JP2022069965A - 転がり軸受 - Google Patents

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Shunichi Yabe
兼明 松本
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雷 伊藤
Rai Ito
信太郎 本多
Shintaro Honda
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Abstract

【課題】グリースの付着力の改善を図るとともに、合成樹脂製保持器や合成樹脂製シールにおける高速での変形防止を図り得る転がり軸受を提供する。【解決手段】少なくとも内輪1、外輪3、合成樹脂製保持器9及び転動体7からなり、内部空間には、軸受の潤滑状態を良好に保つためグリースが配設される深溝玉軸受であって、前記合成樹脂製保持器9を、ポリアミド510と、含有量10~40重量%とした強化繊維材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成した冠型保持器9とする。【選択図】図1

Description

本発明は、合成樹脂製保持器・グリース・合成樹脂製シールを含む転がり軸受の改良に関する。
転がり軸受には、様々な種類があると共に様々な環境で使用され、求められる性能も異なっており、それに伴って、合成樹脂製保持器等の軸受構成部品も、各種樹脂材料・強化材などを組み合わせて適用されている。
例えば、従来、転がり軸受を構成する合成樹脂製保持器には、ガラス繊維で強化された66ナイロン樹脂で作製されたもの等が最も多く提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、樹脂材料としては、66ナイロン樹脂の他、例えば、46ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が用いられ、強化材としては、ガラス繊維や炭素繊維等が用いられている。
転がり軸受の中で、工作機械主軸で適用されるものは、高速回転時に、保持器外周面と外輪内周面とが接触する外輪案内方式であり、保持器自体の吸水寸法変化が小さいことが求められる。それに伴って、保持器で適用するベース樹脂は、吸水性が少ないポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が一般的に用いられている。その他、工作機械用軸受の保持器として、同じように吸水寸法変化が小さい綿布補強のフェノール樹脂製リングを切削加工したものも用いられている。
また、これらの工作機械主軸用軸受の潤滑法としては、グリース潤滑、オイルエア潤滑、ジェット潤滑等が、使用条件やコストによって適宜、選択され採用されているが、一般的には、低コストでメンテナンスも容易なことから、グリース潤滑が利用されることが多い。
また、玉軸受で最も多く用いられる冠型保持器は、玉を圧入する際、樹脂材料に延性がないと割れが発生するため、66ナイロン、46ナイロンが通常用いられている(例えば特許文献2参照。)。
しかしながら、上記の66ナイロン樹脂、46ナイロン樹脂をベース樹脂とした保持器は、水分の出入りによって寸法変化を引き起こし、最悪の場合、転がり軸受の内外輪・転動体に干渉して悪影響を及ぼす虞があった。特に、上記説明した外輪案内方式の保持器では、寸法変化が重要視されることから、材料コストが高いポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を用いるのが、一般的であった。
玉軸受で最も多く用いられている冠型保持器は、延性が低いポリフェニレンサルファイド樹脂や半芳香族ポリアミド樹脂(変性ポリアミド6T等)をベース樹脂(+強化繊維材)として用いると、玉を抱え込んでいる爪部分に玉を圧入する際、樹脂材料に延性がないと割れ・欠けが発生することから、上述の通り、実際は66ナイロン、46ナイロンにガラス繊維を含有させた樹脂組成物が用いられているのが実状であった。
また、脂肪族ポリアミド系材料で、低吸水性で、分子構造中にアミド結合が少ないものとしては、植物由来の原料から合成されるポリアミド11(融点187℃)、ポリアミド12(融点176℃)があるが、融点が低いために、高速回転で軸受温度が上昇すると、軟化し、保持器が変形する虞があった。
転がり軸受の内部空間に充填されるグリースとしては、主成分が脂肪族炭化水素である、極性が低い鉱油、ポリα―オレフィン油が最も多く使用されている。
しかし、アミド結合が分子構造中に多数存在する66ナイロン樹脂、46ナイロン樹脂や、芳香族環が分子構造中に多数存在するポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂に対しては、分子構造が大きく異なるため、濡れ性が悪く、グリースの保持器への付着力は十分なものではなかった。変性ポリアミド6T等の半芳香族ポリアミド樹脂も、アミド結合と芳香族環が分子構造中に多数存在することから同様であった。
また、脂肪族ポリアミド系材料で、低吸水性で、分子構造中にアミド結合が少ないものとしては、ポリアミド11(融点187℃)、ポリアミド12(融点176℃))、があるが、融点が低いために、高速回転で軸受温度が上昇すると、軟化し、保持器が変形する虞があった。
また、転がり軸受は、外部からの異物の侵入防止、及び潤滑のためのグリースの漏洩防止、を目的として、軸受の片面または両面にシールを装着していることが多い。
シールの材質に関しては、全体が金属製のもの(金属製シール)や、取付嵌合部とリップ部とがゴム等で形成され、金属リングを補強材として備えたもの(複合型シール)、プラスチックや熱可塑性エラストマーのみからなるもの(合成樹脂製シール)、が知られている。
これらのシールには、外部からの異物の侵入や内部の潤滑材の漏洩を防ぐため、使用環境に適した機械的特性や耐薬品性・耐熱性・耐摩耗性等が求められる。
シールは外輪または内輪の一方に固定されるが、外輪に固定されるのが一般的である。シールは環状であり、外輪に設けられた嵌合溝に装着するための取付嵌合部と、内輪に設けられたシール溝に摺接させるか、僅かな隙間をもたせた内輪シール溝との間でラビリンスを形成するリップ部とを連結して構成されるのが一般的である。
合成樹脂製シールの軸受への挿入は、その弾性を利用して、取付嵌合部が外輪の外側から嵌合溝の最小径部を乗り越えるように嵌合溝の内部に導入され、嵌合溝外側面(傾斜部)と内側面との間で、ひずみを発生させることにより緊密な嵌合状態を維持する。
合成樹脂製シールの材料としては、使用環境に適した機械的特性や耐薬品性・耐熱性・耐摩耗性等が求められるため、例えば、ポリアミド46やポリアミド66などが用いられる。
しかしながら、上記のポリアミド66やポリアミド46をベース樹脂とした合成樹脂製シールは、水分の出入りによって寸法変化を引き起こし、最悪の場合、合成樹脂製シールの接触圧増大によるトルクの増加や早期破損につながる虞がある。
低吸水の樹脂材料としては、分子構造中に芳香族環が多数存在するポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、分子構造中にアミド結合と芳香族環が多数存在する変性ポリアミド6T等の半芳香族ポリアミドがあるが、これらの樹脂は、転がり軸受の内部充填グリースの基油として最も多く使用される脂肪族炭化水素(鉱油,ポリα-オレフィン油)と分子構造が大きく異なるため、濡れ性が悪く、グリースの合成樹脂製シール嵌合部への付着が十分でなかった。
また、低吸水性かつアミド結合の少ない脂肪族ポリアミド系材料として、ポリアミド11(融点187℃)、ポリアミド12(融点176℃)があるが、融点が低く、高速回転で軸受温度が上昇すると、軟化し、シールが変形する虞があった。
特開2002-122148 特開2007-56930
本発明は、従来技術の有するこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、グリースの付着力の改善を図るとともに、合成樹脂製保持器や合成樹脂製シールにおける高速での変形防止を図り得る転がり軸受を提供することにある。
また、保持器、特に外輪案内保持器に求められる寸法安定性、冠型保持器に求められる延性の向上を図ることにある。
また、合成樹脂製シールに求められる機械的特性、耐薬品性、耐熱性の向上を図ることにある。
この目的を達成するために、第1の本発明は、少なくとも内輪、外輪、合成樹脂製保持器及び転動体からなる転がり軸受において、
前記合成樹脂製保持器を、ポリアミド510と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成したことを特徴とする転がり軸受としたことである。
第2の本発明は、少なくとも内輪、外輪、合成樹脂製保持器及び転動体からなる転がり軸受において、
前記合成樹脂製保持器を、ポリアミド56と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成したことを特徴とする転がり軸受としたことである。
ことを特徴とする転がり軸受としたことである。
第3の本発明は、少なくとも内輪、外輪、保持器、転動体及び合成樹脂製シールからなる転がり軸受において、
前記合成樹脂製シールを、ポリアミド610と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成したことを特徴とする転がり軸受としたことである。
第4の本発明は、第1の本発明において、ポリアミド510と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成した合成樹脂製シールを備えてなることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第5の本発明は、第2の本発明において、ポリアミド56と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成した合成樹脂製シールを備えてなることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第6の本発明は、第1の本発明において、前記転がり軸受が外輪案内であることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第7の本発明は、第1の本発明乃至第6の本発明のいずれかにおいて、前記保持器が爪部を有する冠型保持器であることを特徴とする転がり軸受としたことである。
第8の本発明は、第1の本発明乃至第7の本発明のいずれかにおいて、前記転がり軸受の内部空間にはグリースが充填され、
前記グリースの基油の主成分をポリα―オレフィン油としたことを特徴とする転がり軸受としたことである。
第9の本発明は、第1の本発明乃至第7の本発明のいずれかにおいて、前記転がり軸受の内部空間にはグリースが充填され、
前記グリースを生分解性グリースとしたことを特徴とする転がり軸受としたことである。
本発明によれば、グリースの付着力の改善を図るとともに、合成樹脂製保持器や合成樹脂製シールにおける高速での変形防止を図り得る転がり軸受を提供することができる。
また、保持器、特に外輪案内保持器に求められる寸法安定性、冠型保持器に求められる延性の向上を図ることができる。
また、合成樹脂製シールに求められる機械的特性、耐薬品性、耐熱性の向上を図ることができる。
本発明の転がり軸受の一実施形態である深溝玉軸受を一部省略して示す概略断面図である。 図1に示す深溝玉軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器の概略斜視図である。 本発明の転がり軸受の他の実施形態であるアンギュラ玉軸受を一部省略して示す概略断面図である。 図3に示すアンギュラ玉軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器の概略斜視図である。 本発明の転がり軸受の他の実施形態である円筒ころ軸受を一部省略して示す概略断面図である。 図5に示す円筒ころ軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器の概略斜視図である。 円錐ころ軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器の概略斜視図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず何等限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
図1に示す深溝玉軸受を一実施形態として例示できる。
深溝玉軸受は、外周面に内輪軌道面1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面1aと外輪軌道面3aとの間に転動可能に組み込まれる複数個の玉(転動体)7と、複数個の玉7を円周方向に略等間隔に保持する合成樹脂製保持器9と、を含んで構成されている。
また、本実施形態では、転がり軸受の内部空間に、軸受の潤滑状態を良好に保つためグリースが配設されている。
図中符号11は、外部からの異物の侵入防止、及び潤滑のためのグリースの漏洩防止、を目的として、軸受の片面または両面に組み込まれる合成樹脂製シール(密封シール)である。
合成樹脂製保持器9は、図2に示す冠型保持器(外径47mm、内径17mm)であって、軸方向一端部に形成される円環部9fと、円環部9fの円周方向に間隔をあけて複数箇所から軸方向一方側へ突出する複数の柱部9gと、各柱部9gの先端部に設けられる一対の爪部9h,9hと、を備え、射出成形にて作製されている。円周方向に隣り合う爪部9h,9hの対向面と、これら対向面間の円環部9fの軸方向側面は、協働してポケット9iを形成し、玉7を回動自在に保持する。円環部9fに所定の等間隔で設けられた各ポケット9iには、玉7が一対の爪部9h,9hの開口側から押し込まれ、爪部9h,9hを弾性変形させて嵌め込まれる。
ところで、転がり軸受では、潤滑剤が保持器と転動体との隙間に入り込み、遠心力により外輪側へと移動する。その際、潤滑剤は保持器の内輪側の端面から入り込むため、保持器と内輪との間隔が広いほど潤滑剤が入り込みやすくなる。外輪案内型の保持器では、内輪との間隔が広いため潤滑剤が入り込みやすく、より良好な潤滑が可能となるため、各実施形態の合成樹脂製保持器9を外輪案内型とした場合に摩耗防止効果がより顕著となる。
また、図3に示すアンギュラ玉軸受(例えば、日本精工製「70BER20XDB」;内径70mm、外径110mm、幅24mm、接触角25°、2列組合せ)を一実施形態として例示できる。
アンギュラ玉軸受は、外周面に内輪軌道面1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面1aと外輪軌道面3aとの間に転動可能に組み込まれる複数個の玉(転動体)7と、複数個の玉7を円周方向に略等間隔に保持する合成樹脂製保持器9と、を含んで構成されている。
合成樹脂製保持器9は、図4に示すように、板状の円環部材9dと、円環部材9dの円周方向に略等間隔で形成され、玉7を転動可能に保持する複数個のポケット部9eと、で構成され、射出成形にて作製されている。
また、図5に示す円筒ころ軸受を一実施形態として例示できる。
円筒ころ軸受は、外周面に内輪軌道面1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面1aと外輪軌道面3aとの間に転動可能に組み込まれる複数個の円筒ころ(転動体)7と、複数個の円筒ころ7を円周方向に略等間隔に保持する合成樹脂製保持器9と、を含んで構成されている。
合成樹脂製保持器9は、図6に示すように、軸方向に互いに同軸に離間して配置される一対の円環部9a,9aと、一対の円環部9a,9aを連結すべく、円周方向に略等間隔で配置される複数の柱部9bと、円周方向に互いに隣り合う各柱部9bの間に形成され、円筒ころ7を転動可能に保持するポケット部9cを有する。
さらに、図7に示す円錐ころ軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器9も一実施形態として例示できる。
合成樹脂製保持器9は、例えば、円錐ころが収納されるポケット9jを画成する複数の柱部9kと、柱部9kをつなぐ両端の小径環状部9l及び大径環状部9mとを具備している。
「第一実施形態」
本実施形態では、図1に示す深溝玉軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器(図2)及び合成樹脂製シール(図1)を一例として説明する。
合成樹脂製保持器及び合成樹脂製シールを形成するベース樹脂としては、植物由来のセルロースを糖化技術で得られる1,5-ペンタジアミンと、同じく植物由来のひまし油から誘導されるセバシン酸の重縮合物であるポリアミド510を使用することができる。
1,5-ペンタジアミンとセバシン酸は、1:1で反応することで、ポリアミド510が合成されており、バイオ度は100%となり、環境にやさしい材料となる。
以上説明したポリアミド510は、吸水率(23℃、水中、2週間)が5.3%であり、転がり軸受の保持器に最も多く用いられているポリアミド66(23℃、水中、2週間で、8%)に対して、約66%に抑えられているので、吸水による寸法変化が小さく、寸法安定性に優れることで信頼性が高くなっている。
ポリアミド510の分子量は、ガラス繊維等の強化材含有状態で射出成形できる範囲、具体的には数平均分子量で13000~28000、より好ましくは、耐疲労性、成形性を考慮すると、数平均分子量で18000~26000の範囲である。数平均分子量が13000未満の場合は分子量が低すぎて耐疲労性が悪く、実用性が低い。それに対して数平均分子量が28000を越える場合は、ガラス繊維等の強化材の実用的な含有量15~35重量%を含ませると、溶融粘度が高くなりすぎ、保持器を精度良く射出成形で製造することが難しくなり、好ましくない。
ベース樹脂は、樹脂単独でも一定以上の耐久性を示し、保持器が接触する可能性がある相手部材(転動体及び外輪)の摩耗に対して有利に働き、保持器として十分に機能する。しかしながら、より過酷な使用条件で使用されると、保持器が破損、変形、摩耗することも想定されるため、信頼性をより高めるために、強化材を配合することが好ましい。
強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく、上記に挙げたポリアミド樹脂との接着性を考慮してシランカップリング剤等で表面処理したものが更に好ましい。また、これらの強化材は複数種を組み合わせて使用することができる。衝撃強度を考慮すると、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状物を配合することが好ましく、更に相手材の損傷を考慮するとウィスカー状物を繊維状物と組み合わせて配合することが好ましい。混合使用する場合の混合比は、繊維状物及びウィスカー状物の種類により異なり、衝撃強度や相手材の損傷等を考慮して適宜選択される。
また、ガラス繊維としては、一般的な平均繊維径である10~13μmのものの他、少ない含有量で高強度化と耐摩耗性の改善が可能な平均繊維径が5~7μmのもの、あるいは異形断面のものがより好適である。
更に、炭素繊維としては、強度を優先するのであれば、PAN系のものが好適であるが、コスト面で有利なピッチ系のものも使用可能である。平均繊維径としては、5~15μmのものが好適である。炭素繊維は、繊維自体の強度、弾性率が高いため、ガラス繊維に比べて、保持器の高強度化、高弾性率化が可能である。
アラミド繊維としては、強化性に優れるパラ系アラミド繊維を好適に使用することが可能である。平均繊維径としては、5~15μmのものが好適である。アラミド繊維は、ガラス繊維及び炭素繊維のように、鉄鋼材料を傷つけることはないので、保持器が接触する相手部材の表面状態を悪くすることがないので、軸受の音響特性等を重視する場合は、更に好適である。
これらの強化材は、全体の10~40重量%、特に15~30重量%の割合で配合することが好ましい。強化材の配合量が10重量%未満の場合には、機械的強度の改善が少なく好ましくない。強化材の配合量が40重量%を超える場合には、成形性が低下すると共に、強化材の種類によっては、相手材への傷つけ性が高くなるので好ましくない。
更に、添加剤として樹脂に、成形時及び使用時の熱による劣化を防止するために、ヨウ化物系熱安定剤やアミン系酸化防止剤を、それぞれ単独あるいは併用して添加することが好ましい。
以下に、転がり軸受の潤滑状態を良好に保つグリースについて説明する。
本実施形態に用いられるグリースは、増ちょう剤と基油とを主成分とし、基油は、本発明で用いられるポリアミド510への濡れ性を考慮して、ポリα―オレフィン油を主成分としたものであり、増ちょう剤は、アミンとイソシアネートからなるウレア化合物、Li石けん、Liコンプレックス石けん、Ba石けん、Baコンプレックス石けん等である。
これらの増ちょう剤の中で、ポリアミドに構造が類似のウレア結合を有するウレア化合物が、ポリアミド樹脂への吸着性に優れ、特に好ましい。
基油は、上記のポリα―オレフィン油の潤滑性を改善するために、ジエステル油や芳香族エステル油を混合したものであってよい。混入量は、基油全体に対して、30重量%以下である。
ポリアミド510は、転がり軸受の保持器で一般的に用いられるポリアミド66に比べて、アミド基間に、長い炭化水素鎖を有するC10(セバシン酸由来)部分が存在することで、ポリα―オレフィン油との濡れ性に優れている。
また、このグリースには、他の添加剤を加えることもできる。例えば、アミン系やフェノール系等の酸化防止剤、Caスルホネート等の防錆剤、MoDTC等の極圧添加剤、モンタン酸エステルワックス、モンタン酸エステル部分けん化ワックス、ポリエチレンワックス、オレイン酸等油性向上剤、などである。
上記のポリα―オレフィン油を基油とするグリースの外に、生分解性グリースを使用すると、より環境にやさしい転がり軸受となり、好適である。
生分解性グリースとしては、基油として、ナタネ油、ヒマシ油等の植物油か、トリメチロールプロパンエステル、ペンタエリスリトールなどの合成脂肪酸エステルのものが生分解性に優れており、使用することができる。
増ちょう剤としては、カルシウム石けん、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けんやウレア、ベントナイトを使用することができる。
生分解性グリースは、基油がエステル系のため、本発明のポリアミド510への濡れ性は良好である。
本実施形態によれば、一定レベルの耐熱性を有し、ポリアミド66に比べて低吸水なポリアミド510を、転がり軸受の保持器の樹脂材料に適用することで、様々な環境での使用が可能となった高信頼性と低コストを両立させた転がり軸受を提供することができる。
また、ポリアミド510はバイオ度が100%であることから、従来の石油由来成分のみでバイオ度が0%であったポリアミド66等に比べて、環境にやさしい転がり軸受とすることとすることができる。
同じポリアミド510で、転がり軸受の端面の合成樹脂製シールに用いると、更に環境にやさしい転がり軸受とすることができる。
更に、アミド基間に長鎖炭化水素部分を有するC10部分(セバシン酸由来)があることで、分子構造が近いポリα―オレフィン油を主成分とする基油からなるグリースの適用することで、樹脂材料への濡れ性が良好に保たれ、樹脂部の摩耗を効果的に防止し、転がり軸受の長寿命化が可能となる。
また、グリースを生分解性グリースとすると、更に環境にやさしい転がり軸受とすることができる。
「本実施の態様」
[保持器の作製]
表1に示すポリアミド樹脂、及び強化材を配合して樹脂組成物(樹脂ペレット)を調製することができる。
各樹脂ペレットを用いて、深溝玉軸受用の合成樹脂製保持器(図2、外径47mm、内径17mm)と、合成樹脂製シール(図1)を、射出成形により作製できる。
また、同じ樹脂ペレットを用いて、アンギュラ玉軸受(日本精工製「70BER20XDB」;内径70mm、外径110mm、幅24mm、接触角25°、2列組合せ)用保持器(図3及び図4参照)を、射出成形により作製できる。
Figure 2022069965000002
・実施の態様の例のベース樹脂は、Cathay製Terry1510(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
・比較例1は、表1に示す組成のGF30質量%含有ポリアミド66樹脂[宇部興産製ナイロン2020GU6(Cu系熱安定剤含有;数平均分子量20000)]
・比較例2は、表1に示す組成のPAN系CF30質量%含有L-PPS樹脂[ポリプラスチックス製フォートロン2130A1]
これらの評価は以下により確認できる。
[寸法安定性の評価]
各保持器を、下記条件Iまたは条件IIの下に放置し、所定時間経過後に保持器外径寸法の変化量を測定する。何れの条件においても、変化量が50μm以下を合格「○」、50μmを越えるものを不合格「×」として評価する。
・条件I:60℃、90%RH、70hr
・条件II:80℃、90%RH、70hr
[耐久性評価]
各試験体を実際のスピンドルユニットに組み込み、下記条件I~IIIにて操舵操作を繰返し行う。
何れの条件においても、1000hrの軸受の連続運転ができた場合を合格「○」、1000hrの連続運転ができなかったものを不合格「×」として評価する。
尚、内部空間に、充填するグリースは、ポリαオレフィン油(100℃で5.7mm2/S)を基油とし、脂肪族ジウレア化合物を増ちょう剤(増ちょう剤量:13重量%)に、各種添加剤を配合されたちょう度No.2のものとすることができる。添加剤としては、極圧添加剤、酸化防止剤、防錆剤が通常量含有しているものとする。
尚、試験軸受の組み込み時予圧荷重は、1500N、試験回転数は10000min-1とし、グリース充填量は、樹脂材料による差異を見るために、通常より少ない軸受空間容積の7%とするとよい。
・条件I:30℃、50%RH
・条件II:50℃、90%RH
・条件III:80℃、50%RH
[組み込み試験結果]
図2に示す冠型保持器(実施例、比較例1、2)について、自動組み込み試験機を用いて、組み込み試験を実施し、試験後、保持器爪部の白化・割れ・変形を確認することができる。
各組成でn=10で行い、1個でも異常が見られた場合は×、異常が無かった場合を〇として、評価できる。
「第二実施形態」
本発明の転がり軸受に組み込まれる合成樹脂製保持器及び合成樹脂製シールとして次の材質からなるものも採用可能である。
合成樹脂製保持器9は、第一実施形態と同じく図2に示す冠型保持器とする。合成樹脂製シールは、第一実施形態と同じく図1に示すシールとする。
合成樹脂製保持器及び合成樹脂製シールを形成するベース樹脂としては、植物由来のセルロースを糖化技術で得られる1,5-ペンタジアミンと、石油由来のアジピン酸の重縮合物であるポリアミド56を使用することができる。
1,5-ペンタジアミンとアジピン酸は、1:1で反応することで、ポリアミド56が合成されており、バイオ度は50%となり、環境にやさしい材料となる。
以上説明したポリアミド56の吸水率は、ポリアミド66に若干高い程度であり、吸水による寸法変化に大きな差異はない。
以上説明したポリアミド56の分子量は、ガラス繊維等の強化材含有状態で射出成形できる範囲、具体的には数平均分子量で13000~28000、より好ましくは、耐疲労性、成形性を考慮すると、数平均分子量で18000~26000の範囲である。数平均分子量が13000未満の場合は分子量が低すぎて耐疲労性が悪く、実用性が低い。それに対して数平均分子量が28000を越える場合は、ガラス繊維等の強化材の実用的な含有量15~35重量%を含ませると、溶融粘度が高くなりすぎ、保持器を精度良く射出成形で製造することが難しくなり、好ましくない。
上記のベース樹脂は、樹脂単独でも一定以上の耐久性を示し、保持器として十分に機能する。しかしながら、より過酷な使用条件で使用されると、保持器が破損、変形、摩耗することも想定されるため、信頼性をより高めるために、強化材を配合することが好ましい。
強化材としては、第一実施形態にて説明した強化材が採用可能で、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく、上記に挙げたポリアミド樹脂との接着性を考慮してシランカップリング剤等で表面処理したものが更に好ましい。
また、成形時及び使用時の熱による劣化を防止するために、ヨウ化物系熱安定剤やアミン系酸化防止剤などを、添加剤としてそれぞれ単独あるいは併用してベース樹脂に添加することが好ましい。
詳細な説明は段落0036~0037の記載を援用する。
本実施形態に用いられるグリースは、特に限定はされないが、生分解性グリースを使用すると、より環境にやさしい転がり軸受となり、好適である。
生分解性グリースとしては、基油として、ナタネ油、ヒマシ油等の植物油か、トリメチロールプロパンエステル、ペンタエリスリトールなどの合成脂肪酸エステルのものが生分解性に優れており、使用することができる。
増ちょう剤としては、カルシウム石けん、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けんやウレア、ベントナイトを使用することができる。
生分解性グリースは、基油がエステル系のため、本発明のポリアミド56への濡れ性は良好である。
また、このグリースには、他の添加剤を加えることもできる。例えば、アミン系やフェノール系等の酸化防止剤、Caスルホネート等の防錆剤、MoDTC等の極圧添加剤、モンタン酸エステルワックス、モンタン酸エステル部分けん化ワックス、ポリエチレンワックス、オレイン酸等油性向上剤、などである。
本実施形態によれば、一定レベルの耐熱性を有し、ポリアミド66と同等の吸水性を有するポリアミド56を、転がり軸受の保持器の樹脂材料に適用することで、様々な環境での使用が可能となった高信頼性と低コストを両立させた転がり軸受を提供することができる。
また、ポリアミド56はバイオ度が50%であることから、従来の石油由来成分のみでバイオ度が0%であったポリアミド66等に比べて、環境にやさしい転がり軸受とすることとすることができる。
同じポリアミド56で、転がり軸受の端面のシールに用いると、更に環境にやさしい転がり軸受とすることができる。
また、グリースを生分解性グリースとすると、更に環境にやさしい転がり軸受とすることができる。
同じポリアミド56で、転がり軸受の端面の合成樹脂製シールに用いると、更に環境にやさしい転がり軸受とすることができる。
「本実施の態様」
[保持器の作製]
表2に示すポリアミド樹脂、及び強化材を配合して樹脂組成物(樹脂ペレット)を調製することができる。各樹脂ペレットを用いて、深溝玉軸受用保持器(図2、外径47mm、内径17mm)とシール(図1)を射出成形により、作製できる。
Figure 2022069965000003
・実施の態様の例のベース樹脂は、Cathay製Terry156(熱安定剤含有グレード、平均分子量不明)
・比較例1は、表1に示す組成のGF30質量%含有ポリアミド66樹脂[宇部興産製ナイロン2020GU6(Cu系熱安定剤含有;数平均分子量20000)]
・比較例2は、表1に示す組成のPAN系CF30質量%含有L-PPS樹脂[ポリプラスチックス製フォートロン2130A1]
これらの評価は以下により確認できる。
[寸法安定性の評価]
各保持器を、下記条件Iの下に放置し、所定時間経過後に保持器外径寸法の変化量を測定する。条件Iにおいて、変化量が50μm以下を合格「○」、50μmを越えるものを不合格「×」として評価する。
・条件I:60℃、90%RH、70hr
[耐久性評価]
各試験体を軸受耐久試験機に組み込み、下記条件I~IIにて操舵操作を繰返し行う。
何れの条件においても、1000hrの軸受の連続運転ができた場合を合格「○」、1000hrの連続運転ができなかったものを不合格「×」として評価する。
尚、内部空間に充填するグリースは、日本精工製生分解性グリース「エクセラグリーンNS7グリース」(基油:ポリオールエステル+ジエステル;基油動粘度40℃で26mm2/S、増ちょう剤:リチウム石けん)。
尚、試験荷重は、ラジアル荷重で1500N、試験回転数は10000min-1とし、グリース充填量は、樹脂材料による差異を見るために、通常より少ない軸受空間容積の7%とするとよい。
・条件I:30℃、50%RH
・条件II:80℃、50%RH
[組み込み試験結果]
図2に示す冠型保持器(実施例、比較例1、2)について、自動組み込み試験機を用いて組み込み試験を実施し、試験後保持器爪部の白化・割れ・変形を確認することができる。
各組成でn=10で行い、1個でも異常が見られた場合は×、異常が無かった場合を〇として、評価できる。
「第三実施形態」
本発明の転がり軸受に組み込まれる合成樹脂製シールとして次の材料からなるものも採用可能である。
合成樹脂製シールは、第一実施形態と同じく図1に示すシールとする。
合成樹脂製シールを形成するベース樹脂としては、石油由来のヘキサメチレジアミン(1,6-ジアミノヘキサン;1,6-ヘキサンジアミン)と、植物由来のひまし油から誘導されるセバシン酸の重縮合物であるポリアミド610を使用することができる。
ポリアミド610は、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸を1:1で反応することで合成されており、バイオ度が60%の環境に優しい材料となる。
以上説明したポリアミド610は、平衡吸水率(23℃60%RH)が1.5%であり,転がり軸受の保持器に最も用いられているポリアミド66(平衡吸水率2.5%)に対して、約60%に抑えられているため、吸水による寸法変化が小さく、寸法安定性に優れていることで信頼性が高くなっている。
ポリアミド610の分子量は、ガラス繊維等の強化剤含有状態で射出成型できる範囲、具体的には数平均分子量13000-28000、より好ましくは、耐疲労性、成形性を考慮すると、数平均分子量18000-26000の範囲である。
数平均分子量が13000未満の場合は分子量が低すぎて耐疲労性が悪く、実用性が低い。それに対して、数平均分子量が28000を超える場合は、ガラス繊維等の強化剤の実用的な含有量15-35重量%を含ませると、溶融粘度が高くなりすぎ、精度良い合成樹脂製シールを射出成形で製造することが難しくなる。
上記のベース樹脂は樹脂単独でも一定の耐久性を示し、合成樹脂製シールが接触する可能性がある相手部材(外輪及び内輪)の摩耗に対して有利に働き、合成樹脂製シールとして十分に機能する。
しかしながら、より過酷な条件下で使用されると、合成樹脂製シールが破損、変形、摩耗することも想定されるため、信頼性をより高めるために強化剤を配合することが望ましい。
強化材としては、第一実施形態にて説明した強化材が採用可能で、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく、上記に挙げたポリアミド樹脂との接着性を考慮してシランカップリング剤等で表面処理したものが更に好ましい。
また、成形時及び使用時の熱による劣化を防止するために、ヨウ化物系熱安定剤やアミン系酸化防止剤などを、添加剤としてそれぞれ単独あるいは併用してベース樹脂に添加することが好ましい。
詳細な説明は段落0036~0037の記載を援用する。
本実施形態に用いられるグリースは、増ちょう剤と碁油を主成分とし、碁油は本発明で用いられるポリアミド610への濡れ性を考慮して、ポリα-オレフィン油を主成分としたものであり、増ちょう剤はアミンとイソシアネートからなるウレア化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、バリウム石けん、バリウムコンプレックス石けん等である。これらの増ちょう剤の中で、ポリアミドに構造が類似のウレア結合を有するウレア化合物が、ポリアミド樹脂への吸着性に優れ、特に好ましい。碁油は、上記のポリα-オレフィン油の潤滑性を改善するために、ジエステル油や芳香族エステル油を混合したものであってよい。混合量は、碁油全体に対して30重量%以下である。
ポリアミド610は、転がり軸受の保持器に一般的に用いられるポリアミド66に比べて、アミド間に長い炭化水素鎖を有するC10(セバシン酸由来)部分が存在することで、ポリα-オレフィン油との濡れ性に優れている。
また、このグリースには他の添加剤を加えることもできる。例えば、アミン系やフェノール系等の酸化防止剤、Caスルホネート等の防錆材、MoDTC等の極圧添加剤、モンタン酸エステルワックス、モンタン酸エステル部分かん化ワックス、ポリエチレンワックス、オレイン酸等油性向上剤などである。
上記のポリα-オレフィン油を基油とするグリースの他に、生分解性グリースを使用すると、より環境にやさしい転がり軸受となる。
生分解性グリースとしては、基油としてナタネ油、ひまし油等の植物油か、トリメチロールプロパンエステル、ペンタエリスリトール等の合成脂肪酸エステルを使用したものが生分解性に優れている。
増ちょう剤としては、カルシウム石けん、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、ウレア、ベントナイトを使用することができる。
生分解グリースは、基油がエステル系のため、本発明のポリアミド610への濡れ性は良好である。
本実施形態によれば、一定レベルの耐熱性を有し、ポリアミド66に比べて低吸水なポリアミド610を転がり軸受の合成樹脂製シールの樹脂材料に適用することで、様々な環境での使用が可能となった高信頼性と低コストを両立した転がり軸受を提供することができる。
また、ポリアミド610はバイオ度が60%であることから、従来の石油由来成分のみのバイオ度が0%であったポリアミド66等に比べて、環境にやさしい転がり軸受とすることができる。
更に、アミド基間に長鎖炭化水素部分を有するC10部分(セバシン酸由来)があるため、分子構造が近いポリα-オレフィン油を主成分とする基油からなるグリースを適用することで、樹脂材料への濡れ性が良好に保たれ、樹脂部の摩耗を効果的に防止し、転がり軸受の長寿命化が可能となる。
同じポリアミド610で、転がり軸受の合成樹脂製保持器に用いると、更に環境にやさしい転がり軸受とすることができる。
「本実施の態様」
[合成樹脂製シールの作製]
表1に示すポリアミド樹脂に強化材を配合して樹脂組成物(樹脂ペレット)を調整することができる。
各樹脂ペレットを用いて、アンギュラ玉軸受(日本精工「70BER20XDB」;内径70mm、外径110mm、幅24mm、接触角25°、2列組み合わせ)用の合成樹脂製シールを射出成形により作製できる。
また、同じ樹脂ペレットを用いて、深溝玉軸受用の合成樹脂製シールを射出成形により作製できる。
Figure 2022069965000004
・実施の態様の例のベース樹脂は、ダイセルエボニック製ベスタミド テラ HS22(熱安定剤含有グレード、数平均分子量不明)。
・比較例1は、表1に示す組成のGF30重量%含有ポリアミド66樹脂[宇部興産製ナイロン2020GU6(Cu系熱安定剤含有;数平均分子量20000)]。
・比較例2は、表1に示す組成のPAN系CF30重量%含有L-PPS樹脂[ポリプラスチック製フォートロン2130A1]。
これらの評価は以下により確認できる。
[寸法安定性の評価]
各合成樹脂製シールを、下記条件Iまたは条件IIの下で放置し、所定時間経過後に合成樹脂製シール外見寸法の変化量を測定する。
何れの条件においても、変化量が50μm以下を合格「〇」、50μmを超えるものを不合格「×」として評価する。
・条件I:60℃、90%RH、70hr
・条件II:80℃、90%RH、100hr
[耐久性評価]
各試験体を実際のスピンドルユニットに組み込み、下記条件I~IIIにて操舵操作を繰り返し行う。
何れの条件においても、1000hrの軸受の連続運転ができた場合を合格「〇」、1000hrの連続運転ができなかったものを不合格「×」として評価する。
なお、内部空間に充填するグリースは、ポリα-オレフィン油(100℃で5.7mm/S)を基油とし、脂肪族ジウレア化合物を増ちょう剤(増ちょう剤量:13重量%)に、各種添加剤を配合したちょう度No.2のものとすることができる。
添加剤としては、極圧添加剤、酸化防止剤、防錆剤が通常量含有しているものとする。
なお、試験軸受の組み込み時予圧荷重は1500N、試験回転数は10000min-1とし、グリース充填量は、樹脂材料による差異を見るために通常より少ない軸受空間容積の7%とするとよい。
・条件I:30℃、50%RH
・条件II:50℃、90%RH
・条件III:80℃、50%RH
本発明は、合成樹脂製保持器、合成樹脂製シール及びグリースを含む他の転がり軸受にも利用可能である。
1 内輪
3 外輪
5 環状隙間
7 転動体
9 保持器
11 合成樹脂製シール

Claims (9)

  1. 少なくとも内輪、外輪、合成樹脂製保持器及び転動体からなる転がり軸受において、
    前記合成樹脂製保持器を、ポリアミド510と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成したことを特徴とする転がり軸受。
  2. 少なくとも内輪、外輪、合成樹脂製保持器及び転動体からなる転がり軸受において、
    前記合成樹脂製保持器を、ポリアミド56と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成したことを特徴とする転がり軸受。
  3. 少なくとも内輪、外輪、保持器、転動体及び合成樹脂製シールからなる転がり軸受において、
    前記合成樹脂製シールを、ポリアミド610と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成したことを特徴とする転がり軸受。
  4. ポリアミド510と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成した合成樹脂製シールを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  5. ポリアミド56と、含有量10~40重量%とした強化材と、からなるポリアミド樹脂組成物で形成した合成樹脂製シールを備えてなることを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受。
  6. 前記転がり軸受が外輪案内であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  7. 前記保持器が爪部を有する冠型保持器であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の転がり軸受。
  8. 前記転がり軸受の内部空間にはグリースが充填され、
    前記グリースの基油の主成分をポリα―オレフィン油としたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の転がり軸受。
  9. 前記転がり軸受の内部空間にはグリースが充填され、
    前記グリースを生分解性グリースとしたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の転がり軸受。
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