JP2023142508A - アンチブロッキング剤 - Google Patents

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Miyato Kashiwabara
和明 松本
Kazuaki Matsumoto
達也 山本
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Abstract

【課題】本発明アンチブロッキング剤は、フィルムからの粒子の脱落が少なく、アルカリ溶液によって容易に除去できる、アンチブロッキング剤を提供することを目的とする。【解決手段】アルカリ可溶層を有する重合体粒子を含むアンチブロッキング剤であって、該アルカリ可溶層の厚みが10nm以上である、アンチブロッキング剤。【選択図】なし

Description

本発明は、アンチブロッキング剤に関する。
従来、樹脂フィルムは、各種包装資材として広く用いられている。樹脂フィルムは、重ねた状態で保管すると、フィルム同士が密着するため、シリカなどの無機粒子やさらに有機樹脂成分を含む粒子などがアンチブロッキング剤として利用されている(特許文献1、2)。
特開2020-151907号公報 国際公報第2017/200765号公報
上記の通り、無機粒子や有機樹脂成分を有する粒子が良好なアンチブロッキング性を有することは知られている。近年、環境保護の観点から、樹脂フィルムのリサイクル技術は求められていることから、リサイクルされる樹脂フィルムに含まれるアンチブロッキング剤が不純物となる場合もあった。
よって、本発明は、フィルムからの脱落防止能を有し、アルカリ溶液によって容易に除去できる、アンチブロッキング剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。すわなち、本開示のアンチブロッキング剤は、アルカリ可溶層を有する重合体粒子を含むアンチブロッキング剤であって、該アルカリ可溶層の厚みが10nm以上である、アンチブロッキング剤である。
本開示によれば、フィルムからの粒子の脱落が少なく、アルカリ溶液によって容易に除去できる、アンチブロッキング剤を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
[本開示のアンチブロッキング剤]
本開示の重合体粒子とは、アルカリ溶液に溶解するアルカリ可溶層を重合体粒子に有していればよい(以下、アルカリ可溶性重合体粒子という場合もある)。
本開示の重合体粒子のアルカリ可溶層は表面に有しても、内部に有していてもよい。好ましくは、表面に有する。アルカリ溶液によって、フィルムから重合体粒子を除去し易い傾向にある。
本開示の重合体粒子のアルカリ可溶層は、多層構造を有していてもよい。
本開示の重合体粒子のアルカリ可溶層は、その一部が溶解してもよく、全てが溶解してもよい。
アルカリ溶液とは、アルカリ化合物と溶媒を含む溶液である。
アルカリ化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソピルアルコール、ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類等が挙げられる。
アルカリ溶液として、好ましくは、アルカリ水溶液である。具体的には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、アンモニア水溶液が挙げられる。より好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液である。
アルカリ溶液のpHは、好ましくはpH7.5~14であることが好ましく、より好ましくはpH8.5~14であり、さらに好ましくは、pH9.0~14である。
本開示のアルカリ可溶層の厚みは、本開示のアルカリ可溶性重合体粒子をアルカリ溶液で溶解(処理という場合もある)させる前の重合体粒子の体積平均粒子径(D1)と、アルカリ溶液で処理させた後の重合体粒子の体積粒子径(D2)との差(D1―D2)により算出される。ここで重合体粒子の体積平均粒子径は、たとえば動的光散乱法により測定することができる。
本開示の重合体粒子の体積平均粒子径(D1)は、10nm以上であること好ましく、より好ましくは、50nm以上であり、さらに好ましくは100nm以上である。一方、10μm以下であること好ましく、より好ましくは、5μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下である。
本開示の重合体粒子を、アルカリ溶液で処理した後の重合体粒子の体積平均粒子径(D2)は、好ましくは9.99μm以下であり、より好ましくは9.9μm以下であり、さらに好ましくは9.5μm以下である。
本開示の重合体粒子のすべてがアルカリ溶液に溶解しても良く、アルカリ溶液で処理した後の重合体粒子の体積平均粒子径(D2)は、0nmであってもよい。
本開示のアルカリ可溶層の厚み(D1―D2)は、10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは50nm以上である。一方、10μm以下であること好ましく、より好ましくは、5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。ここで、D1<D2である場合は、重合体粒子にアルカリ溶液が吸収されていることが示唆される。
本開示の体積平均粒子径について、アルカリ可溶前後の比率(D2/D1)は、0~1であることが好ましく、より好ましくは0~0.99であり、さらに好ましくは0~0.95である。
本開示の重合体粒子をアルカリ溶液で処理する時間は時に制限されないが、1~720分間であることが好ましく、より好ましくは5~120分間であり、さらに好ましくは10~30分間である。
本開示の重合体粒子をアルカリ溶液で処理する温度は時に制限されないが、10~50℃であることが好ましく、より好ましくは20~40℃であり、さらに好ましくは20~30℃である。
本開示の重合体粒子に有するアルカリ可溶層が、アルカリ溶液に溶解できる温度に特に限定されないが、90℃といった高い温度だけでなく、25℃といった温度においても、高い溶解度を有する。
<一般式(1)で表される構造単位>
本開示の重合体粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することが好ましい。
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位とは、単量体が重合して形成される構造と同じ構造を有する構造単位を言い、通常は、単量体に含まれる炭素炭素不飽和二重結合の少なくとも1つが、炭素炭素単結合に置き換わった構造である。なお、単量体に由来する構造単位は、実際に単量体が重合することにより形成された構造単位である必要は無く、単量体が重合して形成される構造と同じ構造であれば、単量体が重合する以外の方法で形成された構造単位であっても、単量体に由来する構造単位に含まれる。例えば、アクリル酸、CH=CH(-COOH)、であれば、アクリル酸に由来する構造単位は、-CH-CH(-COOH)-、で表すことができる。
アルカリ溶液と親和性を有する官能基としては、例えは、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びこれらの塩構造を有する基、エポキシ基、ポリオキシエチレン基等が挙げられる。
本開示のエチレン性不飽和単量体には、アルカリ溶液と親和性を有する官能基を1つ有していてもよく、2つ以上有してもよい。
本開示の重合体粒子には、下記一般式(1)に由来する構造単位を含むことが好ましい。アルカリ可溶性が向上し、粒子が除去しやすい傾向にある。
Figure 2023142508000001
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、またはアンモニウムを表す。)
上記R1で表される炭素数1~4のアルキル基は、炭素数1~2のアルキル基であることが好ましく、炭素数1のアルキル基(メチル基)であることがより好ましい。
で表されるアルカリ金属原子は、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、ナトリウム、カリウムがより好ましく、ナトリウムがより更に好ましい。
で表されるアルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。
で表されるアンモニウムとは、NH4+に限られず、有機アンモニウムを含む意味であると定義される。有機アンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムなどの4級アンモニウム;アミンをプロトン化することによって形成されるアンモニウム(1~3級アンモニウム)などが挙げられる。Rとしては、アンモニア又はアミンのプロトン化によって形成されるアンモニウムが好ましい。前記アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン(好ましくはトリC1-10アルキルアミン);ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのヒドロキシアルキルアミン(好ましくはジ又はトリ(ヒドロキシC1-10アルキル)アミンなど)などが挙げられ、ヒドロキシアルキルアミンが好ましい。
上記一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(2)で表される単量体が重合反応を経由することにより形成されても良いが、他の方法で形成されても良い。例えば、一般式(2)において、Rが炭素数1~4のアルキル基である単量体を重合し、加水分解をすることにより、上記一般式(1)においてRがアルカリ金属の構造単位、アルカリ土類金属の構造単位、またはアンモニウムの構造単位を形成しても良い。
Figure 2023142508000002
(一般式(2)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、またはアンモニウムを表す。)
なお、上記一般式(2)において、Rは、1種であってもよく、2種以上であっても良い。Rが2種以上の場合、2種以上の上記一般式(2)で表される単量体を重合して形成してもよく、Rが炭素数1~4のアルキル基である上記一般式(2)で表される単量体を重合した後に、エステル基を部分加水分解したり、2種以上の塩基性物質で加水分解することにより形成しても良い。
本開示のアルカリ可溶性重合体粒子は、そのうち少なくとも一部が加水分解されていることが好ましい。
本開示のアルカリ可溶性重合体粒子の少なくとも一部が加水分解されているとは、重合体が、部分加水分解物、完全加水分解物、これらの加水分解中和物のいずれかであることを意味する。例えば、アクリル酸メチル、CH=CH(-COO―CH)であれば、部分加水分解物とは、CH=CH(-COO―CH)とCH=CH(-COO―H)に由来する構造単位との両方を含む。
本開示のアルカリ可溶性重合体粒子には、アルカリ可溶性重合体粒子の総量に対し、上記一般式(1)で表される構造単位を5質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上含むことがより好ましく、15質量%以上含むことがさらに好ましく、20質量%以上含むことがよりさらに好ましい。一方、99.9質量%以下であることが好ましく、99質量%以下含むことがより好ましく、95質量%以下含むことがさらに好ましく、90質量%以下含むことがよりさらに好ましい。
上記範囲で含むことにより、粒子のアルカリ可溶性が向上し、AB剤を除去しやすい傾向にある。
本開示のアルカリ可溶層を有する重合体粒子は、重合体粒子が多層構造を有していてもよく、例えばコア部とその外側に設けられたシェル部で構成されたコアシェル粒子に、さらにアルカリ可溶層を有していてもよい。
本開示のアルカリ可能性重合体粒子のアルカリ可溶層は、多層構造を有していてもよく、コアシェル粒子の外層に有してもよく、内層に有してもよい。好ましくは、アルカリ可溶層が最外殻に有することが好ましい。
本開示のアルカリ可能性重合体粒子に含まれるアルカリ可溶層には、アルカリ可溶性重合体粒子の総量に対し、上記一般式(1)で表される構造単位を、30質量%以上含むことが好ましく、40質量%以上含むことがより好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましい。一方、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下含むことがより好ましく、70質量%以下含むことがさらに好ましい。
<その他単量体に由来する構造単位>
本開示のアルカリ可溶性重合体粒子には、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位以外の単量体に由来する構造単位(以下、「その他の単量体に由来する構造単位」ともいう)を1種または2種以上含んでいても良い。
その他単量体に由来する構造単位とは、その他単量体の少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。例えば、エチレングリコールジアクリレート、CH=CH-CO-O-CHCHO-CO-CH=CH、であれば、エチレングリコールジアクリレート由来の構造単位は、例えば、-CH-CH-CO-O-CHCHO-CO-CH-CH-、で表すことができる。その他単量体由来の構造単位は、例えば、その他単量体をラジカル重合することにより形成することができる。なお、その他単量体由来の構造単位は、その他単量体の炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、その他単量体が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の反応により形成された構造単位であってもよい。
その他単量体としては、特に限定されず、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどのシラン基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等の窒素原子含有単量体;エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどのオキソ基含有単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体;2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-(メタ)アクリレート等の光安定化単量体;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などの紫外線吸収性単量体、多官能エチレン性不飽和単量体などが例示される。
多官能エチレン性不飽和単量体としては、エチレン性の炭素炭素二重結合を2または3以上含む化合物であれば、特に制限されないが、例えば、CH=CH-基、CH=CH-O-基、CH=CH-CH-O-基、CH=C(CH)-CH-O-基、CH=CH-CH-CH-O-基、CH=C(CH)-CH-CH-O-基、CH=CH-CO-O-基、CH=C(CH)-CO-O-基、CH=CH-CO-NH-基、から選択される1種または2種以上のエチレン性の炭素炭素二重結合を2または3以上含む化合物が例示される。
多官能エチレン性不飽和単量体としては、分子量が50以上、1000以下であることが好ましく、100以上、400以下であることがより好ましい。
多官能エチレン性不飽和単量体に特に制限はないが、多官能エチレン性不飽和単量体1分子に含まれるエチレン性不飽和基の数n個(nは2以上の整数)に対して、n-1個以上がCH2=CH-CO-O-基又はCH2=CH-CO-NH-基である多官能エチレン性不飽和単量体(以下、「加水分解性多官能エチレン性不飽和単量体」とも言う)であることが好ましい。
多官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、多官能アクリル酸エステル、N、N’-メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
多官能アクリル酸エステルとしては、具体的には、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、アクリル変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
本開示の重合体粒子は、その他単量体として、多官能アクリル酸エステルに由来する構造単位を含むことが好ましい。重合体粒子のアルカリ溶液に対する溶解性が向上し、AB剤が除去しやすくなる傾向にある。
本開示のアルカリ可溶性重合体粒子には、アルカリ溶液に加水分解性を有する多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を1種又は2種以上含んでいても良い。
本開示のアルカリ可溶性重合体粒子は、アルカリ溶液に加水分解性を有する多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を、0.01質量%以上含むことが好ましく、0.1質量%以上含むことがより好ましく、0.5質量%以上含むことがさらに好ましく、2質量%以上含むことがよりさらに好ましく、5質量%以上含むことが特に好ましい。一方、本開示のアルカリ可溶性重合体粒子は、アルカリ溶液に加水分解性を有する多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を、60質量%以下含むことが好ましく、50質量%以下含むことがより好ましく、40質量%以下含むことがさらに好ましく、20質量%以下含むことがよりさらに好ましく、10質量%以下含むことが特に好ましい。
[本開示のアンチブロッキング剤の製造方法]
<重合方法>
本開示のアルカリ可溶性重合体粒子は、エチレン性不飽和単量体として、例えば、上記式(2)で表される単量体、必要に応じてその他単量体を含有する単量体成分を、水系溶媒中で重合させた後、部分的に又は完全に加水分解された重合体を製造することにより得られる。
重合方法としては、懸濁重合、乳化重合、分散重合等が挙げられる。中でも、乳化剤の存在下、上記原料単量体成分を反応溶媒に分散させて(ラジカル)重合反応を行う乳化重合が好ましく、具体的には、本発明の重合体の製造方法としては、乳化剤の存在下、式(2)で示される単量体の少なくとも1種を水系溶媒に分散させて重合反応を行う乳化重合を含むことが好ましい。乳化重合は、1段階のみで行ってもよく多段階で行ってもよい。
前記乳化剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、非反応型界面活性剤であっても、ラジカル重合可能な基を構造中に有する反応型界面活性剤であってもよい。
非反応型界面活性剤には、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が包含される。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル(アリル)スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸塩等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
反応型界面活性剤には、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が包含される。アニオン性反応型界面活性剤としては、エーテルサルフェート型反応型界面活性剤、リン酸エステル系反応型界面活性剤が挙げられるが、これに限定されない。
乳化剤は、原料単量体成分の合計100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
本開示において、水系溶媒とは、水単独、または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒が挙げられるが、水単独であることが好ましい。水系溶媒とは、典型的には、水の含有量が50体積%を超える溶媒を指す。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等を用いることができる。水混和性有機溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール等)を用いることができる。重合体中に有機溶媒が極力残存しないようにする観点から、水系溶媒の80体積%以上が水である水系溶媒が好ましく、水系溶媒の90体積%以上が水である水系溶媒がより好ましく、水系溶媒の95体積%以上が水である水系溶媒がさらに好ましく、実質的に水からなる水系溶媒(99.5体積%以上が水である水系溶媒)が特に好ましく、水単独であることが最も好ましい。
原料単量体成分を重合する際には、例えば、重合開始剤、紫外線や放射線の照射、熱の印加等の手段が用いられ、重合開始剤を使用することが好ましく、原料単量体成分を効率よく反応させ、残存するモノマーを十分に低減させる観点から、酸化剤及び還元剤を組み合わせた重合開始剤(レドックス型重合開始剤)が好ましい。
<加水分解方法>
本開示のアルカリ可溶性重合体粒子の加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、アンモニア水溶液、シクロヘキシルアミン水溶液等の塩基性水溶液を添加することで加水分解を行うことができる。
加水分解に用いるアルカリ水溶液としては、pHが7.0以上、14以下であることが好ましい。アルカリ溶液の濃度としては、0.1重量%以上、30重量%以下であることが好ましい。アルカリの使用量としては、単量体に由来する構造単位の総量に対し、0.01モル以上、200モル以下であることが好ましい。さらに、加水分解液に適宜酸を添加することで、部分中和又は完全中和を行うことができる。加水分解及び中和を行うことで、式(1)のRに該当する基を水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ金属原子またはアンモニウムにできる。重合時、加水分解時、及び中和時に用いる酸や塩基の量を調整したり、Rが水素原子である単量体単位の割合を調整することができる。
[本開示のアンチブロッキング剤の用途]
本開示の重合体粒子は、その他成分を含む組成物を形成してもよい。その他成分としては、特に限定されないが、分散剤、溶剤、樹脂、架橋剤、酸化防止剤などが挙げられる。
本開示の重合体粒子と樹脂を含む組成物(以下、マスターバッチという場合もある)は、フィルムへ塗布することにより、重合体粒子を付与することができる。
本開示のマスターバッチは、重合体粒子と樹脂との親和性が高いため、配合量の調製が容易であり、重合体粒子の分散性を高くすることができる。
本開示のマスターバッチに含まれる重合体粒子の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。一方、20質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
本開示のマスターバッチに含まれる樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリウレタン樹脂;(メタ)アクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、三菱ケミカル(株)製、商品名:ニチゴーポリエスター、東洋紡績(株)製、商品名:バイロナール、高松油脂(株)、商品名:ぺスレジン、互応化学工業(株)製、商品名:プラスコートなどが挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、第一工業製薬(株)製、商品名:スーパーフレックス、DIC(株)製、商品名:ハイドランなどが挙げられる。
好ましくは、ポリエステル樹脂である。さらに好ましくは水との親和性の高い、水系ポリエステル樹脂である。
本開示のマスターバッチに含まれる樹脂は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。一方、99.9質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは99質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以下である。
本開示のマスターバッチに含まれる架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。好ましくは、オキサゾリン系架橋剤である。
本開示のマスターバッチに含まれる架橋剤は、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは、1質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%である。一方、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
本開示のマスターバッチに含まれる酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシアミン系酸化防止剤などが挙げられる。
本開示のマスターバッチを使用するフィルムは特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミドなどの芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体などのアクリル系樹脂、セロファンなどからなるフィルムが挙げられる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<体積平均粒子径>
重合体粒子分散体をイオン交換水で希釈したものを光散乱粒度分布測定機(スペクトリス社製「Zetasizer Ultra」)を用いて測定して、動的光散乱法により微粒子の体積平均粒子径(nm)を求めた。
<アルカリ可溶評価>
濃度が10%となるように調製した重合体粒子分散液4部に対し、10%の水酸化ナトリウム水溶液を1.5部添加し、スターラーにて12h攪拌した。その後の体積平均粒子径を動的光散乱法にて測定した。また、重合体粒子の粒子径をD1、アルカリ可溶後の粒子径をD2として評価した。尚、D1-D2の値により以下の基準にてアルカリ可溶層の有無を確認した。
D1-D2が10nm未満;アルカリ可溶層なし
D1-D2が10nm以上;アルカリ可溶層あり
<耐ブロッキング性評価>
静動摩擦測定機(トリニティーラボ社製「TL201S」)に成膜試料Aの塗工面が上になるように取り付け、荷重ヘッド部(1cm×1cm、100g)と成膜試料Aの接触部に平滑PETフィルムを用いて、2cmの距離を一往復4秒の速度で10往復させた。以下の基準により耐ブロッキング性を評価した。
(評価基準)
〇:静止摩擦係数が0.64未満
×:静止摩擦係数が0.64以上
<滑り性評価>
耐ブロッキング性評価と同様の評価を実施した。以下の基準によりフィルム搬送性を評価した。
(評価基準)
〇:動摩擦係数が0.43未満
×:動摩擦係数が0.43以上
<脱落性評価>
静動摩擦測定機(トリニティーラボ社製「TL201S」)に成膜試料Bの塗工面が上になるように取り付け、荷重ヘッド部(1cm×1cm、10g)と成膜試料Bの接触部にアルミ箔を用いて、10cmの距離を一往復20秒の速度で10往復させた。
摩擦後の成膜試料Bの塗工面を電子顕微鏡(日本電子社製「JSM-7600FA」)にて観察し、塗工面の形状観察を行った。
以下の基準により脱落防止性を評価した。
(評価基準)
〇:重合体粒子の脱落がない
×:重合体粒子の脱落がある
<アンチブロッキング剤(AB剤)除去性評価>
成膜試料Aを1%水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸漬させ、その後成膜試料を取り出し十分な量のイオン交換水で洗浄し塗膜を乾燥させた。
ヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH7000」)を用いて、水酸化ナトリウム水溶液で処理する前後のヘイズ(%)を測定し、アルカリ処理によるヘイズ値差を以下の数式にて算出した。
ヘイズ値差=(アルカリ処理後のヘイズ)―(アルカリ処理前のヘイズ)
また、成膜試料Aの塗工面を電子顕微鏡(日本電子社製「JSM-7600FA」)にて観察し、塗工面の形状観察を行った。
AB剤除去性能は以下の基準により総合的に評価した。
(評価基準)
◎:ヘイズ値が1%以上上昇し、かつ粒子が完全に除去されている
〇:ヘイズ値が1%以上上昇するが、一部粒子粒子の溶け残りはある
×:ヘイズ値の上昇が確認されず、また粒子も除去されていない。
<製造例A1>
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水832.0質量部およびアニオン性反応型界面活性剤アデカリアソープSR-20(有効成分100質量%、ADEKA社製)をイオン交換水で有効成分25.0質量%に希釈したもの(以下、「SR-20(有効成分25.0質量%)」という)を0.96質量部加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、上記反応釜とは異なる容器で、2-ヒドロキシメチルメタクリル酸メチル(以下「RHMA」と称する)170.0質量部とn―ブチルアクリレート(以下「BA」と称する)10.0質量部とトリエチレングリコールジアクリレート(以下「3EG-A」と称する)20.0質量部にて構成される単量体組成物A 200.0質量部を調製した。
上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物A 40.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度1.28質量%)21.0質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.90質量%)21.0質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。次いで、上記単量体組成物Aの残部160.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度0.22質量%)479.0質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度0.33質量%)479.0質量部とSR-20(有効成分25.0質量%)7.04質量部との混合組成物486.04質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ4時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、内温を85℃まで昇温し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、重合体(A1)が分散した重合体水分散体(A1a)を得た。得られた重合体粒子(A1)の粒子径は380nmであった。
得られた重合体粒子(A1)を上記方法によりアルカリ可溶評価したところ、アルカリ処理後の粒子径は4nmであった。
<製造例A2>
攪拌機、温度計及び冷却機を備えたステンレス製の第1の反応釜に、脱イオン水1378質量部、及びエーテルサルフェート型アンモニウム塩を主成分とするアニオン性反応性乳化剤アデカリアソープSR-20(有効成分10質量%)0.96質量部を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、第1の反応釜とは異なる第2の反応釜で、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称する)105.0質量部とジビニルベンゼン810(新日鉄住金化学社製、ジビニルベンゼン純度81%、以下「DVB810」と称する)45.0質量部を投入し、単量体組成物A 150.0質量部を調製した。さらに、第1の反応釜、第2の反応釜とは異なる第3の反応釜で、RHMA 45.0質量部と、3EG-A 5.0質量部とを混合して、単量体組成物B 50.0質量部を調製した。
次に、第1の反応釜内を窒素ガスで置換した後、前記単量体組成物A150質量部、過酸化水素水(濃度3.35質量%)20質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(濃度5.0質量%)20質量部を第1の反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、前記単量体組成物B 50質量部、過酸化水素水(濃度0.83質量%)100質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(濃度1.25質量%)100質量部、SR-20(有効成分10質量%)7.04質量部とアンモニア水溶液(濃度28質量%)0.36質量部とイオン交換水92.6質量%との混合組成物100質量部を、各々異なる投入口より、第1の反応釜へ3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、第1の反応釜の内温を75℃に保持し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、重合体(A2)が分散した重合体水分散体(A2a)を得た。得られた重合体粒子(A2)の粒子径は547nmであった。
得られた重合体粒子(A2)を上記方法によりアルカリ可溶評価したところ、アルカリ処理後の粒子径は443nmであった。
<製造例A3>
単量体組成物AをMMA105質量部とDVB810 45質量部から、MMA35質量部とDVB810 15質量部に、単量体組成物BをRHMA45質量部と3EG-A5質量部から、RHMA135質量部と3EG-A15質量部に変更した以外は製造例A2と同様にして、重合体粒子(A3)が分散した重合体粒子水分散体(A3a)を得た。 得られた重合体粒子(A3)の粒子径は436nmであった。
得られた重合体粒子(A3)を上記方法によりアルカリ可溶評価したところ、アルカリ処理後の粒子径は413nmであった。
<製造例B1>
単量体組成物BをRHMA45質量部と3EG-A5質量部から、RHMA45質量部とDVB810 5質量部に変更した以外は製造例A2と同様にして、重合体粒子(B1)が分散した重合体粒子水分散体(B1a)を得た。得られた重合体粒子(B1)の粒子径は452nmであった。
得られた重合体粒子(B1)を上記方法によりアルカリ可溶評価したところ、アルカリ処理後の粒子径は556nmであった。重合体粒子(B1)アルカリ可溶層を有さず、アルカリ溶液を吸収したことが示唆された。
<製造例B2>
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水832.0質量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(有効成分6.5質量%、以下「DBSNa(有効成分6.5質量%)」と称する)0.92質量部とを加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、上記反応釜とは異なる容器で、MMA140.0質量部とDVB810 60.0質量部を混合して、単量体組成物200.0質量部を調製した。次に、上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物40.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度1.28質量%)21.0質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.90質量%)21.0質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、上記単量体組成物の残部160.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度0.22質量%)479.0質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度0.33質量%)479.0質量部とDBSNa(有効成分6.5質量%)6.77質量部との混合組成物485.77質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ4時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、内温を85℃まで昇温し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、架橋微粒子(B2)が分散した架橋微粒子分散体(B2a)を得た。得られた重合体粒子(B2)の粒子径は493nmであった。
得られた重合体粒子(B2)を上記方法によりアルカリ可溶評価したところ、アルカリ処理後の粒子径は489nmとなった。重合体粒子(B2)アルカリ可溶層を有さなかった。
<製造例B3>
攪拌機、滴下装置および温度計を備えた容量10Lのガラス製反応器に、有機溶媒としてのメチルアルコール4266.5gと、28重量%アンモニア水(水および触媒)333.0gとを仕込み、攪拌しながら液温を20±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、シリコン化合物としてのテトラメトキシシラン333.0gをメチルアルコール533.0gに溶解してなる溶液を仕込んだ。そして、滴下装置から該溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解,縮合を行い、シリカ微粒子(B3)の懸濁液(B3a)を得た。得られた重合体粒子(B3)の粒子径は374nmであった。得られた重合体粒子(B3)を上記方法によりアルカリ可溶評価したところ、アルカリ処理後の粒子径は384nmとなった。重合体粒子(B3)はアルカリ可溶層を有さなかった。
[樹脂]
重合体粒子水分散体と配合する樹脂として、下記のものを使用した。
(水系ポリエステル樹脂)
ニチゴーポリエスターWR-901:三菱ケミカル社製、固形分19.9質量%
[実施例1]
<成膜試料Aの調製>
水系ポリエステル樹脂(ニチゴーポリエスターWR-901)と重合体水分散体(A1a)とを固形分で100:10の比率になるように配合した後、スターラーチップで十分に攪拌し、塗膜用組成物A―(1)を得た。次に塗膜用組成物A―(1)を透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」と称する、東洋紡社製、コスモシャインA4300 縦:297mm、横:210mm、厚さ:0.100mm)に、塗工後の膜厚が52μmとなるようにバーコーターで塗布し、送風定温恒温器(ヤマト科学社製「DNF400」)にて100℃10分間乾燥して、塗膜が積層された成膜試料A―(1)を得た。成膜試料A―(1)にて、耐ブロッキング性評価、滑り性評価およびAB剤除去性評価をおこなった。
<成膜試料Bの調製>
樹脂と重合体粒子水分散体とを固形分で100:20の比率になるように配合した以外は成膜試料A―(1)と同様にして、塗膜用組成物B―(1)を得た。次に塗膜用組成物B―(1)を透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」と称する、東洋紡社製、コスモシャインA4300 縦:297mm、横:210mm、厚さ:0.100mm)に、塗工後の膜厚が7μmとなるようにバーコーターで塗布し、送風定温恒温器(ヤマト科学社製「DNF400」)にて100℃10分間乾燥して、塗膜が積層された成膜試料B―(1)を得た。成膜試料B―(1)にて、脱落性評価をおこなった。
[実施例2~3、比較例1~3]
配合する樹脂、重合体水分散体の種類を表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様にして成膜試料を調製し、評価をおこなった。
[参考例1]
フィルム基材に用いたPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA4300 縦:297mm、横:210mm、厚さ:0.100mm)単独で、所定の評価を実施した。静止摩擦係数は0.43、動摩擦係数は0.64であった。
Figure 2023142508000003
Figure 2023142508000004
表1および表2の結果から、本開示のアンチブロッキング剤は、フィルムからの脱落防止能を有し、アルカリ溶液によって容易に除去できることが明らかとなった。

Claims (4)

  1. アルカリ可溶層を有する重合体粒子を含むアンチブロッキング剤であって、該アルカリ可溶層の厚みが10nm以上である、アンチブロッキング剤。
  2. 前記アルカリ可溶層を有する重合体粒子の体積平均粒子径が10nm~10μmである、請求項1に記載のアンチブロッキング剤。
  3. 前記アルカリ可溶層を有する重合体粒子に、下記一般式(1)で表される構造単位を含む、請求項1又は2に記載のアンチブロッキング剤。
    Figure 2023142508000005
    (一般式(1)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、またはアンモニウムを表す。)
  4. 請求項1~3に記載のアンチブロッキング剤と樹脂を含む、マスターバッチ。
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