JP2023156199A - 管継手用脱離治具、管継手、及び雄継手と雌継手の脱離方法 - Google Patents

管継手用脱離治具、管継手、及び雄継手と雌継手の脱離方法 Download PDF

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俊一 西脇
Shunichi Nishiwaki
弘司 中
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Abstract

【課題】雄継手と雌継手との係合解除の作業性を向上し、且つ係合解除が不能となることを防止するようにした管継手用脱離治具、管継手、及び雄継手と雌継手の脱離方法を提供する。【解決手段】雄継手11に設けられた軸部14と雌継手12に設けられた軸挿入部24とを雌継手側の軸方向に沿って嵌め合わせることで、軸挿入部24に設けられたロック部材が軸部14に設けられたロック溝に入り込んで雄継手11と雌継手12との係合が可能となり、また、脱離治具13を雄継手11と雌継手12との間に装着した後に、脱離治具13を雌継手側の軸方向に移動させることで、脱離治具13に設けた薄筒体43がロック部材をロック溝から脱離させて雄継手11と雌継手12との係合を解除する。【選択図】図7

Description

本発明は、管継手用脱離治具、管継手、及び雄継手と雌継手の脱離方法に関し、特に雄継手と雌継手の係合解除が簡便に行える管継手用脱離治具、管継手、及び雄継手と雌継手の脱離方法に関する。
従来、管継手においては、内周面に周溝と凹み部とを有する雌継手と、雌継手に挿入される軸部の外周面に周溝を有する雄継手と、前記雌継手の周溝に収容された拡縮径可能な弾性リング体と、雌継手に内挿され弾性リング体を拡径ならしめる短筒体と長筒状体とを有した保持具と、を備える管継手が知られている(特許文献1参照)。このような従来の管継手は、保持具に設けられた長筒状体が、予め雌継手に摺動自在に外挿された構成を有しており、雌継手に対して脱離不可能に設けられている保持具によって、雄継手と雌継手とを係合解除し得、当該係合解除が別体の工具を用いずに行える。
具体的には、係合時、雌継手の周溝に装着された弾性リング体の内周が雄継手軸部の外周面に設けられ周溝に接し、また、弾性リング体の外周が雌継手の凹み部に接している。この状態では、弾性リング体が前記凹み部内で雄継手の周溝に向けて押し付けられた状態、つまり、雄継手の抜けが防止された状態となっている。
保持具の短筒体は、雄継手の軸部と雌継手の内周面との間に入り込んで、弾性リング体に軸方向で対向している。この短筒体は、係合位置と係合解除位置との間に雌継手に対して移動自在となっている。係合位置の時には、短筒体が弾性リング体から離れており、また、係合解除位置の時には、短筒体が弾性リング体を雌継手内周面に設けられた周溝部に移動させる。
雄継手を雌継手に挿入し、流体圧がかかると弾性リング体が凹み部に接した状態となる。
係合解除の時には、雌継手に対して脱離不可能に設けられている保持具を雌継手の軸方向に移動させ、保持具の短筒体が弾性リング体を雌継手の周溝部に押し込む。これにより、弾性リング体が拡径されて雌継手と雄継手との係合が解除される。
実開平5-54891号公報
このように、特許文献1に記載の管継手は、雄継手と雌継手を工具不要で係合でき、また、雌継手に予め設けられている保持具によって工具不要で係合解除できる構造であった。しかしながら、従来の管継手では、係合状態の時に、例えば、外装の保持具に対して振動負荷がかかり、当該保持具を介して弾性リング体に振動負荷が与えられた際に雄継手と雌継手が容易に係合解除されないように、弾性リング体の径を太径にして、弾性リング体に強い拡径力を持たせることが必要であった。このため、雌継手の保持具を係合解除位置に移動して弾性リング体を拡径するためには強い力が必要になる。このように、雌継手と雄継手を係合解除させる際には、保持具が設けられている雌継手の先端部分を強い力で押す必要があり、その分、雌継手と雄継手を係合解除する作業が難しかった。
また、押圧主体である保持具の長筒状体は、雌継手の外周を被っているため、持ち運ぶ時や接続作業をする時に、誤って長筒状体に衝撃を与えてしまい、破損するおそれがあった。破損すると係合解除ができなくなるため、管継手としての使用が不能となってしまう。
そこで、本発明は、雄継手と雌継手との係合解除の作業性を向上し、且つ係合解除が不能となることを防止するようにした管継手用脱離治具、管継手、及び雄継手と雌継手の脱離方法を提供することを目的とする。
この発明の管継手用脱離治具は、軸部が設けられた雄継手と、軸部に対して軸挿入部を雌継手側の軸方向に沿って嵌め合わせることで、軸挿入部に設けられたロック部材が軸部に設けられたロック溝に入り込んで雄継手と係合可能な雌継手と、を備える管継手に用いられる管継手用脱離治具であって、係合状態にある雄継手と雌継手との間に着脱自在に装着される把持部と、把持部に設けられた薄筒体と、を備え、薄筒体は、管継手に装着した把持部を雌継手側の軸方向に移動させることで、ロック部材をロック溝から脱離させて雄継手と雌継手との係合状態を解除する。
この発明の管継手は、軸部が設けられた雄継手と、軸部に対して軸挿入部を雌継手側の軸方向に沿って嵌め合わせることで、軸挿入部に設けられたロック部材が軸部に設けられたロック溝に入り込んで雄継手と係合可能な雌継手と、を備える管継手であって、雄継手の軸部は、雄継手及び雌継手とは別体の管継手用脱離治具の把持部が着脱自在に装着され、把持部が雌継手側の軸方向に移動可能な構成を有し、係合状態の雄継手と雌継手は、軸部に装着された把持部が雌継手側の軸方向に移動することで、把持部に設けられた薄筒体が軸部と軸挿入部との間に入り込む隙間が形成されており、薄筒体によってロック部材がロック溝から脱離されて雄継手と雌継手との係合状態が解除されるものである。
この発明の雄継手と雌継手の脱離方法は、軸部が設けられた雄継手と、軸部に対して軸挿入部を雌継手側の軸方向に沿って嵌め合わせることで、軸挿入部に設けられたロック部材が軸部に設けられたロック溝に入り込んで雄継手と係合可能な雌継手と、を備える管継手の、雄継手と雌継手の脱離方法であって、把持部に薄筒体が設けられた管継手用脱離治具を用意する準備工程と、雌継手の軸挿入部に係合された雄継手の軸部に、管継手用脱離治具の把持部を着脱自在に装着する装着工程と、軸部に装着された把持部を雌継手側の軸方向に移動することで、管継手用脱離治具の薄筒体が軸部と軸挿入部との間の隙間に入り込み、薄筒体によってロック部材がロック溝から脱離されて雄継手と雌継手との係合状態が解除される解除工程と、を備えるものである。
この発明の管継手用脱離治具によれば、係合状態にある雄継手と雌継手との間に着脱自在に装着される把持部と、把持部に設けられた薄筒体と、を備え、薄筒体は、管継手に装着した把持部を雌継手側の軸方向に移動させることで、ロック部材をロック溝から脱離させて雄継手と雌継手との係合状態を解除する。このため、従来のように雌継手の先端部分を強い力で押す必要がなく、雌継手とは別体に準備した管継手用脱離治具を用いて雌継手と雄継手とを係合解除できるため、雌継手と雄継手との係合解除の作業性が向上し得る。また、係合解除時以外は管継手用脱離治具を管継手から取り外しておくことができるので、従来のような破損によって係合解除が不能となることを防止することができる。
この発明の管継手によれば、従来のように雌継手の先端部分を強い力で押す必要がなく、雌継手とは別体に準備した管継手用脱離治具を用いて雌継手と雄継手とを係合解除できるため、雌継手と雄継手との係合解除の作業性が向上し得る。また、係合解除時以外は管継手用脱離治具を管継手から取り外しておくことができるので、破損によって係合解除が不能となることを防止することができる。
この発明の雄継手と雌継手の脱離方法によれば、従来のように雌継手の先端部分を強い力で押す必要がなく、雌継手とは別体に準備した管継手用脱離治具を用いて雌継手と雄継手とを係合解除できるため、雌継手と雄継手との係合解除の作業性が向上し得る。また、係合解除時以外は管継手用脱離治具を管継手から取り外しておくことができるので、破損によって係合解除が不能となることを防止することができる。
本発明の一実施例である管継手装置を示す斜視図である。 雄継手を示す断面図である。 雌継手を示す斜視図である。 雌継手を示す断面図である。 雌継手に第2配管を取り付けた状態を示す片側断面図である。 脱離治具を示す斜視図である。 管継手装置を示す片側断面図であり、脱離治具を装着した状態を示す。 雄継手と雌継手を係合した状態を示す断面図である。 管継手装置を示す片側断面図であり、脱離治具を押し込んだ状態を示す。 管継手装置を示す片側断面図であり、雄継手を引き抜いた状態を示す。 弾性リング体を示す平面図である。
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態である管継手装置を示す。管継手装置9は、例えば、建物の空調を制御するファンコイルユニット等の温調水を移送するための配管や、建機のパイロット操作を制御するための油を移送する配管に使用される。
管継手装置9は、図1に示すように、雄継手11及び雌継手12を備える管継手10と、管継手用脱離治具(以下、単に「脱離治具」と称す)13で構成されている。雄継手11は、軸部14、外周溝部15、及び取付軸部16が形成されており、雄継手11の内部には、流体が流れる第1管部17が形成されている。
図2に示すように、軸部14は、雌継手12に向けて挿入される部分であり、その挿入側から順に軸第1径部18と、軸第1径部18よりも太径の軸第2径部19とを有し、軸第1径部18と軸第2径部19の間には第1テーパ径部20が形成されている。外周溝部15は、軸第2径部19の外周に形成されている。
外周溝部15に対して雌継手12側の軸方向A(以下、単に「軸方向A」と称す)側には、平坦な径部21が設けられ、また、平坦な径部21には、平坦な径部21よりも小径である軸第1径部18が軸方向Aで隣接する。雄継手11のうちの軸部14に対して軸方向Aとは逆側の端にある取付軸部16には、例えば、外周面にネジ部(図示なし)が設けられており、ネジ部には機器22が螺合して取り付けられる。
雌継手12は、図3に示すように、軸挿入部24、軸挿入部24に収納される弾性リング体25と、Oリング26とを有する。弾性リング体25は、円弧状の両端に隙間を有する断面C型状をしている。この弾性リング体25は、この発明のロック部材に相当する。Oリング26は、ゴム等の材料で環状に作られている。
軸挿入部24には、図4に示すように、軸方向Aに沿って浅内周溝部28、深内周溝部29、及びOリング装着溝30が順に形成されている。軸挿入部24には、軸部14を受け入れる第1孔部32と、第1孔部32よりも小径の第2孔部33と、第2孔部33よりも小径の第3孔部34とが軸方向Aに沿って順に形成されている。第1孔部32と第2孔部33との間には、第2テーパ径部35が形成されている。第1孔部32、第2孔部33、及び第3孔部34は、流体を移送させる第2管部36を構成する。なお、第2テーパ径部35は、係合時に第1テーパ径部20が当接して雄継手11のそれ以上の挿入を防止する役目をする。また、第3孔部34は、第1管部17と同径である。
浅内周溝部28、及び深内周溝部29が軸方向Aに沿って順に形成されており、浅内周溝部28と深内周溝部29とが繋がっており、深内周溝部29の内壁のうちの軸方向Aとは逆側の壁がない状態になっている。つまり、深内周溝部29に収納される弾性リング体25は、浅内周溝部28と深内周溝部29との間で移動可能になっている。浅内周溝部28は、その浅内周溝部28の底と、雄継手11の外周溝部15の底との間で弾性リング体25を、第2管部36(第1管部17)の径方向で挟み込んで雄継手11と雌継手12との係合(以下、単に「係合」と称す)の状態を保持する。ここで、係合の維持を確実にするために、弾性リング体25は、自然状態における内周直径が軸部14の軸第2径部19の外径(図2参照)よりも小さく、且つ厚みが浅内周溝部28の幅よりも小さく設定されている。つまり、外周溝部15は、弾性リング体25の線径の1/3程度の深さに設定してあり、かつ、弾性リング体25は、自然状態における内径が外周溝部15の底(図2参照)と一致するように設定されている。なお、軸部14の軸第2径部19の外周に設けられた外周溝部15と軸挿入部24に設けられた浅内周溝部28とは、この発明のロック溝に相当する。
第2孔部33には、Oリング26が装着されるOリング装着溝30が形成されている。Oリング26は、係合時に、雄継手11の軸第1径部18の外周に接して第1管部17と第2管部36の隙間を水密に維持する。
図5に示すように、配管挿入部39の外周には、初期状態において筒体38の一部にカシメ止めが施されている。配管37を配管挿入部39と筒体38との間に挿入した後には、筒体38の全体をカシメ止めすることで配管37を配管挿入部39に強固に固定する。
脱離治具13は、図6に示すように、係合を解除する時に使用されるもので、厚みの厚い環状の把持部42と、把持部42の中央に設けられたリング状の薄筒体43とを有する。把持部42、及び薄筒体43は、図1にも示したように、把持部42に設けられた回転軸44を中心に、回転軸44から把持部42の径方向に延びる分割線45から左右に二分割に分割可能になっている。つまり、把持部42は、右把持部42aと左把持部42bとで構成されており、また、薄筒体43も右薄筒体43aと左薄筒体43bとで構成されている。なお、ここでは、説明の便宜上、以下、図6において右側にある第1把持部半体を右把持部42aと称し、図6において左側にある第2把持部半体を左把持部42bと称する。また、同じく説明の便宜上、以下、図6において右側にある第1薄筒体半体を右薄筒体43aと称し、図6において左側にある第2薄筒体半体を左薄筒体43bと称する。
右把持部42aと左把持部42bは、薄肉の半円環状でなる半底板部422と、半底板部422の外周縁部に沿って立設して弧状に湾曲した半外壁部423とをそれぞれ有する。右把持部42aには、半底板部422の内周縁部に沿って弧状に湾曲した半筒状の右薄筒体43aが立設され、左把持部42bには、半底板部422の内周縁部に沿って弧状に湾曲した半筒状の左薄筒体43bが立設されている。
この実施形態では、把持部42の軸方向における半外壁部423の長さが、把持部42の軸方向における右薄筒体43a及び左薄筒体43bの長さよりも長く突出して形成されている。なお、本実施形態では、脱離治具13を管継手10に装着した際、把持部42の軸方向と雌継手12側の軸方向Aとが一致することから、以下、脱離治具13の軸方向を軸方向Aとも称する。この場合、半外壁部423と、右薄筒体43a及び左薄筒体43bとは、軸方向Aとは逆側に配置される端が、平面になっている(図1参照)。右薄筒体43a及び左薄筒体43bの先端は、把持部42の半外壁部423の先端に対して軸方向にそれぞれ引っ込んだ非突出状態に形成されている。これにより、右薄筒体43a及び左薄筒体43bは、右薄筒体43a及び左薄筒体43bの外周側に設けられた半外壁部423により保護され、右薄筒体43a及び左薄筒体43bの損傷を防止している。
回転軸44は、軸方向が脱離治具13の軸方向Aと平行に配置され、右把持部42aの一端と左把持部42bの一端とを回転自在に連結する。右把持部42aと左把持部42bは、回転軸44を中心に、右把持部42aの他端と左把持部42bの他端とが互いに遠ざかる方向に回転して開き状態となる。また、開き状態の右把持部42aと左把持部42bは、回転軸44を中心に、右把持部42aの他端と左把持部42bの他端とが互いに近づく方向に回転し、右把持部42aの他端と左把持部42bの他端とが当接して閉じ状態となる。つまり脱離治具13は、開き状態と閉じ状態との間で回転軸44を中心に回転可能である。脱離治具13は、右把持部42aと左把持部42bが閉じ状態の時に、右薄筒体43aと左薄筒体43bが環状の孔部を形成する。脱離治具13は、右把持部42aと左把持部42bが開き状態になることで、右薄筒体43aと左薄筒体43bとの間に、脱離治具13を雌継手12と連結している雄継手11の軸部14における軸第2径部19の外周面を挟み込み可能な構成を有する。
脱離治具13は、軸部14が右薄筒体43aと左薄筒体43bとの間に位置決めされた状態で右把持部42aと左把持部42bが開き状態から閉じ状態になることで、右薄筒体43aと左薄筒体43bとの内周面46によって軸部14の軸第2径部19の、雌継手12に挿入していない部分を挟み込むための孔部を形成する。つまり、右薄筒体43aと左薄筒体43bは、右把持部42aと左把持部42bが閉じ状態になることで、円筒状の薄筒体43を形成し、薄筒体43は、雌継手12と連結している雄継手11の軸部14の軸第2径部19の、雌継手12に挿入していない、外部に露呈した部分の外周面を、内周面46で挟み込む。なお、同図に示す回転軸44は、例えばビス等である。例えば、ビスの場合には、先端のネジ部が左把持部42bにネジ止めされ、ビス頭との間のネジ無し部で右把持部42aを回転自在に支持する。
薄筒体43は、図7に示すように、雄継手11と雌継手12を連結させた管継手10において、雄継手11の軸部14の軸第2径部19の外部に露呈される外周面に取り付けられる。薄筒体43は、雄継手11と雌継手12の係合時に、軸部14の軸第2径部19と軸挿入部24との間に形成される隙間に入り込む薄い厚みになっている。係合解除は、脱離治具13を軸方向Aに向けて押す。このとき、薄筒体43は、軸部14と軸挿入部24との隙間に入り込んで、弾性リング体25を浅内周溝部28から深内周溝部29に向けて押し込む。このとき、弾性リング体25の内周は、軸部14のうちの外周溝部15に対して軸方向A側にある、外周面が平坦な径部21に接する。
本実施形態では、図2に示すように、径部21での外径をd4とし、外周溝部15の溝底部での外径をd5とし、弾性リング体25の線径をdとし、図2の領域ER内に示すように弾性リング体25の線径(d/3)が外周溝部15内に位置決めされるとした場合、下記の式(1)に示す関係を有する。
d5 = d4 -(2・( d /3)) …(1)
また、本実施形態では、軸第2径部19の外径と径部21の外径とが略同一に形成されている。なお、ここでの略同一とは、軸第2径部19の外径と径部21の外径とが完全に同一に形成されている他、雄継手11と雌継手12の係合や、脱離治具13による係合解除の機能を実現可能な誤差程度にずれて形成されている場合も含み得る。
次に、上記構成の作用を説明する。雌継手12の初期状態は、弾性リング体25が深内周溝部29に収容されている。この状態において、雄継手11を雌継手12に挿入する。挿入は、軸部14と軸挿入部24とを雌継手12側の軸方向Aに沿って嵌め合わせる。これにより、軸第1径部18がこれよりも僅かに大径な第2孔部33に入り込んで、軸部14にある第1テーパ径部20が軸挿入部24にある第2テーパ径部35に当接する。これにより、雄継手11の挿入がストップされるので係合の終了を知ることができる。このとき、弾性リング体25の内周は、第1テーパ径部20が第2テーパ径部35に当接する手前で外周溝部15に入り込んだ状態になる。Oリング26は、軸第1径部18に接して軸部14と軸挿入部24の隙間を水密にしている。これにより、流体の移動を開始させることができる。
流体の移動を開始すると、軸部14と軸挿入部24との間にかかる流体圧により、雄継手11と雌継手12とが離れる方向に付勢される。これにより、図8に示すように、雄継手11が軸方向Aとは逆の方向に押されて、外周溝部15に入り込んだ状態で弾性リング体25が浅内周溝部28に移動される。これにより、弾性リング体25は、外周が浅内周溝部28に規制されてそれ以上の拡径が阻止され、内径が外周溝部15に押し付けられた状態になる。これにより、雄継手11が雌継手12から離れる方向に移動することが阻止され、よって、雄継手11と雌継手12の係合が強固な状態になる。なお、同図では、配管37を省略している。
続いて、係合解除を行う場合には、把持部42に薄筒体43が設けられた脱離治具13を用意する(本発明の「準備工程」に相当)。次に、雌継手12の軸挿入部24に係合された雄継手11の軸部14に、脱離治具13の把持部42を着脱自在に装着する(本発明の「装着工程」に相当)。つまり、流体の流れを停止した後に、脱離治具13の把持部42を持って、図1に示すように、回転軸44を中心に脱離治具13を左右に二分割して右把持部42aと左把持部42bを開き状態にする。右把持部42aと左把持部42bを開き状態にした後には、右把持部42aと左把持部42bを閉じ状態にして、薄筒体43を雄継手11と雌継手12の隙間に挟み込む。これにより、図7に示すように、薄筒体43の内周面46が雄継手11の軸第2径部19の外周面に配置される。
その後、脱離治具13の把持部42を軸方向Aに移動することで、薄筒体43が軸第2径部19と軸挿入部24との間にある隙間に入り込み、薄筒体43によってロック部材がロック溝から脱離されて雄継手11と雌継手12との係合状態が解除される(本発明の「解除工程」に相当)。ロック部材は、軸挿入部24に設けられた深内周溝部29に装着される弾性リング体25であり、ロック溝は、軸部14に設けられた外周溝部15と軸挿入部24に設けられた浅内周溝部28とで構成されている。
つまり、脱離治具13を軸方向Aに向けて押し込むと、薄筒体43が軸第2径部19の外周面に沿って移動して軸部14と軸挿入部24との間の隙間に入り込む。さらに、押し込みを続けると、薄筒体43のうちの軸方向A側の先端が弾性リング体25に当接する。すると、弾性リング体25は、内周が外周溝部15に入り込んだまま雄継手11と一緒に軸方向Aに向けて押される。これにより、図9に示すように、弾性リング体25の外周が深内周溝部29に、第1管部17の径方向で対向した状態になる。
その後、雄継手11を雌継手12から引き抜くと、軸部14が軸方向Aとは逆の方向に移動しようとする。このとき、弾性リング体25が薄筒体43に当接しているため、弾性リング体25が拡径しながら外周溝部15から脱出して、図10に示すように、弾性リング体25の内周が平坦な径部21に接した状態になる。このとき、弾性リング体25の線径を従来よりも細径にしたので、拡径するのにそれほど力が必要なく、よって、係合解除の作業を容易に行うことができる。
また、このとき、弾性リング体25は、外周が深内周溝部29に、第1管部17の径方向で対向する位置に移動し、外周のうちの方向A側が深内周溝部29の内壁に当接して、軸挿入部24内でそれ以上の移動が阻止されている。そのまま雄継手11の引き抜きを継続すると、弾性リング体25の内周が平坦な径部21から、平坦な径部21よりも小径である軸第1径部18の外周面に移動する。このとき、弾性リング体25は、深内周溝部29内で自然状態になり、深内周溝部29に収納された状態になる。その後は、雄継手11を容易に引き抜くことができる。なお、図5、図7、図8、図9、及び図10では、取付軸部16の外周面に形成されているネジ部は図示を省略している。
以上の構成において、本実施形態では、従来の管継手のように雌継手の先端部分を強い力で押す必要がなく、雌継手12とは別体に準備した脱離治具13を用いて雄継手11と雌継手12とを係合解除できるため、脱離治具13によって雄継手11と雌継手12との係合解除の作業性が向上し得る。また、脱離治具13は、係合解除時以外は管継手10から取り外しておくことができるので、雄継手11と雌継手12との係合時に脱離治具13の破損によって係合解除が不能となることを防止することができる。
弾性リング体25の強度(P)を求める。弾性リング体25は、図11に示す形状になっており、円弧状バネの歪み(σ)を下記の式(2)に示す式を利用して弾性リング体25の強度(P)を求める。強度(P)は、弾性リング体25の拡径力のことであり、雄継手11と雌継手12との係合解除の作業の容易性にかかわる数値になる。
Figure 2023156199000002
…(2)

この数式は弾性リング体25の歪み(σ)を求める式であるため、拡径力(P)を求める式に変形すると、円弧状バネの歪み式として下記の式(3)が得られる。
Figure 2023156199000003
…(3)

ここで、上記の式(2)中、αは欠円部の中心角であり、使用する弾性リング体25は欠円角が極めて小さく、ゼロにほとんど等しいため、α≒0とする。また、Eは材料弾性率であり、ここでは[E=21000Kgf/mm2] (SUS304)と考える。なお、[mm2]はmmの二乗で平方ミリメートルを示す。rは弾性リング体25の最大広がりの内径(d4/2)、dは弾性リング体25の線径、d4は雄継手11の径部21での直径、d5は外周溝部15の溝底部での直径であり、上記の式(1)で示す関係を有すると、弾性リング体25の歪み(σ)は、[d/3×π]となる。下記の[表1]に示す内径は、雄継手11の径部21での直径(d4)であり、線径(d)は弾性リング体25の線径である。ここで、径部21の内径1~3は、8.0mm~18.0mmの範囲から任意に選択した値であり、内径1<内径2<内径3とした。また、弾性リング体25の線径1~3は、0.5mm~2.0mmの範囲から任意に選択した値であり、線径1<線径2<線径3とした。そして、任意に選定した内径1~3及び線径1~3から上記の式(3)に基づいて弾性リング体25の拡径力(P)を算出したところ、下記の[表1]に示すような結果が得られた。
Figure 2023156199000004
別体の脱離治具13を用いずに、雌継手に脱離不可能な状態で予め設けた保持具によって係合解除可能な構造の従来の管継手(特許文献1参照)では、例えば、[表1]に示すように、拡径力(P)が0.42Kgfの弾性リング体25と、拡径力(P)が0.46Kgfの弾性リング体25と、をそれぞれ使用した場合、雄継手と雌継手との係合解除が容易過ぎることから、実使用中に振動負荷が雌継手の保持具にかかることにより、外装の保持具から弾性リング体25に振動負荷が加わり、雄継手と雌継手が脱離してしまうという問題があった。そのため、従来の管継手では、[表1]中、拡径力(P)が0.92Kgf超の弾性リング体25を用いることが望ましい。
これに対して、本実施形態に係る管継手10は、従来のように、弾性リング体25を外部から係合解除可能な保持具が雌継手12の先端部分に設けられておらず、実使用中は、脱離治具13が外されていることから、実使用中でも外部から弾性リング体25に対して振動負荷がかからない。このため、本実施形態に係る管継手10では、実使用中の振動負荷がかかることによる脱離の懸念がなくなる。このように、本実施形態に係る管継手10では、従来の保持具がなく雄継手11と雌継手12が脱離し難い構造となっているため、従来の管継手で使用できなかった、拡径力(P)が0.42Kgfや0.46Kgの極めて小さい弾性リング体25についても用いることができる。よって、本実施形態に係る管継手10では、従来の管継手では使用困難な拡径力(P)が0.42Kgf以上0.92Kgf以下の弾性リング体25についても用いることができる。
また、従来の管継手では、拡径力(P)が2.28Kgfの弾性リング体25と、拡径力(P)が2.24Kgfの弾性リング体25と、をそれぞれ使用した場合、雌継手の先端部分に設けた保持具に対して外力を与え難いことから、保持具によって弾性リング体25の係合解除が行い難く、作業には不適であった。そのため、従来の管継手では、拡径力(P)がおおよそ2.0Kgf以下の弾性リング体25を用いることが望ましい。
本実施形態に係る管継手10でも拡径力(P)が2.24Kgfの弾性リング体25を使用すると、雌継手12とは別体に準備した脱離治具13を用いても、雄継手11と雌継手12との係合解除が行い難いことから、拡径力(P)がおおよそ2.0Kgf以下の弾性リング体25を用いることが望ましい。
以上より、本実施形態に係る管継手10では、実使用中の振動負荷がかかることによる脱離の懸念がなくなるため、拡径力(P)が小さい弾性リング体25も用いることができるようになり、拡径力(P)が0.42Kgf以上2.0Kgf以下の幅広い弾性リング体25を使用することができる。また、本実施形態に係る管継手10では、弾性リング体25の拡径力(P)を0.42Kgf以上0.92Kgf以下とすることが望ましく、これにより雄継手11と雌継手12の係合解除の作業をさらに容易に行うことができる。
9…管継手装置
10…管継手
11…雄継手
12…雌継手
13…管継手用脱離治具
14…軸部
15…外周溝部
19…軸第2径部
24…軸挿入部
25…弾性リング体
28…浅内周溝部
29…深内周溝部
38…筒体
42…把持部
43…薄筒体
45…分割線
46…内周面

Claims (8)

  1. 軸部が設けられた雄継手と、前記軸部に対して軸挿入部を雌継手側の軸方向に沿って嵌め合わせることで、前記軸挿入部に設けられたロック部材が前記軸部に設けられたロック溝に入り込んで前記雄継手と係合可能な雌継手と、を備える管継手に用いられる管継手用脱離治具であって、
    係合状態にある前記雄継手と前記雌継手との間に着脱自在に装着される把持部と、前記把持部に設けられた薄筒体と、を備え、
    前記薄筒体は、前記管継手に装着した前記把持部を雌継手側の軸方向に移動させることで、前記ロック部材を前記ロック溝から脱離させて前記雄継手と前記雌継手との係合状態を解除する、管継手用脱離治具。
  2. 前記ロック部材は、前記軸挿入部に設けられた深内周溝部に装着される弾性リング体であり、
    前記ロック溝は、前記軸部に設けられた外周溝部と前記軸挿入部に設けられた浅内周溝部とで構成されており、
    前記管継手は、
    前記雄継手と前記雌継手とが係合状態のときに、前記深内周溝部と前記浅内周溝部は雌継手側の軸方向に隣接しており、
    自然状態における内周直径が前記軸部の外径よりも小さく、且つ厚みが前記浅内周溝部よりも小さく設定された、前記弾性リング体が、前記外周溝部と前記浅内周溝部とで径方向で押さえ込まれることで前記雄継手と前記雌継手とを係合させる構成であり、
    前記薄筒体は、
    前記弾性リング体を前記深内周溝部に押し込んで前記弾性リング体の拡径を許容して、前記雄継手と前記雌継手との係合状態を解除させる、請求項1に記載の管継手用脱離治具。
  3. 前記薄筒体は環状の前記把持部に設けられ、
    前記把持部は、前記把持部及び前記薄筒体を径方向に二分割する回転軸を有し、
    前記把持部及び前記薄筒体は、前記回転軸を中心に二分割して、係合状態の前記雄継手と前記雌継手との間に装着され、
    前記薄筒体は、
    前記管継手に装着した前記把持部が雌継手側の軸方向に移動することで、前記軸部と前記軸挿入部との隙間に入り込んで前記弾性リング体を前記浅内周溝部から前記深内周溝部に向けて押し込む、請求項2に記載の管継手用脱離治具。
  4. 軸部が設けられた雄継手と、前記軸部に対して軸挿入部を雌継手側の軸方向に沿って嵌め合わせることで、前記軸挿入部に設けられたロック部材が前記軸部に設けられたロック溝に入り込んで前記雄継手と係合可能な雌継手と、を備える管継手であって、
    前記雄継手の前記軸部は、
    前記雄継手及び前記雌継手とは別体の管継手用脱離治具の把持部が着脱自在に装着され、前記把持部が雌継手側の軸方向に移動可能な構成を有し、
    係合状態の前記雄継手と前記雌継手は、
    前記軸部に装着された前記把持部が雌継手側の軸方向に移動することで、前記把持部に設けられた薄筒体が前記軸部と前記軸挿入部との間に入り込む隙間が形成されており、前記薄筒体によって前記ロック部材が前記ロック溝から脱離されて前記雄継手と前記雌継手との係合状態が解除される、管継手。
  5. 前記ロック部材は、前記軸挿入部に設けられた深内周溝部に装着される弾性リング体であり、
    前記ロック溝は、前記軸部に設けられた外周溝部と前記軸挿入部に設けられた浅内周溝部とで構成されており、
    前記管継手は、
    前記雄継手と前記雌継手とが係合状態のときに、前記深内周溝部と前記浅内周溝部とが雌継手側の軸方向に隣接し、
    自然状態における内周直径が前記軸部の外径よりも小さく、且つ厚みが前記浅内周溝部よりも小さく設定された、前記弾性リング体を、前記外周溝部と前記浅内周溝部とで径方向で押さえ込むことで前記雄継手と前記雌継手とを係合させる、請求項4に記載の管継手。
  6. 前記外周溝部は、前記弾性リング体の線径の1/3程度の深さに設定してあり、かつ、前記弾性リング体は、自然状態における内径が前記外周溝部の底と一致するように設定されていることを特徴とする請求項5に記載の管継手。
  7. 円弧状バネの歪み式を利用して求めた前記弾性リング体の拡径力(P)が0.42Kgf以上2.0Kgf以下になっている、請求項5又は6に記載の管継手。
  8. 軸部が設けられた雄継手と、前記軸部に対して軸挿入部を雌継手側の軸方向に沿って嵌め合わせることで、前記軸挿入部に設けられたロック部材が前記軸部に設けられたロック溝に入り込んで前記雄継手と係合可能な雌継手と、を備える管継手の、雄継手と雌継手の脱離方法であって、
    把持部に薄筒体が設けられた管継手用脱離治具を用意する準備工程と、
    前記雌継手の軸挿入部に係合された前記雄継手の前記軸部に、前記管継手用脱離治具の把持部を着脱自在に装着する装着工程と、
    前記軸部に装着された前記把持部を雌継手側の軸方向に移動することで、前記管継手用脱離治具の薄筒体が前記軸部と前記軸挿入部との間の隙間に入り込み、前記薄筒体によって前記ロック部材が前記ロック溝から脱離されて前記雄継手と前記雌継手との係合状態が解除される解除工程と、
    を備える、雄継手と雌継手の脱離方法。
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