JP2023132399A - 液体吐出ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電アクチュエーターを再分極することのできる液体吐出ヘッドを提供する。【解決手段】実施形態の液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエーター、駆動IC、及び切替回路を備える。複数の圧電アクチュエーターは、圧電体、駆動電圧を与える一方の端子、および共通電位を与える他方の端子を備える。駆動ICは、液体の吐出動作時に、駆動電圧を出力して圧電アクチュエーターを駆動する複数の駆動回路、及び各駆動回路の出力端子と基準電位との間に、駆動回路が駆動電圧を出力したときに導通しない方向にそれぞれ接続した複数のダイオードを備える。切替回路は、圧電アクチュエーターの他方の端子を、共通電位に接続するか分極電圧源に接続するかを切り替える。液体吐出ヘッドは、圧電体の分極実行時に、駆動ICの他の電源端子を開放し、分極電圧源との接続に切替回路を切り替え、ダイオードを介して圧電アクチュエーターに分極電圧を与える。【選択図】図6
Description
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
液体吐出ヘッドは、液体を吐出するチャネルを複数有している。各チャネルは、液体を吐出するノズル、ノズルに連通する圧力室、及び圧力室の容積を変えるアクチュエーターを備える。液体吐出ヘッドは、複数のチャネルの中から液体を吐出するチャネルを選択し、アクチュエーターに駆動信号を与えて駆動させる。アクチュエーターを駆動すると、液体で満たされている圧力室の容積が変わり、ノズルから液体を吐出する。
圧電体の圧電効果を利用して駆動する圧電アクチュエーターは、圧力室の容積を変える機能を実現する分極方向に圧電体を分極している。しかしながら、圧電体は、例えば液体吐出ヘッドの製造プロセスや液体吐出ヘッドを通常使用している間にも分極劣化が起きることがある。分極劣化が起きると、液体吐出ヘッドの液体の吐出性能が低下することがある。
本発明が解決しようとする課題は、駆動ICを搭載した状態で圧電アクチュエーターの圧電体を分極することのできる液体吐出ヘッドを提供することにある。
本発明の実施形態の液体吐出ヘッドは、圧電アクチュエーター、駆動IC(Integrated Circuit)、及び切替回路を備える。複数の圧電アクチュエーターは、圧電体、駆動電圧を与える一方の端子、および共通電位を与える他方の端子を備える。駆動ICは、液体の吐出動作時に、前記駆動電圧を出力して前記圧電アクチュエーターを駆動する複数の駆動回路、及び前記各駆動回路の出力端子と基準電位との間に、前記駆動回路が前記駆動電圧を出力したときに導通しない方向にそれぞれ接続した複数のダイオードを備える。切替回路は、前記圧電アクチュエーターの前記他方の端子を、前記共通電位に接続するか分極電圧源に接続するかを切り替える。液体吐出ヘッドは、前記圧電体の分極実行時に、前記駆動ICの他の電源端子を開放し、前記分極電圧源との接続に前記切替回路を切り替え、前記ダイオードを介して前記圧電アクチュエーターに分極電圧を与える。
以下、実施形態に従う液体吐出ヘッドについて、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。モータ205は、駆動装置の一例である。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
インクジェットヘッド100~103は、夫々、インク流路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と連結する。各インクタンク315~318は、各インクジェットヘッド100~103の上方に配置する。待機時に、インクジェットヘッド100~103のノズル24(図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置321~324は、各インクジェットヘッド100~103内を大気圧に対して負圧、例えば-1.2kPaに調整している。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
続いて、インクジェットヘッド100~103の構成について説明する。以下は、図2~図6を参照しながら、インクジェットヘッド100について説明しているが、インクジェットヘッド101~103もインクジェットヘッド100と同じ構造である。
図2に示すように、インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるヘッド部2を備える。ヘッド部2は、フィルム配線基板の一例であるフレキシブルプリント配線板21と接続する。フレキシブルプリント配線板21は、中継基板の一例であるプリント基板22と接続する。ヘッド部2は、ノズル部の一例であるノズルプレート23を備える。ヘッド部2は、インク流路311を介して図1のインク供給圧力調整装置321と接続する。
インクを吐出する各チャネルのノズル24は、ノズルプレート23の第1の方向の例えばX方向に沿って配列する。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。ノズル24は、一列に限らず、複数列であってもよい。ヘッド部2の詳しい構成は、後述する。
フレキシブルプリント配線板21は、例えばポリイミドなどの合成樹脂フィルムを用いたフレキシブルなプリント配線基板である。フレキシブルプリント配線板21は、ドライバチップである駆動用のIC(Integrated Circuit)3を搭載している(以下、駆動ICと称す)。プリント基板22は、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂層と銅配線層を多重に積層した硬質のスルーホール基板である。制御部としての駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御基板17からプリント基板22を介して送られてくるプリントデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するよう各チャネルに駆動信号を与える。
図3~図5は、ヘッド部2の部分断面図である。ノズルプレート23は、圧力室基板4の一面に接合する。ノズルプレート23は、例えばポリイミドなどの樹脂又はステンレスなどの金属で形成した矩形状のプレートである。振動板41は、ノズルプレート23とは反対側の圧力室基板4の一面に接合する。振動板41は、外力を加えたときに変形する可撓性を有する。振動板41は、例えば可撓性を有するポリイミドフィルム又は金属などで形成した矩形状のプレートである。
圧力室42は、圧力室基板4に形成する。複数の圧力室42は、各ノズル24の位置に配列して、ノズル24とそれぞれ連通させている。圧力室42は、一例として、第2の方向の例えばZ方向に貫通する矩形状の開口を圧力室基板4に形成し、両側の開口をノズルプレート23と振動板41でそれぞれ塞ぐことによって、インクを充填する空間を形成している。圧力室42は、ガイド流路43と連通し、さらに振動板41に形成した開口穴であるインク供給口44を介してインク供給マニホールド45に連通する。ガイド流路43は、圧力室42ごとに、圧力室基板4の振動板41側の一面に第3の方向の例えばY方向に溝状に形成する。インク供給マニホールド45は、振動板41の一面に接合したフレーム46内に形成する。インク供給マニホールド45は、X方向に延び、各チャネルのインク供給口44及びガイド流路43を介して、各チャネルの圧力室42とそれぞれ連通する。共通インク室としてのインク供給マニホールド45は、インク流路311と連通する(図1,図2参照)。
圧電アクチュエーター5は、圧力室42とは反対側の振動板41の一面に配置する。各チャネルの圧電アクチュエーター5は、振動板41を挟んで圧力室42およびガイド流路43と対向する位置に配列する。圧電アクチュエーター5と振動板41は、例えば接着剤で接合する。各圧電アクチュエーター5は、Z方向における振動板41とは反対側の一面を支持部材47にそれぞれ接合することによって固定している。
特に図3に示すように、圧電アクチュエーター5は、例えばピエゾ素子などの圧電体51、第1の内部電極52、及び第2の内部電極53を交互に層状に積層して形成した積層型圧電アクチュエーター5である。各圧電体51は、分極方向が例えばZ方向において互いに逆向きに配置し、d33モードで変形させる。第1の内部電極52と第2の内部電極53は、圧電体51の主面にそれぞれ形成した導電膜である。第1の内部電極52は、それぞれY方向における圧電アクチュエーター5の一方の端面まで形成し、この端面に形成した第1の外部電極54に接続する。第2の内部電極53は、それぞれY方向における圧電アクチュエーター5の他方の端面まで形成し、この端面に形成した第2の外部電極55に接続する。ダミー層58は、圧電体51と同材料である。ダミー層58は、内部電極を片側にしか設けず、電界が印加されないので変形しない。ダミー層58は、圧電アクチュエーター5を支持部材47に固定するベースとなり(図4参照)、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
特に図4に示すように、各チャネルの圧電アクチュエーター5同士の間に、溝59を介して同様の構成の圧電アクチュエーター50を配置し、例えば支柱にしてもよい。圧電アクチュエーター50は、隣接する圧力室42との間の隔壁40にあたる位置に配置する。この圧電アクチュエーター50は、インクの吐出操作には利用しないが、インクの吐出に使用するようにしてもよい。
複数の圧電体51を積層した圧電アクチュエーター5の場合、一例として、薄板状に加工した各圧電体51の主面に第1の内部電極52と第2の内部電極53をそれぞれ成膜する。そして圧電体51同士を積層し焼成してから第1の内部電極52と第2の内部電極53の間に電圧を印加して圧電体51を分極する。その後、第1の外部電極54と第2の外部電極55を成膜する。圧電体51は、チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT)などの鉛含有圧電材料、或いはニオブ酸ナトリウムカリウムなどの鉛非含有圧電材料で形成する。第1の内部電極52と第2の内部電極53は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で成膜する。第1の外部電極54と第2の外部電極55は、メッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどで成膜する。
各チャネルの第1の外部電極54は、フレキシブルプリント配線板21の個別配線56にそれぞれ接続する。フレキシブルプリント配線板21は、基材26,個別配線56,接着層27,絶縁層28を有する。フレキシブルプリント配線板21は、ハンダメッキ層29を形成した領域が第1の外部電極54と対向するように配置し、ハンダを溶融させることによって各チャネルの第1の外部電極54と個別配線56を電気的及び機械的に接続する。一方、各チャネルの第2の外部電極55は、共通配線(不図示)に接続し、例えばフレキシブルプリント配線板21を介してグランド(GND)に接続する。
図6は、インクジェットヘッド100の制御系の回路図である。図6に示すように、圧電アクチュエーター5は、第1の外部電極54を個別配線56に接続し、個別配線56を介して駆動IC3の出力端子に接続する。第2の外部電極55は、共通配線57に接続し、共通配線57を介してグランド(GND)に接続する。グランド(GND)は、共通電位の一例である。第1の外部電極54と個別配線56の接続点が圧電アクチュエーター5の一方の端子である。第2の外部電極55と共通配線57の接続点が圧電アクチュエーター5の他方の端子である。なお、以下の説明では、一方の端子を個別端子、他方の端子をコモン端子と称す。
各圧電アクチュエーター5の個別端子からの個別配線56は、駆動IC3の駆動ドライバD(すなわち、駆動回路)の出力端子にそれぞれ接続する。駆動IC3は、駆動ドライバDを保護する出力保護ダイオード31を備える。出力保護ダイオード31は、一例として、カソードを駆動ドライバDの出力端子に接続し、アノードを駆動IC3のグランド(GND)に接続したダイオードである。出力保護ダイオード31は、各チャネルの駆動ドライバDごとに設ける。なお、出力回路のトランジスタの構造により寄生ダイオードが構成される場合は、寄生ダイオードを出力保護ダイオードの代わりに用いてもよい。
出力保護ダイオード31或いは寄生ダイオードは、駆動IC3の出力端子と基準電位との間に、駆動IC3が駆動電圧を出力したときに導通しない方向に接続したダイオードの一例である。この基準電位の好ましい一例として、各圧電アクチュエーター5のコモン端子に与える共通電位と同じグランド(GND)に接続しているが、必ずしもコモン端子に与える共通電位と同じでなくてもよい。
出力保護ダイオード31或いは寄生ダイオードは、駆動IC3の出力端子と基準電位との間に、駆動IC3が駆動電圧を出力したときに導通しない方向に接続したダイオードの一例である。この基準電位の好ましい一例として、各圧電アクチュエーター5のコモン端子に与える共通電位と同じグランド(GND)に接続しているが、必ずしもコモン端子に与える共通電位と同じでなくてもよい。
駆動IC3は、圧電アクチュエーター5に与える駆動電圧V1の電源(駆動電源)32と接続する。駆動電源32は、正極を駆動IC3に接続し、負極をグランド(GND)に接続する。すなわち、この例では正の電圧を駆動電圧V1としている。第1のスイッチとしてのスイッチSW1は、駆動電源32と駆動IC3の接続をON-OFFする。駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御基板17(図1参照)から送られてくるプリントデータの信号線と接続する。プリントデータは、制御信号の一例である。第2のスイッチとしてのスイッチSW2は、駆動IC3と信号線の接続をON-OFFする。
各圧電アクチュエーター5のコモン端子からの共通配線57は、グランド(GND)に共通接続する。圧電アクチュエーター5を分極する分極回路6は、共通配線57の一部を利用して圧電アクチュエーター5のコモン端子に共通接続する。第3のスイッチとしてのスイッチSW3は、圧電アクチュエーター5のコモン端子をグランド(GND)に共通接続するか、分極回路6に共通接続するかを切り替える。分極回路6は、圧電アクチュエーター5に与える分極電圧V2の電源(分極電源)61を備える。分極電源61は、正極を駆動IC3のグランド(GND)端子に接続する。すなわち、出力保護ダイオード31のアノードに分極電源61の正極を接続する。分極電源61の負極は、抵抗R1と抵抗R3を介して圧電アクチュエーター5のコモン端子に共通接続する。分極電源61は、例えば70Vの電源である。分極電源61は、分極電圧源の一例である。第4のスイッチとしてのスイッチSW4は、B側に設定すると出力保護ダイオード31を介して分極電源61を圧電アクチュエーター5の個別端子に接続し、A側に設定するとこれを切り離すとともに後述するコンデンサーC1を放電する。
スイッチSW3は、例えばプリント基板22に形成する(図2参照)。スイッチSW3は、圧電アクチュエーター5の他方の端子を、共通電位に接続するか分極電圧源に接続するか切り替える切替回路の一例である。分極回路6は、例えば別の基板に形成し、分極実行時にインクジェットヘッド100に接続し、分極が終われば取り外すようにしてもよい。スイッチSW3をプリント基板22上に形成する代わりにこの着脱によってスイッチSW3の機能を果たすように構成してもよい。またこの着脱によって分極回路6を複数のインクジェットヘッド100に共用可能に構成してもよい。分極は、一例として、インクジェットヘッド100を組み立てた後、インクジェットヘッド100の使用時間が所定の値に達したときなど、分極劣化が懸念されるときに実行するのが望ましい。但し、分極は、圧電体51の再分極であってもよく着分極であってもよい。
分極回路6は、第一の時定数回路としての時定数回路62を備える。時定数回路62は、コンデンサーC1と抵抗R1を直列接続して形成するが、コンデンサーC1と抵抗R1の間にさらに抵抗R2を接続する。抵抗R2の抵抗値は、抵抗R1の抵抗値よりも小さくする。抵抗R2は、スイッチSW4をA側に設定してコンデンサーC1を放電するときに、コンデンサーC1を過電流から保護する電流制限抵抗である。
分極回路6は、時定数回路62とスイッチSW3の間に、抵抗R3を接続する。抵抗R3は、圧電アクチュエーター5の静電容量との組み合わせで第二の時定数回路を形成する。抵抗R3は、圧電アクチュエーター5を分極電源61に接続した際に、圧電アクチュエーター5を過電流から保護する電流制限抵抗である。時定数回路62の時定数は、第二の時定数回路の時定数よりも大きくする。
ここで、一例として圧電アクチュエーター5の1個当たりの静電容量が1000pFであって、圧電アクチュエーター5の数が300個(すなわち、チャネル数が300)の場合について説明する。分極電源61は、例えば70Vの電源を用いる。コンデンサーC1の容量は、例えば1μFとする。抵抗R1は、例えば1MΩとする。抵抗R2は、例えば1kΩとする。この場合、時定数回路62の時定数は、1μF×(1MΩ+1kΩ)=約1秒である。一方、圧電アクチュエーター5の静電容量との組み合わせで第二の時定数回路を構成する抵抗R3は、例えば1MΩとする。この場合、第二の時定数回路の時定数は、1000pF×300ch×1MΩ=約0.3秒である。従って、圧電アクチュエーター5への分極電圧の立ち上がり時間は、時定数回路62の時定数が律速する。
続いて、図6を参照しながらインク吐出動作と、分極の動作について説明する。
まず、通常動作であるインクを吐出する動作では、駆動電源32のスイッチSW1と信号線のスイッチSW2を、共にONにする。すなわち、駆動IC3に駆動電源32とプリントデータの信号線を接続した状態にする。さらに、スイッチSW3とスイッチSW4を、共にA側にする。すなわち、圧電アクチュエーター5のコモン端子をグランド(GND)に共通接続し、基準電位であるグランド(GND)電位を与える。グランド電位は、例えば0Vである。
まず、通常動作であるインクを吐出する動作では、駆動電源32のスイッチSW1と信号線のスイッチSW2を、共にONにする。すなわち、駆動IC3に駆動電源32とプリントデータの信号線を接続した状態にする。さらに、スイッチSW3とスイッチSW4を、共にA側にする。すなわち、圧電アクチュエーター5のコモン端子をグランド(GND)に共通接続し、基準電位であるグランド(GND)電位を与える。グランド電位は、例えば0Vである。
駆動IC3は、プリントデータに基づき、インクを吐出するチャネルの駆動ドライバDから駆動電圧V1を出力する。駆動電圧V1は、分極電圧よりも低い正の電圧である。駆動電圧V1は、個別配線56を介して圧電アクチュエーター5の個別端子に与える。待機状態で圧電アクチュエーター5の一方の端子に駆動電圧V1を与えることによって、圧電体51の分極軸の向きに電界が印加され、圧電アクチュエーター5が伸長して圧力室42の容積が収縮した状態にしておく。その後、圧電アクチュエーター5の一方の端子の電位をグランドに落とすと圧電アクチュエーター5は元に戻り、その際、圧力室42の容積は相対的に拡張する。圧力室42の容積が拡張した分、ガイド流路43を介してインクが圧力室42内に流れ込む。その後、圧電アクチュエーター5の一方の端子に再び駆動電圧V1を与えると、圧力室42の容積が元通り収縮する。このように圧電アクチュエーター5の縦振動に合わせて圧力室42の容積が変わり、ノズル24からインクが吐出する。なお、インクの吐出動作時、分極電源62はスイッチSW3によって切り離されているので、駆動IC3や圧電アクチュエーター5の動作に影響を及ぼさない。
次に分極の動作では、駆動IC3の他の電源端子を開放して実行するのが望ましい。図6の例では、駆動IC3の破損を防ぐためにスイッチSW1をOFFにして、駆動電源32を切り離しておくのが望ましい。さらにスイッチSW2をOFFにして信号線も駆動IC3から切り離すことがより好ましい。そしてスイッチSW3をB側に切り替え、圧電アクチュエーター5のコモン端子を、グランド(GND)から切り離して、抵抗R3および時定数回路62の抵抗R1を介して分極電源61の負極に接続する。その後スイッチSW4もB側に切り替え、分極電源61の正極を駆動IC3のグランド(GND)端子に接続する。すなわち、分極電源61の正極を、各チャネルの出力保護ダイオード31を介して各チャネルの圧電アクチュエーター5に共通接続する。
圧電アクチュエーター5の電圧効率を向上させるために、駆動電源を複数備えるようにしてもよい。例えば図7に示すように、駆動電圧V3を生じる駆動電源33を設けてこれを圧電アクチュエーター5の他方の端子と駆動回路に与える。この場合も、分極は、駆動IC3の破損を防ぐためにスイッチSW1とスイッチSW5の両方をOFFにして実行する。すなわち、駆動IC3の他の電源端子を開放して分極を実行する。分極時における他のスイッチの操作は、図6の例と同じである。
ここで、スイッチSW3とスイッチSW4をB側に切り替える前、すなわちA側にあるとき、コンデンサーC1(1μF)は、抵抗R2(1kΩ)によって放電されている。コンデンサーC1(1μF)の電圧は0Vになっている。スイッチSW3とスイッチSW4をB側に切り替えた後は、分極電源61から抵抗R1と抵抗R2を通してコンデンサーC1(1μF)に充電電流が流れてコンデンサーC1(1μF)の電圧が上昇する。
そしてコンデンサーC1(1μF)の電圧上昇に応じた電圧が、出力保護ダイオード31と抵抗R3を介して圧電アクチュエーター5に印加され、圧電アクチュエーター5を充電する。圧電アクチュエーター5に印加される電圧は、時定数回路62の時定数に従って例えば0Vから上昇していき分極電源61の70Vで飽和する。圧電アクチュエーター5の充電電流は、駆動IC3の出力保護ダイオード31を通って流れる。こうして圧電アクチュエーター5に分極電圧が印加されることによって、圧電体51の分極が行われる。
このように圧電アクチュエーター5のコモン端子を分極電源61の負極に共通接続し、さらに分極電源61の正極をすべてのチャネルの出力保護ダイオード31を介して圧電アクチュエーター5に共通接続したことで、すべてのチャネルの圧電アクチュエーター5の分極を一括で実行することを可能にした。
そして時定数回路61の時定数を大きく設定したことにより、駆動IC3の出力保護ダイオード31を通って圧電アクチュエーター5に流れる電流が極めて小さく抑えられ、分極の動作中に駆動IC3や圧電アクチュエーター5が破損するのを防ぐ。また、例えば70Vの分極電圧は、圧電体51の分極を可能にする一方で、駆動IC3からみるとその許容上限電圧を越えている。そこで、出力保護ダイオード31を通じで分極電圧を印加する構成とし、駆動IC3には出力保護ダイオード31の順電圧(例えば約0.6V)が印加されるだけにして、分極電圧から駆動IC3を保護している。
なお、時定数回路62を介さずに分極電源61を抵抗R3と圧電アクチュエーター5に接続し、圧電アクチュエーター5の静電容量と抵抗R3の抵抗値による第二の時定数回路の時定数で圧電アクチュエーター5の充電電流を制限することは可能である。しかしながら、例えばチャネルの数が少ない場合など、圧電アクチュエーター5の静電容量にチャネル数を乗じたトータルの静電容量が小さい場合、第二の時定数回路の時定数を一定以上にするために抵抗R3の抵抗値を非常に大きくしなければならない場合がある。加えて圧電アクチュエーター5に漏れ電流がある場合は、漏れ電流に因り抵抗R3に生じる電圧降下のために圧電アクチュエーター5に十分な分極電圧が印加されないおそれがある。そのため、時定数回路62を設けることが望ましい。
以上説明したように、上述の実施形態によれば、駆動IC3を搭載した状態で圧電アクチュエーター5の圧電体51を分極することのできるインクジェットヘッド100を提供することが可能である。
すなわち、多チャンネルのインクジェットヘッド100は、多数の圧電アクチュエーター5を個別に駆動するために、駆動回路を集積した駆動IC3を用いる。一方、圧電アクチュエーター5の圧電体51の分極が劣化する要因は様々であり、駆動IC3がインクジェットヘッド100に搭載されている状態でも分極を実行可能にすることが望ましい。しかしながら、駆動IC3の許容上限電圧を超える高電圧の分極電圧が、駆動ICに印加されることは避けなければならない。そこで、駆動IC3の出力保護ダイオード31を利用することによって、駆動IC3を搭載した状態でも、駆動IC3にダメージを与えることなく圧電アクチュエーター5を分極することを可能にした。スイッチSW1~SW4は機械的スイッチに限らない。半導体スイッチを用いてもよく、またコネクタの着脱によってスイッチSW1~SW4の動作をする構成でもよい。
なお、上述の実施形態は、駆動電圧V1を正の電圧にしたが、分極方向がこの実施形態と逆転している場合には負の電圧にする。駆動電圧V1を負の電圧とした場合、例えば図6の回路においては、駆動電源32の正極と負極、分極電源61の正極と負極、各出力保護ダイオード31のカソードとアノードの接続を逆にする。
なお、圧電アクチュエーター5は、複数の圧電体51を積層した積層型に限らない。圧電体51が単一層の圧電アクチュエーターであってもよい。また、駆動電圧を印加したときのアクチュエーターの動作は、縦振動に限らない。さらに、ドロップオンデマンド・ピエゾ方式に限らず、コンティニアス方式に適用してもよい。
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出装置の一例として説明したが、液体吐出装置は、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10 インクジェットプリンタ
100~103 インクジェットヘッド
2 ヘッド部
23 ノズルプレート
24 ノズル
3 駆動IC
31 出力保護ダイオード
5 圧電アクチュエーター
56 個別配線
57 共通配線
6 分極回路
61 分極電源
62 時定数回路
D 駆動ドライバ(駆動回路)
SW1~SW4 スイッチ
100~103 インクジェットヘッド
2 ヘッド部
23 ノズルプレート
24 ノズル
3 駆動IC
31 出力保護ダイオード
5 圧電アクチュエーター
56 個別配線
57 共通配線
6 分極回路
61 分極電源
62 時定数回路
D 駆動ドライバ(駆動回路)
SW1~SW4 スイッチ
Claims (4)
- 圧電体、駆動電圧を与える一方の端子、および共通電位を与える他方の端子を備える複数の圧電アクチュエーターと、
液体の吐出動作時に、前記駆動電圧を出力して前記圧電アクチュエーターを駆動する複数の駆動回路、及び前記各駆動回路の出力端子と基準電位との間に、前記駆動回路が前記駆動電圧を出力したときに導通しない方向にそれぞれ接続した複数のダイオードを備える駆動IC(Integrated Circuit)と、
前記圧電アクチュエーターの前記他方の端子を、前記共通電位に接続するか分極電圧源に接続するかを切り替える切替回路と、を備え、
前記圧電体の分極実行時に、前記駆動ICの他の電源端子を開放し、前記分極電圧源との接続に前記切替回路を切り替え、前記ダイオードを介して前記圧電アクチュエーターに分極電圧を与えることを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 圧電体、駆動電圧を与える一方の端子、および共通電位を与える他方の端子を備える圧電アクチュエーターと、
液体の吐出動作時に、前記駆動電圧を出力して前記圧電アクチュエーターを駆動する駆動IC(Integrated Circuit)と、
前記駆動ICの出力端子と基準電位との間に、前記駆動ICが前記駆動電圧を出力したときに導通しない方向に接続したダイオードと、
前記圧電アクチュエーターの前記他方の端子を、前記共通電位に接続するか分極電圧源に接続するかを切り替える切替回路と、
前記分極電圧源から前記圧電アクチュエーターに分極電圧を与える回路に設けた時定数回路と、を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記分極電圧源から前記圧電アクチュエーターに前記分極電圧を与える回路に、時定数回路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記圧電アクチュエーターの前記他方の端子に抵抗を直列接続して、前記圧電アクチュエーターの静電容量と前記抵抗によって第二の時定数回路を形成し、
前記時定数回路の時定数は、前記第二の時定数回路の時定数よりも大きいことを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッド。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Family Applications (1)
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JP2022037681A Pending JP2023132399A (ja) | 2022-03-11 | 2022-03-11 | 液体吐出ヘッド |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2023132399A (ja) |
-
2022
- 2022-03-11 JP JP2022037681A patent/JP2023132399A/ja active Pending
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Legal Events
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A711 | Notification of change in applicant |
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