JP2023154281A - パワーモジュール用金属板及びパワーモジュール用基板 - Google Patents

パワーモジュール用金属板及びパワーモジュール用基板 Download PDF

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広三 小松
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Abstract

【課題】絶縁基板の応力負荷抑制と半導体チップの載置面積の確保を両立できるパワーモジュール用金属板及びパワーモジュール用基板を提供すること。
【解決手段】半導体チップが搭載されるパワーモジュール用金属板であって、前記パワーモジュール用金属板は、前記半導体チップを搭載するための載置部、前記載置部から外周方向に向かって延在する傾斜部、及び前記傾斜部から外周方向に向かって延在する薄肉部を含み、前記傾斜部の水平方向に対する傾斜角度が30~70°の範囲内であり、前記薄肉部の厚みが0.05~0.20mmの範囲内であり、前記薄肉部の長さが0.10~0.60mmである、パワーモジュール用金属板。
【選択図】図3

Description

本発明は、パワーモジュール用金属板及びパワーモジュール用基板に関する。とりわけ、絶縁基板の応力負荷抑制と半導体チップの載置面積の確保を両立しつつ、金属板の厚板化を可能とするパワーモジュール用基板に関する。
民生機器用や、ガソリン自動車、電気自動車その他の車載用等として用いられるパワーモジュールは一般に、絶縁基板の両面のそれぞれに銅箔等の金属板を接合してなる回路基板を、ヒートシンクとして機能するベース金属板上に固定し、その回路基板上にパワートランジスタ等の半導体素子を搭載させて使用に供されるものであり、使用に際し、半導体素子が発する高熱をベース金属板に伝導させて、その熱を速やかに放散することが一般的に求められる。
パワーモジュール用基板は、一般的に、絶縁基板としてセラミックス又は絶縁性樹脂に、金属板をろう材などを用いて挟み込むように接合して成されている。この金属板は、表面では半導体モジュールの回路パターンとしての機能と放熱板へのヒートスプレッダとしての役割を求められている。従来、金属板の回路パターンは、金属板に回路パターン形状のレジストパターンを印刷し、これを塩化第二銅などのエッチング液でエッチングする事により形成されている。現在、電気エネルギーの有効活用の観点からパワーモジュールはますます高出力化、高電流密度化、高温動作化の傾向にある。これに伴いパワーモジュールに必須の部品であるパワーモジュール用基板に対しては、高放熱化及び耐熱衝撃性が求められるとともに、回路基板の導体層に関しては高電流を処理しかつ水平方向への熱拡散を促進するため厚板化への要望が非常に高まっている。さらに、モジュール製造時の環境負荷の低減の観点から、従来のエッチングによる回路形成ではなく、予め回路形状に成形した導体層を絶縁層に接合することによる回路形成技術の開発も求められている。
例えば、特許文献1(特開2018-041973号公報)には、プレス成形により、回路パターンに合わせた所定の形状の金属板を予め成形した後に、これを絶縁基板に接合させる手法が開示されており、これにより、回路基板の絶縁基板上に設ける金属板の厚みの大小によらず、所要の絶縁性を確保できるパターニングが可能になると開示されている。
また、特許文献2(特開2018-098521号公報)には、回路基板用金属板であって、該回路基板用金属板の側面の幅方向の一部に、他の側面部分と表面性状の異なる少なくとも一箇所の切断痕が存在してなり、前記切断痕が、板厚方向で、当該回路基板用金属板の厚みより小さい板厚方向長さを有する回路基板用金属板が開示されている。この発明において、回路基板を製造するに当り、エッチングにより回路パターンを形成するのではなく、所定の金属板成形品を用いることにより、エッチングで回路パターンを形成した場合のパターニングの絶縁性低下の問題が発生し得なくなるので、回路金属用金属板の厚みの大小によらず、パターニングによる所要の絶縁性を確保しつつ、回路基板を容易に製造することができる。
ところで、絶縁基板と金属板に熱膨張係数の違いが存在するので、加熱接合後の冷却過程で絶縁基板の端部に大きな残留応力が発生し、これに起因して絶縁基板にクラックが発生することがあることが特許文献3(特開平01-276052号公報)により知られている。さらに、パワーモジュールのオン/オフなどによるヒートサイクルが発生する場合にはこの部位に繰り返し熱応力が生じ、絶縁基板へのダメージが顕著に現れる。
特開2018-041973号公報 特開2018-098521号公報 特開平01-276052号公報
特に、金属板が厚ければ厚いほど、局所的に生ずる応力が高くなる傾向がある。この局所的な応力は、特に金属板の外縁部分に発生しやすいので、当該箇所を起点として、絶縁基板にクラックが発生することが多い。上記金属板の外縁部分を起点とするクラックの発生を抑制するためには、金属板の外縁部分に傾斜部を設けて、ヒートサイクルに起因する熱応力を緩和する方法も考えられるが、傾斜部には半導体チップを搭載することができないため、傾斜部の水平方向に対する傾斜角度が小さすぎると、傾斜部が長すぎるため、金属板の半導体チップを搭載する載置部の面積が小さくなり、好ましくない。一方、傾斜角度を大きくすると、クラックの抑制効果が不十分になる。そのため、傾斜部だけでは、絶縁基板のクラック抑制と半導体チップの載置面積の確保の両立が困難である。この問題点は、金属板の厚板化によりさらに顕著になる。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、一実施形態において、絶縁基板の応力負荷抑制と半導体チップの載置面積の確保を両立できるパワーモジュール用金属板及びパワーモジュール用基板を提供することを課題とする。
本発明者は鋭意検討の結果、金属板の半導体チップを搭載する載置部から外周方向に向かって延在する傾斜部、及び当該傾斜部から外周方向に向かって延在する薄肉部を設けることにより、絶縁基板への応力負荷を低減し、絶縁基板のクラックを抑制しつつ、半導体チップの載置面積の過度な減少を回避できることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下に例示される。
[1]
半導体チップが搭載されるパワーモジュール用金属板であって、
前記パワーモジュール用金属板は、前記半導体チップを搭載するための載置部、前記載置部から外周方向に向かって延在する傾斜部、及び前記傾斜部から外周方向に向かって延在する薄肉部を含み、
前記傾斜部の水平方向に対する傾斜角度が30~70°の範囲内であり、前記薄肉部の厚みが0.05~0.20mmの範囲内であり、前記薄肉部の長さが0.10~0.60mmである、
パワーモジュール用金属板。
[2]
前記載置部の厚みが0.4mm以上である、[1]に記載のパワーモジュール用金属板。
[3]
前記パワーモジュール用金属板が銅板又は銅合金板である、[1]又は[2]に記載のパワーモジュール用金属板。
[4]
前記傾斜部の水平方向に対する傾斜角度が50~70°の範囲内である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のパワーモジュール用金属板。
[5]
絶縁基板の少なくとも一方側の表面に、[1]~[4]のいずれか1項のパワーモジュール用金属板が接合されたパワーモジュール用基板。
[6]
前記絶縁基板がセラミックス基板である、[5]に記載のパワーモジュール用基板。
本発明によれば、絶縁基板の応力負荷抑制と半導体チップの載置面積の確保を両立できるパワーモジュール用金属板及びパワーモジュール用基板を提供することができる。
従来技術におけるパワーモジュール用基板1の構造模式図である。 金属板12の異なる外縁形状が、絶縁基板11に対してもたらす相当塑性ひずみの違いを示す図である。 本発明の一実施形態におけるパワーモジュール用基板の構造概要図である。 シミュレーションに用いられる各材料物性のグラフである。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
(1.パワーモジュール用基板)
図1に、従来技術におけるパワーモジュール用基板1の構造模式図を示す。後述のように、本発明においては、金属板の外縁部分の形状が従来技術と異なる以外、パワーモジュール用基板の基本的構成が共通するので、以下、図1を用いて説明する。
パワーモジュール用基板1は、絶縁基板11と、絶縁基板11の少なくとも一方側の表面に接合された、半導体チップを搭載するパワーモジュール用の金属板12を含む。絶縁基板11の一方側の金属板12の外面(絶縁基板11に面しない面)には、半導体チップ2(例えばダイオード)などを搭載することができる。絶縁基板11の一方側の金属板12の外面(絶縁基板11に面しない面)には、例えばはんだを介して放熱フィンなどの放熱機構を搭載することができる。用途によっては、絶縁基板11の裏面側(図面では下側)に金属板12を設けないこともあるので、本発明のパワーモジュール用基板では、絶縁基板11の裏面側の金属板12は必須の構成ではない。
(2.絶縁基板)
絶縁基板11の材料は特に限定されず、セラミックス又は樹脂その他の材料であり得る。絶縁基板11がセラミックス材料からなるものとする場合、そのようなセラミックス材料の具体例としては、例えば、アルミナ(Al23)等の酸化物セラミックス又は、窒化アルミニウム(AlN)や窒化ケイ素(Si34)等の窒化物セラミックスを挙げることができる。
(3.金属板)
金属板12の材料は特に限定されず、例えば、純銅、又は所要の元素を添加した銅合金等の金属材料からなる金属箔ないし金属板の形態をなすものとすることができる。特に絶縁基板11がセラミックスの場合、絶縁基板11の表面に直接的に接合されるか(DBC法)、又はチタンなどの活性金属を微量添加した銀-銅系ろう材(AMB法)若しくはチタンの接合層等を介して間接的に接合されることができる。より具体的には、金属板12が銅板又は銅合金板である場合、銅板を構成する銅としては、例えば、タフピッチ銅や、無酸素銅、高純度銅等を挙げることができ、また、銅合金としては、例えば、錫含有銅やジルコニウム含有銅、銀含有銅、クロム含有銅等を挙げることができる。
金属板12の厚みは特に限定されないが、例えば0.2mm~3.0mmの範囲内とすることができる。ただし、半導体チップの高密度実装、熱容量増加による耐熱衝撃性や放熱性向上などの観点から、金属板12の厚みは0.4mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、0.6mm以上であることがさらにより好ましく、0.7mm以上であることがさらにより好ましい。なお、後述のように、金属板12の載置部の外縁から傾斜部及び薄肉部を設けるが、金属板12の厚みは、載置部の厚みを意味する。また、金属板12の厚みが後述の薄肉部より厚くなければならないことは言うまでもない。
前述のように、絶縁基板11と金属板12に熱膨張係数の違いが存在するので、パワーモジュールのオン/オフなどによるヒートサイクルが発生する場合、絶縁基板11への応力負荷が発生し、これに起因して絶縁基板11にクラックが発生することがある。この応力負荷は、絶縁基板11と金属板12の接触部分と非接触部分の境界、すなわち、金属板12の外縁部分に発生しやすいので、当該箇所を起点として、絶縁基板11にクラックが発生することが多い。この問題点は、金属板12の厚板化によりさらに顕著になる。
図2は、絶縁基板11の相当塑性ひずみをシミュレーション結果で示す図である。シミュレーションでは、LS-DYNA(ls-dyna_smp_d_R9_3_1_winx64_ifort160、倍精度版)を使用して、絶縁基板11の素材を窒化ケイ素、金属板12の素材を純銅(無酸素銅)、絶縁基板11と金属板12を接合するものとしてろう材を設定したうえ、ろう付け冷却時に凝固が始まる300℃からスタートし、-55℃から200℃のヒートサイクルを1サイクル5分として繰り返し(昇温/降温速度は一定)、14サイクルにおける-55℃時のデータとして、金属板12の外縁部分(四角)に接触する絶縁基板11のろう接合面とろう非接合面において、最大主応力が最も高い箇所とその次に高い箇所をそれぞれ2点、計4点の数値を記録し、その平均を計算した。
なお、ここでヒートサイクル試験の条件を-55℃から200℃としているのは以下の理由による。低温側の-55℃は、モジュールを寒冷地で使用する場合を想定した低温の環境温度であり、一方、高温の200℃については、SiCなどの次世代パワー半導体素子が200℃以上の高温動作が期待されているためである。
なお、シミュレーションの詳細条件は以下のとおりである。
・解析方法:陰解法、EQ.2(完全積分S/Rソリッド要素)
・パラメータ設定:
dtmin(最小許容時間増分)=0.1s
dtmax(最大許容時間増分)=10s
dt0(初期時間増分)=10s
・材料:
絶縁基板:窒化ケイ素(Si34)、厚み0.32mm、長手方向21.0mm、幅方向12.0mm
金属板:純銅(無酸素銅)、厚み(載置部)0.8mm、長手方向17.0mm、幅方向8.0mm
ろう材:Ag-Cu-Ti系活性金属ろう材、厚み0.05mm、長手方向17.0mm、幅方向8.0mm
上から金属板、ろう材、絶縁基板、ろう材、金属板の順に積層するものと設定した。
窒化ケイ素(Si34)、純銅(無酸素銅)、ろう材(Ag-Cu-Ti系活性金属ろう材)の物性については公知文献及び実測値からシミュレーションによる再現が必要と考える各種物性値を算出し、シミュレーションの設定値として落とし込んだ。
各物性の算出方法は以下である。
・比重:純銅、窒化ケイ素、ろう材の比重:文献値を使用した。
・熱膨張係数(×10-6/℃):
純銅:ウェブデータ(http://tpds.db.aist.go.jp/opendata/metal_tc.html)を参考に多直線近似した。
窒化ケイ素:文献値を使用した。温度によらず一定とした。
ろう材:実測値を使用した。温度によらず一定とした。
・ヤング率(GPa):
純銅・ろう材:文献値及び実測値を使用した。なお、低温域は最低温度時の値を多項式近似により必要温度の物性値を設定した。
窒化ケイ素:文献値を使用した。温度によらず一定とした。
・ポアソン比:純銅・窒化ケイ素・ろう材:文献値及び実測値を使用した。
・降伏応力(MPa):
純銅・ろう材:文献値及び実測値を使用した。なお、低温域は最低温度時の値を多項式近似により必要温度の物性値を設定した。
窒化ケイ素:弾性体として取り扱った。
・塑性係数(GPa):
純銅:文献値を使用した。
ろう材:純銅に比べて、応力レベルは小さいと推定されるため、純銅と同等値としてシミュレーション実施した。
具体的な数値は下表及び図4のとおりである。
図2(A)は、従来技術のように、金属板12に傾斜部を何ら設けない場合(すなわち、金属板12の外縁の水平方向に対する傾斜角度が90°である場合)のシミュレーション結果である。図2(A)から分かるように、金属板12の外縁部分(特に角の部分)において、大きな相当塑性ひずみが発生している。
そして、図2(B)に示されるように、金属板12の外縁から外周方向に向かって傾斜角度60°の傾斜部を設けると、金属板12の外縁と接触する絶縁基板11の部分に発生するひずみが、全体的に分散する。この結果により絶縁基板11に発生する応力が低減できる。ただし、一部相当塑性ひずみが高い箇所が依然として存在しており、さらなる応力分散を図るためには、傾斜角度を小さくし、傾斜部の長さを増やすことが考えられるが、傾斜部を長くする分、半導体チップを搭載できる載置部の面積が小さくなるので好ましくない。特に金属板12の厚みが0.4mm以上である場合、セラミックス基板と接合される金属板12の面積に対して、反対面にある載置部の減少率を25%以内に抑えるためには、傾斜角度は55°以上が望まれる。
そこで、傾斜部のさらに外周側に、厚みが一定の薄肉部を設けるものとする。シミュレーションでは、薄肉部の長さ(すなわち、傾斜部と薄肉部との境界から薄肉部の外周までの最短距離)は0.20mm、薄肉部の厚みは0.10mmと設定されている。図2(C)から分かるように、金属板12の外縁と接触する絶縁基板11の部分に発生するひずみが分散されるだけでなく、金属板12の外縁よりの内側にシフトする現象が見られる。これにより、絶縁基板11と金属板12の接触部分と非接触部分の境界に発生する応力が低減され、クラックが発生しにくくなり、ヒートサイクル耐性が向上する。
さらに、比較対象として、金属板12の外縁に傾斜部を設けず、薄肉部のみを設けた場合のシミュレーション結果を図2(D)に示す。図2(D)から分かるように、絶縁基板11に発生するひずみが、図2(A)の構成よりも、金属板12の外縁よりの内側にシフトしている。しかし、ひずみの分散効果は、図2(C)の構成より低い。これは、傾斜部が存在しないことにより載置部と薄肉部との境界に応力が集中しやすいからと考えられる。
したがって、本発明の一実施形態において、金属板12は、図3に示されるように、半導体チップを搭載するための載置部121、載置部121から外周方向に向かって延在する傾斜部122、及び傾斜部122から外周方向に向かって延在する薄肉部123を含むものである。当該構成により、絶縁基板11のひずみを金属板12の外縁よりの内側にシフトしつつ、ひずみを分散させることができ、結果として、クラックが発生しにくくなり、ヒートサイクル耐性が向上する。また、傾斜部のみを設ける図2(B)の構成よりも、同等のヒートサイクル耐性効果を前提に、載置部121の面積を広く確保でき、より望ましい。
傾斜部122の水平方向に対する角度は30~70°とする。傾斜角度が70°を超えると、絶縁基板11に対する応力の分散効果が不十分である。傾斜角度が小さければ小さいほど、載置部121と薄肉部123との間の勾配が緩やかになり、絶縁基板11に対する応力の分散効果が高くなり、絶縁基板11のクラックの抑制効果が高くなるが、傾斜角度が30°未満になると、傾斜部122が長すぎるため、載置部121の面積確保が難しくなる。載置部121の面積を確保する観点から、傾斜部122の水平方向に対する角度は、40°以上であることが好ましく、45°以上であることがより好ましく、50°以上であることがさらにより好ましく、55°以上であることがさらにより好ましく、60°以上であることがさらにより好ましい。特に金属板12の厚みが0.4mm以上である場合、セラミックス基板と接合される金属板12の面積に対して、反対面にある載置部121の減少率が25%以下であることが望ましく、そのため、傾斜角度は55°以上が望まれ、さらに下記薄肉部123の厚みや長さを考慮すると60°以上がより好ましい。
薄肉部123の厚みは0.05~0.20mmとする。薄肉部123の厚みが0.05mmより薄いと、傾斜部122が長くなるため、好ましくない。一方、薄肉部123の厚みが0.20mmより厚いと、絶縁基板11のひずみを金属板12の外縁よりの内側にシフトさせる効果が薄くなり、好ましくない。
薄肉部123の長さは0.10~0.60mmとする。薄肉部123の長さが0.10mmより短いと、絶縁基板11のひずみを金属板12の外縁よりの内側にシフトさせる効果が薄くなり、好ましくない。一方、薄肉部123の長さが0.60mmより長いと、載置部121の面積が小さくなるため、好ましくない。薄肉部123の長さは0.15mm以上であることが好ましく、0.20mm以上であることがより好ましい。また、薄肉部123の長さは0.55mm以下であることが好ましく、0.50mm以下であることがより好ましく、0.45mm以下であることがさらにより好ましく、0.40mm以下であることがさらにより好ましく、0.35mm以下であることがさらにより好ましく、0.30mm以下であることがさらにより好ましく、0.25mm以下であることがさらにより好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、ここでの説明は単なる例示を目的とするものであり、それに限定されることを意図するものではない。
(1.シミュレーション試験)
LS-DYNA(ls-dyna_smp_d_R9_3_1_winx64_ifort160、倍精度版)を使用して、絶縁基板の素材を窒化物セラミックス、金属板(載置部)の素材を純銅として設定したうえ、表2に示されるように金属板の外縁部分の形状を構成したうえで、ろう付け冷却時に凝固が始まる300℃からスタートし、-55℃から200℃のヒートサイクルを1サイクル5分として繰り返し(昇温/降温速度は一定)、14サイクルにおける-55℃時のデータとして、金属板の外縁部分(四角)に接触する絶縁基板に生じる最大主応力の4点平均を前述と同様に計算した。結果を表2に示す。
なお、シミュレーションの詳細条件は前述のとおりとし、対称性を利用し1/8モデルについて解析を行った。
試験例5では、傾斜部の厚みが0.10mmより下部分で傾斜角度を90°に変えているので、薄肉部の長さが0として表示されている。
(考察)
図2で示した金属板に発生した相当塑性ひずみは、ヒートサイクル数の進捗とともに金属板内に蓄積する。このひずみの蓄積は、ろう材を経由して絶縁基板にも伝わり、ひずみの大小に比例した最大主応力が絶縁基板内に発生すると推察される(表2)。
そして、表2から分かるように、傾斜部及び薄肉部を設けない試験例1では、絶縁基板に生じる最大主応力が最も高かった。これに対して、傾斜部のみを設けた試験例2、3、5では、絶縁基板の最大主応力を低減させることができるが、傾斜部と薄肉部両方を設けた試験例6~8と比較して、同等の効果を奏するためにはより小さい傾斜角度(30°)を要した。また、薄肉部のみを設けた試験例4では、絶縁基板の最大主応力を低減させることができるが、傾斜部と薄肉部両方を設けた試験例6~8と比較して、効果が劣っていた。
また、薄肉部の厚みを0.40mmとした試験例9では、絶縁基板の最大主応力を低減させる効果が得られなかった。
また、表2の試験例の銅板サイズは17.0mm×8.0mm×0.8mmであり、単に傾斜45°以下とすると載置部の面積が25%以上減少するとの計算になり、載置部面積確保が困難となる場合がある。試験例1、2及び3より、傾斜45°としたときの絶縁基板最大主応力は550MPa程度と推測されるが、傾斜部と薄肉部両方を設けた試験例6、8の絶縁基板最大主応力はこれと同等又はより優れた数値となっており、傾斜部と薄肉部両方を設けたことによる優れた効果が示されている。
(2.ヒートサイクル試験)
次に、シミュレーションによる最大主応力低減の効果を確認するため、実際にパワーモジュール用基板を作製してヒートサイクル試験を行った。試験に供したサンプルの構成及びヒートサイクル試験の条件は以下のとおりである。
(使用サンプル)
表3に示す各形状の銅板(厚み0.8mm)について、Ag-Cu-Ti-Sn系活性金属ろう材(田中貴金属工業(株)製 TKC-661、厚み50μm、融点約780℃)を用いて、市販窒化ケイ素基板(厚み0.32mm、熱伝導率:90W/(m・K))の両面に接合してパワーモジュール用基板を作製した。接合の条件は次の通りである。また、銅板について、板厚(薄肉部含む)はマイクロメーターにて測定し、傾斜角度は三鷹光器製非接触表面性状測定装置PF-60にて測定し、その他寸法はニコン製測定顕微鏡MM-400/Lにて測定した。
加熱条件:790℃・5分間保持
接合時の荷重:約12g
銅板:約8mm×17mm×0.8mm
ろう材:約8mm×17mm×0.05mm
窒化ケイ素基板:12mm×21mm×0.32mm
(試験条件)
冷熱衝撃試験装置(エスペック(株)製 TSE-11型)を用いて、温度範囲-55~200℃で試験を行った。低温域及び高温域での保持時間は18分とした。所定のヒートサイクル後に、試料を取り出し、顕微鏡を用いた外観観察及び超音波探傷(SAT)による内部破損状態の評価を行い、再びヒートサイクル試験を継続して実施した。100サイクル行っても内部の亀裂やチッピングが生じていないものを○と評価し、それ以外は×とし、結果を表3に示す。
(結果)
試験例1に相当する試験例10~13、試験例5に相当する試験例14~17では100サイクルを経た段階で外観の割れやチッピング、内部亀裂が生じていた。他方、試験例6に相当する試験例18~19、及びこれらから薄肉部をやや厚くした試験例20~21では外観状態も良く、SAT観察による内部亀裂も生じなかった。これはシミュレーションによる最大主応力低減と実際のヒートサイクル耐性に相関があり、本発明のパワーモジュール用金属板の形状が優れていることを実証するものである。
1 パワーモジュール用基板
11 絶縁基板
12 金属板
121 載置部
122 傾斜部
123 薄肉部
2 半導体チップ

Claims (6)

  1. 半導体チップが搭載されるパワーモジュール用金属板であって、
    前記パワーモジュール用金属板は、前記半導体チップを搭載するための載置部、前記載置部から外周方向に向かって延在する傾斜部、及び前記傾斜部から外周方向に向かって延在する薄肉部を含み、
    前記傾斜部の水平方向に対する傾斜角度が30~70°の範囲内であり、前記薄肉部の厚みが0.05~0.20mmの範囲内であり、前記薄肉部の長さが0.10~0.60mmである、
    パワーモジュール用金属板。
  2. 前記載置部の厚みが0.4mm以上である、請求項1に記載のパワーモジュール用金属板。
  3. 前記パワーモジュール用金属板が銅板又は銅合金板である、請求項1又は2に記載のパワーモジュール用金属板。
  4. 前記傾斜部の水平方向に対する傾斜角度が50~70°の範囲内である、請求項1又は2に記載のパワーモジュール用金属板。
  5. 絶縁基板の少なくとも一方側の表面に、請求項1又は2に記載のパワーモジュール用金属板が接合されたパワーモジュール用基板。
  6. 前記絶縁基板がセラミックス基板である、請求項5に記載のパワーモジュール用基板。
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