JP2023155710A - パルスアーク溶接制御方法 - Google Patents

パルスアーク溶接制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023155710A
JP2023155710A JP2022065198A JP2022065198A JP2023155710A JP 2023155710 A JP2023155710 A JP 2023155710A JP 2022065198 A JP2022065198 A JP 2022065198A JP 2022065198 A JP2022065198 A JP 2022065198A JP 2023155710 A JP2023155710 A JP 2023155710A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
voltage
welding
value
current
arc
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022065198A
Other languages
English (en)
Inventor
春菜 下新原
Haruna Shimonihara
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daihen Corp
Original Assignee
Daihen Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daihen Corp filed Critical Daihen Corp
Priority to JP2022065198A priority Critical patent/JP2023155710A/ja
Publication of JP2023155710A publication Critical patent/JP2023155710A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】消耗電極パルスアーク溶接において、磁気吹きが発生しても、アーク長制御を安定に維持すること。【解決手段】溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びベース電流の通電を1周期とする溶接電流Iwを通電し、溶接電圧Vwを検出し、溶接電圧の検出値Vdを基準電圧波形Vcを中心電圧値とする許容範囲Vc±ΔVc内に制限して電圧制限値Vftを算出し、電圧制限値Vftに基づいて溶接電圧Vwを出力制御するパルスアーク溶接制御方法において、溶接電圧Vwの上昇に基づいて磁気吹きを判別Hdし、磁気吹きを複数周期連続して判別Hdしたときは、許容範囲ΔVcを狭くする。【選択図】 図5

Description

本発明は、消耗電極パルスアーク溶接の磁気吹き抑制制御方法に関するものである。
ピーク電流及びベース電流から形成される溶接電流を通電して溶接するパルスアーク溶接方法が広く使用されている。パルスアーク溶接を含む消耗電極式アーク溶接では、溶接ワイヤの先端と母材との最短距離である見かけのアーク長(以下、単にアーク長という)を適正値に維持することが、良好な溶接品質を得るためには重要である。このために、溶接電源はアーク期間中は定電圧制御される。これは、アーク長と溶接電圧とが比例関係にあることを利用して、アーク長を溶接電圧で検出し、この溶接電圧検出値が適正アーク長に相当する電圧設定値と等しくなるように出力制御することでアーク長を適正値に維持するためである。したがって、このアーク長制御の安定化のためには、アーク長を溶接電圧によって高精度に検出する必要がある。
消耗電極式アーク溶接は電極プラス極性EPで行うのが通常であるので、溶接ワイヤ先端部に陽極点が形成され、母材表面に陰極点が形成されて、陽極点と陰極点との間にアークが発生する。陽極点はワイヤ先端部付近に形成された状態でほとんど移動しない。これに対して、陰極点は、母材表面の酸化皮膜のある部分を目指してふらふらと移動する。さらに、陰極点は、母材表面の汚れ、溶融池の運動状態、溶融池からのガス放出等によってもふらつく。短時間に陰極点の形成位置が変化しても見かけのアーク長は変化しない。これは、見かけのアーク長はワイヤ送給速度とワイヤ溶融速度との差によって変化するために、十数ms以下の短時間では微小にしか変化できない。しかし、上述した種々の原因によって陰極点がふらつくと溶接電圧に異常電圧が重畳する。この異常電圧は見かけのアーク長とは何ら比例しない電圧である。このために、この異常電圧が重畳した溶接電圧に基づいて出力制御を行うと、アーク長制御系が不安定になり、溶接品質が悪くなる。溶接電圧検出値から異常電圧を除去して見かけのアーク長と比例関係にある溶接電圧検出値を生成する方法が特許文献1に開示されている。
また、鉄鋼等のパルスアーク溶接においては、母材を通電する溶接電流によってアーク発生部の周辺に磁界が形成されて、この磁界からアークは力を受けて変形する場合がよくある。このような状態を、一般的に磁気吹き又はアークブローと呼んでいる。磁気吹きの発生状態がひどくなると、アークは大きく変形してアーク長が非常に長くなり、アークを維持することができなくなり、アーク切れを発生することになる。アーク切れが発生すると、溶接品質は悪くなる。このために、パルスアーク溶接においては、磁気吹き対策は大きな課題である。
特許文献2の発明では、ベース期間中の溶接電圧の上昇率が基準上昇率以上になったことを検出して磁気吹きが発生したと判別し、ベース電流を増加させる磁気吹き抑制制御を行っている。磁気吹きは、電流値が小さいためにアークの硬直性が弱くなるベース期間中に発生する。磁気吹きによってアーク長が長くなると、溶接電圧が大きくなることを利用して、磁気吹きの発生を判別している。また、ベース電流を増加させると、アークの硬直性が強くなり、磁界から力を受けてもアークの変形を抑制することができる。この結果、アーク切れを防止することができる。
特許第426388号公報 特許第4319432号公報
上述したように、パルスアーク溶接においては、陰極店のふらつき等に伴い溶接電圧に見かけのアーク長とは比例しない異常電圧が重畳する。これに加えて、磁気吹きが発生した場合には、アークの変形に伴う異常電圧が加算されることになる。このために、磁気吹きが発生している場合において、磁気吹きが発生していない場合と同じ異常電圧除去制御を行っていると、異常電圧を十分に除去することができずに、アーク長制御が不安定になるという問題がある。
そこで、本発明では、磁気吹きが発生している場合でも、異常電圧を十分に除去して安定したアーク長制御を行うことができるパルスアーク溶接制御方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びベース電流の通電を1周期とする溶接電流を通電し、溶接電圧を検出し、前記溶接電圧の検出値を基準電圧波形を中心電圧値とする許容範囲内に制限して電圧制限値を算出し、前記電圧制限値に基づいて前記溶接電圧を出力制御するパルスアーク溶接制御方法において、
前記溶接電圧の上昇に基づいて磁気吹きを判別し、
前記磁気吹きを判別したときは前記許容範囲を狭くする、
ことを特徴とするパルスアーク溶接制御方法である。
請求項2の発明は、
前記磁気吹きを複数回判別したときは、前記許容範囲を狭くする、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
請求項3の発明は、
前記磁気吹きを複数周期連続して判別したときは、前記許容範囲を狭くする、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
請求項4の発明は、
前記許容範囲を狭くしたときは、前記ベース電流を増加させる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
本発明に係るパルスアーク溶接制御方法によれば、磁気吹きが発生している場合でも、異常電圧を十分に除去して安定したアーク長制御を行うことができる。
本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を示す波形図である。 本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法において、異常電圧を除去するために使用する基準電圧波形Vcの設定方法を示す図である。 本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法において、短絡解除直後のアーク再点弧に伴う異常電圧発生時の電圧波形図である。 本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法において、図2で上述した基準電圧波形Vcを自動設定する方法を説明するための電圧制限値Vftの時間変化を示す図である。 本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法において、磁気吹きが発生した場合の図5の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を示す波形図である。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示す。同図は、磁気吹きが発生していない状態の波形図である。以下、同図を参照して説明する。
同図(A)に示すように、時刻t1~t2のピーク立上り期間Tup中は、ベース電流Ibからピーク電流Ipへと上昇する遷移電流が通電し、続いて時刻t2~t3のピーク期間Tp中は、上記のピーク電流Ipが通電し、続いて時刻t3~t4のピーク立下り期間Tdw中は、上記のピーク電流Ipから上記のベース電流Ibへと下降する遷移電流が通電し、続いて時刻t4~t5のベース期間Tb中は、上記のベース電流Ibが通電する。また、上記の溶接電流Iwの通電に対応して、同図(B)に示すように、上記のピーク立上り期間Tup中は、ベース電圧Vbからピーク電圧Vpへと上昇する遷移電圧が印加し、続いて上記のピーク期間Tp中は、上記のピーク電圧Vpが印加し、続いて上記のピーク立下り期間Tdw中は、上記のピーク電圧Vpから上記のベース電圧Vbへと下降する遷移電圧が印加し、続いて上記のベース期間Tb中は、上記のベース電圧Vbが印加する。時刻t1~t5の期間を1パルス周期Tfとして繰り返して溶接が行われる。
良好な溶接品質を得るためにアーク長を適正値に維持するアーク長制御が行われる。通常、このアーク長制御は、溶接電圧Vwがアーク長と略比例関係にあることを利用して、溶接電圧Vwの平均値が予め定めた電圧設定値と等しくなるようにパルス周期が制御される。このアーク長制御の方式は、周波数変調方式と呼ばれる。この場合、ピーク期間Tp、ピーク電流Ip及びベース電流Ibは所定値に設定され、パルスパラメータとなる。ピーク電流Ipは臨界値以上に設定され、ピーク期間Tpと組み合わせてユニットパルス条件と呼ばれる。このユニットパルス条件は、1パルス周期1溶滴移行になるように設定される。ベース電流Ibは、臨界値未満の数十A程度の小電流値に設定される。ユニットパルス条件及びベース電流Ibは、溶接ワイヤの材質、直径、送給速度等に応じて適正値に設定される。アーク長制御の方式には、上記の周波数変調方式以外にパルス幅変調方式がある。このパルス幅変調方式では、パルス周期Tf、ピーク電流Ip及びベース電流Ibが所定値に設定され、溶接電圧Vwの平均値が予め定めた電圧設定値と等しくなるようにピーク期間Tpが制御される。
各パラメータの数値例を以下に示す。
母材:軟鋼、溶接ワイヤ:直径1.2mmのソリッドワイヤ、シールドガス:アルゴン80%+炭酸ガス20%、溶接電流:100A、溶接電圧:22.5V、ピーク電流Ip:450A、ピーク期間Tp:1.0ms、ベース電流Ib:40A
ところで、パルスアーク溶接においては、アークの陰極点は母材表面の酸化皮膜が存在する位置に形成される性質を有している。アークによって酸化皮膜は除去(クリーニング)されていくので、陰極点は酸化皮膜が残っている個所を求めて周辺部へと移動して形成されるようになる。この結果、アークは常に移動している不安定な状態になるために、短絡が発生しやすくなる。溶接ワイヤと母材とが短絡しその短絡が解除されてアークが再点弧したとき、母材表面の酸化皮膜の不均一に起因するアーク陰極点のふらつき現象が発生したとき等において、異常電圧が溶接電圧Vwに重畳することになる。この異常電圧はアーク長とは比例しない電圧であるので、アーク長を正確に検出するためには溶接電圧Vwに重畳した異常電圧を除去する必要がある。この除去のための方法としては、パルス波形の基準電圧波形Vc及び許容範囲ΔVcを設定し、溶接電圧VwがVc±ΔVcの範囲外になる部分は異常電圧であるとしてカットするようにしている。以下、この異常電圧除去制御について説明する。
図2は、上記の基準電圧波形Vcの設定方法を示す図である。まず、図4で後述するように、基準ピーク電圧値Vpc、基準ベース電圧値Vbc及び許容範囲ΔVcを設定する。そして、同図に示すように、ピーク立上り期間Tupの開始時点を0秒とする経過時間tによって、下式のように基準電圧波形Vcが定義される。
0≦t<Tup
Vc=((Vpc-Vbc)/Tup)・t+Vbc (11)式
Tup≦t<Tup+Tp
Vc=Vpc (12)式
Tup+Tp≦t<Tup+Tp+Tdw
Vc=((Vbc-Vpc)/Tdw)・(t-Tup-Tp)+Vpc (13)式
Tup+Tp+Tdw≦t<Tup+Tp+Tdw+Tb
Vc=Vbc (14)式
例えば、同図に示すように、経過時間t=taにおける溶接電圧検出値がVd1であったとする。経過時間taはTup+Tp≦ta<Tup+Tp+Tdwのときであるので、上記(13)式に代入して、基準電圧波形の中心電圧値Vc1は下式となる。
Vc1=((Vbc-Vpc)/Tdw)・(ta-Tup-Tp)+Vpc
したがって、経過時間taのときの溶接電圧検出値Vd1は、許容範囲Vc1±ΔVc内に制限される。すなわち、Vd1≧Vc1+ΔVcのときには電圧制限値Vft1=Vc1+ΔVcに制限され、Vd1≦Vc1-ΔVcのときにはVft1=Vc1-ΔVcに制限される。このようにして算出された電圧制限値Vftは、異常電圧が略除去されたアーク長に略比例する電圧値となる。
図3は、短絡解除直後のアーク再点弧に伴う異常電圧発生時の電圧波形図である。同図(A)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(B)は基準電圧波形によって異常電圧を除去した後の電圧制限値Vftの時間変化を示す。同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは、基準電圧波形を中心電圧値Vcとする許容範囲Vc±ΔVc内に制限される。この結果、時刻t1~t2の短絡期間中の電圧制限値Vft=Vc-ΔVcとなり、時刻t2~t3の異常電圧発生期間中の電圧制限値Vft=Vc+ΔVcとなる。このように、異常電圧を略除去することができる。
図4は、図2で上述した基準電圧波形Vcを自動設定する方法を説明するための電圧制限値Vftの時間変化を示す図である。同図において、現時点は時刻tnであり、第n回目のパルス周期Tf(n)の開始時点である。また、第n-1回目のパルス周期Tf(n-1)におけるピーク期間のみの電圧制限値の平均値がピーク電圧制限値Vpf(n-1)であり、ベース期間のみの電圧制限値の平均値がベース電圧制限値Vbf(n-1)である。同様に、第n-m回目のパルス周期Tf(n-m)におけるピーク期間のみの電圧制限値の平均値がピーク電圧制限値Vpf(n-m)であり、ベース期間のみの電圧制限値の平均値がベース電圧制限値Vbf(n-m)である。
時刻tnにおいて、上記の第(n-1)~第(n-m)回目のピーク電圧制限値Vpfを入力として、下式のようにピーク電圧移動平均値Vpr(n)を算出する。
Vpr(n)=(Vpf(n-1)+…+Vpf(n-m))/m (21)式
同様に、時刻tnにおいて、上記の第(n-1)~第(n-m)回目のベース電圧制限値Vbfを入力として、下式のようにベース電圧移動平均値Vbr(n)を算出する。
Vbr(n)=(Vbf(n-1)+…+Vbf(n-m))/m (22)式
そして、上述した(11)~(14)式において、基準ピーク電圧値Vpcに上記のピーク電圧移動平均値Vprを代入し、かつ、基準ベース電圧値Vbcに上記のベース電圧移動平均値Vbrを代入すると、下式のように第n回目のパルス周期Tf(n)期間中の基準電圧波形が自動設定される。
0≦t<Tup
Vc(n)=((Vpr(n)-Vbr(n))/Tup)・t+Vbr(n) (31)式
Tup≦t<Tup+Tp
Vc(n)=Vpr(n) (32)式
Tup+Tp≦t<Tup+Tp+Tdw
Vc(n)=((Vbr(n)-Vpr(n))/Tdw)・(t-Tup-Tp)+Vpr(n) (33)式
Tup+Tp+Tdw≦t<Tup+Tp+Tdw+Tb
Vc(n)=Vbr(n) (34)式
上述したように、パルス周期の開始時点ごとに、上記のピーク電圧移動平均値Vpr及びベース電圧移動平均値Vbrを算出し、上記(31)式~(34)式によって基準電圧波形が自動設定される。上記において、ピーク電圧移動平均値Vprを算出するときに、ピーク電圧制限値Vpfを重み付け移動平均して算出しても良い。同様に、ベース電圧移動平均値Vbrを算出するときに、ベース電圧制限値Vbfを重み付け移動平均して算出しても良い。また、移動平均する期間の長さ(所定期間)は、過去数周期~数十周期程度に設定する。この所定期間は、溶接ワイヤの材質、直径、送給速度、溶接速度、溶接継手等の溶接条件に応じて実験によって適正値に設定される。アークスタートからm回のパルス周期Tfが経過するまでは、上記のピーク電圧移動平均値Vpr及び上記のベース電圧移動平均値Vbrを(21)式及び(22)式に基づいて算出することができない。そこで、この期間中は、ピーク電圧初期値及びベース電圧初期値を予め設定しておき、ピーク電圧移動平均値Vpr及びベース電圧移動平均値Vbrとして使用するようにする。
上述したように、溶接電圧Vwには、送給速度の変動、トーチ高さの変動、溶融池状態の変動等に起因する本来のアーク長の変動に伴う電圧変動と、陰極点の移動に等に起因する異常電圧とが重畳している。このアーク長の変動に伴う電圧変動は、アーク長制御を行うために正確に検出する必要がある。他方、アーク長の変動とは関係しない異常電圧については、できる限り除去することが、精密なアーク長制御を行うためには望ましい。ここで、磁気吹きが発生している場合には、磁気吹きによるアークの変形に伴う異常電圧が磁気吹きが発生していない場合の異常電圧に加算されて重畳する。このために、磁気吹きが発生している場合の許容範囲ΔVcを、磁気吹きが発生していない場合と同一値に設定すると、異常電圧の除去が不十分となる。この結果、アーク長制御の精度が低下することになる。そこで、本実施の形態では、許容範囲ΔVcは、磁気吹きが発生している場合は、磁気吹きが発生していない場合よりも狭い値に設定される。後述するように、許容範囲ΔVcは、磁気吹きの判別に基づいて適正値に自動設定される。これにより、磁気吹きが発生した場合でも、アーク長の変動に伴う電圧変動を正確に検出し、かつ、異常電圧を十分に除去することができるので、アークが安定し、かつ、スパッタ発生量も少ない溶接が可能となる。
図5は、本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
電源主回路PMは、3相200V等の商用電源(図示は省略)を入力として、後述する電流誤差増幅信号Eiに従ってインバータ制御等の出力制御を行い、溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。この電源主回路PMは、図示は省略するが、商用電源を整流する1次整流回路と、整流された直流を平滑するコンデンサと、平滑された直流を高周波交流に変換するインバータ回路と、高周波交流をアーク溶接に適した電圧値に降圧するインバータトランスと、降圧された高周波交流を整流する2次整流回路と、整流された直流を平滑するリアクトルと、後述する電流誤差増幅信号Eiに従ってPWM変調制御を行ないその結果に基づいてインバータ回路を駆動する駆動回路と、を備えている。
溶接ワイヤ1は、送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給され、母材2との間にアーク3が発生する。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間には溶接電圧Vwが印加され、溶接電流Iwが通電する。溶接トーチ4の先端からはシールドガス(図示は省略)が噴出され、アーク3を大気から遮蔽する。
電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。
許容範囲設定回路ΔVCは、後述する磁気吹き判別信号Hdを入力として、磁気吹き判別信号HdがLowレベルのときは予め定めた標準値となり、磁気吹き判別信号HdがHighレベル(磁気吹き発生)のときは予め定めた減少値となる許容範囲設定信号ΔVcを出力する。減少値は標準値よりも小さな値である。例えば、標準値は±4Vであり、減少値は±3Vである。ここでは、プラス側とマイナス側とが等しい場合を説明したが、プラス側とマイナス側とを異なる値に設定しても良い、例えば、標準値を+3V、-6Vに設定し、減少値を+2V、-4Vに設定する。以上のように、許容範囲設定信号ΔVcは、磁気吹き判別信号HdがHighレベルになると、狭い範囲へと変更される。
電圧制限値算出回路FTは、上記の電圧検出信号Vdを後述する基準電圧波形信号Vc及び上記の許容範囲設定信号ΔVcによって定まる許容範囲Vc±ΔVc内に制限して、電圧制限値信号Vftを出力する。
電圧移動平均値算出回路VRAは、上記の電圧制限値信号Vftを入力として、図4で上述したように、ピーク電圧移動平均値信号Vpr及びベース電圧移動平均値信号Vbrを算出する。これらの算出方法は、上述した(21)式及び(22)式に基づいて行われる。
基準電圧波形設定回路VCは、上記のピーク電圧移動平均値信号Vpr及び上記のベース電圧移動平均値信号Vbrを入力として、図2で上述したような基準電圧波形信号Vcを出力する。この基準電圧波形信号Vcの設定は、上述した(31)式~(34)式によって行われる。
電圧積分回路SVは、各パルス周期の開始時点から上記の電圧制限値信号Vftを積分(1/t)∫Vft・dtして、電圧積分値信号Svを出力する。ここで、tは各パルス周期の開始時点からの経過時間(秒)である。したがって、この電圧積分値信号Svの値は、電圧制限値信号Vftの平均値を刻々と算出していることになる。
電圧設定回路VRは、予め定めた電圧設定信号Vrを出力する。比較回路CMは、上記の電圧積分値信号Svと上記の電圧設定信号Vrとを比較して、同じ値になった時点でパルス周期を終了するために短時間Highレベルとなるパルス周期信号Tfを出力する。Sv=Vrとなることは、各パルス周期における電圧制限値信号Vftの平均値が電圧設定信号Vrの値と等しくなったことを意味している。このようにして、上述したアーク長制御が行われる。したがって、パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化する間隔が各パルス周期の長さとなる。
経過時間測定回路STは、上記のパルス周期信号TfがHighレベルに変化した時点(各パルス周期の開始時点)からの経過時間を測定して、経過時間信号Stを出力する。
ピーク電流設定回路IPRは、予め定めたピーク電流設定信号Iprを出力する。
ベース電流設定回路IBRは、後述する磁気吹き判別信号Hdを入力として、磁気吹き判別信号HdがLowレベルのときは予め定めた標準値となり、磁気吹き判別信号HdがHighレベル(磁気吹き発生)のときは予め定めた増加値となるベース電流設定信号Ibrを出力する。増加値>標準値である。例えば、標準値は40Aに設定され、増加値は70Aに設定される。
電流制御設定回路IRCは、上記の経過時間信号St、上記のピーク電流設定信号Ipr及び上記のベース電流設定信号Ibrを入力として、経過時間信号Stが0にリセットされるごとに、予め定めたピーク立上り期間Tup中はベース電流設定信号Ibrの値からピーク電流設定信号Iprの値へと上昇する電流制御設定信号Ircを出力し、その後の予め定めたピーク期間Tp中はピーク電流設定信号Iprの値を電流制御設定信号Ircとして出力し、その後の予め定めたピーク立下り期間Tdw中はピーク電流設定信号Iprの値からベース電流設定信号Ibrの値へと下降する電流制御設定信号Ircを出力し、その後のベース期間Tb中はベース電流設定信号Ibrの値を電流制御設定信号Ircとして出力する。
電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の電流制御設定信号Ircとこの電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
送給制御回路FCは、予め定めた送給速度設定値で溶接ワイヤ1を送給するための送給制御信号Fcを上記の送給モータWMに出力する。
アーク判別回路ADは、上記の電圧検出信号Vdを入力として、この値が基準値(10V程度)以上であるときはアーク発生状態であると判別してHighレベルとなるアーク判別信号Adを出力する。
磁気吹き判別回路HDは、上記の電圧検出信号Vd、上記のアーク判別信号Ad、上記の電流制御設定信号Irc及び上記のベース電流設定信号Ibrを入力として、電流制御設定信号Ircの値がベース電流設定信号Ibrの値と等しくなるベース期間中であり、かつ、アーク判別信号AdがHighレベル(アーク発生状態)であるときに、以下の1)~3)のいずれか一つの方法で磁気吹きを判別するとHighレベルにセットされ、溶接が終了するとLowレベルにリセットされる磁気吹き判別信号Hdを出力する。
1)電圧検出信号Vdの上昇率が基準値以上となったときは磁気吹き判別信号HdをHighレベルにセットする。
2)電圧検出信号Vdの上昇率が基準値以上となるパルス周期が基準回数発生したときは磁気吹き判別信号HdをHighレベルにセットする。基準回数は2回以上であり、例えば3回に設定される。
3)電圧検出信号Vdの上昇率が基準値以上となるパルス周期が連続して基準回数発生したときは磁気吹き判別信号HdをHighレベルにセットする。基準回数は2回以上であり、例えば3回に設定される。
図6は、本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接制御方法を示す図5の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)は磁気吹き判別信号Hdの時間変化を示す。同図は、上述した図1において、磁気吹きが発生した場合の波形図である。したがって、図1とは異なる点について説明し、同様の事項についての説明は繰り返さない。
時刻t4~t5の期間がベース期間Tbとなる。ベース期間Tb中の 時刻t41において、磁気吹きが発生したためにアークが変形してアーク長が通常状態よりも次第に長くなる。このために、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbは、時刻t41から上昇し、時刻t42において上昇率が基準上昇率以上となるので、同図(C)に示すように、磁気吹き判別信号HdがHighレベルにセットされる。上述したように、ベース電圧Vbの上昇率が基準値以上となるパルス周期が基準回数発生したときに、磁気吹き判別信号HdをHighレベルにセットするようにしても良い。さらに、ベース電圧Vbの上昇率が基準値以上となるパルス周期が連続して基準回数発生したときに、磁気吹き判別信号HdをHighレベルにセットするようにしても良い。上記の基準回数は2回以上であり、例えば3回に設定される。磁気吹き判別信号Hdは、溶接が終了したときにLowレベルにリセットされる。
磁気吹き判別信号HdがHighレベルに変化したことに応動して、同図(A)に示すように、ベース電流Ibは標準値から増加値へと増加する。この増加は溶接が終了するまで継続する。ベース電流Ibが増加するとアークの硬直性が大きくなり、アークの変形が抑制されてアーク長は短くなる。
さらに、磁気吹き判別信号HdがHighレベルに変化したことに応動して、図示しない図5の許容範囲設定信号ΔVcは標準値から減少値へと変更される。この変更は溶接が終了するまで継続する。許容範囲設定信号ΔVcが減少値に変更されると、許容範囲は狭くなる。このために、図示していないが、磁気吹きの影響によって溶接電圧Vwに重畳した異常電圧をより効率的に除去することができる。この結果、磁気吹きが発生しても、アーク長制御を安定に維持することができる。磁気吹きが発生していないときに許容範囲を減少値に設定して狭くすると、本来の見かけのアーク長に比例した溶接電圧Vwの変動の一部を除去することになり、アーク長制御系の過渡応答性が悪くなるおそれがある。したがって、磁気吹きが発生したことを判別して許容範囲を狭くすることが重要である。異常電圧の除去方法については、上述した図1~図4で説明したので、ここでは説明は繰り返さない。
以下、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びベース電流の通電を1周期とする溶接電流を通電し、溶接電圧を検出し、溶接電圧の検出値を基準電圧波形を中心電圧値とする許容範囲内に制限して電圧制限値を算出し、電圧制限値に基づいて溶接電圧を出力制御するパルスアーク溶接制御方法において、溶接電圧の上昇に基づいて磁気吹きを判別し、磁気吹きを判別したときは許容範囲を狭くする。これにより、磁気吹きの影響によって溶接電圧に重畳した異常電圧を十分に除去することができるので、磁気吹きが発生しても、アーク長制御を安定に維持することができる。
さらに好ましくは、本実施の形態によれば、磁気吹きを複数回判別したときは、許容範囲を狭くする。磁気吹きが溶接中に複数回発生していることを判別することによって、磁気吹きの発生頻度が高いことを検出することができる。これにより、磁気吹きの発生頻度が高いときは異常電圧を十分に除去することができる。他方、磁気吹きの発生頻度が低いときは、異常電圧による悪影響は小さいので、許容範囲を狭くしていない。このようにすると、本来の見かけのアーク長の変動を除去することなく検出することができるので、アーク長制御の過渡応答性が良好になる。
さらに好ましくは、本実施の形態によれば、磁気吹きを複数周期連続して判別したときは、許容範囲を狭くする。磁気吹きが溶接中に複数周期連続して発生していることを判別することによって、磁気吹きの発生頻度が高いことを検出することができる。これにより、磁気吹きの発生頻度が高いときは異常電圧を十分に除去することができる。他方、磁気吹きの発生頻度が低いときは、異常電圧による悪影響は小さいので、許容範囲を狭くしていない。このようにすると、本来の見かけのアーク長の変動を除去することなく検出することができるので、アーク長制御の過渡応答性が良好になる。
さらに好ましくは、本実施の形態によれば、許容範囲を狭くしたときは、ベース電流を増加させる。ベース電流が増加するとアークの硬直性が大きくなり、アークの変形が抑制されてアーク長は短くなる。この結果、磁気吹きによる異常電圧を小さくすることができるので、アーク長制御をより安定化することができる。
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
AD アーク判別回路
Ad アーク判別信号
CM 比較回路
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
FT 電圧制限値算出回路
HD 磁気吹き判別回路
Hd 磁気吹き判別信号
Ib ベース電流
IBR ベース電流設定回路
Ibr ベース電流設定信号
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
Ip ピーク電流
IPR ピーク電流設定回路
Ipr ピーク電流設定信号
IRC 電流制御設定回路
Irc 電流制御設定信号
Iw 溶接電流
PM 電源主回路
ST 経過時間測定回路
St 経過時間信号
SV 電圧積分回路
Sv 電圧積分値信号
t 経過時間
ta 経過時間
Tb ベース期間
Tdw ピーク立下り期間
Tf パルス周期(信号)
Tp ピーク期間
Tup ピーク立上り期間
Vb ベース電圧
Vbc 基準ベース電圧値
Vbf ベース電圧制限値
Vbr ベース電圧移動平均値(信号)
VC 基準電圧波形設定回路
Vc 基準電圧波形(信号)
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
Vft 電圧制限値(信号)
Vp ピーク電圧
Vpc 基準ピーク電圧値
Vpf ピーク電圧制限値
Vpr ピーク電圧移動平均値(信号)
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定信号
VRA 電圧移動平均値算出回路
Vw 溶接電圧
WM 送給モータ
ΔVC 許容範囲設定回路
ΔVc 許容範囲(設定信号)

Claims (4)

  1. 溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びベース電流の通電を1周期とする溶接電流を通電し、溶接電圧を検出し、前記溶接電圧の検出値を基準電圧波形を中心電圧値とする許容範囲内に制限して電圧制限値を算出し、前記電圧制限値に基づいて前記溶接電圧を出力制御するパルスアーク溶接制御方法において、
    前記溶接電圧の上昇に基づいて磁気吹きを判別し、
    前記磁気吹きを判別したときは前記許容範囲を狭くする、
    ことを特徴とするパルスアーク溶接制御方法。
  2. 前記磁気吹きを複数回判別したときは、前記許容範囲を狭くする、
    ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接制御方法。
  3. 前記磁気吹きを複数周期連続して判別したときは、前記許容範囲を狭くする、
    ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接制御方法。
  4. 前記許容範囲を狭くしたときは、前記ベース電流を増加させる、
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のパルスアーク溶接制御方法。
JP2022065198A 2022-04-11 2022-04-11 パルスアーク溶接制御方法 Pending JP2023155710A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022065198A JP2023155710A (ja) 2022-04-11 2022-04-11 パルスアーク溶接制御方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022065198A JP2023155710A (ja) 2022-04-11 2022-04-11 パルスアーク溶接制御方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023155710A true JP2023155710A (ja) 2023-10-23

Family

ID=88417961

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022065198A Pending JP2023155710A (ja) 2022-04-11 2022-04-11 パルスアーク溶接制御方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023155710A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4263886B2 (ja) パルスアーク溶接のアーク長制御方法
JP5214859B2 (ja) 消耗電極アーク溶接電源の出力制御方法
JP6100607B2 (ja) パルスアーク溶接の出力制御方法
JP6835449B2 (ja) アーク溶接電源の出力制御方法
JP2012006020A (ja) アーク溶接制御方法
JP5038206B2 (ja) 消耗電極アーク溶接のくびれ検出制御方法
JP2009195952A (ja) 消耗電極アーク溶接の短絡判別方法
JP6245734B2 (ja) 短絡期間の溶接電流制御方法
JP2022099368A (ja) パルスアーク溶接電源
JP2023155710A (ja) パルスアーク溶接制御方法
JP2016144826A (ja) パルスアーク溶接の出力制御方法
JP2005271042A (ja) 定電流特性による消耗電極ガスシールドアーク溶接方法
JP4890281B2 (ja) パルスアーク溶接制御方法
JP2016026880A (ja) パルスアーク溶接の出力制御方法
JP7396779B2 (ja) アーク溶接制御方法
JP5495758B2 (ja) プラズマミグ溶接方法
JP4459768B2 (ja) 交流パルスアーク溶接の溶接電流制御方法
JP5506580B2 (ja) プラズマミグ溶接方法
JP2021186821A (ja) パルスアーク溶接電源
JP5871360B2 (ja) 消耗電極アーク溶接のくびれ検出制御方法
JP7430971B2 (ja) パルスアーク溶接の磁気吹き抑制制御方法
JP4663309B2 (ja) パルスアーク溶接のアーク長制御方法
JP7198558B2 (ja) パルスアーク溶接制御方法
JPS59199173A (ja) 短絡移行溶接電源の制御方法および装置
WO2022044700A1 (ja) アーク溶接の制御方法、溶接電源、溶接システム及び検出方法