JP2023172391A - Ptp用蓋材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、印刷読み取り性、リサイクル性および突き出し性に優れるPTP包装体用蓋材およびその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を含み、強熱残渣が5質量%未満であり、20°、45°、60°、75°および85°の測定角度におけるグロス値がいずれも70%以下であり、突刺破断伸度が3.2mm未満であることを特徴とする、PTP用蓋材。【選択図】なし

Description

本発明は、PTP(プレススルーパック)用蓋材およびその製造方法に関する。
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるPTP包装体が知られている。PTP包装体は、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリプロピレン系樹脂等からなるプラスチックシートを真空成形または圧空成形することにより、ポケット状の凹部を有する底材を成形し、この凹部に内容物を充填した後、凹部以外の部分であるフランジ部に蓋材をヒートシールすることにより製造される。収納された内容物は、内容物に対して底材の外側から蓋材の方向に力を加えて蓋材を突き破ることにより、取り出すことができる。
蓋材には、従来、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(突き出し性)に優れたアルミ箔、グラシン紙等が用いられてきた。しかしながら、アルミ蓋材表面には光沢があるため、バーコード等の印刷部分が読み取りづらいという問題があった。また、近年、使い捨てプラスチック製品の削減とリサイクルの実施、再生可能資源への転換という流れから、底材だけでなく、蓋材にもプラスチックシートを用いることにより、ゴミとして廃棄する場合の分別の必要がなく、リサイクル可能な環境対応型のPTP包装体が注目されている。
例えば、特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂フィルムと、ポリプロピレン系樹脂フィルムに積層された補強樹脂層とを基材とし、放射線の照射によりポリプロピレン系樹脂フィルムを劣化させた、プレススルー機能を有する蓋材が開示されている。
また、特許文献2には、スチレン系樹脂と着色剤とを含むPTP用蓋材が開示されている。
特許文献3には、高密度ポリエチレン(HDPE)を主成分とし、破断伸度低減のための添加剤を含むブリスター包装体用蓋材が開示されている。
特許文献4には、ポリプロピレン系樹脂と、突き出し性を向上させるための無機物(タルク等)とを含む樹脂組成物からなるシートを基材とするPTP用蓋材が開示されている。
特開平7-256842号公報 特開2014-201345号公報 国際公開第2021/074082号 特開平10-101133号公報
しかしながら、特許文献1~3に記載された蓋材は、光沢が高いなど、バーコード等の印刷部分の読み取り性が不十分であるという問題がある、もしくは、突き出し性の点でさらなる改良の余地がある。また、特に特許文献4に記載された蓋材は、無機物を多く含むことから、分別工程でトラブルを招いたり、再生材の品質低下に繋がるなど、リサイクルに不向きである。
そこで、本発明は、印刷読み取り性、リサイクル性、および突き出し性に優れるPTP包装体用蓋材およびその製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
ポリオレフィン系樹脂を含み、強熱残渣が5質量%未満であり、20°、45°、60°、75°および85°の測定角度におけるグロス値がいずれも70%以下であり、突刺破断伸度が3.2mm未満であることを特徴とする、PTP用蓋材。
[2]
入射角15°の光を使用した変角光度計測定において、最大反射強度が20~150である、[1]に記載のPTP用蓋材。
[3]
入射角15°の光を使用した変角光度計測定において、反射強度分布の半値幅が10°以上である、[1]または[2]に記載のPTP用蓋材。
[4]
(L*,a*,b*)色空間におけるa*値が-12~10であり、b*値が-10~15である、[1]~[3]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[5]
ヘイズが50%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[6]
PTP用蓋材が印刷面を有し、該印刷面の算術平均粗さRaが0.2μm以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[7]
前記PTP用蓋材に含まれる樹脂の分子量分布が4.0~7.0である、[1]~[6]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[8]
重量平均分子量が2.0×10~3.5×10であるポリプロピレン系樹脂を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[9]
示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量が70J/g以上である、[8]に記載のPTP用蓋材。
[10]
重量平均分子量が3.5×10~5.2×10であるポリエチレン系樹脂を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[11]
示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量が140J/g以上である、[10]に記載のPTP用蓋材。
本発明によれば、印刷読み取り性、リサイクル性および突き出し性に優れるPTP包装体用蓋材およびその製造方法を提供することができる。
図1は、本発明に係るPTP用蓋材を備えたPTP包装体の一実施形態を示す断面図である。 図2は、本発明に係るPTP用蓋材に対して、突刺試験を実施した際に得られる荷重-変位曲線の一例を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
[PTP用蓋材]
本実施形態のPTP用蓋材(以下、単に「蓋材」ともいう。)は、ポリオレフィン系樹脂を含み、強熱残渣が5質量%未満であり、20°、45°、60°、75°および85°の測定角度におけるグロス値がいずれも70%以下であり、突刺破断伸度が3.2mm未満であることを特徴とする。
本実施形態のPTP用蓋材は、バーコード、QRコード等の印刷部分が印刷される印刷面を有していてもよい。
<ポリオレフィン系樹脂>
本実施形態のPTP用蓋材は、ポリオレフィン系樹脂を含み、リサイクル性の観点から、ポリオレフィン系樹脂からなることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンに由来する単量体単位を含む重合体を指し、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、60~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70~95質量%であり、さらに好ましくは75~90質量%である。ポリオレフィン系樹脂の含有量が上記範囲であると、良好な突き出し性を発現しやすい傾向にある。また、特に、ポリオレフィン系樹脂の含有量が100質量%であると、リサイクル性に優れた蓋材となる。
<<ポリエチレン系樹脂>>
ポリエチレン系樹脂は、特に限定されず、エチレンホモポリマー、またはエチレンと他のモノマーとの共重合体のいずれであってもよく、例えば、エチレンホモポリマー;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体;エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体等のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。中でも、密度が高いほど、突刺破断伸度が低下する傾向にあることから、エチレンホモポリマーが好ましい。
また、環境対応の観点から、バイオポリエチレンであってもよい。さらに、ポリエチレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3.5×10~5.2×10であることが好ましく、より好ましくは3.8×10~4.7×10であり、さらに好ましくは4.0×10~4.5×10である。重量平均分子量が上記範囲であるポリエチレン系樹脂は、その脆弱性ゆえに通常フィルムには使用されないが、本実施形態のPTP用蓋材では、この脆弱性が生かされ、突き出し性に優れたものとなる傾向にある。また、重量平均分子量が上記範囲であるポリエチレン系樹脂を用いることにより、特許文献1のように放射線を照射して樹脂を劣化させる必要がないため、放射線照射時の樹脂の分解による不快な臭気の発生や、補強樹脂層等の架橋によるリサイクル性の低下、シール性の低下を回避することができる。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記ポリエチレン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量%として、60~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70~95質量%であり、さらに好ましくは75~90質量%である。ポリエチレン系樹脂の含有量が上記範囲であると、良好な突き出し性を発現しやすい傾向にある。また、特に、ポリエチレン系樹脂の含有量が100質量%であると、リサイクル性に優れた蓋材となる。
ポリエチレン系樹脂の製造方法は、特に限定されず、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができる。
<<ポリプロピレン系樹脂>>
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレンと他のモノマーとの共重合体、およびこれらの変性物等が挙げられる。中でも、耐熱性、水蒸気バリア性、突刺破断伸度の観点から、プロピレンホモポリマーが好ましい。
また、環境対応の観点から、バイオポリプロピレンであってもよい。さらに、ポリプロピレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
プロピレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のα-オレフィン等が挙げられる。重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体等であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、特に限定されず、触媒の存在下でプロピレンやその他のモノマーを重合させる方法等の公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、触媒とアルキルアルミニウム化合物との存在下、重合温度0~100℃、重合圧力3~100気圧の範囲で、プロピレンやその他のモノマーを重合させる方法が挙げられる。
上記触媒としては、三塩化チタン触媒、塩化マグネシウム等の担体に担持したハロゲン化チタン触媒等が挙げられる。重合体の分子量を調整するために、水素等の連鎖移動剤を添加してもよい。
ポリプロピレン系樹脂の製造において、上記触媒の他に、ポリプロピレンのアイソタクティシティや重合活性を高めるため、第三成分として、電子供与性化合物を内部ドナー成分または外部ドナー成分として用いることができる。電子供与性化合物としては、特に限定されず、公知のものが使用でき、例えば、ε-カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル等のエステル化合物;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチル等の亜リン酸エステル;ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のリン酸誘導体;アルコキシエステル化合物;芳香族モノカルボン酸エステル;芳香族アルキルアルコキシシラン;脂肪族炭化水素アルコキシシラン;各種エーテル化合物;各種アルコール類;各種フェノール類等が挙げられる。
上記方法における重合方式としては、バッチ式または連続式のいずれであってもよい。重合方法は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合、無溶媒下でのモノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、未変性のポリプロピレン系樹脂をα,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体(酸無水物やエステルも含む)等の変性剤により変性したものであってもよい。変性ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、未変性のポリプロピレン系樹脂をα,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト化または付加させたもの等が挙げられる。具体例としては、α,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体が、ポリプロピレン系樹脂全体の0.01~10質量%程度の割合で、ポリプロピレン系樹脂にグラフトまたは付加しているもの等が挙げられる。
変性ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ラジカル発生剤の存在下または非存在下、溶融状態、溶液状態、またはスラリー状態で、30~350℃の範囲で、未変性のポリプロピレン系樹脂と変性剤とを反応させることによって得られる。
ポリプロピレン系樹脂が、未変性のポリプロピレンと変性ポリプロピレンとの混合物である場合、未変性のポリプロピレンと変性ポリプロピレンとの混合割合は、特に限定されることなく、任意の割合としてよい。
ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2.0×10~3.5×10であることが好ましく、より好ましくは2.2×10~3.2×10、さらに好ましくは2.3×10~3.0×10である。重量平均分子量が上記範囲であるポリプロピレン系樹脂は、その脆弱性ゆえに通常フィルムには使用されないが、本実施形態のPTP用蓋材では、この脆弱性が生かされ、突き出し性に優れたものとなる。また、重量平均分子量が上記範囲であるポリプロピレン系樹脂を用いることにより、特許文献1のように放射線を照射してプロピレン系樹脂を劣化させる必要がないため、放射線照射時の樹脂の分解による不快な臭気の発生や、補強樹脂層等の架橋によるリサイクル性の低下、シール性の低下を回避することができる。
なお、重量平均分子量は、GPCを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記ポリプロピレン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量%として、
60~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70~95質量%であり、さらに好ましくは75~90質量%である。ポリプロピレン系樹脂の含有量が上記範囲であると、良好な突き出し性を発現しやすい傾向にある。また、特に、ポリプロピレン系樹脂の含有量が100質量%であると、リサイクル性に優れた蓋材となる。
本実施形態のPTP用蓋材は、上述のポリオレフィン系樹脂を含む層(以下、「ポリオレフィン系樹脂層」ともいう。)を有する積層体であってもよい。
ポリオレフィン系樹脂層に積層するその他の層としては、例えば、PTP用底材とのシール性を向上させるためのシール層、強度や突き出し性等の蓋材の物性を調整するための調整層、包装時のフィルム切れを防止するための補強層、ガスバリア性を向上させるためのバリア層等が挙げられる。
積層数は、特に限定されないが、強度、突き出し性、水蒸気バリア性、シール性、およびリサイクル性のバランスの観点から、2~5層であることが好ましく、2~3層であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂層の厚みは、PTP用蓋材全体の厚みを100%として、60~95%であることが好ましく、より好ましくは70~95%であり、さらに好ましくは75~90%である。ポリオレフィン系樹脂層の厚みが上記範囲であると、良好な突き出し性および水蒸気バリア性を発現しやすい傾向にある。
一態様として、本実施形態のPTP用蓋材は、上述のポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂層と、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリオレフィン系エラストマーを含む少なくとも1つの表層とを含んでいてもよい。
当該表層は、底材に接着される底材側の表層および外側の表層(最外層)のいずれか一方であっても、両方であってもよい。例えば、包装時のフィルム切れを防止するための補強層として外側の表層であってもよい。また、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリオレフィン系エラストマーを含むことにより、ヒートシール性に優れるとともに、これらの樹脂は共押出可能なため、エマルジョン型ヒートシール剤の塗布が不要となり、高温環境下でも不快な臭気が発生しないことから、底材に接着される底材側の表層として好適である。中でも、特に低温シール性に優れることから、ポリオレフィン系エラストマーを含む層であることが好ましく、リサイクル性の観点からは、PTP用蓋材全体がポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂で構成されるように、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を含む層であることが好ましい。
当該表層の厚みは、PTP用蓋材全体の厚みを100%として、5~40%であることが好ましく、より好ましくは5~30%であり、さらに好ましくは10~25%である。表層の厚みが上記範囲であると、突き出し性を悪化させることなく良好なヒートシール性を付与したり、フィルム切れを防止することができる。
上記表層に含まれるポリエチレン系樹脂は、種類としては、上述のポリエチレン系樹脂と同様のものが挙げられる。中でも、低温シール性に優れるという観点からは、エチレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。また、環境対応の観点から、バイオポリエチレンであってもよい。
ポリエチレン系樹脂の分子量は、特に限定されないが、上述のポリオレフィン系樹脂層に含まれるポリエチレン系樹脂よりも高いことが好ましい。例えば、メルトフローレート(MFR、ASTM D-1238に準拠して190℃、2.16kgfの荷重で測定)が1.5~6g/10分であるものが挙げられる。
ポリエチレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
上記表層に含まれるポリプロピレン系樹脂は、種類としては、上述のポリプロピレン系樹脂と同様のものが挙げられる。中でも、低温シール性に優れるという観点からは、低密度のプロピレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。また、環境対応の観点から、バイオポリプロピレンであってもよい。
ポリプロピレン系樹脂の分子量は、特に限定されないが、上述のポリオレフィン系樹脂層に含まれるポリプロピレン系樹脂よりも高いことが好ましい。例えば、メルトフローレート(MFR、ASTM D-1238に準拠して230℃、2.16kgfの荷重で測定)が3~15g/10分であるものが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
ポリオレフィン系エラストマーは、結晶化度が50%以下の低結晶性ないし非晶性のオレフィン系重合体であり、ポリオレフィン系エラストマーのモノマー(オレフィン)としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等のα-オレフィン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等の環状オレフィンが挙げられる。
中でも、低温シール性に優れることから、低融点(55~90℃)のポリプロピレン系エラストマーが好ましい。また、環境対応の観点から、バイオポリオレフィン系エラストマーであってもよい。さらに、ポリオレフィン系エラストマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
ポリオレフィン系エラストマーの製造方法は、特に限定されず、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができる。
ポリオレフィン系エラストマーの含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、5~40質量%であることが好ましく、より好ましくは5~30質量%であり、さらに好ましくは10~25質量%である。ポリオレフィン系エラストマーの含有量が上記範囲であると、突き出し性を悪化させることなく良好なヒートシール性を付与したり、フィルム切れを防止することができる。
また、別の態様として、本実施形態のPTP用蓋材は、上述のポリオレフィン系樹脂層と表層との間に、強度や突き出し性等の蓋材の物性を調整するための調整層を含んでいてもよい。
当該調整層の厚みは、PTP用蓋材全体の厚みを100%として、10~40%であることが好ましく、より好ましくは15~35%であり、さらに好ましくは20~30%である。
上記調整層は、リサイクル性の観点から、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の種類としては、例えば、上述のポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂と同様のものが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の分子量は、特に限定されないが、上述のポリオレフィン系樹脂層に含まれるポリオレフィン系樹脂よりも高いことが好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である場合、メルトフローレート(MFR、ASTM D-1238に準拠して190℃、2.16kgfの荷重で測定)が1.5~6g/10分であるものが挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、メルトフローレート(MFR、ASTM D-1238に準拠して230℃、2.16kgfの荷重で測定)が3~15g/10分であるものが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
〈無機物〉
本実施形態のPTP用蓋材は、破断起点を増加させ、突き出し性を向上させるために、無機物を含んでいてもよい。
無機物は、特に限定されず、例えば、非晶質アルミナ珪酸塩、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、クレー、炭酸カルシウム、ガラス繊維、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
無機物の含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、0.1~3質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~2質量%であり、さらに好ましくは0.5~1質量%である。無機物の含有量が上記範囲であると、良好な突き出し性を示すとともに、不純物が少なく、リサイクル性が高い蓋材となる。
本実施形態のPTP用蓋材は、当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、上記無機物の分散を補助する金属石鹸、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、結晶核剤等を含んでいてもよい。
また、本実施形態のPTP用蓋材は、印刷の特性改善を目的としたコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、AC(アンカーコート)処理等の処理を行ってもよい。
特に、白色の着色剤や印刷は、下記の理由から好ましい。近年、医薬品用のPTP包装体では、従来の製品名称ロゴや使用方法を示す図柄の他に、医療事故の防止やトレーザビリティーの確保を目的とした商品コード、有効期限、製造番号、数量といった各種情報を含んだバーコードを印刷することのニーズが高まりつつある。白色の着色剤を配合した蓋材や白色印刷したものを用いると、バーコードの読取りの際、線のない部分(蓋材が直接見える部分)が白いために、バーコードの線のある部分(一般的には黒色)との色の濃淡ができ、バーコードが読み取りやすくなる。
添加剤の含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、3質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のPTP用蓋材に含まれる樹脂は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比率で表される分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0であることが好ましく、より好ましくは4.2~6.5、さらに好ましくは4.5~6.0である。PTP用蓋材に含まれる樹脂の分子量分布が4.0以上であると、結晶融解熱量が大きく(結晶化度が高く)なりやすい傾向にあり、また、分子量分布が7.0以下であると突き出し性が良好となる傾向にある。
なお、分子量分布は、GPCを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のPTP用蓋材の厚みは、10~100μmであることが好ましく、より好ましくは30~80μmであり、さらに好ましくは40~60μmである。厚みが10μm以上であると、加工工程に耐える引張強度、水蒸気バリア性を発現しやすく、100μm以下であると、良好な突き出し性を発現しやすい。
本実施形態のPTP用蓋材は、強熱残渣が5質量%未満であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。強熱残渣が上記範囲であると、PTP用蓋材に含まれるフィラー等が少なく、リサイクル性に優れる。強熱残渣の下限に関しては特段の制約はない。
なお、強熱残渣は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のPTP用蓋材は、20°、45°、60°、75°および85°の測定角度におけるグロス値がいずれも70%以下であり、好ましくはいずれも60%以下、より好ましくはいずれも45%以下、更に好ましくはいずれも40%以下である。20°、45°、60°、75°および85°の測定角度におけるグロス値が上記範囲であると、光沢が少なく、あらゆる角度からの印刷部分(バーコード、QRコード等)の読み取り性が高くなる。グロス値の下限に関しては特段の制約はないが、5%以上であることが好ましい。
上記グロス値の制御方法としては、例えば、樹脂の種類、PTP用蓋材を製造する際の蓋材の冷却等を調整する方法が挙げられる。一例として、結晶性の高い樹脂を選択すること、PTP用蓋材をダイレクトインフレーション法により製造する際の冷却を徐冷化すること等によりグロス値を低下させることができる。
なお、グロス値(光沢度)は、JIS Z8741-1997に準拠して光沢計を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
本実施形態のPTP用蓋材は、入射角15°の光を使用した変角光度計測定において、最大反射強度が20~150であることが好ましく、より好ましくは25~100、さらに好ましくは30~50である。最大反射強度が20以上であると、あらゆる角度において反射強度が十分となり、また、最大反射強度が150以下であるとサチレーションの発生が抑えられ、あらゆる角度からの印刷部分(バーコード、QRコード等)の読み取り性が向上する傾向にある。
また、本実施形態のPTP用蓋材は、入射角15°の光を使用した変角光度計測定において、反射強度分布の半値幅が10°以上であることが好ましく、より好ましくは
12~25°、さらに好ましくは15~22°である。最大反射強度が上記範囲であると、散乱光が広範囲に及び、あらゆる方向から印刷部分(バーコード、QRコード等)が読み取りやすくなる傾向にある。
なお、反射強度分布の半値幅は、最大反射強度の半分の値となる2つの反射角のうち、大きい反射角をθ1とし、小さい反射角をθ2として、θ1-θ2の値として求めた。
入射角15°の光を使用した変角光度計測定は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
本実施形態のPTP用蓋材は、(L*,a*,b*)色空間において、赤色味の指標となるa*値が-12~10であり、かつ黄色味の指標となるb*値が-10~15であることが好ましく、より好ましくはa*値が-8~6かつb*値が-6~8であり、さらに好ましくはa*値が-5~3かつb*値が-3~4である。a*値およびb*値が上記範囲であると、コントラストがはっきりするため、印刷部分(バーコード、QRコード等)が読み取りやすくなる傾向にある。
なお、(L*,a*,b*)色空間におけるa*値およびb*値は、測色色差計を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
本実施形態のPTP用蓋材は、ヘイズが50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。ヘイズが上記範囲であると、PTP用蓋材の印刷面が反対側の面の影響を受けにくく、印刷部分(バーコード、QRコード等)が読み取りやすくなる傾向にある。ヘイズの上限に関しては特段の制約はないが、99%以下であることが好ましい。
なお、ヘイズは、JIS-K-7136に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
本実施形態のPTP用蓋材は、印刷面の算術平均粗さRaが0.2μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.25μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。算術平均粗さRaが上記範囲であると、印刷面の表面が荒れていて光が散乱しやすい傾向にある。印刷面の算術平均粗さRaの上限に関しては特段の制約はないが、1.0μm以下であることが好ましい。
上記印刷面の算術平均粗さRaの制御方法としては、例えば、重合触媒や重合方法の異なる樹脂の選定、および重量平均分子量の変更が挙げられる。一例として、重量平均分子量を大きくすること等により印刷面の算術平均粗さRaを大きくすることができる。
なお、算術平均粗さRaは、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
本実施形態のPTP用蓋材が、オレフィン系樹脂として重量平均分子量が3.5×10~5.2×10であるポリエチレン系樹脂を含む場合、示差走査熱量計(DSC)により測定した結晶融解熱量は、130J/g以上であることが好ましく、より好ましくは145~290J/gであり、さらに好ましくは160~290J/gである。結晶融解熱量が上記範囲であると、突刺破断伸度が好適となり、良好な突き出し性を示す傾向にある。
また、本実施形態のPTP用蓋材が、オレフィン系樹脂として重量平均分子量が2.0×10~3.5×10であるポリプロピレン系樹脂を含む場合、示差走査熱量計(DSC)により測定した結晶融解熱量は、70J/g以上であることが好ましく、より好ましくは75~200J/gであり、さらに好ましくは80~200J/gである。結晶融解熱量が上記範囲であると、突刺破断伸度が好適となり、良好な突き出し性を示す傾向にある。
PTP用蓋材の結晶融解熱量の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材を製造する際の蓋材の冷却、製造後のアニール、結晶核剤の添加等を調整する方法が挙げられる。一例として、PTP用蓋材をダイレクトインフレーション法により製造する際の冷却を徐冷化すること、蓋材を製造後にアニールすること、結晶核剤を添加すること等により結晶融解熱量を増加させることができる。
なお、示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量の測定は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
本実施形態のPTP用蓋材のMD配向度は、-0.035~0.035であることが好ましく、より好ましくは-0.03~0.03であり、さらに好ましくは-0.025~0.025であり、さらにより好ましくは-0.02~0.02である。MD配向度が上記範囲であると、良好な突き出し性を示す傾向にある。
PTP用蓋材のMD配向度の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材を製造する際の蓋材の冷却、TD延伸の倍率(BUR)またはタイミング等を調整する方法が挙げられる。一例として、PTP用蓋材をダイレクトインフレーション法により製造する際にエアリングによる蓋材の冷却を徐冷化すること、TD延伸倍率(BUR)を増加させること、逐次二次延伸により製造すること等により、MD配向度を低下させることができる。
なお、MD配向度は、FT-IRを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
また、MD配向度はTDに対するMDへの配向を示していることから、PTP用蓋材の厚み方向に対するMDへの配向および厚み方向に対するTDへの配向をそれぞれ測定した結果から算出してもよい。その際、PTP用蓋材が多層構成である場合は、最も厚みの厚い層がPTP蓋材の特性に影響を与えやすいため、最も厚みの厚い層(最も厚みの厚い層が複数ある場合はそのいずれか)の配向度を測定すればよい。
また、MD配向度は、FT-IRを用いる場合と同様に、ラマン顕微鏡を用いて測定することも可能である。
PTP用蓋材の突刺試験時の荷重-変位曲線において、破断領域における変位0.1mmあたりの最大荷重低下が3~20Nであることが好ましく、より好ましくは4~18Nであり、さらに好ましくは5~15Nである。変位0.1mmあたりの最大荷重低下が20Nを超えるPTP用蓋材は、PTP包装体から錠剤などの内容物を取り出す際に破れにくいことを示しており、突き出し性が乏しい傾向にある。また、変位0.1mmあたりの最大荷重低下は、開封認識性に最も影響を及ぼす因子の一つであり、変位0.1mmあたりの最大荷重低下が3N未満の場合は、PTP用蓋材が脆いことを示しており、錠剤などの内容物を取り出す際に開封音がほとんど発生せず、開封認識性が劣る傾向にある。
図2に、本実施形態のPTP用蓋材に対して突刺試験を実施した際に得られる荷重-変位曲線の一例を示す。図2のPTP用蓋材の場合、変位0.1mmあたりの最大荷重低下は8Nである。
PTP用蓋材の変位0.1mmあたりの最大荷重低下を制御する方法としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量、PTP用蓋材の厚み、補強層を調整する方法が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量やPTP蓋材の厚みを大きくしたり、補強層を設けると、変位0.1mmあたりの最大荷重低下を大きくすることができる。
なお、荷重-変位曲線の破断領域における変位0.1mmあたりの最大荷重低下は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のPTP用蓋材の突刺破断伸度は、3.2mm未満であることが好ましく、より好ましくは1~2.9mmであり、さらに好ましくは1.3~2.5mmである。突刺破断伸度が1mm以上であると、PTP包装体の輸送時等に外力によってPTP用蓋材が破れることを防止することができる。また、突刺破断伸度は、引張伸度や突出強度等と同様に突き出し性に最も影響を及ぼす因子の一つであり、突刺破断伸度が3.2mm未満であると、突き出し性に優れたPTP用蓋材を得ることができる。
PTP用蓋材の突刺破断伸度の制御方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量、PTP用蓋材の層比率、結晶融解熱量(結晶化度)、MDおよびTD配向度等を調整する方法が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量を小さくしたり、低分子量のポリオレフィン系樹脂の割合を上げたり、結晶融解熱量(結晶化度)を増加させたり、MDおよびTD配向度を減少させると、突刺破断伸度は低下する傾向にある。
なお、突刺破断伸度は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
<PTP用蓋材の製造方法>
PTP用蓋材の製造方法としては、特に限定されないが、一例として、環状ダイを備えた公知の溶融押出機を用いて上記構成材料をチューブ状に押出した後、直接エアーを吹き込み延伸させ、空冷により固化させることによりフィルムを得るダイレクトインフレーション法が挙げられる。PTP用蓋材が複数層からなる積層体である場合は、共押出ダイレクトインフレーション法であることが好ましい。
上記ダイレクトインフレーション法における空冷による固化において、環状ダイのダイリップ表面からフロストラインまでの距離(冷却区間の距離)は、離れている方が良い。環状ダイのダイリップ表面からフロストラインまでの距離が離れていると、環状ダイから押出されたフィルムがゆっくりと冷却されるため、結晶融解熱量が大きくなり(結晶化度が高くなり)、結晶サイズが大きくなると考えられる。これにより、光が散乱しやすくなり、
それに相関して光沢が低減され、印刷読み取り性が向上する。
たとえば、ダイキャップが1~4mm、ダイリップ外径が100~150mmのとき、環状ダイのダイリップ表面からフロストラインまでの距離(冷却区間の距離)は、30~100cmであることが好ましく、より好ましくは50~90cm、さらに好ましくは60~80cmである。なお、後述の実施例においては、押出量を18kg/hrとし、ダイギャップを3mmとし、ダイリップ外径を125mmとして実施した。
また、フロストラインとは、環状ダイからチューブ状に押出された構成材料が、冷却固化する際に溶融樹脂との密度差によって生じる白色境界線を指し、MDおよびTD方向への延伸が終了する位置に相当する。
以下、積層体であるPTP用蓋材を共押出ダイレクトインフレーション法により製造する方法について、その概略を説明する。
各層の構成材料である樹脂または樹脂組成物を、樹脂の融解温度以上で溶融し、層数に対応した台数の押出機を用いて各層を同時に押出する。押出された各層の樹脂または樹脂組成物をフィードパイプを通じて環状ダイに送り、環状ダイを介して各層が積層したチューブ状のフィルムを作製する。特段の制約は無いが、一例として上述のとおり押出量は18kg/hr、ダイギャップは3mm、ダイリップ外径は125mmとする。
続いて、フィルム内にエアー(空気、窒素等)を吹き込んでバブルを形成させ、フィルムをMDおよびTD方向に延伸させつつ、空冷により固化させることにより、PTP用蓋材を製造する。空冷による固化において、環状ダイのダイリップ表面からフロストラインまでの距離は、上述のとおり30~100cmであることが好ましい。
フィルムの延伸温度に特段の制約は無く、ダイリップ表面からフロストラインまでの距離が上述の好適範囲となるように適宜調整すればよい。
フィルムのMD延伸倍率(DDR)は、8~23倍であることが好ましく、より好ましくは、10~20倍である。MD延伸倍率が8倍以上であると、バブルの脈動が抑制され、延伸が安定化する傾向にある。また、MD延伸倍率が23倍以下であると、MD配向度が好適でMDおよびTD配向度のバランスに優れ、良好な突き出し性を示す蓋材が得られる。
また、フィルムのTD延伸倍率(BUR)は、1.3~4倍であることが好ましく、より好ましくは、1.5~2.5倍である。TD延伸倍率1.3倍以上であると、MD配向度が好適でMDおよびTD配向度のバランスに優れ、良好な突き出し性を示す蓋材が得られる。また、TD延伸倍率が4倍以下であると、バブルの脈動が抑制され、延伸が安定化する傾向にある。
なお、MD延伸倍率は、ピンチローラーの速度で調節することができ、TD延伸倍率は、フィルム内に吹き込むエアーの体積により調節することができる。
<PTP包装体>
本実施形態のPTP包装体は、上述の本実施形態のPTP用蓋材と、内容物を収容する凹部を有する底材とを含むことを特徴とする。
図1は、本実施形態のPTP用蓋材を備えたPTP包装体の一例を示す断面図である。PTP包装体1は、PTP用蓋材2と底材3とを備える。底材3は、ポケット状の凹部4と、蓋材2と貼り合わされるフランジ部5とを有し、凹部4には、内容物6が充填されている。
〈底材〉
本実施形態のPTP包装体を構成する底材としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィン樹脂等)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエステル等の周知の合成樹脂を含むシート材が挙げられ、好適には、これらの合成樹脂からなるシート材である。中でも、リサイクル性の観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィン樹脂を含むことが好ましく、PTP用蓋材と同一樹脂とすることが最も好ましい。
底材は、底材のポケット状の凹部を真空または圧空成形する成形条件範囲の広さの観点から、JIS K7191に準拠した熱変形温度が50~160℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましい。
底材の形状は、内容物を収容する凹部を有するものであれば特に限定されず、凹部の底面部分および開口部分の形状は、矩形(正方形、長方形、三角形等)または円形(円、楕円等)であってよく、矩形は角が丸みを帯びていてもよい。
底材のサイズは、特に限定されず、内容物の大きさや数等に応じて適宜定めてよいが、例えば、凹部の深さは、1~15mmであってよく、好ましくは2~10mmである。また、特に、凹部の開口部分および底面部分の形状が円形である場合、開口部分の直径は、例えば、それぞれ5~150mmであってよく、好ましくは10~100mmであり、底面部分の直径は、それぞれ開口部分の直径より5~20%小さくてよい。
また、凹部以外の部分であるフランジ部は、特に限定されないが、凹部の深さ方向に直交する方向に延びるように設けられていてよい。
フランジ部の平均幅としては、例えば、2~100mmであってよく、好ましくは4~50mmである。
底材1の厚みは、特に限定されず、例えば、100~500μmであってよく、好ましくは150~300μmである。
<PTP包装体の製造方法>
本実施形態のPTP包装体は、底材の表面(フランジ部)と蓋材の表面とを重ね合わせてヒートシールすることにより、製造することができる。
ヒートシール温度は、例えば、80~160℃が挙げられ、内容物の焼け跡がつきにくくなる観点から、90~150℃が好ましい。また、ヒートシール時間は、例えば、0.05~3秒が挙げられ、内容物の焼け跡がつきにくくなり、十分なシール強度が得られる観点から、0.2~1秒が好ましい。また、ヒートシール圧力は、例えば、0.2~0.6MPaが挙げられ、内容物の焼け跡がつきにくくなり、十分なシール強度が得られる観点から、0.3~0.5MPaが好ましい。
本実施形態におけるPTP包装体の成形に用いる成形機としては、例えば、蓋材と底材とをヒートシールロールとシール下ロールで挟み込んでヒートシールを行うロールシール成形機や、上下に平板の加熱金型を有し、蓋材と底材とを金型で挟み込み成形するフラットシール成形機等が挙げられる。中でも、十分なシール強度が得られやすいフラットシール成形機を用いることが好ましい。
以下、本実施形態について、具体的な実施例および比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
〈ポリプロピレン系樹脂(PP)〉
・PP1:ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PLB00A、重量平均分子量:2.2×10
・PP2:ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PLA00A、重量平均分子量:2.6×10
・PP3:ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、VS700A、重量平均分子量:3.8×10
・PP4:ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PL500A、重量平均分子量:6.0×10
〈ポリエチレン系樹脂(PE)〉
・PE1:ポリエチレン(旭化成(株)製、サンテックHD J300、重量平均分子量:4.0×10
・PE2:ポリエチレン(旭化成(株)製、サンテックHD J311、重量平均分子量:4.9×10
・PE3:ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製、ユメリット0520F、重量平均分子量:6.0×10
・PE4:ポリエチレン(旭化成(株)製、サンテックHD B161、重量平均分子量:1.4×10
〈結晶核剤〉
・ポリエチレン用結晶化核剤マスターバッチ(理研ビタミン(株)製、リケマスターCN-002)
〈ポリオレフィン系エラストマー(TPO)〉
・TPO1:プロピレン-α-オレフィンコポリマー(三井化学(株)製、タフマーXM7070S)
・TPO2:エチレン-α-オレフィンコポリマー(三井化学(株)製、タフマーA4085S)
〈エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)〉
・エチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、ウルトラセン634)
〈ポリスチレン系樹脂(PS)〉
・スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(PSジャパン(株)製、MM290)
〈無機物〉
・非晶質アルミノケイ酸塩(水澤化学工業(株)社製、シルトンJC-70)
・酸化チタン(石原産業(株)製、ルチル型、粒径0.25μm)
〈その他〉
・アルミ箔(東洋アルミ(株)社製)
〈底材〉
・PP:共押出ダイレクトインフレーション法により、ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PL500A)80質量部、およびポリプロピレン(サンアロマー(株)社製、PC540R)20質量部から成る、厚み300μmの単層シートを作製した。その後、深さ:4mm、開口部分:直径10mmの円形、底面部分:直径8mmの円形の凹部を有し、深さ方向に直交する方向に延びる平均幅10mmのフランジ部を有する底材に成形した。開口部分は互いに直交する縦列および横列に並べられ、開口部分の中心間距離は、縦について20mm、横について20mmとした。
・PP/PE:共押出ダイレクトインフレーション法により、ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PL500A)、ポリプロピレン(サンアロマー(株)社製、PC540R)、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製、ユメリット0520F)の順に積層した厚み300μmの多層シートを作製した。その後、前記多層シートのポリエチレン側をヒートシール面として、上述のポリプロピレン単層シートと同様に成形した。
・PVC:ポリ塩化ビニル単層シート(住友ベークライト(株)製スミライトVSS-F110(厚さ250μm))を用い、上述のポリプロピレン単層シートと同様に成形した。
以下、実施例および比較例で用いた測定・評価方法について説明する。
[ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量]
PTP用蓋材に用いたポリプロピレン系樹脂について、以下の手順で重量平均分子量(Mw)を測定した。
まず、濃度が1mg/mLになるように試料に1,2,4-トリクロロベンゼンを加え、160℃で30分静置した後、160℃で1時間揺動させて溶解させた。前記溶解液を0.5μmのPTFEフィルタでろ過し、GPC(Agilent社製、PL-GPC220)にてポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。なお、測定に使用したカラムは、東ソー(株)製TSK-gelGMHHR-H(20)HT(7.8mm×30cm)を2本連結したものであり、カラム温度は160℃とした。
[ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量]
PTP用蓋材に用いたポリエチレン系樹脂について、以下の手順で重量平均分子量(Mw)を測定した。
まず、濃度が1.3mg/mLになるように試料にo-ジクロロベンゼンを加え、150℃で1時間撹拌させて溶解させ、GPC(Waters社製150-C ALC/GPC)にて重量平均分子量を測定した。
別途、市販の標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから1次校正直線を作成した。GPCの測定結果、および上記検量線に基づいて、重量平均分子量を求めた。なお、測定に使用したカラムは、昭和電工(株)製AT-807Sを1本と東ソー(株)製TSK-gelGMH-H6を2本連結したものであり、カラム温度は140℃とした。
[分子量分布]
ポリプロピレン系樹脂を含むPTP用蓋材については、上述の[ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量]と同様の手順で重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
また、ポリエチレン系樹脂を含むPTP用蓋材については、上述の[ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量]と同様の手順で重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
また、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の両方を含む比較例5のPTP用蓋材については、前記PTP用蓋材を構成する樹脂の中で、ポリプロピレンの割合が最も高いため、上述の[ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量]と同様の手順で重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
また、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂のいずれも含まない場合は、その構成樹脂に合わせた溶媒およびカラムを用いて測定し、比較例4のPTP用蓋材については、次の通りとした。まず、濃度が1mg/mLになるように試料にテトラヒドロフランを加え、室温で1日静置して溶解させた。前記溶解液を0.45μmのPTFEフィルタでろ過し、GPC(東ソー(株)製、HLC-8120)にてポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。なお、測定に使用したカラムは、東ソー(株)製TSK-gelGMHHR-H(7.8mmI.D×30cm)を2本連結したものであり、カラム温度は40℃とした。
[強熱残渣]
PTP用蓋材について、以下の手順で強熱残渣(質量%)を測定した。
まず、白金るつぼにPTP用蓋材1gを入れ、前記白金るつぼと共に電気炉((株)いすゞ製作所製、EPDS-16R)にて500℃で3時間加熱した。冷却後に残渣の質量を測定し、PTP用蓋材1gに対する割合を計算することで、強熱残渣を求めた。
[結晶融解熱量]
PTP用蓋材からサンプル(5~10mg)を切り出し、示差走査熱量計(DSC)(日立ハイテクサイエンス(株)製、DSC7000X)を用いて、窒素雰囲気下、熱量標準としてインジウムを使用して測定を行った。加熱プログラムとしては、サンプルを10℃/分の昇温速度で0℃から200℃まで昇温し、得られた熱流曲線の融解に起因する吸熱ピークに対して、高温側から外挿する直線をベースラインとして、結晶融解熱量(J/g)を求めた。なお、融解に起因する吸熱ピークが複数存在した場合は、各結晶融解熱量の合計をPTP用蓋材の結晶融解熱量とした。
[MD配向度(ポリプロピレン系樹脂を含む場合)]
PTP用蓋材について、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、FT/IR4100)を用いて、MD配向度を測定した。PTP用蓋材に対して、グリッド偏光子0°(MD)および90°(TD)で測定し、各ポリプロピレン系樹脂の973cm-1の吸光度を使用して、以下の式によりMD配向度を求めた。
二色比(R)=吸光度(MD)/吸光度(TD)
MD配向度=(R-1)/(R+2)×1.17
なお、測定時の積算回数は16回、分解能は4cm-1とし、5枚の試験片について測定した値の平均値をMD配向度とした。
[MD配向度(ポリエチレン系樹脂を含む場合)]
PTP用蓋材について、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、FT/IR4100)を用いて、MD配向度を測定した。PTP用蓋材に対して、グリッド偏光子0°(MD)および90°(TD)で測定し、各ポリエチレン系樹脂の720cm-1の吸光度を使用して、以下の式によりMD配向度を求めた。
二色比(R)=吸光度(TD)/吸光度(MD)
MD配向度=(R-1)/(R+2)
なお、測定時の積算回数は32回、分解能は2cm-1とし、5枚の試験片について測定した値の平均値をMD配向度とした。
[突刺破断伸度]
PTP用蓋材について、以下の手順で突刺破断伸度を測定した。
PTP用蓋材を、直径10mmの枠に張った状態で固定した。精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ)に、直径4mm、先端が平板状の針を装着し、固定したPTP用蓋材に押し込むことで、突刺試験を行った。測定は温度23℃、湿度50%RHの環境下で行い、針の移動速度は50mm/分とした。破れ発生時の針の先端の位置の深さ(針が固定したPTP用蓋材に接してから破れ発生時における位置までの変位)を突刺破断伸度(mm)とした。5枚の試験片について測定した値を平均し、そのPTP用蓋材の突刺破断伸度とした。
[突刺試験破断時の最大荷重低下]
PTP用蓋材について、以下の手順で突刺試験破断時の荷重低下を測定した。
PTP用蓋材を、直径10mmの枠に張った状態で固定した。精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ)に、直径4mm、先端が平板状の針を装着し、固定したPTP用蓋材に押し込むことで、突刺試験を行った。測定は温度23℃、湿度50%RHの環境下で行い、針の移動速度は50mm/分とした。得られた荷重-変位曲線の破断領域において(破れ発生に伴う荷重低下の内)、変位0.1mmあたりの荷重低下が最大となる値を求めた。5枚の試験片について測定した値を平均し、そのPTP用蓋材の変位0.1mmあたりの最大荷重低下とした。
[最大反射強度および反射強度分布の半値幅]
PTP用蓋材について、三次元変角光度計((株)村上色彩技術研究所製、GP-200)を用い、第一層側へ測定光を照射することで、最大反射強度および反射強度分布の半値幅を測定した。測定の際、測定モードを反射、入射角を15°、受光角を-60~90°、あおり角を0°、光彩絞りを3、受光絞りを4、感度調整値(S)を999、感度調整値(HV)を450とした。
受光角に対して光の反射・散乱強度が最も高い値を最大反射強度とし、最大反射強度の半分の値となる2つの反射角のうち、大きい反射角をθ1とし、小さい反射角をθ2とし、θ1-θ2を反射強度分布の半値幅とした。
いずれも、3枚の試験片について測定し、その平均を最大反射強度および反射強度分布の半値幅(°)とした。
[a*値、b*値]
PTP用蓋材について、測色色差計(日本電色工業(株)製、ZE6000)を用い、透過モード、23℃、50%RHの条件でa*値およびb*値を測定した。3枚の試験片について測定した値を平均し、そのPTP用蓋材のa*値およびb*値とした。
[グロス値]
PTP用蓋材について、JIS Z8741-1997に準拠して第一層側から0°、45°、60°、75°および85°の測定角度にて測定数n=3で光沢度を測定し、得られた光沢度を平均してグロス値(%)とした。
[PTP用蓋材のヘイズ]
PTP用蓋材について、JIS-K-7136に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、NDH5000)を用いてヘイズ(%)を測定した。
[印刷面の算術平均粗さRa]
PTP用蓋材の印刷面の算術平均粗さRa(μm)について、CNC表面粗さ測定機((株)ミツトヨ製、SURFTEST EXTREME SV-3000 CNC)を用いて3カ所測定し、測定値の平均値を算出した。測定時、基準長さを2.5mm、区間数を2、λcを0.8mm、λsを0.008mm、フィルタ選択をGaussianとした。
[印刷(QRコード)読み取り性]
PTP用蓋材について、印刷したQRコードを、QRコードリーダー(Honeywell社製、Xenon 1950)を用いて印刷面に対して90°で読み取りを10回実施し、下記の評価基準にて、印刷(QRコード)読み取り性を評価した
〈評価基準〉
◎(優れる):QRコード読み取り成功率が80%以上である。
○(良好):QRコード読み取り成功率が60%以上80%未満である。
×(不良):QRコード読み取り成功率が60%未満である。
[リサイクル性]
まず、裁断したPTP用蓋材を、混錬・押出成形評価試験装置((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)で200℃、50rpmの条件下で5分間混錬した。混錬物をポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン)で挟み、更に金属板で挟んだ後、シート熱プレス機(東洋精機(株)製)で200℃、20MPaで90秒間プレスした。その後、1分間冷却することで90~110μmのシートを作製した。
プレスシートのヘイズを上述と同様に、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、NDH5000)を用いて3回測定し、その平均値を下記評価基準に照らし合わせてリサイクル性を評価した。
〈評価基準〉
○(良好):ヘイズが60%未満である。
×(不良):ヘイズが60%以上である。
[突き出し性]
PTP用蓋材の突刺破断伸度、PTP包装体の蓋材を突き破った際の層間剥離の発生の有無を総合し、下記の評価基準にて、突き出し性を評価した。
〈評価基準〉
◎(優れる):突刺破断伸度が2.6mm未満であり、かつPTP包装体の蓋材を突き破った際に層間剥離および部分破断が発生しない。
○(良好):突刺破断伸度が2.6mm以上、3.2mm未満であり、かつPTP包装体の蓋材を突き破った際に層間剥離および部分破断が発生しない。
×(不良):突刺破断伸度が3.2mm以上、またはPTP包装体の蓋材を突き破った際に層間剥離または部分破断が発生する。
[開封認識性]
PTP包装体について、蓋材を突き破って内容物を取り出した際の開封音を普通騒音計(リオン株式会社製、NA-29)を用いて測定し、下記の評価基準にて、開封認識性を評価した。開封音測定時は、マイクロホン先端部と突き破る蓋材の距離を30mmとし、10回の測定の平均値を採用した。
〈評価基準〉
◎(優れる):80dB以上
○(良好):60dB以上、80dB未満
×(不良):60dB未満、または蓋材を突き破ることが不可能である
[フィルム臭気]
PTP用蓋材について、フィルム臭気の有無をダイナミックヘッドスペース-GC/MS(Gestels社製DHS、Agilent社製GC-7890 MSD-5977B)を用いて測定した。サンプル調製は、20mL容量のガラス瓶中に2gのPTP用蓋材を入れ、50℃で30分加熱した。その間、活性炭系吸着材(Agilent社製、Carbopack B/Carbopack X)に1950mLの窒素ガスを使用してPTP用蓋材に含まれる臭気成分を吸着させた。加熱終了後、GC/MS注入口に設置した加熱脱着装置(Gestel社製、TDU2)を使用して、前記活性炭系吸着材に吸着したガスをTDU部にて300℃で脱着させた。その間CIS部にてガスを-40℃で再濃縮し、再度300℃に加熱してGC/MS測定を行った。PTP用蓋材の不快な臭気成分には、酢酸、ブタン酸、アセチルアセトン等があり、ブタン酸及び酢酸の検出量を基準にして、下記の通りフィルム臭気を評価した。
[評価基準]
○(良好):ブタン酸の検出量が0.005ppm未満、かつ酢酸の検出量が0.08ppm未満である。
△(不良):上記○(良好)、下記×(劣る)以外である。
×(劣る):ブタン酸の検出量が0.01ppm以上、または酢酸の検出量が0.1ppm以上である。
[実施例1]
共押出ダイレクトインフレーション法を用いて、ポリプロピレン樹脂(PP)層(第一層)とポリオレフィン系エラストマー(TPO)層(第二層)とを積層した2層のPTP用蓋材を作製した。
具体的には、各層の原材料である樹脂のペレットを、樹脂の融解温度以上で溶融し、複数台の押出機を用いて各層を同時に押出した(押出量:18kg/h)。押出された各層の樹脂をフィードパイプを通じて環状ダイ(リップ外径:125mm、ダイギャップ:3mm)に送り、環状ダイを介して各層が積層したチューブ状の積層フィルムを作製した。なお、厚み比がPP層:TPO層=80:20となるように調整した。
続いて、積層フィルムに空気を吹き込んで延伸させることにより、厚み40μmのPTP用蓋材を得た。なお、延伸倍率は、MD30倍、TD2倍とし、延伸温度は61℃とした。また、環状ダイのダイリップ表面からフロストラインまでの距離は35cmとした。
PP底材の凹部に錠剤を充填し、エーシンパックシーラー(エーシンパック工業社製、半自動OS)を用いてヒートシールによりPP底材と蓋材(TPO層側)とを接着して、PTP包装体を得た。
ヒートシールの条件は、温度140℃、圧力0.4MPa、時間1秒とした。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例2~7、比較例1~4、6]
実施例2~7、比較例1~4、6は、表1に示すように原料、配合量、環状ダイのダイリップ表面からフロストラインまでの距離等を変更したこと以外は実施例1と同様にしてPTP用蓋材を作製し、PTP包装体を得た。
なお、実施例4および比較例6の第一層は、押出前に、ポリプロピレン樹脂(PP2)に非晶質アルミノケイ酸塩を混合した。実施例5の第一層は、押出前に、ポリプロピレン樹脂(PP1)とポリプロピレン樹脂(PP2)を溶融混錬した。比較例4の第一層は、押出前に、ポリスチレン樹脂(PS)に酸化チタンを混合した。比較例3は、PTP蓋材としてアルミ箔を用いた。
詳細な条件および各物性の測定・評価結果を表1に示す。
[比較例5]
比較例5は、表1に示すように原料、配合量等を変更し、実施例1と同様にして第一層と第二層とを積層した2層のフィルムを作製した後、特許文献1を参考に、加速電圧250kV、照射線量60kGyの電子線を照射することでPTP用蓋材を作製した。実施例1と同様にしてPP/PE底材(PE層側)と蓋材(PE層側)とを接着し、PTP包装体を得た。
詳細な条件および各物性の測定・評価結果を表1に示す。
[比較例7]
比較例7は、PTP用蓋材の作製を以下のように変更し、PP/PE底材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PTP包装体を得た。
実施例1と同様に共押出ダイレクトインフレーション法を用いて、非晶質アルミノケイ酸塩を混合したポリエチレン樹脂(PE4)層(第一層)、核剤を混合したポリエチレン樹脂(PE4)層(第二層)、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)層(第三層)を積層した3層の積層フィルムを作製し、PTP用蓋材(a)とした。総厚みは80μmとした(PE4層(第一層):20μm、PE4層(第二層):50μm、EVA層(第三層):10μm)。
実施例1と同様にしてPP/PE底材(PE層側)と蓋材(EVA層側)とを接着し、PTP包装体を得た。
詳細な条件および各物性の測定・評価結果を表1に示す。
Figure 2023172391000001
本発明のPTP包装体用蓋材は、錠剤、カプセル等の医薬品やキャンディーやチョコレート等の食品の包装に好適に使用できる。
1 PTP包装体
2 PTP用蓋材
3 底材
4 凹部
5 フランジ部
6 内容物

Claims (11)

  1. ポリオレフィン系樹脂を含み、強熱残渣が5質量%未満であり、20°、45°、60°、75°および85°の測定角度におけるグロス値がいずれも70%以下であり、突刺破断伸度が3.2mm未満であることを特徴とする、PTP用蓋材。
  2. 入射角15°の光を使用した変角光度計測定において、最大反射強度が20~150である、請求項1に記載のPTP用蓋材。
  3. 入射角15°の光を使用した変角光度計測定において、反射強度分布の半値幅が10°以上である、請求項1または2に記載のPTP用蓋材。
  4. (L*,a*,b*)色空間におけるa*値が-12~10であり、b*値が-10~15である、請求項1または2に記載のPTP用蓋材。
  5. ヘイズが50%以上である、請求項1または2に記載のPTP用蓋材。
  6. PTP用蓋材が印刷面を有し、該印刷面の算術平均粗さRaが0.2μm以上である、請求項1または2に記載のPTP用蓋材。
  7. 前記PTP用蓋材に含まれる樹脂の分子量分布が4.0~7.0である、請求項1または2に記載のPTP用蓋材。
  8. 重量平均分子量が2.0×10~3.5×10であるポリプロピレン系樹脂を含む、請求項1または2に記載のPTP用蓋材。
  9. 示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量が70J/g以上である、請求項8に記載のPTP用蓋材。
  10. 重量平均分子量が3.5×10~5.2×10であるポリエチレン系樹脂を含む、請求項1または2に記載のPTP用蓋材。
  11. 示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量が140J/g以上である、請求項10に記載のPTP用蓋材。
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