JP2023152624A - 転がり疲労強度の試験方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より簡便、かつ、より正確に、歯車材の疲労特性を評価することができる転がり疲労強度の試験方法を提供する。【解決手段】本発明の一実施形態に係る転がり疲労強度の試験方法は、回転軸を有する評価材と、回転軸を有する、一つまたは複数の相手材と、を備え、評価材の回転面と相手材の回転面とを接触させ、評価材に荷重を作用させつつ、評価材と相手材を互いに逆回転させて、評価材の転がり疲労強度を評価する転がり疲労強度の試験方法であって、焼付き評価パラメータSRが9.00以下を満たし、かつ、降伏パラメータRDが0.85以下を満たし、評価材のすべり率σ12が-300~-60%であり、評価材における相手材と接触する接触面、および、相手材における評価材と接触する接触面の二乗平均平方根粗さRqが1.00μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、転がり疲労強度の試験方法に関する。
従来、歯車に使用される表面硬化鋼の転がり疲労強度(ピッチング強度)は、二円筒転がり疲労試験で評価されることが多い。二円筒転がり疲労試験は、ローラ状の試験片と、相手方のローラとを接触させ、接触面の面圧や各ローラの回転数を制御して、試験片の転がり疲労を評価する試験である。
例えば、特許文献1では、試験片である直径が26mmの小ローラと、直径が130mmでありクラウニングが150mmの大ローラと、を用い、すべり率を80%、小ローラの回転数を1000rpm、面圧を2800MPaまたは3000MPaとしてピッチング強度の測定が行われている。
特開2010-132936号公報
中原一郎、材料力学下巻、養賢堂、東京(1971)、116-132頁 徳田昌敏、機械設計、Vol.24、No.12(1980)、26-30頁 Tedric A. Harris, "Rolling Bearing Analysis", John Wiley & Sons Inc., p.110-143.
近年、電動車が登場して市場でシェアを増やしつつある。電動車では、従来型のガソリンエンジン車に比べ、歯車にかかる負荷(面圧、回転数、すべり率など)が高くなる傾向があり、歯車の素材となる鋼にも高強度が求められる。その結果、電動車の歯車として用いられる鋼材を評価する場合には、より高い負荷で試験を行う必要が生じている。
従来から用いられている二円筒転がり疲労試験で高強度材の転がり疲労強度を高負荷下で評価する場合、試験中に焼付きが発生することがある。そのため、適切な試験結果が得られなくなる、あるいは焼付きを避けるために試験時の回転速度を下げざるを得ず、長期間を要する試験となるといった課題があった。
また、特に表面硬化処理(特にガス浸炭処理、真空浸炭処理または窒化処理)を前提とする歯車の素材となる鋼材を評価する場合は、歯車と同じ条件で表面硬化処理がなされてから疲労試験に供される。従来から用いられている二円筒転がり疲労試験では、高負荷での試験を行うと、試験中に評価材の内部が塑性変形することがあり、面疲労強度を評価するうえで適切な試験結果が得られなくなるという課題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、二円筒転がり疲労試験を用いた転がり疲労強度の試験方法であって、より簡便、かつ、より正確に、歯車材の疲労特性を評価することができる転がり疲労強度の試験方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ね、以下の知見を得た。
(a) 二円筒転がり疲労試験では、すべり率を増大することで、試験ローラ(評価材)の表面の接線力が増大し、表面起点のピッチング疲労が生じやすくなる。
(b) 二円筒転がり試験における各ローラの直径を変更することで、試験ローラの内部に生じるせん断応力分布を制御し、高応力領域が試験ローラの表面硬化層に位置することで、芯部硬さ(試験ローラのローラ軸中心付近の硬さ)の影響を小さくすることができる。
(c) すべり率の増大で発熱量が増大してローラ同士が焼付く可能性があるが、各ローラ間の接触面積を制限することで、焼付きを抑制できる。
本発明者らは、上記知見に基づき、転がり疲労強度を評価できる方法を開発した。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 本発明の一態様に係る転がり疲労強度の試験方法は、回転軸を有する評価材と、回転軸を有する、一つまたは複数の相手材と、を備え、前記評価材の回転面と前記相手材の回転面とを接触させ、前記評価材に荷重を作用させつつ、前記評価材と前記相手材を互いに逆回転させて、前記評価材の転がり疲労強度を評価する転がり疲労強度の試験方法であって、前記荷重が作用しているときの前記評価材における前記相手材との接触面の、面積A(mm)およびすべり率σ12を用いて、式(1)により算出される焼付き評価パラメータSが9.00以下を満たし、かつ、前記評価材の共役最大せん断応力τxyが発生する、前記評価材の前記接触面からの深さ位置Dτxyを用いて式(2)から算出されるDτxy’と、前記評価材の有効硬化層深さDと、により式(3)から算出される降伏パラメータRが0.85以下を満たし、前記評価材のすべり率σ12が-300~-60%であり、前記評価材における前記相手材と接触する接触面、および、前記相手材における前記評価材と接触する接触面の二乗平均平方根粗さRqが1.00μm以下である、ことを特徴とする。
=A×(σ12/100) ・・・式(1)
Dτxy’=2Dτxy ・・・式(2)
=Dτxy’/D ・・・式(3)
[2] 前記[1]に記載の転がり疲労強度の試験方法では、前記評価材における前記相手材との接触面の形状が楕円形であり、前記面積Aが長軸半径a(mm)、短軸半径b(mm)を用いて、式(4)により算出されてもよい。
A=πab・・・式(4)
[3] 前記[2]に記載の転がり疲労強度の試験方法では、前記評価材における前記相手材と接触する接触部の半径R11が2~100mmであってもよい。
[4] 前記[2]または[3]に記載の転がり疲労強度の試験方法では、前記評価材における前記相手材と接触する接触部のクラウニングR12が1mm以上であってもよい。
[5] 前記[2]~[4]のいずれかに記載の転がり疲労強度の試験方法では、前記一つまたは複数の前記相手材のうち、少なくとも一つの前記相手材における前記評価材と接触する接触部の半径R21が2mm~100mmであってもよい。
[6] 前記[2]~[5]のいずれかに記載の転がり疲労強度の試験方法では、前記一つまたは複数の前記相手材のうち、少なくとも一つの前記相手材における前記接触部のクラウニングR22が1mm以上であってもよい。
[7] 前記[1]に記載の転がり疲労強度の試験方法では、前記評価材における前記相手材との接触面の形状が矩形状であり、前記面積Aが、主軸方向における接触長さL、周方向における接触幅2wを用いて、式(5)により算出されてもよい。
A=2wL・・・式(5)
[8] 前記[7]に記載の転がり疲労強度の試験方法では、前記評価材における前記相手材と接触する接触部の回転軸方向長さlが1mm以上であってもよい。
[9] 前記[7]または[8]に記載の転がり疲労強度の試験方法では、前記一つまたは複数の前記相手材のうち、少なくとも一つの前記相手材における前記評価材と接触する接触面の回転軸方向長さl21が1mm以上であってもよい。
本発明の上記態様によれば、より簡便、かつ、より正確に、歯車材の疲労特性を評価することができる。本発明の上記態様は、特に、電動車等に適用される小型の歯車用鋼の転がり疲労特性を評価することができる。
本発明の一実施形態に係る転がり疲労強度の試験方法を説明するための模式図である。 第1の実施形態における評価材の接触面における長軸半径aおよび短軸半径bを説明するための模式図である。 同実施形態における評価材の正面図である。 同実施形態における相手材の正面図である。 第2の実施形態における評価材の正面図である。 同実施形態における相手材の正面図である。 同実施形態における評価材の接触面における接触長さLおよび接触幅2wを説明するための模式図である。 評価材の変形例を示す正面図である。 評価材の変形例を示す正面図である。 相手材の変形例を示す正面図である。 相手材の変形例を示す正面図である。 評価材の変形例を示す正面図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る転がり疲労強度の試験方法は、図1に示すように、回転軸Cを有する円柱状の評価材1の回転面(接触面111)と、回転軸Cを有する円柱状の相手材2の回転面(接触面211)と、を接触させ、相手材2から評価材1に荷重を作用させつつ、評価材1および相手材2とを、各回転軸C、Cを回転中心として互いに逆回転させて、評価材1の転がり疲労強度を評価する転がり疲労強度の試験方法である。接触面Sは、相手材2の接触面211から評価材1の接触面111に荷重が作用した状態における評価材1の接触面である。
評価材1と、相手材2とは、接触を保ったまま、それぞれ独立の回転速度で回転させることができる。すなわち、評価材1と相手材2とを、異なる周速度で、互いに逆回転させることで、接触面111と接触面211との間ですべりを生じさせ、歯車の使用環境で生じるすべりを再現した試験を行うことができる。もちろん、評価材1と相手材2とを、互いに等しい周速度で逆回転させ、すべりのない疲労試験を行うことも可能である。
本実施形態における転がり疲労強度の試験方法では、評価材と相手材との接触面の形状により、後述する焼付き評価パラメータの算出方法が異なる。そのため、以下では、評価材における相手材との接触面の形状毎に本実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
[焼付き評価パラメータSが9.00以下]
本実施形態に係る転がり疲労強度の試験方法は、相手材2から荷重が作用したときの評価材1における相手材2との接触面Sの面積A(mm)およびすべり率σ12により、式(1)から算出されるSが9.00以下を満たす。Sは、評価材1の接触面111の焼付きに関するパラメータである。なお、本稿ではSの単位はmmである。
=A(σ12/100) ・・・式(1)
相手材2が、例えば、図4に示すように、評価材1と接触する接触部21が端部から中央に向かって次第に凸となるクラウン状である場合、評価材1における相手材2との接触面Sは、図2に示すように、楕円状となる。当該楕円状の接触面Sの長軸半径が長軸半径a(mm)であり、当該楕円の短軸半径が短軸半径b(mm)である。長軸半径a(mm)および短軸半径b(mm)を用いて、接触面Sの面積Aは、以下の式(2)で表される。接触面Sの長軸は、評価材1の回転軸Cと平行であり、接触面Sの短軸は、接触面Sの長軸と接触面Sにおいて垂直である。
A=πab・・・式(2)
長軸半径aおよび短軸半径bは、非特許文献1(中原一郎、材料力学下巻、養賢堂、東京(1971)、116-132頁)に基づいた手法により算出される。
すべり率σ12は、相手材2に対する評価材1の相対周速度であり、以下の式(3)で表される。
σ12[%]=(2×π×R11×u/60-2×π×R21×u/60)/(2×π×R11×u/60) ・・・式(3)
ここで、
11:評価材1における接触部11の回転軸Cに垂直な半径
21:相手材2における接触部21の回転軸Cに垂直な半径
:評価材1の回転速度[rpm]
:相手材2の回転速度[rpm]
である。
上記式(3)中、2×π×R11×u/60は、評価材1の接触部11における最小半径位置の周速度(m/s)を表し、2×π×R21×u/60は、相手材2の接触部21における最大半径位置の周速度(m/s)を表している。
焼付き評価パラメータSは、9.00以下である。焼付き評価パラメータSが9.00超であると、評価材1と相手材2との接触面で生じる摩擦による発熱量が多くなり、油膜切れが生じて評価材1と相手材2との間で焼付きが生じる。焼付き評価パラメータSは、焼付き防止の観点から、好ましくは、8.50以下であり、より好ましくは、8.00以下である。焼付き評価パラメータSの下限は、焼付き防止の観点からは特段制限されないが、焼付き評価パラメータSが小さいことはすなわち試験負荷が小さいことを意味し、試験時間の長時間化につながる。したがって、焼付き評価パラメータSは、好ましくは、0.05以上であり、より好ましくは、0.10以上である。
上記式(1)~式(3)から、焼付き評価パラメータSを9.00以下とするためには、長軸半径a、短軸半径b、評価材1の接触部11における回転軸Cに垂直な断面の半径R11(図3参照)、相手材2の接触部21における回転軸Cに垂直な断面の半径R21(図4参照)、評価材1の接触部11における回転速度u、および相手材2の接触部21における回転速度uを変更すればよい。
[すべり率σ12が-300~-60%]
本実施形態では、ここまで述べた通り、焼付き評価パラメータSを用いて測定条件を設定する。これは、評価材1および相手材2の形状および材質、負荷荷重に基づいて算出される接触面Sの長軸半径a、短軸半径bとの調和を見ながら、すべり率σ12を設定することを意味する。すなわち、焼付き評価パラメータSが9.00以下である範囲内(つまり焼き付きを抑制できる範囲内)で、すべり率σ12を小さな値(すべる割合が大きい値)に設定することが可能であり、-60%よりも数値の小さい(すべる割合が大きい)すべり率σ12でかつ高負荷で試験を行った場合も、焼付きを抑制することができる。本開示においてはすべり率σ12が最小で-300%まで問題なく試験を行うことができた。焼付きを抑制する観点では、すべり率σ12は好ましくは-280%以上であり、より好ましくは-260%以上である。
本開示が想定するような、電動車で用いられる歯車であれば、実環境で用いられる歯車に生じるすべり率σ12は-150%程度と考えられる。上述した通り、本実施形態では、すべり率σ12を-60%以下と設定することにより、実環境の歯車に近い状況での試験を可能としている。歯車の使用環境を模擬した試験をより正確に再現する観点から、すべり率σ12は好ましくは-80%以下であり、より好ましくは-100%以下、または-120%以下である。
既に述べたように、従来の二円筒試験を、表面硬化処理がなされた円筒試験片において、高負荷下で行った場合に、内部で塑性変形を生じ適切な試験ができないことがあった。本発明者らはこの課題につき調査し、従来の二円筒試験では、表面から深い位置にせん断応力が働き、その結果、表面硬化処理の効果が及ばない深い位置で塑性変形を生じているとの知見を得た。本発明者らは、後述する降伏パラメータRを適切に調整することで、高い負荷の試験でも内部での塑性変形を抑止できることを実現した。
[降伏パラメータRが0.85以下]
本実施形態に係る転がり疲労強度の試験方法は、Dτxyによって式(4)から算出されるDτxy’と、評価材1の接触部11における有効硬化層深さDと、により式(5)から算出される降伏パラメータRが0.85以下を満たす。Dτxyは、評価材1において最大共役せん断応力τxyが発生する、荷重が作用したときの評価材1の接触部11における接触面Sからの深さ位置である。
Dτxy’=2×Dτxy ・・・式(4)
=Dτxy’/D ・・・式(5)
接触面Sではせん断応力が作用し、接触面Sから内部に向かっては当該せん断応力に共役な共役せん断応力が作用する。共役せん断応力によって、接触面Sより内部で疲労によるクラックが発生し、評価材1の接触面111が剥がれて摩耗する。接触面Sにおけるせん断応力は、接触面Sの境界近傍で発生し、共役せん断応力は、表面では0であり、ある深さで最大値τmaxになる。
すべり率が低い条件で行われる二円筒転がり疲労試験では、歯車に比べて相対的に接線力が小さくなることから、試験面圧を高めて接触部の摩擦力を大きくしないとピッチングを生じない。そのため、面圧を高めた二円筒転がり疲労試験では上述した共役せん断応力の影響が無視できないものとなる。
最大共役せん断応力τxyが発生する、接触面Sからの深さ位置(最大共役せん断応力位置)Dτxyは、非特許文献2(徳田昌敏、機械設計、Vol.24、No.12(1980)、26-30頁)に記載されたzに対応する値である。具体的には、下記式(6)で表される。
Figure 2023152624000002
上記式(6)中、bは、接触面Sの短軸半径であり、tは下記式(7)で算出される値である。
Figure 2023152624000003
上記式(7)中、bは接触面Sの短軸半径、aは接触面Sの長軸半径である。また、上記式(7)は、非特許文献2に示された下記式(8)を変形して得られた式である。なお、上記は接触面Sの形状が楕円であることを前提に記載している。接触面Sの形状が矩形である場合については後述する。
Figure 2023152624000004
式(5)中のDは、評価材1の接触部における有効硬化層深さであり、具体形には、評価材1の接触面111からビッカース硬さが513Hvとなる位置までの深さである。
評価材1の有効硬化層深さDは、以下の方法で算出する。すなわち、評価材1の接触部11の中心位置から回転軸Cに垂直な断面を取得し、各断面において、接触面から深さ方向に0.03mmの位置を開始点として、0.05mm、0.10mm、以降0.05mm毎に2.00mm深さまで、JIS Z2244:2020に準拠し、荷重は0.20kgfとしてビッカース硬さHvを測定する。測定位置は断面において周方向に120度毎に計3か所とし、測定されたビッカース硬さHvが513Hvとなる位置までの径方向長さ(深さ)の平均値を有効硬化層深さDとする。
式(5)で表される降伏パラメータRが0.85超であると、評価材1の有効硬化層に生じる共役せん断応力に対し、当該有効硬化層よりも内部における共役せん断応力が相対的に高すぎるため、評価材1の内部で降伏が生じる。その結果、評価材1の内部が硬化し、当該硬化により、評価材1の内部を起点としたピッチングが生じ、歯車の使用環境を模擬した試験を正確には再現することができない。よって、Rは、0.85以下とする。Rは、好ましくは0.75以下であり、より好ましくは0.70以下である。
[評価材1]
次いで、評価材1について詳細に説明する。評価材1は、例えば、表面が内部よりも硬化した表面硬化鋼で構成される。表面硬化鋼は、例えば、電動車の歯車等に使用される鋼材である。例えば、表面のC濃度が内部のC濃度よりも高く、表面が硬化した鋼材や、表面のN濃度が内部のN濃度よりも高く、表面が硬化した鋼材が評価材1として用いられ、転がり疲労強度が評価される。
表1に、評価材1の一例として、転がり疲労強度が評価される表面硬化鋼のビッカース硬さHvの分布を示す。ビッカース硬さHvは、JIS Z2244:2020に準拠し、荷重は0.20kgfとして、表1に示す表面からの距離で測定した。ガス浸炭、真空浸炭、または窒化により表面硬化した表面硬化鋼では、内部に向かうにつれてビッカース硬さHvが小さくなっていることが分かる。なお、表1に示した例では、ガス浸炭により表面硬化処理された表面硬化材の有効硬化層深さD(表1におけるECD)は、0.77mmであり、真空浸炭により表面硬化処理された表面硬化材の有効硬化層深さD(表1におけるECD)は、0.45mmであり、窒化により表面硬化処理された表面硬化材の有効硬化層深さD(表1におけるECD)は、0.14mmである。
Figure 2023152624000005
続いて、図3を参照して評価材1の形状について詳細に説明する。図3は、評価材1の正面図である。評価材1は、図2に示すように、回転軸Cを有する略円柱状であり、回転軸Cに沿った方向のいずれの位置においても、回転軸Cに垂直な断面の形状は円形である。評価材1は、相手材2と接触する部分である接触部11と、接触部11の両端に接続した本体部12と、を備える。以下では、回転軸Cに沿った方向を軸方向と呼称し、回転軸Cに垂直な方向を径方向と呼称することがある。
(接触部11)
接触部11は、本体部12よりも小径の部分である。接触部11には、径方向端部に配された、相手材2と接触する接触面111が配されている。接触部11は、本体部12と連なるテーパー部11a、11aと、テーパー部11a、11aとの間において、回転軸Cに沿って略同径の円柱部11bから構成される。
評価材1における接触部11の半径R11は、2~100mmであることが好ましい。接触部11の半径R11は、接触部11における回転軸Cに垂直な最小半径をいう。接触部11の半径R11が2mm以上であれば、荷重が作用したときの接触面Sの面積が小さくなるため、低い荷重で高い面圧を作用させることができる。これにより、最大せん断応力位置Dτxyを回転軸C側から接触面S側に移行させることができる。また、低い荷重で高い面圧を作用させることができるため、摩擦による発熱量が小さくなり、焼付きを生じにくくすることができる。一方、接触部11の半径R11が小さ過ぎると、負荷荷重によってはたわみが生じ、たわみ量が大きくなって曲げ疲労破壊を起こす場合がある。しかしながら、接触部11の半径R11が2mm以上であれば、曲げ疲労破壊の発生を抑制することができる。接触部11の半径R11は、より好ましくは3mm以上であり、更に好ましくは4mm以上である。
また、接触部11の半径R11が大きすぎると、荷重が作用したときの接触面Sの面積が大きくなり過ぎるため、大きな荷重を負荷しないと高い面圧を作用させることができないことがある。大きな荷重を負荷すると、最大せん断応力位置Dτxyを接触面S側から回転軸C側に移行し、接触部11の内部で降伏が生じ、加工硬化することがある。また、大きな荷重を負荷すると、摩擦による発熱量が大きくなり、焼付きが生じやすくなる。しかしながら、接触部11の半径R11を100mm以下とすることで、接触部11の内部における降伏および接触面Sでの焼付きを抑制することができる。接触部11の半径R11は、より好ましくは75mm以下であり、更に好ましくは65mm以下である。
評価材1における接触部11のクラウニングR12は、1mm以上であることが好ましい。クラウニングR12は、回転軸Cを含む回転軸Cに平行な断面の半径R11を有する位置における接触部11の曲率半径で表される値である。接触部11のクラウニングR12が1mm以上であれば、小さな荷重で高い面圧を接触面111に作用させることができる。これにより、最大せん断応力位置Dτxyを回転軸C側から接触面111側に移行させることができる。接触部11のクラウニングR12は、より好ましくは10mm以上であり、更に好ましくは100mm以上である。一方、クラウニングR12が1mm未満であると、相手材2との接触による弾性変形や、繰り返し数の増加に伴うクラウニングR12を有する位置の摩耗により、クラウニングR12を有する位置以外が相手材2と接触する場合や、クラウニングR12を有する位置の外側が相手材2と接触し、接触部11が偏摩耗する恐れがある。
接触部11の軸方向長さ(回転軸C方向の長さ)l11は特段制限されず、適宜変更されてよい。例えば、接触部11の長さl11は、接触部11のテーパー部11aの回転軸C方向の長さに応じて変更されてよい。
(二乗平均平方根粗さRqが1.00μm以下)
評価材1における接触面111の二乗平均平方根粗さRqは、1.00μm以下である。接触面111が粗すぎると、接触面111に存在する大きな凸部が試験中に塑性変形して新たな面が生じ、当該新たな面で焼付きが生じることがある。しかしながら、接触面111の二乗平均平方根粗さRqが1.00μm以下であれば、局所的に大きな凸部が少なく、焼付きを抑制することができる。接触面111の二乗平均平方根粗さRqは、好ましくは、0.90μm以下であり、より好ましくは0.80μm以下である。一方、接触面111の二乗平均平方根粗さRqの下限は、小さい方が好ましい。接触面111の二乗平均平方根粗さRqは、例えば、0.02μm以上であってもよいし、0.03μm以上であってもよい。
二乗平均平方根粗さRqは、JIS B0601:2013に準拠した方法で測定される。
(本体部12)
本体部12は、転がり疲労試験を行う際に把持される部分である。本体部12の直径φおよび軸方向長さl12は、特段制限されない。
[相手材2]
次いで、図4を参照して相手材2について詳細に説明する。図4は、相手材2の正面図である。相手材2は、図4に示すように、回転軸Cを有する円柱状であり、回転軸Cに沿った方向のいずれの位置においても、回転軸Cに垂直な断面の形状は円形である。相手材2は、評価材1と接触する部分である接触部21を備える。以下では、回転軸Cに沿った方向を軸方向と呼称し、回転軸Cに垂直な方向を径方向と呼称することがある。
(接触部21)
接触部21には、径方向端部に配された、評価材1と接触する接触面211が配されている。接触部21は、相手材2の回転軸Cに垂直な方向から見たときに凸となる凸クラウンを有している。言い換えると、接触部21は、相手材2の回転軸Cに垂直な方向からみたときに、軸方向両端から軸方向中央に向かうにつれて径(回転軸Cから接触面211までの距離)が大きくなっている。
相手材2における接触部21の半径R21は、2~100mmであることが好ましい。接触部21の半径R21は、接触部21における回転軸Cに垂直な最大半径をいう。接触部21の半径R21が2mm以上であれば、接触面Sの面積が小さくなるため、小さな荷重で高い面圧を作用させることができる。これにより、評価材1において、最大せん断応力位置Dτxyを回転軸C側から接触面111側に移行させることができる。また、小さな荷重で高い面圧を作用させることができるため、摩擦による発熱量が小さくなり、焼付きを生じにくくすることができる。一方、接触部21の半径R21が小さ過ぎると、負荷荷重によってはたわみが生じ、たわみ量が大きくなって曲げ疲労破壊を起こす場合があるが、接触部21の半径R21が2mm以上であれば、曲げ疲労破壊の発生を抑制することができる。接触部21の半径R21は、好ましくは3mm以上であり、より好ましくは4mm以上である。
また、接触部21の半径R21が大きすぎると、接触面211の面積が大きくなり過ぎるため、高い荷重を負荷しないと高い面圧を作用させることができないことがある。高い荷重を負荷すると、評価材1における最大せん断応力位置Dτxyを接触面111側から軸側に移行し、評価材1の接触部11の内部で降伏が生じ、加工硬化することがある。また、大きな荷重を負荷すると、摩擦による発熱量が大きくなり、焼付きが生じやすくなる。しかしながら、接触部21の半径R21を100mm以下とすることで、評価材1の接触部11の内部における降伏、および接触面211での焼付きを抑制することができる。接触部21の半径R21は、好ましくは90mm以下であり、より好ましくは80mm以下である。
相手材2における接触部21のクラウニングR22は、1mm以上であることが好ましい。クラウニングR22は、回転軸Cを含む回転軸Cに平行な断面の半径R21を有する位置における接触部21の曲率半径で表される値である。接触部21のクラウニングR22が1mm以上であれば、小さな荷重で高い面圧を接触面211に作用させることができる。これにより、評価材1における最大せん断応力位置Dτxyを回転軸C側から接触面111側に移行させることができる。接触部21のクラウニングR22は、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは15mm以上である。一方、クラウニングR22が1mm未満であると、評価材1との接触による弾性変形や、繰り返し数の増加に伴うクラウニングR22を有する位置の摩耗により、クラウニングR22を有する位置以外が評価材1と接触する場合や、クラウニングR22を有する位置の外側が評価材1と接触し、接触部21が偏摩耗する恐れがある。
相手材2における接触面211の二乗平均平方根粗さRqは、1.00μm以下であることが好ましい。接触面211が粗すぎると、接触面211に存在する大きな凸部が試験中に塑性変形し、新たな面が生じ、当該新たな面で焼付きが生じることがある。しかしながら、接触面211の二乗平均平方根粗さRqが1.00μm以下であれば、局所的に大きな凸部が少なく、焼付きを抑制することができる。接触面211の二乗平均平方根粗さRqは、より好ましくは、0.90μm以下であり、さらに好ましくは0.80μm以下である。一方、接触面211の二乗平均平方根粗さRqは小さい方が好ましい。接触面211の二乗平均平方根粗さRqは、例えば、0.02μm以上であってもよいし、0.03μm以上であってもよい。
二乗平均平方根粗さRqは、JIS B0601:2013に準拠した方法で測定される。
ここまで、本実施形態に係る転がり疲労の試験方法に用いられる評価材1および相手材2を説明した。転がり疲労試験が実施される際には、相手材2から評価材1に荷重が付与されて、接触面111と、相手材2の接触面211と、が接触した後、評価材1および相手材2が互いに所定の速度で逆回転する。
上述した評価材1はクラウニングR12を有し、相手材2はクラウニングR22を有しているため、後述する第2の実施形態における評価材1Aおよび相手材2Aと比較して応力集中が生じにくく、より安定した試験結果を得ることができる。
続いて、本実施形態に係る転がり疲労試験の試験方法に用いられる評価材および相手材の製造方法の一例を説明する。以下に説明する評価材および相手材の製造方法は、あくまでも一例であり、以下の製造方法で製造された評価材および相手材に限らず、上述した特徴を有する評価材および相手材は、本発明における評価材および相手材に当たる。
評価材および相手材は、中間品を製造する中間品製造工程、および中間品を熱処理する熱処理工程を含む。
中間品製造工程では、所定の形状を有する中間品を製造する。例えば、所定の化学組成を有する溶鋼を製造し、当該溶鋼を用いて、連続鋳造法により鋳片(スラブまたはブルーム)を製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴット(鋼塊)を製造してもよい。次いで、鋳片またはインゴットを熱間加工して、ビレット(鋼片)を製造する。ビレットを熱間加工して、棒鋼または線材を製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造でもよい。熱間鍛造後の組織の結晶粒径を均一化させる目的で、後述する切削加工前にJIS B 6911:2010「鉄鋼の焼ならしおよび焼なまし加工」に準拠した焼きならしや、素材硬さの低減を目的とした等温焼きなまし(IA)を行ってもよい。製造された棒鋼または線材を冷間鍛造または機械加工して、所定の形状に加工し中間品とする。機械加工は、例えば、切削や穿孔である。中間品の形状は、周知の方法により形成される。
熱処理工程では、中間品を熱処理する。例えば、中間品製造工程で製造された中間品に対して、表面硬化熱処理を実施する。さらに、表面硬化熱処理後、中間品に対して焼戻しを実施してもよい。焼入れ後の中間品に対してさらに機械加工(切削加工等)を実施してもよい。表面硬化熱処理は、例えば、ガス浸炭、真空浸炭、窒化等を指す。これらの処理条件は一般的に行なわれている周知の条件により処理される。表面硬化熱処理後の部品表層における圧縮残留応力を高める目的で、ショットピーニングなどの表面硬化処理を行っても良い。
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る転がり強度試験方法は、評価材における相手材との接触面Sの形状が、正面視で、回転軸と平行になっている点で第1の実施形態と異なる。これは、評価材の形状と相手材の形状が第1の実施形態とは異なることに起因する。以下に、図5~7を参照して、第2の実施形態を説明する。図5は、第2の実施形態における評価材1Aの正面図である。図6は、本実施形態における相手材2Aの正面図である。図7は、本実施形態における評価材の接触面Sにおける接触長さLおよび接触幅2wを説明するための模式図である。
[評価材1A]
評価材1Aは、図5に示すように、円柱形状であり、軸方向にわたって略同径であり、半径がR11である。換言すると、評価材1Aは、第1の実施形態における評価材1とは本体部と接触部とが区分されていない点で、第1の実施形態における評価材1と異なる。したがって、評価材1Aの軸方向端部以外は接触部11Aであると言える。
評価材1Aにおける相手材2Aと接触する接触部11Aの軸方向長さlは、1mm以上であることが好ましい。評価材1Aは回転軸Cに沿った方向にわたって略同径であるため、評価材1Aの回転軸C方向の長さが接触部11Aの軸方向長さlとなる。接触部11Aの軸方向長さlが1mm以上であれば、接触面積が小さくなることで後述する焼付き評価パラメータSが小さくなる。加えて、小さな荷重で高い面圧を接触面111に作用させることで、最大せん断応力位置Dτxyを回転軸C側から接触面111側に移行させることができる。
相手材2Aが複数設けられる場合は、接触面211Aの回転軸C方向の長さが最も短い相手材2Aの当該長さを接触部11Aの厚さtとし、厚さtが1mm以上であることが好ましい。
評価材1Aの軸方向両端には、平面視での曲率半径がR13である縁部13、13を有する。縁部13の形状は特段制限されず、例えば、R面取り、C面取り、または糸面取りとすることができる。縁部13の形状がC面取りまたは糸面取りの場合、曲率半径R13は、面取り部分における両端から同距離の点を曲率円の中心として、当該中心から面取り部分の端部までの距離を曲率半径とする。
[相手材2A]
相手材2Aは、図6に示すように、円柱形状であり、軸方向にわたって略同径であり、半径がR22である。換言すると、相手材2Aは、第1の実施形態における相手材2とは、接触部21Aにおける接触面211Aが、相手材2Aの回転軸Cと平行である点で、第1の実施形態における評価材1と異なる。
相手材2Aは、接触部21Aにおける軸方向両端に、曲率半径がR21である縁部21a、21aを有する。この場合、接触面211Aの軸方向長さl21は、相手材2Aの軸方向長さをLとして、以下の式(9)で表される。
21≦L-2×R21 ・・・式(9)
縁部21aの形状は特段制限されず、例えば、R面取り、C面取り、または糸面取りとすることができる。縁部21aの形状がC面取りまたは糸面取りの場合、曲率半径R21は、面取り部分における両端から同距離の点を曲率円の中心として、当該中心から面取り部分の端部までの距離を曲率半径とする。
接触面211Aの軸方向長さl21は、1mm以上であることが好ましい。これにより、接触面積が小さくなることで後述する焼付き評価パラメータSが小さくなる。加えて、小さな荷重で高い面圧を接触面111に作用させることで、最大せん断応力位置Dτxyを回転軸C側から接触面111側に移行させることができる。
上述した評価材1Aおよび相手材2Aは、それぞれ第1の実施形態における評価材1および相手材2と比較して単純な形状であるため、それらを準備するための加工が容易である。
[焼付き評価パラメータS
相手材2Aから評価材1Aに荷重が作用すると、評価材1Aにおける相手材2Aとの接触面Sは、図7に示すように、幅2w(mm)を有する矩形状となる。このときの、荷重が接触したときの評価材1Aの接触面Sにおける回転軸C方向の長さをL(mm)とすると接触面Sの面積Aは、以下の式(10)で表される。
A=2wL・・・式(10)
評価材1Aにおける接触部11Aの軸方向長さlが相手材2Aにおける接触面211Aの軸方向長さl21よりも長いとき、相手材2Aにおける接触面211Aの軸方向長さl21が接触長さLとなる。評価材1Aにおける接触部11Aの軸方向長さlが相手材2Aにおける接触面211Aの軸方向長さl21よりも短いとき、評価材1Aにおける接触面111Aの軸方向長さlが接触長さLとなる。
焼付き評価パラメータSは、式(10)により算出された面積Aを用いて算出される。第2の実施形態においても、焼付き評価パラメータSは9.00以下である。
[すべり率σ12が-300~-60%]
評価材1Aのすべり率σ12は、上記式(3)に従って求められる。評価材1Aのすべり率σ12は、第1の実施形態と同様に、-300~-60%である。
[降伏パラメータRが0.85以下]
非特許文献3に記載されているように、二円筒(評価材1Aと相手材2A)が線接触している場合、b/a=0(クラウニングR12、R22が∞であるため2a→∞)であり、上記(5)式より、tの値が0.5をとることができないため、式(8)よりt=1.00である。すなわち、共役最大せん断応力τxyが発生する、接触面Sから深さ方向における位置Dτxyは、式(6)から0.5bとなる。第1の実施形態と区別するために、bを便宜的にwとすると、共役最大せん断応力τxyが発生する、接触面Sから深さ方向における位置Dτxyは、0.5wとなる。
降伏パラメータRは、上記式(4)、(5)から求められ、第2の実施形態においても0.85以下である。
評価材1Aおよび相手材2Aは、第2の実施形態と同様の方法で製造されてよい。
以上、本発明の一実施形態に基づき、本発明を説明した。第1の実施形態および第2の実施形態のとおり、焼付き評価パラメータSは式(1)により算出することができる。上述した実施形態はあくまでも例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
<第1の実施形態の変形例>
例えば、第1の実施形態において、上述した評価材1は、テーパー部11aを有する形状であったが、評価材は、図8示すような形状の評価材1Bであってもよい。評価材1Bでは、接触部11Bは、評価材1Bの回転軸Cに垂直な方向からみたときに凹となる凹クラウンを有している。言い換えると、接触部11Bは、評価材1Bの回転軸Cに垂直な方向からみたときに、軸方向両端から軸方向中央に向かうにつれて径(回転軸Cから接触面111Bまでの距離)が小さくなっている。
また、例えば、評価材が図9に示すような形状であり、相手材が図10に示すような形状であってもよい。図9に示す評価材1Cでは、接触部11Cは、本体部12Cよりも大径の部分である。評価材1Cにおいて、接触部11Cには、本体部12Cと連なるテーパー部11c、11cと、テーパー部11c、11cとの間において、回転軸Cに沿って略同径の円柱部11dから構成される。一方、図10に示す相手材2Cでは、接触部21Cは、相手材2Cの回転軸Cに垂直な方向からみたときに凹となる凹クラウンを有している。言い換えると、接触部21Cは、相手材2Cの回転軸Cに垂直な方向からみたときに、軸方向両端から軸方向中央に向かうにつれて径(回転軸Cから接触面211Cまでの距離)が小さくなっている。なお、接触部11Cが、評価材1Cのように本体部12Cよりも大径である場合や、回転軸Cに垂直な方向からみたときに凸となる凸クラウンを有している場合、接触部11Cの半径R11は、接触部11Cにおける回転軸Cに垂直な最大半径をいう。また、相手材2Cのように、接触部21が、回転軸Cに垂直な方向からみたときに凹となる凹クラウンを有している場合、接触部21Cの半径R21は、接触部21Cにおける回転軸Cに垂直な最小半径をいう。
また、相手材は、例えば、接触部の軸方向両側に、評価材と接触しない形状の本体部(図示せず。)を有していてもよい。
また、本発明に係る転がり疲労の試験方法では、1つの評価材に接触回転させる相手材は、1つに限らず、複数であってもよい。
<第2の実施形態の変形例>
また、例えば、第2の実施形態において、上述した相手材2Aは、回転軸C方向にわたって略同径であったが、相手材は、図11示すような形状の相手材2Dであってもよい。相手材2Dは、正面視で、その接触面211Dが回転軸Cと平行であることは相手材2Aと同様であるが、接触面211D以外の外周において、段差を有していてもよい。
また、相手材は、例えば、接触部の軸方向両側に、評価材と接触しない形状の本体部(図示せず。)を有していてもよい。
また、接触部の軸方向長さは、評価材における接触面の接触長さが相手材における接触面の接触長さより長い範囲で、適宜変更されてもよい。例えば、評価材の形状は、図12に示すような、相手材と接触する部分である接触部11Dと、接触部11Dの両端に接続した本体部12Dと、を有する評価材1Dであってもよい。接触部11Dは、本体部12Dよりも小径の部分である。接触部11Dには、径方向端部に配された、相手材と接触する接触面111Dが配されている。接触部11Dは、本体部と連なるテーパー部11a、11aの間において、回転軸Cに沿って略同径の円柱部11bから構成される。
また、本発明に係る転がり疲労の試験方法では、1つの評価材に接触回転させる相手材は、1つに限らず、複数であってもよい。一つまたは複数の相手材のうち、少なくとも一つの相手材における接触長さl21は、1mm以上であることが好ましい。これにより焼き付きを一層抑制することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
<実施例1>
[評価材の製造]
評価材を以下の方法で製造した。JIS G 4053規格に準ずる化学成分を有する鋼SCr420、SCM420、SCM435、SCM822、SNCM220およびSACM645を、300kg真空溶解炉で溶解して溶鋼を製造し、各溶鋼を鋳造してインゴットを製造した。このインゴットを熱間鍛造して直径250mmの丸棒とした。熱間鍛造は1100℃から1200℃の間の温度にて行い、鍛造後は大気中で放冷した。各棒鋼(真空溶解材)に対して、JIS B 6911:2010「鉄鋼の焼ならしおよび焼なまし加工」に準拠した焼きならしを実施した。
次いで、焼ならし後の直径250mmの各棒鋼に対して機械加工を実施して、図3および表2に示す形状を有する評価材を作製した。接触部の軸方向両側には直径φが24mmの本体部を設けた。各本体部の軸方向長さl12は、60mmとした。接触部の長さl11は、28mmとした。したがって、評価材の長さLは、148mmとした。
Figure 2023152624000006
作製した各評価材に対して、ガス浸炭、真空浸炭、または窒化による、表面硬化熱処理を実施した。ガス浸炭条件、真空浸炭、および窒化の各条件は以下のとおりとした。すなわち、ガス浸炭処理(ガス浸炭焼入れおよび焼戻し)では、カーボンポテンシャルCPが1.0%の雰囲気中において、各評価材を930℃で80分保持した(浸炭工程)。その後、カーボンポテンシャルCPを0.8%とし、粗試験片を930℃で60分保持した(拡散工程)。その後、各評価材を850℃まで降温し、850℃で30分保持した後、60℃の油中で冷却した(焼入れ工程)。冷却後の各評価材に対して、焼戻し処理を実施した。焼戻し温度は180℃であり、焼戻し温度での保持時間は120分であった。真空浸炭処理では、まず100Pa以下の炉内圧力でアセチレンガスを導入する浸炭工程を実施した。浸炭工程の温度を930℃とし、保持時間を30分とした。浸炭工程後、拡散工程を実施した。拡散工程では、アセチレンガスの導入を停止し、炉内圧力を10Pa以下とした。拡散工程での温度を930℃とし、保持時間を10分とした。拡散工程後、焼入れ工程を実施した。焼入れ工程では、温度を850℃とし、保持時間を30分とした。保持時間経過後、60℃の油中で冷却した。焼入れ工程後、焼戻し工程を実施した。焼戻し工程では、温度を180℃とし、保持時間を120分とした。窒化処理では、大気圧下で炉内にNH、H、Nの各ガスを導入し、570℃で、180分保持した。保持時間経過後、60℃の油中で冷却した。ビッカース硬さHvは、評価材の接触部において10か所の断面を取得し、硬さ分布を測定して行った。詳細には、各断面において、接触面から深さ方向に0.03mmの位置を開始点として、0.05mm、0.10mm、以降0.05mm毎に2.00mm深さまで、JIS Z2244:2020に準拠し、荷重は0.20kgfとしてビッカース硬さHvを測定する。測定位置は断面120度毎に計3か所とし、測定されたビッカース硬さHvが513Hvとなる位置までの径方向長さ(深さ)の平均値を有効硬化層深さDとした。
[相手材の製造]
相手材を、以下の方法で製造した。JIS G 4053:2016のSCM420規格を満たす鋼を用いて、一般的な製造工程、つまり「焼きならし→試験片加工→ガス浸炭炉による共析浸炭→低温焼戻し→研磨」の工程によって図4および表2で示される相手材を製造した。
相手材の表面から0.05mmの位置、すなわち、深さ0.05mmの位置におけるビッカース硬さHvは740~760で、また、ビッカース硬さHvが513となる深さは、0.8~1.0mmの範囲にあった。各評価材の深さ0.05mmの位置におけるビッカース硬さHvおよびビッカース硬さHvが513となる深さは、以下の方法で求めた。すなわち、評価材の接触部の中心位置から回転軸Cに垂直な断面を取得し、各断面において、接触面から深さ方向に0.03mmの位置を開始点として、0.05mm、0.10mm、以降0.05mm毎に2.00mm深さまで、JIS Z2244:2020に準拠し、荷重は0.20kgfとして、ビッカース硬さを測定した。測定で得られた硬さの値を、測定位置の深さにもとづいてプロットし、各点をつないだ線が対象の値となる位置の値を、ビッカース硬さHvが513となる深さとして特定した。
[評価]
製造された各評価材の焼付きおよび塑性変形の評価を、次の方法で評価した。熱処理ひずみを除く目的で評価材の本体部の仕上げ加工を行った後、当該評価材および相手材を二円筒転がり疲労試験に供した。評価材の接触面と相手材の接触面とを接触させ、表3に示す面圧p0を加えたうえで表3に示す回転数で互いに逆回転させた。表に示す面圧p0は、非特許文献1の式(6.49)に示された、以下の式(11)で算出した。
Figure 2023152624000007
上記式(11)中、Pは負荷荷重、aは長軸半径、bは短軸半径である。
二円筒転がり疲労試験の打切繰返し回数は、一般的な鋼に要求される疲労限を示す1.0×10回とした。ただし、試験中に振動が発生した場合は、評価材の内部に塑性変形が生じているため、評価材および相手材の回転を停止した。打切繰返し回数まで到達せずに回転を停止した場合は、回転停止後の評価材の接触面を観察し、試験を途中停止せずに上記繰返し回数まで試験が継続された場合は、試験終了後の接触面を観察した。これらの接触面において焼付き痕が確認されなかった場合を焼付き非発生と判定した。なお、振動発生の確認は、試験機に備え付けられた振動計によって行われた。
試験中における評価材内部の塑性変形の発生の確認は、試験前および繰り返し回数が1×10回となった後の評価材の接触部の中心位置から回転軸Cに垂直な断面を取得し、硬さ分布を測定して行った。詳細には、各断面において、接触面から深さ方向に0.050mmの位置を開始点として、0.025mm毎にΔHv=(1×10回経過後のビッカース硬さ)-(試験前のビッカース硬さ)を算出し、各深さにおけるΔHvの平均値を算出した。各深さのΔHvの平均値のうち、最も大きな値をΔHvmaxとし、ΔHvmaxが50Hv未満であれば評価材の内部で塑性変形していないと判定した。なお、試験前の断面硬さ分布測定に供した試験片および1×10回後の断面硬さ分布測定に供した試験片は、互いに異なるものとした。結果を表3に示す。
Figure 2023152624000008
上記のとおり、荷重が作用しているときの評価材における前記相手材との接触面の、長軸半径a、短軸半径bおよびすべり率σ12を用いて、式(1)により算出される焼付き評価パラメータSが9.00以下を満たし、かつ、評価材の共役最大せん断応力τxyが発生する、前記評価材の前記接触面からの深さ位置Dτxyを用いて式(4)から算出されるDτxy’と、前記評価材の有効硬化層深さDと、により式(5)から算出される降伏パラメータRが0.85以下を満たす例では、焼付きが発生せず、1×10回繰り返した後の評価材の内部では塑性変形(降伏)が生じていなかった。よって、評価パラメータSが9.00以下であり、降伏パラメータRが0.85以下の二円筒転がり疲労試験では、より簡便かつより正確に、歯車に用いられる表面硬化鋼の転がり疲労強度を評価できることが分かった。
比較例27は、焼付き評価パラメータSが9.00を超えていたために、打切繰返し回数までに評価材の接触面に焼付きが生じ、適切な測定結果を得ることができなかった。
比較例28は、降伏パラメータRが0.85を超えていたために、繰り返し回数が1×10回となった後の評価材の内部で塑性変形が生じていた。したがって、打切繰返し回数まで試験を行っても、適切な測定結果を得ることができないと思われる。
比較例29においては、評価材の半径R11が1mmと小さく、試験中に評価材が破損した結果、測定結果を得ることができなかった。
比較例30においては、評価材のクラウニングR12が1mmよりも小さく、クラウニングR12を有する位置以外が相手材と接触した結果、測定結果を得ることができなかった。
比較例31においては、相手材の半径R21が1mmと小さく、試験中に相手材が破損した結果、測定結果を得ることができなかった。
比較例32においては、相手材のクラウニングR22が1mmよりも小さく、クラウニングR22を有する位置以外が評価材と接触した結果、測定結果を得ることができなかった。
比較例33および34は、それぞれ評価材、相手材において表面粗さが高くなっていた結果、打切繰返し回数までに評価材の接触面に焼付きが生じ、適切な測定結果を得ることができなかった。
<実施例2>
[評価材の製造]
評価材を以下の方法で製造した。JIS G 4053規格に準ずる化学成分を有する鋼SCr420、SCM420、SCM435、SCM822、SNCM220およびSACM645を、300kg真空溶解炉で溶解して溶鋼を製造し、各溶鋼を鋳造してインゴットを製造した。このインゴットを熱間鍛造して直径250mmの丸棒とした。熱間鍛造は1100℃から1200℃の間の温度にて行い、鍛造後は大気中で放冷した。各棒鋼(真空溶解材)に対して、JIS B 6911:2010「鉄鋼の焼ならしおよび焼なまし加工」に準拠した焼きならしを実施した。
次いで、焼ならし後の直径250mmの各棒鋼に対して機械加工を実施して、図5および表4に示す形状を有する評価材を作製した。
Figure 2023152624000009
作製した各評価材に対して、ガス浸炭、真空浸炭、または窒化による、表面硬化熱処理を実施した。ガス浸炭条件、真空浸炭、および窒化の各条件は以下のとおりとした。すなわち、ガス浸炭処理(ガス浸炭焼入れおよび焼戻し)では、カーボンポテンシャルCPが1.0%の雰囲気中において、各評価材を930℃で80分保持した(浸炭工程)。その後、カーボンポテンシャルCPを0.8%とし、粗試験片を930℃で60分保持した(拡散工程)。その後、各評価材を850℃まで降温し、850℃で30分保持した後、60℃の油中で冷却した(焼入れ工程)。冷却後の各評価材に対して、焼戻し処理を実施した。焼戻し温度は180℃であり、焼戻し温度での保持時間は120分であった。真空浸炭処理では、まず100Pa以下の炉内圧力でアセチレンガスを導入する浸炭工程を実施した。浸炭工程の温度を930℃とし、保持時間を30分とした。浸炭工程後、拡散工程を実施した。拡散工程では、アセチレンガスの導入を停止し、炉内圧力を10Pa以下とした。拡散工程での温度を930℃とし、保持時間を10分とした。拡散工程後、焼入れ工程を実施した。焼入れ工程では、温度を850℃とし、保持時間を30分とした。保持時間経過後、60℃の油中で冷却した。焼入れ工程後、焼戻し工程を実施した。焼戻し工程では、温度を180℃とし、保持時間を120分とした。窒化処理では、大気圧下で炉内にNH、H、Nの各ガスを導入し、570℃で、180分保持した。保持時間経過後、60℃の油中で冷却した。ビッカース硬さHvは、評価材の接触部において10か所の断面を取得し、硬さ分布を測定して行った。詳細には、各断面において、接触面から深さ方向に0.03mmの位置を開始点として、0.05mm、0.10mm、以降0.05mm毎に2.00mm深さまで、JIS Z2244:2020に準拠し、荷重は0.20kgfとしてビッカース硬さHvを測定する。測定位置は断面120度毎に計3か所とし、測定されたビッカース硬さHvが513Hvとなる位置までの径方向長さ(深さ)の平均値を有効硬化層深さDとした。
[相手材の製造]
相手材を、以下の方法で製造した。JIS G 4053:2016のSCM420規格を満たす鋼を用いて、一般的な製造工程、つまり「焼きならし→試験片加工→ガス浸炭炉による共析浸炭→低温焼戻し→研磨」の工程によって図6および表4で示される相手材を製造した。
相手材の表面から0.05mmの位置、すなわち、深さ0.05mmの位置におけるビッカース硬さHvは740~760で、また、ビッカース硬さHvが513となる深さは、0.8~1.0mmの範囲にあった。各評価材の深さ0.05mmの位置におけるビッカース硬さHvおよびビッカース硬さHvが513となる深さは、実施例1と同様にして測定した。
[評価]
製造された各評価材の焼付きおよび塑性変形の評価を、次の方法で評価した。熱処理ひずみを除く目的で評価材の本体部の仕上げ加工を行った後、当該評価材および相手材を二円筒転がり疲労試験に供した。評価材の接触面と相手材の接触面とを接触させ、表5に示す面圧p0を加えたうえで表5に示す回転数で互いに逆回転させた。表に示す面圧p0は、上記式(11)におけるπabを2wLに置き換えて算出した。
二円筒転がり疲労試験の打切繰返し回数、および試験中の評価材内部の塑性変形の発生の確認は実施例1と同様の方法で行った。結果を表5に示す。
Figure 2023152624000010
上記のとおり、荷重が作用しているときの評価材における前記相手材との接触面の、主軸方向における接触幅L、周方向における接触幅w、およびすべり率σ12を用いて、式(1)により算出される焼付き評価パラメータSが9.00以下を満たし、かつ、評価材の共役最大せん断応力τxyが発生する、前記評価材の前記接触面からの深さ位置Dτxyを用いて式(4)から算出されるDτxy’と、前記評価材の有効硬化層深さDと、により式(5)から算出される降伏パラメータRが0.85以下を満たす例では、焼付きが発生せず、1×10回繰り返した後の評価材の内部では塑性変形(降伏)が生じていなかった。よって、評価パラメータSが9.00以下であり、降伏パラメータRが0.85以下の二円筒転がり疲労試験では、より簡便かつより正確に、歯車に用いられる表面硬化鋼の転がり疲労強度を評価できることが分かった。
比較例59は、焼付き評価パラメータSが9.00を超えていたために、打切繰返し回数までに評価材の接触面に焼付きが生じ、適切な測定結果を得ることができなかった。
比較例60は、降伏パラメータRが0.85を超えていたために、繰り返し回数が1×10回となった後の評価材の内部で塑性変形が生じていた。したがって、打切繰返し回数まで試験を行っても、適切な測定結果を得ることができないと思われる。
比較例61においては、評価材の半径R11が1mmと小さく、試験中に評価材が破損した結果、測定結果を得ることができなかった。
比較例62においては、評価材の最外周厚さが1mmと小さかったため、ピッチングを検出できず、測定結果を得ることができなかった。
比較例63においては、相手材の半径R21が1mmと小さく、試験中に相手材が破損した結果、測定結果を得ることができなかった。
比較例64においては、相手材の最外周厚さが1mmと小さかったため、ピッチングを検出できず、測定結果を得ることができなかった。
比較例65および66は、それぞれ評価材、相手材において表面粗さが高くなっていた結果、打切繰返し回数までに評価材の接触面に焼付きが生じ、適切な測定結果を得ることができなかった。
比較例70は、焼付き評価パラメータSが9.00を超えていたために、打切繰返し回数までに評価材の接触面に焼付きが生じ、適切な測定結果を得ることができなかった。
このように、本発明では、焼付き評価パラメータS、降伏パラメータR、評価材のすべり率σ12、並びに、評価材および相手材の二乗平均平方根粗さRqを適切な範囲内で調整しつつ疲労試験条件を設定する。これにより、高い負荷(すべり率、高い面圧および高い回転速度)で試験を行う場合も、評価材表面での焼付きを抑制し、また内部での塑性変形を避けることができ、従来よりも高い負荷下において鋼材の適性を評価することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1,1A,1B 評価材
11,11A,11B 接触部
11a,11c テーパー部
11b,11d 円柱部
12,12A,12B 本体部
13 縁部
111,111A,111B 接触面
121,121A,121B 表面
2,2B 相手材
21,21B 接触部
21a 縁部
211,211A,211B 接触面
回転軸
回転軸
S 荷重が作用したときの評価材の接触面

Claims (9)

  1. 回転軸を有する評価材と、回転軸を有する、一つまたは複数の相手材と、を備え、前記評価材の回転面と前記相手材の回転面とを接触させ、前記評価材に荷重を作用させつつ、前記評価材と前記相手材を互いに逆回転させて、前記評価材の転がり疲労強度を評価する転がり疲労強度の試験方法であって、
    前記荷重が作用しているときの前記評価材における前記相手材との接触面の、面積A(mm)およびすべり率σ12を用いて、式(1)により算出される焼付き評価パラメータSが9.00以下を満たし、かつ、
    前記評価材の共役最大せん断応力τxyが発生する、前記評価材の前記接触面からの深さ位置Dτxyを用いて式(2)から算出されるDτxy’と、前記評価材の有効硬化層深さDと、により式(3)から算出される降伏パラメータRが0.85以下を満たし、
    前記評価材のすべり率σ12が-300~-60%であり、
    前記評価材における前記相手材と接触する接触面、および、前記相手材における前記評価材と接触する接触面の二乗平均平方根粗さRqが1.00μm以下である、
    ことを特徴とする、転がり疲労強度の試験方法。
    =A(σ12/100) ・・・式(1)
    Dτxy’=2Dτxy ・・・式(2)
    =Dτxy’/D ・・・式(3)
  2. 前記評価材における前記相手材との接触面の形状が楕円形であり、前記面積Aが長軸半径a(mm)、短軸半径b(mm)を用いて、式(4)により算出される、請求項1に記載の転がり疲労強度の試験方法。
    A=πab・・・式(4)
  3. 前記評価材における前記相手材と接触する接触部の半径R11が2~100mmである、請求項2に記載の転がり疲労強度の試験方法。
  4. 前記評価材における前記相手材と接触する接触部のクラウニングR12が1mm以上である、請求項2または3に記載の転がり疲労強度の試験方法。
  5. 前記一つまたは複数の前記相手材のうち、少なくとも一つの前記相手材における前記評価材と接触する接触部の半径R21が2mm~100mmである、請求項2または3に記載の転がり疲労強度の試験方法。
  6. 前記一つまたは複数の前記相手材のうち、少なくとも一つの前記相手材における接触部のクラウニングR22が1mm以上である、請求項2または3に記載の転がり疲労強度の試験方法。
  7. 前記評価材における前記相手材との接触面の形状が矩形状であり、前記面積Aが、前記回転軸方向における前記接触面の接触長さL、前記接触面において前記回転軸方向に垂直な方向の周方向における接触幅2wを用いて、式(5)により算出される、請求項1に記載の転がり疲労強度の試験方法。
    A=2wL・・・式(5)
  8. 前記評価材における前記相手材と接触する接触部の回転軸方向長さlが1mm以上である、請求項7に記載の転がり疲労強度の試験方法。
  9. 前記一つまたは複数の前記相手材のうち、少なくとも一つの前記相手材における前記評価材と接触する接触面の回転軸方向長さl21が1mm以上である、請求項7または8に記載の転がり疲労強度の試験方法。
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