JP2023178196A - 連続繊維補強材の定着構造及び既設コンクリート構造物の補強工法 - Google Patents

連続繊維補強材の定着構造及び既設コンクリート構造物の補強工法 Download PDF

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悠志 林
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Abstract

【課題】補強材として腐食しない連続繊維補強材を用い、コンクリート構造物の削孔内だけで所望の定着力を発揮でき、一方からの施工のみでも補強を完結できる連続繊維補強材の定着構造及び既設コンクリート構造物の補強工法を提供する。【解決手段】連続繊維補強材をコンクリート構造物C1のコンクリート内部に定着させる連続繊維補強材の定着構造において、前記コンクリート構造物C1に形成された穿孔部2と、この穿孔部2に挿入された前記連続繊維補強シートからなる補強線材3と、この補強線材3の端部に装着された徐々に拡径する部位を有する拡張成形材4と、穿孔部2に充填されて補強線材3と拡張成形材4の隙間を埋める充填材5を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、連続繊維補強材の定着構造及び既設コンクリート構造物の補強工法に関する。
近年、高度成長時代に建造したコンクリート構造物が更新時期を迎え、これらのコンクリート構造物を補修・補強する機会が増えており、既設コンクリート構造物をあと施工でせん断補強を実施する機会も増えている。例えば、RC中空床版、橋脚、橋台などの既設コンクリート構造物の外表面にせん断補強体として連続繊維補強シートを接着して補強することが知られている。しかしながら、補強を検討する際に設計補強量が大きくなると、コンクリート構造物の外面への接着補強では補強量が不足する場合や部材の形状上外面の補強が困難な場合が想定される。
このような問題を解決する方法としては、コンクリートの躯体内にせん断補強体を挿入して補強する方法が次手として挙げられる。例えば、特許文献1には、既設コンクリート造の面材又は版材の一面側から他面側に向けて、せん断補強部材20を設置するための補強部材挿入孔10を形成し、(2)せん断補強鉄筋21と、前記せん断補強鉄筋21の先端部及び基端部に設けられている、当該せん断補強鉄筋21より断面形状が大きいリングヘッド22とプレートヘッド23と、を備える前記せん断補強部材20を、前記補強部材挿入孔10に挿入するとともに、前記補強部材挿入孔10に充填材30を注入するコンクリート構造物のせん断力補強方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0021]~[0035]、図2等参照)。
しかし、特許文献1に記載のせん断力補強方法は、鋼材からなるプレートヘッド23を用いたせん断補強であり、削孔部を有することから、削孔部境界面から腐食要因物質が浸透し、補強体自身が腐食するという問題がある。また、特許文献1に記載のせん断力補強方法は、削孔は定着部材の径よりも大きいことが前提となっており、削孔の直線精度が十分でない場合には補強材が緩衝して挿入できないなどの懸念がある。このため、削孔径を大きくして対応する必要があるが、削孔径を大きくすることは補強材の設置位置を定めるために余分にスペーサを用意する必要がある。また、過密な配筋においては削孔径が大きくなることにより補強体の径を小さくして、代わりに削孔数を増やす必要があるなど不経済になるという問題がある。
また、定着部材付近のみ削孔径を大きくする場合には、周囲の配筋に緩衝する可能性が高くなり、削孔精度管理の管理手間や配筋条件によっては削孔箇所の選定が制約される。その上、鋼材を取り扱うため、重量があることから施工的なハンドリングも良いとは言えず、腐食性であるため、適切なかぶりを確保することが求められ、補強材として有効に抵抗する範囲がかぶりの分だけ失われることとなる。そのため、恒久的な補強対策として、腐食しない材料で補強することが望まれていた。
腐食しない補強体としては、特許文献2に、装置基礎の既設受台Aと既設底版Bのように交差して接合されているコンクリート躯体の一方の既設受台Aの表面に、炭素繊維テープ1を既設受台Aの上下方向に沿って貼着し、他方の既設底版Bに穿設された挿入固定孔2に炭素繊維テープ1の一端部を挿入し、この挿入固定孔2にエポキシ樹脂などの接着剤3を充填することにより固着する既設コンクリート構造物の補強構造が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0020]~[0033]、図1等参照)。
しかし、特許文献2に記載の既設コンクリート構造物の補強構造では、炭素繊維テープとコンクリートの挿入固定孔への定着力が足りず、前述の従来のコンクリート構造物の外表面に連続繊維補強シートを接着して補強する場合と同様に、設計補強量が大きくなると対応できないという問題があった。
定着力が足りない問題を解決する手法としては、炭素繊維ストランドなどの腐食しない補強体を、コンクリート構造物を貫通して設けて止め付けて定着することが考えられる。しかし、コンクリート構造物を貫通できる場合が限られるという制約があるだけでなく、構造物の両側に仮設足場や人員を配置する必要があり、施工に手間がかかり、コストアップの要因となるという問題もある。
なお、特許文献3には、柱部材に支承された張り出し部に設けられた既設の仕切り壁の屋外側を補強鋼板で補強するとともに、同仕切り壁の屋内側を補強繊維シートで補強し、既設の仕切り壁を貫通する補強繊維製アンカーを用いて、補強鋼板による補強部分と、補強繊維シートによる補強部分とを連結することで、張り出し床の屋外側と屋内側とを一体化したことを特徴とするコンクリート構造物の補強構造が開示されている(特許文献3の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0021]~[0035]、図2等参照)。
しかし、特許文献3に記載のコンクリート構造物の補強構造も、同様に、適用できる場合が限られるという制約があるだけでなく、仕切り壁の両側に仮設足場や人員を配置する必要があり、施工に手間がかかり、コストアップの要因となるという問題もある。
特開2004-293294号公報 特開平8-120948号公報 特開2020-16086号公報
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、補強材として腐食しない連続繊維補強シートを用い、コンクリート構造物の削孔内だけで所望の定着力を発揮でき、一方からの施工のみでも補強を完結できる連続繊維補強材の定着構造及び既設コンクリート構造物の補強工法を提供することにある。
請求項1に係る連続繊維補強材の定着構造は、連続繊維補強材をコンクリート構造物のコンクリート内部に定着させる連続繊維補強材の定着構造であって、前記コンクリート構造物に形成された穿孔部と、この穿孔部に挿入された前記連続繊維補強シートからなる補強線材と、この補強線材の端部に装着された徐々に拡径する部位を有する拡張成形材と、前記穿孔部に充填されて前記補強線材と前記拡張成形材の隙間を埋める充填材を備えることを特徴とする。
請求項2に係る連続繊維補強材の定着構造は、請求項1に係る連続繊維補強材の定着構造において、前記穿孔部には、表面側及び奥側の少なくとも両端部に凹凸が形成されていることを特徴とする。
請求項3に係る連続繊維補強材の定着構造は、請求項2に係る連続繊維補強材の定着構造において、前記穿孔部の凹凸は、小判形の凹凸であることを特徴とする。
請求項4に係る連続繊維補強材の定着構造は、請求項1に係る連続繊維補強材の定着構造において、前記穿孔部は、貫通孔であり、前記貫通孔の表面側及び奥側の少なくとも両端部に前記貫通孔より径の大きい拡径孔部が形成されていることを特徴とする。
請求項5に係る連続繊維補強材の定着構造は、請求項1又は2に係る連続繊維補強材の定着構造において、前記補強線材は、FRPストランドをすだれ状のシートとしたストランドシートからなることを特徴とする。
請求項6に係る連続繊維補強材の定着構造は、請求項1又は2に係る連続繊維補強材の定着構造において、前記拡張成形材の頂部の角度は、20°以上70°以下であることを特徴とする。
請求項7に係る連続繊維補強材の定着構造は、請求項1又は2に係る連続繊維補強材の定着構造において、前記拡張成形材は、頂部方向に貫通する直径1mm以上10mm以下の孔を有することを特徴とする。
請求項8に係る連続繊維補強材の定着構造は、連続繊維補強材をコンクリート構造物のコンクリート内部に定着させる連続繊維補強材の定着構造であって、前記コンクリート構造物に形成された穿孔部と、この穿孔部に挿入された前記連続繊維補強材からなるシート状の連続繊維補強シートと、この連続繊維補強シートを丸める際に内包されて厚みでシート同士の間隔を保持して拡張部を形成する間隔保持材と、前記穿孔部に充填されて前記間隔保持材で間隔が保持された前記連続繊維補強シート同士の隙間を埋める充填材を備えることを特徴とする。
請求項9に係る連続繊維補強材の定着構造は、請求項8に係る連続繊維補強材の定着構造において、前記連続繊維補強シートは、FRPストランドをすだれ状のシートとしたストランドシートからなることを特徴とする。
請求項10に係る連続繊維補強材の定着構造は、請求項8又は9に係る連続繊維補強材の定着構造において、前記連続繊維補強シートの前記拡張部のテーパー角度は、1.5°以上8.0°以下であることを特徴とする。
請求項11に係る既設コンクリート構造物の補強工法は、連続繊維補強材からなるシート状の連続繊維補強シートを既設コンクリート構造物のコンクリート内部に定着させて補強する既設コンクリート構造物の補強工法であって、前記既設コンクリート構造物に穿孔して穿孔部を形成する穿孔部形成工程と、前記穿孔部形成工程で形成した穿孔部に連続繊維補強シートを丸めた補強線材を挿入し、徐々に拡径する部位を有する拡張成形材で前記補強線材の端部を広げる補強線材挿入工程を行い、その後、前記穿孔部に充填材を充填する充填材充填工程を行って、充填材を硬化させ、前記既設コンクリート構造物に前記補強線材を定着させて一体化して補強することを特徴とする。
請求項12に係る既設コンクリート構造物の補強工法は、連続繊維補強材からなるシート状の連続繊維補強シートを既設コンクリート構造物のコンクリート内部に定着させて補強する既設コンクリート構造物の補強工法であって、前記既設コンクリート構造物に穿孔して穿孔部を形成する穿孔部形成工程と、前記穿孔部形成工程で形成した穿孔部に連続繊維補強シートの端部に厚みでシート同士の間隔を保持する間隔保持材を設置した状態で丸めて補強線材の端部に拡張部を形成して挿入する補強線材挿入工程を行い、その後、前記穿孔部に充填材を充填する充填材充填工程を行って、充填材を硬化させ、前記既設コンクリート構造物に前記補強線材を定着させて一体化して補強することを特徴とする。
請求項13に係る既設コンクリート構造物の補強工法は、請求項11又は12に記載の既設コンクリート構造物の補強工法において、前記補強線材挿入工程では、前記拡張部のテーパー角度が1.5°以上8.0°以下となるように前記補強線材の端部に拡張部を形成することを特徴とする。
請求項14に係る既設コンクリート構造物の補強工法は、請求項11又は12に係る既設コンクリート構造物の補強工法において、前記補強線材挿入工程では、充填材注入用の注入チューブを前記連続繊維補強シート内に包み込んで挿入し、前記充填材充填工程では、前記注入チューブを用いて前記連続繊維補強シートから引き抜きながら前記充填材を前記穿孔部に充填することを特徴とする。
請求項15に係る既設コンクリート構造物の補強工法は、請求項11又は12に係る既設コンクリート構造物の補強工法において、全周凹部形成治具を回転駆動しながら前記穿孔部の入り口を基点に穿孔円周方向に回転して前記穿孔部の内周面に全周に亘る凹凸を形成する全周凹凸形成工程を行うことを特徴とする。
請求項16に係る既設コンクリート構造物の補強工法は、請求項11又は12に係る既設コンクリート構造物の補強工法において、凹部形成治具を回転駆動しながら前後動して前記穿孔部の内周面に小判形凹凸を形成する小判形凹部形成工程を行うことを特徴とする。
請求項1~16に係る発明によれば、腐食しない連続繊維補強材を用い、コンクリート構造物に形成された穿孔部の孔内だけで所望の定着力を発揮でき、コンクリート構造物の一表面の一方からの施工のみでも補強工事を完結することができる。
また、請求項1~16に係る発明によれば、設計補強量が大きくなっても、コンクリート構造物に連続繊維補強材を確実に定着して一体化して補強することができるだけでなく、コンクリート構造物の外面への補強が困難な場合でも連続繊維補強材で補強することができる。
それに加え、請求項1~16に係る発明によれば、補強線材の端部が拡張した拡張部が形成され、拡張起点部に対してくさび効果を発揮し、補強線材に作用する引張荷重に対して拡張部による支圧力でも抵抗することが可能となり、定着力が向上する。
特に、請求項2に係る発明によれば、凹凸が形成されているので、充填材と穿孔部との間の界面に支圧力が付与され、充填材の付着力をさらに向上させることができる。
特に、請求項3に係る発明によれば、小判形の凹凸が形成されているので、全周に亘る凹部を形成するより短時間で凹部を形成できるとともに、充填材と穿孔部との間の界面に全周凹部と同等の支圧力が付与され、充填材の付着力を向上させることができる。
特に、請求項4に係る発明によれば、穿孔部は貫通孔であるので、拡張成形材の装着が容易である。
特に、請求項5に係る発明によれば、補強線材は、FRPストランドを適度な隙間が形成されたすだれ状のシートとしたストランドシートからなるので、補強線材の充填材との接着性が良好で充填材への付着力が高いものとすることができる。
特に、請求項6に係る発明によれば、拡張成形材の頂部の角度は、20°以上70°以下であるので、補強線材の各素線が折れて応力が集中して破断するおそれを低減しつつ補強線材の端部を広げて補強線材の充填材に対する付着力をさらに増加させることができる。
特に、請求項7に係る発明によれば、拡張成形材は、頂部方向に貫通する直径1mm以上10mm以下の孔を有するので、拡張成形材内への充填材の充填が容易となり、さらに補強線材のコンクリート構造物への定着力を向上させることができる。
請求項8及び9に係る発明によれば、間隔保持材で連続繊維補強シートを丸めた場合も連続繊維補強シート同士の間隔が保持されるので、拡張部の端部でも補強繊維の密度が低く、充填材の未充填部分が形成されるおそれが少なく、コンクリートに強固に定着することができる。
特に、請求項10に係る発明及び請求項13に係る発明によれば、拡張部のテーパー角度が1.5°以上8.0°以下であるので、拡張部の起点部となる補強繊維の屈曲点に応力が集中することがなく、補強繊維の保証耐力を満足することができる。
特に、請求項14に係る発明によれば、連続繊維補強シートに包み込まれた注入チューブを用いて引き抜きながら充填材を穿孔部に充填するので、充填材の充填が容易に短時間で行えるだけでなく、空洞を設けることなく、緻密に充填材を充填することができ、さらに補強線材のコンクリート構造物への定着力を向上させることができる。
特に、請求項15に係る発明によれば、全周凹部形成治具を回転駆動しながら穿孔部の入り口を基点に円周方向に回転して穿孔部の内周面に全周に亘る凹凸を形成する全周凹凸形成工程を行うので、連続繊維補強シートのコンクリート構造物に対する定着力の高い凹凸付きの穿孔部を形成することができる。
特に、請求項16に係る発明によれば、凹部形成治具を回転駆動しながら前後動して前記穿孔部の内周面に小判形凹凸を形成する小判形凹部形成工程を行うので、全周に亘る凹部を形成するより短時間で凹部を形成できるとともに、充填材と穿孔部との間の界面に全周凹部と同等の支圧力が付与され、充填材の付着力を向上させることができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造の両側施工の場合の全体構成を示す断面図である。 図2は、同上の連続繊維補強材の定着構造の両側施工の場合の下端部を示す図1のA部拡大図である。 図3は、本発明の実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造の片側施工の場合の全体構成を示す断面図である。 図4は、同上の連続繊維補強材の定着構造の片側施工の場合の下端部を示す図3のB部拡大図である。 図5は、同上の連続繊維補強材の定着構造の穿孔部を示す平面図である。 図6は、本発明の第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造の片側施工の場合の全体構成を示す断面図である。 図7は、同上の連続繊維補強材の定着構造の片側施工の場合の下端部を示す図6のC部拡大図である。 図8は、本発明の実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の穿孔部形成工程を示す工程説明図である。 図9は、本発明の実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の全周凹部形成工程を示す工程説明図である。 図10は、同上の既設コンクリート構造物の補強工法の治具取替工程を示す工程説明図である。 図11は、同上の既設コンクリート構造物の補強工法の小判形凹部形成工程を示す工程説明図である。 図12は、同上の既設コンクリート構造物の補強工法の片側施工の阿合の補強線材挿入工程を示す工程説明図である。 図13は、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の両側施工の場合の補強線材挿入工程を示す工程説明図である。 図14は、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の充填材充填工程程を示す工程説明図である。 図15は、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の補強線材挿入工程で連続繊維補強シートに間隔保持材を設置した状態を示す写真である。 図16は、同上の補強線材挿入工程で連続繊維補強シートをナルト状に丸めた状態を示す写真である。 図17は、同上の補強線材挿入工程で連続繊維補強シートを丸めて検束バンドで拡張起点部を結束して拡張部を形成した状態を示す写真である。 図18は、付着試験の概要を示す付着試験概要図である。 図19は、付着試験の連続繊維補強材の定着構造の下端部を示す図2に相当する部分部拡大図である。 図20は、定着耐力確認試験の概要を示す定着耐力確認試験概要図である。 図21は、同上の定着耐力確認試験で供試体が拡張起点部で破断した状態を示す写真である。 図22は、同上の定着耐力確認試験で供試体が拡張部で破断した状態を示す写真である。 図23は、同上の定着耐力確認試験で供試体のFRPストランドが抜け出した状態を示す写真である。 図24は、定着耐力確認試験の各試験体の寸法等の諸情報と破断箇所、試験結果等まとめた表である。 図25は、定着耐力確認試験の各供試体の破断荷重を示す棒グラフである。 図26は、定着耐力確認試験の載荷荷重と変位の関係を示す折れ線グラフである。 図27は、定着耐力確認試験の拡張部のストランドシートのテーパー角度と破断荷重の関係を示す散布図である。 図28は、連続繊維補強シートに拡張成形材を設置した状態を示す写真である。 図29は、連続繊維補強シートに拡張成形材を設置して丸めて検束バンドで拡張起点部を結束して拡張部を形成した状態を示す写真である。 図30は、連続繊維補強シートを丸めて拡張部を形成した状態を底面から見た写真である。
以下、本発明に係る連続繊維補強材の定着構造及び既設コンクリート構造物の補強工法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<連続繊維補強材の定着構造>
[第1実施形態]
図1~図5を用いて、本発明の第1実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1の両側施工の場合の全体構成を示す断面図であり、図2は、連続繊維補強材の定着構造1の両側施工の場合の下端部を示す図1のA部拡大図である。また、図3は、本発明の実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1の片側施工の場合の全体構成を示す断面図であり、図4は、連続繊維補強材の定着構造1の片側施工の場合の下端部を示す図3のB部拡大図である。そして、図5は、連続繊維補強材の定着構造1の穿孔部2を示す平面図である。
図1~図4に示すように、本実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1(以下単に定着構造1ともいう。)は、コンクリート構造物C1に形成された穿孔部2と、この穿孔部2に挿入された補強線材3と、この補強線材3の端部に装着された拡張成形材4と、穿孔部2に充填されて補強線材3と拡張成形材4の隙間を埋める充填材5など、から構成されている。
なお、定着構造1の定着対象であるコンクリート構造物C1は、内部補強材として異形鋼棒からなる鉄筋を用いた既設の鉄筋コンクリート造(RC造)のコンクリート構造物を想定している。しかし、本発明に係る連続繊維補強材の定着構造の定着対象は、RC造のコンクリート構造物に限られず、プレストレストコンクリート(prestressed concrete:PC造)、鉄骨コンクリート(steel-framed concrete:SRC造)であっても構わない。また、定着構造1の定着対象にできるコンクリート構造物C1は、図1,2に示すように、両側施工できる場合も、図3,4に示すように、片側施工しかできない場合にも含み得る。
その上、本発明に係る連続繊維補強材の定着構造の定着対象は、鋼繊維や合成繊維を内部補強材として複合した短繊維補強コンクリートや連続繊維を補強材とした連続繊維補強コンクリートとすることもできる。要するに、本発明に係る連続繊維補強材の定着構造の定着対象は、引張力に弱いコンクリートが内部補強材で補強されて構造物となっているコンクリート構造物であればよい。RC造のコンクリート構造物と同様に連続繊維補強シートで補強できるからである。
(穿孔部)
穿孔部2は、既設の鉄筋コンクリート構造物C1の一表面からコアドリル、インパクトドリル、ロータリーハンマドリルなどの削孔機で削孔された設計補強量に応じた所定深さの所定径(本実施形態では、D1=34mm,D2=50mm)の円形の孔である。この穿孔部2は、図1に示すように、既設の鉄筋コンクリート構造物C1を貫通する貫通孔でもよいし、図3に示すように、既設の鉄筋コンクリート構造物C1の片側の表面から削孔された有底の孔であっても構わない。また、穿孔部2は、削孔機で削孔されたものに限られず、ウォータージェットなど他の手段でコンクリート構造物C1に穿孔された孔であればよい。
また、後述の補強線材3と同様の直線状の補強材をコンクリートへ定着させた場合は、補強材に作用する引張力に対しては、補強材のコンクリート等への付着力によって抵抗する。このため、補強量が多い場合は、補強材自体の破断ではなく、補強材の繊維と充填材間の付着破壊、又は充填材とコンクリート間の付着破壊が先行し、補強材の繊維自体の強度を十分に発揮できないという問題がある。よって、本実施形態に係る定着構造1では、穿孔部2に凹凸形状を形成し、コンクリートと充填材5との間に支圧力を付与して付着耐力を向上させている。
具体的には定着構造1では、図1~図4に示すように、穿孔部2の表面側及び奥側の長手方向の両端部の所定範囲に全周に亘る凹凸又は小判形の凹凸が形成されている。凹凸が形成されている範囲は、図2,図4に示すように、長手方向の両端から後述の拡張成形材4を超えた50mm内側に入った位置から所望の支圧力を付与可能な所定の範囲(75.0mm~87.5mm)において、所定のピッチP1(本実施形態では、P1=25mm)で形成されている。勿論、これらの数値は、例示であり、コンクリート構造物C1の補強に必要な設計補強量に応じて適宜定めれば良いことは云うまでもない。
この凹凸は、後述のように、円形の孔(h1)を穿孔した後、後述の全周凹部形成治具(7)又は小判形凹部形成治具(7’)を回転駆動して円形の孔(h1)の内周面20に摺動又は衝突させることで複数段の凹部が削り取られて、図5に示すように、全周に亘る円形の複数段の凹部2a又は一軸方向の両側に凹んだ小判形の凹部2bが形成され、円形の孔h1の元の内周面20を凸部とする凹凸が形成されている。
但し、凹部2a又は凹部2bは、複数段設けられている必要はなく、凹部2a又は凹部2bが1段以上設けられていればよい。つまり、穿孔部2の表面側及び奥側の少なくとも両端部に穿孔部2の内周面20の内径の大きい拡径孔部(凹部2a又は凹部2b)が形成されていればよい。なお、図1,図2に示す実施形態では、穿孔部2は、外部に面する端部に払底部の直径D2=50mmが一般部の直径D1=34mmより大きいものが形成されている。このように、穿孔部2の両端部に払底部(D2部分)となる他の一般部(D1部分)より径の大きな穿孔部が形成され、凹部が形成されていないものでも構わない。
(補強線材)
補強線材3は、炭素繊維やアラミド繊維などの連続補強繊維にエポキシ樹脂などのマトリクス樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)線材を複数本、適度な間隔をあけて一方向(UD:Uni-Direction)に引き揃えてスダレ状に配置した後、ポリエステル繊維等を横糸として平織りによりシート状としたストランドシート(連続繊維補強シート)からなる。このため、補強線材3は、後述の充填材5との接着性が良好で充填材5への付着力が高いものとなっている。この補強線材3は、連続繊維補強材のストランドシートを丸めて束状とし、その束が穿孔部2に挿入されて設置されている。
但し、補強線材3は、ストランドシートに限られず、一方向の繊維強化プラスチック(FRP)線材を横糸なしで束ねて両端部の拡張部材手前で番線等の結束具で結束して括ったものなど、連続補強繊維が束状となったものであればよい。
充填材5は、穿孔部2の孔内に充填されて一体性を確保するべきであり、連続繊維補強材のストランドシートを丸めた束状の内部に充填材注入用の注入チューブ(図12も参照)が内包され、充填材はその注入チューブを用いて圧入され、充填高さに応じて注入チューブを引抜いて充填作業を完了する。
このように、補強線材3は、連続繊維補強材のストランドシートを丸めて束状とすることで、束の長手方向の一端を把持すると、他端を離しても自立する程度の剛性が付与されるとともに、曲げなどの変形を人の手によって容易に与えられる程度の柔軟性が付与されている。このため、支承間などの狭隘な空間でも、人力で曲げて穿孔部2に補強線材3に挿入することが容易であるとともに、専用治具無しでも複数段の凹部2a(凹部2b)が形成された穿孔部2の奥部への挿入も容易となる。つまり、補強線材3は、適度な剛性により直線性を保持しながら設置が完了できるし、穿孔部2の直線性が無い場合であってもそれに追随することが可能となる。
補強線材3は、適度な隙間が形成されたすだれ状のシートとしても炭素繊維などのCFRPストランド表面の平滑性により、繊維の表面に凹凸がある場合と比較して表面積が小さくなるため、付着力も小さくなる。そこで、定着構造1では、補強線材3の端部を、円錐状の拡張成形材4を装着することにより束の軸に対して大きな角度で折れ曲がらない所定の角度(図示形態では16°)を付けて広げた拡張部3aを形成することで補強線材3と充填材5との間の付着力を高めている。
(拡張成形材)
図2に示すように、拡張成形材4は、ABS樹脂などの樹脂からなる高さ4.64cm、底面の円の直径が4.35cmの円錐状の部材であり、補強線材3のFRPストランドの束の端部に挿置されることで、FRPストランドの束の端部を拡張する機能を有している。
また、拡張成形材4は、充填材5が穿孔部2の拡底部深部に充填されることを阻害する恐れがあるため、貫通孔を設ける。貫通孔の直径は、φ1mm以上φ10mm以下である。
勿論、この拡張成形材4は、円錐状の樹脂に限られず、FRPストランドの束の端部を拡張することができる徐々に拡大する部位を有する非腐食性の材料であればよい。但し、拡張成形材4は、補強線材3の強度に応じた付着力を付与する関係上圧縮強度30N/mm2以上の物性を有する必要がある。拡張成形材4の圧縮強度が小さい場合には繊維の破断よりも先に拡張成形材4が破壊され、後述のくさび効果が成立しないからである。
つまり、補強線材3に引張荷重が作用すると、前述の端部の拡張部には引張力が作用し引抜きが発生する。すると、補強線材3の拡張部3aは内径側に圧縮されるため、充填材5によって接着された拡張成形材4は、付着力及び圧縮力によって補強線材3の拡張部3aに追随して引抜かれる。このとき、拡張成形材4が補強線材3の拡張部3aの拡張起点部に対してくさび効果を発揮し、引張荷重に対して補強線材3との付着力と拡張成形材4による支圧力で抵抗することが可能となる。これによって、補強線材3の引抜き抵抗荷重を増加させることができる。
なお、拡張成形材4が補強線材3の内部ではなく、外部に設置されただけでは、補強線材3が単純に引張力を受けて引抜かれてしまうだけであり、耐力の向上は期待できない。また、補強線材3の拡張部3aの拡張角度が15°以下では、くさび効果が十分ではなく、拡張角度が90°以上では異方性材料であるFRPストランドが折れて応力が集中して破断するおそれが高くなる。よって、拡張成形材4の頂部の角度αは、20°~70°が好ましく、本実施形態に係る拡張成形材4の頂部の角度αは、50°に設定されている。また、拡張成形材4の拡張成型部の傾斜面は、平坦であっても凹凸を有していてもよい。要するに、本発明に係る拡張成形材は、徐々に径が拡大する部位を有していればよい。傾斜面の表面に凹凸があっても補強線材3の拡張にさほど影響がないからである。
(充填材)
充填材5は、穿孔部2に充填されて補強線材3と拡張成形材4の隙間を埋める機能を有する材料であり、本実施形態に係る充填材5は、圧縮強度30N/mm2以上のエポキシ樹脂である。但し、本発明に係る充填材は、補強線材3及びコンクリートとの接着性が良好であれば、エポキシ樹脂以外の他の熱硬化性樹脂や、セメント系などの無機系結合材料とすることができる。例えば、熱硬化性樹脂は、MMA樹脂、ビニルエステル樹脂、又は、不飽和ポリエステル樹脂が例示でき、無機系結合材料は、ポリマーセメントモルタル、ポリマーセメントペースト、セメントペースト、又は、モルタルを例示することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1’の片側施工の場合の全体構成を示す断面図であり、図7は、連続繊維補強材の定着構造1’の片側施工の場合の下端部を示す図6のC部拡大図である。第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1’ (以下単に定着構造1’ともいう。)が、前述の第1実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1と相違する点は、拡張部3aを形成する手段が、拡張成形材4ではなく、間隔保持材4’となっている点なので、その点を主に説明し、同一構成は、同一符号を付し、説明を省略する。
(間隔保持材)
間隔保持材4’は、一般にシーリング作業等に用いられる市販のバックアップ材と呼ばれる厚さ5mm×幅10mmの接着剤付きのエラストマーである。この間隔保持材4’は、前述のスダレ状に成形されたストランドシート(連続繊維補強シート)に接着されて設置された状態で連続繊維補強シートごとナルト状に丸めて補強線材3とし、補強線材3の端部に拡張部3aを形成するのに用いられる。
勿論、本発明に係る間隔保持材は、接着剤付きのものに限られず、補強線材3の保証耐力に応じた所定の厚さを有し、連続繊維補強シート同士の間隔を保持できて、丸められるだけの所定の可撓性を有したゴム弾性体であればよい。但し、間隔保持材は、接着剤付きのものの方が、連続繊維補強シートを丸める際にズレないため作業性が良く、充填材5を注入する際に充填材5の注入圧力により間隔保持材がズレないため定着耐力を確保するため好ましい。
(拡張部)
図7に示すように、本実施形態に係る補強線材3の拡張部3aは、拡張し始める拡張起点部から端部までの垂直距離であるテーパー長さTLが185mmで最大径D3が52mm程度となっており、テーパー角度βが3°となっており、後で詳述するがβ=1.5°~8.0°が好ましい。また、補強線材3の拡張起点部は、結束バンド31で結束されている。なお、図示形態では、樹脂製の結束バンド31で結束したものを例示したが、樹脂製結束バンドとしてはエラストマー製であることが適する。また、樹脂製の結束バンドに限られず、番線や結束線などの金属線材、その他の手段で結束してもよいことは云うまでもない。ここで、エラストマーとは、ゴム弾性を示す材料のことを指し、特に、付着等を勘案するとエラストマーは、熱可塑性ポリウレタンなどの熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomers)とすることが好ましい。
(穿孔部)
なお、本実施形態に係る定着構造1’の穿孔部2は、直径D2=53mm程度の円形の孔のみで、全周に亘る凹凸や小判形の凹凸は形成されていない。
<既設コンクリート構造物の補強工法>
[第1実施形態]
次に、図1~図4,図8~図14を用いて、本発明の第1実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法について説明する。本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法として、前述の補強線材3を前述のコンクリート構造物C1に形成した穿孔部2に定着して、前述の連続繊維補強材の定着構造1を構築し、補強線材3の連続繊維補強材の高い強度で補強する場合を例示して説明する。
(穿孔部形成工程)
図8に示すように、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、先ず、コンクリート構造物C1に穿孔部2の円形の孔h1を穿孔する穿孔部形成工程を行う。図8は、本発明の実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の穿孔部形成工程を示す工程説明図である。
具体的には、図8に示すように、削孔装置6の回転軸62に通常の削孔用のコアビット63を装着し、駆動モーター61でコアビット63を回転駆動する。そして、削孔装置6のガイド機構64を用いて、回転軸62の軸方向に沿ってコンクリート構造物C1にコアビット63を回転しながら押圧して、平面視円形の孔h1を削孔する。
前述のように、本工程は、削孔装置6で削孔する場合に限られず、ウォータージェットなど他の手段でコンクリート構造物C1に穿孔してもよい。
(全周凹部形成工程)
次に、図9に示すように、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、据え置きの削孔装置6に替えて、例えば、電動ドリルなどの手持ちの削孔装置6’に軸体70に直交する鉤状の突起71が形成された全周凹部形成治具7を装着した物を使用する。その後、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、全周凹部形成治具7を回転駆動しながら穿孔部2の入り口を基点に穿孔部2の円周方向に突起71を押し付けて内周面に全周に亘る複数段の凹部2aを1段ずつ削溝し、穿孔部2の円形の孔h1の内周面20を凸部とする凹凸を形成する全周凹凸形成工程を行う。勿論、削孔装置6’は、既設コンクリート構造物に固定して行う削孔装置とすることもできる。図9は、本発明の実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の全周凹部形成工程を示す工程説明図である。
本工程は、凹部2aを1段ずつ削溝するため、施工に時間を要するが、穿孔部2の孔の深さが1mを超えるような深さがある場合などに有効である。
(治具取替工程)
他の実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、次に、図10に示すように、コアビット63に替えて後述の小判形凹部形成治具7’を回転軸62に装着する治具取替工程を行う。図10は、本発明の実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の治具取替工程を示す工程説明図である。
このとき、本工程では、削孔装置6をベースプレート60でコンクリート構造物C1の外表面に据え付けた位置のまま、ベースプレート60を取り外して段取り変えをすることなく、コアビット63から小判形凹部形成治具7’に取り替える。このため、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、段取り変えの時間を省略して施工時間を短縮することができる。
なお、小判形凹部形成治具7’は、図10に示すように、回転軸62に装着可能な棒材からなる軸体70’と、この軸体70’の外周から長さ方向に所定間隔(図示実施形態では25mmピッチ)をあけて外側に円盤状に突出する複数段の円形刃71’と、を有している。この円形刃71’には、所定間隔をおいて複数の円弧状の欠込み72’が形成されている(図11も参照)。
(小判形凹部形成工程)
次に、図11に示すように、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、削孔装置6で小判形凹部形成治具7’を回転駆動しながら前後進退動手段8でガイド機構64及び削孔装置6を前後動して円形の孔h1の内周面20に小判形凹凸を形成する凹部形成工程を行う(図10も参照)。図11は、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の凹部形成工程を示す工程説明図である。
本工程では、先ず、図11(a)に示すように、前述の穿孔部形成工程で削孔した円形の孔h1内に治具取替工程で回転軸62に装着した小判形凹部形成治具7’を挿入する。
次に、図11(b),図10に示すように、削孔装置6の駆動モーター61で小判形凹部形成治具7’を回転させながら、前後進退動手段8でガイド機構64ごと削孔装置6を前進方向X1に前進させて、回転する円形刃71’を円形の孔h1の内周面20に押し当てて前側の凹部2bを切削する。
反対に、図11(c),図10に示すように、削孔装置6の駆動モーター61で小判形凹部形成治具7’を回転させながら、前後進退動手段8でガイド機構64ごと削孔装置6を後退方向X2に後退させて、回転する円形刃71’を円形の孔h1の内周面20に押し当てて後側の凹部2bを切削する。
このとき、前後進退動手段8で削孔装置6を繰り返し、前進・後退させ、小判形凹部形成治具7’で少しずつ前側の凹部2b及び後側の凹部2bを切削してもよいし、前進及び後退を1回だけ行って切削してもよい。
いずれにしろ、小判形凹部形成治具7’の軸体70’が円形の孔h1の内周面20に当接すると、円形刃71’で円形の孔h1の内周面20を切削することができなくなり、前側の凹部2b及び後側の凹部2bの切削作業が終了する。
本工程が終了し、小判形凹部形成治具7’を引き上げると、図11(d)に示すように、小判形(楕円型)凹凸付きの穿孔部2が形成されていることとなる。つまり、円形の孔h1から小判形凹部形成治具7’の円形刃71’で削り取った部分が、凹部2bとなり、削り取られなかった残りの円形の孔h1の内周面20が凸部となった小判形(楕円型)凹凸付きの穿孔部2となる(図3,図4も参照)。
本工程では、長手方向の両端から拡張成形材4を超えた50mm内側に入った位置から112.5mmの範囲において、所定のピッチP1=25mmで複数段の三日月状(図5,図11も参照)の凹部2bを形成する。即ち、円形の孔h1の長手方向の両端部に4、5段程度の凹部2bを形成する。しかし、穿孔部2の全長に亘って、所定のピッチP1で凹部2bを形成してもよいことは云うまでもない。穿孔部2の内周面20に対する充填材5の引抜抵抗を高くして付着力を向上させることができるからである。
このように、本工程では、小判形凹部形成治具7’の複数段の円形刃71’で一度に複数段の小判形の凹部2bを形成できるので、全周に亘る凹部を形成するより短時間で形成できるとともに、充填材5と穿孔部2との間の界面に全周凹部2aと同等の支圧力が付与され、充填材5の付着力を向上させることができる。
(補強線材挿入工程)
次に、図12,図13に示すように、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、穿孔部形成工程で削孔した穿孔部2に前述の補強線材3を挿入する補強線材挿入工程を行う。図12は、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の片側施工の場合の補強線材挿入工程を示す工程説明図であり、図13は、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の両側施工の場合の補強線材挿入工程を示す工程説明図である。
本工程では、先ず、前述の拡張成形材4を円錐の底面が穿孔部2の奥になるように挿入する。ストランドシートの束の端部を拡張し前述の拡張部3aを形成し、補強線材3の引抜き抵抗荷重を増加させるためである。勿論、補強線材3のストランドシートの束の端部に拡張成形材4を挿し込んで補強線材3と拡張成形材4を一緒に穿孔部2に挿入してもよいことは云うまでもない。
本工程では、図12に示すように、連続繊維補強材のストランドシートを丸めて束状とした補強線材3を前述の穿孔部2に挿入する。このとき、本工程では、充填材注入用の注入チューブ9(図14参照)を予め補強線材3のストランドシート内に包み込んで挿入することが好ましい。後述の充填材充填工程が容易となるからである。
また、前述のように、補強線材3は、丸めたストランドシートの束の一端を把持すると、他端を離しても自立する程度の剛性が付与されているとともに、曲げなどの変形を人の手によって容易に与えられる程度の柔軟性が付与されている。このため、支承間などの狭隘な空間でも、人力で曲げて穿孔部2に補強線材3に挿入することが容易であるとともに、専用治具無しでも複数段の凹部2bが形成された穿孔部2の奥部への挿入も容易である。
そして、本工程では、前述の拡張成形材4を円錐の頂部が穿孔部2の奥になるように挿入し、拡張成形材4で補強線材3のストランドシートの束の表面側のもう一端部も拡張する。
なお、図13に示すように、両側施工の場合の本工程は、穿孔部2に補強線材3を挿入した後、既設鉄筋コンクリート構造物C1の表面側及び反対の表面側からそれぞれ拡張成形材4を挿入し、拡張部3aを形成する。
(充填材充填工程)
次に、図14に示すように、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、圧縮強度30N/mm2以上のエポキシ樹脂からなる充填材5を充填する充填材充填工程を行う。図14は、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法の充填材充填工程を示す工程説明図である。
本工程では、充填材注入用の注入チューブ9を介して充填材5を注入しながら、充填材5が既に充填された部分から注入チューブ9を引抜きつつ充填する。つまり、図14に示すように、充填時に空気が混入して充填材5に空洞が生じないように注入チューブ9の先端が流動体状の充填材5内に浸漬された状態で注入チューブ9から充填材5を注入して徐々に注入チューブ9を上方に引抜きつつ充填する。
そして、本工程を行って充填した充填材5が硬化するのを待って本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法が完了する(図1,図3参照)。勿論、充填材5として使用する接着剤の種類に応じて適切な処理を行って充填材5を硬化させる。例えば、充填材5に熱硬化型の一液性のエポキシ樹脂を使用する場合は、熱を加えて硬化させ、二液性のエポキシ樹脂を使用する場合は、二液を計量、混合して所定時間経過させて硬化させる。
[第2実施形態]
次に、図15~図17を用いて、本発明の第2実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法について説明する。本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法として、前述の補強線材3を前述のコンクリート構造物C1に形成した穿孔部2に定着して、前述の第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1’を構築し、補強線材3の連続繊維補強材の高い強度で補強する場合を例示して説明する。第2実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法が、前述の第1実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法と相違する点は、全周凹部形成工程、治具取替工程、小判形凹部形成工程を行わない点と、補強線材挿入工程が相違する点であるので、相違点について主に説明する。
第2実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、第1実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法と同様に、穿孔部形成工程を行った後、全周凹部形成工程、治具取替工程、小判形凹部形成工程を行わず、穿孔部形成工程で形成した穿孔部2に連続繊維補強シート(補強線材3)の端部に間隔保持材4’を設置した状態で丸めて拡張部3aを形成して挿入する補強線材挿入工程を行う。
(補強線材挿入工程)
補強線材挿入工程では、先ず、図15に示すように、連続繊維補強シート(補強線材3)の繊維方向の端部の縁に沿って、厚さ5mm×幅10mmの接着剤付きのエラストマーである前述の間隔保持材4’を接着して固定する。図15は、補強線材挿入工程で連続繊維補強シートに間隔保持材を設置した状態を示す写真である。
その後、図16に示すように、間隔保持材4’が接着されたまま連続繊維補強シート(補強線材3)をナルト状に丸めて補強線材3とする。そして、図17に示すように、補強線材3の端部から所定距離(テーパー長さTL=185mm)離れた位置を結束バンド31で結束して拡張部3aを形成する。図16は、補強線材挿入工程で連続繊維補強シート(補強線材3)をナルト状に丸めた状態を示す写真であり、図17は、補強線材挿入工程で連続繊維補強シート(補強線材3)を丸めて検束バンド31で拡張起点部を結束して拡張部3aを形成した状態を示す写真である。なお、図示形態では、樹脂製の結束バンド31で結束したものを例示したが、樹脂製の結束バンドに限られず、番線や結束線などの金属線材、その他の手段で結束してもよいことは云うまでもない。
その後、穿孔部形成工程で形成した穿孔部2に拡張部3aが形成された補強線材3を挿入する(図6,図7参照)。なお、このとき、拡張部3aのテーパー角度が1.5°以上8.0°以下となるように前記補強線材の端部に拡張部を形成することが好ましい。拡張部3aの起点部となる補強線材3の屈曲点に応力が集中することがなく、後述の実験結果から補強繊維の保証耐力を満足することができることが判明したからである。具体的には、拡張部3aのテーパー角度が1.5°以上8.0°以下となるように間隔保持材4’の厚さを調整する。
(充填材充填工程)
次に、第2実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法では、第1実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法と同様に、エポキシ樹脂からなる充填材5を穿孔部2内に充填する充填材充填工程を行う。
本工程でも、第1実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法と同様に、充填材注入用の注入チューブ9を介して充填材5を注入しながら、充填材5が既に充填された部分から注入チューブ9を引抜きつつ充填しても構わない(図14参照)。但し、第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1’では、補強線材3の拡張部3aが端部においても間隔保持材4’で補強線材3を構成するFRP線材に一定の間隔が形成されるので、充填材5の未充填部分が形成されるおそれが少なく、充填材5を流し込むだけの通常の充填方法で充填しても構わない。
なお、充填材5を注入する前に、充填材5の注入量を低減するための粗骨材を穿孔内に詰めておき、その後に充填材5を注入し充填する場合もある。
本工程で充填した充填材5が硬化するのを待って第2実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法が完了する(図6,図7参照)。
以上説明した本発明の第1,第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1及び第1,第2実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法によれば、補強線材3として腐食しない連続繊維補強材のストランドシートを用い、コンクリート構造物C1に形成された穿孔部2の孔内だけで所望の定着力を発揮でき、コンクリート構造物C1の一表面の一方からの施工のみでも補強工事を完結することができる。
また、第1,第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1,1’及び第1,第2実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法によれば、設計補強量が大きくなっても、コンクリート構造物C1に連続繊維補強シートを確実に定着して一体化して補強することができる。その上、定着構造1,1’及び既設コンクリート構造物の補強工法によれば、コンクリート構造物C1のコンクリート内部に定着させるので、コンクリート構造物C1の部材の形状上外面への補強が困難な場合でも連続繊維補強シートで補強することができる。
さらに、定着構造1では、拡張成形材4が挿置されているので、拡張成形材4の円錐の形状により補強線材3の端部が拡張した拡張部3aが形成されるとともに、拡張成形材4の円錐形状により拡張起点部に対してくさび効果を発揮し、補強線材3に作用する引張荷重に対して補強線材3との付着力と拡張成形材4による支圧力で抵抗することが可能となり、定着力が向上する。その上、拡張成形材4は、頂部方向に貫通する直径1mm以上10mm以下の孔を有するので、拡張成形材4内への充填材の充填が容易となり、さらに補強線材3のコンクリート構造物への定着力を向上させることができる。
また、定着構造1の穿孔部2には、表面側及び奥側の少なくとも両端部に凹凸が形成されているので、充填材5と穿孔部2との間の界面に支圧力が付与され、充填材5の付着力をさらに向上させることができる。
その上、定着構造1,1’の補強線材3は、FRPストランドを適度な隙間が形成されたすだれ状のシートとしたストランドシートからなるので、充填材5との接着性が良好で充填材5への付着力が高いものとなっている。
そして、定着構造1では、拡張成形材4が挿置されているので、拡張成形材4の円錐の形状により補強線材3の端部が拡張した拡張部3aが形成されるとともに、拡張成形材4の円錐形状により拡張起点部に対してくさび効果を発揮し、補強線材3に作用する引張荷重に対して補強線材3との付着力と拡張成形材4による支圧力で抵抗することが可能となり、定着力が向上する。
それに加え、定着構造1の拡張成形材4の頂部の角度は、20°~70°となっているので、補強線材3の各素線が折れて応力が集中して破断するおそれを低減しつつ補強線材3の端部を広げて補強線材3の充填材5に対する付着力を増加させることができる。
また、連続繊維補強シート(補強線材3のストランドシート)に包み込まれた注入チューブ9を用いて、その連続繊維補強シートから引き抜きながら充填材5を穿孔部2に充填するので、充填材5の充填が容易に短時間で行えるだけでなく、空洞を設けることなく、緻密に充填材を充填することができ、さらに補強線材3のコンクリート構造物C1への定着力を向上させることができる。但し、チューブ9は引き抜かずに埋め殺しにしても構わない。引き抜く手間が省けるとともに、空洞となった場合でも補強線材3を定着することは可能だからである。
また、定着構造1’の補強線材3は、連続繊維補強シートを丸めた場合でも間隔保持材4’で連続繊維補強シート同士の間隔が保持されるので、拡張部3aの端部でもFRP線材の密度が低く、充填材5の未充填部分が形成されるおそれが少なく、コンクリート構造物C1に強固に定着することができる。
[効果確認実験]
次に、図18~図24等を用いて、本発明に係る連続繊維補強材の定着構造及び既設コンクリート構造物の補強工法による補強効果の確認のために行った付着試験及び定着耐力確認試験について説明する。
(付着試験)
付着試験は、前述の定着構造1と同等の本発明の実施例に係る全周凹凸の供試体1と、前述の定着構造1と同等の本発明の実施例に係る小判形凹凸の供試体2と、異形鉄筋D32をコンクリートに埋設した比較例に係る供試体3を作成し、図18に示すように付着試験を行った。図18は、付着試験の概要を示す付着試験概要図である。
試験方法は、ジャッキによりFRPストランド軸方向へ引張力を与える方法で、所定の付着長を再現した。FRPストランド定着部に引抜き荷重が与えられた時に作用する応力は、コンクリートと樹脂間の付着力、凹凸形状による支圧力、充填剤と繊維間の付着力が図19,図4の拡張部区間を除く凹凸形状を有する区間の矢印に示したように作用するものと考えられる。付着試験の結果は、表1に示す。図19は、付着試験の連続繊維補強材の定着構造の下端部を示す図2に相当する部分部拡大図である。
Figure 2023178196000002
表1に示すように、供試体3と比較して供試体1及び供試体2では補強体下端変位が0.002D(D:公称径)時及び最大荷重時ともに大きく上回った。つまり、供試体2は、全周凹凸の供試体3よりも0.002D時の荷重が小さく剛性の低下が認められるが、最大荷重として遜色なく、D32の供試体3よりも高いので有効である。したがって、実施例に係る供試体1及び供試体2は供試体3と比較して同程度以上の付着性状を有することが分かったといえる。また、破壊形態は繊維-充填材間の付着破壊であった。
(定着耐力確認試験)
定着耐力確認試験の概要を図20に示す。図20は、定着耐力確認試験の概要を示す定着耐力確認試験概要図である。試験方法は、ジャッキによりFRPストランド軸方向へ引張力を与える方法で、所定の付着長を再現した。FRPストランド定着部に引抜き荷重が与えられた時に作用する応力は、コンクリートと樹脂間の付着力、凹凸形状による支圧力、充填剤と繊維間の付着力、繊維が拡張し拡張成形材が一体となることで発生する支圧力、拡張成形材に対して発生する圧縮力が図2の矢印に示したように作用するものと考えられる。
そこで、FRPストランドをコンクリート供試体下端部に定着されるよう配置し、拡張成形材及び穿孔部への全周凹凸削孔を実施した。穿孔や定着部の寸法は、図2に示したものと同じである。試験水準は、両側からの施工を想定して、穿孔をφ34で実施し、供試体下端から5cm深さまでφ50とし、深さ5cmから87.5mm範囲は全周凹凸削孔を付与した水準、片側からの施工制約を想定して、供試体上端からφ50mmの削孔を下端深さ50mmまで先行し、穿孔部の先端50mmから75.0mmまで全周凹凸削孔を付与した水準の2種類とした。全ての水準は拡張成形材を用いて定着を施工している。結果を表2に示す。
Figure 2023178196000003
表2に示すように、補強水準に差異があるが、保証耐力に対して上回る結果を得られた。下部に異径の穿孔を有する場合と全長で同径の穿孔を有する場合とでばらつきはあるものの、同程度の値となった。破壊時の状況では、下部に異径の穿孔を有する場合、凹凸削孔よりも上側で破断に至っている。一方で、同径の穿孔の場合は定着部の拡張部の上(図21)、中(図22)、下(図23)位置で破断箇所が点在する結果となった。
両者の結果から、異径の穿孔を有する場合には拡張定着部の支圧力が小径穿孔部に伝達されやすくなり、定着として強固になり、破壊箇所が凹凸削孔上になったものと考えられる。また、同径穿孔の場合には、拡張成形材箇所で幾つかの破壊パターンになったため、拡張成形材の材質や強度物性、角度等を精査することでより最適な解を導き出せるものと考えられる。なお、先に行った付着応力度から本試験の付着長を用いて負担する荷重値から拡張部の補強効果は87kN(1.2倍程度)と試算された。以上の結果は全周凹凸の結果となるが、付着試験で明らかになったように全周凹凸と小判形凹凸の最大荷重は同程度であり、本試験で評価した最大荷重についても同様な結果を得られると判断される。
(2回目の定着耐力確認試験)
次に、テーパー角度βが3°を基軸設定し、前述の拡張部3aの形成手段が異なる第1実施形態に係る定着構造1と第2実施形態に係る定着構造1’に相当する供試体を作成し、前述と同様の定着耐力確認試験を行い、凹凸削孔の有効性と拡張部の形成手段の差異を検証した。
試験結果を図24~図27に示す。図中の「グラ」とは、セメント硬化体のグラウト製の拡張成形材で拡張部を形成した定着構造1に相当する供試体を指し、「バックアップ」とは、前述の厚さ5mm×幅5mmの接着剤付きのエラストマーであるバックアップ材からなる間隔保持材で拡張部を形成した定着構造1’に相当する供試体を指している。図24は、定着耐力確認試験の各試験体の寸法等の諸情報と破断箇所、試験結果等まとめた表である。
ここで、D16~D32の表記は、D16~D32鉄筋をコンクリートに定着させる場合の補強効果を想定した次表3に示す寸法の供試体を示している。なお、図25は、各供試体の破断荷重を示す棒グラフであり、図26は、載荷荷重と変位の関係を示す折れ線グラフであり、図27は、拡張部のストランドシートのテーパー角度と破断荷重の関係を示す散布図である。
また、「グラ」と表記した定着構造1に相当する供試体は、図28に示すように、CFRPストランドシートの融着糸2本分をバラけさせて巻いた状態でCFRPストランドシート(補強線材3)の端部に拡張成形材4であるコーンを設置する。そして、図29,図30に示すように、端部から所定距離だけ離れた位置(テーパー長さTL=185mm)のテーパー起点に結束バンド31で結束するとともに、この結束バンド31に針金からなる結束線32でコーン(拡張成形材4)を固定して拡張部3aを形成する。なお、図28は、連続繊維補強シートに拡張成形材を設置した状態を示す写真である。また、図29は、連続繊維補強シートに拡張成形材を設置して丸めて検束バンドで拡張起点部を結束して拡張部を形成した状態を示す写真であり、図30は、連続繊維補強シートを丸めて拡張部を形成した状態を底面から見た写真である。
一方、「バックアップ」と表記した定着構造1’に相当する供試体は、補強線材挿入工程で述べたように、CFRPストランドシート(補強線材3)の繊維方向の端部の縁に沿って、厚さ5mm×幅10mmの接着剤付きのエラストマーである前述の間隔保持材4’を接着して固定する(図15参照)。その後、間隔保持材4’が接着されたままCFRPストランドシート(補強線材3)をナルト状に丸めて補強線材3とする(図16参照)。そして、補強線材3の端部から所定距離(テーパー長さTL=185mm)離れた位置を番線31で結束して拡張部3aを形成する(図17参照)。
このように作成した定着構造1に相当する拡張部のストランド密度と、定着構造1’に相当する拡張部のストランド密度をD32に相当する供試体で比較した結果を次表4に示す。ここで、ストランド密度とは、それぞれの定着構造の拡張部の径方向に5mm×周方向に10mmの範囲のCFRPストランドの本数を、丸める前のストランドシートの幅及び幅方向のCFRPストランドの本数から求めた。
表4から明らかなように、定着構造1に相当する供試体と、定着構造1’に相当する供試体とでは、補強線材3を同じ本数のCFRPストランドで構成し、略同じテーパー角度で拡張部3aを形成した場合であっても、拡張部3aの端部でストランド密度が異なる。
図25に示すように、結果として、バックアップ材による定着構造1’に相当する供試体の方が耐力は一番高く値も安定している。これは,定着端部断面における繊維の密集度が影響している。具体的には,穿孔先端部の断面において,バックアップ材による定着構造1‘では充填材5に対するCFRPストランドシートの面積割合は5%になるが,定着構造1では充填材5の面積は拡張成形材が存在するため減少するため,充填材5に対するCFRPストランドシートの面積割合は9%となり,バックアップ材の方が、繊維が均等に分散しており、充填材5との付着が均一に確保できたためと考えられる。
また、図25,図26に示すように、今回の試験では、凹凸削孔は、大きな影響はない結果となった。CFアンカーのように繊維を樹脂含浸して一体化するものは、硬化後は一つの成型品となり、繊維-樹脂界面破壊よりも樹脂コンクリート界面破壊が卓越するものと考えられるが、今回の実験のように、CFRPストランドを用いるストランド手法では、繊維補強プラスチック(CFRPストランド)の炭素繊維のマトリクス樹脂と異なる樹脂で接着するため、繊維-樹脂界面の付着で限界を迎える形態になることが影響しているのではないかと推測される。
さらに、図27に示すように、今回の実験では、ストランドシートのテーパー角度を3°にすれば、繊維の保証耐力を満足することが分かる。一方、0°や10°ではだめで、3°に頂点を有する形となっている。よって、図27から、拡張部3aのテーパー角度は、1.5°~8.0°が好ましいと言える。
以上、本発明の第1,第2実施形態に係る連続繊維補強材の定着構造1,1’及び第1,第2実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強工法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、拡張部3aを形成する手段として定着構造1で拡張成形材4を例示し、定着構造1’で間隔保持材4’を例示したが、補強線材3の端部の一方を拡張成形材4で拡張部3aを形成し、他方を間隔保持材4’で拡張部3aを形成してもよいことは云うまでもない。
1,1’:定着構造(連続繊維補強材の定着構造)
2:穿孔部
2a:凹部
20:内周面
h1:円形の孔
3:補強線材(連続繊維補強シート)
3a:拡張部
31:結束バンド
32:結束線
4:拡張成形材
4’:間隔保持材
α:頂部の角度
5:充填材
6,6’:削孔装置
60:ベースプレート
61:駆動モーター
62:回転軸
63:コアビット
64:ガイド機構
7:全周凹部形成治具
70:軸体
71:突起
7’:小判形凹部形成治具
70’:軸体
71’:円形刃
72’:欠込み
8:前後進退動手段
9:注入チューブ
C1:コンクリート構造物

Claims (16)

  1. 連続繊維補強材をコンクリート構造物のコンクリート内部に定着させる連続繊維補強材の定着構造であって、
    前記コンクリート構造物に形成された穿孔部と、この穿孔部に挿入された前記連続繊維補強材からなる補強線材と、この補強線材の端部に装着された徐々に拡径する部位を有する拡張成形材と、前記穿孔部に充填されて前記補強線材と前記拡張成形材の隙間を埋める充填材を備えること
    を特徴とする連続繊維補強材の定着構造。
  2. 前記穿孔部には、表面側及び奥側の少なくとも両端部に凹凸が形成されていること
    を特徴とする請求項1に記載の連続繊維補強材の定着構造。
  3. 前記穿孔部の凹凸は、小判形の凹凸であること
    を特徴とする請求項2に記載の連続繊維補強材の定着構造。
  4. 前記穿孔部は、貫通孔であり、前記貫通孔の表面側及び奥側の少なくとも両端部に前記貫通孔より径の大きい拡径孔部が形成されていること
    を特徴とする請求項1に記載の連続繊維補強材の定着構造。
  5. 前記補強線材は、FRPストランドをすだれ状のシートとしたストランドシートからなること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の連続繊維補強材の定着構造。
  6. 前記拡張成形材の頂部の角度は、20°以上70°以下であること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の連続繊維補強材の定着構造。
  7. 前記拡張成形材は、頂部方向に貫通する直径1mm以上10mm以下の孔を有すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の連続繊維補強材の定着構造。
  8. 連続繊維補強材をコンクリート構造物のコンクリート内部に定着させる連続繊維補強材の定着構造であって、
    前記コンクリート構造物に形成された穿孔部と、この穿孔部に挿入された前記連続繊維補強材からなるシート状の連続繊維補強シートと、この連続繊維補強シートを丸める際に内包されて厚みでシート同士の間隔を保持して拡張部を形成する間隔保持材と、前記穿孔部に充填されて前記間隔保持材で間隔が保持された前記連続繊維補強シート同士の隙間を埋める充填材を備えること
    を特徴とする連続繊維補強材の定着構造。
  9. 前記連続繊維補強シートは、FRPストランドをすだれ状のシートとしたストランドシートからなること
    を特徴とする請求項8に記載の連続繊維補強材の定着構造。
  10. 前記連続繊維補強シートの前記拡張部のテーパー角度は、1.5°以上8.0°以下であること
    を特徴とする請求項8又は9に記載の連続繊維補強材の定着構造。
  11. 連続繊維補強材からなるシート状の連続繊維補強シートを既設コンクリート構造物のコンクリート内部に定着させて補強する既設コンクリート構造物の補強工法であって、
    前記既設コンクリート構造物に穿孔して穿孔部を形成する穿孔部形成工程と、前記穿孔部形成工程で形成した穿孔部に連続繊維補強シートを丸めた補強線材を挿入し、徐々に拡径する部位を有する拡張成形材で前記補強線材の端部を広げる補強線材挿入工程を行い、
    その後、前記穿孔部に充填材を充填する充填材充填工程を行って、充填材を硬化させ、
    前記既設コンクリート構造物に前記補強線材を定着させて一体化して補強すること
    を特徴とする既設コンクリート構造物の補強工法。
  12. 連続繊維補強材からなるシート状の連続繊維補強シートを既設コンクリート構造物のコンクリート内部に定着させて補強する既設コンクリート構造物の補強工法であって、
    前記既設コンクリート構造物に穿孔して穿孔部を形成する穿孔部形成工程と、前記穿孔部形成工程で形成した穿孔部に連続繊維補強シートの端部に厚みでシート同士の間隔を保持する間隔保持材を設置した状態で丸めて補強線材の端部に拡張部を形成して挿入する補強線材挿入工程を行い、
    その後、前記穿孔部に充填材を充填する充填材充填工程を行って、充填材を硬化させ、
    前記既設コンクリート構造物に前記補強線材を定着させて一体化して補強すること
    を特徴とする既設コンクリート構造物の補強工法。
  13. 前記補強線材挿入工程では、前記拡張部のテーパー角度が1.5°以上8.0°以下となるように前記補強線材の端部に拡張部を形成すること
    を特徴とする請求項11又は12に記載の既設コンクリート構造物の補強工法。
    補強工法
  14. 前記補強線材挿入工程では、充填材注入用の注入チューブを前記連続繊維補強シート内に包み込んで挿入し、
    前記充填材充填工程では、前記注入チューブを用いて前記連続繊維補強シートから引き抜きながら前記充填材を前記穿孔部に充填すること
    を特徴とする請求項11又は12に記載の既設コンクリート構造物の補強工法。
  15. 全周凹部形成治具を回転駆動しながら前記穿孔部の入り口を基点に円周方向に回転して前記穿孔部の内周面に全周に亘る凹凸を形成する全周凹凸形成工程を行うこと
    を特徴とする請求項11又は12に記載の既設コンクリート構造物の補強工法。
  16. 凹部形成治具を回転駆動しながら前後動して前記穿孔部の内周面に小判形凹凸を形成する小判形凹部形成工程を行うこと
    を特徴とする請求項11又は12に記載の既設コンクリート構造物の補強工法。
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