JP3586415B2 - 管状ライナー及び熱硬化性樹脂管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水道管、下水管などの既設管を補修するために、既設管の内周面のライニングに使用するための管状ライナー、及び樹脂が含浸され未だ柔軟性を有した熱硬化性樹脂管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、地中に埋設された水道管、下水管などの既設管を補修するために、既設管の内周面に未だ樹脂が硬化していない熱硬化性樹脂管を反転挿入してライニングする反転ライニング工法がある。
【0003】
この反転ライニング工法は、図11に示すように、長袋状のフェルト製バッグ(管状ライナー)1に熱硬化性樹脂を含浸し、未だ柔軟性を有した熱硬化性樹脂管1Aを水圧Pによって管100内に反転挿入し、その後、管内の水を加熱して樹脂を硬化させ、既設管100内に硬化した樹脂管を形成する工法である。図12に、この反転ライニング工法により補修された既設管100の構造を示す。既設管100の内周面にライナーとして含浸した樹脂が硬化した樹脂管1Cが密着して配設されている。
【0004】
従来、ライナーとして使用される長袋状のフェルト製バッグ1は、樹脂が含浸される前の構造にて説明すると、図13に示すように、所定の外径及び厚みとされるスリーブ状のポリエステルフェルトからなる内層2Mと、フェルト層2Mの外周に配設された塩化ビニール系の樹脂フィルム外層3とにて構成されている。通常、フェルト層2Mの厚さは、3mm〜18mmとされる。
【0005】
このような構成の管状ライナー1は、フェルト層2Mに熱硬化性樹脂が含浸された後、樹脂が硬化する前に、図11に示すように、フェルト層2Mが既設管100の内周面側となるように水圧にて反転して管内へと挿入される。その後管内の水を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる。
【0006】
この反転ライニング工法は、短期間で施工ができ、しかも経済的である、という点から注目されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成の管状ライナーを使用した場合には、ライナーとしての樹脂管の強度を得るためにライナーの厚さ、特に、フェルト層2Mの厚さが必然的に厚くならざるを得ず、それに伴って、反転作業が困難となり、作業性の改善が望まれている。
【0008】
又、フェルト層2Mが厚くなると、既設管100の内径が小さくなるといった問題、更には、重量的にも大と成り取り扱い性が悪くなる、といった問題をも有している。
【0009】
そこで、例えば、特開平6−246830号公報には、フィルム状の内層及び外層と、内層及び外層の間に充填された未硬化の硬化性樹脂と、この硬化性樹脂内に配置された管軸方向に対して異なる方向に傾斜した2本のロービングを交差させて、例えば平織或いは綾織などにて編み込んだ複数の繊維スリーブとを有する硬化性樹脂管が提案されている。
【0010】
斯かる構成の硬化性樹脂管は、ライナーの層厚を薄くすることはできるが、2本のロービングを交差させて編み込んだ、所謂、クロスとされる強化繊維シートを使用しており、強度上の飛躍的向上は望めない。つまり、クロスとされる強化繊維シートは、一方向に配列した強化繊維シートに比較すると、強化繊維が互いに交差する部分において強度が弱く、又、横糸の存在により強化繊維に蛇行が発生する。これが原因で繊維強化プラスチックとしたときに十分な補強効果が得られないことは当業者には周知のことである。
【0011】
又、クロスを使用していることから、管内へと反転して挿入する作業が困難であり、作業性の点でも問題がある。又、クロスの場合には、強化繊維シートが皺にもなり易く、皺になった場合には、強度的にも問題がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、厚さをより薄くして、管の内径が小さくなることを回避すると共に、補強強度をより増大することのできる管状ライナー及び樹脂が含浸された折りたたみ可能な熱硬化性樹脂管を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、樹脂含浸後における管内への反転、挿入作業が極めて容易である、皺にもならず、管状ライナー及び樹脂が含浸された折りたたみ可能な熱硬化性樹脂管を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る管状ライナー及び熱硬化性樹脂管にて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、強化繊維が一方向に配列された長尺の強化繊維シートにて形成された繊維スリーブを有する内層と、前記内層の外周に配置された円筒状フィルム外層とを有する管状ライナーであって、
前記強化繊維は、前記管状ライナーの長手軸線方向に対して所定の角度にて配向されていることを特徴とする管状ライナーが提供される。
【0016】
本発明の他の実施態様によれば、前記繊維スリーブは複数積層される。
【0017】
本発明の他の実施態様によれば、前記複数積層された繊維スリーブの強化繊維は、任意の異なる角度に配向することができ、例えば、前記強化繊維の配向角度は、+45°、−45°或いは90°である。
【0018】
本発明の他の実施態様によれば、前記内層には、1層或いは複数層をなす前記繊維スリーブの内周側及び/又は外周側にフェルト層が配置される。
【0019】
本発明の他の実施態様によれば、長尺の前記強化繊維シートは、樹脂透過性支持体シートと、実質的に一定長さの長繊維とされる強化繊維が前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に対して所定の角度をもって且つ前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に沿って配列され、前記樹脂透過性支持体シートに保持された強化繊維層とを有する。一実施態様によれば、前記強化繊維は、前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に対して略45°にて配列されている。
【0020】
本発明の他の実施態様によれば、前記樹脂透過性支持体シートは、前記強化繊維層の片面或いは両面に設けられる。一実施態様によれば、前記樹脂透過性支持体シートは、メッシュ状体、クロス又は不織布である。ここで、前記メッシュ状体は、前記強化繊維シートの長手方向と同一方向の縦糸と、この縦糸と直交する横糸とにて形成された2軸メッシュ状体とし得る。
【0021】
本発明の他の実施態様によれば、前記強化繊維シートは、2枚以上重ねて使用することができる。
【0022】
本発明の他の実施態様によれば、積層された強化繊維シートの間には少なくとも1枚以上の前記樹脂透過性支持体シートが介在している。
【0023】
本発明の他の実施態様によれば、各強化繊維シートの強化繊維層を形成する強化繊維は、前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に対して同じ方向に且つ同じ角度で配向されている。他の実施態様によれば、各強化繊維シートの強化繊維層を形成する強化繊維は、前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に対して異なる方向に配向されている。
【0024】
本発明の他の実施態様によれば、前記強化繊維シートを形成する強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、鋼繊維などを一種、又は、複数種混入して使用することができる。一実施態様によれば、前記強化繊維シートの繊維目付は、50〜600g/m2である。
【0025】
本発明の他の実施態様によれば、前記強化繊維シートの強化繊維が導電性である場合には、前記強化繊維シートの内周側に絶縁材層が配置される。ここで、前記絶縁材層は、ガラスクロス、スクリームクロス或いはガラス不織布とし得る。
【0026】
第2の本発明によれば、上記管状ライナーの前記内層に熱硬化性樹脂を含浸したことを特徴とする折りたたみ可能な熱硬化性樹脂管が提供される。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂とされる。
【0028】
第3の本発明によれば、樹脂を含浸した連続繊維ロービングを連続して螺旋状に巻き付けて少なくとも1層の繊維スリーブを形成したことを特徴とする折りたたみ可能な熱硬化性樹脂管が提供される。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、前記繊維スリーブが複数層とされる場合、各前記繊維スリーブは、連続繊維ロービングの螺旋方向が異なる。
【0030】
本発明の他の実施態様によれば、前記連続繊維ロービングは、多数本の連続した強化繊維フィラメントを収束することによって形成される。
【0031】
本発明の他の実施態様によれば、前記強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、鋼繊維などを一種、又は、複数種混入して使用する。又、一実施態様によれば、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂とされる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る管状ライナー及び熱硬化性樹脂管を図面に則して更に詳しく説明する。
【0033】
実施例1
図1に本発明に係る管状ライナーの一実施例を示す。本発明の管状ライナー1は、強化繊維24が一方向に配列された長尺の強化繊維シートにて形成された繊維スリーブ2A、2Bを有する内層2と、内層2の外周に配置された円筒状フィルム外層3とを有する。
【0034】
本実施例にて、内層2は、強化繊維24が管状ライナー1の長手軸線方向に対して所定の角度αにて配向された第1の繊維スリーブ2Aと、強化繊維24が管状ライナー1の長手軸線方向に対して所定の角度βにて配向された第2の繊維スリーブ2Bと、を有している。強化繊維配向角度α及びβは、任意の角度とし得るが、曲げ力に対する補強効果を有効に発揮するために互いに異なる角度とし、特に、α=+45°、β=−45°とするのが好ましい。
【0035】
図1に示す第1の実施例では、内層2は、第1及び第2の繊維スリーブ2A、2Bを有するものとして説明したが、図2に示すように、更に、第3及び第4の繊維スリーブ2C、2Dを有することも可能である。この第2の実施例では、第3及び第4繊維スリーブ2C、2Dはそれぞれ、第1及び第2の繊維スリーブ2A、2Bと同じ強化繊維配向角度α、βとされている。
【0036】
この実施例では、第1、第2、第3及び第4繊維スリーブ2A、2B、2C及び2Dは、交互に強化繊維配向角度が異なる態様とされているが、強化繊維配向角度態様は、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々の態様を採用し得る。
【0037】
又、図3に示す第3の実施例のように、内層2には、更に、強化繊維が周方向に配列した、即ち、強化繊維の配向角度(α)が90°とされた繊維スリーブ2Cを配置することもできる。この第3の実施例の場合には、補強後の既設管のフープ力に対する補強効果をも増大することができる。
【0038】
本発明の第4の実施例を図4に示す。上述のように、本発明によれば、内層2としては、強化繊維24が一方向に配列された長尺の強化繊維シート21にて形成される繊維スリーブ2を1層或いは複数層有しているが、図4に示すように、内層2の内周側及び外周側にフェルト層2M(2M1、2M2)をそれぞれ配置することもできる。勿論、フェルト層2M1、2M2のいずれかをなくすこともできる。本発明によれば、強化繊維24が一方向に配列された長尺の強化繊維シート21にて形成される繊維スリーブ2を有していることにより、補強強度が大幅に増大されるので、従来に比べ、フェルト層2M1、2M2の合計厚みを大幅に、例えば50〜100%程度減らすことができる。フェルト層の厚みが薄くなることにより、管の内径が小さくなることを回避することができる。又、樹脂含浸後における管内への反転、挿入作業が容易となる。
【0039】
勿論、図5に示すように、繊維スリーブ2(2A、2B、2C、2D)の積層数が増えた場合には、フェルト層2M1、2M2の合計厚みは更に減少することができる。
【0040】
上記繊維スリーブ2を構成する強化繊維シート21を形成する強化繊維24は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、鋼繊維などを一種、又は、複数種混入して使用することができる。
【0041】
又、フェルト層としては、従来と同様に、ポリエステルフェルトが使用可能である。
【0042】
もし、例えば、図1、図2及び図3においては、繊維スリーブ2の強化繊維24として炭素繊維を使用した管状ライナー1の場合、既設管100へのライニング施工後には、炭素繊維を有する繊維スリーブ2が既設管100の内面に直接密着することとなる。炭素繊維は導電性であり、そのために、長年の使用により、電食作用に起因して既設管100が腐食を受け、補強効果を低下させることが考えられる。
【0043】
従って、図1に一点鎖線で示すように、内層2の最内層として、絶縁材層2Gを設けるのが好ましい。絶縁材層2Gは、任意の絶縁材料を使用し得るが、ガラスクロス、スクリームクロス或いはガラス不織布が好適に使用し得る。
【0044】
実施例2
図6及び図7を参照して、本発明の管状ライナー1の繊維スリーブ2を形成するための長尺の強化繊維シート21の一実施例について説明する。強化繊維シート21は連続した所定の長さ(L)を有する。通常、例えば、10m〜20mの長尺のものとされる。
【0045】
本実施例にて、連続した強化繊維シート21は、樹脂透過性の支持体シート22と、この支持体シート22にて保持された強化繊維層23とを有する。強化繊維層23は、主軸に対して所定の角度(α或いはβ)にて配列され、実質的に、即ち、連続強化繊維シート21の先頭端と最後尾端を除いて一定の所定長さ(F)とされる長繊維の強化繊維24にて形成される。シート形状とされる連続強化繊維シート21には、未だマトリクス樹脂は含浸されてはいない。
【0046】
本明細書にて「主軸」とは、連続強化繊維シート21の長手方向に沿った軸を意味するものとする。樹脂透過性支持体シート22は、図6及び図7に示す本実施例では、強化繊維層23の片面に配置されているが、強化繊維層23の両面に配置することもできる。
【0047】
本実施例の連続強化繊維シート21は、所望される管状ライナー1の繊維スリーブ2の管径に応じて所定の幅(W)とされる。
【0048】
本実施例にて、強化繊維層23を構成する強化繊維24は、上述したように、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、鋼繊維などを一種、又は、複数種混入して使用することができる。
【0049】
上記樹脂透過性支持体シート22は、2軸又は3軸などのメッシュ状体或いはクロス、更には、不織布とすることができるが、本実施例では図示するように、2軸メッシュ状体を使用した。2軸メッシュ状体22の糸条25、26の間隔(w1、w2)は、通常1〜100mm程度であるが、好ましくは2〜50mmである。
【0050】
メッシュ状支持体シート22にて強化繊維層23を保持する方法としては、例えば、メッシュ状支持体シート22を構成する縦糸25及び横糸26の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート22を強化繊維層23の片面或いは両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート22の縦糸25及び横糸26の部分を強化繊維層23に溶着する。
【0051】
樹脂透過性支持体シート22としてクロスを使用した場合にも同様の方法にて、強化繊維層23を保持することができる。
【0052】
実施例3
上記実施例2では、連続強化繊維シート1は、図6及び図7に示すように、強化繊維層23の片面或いは両面に樹脂透過性の支持体シート22を接着した構成とされたが、本発明にて使用し得る連続強化繊維シート21としては、実施例2で説明した構成の連続強化繊維シート21を2枚以上重ね、多層形状とすることもできる。このとき、各連続強化繊維シート21の間には、少なくとも1枚以上の樹脂透過性支持体シート22を介在させて一体とすることも可能である。
【0053】
つまり、図8に示すように、樹脂透過性支持体シート22の両面に強化繊維層23(23a、23b)を設けた構成とすることもできる。強化繊維層23a、23bを構成する強化繊維24a、24bは、同じ方向に、しかも、同じ角度で、例えば+45°配向と、+45°配向にて配列することができる。
【0054】
又、図9に示すように、強化繊維層23aを構成する強化繊維24aは、例えば+45°配向で、強化繊維層23bを構成する強化繊維24bは、逆方向に、例えば−45°配向にて配列することもできる。
【0055】
上記実施例の説明では、樹脂透過性支持体シート22は、強化繊維層23(23a、23b)の間に介在させるものとして説明したが、強化繊維層23(23a、23b)の間だけでなく、更に、強化繊維層23(23a、23b)の外側面にも接着して設けてもよい。
【0056】
実施例4
次ぎに、長尺の強化繊維シート21を使用して繊維スリーブを作製する方法について説明する。
【0057】
実施例2にて説明した図1及び図2に示す構成の連続した強化繊維シート21を所定長さに切断し、図10に示すように、所定の直径を有したマンドレル60の長手方向に沿って強化繊維シート1の主軸を合致させ、マンドレルの表面に巻き付け、周方向に長さ(R)、例えば100mmだけラップさせ、このラップ部分を長さ方向に縫合し、所定の管径を有した繊維スリーブ2を作製する。
【0058】
更に、+45°配向の強化繊維シート1の外側に、図10には示していないが、強化繊維の角度が逆方向とされた−45°配向の強化繊維繊維シートを1層巻回し、同様に、周方向に100mmラップさせ、縫合して、上記第1の繊維スリーブの外周に第2の繊維スリーブを形成した。勿論、+45°配向の強化繊維シート1を裏返しに使用することにより、強化繊維の角度が逆方向とされた−45°配向の強化繊維繊維シートとして使用することができる。
【0059】
この第2の繊維スリーブ2の外周部に円筒状のフィルムを被覆するか、或いは、フィルムテープを螺旋状に巻きつけて繊維スリーブ2の外層としての円筒状のフィルム外層3を形成する。
【0060】
上述のように、それぞれ+45°配向及び−45°配向の連続強化繊維シートを使用する代わりに、図6に示すように、予め+45°配向及び−45°配向の2枚の連続強化繊維シートがメッシュ状支持体シートを介して積層され一体とされた、所謂、±45°配向のダブルバイアス連続強化繊維シート1を使用して第1及び第2繊維スリーブを作製することも可能である。
【0061】
もし、第1の繊維スリーブの強化繊維として炭素繊維を使用した場合には、先ず、マンドレルにガラスクロスシートを巻きつけ、絶縁材層2Gを形成した後に、上述のように、第1、第1繊維スリーブ2A、2B及び円筒状フィルム外層3を形成する。
【0062】
実施例5
次ぎに、樹脂が含浸された熱硬化性樹脂管1の作製方法を他の実施例について説明する。
【0063】
図10で示したような所定の直径を有したマンドレル60を準備し、樹脂を含浸した連続繊維ロービング(図示せず)を連続して螺旋状に巻き付けて少なくとも1層の繊維スリーブ2を形成する。図1に示すように、繊維スリーブ2が複数層2A、2Bとされる場合、各繊維スリーブ2A、2Bは、連続繊維ロービングの螺旋方向を異ならせてマンドレル60に巻きつけることによって作製される。
【0064】
連続繊維ロービングは、多数本の連続した強化繊維フィラメントを収束することによって形成される。このとき、強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、鋼繊維などを一種、又は、複数種混入して使用することができる。
【0065】
又、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂とされる。
【0066】
実施例6
上述のようにして作製された管状ライナー1は、通常、扁平状態に畳んだ状態で、内層2に対して上記熱硬化性樹脂が含浸される。これにより、繊維スリーブ2、フェルト層2Mなどを備えた内層2に熱硬化性樹脂が含浸され、熱硬化性樹脂管1Aが作製される。熱硬化性樹脂管1Aの外周囲は、樹脂フィルム外層3が設けられているので、マトリクス樹脂が外部に漏れ出ることはなく、樹脂含浸処理が効率良く行われる。
【0067】
樹脂含浸された管状ライナー1、即ち、熱硬化性樹脂管1Aは、樹脂が硬化しないように保冷庫などに保管され、現場へと搬送される。未だ柔軟性を有している熱硬化性樹脂管1Aは、図11に示す従来と同様に、扁平状態にて既設管100内へと挿入され、その先端部が反転され、既設管或いは治具などに取付けられる。
【0068】
次いで、図11に示すように、熱硬化性樹脂管1Aは、水圧Pによって管100内に連続して、反転挿入され、管状ライナー1の内層2部分が既設管の内壁に密着する。その後、管内の水を加熱して樹脂を硬化させ、既設管100内に硬化した樹脂管1Cを形成する。
【0069】
本発明によれば、繊維スリーブ2は、強化繊維が一方向に配列された長尺の強化繊維シートにて形成されるので、既設管内へと挿入し、反転作業が成される場合に、各繊維スリーブ2A、2Bにおける強化繊維は、編み込まれたもの(クロス)ではないので、比較的自由に移動することができ、そのために、反転作業が極めて円滑に行われ、又、皺にもなりにくい。
【0070】
性能試験
次ぎに、本発明の熱硬化性樹脂管の性能について説明する。
【0071】
実施例2で説明した図6に示す連続強化繊維シート21を使用して、図1に示す管状ライナーを使用し、樹脂を含浸させて熱硬化性樹脂管1Aを作製した。
【0072】
本試験にて使用し連続強化繊維シート21にて、強化繊維層23は、強化繊維24として平均径7μm、収束本数12000本のPAN系炭素繊維ストランドを用い、繊維目付200g/m2にて配列した。メッシュ状支持体シート2は、縦糸5及び横糸6としてガラス繊維(番手300d、打ち込み本数1本/10mm)を用いた2軸メッシュ状体であった。2軸メッシュ状体の糸条の間隔(w1、w2)は、10mmとした。
【0073】
メッシュ状支持体シート22の縦糸25及び横糸26には、熱可塑性樹脂を、含有量80重量%の割合で含浸させた。
【0074】
このようにして作製した長尺の強化繊維シート21は、幅(W)が740mm、長さ(L)が50m、強化繊維の主軸に対する角度は45°であった。この強化繊維シート21を使用して、図10に示す態様で、第1の繊維スリーブ2A及び第2の繊維スリーブ2Bからなる内層2を作製した。第1及び第2繊維スリーブの強化繊維配向角度は、α=+45°、β=−45°であった。
【0075】
上記内層の外側に、厚さ200μmの塩化ビニール系樹脂フィルムを巻き付けて接着し、円筒状フィルム外層3とした。
【0076】
このようにして得られた管状ライナー1の内径は201.4mm、外径は204.0mm、長さが50mであった。
【0077】
この管状ライナー1にエポキシ樹脂を含浸し、熱硬化性樹脂管1Aを作製した。強化繊維シート21における樹脂量は、1065g/m2であった。
【0078】
比較例として、図1に示すような構成のそれぞれ+45°配向及び−45°配向の連続強化繊維シートを使用する代わりに、図13に示すように、フェルト層2Mを使用した。フェルト層2Mは、ポリエステルフェルトであり、層厚は3.0mmであった。
【0079】
表1に、本発明の強化繊維シート21を使用した熱硬化性樹脂管1Aと、フェルト層2Mを使用した比較例の熱硬化性樹脂管1Aとの樹脂硬化後の樹脂管の機械的特性を示す。本発明の熱硬化性樹脂管1Aの場合が、樹脂硬化後の樹脂管の機械的特性が向上していることが分かる。
【0080】
【表1】
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の管状ライナー及び熱硬化性樹脂管は、強化繊維が一方向に配列された長尺の強化繊維シートにて形成された繊維スリーブを有する内層と、内層の外周に配置された円筒状フィルム外層とを有し、強化繊維は、管状ライナーの長手軸線方向に対して所定の角度にて配向されている構成とされるので、
(1)厚さをより薄くして、既設管の内径が小さくなることを回避すると共に、補強強度をより増大することができる。
(2)樹脂含浸後における既設管内への反転、挿入作業が極めて容易であり、皺にもならない。
といった効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る管状ライナーの一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る管状ライナーの他の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る管状ライナーの他の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る管状ライナーの他の実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る管状ライナーの他の実施例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る連続強化繊維シートの一実施例を示す斜視図である。
【図7】図6に示す本発明に係る連続強化繊維シートの分解斜視図である。
【図8】本発明に係る連続強化繊維シートの他の実施例を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る連続強化繊維シートの他の実施例を示す斜視図である。
【図10】本発明の管状ライナーの繊維スリーブの製造方法の一実施例を説明する図である。
【図11】反転ライニング工法を説明する図である。
【図12】本発明に係る熱硬化性樹脂管を既設管に施工した状態を示す部分破断斜視図である。
【図13】従来の管状ライナーの斜視図である。
【符号の説明】
1 管状ライナー
1A 熱硬化性樹脂管
1C 樹脂管
2 内層
2A、2B、2C、2D 繊維スリーブ
2G 絶縁材層
2M1、2M2 フェルト層
3 円筒状フィルム外層
21 強化繊維シート
22 樹脂透過性支持体シート
23 強化繊維層
24 強化繊維
Claims (24)
- 強化繊維が一方向に配列された長尺の強化繊維シートにて形成された繊維スリーブを有する内層と、前記内層の外周に配置された円筒状フィルム外層とを有する管状ライナーであって、
前記強化繊維は、前記管状ライナーの長手軸線方向に対して所定の角度にて配向されていることを特徴とする管状ライナー。 - 前記繊維スリーブは複数積層されることを特徴とする請求項1の管状ライナー。
- 前記繊維スリーブの強化繊維の配向角度が異なることを特徴とする請求項2の管状ライナー。
- 前記強化繊維の配向角度は、+45°、−45°或いは90°であることを特徴とする請求項1、2又は3の管状ライナー。
- 前記内層には、1層或いは複数層をなす前記繊維スリーブの内周側及び/又は外周側にフェルト層が配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の管状ライナー。
- 長尺の前記強化繊維シートは、樹脂透過性支持体シートと、実質的に一定長さの長繊維とされる強化繊維が前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に対して所定の角度をもって且つ前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に沿って配列され、前記樹脂透過性支持体シートに保持された強化繊維層とを有することを特徴とする請求項1の管状ライナー。
- 前記強化繊維は、前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に対して略45°にて配列されていることを特徴とする請求項6の管状ライナー。
- 前記樹脂透過性支持体シートは、前記強化繊維層の片面或いは両面に設けられることを特徴とする請求項6又は7の管状ライナー。
- 前記樹脂透過性支持体シートは、メッシュ状体、クロス又は不織布であることを特徴とする請求項8の管状ライナー。
- 前記メッシュ状体は、前記強化繊維シートの長手方向と同一方向の縦糸と、この縦糸と直交する横糸とにて形成された2軸メッシュ状体であることを特徴とする請求項9の管状ライナー。
- 前記強化繊維シートは、2枚以上重ねて使用することを特徴とする請求項6〜10のいずれかの項に記載の管状ライナー。
- 積層された強化繊維シートの間には少なくとも1枚以上の前記樹脂透過性支持体シートが介在していることを特徴とする請求項11の管状ライナー。
- 各強化繊維シートの強化繊維層を形成する強化繊維は、前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に対して同じ方向に且つ同じ角度で配向されていることを特徴とする請求項11又は12の管状ライナー。
- 各強化繊維シートの強化繊維層を形成する強化繊維は、前記樹脂透過性支持体シートの長手方向に対して異なる方向に配向されていることを特徴とする請求項11又は12の管状ライナー。
- 前記強化繊維シートを形成する強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、鋼繊維などを一種、又は、複数種混入して使用することを特徴とする請求項1〜14のいずれかの項に記載の管状ライナー。
- 前記強化繊維シートの繊維目付は、50〜600g/m2であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかの項に記載の管状ライナー。
- 前記強化繊維シートの強化繊維が導電性である場合には、前記強化繊維シートの内周側に絶縁材層が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の管状ライナー。
- 前記絶縁材層は、ガラスクロス、スクリームクロス或いはガラス不織布であることを特徴とする請求項17の管状ライナー。
- 請求項1〜18のいずれかの項に記載の管状ライナーの前記内層に熱硬化性樹脂を含浸したことを特徴とする折りたたみ可能な熱硬化性樹脂管。
- 熱硬化性樹脂を含浸した連続繊維ロービングを連続して螺旋状に巻き付けて少なくとも1層の繊維スリーブを形成したことを特徴とする折りたたみ可能な熱硬化性樹脂管。
- 前記繊維スリーブが複数層とされる場合、各前記繊維スリーブは、連続繊維ロービングの螺旋方向が異なることを特徴とする請求項20の折りたたみ可能な熱硬化性樹脂管。
- 前記連続繊維ロービングは、多数本の連続した強化繊維フィラメントを収束することによって形成されることを特徴とする請求項20又は21の折りたたみ可能な熱硬化性樹脂管。
- 前記強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、鋼繊維などを一種、又は、複数種混入して使用することを特徴とする請求項22の管状ライナー。
- 前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂とされることを特徴とする請求項19〜23のいずれかの項に記載の熱硬化性樹脂管。
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