JP2023155790A - 半導体装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体基板に複数の半導体素子がはんだ接合された半導体装置にて、はんだの変質による接合不良およびはんだの再溶融による半導体素子の位置ズレを抑制する。【解決手段】この半導体装置は、一面2aに複数の電極21を有する半導体基板2に、はんだ層323を含む接合部32を有する複数の半導体素子3が順次接合されてなる。複数の半導体素子3は、接合部32の構成が半導体素子3ごとに異なっており、溶融させたはんだ層の融点が低くなる順番で順次行われる。【選択図】図3B
Description
本発明は、半導体素子がはんだを介して基板に接合されてなる半導体装置およびその製造方法に関する。
従来、シリコン基板上に例えば光導波路、光スイッチ、光変調器、受光器などの光素子が搭載されてなる半導体装置が知られている。この種の半導体装置は、シリコン電子デバイスの技術を用いたシリコンフォトニクスにより、高集積かつ小型の光回路が実現される。また、光素子が例えば半導体レーザ等の光半導体素子である場合には、この種の半導体素子は、搭載されるシリコン基板とは異なる化合物半導体からなるため、当該シリコン基板とは別プロセスで製造された後に、当該シリコン基板にはんだを介して接合される。
この種の半導体装置の実装方法としては、例えば、非特許文献1に記載のものが挙げられる。非特許文献1に記載のフリップチップ実装は、シリコン基板上にAuSn(金錫)はんだを配置した後に、シリコン基板を加熱し、光半導体素子をAuSnはんだ上にマウントして、シリコン基板に複数の光半導体素子を実装する。
Hybrid Silicon Photonics Flip-Chip Laser Integration with Vertical Self-Alignment A. Moscoso-Martir et.al; 2017 Conference on Lasers and Electro-Optics Pacific Rim
本発明者らの鋭意検討の結果、上記のフリップチップ実装では、実装済みの光半導体素子が他の光半導体素子の実装時にAuSnはんだの再溶融による位置ズレや、光半導体素子が未実装のAuSnはんだの過熱や組成変化による融点変化が生じることが判明した。
本発明は、上記の点に鑑み、半導体基板上に当該半導体基板とは別工程で製造される複数の半導体素子をはんだ接合してなる半導体装置において、はんだの再溶融による半導体素子の位置ズレおよび実装前のはんだの融点変化を抑制することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の半導体装置の製造方法は、一面(2a)に複数の電極(21)を有する半導体基板(2)と、はんだ層(323)を有する複数の半導体素子(3)とを用意することと、はんだ層を用いて複数の電極ごとに異なる半導体素子を順次接合することと、を備え、半導体素子を順次接合することにおいては、溶融させたはんだ層の融点が低くなる順番で順次行う。
これによれば、半導体基板に複数の半導体素子をはんだ接合するのに際し、半導体基板の側にはんだを配置しないため、2回目以降の半導体素子のはんだ接合にて、はんだの過熱による酸化あるいは下地からの金属材料の混入によるはんだの融点変化が抑制される。また、半導体素子がはんだ層を有し、溶融した当該はんだ層の融点が低くなる順番、すなわち最初に接合する半導体素子ほど溶融したはんだ層の融点が高くなるように、順次接合を行うため、接合済みの半導体素子のはんだ層の再溶融が抑制される。そのため、はんだの再溶融による半導体素子の位置ズレおよび実装前のはんだの融点変化を抑制できる半導体装置の製造方法となる。
請求項12に記載の半導体装置は、一面(2a)に複数の電極(21)を有する半導体基板(2)と、接合層(4)を介して異なる電極に接合された複数の半導体素子(3)と、を備え、接合層は、はんだを有してなると共に、半導体素子ごとに異なる組成、かつ、融点が異なっている。
この半導体装置は、複数の半導体素子が、半導体基板の同一面上にはんだを有してなる接合層を介して接合されると共に、接合層が半導体素子ごとに異なる組成であって、融点が異なっている。そのため、融点が高い順に接合されることで、接合済みの半導体素子がはんだの再溶融によって位置ズレをしたり、実装前のはんだの融点変化により半導体素子の接合が阻害されたりすることがない構造の半導体装置となっている。
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置1について、図面を参照して説明する。本実施形態の半導体装置1は、例えば、半導体レーザ等の光デバイスを備える車載用のLiDAR等に適用されると好適であるが、勿論、他の用途にも適用されうる。なお、LiDARとは、Light Detection And Rangingの略称である。
第1実施形態に係る半導体装置1について、図面を参照して説明する。本実施形態の半導体装置1は、例えば、半導体レーザ等の光デバイスを備える車載用のLiDAR等に適用されると好適であるが、勿論、他の用途にも適用されうる。なお、LiDARとは、Light Detection And Rangingの略称である。
〔基本構成〕
半導体装置1は、例えば図1に示すように、一面2aに複数の電極21を有する半導体基板2と、複数の半導体素子3とを備える。半導体装置1は、複数の半導体素子3が、それぞれ接合層4を介して異なる電極21に接合されている。半導体装置1は、接合層4がはんだを有してなると共に、その組成および融点が半導体素子3ごとに異なっている。
半導体装置1は、例えば図1に示すように、一面2aに複数の電極21を有する半導体基板2と、複数の半導体素子3とを備える。半導体装置1は、複数の半導体素子3が、それぞれ接合層4を介して異なる電極21に接合されている。半導体装置1は、接合層4がはんだを有してなると共に、その組成および融点が半導体素子3ごとに異なっている。
半導体基板2は、例えば、Si(シリコン)等の半導体材料によりなり、通常の半導体プロセスにより得られる。半導体基板2は、一面2aを有する板状とされ、一面2aに複数の電極21が形成されている。半導体基板2は、光素子である複数の半導体素子3が搭載されると共に、半導体素子3と同数の図示しない導光路を備えた構成とされる。なお、導光路および電極の形成については、公知のため、本明細書ではその詳細な説明を省略する。
複数の電極21は、例えば、最表層がAu(金)によりなり、当該最表層が他の組成によりなる下層の上に積層された構成となっている。複数の電極21は、例えば、半導体基板2側からTi(チタン)層、Ni(ニッケル)層、Au層がこの順にスパッタリング等の成膜法により積層されてなり、Ti層およびNi層が下層、Au層が最表層である。複数の電極21は、例えば、成膜直後には下地からTi/Ni/Auとなっているが、半導体素子3の後述するはんだ層を介した接合により最表層のAuがはんだ層と混合し、接合層4を構成する。
なお、本明細書では、複数の電極21の最表層がAu単層で構成された場合を代表例として説明するが、これに限定されるものではなく、Au合金層であってもよいし、後述するはんだ層323の構成材料に応じて、他の材料によりなる層に適宜変更されてもよい。また、後述する下層211についても、上記の例に限定されるものでなく、構成材料や層の構成等が適宜変更されてもよい。
半導体素子3は、半導体材料により構成された光素子であり、例えば、半導体レーザ等の発光素子、光センサ等の受光素子あるいはこれらの複合素子等とされる。半導体素子3は、例えば図3Bに示すように、半導体基材31と、半導体基材31のうち半導体基板2への接合面側に形成された接合部32とを有してなる。
半導体基材31は、例えば、半導体基板2を構成する半導体材料とは異なる化合物半導体材料により構成され、半導体基板2とは別の公知の半導体プロセスにより、レーザ等の光素子として機能する図示しないデバイス領域が形成されている。半導体基材31を構成する化合物半導体材料としては、例えば、InPやGaAsなどが挙げられるが、これらに限定されない。
接合部32は、例えば図3Bに示すように、少なくとも、半導体基材31側から下地層321、中間層322、はんだ層323がこの順で積層されてなり、スパッタリング等の任意の成膜法により形成されている。下地層321層は、例えば、半導体基材31側からTi、Pt(白金)などが積層された積層体によりなり、中間層322層は、例えば、Auなどによりなり、はんだ層323は、例えば、AuSn(金錫)などによりなる。図3Bに示す接合部32は、半導体素子3を半導体基板2に搭載するために用いられ、その一部が半導体基板2の電極21の一部と共に、図3Cに示す接合層4を構成する。
以下、説明の便宜上、複数の半導体素子3のうち半導体基板2に最初に接合されたものを「第1半導体素子3A」と称し、第1半導体素子3Aに続いて半導体基板2に接合されたものから順に「第2半導体素子3B」、「第3半導体素子3C」と称する。
なお、本願明細書では、半導体基板2に3つの半導体素子3が搭載された場合を代表例として説明するが、これに限定されず、半導体基板2に搭載される半導体素子3の数については、2つであってもよいし、4つ以上であってもよく、適宜変更されうる。
接合部32は、半導体素子3ごと、例えば、第1半導体素子3A、第2半導体素子3B、第3半導体素子3Cそれぞれにおいて、その構成が異なっている。例えば、第1半導体素子3Aでは、接合部32は、図3Bに示すように、下地層321、中間層322およびはんだ層323からなる。第2半導体素子3B、第3半導体素子3Cでは、接合部32は、例えば図3Cに示すように、下地層321、中間層322およびはんだ層323に加えて、中間層322とはんだ層323との間にNi(ニッケル)などによりなる調整層324を有している。調整層324は、半導体素子3を半導体基板2に接合する際にはんだ層323と共に溶融し、これらが混合してなるはんだの融点を調整するために設けられる。調整層324は、はんだ層323と混合したときの組成比が半導体素子3ごとに異なる状態となるように、例えば、はんだ層323に対する膜厚比が半導体素子3ごとに変更される。これにより、半導体基板2と半導体素子3とを接合する接合層4が、半導体素子3ごとに異なる構成であって、その融点が異なる状態となる。
以下、説明の便宜上、接合層4のうち第1半導体素子3Aの直下のものを「第1接合層41」、第2半導体素子3Bの直下のものを「第2接合層42」、第3半導体素子3Cの直下のものを「第3接合層43」と、それぞれ称する。また、半導体基板2に搭載される半導体素子3の数がn(n:2以上の自然数)である場合、n番目に半導体基板2に接合される半導体素子3を「第n半導体素子3n」としたとき、第n半導体素子3nの直下の接合層4を「第n接合層4n」と称する。
接合層4は、例えば、AuSnやAuSnNiで構成されると共に、その組成が半導体素子3ごとに異なっている。接合層4は、例えば、第1接合層41、第2接合層42、第3接合層43、・・・第n接合層4nの順にその融点が低い組成比となっている。これは、複数の半導体素子3を半導体基板2に順次接合する際に、接合層4が以降の半導体素子3の接合時に再溶融し、接合済みの半導体素子3の位置ズレが生じることを抑制するためである。この詳細については、後述する。
以上が、半導体装置1の基本的な構成である。半導体装置1は、例えば、半導体基板2に複数の電極21のほか、これらに接続される図示しない回路や端子等が形成され、図示しない外部電源による複数の半導体素子3への電圧印加あるいは半導体素子3からの各種信号の出力等が可能な構成となっている。
〔製造方法〕
次に、本実施形態の半導体装置1の製造方法について説明するが、その前にまず、比較例の半導体装置における課題について、図2A、図2Bを参照して説明する。
次に、本実施形態の半導体装置1の製造方法について説明するが、その前にまず、比較例の半導体装置における課題について、図2A、図2Bを参照して説明する。
比較例の半導体装置は、例えば、図2Aに示すように、複数の電極21を有する半導体基板2に、複数の半導体素子5がAuSnからなるはんだ層6により接合されてなる。比較例の半導体装置では、複数の半導体素子5は、例えば光素子であるが、はんだ層6、すなわち接合部32に相当する部位を有していない点で半導体素子3と相違する。
本発明者らの鋭意検討により、比較例の半導体装置では、複数の半導体素子5の一部において位置ズレや接合不良が生じることが判明した。具体的には、比較例の半導体装置は、例えば、図2A、図2Bに示すように、半導体基板2の複数の電極21それぞれの上に予めはんだ層6を配置し、半導体基板2および半導体素子5を加熱しつつ、複数の半導体素子5を順次接合して得られる。
以下、説明の便宜上、最初に半導体基板2に接合する半導体素子5を「第1の半導体素子5A」、第1の半導体素子5Aの次に半導体基板2に接合する半導体素子5を「第2の半導体素子5B」とそれぞれ称する。
比較例の半導体装置は、例えば図2Bに示すように、第2の半導体素子5Bを接合する際に、半導体基板2や第2の半導体素子5Bの加熱による熱が、第1の半導体素子5Aの直下のはんだ層6や半導体素子5を実装する前のはんだ層6に伝搬する。このとき、第1の半導体素子5Aの直下のはんだ層6が再溶融すると、第1の半導体素子5Aの位置ズレが生じてしまう。また、半導体素子5を実装する前のはんだ層6については、過熱により酸化したり、電極21の構成材料がはんだ層6に混入したりすることで、組成が変化した変性はんだ層61となり、その融点が変化してしまう。特に、融点が上昇した場合には、溶融が不十分となって、半導体素子5の接合不良が生じうる。このような半導体素子5の位置ズレや接合不良は、高集積・小型化の際に特に問題となる。
これに対して、本実施形態の半導体装置1は、例えば図3A、図3Bに示すように、半導体基板2側でなく、半導体素子3が接合部32を有した構成とされ、このような複数の半導体素子3が半導体基板2に順次接合されることで製造される。
具体的には、半導体基板2は、例えば図3Aに示すように、複数の電極21が基板側からTi、Niの順に積層されてなる下層211と、Auからなる最表層212とを積層した構成とされる。最表層212は、例えば、100nm程度の厚みとされるが、接合層4の融点調整の観点から、はんだ層323の厚みに応じて適宜変更される。そして、比較例の半導体装置の製造とは異なり、半導体基板2は、はんだ層323に相当する層が設けられてない。これにより、半導体素子3の接合前に、はんだが過熱による酸化や意図しない材料の混入によって融点が変化することが抑制される。
一方、第1半導体素子3Aは、例えば図3Bに示すように、接合部32が、半導体基材31側からTi、Ptがこの順に積層された下地層321と、Auからなる中間層322と、AuSnからなるはんだ層323とを有してなる。下地層321、中間層322およびはんだ層323は、例えば、その平面サイズが同一となっており、電極21の平面サイズと同一とされるが、これに限定されない。第1半導体素子3Aは、半導体基板2に接合することで形成される第1接合層41が、はんだ層323よりもその融点が上昇する組成となるように中間層322およびはんだ層323の構成材料とこれらの膜厚比とが調整されている。また、半導体基板2の電極21の最表層212についても、接合層4の融点をはんだ層323よりも高くする観点から、はんだ層323との膜厚比が調整されている。
具体的には、はんだ層323は、例えば、Auが80wt%以上、かつ残部がSn(すなわちSnが20wt%以下)のAuSnとされる。例えば、AuおよびSnからなるAuSnは、AuとSnの重量比率を変えた場合、例えば図4に示すように、その融点が変化する。なお、図4に示すAuSnの組成比に対する融点の変化は、例えば、非特許文献のT.B.Massalski Editor-in-chief, Binary Alloy Phase Diagrams, ASM, (1984), pp.315-317.などで報告されている。
この場合、AuSnは、Auが80wt%以上になると、Auの重量比率が増加するにつれて、その融点が上昇する。そこで、電極21の最表層212および中間層322をAu単膜、はんだ層323を少なくともAuが80wt%以上のAuSnとすることで、これらが溶融して形成される第1接合層41は、はんだ層323よりもAuの重量比率が高いAuSnとなる。その結果、第1接合層41は、その融点がはんだ層323よりも高くなり、第2半導体素子3B以降の半導体素子3の接合工程において再溶融することが抑制され、第1半導体素子3Aの位置ズレを抑制できる構成となる。
例えば、半導体基板2の最表層212を厚み100nmのAuで構成し、第1半導体素子3Aの中間層322を厚み100nmのAuで、はんだ層323を厚み2μm、80wt%のAu-20wt%SnのAuSn(比重14.52)で、それぞれ構成する。そして、第1半導体素子3Aを半導体基板2の電極21上に配置した後、例えば、図示しない搬送装置の加熱機構により300℃で加熱し、はんだ層323を溶融させてから固化させ、半導体基板2に接合する。これにより、第1半導体素子3Aは、例えば図3Cに示すように、その直下に第1接合層41が形成され、半導体基板2に固定される。
この場合、溶融したはんだ層323(AuSn)に中間層322および電極21の最表層212の上下のAuが拡散し、Auの含有量が最大で2.3wt%上昇する。つまり、第1接合層41は、82wt%Au-18wt%SnのAuSnとなり、その融点が約380℃と、80wt%Au-20wt%SnのAuSnの融点約280℃よりも高くなる。このように、電極21の最表層212、半導体素子3の中間層322およびはんだ層323の材料、組成比および膜厚比を調整することで、接合層4を再溶融しない状態に制御でき、接合後の半導体素子3の位置ズレを抑制することができる。
そして、第2半導体素子3Bは、例えば図3Cに示すように、接合部32が、下地層321、中間層322およびはんだ層323に加えて、中間層322とはんだ層323との間に配置される調整層324を有してなる。調整層324は、例えば、Ni(ニッケル)のように、AuSnで構成されたはんだ層323を溶融させた際に、はんだ層323内に拡散し、溶融はんだの融点を低下させる材料で構成される。
例えば、所定の組成のAuSnにおいてNiの重量比率を変えた場合、AuSnNiは、例えば図5に示すように、Niの重量比率が0wt%~2.5wt%の範囲内においては、Niの重量比率が増加するにつれてその融点が低下する。また、AuSnNiは、Niの重量比率が2.5wt%において融点が極小値となるものの、Niの重量比率が2.5wt%を超えると、その融点が高くなる。
そこで、本実施形態の半導体装置1においては、AuSnNiにおけるNiの重量比率を0wt%~2.5wt%の範囲内とし、第2半導体素子3B以降の半導体素子3ほど溶融はんだ中のNiの重量比率が大きくなるように調整されている。例えば、第2半導体素子3B以降の半導体素子3におけるAuSnNi中のNiの重量比率(wt%)を、半導体基板2への接合順に、それぞれ、x1、x2、・・・、x(n-1)とすると、0<x1<x2<・・・<x(n-1)≦2.5となるように調整する。
なお、ここでは、半導体基板2に接合する半導体素子3の数をnである場合において、第1半導体素子3Aの接合部32が調整層324を有しないため、第n半導体素子3nにおけるAuSnNi中のNiの重量比率は、x(n-1)となっている。ただ、第1半導体素子3Aとして接合部32が調整層324を有する構成のものを用いてもよい。この場合には、第1半導体素子3Aから第n半導体素子3nにおけるAuSnNi中のNiの重量比率は、x1、x2、・・・、xnとなり、0<x1<・・・<xn≦2.5となるように調整する。
これにより、複数の半導体素子3のうち後に半導体基板2に接合されるものほど、溶融はんだの融点を低下させることが可能となる。その結果、後に接合する半導体素子3ほど接合時の加熱温度を低下させることもでき、その前に接合された半導体素子3の直下にある接合層4が再溶融することをより確実に抑制することができる。
なお、ここでは、半導体素子3の接合時の加熱温度を順次低下させる例について説明したが、これに限定されるものではなく、一連の半導体素子3の接合を、接合時の加熱温度を変更せずに行っても特に支障はない。
第3半導体素子3Cは、例えば図3Dに示すように、接合部32が、第2半導体素子3Bと同様であるが、調整層324のはんだ層323に対する膜厚比が大きくなっている。言い換えると、はんだ層323に対する調整層324の膜厚比により、AuSnNiによりなる溶融はんだにおけるNiの重量比率を制御している。これにより、はんだ層323を溶融させた際にAuSnNi中のNiの重量比率が、第2半導体素子3Bよりも大きくなり、溶融はんだの融点がさらに小さくなる。
つまり、複数の半導体素子3の一部は、接合部32が調整層324を有すると共に、半導体基板2に対して後に接合するものほど、はんだ層323に対する調整層324の膜厚比が高い構成とされている。例えば、はんだ層323が80wt%Au-20wt%SnのAuSn、調整層324がNiで構成される場合において、はんだ層323の膜厚をdAuSnとし、調整層324の膜厚を半導体基板2への接合順に、d1、d2、・・・、d(n-1)とする。この場合、調整層324は、0<d1<d2<・・・<d(n-1)≦0.042×dAuSnとなるように調整される。
なお、ここでは、半導体基板2に接合する半導体素子3の数をnである場合において、第1半導体素子3Aの接合部32が調整層324を有しないため、第n半導体素子3nにおける調整層324の厚みは、d(n-1)となっている。ただ、第1半導体素子3Aとして接合部32が調整層324を有する構成のものを用いてもよい。この場合には、第1半導体素子3Aから第n半導体素子3nにおける調整層324の膜厚は、d1、d2、・・・、dnとなり、0<d1<・・・<dn≦0.042×dAuSnとなるように調整する。
これにより、AuSnNiによりなる溶融はんだは、Niが0wt%より大きく、2.5wt%以下の範囲内であって、半導体基板2への接合順に、Niの重量比率が増加し、その融点が図5に示すように、徐々に低下する構成となる。なお、Niの重量比率が2.5wt%のとき、AuSnNiにおけるAuの重量比率は、78wt%であり、少なくとも78wt%以上となっている。
具体的には、例えば、第2半導体素子3Bは、接合部32を、厚み67nmのNiの調整層324、80wt%Au-20wt%Snの組成であって、厚み2μmのAuSnのはんだ層323を積層した構成とする。そして、第2半導体素子3Bを加熱し、はんだ層323を溶融させたとき、調整層324のNiがはんだ層323のAuSn中に拡散し、溶融はんだは、最大で2wt%のNiを含有するAuSnNiとなる。すると、溶融はんだは、その融点が、80wt%Au-20wt%SnのAuSnの融点(約280℃)よりも低い約270℃となる。例えば、この場合、第1半導体素子3Aの実装時における加熱温度が300℃で行ったとき、加熱温度を300℃のまま第2半導体素子3Bの実装を行ってもよいが、融点が低下した組成となるため、加熱温度を290℃といった具合に下げることも可能となる。その一方、電極21の最表層212が厚み100nmのAuの半導体基板2に第2半導体素子3Bを接合し、形成される第2接合層42は、上記のAuSnNi中に中間層322および最表層212のAuが拡散し、Snに対するAuの重量比率が最大で約2.3wt%増加する。その結果、第2接合層42は、融点が約100℃上昇した組成となり、第3半導体素子3C以降の接合時に再溶融することが抑制される。
また、例えば、第3半導体素子3Cは、接合部32を、厚み84nmのNiの調整層324、80wt%Au-20wt%Snの組成であって、厚み2μmのAuSnのはんだ層323を積層した構成とする。そして、第3半導体素子3Cを加熱し、はんだ層323を溶融させたとき、調整層324のNiがはんだ層323のAuSn中に拡散し、溶融はんだは、最大で2.5wt%のNiを含有するAuSnNiとなる。すると、溶融はんだは、その融点が、80wt%Au-20wt%SnのAuSnの融点(約280℃)よりも低い約255℃となる。その一方、電極21の最表層212が厚み100nmのAuの半導体基板2に第3半導体素子3Cを接合し、形成される第3接合層43は、上記のAuSnNi中に最表層212のAuが拡散し、Snに対するAuの重量比率が最大で約2.3wt%増加する。その結果、第3接合層43は、融点が約100℃上昇した組成となり、第3半導体素子3Cよりも後の半導体素子3の接合時に再溶融することが抑制される。
本実施形態の半導体装置1は、例えば、上記した工程により製造することができる。
本実施形態によれば、半導体基板2側に接合用のはんだを設けず、複数の半導体素子3側にはんだ層323を含む接合部32を設け、接合部32の構成を半導体素子3ごとに変更し、その融点が高い順番で半導体基板2に順次接合を行う。そして、半導体基板2の電極21の最表層212、半導体素子3の中間層322およびはんだ層323により、接合前のはんだ層323よりも融点が高い組成の接合層4を形成する。
そのため、半導体装置1の製造時において、未実装のはんだが過熱や下地金属の拡散等による組成変化によってその融点が変化し、半導体素子3の接合不良が生じることが抑制される。また、接合層4が接合前のはんだ層323よりも融点が高い組成に変化することで、他の半導体素子3を半導体基板2に実装する際に、接合層4が再溶融し、実装済みの半導体素子3の位置ズレが抑制される。よって、この半導体装置1は、半導体基板2に光素子である複数の半導体素子3がはんだを介して搭載されつつも、位置ズレや接合不良が抑制され、高集積化・小型化に適した構造となっている。
(第2実施形態)
第2実施形態の半導体装置1について、図面を参照して説明する。
第2実施形態の半導体装置1について、図面を参照して説明する。
本実施形態の半導体装置1は、例えば図6Aに示すように、接合前の半導体素子3の接合部32がはんだ層323を覆う被覆層325を有し、半導体素子3ごとに被覆層325の厚みが異なっている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
複数の半導体素子3は、本実施形態では、接合前において、接合部32が下地層321、中間層322、Niで構成された調整層324、はんだ層323および被覆層325を有し、これらが半導体基材31側からこの順に積層されてなる。
被覆層325は、例えば、はんだ層323がAuSnである場合には、Auにより構成される。被覆層325は、接合層4を構成する材料の組成比、ひいてはその融点を調整するために設けられる層であり、半導体素子3ごとにはんだ層323に対する膜厚比が異なっている。被覆層325は、例えば、Auで構成され、はんだ層323がAuSnである場合には、中間層322、はんだ層323、被覆層325および最表層212の全体におけるAuの重量比率が78wt%以上となるようにその膜厚が調整されている。つまり、複数の半導体素子3は、本実施形態では、被覆層325の厚みが大きいほど、はんだ層323を溶融させた状態における融点が相対的に高い構成となっている。
本実施形態では、例えば図6Aに示すように、複数の半導体素子3のうち被覆層325が最も厚い第1半導体素子3Aが最初に半導体基板2に接合される。続いて、例えば図6Bに示すように、第1半導体素子3Aの次に被覆層325の厚みが厚い第2半導体素子3Bが半導体基板2に接合される。その後、例えば図6Cに示すように、第2半導体素子3Bの次に被覆層325の厚みが厚い第3半導体素子3Cが半導体基板2に接合される。このように、複数の半導体素子3を、接合部32の一部を溶融させた際に生じる溶融はんだの融点が高い順に、順次、半導体基板2に接合することで、本実施形態の半導体装置1が得られる。
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる半導体装置1およびその製造方法となる。
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
(1)上記各実施形態では、はんだ層323がAu80wt%、Sn20wt%のAuSnである場合を代表例として説明したが、これに限定されるものではなく、その組成については適宜変更されてもよい。例えば、はんだ層323は、接合時に用いる加熱装置の温度上限が400℃の場合にはAuが80wt%~82wt%以内のAuSnに、当該温度上限が450℃の場合にはAuが80wt%~86wt%以内のAuSnといった具合に、その組成が変更されうる。このように、加熱装置あるいは半導体基板2もしくは半導体素子3の加熱温度の上限に合わせて、はんだ層323の組成は、適宜変更されうる。
(2)上記各実施形態では、複数の半導体素子3を半導体基板2に実装する際に、半導体基板2および半導体素子3の両方を加熱する例について説明したが、半導体基板2または半導体素子3のうち一方のみを加熱するものであってもよい。
(3)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
2 半導体基板
2a 一面
21 電極
212 最表層
3 半導体素子
321 下地層
323 はんだ層
324 調整層
325 被覆層
2a 一面
21 電極
212 最表層
3 半導体素子
321 下地層
323 はんだ層
324 調整層
325 被覆層
Claims (18)
- 半導体装置の製造方法であって、
一面(2a)に複数の電極(21)を有する半導体基板(2)と、はんだ層(323)を有する複数の半導体素子(3)とを用意することと、
前記はんだ層を用いて複数の前記電極ごとに異なる前記半導体素子を順次接合することと、を備え、
前記半導体素子を順次接合することにおいては、溶融させた前記はんだ層の融点が低くなる順番で順次行う、半導体装置の製造方法。 - 複数の前記半導体素子を用意することにおいては、一部の前記半導体素子は、Auで構成された中間層(322)、Niで構成された調整層(324)、およびAuSnで構成された前記はんだ層がこの順に積層されており、
前記半導体素子を順次接合することにおいては、複数の前記半導体素子のうち前記調整層を有する前記半導体素子については、前記はんだ層に対する前記調整層の厚みが薄い順に順次接合を行う、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。 - 前記調整層を有する複数の前記半導体素子は、それぞれ、前記はんだ層に対する前記調整層の厚みが異なると共に、前記はんだ層および前記調整層の全体におけるNiの重量比率が0wt%より大きく、かつ2.5wt%以下の範囲内である、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記はんだ層は、Auが80wt%、Snが20wt%のAuSnで構成されている、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記調整層を有する複数の前記半導体素子は、前記はんだ層に対する前記調整層の膜厚比が0.042以下である、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
- 複数の前記半導体素子を用意することにおいては、一部の前記半導体素子は、Auで構成された中間層(322)、Niで構成された調整層(324)、AuSnで構成された前記はんだ層、およびAuで構成された被覆層(325)がこの順に積層されており、
前記半導体素子を順次接合することにおいては、複数の前記半導体素子のうち前記被覆層を有する前記半導体素子については、前記はんだ層に対する前記被覆層の厚みが厚い順に順次接合を行う、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。 - 前記被覆層を有する複数の前記半導体素子は、それぞれ、前記はんだ層に対する前記調整層の厚み、および前記はんだ層に対する前記被覆層の厚みが異なると共に、前記はんだ層および前記調整層の全体におけるNiの重量比率が0wt%より大きく、かつ2.5wt%以下の範囲内であり、かつ、前記中間層、前記はんだ層、前記被覆層および前記電極の最表層(212)の全体におけるAuの重量比率が78wt%より大きく、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記半導体素子を順次接合することにおいては、接合ごとに、前記半導体素子の加熱温度を順次低くする、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
- 前記半導体基板を用意することにおいては、複数の前記電極の最表層(212)がAuで構成された前記半導体基板を用意する、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
- 複数の前記半導体素子は、光素子である、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記半導体基板を用意することにおいては、複数の前記半導体素子と同数の導光路を有する前記半導体基板を用意する、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
- 半導体装置であって、
一面(2a)に複数の電極(21)を有する半導体基板(2)と、
接合層(4)を介して異なる前記電極に接合された複数の半導体素子(3)と、を備え、
前記接合層は、はんだを有してなると共に、前記半導体素子ごとに異なる組成、かつ、融点が異なっている、半導体装置。 - 前記接合層は、Niの重量比率が異なるAuSnNiからなるものを含み、
前記接合層のうちAuSnNiからなるものにおけるNiの重量比率は、0wt%より大きく、かつ2.5wt%未満の範囲内である、請求項12に記載の半導体装置。 - 前記接合層のうちAuSnNiからなるものにおけるAuの重量比率は、78wt%よりも大きい、請求項13に記載の半導体装置。
- 前記接合層は、Auの重量比率が異なるAuSnNiからなるものを含み、
前記接合層のうちAuSnNiからなるものにおけるAuの重量比率は、78wt%より大きい、請求項12に記載の半導体装置。 - 前記接合層のうちAuSnNiからなるものにおけるNiの重量比率は、0wt%より大きく、かつ2.5wt%未満の範囲内である、請求項13に記載の半導体装置。
- 複数の前記半導体素子は、光素子である、請求項12ないし16のいずれか1つに記載の半導体装置。
- 前記半導体基板は、複数の前記半導体素子と同数の導光路を有する、請求項17に記載の半導体装置。
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