JP2023173101A - 繊維強化樹脂製曲管およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数のFRP製短管の接合によって製造されるFRP製曲管の剛性を高める。【解決手段】FRP製曲管を構成する複数のFRP製短管1の外周面に、FRP製短管1どうしを接合する積層体2を有しており、その積層体2の内側のマット層2aを形成するシート体であるガラスマットと、外側の補強繊維層2bを形成するシート体であるガラスクロスが、それぞれ樹脂含浸された状態で、曲管の一端側から他端側まで切れ目なく、かつ幅方向端部が重なる形態で螺旋状に巻き付けられている構成とすることにより、補強繊維層を互いに縫合されていない複数のシートで形成する場合よりも高い剛性が得られるようにしたのである。【選択図】図3
Description
本発明は、複数の繊維強化樹脂製短管の接合によって製造される繊維強化樹脂製曲管と、その製造方法に関する。
繊維強化樹脂(FRP)で形成したFRP管は、金属管に比べて軽量で耐食性にも優れるため、水輸送管の分野でも広く用いられている。水輸送管としてFRP管を配管する際、管路の方向が変化する位置には、通常、少なくとも一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の繊維強化樹脂製短管(FRP製短管)を、曲管状となるように端面どうしを突き合わせた状態で接合した繊維強化樹脂製曲管(FRP製曲管)が使用される。これは、単一のFRP管で滑らかな円弧状の管(スムースベンド管)を製造することが技術的に難しいことによる。
このFRP製曲管の製造方法は、通常、予め直管状のFRP管を管軸方向に対して所定の角度で切断して、上記のFRP製短管を複数製作しておき、これらの各FRP製短管を上記のように突き合わせた状態で、それぞれの突き合わせ部の外周面に接続層を形成することによって接合している。
例えば、特許文献1等では、FRP製短管どうしを接合する接続層として、突き合わせ部の外周面に、繊維の方向性がランダムなマット層とクロス状に織られた補強繊維層とを積層した積層体を形成している。
上記特許文献1のFRP製曲管の製造方法は、最初に2つのFRP製短管を接合し、その一つのFRP製短管に別のFRP製短管を接合していく作業を繰り返して、所定長さの曲管とするものである。このようにして製造されたFRP製曲管は、隣り合うFRP製短管どうしを接合する積層体が接合部ごとに別々に形成されており、このために管全体の剛性の点で改良の余地を残している。
そこで、本発明は、複数のFRP製短管の接合によって製造されるFRP製曲管の剛性を高めることを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明の繊維強化樹脂製曲管(FRP製曲管)は、少なくとも一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の繊維強化樹脂製短管(FRP製短管)が全体として曲管状となるように端面どうしを突き合わされ、前記各繊維強化樹脂製短管の外周面に、繊維の方向性がランダムなマット層と、織物状または編物状の補強繊維層とが積層された積層体を有する繊維強化樹脂製曲管において、前記マット層および前記補強繊維層はそれぞれシート体からなり、そのうちの少なくとも前記補強繊維層を形成するシート体が、一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻かれている構成(構成1)を採用した。ここで、「切れ目なく」とは、シート体が切れ目のない一体のものであることのほか、複数のシートを縫合したものであることも含むものとする。また、FRP製曲管およびFRP製短管とは、それぞれ管体がFRP層とその間に挟まれるモルタル層で形成されたFRPM製曲管およびFRPM製短管を含むものとする(以下同じ)。
すなわち、FRP製曲管を構成する複数のFRP製短管の外周面に積層される積層体のうち、少なくとも補強繊維層を形成するシート体をFRP製曲管の一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻き付けることにより、補強繊維層を互いに縫合されていない複数のシートで形成する場合よりも高い剛性が得られるようにしたのである。
また、上記構成1において、前記補強繊維層を形成するシート体だけでなく、前記マット層を形成するシート体も、FRP製曲管の一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻かれている構成(構成2)とすれば、さらに剛性を高めることができる。
ここで、上記構成1または2において、前記補強繊維層を形成するシート体は、その幅方向端部が重なる形態で巻かれていること(構成3)が望ましい。また、上記構成2または3において、マット層を形成するシート体を切れ目なく螺旋状に巻く場合も、その幅方向端部が重なる形態で巻かれていること(構成4)が望ましい。
また、上記構成1乃至4のいずれにおいても、前記積層体の最内層は前記マット層で構成されていること(構成5)が望ましい。水輸送管として用いる場合、マット層を最内層とした方が水密性の確保に有利だからである。
そして、本発明の繊維強化樹脂製曲管の製造方法は、上記構成1乃至5のいずれかの繊維強化樹脂製曲管の製造方法において、前記複数の繊維強化樹脂製短管を仮固定して仮曲管を形成した後、前記マット層を形成するシート体と前記補強繊維層を形成するシート体を、樹脂含浸された状態で、前記仮曲管の一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻き付けるものである。
本発明は、上述したように、FRP製曲管の外周面に積層されるマット層と補強繊維層のうち、少なくとも補強繊維層を形成するシート体を、一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻くようにしたので、補強繊維層を互いに縫合されていない複数のシートで形成する場合よりもFRP製曲管の剛性を高めることができる。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は実施形態のFRP製曲管の一端側の約半部を示す。このFRP製曲管は、2種類のFRP製短管1(1aおよび1b)を、曲管状となるように端面どうしを突き合わせた状態で接合した水輸送管用のものであり、互いに隣接する2つのFRP製短管1の管軸方向のなす角度(各節ごとの角度の振り)は特に限定されない。なお、以下では、FRP製曲管を単に「曲管」、FRP製短管を単に「短管」とも称する。また、短管1のうち、曲管の両端に配されるものを接続用短管1a、曲管の中間部すなわち両接続用短管1aの間に配されるものを中間短管1bと称する。
各短管1は、いずれもFRP製の直管を管軸方向に対して所定の角度で切断して製作したものである。そのうち、接続用短管1aは、一端面のみが管軸方向に対して傾斜しており、他端側が接続管を介して水輸送管の直線部を構成するFRP製直管に接続される(図示省略)。一方、中間短管1bは、接続用短管1aよりも短尺で、両端面が管軸方向に対して傾斜しており、隣接する接続用短管1aまたは中間短管1bと接合される。
そして、全体として曲管状となるようにつなげられた各短管1の外周面に、各短管1を接合するための積層体2が形成されている。
積層体2は、図2に示すように、繊維の方向性がランダムな布状シート(シート体)であるガラスマットを樹脂含浸させたマット層2aと、織物状の補強繊維シート(シート体)であるガラスクロスを樹脂含浸させた補強繊維層2bとを積層したもので、水密性の確保に適したマット層2aを内層に、接合強度を高めるのに適した補強繊維層2bを外層に配している。なお、ガラスマットおよびガラスクロスに含浸させる樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂が使用されている。
また、図2乃至図4に示すように、マット層2aを形成するガラスマットと、補強繊維層2bを形成するガラスクロスは、それぞれ一端側から他端側まで切れ目なく、幅方向端部が重なる形態で螺旋状に巻かれている。
このFRP製曲管の製造方法は、まず、複数の短管1を端面どうしで突き合わせて所定長さの曲管状につなげ、この状態で仮固定して仮曲管を形成する。次に、仮曲管の外周面に、樹脂含浸させた帯状のガラスマットを仮曲管の一端側から他端側まで切れ目なく、かつ幅方向端部が重なる形態で螺旋状に巻き付けてマット層2aを形成する。そして、そのマット層2aの表面に、樹脂含浸させた帯状のガラスクロスを仮曲管の一端側から他端側まで切れ目なく、かつ幅方向端部が重なる形態で螺旋状に巻き付けて補強繊維層2bを形成する。これにより、各短管1がマット層2aと補強繊維層2bとからなる積層体2で接合されたFRP製曲管が得られる。
このFRP製曲管は、上記の構成であり、外周部の積層体2を構成するマット層2aと補強繊維層2bが、それぞれガラスマットおよびガラスクロスを一端側から他端側まで切れ目なく、かつ幅方向端部が重なる形態で螺旋状に巻き付けることによって形成されているので、積層体を構成する各層を互いに縫合されていない複数のシートで形成した従来のものよりも高い剛性が得られ、使用中の撓みが効果的に抑えられる。併せて、曲管の長手方向強度が向上することで、水流による遠心力や水圧の不均等により発生するスラスト力に対する抵抗力を従来のものよりも向上させることができる。このため、埋設用途に使用した場合は、通常の曲管の撓み抑制のための防護コンクリート打設を省略できるようになる可能性もある。
ここで、マット層を形成するガラスマットは、繊維の方向性がランダムな他のシート体に代えることができ、補強繊維層を形成するガラスクロスは、織物状の他のシート体(ロービングクロス等)または編物状のシート体に代えることができる。
また、積層体内におけるマット層と補強繊維層の配置は任意に変更できるが、水密性の確保の点からは、実施形態のようにマット層を最内層に配することが望ましい。
また、FRP製曲管の水密性をさらに向上させるために、各FRP製短管1の突き合わせ部の内周面に、繊維の方向性がランダムなシート体からなるマット層を設けるようにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、実施形態では、マット層と補強繊維層の両方を、一端側から他端側まで切れ目なく、かつ幅方向端部が重なる形態で螺旋状に巻き付けたシート体で形成したが、少なくとも補強繊維層を形成するシート体が、一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻かれていれば、従来のものよりも剛性を高めることができる。
また、マット層や補強繊維層の螺旋状の巻き付け方については、実施形態のものに限らず、曲管の対象部分にマット層や補強繊維層を形成するシート体を、最終的に隙間が生じないように巻き付けるものであればよく、部分的に螺旋状に巻き付けるものも含む。例えば、シート体の幅方向端部が重ならない形態での螺旋状の巻き付けを、仮曲管の一端側から他端側までと他端側から一端側までとで繰り返し行って、最終的に隙間が生じないようにすることもできる。
また、実施形態では、仮曲管の外周面にマット層を形成するシート体を巻き付けた後、その表面に補強繊維層を形成するシート体を巻き付けるようにしたが、予めマット層を形成するシート体と補強繊維層を形成するシート体を重ね合わせておき、その重ね合わせた2つのシート体を同時に仮曲管の外周面に巻き付けるようにしてもよい。
1 FRP製短管
1a 接続用短管
1b 中間短管
2 積層体
2a マット層
2b 補強繊維層
1a 接続用短管
1b 中間短管
2 積層体
2a マット層
2b 補強繊維層
Claims (6)
- 少なくとも一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の繊維強化樹脂製短管が全体として曲管状となるように端面どうしを突き合わされ、前記各繊維強化樹脂製短管の外周面に、繊維の方向性がランダムなマット層と、織物状または編物状の補強繊維層とが積層された積層体を有する繊維強化樹脂製曲管において、
前記マット層および前記補強繊維層はそれぞれシート体からなり、そのうちの少なくとも前記補強繊維層を形成するシート体が、一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻かれていることを特徴とする繊維強化樹脂製曲管。 - 前記マット層を形成するシート体が、一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻かれていることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂製曲管。
- 前記補強繊維層を形成するシート体は、その幅方向端部が重なる形態で巻かれていることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化樹脂製曲管。
- 前記マット層を形成するシート体は、その幅方向端部が重なる形態で巻かれていることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂製曲管。
- 前記積層体の最内層が前記マット層で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化樹脂製曲管。
- 請求項2に記載の繊維強化樹脂製曲管の製造方法において、前記複数の繊維強化樹脂製短管を仮固定して仮曲管を形成した後、前記マット層を形成するシート体と前記補強繊維層を形成するシート体を、樹脂含浸された状態で、前記仮曲管の一端側から他端側まで切れ目なく螺旋状に巻き付けることを特徴とする繊維強化樹脂製曲管の製造方法。
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