JP2023147894A - 乾性潤滑被膜用の塗料組成物、乾性潤滑被膜 - Google Patents

乾性潤滑被膜用の塗料組成物、乾性潤滑被膜 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑油とのなじみ性を向上させ、潤滑油保持性を高めることで、摺動特性をより向上させることができる乾性潤滑被膜用の塗料組成物、及びその乾性潤滑被膜を提供すること。【解決手段】本発明は、乾性潤滑被膜を形成するための塗料組成物であって、平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂をバインダーとして含み、そのバインダー中に固体潤滑剤が分散してなる。フェノキシ樹脂の重量平均分子量としては、30000~80000であることが好ましい。また、潤滑油と併せて用いられることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑油のなじみ性に優れた乾性潤滑被膜を形成することができる乾性潤滑被膜形成用の塗料組成物、及びその乾性潤滑被膜に関する。
従来、OA機器、家電、自動車、産業機械等の初期なじみ対策、焼き付き性向上等を目的として、固体潤滑剤を樹脂中に分散含有させた乾性潤滑被膜が使用されている。この乾性潤滑被膜は、固体潤滑剤とバインダー樹脂とを含む組成物を、金属部材の表面、あるいはゴムや樹脂部材の表面に適切な膜厚で塗布し、乾燥又は加熱硬化させることにより被膜化して形成されるものである。
使用用途の一例として、例えば自動車エンジン部品、詳しくはエンジンピストンスカートや軸受け用メタルでは、エンジンオイルと併用して、乾性潤滑被膜とエンジンオイルとの効果で摩擦係数の低減や金属の焼き付きを防止している。つまり、油を併用することで乾性潤滑被膜の効果を向上させることが可能である。
また、エンジンオイルに着目すると、近年低粘度化が進み、油膜の保持が難しくなり、コールドスタート時のトルク上昇が課題になっている。
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、潤滑被膜単体の効果であり、潤滑油を併用した場合の作用については検討が不足している。また、特許文献2及び3に開示の技術は、印刷方法や形状での潤滑油保持性であり、組成物での効果ではない。
特開2018-150528号公報 特開2005-320934号公報 特開2013-167209号公報
本発明は、上述した従来の実情に鑑みて提案されたものであり、乾性潤滑被膜において潤滑油とのなじみ性を向上させ、潤滑油保持性を高めることで、摺動特性をより向上させることができる乾性潤滑被膜用の塗料組成物、及びその乾性潤滑被膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、乾性潤滑被膜を構成する成分のバインダーにフェノキシ樹脂を用いることで、その乾性潤滑被膜の潤滑油なじみ性が向上することを見出した。そして、潤滑油なじみ性が向上することで、潤滑油併用時の被膜の摺動特性が向上することがわかった。本発明は、このような知見に基づき完成された、以下のとおりのものである。
(1)本発明の第1の発明は、乾性潤滑被膜を形成するための塗料組成物であって、平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂をバインダーとして含み、前記バインダー中に固体潤滑剤が分散してなる、塗料組成物である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が30000~80000である、塗料組成物である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記固体潤滑剤の含有量が、全固形分に対して15質量%~85重量%である、塗料組成物である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、グラファイト、及び二硫化タングステンから選ばれる1種以上である、塗料組成物である。
(5)本発明の第5の発明は、部材の表面に形成されて摺動層を構成する乾性潤滑被膜であって、平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂をバインダーとして含み、前記バインダー中に固体潤滑剤が含まれている、乾性潤滑被膜である。
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明において、潤滑油と併せて用いられる、乾性潤滑被膜である。
(7)本発明の第7の発明は、第5又は第6の発明において、当該乾性潤滑被膜に対する油の静的接触角が25°以下である、乾性潤滑被膜である。
本発明によれば、潤滑油とのなじみ性を向上させ、潤滑油保持性を高めることができ、摺動特性をより向上させることが可能な乾性潤滑被膜を形成することができる。
以下、本発明の具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることが可能である。
≪1.乾性潤滑被膜形成用の塗料組成物≫
本実施の形態に係る塗料組成物は、乾性潤滑被膜形成用の塗料組成物である。特に、この塗料組成物は、潤滑油を併用して好適なものであり、その潤滑油とのなじみ性を向上させ、潤滑油保持性を高めて、摺動特性をより向上させることが可能な乾性潤滑被を形成するための塗料組成物である。
具体的に、本実施の形態に係る塗料組成物は、平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂をバインダーとして含み、そのバインダー中に固体潤滑剤が分散してなる、ことを特徴としている。なお、塗料組成物は、バインダー樹脂、固体潤滑剤等の固形成分(有効成分)が、揮発成分である有機溶剤に溶解して構成される。
<1-1.構成成分について>
[バインダー樹脂]
本実施の形態に係る塗料組成物は、バインダーとして、平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂を含有する。
フェノキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂を重合した高分子体であり、ビスフェノール類とエピクロロヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルである。フェノキシ樹脂は、両末端にエポキシ基を有する。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型フェノキシ樹脂、ノボラック型フェノキシ樹脂、ナフタレン型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。その中でも、フェノキシ樹脂は、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましい。ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のみを重合させたフェノキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のみを重合させたフェノキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを所定の比率で共重合させたフェノキシ樹脂、及びこれらの混合物であるフェノキシ樹脂のいずれであってもよい。
なお、一例として、下記式(I)に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のみを重合させたフェノキシ樹脂の構造式を示す。式中のnは繰り返し単位数を表す。なお、フェノキシ樹脂としては、下記の構造からなるものに限定されない。
Figure 2023147894000001
フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が、30000~80000であることが好ましく、35000~70000であることがより好ましい。
そして、本実施の形態に係る塗料組成物においては、平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂を含有する。「平均官能基数」とは、重量平均分子量をエポキシ当量で除した一分子あたりの官能基数をいう。本発明者により研究の結果、バインダーとしてフェノキシ樹脂を用い、そのフェノキシ樹脂の平均官能基数が潤滑油とのなじみ性を向上させる要因として重要であることを特定し、特に、平均官能基数が3以上のフェノキシ樹脂であることにより、潤滑油と優れたなじみ性を奏することを見出した。
上記式(I)の一例構造式に示されるように、フェノキシ樹脂は、他の樹脂よりも官能基の数が多く、繰り返し単位の中に極性基である水酸基を有している。一般的に、極性が高いほど親水性の性質を奏することになるが、フェノキシ樹脂を含有する被膜においては、その被膜表面が親油性の性質を奏することがわかった。このことは、フェノキシ樹脂中に存在する水酸基は、被塗物表面の水酸基と積極的に反応して水素結合を作る(化学的相互作用)ため、フェノキシ樹脂中の水酸基は被塗物との界面に集中し、一方で被膜表面側は水酸基が乏しい状態となり、その被膜表面にはメチレン鎖、メチル基、ベンゼン環といった親油性を示す基が集中するようになることによると推察される。
このことから、バインダーとして平均官能基数が3以上のフェノキシ樹脂を含有する乾性潤滑被膜によれば、潤滑油と良好ななじみ性が発現する。これにより、潤滑油保持性を高め、摺動特性をより向上させることができる。
上述したように、フェノキシ樹脂において、平均官能基数は3以上であり、その平均官能基数が大きくなればなるほど、被膜表面の親油性が高まり、潤滑油とのなじみ性が向上する。平均官能基数は、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましい。
フェノキシ樹脂の平均官能基数の上限値については、特に限定されない。例えば、塗料組成物の他の性状や有機溶剤への溶解性等に応じて適宜設定することができるが、平均官能基数は20以下とすることが好ましく、15以下とすることがより好ましい。
なお、平均官能基数は3以上のフェノキシ樹脂としては、市販されているものを有効に適用することができる。
バインダーであるフェノキシ樹脂の含有量としては、特には限定されず、後述する固体潤滑剤の含有比率等の観点から適宜設定すればよいが、当該塗料組成物に含まれる全固形成分(有効成分)に対して、15質量%~85質量%程度であることが好ましく、20質量%~70質量%程度であることがより好ましい。フェノキシ樹脂の含有量が、全固形成分に対して15質量%未満であると、潤滑油とのなじみ性の向上効果が十分に得られない可能性がある。一方で、85質量%を超えると、後述する固体潤滑剤との比率(P/B)が相対的に減少し、摩擦低減効果が十分に発揮されず、良好な潤滑性が得られない可能性がある。
なお、バインダー樹脂としては、その作用効果を損なわせない範囲で、他の樹脂を含有していてもよい。他の樹脂としては、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。ただし、バインダー樹脂をフェノキシ樹脂のみから構成することで、乾性潤滑被膜の表面を適切に親油性とし、潤滑油とのなじみ性をより効果的に向上させることが可能となる。
[固体潤滑剤]
本実施の形態に係る塗料組成物は、上述したバインダー樹脂に固体潤滑剤を分散させて構成される。なお、当該塗料組成物、及び塗料組成物を被塗物(部材)に塗布して形成される乾性潤滑被膜において、バインダー樹脂と、固体潤滑剤とが、主な固形成分(有効成分)として構成される。
固体潤滑剤としては、特に限定されず、例えば、二硫化モリブデン(MoS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、二硫化タングステン(WS)、窒化ホウ素(BN)、グラフェン等が挙げられる。その中でも、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、グラファイト、及び二硫化タングステンから選ばれる固体潤滑剤を用いることが、より優れた低摩擦性を発揮し、また化学的安定性に優れるという点から、特に好ましい。これらの固体潤滑剤は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
固体潤滑剤の含有量としては、特に限定されないが、当該塗料組成物に含まれる全固形成分に対して、15質量%~85質量%程度であることが好ましく、30質量%~80質量%程度であることがより好ましい。固体潤滑剤の含有量が、全固形成分に対して15質量%未満であると、摩擦低減効果が十分に発揮されず、良好な潤滑性が得られない可能性がある。一方で、85質量%を超えると、形成される乾性潤滑被膜の摩耗量が多くなる可能性がある。
また、固体潤滑剤(P)と上述したバインダー樹脂(B)との含有比率(P/B)としては、0.5~5.0の範囲であることが好ましく、1.0~4.5の範囲であることがより好ましく、1.5~3.5の範囲であることが特に好ましい。なお、含有比率とは、バインダー樹脂(B)と固体潤滑剤(P)との質量比の値をいう。
[有機溶剤]
上述したように、塗料組成物は、上述したバインダー樹脂と、固体潤滑剤とを含む固形成分を、有機溶剤に溶解して構成される。なお、当該塗料組成物を、被塗物(部材)の表面に塗布して焼成等の処理を施すと、有機溶剤が揮発して、固形成分からなる乾性潤滑被膜が形成される。
有機溶剤としては、特に限定されず、使用するバインダー樹脂(フェノキシ樹脂)に対する溶解力、乾燥性等を考慮して選定することが好ましい。具体的には、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)等の有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
[その他の添加剤]
塗料組成物においては、必要に応じて、種々の添加剤成分を含有させることができる。具体的には、例えば、充填剤、沈降防止剤、湿潤分散剤、消泡剤、表面調整剤等の添加剤を使用することができる。なお、これらの成分は、バインダー樹脂や固体潤滑剤と共に、固液成分(有効成分)として構成される。
<1-2.塗料組成物の製造方法>
本実施の形態に係る乾性潤滑被膜形成用の塗料組成物の製造方法としては、特には限定されず、従来公知の方法により製造することができる。
具体的には、固形成分であるバインダー樹脂(平均官能基数が3以上のフェノキシ樹脂を含有)と、固体潤滑剤と、揮発成分である有機溶剤とを、それぞれ所定の含有割合となるように配合させ混練することによって製造することができる。
このとき、有機溶剤に均一溶解させたバインダー樹脂中に、固体潤滑剤が均一に分散した状態とすることが重要となる。したがって、例えば、撹拌容器内に有機溶剤を投入し、その後、所定の配合割合となるように秤量したバインダー樹脂と、固体潤滑剤とを投入して、これらの材料が均一に溶解するまで、ディゾルバー型撹拌機やボールミル等の撹拌機によって撹拌する。さらにその後、有効成分の濃度等に応じて、サンドミル型、三本ロール型等の分散機を用いて、バインダー樹脂中に固体潤滑剤を均一に分散させる分散処理を実施することが好ましい。
なお、有機溶剤の中にバインダー樹脂と固体潤滑剤とを投入して混錬、分散処理を施す例を説明したが、これに限られず、分散処理後に有機溶剤を添加することで希釈して組成物としてもよい。
≪2.塗料組成物による乾性潤滑被膜の形成≫
上述したように、本実施の形態に係る塗料組成物は、乾性潤滑被膜を形成するためのものであり、この塗料組成物を塗布対象となる被塗物(部材)に塗布して、その後、硬化処理を施すことによって、乾性潤滑被膜を形成することができる。
<2-1.乾性潤滑被膜の形成方法>
(被塗物)
被塗物としては、特に限定されず、例えば、金属部材、ゴム部材、樹脂部材等が挙げられ、これらの部材の表面に塗料組成物を塗布して被膜を形成することができる。
(塗布方法)
被塗物に対して塗料組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、一般的な塗料と同様に、例えば、エアースプレー塗布、浸漬(ディッピング)塗布、刷毛塗り、吹付けによるタンブリング、スクリーン印刷等の手法により行うことができる。これらの塗布方法の選択は、被塗物の形状や処理数量に応じて適宜設定することができる。
なお、塗料組成物を被塗物に塗布するに先立ち、その被塗物に対する脱脂処理や、被膜の密着性を高めるための表面処理、あるいは洗浄処理等を行うことができる。
(乾性潤滑被膜の膜厚)
形成する乾性潤滑被膜の膜厚としては、特に限定されず、被塗物の用途等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、5μm~50μm程度とすることが好ましく、10μm~15μm程度とすることがより好ましい。
塗料組成物を被塗物に塗布するにあたっては、加熱等の手段で塗膜(乾性潤滑被膜組成物)を硬化させることによって得られる乾燥被膜が、所望とする膜厚(乾燥膜厚)となるように塗布量を決定して塗布することが好ましい。
(硬化処理)
塗料組成物を被塗物に塗布して形成した塗膜の硬化処理は、通常の塗膜の焼付手法により行うことができる。具体的には、例えば、その塗膜に対して、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等を行うことによって焼成することで、塗膜を硬化させることができる。このように、塗膜を硬化させて得られる被膜が、乾性潤滑被膜となる。
より具体的に、塗膜硬化のための焼成条件としては、特に限定されず、塗料組成物を構成するバインダー樹脂であるフェノキシ樹脂の含有量等に応じて決定することができる。例えば、焼成温度(硬化温度)としては、160℃~220℃程度の範囲とすることが好ましい。また、焼成処理時間(硬化時間)としては、特に限定されず、30分間~90分間程度の範囲で適宜設定することができる。
<2-2.乾性潤滑被膜>
上述のようにして、塗料組成物を、金属部材等の被塗物の表面に塗布し硬化することによって、乾性潤滑被膜を形成することができる。具体的に、本実施の形態に係る塗料組成物により形成される乾性潤滑被膜は、平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂をバインダーとして含み、そのバインダー中に固体潤滑剤が含まれている。
被塗物である金属部材等の部材の表面に形成された乾性潤滑被膜は、その部材における摺動層を構成することができる。
このような乾性潤滑被膜によれば、被膜表面が親油性の性質を発現し、潤滑油とのなじみ性を向上させることができる。これにより、潤滑油保持性を高めて、摺動特性をより向上させることが可能となる。
具体的に、本実施の形態に係る乾性潤滑被膜において、潤滑油とのなじみ性に関し、当該乾性潤滑被膜に対する油の静的接触角が25°以下である。
したがって、この乾性潤滑被膜においては、潤滑油と併せて用いて好適である。なお、併用する潤滑油としては、特に限定されず、鉱物油であっても、合成油であってもよい。
以下、本発明の実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
≪実施例、比較例≫
乾性潤滑被膜形成用塗料組成物を製造し、得られた塗料組成物を被塗物に塗布して硬化させることで乾性潤滑被膜を形成し、その乾性潤滑被膜について下記のとおりの試験を行って特性を評価した。
[乾性潤滑被膜形成用塗料組成物の製造]
実施例1~8、比較例1~3において、それぞれ、下記表1に示す樹脂をバインダーとして用い、また固体潤滑剤として二硫化モリブデンを用いて、それらを表1に示す重量配合比となるように秤量して混合した。また、これらの有効成分が溶解する有機溶剤(PGM)を添加し、ディスパーマットを用いて混錬して塗料組成物を作製した。さらに、塗料組成物中の固体潤滑剤を均一に分散させるために、3本ロールを用いて分散処理を施した。なお、各塗料組成物には、湿潤分散剤を添加剤として含有させた。
下記表2に、バインダーとして用いた樹脂の平均官能基数等について、主骨格、エポキシ当量、重量平均分子量、及び重量平均分子量をエポキシ当量で除した一分子あたりの平均官能基数を、まとめて示す。
Figure 2023147894000002
Figure 2023147894000003
[乾性潤滑被膜の形成(テストピースの作製)]
次に、純アルミ板(A1050P,サイズ50mm×50mm×1mm)を被塗物として用い、そのアルミ板の表面に、得られた塗料組成物をスクリーン印刷により均一に塗装した。続いて、塗膜を形成したアルミ板を熱風循環炉に装入し、温度180℃、時間60分の条件で焼成して硬化することによって乾性潤滑被膜を形成させた。乾燥後の乾性潤滑被膜の膜厚は10μmであった。
≪評価試験、評価結果≫
[接触角]
作製したテストピースを用いて、媒体としての鉱物油、純水のそれぞれに対する静的接触角を測定した。なお、接触角の測定は、自動接触角計(協和界面科学社製)を用いて行った。下記表3に、その測定結果(5測定値の平均(n=5))を示す。
Figure 2023147894000004
表3に示すように、実施例1~8では、鉱物油に対して低い接触角を示した。一方で、水に対しては比較例1~3よりも高い接触角を示した。この結果から、実施例1~8の乾性潤滑被膜は、潤滑油等の極性の低い溶媒に対してはなじみ性がよいが、水等の極性の高い溶媒に対してはなじみ性が悪いことがわかった。
[拡散性]
作製したテストピースの被膜上に、鉱物油、PAO(ポリアルファオレフィン)、エステル油をそれぞれ別々に20μL滴下し、25℃の環境下で24時間放置した後の油にじみの距離を測定した。下記表4に拡散距離の計測結果を示す。
Figure 2023147894000005
表4に示すように、フェノキシ樹脂をバインダー樹脂とした実施例1~8では、いずれの種類の油も被膜中に浸透し、油にじみが生じた。一方、比較例1~3では、エステル油に対して浸透性を示したものの、油とのなじみ性は悪かった。
[潤滑性]
作製したテストピースの被膜上に、鉱物油を0.1L滴下して1時間放置した後、紙ウエスで油を拭き取って油切れ状態を想定した場合における潤滑性を評価した。測定条件は、下記のとおりとして動摩擦係数を測定した。下記表5に測定結果を示す。
使用機器:トライボギア(新東科学社製)
測定温度:25℃
荷重 :1000g
相手材 :10mmφ SUJ-1 Bal
Figure 2023147894000006
フェノキシ樹脂をバインダー樹脂とした実施例1~8では、油を拭き取っても、被膜中に油が有効に残存するため、低い摩擦係数となり、良好な潤滑性を発揮した。

Claims (7)

  1. 乾性潤滑被膜を形成するための塗料組成物であって、
    平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂をバインダーとして含み、
    前記バインダー中に固体潤滑剤が分散してなる、
    塗料組成物。
  2. 前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が30000~80000である、
    請求項1に記載の塗料組成物。
  3. 前記固体潤滑剤の含有量が、全固形分に対して15質量%~85重量%である、
    請求項1又は2に記載の塗料組成物。
  4. 前記固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、グラファイト、及び二硫化タングステンから選ばれる1種以上である、
    請求項1乃至3のいずれかに記載の塗料組成物。
  5. 部材の表面に形成されて摺動層を構成する乾性潤滑被膜であって、
    平均官能基数が3以上であるフェノキシ樹脂をバインダーとして含み、
    前記バインダー中に固体潤滑剤が含まれている、
    乾性潤滑被膜。
  6. 潤滑油と併せて用いられる、
    請求項5に記載の乾性潤滑被膜。
  7. 当該乾性潤滑被膜に対する油の静的接触角が25°以下である、
    請求項5又は6に記載の乾性潤滑被膜。
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