JP2023168218A - 化学強化後ガラス基板の製造方法、化学強化後ガラス基板のリワーク方法及び化学強化後ガラス基板 - Google Patents

化学強化後ガラス基板の製造方法、化学強化後ガラス基板のリワーク方法及び化学強化後ガラス基板 Download PDF

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祐輔 藤原
Yusuke Fujiwara
章朗 静井
Akio Shizui
盛吉 鄭
Seikichi Tei
孝司 江藤
Koji Eto
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Abstract

【課題】本発明は、外観および強度特性に優れた高品質な化学強化後ガラスとして再生する、化学強化後ガラス基板の製造方法及びリワーク方法の提供を目的とする。【解決手段】本発明は、主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板の製造方法であって、(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、(C)前記ガラス基板を、90質量%以上のKNO3及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNO3を含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法に関する。【選択図】なし

Description

本発明は化学強化後ガラス基板の製造方法、化学強化後ガラス基板のリワーク方法及び化学強化後ガラス基板に関する。
従来、様々な情報端末装置等のディスプレイ用のカバーガラスとして、薄型ながら割れ等に強いことから、イオン交換等の化学強化によりガラス表面に圧縮応力層を形成した化学強化後ガラスが用いられている。
化学強化後ガラスは表面に圧縮応力層を有することから、外観の傷や表面異物は爆発的な破砕や強度の大幅な低下につながるおそれがある。したがって、化学強化後に所望の外観基準を満足しないもの、例えば、基準を下回るレベルの外観の傷や表面異物が生じると廃棄せざるを得ない場合があった。
外観の傷や表面異物といった欠陥は研磨工程によって除去できる。特に傷や表面異物が深さを持つ場合には、その深さに相当する量の研磨を実施することで欠陥を除去できる。かかる研磨工程とは研磨材を用いた物理研磨と、化学薬品を用いた化学反応による化学研磨(エッチング)との両方を含む。
化学強化後の表面に圧縮応力を有するガラスでも、研磨工程によって傷や表面異物といった欠陥を除去できる。しかし、研磨によって表層部の圧縮応力層も除去されてしまう。そのため、化学強化後のガラスを研磨するプロセスでは、圧縮応力層を再度形成するプロセスが必要になる。
化学強化後ガラスの圧縮応力層を除去し再度、圧縮応力層を形成する方法として、例えば、特許文献1には、化学強化したガラスの主表面に形成された圧縮応力層の一部または全部を除去した後、化学強化工程により圧縮応力層を再度形成する(以下、再強化とも略す。)方法が開示されている。
特開2010-116276号公報
特許文献1は化学強化後ガラスの再生(以下、リワークとも略す。)を開示するものではないが、圧縮応力層の除去後に、再度圧縮応力層を形成する、という点で、圧縮応力層の再調整は可能である。
しかしながら、化学強化後ガラス表面の圧縮応力層の一部又は全部を除去した後に化学強化処理をすると、ガラス表面及び内部に当該除去前の化学強化により導入されたイオンが残存することとなる。
そのため、同じプロセスで化学強化を実施するとガラスに再度イオンが供給されてガラスが膨張し、所望の基板形状が得られないという問題がある。一方で、膨張を抑制するために再強化時の強化時間を短縮すると、イオン交換量が不足し、深層の応力が上げられず、所望の強度特性を得られない。
したがって、本発明は、傷や表面異物を有する化学強化後ガラス基板を外観および強度特性に優れた高品質な化学強化後ガラスとして再生する、化学強化後ガラス基板の製造方法及びリワーク方法の提供を目的とする。
上記課題を検討した結果、本発明者らは、化学強化後ガラス基板の表面を研磨した後に、特定範囲の組成を有する無機塩組成物と接触させてイオン交換することにより、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力を十分に導入できることを見出し、本発明を完成させた。
1.(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
(C)前記ガラス基板を、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法。
2.(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
(C)前記ガラス基板を、90質量%以上のKNO3、0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法。
3.(A)主表面と端面とを有する化学強化用ガラス基板に1次無機塩組成物を接触させて、主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
(C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法であって、
前記(A)における前記1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合には、前記(C)における前記2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とし、
前記(A)における前記1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合には、前記(C)における前記2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とする、化学強化後ガラス基板の製造方法。
4.(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
(C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法であって、引張応力CT(MPa)について、
前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.20以下である、化学強化後ガラス基板の製造方法。
5.(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
(C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法であって、引張応力CT(MPa)について、
前記(A)における前記1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合に、前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.10以下であり、
前記(A)における前記1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合に、前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.20以下である、化学強化後ガラス基板の製造方法。
6.下記で定義される前記化学強化後ガラス基板Cの強化膨張率を前記化学強化後ガラス基板Aの強化膨張率で除した値が0.90以上1.10以下である、前記1~5のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
強化膨張率(%)={[(化学強化後ガラス基板Cの寸法)-(化学強化前ガラス基板の寸法)]/(化学強化前ガラス基板の寸法)]}×100
7.前記(A)と前記(B)との間に、
(A’)前記化学強化後ガラス基板A表面の外観検査を行うこと、を含み、
前記外観検査の結果が所定の基準を満たさないと判定された場合、前記(B)を行う、前記1~6のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
8.前記(B)及び(C)を繰り返し行う、前記1~7のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
9.前記(C)の後に、(C’)前記化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、前記応力値が所定の基準を満たすか否かを判定すること、を含み、
前記応力値が所定の基準を満たすまで、前記(B)から前記(C’)までを繰り返し行う、前記1~8のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
10.前記(C’)において、前記応力値が所定の基準を満たす場合、さらに、
(D)前記化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、前記外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定すること、を含み、
前記外観検査の結果が所定の基準を満たすまで、前記(B)から前記(D)までを繰り返し行う、前記9に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
11.前記(B)において、前記化学強化後ガラス基板Aの主表面あたりの研磨量が0.5μm以上である、前記1~10のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
12.前記化学強化後ガラス基板Aが前記主表面と前記端面とを有し、前記主表面に平面部及び曲面部を含み、且つ前記主表面の前記平面部に垂直な方向に前記端面を形成し、
前記端面での前記平面部との水平方向における最突出部である点Aと、
前記点Aを起点とした前記曲面部の不連続点である点Bと、
前記平面部に対する前記点Aを起点とする平行線と前記平面部に対する前記点Bを起点とする法線の交点を点Cとし、
前記(A)において、前記化学強化後ガラス基板Aにおける前記点Aと前記点Cの距離をX、前記点Bと前記点Cの距離をY、前記平面部中央の最大板厚をtとし、
前記(B)から前記(D)をn回繰り返した前記化学強化後ガラス基板Cにおける前記点Aと前記点Cの距離をX、前記点Bと前記点Cの距離をY、前記平面部中央の板厚をtと定義した場合に、
(X/t)/(X/t)>1及び
(Y/t)/(Y/t)>1
の関係式を満たす、前記1~10のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。但し、nは1以上の整数である。
13.前記化学強化後ガラス基板Aが前記主表面と前記端面とを有し、且つ前記主表面に平面部及び曲げ部を含み、
前記(B)から前記(D)を1回以上繰り返した前記化学強化後ガラス基板Cにおける、前記曲げ部の変曲点から前記端面までの前記曲げ部の最大厚みをt、前記平面部中央の厚みをtと定義した場合に、
/t<0.96
の関係式を満たす、前記1~11のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
14.主表面と端面とを有し、且つ前記主表面に平面部及び曲げ部を含む化学強化後ガラス基板であって、前記曲げ部の変曲点から前記端面までの前記曲げ部の最大厚みをt’、前記平面部中央の厚みをt’と定義した場合に、
’/t’<0.96
の関係式を満たす、化学強化後ガラス基板。
15.前記(B)および前記(C)をZ[回]行い、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板Cにおける一方の主面あたりの総研磨量をa[μm]、板厚公差を±b[μm]と定義した場合に、
Z[回]=a/b
の関係式を満たす、前記1~13のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。Zは1以上の整数である。
16.前記(B)および前記(C)をk回行い、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の良品率をP、前記(B)と前記(C)の良品歩留をaと定義した場合に、
≧Pk-1+(1-Pk-1)×a
の関係式を満たす、前記1~13及び15のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。kは1以上の整数である。
17.前記(A)における前記化学強化後ガラス基板A中の不良品率から、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の不良品率を減じた値が、10%以上である、前記1~13、15及び16のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
18.ガラス表層における圧縮応力の値をCS[MPa]、ガラス表面から深さ50μmにおける圧縮応力の値をCS50[MPa]、
前記(A)における前記化学強化後ガラス基板AのCS50[MPa]をC50(a)、前記(C)における前記化学強化後ガラス基板CのCS50[MPa]をCS50(c)とした場合に、
(式)CS50(c)/CS50(a)×100
で表されるCS50(a)に対するC50(c)の割合が70%以上であり、且つ
前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板CのCSが750MPa以上である、前記1~13及び15~17のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
19.前記(C)における前記無機塩組成物は、前記ガラス基板に対する累積処理面積が0.2m/kg以上である、前記1~13及び15~18のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
20.前記(C)における前記イオン交換の条件が、360℃以上450℃以下にて5分間以上8時間以下である、前記1~13及び15~20のいずれか1に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
21.化学強化後ガラス基板のリワーク方法であって、
(A)主表面と端面とを有する前記化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、および
(C)前記研磨したガラス基板を、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含み、
ガラス表層における圧縮応力の値をCS[MPa]、表面からの深さ50μmにおける圧縮応力の値をCS50[MPa]、
前記(A)における前記化学強化後ガラス基板AのCS50[MPa]をCS50(a)、前記(C)における前記化学強化後ガラス基板CのCS50[MPa]をCS50(c)とした場合に、(式)CS50(c)/CS50(a)×100で表されるCS50(a)に対するCS50(c)の割合が70%以上であり、且つ
前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板のCSが750MPa以上である、化学強化後ガラス基板のリワーク方法。
22.化学強化後ガラス基板のリワーク方法であって、
(A)主表面と端面とを有する前記化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、
(C)前記研磨したガラス基板を、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得ることおよび
(C’)前記化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、前記応力値が所定の基準を満たすか否かを判定すること、を含み、
前記(C’)において前記応力値が所定の基準を満たすまで、前記(B)および前記(C’)までを繰り返し、且つ
前記応力値が所定の基準を満たす場合、(D)前記化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、前記外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定することを含み、
前記外観検査の結果が所定の基準を満たすまで、前記(B)から前記(D)までを繰り返し行い、
前記(A)における前記化学強化後ガラス基板A中の不良品率から、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の不良品率を減じた値が、10%以上である、化学強化後ガラス基板のリワーク方法。
23.化学強化後ガラス基板のリワーク方法であって、
(A)主表面と端面とを有する前記化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、
(C)前記研磨したガラス基板を、90質量%以上のKNO3、0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ることおよび
(C’)前記化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、前記応力値が所定の基準を満たすか否かを判定すること、を含み、
前記(C’)において前記応力値が所定の基準を満たすまで、前記(B)および前記(C’)までを繰り返し、且つ
前記応力値が所定の基準を満たす場合、(D)前記化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、前記外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定することを含み、
前記外観検査の結果が所定の基準を満たすまで、前記(B)から前記(D)までを繰り返し行い、
前記(A)における前記化学強化後ガラス基板A中の不良品率から、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の不良品率を減じた値が、10%以上である、化学強化後ガラス基板のリワーク方法。
24.化学強化後ガラス基板の製造方法であって、研磨すること及び化学強化することを含む再生処理により、廃棄物の総排出量を削減する、化学強化後ガラス基板の製造方法。
本発明の化学強化後ガラス基板の製造方法及びリワーク方法によれば、化学強化後ガラス基板の表面における圧縮応力層を一部又は全部を除去した後に、特定範囲の組成を有する無機塩組成物を用いてイオン交換することにより、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力値を効果的に増加できる。これにより、化学強化後に所望の外観基準を満足しない化学強化後ガラス基板を、外観とともに強度特性に優れた、高品質な化学強化後ガラス基板として再生できる。また、従来であれば産業廃棄物として廃棄されていた化学強化後ガラス基板を高品質な状態で再生できることから、歩留まりを向上するとともに、産業廃棄物の減少に寄与できる。
図1は、本実施形態の一態様を示すフロー図である。 図2Aは化学強化後ガラス基板の応力プロファイルの一例を示す図である。縦軸は圧縮応力CS[MPa]、横軸は表面からの深さ[μm]である。 図2Bは、化学強化後ガラス基板A表面を一部研磨後に無機塩組成物と接触させてイオン交換した化学強化後ガラス基板CのCSを縦軸とし、該無機塩組成物中のNaNO濃度を横軸とする図である。 図2Cは、化学強化後ガラス基板A表面を一部研磨後に無機塩組成物と接触させてイオン交換した化学強化後ガラス基板CのCS50を縦軸とし、該無機塩組成物中のNaNO濃度を横軸とする図である。 図3Aは、ガラス基板に対する累積処理面積が0m/kgである無機塩組成物(NaNO非含有塩)を用いて研磨後のイオン交換を行って得られた化学強化後ガラス基板の応力プロファイル(CS)を示す図である。 図3Bは、化学強化処理に複数回使用し、ガラス基板に対する累積処理面積が0.5m/kgである無機塩組成物(NaNO含有塩)を用いて研磨後の化学強化処理を行って得られた化学強化後ガラス基板の応力プロファイル(CS)を示す図である。 図4Aは、ガラス基板に対する累積処理面積が0m/kgである無機塩組成物(NaNO非含有塩)を用いて研磨後のイオン交換を行って得られた化学強化後ガラス基板Cの応力プロファイル(CS50)を示す図である。 図4Bは、化学強化処理に複数回使用し、ガラス基板に対する累積処理面積が0.5m/kgである無機塩組成物(NaNO含有塩)を用いて研磨後の化学強化処理を行って得られた化学強化後ガラス基板Cの応力プロファイル(CS50)を示す図である。 図5は、本発明の一実施形態であり、化学強化後ガラス基板が、主表面に平面部及び曲面部を含み、且つ主表面の平面部に垂直な方向に端面を形成する化学強化後ガラス基板である場合における、点A~点C、X及びYを示す模式断面図である。 図6は、工程(B)および工程(C)を行う回数(研磨リワーク回数)の増加に伴う、得られる化学強化後ガラス基板Cの端面形状の変化を示す図である。 図7は、X、Y、X/t、Y/t、(X/t)/(X/t)、(Y/t)/(Y/t)示す。 図8の(a)は、Y/tを縦軸とし、研磨リワーク回数(回)を横軸としたグラフを示す。図8の(b)は、X/tを縦軸とし、研磨リワーク回数(回)を横軸としたグラフを示す。 図9は、本発明の一実施形態として、化学強化後ガラス基板が、主表面に平面部及び曲げ部を有する化学強化後ガラス基板である場合における、研磨リワーク実施前と研磨リワーク後の平面部中央と曲げ部のコーナー部分を示す図である。 図10は、本発明の一実施形態として、化学強化後ガラス基板が、主表面に平面部及び曲げ部を有する化学強化後ガラス基板である場合において、曲げ部の変曲点から端面までの曲げ部の最大厚みt、平面部中央の厚みt、t/tの変化量を示す図である。 図11は、本発明の一実施形態であり、化学強化後ガラス基板Aが主表面に平面部及び曲げ部を有する化学強化後ガラス基板である場合において、曲げ部の変曲点、平面部中央、端面、t及びtを表す模式断面図である。 図12は、工程(B)および工程(C)を繰り返す回数(研磨リワーク回数)と良品率(実線)及び廃棄物量(点線)とを試算したグラフを示す。 図13は、従来のプロセスと、本発明における研磨リワーク有りのプロセスとにおける、無機塩組成物の寿命延長を試算した結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。また、本明細書において、ガラスの組成(各成分の含有量)について、特に断らない限り、酸化物基準のモル百分率表示で説明する。
本明細書において、化学強化後ガラス基板のリワークする方法を「研磨リワーク」と呼称する。
<応力測定方法>
近年、スマートフォンなどのカバーガラス向けに、ガラス内部のリチウムイオンをナトリウムイオンと交換し(Li-Na交換)、その後更にガラスの表層部において、ガラス内部のナトリウムイオンをカリウムイオンに交換する(Na-K交換)、2段階の化学強化を実施したガラスが主流になっている。
このような2段化学強化ガラスの応力プロファイルを非破壊で取得するには、例えば散乱光光弾性応力計(Scattered Light Photoelastic Stress Meter、以下、SLPとも略す)やガラス表面応力計(Film Stress Measurment,以下、FSMとも略す)などが併用され得る。
散乱光光弾性応力計(SLP)を用いる方法では、ガラス表層から数十μm以上のガラス内部において、Li-Na交換に由来した圧縮応力を測定できる。一方、ガラス表面応力計(FSM)を用いる方法では、ガラス表面から数十μm以下の、ガラス表層部において、Na-K交換に由来した圧縮応力を測定できる(例えば、国際公開第2018/056121号、国際公開第2017/115811号)。従って、2段化学強化ガラスにおける、ガラス表層と内部における応力プロファイルとしては、SLPとFSMの情報を合成したものが用いられることがある。
本発明においては、主に散乱光光弾性応力計(SLP)により測定された応力プロファイルを用いている。なお、本明細書において圧縮応力CS、引張応力CT、圧縮応力層深さDOLなどと称した場合、SLP応力プロファイルにおける値を意味する。
散乱光光弾性応力計とは、レーザ光の偏光位相差を該レーザ光の波長に対して1波長以上可変する偏光位相差可変部材と、該偏光位相差を可変されたレーザ光が強化ガラスに入射されたことにより発する散乱光を所定の時間間隔で複数回撮像し複数の画像を取得する撮像素子と、該複数の画像を用いて前記散乱光の周期的な輝度変化を測定し該輝度変化の位相変化を算出し、該位相変化に基づき前記強化ガラスの表面からの深さ方向の応力分布を算出する演算部と、を有する応力測定装置である。
散乱光光弾性応力計を用いる応力プロファイルの測定方法としては、国際公開第2018/056121号に記載の方法が挙げられる。散乱光光弾性応力計としては、例えば、折原製作所製のSLP-1000、SLP-2000が挙げられる。これらの散乱光光弾性応力計に付属ソフトウェアSlpIV_up3(Ver.2019.01.10.001)を組み合わせると高精度の応力測定が可能である。
<強化膨張率の測定>
強化膨張率とは、化学強化プロセスを実施した後のガラス基板寸法を、化学強化プロセス実施前のガラス基板の寸法で除すことで算出したものであり、化学強化プロセスでイオン交換を実施した結果、ガラスがどの程度膨張したかを表す指標である。
強化膨張率は下記式により求めた。
強化膨張率(%)={[(化学強化後ガラス基板Cの寸法)-(化学強化前ガラス基板の寸法)]/(化学強化前ガラス基板の寸法)]}×100
寸法は画像測定装置[例えば、ニコン社製NEXIV(VMZ―S3020)]を用いて測定できる。
<化学強化後ガラスを製造する方法:第1~5実施形態>
本発明に係る第1~5実施形態は、化学強化後ガラスを製造する方法である。以下第1~5実施形態について、フロー図を参照して詳細に説明する。
第1実施形態は、下記工程(A)~(C)を含むことを特徴とする。
(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備する工程
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得る工程
(C)前記ガラス基板を、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程
第2実施形態は、下記工程(A)~(C)を含むことを特徴とする。
(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備する工程
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得る工程
(C)前記ガラス基板を、90質量%以上のKNO3、0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程
第3実施形態は、下記工程(A)~(C)を含むことを特徴とする。
(A)主表面と端面とを有する化学強化用ガラス基板に1次無機塩組成物を接触させて、主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備する工程
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得る工程
(C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程
第3実施形態において、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合には、工程(C)における2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とし、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合には、工程(C)における前記2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とする。
第4実施形態は、下記工程(A)~(C)を含むことを特徴とする。
(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備する工程
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得る工程
(C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程
第4実施形態において、引張応力CT(MPa)について、前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.20以下である。
第5実施形態は、下記工程(A)~(C)を含むことを特徴とする。
(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備する工程
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得る工程
(C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程
第5実施形態において、引張応力CT(MPa)について、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合には、化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.10以下であり、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合には、化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.20以下である。
第1~第5実施形態においては、工程(A)と工程(B)との間に前記化学強化後ガラス基板A表面の外観検査を行う工程(A’)を含み、前記外観検査の結果が所定の基準を満たさないと判定された場合、工程(B)を行うことが好ましい。
第1~第5実施形態においては、工程(B)及び工程(C)を繰り返し行うことが好ましい。工程(B)及び工程(C)を繰り返し行うことにより、より外観に優れた化学強化後ガラス基板が得られる。
第1~第5実施形態においては、工程(C)の後に、前記化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、前記応力値が所定の基準を満たすか否かを判定する工程(C’)を含み、前記応力値が所定の基準を満たすまで、工程(B)から工程(C’)までを繰り返し行うことが好ましい。これにより、外観および強化特性においてより優れた化学強化後ガラス基板が得られる。
第1~第5実施形態においては、工程(C’)において、前記応力値が所定の基準を満たす場合、さらに、前記化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、前記外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定する工程(D)を含み、前記外観検査の結果が所定の基準を満たすまで、工程(B)から工程(D)までを繰り返し行うことが好ましい。これにより、外観および強化特性においてより優れた化学強化後ガラス基板が得られる。
図1は、第1~第5実施形態の一態様を示すフロー図である。本実施形態の一態様においては、ステップS11で主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備する[工程(A)]。ステップS12で化学強化後ガラス基板A表面の外観検査を行い、外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定する[工程(A’)]。
外観検査の結果が所定の基準を満たすと判定された場合、化学強化後ガラス基板Aを加工等するステップS21(次工程)に進む。一方、外観検査の結果が所定の基準を満たさないと判定された場合、ステップS13に進み、化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得る[工程(B)]。
ステップS13で得られたガラス基板を、ステップS14において無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得る[工程(C)]。ステップS15にて、得られた化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、応力値が所定の基準を満たすか否かを判定する[工程(C’)]。該応力値が所定の基準を満たさない場合、該応力値が所定の基準を満たすまでステップS13からステップS15までを繰り返すことが好ましい。
ステップS15にて前記応力値が所定の基準を満たす場合、ステップS16に進み、化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、該外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定する[工程(D)]。ステップS16において応力値が所定の基準を満たすまで、ステップS13からステップS16までを繰り返すことが好ましい。
第1~第5実施形態の各工程について以下に説明する。
<<工程(A)>>
工程(A)は、主表面と端面とを有する、化学強化後ガラス基板Aを準備する工程である。化学強化後ガラス基板Aの組成は、成形、化学強化処理による強化が可能な組成であればよい。例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等が挙げられる。これらのガラスは結晶ガラスであってもよいし、非晶質ガラスであってもよい。
化学強化後ガラス基板Aの組成としては、例えば、下記に示す組成が挙げられる。
(1)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを50~80%、Alを2~25%、LiOを0.1~20%、NaOを0.1~18%、KOを0~10%、MgOを0~15%、CaOを0~5%、Pを0~5%、Bを0~5%、Yを0~5%およびZrOを0~5%を含むガラス。
化学強化後ガラス基板Aの製造方法としては、特に限定されない。具体的には例えば、所定のガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を1500~1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷して製造したガラス基板を得る。得られたガラス基板を無機塩組成物に接触させてイオン交換処理し、ガラス基板の表層に圧縮応力層を形成することにより化学強化後ガラス基板Aが得られる。第3実施形態及び第5実施形態においては、該無機塩組成物を1次無機塩組成物とする。
ガラス基板の成形方法は、ダウンドロー法(例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウン法およびリドロー法等)、フロート法、ロールアウト法およびプレス法等が挙げられる。
無機塩組成物にガラス基板を接触させる方法としては、ペースト状の無機塩組成物をガラス基板に塗布する方法、無機塩組成物の水溶液をガラス基板に噴射する方法、融点以上に加熱した無機塩組成物の溶融塩の塩浴にガラス基板を浸漬させる方法などが挙げられる。これらの中では、生産性を向上させる観点から、無機塩組成物の溶融塩にガラス基板を浸漬させる方法が好ましい。
無機塩組成物の溶融塩にガラス基板を浸漬させる方法による化学強化処理は、例えば、次の手順で実施できる。まずガラス基板を100℃以上に予熱し、該溶融塩を、化学強化を行う温度に調整する。次いで予熱したガラス基板を溶融塩中に所定の時間浸漬した後、ガラス基板を溶融塩中から引き上げ、放冷する。
化学強化後ガラス基板Aの厚さは、特に制限されないが、化学強化特性をより発揮する観点から、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましく、0.85mm以下が特に好ましい。また、化学強化後ガラス基板の厚さの下限は特に制限されないが、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。
化学強化後ガラス基板Aは、例えば、均一な板厚を有する平板形状、スマートフォンに代表される2.5Dカバーガラスや3Dカバーガラス等、少なくとも一部に曲面部または屈曲部等を有する三次元形状のものが挙げられる。三次元形状の化学強化後ガラスである場合、特に、曲面部又は屈曲部以外の部分であるフラットな部分において外面の傷や表面異物が存在すると不良原因となりやすい。
本実施形態は、このような三次元形状の化学強化後ガラス基板の場合、ガラスの膨張等を抑制し、高品質に化学強化後ガラス基板を再生できる効果を特に発揮しやすい。
三次元形状の化学強化後ガラス基板としては、例えば、少なくとも一部に曲率半径100mm以下の曲面部を有するガラス基板が挙げられる。具体的には、平面視で矩形状のガラス基板の対向する2辺が曲面形状となる三次元形状のガラス基板、該矩形状のガラス基板のうち4隅を含む周辺が曲面形状となる三次元形状のガラス基板、等が挙げられる。
ガラス基板の表層に圧縮応力層を形成する化学強化処理は、ガラス基板を無機塩組成物に接触させて、該ガラス中の金属イオンと、該無機塩組成物中にある、該金属イオンよりイオン半径の大きい金属イオンと、を置換する処理である。
化学強化後ガラス基板Aの最表層における圧縮応力層の圧縮応力値(CS)は、特に限定されないが、通常500MPa以上が好ましく、600MPa以上がより好ましく、700MPa以上がさらに好ましい。
なお、化学強化後ガラス基板Aの圧縮応力層の圧縮応力値および圧縮応力層深さは表面応力計(例えば、折原製作所製FSM-6000)および散乱光光弾性応力計(例えば、折原製作所製SLP-2000)により測定できる。
<<工程(A’)>>
工程(A’)は、化学強化後ガラス基板A表面の外観検査を行い、該外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定する工程である。
外観検査の結果が所定の基準を満たす化学強化後ガラス基板としては、例えば、下記条件にて外観観察をした際に、見識可能な傷や表面異物などの外観不良が、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下、さらに好ましくは1個以下、特に好ましくは0個存在する化学強化後ガラス基板が挙げられる。
条件:暗室環境で照度2000ルクスの照明下、ガラスと判定者の目との距離を30cmとしてスマートフォン用カバーガラスのサイズの基板の外観観察をする。
見識可能な不良となる傷としては、前記環境下で0.1mmの幅を持つスクラッチ、0.05mm~0.1mmの幅かつ1mm以上の長さを持つスクラッチなどが挙げられる。
<<工程(B)>>
工程(B)は、化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨し、圧縮応力層の一部又は全部が除去されたガラス基板を得る工程である。本実施形態においては、工程(A’)において外観検査の結果が所定の基準を満たさないと判定された場合に、工程(B)を行うことが好ましい。
化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨することで、ガラス基板表面のミクロな傷が除去され、化学強化後のガラス基板の面強度を向上できる。工程(B)における化学強化後ガラス基板A表面の研磨量は特に限定されないが、主表面あたりの研磨量が0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。また、該工程(B)における研磨量は、通常10μm以下である。
なお、工程(B)においては、ガラスの反り防止の点から、板厚方向に対向する2つのガラス基板主面について、同じ研磨量を研磨することが好ましい。研磨条件は特に制限されず、所望の表面粗さとなる条件で行うとよい。
研磨方法としては、例えば、物理的な研磨方法及び化学的な研磨方法が挙げられる。物理的な研磨方法としては、研磨砥粒を用いてガラス基板の表面を研磨する方法が挙げられる。
物理的な研磨方法に用いる砥粒としては、例えば、酸化セリウム、コロイダルシリカ等の砥粒が挙げられる。砥粒の平均粒径は、0.02~2.0μmが好ましく、より好ましくは0.04~1.5μmである。砥粒の平均粒径はレーザ回折散乱を用いた粒径測定装置により測定できる。砥粒の濃度として、スラリーとした際の比重は1.03~1.13が好ましく、より好ましくは1.05~1.10である。研磨圧は6~20kPaが好ましく、より好ましくは8~18kPaである。研磨装置の定盤の回転速度は最外周の周速が毎分20~100mであることが好ましく、より好ましくは毎分30~70mである。
具体的には例えば、平均粒径約1.2μmの酸化セリウムを水に分散させて比重1.07のスラリーを作製し、表面が不織布またはスウェードの研磨パッドを用いて、研磨圧9.8kPaの条件で、片面あたり0.5μm以上のガラス基板の表面を研磨する等の方法が挙げられる。
研磨には、ショアA硬度が25~65°かつ100g/cmでの沈み込み量が0.05mm以上となる、表面が不織布又はスウェードの研磨パッドが適用できる。この中でも、コスト面から不織布の研磨パッドの使用が好ましい。
化学的な方法としては、フッ酸等を含有する溶液にガラス基板を浸漬させてエッチングすることにより、ガラス表面を研磨する方法が挙げられる。
本製造方法では、工程(B)及び(C)間にガラス基板を洗浄する洗浄工程をさらに含むことが好ましい。該洗浄工程では、工水、イオン交換水等を使用でき、この中でもイオン交換水の使用が好ましい。
洗浄の条件は洗浄液によっても異なるが、イオン交換水を用いる場合には0~100℃の温度で洗浄すると、付着した塩を完全に除去できる点から好ましい。洗浄工程では、イオン交換水等が入っている水槽にガラスを浸漬する方法や、ガラス表面を流水にさらす方法、シャワーにより洗浄液をガラス表面に向けて噴射する方法等、様々な方法を使用できる。
<<工程(C)>>
工程(C)は、工程(B)で表面を研磨したガラス基板を、無機塩組成物に接触させて該イオン交換をしてガラス基板の表層に圧縮応力を導入し、化学強化後ガラス基板Cを得る工程である。第3実施及び第5実施形態において、該無機塩組成物を2次無機塩組成物とする。
(第1実施形態)
第1実施形態において、工程(C)は、工程(B)で得られたガラス基板を、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程である。
第1実施形態において、工程(C)に用いる無機塩組成物は、KNOの含有量が90質量%以上であり、好ましくは91質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上、特に好ましくは93質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。無機塩組成物におけるKNOの含有量が90質量%以上であることにより、工程(B)における研磨により減少するガラス表面に存在するKイオンの量を効率的に増加させて、化学強化後ガラスの強度を向上できる。
第1実施形態において、工程(C)に用いる無機塩組成物におけるNaNOの含有量は、1.0質量%以上であり、好ましくは1.3質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上である。第1実施形態において、無機塩組成物のNaNOの含有量を1.0質量%以上とすることにより、ガラス深層部の応力を高めて化学強化後ガラス基板の強度を向上できる。
一方で、工程(C)に用いる無機塩組成物におけるNaNOの含有量が過剰であると、ガラス表面の応力が低下することから、第1実施形態において、無機塩組成物におけるNaNOの含有量は6.0質量%以下であり、好ましくは5.8質量%以下、より好ましくは5.5質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下である。
(第2実施形態)
第2実施形態において、工程(C)は、工程(B)で得られたガラス基板を、90質量%以上のKNO3、0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程である。
第2実施形態において、工程(C)に用いる無機塩組成物は、KNOの含有量が90質量%以上であり、好ましくは91質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上、特に好ましくは93質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。無機塩組成物におけるKNOの含有量が90質量%以上であることにより、工程(B)における研磨により減少するガラス表面に存在するKイオンの量を効率的に増加させて、化学強化後ガラスの強度を向上できる。
第2実施形態において、工程(C)に用いる無機塩組成物におけるNaNOの含有量は、0質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。第1実施形態において、無機塩組成物のNaNOの含有量を0質量%以上とすることにより、ガラス深層部の応力を高めて化学強化後ガラス基板の強度を向上できる。
一方で、工程(C)に用いる無機塩組成物におけるNaNOの含有量が過剰であると、ガラス表面の応力が低下することから、第2実施形態において、無機塩組成物におけるNaNOの含有量は5.0質量%未満であり、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
第2実施形態において、表面からの深さ50μmにおける圧縮応力CS50(MPa)について、化学強化後ガラス基板CのCS50を化学強化後ガラス基板AのCS50で除した値は0.80以上1.10以下であることが好ましい。該値は、好ましくは0.82以上、より好ましくは0.84以上、さらに好ましくは0.86以上である。また、該値は、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.08以下、さらに好ましくは1.06以下である。該値を前記範囲とすることで、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力値を効果的に増加できる。
第2実施形態において、引張応力CT(MPa)について、化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値は0.90以上1.10以下であることが好ましい。該値は、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上、さらに好ましくは0.96以上である。また、該値は、好ましくは1.08以下、より好ましくは1.06以下、さらに好ましくは1.04以下である。該値を前記範囲とすることで、CTが増大するのを抑制できる。
(第3実施形態)
第3実施形態において、工程(C)は、工程(B)で得られたガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程である。
第3実施形態において、工程(C)に用いる2次無機塩組成物は、KNOの含有量が90質量%以上であり、好ましくは91質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上、特に好ましくは93質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。2次無機塩組成物におけるKNOの含有量が90質量%以上であることにより、工程(B)における研磨により減少するガラス表面に存在するKイオンの量を効率的に増加させて、化学強化後ガラスの強度を向上できる。
第3実施形態において、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合には、工程(C)における2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とする。かかる場合において、2次無機塩組成物におけるLiNOの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.04質量%以上である。また、2次無機塩組成物におけるLiNOの含有量は、好ましくは0.80質量%以下、より好ましくは0.60質量%以下、さらに好ましくは0.40質量%以下である。
第3実施形態において、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合には、工程(C)における2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とする。かかる場合において、2次無機塩組成物におけるNaNOの含有量は、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上、さらに好ましくは0.60質量%以上である。また、2次無機塩組成物におけるNaNOの含有量は、好ましくは5.0質量%未満、より好ましくは4.5質量%以下である。かかる場合において、2次無機塩組成物におけるLiNOの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、2次無機塩組成物におけるLiNOの含有量は、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下である。
第3実施形態においては、前記したように、工程(A)で用いる1次無機塩組成物の累積処理面積により、工程(C)におけるイオン交換の条件を使い分ける。本発明者らは、工程(A)で用いる1次無機塩組成物の累積処理面積は工程(C)に供するガラス基板の応力に影響を与えており、該累積処理面積が0.2m/kg未満である場合と、0.2m/kg以上である場合とで、工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板の応力特性の傾向が変わることを見出した。したがって、第3実施形態によれば、該累積処理面積の範囲に応じて、工程(C)において用いる2次無機塩組成物の組成を前記範囲とすることで、該2次無機塩組成物中のイオン濃度を適切に調整でき、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力値を効果的に増加するとともに、CTが増大するのを抑制できる。
第3実施形態において、表面からの深さ50μmにおける圧縮応力CS50(MPa)について、化学強化後ガラス基板CのCS50を化学強化後ガラス基板AのCS50で除した値は0.80以上1.10以下であることが好ましい。該値は、より好ましくは0.82以上、さらに好ましくは0.84以上、特に好ましくは0.86以上である。また、該値は、より好ましくは1.08以下、さらに好ましくは1.06以下、特に好ましくは1.04以下である。該値を前記範囲とすることで、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力値を効果的に増加できる。
第3実施形態において、引張応力CT(MPa)について、化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値は0.90以上1.20以下であることが好ましい。該値は、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上、さらに好ましくは0.96以上である。また、該値は、好ましくは1.08以下、より好ましくは1.06以下、さらに好ましくは1.04以下である。該値を前記範囲とすることで、CTが増大するのを抑制できる。
第3実施形態において、1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kgは1次無機塩組成物中のLiNO濃度が0.8質量%であることを示す。すなわち、第3実施形態の一態様として、下記態様が挙げられる。
(A)主表面と端面とを有する化学強化用ガラス基板に1次無機塩組成物を接触させて、主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
(C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法であって、
前記(A)における前記1次無機塩組成物中のLiNO濃度が0.8質量%未満である場合には、前記(C)における前記2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とし、
前記(A)における前記1次無機塩組成物中のLiNO濃度が0.8質量%以上である場合には、前記(C)における前記2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とする、化学強化後ガラス基板の製造方法。
(第4実施形態)
第4実施形態において、表面からの深さ50μmにおける圧縮応力CS50(MPa)について、化学強化後ガラス基板CのCS50を化学強化後ガラス基板AのCS50で除した値は0.90以上1.20以下であることが好ましい。該値は、より好ましくは0.92以上、さらに好ましくは0.94以上、特に好ましくは0.96以上である。また、該値は、より好ましくは1.18以下、さらに好ましくは1.16以下、特に好ましくは1.14以下である。該値を前記範囲とすることで、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力値を効果的に増加できる。
(第5実施形態)
第5実施形態において、工程(C)は、工程(B)で得られたガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得る工程である。
第5実施形態において、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合に、且つ化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.10以下である。引張応力CT(MPa)について、化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値は0.90以上1.10以下であることが好ましい。該値は、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上、さらに好ましくは0.96以上である。また、該値は、好ましくは1.08以下、より好ましくは1.06以下、さらに好ましくは1.04以下である。該値を前記範囲とすることで、CTが増大するのを抑制できる。
第5実施形態において、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合に、化学強化後ガラス基板CのCS50を化学強化後ガラス基板AのCS50で除した値は0.80以上1.10以下であることが好ましい。該値はより好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.82以上、特に好ましくは0.84以上、最も好ましくは0.86以上であり、また、より好ましくは1.08以下、さらに好ましくは1.06以下、特に好ましくは1.04以下、最も好ましくは1.02以下である。
第5実施形態において、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合に、化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.20以下である。引張応力CT(MPa)について、化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値は0.90以上1.20以下であることが好ましい。該値は、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上、さらに好ましくは0.96以上である。また、該値は、好ましくは1.18以下、より好ましくは1.16以下、さらに好ましくは1.14以下である。該値を前記範囲とすることで、CTが増大するのを抑制できる。
第5実施形態において、工程(A)における1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合に、化学強化後ガラス基板CのCS50を化学強化後ガラス基板AのCS50で除した値は0.80以上1.20以下であることが好ましい。該値はより好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.82以上、特に好ましくは0.84以上、最も好ましくは0.86以上であり、また、より好ましくは1.18以下、さらに好ましくは1.16以下、特に好ましくは1.14以下、最も好ましくは1.12以下である。
第5実施形態においては、前記したように、工程(A)で用いる1次無機塩組成物の累積処理面積に応じて、化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値の範囲を設定し、好ましくは化学強化後ガラス基板CのCS50を化学強化後ガラス基板AのCS50で除した値を設定するものである。本発明者らは、工程(A)で用いる1次無機塩組成物の累積処理面積は工程(C)に供するガラス基板の応力に影響を与えており、該累積処理面積が0.2m/kg未満である場合と、0.2m/kg以上である場合とで、工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板の応力特性の傾向が変わることを見出した。したがって、第5実施形態によれば、該累積処理面積の範囲に応じて、工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板CのCT及びCS50を適切に調整でき、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力値を効果的に増加するとともに、CTが増大するのを抑制できる。
第5実施形態において、化学強化後ガラス基板の応力特性(CS50及びCT)は、イオン交換に用いる無機塩組成物の組成、イオン交換の温度及び時間等により適宜調整し得る。第5実施形態において、工程(C)に用いる無機塩組成物は、KNOの含有量が90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは91質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上、特に好ましくは93質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。無機塩組成物におけるKNOの含有量が90質量%以上であることにより、工程(B)における研磨により減少するガラス表面に存在するKイオンの量を効率的に増加させて、化学強化後ガラスの強度を向上できる。
第5実施形態において、工程(C)に用いる無機塩組成物におけるNaNOの含有量は、1.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.3質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上である。第5実施形態において、無機塩組成物のNaNOの含有量を1.0質量%以上とすることにより、ガラス深層部の応力を高めて化学強化後ガラス基板の強度を向上できる。
第5実施形態において、工程(C)に用いる無機塩組成物におけるNaNOの含有量が過剰であると、ガラス表面の応力が低下することから、第5実施形態において、無機塩組成物におけるNaNOの含有量は6.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5.8質量%以下、さらに好ましくは5.5質量%以下、特に好ましくは5.0質量%以下、最も好ましくは4.0質量%以下である。
第5実施形態において、無機塩組成物におけるLiNOの含有量は、0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.04質量%以上、特に好ましくは0.06質量%以上である。また、2次無機塩組成物におけるLiNOの含有量は、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.80質量%以下、さらに好ましくは0.60質量%以下である。無機塩組成物の組成範囲を前記範囲とすることで、1次無機塩組成物中のイオン濃度を適切に調整でき、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力値を効果的に増加できる。
第5実施形態において、1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kgは1次無機塩組成物中のLiNO濃度が0.8質量%であることを示す。すなわち、第5実施形態の一態様として、下記態様が挙げられる。
(A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
(B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
(C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法であって、引張応力CT(MPa)について、
前記(A)における前記1次無機塩組成物のLiNO濃度が0.8質量%未満である場合に、前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.10以下であり、
前記(A)における前記1次無機塩組成物のLiNO濃度が0.8質量%以上である場合に、前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.20以下である、化学強化後ガラス基板の製造方法。
(第1~5実施形態)
図2Aに化学強化後ガラス基板の応力プロファイルの一例を示す図であり、縦軸は圧縮応力CS[MPa]、横軸は表面からの深さ[μm]である。図2Aにおいて、「CS」で表されている値がガラス最表面の圧縮応力値であり、「CS50」で表されている値が深さ50μmにおける圧縮応力値をさす。
化学強化後ガラス基板表面の圧縮応力層の一部又は全部を研磨により除去した後に化学強化処理をすると、ガラス表面及び内部にイオンが残存することとなる。そのため、同じプロセスで化学強化を実施するとガラスに再度イオンが供給されてガラスが膨張し、所望の形状が得られないという問題がある。
本発明者らは、化学強化後ガラス基板表面の圧縮応力層の一部を研磨により除去した後のイオン交換において、無機塩組成物に含有させるNaNOの濃度により、得られる化学強化後ガラス基板の圧縮応力が変化することを見出した。図2Bは、化学強化後ガラス基板表面を一部研磨後に無機塩組成物と接触させてイオン交換した化学強化後ガラス基板のCSを縦軸とし、該無機塩組成物中のNaNO濃度を横軸とする図である。図2Cは、化学強化後ガラス基板表面を一部研磨後に無機塩組成物と接触させてイオン交換した化学強化後ガラス基板のCS50を縦軸とし、該無機塩組成物中のNaNO濃度を横軸とする図である。
図2Cに示すように、研磨後のイオン交換に用いる無機塩組成物中のNaNO濃度が増加すると、CS50が増加し、深層応力を高めることができる。一方で、図2Bに示すように、研磨後のイオン交換に用いる無機塩組成物中のNaNO濃度が増加するに伴い、CSが減少する。したがって、無機塩組成物中のNaNO濃度を最適範囲とすることにより、CSとCS50とを両立させて、ガラス表面およびガラス深層部の両方に十分な圧縮応力を導入でき、化学強化後ガラス基板の強度を向上できる。
図3Aおよび図4Aは、NaNO非含有塩を用いて研磨後のイオン交換を行って得られた化学強化後ガラス基板の応力プロファイルを示す図である。図3Bおよび図4Bは、化学強化処理に複数回使用し、ガラス基板に対する累積処理面積が0.5m/kgである無機塩組成物(NaNO含有塩)を用いて研磨後の化学強化処理を行って得られた化学強化後ガラス基板の応力プロファイルを示す図である。化学強化処理に複数回使用して劣化した無機塩組成物は、処理量に応じてNaNO濃度が増加する傾向にある。
本明細書において、累積処理面積(m/kg)とは1kgの無機塩組成溶融物に対し、1mの面積のガラス基板を化学強化処理することを表している。尚、該ガラス基板の面積はガラス基板の長辺長さと短辺長さを積算した値であり、ガラス基板の表面積ではない。
図4A及び図4Bに示すように、研磨後の化学強化後ガラス基板のイオン交換に用いる無機塩組成物として、化学強化処理に複数回使用した無機塩組成物を用いることにより、未処理(累積処理量が0m/kg)である無機塩組成物を使用した場合と比較して、化学強化後ガラス基板の深層応力を効果的に回復できることがわかる。また、図3A及び図3Bに示すように、研磨後の化学強化後ガラス基板のイオン交換に用いる無機塩組成物として、化学強化処理に複数回使用した無機塩組成物を用いることにより、未処理(累積処理量が0m/kg)である無機塩組成物を使用した場合と同程度までガラス表層の応力を回復できることがわかる。
ガラス基板と無機塩組成物との接触温度は特に制限されないが、イオン交換速度を速めて生産性を向上させる観点から、360℃以上が好ましく、370℃以上がより好ましく、380℃以上がさらに好ましい。また、塩の揮散を低減する観点から、上記接触温度は500℃以下が好ましく、490℃以下がより好ましく、480℃以下がさらに好ましい。
ガラス基板と無機塩組成物との接触時間は特に制限されないが、時間変動によるイオン交換レベルのバラつきを低減させる観点から、5分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、20分間以上がさらに好ましく、30分間以上がさらに好ましい。また、生産性を向上させる観点から8時間以下が好ましい。
ガラス基板と無機塩組成物とを接触させる条件としては、例えば、360℃以上500℃以下にて5分間以上8時間以下が好ましく、より好ましくは380℃以上450℃以下にて30分間以上2時間以下が好ましい。
前記工程(C)で用いる無機塩組成物は、ガラス基板に対する累積処理面積が0.2m/kg以上であることが好ましく、より好ましくは0.3m/kg以上、さらに好ましくは0.4m/kg以上、特に好ましくは0.5m/kg以上である。無機塩組成物のガラス基板に対する累積処理面積が0.2m/kg以上であることにより、無機塩組成物中のNaNO濃度を増加させて、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力を十分に導入できるとともに、無機塩組成物の寿命を延長できる。無機塩組成物によるガラス基板に対する累積処理面積の上限は特に制限されないが、通常累積処理面積が3.0m/kg以下であることが好ましく、より好ましくは累積処理面積が2.0m/kg以下である。
第1~5実施形態において、化学強化後ガラス基板Cの強化膨張率を前記化学強化後ガラス基板Aの強化膨張率で除した値は0.90以上1.10%以下であることが好ましい。該値を前記範囲とすることで、高品質な化学強化後ガラス基板を再生できる。該強化膨張率は、より好ましくは1.08以下、さらに好ましくは1.06%以下であり、また、より好ましくは0.92%以上、さらに好ましくは0.94%以上である。化学強化後ガラス基板Cの強化膨張率は<強化膨張率の測定>の項にて上述した式により求められる。
第1~5実施形態において、前記した工程(C)のイオン交換の前または後に該イオン交換とは別組成の無機塩組成物によりイオン交換をしてもよい。かかる態様としては、例えば、第1~5実施形態において、工程(C)のイオン交換の前に90質量%以上100質量%以下のKNO及び0質量%以上5質量%未満のNaNOを含有する無機塩組成物でイオン交換する態様が挙げられる。該別組成の無機塩組成物によるイオン交換時間は、前記した工程(A)におけるイオン交換時間の1/4以下であることが好ましく、より好ましくは1/5以下、さらに好ましくは1/6以下である。
<<工程(C’)>>
工程(C’)は、前記工程(C)の後に、前記化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、前記応力値が所定の基準を満たすか否かを判定する工程である。本実施形態においては、該応力値が所定の基準を満たさない場合、該応力値が所定の基準を満たすまで工程(B)から工程(C’)を繰り返すことが好ましい。該応力値が所定の基準を満たす場合、工程(D)を行うことが好ましい。
応力プロファイルは、散乱光光弾性応力計を用いる方法で測定できる。散乱光光弾性応力計とは、レーザ光の偏光位相差を該レーザ光の波長に対して1波長以上可変する偏光位相差可変部材と、該偏光位相差を可変されたレーザ光が強化ガラスに入射されたことにより発する散乱光を所定の時間間隔で複数回撮像し複数の画像を取得する撮像素子と、該複数の画像を用いて前記散乱光の周期的な輝度変化を測定し該輝度変化の位相変化を算出し、該位相変化に基づき前記強化ガラスの表面からの深さ方向の応力分布を算出する演算部と、を有する応力測定装置である(国際公開第2018/056121号参照)。
散乱光光弾性応力計を用いる応力プロファイルの測定方法としては、国際公開第2018/056121号に記載の方法が挙げられる。散乱光光弾性応力計としては、例えば、折原製作所製のSLP-1000、SLP-2000が挙げられる。これらの散乱光光弾性応力計に付属ソフトウェアSlpIV(Ver.2019.01.10.001)を組み合わせると高精度の応力測定が可能である。
工程(C)で得られる板厚がt[μm]である化学強化後ガラス基板Cの表面からの深さ50μmにおける圧縮応力値であるCS50は(140t-20)MPa以上であることが好ましく、より好ましくは(140t-15)MPa以上、さらに好ましくは(140t-10)MPa以上である。また、化学強化後ガラス基板Cは、ガラス表面の圧縮応力値であるCSが、750MPa以上であることが好ましく、より好ましくは800MPa以上、さらに好ましくは900MPa以上である。
工程(B)及び工程(C)は外観検査の結果及び応力値が所定の基準を満たさない化学強化後ガラス基板をリワークするための工程であり、以下、これらの工程を「研磨リワーク工程」とも総称する。
<<工程(D)>>
工程(D)は、前記工程(C’)において、化学強化後ガラス基板Cの応力値が所定の基準を満たす場合、さらに、化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、該外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定する工程である。本実施形態においては、該外観検査の結果が所定の基準を満たすまで、工程(B)から工程(D)までを繰り返し行うことが好ましい。工程(D)における外観検査は、工程(A’)における外観検査と同様である。
(形状変化)
(1)化学強化後ガラス基板Aが主表面に平面部及び曲面部を含み、且つ該主表面に垂直な方向に端面を含む化学強化後ガラス基板である実施形態
本発明の一実施形態として、化学強化後ガラス基板Aが主表面と端面とを有し、該主表面に平面部及び曲面部を含み、且つ該主表面の該平面部に垂直な方向に該端面を形成する場合、
前記端面での前記平面部との水平方向における最突出部を点A、
点Aを起点とした曲面部の不連続点を点B、
前記平面部に対する前記点Aを起点とする平行線と前記平面部に対する前記点Bを起点とする法線の交点を点C、とし、
前記工程(A)において、前記化学強化後ガラス基板Aにおける点Aと点Cの距離をX、点Bと点Cの距離をY、平面部中央の最大板厚をtとし、
前記工程(B)から前記工程(D)をn回繰り返した前記化学強化後ガラス基板Cにおける点Aと点Cの距離をX、点Bと点Cの距離をY、平面部中央の板厚をtと定義した場合に、(X/t)/(X/t)>1(Y/t)/(Y/t)>1の関係式を満たすことが好ましい。但し、nは1以上の整数である。化学強化後ガラス基板Aが主表面に平面部及び曲面部を含む場合、特に、曲面部以外の部分であるフラットな部分において外面の傷や表面異物が存在すると不良原因となりやすい。前記関係式を満たすことにより、特に平面部における外面の傷や表面異物が効果的に除去された高品質な化学強化後ガラス基板となる。
図5に本発明の一実施形態として、化学強化後ガラス基板が、主表面に平面部及び曲面部を含み、且つ主表面の平面部に垂直な方向に端面を形成する化学強化後ガラス基板51である場合における、点A~点C、X及びYを示す模式断面図を示す。
点Bについて、「点Aを起点とした曲面部の不連続点」とは、点Aを起点とした曲面部における曲線形状の傾きを微分にて求め、該傾きの変化がその点を挟み最大となる点をいう。
図5におけるX及びYは、前記工程(A)における化学強化後ガラス基板AにおいてはX及びY、前記工程(B)から前記工程(D)をn回繰り返した前記化学強化後ガラス基板CにおいてはX及びYとなる。
(2)化学強化後ガラス基板Aが主表面と端面とを有し、該主表面に平面部及び曲げ部を含む化学強化後ガラス基板である実施形態
本発明の一実施形態として、化学強化後ガラス基板Aが主表面と端面とを有し、該主表面に平面部及び曲げ部を含む場合、
前記工程(B)から前記工程(D)を1回以上繰り返した化学強化後ガラス基板Cにおいて、曲げ部の変曲点から端面までの曲げ部の最大厚みをt、平面部中央の厚みをtと定義した場合に、t/tが0.96未満であることが好ましく、より好ましくは0.94未満である。
曲げ部の変曲点とは、基板を断面に垂直な方向から観察した際、水平部分からコーナー部分に向かっていく曲線形状の接線傾きが最初に0では無くなる点であり、曲げ部の開始点を表す。図11は、本発明の一実施形態として、化学強化後ガラス基板A110が表面に平面部及び曲げ部を有する化学強化後ガラス基板である場合において、平面部中央111、曲げ部の変曲点112、端面113を表す模式断面図である。tは主表面上の曲げ部の任意の点を起点とし、その法線と主表面に板厚方向に対向する面との交点までの距離である。
従来の曲げ部を有する化学強化後ガラス基板の製造方法においては、研磨後に曲げ部を形成するため、板厚不均一となる。これに対し、本実施形態の製造方法により製造された化学強化後ガラス基板は、平面部中央の厚みが曲げ部の変曲点から端面までの曲げ部の最大厚みに比して薄いという特徴を有する。化学強化後ガラス基板が主表面に平面部及び曲げ部を含む場合、特に、曲げ部以外の部分であるフラットな部分において外面の傷や表面異物が存在すると不良原因となりやすい。前記関係式を満たすことにより、特に平面部における外面の傷や表面異物が効果的に除去された高品質な化学強化後ガラス基板となる。
本発明の一実施形態としては、主表面と端面とを有し、且つ前記主表面に平面部及び曲げ部を含む化学強化後ガラス基板であって、前記曲げ部の変曲点から前記端面までの前記曲げ部の最大厚みをt’、前記平面部中央の厚みをt’と定義した場合に、t’/t’<0.96の関係式を満たす、化学強化後ガラス基板が挙げられる。かかる実施形態におけるt1’及びt2’は前記したt1及びt2と同様である。
(工程数の設計関数)
本実施形態においては、工程(B)および工程(C)をZ[回]行い、工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板Cの一方の主面あたりの総研磨量をa[μm]、板厚公差を±b[μm]と定義した場合に、
Z[回]=(a×2)/(b×2)=a/b
の関係式を満たすことが好ましい。但し、Zは1以上の整数である。
板厚公差と研磨リワーク回数とが前記関係式を満たすことにより、外観とともに強度特性に優れる化学強化後ガラス基板を効率よく製造できる。Zの上限は特に制限されないが、典型的には10回以下であることが好ましく、より好ましくは7回以下、さらに好ましくは5回以下である。
(良品率の変化)
本実施形態においては、工程(B)および工程(C)をk回行い、k回目の工程(C)の後に得られる工程(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の良品率をP、前記工程(B)と前記工程(C)の良品歩留をaと定義した場合に、
≧Pk-1+(1-Pk-1)×a
の関係式を満たすことが好ましい。kは1以上の整数である。
良品率とは、外観基準を満たす化学強化後ガラス基板の割合(%)をいう。具体的には、良品率Pとは、工程(B)および工程(C)をk回行った際の、工程(A)において準備する化学強化後ガラス基板Aの全体数のうち、k回目の工程(C)の後に得られる外観基準を満たす化学強化後ガラス基板C数(枚)の割合(%)をいう。
図12に工程(B)および工程(C)を繰り返す回数(研磨リワーク回数)と良品率(実線)及び廃棄物量(点線)とを試算したグラフを示す。良品率が前記関係式を満たすことにより、外観とともに強度特性に優れる化学強化後ガラス基板が効率よく得られる。kの上限は特に制限されないが、典型的には10回以下であることが好ましく、より好ましくは7回以下、さらに好ましくは5回以下である。
(不良品率)
本実施形態においては、工程(A)における化学強化後ガラス基板A中の不良品率から、工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板C中の不良品率を減じた値が、10%以上であることが好ましい。該値は、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、特に好ましくは30%以上である。該値が10%以上であることにより、外観とともに強度特性に優れる化学強化後ガラス基板を効率よく製造できる。
本明細書において、不良品率とは、外観基準を満たさない化学強化後ガラス基板の割合(%)をいう。工程(A)における化学強化後ガラス基板A中の不良品率とは、工程(A)において準備する化学強化後ガラス基板Aの全体数(枚)のうち、外観基準を満たさない化学強化後ガラス基板A数(枚)の割合(%)をいう。工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板C中の不良品率とは、工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板Cの全体数(枚)のうち、外観基準を満たさないガラス基板C数(枚)の割合(%)をいう。
(応力変化)
本実施形態においては、以下の式で表されるCS50(a)に対するCS50(c)の割合が70%以上であり、且つ前記工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板CのCSが750MPa以上であることが好ましい。
(式)CS50(c)/CS50(a)×100
CS:ガラス表層における圧縮応力の値[MPa]
CS50:表面からの深さ50μmにおける圧縮応力の値[MPa]
CS50(a):工程(A)における前記化学強化後ガラス基板AのCS50[MPa]
CS50(c):工程(C)における前記化学強化後ガラス基板CのCS50[MPa]
前記CS50(a)に対するCS50(c)の割合及び工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板CのCSが前記範囲を満たすことにより、ガラス表面およびガラス深層部の両方に十分な圧縮応力を導入でき、強度に優れた化学強化後ガラス基板を製造できる。
前記CS50(a)に対するCS50(c)の割合は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。前記CS50(a)に対するCS50(c)の割合の上限は特に制限されず、100%以上であれば好ましいが、典型的には100%以下である。
工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板CのCSは750MPa以上であることが好ましく、より好ましくは800MPa以上であり、さらに好ましくは850MPa以上であり、特に好ましくは900MPa以上である。工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板CのCSの上限は特に制限されないが、典型的には1200MPa以下である。
(用途)
本実施形態で製造される化学強化後ガラス基板は、既存の成形法で成形可能な寸法を有しており、最終的には使用目的に適した大きさに切断してもよく、化学強化をする前に所定の寸法に切断されたガラス基板を化学強化したものでもよい。すなわち、タブレットPCまたはスマートフォン等のディスプレイから、自動車用ガラス、ビル若しくは住宅の窓ガラスなどの大きさまで対応できる。化学強化後ガラス基板の外縁は、矩形に限らず、円形または多角形などの形状でもよく、穴あけ加工が施されたガラスでもよい。
<リワーク方法:第6実施形態>
本発明における第6実施形態は、第1~5実施形態のいずれか1の化学強化後ガラス基板の製造方法における工程(A)及び研磨リワーク工程[工程(B)及び工程(C)]を含む、化学強化後ガラス基板のリワーク方法である。
本実施形態では、以下の式で表されるCS50(a)に対するCS50(c)の割合が70%以上であり、且つ前記工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板のCSが750MPa以上である。
(式)CS50(c)/CS50(a)×100
CS:ガラス表層における圧縮応力の値[MPa]
CS50:表面からの深さ50μmにおける圧縮応力の値を[MPa]
CS50(a):工程(A)における前記化学強化後ガラス基板AのCS50[MPa]
CS50(c):工程(C)における前記化学強化後ガラス基板CのCS50[MPa]
前記CS50(a)に対するCS50(c)の割合及び工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板CのCSが前記範囲を満たすことにより、ガラス表面およびガラス深層部の両方に十分な圧縮応力を導入でき、化学強化後ガラス基板の強度を向上できる。
前記CS50(a)に対するCS50(c)の割合は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。前記CS50(a)に対するCS50(c)の割合の上限は特に制限されず、100%を超えることが好ましいが、典型的には100%以下である。
工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板CのCSは好ましくは800MPa以上であり、より好ましくは850MPa以上であり、特に好ましくは900MPa以上である。工程(C)で得られる化学強化後ガラス基板CのCSの上限は特に制限されないが、典型的には1200MPa以下である。
<リワーク方法:第7実施形態>
本発明に係る第7実施形態は、第1~5実施形態による化学強化後ガラス基板の製造方法のいずれか1における工程(A)、工程(B)、工程(C)、工程(C’)及び工程(D)を順に含む、化学強化後ガラス基板のリワーク方法である。本実施形態においては、工程(C’)において測定する応力値が所定の基準を満たすまで工程(B)から工程(C’)までを繰り返し、工程(D)における外観検査の結果が所定の基準を満たすまで工程(B)から工程(D)までを繰り返す。
本実施形態では、工程(A)における前記化学強化後ガラス基板A中の不良品率から、前記工程(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の不良品率を減じた値が、10%以上であり、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、特に好ましくは30%以上である。該値が10%以上であることにより、化学強化後ガラス基板の強度特性とともに外観を向上できる。
<化学強化後ガラス基板:第8実施形態>
本発明の第8実施形態は、主表面と端面とを有する、リワークされた化学強化後ガラス基板である。第8実施形態において、リワークとは、以下のいずれか1の処理であることが好ましい。
(1)化学強化後ガラス基板の表面を研磨した後に、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換することを含む処理。
(2)化学強化後ガラス基板の表面を研磨した後に、90質量%以上のKNO3、0質量%以上6.0質量%以下のNaNO及び0質量%以上1.0質量%以下のLiNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換することを少なくとも1回含む処理。
<化学強化後ガラス基板の製造方法:第9実施形態>
本発明の第9実施形態は、化学強化後ガラス基板の製造方法であって、研磨工程と化学強化工程を含む再生処理を実施することで廃棄物の総排出量を削減する、化学強化後ガラス基板の製造方法である。第9実施形態における研磨工程としては、第1~5実施形態における工程(B)と同様とする。第9実施形態における化学強化工程としては、第1~5実施形態のいずれか1における工程(C)と同様とする。「廃棄物の総排出量を削減する」とは、第9実施形態における再生処理を実施しない場合と比較して、廃棄物の総排出量が低減されることをさす。
<管理方法>
装置を用いてイオン交換を行うことにより化学強化後ガラス基板を量産する場合、(1)化学強化の温度、(2)化学強化の時間、(3)無機塩組成物の組成を該装置において設定して強化するが、強化を繰り返すと、無機塩組成物中にイオン交換によりガラスから出てきたアルカリ金属イオンが溶けだすため、(3)無機塩組成物の組成(無機塩組成物中に含有される各成分の濃度)が変化し、該装置において管理しにくいという問題がある。この無機塩組成物の組成が変化する状態を「塩劣化」と呼び、塩劣化が進むと得られる化学強化後ガラス基板が期待する応力を満たさない場合がある。
以下、装置を用いて化学強化後ガラス基板を連続的に製造する一態様として、化学強化後ガラスを無機塩組成物に浸漬させて第一のイオン交換を行い、該無機塩組成物に別の化学強化後ガラス基板を浸漬させて第二のイオン交換をする場合について具体的に説明する。第一のイオン交換で使われる無機塩組成物と、第二のイオン交換で使われる無機塩組成物は、それぞれ塩劣化が確認されたタイミングで交換されることが好ましい。塩劣化は、第一のイオン交換後の化学強化後ガラス基板の応力値と第二のイオン交換後の化学強化後ガラス基板の応力値のどちらかまたは両方で判断され、無機塩組成物の交換、化学強化条件の変更が実施される。
化学強化後ガラス基板の応力値は、例えば折原製作所製SLP-1000などの使用により評価できるが、国際公開第2020/045093号に記載の方法(以下、方法Aと略す)により評価してもよい。該応力値を方法Aにより評価する場合、塩劣化や化学強化条件の情報、言い換えると第一のイオン交換及び第二のイオン交換に関する情報に基づいてパラメータを複数作成してもよい。該情報としては、例えば、第一のイオン交換及び/又は第二のイオン交換の塩劣化、第一のイオン交換及び/又は第二のイオン交換の化学強化時間、並びに第一のイオン交換及び/又は第二のイオン交換における無機塩組成物の温度に関する情報が挙げられる。該情報に基づき、パラメータを複数に分けて作成してもよい。
また、通常は、第一のイオン交換後に化学強化後ガラス基板を水洗して乾燥してから第二のイオン交換をすることが多い。一方で、第一のイオン交換後に第二のイオン交換における無機塩組成物に近い組成且つ比較的低温の無機塩組成物に浸漬(以下、共洗いと略す)した後に、水洗をせずに第二のイオン交換を実施することがある。その場合、共洗いに用いられる無機塩組成物には、第一のイオン交換の無機塩組成物に含まれるアルカリ金属イオンが溶け出すため、繰り返し使うと無機塩組成物の組成が変わるという問題がある。この状態も同様に塩劣化と呼び、無機塩組成物の交換が必要なため、共洗い後、または第二のイオン交換後の化学強化後ガラス基板の応力値で塩交換のタイミングを判断することが好ましい。その応力値は、例えば折原製作所製SLP-1000などの使用により評価できるが、方法Aにより評価してもよい。該応力値を方法Aにより評価する場合、前述した第一のイオン交換及び第二のイオン交換に関する情報(例えば、塩劣化条件、化学強化条件の情報)、すなわち共洗いの情報に基づいてパラメータを複数作成して最適なパラメータを使用してもよい。該共洗いの情報としては、例えば、共洗いにおける塩劣化の情報、共洗いにおける浸漬時間の情報、共洗いにおける無機塩組成物の温度の情報が挙げられる。該共洗いの情報に基づき、パラメータを複数に分けて最適なパラメータを作成してもよい。
研磨リワーク後における化学強化後ガラス基板の応力値は、例えば折原製作所製SLP-1000などの使用により評価できるが、方法Aにより評価してもよい。該応力値を方法Aにより評価する場合、前述した第一のイオン交換の情報、共洗いの情報、第二のイオン交換の情報、リワークの情報を元に複数のパラメータを作成してもよい。該リワークの情報としては、例えば、リワークする前の化学強化後ガラス基板の情報(例えば、応力値等)、リワークするときの加工条件及びリワーク回数などが挙げられる。
1.評価方法
本実施例における各種評価は以下に示す分析方法により行った。
(表面応力)
ガラスの表面圧縮応力値(単位:MPa)と各深さにおける圧縮応力値(CS、CSk、単位:MPa)および圧縮応力層の深さ(DOL、単位:μm)は、折原製作所社製表面応力計(FSM-6000)および折原製作所社製散乱光光弾性応力計(SLP-2000)を用いて測定した。
(引張応力)
引張応力値は(CT、単位:MPa)は、特開2016-142600号公報に開示される応力プロファイル算出方法を用いて、応力分布を測定し、その応力分布を厚みで積分し、算出した。
(表面傷)
暗室環境で照度5000ルクスの照明下、ガラスと判定者の目との距離を50cmとし、ガラス外観観察をした際に、傷などの規格判定上異常と判定されるかによって、判別した。ここでは、上記環境下で、0.1mmの幅を持つスクラッチ、もしくは0.05mm~0.1mmの幅かつ1mm以上の長さを持つスクラッチと判定できる傷を異常と判定した。
2.化学強化後ガラスの製造
<実験例1:研磨リワークにおける化学強化条件と応力の関係>
[工程(A)]
フロート法により製造された下記に示す組成(酸化物基準のモル百分率表示)のガラスaであり、50mm×50mm×0.65mmのガラス板を、下記イオン交換条件により、表層に圧縮応力層を形成させた化学強化後ガラス基板Aを用意した。
ガラスa:SiO66%、Al11%、Li 11%、Na 6%、K 1.5%、MgO 3%、CaO 0.2%およびZrO1.3%
(イオン交換条件)
第1段階のイオン交換として、410℃に保持された100質量%の硝酸ナトリウムからなる無機塩組成物の溶融塩浴中に、上記のガラス板を2.5時間浸漬した。その後、ガラス板を浴槽から取り出し、ガラス板の表面を洗浄し、乾燥させた。
第2段階のイオン交換として、乾燥後のガラス板を、440℃に保持された、99質量%の硝酸カリウム及び1質量%の硝酸ナトリウムからなる無機塩組成物の溶融塩浴中に1時間浸漬した。その後、得られた化学強化後ガラス基板Aを浴槽から取り出し、化学強化後ガラス基板Aの表面を洗浄し、乾燥させた。
[工程(B)]
研磨スラリーとして、平均粒子直径(d50)が1.2μmの酸化セリウムを水に分散させて比重1.07のスラリーを作製した。次に、得られたスラリーを用いて、ショアA硬度が58°、100g/cmでの沈み込み量が0.11mmの不織布研磨パッドを用いて、研磨圧9.8kPaの条件で、工程(A)で準備した化学強化後ガラス基板Aの表面を各々3μm研磨したガラス基板を得た。
[工程(C)]
工程(B)で表面を研磨したガラス基板を下記条件によりイオン交換して、化学強化後ガラス基板Cを得た。
(イオン交換条件)
イオン交換として、乾燥後のガラス板を、440℃に保持された、下記に示す組成の無機塩組成物の溶融塩浴中に1時間浸漬した。その後、ガラス板を浴槽から取り出し、ガラス板の表面を洗浄し、乾燥させた。
例1:NaNO 1質量%およびKNO 99質量%
例2:NaNO 2質量%およびKNO 98質量%
例3:NaNO 3質量%およびKNO 97質量%
上記で得られた化学強化後ガラス基板Cについて圧縮応力を測定した結果を図2Bおよび図2Cに示す。図2Bは、CSを縦軸とし、該無機塩組成物中のNaNO濃度を横軸とする図である。図2Cは、CS50を縦軸とし、該無機塩組成物中のNaNO濃度を横軸とする図である。
図2Cに示すように、研磨後のイオン交換に用いる無機塩組成物中のNaNO濃度が増加すると、CS50が増加した。一方で、図2Bに示すように、研磨後のイオン交換に用いる無機塩組成物中のNaNO濃度が増加するに伴い、CSが減少した。これらの結果から、無機塩組成物中のNaNO濃度を最適範囲(1.0質量%以上6.0質量%以下)とすることにより、CSとCS50とを両立させて、ガラス表面およびガラス深層部の両方に十分な圧縮応力を導入でき、化学強化後ガラス基板の強度を向上できることがわかった。
<実験例2:研磨リワーク前後の応力プロファイル変化>
[工程(A)]
実験例1の工程(A)と同様にして、表層に圧縮応力層を形成させた化学強化後ガラス基板Aを用意した。
[工程(B)]
実験例1の工程(B)と同様の条件にて、工程(A)で得られた化学強化後ガラス基板Aの一方の主面の表面を3μm、5μmまたは8μmそれぞれ研磨したガラス基板を得た。
[工程(C)]
工程(B)で得られたガラス基板について、イオン交換を行い、440℃に保持された、下記に示す無機塩組成物の溶融塩浴中に1時間浸漬し、化学強化後ガラス基板Cを得た。その後、ガラス板を浴槽から取り出し、ガラス板の表面を洗浄し、乾燥させた。
NaNO非含有塩:ガラス基板の累積処理量が0m/kgであり、KNO質量98%及びNaNO質量2%である無機塩組成物
NaNO含有塩:1段目のイオン交換(NaNO 100質量%、410℃にて2.5時間)および2段目のイオン交換(KNO 99質量%及びNaNO 質量1%、440℃にて1時間)を経て、ガラス基板の累積処理量が0.5m/kgである無機塩組成物。
得られた化学強化後ガラス基板Cの圧縮応力を測定した結果を図3AおよびB、図4AおよびBに示す。図3Aおよび図4Aは、NaNO非含有塩を用いて研磨後のイオン交換を行って得られた化学強化後ガラス基板Cの応力プロファイルを示す図である。図3Bおよび図4Bは、NaNO含有塩を用いて研磨後の化学強化処理を行って得られた化学強化後ガラス基板Cの応力プロファイルを示す図である。
図4Bに示すように、研磨後のガラス基板のイオン交換に用いる無機塩組成物としてNaNO含有塩を用いることにより、NaNO非含有塩を使用した場合(図4A)と比較して、化学強化後ガラス基板の深層応力を効果的に回復できることがわかった。
<実験例3:良品率の変化の試算>
工程(B)および工程(C)をk回行い、工程(C)において得られる化学強化後ガラス基板C中の良品率をP、前記工程(B)と前記工程(C)の良品歩留をaと定義した場合に、下記の関係式を満たすことがわかった。
≧Pk-1+(1-Pk-1)×a
良品率とは、下記の通り、外観基準を満たす化学強化後ガラス基板の割合(%)をいう。
良品率P:工程(B)および工程(C)をk回行い、工程(A)とk回の工程(B)と工程(C)のいずれかの工程を実施した化学強化後ガラス基板の全体数のうち、外観基準を満たすガラス基板C数(枚)の割合(%)
図12に工程(B)および工程(C)を行なう回数(研磨リワーク回数)と、良品率(実線)及び廃棄物量(点線)と、を試算したグラフを示す。図12の良品率はa=0.6、Po=0.6の場合の推移を示している。図12では良品率は百分率で表記している。また、図12に示す廃棄物量は、板厚0.65mmの5インチサイズのスマートフォン用カバーガラスを50万セル生産する場合の廃棄物量を試算したものである。図12において、化学強化工程以外の不良品発生率は含まないものとする。図12に示すように、研磨リワーク回数が増える程、良品率が増加するとともに廃棄物量が減少することがわかる。
<実験例4:無機塩組成物の寿命延長の試算>
図13に、無機塩組成物の寿命延長を試算した結果を示す。図13の左図に示すように、従来のプロセスでは、無機塩組成物をイオン交換に繰り返し使用して処理面積が増加することにより、得られる化学強化後ガラス基板の強化膨張率及び深層応力は低下して規格下限を下回るようになり、廃棄されていた(塩ライフエンド)。一方、図13の右図に示すように、工程(B)および工程(C)を含む化学強化(研磨リワーク)により、繰り返し使用した無機塩組成物を用いてイオン交換した場合にも、得られる化学強化後ガラス基板の深層応力を回復させることができる。したがって、本発明の製造方法及びリワーク方法によれば、従来と比して、無機塩組成物をより長い寿命で使用できることがわかる。
<実験例5:主表面に平面部及び曲げ部を含み、且つ主表面の平面部に垂直な方向に端面を形成する化学強化後ガラス基板における研磨リワーク前後の形状変化>
図6に、本発明の製造方法において、工程(B)および工程(C)を行う回数(研磨リワーク回数)の増加に伴う、得られる化学強化後ガラス基板Cの端面形状の変化を示す。
図7に、X、Y、X/t、Y/t、(X/t)/(X/t)、(Y/t)/(Y/t)の値を示す。
図8に、X/t、Y/tを縦軸とし、研磨リワーク回数(回)を横軸としたグラフを示す。
図5は、点A~点C、X及びYを示す模式図である。点A~点C、X、Y及びt、並びにX、Y及びtは以下の通り定義される。
点A:前記端面での前記平面部との水平方向における最突出部
点B:点Aを起点とした曲面部の不連続点
点C:点Aを起点とした前記平面部に対する平行線と点Bを起点とした前記平面部に対する法線の交点
工程(A)において、前記化学強化後ガラス基板Aにおける点Aと点Cの距離をX、点Bと点Cの距離をY、平面部中央の最大板厚をtとする。
工程(B)から前記工程(D)をn回繰り返した前記化学強化後ガラス基板Cにおける点Aと点Cの距離をX、点Bと点Cの距離をY、平面部中央の板厚をtとする。
図6、図7及び図8に示すように、工程(B)および工程(C)を行なう回数の増加に伴い平面部中央における研磨量が増えるが、端面における研磨量は少ないため、化学強化後ガラス基板の端面において(X/t)/(X/t)>1及び(Y/t)/(Y/t)>1の関係式が成り立つことがわかる。
<実験例6:主表面に平面部及び曲げ部を含む化学強化後ガラス基板における研磨リワーク前後の形状変化>
図9に、主表面に平面部及び曲げ部を含む化学強化後ガラス基板における、研磨リワーク実施前と研磨リワーク後の平面部中央と曲げ部のコーナー部分を示す図を示す。
図10は、主表面に平面部及び曲げ部を含む化学強化後ガラス基板において、曲げ部の変曲点から端面までの曲げ部の最大厚みをt、平面部中央の厚みをtと定義した場合に、研磨リワーク前及び研磨リワーク5回後におけるt、t、t/tを示す図である。
図9及び図10に示すように、工程(B)および工程(C)を行なう回数の増加に伴い平面部中央の研磨量が増えるが、曲げ部の研磨量は少ないため、化学強化後ガラス基板において、t/t<0.96の関係式が成り立つことがわかる。
<実験例7:化学強化後ガラス基板の作製及び評価>
[工程(A)]
イオン交換する条件を下記イオン交換条件とした以外は、実験例1と同様にして、表層に圧縮応力層を形成させた化学強化後ガラス基板Aを用意した。
(イオン交換条件)
第1段階のイオン交換として、410℃に保持された60質量%の硝酸カリウム及び40質量%の硝酸ナトリウムを含有する無機塩組成物の溶融塩浴中に、上記のガラス板を160分間浸漬した。その後、ガラス板を浴槽から取り出し、ガラス板の表面を洗浄し、乾燥させた。
第2段階のイオン交換として、乾燥後のガラス板を、390℃に保持された、99質量%の硝酸カリウム、0.6質量%の硝酸ナトリウム及び0.1質量%の硝酸リチウムからなる無機塩組成物の溶融塩浴中に1時間浸漬した。その後、得られた化学強化後ガラス基板Aを浴槽から取り出し、化学強化後ガラス基板Aの表面を洗浄し、乾燥させた。
[工程(B)]
工程(B)について実験例1と同様に行い、工程(A)で準備した化学強化後ガラス基板Aの表面を各々3μm研磨したガラス基板を得た。
[工程(C)]
工程(B)で表面を研磨したガラス基板を表1及び2に示す条件によりイオン交換して、化学強化後ガラス基板Cを得た。
得られた化学強化後ガラス基板を以下の方法により評価した。結果を表1及び2に示す。表1及び2において、例8~10は比較例、例1~7及び例13~17は実施例、例11、12、18及び19は参考例である。
[散乱光光弾性応力計による応力測定]
散乱光光弾性応力計(折原製作所製SLP-2000)を用いて、国際公開第2018/056121号に記載の方法により化学強化後ガラス基板の応力を測定した。また、散乱光光弾性応力計(折原製作所製SLP-2000)の付属ソフト[SlpV(Ver.2019.11.07.001)]を用いて、応力プロファイルを算出した。
応力プロファイルを得るために使用した関数はσ(x)=[a×erfc(a×x)+a×erfc(a×x)+a]である。a=1~5)はフィッティングパラメータであり、erfcは相補誤差関数である。相補誤差関数は下記式によって定義される。
Figure 2023168218000001
本明細書における評価では、得られた生データと上記の関数の残差二乗和を最小化することで、フィッティングパラメータを最適化した。測定処理条件は単発とし、測定領域処理調整項目は表面でエッジ法を、内部表面端は6.0μmを、内部左右端は自動を、内部深部端は自動(サンプル膜厚中央)を、そして位相曲線のサンプル厚さ中央迄延長はフィッティング曲線を、それぞれ指定選択した。
得られた応力プロファイルから、上述した方法によりCT、CS50、CS90、DOC、CS、DOL-tail、表層傾きの値を算出した。
表1及び2において、各表記は以下を表す。
CT:SLP-2000により測定した引張応力の最大値(MPa)
CS50:表面からの深さ50μmにおける圧縮応力値(MPa)
CS90:表面からの深さ90μmにおける圧縮応力値(MPa)
DOC:SLP-2000により測定した圧縮応力深さ(μm)
CS:FSMにより測定したガラス表面における圧縮応力(MPa)
DOL-tail:FSMにより測定した圧縮応力層深さ(μm)(曲線近似)
表層傾き:表面からDOL-tailまでにおける応力プロファイルの平均傾きの絶対値(MPa/μm)
CS50リワーク前後比率:工程(A)が共通しており、工程(B)、工程(C)を行っていない参考例に対するCS50と実施例のCS50の比
CS90リワーク前後比率:工程(A)が共通しており、工程(B)、工程(C)を行っていない参考例に対するCS90と実施例のCS50の比
CTリワーク前後比率:工程(A)が共通しており、工程(B)、工程(C)を行っていない参考例に対するCTの比
[強化膨張率]
強化膨張率は下記式により求めた。
強化膨張率(%)={[(化学強化後ガラス基板Cの寸法)-(化学強化前ガラス基板の寸法)]/(化学強化前ガラス基板の寸法)]}×100
寸法測定には、ニコン社製画像測定装置であるNEXIV(VMZ―S3020)を用いた。

Figure 2023168218000002

Figure 2023168218000003
表1及び2に示すように、本発明に係る製造方法である例1~7及び例13~17によれば、参考例である例11、12、18及び19、並びに比較例である例8~10に比して、ガラス表層部だけでなくガラス深層部における圧縮応力値を効果的に増加できることが分かった。
本発明の化学強化後ガラス基板の製造方法およびリワーク方法によれば、化学強化後に所望の外観基準を満足しない化学強化後ガラス基板を、外観とともに強度特性に優れた、高品質な化学強化後ガラス基板として再生できる。これにより、歩留まりを向上するとともに、産業廃棄物の減少に寄与できる。本発明の化学強化後ガラス基板の製造方法およびリワーク方法により得られる化学強化後ガラス基板は、携帯電話、デジタルカメラまたはタッチパネルディスプレイ等のディスプレイ用カバーガラスに使用できる。
51,110 化学強化後ガラス基板
111 平面部中央
112 曲げ部の変曲点
113 端面

Claims (24)

  1. (A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
    (B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
    (C)前記ガラス基板を、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法。
  2. (A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
    (B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
    (C)前記ガラス基板を、90質量%以上のKNO3、0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法。
  3. (A)主表面と端面とを有する化学強化用ガラス基板に1次無機塩組成物を接触させて、主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
    (B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
    (C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法であって、
    前記(A)における前記1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合には、前記(C)における前記2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とし、
    前記(A)における前記1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合には、前記(C)における前記2次無機塩組成物を90質量%以上のKNO及び0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物とする、化学強化後ガラス基板の製造方法。
  4. (A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
    (B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
    (C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法であって、引張応力CT(MPa)について、
    前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.20以下である、化学強化後ガラス基板の製造方法。
  5. (A)主表面と端面とを有する化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
    (B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、並びに
    (C)前記ガラス基板を、2次無機塩組成物に接触させるイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含む化学強化後ガラス基板の製造方法であって、引張応力CT(MPa)について、
    前記(A)における前記1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg未満である場合に、前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.10以下であり、
    前記(A)における前記1次無機塩組成物の累積処理面積が0.2m/kg以上である場合に、前記化学強化後ガラス基板CのCTを化学強化後ガラス基板AのCTで除した値が0.90以上1.20以下である、化学強化後ガラス基板の製造方法。
  6. 下記で定義される前記化学強化後ガラス基板Cの強化膨張率を化学強化後ガラス基板Aで除した値が0.90以上1.10以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
    強化膨張率(%)={[(化学強化後ガラス基板Cの寸法)-(化学強化前ガラス基板の寸法)]/(化学強化前ガラス基板の寸法)]}×100
  7. 前記(A)と前記(B)との間に、
    (A’)前記化学強化後ガラス基板A表面の外観検査を行うこと、を含み、
    前記外観検査の結果が所定の基準を満たさないと判定された場合、前記(B)を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  8. 前記(B)及び(C)を繰り返し行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  9. 前記(C)の後に、(C’)前記化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、前記応力値が所定の基準を満たすか否かを判定すること、を含み、
    前記応力値が所定の基準を満たすまで、前記(B)から前記(C’)までを繰り返し行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  10. 前記(C’)において、前記応力値が所定の基準を満たす場合、さらに、
    (D)前記化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、前記外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定すること、を含み、
    前記外観検査の結果が所定の基準を満たすまで、前記(B)から前記(D)までを繰り返し行う、請求項9に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  11. 前記(B)において、前記化学強化後ガラス基板Aの主表面あたりの研磨量が0.5μm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  12. 前記化学強化後ガラス基板Aが前記主表面と前記端面とを有し、前記主表面に平面部及び曲面部を含み、且つ前記主表面の前記平面部に垂直な方向に前記端面を形成し、
    前記端面での前記平面部との水平方向における最突出部である点Aと、
    前記点Aを起点とした前記曲面部の不連続点である点Bと、
    前記平面部に対する前記点Aを起点とする平行線と前記平面部に対する前記点Bを起点とする法線の交点を点Cとし、
    前記(A)において、前記化学強化後ガラス基板Aにおける前記点Aと前記点Cの距離をX、前記点Bと前記点Cの距離をY、前記平面部中央の最大板厚をtとし、
    前記(B)から前記(D)をn回繰り返した前記化学強化後ガラス基板Cにおける前記点Aと前記点Cの距離をX、前記点Bと前記点Cの距離をY、前記平面部中央の板厚をtと定義した場合に、
    (X/t)/(X/t)>1及び
    (Y/t)/(Y/t)>1
    の関係式を満たす、請求項9に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。但し、nは1以上の整数である。
  13. 前記化学強化後ガラス基板Aが前記主表面と前記端面とを有し、且つ前記主表面に平面部及び曲げ部を含み、
    前記(B)から前記(D)を1回以上繰り返した前記化学強化後ガラス基板Cにおける、前記曲げ部の変曲点から前記端面までの前記曲げ部の最大厚みをt、前記平面部中央の厚みをtと定義した場合に、
    /t<0.96
    の関係式を満たす、請求項9に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  14. 主表面と端面とを有し、且つ前記主表面に平面部及び曲げ部を含む化学強化後ガラス基板であって、前記曲げ部の変曲点から前記端面までの前記曲げ部の最大厚みをt’、前記平面部中央の厚みをt’と定義した場合に、
    ’/t’<0.96
    の関係式を満たす、化学強化後ガラス基板。
  15. 前記(B)および前記(C)をZ[回]行い、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板Cにおける一方の主面あたりの総研磨量をa[μm]、板厚公差を±b[μm]と定義した場合に、
    Z[回]=a/b
    の関係式を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。Zは1以上の整数である。
  16. 前記(B)および前記(C)をk回行い、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の良品率をP、前記(B)と前記(C)の良品歩留をaと定義した場合に、
    ≧Pk-1+(1-Pk-1)×a
    の関係式を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。kは1以上の整数である。
  17. 前記(A)における前記化学強化後ガラス基板A中の不良品率から、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の不良品率を減じた値が、10%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  18. ガラス表層における圧縮応力の値をCS[MPa]、ガラス表面から深さ50μmにおける圧縮応力の値をCS50[MPa]、
    前記(A)における前記化学強化後ガラス基板AのCS50[MPa]をC50(a)、前記(C)における前記化学強化後ガラス基板CのCS50[MPa]をCS50(c)とした場合に、
    (式)CS50(c)/CS50(a)×100
    で表されるCS50(a)に対するC50(c)の割合が70%以上であり、且つ
    前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板CのCSが750MPa以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  19. 前記(C)における前記無機塩組成物は、前記ガラス基板に対する累積処理面積が0.2m/kg以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  20. 前記(C)における前記イオン交換の条件が、360℃以上450℃以下にて5分間以上8時間以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化学強化後ガラス基板の製造方法。
  21. 化学強化後ガラス基板のリワーク方法であって、
    (A)主表面と端面とを有する前記化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
    (B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、および
    (C)前記研磨したガラス基板を、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得ること、を含み、
    ガラス表層における圧縮応力の値をCS[MPa]、表面からの深さ50μmにおける圧縮応力の値をCS50[MPa]、
    前記(A)における前記化学強化後ガラス基板AのCS50[MPa]をCS50(a)、前記(C)における前記化学強化後ガラス基板CのCS50[MPa]をCS50(c)とした場合に、(式)CS50(c)/CS50(a)×100で表されるCS50(a)に対するCS50(c)の割合が70%以上であり、且つ
    前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板のCSが750MPa以上である、化学強化後ガラス基板のリワーク方法。
  22. 化学強化後ガラス基板のリワーク方法であって、
    (A)主表面と端面とを有する前記化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
    (B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、
    (C)前記研磨したガラス基板を、90質量%以上のKNO及び1.0質量%以上6.0質量%以下のNaNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を行い、化学強化後ガラス基板Cを得ることおよび
    (C’)前記化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、前記応力値が所定の基準を満たすか否かを判定すること、を含み、
    前記(C’)において前記応力値が所定の基準を満たすまで、前記(B)および前記(C’)までを繰り返し、且つ
    前記応力値が所定の基準を満たす場合、(D)前記化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、前記外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定することを含み、
    前記外観検査の結果が所定の基準を満たすまで、前記(B)から前記(D)までを繰り返し行い、
    前記(A)における前記化学強化後ガラス基板A中の不良品率から、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の不良品率を減じた値が、10%以上である、化学強化後ガラス基板のリワーク方法。
  23. 化学強化後ガラス基板のリワーク方法であって、
    (A)主表面と端面とを有する前記化学強化後ガラス基板Aを準備すること、
    (B)前記化学強化後ガラス基板Aの表面を研磨したガラス基板を得ること、
    (C)前記研磨したガラス基板を、90質量%以上のKNO3、0質量%以上5.0質量%未満のNaNO及び0質量%以上1.0質量%未満のLiNOを含有する無機塩組成物に接触させてイオン交換を少なくとも1回行い、化学強化後ガラス基板Cを得ることおよび
    (C’)前記化学強化後ガラス基板Cの応力値を測定し、前記応力値が所定の基準を満たすか否かを判定すること、を含み、
    前記(C’)において前記応力値が所定の基準を満たすまで、前記(B)および前記(C’)までを繰り返し、且つ
    前記応力値が所定の基準を満たす場合、(D)前記化学強化後ガラス基板Cの外観検査を行い、前記外観検査の結果が所定の基準を満たすか否かを判定することを含み、
    前記外観検査の結果が所定の基準を満たすまで、前記(B)から前記(D)までを繰り返し行い、
    前記(A)における前記化学強化後ガラス基板A中の不良品率から、前記(C)で得られる前記化学強化後ガラス基板C中の不良品率を減じた値が、10%以上である、化学強化後ガラス基板のリワーク方法。
  24. 化学強化後ガラス基板の製造方法であって、研磨すること及び化学強化することを含む再生処理により、廃棄物の総排出量を削減する、化学強化後ガラス基板の製造方法。
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