JP2023161228A - 車両制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】搭載した原動機の特性毎に制御パラメータを変更することなく、旋回時において、適正な車両姿勢制御を行う。【解決手段】本発明は、車両(1)の姿勢を制御する車両制御装置であって、走行中の車両の車輪速を検出する車輪速センサ(24)と、車両の車輪に制動力を作用させるブレーキアクチュエータ(8)と、車両の走行状態に基づいて、ブレーキアクチュエータに制御信号を送り、制動力を発生させるブレーキ制御装置(14a)と、を有し、ブレーキ制御装置は、車両の旋回走行時において、車両の内側後輪の車輪速が、外側後輪の車輪速よりも高くなったとき、車両の内側後輪に制動力を付与して、車両の車体内側後部の浮き上がりを抑制する車両姿勢制御を実行し、車両姿勢制御において、車両の前後輪スリップ比が大きい場合には、前後輪スリップ比が小さい場合よりも、車両の内側後輪に付与する制動力を大きくすることを特徴としている。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年12月16日 世界各国における車両販売による公開
本発明は、車両制御装置に関し、特に、車両の姿勢を制御する車両制御装置に関する。
特開2020-20020号公報(特許文献1)には、車両姿勢制御装置が記載されている。この車両姿勢制御装置は、旋回中の車両の横加速度等に基づいて、車両姿勢制御、旋回制御、及び横滑り防止制御を実行するように構成されている。特に、車両姿勢制御として、車両姿勢制御装置は、旋回中の車両の内側後輪に制動力を付与することにより、車体の内側後部の浮き上がりを抑制し、旋回走行時に適正なダイアゴナルロールを発生させている。さらに、車両姿勢制御装置は、ブレーキLSD(Limited-Slip Differential Gear)制御として、旋回中の車両の内側後輪の車輪速が外側後輪の車輪速を超えたとき、内側後輪に制動力を付与し、内側後輪のスリップを抑制している。これにより、旋回時における車体の内側後部の浮き上がりを抑制し、車両の旋回を安定させている。
特開2020-20020号公報
しかしながら、特許文献1記載の車両姿勢制御装置においては、搭載しているエンジンのトルクによってブレーキLSD制御の効果が異なり、高トルクのエンジンを搭載した場合に十分な効果が得られないという問題がある。即ち、車両の車体が同一であっても、低トルクエンジンを搭載したモデルでは内側後輪のスリップが起こりにくいのに対し、高トルクエンジンを搭載したモデルではスリップが発生しやすい。このため、低トルクエンジンを搭載したモデルと、高トルクエンジンを搭載したモデルに対し、同一のブレーキLSD制御を行い、内側後輪に同一の制動力を付与したのでは、車輪のスリップを抑制して、車体の内側後部の浮き上がりを十分に抑制することができない。
そこで、適正なブレーキLSD制御の効果が得られるよう、車両に搭載する原動機(エンジン)のトルクに応じて、ブレーキLSD制御のパラメータを変更することが考えられる。しかしながら、同一の車体に搭載されうる原動機の種類は多岐に亘り、搭載する原動機毎にブレーキLSD制御の適正な制御パラメータを求め、それを各車両に搭載することは極めて困難であるという問題がある。
従って、本発明は、車体に搭載した原動機の特性毎に制御パラメータを変更することなく、旋回時において、適正な車両姿勢制御を行うことができる車両姿勢制御装置を提供することを目的としている。
上述した課題を解決するために、本発明は、車両の姿勢を制御する車両制御装置であって、走行中の車両の車輪速を検出する車輪速センサと、車両の車輪に制動力を作用させるブレーキアクチュエータと、車両の走行状態に基づいて、ブレーキアクチュエータに制御信号を送り、制動力を発生させるブレーキ制御装置と、を有し、ブレーキ制御装置は、車両の旋回走行時において、車両の内側後輪の車輪速が、外側後輪の車輪速よりも高くなったとき、車両の内側後輪に制動力を付与して、車両の車体内側後部の浮き上がりを抑制する車両姿勢制御を実行し、車両姿勢制御において、車両の前後輪スリップ比が大きい場合には、前後輪スリップ比が小さい場合よりも、車両の内側後輪に付与する制動力を大きくすることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、車両の旋回走行中に、内側後輪の車輪速が外側後輪の車輪速よりも高くなったことが車輪速センサによって検出されると、車両姿勢制御として、ブレーキ制御装置がブレーキアクチュエータに制御信号を送り、車両の内側後輪に制動力を付与し、車両の車体内側後部の浮き上がりを抑制する。この車両姿勢制御において、車両の前後輪スリップ比が大きい場合には、前後輪スリップ比が小さい場合よりも、車両の内側後輪に付与する制動力が大きくされる。
本件発明者は、車両の旋回走行中に、内側後輪の車輪速が外側後輪の車輪速よりも高くなったとき、内側後輪に制動力を付与する車両姿勢制御において、同一の車体であっても、搭載している原動機が高トルクである場合と低トルクである場合で制御の効果が異なることを見出した。即ち、高トルクの原動機を搭載したモデルでは、車両の内側後輪に同一の制動力を付与したとしても、低トルクの原動機を搭載したモデルよりも、車両姿勢制御の効果が低下することが見出された。本件発明者は、鋭意研究の結果、これは同一の車体であっても、高トルクの原動機を搭載したモデルでは内側後輪のスリップが大きくなり、これに同じ制動力を付与しても車両姿勢制御の効果が弱められてしまうことを突き止めた。このため、原動機が高トルクのモデルと低トルクのモデルで、同等の車両姿勢制御の効果を得るには、搭載する原動機ごとに制御パラメータの異なる制御装置が必要になってしまう。
上記のように構成された本発明によれば、車両姿勢制御において、車両の前後輪スリップ比が大きい場合には、前後輪スリップ比が小さい場合よりも、車両の内側後輪に付与する制動力が大きくされる。これにより、高トルクの原動機を搭載したモデルと、低トルクの原動機を搭載したモデルで、異なるブレーキ制御装置を準備することなく、同等の車両姿勢制御の効果を得ることができる。即ち、前後輪スリップ比には、搭載された原動機のトルクが反映されるため、前後輪スリップ比に応じて付与する制動力が変更されるようにブレーキ制御装置を構成しておくことにより、共通のブレーキ制御装置で、低トルクの原動機を搭載したモデルにも、高トルクのモデルにも対応することが可能になる。このため、本発明によれば、車体に搭載した原動機の特性毎に制御パラメータを変更することなく、旋回時において、適正な車両姿勢制御を行うことができる。
本発明において、好ましくは、前後輪スリップ比は、左右の後輪のうちの車輪速が遅い方の後輪、及び左右の前輪のうちの車輪速が遅い方の前輪の車輪速に基づいて計算される。
このように構成された本発明によれば、左右の後輪のうちの車輪速が遅い方の後輪、及び左右の前輪のうちの車輪速が遅い方の前輪の車輪速に基づいて前後輪スリップ比が計算されるので、原動機のトルク特性を正確に前後輪スリップ比に反映させることができ、原動機のトルク特性を正確に車両姿勢制御に反映させることができる。
本発明において、好ましくは、車両姿勢制御において、車両の内側後輪に付与される制動力は、基本指令値に所定のゲインを乗じることにより計算され、所定のゲインは、前後輪スリップ比が約0.2以上になると増大し、前後輪スリップ比が約0.5以上で一定値となる。
このように構成された本発明によれば、前後輪スリップ比が約0.2以上になるとゲインが増大されるので、高トルクの原動機が搭載されている場合に、内側後輪に付与する制動力が大きくなり、十分な車両姿勢制御の効果を得ることができる。また、前後輪スリップ比が約0.5以上でゲインが一定値になるので、内側後輪に付与する制動力が大きくなりすぎて、車両の車体内側後部の浮き上がりを抑制する車両姿勢制御ではなく、車両の旋回挙動自体に影響を与えてしまうのを防止することができる。
本発明の車両姿勢制御装置によれば、車体に搭載した原動機の特性毎に制御パラメータを変更することなく、旋回時において、適正な車両姿勢制御を行うことができる。
本発明の実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両の全体構成を示すレイアウト図である。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両の車体に対して後輪の車軸を懸架する構造を車両後方から模式的に示す図である。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両の車体のロール軸を示す図である。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両の後輪に制動力を作用させた場合において、車体に作用する力を模式的に説明する図である。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両に搭載されているPCM、及びこれに接続されているセンサ等を示すブロック図である。 本発明の実施形態による車両制御装置の作用を示すフローチャートである。 図6に示すフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。 本発明の実施形態による車両制御装置の作用を示すタイムチャートである。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置において、車輪速差の閾値を設定するためのマップである。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置において、基本指令値に乗じられる操舵角ゲインのマップである。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置において、基本指令値に乗じられるアクセル開度変化速度ゲインのマップである。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置において、基本指令値に乗じられるアクセル開度ゲインのマップである。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置において、基本指令値に乗じられる横加速度ゲインのマップである。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置において、基本指令値に乗じられる車速ゲインのマップである。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置において、ブレーキLSD制御による基本指令値に乗じられる差回転ゲインのマップである。 本発明の実施形態による車両姿勢制御装置において、ブレーキLSD制御による基本指令値に乗じられる前後スリップ比ゲインのマップである。 所定経路の旋回走行を行った車両において測定された前後スリップ比と、左右の後輪の間の車輪速差との関係の一例を示したグラフである。
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両について説明する。図1は、本発明の実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両の全体構成を示すレイアウト図である。
図1において、符号1は、本実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両を示す。
車両1の車体前部には操舵輪である左右の前輪2a、2bが夫々設けられ、車体後部には駆動輪である左右の後輪2c、2dが夫々設けられている。これら車両1の前輪2a、2b、後輪2c、2dは、車体1aに対して車輪懸架装置であるサスペンション3により夫々支持されている。また、車両1の車体1a前部には、後輪2c、2dを駆動する原動機であるエンジン4が搭載されている。本実施形態においては、エンジン4は、ガソリンエンジンであるが、原動機としてディーゼルエンジンなどの内燃エンジンや、電力により駆動されるモータを使用することもできる。また、本実施形態において、車両1は、車体1a前部に搭載されたエンジン4により、トランスミッション4a、プロペラシャフト4b、ディファレンシャルギア4cを介して後輪2c、2dが駆動される所謂FR車である。また、好ましくは、ディファレンシャルギア4cには、機械式の差動制限装置4d(LSD:Limited-Slip Differential Gear)を設けておく。差動制限装置4dを設けておくことにより、片側の後輪の接地性が下がった場合でも、もう片方の後輪に或る程度大きな駆動力が作用させることができる。しかしながら、車体後部に搭載されたエンジンにより後輪を駆動する所謂RR車や、四輪駆動車等、任意の駆動方式の車両に本発明を適用することができる。
また、車両1には、ステアリングホイール6の回転操作に基づいて前輪2a、2bを操舵する操舵装置7が搭載されている。
さらに、車両1は、各車輪に設けられたブレーキアクチュエータであるブレーキ装置8のホイールシリンダやブレーキキャリパ(図示せず)にブレーキ液圧を供給するブレーキ制御システムを備えている。ブレーキ制御システムは、各車輪に設けられたブレーキ装置8において制動力を発生させるために必要なブレーキ液圧を生成する液圧ポンプ10を備えている。液圧ポンプ10は、例えばバッテリ(図示せず)から供給される電力で駆動され、ブレーキペダル(図示せず)が踏み込まれていないときであっても、各ブレーキ装置8において制動力を発生させるために必要なブレーキ液圧を生成することが可能となっている。
また、ブレーキ制御システムは、各車輪のブレーキ装置8への液圧供給ラインに設けられた、液圧ポンプ10から各車輪のブレーキ装置8へ供給される液圧を制御するためのバルブユニット12(具体的にはソレノイド弁)を備えている。例えば、バッテリからバルブユニット12への電力供給量を調整することによりバルブユニット12の開度が変更される。また、ブレーキ制御システムは、液圧ポンプ10から各車輪のブレーキ装置8へ供給される液圧を検出する液圧センサ13を備えている。液圧センサ13は、例えば各バルブユニット12とその下流側の液圧供給ラインとの接続部に配置され、各バルブユニット12の下流側の液圧を検出し、検出値をPCM(Power-train Control Module)14に出力する。
さらに、ブレーキ制御システムは、PCM14から入力された制動力指令値や液圧センサ13の検出値に基づき、各車輪のホイールシリンダやブレーキキャリパのそれぞれに独立して供給する液圧を算出し、それらの液圧に応じて液圧ポンプ10の回転数やバルブユニット12の開度を制御する。
次に、図2乃至図4を参照して、本実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両の懸架構造、及び車体のロール軸について説明する。
図2は、車両1の車体1aに対して後輪2c、2dの車軸を懸架する構造を車両後方から模式的に示す図である。図3は、本実施形態による車両姿勢制御装置を搭載した車両の車体のロール軸を示す図である。図4は、車両の後輪に制動力を作用させた場合において、車体に作用する力を模式的に説明する図である。
図2に示すように、車両1の左側の後輪2cの車軸2eは、サスペンション3によって、車両1の車体1aに対して支持されている。具体的には、図2に示す例では、サスペンション3を構成するリンク機構であるアッパーアーム3a及びロアアーム3bにより、後輪2cの車軸2eが支持されている。このように、車体1aと後輪2cを接続するアッパーアーム3a、ロアアーム3bを延長した線は、交点P1で交わる。この交点P1と後輪2cの接地点P2とを結ぶ直線は、車体1aの幅方向中央を通る鉛直面Aと、点PrRにおいて交差する。この点PrRは、車体1aの後部におけるローリング運動の中心点であり、車体1aの後部は、この点PrRを中心にローリング運動する。なお、車両1は左右対称であるため、右側の後輪2dについてローリング運動の中心点を求めた場合も、同一の点PrRがローリング運動の中心点となる。また、車両1の前輪2a、2bを懸架しているサスペンション3に対しても、同様にしてローリング運動の中心点PrFを求めることができる。
図3は、このようにして求められた車体1aの後部におけるローリング運動の中心点PrR、及び前部におけるローリング運動の中心点PrFを、車両1の側方から投影した図である。これら車体1aの後部のローリング運動の中心点PrRと前部の中心点PrFを結ぶ軸線Arが、車体1aがローリング運動する際の中心軸線となる。従って、車両1の車体1aは、基本的に、このロール軸Arを中心にローリング運動する。また、図3に示すように、本実施形態においては、車両1のロール軸Arは、車両1の前側が下がるように前傾している。このように、車両1のロール軸Arを前傾させておくことにより、車両1が旋回運動する際に、適正なダイアゴナロール自然に生成することができ、車両1の旋回性能を向上させることができる。なお、本実施形態において、車両1のロール軸Arは前傾されているが、ロール軸が前傾していない車両に本発明を適用することもできる。
次に、図4を参照して、車両1の後輪2c、2dに制動力を作用させた場合に、車体1aに作用する力を説明する。
上述したように、後輪2c、2dは、サスペンション3を構成するアッパーアーム3a、ロアアーム3bにより懸架されている。車輪は種々のサスペンションにより懸架される場合があるが、何れの場合においても、車輪の車軸は、仮想的な所定の懸架中心の回りで回動するように懸架されているものとみなすことができる。図4に示すように、本実施形態においては、後輪2dは、懸架中心点PSの回りで回動するように懸架されている。なお、本実施形態においては、この懸架中心点PSは、後輪2dの車軸2eよりも上方に位置している。
ここで、後輪2dに制動力を作用させた場合において、後輪2dは、後輪2dと路面の接地点P2と、懸架中心点PSを結ぶ線分l1に沿って、車体1aを後方に引き戻す。この線分l1と路面の為す角をθalとし、路面と後輪2dの間に作用する摩擦力をFxとすると、車体1aを下方に引き下げる力の成分は、
Figure 2023161228000002
により計算することができる。さらに、車両1のホイールベースをlr、車両1の重心Gと懸架中心点PSとの間の水平距離をXrとすると、車体1aの後部を引き下げるように作用するモーメントMalは、数式(1)により計算することができる。
Figure 2023161228000003
このように、車両1の後輪2c又は2dに制動力を作用させることにより、車体1aの後部を引き下げることができる。また、本実施形態においては、懸架中心点PSの位置が後輪の車軸2eよりも高い位置にあるため、車体1aを引き下げる力が比較的大きくなる。
次に、図5を参照して、車両1に搭載されている各種センサを説明する。
図5は、車両1に搭載されているPCM14、及びこれに接続されているセンサ等を示すブロック図である。
図5に示すように、車両1には、ステアリングホイール6の回転角度を検出する操舵角センサ16、アクセルペダルの踏込量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ18、及び、車速を検出する車速センサ20が搭載され、これらの検出信号はPCM14に入力される。さらに、車両1には、車両1に作用する横加速度を検出する横加速度センサ22、車両1の各輪の車輪速を検出する車輪速センサ24と、バルブユニット12(図1)の下流側の液圧を検出する液圧センサ13が搭載され、これらの検出信号もPCM14に入力される。なお、本実施形態においては、横加速度センサ22として、横加速度を直接計測するセンサが車両1に搭載されている。しかしながら、横加速度センサ22として、必ずしも横加速度を直接計測するセンサが備えられている必要はなく、他のセンサによって計測された検出値から横加速度を求めることもできる。本明細書において、「横加速度センサ」には、横加速度を求めるために使用される任意のセンサが含まれるものとする。
一方、PCM14には、ブレーキ装置8を制御するためのブレーキ制御装置であるブレーキ制御部14aと、車両1の旋回性能を向上させるための旋回制御を実行する旋回制御部14bと、車両1の旋回時における横滑りを抑制するための横滑り防止制御を実行する横滑り防止制御部14cが内蔵されている。これらの各制御部は、後述するように、エンジン4や、ブレーキ装置8に制御信号を送って、車両姿勢制御、旋回制御、横滑り防止制御を夫々実行するように構成されている。
本発明の実施形態による車両制御装置は、PCM14に信号を送る操舵角センサ16、アクセル開度センサ18、車速センサ20、横加速度センサ22、車輪速センサ24、及び、PCM14に内蔵されたブレーキ制御部14a、及び、PCM14によって制御されるエンジン4、ブレーキ装置8等によって構成されている。なお、車両制御装置を構成する上記の構成は、適用に合わせて一部省略することができる。
これらのPCM14の各制御部は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータ(以上、図示せず)により構成される。
次に、図6乃至図17を参照して、本発明の実施形態による車両制御装置の作用を説明する。
図6は、車両制御装置の作用を示すフローチャートである。図7は、図6に示すフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。図8は、車両制御装置の作用を示すタイムチャートである。図9乃至図16は、車両制御装置による車両姿勢制御指令値を決定する際に使用される各種ゲインを示すマップである。
図6に示すフローチャートは主としてPCM14において、所定の時間間隔で繰り返し実行され、車両姿勢制御等を目的として、車両1に自動的に制動力を作用させるために実行される。
まず、図6のステップS1においては、各種センサからPCM14へ、各センサの検出信号が読み込まれる。ステップS1において読み込まれた検出信号は、ステップS2乃至S4における処理に使用される。具体的には、ステップS1においては、操舵角センサ16からの操舵角(ステアリングホイール6の回転角)[deg]の信号、アクセル開度センサ18からのアクセル開度[%]の信号、車速センサ20からの車速[km/h]の信号が読み込まれる。さらに、ステップS1においては、横加速度センサ22からの横加速度[G]の信号、車輪速センサ24からの各車輪の車輪速[m/sec]、液圧センサ13からのブレーキ液圧[MPa]の信号が読み込まれる。
次に、ステップS2においては、車両姿勢制御に基づく指令値の決定処理が実行される。具体的には、車両姿勢制御として、車両1のステアリングホイール6の切り込み操作に基づく車両1の旋回走行時において、旋回中の車両1の車体1a内側後部の浮き上がりを抑制するために、車両1の内側後輪に制動力を作用させる。例えば、図1において車両1が左に旋回した場合には、左側の後輪2cに制動力が作用され、車体1aの左側後部の浮き上がりが抑制される。ステップS2においては、サブルーチンとして図7に示すフローチャートが呼び出され、車両姿勢制御のために内側後輪に作用させる制動力の指令値が決定される。この車両姿勢制御は、車両1の旋回走行の横加速度が比較的小さい領域で実行されるものであり、内側後輪と外側後輪の輪速差に基づいて、内側後輪に比較的小さな第1の制動力を作用させるものである。従って、車両姿勢制御は、旋回中の車両のヨーレートに実質的に影響を及ぼすものではない。
好ましくは、質量約960kg以上約1060kg以下の車両1に対し、車両姿勢制御のために作用させる制動力を、液圧ポンプ10により0.02MPa以上、0.1MPa以下の液圧をブレーキ装置8に加えることにより生成する。これにより、車両1の旋回時において、車体1aの内側後方は或る加速度で浮き上がろうとするが、上記のように設定された制動力を作用させることにより、車体1aの上下方向に所定値以下の小さな減速度が与えられ、車体の内側後方の浮き上がりが抑制される。
次に、ステップS3においては、旋回制御に基づく指令値の決定処理が実行される。旋回制御は、車両1の旋回性能を向上させることを目的として、ステアリングホイール6の操舵角速度が所定値以上となったとき、PCM14の旋回制御部14bにより実行される制御である。また、この旋回制御においては、エンジン4が生成するトルクの調整、及び/又はブレーキ装置8による制動力の付与が実行される。旋回制御において車両1に制動力を付与する場合には、旋回中の車両1の内側後輪に制動力を付与することにより、車両1に旋回方向のヨーモーメントを発生させ、車両1の旋回性能を向上させている。
なお、ステップS2において指令値を決定する車両姿勢制御においても旋回中の車両1の内側後輪に制動力が付与されるが、旋回制御は車両姿勢制御よりも横加速度が比較的大きい領域で実行されるものであり、旋回制御においては、車両姿勢制御よりも大きな制動力が付与される。即ち、車両姿勢制御は、車両1の旋回時において車体1aの内側後部が浮き上がるのを抑制する目的で実行されるのに対し、旋回制御は、車両1にヨーモーメントを付与して旋回性能を向上させる目的で実行されるものであり、旋回制御とは全く異なるものである。なお、本実施形態においては、旋回制御のために作用させる制動力は、液圧ポンプ10により、車両姿勢制御よりも大きい0.2MPa以上、0.5MPa以下の液圧をブレーキ装置8に加えることにより生成される。
次に、ステップS4においては、横滑り防止制御に基づく指令値の決定処理が実行される。横滑り防止制御は、旋回時において車両1が横滑りするのを抑制、又は防止するために、PCM14の横滑り防止制御部14cにおいて実行される制御である。この横滑り防止制御は、ステアリングホイール6の操舵角、及び車両1の横加速度に基づいて実行される制御であり、旋回制御よりも横加速度が非常に大きい領域で実行される。横滑り防止制御においては、車両1の走行状態をドライバーが意図する旋回走行に復帰させるべく、車両1の各輪に適切な制動力が付与される。横滑り防止制御において付与される制動力は、旋回制御よりも非常に大きなものとなる。本実施形態においては、横滑り防止制御のために作用させる制動力は、液圧ポンプ10により、旋回制御よりも大きい20MPa以上の液圧をブレーキ装置8に加えることにより生成される。
さらに、ステップS5においては、ステップS2乃至S4において決定された指令値に基づいて、PCM14によりブレーキ装置8に制御信号が送信され、車両1に制動力が付与され、図6に示すフローチャートの1回の処理を終了する。なお、上述した車両姿勢制御、旋回制御、横滑り防止制御は、何れも車両1に制動力を作用させるものであるが、夫々異なる走行状態において実行されるものであり、通常、これらの制御が重畳的に実行されることはない。
次に、図7乃至図17を参照して、車両姿勢制御による指令値の決定処理を説明する。
上述したように、図7に示すフローチャートは、図6のフローチャートのステップS2から呼び出されるサブルーチンであり、PCM14のブレーキ制御部14aにおいて実行される。また、図8は、車両姿勢制御が実行された場合に生成される制動力の一例を示すタイムチャートである。なお、図8に示すタイムチャートは、横軸を時間とし、縦軸は上段から順に、操舵角センサ16の検出値、アクセル開度センサ18の検出値、車輪速センサ24によって検出された後輪の輪速、内側の後輪に付与される制動指令値を示している。
まず、図7のステップS11においては、車両1の左右の後輪2c、2dの輪速差が算出される。具体的には、図6のステップS1において、車輪速センサ24から読み込まれた各輪の輪速に基づいて、左右の後輪2c、2dの輪速差が算計算される。
次に、ステップS12においては、「車両姿勢制御フラグ」が「真」であるか否かが判断される。「車両姿勢制御フラグ」は、車両1が旋回を開始し、所定の条件に基づいて車両姿勢制御が開始されると「真」に変更され、切り込まれたステアリングホイール6が切り戻され、旋回が終了すると「偽」に戻されるフラグである。図8に示すタイムチャートの例では、時刻t0において車両1は旋回を開始していないので、「車両姿勢制御フラグ」は「偽」であり、図7のフローチャートの処理は、ステップS15に進む。
ステップS15においては、旋回中の車両の内側の後輪と、外側の後輪の輪速が比較され、外側の輪速が高い場合にはステップS16に進み、内側の輪速が高い場合にはステップS20に進む。後輪の各輪にスリップが発生していない場合には外側後輪の輪速が高く、内側後輪に或る程度のスリップが発生すると、この関係が逆転する。図8の例では、時刻t1においてドライバーによるステアリングホイール6の切り込みが開始され、旋回を開始した車両1の外側後輪の輪速が高く、内側後輪の輪速が低くなっており、フローチャートの処理はステップS16に進む。
ステップS16においては、外側後輪と内側後輪の車輪速の差(外側の輪速-内側の輪速)が、車輪速差の閾値である第1の輪速差Ta[m/sec]よりも大きいか否かが判断される。外側と内側の輪速差が第1の輪速差Ta以下である場合にはステップS22以下の処理が実行され、車両姿勢制御による制動力の付与が行われることなく、図7に示すフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、左右の後輪の輪速差は、車輪速センサ24の誤差によっても生じる場合があり、微小な輪速差に基づいて車両姿勢制御を介入させるとドライバーに違和感を与える虞があるので、輪速差が微小な場合には車両姿勢制御は実行されない。なお、車輪速差の閾値である第1の輪速差Taは、車両1の車速に基づいて変更される。具体的な車輪速差閾値の設定については、図9を参照して後述する。
図8の例では、時刻t1においてドライバーがステアリングホイール6の切り込み操作を行うことにより、車両1が旋回走行を開始すると、輪速差は次第に大きくなっており、輪速差が第1の輪速差Taを超えると、ステップS17以下の処理が実行されるようになる。
ステップS17においては、横加速度センサ22によって検出された横加速度が所定の第1横加速度GYa[G](1[G]=9.81[m/sec2])よりも高く、且つ車速センサ20によって検出された車速が所定の第1車速Va[km/h]よりも高いか否かが判断される。横加速度が第1横加速度GYa以下であるか、又は車速が第1車速Va以下である場合には、ステップS22以下の処理が実行され、車両姿勢制御による制動力の付与が行われることなく、図7に示すフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、横加速度又は車速が非常に低い状態では車両姿勢制御を介入させる必要性が乏しく、不要な介入によりドライバーに違和感を与える場合があるため、車両姿勢制御は実行されない。
一方、横加速度が第1横加速度GYaを超え、且つ車速が第1車速Vaを超えている場合には、ステップS18以下の処理が実行され、車両姿勢制御による制動力の付与が行われる。まず、ステップS18においては、車両姿勢制御フラグが「真」に変更される。なお、ステップS18において、車両姿勢制御フラグが「真」に変更されると、その間、図7のフローチャートにおける処理はステップS12→S13に進むようになる。そして、横加速度センサ22によって検出された横加速度が所定の第2横加速度GYb[G]よりも高い場合には、ステップS13→S14に処理が進み、PreブレーキLSD制御による制動力の付与が行われる。PreブレーキLSD制御については後述する。
次に、ステップS19においては、左右の後輪の輪速差に基づいて、車両姿勢制御の基本的な指令値Fb1[N]が決定される。即ち、内側後輪と外側後輪の車輪速の差に基づいて、車両1の内側後輪に作用させる制動力が設定される。この基本指令値Fb1は、旋回している車両1の内側の後輪に付与する制動力の指令値であり、外側の輪速Voと内側の輪速Viの差に所定の係数Cm1を乗じることにより、数式(2)により計算される。
Figure 2023161228000004
さらに、ステップS24においては、ステップS19において計算された基本指令値Fb1に種々のゲインが乗じられ、車両姿勢制御の最終的な指令値F1が決定される。なお、ステップS24において実行される具体的な処理については後述する。次いで、ステップS25においては、各制御において計算された指令値を比較し、最大の指令値が最終的な指令値として選択される。
即ち、図7に示すフローチャートにおいては、ステップS19において計算される車両姿勢制御による第1の制動力の他、後述するように、ステップS14において計算されるPreブレーキLSD制御による下限制動力、ステップS21において計算されるブレーキLSD制御による第2の制動力も計算される。ステップS26においては、計算されたこれらの制動力のうち、最大の制動力が選択されて図7に示すフローチャートの1回の処理を終了する。図7のフローチャートの処理が終了すると、処理は、図6のフローチャートのステップS5に進み、そこで選択された制動力が作用するようにブレーキ装置8が制御される。
図8に示す例においては、時刻t1においてステアリングホイール6の切り込みが開始された後、車両1の外側後輪の輪速と、内側後輪の輪速の差が増大しているため、数式(2)で計算される制動力の指令値も増大する。これにより、旋回中の車両1の内側後輪に付与される制動力も増大する(図8の時刻t1~t2)。次いで、図8の時刻t2において、ドライバーはアクセルペダルの踏み込みを開始し、これに伴い左右の後輪の輪速差は一定となる(図8の時刻t2~t3)。この間、数式(2)で計算される制動力の指令値も、最大値を維持したまま一定となる。
次に、図8の時刻t3において、ドライバーがステアリングホイール6の切り込みを終了し、保舵に移行すると、車両1は定常旋回状態となる。これに伴い、内側及び外側の後輪の輪速が上昇すると共に、内側の後輪と外側の後輪の輪速差が減少する(図8の時刻t3~t4)。これにより、数式(2)で計算される制動力の指令値も減少する。さらに、図8の時刻t4においては、内側の後輪と外側の後輪の輪速差が第1の輪速差Ta以下となるため、図7のフローチャートにおける処理は、ステップS16→S22に進むようになり、車両姿勢制御に基づく指令値はゼロとなる(図8の最下段、車両姿勢制御F1参照)。
次いで、図8の時刻t5においては、内側の後輪のスリップが大きくなり、内側の後輪と外側の後輪の輪速が逆転し、内側の後輪の輪速が高くなる。これにより、図7のフローチャートにおける処理は、ステップS15→S20に進むようになり、図7のフローチャートにおけるステップS20以下の処理が実行されるようになる。なお、内側と外側の後輪の輪速の逆転は、路面摩擦が小さい場合において発生し、路面摩擦が大きい場合には、通常、発生しない。
ステップS20においては、外側後輪と内側後輪の輪速差(内側の輪速-外側の輪速)が第2の輪速差Tb[m/sec]よりも大きいか否かが判断される。外側と内側の輪速差が第2の輪速差Tb以下である場合にはステップS22以下の処理が実行され、ブレーキLSD制御による制動力の付与が行われることなく、図7に示すフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、左右の後輪の輪速差は、車輪速センサ24の誤差によっても生じる場合があり、微小な輪速差に基づいてブレーキLSD制御を介入させるとドライバーに違和感を与える虞があるので、輪速差が微小な場合にはブレーキLSD制御は実行されない。
一方、外側後輪と内側後輪の輪速差が第2の輪速差Tbよりも大きい場合にはステップS21進み、ブレーキLSD制御に基づく第2の制動力の指令値が計算される。このように、ブレーキ制御部14aは、車両1の旋回中において、車両1の内側後輪の輪速が、外側後輪の輪速よりも速くなると、内側後輪に第2の制動力を作用させる。ブレーキLSD制御は、空転している車輪にブレーキをかけて輪速を低下させ、空転状態を回避するための制御である。即ち、図8の時刻t5~t6のように、旋回中の車両1の内側の駆動輪(本実施形態では後輪)の輪速が、外側の駆動輪の輪速を超えている状態では内側の駆動輪が空転し始めている。内側の車輪の空転により輪速差が大きくなると、ディファレンシャルギア4cを介して外側の後輪に駆動力が伝達されなくなるため、内側の車輪に制動力を付与して、内側の車輪の輪速を低下させる。
ステップS21においては、左右の後輪の輪速差に基づいて、ブレーキLSD制御の基本的な指令値Fb2[N]が決定される。このブレーキLSD制御による制動力の基本指令値Fb2は、旋回している車両1の内側の後輪に付与する制動力の指令値であり、内側の輪速Viと外側の輪速Voの差に所定の係数Cm2を乗じることにより、数式(3)により計算される。
Figure 2023161228000005
図8に示す例においては、時刻t5において、ブレーキLSD制御による基本指令値Fb2の計算が開始され、ブレーキLSD制御による制動力の付与が実行される。これにより、内側後輪の輪速が低下し、時刻t6においては内側の後輪と外側の後輪の輪速差がほぼゼロとなっている。時刻t6において輪速差がほぼゼロとなった後は、図7のフローチャートにおける処理は、ステップS15→S20→S22、又はステップS15→S16→S22のように進み、ブレーキLSD制御による基本指令値Fb2の計算は行われない(図8の最下段、時刻t6~t7、ブレーキLSD制御F2参照)。
一方、上記のように、図7のステップS18において、車両姿勢制御フラグが「真」に変更された後は、図7に示すフローチャートにおける処理は、ステップS12→S13に進むようになる。ステップS13においては、横加速度センサ22によって検出された横加速度が所定の第2横加速度GYb[G]よりも高いか否かが判断される。横加速度が第2横加速度GYb以下である場合には、ステップS15に処理が進み、PreブレーキLSD制御による制動力の付与が行われることはない。なお、本実施形態においては、第2横加速度GYbは、第1横加速度GYaよりも小さい値に設定されている。即ち、横加速度が非常に低い状態ではPreブレーキLSD制御を介入させる必要性が乏しく、不要な介入によりドライバーに違和感を与える場合があるため、PreブレーキLSD制御は実行されない。
また、横加速度が所定の第2横加速度GYb[G]よりも大きくなると、ステップS14において、PreブレーキLSD制御による制動力が計算される。ステップS14においては、基本指令値Fb3が、直近に設定された車両姿勢制御の基本指令値Fb1の最大値に所定の係数Cm3を乗じることにより、数式(4)により計算される。
Figure 2023161228000006
本実施形態においては、係数Cm3は1よりも小さい正の値に設定される。即ち、PreブレーキLSD制御による基本指令値Fb3は、車両姿勢制御の基本指令値Fb1の最大値よりも常に小さい値に設定される。図8に示す例においては、時刻t1~t2の間は、車両姿勢制御の基本指令値Fb1が上昇傾向にあるため、その最大値も随時更新され、これに係数Cm3を乗じた基本指令値Fb3の値も増加する(図8の最下段、時刻t1~t2、PreブレーキLSD制御F3参照)。次いで、時刻t2~t3の間は、車両姿勢制御の基本指令値Fb1が最大値で一定になるため、その最大値も一定値となり、これに係数Cm3を乗じた基本指令値Fb3の値も一定値となる。さらに、時刻t3以降は、車両姿勢制御の基本指令値Fb1は減少傾向になるが、その最大値が保持され、これに係数Cm3を乗じた基本指令値Fb3の値も保持される。このPreブレーキLSD制御による基本指令値Fb3は、時刻t7において旋回走行が完了し、車両姿勢制御フラグが「偽」に変更されるまで維持される(ステップS22→S23)。このように、車両姿勢制御により第1の制動力を作用させた後は、内側後輪と外側後輪の輪速差が低下した場合であっても、旋回が終了するまで所定の下限制動力以上の制動力が維持される。
なお、PreブレーキLSD制御による基本指令値Fb3は時刻t1以降計算されているが、車両姿勢制御の基本指令値Fb1に基づく車両姿勢制御の指令値F1が大きい状態では、ステップS25の最大値選択において採用されず、実際に付与されることはない。時刻t3以降、車両姿勢制御の指令値F1の値が減少し、基本指令値Fb3に基づくPreブレーキLSD制御の指令値F3を下回るようになると、PreブレーキLSD制御の指令値F3の値がステップS25において採用されるようになる。
さらに、図8の時刻t5からはブレーキLSD制御の基本指令値Fb2の計算が開始される。この基本指令値Fb2に基づくブレーキLSD制御の指令値F2が、PreブレーキLSD制御の指令値F3よりも小さい間は、ステップS25の最大値選択においてPreブレーキLSD制御の指令値F3が採用され、指令値F3に基づく制動力が付与される。また、時刻t5の後、ブレーキLSD制御の指令値F2が増大し、PreブレーキLSD制御の指令値F3を超えると、ステップS25の最大値選択においてブレーキLSD制御の指令値F2が採用され、指令値F2に基づく制動力が付与される。そして、ブレーキLSD制御の指令値F2が減少し、PreブレーキLSD制御の指令値F3を下回ると、ステップS25の最大値選択において指令値F3が採用され、指令値F3に基づく制動力が旋回が終了するまで付与される。
このように、PreブレーキLSD制御に基づく制動力は、車両姿勢制御に基づく制動力の付与が完了した後(図8の時刻t4の後)、ブレーキLSD制御により制動力の付与が開始(図8の時刻t5)されると、短時間に車両1の内側後輪に付与される制動力が変化して、ドライバーに違和感を与えるのを抑制する目的で付与されている。
また、図8に示す例においては、ドライバーは、時刻t6からステアリングホイール6の切り戻しを開始し、時刻t7において切り戻しを完了して直進状態に戻り、旋回走行を終了する。
ステップS22においては、操舵角センサ16の検出値に基づいて、ステアリングホイール6の切り戻しが完了したか否かが判断され、切り戻しが完了していない場合にはステップS24に進み、切り戻しが完了した場合にはステップS23に進む。なお、本実施形態では、ブレーキ制御部14aは、図8の時刻t1においてステアリングホイール6の切り込み操作が開始された後、時刻t7において切り戻し操作が終了するまでの間の車両姿勢制御において、約0.1MPa以下のブレーキ液圧で制動力を発生させている。
ステップS23においては、切り戻しが完了し、旋回走行を終了しているので、「車両姿勢制御フラグ」が「偽」に変更される。以降、図7に示すフローチャートが実行された場合には、ステップS12→S16に処理が進むようになる。この状態においては、PreブレーキLSD制御に基づく制動力が付与されることはない。
次に、図9を参照して、図7のステップS16において使用される車輪速差の閾値(第1の輪速差Ta)の設定を説明する。
図9は、車輪速差の閾値を設定するためのマップの一例であり、図7のステップS16における第1の輪速差Ta[m/sec]の値は、図9のマップに基づいて設定される。第1の輪速差Taの値は、車速センサ20によって検出された車両1の車速に基づいて変更される。図9に示すように、第1の輪速差Taの値は、車速0において最大であり、車速の増加と共に減少し、所定の車速V1以上でほぼ一定値となる。好ましくは、車速V1の値を時速約80~約110[km/h]程度に設定し、この値以上で、第1の輪速差Ta=約0.02~約0.05[m/sec]となるように設定する。
このように、車速に応じて車輪速差の閾値を変更することにより、車両姿勢制御の実行を開始する条件が変更される。即ち、車輪速差の閾値である第1の輪速差Taを設定しておくことにより、車速の低い領域では、図7のステップS17以下で実行される車両姿勢制御が介入しにくくなる。即ち、車速の低い領域では車輪速の測定値に誤差が生じやすく、微小な輪速差で車両姿勢制御を実行すると、測定誤差に基づいて車両姿勢制御が実行されてしまう場合がある。このような不要な車両姿勢制御の介入を抑制するために、本実施形態においては、第1の輪速差Taの値が図9に示すように設定されている。
次に、図10乃至図16を参照して、図7のステップS24において各基本指令値に乗じられるゲインを説明する。
図10は、操舵角に基づいて設定され、車両姿勢制御による基本指令値Fb1に乗じられる操舵角ゲインである。図11は、アクセル開度の変化速度に基づいて設定され、車両姿勢制御による基本指令値Fb1に乗じられるアクセル開度の変化速度ゲインである。また、図12は、アクセル開度に基づいて設定され、車両姿勢制御による基本指令値Fb1に乗じられるアクセル開度ゲインのマップである。図13は、横加速度に基づいて設定され、車両姿勢制御による基本指令値Fb1に乗じられる横加速度ゲインのマップである。図14は、車速に基づいて設定され、車両姿勢制御による基本指令値Fb1に乗じられる車速ゲインのマップである。
さらに、図15は、内側と外側の輪速差に基づいて設定され、ブレーキLSD制御による基本指令値Fb2に乗じられる差回転ゲインのマップである。図16は、車両の前輪と後輪のスリップ比に基づいて設定され、ブレーキLSD制御による基本指令値Fb2に乗じられる前後スリップ比ゲインのマップである。図17は、前後輪のスリップ比と車輪速差の関係を、パワーの大きい原動機を搭載した車両と、パワーの小さい原動機を搭載した車両で比較した一例を示す図である。
図10に示すように、操舵角ゲインGθは、操舵角θ[deg]が第1の操舵角θ1以下の領域ではゼロであり、θ1以上で増加して、所定の操舵角以上で「1」に収束するように設定されている。このように操舵角ゲインGθを設定することにより、操舵角が第1の操舵角θ1以下の領域では、実質的に車両姿勢制御が実行されず、制御の介入が行われなくなる(操舵角ゲインGθを乗じることにより、車両姿勢制御の指令値がゼロになる。)。これにより、ステアリングホイール6に対する微細な操舵により車両姿勢制御が介入して、ドライバーに違和感を与えるのを抑制している。好ましくは、第1の操舵角θ1の値を約3.5~約6.0[deg]程度に設定し、この値以下で、操舵角ゲインGθの値がゼロになるように設定する。
図11に示すように、アクセル開度変化速度ゲインGAVは、アクセル開度の変化速度AV[%/sec]がゼロ近傍の領域では「1.2」であり、変化速度の増加と共に減少して、所定の変化速度以上で「0.5」に収束するように設定されている。ここで、車両1のアクセルペダル(図示せず)を急速に踏み込む(アクセル開度変化速度大)ことにより、内側後輪と外側後輪の車輪速度差(差回転)が大きくなると、ディファレンシャルギア4cに設けられた差動制限装置4dが作動する。この差動制限装置4dの作用により、車輪速度差は急激に低下する。
このような差動制限装置4dの作用と重畳して車両姿勢制御が作動し、内側後輪に大きな制動力が作用すると、車輪速度差の変化速度が大きくなりすぎ、ドライバーに違和感を与えてしまう場合がある。そこで、アクセル開度変化速度ゲインGAVを設定することにより、アクセルペダル(図示せず)が急速に踏み込まれた状況では、車両姿勢制御により付与される制動力を低下させている。即ち、図11に示すように設定されたアクセル開度変化速度ゲインGAVを乗じることにより、アクセル開度センサによって検出されたアクセル開度の変化速度が大きいほど、旋回中の車両の内側後輪に作用させる制動力が小さくされる。これにより、車輪速度差の変化速度が大きくなりすぎてドライバーに違和感を与えるのを抑制している。
図12に示すように、アクセル開度ゲインGaは、アクセル開度[%]の増加と共に増大し、第1のアクセル開度A1で「1」となり、第1のアクセル開度A1以上では、「1」よりも大きい所定の値に収束するように設定されている。このようにアクセル開度ゲインGaを設定することにより、アクセル開度の低下と共に車両姿勢制御による指令値が小さくなる。即ち、アクセル開度の小さい領域では、車体1aの内側後部の浮き上がりは発生しにくいため、不要な車両姿勢制御の介入により、ドライバーに違和感を与えるのを抑制している。好ましくは、第1のアクセル開度A1の値を約45~約60[%]程度に設定し、この値以下では、アクセル開度ゲインGaHを「1」以下とし、この値以上では、アクセル開度ゲインGaが「1」以上となるように設定する。
図13に示すように、横加速度ゲインGlは、横加速度al[G]が第1の横加速度al1以下の領域ではゼロであり、al1以上で増加して、所定の横加速度以上で「1」に収束するように設定されている。このように横加速度ゲインGlを設定することにより、車両1の横加速度が大きい場合には、車両1の横加速度が小さい場合よりも大きな制動力が旋回中の車両1の内側後輪に作用される。また、図13のように横加速度ゲインGlを設定することにより、横加速度が第1の横加速度al1以下の領域では、実質的に車両姿勢制御の介入が行われなくなる(横加速度ゲインGlを乗じることにより、車両姿勢制御の指令値がゼロになる。)。即ち、横加速度alが微小な領域では、車体1aの内側後部の浮き上がりは発生しにくいため、不要な車両姿勢制御の介入により、ドライバーに違和感を与えるのを抑制している。好ましくは、第1の横加速度al1の値を約0.22~約0.35[G]程度に設定し、この値以下で、横加速度ゲインGlの値がゼロになるように設定する。
図14に示すように、車速ゲインGVは、車速[km/h]の増加と共に漸増し、第1の車速V1で「1」となり、第1の車速V1以上では、比較的急激に増大するように設定されている。このように車速ゲインGVを設定することにより、車速の増大と共に車両姿勢制御による指令値が大きくなり、車速が大きい場合には、車速が小さい場合よりも大きな制動力が旋回中の車両の内側後輪に作用される。即ち、車速が小さい領域では車体1aの内側後部の浮き上がりが発生しにくいのに対し、車速の増大と共に車体1aの内側後部の浮き上がりの問題が顕著となるため、指令値を増大させ、車両姿勢制御を強く介入させている。好ましくは、第1の車速V1の値を約95~約115[km/h]程度に設定し、この値以下では、車速ゲインGVHを「1」以下とし、この値以上で車速ゲインGVが増大するように設定する。
図7のステップS24においては、車両姿勢制御に対する基本指令値Fb1に、図10に基づいて設定された操舵角ゲインGθ、図11に基づいて設定されたアクセル開度変化速度ゲインGAV、図12に基づいて設定されたアクセル開度ゲインGa、図13に基づいて設定された横加速度ゲインGl、及び図14に基づいて設定された車速ゲインGVが乗じられ、数式(5)により、車両姿勢制御の指令値F1が計算される。
Figure 2023161228000007
次に、図15及び図16を参照して、ブレーキLSD制御による基本指令値Fb2に乗じられる差回転ゲインGD、及び前後スリップ比ゲインGSを説明する。
図15は、差回転ゲインGDを設定するために使用されるマップである。
図15に示すように、差回転ゲインGDは、内輪と外輪の差回転D[m/sec]が低い領域では約0.8以下の値に設定され、差回転Dが大きくなるにつれて「1」に収束するように設定されている。このように差回転ゲインGDを設定することにより、差回転が大きくなると共にブレーキLSD制御の指令値が大きくなる。また、差回転ゲインGDは、差回転Dの増大と共に「1」に収束するので、路面摩擦が大きい場合においても、ブレーキLSD制御の指令値が過大になることはない。
図16は、前後スリップ比ゲインGSを設定するために使用されるマップである。
前後スリップ比ゲインGSは、前輪と後輪の間のスリップ比である前後スリップ比に対応して設定されるゲインである。本実施形態において、前後スリップ比は、数式(6)に基づいて計算される。
Figure 2023161228000008
これにより、後輪にスリップが発生していない場合には、前後スリップ比=0となり、後輪が完全にスリップしている場合には、前後スリップ比=1となる。一般に、車両が乾燥した路面を走行している場合には、前後スリップ比は、最大でも約0.2程度の値となる。また、雪道等の路面μ(路面の摩擦係数)の小さい低μ路面の場合には、前後スリップ比は0.2よりも大きくなり、砂利道等の中μ路面の場合には、約0.1~約0.3程度の値となる。この前後スリップ比の値は、低μ路面をトルク/パワーの大きい原動機を搭載した車両が走行した場合に大きくなる傾向があり、車両に搭載された原動機のトルク/パワーの指標となる。
図17は、低μ路面上で所定経路を旋回走行した車両において測定された前後スリップ比と、左右の後輪の間の車輪速差との関係の一例を示したグラフである。図17においては、排気量1.5リットルのエンジンを搭載した車両において測定された前後スリップ比と車輪速差の関係が○印でプロットされ、同一の車体に排気量2.0リットルのエンジンを搭載した車両において測定された前後スリップ比と車輪速差の関係が×印でプロットされている。
図17に示すように、路面μの小さい経路の旋回走行中に、両車両とも左右の後輪の間で、最大で50km/h程度の車輪速差が生じている。一方、排気量2.0リットルのトルクの大きいエンジンを搭載した車両では、前後スリップ比が0~0.7程度に分布し、最大で約0.9の前後スリップ比が生じているのに対し、排気量1.5リットルのトルクの小さいエンジンを搭載した車両では、前後スリップ比は最大でも0.5程度である。このように、同一の車体を有する車両で、同一経路の旋回走行を行った場合でも、トルクの大きいエンジンを搭載した車両では大きな前後スリップ比が生じるのに対し、トルクの小さいエンジンを搭載した車両では、前後スリップ比は比較的小さくなることが明らかとなった。これは、路面μの小さい路面を旋回走行した場合において、トルクの大きいエンジンを搭載した車両では駆動輪がスリップしやすいためと考えられる。
このように、トルクの大きいエンジンを搭載した車両では、駆動輪(本実施形態においては後輪)のスリップが発生しやすいため、ブレーキLSD制御の効果が、トルクの小さいエンジンを搭載した車両に比べて弱くなる傾向がある。本実施形態においては、図16に示すように、前後スリップ比に対して前後スリップ比ゲインGSを設定し、トルクの大きいエンジンを搭載した車両でも十分なブレーキLSD制御の効果が得られるようにしている。即ち、前後スリップ比ゲインGSの値は、前後輪スリップ比が約0.2までは1であり、約0.2以上になると増大する。さらに、前後スリップ比ゲインGSの値は、前後輪スリップ比が約0.5以上になると頭打ちとなり、約2.25の一定値となる。
このように設定された前後スリップ比ゲインGSを、ブレーキLSD制御の基本指令値Fb2に乗じることにより、前後スリップ比が大きくなりやすいトルクの大きいエンジンを搭載した車両では、ブレーキLSD制御の指令値F2が大きくされる。このため、前後スリップ比に対して図16のように前後スリップ比ゲインGSを設定しておくことにより、同一の車体に、トルクの大きい原動機を搭載した車両にも、トルクの小さい原動機を搭載した車両にも、共通のブレーキ制御部14aを適用することができる。また、前後スリップ比ゲインGSの値が、所定値で頭打ちとなるように設定されているため、前後スリップ比の増大と共に、ブレーキLSD制御による制動力が過大になるのを防止することができる。即ち、ブレーキLSD制御として過大な制動力を内側の後輪に作用させてしまうと、車両のヨーレートが変化してしまい、車両の旋回性能に影響を与えてしまう。旋回走行中の車両の内側の後輪に、ブレーキLSD制御として所定値以下の制動力を付与することにより、車両のヨーレートに実質的に影響を与えることなく、車両の車体内側後部の浮き上がりを抑制する車両姿勢制御を行うことができる。
図7のステップS24においては、ブレーキLSD制御に対する基本指令値Fb2に、図15に基づいて設定された差回転ゲインGD、及び図16に基づいて設定された前後スリップ比ゲインGSが乗じられ、数式(7)により、ブレーキLSD制御の指令値F2が計算される。
Figure 2023161228000009
このように、図7のステップS24においては、車両姿勢制御の基本指令値Fb1に基づいて、数式(5)により、車両姿勢制御の指令値F1が計算される。さらに、ブレーキLSD制御の基本指令値Fb2に基づいて数式(7)により指令値F2が計算される。
また、PreブレーキLSD制御の指令値F3は、基本指令値Fb3に、車両姿勢制御と同様のゲインを乗じることにより計算される。即ち、下記の数式(8)により指令値F3が計算される。上述したように、PreブレーキLSD制御は、車両姿勢制御に基づく制動力の付与が完了した後、ブレーキLSD制御により制動力が付与されるまでの間の制動力の変化を抑制する目的で付与されている。このため、PreブレーキLSD制御に対する指令値についても車両姿勢制御と同様のゲインを乗じて、車両姿勢制御と円滑に繋がるように制動力を設定する。
Figure 2023161228000010
さらに、図7のステップS25においては、以上のように計算された車両姿勢制御の指令値F1と、ブレーキLSD制御の指令値F2と、PreブレーキLSD制御の指令値F3が比較され、最も大きい指令値が、内側の後輪に作用させる制動力の指令値として最終的に決定される。図7のステップS25において制動力の指令値が決定されると、処理は図6のフローチャートに戻る。さらに、上述したように、図6のフローチャートでは、ステップS3において旋回制御の指令値が決定され、ステップS4において横滑り防止制御の指令値が決定される。次いで、ステップS5においては、決定された指令値に基づいてブレーキ装置8が制御される。
なお、上述したように、図6の車両姿勢制御(ステップS2)、旋回制御(ステップS3)、横滑り防止制御(ステップS4)は、夫々異なる走行状態において実行されるものであり、通常、これらの制御が重畳的に実行されることはない。従って、図7のフローチャートにより車両姿勢制御(ステップS2)の指令値が設定された場合には、旋回制御(ステップS3)及び横滑り防止制御(ステップS4)の指令値が設定されることはない(これらの指令値が「0」に設定される)。
本発明の実施形態の車両制御装置によれば、車両姿勢制御において、車両の前後輪スリップ比が大きい場合には、前後輪スリップ比が小さい場合よりも、車両の内側後輪に付与する制動力が大きくされる(図16)。これにより、高トルクのエンジンを搭載したモデルと、低トルクのエンジンを搭載したモデルで、異なるブレーキ制御装置を準備することなく、同等の車両姿勢制御の効果を得ることができる。
また、本実施形態の車両制御装置によれば、左右の後輪のうちの車輪速が遅い方の後輪、及び左右の前輪のうちの車輪速が遅い方の前輪の車輪速に基づいて前後輪スリップ比が計算される(数式(6))ので、エンジンのトルク特性を正確に前後輪スリップ比に反映させることができ、エンジンのトルク特性を正確に車両姿勢制御に反映させることができる。
さらに、本実施形態の車両制御装置によれば、図16に示すように、前後輪スリップ比が約0.2以上になるとゲインが増大されるので、高トルクのエンジンが搭載されている場合に、内側後輪に付与する制動力が大きくなり、十分な車両姿勢制御の効果を得ることができる。また、前後輪スリップ比が約0.5以上でゲインが一定値になるので、内側後輪に付与する制動力が大きくなりすぎて、車両の車体内側後部の浮き上がりを抑制する車両姿勢制御ではなく、車両の旋回挙動自体に影響を与えてしまうのを防止することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、原動機としてエンジン(内燃機関)を搭載した車両に本発明を適用していたが、原動機として電動のモーターを搭載した車両、又はエンジン及びモーターを搭載した車両に本発明を適用することもできる。さらに、上述した実施形態においては、原動機により車両の後輪が駆動されていたが、車両の前輪にも駆動力が加えられる四輪駆動の車両に本発明を適用することもできる。
1 車両
1a 車体
2a、2b 前輪
2c、2d 後輪
2e 車軸
3 サスペンション
3a アッパーアーム
3b ロアアーム
4 エンジン(原動機)
4a トランスミッション
4b プロペラシャフト
4c ディファレンシャルギア
4d 差動制限装置
6 ステアリングホイール
7 操舵装置
8 ブレーキ装置(ブレーキアクチュエータ)
10 液圧ポンプ
12 バルブユニット
13 液圧センサ
14 PCM
14a ブレーキ制御部(ブレーキ制御装置)
14b 旋回制御部
14c 横滑り防止制御部
16 操舵角センサ
18 アクセル開度センサ
20 車速センサ
22 横加速度センサ
24 車輪速センサ

Claims (3)

  1. 車両の姿勢を制御する車両制御装置であって、
    走行中の車両の車輪速を検出する車輪速センサと、
    車両の車輪に制動力を作用させるブレーキアクチュエータと、
    車両の走行状態に基づいて、上記ブレーキアクチュエータに制御信号を送り、制動力を発生させるブレーキ制御装置と、を有し、
    上記ブレーキ制御装置は、車両の旋回走行時において、車両の内側後輪の車輪速が、外側後輪の車輪速よりも高くなったとき、車両の内側後輪に制動力を付与して、車両の車体内側後部の浮き上がりを抑制する車両姿勢制御を実行し、
    上記車両姿勢制御において、車両の前後輪スリップ比が大きい場合には、前後輪スリップ比が小さい場合よりも、車両の内側後輪に付与する制動力を大きくすることを特徴とする車両制御装置。
  2. 上記前後輪スリップ比は、左右の後輪のうちの車輪速が遅い方の後輪、及び左右の前輪のうちの車輪速が遅い方の前輪の車輪速に基づいて計算される請求項1記載の車両制御装置。
  3. 上記車両姿勢制御において、車両の内側後輪に付与される制動力は、基本指令値に所定のゲインを乗じることにより計算され、上記所定のゲインは、上記前後輪スリップ比が約0.2以上になると増大し、上記前後輪スリップ比が約0.5以上で一定値となる請求項1又は2に記載の車両制御装置。
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