JP2023178538A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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勇輝 西野
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Abstract

【課題】保存安定性が良好であり、かつ、粒状性が低減されるとともに耐擦過性が良好な画像を記録することが可能な水性インクを提供する。【解決手段】顔料、アニオン性基を有する樹脂、及び第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンを含有するインクジェット用の水性インクである。この水性インクは、インク1g当たりに換算した前記分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g)が、インク1g当たりに換算した前記アニオン性基を有する樹脂のアニオン性基の量(mmol/g)に対するモル比率で、0.05倍以上30.00倍以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、光沢紙などの記録媒体に高速で鮮明に記録するためにインクジェット記録方法が利用されており、その利用頻度が格段に高まってきている。インクジェット記録方法に用いる水性インクとしては、色材として顔料を含有するインク(以下、顔料インクと記載することがある。)、及び色材として染料を含有するインク(以下、染料インクと記載することがある。)がある。顔料インクを用いてインクジェット記録方法により記録される画像は耐水性や耐光性に優れるが、顔料が光沢紙などの表面に粒子として付着した状態になることから耐擦過性が十分ではないことが知られている。
これまでにも、顔料インクについて、画像の耐擦過性を高めるための種々の検討がなされている。例えば、特許文献1では、特定の構造を有する界面活性剤、及び特定の酸価のアニオン性基を有する樹脂を含有する顔料インクが提案されている。また、特許文献2では、顔料、アニオン性基を有する樹脂、及び特定の重量平均分子量を有するポリエチレンイミンを含有する顔料インクが提案されている。
特開2009-007556号公報 特開平10-060352号公報
特許文献1に開示された技術によって、画像の耐擦過性を改良することができる。しかし、画像にはインクのドットが確認され、画像の粒状性に改善の余地が残されていることがわかった。また、特許文献2に開示された技術によって、OHPシートなどのフィルムに記録する画像の耐擦過性を向上させることができる。しかし、光沢紙などの記録媒体に画像を記録する場合においては、画像の耐擦過性を向上させる十分な効果は発現しないことがわかった。
本発明者らの検討の結果、特許文献1及び2で提案されたインクでは、粒状性及び耐擦過性の両立が必要であることが判明した。また、特許文献2で提案されたインクでは、保存安定性にさらなる改良の余地があることもわかった。
したがって、本発明の目的は、保存安定性が良好であり、かつ、粒状性が低減されるとともに耐擦過性が良好な画像を記録することが可能な水性インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、顔料、アニオン性基を有する樹脂、及び第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンを含有するインクジェット用の水性インクであって、インク1g当たりに換算した前記分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g)が、インク1g当たりに換算した前記アニオン性基を有する樹脂のアニオン性基の量(mmol/g)に対するモル比率で、0.05倍以上30.00倍以下であることを特徴とする水性インクが提供される。
本発明によれば、保存安定性が良好であり、かつ、粒状性が低減されるとともに耐擦過性が良好な画像を記録することが可能な水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
インクジェット記録に用いる光沢紙などのコート層を有する記録媒体の表面にはインク受容層が形成されている。インク受容層には、インクの吸収性が高い多孔質構造を形成することができる、アルミナ水和物、アルミナ、及びシリカなどの無機粒子が用いられている。インク受容層は、アルミナ水和物及びアルミナなどが持つ酸性から中性領域におけるプラス電位により、又はシリカなどの分散に用いるカチオン性樹脂により、カチオン性を示す。光沢紙に、アニオン性基を有する樹脂を含有する顔料インクを付与すると、インク受容層のカチオン性成分とアニオン性基を有する樹脂のイオン反応が生じる。これにより、インク中の顔料とアニオン性基を有する樹脂がインク受容層の表面にしっかりと定着することで、記録される画像に耐擦過性が発現する。一方で、従来技術においては、インク受容層の表面においてアニオン性基を有する樹脂が目詰まりを起こすことでインクの吸収速度が低下し、粒状性が目立つ技術課題が発生していた。
本発明者らは、上記従来技術で発生していた技術課題を解決するために、アニオン性基を有する樹脂を含有する顔料インクについて、その一部をカチオン化しうる材料の種類及びその使用量を検討した。その結果、以下のインクジェット用の水性インクを用いることによって、上述した技術課題を解決でき、粒状性及び耐擦過性の両立が可能であることを見出した。すなわち、その水性インクは、顔料、アニオン性基を有する樹脂、及び第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンを含有する。このインク1g当たりに換算した分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g)は、インク1g当たりに換算したアニオン性基を有する樹脂のアニオン性基の量(mmol/g)に対するモル比率で、0.05倍以上30.00倍以下である。
上記構成のインクを用いることによって、粒状性が低減されるとともに、耐擦過性が良好な画像を記録することが可能であり、また、保存安定性を高めることが可能である。画像の粒状性及び耐擦過性、並びにインクの保存安定性が向上するメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。
アニオン性基を有する樹脂と第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンを含有するインクは、樹脂が持つアニオン性基と、プロトン化によりカチオン性を示す分岐鎖状ポリエチレンイミン中の窒素原子とがイオン結合する。そのため、分子間で架橋構造を形成する。通常、アニオン性の樹脂とカチオン性の樹脂を混合すると凝集作用を起こす。しかし、分岐鎖状ポリエチレンイミンは、立体障害の少ない第1級及び第2級のアミノ窒素によるアニオン性基を有する樹脂への高い反応性と、第3級のアミノ窒素が持つ立体障害作用により、分子同士の反発が生じることで、凝集が抑制されると推測される。また、アニオン性基を有する樹脂と、第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンとが顔料インク中に共存する。そのため、記録媒体に記録した際にインク受容層の表面に顔料とともに定着するアニオン性基を有する樹脂成分と、インク受容層に浸透するカチオン性樹脂成分の両方の機能をもつ効果が得られ、粒状性及び耐擦過性の両立が可能となると推測される。
さらに、アニオン性基を有する樹脂と第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンが、顔料と共存すると、顔料の粒子表面の近傍に架橋構造、立体障害に基づく樹脂層が形成されるため、インクの保存安定性が向上すると推測される。
<水性インク>
以下、インクを構成する各成分について、それぞれ説明する。
(顔料)
インクは顔料を含有する。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の種類は特に限定されない。顔料の具体例としては、カーボンブラック、及び酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、及びジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。インクには、1種又は2種以上の顔料を含有させることができる。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂(樹脂分散剤)を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。
顔料の分散方式は特に限定されるものではないが、なかでも樹脂分散剤によって顔料を分散させる樹脂分散顔料が好ましい。樹脂分散剤としては、アニオン性基などの親水性基の作用によって顔料を液媒体中に分散させる、親水性基を有する樹脂を用いることが好ましい。さらには、アニオン性基を有する樹脂を、顔料を分散させるための樹脂分散剤として用いた樹脂分散顔料が好ましい。このような樹脂分散顔料は、インク中において顔料の粒子表面が露出した部分が存在し、分岐鎖状ポリエチレンイミンが顔料の粒子表面に接近して存在しやすいため、アニオン性基を有する樹脂とより結合しやすく、優れた粒状性及び耐擦過性が得られやすい。
(アニオン性基を有する樹脂)
インクは、アニオン性基を有する樹脂を含有する。本明細書において、「アニオン性基」とは、プロトン解離によりアニオン性になる酸性の官能基を指す。アニオン性基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基などを挙げることができる。なかでも、カルボン酸基が好ましい。
アニオン性基を有する樹脂は、上述の通り、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに含有させることができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに含有させることができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。
アニオン性基を有する樹脂は、水溶性の樹脂であることが好ましい。本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されなければ、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、とすることができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
アニオン性基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、8000以上60000以下であることが好ましい。アニオン性基を有する樹脂の重量平均分子量が8000以上であることにより、画像の耐擦過性がより高まりやすい。一方、アニオン性基を有する樹脂の重量平均分子量が60000以下であることにより、インクの粘度上昇を抑えやすく、吐出安定性が高まりやすい。本明細書において、「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算の値である。
アニオン性基を有する樹脂の酸価(mgKOH/g)は、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。アニオン性基を有する樹脂の酸価が80mgKOH/g以上であることにより、インク受容層へのイオン反応性が適度に高まり、耐擦過性をより高めやすくなる。一方、アニオン性基を有する樹脂の酸価が150mgKOH/g以下であることにより、インク受容層へのイオン反応性が適度に抑えられ、粒状性をより低減しやすくなるとともに、インクの保存安定性をより高めやすくなる。アニオン性基を有する樹脂を2種以上用いる場合、少なくとも1種の樹脂の酸価が上記の範囲内であることが好ましく、それぞれの樹脂の酸価が上記の範囲内であることがさらに好ましい。アニオン性基を有する樹脂の酸価(mgKOH/g)は、水酸化カリウムエタノール滴定液を用いて電位差滴定法により測定することができる。アニオン性基を有する樹脂の酸価(mgKOH/g)は、アニオン性基を有する樹脂1gを中和するのに必要となる水酸化カリウム(KOH)の量(mg)で表される。
インク1g当たりに換算したアニオン性基を有する樹脂のアニオン性基の量(mmol/g)は、カチオン性基の量との関係のモル比率の範囲において、0.040mmol/g以上0.150mmol/g以下であることが好ましい。インク1g当たりに換算した上記アニオン性基の量(mmol/g)は、0.050mmol/g以上0.100mmol/g以下であることがさらに好ましい。
インク1g当たりに換算したアニオン性基を有する樹脂のアニオン性基の量(mmol/g)は、アニオン性基を有する樹脂1g当たりのアニオン性基の量(mmol/g)に、インク全質量を基準とした当該樹脂の含有量を乗じて求められる。インクに、アニオン性基を有する樹脂を2種以上含有させる場合、インク1g当たりに換算した上記アニオン性基の量(mmol/g)は、各樹脂についてのインク1g当たりに換算したアニオン性基の量(mmol/g)の合計を意味する。また、上記の「アニオン性基を有する樹脂1g当たりのアニオン性基の量(mmol/g)」は、アニオン性基を有する樹脂の上述した酸価(mgKOH/g)から、下記式(A)に基づいて求めることができる。
アニオン性基を有する樹脂1g当たりのアニオン性基の量(mmol/g)=酸価(mgKOH/g)/56.11(水酸化カリウムの分子量) ・・・(A)
アニオン性基を有する樹脂の樹脂種としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂が好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。アクリル系樹脂は、水溶性であることが好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味する。
親水性ユニットは、酸基、ヒドロキシ基、エチレンオキサイド基などの親水性基を有する単量体を重合することで形成されるユニットである。親水性基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性単量体;(メタ)アクリル酸-2-ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有する酸性単量体;これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有する単量体;メトキシ(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエチレンオキサイド基を有する単量体などを挙げることができる。アニオン性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。アニオン性基の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのカチオンを挙げることができる。
疎水性ユニットは、酸基、ヒドロキシ基、エチレンオキサイド基などの親水性基を有しない単量体を重合することで形成されるユニットである。親水性基を有しない単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する単量体;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(n-、iso-)プロピル(メタ)アクリレート、(n-、iso-、t-)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有する単量体などを挙げることができる。
画像の耐擦過性をより高められる観点から、アニオン性基を有する樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットを有する樹脂を含むことが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来するユニットを有するアクリル系樹脂がより好ましく、(メタ)アクリル酸に由来するユニットと、n-ブチルアクリレート及びスチレンのいずれか一方又は両方に由来するユニットを有する樹脂がさらに好ましい。さらには、アニオン性基を有する樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットを有する樹脂、及びウレタン系樹脂の両方を含むことが特に好ましい。
ウレタン系樹脂としては、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、及びポリアミンのそれぞれに由来するユニットを有するものを用いることが好ましい。ウレタン系樹脂は、水溶性であることが好ましい。ウレタン系樹脂は、主鎖骨格中にウレタン結合に起因する分極箇所を多く有する表面エネルギーの高い材料である。そのため、ウレタン系樹脂を含有するインクを用いると、記録される画像の表面エネルギーを高くすることができる。それにより、次に付与されるインクの濡れ性が向上し、画像の粒状性が向上する。したがって、アニオン性基を有する樹脂として、ウレタン系樹脂と、ウレタン系樹脂以外のアニオン性基を有する樹脂とを用いることが好ましい。ウレタン系樹脂以外のアニオン性基を有する樹脂と第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンを含有するインクにウレタン系樹脂を添加すると、ウレタン系樹脂とアニオン性基を有する樹脂との間で水素結合が形成されやすく、強い相互作用を示す。記録媒体にインクが付与された後にも相互作用によってウレタン系樹脂とアニオン性基を有する樹脂と顔料が互いに近づいて存在するため、顔料の粒子表面の近傍にアニオン性基を有する樹脂とウレタン系樹脂が存在し、画像の耐擦過性を向上できると考えられる。
さらに、ウレタン系樹脂及びアニオン性基を有する樹脂のアニオン性基と、第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンとがイオン反応することで、分子間で架橋構造を形成し、さらに立体障害作用によってインクの保存安定性がより高まる。
インク中のアニオン性基を有する樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。
(分岐鎖状ポリエチレンイミン)
インクは、第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミン(本明細書において、単に「分岐鎖状ポリエチレンイミン」と記載することがある。)を含有する。分岐鎖状ポリエチレンイミンの1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
ポリエチレンイミンは、-CHCH-N<で表されるエチレンイミン構造を繰り返し単位とする樹脂である。分岐鎖状ポリエチレンイミンは、第1級、第2級、及び第3級のアミノ窒素を含み、ランダムな枝分かれ構造を有するものである。一方、直鎖状ポリエチレンイミンは、両末端以外は第2級のアミノ窒素を有するエチレンイミン構造を有するものであって、第3級のアミノ窒素を含まない。また、中和処理した塩型の分岐鎖状ポリエチレンイミンは、カチオン性が強くなり、顔料やアニオン性基を有する樹脂の凝集を起こすことがあるため、本発明では、第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンを用いる。
第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンの重量平均分子量(Mw)は、500以上100000以下であることが好ましい。さらに、インクの保存安定性をより高めることができることから、分岐鎖状ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、600以上70000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量がこの範囲内であることで、画像の耐擦過性をより高めることができる。
第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g)、すなわち、分岐鎖状ポリエチレンイミン1g当たりのカチオン性基の量(mmol/g)は、15mmol/g以上25mmol/g以下であることが好ましい。分岐鎖状ポリエチレンイミン1g当たりのカチオン性基の量(mmol/g)は、18mmol/g以上22mmol/g以下であることがさらに好ましい。上記カチオン性基の量(mmol/g(分岐鎖状ポリエチレンイミン))が18mmol/g以上であることにより、粒状性がより低減された画像を記録することが可能となる。一方、上記カチオン性基の量(mmol/g(分岐鎖状ポリエチレンイミン))が22mmol/g以下であることにより、インクの保存安定性がより良好となる。分岐鎖状ポリエチレンイミンを2種以上用いる場合、それぞれの分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g(分岐鎖状ポリエチレンイミン))が上記の範囲内であることが好ましい。分岐鎖状ポリエチレンイミン1g当たりのカチオン性基の量は、分岐鎖状ポリエチレンイミンの固形分としての1g当たりのカチオン性基の量である。
分岐鎖状ポリエチレンイミン1g当たりのカチオン性基の量(mmol/g)は、分岐鎖状ポリエチレンイミンのアミン価から求めることができる。アミン価とは樹脂1g中のアミノ基のミリモル数(mmol)を指す。ポリエチレンイミンのアミン価は、ポリエチレンイミンのメタノール溶液について、0.5mol/Lのp-トルエンスルホン酸標準溶液を用いた電位差滴定により算出することができる。
インク1g当たりに換算した分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g)は、インク1g当たりに換算したアニオン性基を有する樹脂のアニオン性基の量(mmol/g)に対するモル比率で、0.05倍以上30.00倍以下である。記録される画像の粒状性をより低減しやすくなるとともに、インクの保存安定性をより高めやすくなることから、上記モル比率は、0.50倍以上15.00倍以下であることがさらに好ましく、0.50倍以上2.50倍以下であることが特に好ましい。
インク1g当たりに換算した分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g)は、上記のモル比率の範囲において、0.001mmol/g以上1.550mmol/g以下であることが好ましい。インク1g当たりに換算した上記カチオン性基の量(mmol/g)は、0.030mmol/g以上1.000mmol/g以下であることがさらに好ましい。
インク1g当たりに換算した分岐鎖状ポリエチレンイミン(PEI)のカチオン性基の量(mmol/g)は、当該PEI1g当たりのカチオン性基の量(mmol/g)に、インク全質量を基準とした当該PEIの含有量を乗じて求められる。インクに、分岐鎖状ポリエチレンイミンを2種以上含有させる場合、インク1g当たりに換算した上記カチオン性基の量(mmol/g)は、各PEIについてのインク1g当たりに換算したカチオン性基の量(mmol/g)の合計を意味する。
第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンとしては、市販品や合成品を用いることができる。分岐鎖状ポリエチレンイミンの市販品としては、例えば、日本触媒製の商品名「エポミン(登録商標)」シリーズ、及びSigma-Aldrich製の分岐型のポリエチレンイミンなどを挙げることができる。合成品としては、公知の重合方法により得られた分岐鎖状ポリエチレンイミンを挙げることができる。例えば、アジリジン(慣用名:エチレンイミン)を、二酸化炭素、塩酸、臭化水素酸などを触媒として開環重合させることで、分岐鎖状ポリエチレンイミンを得ることができる。
インク中の、第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。分岐鎖状ポリエチレンイミンの上記含有量(質量%)は、0.10質量%以上7.00質量%以下であることがより好ましく、0.10質量%以上5.00質量%以下であることがさらに好ましい。
(水性媒体)
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上45.00質量%以下であることが好ましい。
(その他の添加剤)
インクには、上記成分の他に、必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素及びその誘導体などの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、インクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂などの種々の添加剤を含有させてもよい。
(インクの物性)
インクの温度25℃における粘度(mPa・s)は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがより好ましい。また、インクの温度25℃における表面張力(mN/m)は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがより好ましい。さらに、インクの温度25℃におけるpHは、5.0以上10.0以下であることが好ましく、7.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明の水性インクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。記録媒体32としては、表面に光沢を有する光沢紙を用いることが好ましい。勿論、本発明のインクを記録する対象としての記録媒体は光沢紙に限られず、マット紙などの光沢を有しない記録媒体、普通紙などのコート層を有しない記録媒体なども用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
顔料(カーボンブラック)10.0部、樹脂分散剤として水溶性樹脂3.0部、及び水87.0部を混合して混合物を得た。水溶性樹脂としては、アニオン性基を有する樹脂であって、酸価120mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン-アクリル酸共重合体を、10.0%水酸化カリウム水溶液で中和したものを用いた。サンドグラインダーを用いて混合物を1時間分散した後、遠心分離して不純物を除去し、さらにポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した。次いで、顔料の濃度を調整して顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1には、水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料分散液1中の顔料の含有量は10.00%、樹脂分散剤(アニオン性基を有する樹脂)の含有量は3.00%であった。
(顔料分散液2)
顔料をC.I.ピグメントブルー15:3に変えたこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして顔料分散液2を得た。顔料分散液2には、水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料分散液2中の顔料の含有量は10.00%、樹脂分散剤(アニオン性基を有する樹脂)の含有量は3.00%であった。
(顔料分散液3)
顔料をC.I.ピグメントレッド122に変えたこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして顔料分散液3を得た。顔料分散液3には、水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料分散液3中の顔料の含有量は10.00%、樹脂分散剤(アニオン性基を有する樹脂)の含有量は3.00%であった。
(顔料分散液4)
顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変えたこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして顔料分散液4を得た。顔料分散液4には、水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料分散液4中の顔料の含有量は10.00%、樹脂分散剤(アニオン性基を有する樹脂)の含有量は3.00%であった。
(顔料分散液5)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かして得た溶液を5℃に冷却した状態とし、この状態で4-アミノフタル酸1.5gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、撹拌して溶液の温度を10℃以下に保持しながら、5℃のイオン交換水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(BET比表面積160m/g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。イオン交換法によりカウンターイオンをナトリウムイオンからカリウムイオンに置換した後、適量のイオン交換水を添加して顔料の含有量を調整した。このようにして、顔料の含有量が10.00%である顔料分散液5を得た。
<アニオン性基を有する樹脂の合成>
(樹脂1~10)
常法によりモノマーを重合して、表1に示す組成及び特性を有するランダム共重合体である、アニオン性基を有する樹脂1~10を合成した。酸価と等モルの水酸化カリウムを含む水を添加してアニオン性基を中和した後、適量の水をさらに添加して、樹脂の含有量が10.00%である水溶性樹脂の水溶液を得た。水溶性樹脂をテトラヒドロフランに溶解して測定用試料を調製し、電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)を使用し、水酸化カリウムエタノール滴定液を用いて電位差滴定することにより、アニオン性基を有する樹脂の酸価を測定した。GPCにより測定したポリスチレン換算のアニオン性基を有する樹脂の重量平均分子量は、いずれも10,000であった。アニオン性基を有する樹脂の酸価(mgKOH/g)から、上述の式(A)に基づいて、樹脂1g当たりのアニオン性基の量(mmol/g)に換算した。
表1中の略号は、St:スチレン、nBA:n-ブチルアクリレート、AA:アクリル酸、MAA:メタクリル酸、4VBA:4-ビニル安息香酸、MeOPEGMA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(括弧内はエチレンオキサイド基の付加モル数を表す)である。
Figure 2023178538000001
(樹脂11)
数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール50.3部をメチルエチルケトン中に添加し、十分に撹拌して溶解させた。次いで、イソホロンジイソシアネート33.5部、及びジメチロールプロピオン酸14.3部を加えて75℃で1時間反応させ、プレポリマーを含む溶液を得た。得られた溶液を60℃に冷却し、水酸化カリウム水溶液を加えてプレポリマーを中和した。溶液を40℃まで冷却した後、イオン交換水を加え、ホモミキサーで溶液を高速撹拌して乳化を行った。その後、ネオペンチルグリコール(鎖延長剤)1.9部を加え、プレポリマーの鎖延長反応を30℃で12時間かけて行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで、加熱減圧下で溶液からメチルエチルケトンを留去した。このようにして、水溶性のウレタン樹脂である樹脂11を含み、樹脂の含有量が20.00%である水溶性樹脂の水溶液を得た。樹脂11の酸価は60mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
<ポリエチレンイミンの準備>
下記表2に示すポリエチレンイミン1~12を準備した。ポリエチレンイミン1~4は、分岐鎖状ポリエチレンイミンの市販品である。ポリエチレンイミン5~9は、アジリジンの開環重合により得られた分岐鎖状ポリエチレンイミンの合成品である。ポリエチレンイミン10~12は、以下に述べる方法に得られた合成品である。ポリエチレンイミンの重量平均分子量(Mw)は、GPCにより測定したポリスチレン換算の値である。ポリエチレンイミン1g当たりのカチオン性基の量(mmol/g)は、ポリエチレンイミンのアミン価から求めた。ポリエチレンイミンのアミン価は、電位差自動滴定装置AT510(京都電子工業製)を用いて、ポリエチレンイミンのメタノール溶液について、0.5mol/Lのp-トルエンスルホン酸標準溶液を用いた電位差滴定により算出した。ポリエチレンイミン4及び5はイオン交換水で希釈して、樹脂の含有量が30.00%である液体としてインクの調製に用いた。
(ポリエチレンイミン10)
ポリアクリル酸を塩化チオニルでポリアクリル酸塩化物とし、そのポリアクリル酸塩化物と直鎖状のポリエチレンイミンを分子量比1:1で完全に反応させた。これにより、アクリル鎖からなる主鎖の側鎖に直鎖状のポリエチレンイミンがグラフトされたポリエチレンイミン10を合成した。
(ポリエチレンイミン11)
ポリアクリル酸を塩化チオニルで酸塩化物とし、ポリアクリル酸と直鎖状のポリエチレンイミンを分子量比2:1で反応させた後、過剰の酸塩化物を加水分解して酸に戻した。これにより、アクリル酸からなる主鎖に直鎖状のポリエチレンイミンがグラフトされたポリエチレンイミン11を合成した。
(ポリエチレンイミン12)
ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)の加水分解によって、直鎖状ポリエチレンイミンを合成した。
Figure 2023178538000002
<インクの調製>
表3(表3-1~3-4)の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。また、アセチレノールE60は川研ファインケミカル製の界面活性剤である。表2の下段にはインクの特性として、インク1g当たりに換算したアニオン性基の量A(mmol/g)、インク1g当たりに換算したカチオン性基の量C(mmol/g)、及びC/Aの値(倍)を示した。
Figure 2023178538000003
Figure 2023178538000004
Figure 2023178538000005
Figure 2023178538000006
<評価>
各インクを充填したインクカートリッジを、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS PRO-10」、キヤノン製)にセットした。本実施例においては、単位領域(1ピクセル)の画像を、記録ヘッドのホームポジションから開始する走査と、記録ヘッドのホームポジションの逆側から開始する走査とを交互に行い、合計4回の走査で記録媒体に画像を記録した(4パス双方向記録)。本実施例においては、1/1,200インチ×1/1,200インチ(1ピクセル)の単位領域に、4.0ngのインクを付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。本発明においては、下記の各項目の評価基準で「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表4に示す。
(粒状性の低減)
上記のインクジェット記録装置を使用し、記録媒体(光沢紙、商品名「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]」、キヤノン製)に、記録デューティが50%である、10cm×10cmのベタ画像を記録した。得られた記録物を24時間自然乾燥させた。乾燥させた記録物を、20cm、30cm及び50cmの距離から観察し、以下に示す評価基準にしたがって画像の粒状性を評価した。
AA:20cmの距離から観察しても粒状性に起因するざらつきが認められず、均一に視認できた。
A:20cmの距離から観察すると粒状性に起因するざらつきが認められたが、30cmの距離から観察すると粒状性に起因するざらつきが認められず、均一に視認できた。
B:50cmの距離から観察すると粒状性に起因するざらつきが認められず均一に視認されたが、30cmの距離から観察すると粒状性に起因するざらつきが認められた。
C:50cmの距離から観察しても粒状性に起因するざらつきが認められた。
(耐擦過性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、記録媒体(光沢紙、商品名「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]」、キヤノン製)に、記録デューティが100%であるベタ画像を記録した。そして、記録した画像を1日乾燥させた後、爪の表面で数回擦った。画像のキズの状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐擦過性を評価した。
A:キズがついていなかった。
B:キズはついていたが、記録媒体は露出していなかった。
C:キズがつき、記録媒体が露出していた。
(保存安定性)
調製した各インクの粘度を測定した。また、調製したインクを密閉容器に入れ、80℃のオーブン中で4日間保存した。そして、25℃に戻した後、インクの粘度を測定した。インクの粘度は、25℃に設定した恒温槽にチューブを経由して不凍液を循環させているE型粘度計(商品名「RE80-L」、東機産業製)に、ロータ(1°34’×R24)を取り付けたものを使用して測定した。保存前後のインクの粘度から、粘度の増加率を算出し、以下に示す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。
A:粘度の増加率が、3%未満であった。
B:粘度の増加率が、3%以上5%未満であった。
C:粘度の増加率が、5%以上であった。
Figure 2023178538000007
なお、本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
[構成1]顔料、アニオン性基を有する樹脂、及び第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンを含有するインクジェット用の水性インクであって、インク1g当たりに換算した前記分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g)が、インク1g当たりに換算した前記アニオン性基を有する樹脂のアニオン性基の量(mmol/g)に対するモル比率で、0.05倍以上30.00倍以下であることを特徴とする水性インク。
[構成2]前記カチオン性基の量(mmol/g)が、前記アニオン性基の量(mmol/g)に対するモル比率で、0.50倍以上15.00倍以下である構成1に記載の水性インク。
[構成3]前記分岐鎖状ポリエチレンイミンの重量平均分子量が、600以上70000以下である構成1又は2に記載の水性インク。
[構成4]前記分岐鎖状ポリエチレンイミン1g当たりのカチオン性基の量(mmol/g)が、18mmol/g以上22mmol/g以下である構成1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成5]前記アニオン性基を有する樹脂の酸価が、80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である構成1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成6]前記アニオン性基を有する樹脂が、(メタ)アクリル酸に由来するユニットを有する樹脂を含む構成1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成7]前記アニオン性基を有する樹脂が、ウレタン系樹脂を含む構成1乃至6のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成8]インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、前記インクが、構成1乃至7のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
[方法1]インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、構成1乃至7のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。

Claims (9)

  1. 顔料、アニオン性基を有する樹脂、及び第3級のアミノ窒素を含む分岐鎖状ポリエチレンイミンを含有するインクジェット用の水性インクであって、
    インク1g当たりに換算した前記分岐鎖状ポリエチレンイミンのカチオン性基の量(mmol/g)が、インク1g当たりに換算した前記アニオン性基を有する樹脂のアニオン性基の量(mmol/g)に対するモル比率で、0.05倍以上30.00倍以下であることを特徴とする水性インク。
  2. 前記カチオン性基の量(mmol/g)が、前記アニオン性基の量(mmol/g)に対するモル比率で、0.50倍以上15.00倍以下である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記分岐鎖状ポリエチレンイミンの重量平均分子量が、600以上70000以下である請求項1に記載の水性インク。
  4. 前記分岐鎖状ポリエチレンイミン1g当たりのカチオン性基の量(mmol/g)が、18mmol/g以上22mmol/g以下である請求項1に記載の水性インク。
  5. 前記アニオン性基を有する樹脂の酸価が、80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である請求項1に記載の水性インク。
  6. 前記アニオン性基を有する樹脂が、(メタ)アクリル酸に由来するユニットを有する樹脂を含む請求項1に記載の水性インク。
  7. 前記アニオン性基を有する樹脂が、ウレタン系樹脂を含む請求項1に記載の水性インク。
  8. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  9. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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