JP2023180414A - 転がり軸受、プーリ、直動装置、電動パワーステアリング装置 - Google Patents

転がり軸受、プーリ、直動装置、電動パワーステアリング装置 Download PDF

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景介 横山
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信太郎 本多
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成明 相原
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Abstract

【課題】保持器、特に外輪案内保持器に求められる寸法安定性、冠型保持器に求められる延性、ポリα-オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成できる、高信頼性を有する保持器が用いられた転がり軸受を提供する。【解決手段】少なくとも内輪1、外輪3、合成樹脂製保持器9及び転動体7からなる転がり軸受において、前記合成樹脂製保持器9を、ポリアミドXD10と、含有量0~40重量%とした強化繊維材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂部材を有する転がり軸受、プーリ、直動装置、電動パワーステアリング装置などに関する。
<転がり軸受>
転がり軸受は、例えば図1に示すように、内輪1と、外輪3と、内輪1と外輪3との間に形成される環状隙間5に組み込まれる複数個の転動体7と、複数個の転動体7を等間隔に保持する合成樹脂製保持器9と、を含んで構成されている。
従来、転がり軸受を構成する合成樹脂製保持器には、ガラス繊維で強化された66ナイロン樹脂で作製されたもの等が最も多く提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
転がり軸受には、様々な種類があると共に、様々な環境で使用されており、求められる性能も異なっている。それに伴って、構成部品である合成樹脂製保持器も、各種樹脂材料・強化材を組み合わせて適用されている。
例えば、樹脂材料としては、66ナイロン樹脂の他、46ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が用いられ、強化材としては、ガラス繊維や炭素繊維等が用いられている。
転がり軸受の中で、工作機械主軸で適用されるものは、高速回転時に、保持器外周面と外輪内周面とが接触する外輪案内方式であり、保持器自体の吸水寸法変化が小さいことが求められる。それに伴って、保持器で適用するベース樹脂は、吸水性が少ないポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が一般的に用いられている。その他、工作機械用軸受の保持器として、同じように吸水寸法変化が小さい綿布補強のフェノール樹脂製リングを切削加工したものも用いられている。また、これらの工作機械主軸用軸受の潤滑法としては、グリース潤滑、オイルエア潤滑、ジェット潤滑等が、使用条件やコストによって適宜、選択され採用されているが、一般的には、低コストでメンテナンスも容易なことから、グリース潤滑が利用されることが多い。
また、玉軸受で最も多く用いられる冠型保持器は、玉を圧入する際、樹脂材料に延性がないと割れが発生するため、66ナイロン、46ナイロンが通常用いられている(例えば特許文献2参照。)。
しかしながら、上記の66ナイロン樹脂、46ナイロン樹脂をベース樹脂とした保持器は、水分の出入りによって寸法変化を引き起こし、最悪の場合、転がり軸受の内外輪・転動体に干渉して悪影響を及ぼす虞があった。特に、上記説明した外輪案内方式の保持器では、寸法変化が重要視されることから、材料コストが高いポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を用いるのが、一般的であった。
玉軸受で最も多く用いられている冠型保持器は、延性が低いポリフェニレンサルファイド樹脂や半芳香族ポリアミド樹脂(変性ポリアミド6T等)をベース樹脂(+強化繊維材)として用いると、玉を抱え込んでいる爪部分に玉を圧入する際、樹脂材料に延性がないと割れ・欠けが発生することから、上述の通り、実際は66ナイロン、46ナイロンにガラス繊維を含有させた樹脂組成物が用いられているのが実状であった。
また、転がり軸受の内部空間に充填されるグリースとしては、主成分が脂肪族炭化水素である、極性が低い鉱油、ポリα-オレフィン油が最も多く使用されているが、アミド結合が分子構造中に多数存在する66ナイロン樹脂、46ナイロン樹脂や、芳香族環が分子構造中に多数存在するポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂に対しては、分子構造が大きく異なるため、濡れ性が悪く、グリースの保持器への付着力は十分なものではなかった。変性ポリアミド6T等の半芳香族ポリアミド樹脂も、アミド結合と芳香族環が分子構造中に多数存在することから同様であった。
また、脂肪族ポリアミド系材料で、低吸水性で、分子構造中にアミド結合が少ないものとしては、ポリアミド11(融点187℃)、ポリアミド12(融点176℃))があるが、融点が低いために、高速回転で軸受温度が上昇すると、軟化し、保持器が変形する虞があった。
<直動装置>
例えば図9に示すリニアガイド装置69は、外面に転動溝75を有する案内レール71と、その案内レール71を跨いで組み付けられたスライダ73とを備えている。案内レール71の転動溝3と対向するスライダ73の面部は一部開口しており、案内レール71の転動溝75とともに断面略トラック状のボール循環経路77を形成している。そして、このボール循環経路77の内部に、多数のボールBが転動自在に収容される。
また、例えば、図10に示すボールねじ装置79は、ボールナット83がねじ軸81を内包するように配置されており、ボールナット83の内周に螺旋状に形成されたねじ溝83aと、それに対向するねじ軸81の外周に螺旋状に形成されたねじ溝81aとで形成される空間に、複数のボールBが転動自在に配置されている。また、ボールナット83には、外形略コ字状のボールチューブ85が、その両端をねじ軸81のねじ溝81aに臨むように装着されている。そして、ボールBは、ボールナット83の内部で、ねじ軸81を複数回周回した後ボールチューブ85の一端から掬い上げられ、ボール循環経路91を通った後、ボールチュープ85の他端からねじ軸81のねじ溝81aに戻される循環を繰り返す。
このようなリニアガイド装置69やボールねじ装置79では、駆動時におけるボール同士の衝突音を無くするために、ボールBの間にセパレータ93を介装させたものが使用されてきた。例えば、図11はリニアガイド装置69のボール循環経路77の内部を拡大して示す図であるが、ボールBとボールBとの間にセパレータ93が介装されたボール列が形成されている。このセパレータ93は、両側にボールBの外周面に対応して断面円弧状の凹面95が形成されており、ボールBはボール循環経路77の循環時にこの凹面95により転動自在に保持される。
セパレータ93の材質としては、非強化の66ナイロン、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が一般的に用いられる。また、直動装置では、一般的に内部空間にグリースが充填され、必要に応じてグリースニップル等から、グリースが追加給脂され、潤滑されている。これらに関する従来技術として本出願人の特許文献3があげられる。
しかしながら、上記の66ナイロン樹脂からなるセパレータは、水分の出入りによって寸法変化を引き起こし、最悪の場合、図12に示すように、循環路77中でセパレータ93が倒れて直動装置の作動不良を引き起こす虞があった。また、別途用いられているポリエステル系熱可塑性エラストマーも含めて、全て石油由来のものであり、環境に考慮したものではなかった。
また、直動装置の内部空間に充填されるグリースとしては、主成分が脂肪族炭化水素である、極性が低い鉱油、ポリα―オレフィン油が最も多く使用されているが、アミド結合が分子構造中に多数存在する66ナイロン樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、分子構造が大きく異なるため、濡れ性が悪く、グリースのセパレータへの付着力は十分なものではなかった。
また、脂肪族ポリアミド系材料で、低吸水性で、分子構造中にアミド結合が少ないものとしては、ポリアミド11(融点187℃)、ポリアミド12(融点176℃)があるが、融点が低いために、直動装置が高速で作動して内部温度が上昇すると、軟化し、セパレータが変形する虞があった。
<樹脂製プーリ>
従来、自動車の補機類を駆動するベルトの案内用プーリとして、転がり軸受の外周に樹脂部を一体成形してなる樹脂製プーリが採用されている。
樹脂製プーリにおいては、ベルトを案内する外周部(樹脂部)の成形精度及びベルト張力に耐える強度特性と連続負荷使用による耐熱性、更には耐塩化カルシウム性等が要求される。
そこで、このような成形精度・強度特性・耐熱性・耐塩化カルシウム性等の向上を狙った樹脂材料として、ガラス繊維を15~40重量%程度充填した強化ナイロン66、強化ナイロン610、強化ナイロン612、或いはポリフェニレンサルファイドとミネラルの複合材料や6ナイロン、66ナイロン、11ナイロン、12ナイロン等のポリアミド樹脂を使用した樹脂製プーリが提案されている(特許文献4及び特許文献5参照。)。
また、本出願人は、耐熱性・耐塩化カルシウム性・高強度をバランスよく保持する、ナイロン66・ナイロン612・ガラス繊維からなるポリアミド樹脂組成物を使用した樹脂製プーリを提案している(特許文献6参照。)。
以上説明した中で、実用化しているのは、強化ナイロン66と、耐塩化カルシウム性が要求される部位には、強化ポリフェニレンサルファイド、ナイロン66・ナイロン612・ガラス繊維からなるポリアミド樹脂組成物を用いたものである。
しかしながら、耐塩化カルシウム性を考慮したナイロン66・ナイロン612・ガラス繊維からなるポリアミド樹脂組成物は、耐塩化カルシウム性に劣るガラス繊維強化ナイロン66に比べて、耐塩化カルシウム性に優れるものの、耐熱性に劣るナイロン612が海島構造で点在しているため、耐熱性は若干劣るものであった。
また、耐塩化カルシウム性も、ナイロン612に比べて低いため、十分な信頼性が得られるとは言い難かった。さらに、この海島構造に起因して、機械的強度も若干低めであった。
さらに、別途用いられているポリアミド66・ポリフェニレンサルファイドも含めて、全て石油由来のものであり、環境に考慮したものではなかった。
また、上記提案された中の11ナイロンはバイオ度100%、ナイロン610はバイオ度60%であるため、いずれも環境にやさしい材料ではあるが、融点が、それぞれ、187℃、222℃と、ポリアミド66(融点265℃)に比べて低いために、樹脂製プーリに求められる耐熱性を十分に満足せず、樹脂製プーリの樹脂部が、作動中に変形する等の不具合を生じる虞があった。
<電動パワーステアリング装置>
自動車に組み込まれる電動パワーステアリング装置には、電動モータに比較的高回転、低トルクのものが使用されるため、電動モータとステアリングシャフトの間に減速機構が組み込まれている。減速機構としては、一組で大きな減速比が得られる等の理由から、図20に示されるような、電動モータ147(図19参照)の回転軸に連結する駆動歯車に相当するウォーム143と、ウォーム143に噛み合う従動歯車に相当するウォームホイール141とから構成される電動パワーステアリング装置用減速ギア145(以下、単に「減速ギア」ともいう)が使用されるのが一般的である。
このような減速ギア145では、ウォームホイール141とウォーム143の両方を金属製にすると、ハンドル操作時に歯打ち音や振動音等の不快音が発生するという不具合を生じていた。そこで、ウォームホイール141に、金属製の芯管149の外周に、樹脂製で外周面にギア歯151を形成してなる樹脂部153を一体化させたものを使用して騒音対策を行っている。
上記樹脂部153には、例えば、特許文献7に記載されているような、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のベース樹脂に、ガラス繊維や炭素繊維等の強化材を配合した材料の他、強化材を含有しないMC(モノマーキャスト)ナイロン、ポリアミド6、ポリアミド66等が使用されている。それらの中でも、寸法安定性やコストを考慮して、強化材を含有しないMCナイロン、ガラス繊維を含有したポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等が主流となっている。
また、樹脂部153に用いる材料として、本出願人による特許文献8に記載されているような半芳香族ポリアミド(変性ポリアミド6T、ポリアミド9T等)をベース樹脂として用いることで、ポリアミド6・ポリアミド66・ポリアミド46で問題となる虞がある吸水寸法変化を改善するものも提案されている。
通常、図19に示すような電動パワーステアリングの2つの玉軸受137,137の間の内部空間には、金属製のウォーム143とウォームホイール141の樹脂歯151との潤滑用に、グリースが充填されている。一般的に、基油として、鉱油や耐熱性を考慮したポリα-オレフィン油を使用したグリースが用いられている。
また、ウォーム143の両端の玉軸受137,137に予圧を掛けると共に、タイヤ側から微少なキックバック入力が入ってきた時に、ウォーム143を軸方向に動かすことによりモータが回転しないようにし、ハンドル側にキックバックのみの情報を伝えるように働くようにするゴム製のダンパー139(図19参照)が取り付けられているものもある。通常ゴム材としては、圧縮永久歪が小さいエチレンアクリルゴムに代表されるアクリルゴムが最も一般的に用いられている。
しかしながら、上記の脂肪族ポリアミド系材料は、耐疲労性に優れるものの、吸水性が高く、水分を吸収してウォームホイール141の樹脂歯(ギア歯)151が膨潤し、初期にウォーム141との間に存在していた隙間が無くなったり、更に膨潤するとウォーム141を圧迫したりする可能性もある。それによって、ギアの抵抗が重くなって、結果としてハンドルが重くなったり、また圧迫によってギア部が摩耗や破損を起こしたり、装置全体として機能しなくなることも想定される。また、同じ脂肪族ポリアミド系材料としては、低吸水性のポリアミド11(融点187℃)、ポリアミド12(融点176℃)があるが、ポリアミド66(融点265℃)には及ばないものであった。
また、上記の半芳香族ポリアミドは、吸水寸法変化には優れるものの、潤滑に用いられるグリース基油であるポリα―オレフィン油に対して濡れ性が悪く、ギア部の摩耗が発生しやすいという問題点があった。
更に、上記の脂肪族ポリアミド系材料(66ナイロン樹脂、46ナイロン樹脂、6ナイロン樹脂)及び半芳香族ポリアミドの原料は全て石油由来であり、二酸化炭素の削減に貢献するような植物由来原料を用いていないため、環境にやさしいものではなかった。
特開2002-122148号公報 特開2007-56930号公報 特許第4282924号公報 特許第3506735号公報 特許第2838037号公報 特開2000-002317号公報 特公平6-60674号公報 特開2007-168718号公報
本発明は従来技術の有するこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、ポリアミドXD10を採用した高信頼性で環境にやさしい樹脂部材を有する転がり軸受、プーリ、直動装置、電動パワーステアリング装置などを提供することにある。
合成樹脂製の保持器、特に外輪案内の合成樹脂製保持器に求められる寸法安定性、樹脂製の冠型保持器に求められる延性、ポリα-オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成した、高信頼性を有する合成樹脂製保持器が用いられた転がり軸受を提供することにある。
また、樹脂製のセパレータに求められる寸法安定性、延性、ポリα―オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製のセパレータが用いられた直動装置を提供することにある。
さらに、樹脂部における高い耐塩化カルシウム性、耐熱性、高強度を併せて達成した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製プーリを提供することにある。
また、寸法安定性を達成すると共に、優れた耐疲労性を維持し、ポリα―オレフィン油を基油とするグリースを用いても、潤滑性の維持を両立した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製の従動歯車を有する電動パワーステアリング装置を提供することにある。
この目的を達成するために、第1の本発明は、少なくとも、内輪、外輪、及び合成樹脂製保持器を介して前記内輪と外輪との間に組み込まれる転動体とからなる転がり軸受において、
前記合成樹脂製保持器が、ポリアミドXD10をベース樹脂としたポリアミド樹脂組成物で形成されていることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第2の本発明は、第1の本発明において、前記ポリアミド樹脂組成物は、含有量10~40重量%とした強化材を含むことを特徴とする転がり軸受としたことである。
第3の本発明は、第2の本発明において、前記ポリアミドXD10の融点が215℃~290℃であることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第4の本発明は、第3の本発明において、前記ポリアミドXD10のバイオ度が約55%であることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第5の本発明は、第1の本発明において、前記合成樹脂製保持器が外輪案内であることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第6の本発明は、第1の本発明において、前記合成樹脂製保持器が爪部を有する冠型保持器であることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第7の本発明は、第1の本発明において、前記転がり軸受の内部空間にはグリースが充填され、
前記グリースの基油の主成分をポリα-オレフィン油としたことを特徴とする転がり軸受としたことである。
第8の本発明は、第1の本発明において、前記内輪と前記外輪との間に組み込まれる密封シールを備え、
前記樹脂部材が前記密封シールであることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第9の本発明は、軸に外嵌すると共に、前記軸に沿って直進移動する直動体と、前記直動体の内面側に形成されたボール溝に保持され、前記ボール溝と前記軸との間で転動する多数のボールと、前記各ボールの間に介装されるセパレータと、前記直動体に形成され、前記ボール溝の一端側から他端側に前記ボールを循環させる循環通路と、を有する直動装置において、
前記セパレータと、前記循環通路と、のどちらか一方の少なくとも表面の一部が、ポリアミドXD10をベース樹脂としたポリアミド樹脂組成物で形成されていることを特徴とする直動装置としたことである。
第10の本発明は、第9の本発明において、前記ポリアミド樹脂組成物は、含有量10~40重量%とした強化材を含むことを特徴とする直動装置としたことである。
第11の本発明は、第10の本発明において、前記ポリアミドXD10の融点が215℃~290℃であることを特徴とする直動装置としたことである。
第12の本発明は、第11の本発明において、前記ポリアミドXD10のバイオ度が約55%であることを特徴とする直動装置としたことである。
第13の本発明は、転がり軸受と、前記転がり軸受の周囲にて前記転がり軸受と一体的に形成された樹脂部とから成る樹脂製プーリにおいて、
前記樹脂部が、ポリアミドXD10をベース樹脂としたポリアミド樹脂組成物で形成されていることを特徴とする樹脂製プーリとしたことである。
第14の本発明は、第13の本発明において、前記ポリアミド樹脂組成物は、含有量10~40重量%とした強化材を含むことを特徴とする樹脂製プーリとしたことである。
第15の本発明は、第14の本発明において、前記ポリアミドXD10の融点が215℃~290℃であることを特徴とする樹脂製プーリとしたことである。
第16の本発明は、第15の本発明において、前記ポリアミドXD10のバイオ度が約55%であることを特徴とする樹脂製プーリとしたことである。
第17の本発明は、電動モータによる補助動力を、駆動歯車と従動歯車とからなる減速歯車機構を介して車両のステアリング機構に伝達するように構成され、前記減速歯車機構の従動歯車が外周面に樹脂歯を有する電動パワーステアリング装置において、
前記樹脂歯が、ポリアミドXD10をベース樹脂としたポリアミド樹脂組成物で形成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置としたことである。
第18の本発明は、第17の本発明において、前記ポリアミド樹脂組成物は、含有量10~40重量%とした強化材を含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置としたことである。
第19の本発明は、第18の本発明において、前記ポリアミドXD10の融点が215℃~290℃であることを特徴とする電動パワーステアリング装置としたことである。
第20の本発明は、第19の本発明において、前記ポリアミドXD10のバイオ度が約55%であることを特徴とする電動パワーステアリング装置としたことである。
第21の本発明は、第17の本発明において、前記従動歯車と前記駆動歯車との間にグリースを介在し、前記グリースの基油の主成分をポリα―オレフィン油としたことを特徴とする電動パワーステアリング装置としたことである。
第22の本発明は、第17の本発明において、前記従動歯車と前記駆動歯車との間にグリースを介在し、前記グリースを生分解性グリースとしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置としたことである。
本発明によれば、ポリアミドXD10を採用した高信頼性で環境にやさしい樹脂部材を有する転がり軸受、プーリ、直動装置、電動パワーステアリング装置などを提供することができる。
転がり軸受にあっては、樹脂製の保持器、特に外輪案内の樹脂製保持器に求められる寸法安定性、樹脂製の冠型保持器に求められる延性、ポリα-オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製保持器が用いられた転がり軸受を提供し得る。
また、直動装置にあっては、樹脂製のセパレータに求められる寸法安定性、延性、ポリα―オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製のセパレータが用いられた直動装置を提供し得る。
さらに、樹脂製プーリにあっては、樹脂部における高い耐塩化カルシウム性、耐熱性、高強度を併せて達成した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製プーリを提供し得る。
また、電動パワーステアリングにあっては、寸法安定性を達成すると共に、優れた耐疲労性を維持し、ポリα―オレフィン油を基油とするグリースを用いても、潤滑性の維持を両立した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製の従動歯車を有する電動パワーステアリング装置を提供し得る。
本発明の第一実施形態の転がり軸受を一部省略して示す概略断面図である。 第一実施形態に組み込まれる合成樹脂製保持器の概略斜視図である。 他の転がり軸受の実施の形態を一部省略して示す概略断面図である。 図3の転がり軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器の概略斜視図である。 他の転がり軸受の実施の形態を一部省略して示す概略断面図である。 図5の転がり軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器の概略斜視図である。 他の転がり軸受の実施の形態を一部省略して示す概略断面図である。 他の転がり軸受の実施の形態を一部省略して示す概略断面図である。 本発明の第二実施形態で、直動装置の一例であるリニアガイド装置を一部省略して示す一部切欠平面図である。 直動装置の他の例であるボールねじ装置を示す一部切欠斜視図である。 図9に示すリニアガイド装置のボール循環経路の内部を示す平面図である。 従来のセパレータの不具合を説明するための図11の部分拡大図である。 セパレータの一例を示す断面図である。 (a)はセパレータの他の例を示す断面図、(b)は正面図である。 本発明の第三実施形態である樹脂製プーリの一実施形態を示す正面図である。 図15のA-A線断面図である。 樹脂製プーリの他の実施形態を示す断面図である。 本発明の第四実施形態であるパワーステアリング装置の一例を示す一部断面構成図である。 図18のB-B線断面図で、電動モータと減速歯車機構との連結部周辺を示す概略構成図である。 減速歯車機構の一例(円筒ウォームギア)を示す斜視図である。 減速歯車機構の他の例(平歯車)を示す斜視図である。 減速歯車機構の他の例(はすば歯車)を示す斜視図である。 減速歯車機構の他の例(かさ歯車)を示す斜視図である。 減速歯車機構の他の例(ハイボイドギア)を示す斜視図である。
以下、本発明転動装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず何等限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
図1乃至図8は、本発明を転がり軸受に適用した第一実施形態を示す。図9乃至図14は、本発明を直動装置に適用した第二実施形態を示す。図15乃至図17は、本発明を樹脂製プーリに適用した第三実施形態を示す。図18乃至図24は、本発明を電動パワーステアリング装置に適用した第四実施形態を示す。
<第一実施形態>
転がり軸受は、内輪1と、外輪3と、内輪1と外輪3との間に形成される環状隙間5に組み込まれる複数個の転動体7と、複数個の転動体7を等間隔に保持する合成樹脂製保持器9と、を含んで構成されている。また、本実施形態では、転がり軸受の内部空間に、軸受の潤滑状態を良好に保つためグリースが充填され、転がり軸受の端面には、軸受内部空間を密封するため密封シール11が組み込まれている。
本実施形態において合成樹脂製保持器9は、ポリアミドXD10と、含有量0~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で作製されており、例えば、本実施形態では外輪案内形式の保持器が採用されている。
例えば、図1に示す円筒ころ軸受を一実施形態として例示できる。
円筒ころ軸受は、外周面に内輪軌道面1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面1aと外輪軌道面3aとの間に転動可能に組み込まれる複数個の円筒ころ(転動体)7と、複数個の円筒ころ7を円周方向に略等間隔に保持する合成樹脂製保持器9と、を含んで構成されている。
合成樹脂製保持器9は、図2に示すように、軸方向に互いに同軸に離間して配置される一対の円環部9a,9aと、一対の円環部9a,9aを連結すべく、円周方向に略等間隔で配置される複数の柱部9bと、円周方向に互いに隣り合う各柱部9bの間に形成され、円筒ころ7を転動可能に保持するポケット部9cを有する。
図3に示すアンギュラ玉軸受(例えば、日本精工製「70BER20XDB」;内径70mm、外径110mm、幅24mm、接触角25°、2列組合せ)を一実施形態として例示できる。
アンギュラ玉軸受は、外周面に内輪軌道面1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面1aと外輪軌道面3aとの間に転動可能に組み込まれる複数個の玉(転動体)7と、複数個の玉7を円周方向に略等間隔に保持する合成樹脂製保持器9と、を含んで構成されている。
合成樹脂製保持器9は、図4に示すように、板状の円環部材9dと、円環部材9dの円周方向に略等間隔で形成され、玉7を転動可能に保持する複数個のポケット部9eと、で構成され、射出成形にて作製されている。
図5に示す深溝玉軸受用保持器を一実施形態として例示できる。
深溝玉軸受は、外周面に内輪軌道面1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面1aと外輪軌道面3aとの間に転動可能に組み込まれる複数個の玉(転動体)7と、複数個の玉7を円周方向に略等間隔に保持する合成樹脂製保持器9と、を含んで構成されている。図中符号11は密封シールである。
合成樹脂製保持器9は、図6に示す冠型保持器(外径47mm、内径17mm)で、軸方向一端部に形成される円環部9fと、円環部9fの円周方向に間隔をあけて複数箇所から軸方向一方側へ突出する複数の柱部9gと、各柱部9gの先端部に設けられる一対の爪部9h,9hと、を備え、射出成形にて作製されている。円周方向に隣り合う爪部9h,9hの対向面と、これら対向面間の円環部9fの軸方向側面は、協働してポケット9iを形成し、玉7を回動自在に保持する。円環部9fに所定の等間隔で設けられた各ポケット9iには、玉7が一対の爪部9h,9hの開口側から押し込まれ、爪部9h,9hを弾性変形させて嵌め込まれる。
また、本実施形態では、図5に示す密封シール11にあっても、合成樹脂製保持器と同様に、ポリアミドXD10と、含有量0~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で射出成形により作製されている。
図7に示す車輪用転がり軸受を一実施形態として例示できる。
本実施形態では、独立懸架式のサスペンションに支持する、従動輪を支持するための車輪支持用転がり軸受ユニット21を示す。
本実施形態では、ハブ25に形成した転動溝27a及びハブ25の端部のかしめ部29にかしめ止めされた内輪31の転動溝27bと、外輪7の各転動溝27a,27bと対向する転動溝35a,35bとで形成される空間に、合成樹脂製保持器37を介して玉23が転動自在に保持されている。内輪31の端部には、スリンガ39に磁石部41を固着してなる磁気エンコーダ43が固定されている。スリンガ39は、略円筒状で、内輪31の側端面から突出する位置にて外方に湾曲し、更に軸線側に屈曲する略L字状の断面形状を有する。本実施形態では、合成樹脂製保持器37が、ポリアミドXD10と、含有量0~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で射出成形により作製されている。
合成樹脂製保持器37は、冠型保持器やかご型保持器など、車輪用転がり軸受に組み込まれる種々の合成樹脂製保持器が採用可能で、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
なお、本発明の特徴以外の構成及び作用については、従来から広く知られている構造と同等である。
図8に示す車輪用転がり軸受を一実施形態として例示できる。
本実施形態では、固定輪である外輪53の外周面に形成した取付部55により懸架装置に支持される駆動輪を支持するための車輪用転がり軸受ユニット(車輪用転がり軸受)を示す。
本実施形態では、ハブ57に形成した転動溝57a及び、ハブ57の端部に設けた段部に外端面(図中の左端面)を突き当てた状態で外嵌支持されている内輪59の転動溝59aと、各転動溝57a,59aと対向する外輪53の転動溝53a,53aとで形成される空間に、合成樹脂製保持器61を介して玉63を転動自在に保持している。ハブ57の内周面にはスプライン溝が形成され、外端部(車両への組み付け時に幅方向外側になる端を言い、図8の端部)の外周面には取付フランジ65が形成されている。符号67は密封シールである。車両への組み付け時、スプライン溝には等速ジョイントを介して回転駆動される駆動軸が挿入され、取付フランジ65には車輪が固定される。
本実施形態では、合成樹脂製保持器61が、ポリアミドXD10と、含有量0~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で射出成形により作製されている。合成樹脂製保持器61は、冠型保持器やかご型保持器など、車輪用転がり軸受に組み込まれる種々の合成樹脂製保持器が採用可能で、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
<第二実施形態>
図9乃至図14は本発明を直動装置に適用した実施の一形態である。
以下、本実施形態について詳細に説明する。直動装置の種類には制限はなく、例えば図9に示したようなリニアガイド装置69や図10に示したようなボールねじ装置79を例示することができる。この内、図10は、軸(ねじ軸81)に外嵌すると共に、ねじ軸81に沿って直進移動する直動体89と、この直動体89の内面側に形成されたボール溝87に保持され、ボール溝87とねじ軸81との間で転動する多数のボールBと、各ボールBの間に介装されるセパレータ93と、直動体89に形成され、ボール溝87の一端側から他端側にボールBを循環させる循環通路91とを有する直動装置である。
そして、図9及び図10の何れも図11に示したように、ボールBとボールBとの間にセパレータ93を介装させてボール同士の衝突音を無くしている。
セパレータ93は、例えば図13に示すように、凹面95を形成する曲率半径Rの中心OをボールBの中心OBから変位させて2箇所に設けている。それにより、セパレータ93の凹面101とボールBとの間に隙間Sが形成され、この隙間Sにグリース(図示せず)が流入してボールBの転動が円滑に行なわれる。また、凹面95の表面は平坦でもよいが、粗面である方がグリースを保持できることから好ましい。粗面の程度は、面粗さRmaxで5~50μm程度が適当である。
セパレータ93の凹面95の表面には、同心状もしくは螺旋状の溝(不図示)が形成されていてもよく、更にセパレータ93の凹面95とボールBとの隙間にグリースが流入し易いようにセパレータ93に貫通孔を設けることもできる(不図示)。例えば、図14に示されるセパレータ93では、凹面95の中心部に貫通孔97が貫通され、その周囲に同心状に複数の溝99が形成されており、貫通孔97から流入したグリース(不図示)が溝99に保持され、良好な潤滑が維持される。また、凹面95の外周端部93aが円弧状に面取りされており、グリースがより流入し易くなっている。尚、貫通孔97の直径や、溝99の深さ、幅、数等は制限されるものはなく、セパレータ93の大きさや機械的強度等に応じて適宜設定される。例えば、溝99の深さは5~30μm程度が適当である。
また、上記に挙げた凹面95における粗面化、貫通孔97や溝99の形成、外周端部93aの面取りは、複数を適宜組み合わせることもできる。
なお、用いる射出成形機のゲート形状はピンゲートで良いが、ゲートの位置はセパレータ93の凹面95以外、例えば図14に示すように、セパレータ93の外周面にゲートGを臨ませることが好ましい。あるいは、図示は省略するが、貫通孔97の内周面にゲート位置を設けることもできる。
本実施形態では、このような直動装置において、セパレータ93と循環通路91の少なくともどちらか一方を、ポリアミドXD10を射出成形で形成した部材、またはセパレータ93と循環通路91の少なくともどちらか一方の表面の一部を、ポリアミドXD10を射出成形で形成している。
<第三実施形態>
図15乃至図17は本発明を樹脂製プーリに適用した実施の一形態である。
本発明は、例えば、自動車に搭載される補機類の駆動用ベルトやその他のベルトのテンショナ用、或いはアイドラプーリ等として使用される樹脂製プーリ等に適用される。
図15及び図16に示す樹脂製プーリは、転がり軸受101と、転がり軸受101の周囲にて転がり軸受101と一体に形成された樹脂部103と、で構成されている。
樹脂部103は、転がり軸受101の外輪に固着された内径円筒部105と、ベルト案内面107を有する外径円筒部109と、外径円筒部109と内径円筒部105との間に形成された円板部111とを有している。また、円板部111には多数のリブ113が放射状に形成されている。なお、符号115は、インサート成型した際に残るゲート跡である。
転がり軸受101は、図16に示すように、外輪外周部に樹脂部103の脱着を防止する凹溝117を有する接触ゴムシール119付きの深溝玉軸受である。接触ゴムシール119のゴム材質としては、ニトリルゴム、水素添加ニトリルゴム、アクリルゴム等を原料とし、それに各種充填材を配合したものを用いることができる。また、転がり軸受101中に充填されているグリースとしては、使用温度を考慮して、ポリαオレフィン油、アルキルジフェニルエーテル油等を基油とし、ジウレア等を増ちょう剤とし、添加剤として酸化防止剤、摩耗防止剤等を更に加えたものが主に使用されている。
本実施形態において樹脂製プーリの樹脂部103は、ポリアミドXD10と、含有量0~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で作製されている。
また、例えば、図17に示すように、ベルト案内面107となる外径円筒部109がVリブ形状の樹脂製プーリも本発明の範囲内である。外径円筒部109がVリブ形状である点以外の構成及び作用効果にあっては、上述の実施形態と同様であるため、同一箇所に同一符号を付してその説明を省略する。
また、転がり軸受と別体で成形される形状の樹脂製プ―リについても適用可能である。
<第四実施形態>
図18乃至図24は本発明を電動パワーステアリング装置に適用した実施の一形態である。
図示される電動パワーステアリング装置において、ステアリングコラム121の出力軸123側には、図19及び図20に示したような減速歯車機構(減速ギアとも言う)145を、ハウジング133に収容して構成されるギアボックス135が配設されている。
また、ステアリングコラム121は中空になっており、ステアリングシャフト125が挿通され、ハウジング133に収納された転がり軸受129,131により回転自在に支承されている。また、ステアリングシャフト125は中空軸であり、トーションバー127を収容している。そして、ステアリングシャフト125の外周面には、ウォームホイール141が設けてあり、このウォームホイール141にウォーム143が噛合してある。また、これらウォームホイール141とウォーム143とからなる減速歯車機構145には、図19に示したように、電動モータ147が連結されている。
減速歯車機構145は、図20に示したように、金属製の芯管149の外周に、ポリアミド樹脂組成物からなり、その外周端面にギア歯151を形成した樹脂部材153を一体化したウォームホイール141と、金属製のウォーム143とから構成される。尚、ウォームホイール141において、金属製芯管149と樹脂部材153とを接着剤により接着してもよく、接着剤として例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤またはトリアジンチオール化合物を用いることができる。図中、符号155は接着層を示す。
電動パワーステアリング装置では、従来と同様に、ハウジング133の一対の転がり軸受137,137の間の空間に、ウォーム143とウォームホイール141との両ギア歯間の潤滑のためのグリースが充填される。
尚、本発明の電動パワーステアリング装置では、減速歯車機構145として、上記したウォームホイール141及びウォーム143以外にも、図21に示す平歯車、図22に示すはすば歯車、図23に示すかさ歯車、図24に示すハイポイドギア等が可能であり、何れもウォームホイール141を、金属製芯管143の外周に、ポリアミド樹脂組成物からなり、その外周面にギア歯151が形成された樹脂部材153を、接着剤(接着層155)を用いるなどして一体化して構成する。
<樹脂部材の構成>
以下、本発明の特徴的部分である樹脂部材の構成について詳述する。
合成樹脂製保持器9、セパレータ93、樹脂製プーリの樹脂部145、ギア歯(樹脂歯)151などの樹脂部材を形成するベース樹脂としては、石油由来のキシリレンジアミンと、植物由来のひまし油から誘導されるセバシン酸の重縮合物であるポリアミドXD10[(ポリ)キシリレンセバサミド]を使用することができる。
ポリアミドXD10は、キシリレンジアミンとセバシン酸のモル比1:1の重縮合物であるから、バイオ度(バイオ比率)は約55%である。
キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、あるいはメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合物が用いられている。混合物の場合は、パラキシリレンジアミンの混合比率が高い方が、結晶性が高く、高融点となる。ポリアミドXD10の融点範囲は、215~290℃である。
ポリアミドXD10は、飽和吸水率が、合成樹脂製保持器9、セパレータ93、樹脂製プーリの樹脂部145、ギア歯(樹脂歯)151などの樹脂部材に最も多く用いられているポリアミド66に対して、1/3~1/4程度で格段に低いので、吸水による寸法変化が非常に小さく、寸法安定性に優れることで信頼性が非常に高い。
ポリアミド樹脂の分子量は、ガラス繊維等の強化材含有状態で射出成形できる範囲、具体的には数平均分子量で13000~28000、より好ましくは、耐疲労性、成形性を考慮すると、数平均分子量で18000~26000の範囲である。数平均分子量が13000未満の場合は分子量が低すぎて耐疲労性が悪く、実用性が低い。それに対して数平均分子量が28000を越える場合は、ガラス繊維等の強化材の実用的な含有量15~35重量%を含ませると、溶融粘度が高くなりすぎ、合成樹脂製保持器9、セパレータ93、樹脂製プーリの樹脂部145、ギア歯(樹脂歯)151などの樹脂部材を精度良く射出成形で製造することが難しくなり、好ましくない。
ベース樹脂は、樹脂単独でも一定以上の耐久性を示し、合成樹脂製保持器9が接触する可能性がある相手部材(転動体及び外輪)や、セパレータ93が接触する可能性がある相手部材(転動体)、あるいはギア歯151が接触する相手部材である金属製のウォーム141の摩耗に対して有利に働き、合成樹脂製保持器・セパレータ・減速ギアとして十分に機能する。車輪用転がり軸受用の保持器は、柔軟性が求められることから、強化材が含有しない非強化材が通常用いられる。
しかしながら、より過酷な使用条件で使用されると、合成樹脂製保持器やセパレータが破損、変形、摩耗することも想定されるため、信頼性をより高めるために、強化材を配合することが好ましい。また、セパレータ、樹脂製プーリの樹脂部、減速ギアのウォームホイールにあっても十分高強度とするために強化材を配合することが好ましい。
強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく、上記に挙げたポリアミド樹脂との接着性を考慮してシランカップリング剤等で表面処理したものが更に好ましい。また、これらの強化材は複数種を組み合わせて使用することができる。衝撃強度を考慮すると、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状物を配合することが好ましく、更に相手材の損傷、樹脂製プーリの表面の平滑性等を考慮するとウィスカー状物を繊維状物と組み合わせて配合することが好ましい。混合使用する場合の混合比は、繊維状物及びウィスカー状物の種類により異なり、衝撃強度や相手材の損傷等を考慮して適宜選択される。
ガラス繊維としては、一般的な平均繊維径である10~13μmのものの他、少ない含有量で高強度化と耐摩耗性の改善が可能な平均繊維径が5~7μmのもの、あるいは異形断面のものがより好適である。
炭素繊維としては、強度を優先するのであれば、PAN系のものが好適であるが、コスト面で有利なピッチ系のものも使用可能である。平均繊維径としては、5~15μmのものが好適である。炭素繊維は、繊維自体の強度、弾性率が高いため、ガラス繊維に比べて、合成樹脂製保持器、セパレートの高強度化、高弾性率化が可能である。
アラミド繊維としては、強化性に優れるパラ系アラミド繊維を好適に使用することが可能である。平均繊維径としては、5~15μmのものが好適である。アラミド繊維は、ガラス繊維及び炭素繊維のように、鉄鋼材料を傷つけることはないので、合成樹脂製保持器やセパレートなどが接触する相手部材の表面状態を悪くすることがないので、転がり軸受や直動装置などの音響特性等を重視する場合は、更に好適である。
これらの強化材は、全体の10~40重量%、特に15~30重量%の割合で配合することが好ましい。
強化材の配合量が10重量%未満の場合には、機械的強度の改善が少なく好ましくない。強化材の配合量が40重量%を超える場合には、成形性が低下すると共に、強化材の種類によっては、相手材への傷つけ性が高くなるので好ましくない。
更に、添加剤として樹脂に、成形時及び使用時の熱による劣化を防止するために、ヨウ化物系熱安定剤やアミン系酸化防止剤を、それぞれ単独あるいは併用して添加することが好ましい。
以下に、転がり軸受や直動装置、あるいは樹脂製ウォームホイールのギア歯と金属製ウォームのギア歯との潤滑状態を良好に保つグリースについて説明する。
グリースは、増ちょう剤と基油とを主成分とし、基油は、本発明で用いられるポリアミドXD10への濡れ性を考慮して、ポリα―オレフィン油を主成分としたものであり、増ちょう剤は、アミンとイソシアネートからなるウレア化合物、Li石けん、Liコンプレックス石けん、Ba石けん、Baコンプレックス石けん等である。
これらの増ちょう剤の中で、ポリアミドに構造が類似のウレア結合を有するウレア化合物が、ポリアミド樹脂への吸着性に優れ、特に好ましい。基油は、上記のポリα―オレフィン油の潤滑性を改善するために、ジエステル油や芳香族エステル油を混合したものであってよい。混入量は、基油全体に対して、30重量%以下である。
本発明で用いられるポリアミドXD10は、転がり軸受の合成樹脂製保持器や直動装置のセパレータ、あるいは電動パワーステアリング装置で一般的に用いられるポリアミド66に比べて、アミド基間に、長い炭化水素鎖を有するC10部分(セバシン酸に起因)が存在することで、ポリα―オレフィン油との濡れ性に優れている。
また、このグリースには、他の添加剤を加えることもできる。例えば、アミン系やフェノール系等の酸化防止剤、Caスルホネート等の防錆剤、MoDTC等の極圧添加剤、モンタン酸エステルワックス、モンタン酸エステル部分けん化ワックス、ポリエチレンワックス、オレイン酸等油性向上剤、などである。
上記のポリα―オレフィン油を基油とするグリースの外に、生分解性グリースを使用すると、より環境にやさしい直動装置となり、好適である。
生分解性グリースとしては、基油として、ナタネ油、ヒマシ油等の植物油か、トリメチロールプロパンエステル、ペンタエリスリトールなどの合成脂肪酸エステルのものが生分解性に優れており、使用することができる。
増ちょう剤としては、カルシウム石けん、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けんやウレア、ベントナイトを使用することができる。
生分解性グリースは、基油がエステル系のため、本発明のポリアミド樹脂への濡れ性は良好である。
本実施形態によれば、高信頼性で環境にやさしい樹脂部材を備えた転がり軸受、直動装置、樹脂製プーリ及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
例えば、耐熱性に優れ低吸水性な半芳香族ポリアミドであるポリアミドXD10を、転がり軸受の樹脂部材である合成樹脂製保持器の樹脂材料に適用することで、様々な環境での使用が可能となった高信頼性と低コストを両立させた転がり軸受を提供し得る。
更に、アミド基間に長鎖炭化水素部分を有するセバシン酸に由来するC10部分があることで、分子構造が近いポリα―オレフィン油を主成分とする基油からなるグリースの適用することで、樹脂材料への濡れ性が良好に保たれ、樹脂部の摩耗を効果的に防止し、転がり軸受の長寿命化が可能となる。なお、密封シールも、本実施形態の樹脂材料で形成すると、更に環境にやさしい転がり軸受となり、好適である。
直動装置の樹脂部材であるセパレータの樹脂材料をポリアミドXD10としたため、樹脂製のセパレータに求められる寸法安定性、延性、ポリα―オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製のセパレータが用いられた直動装置を提供し得る。
樹脂製プーリの樹脂部材である樹脂部を形成するポリアミド樹脂組成物のベース樹脂を、ポリアミドXD10とすることで、高い耐塩化カルシウム性、耐熱性、高強度を併せて達成した、高信頼性で環境にやさしい樹脂製プーリを提供し得る。
電動パワーステアリング装置の樹脂部材を構成する樹脂製の従動歯車(樹脂歯)のベース樹脂に、ポリアミドXD10を採用したことで、寸法安定性を達成すると共に、優れた耐疲労性を維持し、ポリα―オレフィン油を基油とするグリースを用いても、潤滑性の維持を両立した、高信頼性で環境にやさしい電動パワーステアリング装置を提供し得る。
(実施例)
[保持器の作製]
表1に示すポリアミド樹脂、及び強化材を配合して樹脂組成物(樹脂ペレット)を調製する。各樹脂ペレットを用いて、アンギュラ玉軸受(日本精工製「70BER20XDB」;内径70mm、外径110mm、幅24mm、接触角25°、2列組合せ)用保持器(図4参照)を射出成形により作製する。
また、同じ樹脂ペレットを用いて、深溝玉軸受用保持器(図6、外径47mm、内径17mm)を射出成形により作製する。
・実施の形態の例の樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス製Reny(登録商標)植物由来グレード XH1001(GF30質量%含有ポリアミドXD10、熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
・比較の形態の例1の樹脂:GF30質量%含有ポリアミド66樹脂(BASF製A3HG6 HR、熱安定剤含有グレード)
・比較の形態の例2の樹脂:GF30質量%含有ポリアミド6T6I樹脂[三井化学製アーレンE430N(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
・比較の形態の例3の樹脂:PAN系CF30質量%含有L-PPS樹脂[ポリプラスチックス製ジュラファイド(登録商標)フォートロン2130A1]
[寸法安定性の評価]
表1に示す組成の各保持器を、下記条件Iまたは条件IIの下に放置し、所定時間経過後に保持器外径寸法の変化量を測定する。何れの条件においても、変化量が50μm以下を合格、50μmを越えるものを不合格として判定することができる。
・条件I:60℃、90%RH、70hr
・条件II:80℃、90%RH、300hr
[耐久性評価]
表1に示す組成からなる各保持器を組み込んだ各試験体を、実際のスピンドルユニットに組み込み、下記条件I~IIIにて操舵操作を繰返し行う。何れの条件においても、1000hrの軸受の連続運転ができた場合を合格、1000hrの連続運転ができなかったものを不合格として判定することができる。
なお、内部空間に、充填したグリースは、ポリαオレフィン油(100℃で5.7mm2/S)を基油とし、脂肪族ジウレア化合物を増ちょう剤(増ちょう剤量:13重量%)に、各種添加剤を配合されたちょう度No.2のものとする。添加剤としては、極圧添加剤、酸化防止剤、防錆剤が通常量含有しているものとすることができる。
試験軸受の組み込み時予圧荷重は、1500N、試験回転数は10000min-1とし、グリース充填量は、樹脂材料による差異を見るために、通常より少ない軸受空間容積の7%とすることができる。
・条件I:30℃、50%RH
・条件II:50℃、90%RH
・条件III:80℃、50%RH
[組み込み性評価]
表1に示す保持器組成からなる図6の冠型保持器(実施の形態の例、比較の形態の例1~3)について、自動組み込み試験機を用いて、組み込み試験を実施し、保持器爪部の白化・割れ・変形などにより、組み込み性を評価することができる。
各組成でn=10で行い、1個でも異常が見られた場合は不合格、異常が無かった場合を合格として判定することができる。
従来の高吸水のポリアミド樹脂からなる比較の形態の例1は、高温、高湿度の過酷な条件では、寸法安定性が悪いと思われるため、それに伴って耐久性も持たないと考えられる。実施の形態の例は、組み込み性が比較の形態の例1と同レベルと考えられ、長い炭化水素部分がない半芳香族ポリアミドの比較の形態の例2と差異を有すると考えられる。比較の形態の例3も同様に延性が低いと思われるため、組み込み性は良好でないと考えられる。更に、本願で用いているポリアミド樹脂と同レベルの低吸水性であるポリアミド6T6Iをベース樹脂とした比較の形態の例2及び、更に低吸水性のL-PPSをベース樹脂とした比較の形態の例3は、寸法安定性は問題ないと考えられるが、ポリα-オレフィン油を基油としたグリースに対する濡れ性が更に悪いため(ポリアミド66に比べても)、樹脂の摩耗の進行が早く、温度が高い条件で1000時間の耐久性を持つことはないと考えられる。
[セパレータの作製]
表2に示すポリアミド樹脂からなる樹脂ペレットを用いて、セパレータを射出成形(1点のピンゲート)により作製する。
・実施の形態の例の樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス製Reny(登録商標)植物由来グレード XHグレード(ポリアミドXD10非強化品、熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
・比較の形態の例1の樹脂:BASF製ポリアミド66樹脂[ウルトラミッドA3W(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)]
・比較の形態の例2の樹脂:ポリアミド6T6I樹脂[三井化学製アーレンE430N(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
[耐久性評価]
各試験体(セパレータ)を実際のボールねじ(軸径φ40mm、リード20mmで、オーバーサイズボールで予圧を与えたもの)に組み込んで、下記条件I~IIIにて操舵操作を繰返し行う。何れの条件においても、1000hrのボールねじの連続運転(軸回転速度:1000min-1)ができた場合を合格、1000hrの連続運転ができなかったものを不合格として判定することができる。
尚、内部空間に、充填したグリースは、ポリαオレフィン油(100℃で5.7mm/S)を基油とし、脂肪族ジウレア化合物を増ちょう剤(増ちょう剤量:13重量%)に、各種添加剤を配合されたちょう度No.2のものとする。添加剤としては、極圧添加剤、酸化防止剤、防錆剤が通常量含有しているものとすることができる。
試験ボールねじのグリース充填量は、樹脂材料による差異を見るために、通常より少ないボールねじ空間容積の7%とすることができる。
・条件I:30℃、50%RH
・条件II:50℃、90%RH
・条件III:80℃、50%RH
従来の高吸水のポリアミド樹脂からなる比較の形態の例1は、高温、高湿度の過酷な条件では、寸法安定性が悪いと思われるため、それに伴って耐久性も持たないと考えられる。
更に、ポリアミド6T6Iをベース樹脂とした比較の形態の例2は、寸法安定性は問題ないと思われるものの、ポリα-オレフィン油を基油としたグリースに対する濡れ性が更に悪いため(ポリアミド66に比べても)、樹脂の摩耗の進行が早く、温度が高い条件で1000時間の耐久性を持つことはないと考えられる。
[樹脂製プーリの作製]
表3に示すポリアミド樹脂とガラス繊維からなる樹脂ペレットを用いて、外輪外周部に凹溝を有する接触ゴムシール付き深溝玉軸受(6203DDL18)をコアにしてインサート成形(射出成形)する。
・実施の形態の例の樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス製Reny(登録商標)植物由来グレード XH1001(GF30質量%含有ポリアミドXD10、熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
・比較の形態の例1の樹脂:表1に示す組成のGF30質量%含有ポリアミド66樹脂(BASF製A3HG6 HR、熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
・比較の形態の例2の樹脂:ポリアミド6T6I樹脂[三井化学製アーレンE430N(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)。
[耐塩化カルシウム性評価]
実施の形態の例1と、比較の形態の例1、比較の形態の例2の樹脂製プーリについて、以下の条件で耐塩化カルシウム性を評価することができる。
まず、樹脂製プーリを80℃の熱水中に2時間浸漬して吸水させた後、塩化カルシウム50%水溶液に5分間浸漬する。次に、この樹脂製プーリを、ラジアル負荷150kgfかけた状態で、恒温槽中に放置して温度を可変させる。
可変条件は、20℃から110℃まで30分かけて昇温後、110℃で2時間保持し、さらに30分かけて20℃まで温度を下げた後、20℃に1時間保持する。これを1サイクルとして繰返し、2サイクル毎に、樹脂製プーリを塩化カルシウム50%水溶液に5分間浸漬する。これを10サイクル繰り返した後、クラックの発生を確認することができる。
低吸水性のベース樹脂からなる樹脂製プーリである実施の形態の例は、同じく低吸水性のベース樹脂からなる比較の形態の例2と同様に、クラック発生は見られず、十分な耐塩化カルシウム性を有すると考えられる。これにより、自動車で実際に使用しても、融雪剤に起因するクラック発生は見られないと考えられる。それに対して、高吸水性のベース樹脂からなる比較の形態の例1は、クラックが発生すると思われるため、融雪剤がかかるように使用される自動車用途での適用は困難であると考えられる。
[ウォームホイール試験体の作製]
表4に示すポリアミド樹脂及び強化材を配合して樹脂組成物(樹脂ペレット)を調製する。クロスレーレット加工を施し、脱脂した外径45mm、幅13mmのS45Cの芯管を、スプルー及びディスクゲートを装着した金型に配置し、射出成形機を用いて樹脂組成物からなる成形材料を充填して、外径60mm、幅13mmの外周部にヘリカルギア歯を有するものを作成する。その後、ホブカッターを用いた切削加工で、ギア歯の仕上げを行い、ウォームホイール試験体を作成する。
・実施の形態の例の樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス製Reny(登録商標)植物由来グレード XH1001(GF30質量%含有ポリアミドXD10、熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
比較の形態の例1の樹脂:表7に示す組成のGF30質量%含有ポリアミド66樹脂[宇部興産製ナイロン2020GU6(Cu系熱安定剤含有;数平均分子量20000)]
比較の形態の例2の樹脂:表7に示す組成のGF30質量%含有ポリアミド6T6I樹脂[三井化学製アーレンE430N(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
[寸法安定性の評価]
各試験体を、下記条件I又は条件IIの下に放置し、所定時間経過後にギア外径寸法の変化量を測定することができる。何れの条件においても、変化量が40μm以下を合格、40μmを越えるものを不合格として判定することができる。
・条件I:60℃、90%RH、70hr
・条件II:80℃、90%RH、300hr
[耐久性評価]
各試験体を実際の自動車減速ギアに組み込み、下記条件I~IIIにて操舵操作を繰返し行う。何れの条件においても、10万回の操舵に耐えることができた減速ギアを合格、10万回の操舵に耐えることができなかった減速ギアを不合格として判定することができる。
尚、内部空間に、充填したグリースは、ポリα-オレフィン油(100℃で8mm/S)を基油とし、脂肪族ジウレア化合物を増ちょう剤(増ちょう剤量:13重量%)に、各種添加剤を配合されたちょう度No.2のものとすることができる。添加剤としては、ポリエチレンワックス(摩耗防止剤)、4,4‘-ジオクチルジフェニルアミン(酸化防止剤)、中性カルシウムスルホネート(防錆剤)が、配合される。
・条件I:30℃、50%RH
・条件II:50℃、90%RH
従来の高吸水のポリアミド66からなる比較の形態の例1は、高温、高湿度の過酷な条件では、寸法安定性が悪いと思われるために、それに伴って耐久性も持たなくなると考えられる。ポリアミド6T6Iからなる比較の形態の例2は、寸法安定性には優れていると思われるものの、グリース基油であるポリα-オレフィン油との濡れ性が悪く、すべての条件で樹脂の摩耗が発生し、耐久性は悪いと考えられる。
本発明は、相対運動を構成要素に備える転動装置や軸受を備えた種々のものに広く利用可能である。
1 内輪
3 外輪
5 環状隙間
7 転動体
9 保持器
11 密封装置
69 リニアガイド装置
71 案内レール
73 スライダ
75 転動溝
77 ボール循環経路
79 ボールねじ装置
81 ねじ軸
83 ボールナット
85 ボールチューブ
87 ボール溝
89 直動体
91 ボール循環経路
93 セパレータ
95 凹面
97 貫通孔
99 溝
B ボール
101 転がり軸受
103 樹脂部
141 ウォームホイール(従動歯車)
143 ウォーム(駆動歯車)
145 減速ギア(減速歯車機構)
149 芯管
151 ギア歯
153 樹脂部材

Claims (22)

  1. 少なくとも、内輪、外輪、及び合成樹脂製保持器を介して前記内輪と外輪との間に組み込まれる転動体とからなる転がり軸受において、
    前記合成樹脂製保持器が、ポリアミドXD10をベース樹脂としたポリアミド樹脂組成物で形成されていることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記ポリアミド樹脂組成物は、含有量10~40重量%とした強化材を含むことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記ポリアミドXD10の融点が215℃~290℃であることを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受。
  4. 前記ポリアミドXD10のバイオ度が約55%であることを特徴とする請求項3に記載の転がり軸受。
  5. 前記合成樹脂製保持器が外輪案内であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  6. 前記合成樹脂製保持器が爪部を有する冠型保持器であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  7. 前記転がり軸受の内部空間にはグリースが充填され、
    前記グリースの基油の主成分をポリα-オレフィン油としたことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  8. 前記内輪と前記外輪との間に組み込まれる密封シールを備え、
    前記樹脂部材が前記密封シールであることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  9. 軸に外嵌すると共に、前記軸に沿って直進移動する直動体と、前記直動体の内面側に形成されたボール溝に保持され、前記ボール溝と前記軸との間で転動する多数のボールと、前記各ボールの間に介装されるセパレータと、前記直動体に形成され、前記ボール溝の一端側から他端側に前記ボールを循環させる循環通路と、を有する直動装置において、
    前記セパレータと、前記循環通路と、のどちらか一方の少なくとも表面の一部が、ポリアミドXD10をベース樹脂としたポリアミド樹脂組成物で形成されていることを特徴とする直動装置。
  10. 前記ポリアミド樹脂組成物は、含有量10~40重量%とした強化材を含むことを特徴とする請求項9に記載の直動装置。
  11. 前記ポリアミドXD10の融点が215℃~290℃であることを特徴とする請求項10に記載の直動装置。
  12. 前記ポリアミドXD10のバイオ度が約55%であることを特徴とする請求項11に記載の直動装置。
  13. 転がり軸受と、前記転がり軸受の周囲にて前記転がり軸受と一体的に形成された樹脂部とから成る樹脂製プーリにおいて、
    前記樹脂部が、ポリアミドXD10をベース樹脂としたポリアミド樹脂組成物で形成されていることを特徴とする樹脂製プーリ。
  14. 前記ポリアミド樹脂組成物は、含有量10~40重量%とした強化材を含むことを特徴とする請求項13に記載の樹脂製プーリ。
  15. 前記ポリアミドXD10の融点が215℃~290℃であることを特徴とする請求項14に記載の樹脂製プーリ。
  16. 前記ポリアミドXD10のバイオ度が約55%であることを特徴とする請求項15に記載の樹脂製プーリ。
  17. 電動モータによる補助動力を、駆動歯車と従動歯車とからなる減速歯車機構を介して車両のステアリング機構に伝達するように構成され、前記減速歯車機構の従動歯車が外周面に樹脂歯を有する電動パワーステアリング装置において、
    前記樹脂歯が、ポリアミドXD10をベース樹脂としたポリアミド樹脂組成物で形成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  18. 前記ポリアミド樹脂組成物は、含有量10~40重量%とした強化材を含むことを特徴とする請求項17に記載の電動パワーステアリング装置。
  19. 前記ポリアミドXD10の融点が215℃~290℃であることを特徴とする請求項18に記載の電動パワーステアリング装置。
  20. 前記ポリアミドXD10のバイオ度が約55%であることを特徴とする請求項19に記載の電動パワーステアリング装置。
  21. 前記従動歯車と前記駆動歯車との間にグリースを介在し、前記グリースの基油の主成分をポリα―オレフィン油としたことを特徴とする請求項17に記載の電動パワーステアリング装置。
  22. 前記従動歯車と前記駆動歯車との間にグリースを介在し、前記グリースを生分解性グリースとしたことを特徴とする請求項17に記載の電動パワーステアリング装置。
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