JP2023170327A - 積層フィルム - Google Patents

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忠彦 岩谷
Tadahiko Iwaya
大貴 伊原
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一善 太田
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Abstract

【課題】本発明は、帯電防止性に優れ、搬送時における摩耗による帯電防止性の劣化や工程汚染を軽減できる積層フィルムを提供することを課題とする。【解決手段】疎水性添加剤を含む熱可塑性樹脂層(A層)、及びポリスチレンスルホン酸とその塩の少なくとも一方を含む層(B層)を有し、前記B層の表面比抵抗値Rが1.0×105Ω/sq以上1.0×1010Ω/sq以下であり、かつ、摩耗処理前後の前記B層の摩擦係数をそれぞれμX、μYとしたときに、μY/μXが0.1以上1.2以下であることを特徴とする、積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、帯電防止性に優れ、摩耗による帯電防止性の低下を軽減することができる積層フィルムに関する。
熱可塑性樹脂をシート状に成形した成形体であるフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有するため、印刷材料、磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において広く使用されている。
近年、印刷材料、保護フィルム、特に各種電子部品の加工工程におけるキャリアフィルムとして、離型性に加え、帯電防止性や耐ブロッキング性、耐摩耗性に優れたフィルムの需要が高まっている。しかしながら、一般にフィルムに使用されるポリエステル等の樹脂の多くは絶縁性樹脂であることから、フィルムは、そのままでは帯電防止性を有さないという欠点を有している。
帯電防止性は、帯電による塵埃付着に起因する異物欠点を抑制する目的で付与される特性であり、例えば、フィルム等の絶縁性の材料には、表面や内層に導電性を付与して電荷の偏りを中和することで付与することができる。このうち、フィルムの表面に導電性の塗布層を設けて帯電防止性を付与する方法は、フィルムの持つ各種安定特性を維持することが容易であり、従来から種々の方法で検討がなされてきた。また、さらに易滑性を向上させるために、表面にスルホン酸塩基を含有せしめた帯電防止層を設け、その反対面に易滑成分である高分子系ワックスを含有せしめたフィルムも提案されているが、帯電防止性に改善の余地がある。
このような課題に対して、粒子を含有させた帯電防止層を設ける方法、耐擦り傷性の向上を目的に導電層上にワックス状物質を塗設する方法、離型性の向上を目的としてワックスと帯電防止剤を併用する方法が知られている(例えば特許文献1~3)。
特開2004-9374号公報 特開平11-65023号公報 特開2011-156703号公報
しかしながら、キャリアフィルム(特に電子部品のカバーテープ)として用いる場合、耐電防止性能が低いと、電子部品からカバーテープを剥離するときにカバーテープの剥離帯電により、電子部品が不用意に飛び出して電子部品が散逸する、あるいは帯電したテープと電子部品との間での放電によって電子部品が電気的に破壊される問題が発生する。また、カバーテープを剥離する際にガイドバーやロールに接触し、帯電防止層に含有される粒子や帯電防止層自体が削れ、性能が悪化するばかりか工程汚染する問題もある。
カバーテープの作製工程においては、基材である帯電防止性ポリエステルフィルムにプライマーやシーラントなど複数の層を形成するため、特許文献1に記載されている帯電防止層の反対面に高分子ワックスを含有させる方法では、ワックス成分の転写により、帯電防止性の低下やシーラント層の密着性不良が発生するなどの問題があった。また、特許文献2に記載されている、帯電防止層に離型性を有する高分子系ワックスを含有させる方法では、高分子系ワックスのブリードアウトにより帯電防止性が低下する問題があった。さらに特許文献3に記載されている実質的にバインダーを含まない帯電防止層では、耐摩耗性に問題があった。
そこで、本発明では上記の課題を解消し、帯電防止性に優れ、加工工程の搬送時における摩耗によって帯電防止性が低下しにくく、工程汚染の少ない積層フィルムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため本発明は次の構成を有する。すなわち、疎水性添加剤を含む熱可塑性樹脂層(A層)、及びポリスチレンスルホン酸とその塩の少なくとも一方を含む層(B層)を有し、前記B層の表面比抵抗値Rが1.0×10Ω/sq以上1.0×1010Ω/sq以下であり、かつ、摩耗処理前後の前記B層の摩擦係数をそれぞれμX、μYとしたときに、μY/μXが0.1以上1.2以下であることを特徴とする、積層フィルムである。
また、本発明の積層フィルムは、好ましくは以下の態様とすることができる。
(1) 疎水性添加剤を含む熱可塑性樹脂層(A層)、及びポリスチレンスルホン酸とその塩の少なくとも一方を含む層(B層)を有し、前記B層の表面比抵抗値Rが1.0×10Ω/sq以上1.0×1010Ω/sq以下であり、かつ、摩耗処理前後の前記B層の摩擦係数をそれぞれμX、μYとしたときに、μY/μXが0.1以上1.2以下であることを特徴とする、積層フィルム。
(2) 前記B層が、ウレタン骨格とアクリル樹脂骨格を含むことを特徴とする、(1)に記載の積層フィルム。
(3) 前記疎水性添加剤が、アルキル基含有ポリマー、α-オレフィン、内部オレフィン、直鎖状オレフィン、分岐鎖状オレフィン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ステアリン酸塩から成る群より選ばれる少なくとも一つの添加剤であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の積層フィルム。
(4) 前記A層がポリエステルを含む2つの層(A1層、A2層)を有し、前記A2層が前記B層側に位置し、且つ前記A1層よりも疎水性添加剤を多く含むことを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
(5) 前記A層の厚みが、前記B層の厚みより大きいことを特徴とする、(1)~(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
(6) 電子部品向けカバーテープ用途に用いることを特徴とする、(1)~(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
本発明により、帯電防止性に優れ、加工工程の搬送時における摩耗によって帯電防止性が低下しにくく、工程汚染の少ない積層フィルムを提供することができる。
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。本発明の積層フィルムは、疎水性添加剤を含む熱可塑性樹脂層(A層)、及びポリスチレンスルホン酸とその塩の少なくとも一方を含む層(B層)を有し、前記B層の表面比抵抗値Rが1.0×10Ω/sq以上1.0×1010Ω/sq以下であり、かつ、摩耗処理前後の前記B層の摩擦係数をそれぞれμX、μYとしたときに、μY/μXが0.1以上1.2以下であることを特徴とする。ここでいう摩耗処理とは、積層フィルムのB層表面を、荷重20g/cmにて、試験用添付白布棉を10往復させる処理をいう。
本発明の積層フィルムは、疎水性添加剤を含む熱可塑性樹脂層(A層)、及びポリスチレンスルホン酸とその塩の少なくとも一方を含む層(B層)を有することが重要である。ここで熱可塑性樹脂層とは、熱可塑性樹脂を主成分とする層をいう。主成分とは、層を構成する全成分を100質量%としたときに55質量%以上100質量%以下含まれる成分をいい、以下、主成分については同様に解釈することができる。なお、疎水性添加剤を含み、かつポリスチレンスルホン酸とその塩の少なくとも一方を含む層は、主成分が熱可塑性樹脂であればA層として扱い、主成分が熱可塑性樹脂でなければB層として扱うものとする。
A層は、積層フィルムとしての耐熱性、機械的強度を保つ役割を担う層である。A層を構成する熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、耐熱性、機械的強度、加工性の観点から、A層がポリエステル樹脂を含むことが好ましく、A層がポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。ポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称である。本発明の積層フィルムのA層の主成分としては、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン-2,6-ナフタレート、エチレン-α,β-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4-ジカルボキシレートなどから選ばれた構成単位を主要構成単位とするホモポリマー又は共重合体を好ましく用いることができる。ここで主要構成単位とは、樹脂を構成する全構成単位を100モル%としたときに、55モル%以上100モル%以下含まれる構成単位をいう。
本発明の積層フィルムでは、機械的強度、寸法安定性の観点から、A層はポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。また、熱や収縮応力などが大きく作用する場合には、A層が、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン-2,6-ナフタレートを主成分とすることも好ましい。ここでポリエチレンテレフタレートとは、エチレンテレフタレートを主要構成単位とするポリエステル樹脂をいい、ポリエチレン-2,6-ナフタレートも同様に解釈することができる。
本発明の積層フィルムにおけるA層は、積層フィルムの耐熱性や機械的強度を高める観点から、二軸配向した層であることが好ましい。二軸配向とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すことをいう。A層を二軸配向した層とするには、例えば、積層フィルムのA層として二軸配向フィルム、好ましくはポリエステルを含む二軸配向ポリエステルフィルム、さらに好ましくは二軸配向ポリエステルフィルムを使用する方法を用いることができる。すなわち二軸配向フィルムに後述するB層を設ける方法を好適に用いることができる。ここで二軸配向ポリエステルフィルムとは、ポリエステルを主成分とする二軸配向フィルムをいう。
二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に未延伸状態のポリエステルシートを長手方向及び幅方向に各々2.5~5.0倍程度延伸し、その後、熱処理を施して、結晶配向を完了させることにより得られる。ここで長手方向とは製造工程においてフィルムが走行する方向(フィルムロールとなっている場合は巻方向)をいい、幅方向とはフィルム面内で長手方向に直交する方向をいう。A層となるポリエステルフィルムが二軸配向していることにより、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が向上し、平面性の悪化が軽減される。
本発明の積層フィルムでは、耐摩耗性及び帯電防止性の観点から、A層が疎水性添加剤を含むことが重要である。疎水性添加剤の種類は特に限定されないが、アルキル基含有ポリマー、α-オレフィン、内部オレフィン、直鎖状オレフィン、分岐鎖状オレフィン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ステアリン酸塩から成る群より選ばれる少なくとも一つの添加剤であることが好ましい。A層の主成分がポリエステル樹脂である場合は、相溶性の観点から、疎水性添加剤としてはカルナウバワックス、キャンデリラワックス、ステアリン酸塩が好ましく、特に好ましくはカルナウバワックス、キャンデリラワックスである。ここでいうステアリン酸塩とは、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛などを用いることができる。
本発明の積層フィルムは、A層がポリエステルを含む2つの層(A1層、A2層)を有し、A2層がB層側に位置し、且つA1層よりも疎水性添加剤を多く含むことが好ましい。なお、機械的強度、寸法安定性の観点から、A1層、A2層は共にポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。なお、このときA1層とA2層が直接積層されていてもよく、両者の間に他の層(例えば、両者の接着を担う層等)が存在してもよい。
A1層とA2層を有するA層用の積層ポリエステルフィルムを得るための積層方法としては、例えば、共押出し法による積層方法、貼り合わせによる積層方法、これの組み合わせによる方法等を挙げることができる。透明性と製造安定性の観点から、共押出し法を採用することが好ましい。また、A1層とA2層は、それぞれの層に異なる機能を付与すること目的として、異なる樹脂構成としてもよい。例えば、A1層とA2層のみからなる2種2層積層構成とする場合には、透明性の観点からA2層をホモポリエチレンテレフタレートで構成し、A1層には、易滑性付与のために粒子を添加する等の方法を採用することもできる。
本発明の積層フィルムにおいて、A1層やA2層は、本発明の効果を損なわない範囲で粒子を含有してもよい。粒子種としては特に限定されないが、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。粒子種および粒子径については、単一の材料を用いても、複数の材料の組み合わせてもよい。粒子は少なくともA1層に含有することが好ましい。粒子の含有量は、ヘイズの上昇を抑えて透明性を確保する観点から、A1層とA2層を併せたA層全体(A層とB層の間に他の層が存在する場合はこれらの層も含めた層全体)を100質量%としたときに、合計量が0.1質量%以下であることが好ましい。
A層の厚み(A層が、A1層及びA2層を含む場合は両者の合計厚み、A1層とA2層の間に他の層が存在する場合はこれらの層も含めた層全体の厚み)は特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは5~100μm、より好ましくは5~80μm、さらに好ましくは5~50μm、特に好ましくは5~30μmである。また、A層が積層フィルムとしての耐熱性、機械的強度を保つ役割を担う層であり、後述するB層が表面の帯電防止等の役割を担う層であることから、A層の厚みが、B層の厚みより大きいことが好ましい。各層の厚みは電子顕微鏡の観察画像を用いて測定することができ、詳細は後述する。
A層がA1層とA2層を有する場合、どちらも疎水性添加剤を含むことができる。但し、疎水性添加剤のブリードアウトや転写抑制の観点から、A2層がA1層よりも疎水性添加剤を多く含むことが好ましい。A2層の疎水性添加剤の含有量は、A2層を構成する全成分を100質量%としたときに、3質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは4質量%以上9質量%以下である。なお、A2層が複数種の疎水性添加剤を含む場合、その含有量は全ての疎水性添加剤を合算して求めるものとする。A2層における疎水性添加剤の含有量が3質量%以上であると、疎水性添加剤による耐摩耗性や帯電防止性向上効果が十分な水準となる。一方、A2層における疎水性添加剤の含有量が20質量%以下であると、後述のB層形成用塗料組成物の塗布性が良好となり、B層の耐摩耗性も向上する。また、A2層の疎水性添加剤の含有量をかかる範囲とすることで、帯電防止性を持続することもできる。
本発明の積層フィルムは、ハンドリング性やキャリアフィルムとしての加工適性の観点から、A2層表面の表面自由エネルギーが30mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。A2層表面の表面自由エネルギーを上記範囲とする方法としては、例えば、A2層における疎水性添加剤の含有量を前述の範囲とする方法が挙げられる。A2層表面の表面自由エネルギーが50mN/m以上以下であると、表面比抵抗値Rを容易に前述の範囲とすることができる。また、A2層表面の表面自由エネルギーが30mN/m以上であると、ハンドリング性の悪化やキャリアフィルムとしての加工適性の悪化が軽減される。
A2層表面の表面自由エネルギーは、フィルム(A2層)表面の液滴接触角によって測定することができ、具体的な方法については後述する。また、A2層表面の表面自由エネルギーは、フィルム面にコロナ放電処理やプラズマ処理等、公知の表面処理を施すことにより大きくすることができる。
A層中には、前述した疎水性添加剤以外の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に含まれていてもよい。なお、A層がA1層とA2層を有する場合においては、各層の特性を悪化させない程度であれば、上記各種添加剤がどちらの層に含まれていてもよく、両方の層に含まれていてもよい。
本発明の積層フィルムのB層は、帯電防止性の観点から、ポリスチレンスルホン酸とその塩の少なくとも一方を含むことが重要である。ポリスチレンスルホン酸やその塩は、帯電防止剤としての役割を担うため、このような態様とすることで積層フィルムの帯電防止性が向上する。
本発明の積層フィルムにおいては、帯電防止性の観点から、B層の表面比抵抗値Rが1.0×10Ω/sq以上1.0×1010Ω/sq以下であることが重要である。表面比抵抗値Rは、23℃、相対湿度65%において24時間放置後、その雰囲気下において、印加電圧100V、印加時間10秒の条件で測定することができる。なお、表面比抵抗値Rの測定には、公知のデジタル超高抵抗/微小電流計を用いることができ、詳細な測定方法については実施例で後述する。B層の表面比抵抗値Rが1.0×10Ω/sq以下であるとハンドリング性や加工適性が悪化する場合がある。一方、1.0×1010Ω/sq以上であると帯電防止性が不足となり、キャリアフィルムとして使用できない場合がある。上記観点から、B層の表面比抵抗値Rは8.8×10Ω/sq以上1.0×1010Ω/sq以下であることが好ましく、8.5×10Ω/sq以上1.0×1010Ω/sq以下であることがより好ましい。
B層の表面比抵抗Rを上記の範囲とする方法として、ポリスチレンスルホン酸やその塩の含有量を調整する方法が挙げられる。ポリスチレンスルホン酸やその塩の含有量は、B層形成用の塗料組成物全体の固形分を100質量%として、25質量%以上45質量%以下であることが好ましい。ポリスチレンスルホン酸やその塩の含有量を25質量%以上とすることにより、十分な帯電防止性を実現することができる。一方、ポリスチレンスルホン酸やその塩の含有量を45質量%以下とすることにより、分散性の悪化による表面比抵抗Rの変動を軽減でき、さらに、形成されるB層の割れや削れ等による耐摩耗性の低下を軽減することができる。なお、B層形成用の塗料組成物にポリスチレンスルホン酸やその塩が複数種含まれる場合、その含有量はポリスチレンスルホン酸やその塩に該当する成分全てを合算した値とする。
また、表面比抵抗値Rを上記範囲とする観点から、B層の厚みは50nmから200nmとすることが好ましく、70nmから200nmとすることがより好ましい。B層の厚みを上記範囲とする方法としては、例えば、B層を形成するための塗料組成物の固形分濃度を調節する方法、メタリングバーの番手を変更する方法など、公知の方法を用いることができる。
ポリスチレンスルホン酸またはその塩とは、ポリスチレンをスルホン化したもの、また、ポリスチレンをスルホン化後、1価のアルカリ金属、アルカリ土類金属、例えばカリウム、ナトリウム、リチウムなどの水酸化物で中和して金属対イオンとしたもの、アンモニアで中和して対イオンをアンモニウムとしたもの、あるいはスチレンスルホン酸またはスチレンスルホン酸塩(塩としては上記の金属およびアンモニウム)を重合したアニオン性高分子などが挙げられる。このポリスチレンスルホン酸またはその塩は、ホモポリマーであることが帯電防止機能を発現する上で好ましいが、後述のアクリル樹脂の構成モノマーで記載した各種のモノマーと共重合してもよい。
本発明の積層フィルムは、摩耗処理前後のB層の摩擦係数をそれぞれμX、μYとしたときに、μY/μXが0.1以上1.2以下であることが重要である。μY/μXが1.2を超えると、B層の耐摩耗性が悪化して帯電防止性能が低下する上、工程汚染の原因となる。μY/μXの下限を0.1としたのは実現可能性の観点からである。上記観点から、μY/μXは好ましくは0.1以上1.1以下であり、より好ましくは0.1以上1.0以下である。B層のμY/μXを0.1以上1.2以下又は上記の好ましい範囲とする方法については後述する。なお、摩耗処理とは、以下の摩耗処理条件での摩耗処理をいう。
[摩耗処理条件]
積層フィルムのB層表面を、荷重20g/cmにて、試験用添付白布棉を10往復させる。なお、ここで試験用添付白布棉とは、JIS L 0803:2011に規定の染色堅ろう度試験用添付白布棉3-3号(単一繊維布)をいう。
μX及びμYは、JIS-K7125(1999年)に準じて測定することができる。より具体的には、摩耗試験前の積層フィルムをA層側の表面とB層側の表面が接触するように2枚重ねて、両者を摩擦させたときの初期の立ち上がり抵抗値をμXとする。摩耗試験前の積層フィルムのA層側の表面と摩耗試験後の積層フィルムのB層側の表面が接触するように2枚の積層フィルムを重ねて、同様に摩擦させたときの初期の立ち上がり抵抗値をμYとする。なお、μX及びμYの少佐な測定方法は実施例で後述する。
B層のμY/μXを前述の範囲とする方法としては、例えば、B層を形成するための塗料組成物として、アクリル樹脂、ポリスチレンスルホン酸やその塩、及びイソシアネート架橋剤を含有するものを用いる方法等が挙げられる。また、当該塗料組成物はさらに多価アルコール化合物を含むことが好ましい。なお、ポリスチレンスルホン酸またはその塩の含有量は前述の範囲が好ましく、他の成分の含有量については後述する。
本発明の積層フィルムにおけるB層は、耐摩耗性、帯電防止性の観点から、ウレタン骨格とアクリル樹脂骨格を含むことが好ましい。また、ウレタン骨格を形成させるために用いることができる架橋剤としては、イソシアネート架橋剤を用いることができる。イソシアネート架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ビトリレン-4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
B層を形成させる方法は特に制限されないが、アクリル樹脂とイソシアネート架橋剤を含む塗料組成物、中でも水系塗料組成物を塗布することにより形成する方法を好適に用いることができる。このような方法を用いる場合、イソシアネート架橋剤のイソシアネート基は水と反応し易い。そのため、塗料組成物のポットライフの点で、イソシアネート架橋剤としてイソシアネート基をブロック剤などでマスクしたブロックイソシアネート系化合物などを好適に用いることができる。この場合、例えばB層に塗料組成物を塗布した後の乾燥工程での加熱により、ブロック剤が解離し、イソシアネート基が露出する結果、架橋反応が進行することになる。また、イソシアネート基は単官能タイプでも多官能タイプでもよいが、多官能タイプのブロックポリイソシアネート系化合物がB層の架橋度を上げやすいため好ましい。
B層形成用の塗料組成物に用いるアクリル樹脂骨格を持つ樹脂としては、例えば、水に分散したアクリル樹脂エマルジョンを用いることができ、その分散径は好ましくは20~200nm、さらに好ましくは30~100nmである。分散径を上記範囲とすることは、他の樹脂を微分散させる上で好適である。20nm以上の分散径とすることで、乳化重合などによってアクリルエマルジョンを作製するときにその比表面積が過度に大きくならず、乳化剤の使用量が抑えられるため、接着性などで支障を来すリスクを軽減できる。一方、分散径が200nm以下であることにより、微分散化がより容易になる。分散径は原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
B層を形成するための塗料組成物に用いるアクリル樹脂を構成するモノマー成分は、特に限定するものではないが、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N,N-ジメチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。さらに、これらは他種のモノマーと併用することもできる。
ここで他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどを用いることができる。また、変性アクリル共重合体、例えば、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体なども使用可能である。
本発明の積層フィルムのB層に用いられる好ましいアクリル樹脂としては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリル酸から選ばれる共重合体などが挙げられる。本発明におけるアクリル樹脂エマルジョンの重合方法は特に限定しないが、通常は乳化重合、懸濁重合などが好ましく用いられる。
また、ポリスチレンスルホン酸やその塩は、帯電防止性の観点からアクリル樹脂中により均一に分散させることが好ましい。その方法としては特に限定されないが、アクリル樹脂の分子構造を選択することにより、アクリル樹脂の溶解度パラメータをポリスチレンスルホン酸またはその塩に近づける方法、及びアクリル樹脂とポリスチレンスルホン酸やその塩の中間の溶解度パラメータを有する第3の成分を塗料組成物に添加する方法を挙げることができる。このうち帯電防止性の観点から好ましい方法は、後者の方法である。前述の第3の成分としては、製造工程で揮発する溶媒成分や反応部位を有する樹脂材料を用いることが可能であるが、帯電防止性には後述する多価アルコール化合物を用いることが好ましい。言い換えると、本発明の積層フィルムにおいて、B層は多価アルコール化合物を有することが好ましい。B層が係る成分を含有することで、帯電防止性の持続性を向上せしめることができる。
本発明において多価アルコール化合物とは、3つ以上のヒドロキシル基を有する化合物をいい、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等が挙げられる。なお、ここに示す多価アルコール化合物は重合体ではない。
また、多価アルコール化合物は、溶解度パラメータ(SP値)が35.0[MPa0.5]以上50.0[MPa0.5]以下であることが好ましい。SP値が上記範囲であることにより、アクリル樹脂、及びポリスチレンスルホン酸やその塩との相溶が容易となり、不必要な凝集物の発生が抑えられるため、所望する帯電防止性が発現しやすくなる。
ここで溶解度パラメータは、例えば“Polymer Handbook (fourth Edition)”,J.BRANDRUPら編(JOHN WILEY & SONS)にその値が記載されている。一方、上記のようなデータベースに溶解度パラメータ値が記されていない場合には、溶解度パラメータの値が類似するもの同士が溶け合いやすいという性質の下、実施例に示した方法によりパラメータ値が既知である溶媒への溶けやすさを規定することで、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)ver.3.1.03(http://www.hansen-solubility.com/index.php?id)を用い、3成分のベクトル長さとして計算することができる。
多価アルコール化合物は、沸点が200℃以上のものが好ましく、220℃以上のものがより好ましく、240℃以上のものがさらに好ましい。また、上限としては500℃が好ましい。多価アルコール化合物の沸点が500℃以下であれば、帯電防止層の帯電防止性がより高くなる。また、アクリル樹脂、及びポリスチレンスルホン酸やその塩との相溶性の観点から、多価アルコール化合物の融点は20℃以上であることが好ましい。なお、多価アルコール化合物の融点や沸点は、示差走査式熱分析(DSC)により求めることができる。
特に好ましい多価アルコール化合物は、糖アルコール化合物であり、ソルビトール(沸点:296℃)、キシリトール(沸点:216℃)、エリスリトール(沸点:329~331℃)、マンニトール(沸点:290~295℃)等が挙げられる。多価アルコール化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
以下、本発明の積層フィルムのB層を形成するための好ましい塗料組成物についてより詳細に説明する。本発明の積層フィルムのB層を形成するための塗料組成物は、アクリル樹脂と、ポリスチレンスルホン酸やその塩と、イソシアネート架橋剤を含有することが好ましい。塗料組成物は、さらに多価アルコール化合物を含むことがより好ましい。かかる構成とすることで、塗料組成物内の成分の分散性が向上し、積層フィルムとしたときの透明性が向上する。
B層を形成するための塗料組成物において、アクリル樹脂は、塗料組成物の全固形分質量100質量%に対し、52質量%以上73質量%以下であることが好ましく、55質量%以上73質量%以下であることがより好ましい。アクリル樹脂が52質量%以上であることにより塗膜の造膜性が確保され、摩耗に対する帯電防止性能の持続性が向上し、B層の脱落も軽減される。一方、アクリル樹脂が73質量%以下であることにより十分な帯電防止性を実現することが容易となる。なお、アクリル樹脂が複数種含まれる場合、その含有量は全てのアクリル樹脂成分を合算した値とする。
B層を形成するための塗料組成物において、イソシアネート架橋剤は、塗料組成物の全固形分質量100質量%に対し1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。イソシアネート架橋剤が1質量%以上であることにより十分に架橋がなされ、耐摩耗性が向上する。一方、イソシアネート架橋剤が10質量%以下であることにより帯電防止性の実現が容易となる。なお、イソシアネート架橋剤が複数種含まれる場合、その含有量は全てのイソシアネート架橋剤成分を合算した値とする。
本発明の積層フィルムは、表面比抵抗値が低く、かつ、帯電防止性の持続性の観点から、電子部品向けカバーテープ用途に好適に用いることができる。
次に、本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムを用いた場合を例にして説明するが、これに限定されるものではない。まず、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、PETペレット(A1層用)と、PETペレットに添加剤を混合したもの(A2層用)を、それぞれ別々の押出機に投入し、それぞれ275℃~285℃で混練した後、フィルターやギヤポンプを通じて異物の除去や押出量の均整化を各々行う。その後、それぞれをポリマー管内で合流させて275℃~285℃で積層し、Tダイより0℃~30℃に制御した冷却ドラム上にシート状に吐出する。
その際、高電圧をかけた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点-20℃以上ガラス転移点以下にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させて冷却固化し、未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。また、複数のポリエステル樹脂を混合する場合、キャスティングドラム温度は、用いるポリエステル樹脂中、最もガラス転移温度が高いものを基準として設定する。
このAフィルムを、80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面(A2層側)に所定の濃度に調製した塗料組成物(B層形成用の塗料組成物)を塗布する。このとき、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、塗料組成物のPETフィルムへの濡れ性が向上し、塗料組成物のはじきが軽減されるため、より均一な塗布厚みのB層を形成することができる。塗料組成物の塗布後、PETフィルムの幅方向両端部をクリップで把持して80~130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗料組成物の溶媒を乾燥させる。乾燥後、一軸配向PETフィルムを幅方向に1.1~5.0倍延伸し、引き続き160~240℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)へ導き1~30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。このような手順により、A層(A1層とA2層)が二軸配向することとなる。
なお、この熱処理工程(熱固定工程)では、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3~15%の弛緩処理を施してもよい。かくして得られた積層フィルムは透明性、帯電防止性、帯電防止性の持続性に優れたフィルムとなる。また、塗料組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。さらに、インラインコート法でB層を設けることにより、塗料組成物を塗布した後に延伸処理が施されることとなる。そのため、ポリスチレンスルホン酸またはその塩の配列が促進されて帯電防止性能が向上し、続けて高温の熱処理がなされることによって、摩耗や表面処理に対する帯電防止性能の安定性を高めることができる。
本発明の積層フィルムのB層を形成するための塗料組成物は、アクリル樹脂およびイソシアネート架橋剤を含むことが好ましい。アクリル樹脂およびイソシアネート架橋剤を含むことで、耐摩耗性、耐電防止性および耐電防止性の持続性が向上する。また、アクリル樹脂およびイソシアネート架橋剤の含有量は前述の範囲とすることが好ましい。
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明の積層フィルムを詳細に説明するが、本発明の積層フィルムはこれら実施例のみに限定されるものではない。
[各特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における各特性の測定方法および効果の評価方法は次の通りである。
(1)表面比抵抗値(摩耗試験前後)
表面比抵抗値Rの測定は、23℃、相対湿度65%において24時間放置後、その雰囲気下でデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用い、印加電圧100V、10秒間印加の条件で実施した。測定対象面は、積層ポリエステルフィルムのB層側とし、合計5回測定した平均値を当該積層ポリエステルフィルムの表面比抵抗値R(Ω/sq)とした。摩耗試験後の表面比抵抗値の測定は、摩耗試験後のフィルム表面の白粉を試験用添付白布棉とエタノールで拭き取った後、表面比抵抗値Rと同様の方法にて測定した。
(2)摩耗試験
積層フィルムを10cm×10cmに切り出し、積層フィルムがずれないようにテープで固定した後、B層表面を荷重20g/cmにて、JIS L 0803:2011 染色堅ろう度試験用添付白布棉3-3号(単一繊維布)を10往復させて表面に発生した白粉量によって次のように判定し、○と△を合格とした。なお、白粉量の確認は目視により行った。
○:白粉発生なし。
△:白粉発生少量あり。
×:白粉発生多量あり。
(3)μY/μX
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS-K7125(1999年)に準じてμX、μYを測定した。摩耗試験前の積層フィルムをA1層側の表面とB層側の表面が接触するように2枚重ねて、両者を摩擦させたときの初期の立ち上がり抵抗値を測定し、摩擦係数μXとした。同様に、摩耗試験前の積層フィルムのA1層側の表面と摩耗後の積層フィルムのB層側の表面が接触するように2枚の積層フィルムを重ねて、両者を摩擦させたときの初期の立ち上がり抵抗値を測定し、摩擦係数μYとした。得られた値よりμY/μXを求めた。同様の測定を5回行い、得られた値の平均値をμY/μXとした。なお、測定時のサンプルは、80mm(幅方向)×100mm(長手方向)の長方形とした。
(4)ウレタン骨格、アクリル樹脂骨格とポリスチレンスルホン酸とその塩および多価アルコール化合物の有無
B層の組成分析は、その表面のX線光電子分光分析装置(ESCA)、フーリエ赤外分光光度計(FT-IR)ATR法、飛行時間型二次イオン重量分析装置(TOF-SIMS)により行った。また、B層を溶剤にて溶解抽出し、クロマトグラフィーで分取した後、プロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR)、カーボン核磁気共鳴分光法(13C-NMR)、フーリエ赤外分光光度計(FT-IR)により構造を解析し、熱分解ガスクロマトグラフィー重量分析(GC-MS)を行うことにより、ウレタン骨格、アクリル樹脂骨格、ポリスチレンスルホン酸とその塩および多価アルコール化合物の有無を評価した。
(5)A2層表面の表面自由エネルギー
協和界面科学(株)社製 DropMaster DM501Hiを用いて、A2層表面に対し水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンで各溶液について、接触角を5回測定し、それぞれの液体についての接触角の平均値を求めた。接触角の平均値を用いて、拡張Fowkes式とYoungの式より導入される下記式を用いて各成分の値を計算した。
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2=γL(1+cosθ)
ここで、γLd、γLp、γLhは、それぞれ測定液の分散力、極性力、水素結合力の各成分の固有値(Panzerによる方法IV(1979年、日本接着協会誌vol.15、No.3、p96に記載)による。)を表し、θは測定面上での測定液の接触角の平均値を表し、また、γSd、γSp、γShは、それぞれフィルム表面の分散力、極性力、水素結合力の各成分の値を表す。固有値およびθを上記の式に代入して得られた連立方程式を解くことにより、測定面の3成分の値を求めた。本発明においては、求められた分散力、極性力、水素結合力の各成分の値の和を表面自由エネルギーの値とした。
(6)A層及びB層の厚み
ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU-12型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を1000~50000倍に拡大観察して断面写真を撮影し、得られた写真よりA層及びB層の厚みを測定した。
[積層ポリエステルフィルムの製造に用いた樹脂等]
積層ポリエステルフィルムの製造には、以下の疎水性添加剤や樹脂等を使用した。
疎水性添加剤(a-1):横関油脂工業(株)精製キャンデリラワックス MD-21
疎水性添加剤(a-2):日本ワックス(株)精製カルナウバワックス1号FP
疎水性添加剤(a-3):日油(株)マグネシウムステアレートG
疎水性添加剤(a-4):出光興産(株)“リニアレン”(登録商標)6 α-オレフィン
疎水性添加剤(a-5):住友化学(株)“スミカセン”(登録商標)E 直鎖状オレフィン
疎水性添加剤(a-6):東ソー(株)“ニポロン”(登録商標)L 分岐鎖状オレフィン。
疎水性添加剤(a-7):
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた温度調整可能な反応器中にトルエン500質量部を、滴下器にステアリルメタクリレート(アルキル鎖の炭素数18)80質量部、メタクリル酸15質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部、アゾビスイソブチロニトリル1質量部をそれぞれ投入した。その後、反応温度85℃にて4時間かけて、滴下器の混合物を反応器に滴下して重合反応を行った。その後、同温度で2時間熟成して反応を完了させ、アルキル基含有ポリマーを得た。これを添加剤(a-7)とした。
アクリル樹脂(b-1):
メタクリル酸メチル(47モル%)、アクリル酸エチル(45モル%)、アクリル酸(2モル%)、N-メチロールアクリルアミド(1モル%)、エチレンオキシドの繰り返し単位が16のポリエチレングリコールモノメタクリレート(3モル%)、2-スルホエチルアクリレート(2モル%)からなる、Tg46℃のアクリル樹脂(エマルジョン径50nm)エマルジョン溶液(固形分濃度25重量%)。
アクリル樹脂(b-2):
メタクリル酸メチル(66モル%)、アクリル酸エチル(30モル%)、アクリル酸(3モル%)、N-メチロールアクリルアミド(1モル%)からなる、Tg67℃のアクリル樹脂(エマルジョン径50nm)エマルジョン溶液(固形分濃度24重量%)。
ポリスチレンスルホン酸化合物(c-1):
ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(重量平均分子量7万)の水溶液(固形分濃度16重量%)。
ポリスチレンスルホン酸化合物(c-2):
ポリスチレンスルホン酸を20.8重量部含む1887質量部の水溶液中に、1質量%硫酸鉄(III)水溶液49質量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン8.8質量部、および10.9質量%のペルオキソ二硫酸水溶液117質量部を加えた。この混合物を18℃で、23時間攪拌した。ついで、この混合物に、154質量部の陽イオン交換樹脂および232重量部の陰イオン交換樹脂を加えて、2時間攪拌した後、イオン交換樹脂をろ別して、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる混合物の水分散体(固形分濃度は1.3重量%)を得た。これをポリスチレンスルホン酸化合物(c-2)とした。
イソシアネート架橋剤(d-1):第一工業製薬(株)“エラストロン”(登録商標)BN-69(固形分濃度40質量%)
イソシアネート架橋剤(d-2):第一工業製薬(株)“エラストロン”(登録商標)BN-27(固形分濃度30質量%)。
多価アルコール(e-1):ソルビトール(沸点:296℃、SP値:35.8MPa0.5)の水溶液(固形分濃度10質量%)
多価アルコール(e-2):グリセリン(沸点:290℃、SP値:38.5MPa0.5)の水溶液(固形分濃度10質量%)。
(実施例1)
アクリル樹脂(b-1)と、ポリスチレンスルホン酸(c-2)と、イソシアネート架橋剤(d-2)を固形分質量比で(b-1)/(c-2)/(d-2)=64/34/2となるように混合した。さらに、ポリエステルフィルムへの塗布性を向上するために、フッ素系界面活性剤(互応化学工業(株)製“プラスコート”(登録商標)RY-2)を、上記の混合物全体100質量部に対して0.1質量部、多価アルコール(e-1)を混合物全体100質量部に対して5質量部添加してB層形成用の塗料組成物を得た。
また、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、A1層形成用のPETペレットと、PETペレットに添加剤(a-1)を質量比でPETペレット/添加剤(a-1)=95/5となるように混合したA2層形成用のPET混合物を、それぞれ別々の押出機に投入し275℃で混練した。次いで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、両者をポリマー管内で合流させた。その後、285℃で厚み比が6:1(A1層:A2層)となるように両者を積層してT字型口金よりシート状に共押出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。こうして得られた未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。その後、BフィルムのA2層側の表面にコロナ放電処理を施し、Bフィルムのコロナ放電処理面にバーコート法により上記塗料組成物を塗布した。塗料組成物を塗布したBフィルムの幅方向両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導き、雰囲気温度75℃で予熱した後、引き続いてラジエーションヒーターを用いて雰囲気温度を110℃とし、次いで雰囲気温度を90℃として、塗料組成物を乾燥させてB層を形成せしめた。引き続き連続的に120℃の加熱ゾーン(延伸ゾーン)で幅方向に3.5倍延伸し、さらに230℃の熱処理ゾーン(熱固定ゾーン)で20秒間熱処理を施し、結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表1、2に示す。なお、A2層表面の表面自由エネルギーの測定のために、B層に塗料組成物を塗布しない積層フィルム(A1層、A2層のみからなる積層フィルム)も取得した(他の実施例、比較例においても同様である。)。
(実施例2~18、比較例1、2、4)
疎水性添加剤、アクリル樹脂、帯電防止剤、イソシアネート架橋剤、多価アルコールの種類や量を表1に記載の通りにした以外は、実施例1と同様に積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表1、2に示す。なお、比較例1はA2層を有しないので積層工程はなく、実施例1の条件でA1層のみを有する未延伸フィルムを得て、その後の工程を行った。
(比較例3)
疎水性添加剤、アクリル樹脂、帯電防止剤、イソシアネート架橋剤、多価アルコールの種類や量を表1に記載の通りにした以外は、実施例1と同様に積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層フィルムはB層形成用の塗料組成物の塗布性が悪く、A2層の表面自由エネルギーを除く各項目の評価を実施できなかった。
Figure 2023170327000001
Figure 2023170327000002
表中、Eは指数を表しており、例えば、1.0E+09は1.0×10を表す。
本発明は、帯電防止性や、耐摩耗性に優れた積層フィルムに関するものであり、特に磁気記録材料用、電気絶縁材料用、絶縁テープ用、電気材料用、プロテクトフィルム用などの光学用、グラフィック用、カード用、転写箔用、リボン用、蒸着用、包装用、コンデンサー用、カバーテープ用、キャリアテープ用などの各種テープ類に好適に使用可能である。特にキャリアテープの課題であった、剥離帯電現象による埃付着、電子部品の電気的な破壊、さらには過酷な環境下での帯電防止性の低下や、塗膜の摩耗による工程汚染の低下を解決できるため、キャリアテープに好ましく用いることができる。また、プロテクトフィルムの課題であった剥離帯電現象による埃付着、剥離帯電によるディスプレイの電子素子の破壊や、より過酷な環境下での帯電防止性の低下を解決できるため、カバーテープ用途にも好ましく用いることができる。

Claims (6)

  1. 疎水性添加剤を含む熱可塑性樹脂層(A層)、及びポリスチレンスルホン酸とその塩の少なくとも一方を含む層(B層)を有し、前記B層の表面比抵抗値Rが1.0×10Ω/sq以上1.0×1010Ω/sq以下であり、かつ、摩耗処理前後の前記B層の摩擦係数をそれぞれμX、μYとしたときに、μY/μXが0.1以上1.2以下であることを特徴とする、積層フィルム。
  2. 前記B層が、ウレタン骨格とアクリル樹脂骨格を含むことを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記疎水性添加剤が、アルキル基含有ポリマー、α-オレフィン、内部オレフィン、直鎖状オレフィン、分岐鎖状オレフィン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ステアリン酸塩から成る群より選ばれる少なくとも一つの添加剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 前記A層がポリエステルを含む2つの層(A1層、A2層)を有し、前記A2層が前記B層側に位置し、且つ前記A1層よりも疎水性添加剤を多く含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  5. 前記A層の厚みが、前記B層の厚みより大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  6. 電子部品向けカバーテープ用途に用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
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