JP2023160254A - 内燃機関の燃焼室構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼室を構成する壁面を鏡面加工して冷却損失を低減するとともに、スキッシュエリアでのガスの乱れの減少による未燃燃料の増加や耐ノック性能の悪化を抑制する。【解決手段】内燃機関は、シリンダヘッド1側の燃焼室壁面2とピストンの冠面との間に燃焼室5が構成されており、シリンダ軸方向に見て燃焼室5の略中央部に点火プラグ6が位置し、かつ燃焼室5の周縁部にスキッシュエリアを備えている。燃焼室5に臨む吸気弁7および排気弁9の表面は、Ra0.3以下の鏡面性状を有し、スキッシュエリアを構成するスキッシュエリア面12の表面は、Ra0.4~Ra0.7の鏡面性状を有する。【選択図】図3
Description
この発明は、火花点火式内燃機関の燃焼室構造の改良に関する。
特許文献1には、吸気行程における吸気バルブ/排気バルブから吸気への対流熱伝達を抑制するために吸気バルブ/排気バルブの傘表面を鏡面に形成する一方、圧縮行程における吸気からシリンダヘッドへの対流熱伝達を促進するためにシリンダヘッド燃焼室面のスキッシュ面を粗面に形成した構成が開示されている。
火花点火式内燃機関においては、点火プラグによって混合気に点火がなされ、周囲へと火炎伝播することで燃焼が進行していく。ここで、燃焼により生じた熱の一部は、燃焼ガスから燃焼室壁面へと伝達され、いわゆる冷却損失として失われる。吸気バルブ/排気バルブの表面を鏡面とすることで冷却損失を抑制することができるが、上記の従来技術ではスキッシュ面を粗面としてあるので、冷却損失抑制効果が限定的なものとなっている。
一方、スキッシュエリアを有する燃焼室構造では、スキッシュエリアを構成する面が過度に滑らかな鏡面であると、上死点近傍で狭小な隙間となるスキッシュエリアにおけるガス流動の乱れが少なくなり、火炎伝播が阻害される結果、エンドガスの消炎による未燃HCの増加や耐ノック性能の低下が生じる。
この発明は、シリンダヘッド側の燃焼室壁面とピストン冠面との間に燃焼室が構成されており、シリンダ軸方向に見て上記燃焼室の略中央部に点火プラグが位置し、かつ上記燃焼室の周縁部にスキッシュエリアを備えてなる内燃機関の燃焼室構造であって、
上記燃焼室に臨む吸気弁および排気弁の表面が鏡面性状を有し、
上記燃焼室壁面の中の上記スキッシュエリアを構成する部分の表面は、上記吸気弁および排気弁の表面よりも相対的に粗い面粗度の鏡面性状を有する。
上記燃焼室に臨む吸気弁および排気弁の表面が鏡面性状を有し、
上記燃焼室壁面の中の上記スキッシュエリアを構成する部分の表面は、上記吸気弁および排気弁の表面よりも相対的に粗い面粗度の鏡面性状を有する。
このように、燃焼室に臨む吸気弁/排気弁の表面およびスキッシュエリアを構成する部分の表面の双方を鏡面とすることで、冷却損失が抑制され、内燃機関の図示熱効率の向上ひいては燃費向上が図れる。また、スキッシュエリアを構成する部分の鏡面性状は、比較的に粗い面粗度であるので、スキッシュエリアにおけるガス流動の乱れを適切に確保することができ、鏡面化に伴う未燃燃料の増加や耐ノック性能の悪化を抑制できる。
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、一実施例の火花点火式内燃機関の燃焼室構造を示す断面図、詳しくはシリンダ中心軸線を含みかつ気筒列方向に直交する平面に沿った断面図、である。図示するように、シリンダヘッド1下面に凹んだ形に設けられるシリンダヘッド1側の燃焼室壁面2と、シリンダ内で上下に運動するピストン3の冠面4と、の間に燃焼室5が構成される。図1は、ピストン3が上死点位置にあり、燃焼室5の容積が最小となっている。シリンダ軸方向に見て燃焼室5の略中央部に点火プラグ6が位置している。燃焼室5は、点火プラグ6の先端電極部を中心としてできるだけ球体に近い形状をなすように構成される燃焼空間5A(この部分が「燃焼室」と呼ばれることもある)と、周縁部における狭小な隙間からなるスキッシュエリア5Bと、を含んでいる。
図2は、シリンダヘッド1側の燃焼室壁面2の構成を示す平面図(詳しくは、図1のシリンダヘッド1を下面側から見た平面図)、図4は、この燃焼室壁面2と組み合わされることで燃焼室5を構成するピストン3の冠面4の構成を示す平面図である。
図2に示すように、燃焼室5は、一対の吸気弁7が配置された吸気弁側傾斜面8と、一対の排気弁9が配置された排気弁側傾斜面10と、を有するペントルーフ型燃焼室であり、4つの弁に囲まれた中央の領域に点火プラグ6が配置されている。吸気弁7および排気弁9は、円形の弁頭部を有するポペット弁であり、それぞれ、中心軸線が吸気弁側傾斜面8および排気弁側傾斜面10と直交するように傾斜した姿勢で配置されている。また図示例は、筒内直接噴射式内燃機関であり、4つの弁に囲まれた中央の領域において、点火プラグ6と並んで燃料噴射弁11が配置されている。なお、本発明は、吸気弁7が開閉する吸気ポート(図示せず)等において燃料を噴射供給する形式の内燃機関であってもよい。
図2に示すように、燃焼室壁面2は、吸気弁側傾斜面8よりも外周側および排気弁側傾斜面10よりも外周側に、それぞれ、スキッシュエリア5Bを構成するスキッシュエリア面12を備えている。これらのスキッシュエリア面12は、それぞれシリンダヘッド1下面に対して傾斜した平面に沿って形成されており、それぞれ、吸気弁側傾斜面8および排気弁側傾斜面10の傾斜角度よりも緩い傾斜角度を有している。平面視においては、各々のスキッシュエリア面12は、円の円弧と弦とで囲まれた略三日月形をなしている。
ピストン3の冠面4は、図4に示すように、燃焼空間5Aをできるだけ球体に近い形状とするために、中央部に平面視で楕円状をなす比較的浅い凹部15を備えている。この凹部15の底面は、図1に示すように、滑らかに連続した湾曲面をなしている。
またピストン3の冠面4の周縁部には、スキッシュエリア5Bを構成するスキッシュエリア面16を備えている。図示例では、このスキッシュエリア面16は、凹部15を囲むように全周に連続しており、シリンダ中心軸線を中心とした円錐面に沿って形成されている。この円錐面からなるスキッシュエリア面16の傾斜角度(シリンダ中心軸線と直交する平面に対する角度)は比較的小さく、シリンダヘッド1側のスキッシュエリア面12の傾斜角度に等しい。従って、図1に示すように、ピストン3が上死点に達すると、シリンダヘッド1側のスキッシュエリア面12とピストン3側のスキッシュエリア面16とで、略一定の隙間寸法を有する狭小なスキッシュエリア5Bが構成され、ここで、いわゆるスキッシュ流が生成される。
なお、ピストン3の冠面4には、図4に示すように、吸気弁7および排気弁9との干渉を回避するために、バルブリセス17が形成されている。
次に、シリンダヘッド1側の燃焼室壁面2およびピストン3の冠面4における各部の表面の鏡面性状について説明する。
シリンダヘッド1側においては、各気筒に一対の吸気弁7と一対の排気弁9とを備えているが、燃焼室5に臨む各々の弁頭部の表面に鏡面加工がなされている。図2に斜線を施して示す領域が、鏡面性状を有する吸気弁7/排気弁9の表面である。この鏡面加工は、できるだけ細かい面粗度となるように行われ、Ra0.3以下の面粗度(算術平均粗さ)の鏡面性状を有している。以下では、このような鏡面性状を「第1の鏡面」と呼ぶ。
また、シリンダヘッド1側の2つのスキッシュエリア面12は、やはり鏡面加工がなされており、第1の鏡面よりも粗い面粗度、具体的にはRa0.4~Ra0.7の面粗度の鏡面性状を有している。以下では、このような鏡面性状を「第2の鏡面」と呼ぶ。図3に斜線を施して示す領域が第2の鏡面の領域である。
好ましい一実施例では、吸気弁7/排気弁9の第1の鏡面はRa0.3の面粗度を有し、スキッシュエリア面12の第2の鏡面はRa0.5の鏡面性状を有する。
ピストン3の冠面4においては、燃焼空間5Aの下半部を構成する凹部15の表面(底面)に鏡面加工がなされている。図4に斜線を施して示す領域が、鏡面性状を有する凹部15の表面である。この鏡面加工は、できるだけ細かい面粗度となるように行われ、Ra0.3以下の面粗度の鏡面性状を有している。従って、吸気弁7/排気弁9の表面と同じく「第1の鏡面」と呼ぶこととする。なお、凹部15の表面の鏡面加工における面粗度と吸気弁7/排気弁9の表面の鏡面加工における面粗度とは、互いに等しいレベルであってもよく、異なるレベルにあってもよい。
また、ピストン3の冠面4において凹部15の外周側に位置するスキッシュエリア面16は、やはり鏡面加工がなされている。このスキッシュエリア面16は、シリンダヘッド1側のスキッシュエリア面12と同様に、凹部15の表面つまり第1の鏡面よりも粗い面粗度、具体的にはRa0.4~Ra0.7の面粗度の鏡面性状を有している。従って、シリンダヘッド1側のスキッシュエリア面12と同じく、「第2の鏡面」と呼ぶこととする。図5に斜線を施して示す領域が第2の鏡面の領域である。なお、ピストン3側のスキッシュエリア面16の鏡面加工における面粗度とシリンダヘッド1側のスキッシュエリア面12の鏡面加工における面粗度とは、互いに等しいレベルであってもよく、異なるレベルにあってもよい。
好ましい一実施例では、凹部15の表面の第1の鏡面はRa0.3の面粗度を有し、スキッシュエリア面16の第2の鏡面はRa0.5の鏡面性状を有する。
シリンダヘッド1側およびピストン3側の各々の鏡面加工は、例えば、研削加工ないし研磨加工によって行われる。
図7は、シリンダヘッド1における第1の鏡面および第2の鏡面の面粗度の数値範囲の説明図であり、図示するように、第1の鏡面はRa0.3以下の面粗度を有し、第2の鏡面はRa0.4~Ra0.7の範囲内の面粗度を有する。一実施例では、ピストン3の冠面4における凹部15の表面およびスキッシュエリア面16もそれぞれ第1の鏡面および第2の鏡面として同様の面粗度を有する。
火花点火式内燃機関においては、上死点前に点火プラグ6によって混合気に点火がなされ、周囲へと火炎伝播することで燃焼が進行していく。図6は燃焼の進行に伴う既燃ガスGの分布の変化を示した説明図であって、上死点位置では図(a)に示すように、点火プラグ6の先端電極部を中心としてできるだけ球体に近い形状をなすように構成される燃焼空間5A内に既燃ガスGがある。その後、ピストン3が僅かに下降した図(b),(c)に示す位置では、既燃ガスGがスキッシュエリア5B内に拡がっていく。ここで、燃焼により生じた熱の一部は、燃焼ガスから燃焼室5各部の壁面へと伝達され、いわゆる冷却損失として失われる。吸気弁7/排気弁9は、燃焼ガスに晒されることで受熱し、この熱はこれらの吸気弁7/排気弁9を介してシリンダヘッド1へと伝達される。上記実施例では、燃焼室5を囲む面となる吸気弁7/排気弁9の表面およびスキッシュエリア面12をそれぞれ鏡面とすることで、表面近傍の乱流成分が減少し、熱伝達量が低減する。従って、膨張行程での冷却損失を抑制することができる。しかも上記実施例では燃焼室5の下半部を構成するピストン3の冠面4における凹部15の表面が第1の鏡面として鏡面性状を有するので、ピストン3への熱伝達も抑制される。さらに凹部15の外周側のスキッシュエリア面16も第2の鏡面として鏡面性状を有するので、冷却損失がより低減する。
一方、スキッシュエリア5Bを構成するスキッシュエリア面12は、第2の鏡面として、熱伝達の抑制を図りつつ、Ra0.4~Ra0.7の面粗度の鏡面性状を有することで、スキッシュエリア5Bにおけるエンドガスの消炎ないし火炎伝播不良が抑制される。すなわち、スキッシュエリア5Bでは、図6(b)に示すように狭い空間であることから、スキッシュエリア面12を過度に滑らかな鏡面とすると、表面でのガスの微小な乱れが抑制される結果、火炎が進行しづらくなり、未燃ガスが生じやすくなる。上記実施例では、スキッシュエリア5Bを構成するシリンダヘッド1側のスキッシュエリア面12をRa0.4~Ra0.7の面粗度の鏡面性状とすることで、スキッシュエリア5Bでの未燃ガスの増加が抑制される。しかも上記実施例ではピストン3の冠面4におけるスキッシュエリア面16も第2の鏡面としてRa0.4~Ra0.7の面粗度の鏡面性状を有するので、熱伝達を抑制しつつ適当なガスの乱れによって未燃ガスの増加が抑制される。
図8は、面粗度Raをパラメータとして、(a)冷却損失低減効果、(b)未燃燃料、(c)耐ノック性能、の良否を模式的に示した説明図である。(a)に示すように、冷却損失低減の観点からは、面粗度Raが小さいほど冷却損失が少なくなり、有利である。この観点から、第1の鏡面については、Ra0.3以下とし、できるだけ面粗度Raが小さい方が好ましい。一方、(b)に示す未燃燃料は、面粗度Raが小さいと上述した乱れの減少によるスキッシュエリア5Bでのエンドガスの消炎によって増加し、また面粗度Raが大きいとガスと接する表面積が大きくなることで同じく増加する。従って、スキッシュエリア5Bを構成する第2の鏡面については、面粗度Ra0.5付近に未燃燃料が最も少なくなる最適範囲が存在する。さらに(c)に示す耐ノック性能は、面粗度Raが小さいとエンドガスの燃焼が遅れがちとなることから悪化し、また面粗度Raが大きいと表面の凹凸により局所的なヒートスポットが増えることで悪化する。従って、スキッシュエリア5Bを構成する第2の鏡面については、面粗度Ra0.5付近に耐ノック性能が最も高くなる最適範囲が存在する。
第2の鏡面の面粗度Raが0.4未満であると、未燃燃料の増加ならびに耐ノック性能の悪化が顕著となり、好ましくない。同様に、第2の鏡面の面粗度Raが0.7を越えると、やはり未燃燃料の増加ならびに耐ノック性能の悪化が顕著となり、好ましくない。
なお、図8(b)に示す未燃燃料の観点で最良となる面粗度と図8(c)に示す耐ノック性能の観点で最良となる面粗度とが多少異なることがあり得るが、この場合は、両者の中で相対的に粗い面粗度Raに第2の鏡面の鏡面性状を設定してもよく、あるいは、両者の平均的な値の面粗度Raとしてもよい。
以上、この発明の一実施例を説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では一対の吸気弁7と一対の排気弁9とを有しているが、他の個数の吸気弁7/排気弁9を用いた構成であってもよい。また、上記実施例ではスキッシュエリア面12が傾斜面となっているが、シリンダ中心軸線に直交する平面に沿ったスキッシュエリア面12であってもよい。この場合、スキッシュエリア面12がシリンダヘッド1下面に連続した構成であってもよい。またピストン3の冠面4に凹部15を具備しない燃焼室構造であっても本発明は適用が可能である。
1…シリンダヘッド
2…燃焼室壁面
3…ピストン
4…冠面
5…燃焼室
5A…燃焼空間
5B…スキッシュエリア
6…点火プラグ
7…吸気弁
9…排気弁
12…スキッシュエリア面
15…凹部
16…スキッシュエリア面
2…燃焼室壁面
3…ピストン
4…冠面
5…燃焼室
5A…燃焼空間
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12…スキッシュエリア面
15…凹部
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Claims (5)
- シリンダヘッド側の燃焼室壁面とピストン冠面との間に燃焼室が構成されており、シリンダ軸方向に見て上記燃焼室の略中央部に点火プラグが位置し、かつ上記燃焼室の周縁部にスキッシュエリアを備えてなる内燃機関の燃焼室構造であって、
上記燃焼室に臨む吸気弁および排気弁の表面が鏡面性状を有し、
上記燃焼室壁面の中の上記スキッシュエリアを構成する部分の表面は、上記吸気弁および排気弁の表面よりも相対的に粗い面粗度の鏡面性状を有する、内燃機関の燃焼室構造。 - 上記吸気弁および排気弁の表面は、Ra0.3以下の面粗度を有する、請求項1に記載の内燃機関の燃焼室構造。
- 上記のスキッシュエリアを構成する部分の表面は、Ra0.4~Ra0.7の面粗度を有する、請求項1に記載の内燃機関の燃焼室構造。
- 上記のスキッシュエリアを構成する部分の表面の面粗度は、未燃燃料の観点で最良となる面粗度と耐ノック性能の観点で最良となる面粗度との中で相対的に粗い面粗度に設定されている、請求項3に記載の内燃機関の燃焼室構造。
- 上記燃焼室は、一対の吸気弁が配置された吸気弁側傾斜面と一対の排気弁が配置された排気弁側傾斜面とを有するペントルーフ型燃焼室であり、
上記吸気弁側傾斜面よりも外周側および上記排気弁側傾斜面よりも外周側にそれぞれスキッシュエリアを備えている、請求項1に記載の内燃機関の燃焼室構造。
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