小さくなり測定精度が悪化するので、本発明では周波数1GHzでの測定値を採用する。球状シリカ粉末の周波数1GHzでの誘電正接が0.0020以下であると、優れた誘電損失抑制効果が得られるので、高周波特性が向上した基板やシートが得られる。誘電正接が小さいほど、回路の伝送損失が抑えられるため、下限値は特に限定されない。
誘電正接は、専用の装置(例えば、キーコム株式会社製「ベクトルネットワークアナライザ E5063A」)を用い、摂動方式共振器法にて測定できる。
<混練物粘度>
本製造方法により得られる球状シリカ粉末は、下記測定方法により測定した球状シリカ粉末を含む混練物の粘度が5000mPa・s以下であるのが好ましい。
(測定方法)
JIS K 5421:2000で規定された煮アマニ油6質量部と球状シリカ粉末8質量部を混合し、2000rpmで3分間混練して得た混練物を、回転式レオメータを用いてせん断速度1s-1で30秒測定し、30秒時点での粘度を求める。
上記測定方法により求めた混練物のせん断速度1s-1での粘度が5000mPa・s以下であると、球状シリカ粉末を含む樹脂組成物の成形・成膜時に添加する溶剤量を減らせ、乾燥速度を早くでき、生産性を向上できる。また、シリカ粉末の粒径に応じた比表面積が大きくなると、樹脂組成物に添加した際に粘度が上昇しやすくなるが、本発明の球状シリカ粉末は、比表面積が小さいので樹脂組成物の粘度上昇を抑制できる。混練物の粘度は、4000mPa・s以下であるのがより好ましく、3500mPa・s以下がさらに好ましい。
前記混練物のせん断速度1s-1での粘度は、低いほど樹脂組成物の塗工性が向上し、生産性が向上するため下限値は特に限定されない。
<IRピーク強度>
球状シリカ粉末の表面の孤立シラノール基に由来する3746cm-1付近のIRピーク強度は、0.1以下であるのが好ましく、0.08以下がより好ましく、0.06以下がさらに好ましい。孤立シラノール基とは、シリカ粒子に吸着された水等と結合していないシラノール(Si-OH)基である。シリカ粒子表面の孤立シラノール(Si-OH)基量はIR測定によって得られる。具体的には、IRスペクトルを800cm-1で規格化し、3800cm-1でベースラインを合わせたあと、3746cm-1付近のSi-OHピーク強度の相対値を求める。粒子表面の孤立シラノール基が多いと、樹脂に混合した部材を電子用途に使用する場合、誘電損失が大きくなる傾向があるが、粒子表面の孤立シラノール基に由来する3746cm-1付近のIRピーク強度が0.1以下であると、誘電損失を低減できる。
また、球状シリカ粉末の表面の結合シラノール基に由来する3300~3700cm-1にある最大IRピーク強度は、0.2以下であるのが好ましく、0.17以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましい。結合シラノール基とは、シリカ粒子に吸着された水や、シリカ表面のシラノール等と結合しているシラノール(Si-OH)基である。シリカ粒子表面の結合シラノール(Si-OH)基量はIR測定によって得られる。具体的には、IRスペクトルを800cm-1で規格化し、3800cm-1でベースラインを合わせたあと、3300~3700cm-1にあるうちの最大ピークから、結合Si-OHピーク強度の相対値を求める。粒子表面の結合シラノール基が多いと、樹脂に混合した部材を電子用途に使用する場合、誘電損失が大きくなる傾向があるが、粒子表面の結合シラノール基に由来する、3300~3700cm-1にある最大IRピーク強度が0.2以下であると、誘電損失を低減できる。
<吸油量>
球状シリカ粉末は、無孔質粒子であることが好ましい。多孔質粒子であると、吸油量が大きくなり、樹脂中での粘度が上昇してしまうとともに、比表面積が増加し、シリカ粒子表面のシラノール(Si-OH)基量が増加して、誘電正接が悪化する傾向にある。具体的には、吸油量が100ml/100g以下であることが好ましく、70ml/100g以下がより好ましく、50ml/100g以下が最も好ましい。下限値は特に限定されないが、吸油量を20ml/100g以下とすることは実質的に困難である。すなわち、吸油量は、20ml/100g超100ml/100g以下の範囲が好ましい。
<金属量>
球状シリカ粉末は、本発明の効果を妨げない範囲において、不純物元素を含んでいてもよい。不純物元素としては、Ti、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe等が挙げられる。
不純物元素のうちアルカリ金属とアルカリ土類金属の含有量は、総和が2000質量ppm以下であるのが好ましく、1000質量ppm以下がより好ましく、200質量ppm以下がさらに好ましい。
(樹脂組成物及びスラリー組成物)
<樹脂組成物>
本製造方法により得られる球状シリカ粉末は比表面積が小さいので、各種溶媒における分散性が良好であり、樹脂組成物への混合性に優れている。
本実施形態に係る樹脂組成物は、球状シリカ粉末と樹脂とを含む。樹脂組成物中の球状シリカ粉末の含有率は5~90質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましい。
樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変成樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)の1種または2種以上等を使用できる。樹脂組成物における誘電正接は樹脂の特性にも依存するので、これらを考慮して使用する樹脂を選択すればよい。
<スラリー組成物>
また、本製造方法により得られる球状シリカ粉末は、スラリー組成物の充填材としても用いられる。スラリー組成物は、水系又は油系の媒体中に球状シリカ粉末を分散させた泥状の組成物をいう。
スラリー組成物中、球状シリカ粉末を、1~50質量%含むことが好ましく、5~40質量%含むことがより好ましい。
油系の媒体としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチルピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
樹脂組成物及びスラリー組成物には、上記樹脂や媒体以外に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、分散助剤、界面活性剤、シリカ以外のフィラー等が挙げられる。
<樹脂フィルム>
なお、球状シリカ粉末を含む樹脂組成物を用いて樹脂フィルムを作製したとき、その誘電正接が、周波数10GHzにおいて0.012以下であるのが好ましく、0.010以下がより好ましく、0.009以下がさらに好ましい。樹脂フィルムの周波数10GHzでの誘電正接が0.012以下であると、電気特性に優れるので電子機器や通信機器等への利用が期待できる。誘電正接が小さいほど、回路の伝送損失が抑えられるため、下限値は特に限定されない。
誘電正接は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)(例えば、Agilent Technologies社製)を用いて測定できる。
また、上記樹脂フィルムの平均線膨張率が、10~50ppm/℃であるのが好ましい。平均線膨張率が前記範囲であると、基材として広く使用される銅箔の熱膨張係数に近い範囲であるので、電気特性に優れる。平均線膨張率は、12ppm/℃以上であるのがより好ましく、15ppm/℃以上がさらに好ましく、また40ppm/℃以下であるのがより好ましく、30ppm/℃以下がさらに好ましい。
平均線膨張率は、熱機械分析装置(例えば、島津製作所社製、「TMA-60」)を使用して、上記樹脂フィルムを荷重5N、昇温速度2℃/minで加熱し、30℃から150℃までのサンプルの寸法変化を測定し、平均を算出することで求められる。
<用途>
また、本製造方法により得られる球状シリカ粉末は、化粧品向けの材料や各種充填材として使用でき、特にパソコン、ノートパソコン、デジタルカメラ等の電子機器や、スマートフォン、ゲーム機等の通信機器等に用いられる電子基板の作製に用いられる樹脂組成物の充填材として好適に使用できる。具体的には、球状シリカ粉末は、低誘電正接化、低伝送損失化、低吸湿化、剥離強度向上のために、樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線基板、樹脂シート、接着層、接着フィルム、ソルダーレジスト、バンプリフロー用、再配線絶縁層、ダイボンド材、封止材、アンダーフィル、モールドアンダーフィルおよび積層インダクタ等への応用も期待される。
上記したとおり、本発明には以下の<1>~<5>の構成が含まれる。
<1>球状で多孔質のシリカ前駆体を、粒子同士が接する状態で焼成することを含む、球状シリカ粉末の製造方法。
<2>前記シリカ前駆体は、以下の超音波処理を行ったとき、超音波処理する前のシリカ前駆体の体積基準の累積50%粒子径Dに対する超音波処理した後のシリカ前駆体の体積基準の累積50%粒子径Dの比D/Dが0.9以上である、前記<1>に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
超音波処理:前記シリカ前駆体に蒸留水を加えて0.05質量%スラリーとし、周波数45kHzで2分間超音波分散処理を施す。
<3>前記シリカ前駆体は、230℃で12時間乾燥したときの重量の減少率が10%以下である、前記<1>又は<2>に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
<4>前記シリカ前駆体を、静置による熱処理及び回転炉による熱処理のうちの少なくとも1つの熱処理により焼成する、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の球状シリカ粉末の製造方法。
<5>焼成後に、さらに、粒子の平均円形度が0.90を下回らないような解砕を行う、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の球状シリカ粉末の製造方法。
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の説明において、共通する成分は同じものを用いている。
例1~5は実施例であり、例6は比較例である。
<50%粒子径(D50)、最大粒子径(Dmax)の測定方法>
シリカ前駆体/シリカ粉末に蒸留水を加えて0.05質量%スラリーとした後、超音波洗浄機により周波数45kHzで2分間処理し、レーザー回折式の粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、MT3300EXII)を用いて、体積基準で換算した累積50%における粒子径(50%粒子径、D50)と最大粒子径(Dmax)を算出した。
また、シリカ前駆体の凝集度合いを示すために、シリカ前駆体の0.05質量%スラリーを周波数45kHzで2分間、超音波洗浄機で分散処理したものについて、同じ方法で50%粒子径(D50)を算出し、超音波処理前のシリカ前駆体の50%粒子径Dに対する超音波処理後のシリカ前駆体の50%粒子径Dの比D/Dを求めた。
<比表面積の測定方法>
シリカ粉末を230℃で減圧乾燥して水分を完全に除去し、試料とした。この試料について、マイクロメリティック社製の自動比表面積・細孔分布測定装置「トライスターII」にて、窒素ガスを用いて多点BET法により比表面積を求めた。
<平均円形度の測定方法>
粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JCM-7000)により撮影し、画像解析ソフト(マルバーン社製粒子画像解析装置「Morphologi4」に付属の画像解析ソフト)を用いて粒子の面積と周長を求め、下記式に当てはめて算出した。20個のシリカ粒子の円形度の平均値を求めたものを平均円形度とした。
円形度=投影面積の等しい円の周長/粒子の周長
投影面積の等しい円の周長:ある粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ
粒子の周長:粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ
球状かどうかの判断については、平均円形度が0.90以上のものを球状であると評価した。
<シリカ粉末の解しやすさの評価方法>
焼成後のシリカ粉末を指で解しながら下記基準により解しやすさを確認した。
〔評価基準〕
A:サラサラな状態まで容易に解せる。
B:時間はかかるがサラサラな状態まで解せる。
C:サラサラな状態まで解せない。
<誘電正接の測定方法>
誘電正接は、専用の装置(ベクトルネットワークアナライザ E5063A、キーコム社製)を用い、摂動方式共振器法にて、試験周波数1GHz、試験温度約24℃、湿度約45%、測定回数3回で測定を実施した。具体的には、シリカ粉末の充填量が40体積%になるように、シリカ粉末及びポリエチレン(PE)粉末(住友精化社製フローセンUF-20S)を計量し、シンキー社製自転公転ミキサーにて混合した(ARE-310、回転数2,000rpm、処理時間3分)。得られた混合粉末を所定体積分計量し、130mm角×0.2mm厚の型枠に充填し、185℃、10MPa、3分でプレスシートを作製した。得られたプレスシートの誘電正接を測定後、ポリエチレン粉末のみで同様の条件にて作製したシートをブランクとし、体積混合率で粉末のみの誘電正接に換算した。
(例1)
分散相として、3号ケイ酸ソーダ(AGCエスアイテック株式会社製、ケイ酸ナトリウム水溶液、SiO/NaO(モル比)=3、SiO濃度=24質量%)を30g用いた。
連続相として、n-デカン(東ソー株式会社製、HC-250、C1022)に予め界面活性剤としてモノオレイン酸ソルビタン(三洋化成株式会社製、イオネットS80)を0.7質量%溶解させたものを150g用いた。
連続相である界面活性剤入りn-デカンをホモジナイザー(株式会社マイクロテック・ニチオン製、ヒスコトロン、ジェネレーターシャフトNS-30UG/20P)で撹拌しながら、分散相である3号ケイ酸ソーダを加えて、13,000rpmで5分間撹拌乳化した。
得られた乳化液をスリーワンモーターで撹拌しながら、炭酸ガスを0.4L/minの速度で20分間吹き込むことでシリカを析出させた。
その後、油相を除去して得たシリカゲルを含有する水相を室温で撹拌しながら、硫酸をpH2になるまで添加した後、温浴80℃で1時間撹拌し残留デカンの除去を行なった。
残留溶媒除去後のスラリーに対して80℃に加温した脱塩水を40ml/g-SiOかけ流してろ過洗浄を行ない、含水率60質量%のシリカケーキを得た。このシリカケーキにさらに蒸留水を加えて5質量%スラリーとした。得られたスラリーをスプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製、ミニスプレードライヤーB290)で乾燥し、シリカ前駆体を得た。なお、このとき得られたシリカ前駆体を230℃で12時間乾燥したときの重量減少率は6.2%であった。
得られたシリカ前駆体をアルミナ坩堝に入れ、1075℃に設定した電気炉で1時間加熱処理した。加熱処理後、室温まで冷却したシリカ粉末を、ゴムへらを用いて目開き150μmのステンレス篩に押しつけ、粒子を通過させ、例1のシリカ粉末を得た。
加熱処理後のシリカ粉末は、緩く凝集していたがゴムへらを手で軽く押し当てることで容易に解砕し全量篩を通すことが可能であった。
(例2)
残留溶媒除去後のスラリーのろ過洗浄までは例1と同様の操作を行ない、含水率60質量%のシリカケーキを得た後、得られたシリカケーキを120℃で12時間、棚乾燥を行なった。その後、目開き45μmのステンレス篩とゴムへらを利用して粗凝集したシリカ全量を解砕しながら篩を通過させ、シリカ前駆体を得た。なお、このとき得られたシリカ前駆体を230℃で12時間乾燥したときの重量減少率は2.0%であった。
得られたシリカ前駆体をアルミナ坩堝に入れ、1240℃に設定した電気炉で1時間加熱処理した。加熱処理後、室温まで冷却し、目開き150μmのステンレス篩とゴムへらを利用して粗凝集したシリカ全量を解砕しながら篩を通過させ、例2のシリカ粉末を得た。
(例3)
棚乾燥の時間を2時間にしたこと、シリカケーキの含水率を80質量%にしたこと、篩を実施しなかったこと以外は例2と同様の操作を行ない、例3のシリカ粉末を得た。
なお、乾燥後のシリカ前駆体を230℃で12時間乾燥したときの重量減少率は17.7%であった。焼成後の解砕処理では、篩を通過しないシリカが残存した。
(例4)
例3において、乾燥後のシリカ前駆体を、目開き45μmのステンレス篩とゴムへらを利用して粗凝集したシリカ全量を解砕しながら篩を通過させたこと以外は、例3と同様の操作を行ない、例4のシリカ粉末を得た。
なお、乾燥後のシリカ前駆体を230℃で12時間乾燥したときの重量減少率は17.7%であった。焼成後の解砕処理では、篩を通過しないシリカが少量残存した。
(例5)
例3で得られたシリカ前駆体(230℃で12時間乾燥したときの重量減少率:17.7%)にさらに蒸留水を加えて5質量%スラリーとし、得られたスラリーをスプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製、ミニスプレードライヤーB290)で乾燥したこと以外は例3と同様の操作を行ない、例5のシリカ粉末を得た。
なお、スプレードライヤー乾燥後のシリカ前駆体を230℃で12時間乾燥したときの重量減少率は3.5%であった。
(例6)
例1で得られたシリカ前駆体を、1400℃の火炎中央部からノズルで噴霧した後、冷却用空気と混合しバグフィルターから粒子を回収し、例6のシリカ粉末を得た。
例1~例6のシリカ前駆体、焼成後のシリカ粉末について、各種測定を行った。結果を表1に示す。
例1~5の球状シリカ粉末はいずれも比表面積が小さく、また誘電正接も小さいものであり、本発明の方法により低誘電化された球状シリカ粉末が得られた。これに対し、例6の球状シリカ粉末は比表面積が小さくならず、低誘電化が不十分であった。

Claims (5)

  1. 球状で多孔質のシリカ前駆体を、粒子同士が接する状態で焼成することを含む、球状シリカ粉末の製造方法。
  2. 前記シリカ前駆体は、以下の超音波処理を行ったとき、超音波処理する前のシリカ前駆体の体積基準の累積50%粒子径Dに対する超音波処理した後のシリカ前駆体の体積基準の累積50%粒子径Dの比D/Dが0.9以上である、請求項1に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
    超音波処理:前記シリカ前駆体に蒸留水を加えて0.05質量%スラリーとし、周波数45kHzで2分間超音波分散処理を施す。
  3. 前記シリカ前駆体は、230℃で12時間乾燥したときの重量の減少率が10%以下である、請求項1又は2に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
  4. 前記シリカ前駆体を、静置による熱処理及び回転炉による熱処理のうちの少なくとも1つの熱処理により焼成する、請求項1又は2に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
  5. 焼成後に、さらに、粒子の平均円形度が0.90を下回らないような解砕を行う、請求項1又は2に記載の球状シリカ粉末の製造方法。
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