JP2018028026A - フッ素リキッド組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ素グリースが有する優れた性能を維持しつつ、優れた導電性を有し、かつ生産コストを低減させた潤滑剤を提供する。
【解決手段】本発明に係るフッ素リキッド組成物は、フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなり、フッ素グリースは、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブと、を含有し、カーボンナノチューブが、そのフッ素グリース中において0.020質量%〜1.0質量%の割合で含まれている。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係るフッ素リキッド組成物は、フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなり、フッ素グリースは、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブと、を含有し、カーボンナノチューブが、そのフッ素グリース中において0.020質量%〜1.0質量%の割合で含まれている。
【選択図】図1
Description
本発明は、フッ素リキッド組成物に関するものであり、優れた潤滑性を奏するとともに導電性を付与したフッ素グリースの薄膜を低コストで形成することが可能なフッ素リキッド組成物に関する。
フッ素グリースは、基油であるパーフルオロポリエーテル油を、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマーや無機増ちょう剤により増ちょうさせたグリースである。フッ素グリースは、主として、その基油であるパーフルオロエーテル油に由来する優れた性能により、潤滑性、耐熱性、酸化安定性、対樹脂性、対ゴム性、低発塵性、耐薬品性といった非常に多機能を誇るグリースである。しかしながら、フッ素グリースは、非常に高価な潤滑剤であるという問題点がある。
また、フッ素グリースを構成する、基油のパーフルオロポリエーテル油や、固体潤滑剤及び増ちょう剤として用いられるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、絶縁性の化合物である。そのため、例えば自動車業界等では、接点不良が重大な事故につながる可能性があることから、ワイヤーハーネスのコネクタ等の導電性が要求される箇所には適用されていなかった。
また、コネクタ等の部位にフッ素グリース等の潤滑剤を使用することによるリスクとして、絶縁物の介在により接触抵抗が不安定になる可能性があり、また、埃等の付着による接点障害や、潤滑剤劣化によるワニスの発生、導電性潤滑剤のリークによる絶縁領域での障害等がある。
しかしながら、例えばワイヤーハーネスのコネクタ等は、挿抜性や耐摩耗性を向上させることが求められており、高い安全性をもって、このようなコネクタ等に塗布することが可能な、導電性を有する潤滑剤が望まれている。
導電性を有する潤滑剤として、例えば、特許文献1には、導電性に優れたカーボンナノチューブを用いた潤滑剤が開示されている。具体的には、基油と導電性付与添加剤を備えた導電性グリースにおいて、導電性付与剤としてカーボンナノチューブを用いた導電性グリース、及びその導電性グリースを充填した転動装置が開示されている。
また、特許文献2には、基油としてパーフルオロポリエーテル、電導性付与剤としてカーボンナノチューブを含み、そのカーボンナノチューブの直径が40nm〜200nmで、繊維長が5μm〜15μmであり、かつ、そのカーボンナノチューブをグリース全体に0.1〜20質量%の割合で配合されている伝導性グリース組成物が開示されている。
しかしながら、上述したように、フッ素グリースは高価なものであるため、他の合成油グリース等と比べ生産コスト等が高くなる。
このように、パーフルオロポリエーテル油の高い性能を維持しながら、電導性を付与し、かつ低いコストで使用することができる潤滑剤は存在しない。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、フッ素グリースが有する優れた性能を維持しつつ、優れた導電性を有し、かつ生産コストを低減させた潤滑剤を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、所定の割合でカーボンナノチューブを配合したグリース組成物を、フッ素系溶剤に溶解、分散させてなるフッ素リキッド組成物によれば、低コストでフッ素グリースの潤滑薄膜を形成することができ、そのフッ素グリースが有する潤滑性等の高い性能を維持しつつ、優れた導電性を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなり、前記フッ素グリースは、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブと、を含有し、前記カーボンナノチューブが、前記フッ素グリース中において0.020質量%〜1.0質量%の割合で含まれている、フッ素リキッド組成物である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレンである、フッ素リキッド組成物である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記フッ素系溶剤は、ハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンである、フッ素リキッド組成物である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、ワイヤーハーネスのコネクタの挿抜面に潤滑薄膜を形成するためのものである、フッ素リキッド組成物である。
(5)本発明の第5の発明は、ワイヤーハーネスのコネクタの挿抜面に形成される潤滑薄膜であって、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブと、を含有し、該カーボンナノチューブが0.020質量%〜1.0質量%の割合で含まれている、潤滑薄膜である。
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明に係る潤滑薄膜が挿抜面に形成されてなるワイヤーハーネスのコネクタである。
本発明によれば、フッ素グリースが有する優れた性能を維持しつつ、優れた導電性を有し、かつ生産コストを低減させた潤滑剤を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.フッ素リキッド組成物≫
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなる液状潤滑剤であり、溶剤希釈型フッ素潤滑剤組成物とも称される。なお、フッ素系溶剤にフッ素グリースが「分散」した状態とは、フッ素系溶剤にフッ素グリースが溶解している状態も含む意味である。
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなる液状潤滑剤であり、溶剤希釈型フッ素潤滑剤組成物とも称される。なお、フッ素系溶剤にフッ素グリースが「分散」した状態とは、フッ素系溶剤にフッ素グリースが溶解している状態も含む意味である。
具体的に、このフッ素リキッド組成物においては、フッ素系溶剤に分散するフッ素グリースが、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤とを含有し、さらに、カーボンナノチューブを所定の割合で含んでいることを特徴としている。
このようなフッ素リキッド組成物は、例えばコネクタ等に、均一にかつ薄く塗布され、その組成物中の溶剤成分が蒸発することにより、フッ素グリースの潤滑薄膜を形成させる。そして、このフッ素リキッド組成物においては、フッ素グリースの有する優れた潤滑性等の特性を維持しつつ、カーボンナノチューブを所定の割合で含んでいることにより、導電性が付与された潤滑薄膜を形成することができる。
また、フッ素リキッド組成物においては、その良好な作業性により、フッ素グリースが薄い膜(薄膜)の形態で形成されるようになるため、高価なフッ素グリースの使用量を有効に低減させることができる。さらに、そのように薄膜となるため、電気抵抗をより低減させることができる。
(1)フッ素グリースの構成
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、上述したように、フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなる。溶剤に分散するフッ素グリースは、少なくとも、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブとを含有する。
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、上述したように、フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなる。溶剤に分散するフッ素グリースは、少なくとも、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブとを含有する。
[基油(パーフルオロポリエーテル油)]
基油のパーフルオロポリエーテル油としては、特に限定されず、化学構造において直鎖タイプのものでも、側鎖タイプのものでもよい。パーフルオロポリエーテル油として、例えば、下記一般式(i)〜(iv)で表される構造を有するものを挙げることができる。
基油のパーフルオロポリエーテル油としては、特に限定されず、化学構造において直鎖タイプのものでも、側鎖タイプのものでもよい。パーフルオロポリエーテル油として、例えば、下記一般式(i)〜(iv)で表される構造を有するものを挙げることができる。
F−(CFCF3−CF2−O−)n−CF2−CF3 (i)
(なお、式(i)中のnは、0又は正の整数である。)
CF3−(O−CFCF3−CF2)p−(O−CF2−)q−O−CF3 (ii)
(なお、式(ii)中のp及びqは、それぞれ独立に、0又は正の整数である。)
F−(CF2−CF2−CF2−O−)r−CF2−CF3 (iii)
(なお、式(iii)中のrは、0又は正の整数である。)
CF3−(O−CF2−CF2−)s−(O−CF2−)t−O−CF3 (iv)
(なお、式(iv)中のs及びtは、それぞれ独立に、0又は正の整数である。)
(なお、式(i)中のnは、0又は正の整数である。)
CF3−(O−CFCF3−CF2)p−(O−CF2−)q−O−CF3 (ii)
(なお、式(ii)中のp及びqは、それぞれ独立に、0又は正の整数である。)
F−(CF2−CF2−CF2−O−)r−CF2−CF3 (iii)
(なお、式(iii)中のrは、0又は正の整数である。)
CF3−(O−CF2−CF2−)s−(O−CF2−)t−O−CF3 (iv)
(なお、式(iv)中のs及びtは、それぞれ独立に、0又は正の整数である。)
具体的には、例えば、Krytoxシリーズ(デュポン株式会社製)、Fomblin Yシリーズ(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン製)、Fomblin Mシリーズ(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン製)、Fomblin Wシリーズ(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン製)、Fomblin Zシリーズ(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン製)、デムナムSシリーズ(ダイキン工業製)等の市販品を使用することができる。
パーフルオロポリエーテル油としては、上述したように構造を有するものを挙げることができるが、その中でも、粘度が40℃で15mm2/s〜600mm2/sの範囲であるものを用いることが好ましい。なお。パーフルオロポリエーテル油の粘度は、油拡散に大きく影響を及ぼす因子であり、粘度が高くなりすぎると、パーフルオロポリエーテル油自身の持つ低温性が悪くなる可能性がある。
[固体潤滑剤]
固体潤滑剤としては、後述する溶剤であるフッ素系溶剤の比重よりも大きいものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メラミンシアヌレート、窒化ホウ素、グラファイト、二硫化モリブデン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等が挙げられる。
固体潤滑剤としては、後述する溶剤であるフッ素系溶剤の比重よりも大きいものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メラミンシアヌレート、窒化ホウ素、グラファイト、二硫化モリブデン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等が挙げられる。
その中でも特に、白色で低摩擦係数を有するポリテトラルオロエチレンを用いることが好ましい。また、ポリテトラルオロエチレンは、増ちょう剤としても作用し、パーフルオロポリエーテル油との親和性が高いことから、所望するちょう度に適切に調整することができる優れた増ちょう性を有する。
例えば、ポリテトラフルオロエチレンを用いる場合、平均粒径が10.0μm以下のものを使用することが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンの粒径が細かいほど、基油のパーフルオロポリエーテル油との接触面積が大きくなるため、パーフルオロポリエーテル油の油分離を小さくする効果が得られる。
一方で、ポリテトラフルオロエチレンとして平均粒径が10.0μmより大きい粒径のものを用いた場合、基油のパーフルオロポリエーテル油との接触面積が小さくなり、すなわち親和力が小さくなる。そのため、同量を配合した場合でも、平均粒径が10.0μm以下のものに比べて油分離が多くなり、またちょう度が大きくなって流動性が増すために適用部からの流出が起こり易くなる。ここで、ポリテトラフルオロエチレンの配合量を増やすことで、グリースのちょう度及び油分離量を低減させることは可能であるが、グリース中の固体成分比が大きくなってしまうため、グリースの粘性が増大し、ハンドリング及び低温下でのトルクが増大してしまう。
このように、ポリテトラフルオロエチレンを用いる場合、その粒径が細かいものほどパーフルオロポリエーテル油との親和力が大きくなるため好ましい。具体的には、上述したように平均粒径が10.0μm以下のものを用いることが好ましく、0.1μm〜5.0μmのものを用いることがより好ましい。
固体潤滑剤の配合量としては、基油であるパーフルオロポリエーテル油との配合比に基づいて決定する。具体的には、パーフルオロポリエーテル油:固体潤滑剤の比率が、97:3〜50:50の範囲となるように配合させることが好ましい。パーフルオロポリエーテル油との配合比との関係において、固体潤滑剤の配合比率が3質量%未満であると、潤滑性に乏しくなり、一方で、固体潤滑剤の配合比率が50質量%を超えると、乾燥後の状態においてハンドリング性が悪く、トルクが高くなる等の弊害が生じる可能性がある。
ここで、上述した固体潤滑剤と、基油であるパーフルオロポリエーテル油とが、当該フッ素リキッド組成物における潤滑性の作用を奏するための実質的な有効成分となる。この有効成分の組成物中における割合としては1質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜25質量%の割合で含まれることがより好ましい。組成物中における有効成分量が1質量%未満であると、潤滑性に乏しくなり、一方で、有効成分量が50質量%を超えると、フッ素リキッド組成物の流動性がほとんど無くなってしまい、ハンドリング性が悪くなる。また、有効成分量が多くなりすぎると、もともとの要求特性の一つである、均一薄膜塗布が困難となる。
[カーボンナノチューブ]
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物を構成するフッ素グリースにおいては、その有効成分である固体潤滑剤とパーフルオロポリエーテル油に対して、カーボンナノチューブが含有されていることを特徴としている。
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物を構成するフッ素グリースにおいては、その有効成分である固体潤滑剤とパーフルオロポリエーテル油に対して、カーボンナノチューブが含有されていることを特徴としている。
このように、カーボンナノチューブを含有するフッ素リキッド組成物を用いることにより、カーボンナノチューブが導電性フィラーとして作用し、当該フッ素リキッド組成物を塗布した後に形成されるフッ素グリースの潤滑薄膜に、導電性を付与することができる。
カーボンナノチューブは、炭素六員環の網目状構造を有するグラフェンを巻いてナノサイズの直径の円筒状にした形状を有している。カーボンナノチューブは、1層のグラフェンで巻いた構造を有する単層カーボンナノチューブ、2層以上のグラフェンで巻いた構造を有する多層カーボンナノチューブのいずれでもよい。カーボンナノチューブは、グラファイトと同様に炭素と炭素がsp2混成軌道により結合しており、細長い形状であることから、長手方向に直角な方向に対しては比較的柔軟で摺動性を有しており、かつ強固な構造を有している。
カーボンナノチューブの直径(繊維径)としては、特に限定されないが、0.5nm〜100nm程度であることが好ましく、1nm〜50nm程度であることがより好ましい。また、カーボンナノチューブの長さ(繊維長)としては、0.05μm〜30μm程度であることが好ましく、0.1μm〜25μm程度であることがより好ましい。カーボンナノチューブの繊維長に関して、好ましい範囲である0.05μm〜30μm程度の範囲内においては、より長いものの方が短いものよりも特に好ましい。より繊維長が長いカーボンナノチューブでは、グリース薄膜中でそのカーボンナノチューブの鎖がつながりやすくなり、導電性が向上する。また、カーボンナノチューブが長く表面積が小さくなるほどグリースが硬くなり難くなるため、グリースに一定の硬さ(ちょう度)を出すためにカーボンナノチューブの配合量を多くする結果として、導電性が向上することとなる。
なお、カーボンナノチューブは、市販品を好適に用いることができる。
カーボンナノチューブの含有量は、当該組成物中において0.020質量%〜1.0質量%である。また、好ましくは0.025質量%〜0.70質量%であり、より好ましくは0.025質量%〜0.50質量%である。カーボンナノチューブの含有量が0.020質量%未満であると、フッ素リキッド組成物を塗布して形成されるフッ素グリースの薄膜に対して十分な導電性を付与することができない。一方で、カーボンナノチューブの含有量が1.0質量%を超えると、フッ素グリースが硬くなり、そのフッ素グリースが有する潤滑性等の特性が損なわれる可能性がある。
[増ちょう剤]
フッ素グリースにおいては、上述したポリテトラフルオロエチレン以外に、その他の増ちょう剤を含有させることができる。
フッ素グリースにおいては、上述したポリテトラフルオロエチレン以外に、その他の増ちょう剤を含有させることができる。
具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等が挙げられる。また、その用途によっては、シリカエアロゲル、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、タルク、グラファイト、二硫化モリブデン、メラニンシアヌル酸付加物、超高分子量ポリエチレン等の粉体を使用することもできる。
これらの増ちょう剤についても、油分離が小さく、適度なちょう度及びグリースの粘性が得られる粒径及び含有量とする。増ちょう剤の含有量は、上述したように平均粒径や増ちょう剤の種類によっても異なるが、潤滑剤組成物の全体に対して1質量%〜50質量%程度とすることができる。
(2)フッ素系溶剤
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、基油としてのパーフルオロポリエーテル油を含有するフッ素グリースを、フッ素系溶剤に分散(又は溶解)させた潤滑剤組成物である。フッ素系溶剤としては、特に限定されるものではないが、ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンを使用することが好ましい。
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、基油としてのパーフルオロポリエーテル油を含有するフッ素グリースを、フッ素系溶剤に分散(又は溶解)させた潤滑剤組成物である。フッ素系溶剤としては、特に限定されるものではないが、ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンを使用することが好ましい。
ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンは、パーフルオロポリエーテル油との溶解性が高く、また他のハロゲン系溶剤に比べて地球温暖化係数が低いため、近年の環境への意識を鑑みた際に特に好ましい。具体的には、NOVECシリーズ(スリーエムジャパン製)、アサヒクリンシリーズ(旭硝子株式会社製)、バートレルシリーズ(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等の市販品を使用することができる。
また、近年環境対応型として普及し始めている、ハイドロフルオロオレフィンも使用することができる。例えば、スープリオン(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等の製品が市販されており、好適に使用することができる。
(3)その他
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物においては、上述した成分のほか、その効果を阻害しない範囲で種々の添加剤を配合させることができる。例えば、摩擦調整剤、金属腐食防止剤、防錆剤といった種々の添加剤を配合させることができる。
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物においては、上述した成分のほか、その効果を阻害しない範囲で種々の添加剤を配合させることができる。例えば、摩擦調整剤、金属腐食防止剤、防錆剤といった種々の添加剤を配合させることができる。
≪2.フッ素リキッド組成物の製造方法≫
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、フッ素系溶剤であるハイドロフルオロエーテル等を容器に秤量し、公知の撹拌方法にて撹拌しながら、そこにフッ素グリースを投入して分散させる。また、必要に応じて各種の添加剤を加えて分散させる。これにより、フッ素グリースを溶剤に分散させてなるフッ素リキッド組成物を得ることができる。
本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、フッ素系溶剤であるハイドロフルオロエーテル等を容器に秤量し、公知の撹拌方法にて撹拌しながら、そこにフッ素グリースを投入して分散させる。また、必要に応じて各種の添加剤を加えて分散させる。これにより、フッ素グリースを溶剤に分散させてなるフッ素リキッド組成物を得ることができる。
フッ素系溶剤へのフッ素グリースの分散処理に際しては、例えば、プロペラ撹拌機、ディゾルバー、ディスパーマット、スターミル、ダイノーミル、アジテーターミル、クレアミックス、フィルミックス等の湿式撹拌・分散処理装置を用いて行うことができる。なお、上述したような順序で各成分を添加することに限られず、各成分を同時に添加して撹拌してもよい。
なお、フッ素系溶剤に分散させるフッ素グリースの製造方法についても、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、基油であるパーフルオロポリエーテル油に、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブと、必要に応じて各種の添加剤とを混合した後、100℃〜150℃程度の温度にて混練することによって得ることができる。
フッ素グリースの製造に際しての混練処理や分散処理についても、例えば、3本ロールミル、万能撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル等の周知の撹拌・分散処理装置を用いて行うことができる。
≪3.フッ素リキッド組成物による潤滑薄膜の形成≫
上述したように、本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、フッ素グリースの潤滑薄膜を形成するためのものであり、このフッ素リキッド組成物を塗布対象となる被塗物に塗布することによって、次第にその組成物中における溶剤が蒸発し、その後、塗布面にフッ素グリースの潤滑薄膜が形成される。
上述したように、本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物は、フッ素グリースの潤滑薄膜を形成するためのものであり、このフッ素リキッド組成物を塗布対象となる被塗物に塗布することによって、次第にその組成物中における溶剤が蒸発し、その後、塗布面にフッ素グリースの潤滑薄膜が形成される。
なお、潤滑薄膜は、フッ素リキッド組成物の溶剤成分が蒸発して形成されるフッ素グリースの膜であることから、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブと、を含有し、そのカーボンナノチューブが0.020質量%〜1.0質量%の割合で含まれている。
このように、フッ素リキッド組成物によれば、フッ素グリースの薄い膜(潤滑被膜)が形成されるように塗布することができることから、高価なフッ素グリースの使用量を減らすことができ、コストを低減することができる。また、フッ素リキッド組成物は、液状潤滑剤組成物であるため、塗布対象への塗布が容易であり、作業効率や生産性を高めることができ、生産コストも低減することができる。
被塗物、すなわちフッ素リキッド組成物の適用対象としては、特に限定されないが、例えば、ワイヤーハーネスのコネクタの挿抜面に好ましく適用することができる。ワイヤーハーネスのコネクタは、優れた挿抜性が求められるところ、挿抜面にフッ素グリースの潤滑薄膜を形成させることにより、その挿抜面に優れた潤滑性を付与することができ、コネクタの挿抜性を向上させることができる。
ここで、上述したように、本実施の形態に係るフッ素リキッド組成物を構成するフッ素グリースは、カーボンナノチューブを所定の割合で含有するものである。このことから、フッ素リキッド組成物のフッ素系溶剤が蒸発して形成されるフッ素グリースの潤滑薄膜には、フッ素グリースの潤滑特性等の優れた性質のみならず、良好な導電性が付与される。これにより、コネクタの接点不良や、パーフルオロポリエーテル油等の絶縁物に基づく接触抵抗による不安定性を解消することができ、安全性の高い潤滑被膜が形成されてなるコネクタとすることができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
実施例、比較例において、下記表1に示す配合割合にて含有させたフッ素リキッド組成物を作製した。なお、配合量は「質量%」で表され、組成物を構成する成分材料としてはそれぞれ以下のものを用いた。
[成分]
○基油
パーフルオロポリエーテル油A :デムナムS−65(ダイキン工業株式会社製)
○固体潤滑剤、増ちょう剤
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) :ZONYL TLP 10F−1
(デュポン株式会社製)
○カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ(CNT) :東洋インキ株式会社製
○フッ素系溶剤
フッ素系溶剤:NOVEC7100(スリーエムジャパン社製)
○基油
パーフルオロポリエーテル油A :デムナムS−65(ダイキン工業株式会社製)
○固体潤滑剤、増ちょう剤
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) :ZONYL TLP 10F−1
(デュポン株式会社製)
○カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ(CNT) :東洋インキ株式会社製
○フッ素系溶剤
フッ素系溶剤:NOVEC7100(スリーエムジャパン社製)
なお、カーボンナノチューブは、化学気相成長法により製造されたものであって、繊維径が平均で20.2nm、繊維長が平均で4.6μmのものを用いた。
[作製手順]
(実施例1〜3、比較例2)
実施例1〜3、比較例2のフッ素リキッド組成物については、先ず、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、ポリテトラフルオロエチレンと、カーボンナノチューブとを混練し、3本ロールミルで分散処理を施して、フッ素グリースを作製した。一方で、容器に所定量秤量したフッ素系溶剤をプロペラ撹拌機で撹拌しながら、そこに、作製したフッ素グリースを投入して撹拌混合した。これにより、フッ素系溶剤にフッ素グリースを分散させてなるフッ素リキッド組成物を作製した。なお、フッ素リキッド組成物においては、カーボンナノチューブを含む固形有効成分の割合が、組成物中において5質量%となるように、フッ素グリースをフッ素系溶剤に溶解させた。
(実施例1〜3、比較例2)
実施例1〜3、比較例2のフッ素リキッド組成物については、先ず、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、ポリテトラフルオロエチレンと、カーボンナノチューブとを混練し、3本ロールミルで分散処理を施して、フッ素グリースを作製した。一方で、容器に所定量秤量したフッ素系溶剤をプロペラ撹拌機で撹拌しながら、そこに、作製したフッ素グリースを投入して撹拌混合した。これにより、フッ素系溶剤にフッ素グリースを分散させてなるフッ素リキッド組成物を作製した。なお、フッ素リキッド組成物においては、カーボンナノチューブを含む固形有効成分の割合が、組成物中において5質量%となるように、フッ素グリースをフッ素系溶剤に溶解させた。
ここで、実施例1〜3では、カーボンナノチューブの含有量をグリース組成物中に、それぞれ、0.025質量%、0.050質量%、0.10質量%の割合となるようにした。また、比較例2では、カーボンナノチューブの含有量をグリース組成物中に、0.010質量%の割合となるようにした。
(比較例1)
比較例1のフッ素リキッド組成物については、先ず、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、ポリテトラフルオロエチレンとを混練し、3本ロールミルで分散処理を施して、フッ素グリースを作製した。次に、容器に所定量秤量したフッ素系溶剤をプロペラ撹拌機で撹拌しながら、そこに、作製したフッ素グリースを投入して撹拌混合した。これにより、フッ素系溶剤にフッ素グリースを分散させてなるフッ素リキッド組成物を作製した。すなわち、比較例1のフッ素リキッド組成物は、カーボンナノチューブを含有しないフッ素グリースを分散させて構成した。
比較例1のフッ素リキッド組成物については、先ず、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、ポリテトラフルオロエチレンとを混練し、3本ロールミルで分散処理を施して、フッ素グリースを作製した。次に、容器に所定量秤量したフッ素系溶剤をプロペラ撹拌機で撹拌しながら、そこに、作製したフッ素グリースを投入して撹拌混合した。これにより、フッ素系溶剤にフッ素グリースを分散させてなるフッ素リキッド組成物を作製した。すなわち、比較例1のフッ素リキッド組成物は、カーボンナノチューブを含有しないフッ素グリースを分散させて構成した。
<評価>
作製したフッ素リキッド組成物を用いて試験片に塗布し、溶剤が蒸発して形成されたフッ素グリースの潤滑薄膜について、所定の印加電圧でのシート抵抗(Ω/□)を測定した。なお、薄膜のシート抵抗は、表面抵抗測定機(三菱化学株式会社製,ローレスタ)を用いて測定した。
作製したフッ素リキッド組成物を用いて試験片に塗布し、溶剤が蒸発して形成されたフッ素グリースの潤滑薄膜について、所定の印加電圧でのシート抵抗(Ω/□)を測定した。なお、薄膜のシート抵抗は、表面抵抗測定機(三菱化学株式会社製,ローレスタ)を用いて測定した。
<結果>
下記表1に、実施例、比較例におけるフッ素リキッド組成物におけるカーボンナノチューブの含有量(フッ素グリース中の含有量(「基剤CNT配合量」ともいう))を示すとともに、シート抵抗の測定にあたり印加した電圧、及びそのシート抵抗値の測定結果をまとめて示す。また、図1には、基剤CNT配合量(質量%)に対するシート抵抗値(Ω/□)の測定結果のグラフ図を示す。
下記表1に、実施例、比較例におけるフッ素リキッド組成物におけるカーボンナノチューブの含有量(フッ素グリース中の含有量(「基剤CNT配合量」ともいう))を示すとともに、シート抵抗の測定にあたり印加した電圧、及びそのシート抵抗値の測定結果をまとめて示す。また、図1には、基剤CNT配合量(質量%)に対するシート抵抗値(Ω/□)の測定結果のグラフ図を示す。
表1、図1に示す結果から分かるように、カーボンナノチューブを含まない比較例1のフッ素リキッドや、グリース基剤中の割合として0.010質量%である比較例2のフッ素リキッドでは、その薄膜のシート抵抗値は非常に高かったのに対し、カーボンナノチューブを所定の割合以上で配合させた実施例1〜3のフッ素リキッド組成物では、シート抵抗値が低い薄膜を形成することができた。
Claims (6)
- フッ素グリースがフッ素系溶剤に分散してなり、
前記フッ素グリースは、基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブと、を含有し、
前記カーボンナノチューブが、前記フッ素グリース中において0.020質量%〜1.0質量%の割合で含まれている
フッ素リキッド組成物。 - 前記固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレンである
請求項1に記載のフッ素リキッド組成物。 - 前記フッ素系溶剤は、ハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンである
請求項1又は2に記載のフッ素リキッド組成物。 - ワイヤーハーネスのコネクタの挿抜面に潤滑薄膜を形成するためのものである
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフッ素リキッド組成物。 - ワイヤーハーネスのコネクタの挿抜面に形成される潤滑薄膜であって、
基油であるパーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、カーボンナノチューブと、を含有し、該カーボンナノチューブが0.020質量%〜1.0質量%の割合で含まれている、潤滑薄膜。 - 請求項5に記載の潤滑薄膜が挿抜面に形成されてなるワイヤーハーネスのコネクタ。
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WO2020129305A1 (ja) * | 2018-12-21 | 2020-06-25 | 昭和電工株式会社 | グリース組成物 |
CN117660078A (zh) * | 2023-11-24 | 2024-03-08 | 广州友乐润滑材料有限公司 | 一种复合润滑脂及其制备方法 |
CN117660078B (zh) * | 2023-11-24 | 2024-05-31 | 广州友乐润滑材料有限公司 | 一种复合润滑脂及其制备方法 |
-
2016
- 2016-08-18 JP JP2016160719A patent/JP2018028026A/ja active Pending
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JPWO2020129305A1 (ja) * | 2018-12-21 | 2021-02-15 | 昭和電工株式会社 | グリース組成物 |
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