JP2023176851A - 液体吐出ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】液体吐出駆動電圧の電源から分極電圧を生成して、圧電アクチュエーターを分極することのできる液体吐出ヘッドを提供する。【解決手段】実施形態の液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエーター及び高電圧生成回路を備える。圧電アクチュエーターは、圧電体を備える。高電圧生成回路は、前記圧電アクチュエーターに与える液体吐出駆動電圧の電源から前記液体吐出駆動電圧よりも絶対値の大きい分極電圧を生成し、生成した前記分極電圧をコンデンサに蓄え、前記分極電圧の生成を停止する。液体吐出ヘッドは、前記液体の吐出をしない期間に、前記コンデンサに蓄えた前記分極電圧を前記圧電体に与えて分極する。【選択図】図6
Description
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
液体吐出ヘッドは、液体を吐出するチャネルを複数有している。各チャネルは、液体を吐出するノズル、ノズルに連通する圧力室、及び圧力室の容積を変えるアクチュエーターを備える。液体吐出ヘッドは、複数のチャネルの中から液体を吐出するチャネルを選択し、アクチュエーターに駆動信号を与えて駆動させる。アクチュエーターを駆動すると、液体で満たされている圧力室の容積が変わり、ノズルから液体を吐出する。
圧電体の圧電効果を利用して駆動する圧電アクチュエーターは、圧力室の容積を変える機能を実現する分極方向に圧電体を分極している。圧電体は、例えば液体吐出ヘッドの製造プロセスや液体吐出ヘッドを通常使用している間にも分極劣化が起きることがある。分極劣化が起きると、液体吐出ヘッドの液体の吐出性能が低下することがある。分極劣化した圧電アクチュエーターは、駆動方向と同方向の高電圧を所定時間印加することで再分極することができる。しかしながら、液体吐出駆動用の電源とは別に、再分極用の高電圧の電源を用意しなくてはならない。
本発明が解決しようとする課題は、液体吐出駆動電圧の電源から分極電圧を生成して、圧電アクチュエーターを分極することのできる液体吐出ヘッドを提供することにある。
本発明の実施形態の液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエーター及び高電圧生成回路を備える。圧電アクチュエーターは、圧電体を備える。高電圧生成回路は、前記圧電アクチュエーターに与える液体吐出駆動電圧の電源から前記液体吐出駆動電圧よりも絶対値の大きい分極電圧を生成し、生成した前記分極電圧をコンデンサに蓄え、前記分極電圧の生成を停止する。液体吐出ヘッドは、前記液体の吐出をしない期間に、前記コンデンサに蓄えた前記分極電圧を前記圧電体に与えて分極する。
以下、実施形態に従う液体吐出ヘッドについて、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
(第1実施形態)
第1実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
第1実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。モータ205は、駆動装置の一例である。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
インクジェットヘッド100~103は、夫々、インク流路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と連結する。各インクタンク315~318は、各インクジェットヘッド100~103の上方に配置する。待機時に、インクジェットヘッド100~103のノズル24(図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置321~324は、各インクジェットヘッド100~103内を大気圧に対して負圧、例えば-1.2kPaに調整している。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
続いて、インクジェットヘッド100~103の構成について説明する。以下は、図2~図6を参照しながら、インクジェットヘッド100について説明しているが、インクジェットヘッド101~103もインクジェットヘッド100と同じ構造である。
図2に示すように、インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるヘッド部2を備える。ヘッド部2は、フィルム配線基板の一例であるフレキシブルプリント配線板21と接続する。フレキシブルプリント配線板21は、中継基板の一例であるプリント基板22と接続する。ヘッド部2は、ノズル部の一例であるノズルプレート23を備える。ヘッド部2は、インク流路311を介して図1のインク供給圧力調整装置321と接続する。
インクを吐出する各チャネルのノズル24は、ノズルプレート23の第1の方向の例えばX方向に沿って配列する。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。ノズル24は、一列に限らず、複数列であってもよい。ヘッド部2の詳しい構成は、後述する。
フレキシブルプリント配線板21は、例えばポリイミドなどの合成樹脂フィルムを用いたフレキシブルなプリント配線基板である。フレキシブルプリント配線板21は、ドライバチップである駆動用のIC(Integrated Circuit)3を搭載している(以下、駆動ICと称す)。プリント基板22は、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂層と銅配線層を多重に積層した硬質のスルーホール基板である。制御部としての駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御基板17からプリント基板22を介して送られてくるプリントデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するよう各チャネルに駆動信号を与える。
図3~図5は、ヘッド部2の部分断面図である。ノズルプレート23は、圧力室基板4の一面に接合する。ノズルプレート23は、例えばポリイミドなどの樹脂又はステンレスなどの金属で形成した矩形状のプレートである。振動板41は、ノズルプレート23とは反対側の圧力室基板4の一面に接合する。振動板41は、外力を加えたときに変形する可撓性を有する。振動板41は、例えば可撓性を有するポリイミドフィルム又は金属などで形成した矩形状のプレートである。
圧力室42は、圧力室基板4に形成する。複数の圧力室42は、各ノズル24の位置に配列して、ノズル24とそれぞれ連通させている。圧力室42は、一例として、第2の方向の例えばZ方向に貫通する矩形状の開口を圧力室基板4に形成し、両側の開口をノズルプレート23と振動板41でそれぞれ塞ぐことによって、インクを充填する空間を形成している。圧力室42は、狭窄部を有するガイド流路43と連通し、さらに振動板41に形成した開口穴であるインク供給口44を介してインク供給マニホールド45に連通する。ガイド流路43は、圧力室42ごとに、圧力室基板4の振動板41側の一面に第3の方向の例えばY方向に溝状に形成する。インク供給マニホールド45は、振動板41の一面に接合したフレーム46内に形成する。インク供給マニホールド45は、X方向に延び、各チャネルのインク供給口44及びガイド流路43を介して、各チャネルの圧力室42とそれぞれ連通する。共通インク室としてのインク供給マニホールド45は、インク流路311と連通する(図1,図2参照)。
圧電アクチュエーター5は、圧力室42とは反対側の振動板41の一面に配置する。各チャネルの圧電アクチュエーター5は、振動板41を挟んで圧力室42と対向する位置に配列する。圧電アクチュエーター5と振動板41は、例えば接着剤で接合する。各圧電アクチュエーター5は、Z方向における振動板41とは反対側の一面を支持部材47にそれぞれ接合することによって固定している。
特に図3に示すように、圧電アクチュエーター5は、例えばピエゾ素子などの圧電体51、第1の内部電極52、及び第2の内部電極53を交互に層状に積層して形成した積層型圧電アクチュエーター5である。各圧電体51は、分極方向が例えばZ方向において互いに逆向きに配置し、d33モードで変形させる。第1の内部電極52と第2の内部電極53は、圧電体51の主面にそれぞれ形成した導電膜である。第1の内部電極52は、それぞれY方向における圧電アクチュエーター5の一方の端面まで形成し、この端面に形成した第1の外部電極54に接続する。第2の内部電極53は、それぞれY方向における圧電アクチュエーター5の他方の端面まで形成し、この端面に形成した第2の外部電極55に接続する。ダミー層58は、圧電体51と同材料である。ダミー層58は、内部電極を設けず、電界が印加されないので変形しない。ダミー層58は、圧電アクチュエーター5を支持部材47に固定するベースとなり(図4参照)、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
特に図4に示すように、各チャネルの圧電アクチュエーター5同士の間に、溝59を介して同様の構成の圧電アクチュエーター50を配置し、例えば支柱にしてもよい。圧電アクチュエーター50は、隣接する圧力室42の間の隔壁40にあたる位置に配置する。但し、この圧電アクチュエーター50は、構造材として使用し変形させない。
複数の圧電体51を積層した圧電アクチュエーター5の場合、一例として、薄板状に加工した各圧電体51の主面に第1の内部電極52と第2の内部電極53をそれぞれ成膜する。そして圧電体51同士を積層し焼成して一体にする。その後、第1の外部電極54と第2の外部電極55を成膜する。そして詳しくは後述する分極電圧で圧電体51を着分極する。圧電体51は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの鉛含有圧電材料、或いはニオブ酸ナトリウムカリウムなどの鉛非含有圧電材料で形成する。第1の内部電極52と第2の内部電極53は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で成膜する。第1の外部電極54と第2の外部電極55は、メッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどで成膜する。
各チャネルの第1の外部電極54は、フレキシブルプリント配線板21の個別配線56にそれぞれ接続する(図3参照)。フレキシブルプリント配線板21は、基材26,個別配線56,接着層27,絶縁層28を有する。フレキシブルプリント配線板21は、ハンダメッキ層29を形成した領域が第1の外部電極54と対向するように配置し、ハンダを溶融させることによって各チャネルの第1の外部電極54と個別配線56を電気的及び機械的に接続する。一方、各チャネルの第2の外部電極55は、共通配線(不図示)に接続し、例えばフレキシブルプリント配線板21を介してグランド(GND)に接続する。
図6は、インクジェットヘッド100の制御系の回路図である。図6に示すように、圧電アクチュエーター5は、第1の外部電極54を個別配線56に接続する。各圧電アクチュエーター5からの個別配線56は、駆動IC3の出力回路の駆動ドライバD(すなわち、駆動回路)の出力端子にそれぞれ接続する。第1の外部電極54と個別配線56の接続点が圧電アクチュエーター5の一方の端子である。以下、この一方の端子を個別端子と称す。
駆動IC3は、駆動ドライバDを保護する出力保護ダイオード31を備える。出力保護ダイオード31は、一例として、カソードを駆動ドライバDの出力端子に接続し、アノードを駆動IC3のグランド(GND)に接続したダイオードである。出力保護ダイオード31は、インクを吐出する各チャネル(#1ch~#nch)の駆動ドライバDごとに設ける。なお、出力回路のトランジスタの構造により寄生ダイオードが構成される場合は、寄生ダイオードを出力保護ダイオードの代わりに用いてもよい。出力保護ダイオード31或いは寄生ダイオードは、駆動IC3の出力端子と基準電位との間に、駆動IC3が駆動電圧を出力したときに導通しない方向に接続したダイオードの一例である。基準電位は、例えばグランド(GND)である。
駆動IC3は、駆動電圧V1の電源である第1の駆動電源32、及び駆動電圧V2の電源である第2の駆動電源33と接続する。第1の駆動電源32および第2の駆動電源33は、それぞれ正極を駆動IC3に接続し、負極を例えばグランド(GND)に接続する。すなわち、この例では正電圧を駆動電圧V1,V2としている。駆動電圧V1は、例えば20Vである。駆動電圧V2は、例えば10Vである。グランド(GND)は、例えば0Vである。駆動電圧V1と駆動電圧V2は、液体吐出駆動電圧の一例である。
駆動IC3は、さらに制御信号の信号線および制御電源と接続する。制御信号は、インクを吐出する印字実行時にインクジェットプリンタ10の制御基板17(図1参照)から送られてくるプリントデータ、後述する分極実行時に駆動ドライバDを制御する信号などである。制御電源は、例えば駆動IC3を動作させる電源である。
一方、各圧電アクチュエーター5の第2の外部電極55は、共通配線57に共通接続する。第2の外部電極55と共通配線57の接続点が圧電アクチュエーター5の他方の端子である。以下、この他方の端子をコモン端子と称す。共通配線57は、スイッチS1であるPhoto MOSスイッチ6を介して、グランド(GND)に接続する。すなわち、各圧電アクチュエーター5のコモン端子に、一例として0Vを共通電位として与える。
さらに、各圧電アクチュエーター5のコモン端子は、共通配線57を利用して、分極電源である高電圧生成回路7に共通接続する。分極電源である高電圧生成回路7は、負電圧の出力を共通配線57に接続し、正電圧の出力を例えばグランド(GND)に接続する。高電圧生成回路7は、例えば第1の駆動電源32からの正電圧を高圧生成電源にして昇圧し、駆動電圧V1よりも絶対値の大きい電圧を生成する。図6の例では、駆動電圧V1とは逆極性の負電圧を生成する。高電圧生成は、例えば液体の吐出を行う為に圧電アクチュエーター5を駆動する期間外に行う。
生成した電圧は、詳しくは後述するが、高電圧生成回路7が備えるコンデンサに分極電圧として蓄える。高電圧生成回路7は、分極電圧がコンデンサに蓄えられると、電圧の生成を停止する。そして通常駆動を行わない期間、すなわちインクを吐出して印字を行わない期間にコンデンサに蓄えた分極電圧を各圧電アクチュエーター5のコモン端子に共通に与える。分極電圧は、例えば-50V~-70Vである。各圧電アクチュエーター5のコモン端子に分極電圧を与える際、個別端子側を例えば駆動電圧V1の正電圧に固定すれば、より高い電圧で圧電アクチュエーター5を分極することができる。
Photo MOSスイッチ6は、通常駆動を行う期間にONして圧電アクチュエーター5のコモン端子を共通電位(例えば0V)に接続するか、或いは分極実行時にOFFして共通電位から切り離すかを切り替える。Photo MOSスイッチ6をOFFすると、高電圧生成回路7から圧電アクチュエーター5のコモン端子に分極電圧を与えることが可能な状態になる。
Photo MOSスイッチ6は、例えばPhoto MOSトランジスタで構成する。Photo MOSトランジスタは、例えばPanasonic社の「AQV255G3A」を用いる。但し、Photo MOSスイッチ6は、片方向スイッチ用の接続として使用する。具体的には、Photo MOSトランジスタの6番ピンと4番ピンを短絡して5番ピンとの間をスイッチとする。この場合、2つのPhoto MOSトランジスタを並列に使うことになる。但し、この接続では、5番ピンをアノードとし、6,4番ピンをカソードとする寄生ダイオード62が、スイッチ内並列ダイオードとなる。
圧電アクチュエーター5のコモン端子をスイッチする場合、通常動作である印字実行時には、スイッチ素子としてのPhoto MOSスイッチ6は双方向にONしなくてはならない。一般に、Photo MOSスイッチを双方向スイッチとして使用するには2つのPhoto MOSトランジスタを直列に接続するが、直列接続するとON抵抗が大きくなってしまう。印字実行時のPhoto MOSスイッチ6のON抵抗は小さいことが望ましい。この実施形態ではPhoto MOSスイッチ6を、6番ピンと4番ピンを短絡して5番ピンとの間をスイッチとする片方向スイッチの使い方に接続する。この場合、2つのPhoto MOSトランジスタを並列に使う並列モードになるのでON抵抗が直列の場合の1/4に減る。しかしこの接続では5番ピンをアノードとし、6,4番ピンをカソードとする寄生ダイオード62が、並列ダイオードとしてスイッチに入ってしまう。分極実行時には共通配線57を共通電位であるグランド(GND)から分離する必要があるので、分極実行時にはこの寄生ダイオード62をOFFしなくてはならない。本実施形態では、分極に際してインク吐出用の駆動電源とは逆極性の分極電圧を高電圧生成回路7で生成してコモン端子に与えるようにする。これにより分極時には寄生ダイオード63を、分極電圧を阻止する方向にOFF動作させる。
Photo MOSスイッチ6のON/OFFは、On1によりLED64をON/OFFさせることによって切り替える。LED64のON/OFFの切り替えは、例えば駆動IC3に制御ポートを設けて駆動IC3経由で行うようにする。或いはインクジェットヘッド100を組み立てる際に使用する回路を接続して行うようにしてもよい。
続いて、インクを吐出する動作と、圧電アクチュエーター5の圧電体51を分極する動作について説明する。通常駆動であるインクを吐出する動作は、Photo MOSスイッチ6をONにして行う。駆動IC3の各駆動ドライバDは、駆動電圧V1,V2及びグランド(GND)を使って、インクを吐出させる駆動波形を圧電アクチュエーター5の個別端子に与える。どの圧電アクチュエーター5を駆動させるかは、例えばプリントデータに基づく。
図7は、駆動波形の一例である。共通電位としてグランド(GND)、例えば0Vをコモン端子に与えている圧電アクチュエーター5を駆動させる場合、個別端子に例えば電圧V2を与えて待機状態とする。このとき圧電体51の分極軸の向きに電界が印加され、圧電アクチュエーター5が積層方向(Z方向)に伸長して圧力室42の容積が縮小した状態になっている。これはインク吐出のタイミングに先立って行っておく。その後インク吐出のタイミング(図7の時刻t1)で最初に個別端子の電位をグランド(GND)に下げることで、伸長していた圧電アクチュエーター5が元に戻り、すなわち相対的に収縮し、圧力室42の容積が相対的に拡張する。圧力室42の容積が拡張した分、ガイド流路43を介して圧力室42内にインクが流れ込む。そして例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間経過後、図7の時刻t2において個別端子に電圧V2を与えると、圧電アクチュエーター5が積層方向(Z方向)に伸長して相対的に圧力室42の容積が縮小することでノズル24からインクが吐出する。そして例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間経過後、図7の時刻t3において個別端子に電圧V1を与え、所定時間後の時刻t4で電圧V2に戻す。その際の圧電アクチュエーター5の伸長と復帰によって圧力室42の容積を縮小、復帰させ、この動作によって残留振動を減衰させる。このように圧電アクチュエーター5の積層方向の縦振動に合わせて圧力室42の容積が変わり、インクを吐出することができる。その後、個別端子に電圧V2を与えて待機状態とする。
印字実行時は、Photo MOSスイッチ6には、同時期に駆動させる圧電アクチュエーター5の電流が集中するので、印字品質を保つためにはON抵抗が小さくなくてはならない。またPhoto MOSスイッチ6の発熱を抑えるためにもON抵抗が小さいことが望ましい。そのためPhoto MOSスイッチ6を片方向スイッチモードで使用してON抵抗を下げる。寄生ダイオード62は、印字実行時にONする向きとなるタイミングが発生するが、印字実行時は寄生ダイオード62がONでもOFFでも構わない。印字実行時はPhoto MOSスイッチ6をONにするからである。Photo MOSスイッチ6のMOSトランジスタ部分の電圧降下は、寄生ダイオード62がONしたときの電圧降下よりも小さいのでスイッチ全体のON抵抗は、MOSトランジスタ部分のON抵抗に支配され、寄生ダイオード62は動作にほとんど影響しない。
次に、圧電アクチュエーター5の圧電体51を分極する動作について説明する。圧電アクチュエーター5の分極は、適宜実行できる。一例として、インクジェットヘッド100の検査工程で、インクジェットヘッド100を検査装置に取り付けた後、テスト印刷を始める前に実行できる。或いは、インクジェットヘッド100がインクジェットプリンタ10に搭載されて最初の印字を行う前に、インクジェットプリンタ10の検査工程で実行することができる。或いは、インクジェットヘッド100がインクジェットプリンタ10に搭載されて通常印刷を行える状態のとき、印字しない休止時間中に所定時間毎、或いは所定量を印刷する毎に実行することができる。或いは、インクジェットヘッド100がインクジェットプリンタ10に搭載されて通常印刷を行える状態のとき、インクジェットプリンタ10への電源投入毎に実行することができる。或いは、所定のテストパターンを印刷し、テストパターン上に異常が認められる場合にユーザーに実行を促し、ユーザーがインクジェットプリンタ10に対して所定の操作を行うことをきっかけに実行することができる。或いは、ユーザーがインクジェットプリンタ10に対して所定の操作を行うと実行されるようにしておき、ユーザーが印刷結果の不具合を認識したときにユーザーの意思で実行を指示するようにすることができる。或いは、インクジェットプリンタ10内に圧電アクチュエーター5の静電容量を測定する機能を設けておき、インクジェットプリンタ10の制御部(例えば制御基板17)が静電容量の低下を検出したときに実行されるようにしておくことができる。なお、分極は、圧電体51の再分極であってもよく初回の着分極であってもよい。
分極実行時、Photo MOSスイッチ6をOFFして、高電圧生成回路7から分極電圧を圧電アクチュエーター5のコモン端子に与えることが可能な状態とする。分極電源である高電圧生成回路7は、負電圧を圧電アクチュエーター5のコモン端子に与える。Photo MOSスイッチ6の寄生ダイオード62の向きは、この負電圧が流れない向き、すなわち圧電アクチュエーター5のコモン端子側がアノードとなる向きにしている。従って、寄生ダイオード62は、LED64の光入力がOFFでかつコモン端子が負電位の場合にOFFとなる。すなわち、寄生ダイオード62は、高電圧生成回路7が負電圧を生じている間これを阻止する方向にOFF動作し、高電圧生成回路7へ電流を流さない。
図8は、分極電圧を生成する高電圧生成回路7の一例として、インダクターL1とダイオドードD9を用いたフライバック回路71の構成を示している。フライバック回路71は、インク吐出用の電圧V1(例えば20V)を高圧生成電源とし、スイッチS2のスイッチングよりインダクターL1に負電圧を発生させる。On2によるスイッチS2のON/OFFの切り替えは、例えば駆動IC3に制御ポートを設けて駆動IC3経由で行うようにする。或いはインクジェットヘッド100を組み立てる際に使用する回路を接続して行うようにしてもよい。
インダクターL1で発生した負電圧は、コンデンサC8に蓄え、電圧V1よりも絶対値の大きい分極電圧(例えば―50V)にする。コンデンサC8に分極電圧が蓄えられたらスイッチS2のスイッチングは停止する。コンデンサC8に蓄えた分極電圧は、抵抗R5(100kΩ)を介して出力し、共通配線57を通じて各圧電アクチュエーター5のコモン端子に夫々与える。さらに駆動IC3を制御して個別端子の電圧を駆動電圧V1(例えば20V)に固定すると、70Vの電圧で圧電アクチュエーター5の圧電体51を分極できる。分極時間は例えば6秒間である。70Vは圧電アクチュエーター5の圧電体51に加わる電界の大きさが抗電界を越える電圧である。
コンデンサC8の容量(例えば4.7μF)は、圧電アクチュエーター5の静電容量の合計値の10倍より少し大きくしている。圧電アクチュエーター5の静電容量の合計値は、例えば静電容量が1000pFの圧電アクチュエーター5を300個配置した場合、0.3μFである。
続いて、図9~図10を参照しながら、等価回路のシミュレーション結果について説明する。図9は、図7の駆動波形を用いたときの個別端子の電位V(drive)とコモン端子の電位V(vcom)である。すなわち、例えば電圧V2(10V)を与えて待機している圧電アクチュエーター5に、ヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間に相当する例えば2μsの間、0Vを与えて圧力室42の容積を相対的に拡張させ、電圧V2(10V)を与えて圧力室42の容積を戻して例えば2μs待ってインクを吐出させ、その後、例えば2μsの間、電圧V1(20V)を与えて圧力室42を収縮させてから電圧V2(10V)に戻して残留振動を減衰させる。駆動波形は、分極を行っていない通常駆動の期間であればどのタイミングで出力してもよい。図10(d)は、一例として、最初の50μsのあたりで駆動波形を出力している。この通常駆動の期間中、Photo MOSスイッチ6であるスイッチS1はON、フライバック回路71のスイッチS2はOFFである(図10(a)(b)参照)。
その後、分極のシーケンスに入る。すなわち、Photo MOSスイッチ6であるスイッチS1をOFFした後、フライバック回路71のスイッチS2を例えば200Hzのスイッチング周波数でスイッチング(ON/OFF)して、例えば10mHのインダクターL1に負電圧を発生させる(図10(a)(b)参照)。スイッチングによってインダクターL1に発生した負電圧は、コンデンサC8に蓄える。図10(c)はコンデンサC8の電圧を示す。
コンデンサC8に所定の電圧が蓄えられたらスイッチS2のスイッチングを止めて電圧の生成を停止する。このシミュレーションではスイッチング開始から1.75秒で-51Vを生成し、この時点以降スイッチS2を常時OFFとしている。すなわち、スイッチングを止める。そうするとコンデンサC8に51Vの電圧が蓄えられた状態になる。なお、このシミュレーションでは所定のスイッチング回数でスイッチS2のスイッチングを止めたが、コンデンサC8の電圧をモニターして所定の電圧に達したときにスイッチングを止めるようにしてもよい。
こうしてコンデンサC8に蓄えた負電荷は、分極電圧として圧電アクチュエーター5のコモン端子に与える(図10(d)のV(vcom)参照)。個別端子側は、駆動電圧V1の正電圧(例えば20V)に固定する(図10(d)のV(drive)参照)。結果、圧電アクチュエーター5の圧電体51に例えば70Vの電圧が印加され、着分極が始まる。図10(d)のシミュレーション結果から明らかなように、コモン端子の電位V(vcom)と各個別端子の電位V(drive)との電位差が、約6秒間、約70Vに保たれて着分極できる。必要な着分極時間が経過したらPhoto MOSスイッチ6であるスイッチS1をONするとコモン端子の電位V(vcom)はグランド(GND)(例えば0V)に戻り、通常駆動が行える状態になる。それと共にコンデンサC8に溜まっている分極電圧は放電されていく。
なお、フライバック回路71の抵抗R5は圧電アクチュエーター5に問題があった場合も過電流が流れないように制限する保護抵抗である。この抵抗の値を小さくすれば放電時間は早くなる。スイッチング周波数を高くすればインダクターL1をもっと小さくすることができるが、ノイズを発生し易くなる。抵抗R6を小さくすれば昇圧時間を短くすることができるが、ノイズを発生し易くなる。
Photo MOSスイッチ6であるスイッチS1のOFFは、図10(a)のタイミングよりも前に行ってもよい。例えば、印字を実行する駆動動作が終わった直後にスイッチS1をOFFにしてもよい。
圧電アクチュエーター5のコモン端子は、グランド(GND)でなくてもよい。図11に変形例を示すように、圧電アクチュエーター5のコモン端子は、グランド(GND)に代えて駆動電圧V3の駆動電源34に接続してもよい。この場合、Photo MOSスイッチ6の接続先は、0Vに代わり電圧V3の正電圧となる。この接続であっても、インク吐出動作時はLED64に電流を流してPhoto MOSスイッチ6を双方向にオン動作させることができ、分極時にはLED64に流す電流を止めて高電圧生成回路7から共通配線57に負電圧を与えればPhoto MOSスイッチ6とその寄生ダイオード62はOFFする。この接続の場合、個別端子に0Vを与えるタイミングでは圧電アクチュエーター5には分極方向と逆向きの電圧が加わる。すなわち圧電アクチュエーター5に加わる電圧がゼロを横切るため圧電体51のヒステリシスによる作用で同じ電圧振幅でも圧電アクチュエーター5の変形量を大きく取ることができるという利点がある。電圧V3はインク吐出駆動電圧電源V1,V2と0Vの間の電位とし、例えば3Vとする。この構成では分極方向と逆向きの電圧を印加するタイミングがあるので分極劣化の恐れは増加するが、電圧V3の値が小さければ影響は小さく、更に、仮に分極劣化を起こしたとしてもこの構成であれば再分極動作によって元の分極状態に戻すことができる。
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に従うインクジェットヘッド100について説明する。第2実施形態に従うインクジェットヘッド100は、図12に示すように、高電圧生成回路7をコッククロフト・ウォルトン回路72で構成したことを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については詳しい説明を省略する。
続いて、第2実施形態に従うインクジェットヘッド100について説明する。第2実施形態に従うインクジェットヘッド100は、図12に示すように、高電圧生成回路7をコッククロフト・ウォルトン回路72で構成したことを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については詳しい説明を省略する。
高電圧生成回路7を図12のコッククロフト・ウォルトン回路72で構成した場合、各部の波形は、図13~図15に示す等価回路のシミュレーション結果のようになる。なお、図14(b)における駆動波形の出力は、第1実施形態の図9と同じである。図13は、コッククロフト・ウォルトン回路72のコンデンサC3,C1,C4,C5,C6,C7及びダイオードD2,D3,D4,D5,D6,D7で構成する昇圧部へ入力する発振回路B2の波形である。発振回路B2は、駆動電圧V1を高圧生成電源として、20V、200Hzのパルスを発生させる。発振回路B2は、例えば上述のフライバック回路71のスイッチS2がスイッチングする期間と同様に、印字を実行していない期間に発振する。発振回路B2は、所定の昇圧を達成した以降のタイミングで発振を停止する。発振を停止したとき発振回路B2の出力電圧は0Vである。
図14(a)は、コッククロフト・ウォルトン回路72の出力となるコンデンサC7の右端子の電圧波形である。発振回路B2が発振を開始するとコンデンサC7が抵抗R5と接続する点の電位は下がっていく。このシミュレーションでは発振開始から0.7秒で-57Vを生成して平衡する。この状態にあるとき発振回路B2の発振を停止すると、コンデンサC7,C5,C1からなる直列コンデンサに電圧57Vが蓄えられた状態になる。図15は、コンデンサC7,C5,C1の各端子の電位の推移を示している。
こうしてコンデンサC7,C5,C1に蓄えた負電荷(例えば-57V)は、分極電圧として圧電アクチュエーター5のコモン端子に与える(図14(b)のV(vcom)参照)。個別端子側は、駆動電圧V1の正電圧(例えば20V)に固定する(図14(b)のV(drive)参照)。結果、圧電アクチュエーター5の圧電体51に例えば70Vの電圧が印加され、着分極が始まる。図14(b)のシミュレーション結果から明らかなように、コモン端子の電位V(vcom)と各個別端子の電位V(drive)との電位差が、約6秒間、約70Vに保たれて着分極できる。必要な着分極時間が経過したらPhoto MOSスイッチ6であるスイッチS1をONするとコモン端子の電位V(vcom)はグランド(GND)(例えば0V)に戻り、通常駆動が行える状態になる。それと共にコンデンサC7,C5,C1からなる直列コンデンサに溜まった分極電圧は放電されていく。
この実施形態では圧電アクチュエーター5の静電容量の合計は0.3μFであり、コッククロフト・ウォルトン回路72の各コンデンサC3,C1,C4,C5,C6,C7の静電容量は6.2μFである。すなわちコンデンサC3,C1,C4,C5,C6,C7の静電容量は圧電アクチュエーター5の静電容量の合計の約20倍とし、フライバック回路71のコンデンサC8よりも大きな静電容量としている。コッククロフト・ウォルトン回路72では、各コンデンサに加わる電圧は分散されるので、フライバック回路71の例よりもコンデンサの耐電圧は小さくて済み、そのため大容量のコンデンサを使い易いという利点がある。
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に従うインクジェットヘッド100について説明する。図16に示すように、第3実施形態のインクジェットヘッド100は、第2実施形態でコッククロフト・ウォルトン回路72の昇圧部へ入力する発振回路B2の波形に相当する高圧生成入力波形を、共通配線57を介して、圧電アクチュエーター5のコモン端子から入力する。この場合、スイッチS3である第2のPhoto MOSスイッチ61をコモン端子と高電圧生成回路7の出力(-/out)の間に配置し、スイッチS4である第3のPhoto MOSスイッチ66をコモン端子と高電圧生成回路7の高圧生成入力端子の間に配置する。
続いて、第3実施形態に従うインクジェットヘッド100について説明する。図16に示すように、第3実施形態のインクジェットヘッド100は、第2実施形態でコッククロフト・ウォルトン回路72の昇圧部へ入力する発振回路B2の波形に相当する高圧生成入力波形を、共通配線57を介して、圧電アクチュエーター5のコモン端子から入力する。この場合、スイッチS3である第2のPhoto MOSスイッチ61をコモン端子と高電圧生成回路7の出力(-/out)の間に配置し、スイッチS4である第3のPhoto MOSスイッチ66をコモン端子と高電圧生成回路7の高圧生成入力端子の間に配置する。
但し、第2のPhoto MOSスイッチ61と第3のPhoto MOSスイッチ66は、双方向スイッチモードで使用する。つまり片方向スイッチとする第1のPhoto MOSスイッチ6とはモードが異なる。具体的には、Photo MOSトランジスタの6番ピンと4番ピンとの間をスイッチとする。この場合、2つのPhoto MOSトランジスタを直列に使うことになる。そしてこの接続では、互いに逆接続された寄生ダイオード63は常時オフである。
第3実施形態は、高電圧生成回路7に駆動電圧V1を供給せず、代わりに第2のPhoto MOSスイッチ61と第3のPhoto MOSスイッチ66のON/OFFを切り替え、圧電アクチュエーター5のコモン端子を高電圧生成回路7の入力と出力に選択的に接続する。すなわち、コッククロフト・ウォルトン回路72が負電圧を生成するために生成している例えば200Hzのスイッチング波形を、駆動IC3の出力回路を利用して生成し、圧電アクチュエーター5を経由してコッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73へ入力する。その他の第1実施形態と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
この実施形態では高電圧生成回路7は、例えば図17に示すコッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73である。コッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73の入力はコンデンサC1の左側、出力はコンデンサC7の右側である。
図18は、等価回路のシミュレーション結果である。スイッチS1,S3,S4は、図18(a)のように制御する。スイッチS1は第1のPhoto MOSスイッチ6であり、スイッチS3は第2のPhoto MOSスイッチ61であり,スイッチS4は第3のPhoto MOSスイッチ66である(図16参照)。通常駆動中、スイッチS1はON、スイッチS3とスイッチS4はOFFする。そして例えば印字をしない期間にスイッチS1とスイッチS3をOFF、スイッチS4をONして、駆動IC3の出力をコッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73の高圧生成入力に接続する。さらに駆動IC3から例えば20V、200Hzのパルスを出力する。このシミュレーションでは出力開始から1.75秒後にコンデンサC7の右端子電圧は-73Vに達する。この状態にあるとき駆動IC3の出力を停止し、スイッチS4をOFFすると、コンデンサC7,C5,C1からなる直列コンデンサに高電圧(例えば56V)が蓄えられた状態になる。このとき同時にC7,C5,D3,C3からなる直列回路、C7,D5,C4,C3からなる直列回路、D7,C6,C4,C3からなる直列回路等にも同じ高電圧(例えば56V)が蓄えられている。
その後スイッチS3をONして、C7,C5,D3,C3からなる直列回路等に蓄えた負電荷を圧電アクチュエーター5のコモン端子に与える。このとき負電荷はコモン端子を介して静電容量性の圧電アクチュエーター5を充電するのでC7,C5,D3,C3からなる直列回路等に蓄えた負電圧の大きさは小さくなり、例えば56Vから50Vに低減して、その低減した電圧がアクチュエーター5のコモン端子の負電圧の大きさとなる(図18(c)のV(vcom)参照)。このときの低減率は、圧電アクチュエーター5の静電容量の合計と、コッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73のコンデンサの各直列回路(C7,C5,D3,C3等)の合成静電容量との比で決まる。低減率が大きいと所定の分極電圧を得ようとしたときの回路各部の耐電圧の要求が大きくなるので、この低減率は小さいことが好ましい。低減率を抑えるには圧電アクチュエーター5の合計静電容量に対してコッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73の各直列回路(C7,C5,D3,C3等)の静電容量を大きく取っておけばよい。この実施形態では、圧電アクチュエーター5の静電容量の合計は0.3μFであり、これに対してコッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73の各コンデンサC3,C1,C4,C5,C6,C7の静電容量は夫々6.2μFとし、約20倍に設定している。その後、個別端子側を、駆動電圧V1の正電圧(例えば20V)に固定する(図18(c)のV(drive)参照)。結果、圧電アクチュエーター5の圧電体51にその差の例えば約70Vの電圧がコモン端子を負とする向きに印加され、着分極が始まる。図18(c)のシミュレーション結果から明らかなように、コモン端子の電位V(vcom)と各個別端子の電位V(drive)との電位差が、約5秒間、約70Vに保たれて着分極できる。必要な着分極時間が経過したらスイッチS3をOFF、スイッチS4をONした後、スイッチS1をONするとコモン端子の電位V(vcom)はグランド(GND)(例えば0V)に戻り、通常駆動が行える状態になる。それと共にコンデンサC7,C5,C1からなる直列コンデンサに溜まった分極電圧は放電されていく。
なお、最後のタイミングでスイッチS4をONしているのは、コッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73の入力をハイインピーダンスにするとシミュレーションが不安定になるためである。スイッチS4はOFFのままでもよく、一旦ONにしその後にOFFにしてもよい。スイッチS1がONの間は、スイッチS4のON/OFFは回路の動作に大きく影響しない。
また、駆動IC3から例えば20V、200Hzのパルスを出力する間にノズル24からインクを吐出してしまうおそれがあるが、例えばノズル面をキャップしておけばよい。あるいはインクを吐出しないように波形を微調整してもよい。ノズル24内に形成されるインクのメニスカスの振動によってノズル24から空気を吸い込んでしまうおそれがある場合は、インクに弱正圧を与えてメニスカスを内側に引き込まないようにしておけばよい。これによりノズル24からの空気の混入を防ぐ。その間、圧電アクチュエーター5の充放電によって圧電アクチュエーター5が発熱するが温度が上昇すると分極の機能が向上する。温度を上げるために波形の周期を上げてもよい。温度を上げることを目的にして圧電アクチュエーター5を駆動し、その後に電圧を与えて分極処理してもよい。
第3実施形態で説明したように分極を行う前に圧電アクチュエーター5を駆動して圧電アクチュエーター5の温度を上げておく操作を行うことによって、より小さい電圧で短時間に確実な分極を効果的に行うことができる。この構成は第3実施形態の場合にだけに有効なものではない。第1実施形態、第2実施形態と組み合わせて各実施形態による分極の前に圧電アクチュエーター5を駆動して圧電アクチュエーター5の温度を上げておいてもよい。
以上説明したように、上述のいずれかの実施形態によれば、インク吐出用の駆動電圧の電源から分極電圧を生成して、圧電アクチュエーター5を分極処理することが可能である。
すなわち、圧電アクチュエーター5の分極には、インク吐出用の駆動電圧よりも高い電圧を必要とする。そのためにインクジェットヘッド100外に分極電源を準備すると、高圧電源線をヘッド部2にまで設けなくてはならないが、インクジェットヘッド100の接続コネクタやケーブルは多極でピッチが細かく、高圧電源を引き回すには向かない。またインクジェットヘッド100へ供給する配線ケーブルは多くの場合ヘッドの移動に伴って動くので断線の恐れがあり、断線した場合に人が触れるかもしれない危険性や断線した場所にインクなどが付着して異常電流が流れる恐れがあるためである。上述のいずれかの実施形態は、分極用の高圧電源を準備しなくても圧電アクチュエーター5を分極できるという利点がある。
さらに、上述したフライバック回路71やコッククロフト・ウォルトン回路72,コッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部73などのスイッチング昇圧回路で高電圧の分極電圧の生成を、印字をしていない期間に実行可能な構成としたことにより、スイッチング昇圧回路からノイズが発生しても、吐出のための駆動波形に影響を与えることが抑えられる。また、回路に常時大きな電圧が印加されている状態を避けることができ、安全性、信頼性の点でも望ましい。
上述の実施形態は、駆動電圧V1,V2を正電圧にしたが、分極方向がこの実施形態と逆転している場合には負電圧にする。駆動電圧V1,V2を負電圧とした場合、例えば図6の回路においては、第1の駆動電源32と第2の駆動電源33の正極と負極、高電圧生成回路7の正極と負極、第1のPhoto MOSスイッチ6の並列ダイオード及び各出力保護ダイオード31のカソードとアノードの接続を逆にする。
圧電アクチュエーター5は、複数の圧電体51を積層した積層型に限らない。圧電体51が単一層の圧電アクチュエーターであってもよい。また、駆動電圧を印加したときのアクチュエーターの動作は、縦振動に限らない。さらに、ドロップオンデマンド・ピエゾ方式に限らず、コンティニアス方式に適用してもよい。
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出装置の一例として説明したが、液体吐出装置は、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10 インクジェットプリンタ
100~103 インクジェットヘッド
2 ヘッド部
24 ノズル
3 駆動IC
5 圧電アクチュエーター
56 個別配線
57 共通配線
6 第1のPhoto MOSスイッチ
61 第2のPhoto MOSスイッチ
66 第3のPhoto MOSスイッチ
7 高電圧生成回路
71 フライバック回路
72 コッククロフト・ウォルトン回路
73 コッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部
100~103 インクジェットヘッド
2 ヘッド部
24 ノズル
3 駆動IC
5 圧電アクチュエーター
56 個別配線
57 共通配線
6 第1のPhoto MOSスイッチ
61 第2のPhoto MOSスイッチ
66 第3のPhoto MOSスイッチ
7 高電圧生成回路
71 フライバック回路
72 コッククロフト・ウォルトン回路
73 コッククロフト・ウォルトン回路の昇圧部
Claims (4)
- 圧電体を備える圧電アクチュエーターと、
前記圧電アクチュエーターに与える液体吐出駆動電圧の電源から前記液体吐出駆動電圧よりも絶対値の大きい分極電圧を生成し、生成した前記分極電圧をコンデンサに蓄え、前記分極電圧の生成を停止する高電圧生成回路と、を備え、
前記液体の吐出をしない期間に、前記コンデンサに蓄えた前記分極電圧を前記圧電体に与えて分極することを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記高電圧生成回路は、前記液体の吐出をしない期間に前記分極電圧を生成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記高電圧生成回路は、インダクターとダイオードを用いたフライバック回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記高電圧生成回路は、複数のダイオードとコンデンサを用いたコッククロフト・ウォルトン回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022089374A JP2023176851A (ja) | 2022-06-01 | 2022-06-01 | 液体吐出ヘッド |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022089374A JP2023176851A (ja) | 2022-06-01 | 2022-06-01 | 液体吐出ヘッド |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023176851A true JP2023176851A (ja) | 2023-12-13 |
Family
ID=89122616
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022089374A Pending JP2023176851A (ja) | 2022-06-01 | 2022-06-01 | 液体吐出ヘッド |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2023176851A (ja) |
-
2022
- 2022-06-01 JP JP2022089374A patent/JP2023176851A/ja active Pending
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