JP2023023309A - 直動装置 - Google Patents

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【課題】セパレータに求められる寸法安定性、延性、ポリα―オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成した、高信頼性で環境にやさしいセパレータが用いられた直動装置を提供する。【解決手段】本発明は、軸(ねじ軸11)に外嵌すると共に、当該軸(ねじ軸11)に沿って直進移動する直動体15と、この直動体15の内面側に形成されたボール溝14に保持され、当該ボール溝14と前記軸(ねじ軸11)との間で転動する多数のボールBと、各ボールBの間に介装されるセパレータ100と、直動体15に形成され、ボール溝14の一端側から他端側にボールBを循環させる循環通路18とを有する直動装置であって、セパレータ100と循環通路18の少なくともどちらか一方を、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂を射出成形で形成した部材とする。【選択図】図2

Description

本発明は、産業用機械等に用いられるリニアガイド装置、ボールねじ等の直動装置に係り、詳しくは、転動体間に介在するセパレータに関する。
例えば、図1に示すように、リニアガイド装置10は、外面に転動溝3を有する案内レール1と、その案内レール1を跨いで組み付けられたスライダ2とを備えている。スライダ2の案内レール1の転動溝3と対向する面は一部開口しており、案内レール1の転動溝3とともに断面略トラック状のボール循環経路4を形成している。そして、このボール循環経路4の内部に、多数のボールBが転動自在に収容される。
また、例えば、図2に示すように、ボールねじ装置20は、ボールナット12がねじ軸11を内包するように配置されており、ボールナット12の内周に螺旋状に形成されたねじ溝12aと、それに対向するねじ軸11の外周に螺旋状に形成されたねじ溝11aとで形成される空間に、複数のボールBが転動自在に配置されている。また、ボールナット12には、外形略コ字状のボールチューブ13が、その両端をねじ軸11のねじ溝11aに臨むように装着されている。そして、ボールBは、ボールナット12の内部で、ねじ軸11を複数回周回した後ボールチューブ13の一端から掬い上げられ、ボール循環経路18を通った後、ボールチュープ13の他端からねじ軸11のねじ溝11aに戻される循環を繰り返す。
このようなリニアガイド装置10やボールねじ20では、駆動時におけるボール同士の衝突音を無くするために、ボールBの間にセパレータを介装させたものが使用されてきた。例えば、図3はリニアガイド装置10のボール循環経路4の内部を拡大して示す図であるが、ボールBとボールBとの間にセパレータ100が介装されたボール列が形成されている。このセパレータ100は、両側にボールBの外周面に対応して断面円弧状の凹面101が形成されており、ボールBはボール循環経路4の循環時にこの凹面101により転動自在に保持される。これらに関する従来技術として本出願人の特許文献1があげられる。
セパレータ100の材質としては、非強化の66ナイロン、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が一般的に用いられる。また、直動装置では、一般的に内部空間にグリースが充填され、必要に応じてグリースニップル等から、グリースが追加給脂され、潤滑されている。
特許第4282924号公報
しかしながら、上記の66ナイロン樹脂からなるセパレータは、水分の出入りによって寸法変化を引き起こし、最悪の場合、図4に示すように、循環路中でセパレータ100が倒れて直動装置の作動不良を引き起こす虞があった。また、別途用いられているポリエステル系熱可塑性エラストマーも含めて、全て石油由来のものであり、環境に考慮したものではなかった。
また、直動装置の内部空間に充填されるグリースとしては、主成分が脂肪族炭化水素である、極性が低い鉱油、ポリα―オレフィン油が最も多く使用されているが、アミド結合が分子構造中に多数存在する66ナイロン樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、分子構造が大きく異なるため、濡れ性が悪く、グリースのセパレータへの付着力は十分なものではなかった。
また、脂肪族ポリアミド系材料で、低吸水性で、分子構造中にアミド結合が少ないものとしては、ポリアミド11(融点187℃)、ポリアミド12(融点176℃)があるが、融点が低いために、直動装置が高速で作動して内部温度が上昇すると、軟化し、セパレータが変形する虞があった。
そこで、本発明はこのような状況に着目してなされたものであり、セパレータに求められる寸法安定性、延性、ポリα―オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成した、高信頼性で環境にやさしいセパレータが用いられた直動装置を提供することを目的とする。
第1の発明の直動装置は、上記の目的を達成するために、軸に外嵌すると共に、当該軸に沿って直進移動する直動体と、この直動体の内面側に形成されたボール溝に保持され、当該ボール溝と前記軸との間で転動する多数のボールと、前記各ボールの間に介装されるセパレータと、前記直動体に形成され、前記ボール溝の一端側から他端側に前記ボールを循環させる循環通路とを有する直動装置において、
前記セパレータと前記循環通路の少なくともどちらか一方を、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)を射出成形で形成した部材としたことを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明の直動装置において、前記のセパレータと前記循環通路の少なくともどちらか一方の表面の一部を、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)を射出成形で形成した部材としたことを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明又は第2発明に記載の直動装置において、直動装置の内部空間に充填されるグリースの基油の主成分をポリα―オレフィン油としたことを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明又は第2発明に記載の直動装置において、直動装置の内部空間に充填されるグリースを生分解性グリースとしたことを特徴とする。
本発明によれば、セパレータに求められる寸法安定性、延性、ポリα―オレフィン油等を基油とするグリースの付着力を改善、更に高速での変形防止とを達成した、高信頼性で環境にやさしいセパレータが用いられた直動装置を提供することができる。
直動装置の一例であるリニアガイド装置を示す一部切欠平面図である。 直動装置の他の例であるボールねじ装置を示す一部切欠斜視図である。 図1に示すリニアガイド装置のボール循環経路の内部を示す平面図である。 従来のセパレータの不具合を説明するための図3の部分拡大図である。 セパレータの一例を示す断面図である。 セパレータの他の例を示す断面図(a)及び正面図(b)である。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明において、直動装置の種類には制限はなく、例えば図1に示したようなリニアガイド装置10や図2に示したようなボールねじ装置20を例示することができる。この内、図2は、軸(ねじ軸11)に外嵌すると共に、当該軸(ねじ軸11)に沿って直進移動する直動体15と、この直動体15の内面側に形成されたボール溝14に保持され、当該ボール溝14と前記軸(ねじ軸11)との間で転動する多数のボールBと、各ボールBの間に介装されるセパレータ100と、直動体15に形成され、ボール溝14の一端側から他端側にボールBを循環させる循環通路18とを有する直動装置である。なお、この図2の説明は特許文献1で説明されていることからここでは省略する。
そして、図1及び図2の何れも図3に示したように、ボールBとボールBとの間にセパレータ100を介装させてボール同士の衝突音を無くしている。
また、セパレータ100は、例えば図5に示すように、凹面101を形成する曲率半径Rの中心OをボールBの中心OBから変位させて2箇所に設けてもよい。それにより、セパレータ100の凹面101とボールBとの間に隙間Sが形成され、この隙間Sにグリース(図示せず)が流入してボールBの転動が円滑に行なわれる。また、凹面101の表面は平坦でもよいが、粗面である方がグリースを保持できることから好ましい。粗面の程度は、面粗さRmaxで5~50μm程度が適当である。
更に、セパレータ100の凹面101の表面には同心状もしくは螺旋状の溝が形成されていてもよく、更にセパレータ100の凹面101とボールBとの隙間にグリースが流入し易いようにセパレータ100に貫通孔を設けることもできる。例えば、図6に示されるセパレータ100では、凹面101の中心部に貫通孔102が貫通され、その周囲に同心状に複数の溝103が形成されており、貫通孔102から流入したグリース(図示せず)が溝103に保持され、良好な潤滑が維持される。また、凹面101の外周端部100aが円弧状に面取りされており、グリースがより流入し易くなっている。なお、貫通孔102の直径や、溝103の深さ、幅、数等は制限されるものはなく、セパレータ100の大きさや機械的強度等に応じて適宜設定される。例えば、溝103の深さは5~30μm程度が適当である。
また、上記に挙げた凹面101における粗面化、貫通孔102や溝103の形成、外周端部100aの面取りは、複数を適宜組み合わせることもできる。
なお、用いる射出成形機のゲート形状はピンゲートで良いが、ゲートの位置はセパレータ100の凹面101以外、例えば図6に示すように、セパレータ100の外周面にゲートGを臨ませることが好ましい。あるいは、図示は省略するが、貫通孔102の内周面にゲート位置を設けることもできる。
このような直動装置において、セパレータ100と循環通路18の少なくともどちらか一方を、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)を射出成形で形成した部材、またはセパレータ100と循環通路18の少なくともどちらか一方の表面の一部を、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)を射出成形で形成した部材としている。
セパレータ100を形成するベース樹脂として、1,6-ジアミノヘキサン(1,6-ヘキサンジアミン)とテレフタル酸との重縮合物であるポリアミド6Tと、植物由来のひまし油から誘導される11-アミノウンデカン酸の重縮合物であるポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂を使用することができる。
ポリアミド6Tとポリアミド11の比率は、モル比で60:40~75:25であり、融点範囲は300~325℃である。これより、ポリアミド11が少ない場合は、ポリアミド6Tのホモポリマーの融点380℃に対して、十分に低くならず、成形によって分解が発生する事態となり、安定した成形体が確保できなくなると共に、グリース基油であるポリα―オレフィン油への濡れ性改善、延性の改善が十分でなくなる。これより、ポリアミド11が多い場合は、融点が下がると共に、耐熱性・耐油性が低下し、好ましくない。
なお、植物由来のひまし油を原料としているポリアミド11のモル比がそのままバイオ度となる。バイオ度が高い方が、より環境にやさしい材料となる。
以上説明したポリアミド樹脂は、飽和吸水率が0.2~0.3%であり、転がり軸受の保持器に最も多く用いられているポリアミド66(飽和吸水率5.6%)に対して、格段に低いので、吸水による寸法変化が非常に小さく、寸法安定性に優れることで信頼性が非常に高い。
以上説明したポリアミド樹脂の分子量は、射出成形できる範囲、具体的には数平均分子量で13000~28000、より好ましくは、耐疲労性、成形性を考慮すると、数平均分子量で18000~26000の範囲である。数平均分子量が13000未満の場合は分子量が低すぎて耐疲労性が悪く、実用性が低い。それに対して数平均分子量が28000を越える場合は、溶融粘度が高くなりすぎ、セパレータ100を精度良く射出成形で製造することが難しくなり、好ましくない。
上記のベース樹脂は、樹脂単独でも一定以上の耐久性を示し、セパレータ100が接触する可能性がある相手部材(転動体、ボールB)の摩耗に対して有利に働き、保持器として十分に機能する。しかしながら、より過酷な使用条件で使用されると、セパレータ100が破損、変形、摩耗することも想定されるため、信頼性をより高めるために、強化材を配合しても構わない。
強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく、上記に挙げたポリアミド樹脂との接着性を考慮してシランカップリング剤等で表面処理したものが更に好ましい。
また、これらの強化材は複数種を組み合わせて使用することができる。衝撃強度を考慮すると、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状物を配合することが好ましく、更に相手材の損傷を考慮するとウィスカー状物を繊維状物と組み合わせて配合することが好ましい。混合使用する場合の混合比は、繊維状物及びウィスカー状物の種類により異なり、衝撃強度や相手材の損傷等を考慮して適宜選択される。
また、ガラス繊維としては、一般的な平均繊維径である10~13μmのものの他、少ない含有量で高強度化と耐摩耗性の改善が可能な平均繊維径が5~7μmのもの、あるいは異形断面のものがより好適である。
更に、炭素繊維としては、強度を優先するのであれば、PAN系のものが好適であるが、コスト面で有利なピッチ系のものも使用可能である。平均繊維径としては、5~15μmのものが好適である。炭素繊維は、繊維自体の強度、弾性率が高いため、ガラス繊維に比べて、保持器の高強度化、高弾性率化が可能である。
アラミド繊維としては、強化性に優れるパラ系アラミド繊維を好適に使用することが可能である。平均繊維径としては、5~15μmのものが好適である。アラミド繊維は、ガラス繊維及び炭素繊維のように、鉄鋼材料を傷つけることはないので、保持器が接触する相手部材の表面状態を悪くすることがないので、軸受の音響特性等を重視する場合は、更に好適である。
これらの強化材を含有させる場合は、全体の10~40重量%、特に15~30重量%の割合で配合することが好ましい。強化材の配合量が10重量%未満の場合には、機械的強度の改善が少なく好ましくない。強化材の配合量が40重量%を超える場合には、成形性が低下すると共に、強化材の種類によっては、相手材への傷つけ性が高くなるので好ましくない。
更に、添加剤として樹脂に、成形時及び使用時の熱による劣化を防止するために、ヨウ化物系熱安定剤やアミン系酸化防止剤を、それぞれ単独あるいは併用して添加することが好ましい。
以下に、直動装置の潤滑状態を良好に保つグリースについて説明する。
本発明は、直動装置の内部空間に充填されるグリースの基油の主成分をポリα―オレフィン油としたことを特徴とする。すなわち、本発明に用いられるグリースは、増ちょう剤と基油とを主成分とし、基油は、本発明で用いられるポリアミド樹脂への濡れ性を考慮して、ポリα―オレフィン油を主成分としたものであり、増ちょう剤は、アミンとイソシアネートからなるウレア化合物、Li石けん、Liコンプレックス石けん、Ba石けん、Baコンプレックス石けん等である。
これらの増ちょう剤の中で、ポリアミドに構造が類似のウレア結合を有するウレア化合物が、ポリアミド樹脂への吸着性に優れ、特に好ましい。基油は、上記のポリα―オレフィン油の潤滑性を改善するために、ジエステル油や芳香族エステル油を混合したものであってよい。混入量は、基油全体に対して、30重量%以下である。
本発明で用いられるポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)は、直動装置のセパレータで一般的に用いられるポリアミド66に比べて、アミド基間に、長い炭化水素鎖を有するポリアミド11部分が存在することで、ポリα―オレフィン油との濡れ性に優れている。
また、このグリースには、他の添加剤を加えることもできる。例えば、アミン系やフェノール系等の酸化防止剤、Caスルホネート等の防錆剤、MoDTC等の極圧添加剤、モンタン酸エステルワックス、モンタン酸エステル部分けん化ワックス、ポリエチレンワックス、オレイン酸等油性向上剤、などである。
また、直動装置の内部空間に充填されるグリースを生分解性グリースとしたことを特徴とする。すなわち、本発明では、上記のポリα―オレフィン油を基油とするグリースの外に、生分解性グリースを使用すると、より環境にやさしい直動装置となり、好適である。
生分解性グリースとしては、基油として、ナタネ油、ヒマシ油等の植物油か、トリメチロールプロパンエステル、ペンタエリスリトールなどの合成脂肪酸エステルのものが生分解性に優れており、使用することができる。
増ちょう剤としては、カルシウム石けん、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けんやウレア、ベントナイトを使用することができる。
生分解性グリースは、基油がエステル系のため、本発明のポリアミ樹脂への濡れ性は良好である。
以上説明したように、本発明によれば、耐熱性に優れ低吸水性な半芳香族ポリアミドであるポリアミド6Tと延性に優れ低吸水性なポリアミド11からなる共重合ポリアミド樹脂を、直動装置のセパレータの保持器の樹脂材料に適用することで、様々な環境での使用が可能となった高信頼性と低コストを両立させた直動装置を提供することができる。
また、本願のポリアミドはバイオ度が25~40%であることから、従来の石油由来成分のみでバイオ度が0%であったポリアミド66等に比べて、環境にやさしい直動装置とすることとすることができる。
更に、アミド基間に長鎖炭化水素部分を有するポリアミド11部分があることで、分子構造が近いポリα―オレフィン油を主成分とする基油からなるグリースの適用することで、樹脂材料への濡れ性が良好に保たれ、樹脂部の摩耗を効果的に防止し、直動装置の長寿命化が可能となる。
また、グリースを生分解性グリースとすると、更に環境にやさしい直動装置とすることができる。
なお、本実施形態は、セパレータ100の全体をポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)で形成しているが、セパレータ100は転動体(ボールB)と接触する表面のみがポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)からなる部材で形成されているものであってもよい。
また、循環通路18をポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)からなる部材で形成するものであってもよい。この場合も転動体(ボールB)が転がり接触する通路表面のみがポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)からなる部材で形成されているものであってもよい。
更に、セパレータ100と循環通路18の双方がポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点300℃~325℃)からなる部材で形成されているものであってもよい。
以下に実施及び比較の形態を挙げて本発明を更に説明する。
セパレータ組成については表1に、セパレータ100の構造については図3、図5及び図6に、また、ボールねじ構造については図2に示す。なお、ここでの説明は、既に[発明を実施するための形態]において詳細に説明済みで重複するため省くこととする。
[セパレータの作製]
表1に示すポリアミド樹脂からなる樹脂ペレットを用いて、セパレータを射出成形(1点のピンゲート)により、作製することができる。
[表1]
Figure 2023023309000002
本発明の直動装置は、構成部品であるセパレータ100を、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点315℃)で形成され、ベース樹脂を低吸水性とすることで、従来セパレータとして用いているポリアミド66では、吸水寸法変化による隙間変化による不具合の虞がなくなり、信頼性が向上する。
また、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂(融点315℃)はバイオ度が30%であることから、従来の石油由来成分のみでバイオ度が0%であったポリアミド66等に比べて、環境にやさしい直動装置とすることとすることができる。
また、実施形態は、例えば、東洋紡績製バイロアミド(登録商標)MJ-300NZ(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明、PA6T:PA11=約7:3)を使用することができる。比較用には、BASF製ポリアミド66樹脂[ウルトラミッド(登録商標)A3W(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)]、及び、ポリアミド6T6I樹脂[三井化学製アーレン(登録商標)E430N(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)を用いることができる。
[耐久性の評価]
耐久性の評価を行う場合は以下の条件で実施することが、いわゆるコストパフォーマンスに優れており好ましい。
・条件I :30℃、50%RH
・条件II:50℃、90%RH
・条件III:80℃、50%RH
評価は、各試験体(セパレータ)を実際のボールねじ(軸径Φ40mm、リード20mmで、オーバーサイズボールで予圧を与えたもの)に組み込んで、下記条件I~IIIで往復稼働を繰返し行った。何れの条件においても、1000hrのボールねじの連続運転(軸回転速度:1000min-1)ができた場合を合格「○」、1000hrの連続運転ができなかったものを不合格「×」とする基準により評価することができる。
なお、内部空間に、充填するグリースは、ポリαオレフィン油(100℃で5.7mm/s)を基油とし、脂肪族ジウレア化合物を増ちょう剤(増ちょう剤量:13重量%)に、各種添加剤を配合されたちょう度No.2のものとすることができる。添加剤としては、極圧添加剤、酸化防止剤、防錆剤が通常量含有しているものとすることができる。
なお、試験ボールねじのグリース充填量は、樹脂材料による差異を見るために、通常より少ないボールねじ空間容積の7%とすることができる。
実施形態が全ての試験で合格する可能性があるのに対し、従来の高吸水のポリアミド樹脂からなる比較形態は、高温、高湿度の過酷な条件では、寸法安定性が悪いために、それに伴って耐久性も持たなくなると思われる。
更に、本願で用いているポリアミド樹脂と同レベルの低吸水性がポリアミド6T6Iをベース樹脂とした比較形態は、寸法安定性は問題ないものの、ポリα-オレフィン油を基油としたグリースに対する濡れ性が更に悪いため(ポリアミド66に比べても)、樹脂の摩耗の進行が早く、温度が高い条件で1000時間の耐久性を持つ可能性は低いと思われる。
1 案内レール
2 スライダ
3 転動溝
4 ボール循環経路
10 リニアガイド装置
11 ねじ軸
12 ボールナット
13 ボールチューブ
14 ボール溝
15 直動体
18 ボール循環経路(循環通路)
20 ボールねじ装置
100 セパレータ
101 凹面
102 貫通孔
103 溝
B ボール(転動体)

Claims (4)

  1. 軸に外嵌すると共に、当該軸に沿って直進移動する直動体と、この直動体の内面側に形成されたボール溝に保持され、当該ボール溝と前記軸との間で転動する多数のボールと、前記各ボールの間に介装されるセパレータと、前記直動体に形成され、前記ボール溝の一端側から他端側に前記ボールを循環させる循環通路とを有する直動装置において、
    前記セパレータと前記循環通路の少なくともどちらか一方を、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂を射出成形で形成した部材としたことを特徴とする直動装置。
  2. 前記のセパレータと前記循環通路の少なくともどちらか一方の表面の一部を、ポリアミド6Tとポリアミド11の共重合ポリアミド樹脂を射出成形で形成した部材としたことを特徴とする請求項1に記載の直動装置。
  3. 直動装置の内部空間に充填されるグリースの基油の主成分をポリα―オレフィン油としたことを特徴とする請求項1又2に記載の直動装置。
  4. 直動装置の内部空間に充填されるグリースを生分解性グリースとしたことを特徴とする請求項1又2に記載の直動装置。
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