JP2023156758A - 光パターニング重合による弾性率局所可変フィルム及びその作製方法 - Google Patents

光パターニング重合による弾性率局所可変フィルム及びその作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】伸長度や硬さなどの力学物性を、局所的に精密に調節することができる弾性率局所可変フィルム及びその作製方法を提供すること。【解決手段】一次重合部分5と、一次重合部分5に結合する二次重合部分6、7と、を含むフィルム状の弾性率局所可変フィルム8であって、一次重合部分5と二次重合部分6(7)とが交互に配列することによって、対向してフィルム形状をなす一方面11と他方面12の少なくても一つの面に凹凸形状を備える弾性率局所可変フィルム8である。【選択図】図9

Description

本発明は、光パターニング重合による弾性率局所可変フィルム及びその作製方法(光パターニング重合方法)に関する。
エラストマーや架橋樹脂は、溶融高分子鎖が分子レベルで共有結合を介して架橋された三次元網目構造を有する。架橋密度は、エラストマーや架橋樹脂の物性を決定する主要素であり、一般に、架橋密度が大きい試料は硬く伸びにくく、架橋密度が小さい試料は柔らかく伸びやすい材料となる。
従来のエラストマーや架橋樹脂の多くでは、単一種の架橋により網目構造を形成しており、一つの分子設計に対して、特有の単一力学特性を示す材料しか調製できない。
特許文献1には、(メタ)アクリルアミド系化合物の重合体と、水膨潤性粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目を有する高分子ゲルであって、ゲル膨潤度が、局所的に異なることを特徴とする局所膨潤高分子ゲルが記載されている。
一方、本発明の発明者は、特許文献2おいて熱架橋性官能基と光架橋性官能基をそれぞれ側鎖に多点で含む高分子鎖を含み、熱架橋性官能基のうち少なくても一部分同士が架橋した熱架橋部分と、光架橋性官能基のうち少なくても一部分同士がさらに架橋した光架橋部分と共に、光架橋性官能基同士が架橋していない光未架橋部分を有する弾性率局所可変材について開示している。
非特許文献1および特許文献2には、フォトマスクを介した光架橋に基づく、弾性率パターニングの記述がある。一方で、3Dプリンターを利用した直接パターニングについて記述はない。非特許文献2には、3Dプリンターを用いた光架橋制御に基づく弾性率パターニングの記述はあるが、異種ポリマーを箇所選択的に重合させることによるパターニング技術についての記載はない。
特開2008-156405号公報 特願2021-063345号
K. Sugimoto, M. Hayashi, I. Kawarazaki, S. Ito, Polymer, 2021, 230, 124089. E. Rossegger, K. Moazzen, M. Fleisch, S. Schlogl, Polymer Chemistry, 2021,12, 3077-3083.
しかしながら、局所的に力学特性の異なる材料を調製するには、架橋密度の異なるエラストマーフィルムや架橋樹脂を接着などの方法で複合化させるしか方法がない。この方法では、複合化のプロセスが容易ではなく、複合化できたとしても界面剥離が起きやすい。そして、通常の架橋樹脂(フィルム)は、伸長度や硬さなどの力学物性を、局所的に精密に調節することは困難である。
そこで、本発明では、伸長度や硬さなどの力学物性を、局所的に精密に調節することができる弾性率局所可変フィルム及びその作製方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
[1]一次重合部分と、一次重合部分に結合する二次重合部分と、を含むフィルム形状の弾性率局所可変フィルムであって、一次重合部分と二次重合部分とが交互に配列することによって、対向してフィルム状をなす一方面と他方面の少なくても一つの面に凹凸形状を備えることを特徴とする弾性率局所可変フィルムである。
[2]一方面と他方面がそれぞれ凹凸形状を備え、一方面の凹形状が他方面の凹形状に、一方面の凸形状が他方面の凸形状にそれぞれ対応することを特徴とする[1]に記載の弾性率局所可変フィルムである。
[3]一次重合部分と、一次重合部分に結合する二次重合部分と、を含むフィルム形状の弾性率局所可変フィルムであって、一次重合部分と二次重合部分とが交互に配列することによって、二次重合部分における弾性率が一次重合部分における弾性率とは異なることを特徴とする弾性率局所可変フィルムである。
[4]一次重合部分と、一次重合部分に結合する二次重合部分と、を含むフィルム形状の弾性率局所可変フィルムであって、一次重合部分と二次重合部分とが交互に配列することによって、フィルム形状の対向する面にそれぞれリンクル構造を備えることを特徴とする弾性率局所可変フィルムである。
[5]第1モノマーの重合による一次重合部分を含む母材樹脂フィルムに、第2モノマーと重合開始剤を含浸させて第2モノマー含浸母材樹脂フィルムを作製する工程と、第2モノマー含浸母材樹脂フィルムに光照射型3Dプリンターによる光照射を行い、第2モノマーを重合させる工程を、さらに含むことを特徴とする弾性率局所可変フィルムの作製方法である。
[6]光照射型3Dプリンターは紫外光照射型3Dプリンターであることを特徴とする[5]に記載の弾性率局所可変フィルムの作製方法である。
[7][1]~[3]のいずれか一つに記載の弾性率局所可変フィルムを伸縮させる工程又は溶媒に浸漬して膨潤させ、その溶媒を揮発させる工程を含む、対向してフィルム形状をなる両面に、それぞれリンクル構造を形成させることを特徴とする弾性率局所可変フィルムの作製方法である。
本発明による弾性率局所可変フィルムによれば、伸長度や硬さなどの力学物性を、局所的に精密に調節することができることができる。またその作製方法(設計)ではで3Dプリンターを用いるため、その利点は、「複雑なパターニングが簡便に形成可能(例えばドット形状・格子形状・同心円形状)」という点である。パソコン上でデザインしたパターニングをそのまま転写することが可能である。さらに、用いるポリマーの種類に限定はなく、「親水・疎水」や「硬さ・柔らかさ」の箇所選択的な調節が可能という点は、本作製方法(設計)でしか実現し得ない利点である。
本発明の一つの実施形態である光パターニング重合の概略図(a)~(d)を、それぞれ示す図である。 光パターニング重合の概略図(a-1)~(e-3)を、それぞれ示す別の図である。 光パターニング重合による弾性率局所可変フィルム(a)~(c)を、それぞれ模式的に示す図である。 弾性率局所可変フィルムの母材樹脂作製に用いた化合物(a)~(d)を、それぞれ示す図である。 弾性率局所可変フィルムのパターニング様式の寸法図例(a)~(c)を、それぞれ示す図である。 弾性率局所可変フィルムの断面のSEMマッピング画像(a)~(d)を、それぞれ示す図である。 弾性率局所可変フィルムの引っ張り試験結果(水平パターニング)(a)~(c)を、それぞれ示す図である。 弾性率局所可変フィルムの引っ張り試験結果(垂直・折れ線パターニング)(a)~(c-3)を、それぞれ示す図である。 弾性率局所可変フィルムのその他のパターニングデザイン(a)~(d)を、それぞれ示す図である。 光パターニング重合による、別の弾性率局所可変フィルム(一方面に凸形状を備える)を示す図である。 パターニング試料のリンクル形成について(a)~(c-2)を、それぞれ示す図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
図1(d)に示すように、本発明の一つの実施形態である弾性率局所可変フィルム8は母材部(一次重合部分)5とUV照射部(二次重合部分)6、7を含む。一般的にフィルムは、所定の厚みを有し、その厚み方向と略垂直に2つの略矩形の面(一方面11と他方面12)を有することに即して、母材部(一次重合部分)5、UV照射部(二次重合部分)6、7及び弾性率局所可変フィルム8を説明する次のようである。
UV照射部(二次重合部分)6、7は、弾性率局所可変フィルム8の長辺と略平行に所定の幅と厚みを有して複数(同図では3つ)配置され、隣り合ったUV照射部(二次重合部分)6、7の間には母材部(一次重合部分)5が存在する。UV照射部(二次重合部分)6、7の厚さは、母材部(一次重合部分)5の厚さより厚い。そのため、弾性率局所可変フィルム8の略矩形の一方面11と他方面12は、それぞれ凹凸状(凹凸形状)を有する。そして、それぞれの凹凸状(凹凸形状)は、一方面11と他方面12とで対応している。すなわち一方面11の凹状は他方面12の凹状と対応し、一方面11の凸状は他方面12の凸状と対応する。
母材部5に注目すれば、母材部5がUV照射部6、7の間で一方面11から他方面12に貫通しているとも言える。
母材部(一次重合部分)5はUV照射部(二次重合部分)6と、そしてUV照射部(二次重合部分)7とそれぞれ結合している。すなわち一次重合部分を形成するポリマー鎖と二次重合部分を形成するポリマー鎖とが化学的に連結している。
弾性率局所可変フィルム8の作製方法は、母材樹脂フィルム3´へのモノマー4(第2モノマー)の含浸(母材樹脂フィルム3´は第2モノマー含浸母材樹脂フィルム3となる)と、好ましくは紫外光照射型3Dプリンターによる光Lを利用した箇所選択的な光重合という2ステップを介し行う技術(光パターニング重合)によるものである。さらに説明すると次のようであるが、光Lを箇所選択的に第2モノマー含浸母材樹脂フィルム3に照射する方法として、パソコン上で描いたデザインに沿って光透過箇所が作成された液晶パネル10を使用した方法により行う。
図1(a)に示すように、光パターニング重合の構成1は、容器2に重合開始剤を含むモノマー(第2モノマー)溶液4が納められ、第1モノマーの重合による一次重合部分を含む母材樹脂フィルム3´が作製されることにより構成される。モノマー溶液4への浸漬により、母材樹脂フィルム3´は膨潤して第2モノマー含浸母材樹脂フィルム3となる。
光源9からのUV光は、好ましくは複数のスリットを有する液晶パネル10を介して、第2モノマー含浸母材樹脂フィルム3に照射される。そのため、第2モノマー含浸樹脂フィルム3に箇所選択的にUV照射が行われ、UV照射が行われた箇所の樹脂内部で第2モノマーの重合による二次重合が起こり(同(b))、その箇所はUV照射部である二次重合部分6´、7´となる。
一方、UV照射が行われず二次重合が起こらない箇所(一次重合部分)では、第2モノマーは未反応モノマーとして母材樹脂フィルム3に残留して、第2モノマー含浸母材樹脂フィルム3は、二次重合部分6´、7´と一次重合部分5´を備える弾性率局所可変フィルム(未反応モノマーを含む)8´となる(同(c))。その後、弾性率局所可変フィルム(未反応モノマーを含む)8´から未反応モノマーを除去して、弾性率局所可変フィルム8を得ることができる。
弾性率局所可変フィルム(未反応モノマーを含む)8´から未反応モノマーが除去されると、図1(d)に示すように、二次重合が起こらなかった母材部(一次重合部分)5の高さ方向の寸法は、未反応モノマーが除去されたことにより、一次重合部分5´と対比して小さくなる。一方、二次重合部分6、7の高さ方向の寸法は、二次重合が起こっているため、未反応モノマーが除去されても、二次重合部分6´、7´と対比してほとんど変化しない寸法である。
その結果、一次重合部分5の高さ方向の寸法は、二次重合部分6、7の高さ方向の寸法と比較して小さくなるため、弾性率局所可変フィルム8は一方面11と他方面12に凹凸状を有することになる。また、弾性率局所可変フィルム8は、二次重合部分6、7と一次重合部分5を備えるため、弾性率の観点からは、弾性率が異なる一次重合部分5と二次重合部分6、7が併存するため、局所で弾性を可変とすることができる。弾性率が異なるとは、一次重合部分の弾性率が二次重合部分の弾性率よりも大きくてもよく、二次重合部分の弾性率が位置次重合部分の弾性率よりも大きくてもよいことである。
例えば、一次重合部分の弾性率を二次重合部分の弾性率よりも大きくする場合には、には次のようにすることができる。母材樹脂(一次重合部)としてポリアクリル酸メチルを用い、二次重合部にポリアクリル酸エチルを用いた場合、ガラス転移温度の違いにより、これが達成される。または、同種のポリマー種で行う場合、母材樹脂調製時(一次重合時)のジビニル架橋剤の割合を、二次重合時のジビニル架橋剤の割合より大きくすれば、これが達成できる。
一方、二次重合部分の弾性率を二次重合部分の弾性率よりも大きくする場合には、次のようにすることができる。母材樹脂(一次重合部)としてポリアクリル酸エチルを用い、二次重合部にポリアクリル酸メチルを用いた場合、ガラス転移温度の違いにより、これが達成される。または、同種のポリマー種で行う場合、母材樹脂調製時(一次重合時)のジビニル架橋剤の割合を、二次重合時のジビニル架橋剤の割合より小さくすれば、これが達成できる。
図2は、図1で説明した第2モノマー14を図示したものであり、光Lを第2モノマー含浸母材樹脂フィルム3に箇所選択的に照射するため、光照射型3Dプリンター9を使用している。同(a-2)に示すように、第1重合部分を含む母材樹脂フィルム3´は、第2モノマー14を含む(含浸する)母材樹脂フィルム3となる(なお、以下の説明において特に断らない限り、同じ記号を付したものは同じ機能を有するものである)。
光照射型3Dプリンター9は、モノマーの光ラジカル重合性およびラジカル発生のための吸収波長の観点から、紫外光照射型が好ましい。その場合光Lは紫外光である。そして、次のような特徴を有することができる。光照射箇所のデザインは、モデリングソフト((1)AutoDesk社、Fusion360 (2)RobertMcNeel & Associates社、Rhinoceros)で可能であり、そのデザインは液晶パネル上に転写される。液晶パネルでは、パソコン上で描いたデザインに沿って光透過箇所が作成され、光透過箇所を通り抜けた紫外光が母材樹脂フィルム3に投影される。
図1(d)では、二次重合部分6(7)は弾性率局所可変フィルム8の略矩形の一方面(他方面)の長辺と略平行な位置関係にあったが、図2(e-1)では、弾性率局所可変フィルム8の略矩形の一方面(他方面)の短辺と略平行な位置関係となっている。また、同(e-2)では、二次重合部分6の幅の寸法が2種類の組み合わせであって、相対的にその寸法の大きいものの間にその寸法が小さいものが離間して配置している。同(e-3)では、二次重合部分6が略円形状を形成し、複数の略円形状が碁盤の目状に配列している。不図示ではあるが、その配列に対応して他方面も同様に碁盤の目状に配列している。
図3(b)では、二次重合部分6が複数のX字形状を形成し、複数のX字形状が配列している。なお、図3(b)(同(a)、(c)も同様)は、図1(c)に相当するものであって、未反応モノマーを除去すれば、図1(d)に相当するものとなる。UV照射部を適宜に変更すれば、それに応じて二次重合部分6は変更することができるため、上記に示すパターンに限られず、その他、格子状・同心円状など弾性率局所可変フィルム8内において、二次重合部分6による様々なパターン(形状)をとることができるのである。
すなわち本発明では、(1)架橋樹脂フィルムへのモノマー浸漬と、(2)紫外光照射型3Dプリンターを利用した箇所選択的な光重合という2ステップを介して、フィルム内で弾性率および表面凹凸の自在パターニングを行う技術(光パターニング重合)を開発したのである。
<母材架橋樹脂の合成>
図4(a)~(d)の化合物に従って母材架橋樹脂3´を調製した。光重合性モノマーとして、(a)アクリル酸メチル(MA)と(b)アクリル酸エチル(EA)を用いた。両モノマーを、(c)ジビニル架橋性モノマー(1,4-ブタンジオールジアクリレート,BDGA)および(d)光ラジカル開始剤(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド,TPO)と混合した。
混合時のビニルモノマーのモル比は、[MA]:[EA]:[BDGA]=210 :90:1であった。TPOの重量分率は1wt%とした。紫外光照射装置(朝日分光株式会社製、光反応用LED光源 CLシリーズ、波長365nm)を用いて、光重合を行った。紫外光照射は室温において、30分行った。結果として、ほぼすべてのモノマーが消費された母材架橋樹脂が得られ、ゲル分率は約95%であった。母材樹脂としては、その他のアクリル酸系モノマー(例えばアクリル酸ブチル)・メタクリル酸系モノマー(例えばメタクリル酸メチル)でも同様の手法で調製が可能である。
<母材架橋樹脂に対する第2モノマーの導入>
上記で得られた母材架橋樹脂3´に、第2モノマーを内包させた。第2モノマーとしては、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAm)を用いて行った。モノマー溶液として、BDGAとTPOをDMAmに溶解させたものを調製した。DMAmとBDGAのモル比は、[DMAm]:[BDGA]=300:1であった。TPOの重量分率は1wt%とした。
厚み0.04cm,横1cm,縦2cmの母材架橋樹脂フィルムを、モノマー溶液4に、室温にて浸漬させた。膨張率は、モノマー溶液4への浸漬時間によって調節可能であることがわかっている。例えば、5分の浸漬で厚みは1.5倍となり、2分の浸漬で厚みは1.2倍となる。その他、浸漬モノマーとしては、アクリル酸系モノマー(例えばアクリル酸エチル)・メタクリル酸系モノマー(例えばメタクリル酸メチル)でも同様の手法が適用可能である。
<光パターニング重合>
デジタル・ライト・プロセッシング(DLP)方式の3Dプリンター(ELEGOO社製、Mars2、波長405nm)を用いて、モノマー溶液に5min浸漬させた母材樹脂フィルムに対して、箇所選択的に光パターニング重合を施した。光(UV)照射部6は、事前にパソコン上のソフトを用いて設計した。一例を図5(a)~(c)に示す。
図5(a)では、光(UV)照射部6の長さは10mm、幅は0.5mm、間隔は2.4mmであった。同(b)では照射部6の長さは25mm、幅は0.5mm、間隔は2.4mmであった。そして、同(c)では照射部6の長さは25mm、幅は0.5mm、間隔は3.2mmであった。
DMAmを内包させた母材樹脂フィルム(実験例1)およびメタクリル酸メチル(MMA)を内包させた母材樹脂フィルムに対して(実験例2)、光重合の進行を確認した。その他のアクリル酸系モノマー・メタクリル酸系モノマーでも同様の手法が適用可能である。残存モノマーは、真空乾燥やテトラヒドロフランなどを用いた溶媒抽出により、完全な除去が可能であった。一方で、室温で固体状態のビニルモノマー(例えばアクリルアミド)では、モノマーが内包させられないため、光パターニング重合を行うことができないことがわかっている。
<パターニングの確認>
箇所選択的な重合の進行は、走査電子顕微鏡(SEM)観察および光学顕微鏡にて確認した(JEOP,JSM7800F)。観察用試料としては窒素原子を含むDMAm(実験例1)を光パターニング重合した実施例1(弾性率局所可変フィルム18)を用いた。本試料は、モノマー溶液に5min浸漬させた樹脂フィルムに対して、図5(a)の様式で箇所選択的に光パターニング重合を施してある。試料断面を、白金パラジウムによりコーティングした。観察時の加速電圧は5kVとした。観察位置決定後、元素マッピングにより、窒素(N)原子の相対分布情報を得た(図6)。
まず、光学顕微鏡図(図6(d))では、光照射部(二次重合部分)16(幅0.52mm)と非照射部(一次重合部分)15での凹凸形状が明確に確認できる。元々の樹脂厚みに対して、約1.5倍の高さを示す凹凸形状が形成されていた。SEMによる元素マッピングでは、N原子がパターニング部に選択的に存在していることを確認できた。また、光照射部(二次重合部分)16と非照射部(一次重合部分)15の界面は明確に存在しており、非光照射部15へのモノマーおよびポリマーの拡散は起きていないことがわかる。さらに、フィルム厚み方向に関して、N原子の濃度はほぼ一定であり、重合ポリマーの(厚み方向での)濃度勾配はほとんどないことも確認できた。
なお、光照射部(二次重合部分)16に含まれるポリマー鎖26は、非照射部(一次重合部分)15を組成するポリマー鎖25とは異なり、光照射によって生成したポリマー鎖を示す。
<引っ張り試験結果(水平パターニング)>
測定条件:AGS-500NX(SHIMADZU)を用いて、室温で測定した。引っ張り試験速度は10mm/minであった。試料寸法は、平均厚み0.5mm、ゲージ幅4mm、ゲージ長さ13mmのダンベル試験片である。
結果:測定用試料は実施例1、比較例1(実施例1においてパターニングしていない試料)である。本試料は、モノマー溶液に5min浸漬させた母材樹脂フィルムに対して、箇所選択的に、水平方向に重合を施してある。パターニングの幅は0.5mmであり、間隔は2mmとした。なお、母材のガラス転移温度は約8℃であり、パターニング部のガラス転移温度は約80℃であった。つまり、母材部は室温でゴム状態あるため易変形であるのに対し、パターニング部はガラス状態であるため難変形となる。
図7(a)に、パターニングあり(実施例1)・なし(比較例1)の試料に対し、引っ張り中の巨視的な様子と、応力歪曲線を示す。縦軸は公称応力、横軸は公称ひずみである。期待した通り、パターニング(UV照射部16)はほぼ変形しておらず、母材部15が選択的に変形している。応力歪曲線では、母材試料とパターニング試料の結果がほぼ重なっており、これはパターニング部の変形による応力が発生していないことを示す。このように、水平方向の光パターニング重合により、箇所選択的な変形フィルムが得られた。
<引っ張り試験結果(垂直・折れ線パターニング)>
<引っ張り試験結果(水平パターニング)>と同じ試料調製条件(実験例1)で、垂直・折れ線パターニング試料(弾性率局所可変フィルム28、実施例2)を作成した。垂直パターニングの幅は0.5mmであり、間隔は2mmとした。折れ線パターニングの幅は0.5mmであり、間隔は1mmとした。
図8(a)に、垂直・折れ線パターニング試料に対し、引っ張り中の巨視的な様子と、応力歪曲線を示す。縦軸は公称応力、横軸は公称ひずみである。同(b-1)、(b-2)に示すように、垂直パターニングでは、難変形であるパターニング部が先に破断する。しかし、破断したパターニング部の両隣には易変形の母材部が位置しているため、亀裂の伝播が遅延され、材料の瞬時の完全破断は起こらなかった。結果として、亀裂が試料の様々な箇所で発生する難破壊試料となった。応力歪曲線においても、最大応力を観測した時点から、段階的に応力が減少し破断が進行していく様子が見てとれた。
図8(c-1)、(c-2)に示すように、折れ線パターニングでは、試料変形に伴い、折れ線パターニングが直線状に変化した。その後、折れ線の頂点部で亀裂が生じたが、この場合も材料の瞬時の完全破断は起こらなかった。この場合、折れ線の頂点部で亀裂が生じるため、「亀裂箇所のコントロール」が可能となった。
<そのほかのパターニングデザイン>
その他、実験例1を用いて、微細且つ緻密なパターニング試料を可能であった。例として、ボロノイ図型(図9(a)、弾性率局所可変フィルム38、実施例3)、ハニカム型(同(b)、弾性率局所可変フィルム48、実施例4)、ランダム分布(同(c)、弾性率局所可変フィルム58、実施例5)、50μm(同(d)、弾性率局所可変フィルム68、実施例6)ピッチのパターニングを示す。
<母材架橋樹脂に対する別の第2モノマーの導入>
上記で得られた母材架橋樹脂3´に、第2モノマーを内包させた。第2モノマーとしては、アクリル酸 tert-ブチル(t-BA)を用いて行った。モノマー溶液として、BDGAとTPOをt-BAに溶解させたものを調製した。t-BAとBDGAのモル比は、[t-BA]:[BDGA]=300:1であった。TPOの重量分率は1wt%とした。
厚み0.04cm,横1cm,縦2cmの母材架橋樹脂フィルムの片面をテフロン(登録商標)シートでカバーした。その状態で、モノマー溶液4に、室温にて浸漬させた。モノマーはテフロン(登録商標)シートでカバーされていない面から内包されていくため、30分のモノマー溶液4への浸漬では、母材樹脂の片面のみのモノマーの内包が可能であった。モノマーを内包した面に対して紫外光照射を行った。その後、残存モノマーを真空乾燥により除去し、片面のみのパターニングを作成した(図9、弾性率局所可変フィルム78、実施例7)。
図10に示すように、別の実施形態である弾性率局所可変フィルム78は母材部(一次重合部分、凹形状)35とUV照射部(二次重合部分、凸形状)36を含む。母材部(二次重合部分、凸形状)36は、図1(d)等と異なり一方面に配置され、幅が0.59mmであって、他方面にはないため、一方面から他方面に貫通はしていない。なお、母材部35とUV照射部36の境は界面37として観察することができる。
<両面リンクル作成>
パターニング後試料の特徴として、両面リンクル構造の作成を試みた。ここでは、母材架橋樹脂は同一であるが、光重合性モノマーとして、メタクリル酸メチルを用いたパターニング樹脂(図11(a)、弾性率局所可変フィルム88、実施例8)を作成した。この場合、母材のガラス転移温度は約8℃であり、パターニング部のガラス転移温度は約30℃であるため、母材部・パターニング部ともにエラストマーである。しかしながら、パターニング部では架橋密度が大幅に上昇しているため、塑性変形(伸びきり)が起こりやすい。すなわち、母材部とパターニング部で変形回復度の異なるパターニングエラストマーとなっている。
このような試料をパターニング方向と垂直に伸縮させる伸縮させると、伸び切りやすいパターニング部が元の長さに戻らず、たわみが生じる。そのたわみを解消するため、フィルムの表裏に自発的にリンクル構造22が形成された(弾性率局所可変フィルム98、実施例9、図11(b-1)、(b-2))。同様に、溶媒(テトラフドロフラン)に浸漬させた際、母材部とパターニング部で膨潤度が異なる。そのため、膨潤・揮発プロセスでも、フィルムの表裏に自発的にリンクル構造32が形成された(弾性率局所可変フィルム108、実施例10、同(c-1)、(c-2))。
リンクル構造は図1(d)の凹凸状(凹凸構造)とは構造が異なり、一方面の凹状が他方面の凸状に、一方面の凸状が他方面の凹状にそれぞれ対応していた。換言すると、リンクル構造は同(c-2)に示すように、断面視した凹状の傾斜と凸状の傾斜との間隔が、ほぼ一定の間隔であるような構造であった。膨潤・揮発プロセスとは、弾性率局所可変フィルムを溶媒に浸漬して、その弾性率局所可変フィルムを膨潤させ、その溶媒を揮発させる工程のことである。
高分子を構成物とした樹脂素材・フィルム素材・エラストマー素材・ゲル(ジェル)素材などに応用が可能である。本発明による弾性率局所可変フィルムは「箇所選択的な変形」「亀裂箇所のコントロール」が可能であるため、例えばウェアラブル素材やフォルダブルディスプレイ(折り畳みディスプレイ)として使用することができる。さらに、リンクル構造を備えることにより、例えば高摩擦表面や高撥水表面を有する機能性シートとして使用することができる。
1:光パターニング重合の構成
2:容器
3:第2モノマー含浸母材樹脂フィルム
3´:母材樹脂フィルム
4、14:モノマー(第2モノマー)
5、15、35:母材部(一次重合部分)
6、7、6´、7´、16:光照射部(二次重合部分)
8、18、28、38、48、58、68、78、88:弾性率局所可変フィルム
8´:弾性率局所可変フィルム(未反応モノマーを含む)
9:光源
10:液晶パネル
11:一方面
12:他方面
25:非照射部を組成するポリマー鎖
26:光照射部を組成するポリマー鎖
22、32:リンクル構造
37:界面
98、108:リンクル構造が形成された弾性率局所可変フィルム
L:光

Claims (7)

  1. 一次重合部分と、前記一次重合部分に結合する二次重合部分と、を含むフィルム形状の弾性率局所可変フィルムであって、前記一次重合部分と前記二次重合部分とが交互に配列することによって、対向してフィルム状をなす一方面と他方面の少なくても一つの面に凹凸形状を備えることを特徴とする弾性率局所可変フィルム。
  2. 前記一方面と前記他方面がそれぞれ凹凸形状を備え、前記一方面の凹状が前記他方面の凹形状に、前記一方面の凸形状が前記他方面の凸形状にそれぞれ対応することを特徴とする請求項1に記載の弾性率局所可変フィルム。
  3. 一次重合部分と、前記一次重合部分に結合する二次重合部分と、を含むフィルム形状の弾性率局所可変フィルムであって、前記一次重合部分と前記二次重合部分とが交互に配列することによって、前記二次重合部分における弾性率が前記一次重合部分における弾性率とは異なることを特徴とする弾性率局所可変フィルム。
  4. 一次重合部分と、一次重合部分に結合する二次重合部分と、を含むフィルム形状の弾性率局所可変フィルムであって、一次重合部分と二次重合部分とが交互に配列することによって、フィルム形状の対向する面にそれぞれリンクル構造を備えることを特徴とする弾性率局所可変フィルムである。
  5. 第1モノマーの重合による一次重合部分を含む母材樹脂フィルムに、第2モノマーと重合開始剤を含浸させて第2モノマー含浸母材樹脂フィルムを作製する工程と、前記第2モノマー含浸母材樹脂フィルムに光照射型3Dプリンターによる光照射を行い、第2モノマーを重合させる工程を、さらに含むことを特徴とする弾性率局所可変フィルムの作製方法。
  6. 戦記光照射型3Dプリンターは紫外光照射型3Dプリンターであることを特徴とする請求項5に記載の弾性率局所可変フィルムの作製方法。
  7. 請求項1~3のいずれか1項に記載の弾性率局所可変フィルムを伸縮させる工程又は溶媒に浸漬して膨潤させ、その溶媒を揮発させる工程を含む、対向して前記フィルム形状をなる両面に、それぞれリンクル構造を形成させることを特徴とする弾性率局所可変フィルムの作製方法。
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