JP2023142249A - ベーカリー生地およびベーカリー製品、並びにベーカリー生地の製造方法 - Google Patents

ベーカリー生地およびベーカリー製品、並びにベーカリー生地の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】風味が調和し、ボリュームと食感が良好なベーカリー製品、および該ベーカリー製品が得られるベーカリー生地を提供すること。また、ベーカリー生地製造時の作業性を良好なものとすること。【解決手段】以下の(条件A-1)および(条件A-2)を満たす油脂または油脂組成物(A)と、以下の(条件B-1)および(条件B-2)を満たす油脂組成物(B)とを含むベーカリー生地である。(条件A-1):含まれる油脂が、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上である(条件A-2):25℃における固体脂含量が5%以下である(条件B-1):比重が0.87以下である(条件B-2):25℃における固体脂含量が15~45%である【選択図】なし

Description

本発明は、ベーカリー生地およびベーカリー製品、並びにベーカリー生地の製造方法に関する。
ベーカリー製品の製造に用いられる原材料の一つとして食塩がある。
ベーカリー製品において食塩は、単にベーカリー製品に塩味を付与するだけでなく、ベーカリー製品の原材料である穀粉類や、その他原材料の様々な風味を引き立て、調和させる効果(以下、単に風味調和効果と記載する)を発揮することが知られている(例えば、非特許文献1のp.127 「食塩」の項参照)。
しかし、ベーカリー製品に含有させることのできる食塩の量には限界があり、ベーカリー製品の食塩含有量を増やした場合、風味調和効果以上に塩味が付与され、むしろ風味の劣ったベーカリー製品となってしまう。従って、食塩の添加により得ることのできる風味調和効果には限界があった。
また、食塩の過剰な摂取は高血圧や心疾患の原因となることが知られていることから、ベーカリー製品の分野において、減塩のベーカリー製品が製造されることもある。しかし、減塩のベーカリー製品は、食塩含有量を減じているため、塩味が弱くなるだけでなく、食塩の風味調和効果を適当に得ることができないため、ぼけた風味になりやすいという問題があった。
そのため、食塩以外の素材により、ベーカリー製品の風味を調和させるための方法が求められていた。
ところで、ベーカリー製品の原材料として、食塩のほかに油脂も用いられる。
ベーカリー製品の製造には、一般的に可塑性を有する油脂組成物が用いられており、可塑性を有する油脂組成物をベーカリー生地に用いると、ベーカリー生地製造時に、ベーカリー生地中のグルテン膜に沿って、薄い膜状に油脂がいきわたり、グルテンの潤滑油として働く。この働きによって、ベーカリー製品のふくらみを助け、ボリュームのある良好な食感のベーカリー製品が得られる。油脂がベーカリー生地中で薄い膜状にいきわたる性質は、油脂組成物の可塑性によるものである。
一方で、ベーカリー製品の中には、フォカッチャのように液状油を用いて製造されるものもある。
しかし、一般的には、ベーカリー製品の製造に液状油を用いた場合、液状油が可塑性を有さないため、ベーカリー生地中のグルテン膜に沿っていきわたらず、ベーカリー生地の伸展性の悪化や、ベーカリー生地がべたついて作業性の悪化を引き起こすという問題があった。また、得られるベーカリー製品は、ボリュームが小さく目の詰まったものとなるため、外観や食感が好ましくないという問題があった。
そこで、ベーカリー製品の製造に液状油を用いた際の問題を解決するため、様々な方法が検討されてきた。
例えば、液状油からなり、特定の乳化剤を含有することを特徴とする製パン用油脂(特許文献1参照)や、油相部に液状油と特定の乳化剤とを、特定量含有する製パン用水中油型乳化油脂組成物(特許文献2参照)や、構成脂肪酸中に炭素数16の脂肪酸と炭素数18の脂肪酸を特定量含み、これらの質量比が特定数値範囲である、ヨウ素価1以下の飽和油脂と、液状油とからなる可塑性油脂組成物(特許文献3参照)や、20℃における固形脂含量が0.1~5%であって、可食性粉末を特定量含有することを特徴とする、可塑性油脂組成物(特許文献4参照)が開示されている。
特許文献1~4に記載の方法によって、ベーカリー生地の製造に液状油を用いた際の、ベーカリー生地中への液状油の含有されにくさは改善がみられるが検討の余地があり、得られるベーカリー製品の外観や食感についても、特許文献1の方法では酸味が感じられるなど呈味に問題があり、特許文献2の方法では液状油の含有量を高めることができないためその特徴を付与できない問題があり、特許文献3の方法は口溶けが悪化する問題があり、特許文献4の方法は添加量を増やすと食感の低下を起こすおそれがあるなど、その改善効果についても検討の余地があった。加えて、特許文献1~4に記載の方法は、液状油と、他の油脂や食品素材とを含有した油脂組成物や乳化物として、ベーカリー製品の製造に用いるため、液状油を用いることによる効果が打ち消され、効果を十分に得られなかった。
そのため、ベーカリー生地製造時の作業性が良好であり、風味が調和しており、外観や食感が良好なベーカリー製品が求められていた。
特開平11-056235号公報 特開2020-162442号公報 特開2006-325541号公報 特開2020-198836号公報
「製菓理論 基本生地とその応用」 松田兼一著、昭和62年11月1日刊
従って、本発明の課題は、次の3点である。
1)風味が調和したベーカリー製品、および該ベーカリー製品が得られるベーカリー生地を提供すること。
2)ボリュームと食感が良好なベーカリー製品、および該ベーカリー製品が得られるベーカリー生地を提供すること。
3)ベーカリー生地製造時の作業性を良好なものとすること。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の油脂または油脂組成物と、別の条件を満たす特定の油脂組成物を、一つの組成物とせず、別々の組成物として併用することで上記課題を解決可能であることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいたもので、下記の構成を有するものである。
(1)以下の(条件A-1)および(条件A-2)を満たす油脂または油脂組成物(A)と、以下の(条件B-1)および(条件B-2)を満たす油脂組成物(B)とを含む、ベーカリー生地。
(条件A-1):含まれる油脂が、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上である
(条件A-2):25℃における固体脂含量が5%以下である
(条件B-1):比重が0.87以下である
(条件B-2):25℃における固体脂含量が15~45%である
(2)油脂または油脂組成物(A)の含有量が、ベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して0.5~15.0質量部であり、かつ、油脂または油脂組成物(A)1質量部に対して、油脂組成物(B)を0.25~4.00質量部含有する、(1)に記載のベーカリー生地。
(3)油脂組成物(B)が、さらに以下の(条件B-3)を満たす、(1)または(2)に記載のベーカリー生地。
(条件B-3):15℃における固体脂含量が25~55%である
(4)(1)~(3)のいずれか一項に記載のベーカリー生地を加熱処理してなるベーカリー製品。
(5)減塩または無塩のベーカリー製品である、(4)に記載のベーカリー製品。
(6)以下の(条件A-1)および(条件A-2)を満たす油脂または油脂組成物(A)を添加する工程と、以下の(条件B-1)および(条件B-2)を満たす油脂組成物(B)を添加する工程とを有する、ベーカリー生地の製造方法。
(条件A-1):含まれる油脂が、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上である
(条件A-2):25℃における固体脂含量が5%以下である
(条件B-1):比重が0.87以下である
(条件B-2):25℃における固体脂含量が15~45%である
本発明により得られる効果は、次の3点である。
1)風味が調和したベーカリー製品、および該ベーカリー製品が得られるベーカリー生地を提供することができる。
2)ボリュームと食感が良好なベーカリー製品、および該ベーカリー製品が得られるベーカリー生地を提供することができる。
3)ベーカリー生地製造時の作業性を良好なものとすることができる。
以下、本発明について説明する。本発明は、以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
まず、本発明のベーカリー生地に用いる油脂または油脂組成物(A)および油脂組成物(B)について説明する。
<油脂または油脂組成物(A)>
本発明のベーカリー生地に用いられる油脂または油脂組成物(A)について述べる。以下、単に「本発明の油脂または油脂組成物(A)」と記載することもある。
本発明の油脂または油脂組成物(A)は、以下の(条件A-1)および(条件A-2)を満たす油脂または油脂組成物である。
(条件A-1):含まれる油脂が、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上である
(条件A-2):25℃における固体脂含量が5%以下である
本発明のベーカリー生地は、本発明の油脂または油脂組成物(A)と、後述する本発明のベーカリー生地に用いられる油脂組成物(B)(以下、単に「本発明の油脂組成物(B)」と記載することもある。)とを用いることで、風味が調和しており、ボリュームと食感が良好なベーカリー製品を得ることができるベーカリー生地となる。また、本発明のベーカリー生地製造時の作業性が良好なものとなる。
なお、本発明における「ベーカリー生地製造時の作業性が良好である」とは、ベーカリー生地を製造する工程において、特に、ベーカリー生地の捏ね上げ時において、ベーカリー生地がべたついたり、ちぎれたりしないことを指す。
ベーカリー生地に、後述する本発明の油脂組成物(B)を用いず、本発明の油脂または油脂組成物(A)のみを用いた場合、得られるベーカリー製品の風味は調和したものとなるが、ボリュームがなく、目が詰まっていて食感が悪いものとなってしまう。加えて、ベーカリー生地製造時に、ベーカリー生地がべたついたり、ちぎれたりしやすく、ベーカリー生地製造時の作業性が悪化してしまう。
<<(条件A-1)>>
(条件A-1)は、本発明の油脂または油脂組成物(A)に用いられる油脂に関する。
本発明の油脂または油脂組成物(A)に用いられる油脂は、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の油脂である。
後述する(条件A-2)を満たしたうえで、本発明の油脂または油脂組成物(A)に用いられる油脂が、上記群より選ばれる油脂であると、後述する本発明の油脂組成物(B)と併用した際に、本発明の効果、特に、風味が調和したベーカリー製品が得られるという効果を好ましく得ることができる。
本発明の油脂または油脂組成物(A)が、上記群以外の油脂を含有していた場合、風味が調和したベーカリー製品を得ることができない。
なお、上記本発明の油脂または油脂組成物(A)に用いられる加工油脂には、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油脂と、それ以外の油脂とからなる油脂配合物に、水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施したものも含まれる。
菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油からなる群より選ばれる油脂以外の油脂としては、上記群以外の食用油脂が挙げられ、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、落花生油、サフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、カポック油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂及びイリッペ脂等の各種植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の各種動物油脂、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選ばれる1種または2種以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記本発明の油脂または油脂組成物(A)に用いられる加工油脂を製造するための油脂配合物は、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油脂70~100質量%と、それ以外の油脂0~30質量%とを合わせて100質量%とした油脂配合物であることが好ましく、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油脂100質量%の油脂配合物であることがより好ましい。このような油脂配合物とすることで、本発明の効果、特に、風味が調和したベーカリー製品が得られるという効果を好ましく得ることができる。
本発明における加工油脂を製造するための水素添加、分別およびエステル交換は、従前知られた方法により行うことができる。
なお、分別については溶剤分別であってもよく、界面活性剤分別であってもよく、ドライ分別であってもよい。
また、エステル交換については、リパーゼ等の酵素触媒を用いてもよく、ナトリウムメトキシド等の化学的触媒を用いてもよいが、ランダムエステル交換であることが好ましい。
以下、本発明における加工油脂を製造するための水素添加、分別およびエステル交換について同様である。
本発明の油脂または油脂組成物(A)に用いられる油脂は、風味がより調和し、ボリュームと食感がより良好な本発明のベーカリー製品を得る観点や、本発明のベーカリー生地製造時の作業性をより良好なものとする観点から、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油脂であることが好ましく、菜種油、大豆油、オリーブ油、米油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油脂であることがさらに好ましく、オリーブ油であることが最も好ましい。
本発明の油脂または油脂組成物(A)の油脂として最も好ましい、オリーブ油について詳述する。
本発明におけるオリーブ油とは、オリーブ果実のみから採油され、他の種類の油脂が混入していない油脂であり、日本農林規格(JAS)の基準を満たすものである。
本発明の油脂または油脂組成物(A)に用いられるオリーブ油は、JASによって定められている、酸価が2.0以下であるオリーブ油であってもよく、0.60以下である精製オリーブ油であってもよい。また、酸価が2.0以下であるオリーブ油と、0.60以下である精製オリーブ油とを混合したものであってもよい。
酸価とは、油脂中の遊離脂肪酸を中和するために必要な水酸化カリウム量(mg)を指した値である。
酸価の測定方法は、従前知られた方法を用いて測定することができる。例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.3.1(2013)」に記載の方法で測定することができる。
また、本発明の油脂または油脂組成物(A)に用いられるオリーブ油は、精製処理を施していないものであってもよく、精製処理を施したものであってもよい。
上記精製処理としては、例えば、脱ガム、脱酸、脱臭、脱色等の、通常食用油脂に施される精製処理が挙げられ、これらの中からいずれか1種以上を行ってもよい。なお、上記精製処理は、従前知られた方法により行うことができる。
以下、本発明に用いられる油脂および加工油脂への精製処理についても同様である。
本発明のベーカリー生地において、本発明の油脂または油脂組成物(A)の油脂としてオリーブ油を用いた場合に、本発明の効果がより好ましく得られる理由は定かではないが、オリーブ油中のポリフェノールやフィトステロール等の成分が、本発明の効果に好ましく寄与していると、本発明者らは推測している。
本発明の油脂または油脂組成物(A)の油脂の含有量は、風味がより調和し、ボリュームと食感がより良好な本発明のベーカリー製品を得る観点や、本発明のベーカリー生地製造時の作業性をより良好なものとする観点から、本発明の油脂または油脂組成物(A)中90~100質量%であることが好ましく、95~100質量%であることがより好ましく、99~100質量%であることがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
なお、本発明の油脂または油脂組成物(A)の油脂の含有量は、後述する本発明の油脂または油脂組成物(A)のその他の原材料に含まれる油脂も含めた値である。
<<(条件A-2)>>
(条件A-2)は、本発明の油脂または油脂組成物(A)の25℃における固体脂含量に関する。
本発明の油脂または油脂組成物(A)は、25℃における固体脂含量(以下、「25℃におけるSFC」とも記載する。)が、5%以下であることが必要であり、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。なお、25℃におけるSFCの下限値は0%である。
(条件A-1)を満たしたうえで、25℃におけるSFCが5%以下である本発明の油脂または油脂組成物(A)を用いると、後述する本発明の油脂組成物(B)と併用した際に、本発明の油脂または油脂組成物(A)がベーカリー生地に含有されやすくなるため、本発明の効果をより好ましく得ることができる。
本発明の油脂または油脂組成物(A)のSFCは、従前知られた方法を用いてSFCを測定し、得られた測定値を、本発明の油脂または油脂組成物(A)の油相量に換算した値である。すなわち、本発明の油脂または油脂組成物(A)が水を含まない場合は、測定値をそのまま本発明の油脂または油脂組成物(A)のSFCとし、水を含む場合は、測定値を本発明の油脂または油脂組成物(A)の油相量に換算した値を、本発明の油脂または油脂組成物(A)のSFCとする。
なお、本発明の油脂または油脂組成物(A)の油相とは、本発明の油脂または油脂組成物(A)の油脂と、本発明の油脂組成物(A)のその他の原材料に含まれる油溶性成分を合わせたものである。
また、SFCの測定は、例えば、アステック株式会社製「SFC-2000R」を用いて、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.2.9(2013)」に記載の方法で測定することができる。
以下、本発明における油脂および油脂組成物のSFCの測定方法について同様である。
また、本発明の油脂または油脂組成物(A)は、(条件A-1)及び(条件A-2)を満たしたうえで、15℃における固体脂含量(以下、「15℃におけるSFC」とも記載する。)が5%以下であると、後述する本発明の油脂組成物(B)と併用した際に、本発明の効果をより良好に得られるため好ましい。同様の観点から、15℃におけるSFCは、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。なお、15℃におけるSFCの下限値は0%である。
本発明の油脂または油脂組成物(A)が油脂組成物である場合、必要に応じて、本発明の油脂または油脂組成物(A)の油脂以外のその他の原材料を含有してもよい。
本発明の油脂組成物(A)のその他の原材料としては、例えば、水、乳化剤、糖類、糖アルコール、高甘味度甘味料、澱粉や加工澱粉等の澱粉類、蛋白質類、増粘安定剤、酵素類、卵類、着色料、酸化防止剤、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、デキストリン、乳や乳製品、豆乳やアーモンドミルク等の植物乳やそれらを加工した製品、酒類、果実や果汁、調味料、香辛料、香料、野菜類、肉類、魚介類、その他食品原料、食品添加物等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
上記水としては、例えば、水道水やミネラルウォーター等の水や、水以外の本発明の油脂組成物(A)のその他の原材料に含まれる水分も含めたものとする。
本発明の油脂組成物(A)の水の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、含有しないことが最も好ましい。なお、本発明の油脂組成物(A)の水の含有量の下限値は0質量%である。
本発明の油脂組成物(A)の水の含有量は、従前知られた方法により測定することができる。例えば、常圧乾燥減量法により測定することができる。
以下、本発明の水の含有量の測定方法について同様である。
なお、本発明の油脂組成物(A)が水を含有する場合は、本発明の油脂組成物(A)は乳化していてもよく、乳化していなくてもよい。乳化している場合は、その乳化型は油中水型であっても、水中油型であっても、油中水中油型等の多重乳化型であってもよい。
上記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド、レシチン、リゾレシチン等が挙げられる。
本発明の油脂組成物(A)の乳化剤の含有量は、本発明の油脂組成物(A)中1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、乳化剤を含有しないことがさらに好ましい。なお、乳化剤の含有量の下限値は0質量%である。
上記糖類としては、例えば、上白糖、グラニュー糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、液糖、水飴、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロース、トレハロース、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元糖、はちみつ、異性化糖、転化糖、酵素糖化水飴、異性化水飴、ショ糖結合水飴等の単糖、二糖、オリゴ糖等が挙げられる。
上記糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、還元麦芽糖水あめ、還元乳糖、還元水あめ等が挙げられる。
上記高甘味度甘味料としては、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、ネオテーム、甘草、グリチルリチン、グリチルリチン酸塩、ジヒドロカルコン、ソーマチン、モネリン等が挙げられる。
上記蛋白質類としては、例えば、ホエイ蛋白質やカゼイン蛋白質等の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質・高密度リポ蛋白質・ホスビチン・リベチン・リン糖蛋白質・オボアルブミン・コンアルブミン・オボムコイド等の卵蛋白質などの動物性蛋白質や、グリアジン・グルテニン・プロラミン・グルテリン等の小麦蛋白質、大豆蛋白質、えんどう豆蛋白質、そら豆蛋白質、緑豆蛋白質、ひよこ豆蛋白質、レンズ豆蛋白質、米蛋白質などの植物性蛋白質が挙げられる。
本発明の油脂組成物(A)の蛋白質類の含有量は、本発明の油脂組成物(A)中0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、蛋白質類を含有しないことがさらに好ましい。なお、蛋白質類の含有量の下限値は0質量%である。
上記増粘安定剤としては、例えば、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等が挙げられる。
本発明の油脂組成物(A)の増粘安定剤の含有量は、本発明の油脂組成物(A)中0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、増粘安定剤を含有しないことがさらに好ましい。なお、増粘安定剤の含有量の下限値は0質量%である。
上記乳や乳製品としては、例えば、牛乳やヤギ乳等の動物乳や、カゼイン、ホエイ、クリーム、脱脂粉乳、発酵乳、全粉乳、ヨーグルト、練乳、加糖練乳、全脂練乳、脱脂練乳、濃縮乳、純生クリーム、ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)、植物性ホイップ用クリーム、乳清ミネラル、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、クリームチーズ等の動物乳を加工して得られる乳製品が挙げられる。
本発明の油脂組成物(A)のその他の原材料は、本発明の効果を阻害しない範囲で任意の量を含有させることができるが、その含有量は、本発明の油脂組成物(A)中0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましく、0~1質量%であることがさらに好ましく、含有しないことが最も好ましい。
本発明の油脂または油脂組成物(A)は、本発明の効果がより好ましく得られるという観点から、ヨウ素価が70~140であることが好ましく、75~120であることがより好ましく、75~100であることがさらに好ましい。
本発明の油脂または油脂組成物(A)のヨウ素価は、従前知られた方法を用いて測定することができる。例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.3.4.1(2013)」に記載の方法で測定することができる。
以下、本発明におけるヨウ素価の測定方法について同様である。
本発明の油脂または油脂組成物(A)の比重は、本発明の効果がより好ましく得られるという観点から、0.89~0.96であることが好ましい。
本発明の油脂または油脂組成物(A)の比重は、従前知られた手法を用いて測定することができる。例えば、一定容積の計量カップに本発明の油脂または油脂組成物(A)を充填して、該カップ内の本発明の油脂または油脂組成物(A)の質量を測定し、その質量を計量カップの容積で除して得られる数値を、本発明の油脂または油脂組成物(A)の比重とすることができる。なお、本発明の油脂または油脂組成物(A)の比重は25℃において測定するものとする。
以下、本発明における比重の測定方法について同様である。
本発明の油脂または油脂組成物(A)は、風味がより調和し、ボリュームと食感がより良好な本発明のベーカリー製品を得る観点や、本発明のベーカリー生地製造時の作業性をより良好なものとする観点から、常温(25℃)において流動性を有することが好ましい。
本発明の油脂または油脂組成物(A)は、従前知られた油脂または油脂組成物の製造方法を用いて製造することができる。
例えば、従前知られた油脂の製造方法を用いて、(条件A-1)および(条件A-2)を満たす1種の油脂を製造して用いることができ、また、従前知られた油脂組成物の製造方法を用いて、(条件A-2)を満たすように、1種または2種以上の(条件A-1)を満たす油脂と、必要に応じて本発明の油脂組成物(A)のその他の原材料とを混合して製造することもできる。
<油脂組成物(B)>
本発明の油脂組成物(B)について述べる。
本発明の油脂組成物(B)は、下記(条件B-1)および(条件B-2)を満たす油脂組成物である。
(条件B-1)比重が0.87以下である
(条件B-2)25℃における固体脂含量が15~45%である
ベーカリー生地に、本発明の油脂または油脂組成物(A)を用いず、本発明の油脂組成物(B)のみを用いた場合、風味が調和したベーカリー製品を得ることができない。また、ベーカリー生地製造時の作業性を良好なものとする効果も弱まってしまう恐れがある。
<<(条件B-1)>>
(条件B-1)は、本発明の油脂組成物(B)の比重に関する。
本発明の油脂組成物(B)は、比重が0.87以下である必要がある。なお、比重の下限値は、本発明の油脂組成物(B)を製造する際に調整可能な比重の範囲であれば特に制限されないが、好ましくは0.30以上である。
後述する(条件B-2)を満たしたうえで、比重が0.87以下である本発明の油脂組成物(B)を用いると、ベーカリー生地製造時に、本発明の油脂組成物(B)が細かく破砕するため、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とがベーカリー生地に含有されやすくなるため、本発明の効果を好ましく得ることができる。
本発明の油脂組成物(B)の比重が0.87よりも大きい場合、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とがベーカリー生地に含有されにくくなり、本発明の効果が得られない。
本発明の油脂組成物(B)の比重は、本発明の効果が好ましく得られるという観点から、好ましくは0.40~0.85、より好ましくは0.50~0.80、さらに好ましくは0.60~0.75である。
<<(条件B-2)>>
(条件B-2)は、本発明の油脂組成物(B)の25℃におけるSFCに関する。
本発明の油脂組成物(B)は、25℃におけるSFCが15~45%である必要がある。
(条件B-1)を満たしたうえで、25℃におけるSFCが15~45%である本発明の油脂組成物(B)を用いると、本発明の油脂組成物(B)が適度な硬さとコシを有するため、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とがベーカリー生地に含有されやすくなるため、本発明の効果を好ましく得ることができる。
本発明の油脂組成物(B)の25℃におけるSFCが15%よりも低いと、本発明の油脂組成物(B)に適度な硬さやコシがないため、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とがベーカリー生地に含有されにくくなり、本発明の効果が得られない。特に、ベーカリー生地製造時にベーカリー生地がべたつき、ベーカリー生地製造時の作業性が悪化してしまう。
25℃におけるSFCが45%よりも高いと、本発明の油脂組成物(B)中の油脂結晶が多く、硬くなりすぎて、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とがベーカリー生地に含有されにくくなるため、本発明の効果を得られない。
本発明の油脂組成物(B)の25℃におけるSFCは、本発明の効果がより好ましく得られるという観点から、18~42%であることが好ましく、20~40%であることがより好ましく、22~38%であることが最も好ましい。
<<(条件B-3)>>
本発明の油脂組成物(B)は、(条件B-1)および(条件B-2)を満たしたうえで、さらに次の(条件B-3)を満たすと、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、本発明の効果をより良好に得られるため好ましい。
(条件B-3)15℃における固体脂含量が25~55%である
本発明の油脂組成物(B)の15℃におけるSFCは、25~55%であることが好ましく、27~52%であることがより好ましく、30~50%であることがさらに好ましい。
本発明の油脂組成物(B)に用いられる油脂は、食用油脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、パーム油、パーム核油、ヤシ油、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、アマニ油、落花生油、米油、サフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、カポック油、ごま油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂及びイリッペ脂等の各種植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の各種動物油脂、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選ばれる1種または2種以上の処理を施した加工油脂を使用することができる。本発明はこれらの中から選ばれた1種または2種以上の油脂を用いることができる。
本発明の油脂組成物(B)の油脂の含有量は、本発明の油脂組成物(B)中60~100質量%であることが好ましく、75~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることがさらに好ましい。なお、本発明の油脂組成物(B)の油脂の含有量は、後述する本発明の油脂組成物(B)のその他の原材料に含まれる油脂も含めた値である。
本発明の油脂組成物(B)は、本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたる油脂、具体的には、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂から選ばれる油脂であって、25℃におけるSFCが5%以下である油脂を含有していてもよいが、その含有量は、本発明の油脂組成物(B)の油脂中20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。なお、含有量の下限値は0質量%である。
本発明の油脂組成物(B)は、より本発明の効果が好ましく得られるという観点から、エステル交換油脂を本発明の油脂組成物(B)の油脂中40~100質量%含有することが好ましく、60~100質量%含有することがより好ましく、75~100質量%含有することがさらに好ましい。なお、2種以上のエステル交換油脂を含有する場合は、その合計量を上記エステル交換油脂の含有量とする。
本発明の油脂組成物(B)は、上記エステル交換油脂として、特に、下記条件を満たすエステル交換油脂(α)またはエステル交換油脂(β)のいずれか1種以上を含有することが好ましく、エステル交換油脂(α)およびエステル交換油脂(β)のいずれも含有することがより好ましい。
エステル交換油脂(α):構成脂肪酸残基中のラウリン酸残基含有量が20~50質量%であるエステル交換油脂
エステル交換油脂(β):パーム極度硬化油を25~50質量%含有する油脂配合物のエステル交換油脂であって、構成脂肪酸残基中のラウリン酸残基含有量が10質量%以下であるエステル交換油脂
<<<エステル交換油脂(α)>>>
エステル交換油脂(α)は、構成脂肪酸残基中のラウリン酸残基含有量が20~50質量%であるエステル交換油脂である。
本発明の油脂組成物(B)がエステル交換油脂(α)を含有すると、本発明の油脂組成物(B)の硬さが適度なものとなり、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とがよりベーカリー生地に含有されやすくなるため、本発明の効果がより好ましく得られる。
エステル交換油脂(α)は、構成脂肪酸残基中にラウリン酸残基を30~100質量%含有する油脂(以下、単に「ラウリン系油脂」とも記載する。)に加え、必要に応じてラウリン系油脂以外の油脂を用いて、構成脂肪酸残基中のラウリン酸残基含有量を20~50質量%とした油脂配合物をエステル交換することにより得られる。
ラウリン系油脂としては、例えば、パーム核油、ヤシ油、ババス油、並びにこれらの油脂に水素添加、分別およびエステル交換から選ばれる1種または2種以上の処理を施した加工油脂を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、パーム核油またはヤシ油を用いることが好ましい。
また、ラウリン系油脂は、構成脂肪酸残基中にラウリン酸残基を30~70質量%含有する油脂であることが好ましい。
ラウリン系油脂以外の油脂としては、ラウリン系油脂および後述するエステル交換油脂(β)以外の、本発明の油脂組成物(B)に用いることのできる油脂の中から1種または2種以上を用いることができる。
エステル交換油脂(α)を製造するための油脂配合物は、好ましくはラウリン系油脂40~100質量%とラウリン系油脂以外の油脂0~60質量%とを合わせて100質量%としたものであり、より好ましくはラウリン系油脂50~100質量%とラウリン系油脂以外の油脂0~50質量%とを合わせて100質量%としたものである。
なお、2種以上のラウリン系油脂を含有する場合は、その合計量を、油脂配合物のラウリン系油脂の含有量とする。また、2種以上のラウリン系油脂以外の油脂を含有する場合は、その合計量を、油脂配合物のラウリン系油脂以外の油脂の含有量とする。
エステル交換油脂(α)は、構成脂肪酸残基中にラウリン酸残基を22~48質量%含有することが好ましく、25~45質量%含有することがより好ましい。
本発明の油脂組成物(B)は、エステル交換油脂(α)を、本発明の油脂組成物(B)の油脂中に5~50質量%含有することが好ましく、5~30質量%含有することがより好ましく、5~20質量%含有することがさらに好ましい。
<<<エステル交換油脂(β)>>>
エステル交換油脂(β)は、パーム極度硬化油を25~50質量%含有する油脂配合物のエステル交換油脂であって、構成脂肪酸残基中のラウリン酸残基含有量が10質量%以下であるエステル交換油脂である。
本発明の油脂組成物(B)がエステル交換油脂(β)を含有すると、本発明の油脂組成物(B)の硬さが適度なものとなり、また、細かく破砕しやすくなるため、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とがよりベーカリー生地に含有されやすくなり、本発明の効果がより好ましく得られる。
エステル交換油脂(β)は、パーム極度硬化油25~50質量%とパーム極度硬化油以外の油脂50~75質量%とを合わせて100質量%とした油脂配合物であって、かつ構成脂肪酸残基中のラウリン酸残基含有量を10質量%以下とした油脂配合物をエステル交換することにより得られる。
なお、上記油脂配合物の構成脂肪酸残基中のラウリン酸残基含有量の下限値は0質量%である。
本発明におけるパーム極度硬化油とは、パーム系油脂に対し、ヨウ素価が5以下、好ましくは1以下となるまで水素添加することで得られる油脂である。
上記パーム系油脂とは、パーム油、またはパーム油に対し水素添加、分別およびエステル交換から選ばれる1種または2種以上の処理を施した加工油脂である。これらのパーム系油脂を単独で使用してもよく、2種以上を混合した配合油として使用してもよいが、好ましくはパーム油を用いる。
エステル交換油脂(β)を製造するための油脂配合物は、1種または2種以上のパーム極度硬化油を用いることができる。
パーム極度硬化油以外の油脂としては、パーム極度硬化油およびエステル交換油脂(α)以外の、本発明の油脂組成物(B)に用いることのできる油脂の中から1種または2種以上を用いることができる。
エステル交換油脂(β)を製造するための油脂配合物は、好ましくはパーム極度硬化油25~45質量%とパーム極度硬化油以外の油脂55~75質量%とを合わせて100質量%としたものであり、より好ましくはパーム極度硬化油30~45質量%とパーム極度硬化油以外の油脂55~70質量%とを合わせて100質量%としたものである。
なお、2種以上のパーム極度硬化油を含有する場合は、その合計量を、油脂配合物のパーム極度硬化油の含有量とする。また、2種以上のパーム極度硬化油以外の油脂を含有する場合は、その合計量を、油脂配合物のパーム極度硬化油以外の油脂の含有量とする。
本発明の油脂組成物(B)は、エステル交換油脂(β)を、本発明の油脂組成物(B)の油脂中に5~50質量%含有することが好ましく、5~45質量%含有することがより好ましく、5~40質量%含有することがさらに好ましい。
本発明の油脂組成物(B)は、必要に応じて、本発明の油脂組成物(B)の油脂以外のその他の原材料を含有してもよい。
本発明の油脂組成物(B)のその他の原材料としては、例えば、水、乳化剤、糖類、糖アルコール、高甘味度甘味料、澱粉や加工澱粉等の澱粉類、蛋白質類、増粘安定剤、酵素類、卵類、着色料、酸化防止剤、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、デキストリン、乳や乳製品、豆乳やアーモンドミルク等の植物乳やそれらを加工した製品、酒類、果実や果汁、調味料、香辛料、香料、野菜類、肉類、魚介類、その他食品原料、食品添加物等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
本発明の油脂組成物(B)のその他の原材料は、本発明の効果を阻害しない範囲で任意の量を含有させることができるが、その含有量は、本発明の油脂組成物(B)中40質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本発明の油脂組成物(B)のその他の原材料の含有量の下限値は0質量%である。
本発明の油脂組成物(B)の融点は、本発明の効果がより好ましく得られるという観点から、35~55℃であることが好ましく、36~52℃であることがより好ましく、37~50℃であることがさらに好ましく、38~47℃であることが最も好ましい。
本発明の油脂組成物(B)の融点とは、本発明の油脂組成物(B)の油脂とその他の原材料に含まれる油溶性成分を合わせた油相の上昇融点を指す。
本発明の油脂組成物(B)の融点は、従前知られた方法により測定することができる。例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.2.4.2(1996)」に記載の方法で測定することができる。
本発明の油脂組成物(B)は、本発明の油脂または油脂組成物(A)と併用した際に、ともにベーカリー生地に含有されやすくなり、本発明の効果が好ましく得られるという観点から、油相を連続相とする形態であることが好ましい。
油相を連続相とする形態としては、例えば、水の含有量が0.5質量%以下であるショートニングの形態や、油中水型や油中水中油型のような、油相と水相を有し、油相を連続相とした乳化物の形態が挙げられ、本発明の油脂組成物(B)においては、ショートニングの形態であることがより好ましい。
なお、本発明の油脂組成物(B)の水の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。本発明の油脂組成物(B)の水分の下限値は0質量%である。
本発明の油脂組成物(B)の水としては、例えば、水道水やミネラルウォーター等の水が挙げられ、また、水以外の本発明の油脂組成物(B)のその他の原材料に含まれる水分も含めたものとする。
また、本発明の油脂組成物(B)は、ベーカリー製品に含有させやすくなり、本発明の効果を好ましく得られるという観点から、常温(25℃)において固形状であることが好ましい。
また、本発明の油脂組成物(B)は、常温において可塑性を有することが好ましい。
本発明の油脂組成物(B)は、従前知られた油脂組成物の製造方法を用いて製造することができる。
以下に、本発明の油脂組成物(B)の好ましい一様態である、ショートニングの形態を有する本発明の油脂組成物(B)の製造方法を示す。
本発明の油脂組成物(B)の油脂を加温して融解させ混合し、必要に応じて、本発明の油脂組成物(B)のその他の原材料を混合し、(条件B-2)を満たす油脂混合物を得る。
得られた油脂混合物は、殺菌処理することが好ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でも構わない。また、殺菌温度は好ましくは80~100℃、さらに好ましくは80~95℃、最も好ましくは80~90℃である。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行なう。予備冷却の温度は好ましくは40~60℃である。
次に、油脂混合物を冷却可塑化する。
冷却は、例えば、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーターなどの密閉型連続式掻き取りチューブラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機や、開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターの組み合わせ等により行うことができる。
可塑化は、例えば、ピンマシンなどの捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブ等で捏和することにより行うことができる。
なお、本発明における冷却は、徐冷却であっても急冷であってもよいが、急冷であることが好ましい。なお、本発明における徐冷却とは、-1℃/分未満の冷却速度での冷却を指し、急冷とは、-1℃/分以上の冷却速度での冷却を指す。
本発明の油脂組成物(B)を製造する際の任意の工程で、冷却可塑化して得られる可塑性油脂組成物の比重を、(条件B-1)を満たす数値範囲に調整するための工程を行うことができる。可塑性油脂組成物の比重を(条件B-1)を満たす数値範囲とすることで、本発明の油脂組成物(B)が得られる。
可塑性油脂組成物の比重を(条件B-1)を満たす数値範囲に調整する方法は、従前知られた方法を用いることができる。例えば、窒素・酸素・空気等の食品に用いることができる気体を、油脂混合物にエアレーションして冷却可塑化する方法や、可塑性油脂組成物に、食品に用いることが可能な気体を注入する方法や、可塑性油脂組成物を泡だて器等でホイッピングして含気させる方法等が挙げられる。また、これらの方法を複数組み合わせて行ってもよい。
<ベーカリー生地>
本発明のベーカリー生地は、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とを含むことを特徴とする。
本発明のベーカリー生地は、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とを用いていれば、ベーカリー生地の種類は制限されない。例えば、食パン生地・菓子パン生地・フランスパン生地・バラエティブレッド生地・ブリオッシュ生地・デニッシュ生地・ペストリー生地・バターロール生地・ソフトロール生地・ハードロール生地・スイートロール生地・イーストドーナツ生地・マフィン生地・ピザ生地・スコーン生地・蒸しパン生地・ワッフル生地・イングリッシュマフィン生地・バンズ生地等のパン類の生地や、クッキー生地・パイ生地・シュー生地・サブレ生地・スポンジケーキ生地・バターケーキ生地・ケーキドーナツ生地等の菓子類の生地が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果が得られやすいという観点から、本発明のベーカリー生地はパン類の生地であることが好ましく、食パン生地または菓子パン生地であることがさらに好ましい。
本発明のベーカリー生地が含有する澱粉類について説明する。
澱粉類としては、例えば、強力粉・準強力粉・中力粉・薄力粉・デュラム粉・全粒粉および胚芽などの小麦粉類、ライ麦粉・大麦粉・大豆粉および米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉・へーゼルナッツ粉・カシューナッツ粉・オーナッツ粉および松実粉などの堅果粉、コーンスターチ・タピオカ澱粉・小麦澱粉・甘藷澱粉・馬鈴薯澱粉・サゴ澱粉および米澱粉などの澱粉ならびにこれらの澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理等の1種以上の処理を施した加工澱粉等が挙げられる。
本発明のベーカリー生地においては、澱粉類中に、小麦粉類を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%使用する。
また、本発明のベーカリー生地においては、小麦粉類中に、準強力粉または強力粉を、具体的には、蛋白質含有量が10質量%以上である小麦粉類を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上使用する。
本発明のベーカリー生地は、ベーカリー生地の種類にもよるが、例えば食パン生地である場合は、本発明の効果がより好ましく得られるという観点から、本発明の油脂または油脂組成物(A)の含有量が、本発明のベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して0.5~15.0質量部であり、かつ、本発明の油脂または油脂組成物(A)1質量部に対して、本発明の油脂組成物(B)を0.25~4.00質量部含有することが好ましい。
本発明のベーカリー生地における本発明の油脂または油脂組成物(A)の含有量は、本発明のベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して1.0~12.5質量部であることがより好ましく、1.5~10.0質量部であることがさらに好ましい。
また、本発明のベーカリー生地は、本発明の油脂または油脂組成物(A)1質量部に対して、本発明の油脂組成物(B)を0.30~3.50質量部含有することがより好ましく、0.50~2.50質量部含有することがさらに好ましい。
さらに、本発明のベーカリー生地は、上記本発明の油脂または油脂組成物(A)の含有量、および上記本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)との含有割合を満たしたうえで、本発明の油脂組成物(B)の含有量が、本発明のベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して0.5~15.0質量部であることが好ましく、1.0~12.5質量部であることがより好ましく、1.5~10.0質量部であることがさらに好ましい。
本発明のベーカリー生地は、1種または2種以上の本発明の油脂または油脂組成物(A)を用いることができる。2種以上の本発明の油脂または油脂組成物(A)を用いた場合は、その合計量を、本発明のベーカリー生地における本発明の油脂または油脂組成物(A)の含有量とする。
また、本発明のベーカリー生地は、1種または2種以上の本発明の油脂組成物(B)を用いることができる。2種以上の本発明の油脂組成物(B)を用いた場合は、その合計量を、本発明のベーカリー生地における本発明の油脂組成物(B)の含有量とする。
なお、本発明の効果は、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とを併用することにより得られるものである。
そのため、もし、本発明の油脂組成物(B)中に本発明の油脂または油脂組成物(A)を含有していても、本発明の効果を得ることはできない。
従って、本発明の油脂組成物(B)中に本発明の油脂または油脂組成物(A)を含有している場合、その含有量は本発明の油脂または油脂組成物(A)の含有量として扱わず、全て本発明の油脂組成物(B)の含有量として扱うこととする。
本発明のベーカリー生地は、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)以外の油脂や油脂組成物を用いてもよい。
本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)以外の油脂や油脂組成物としては、例えば、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)以外の、食用油脂や、ショートニング、粉末油脂組成物、マーガリンやバター等の乳化脂などの油脂組成物が挙げられる。
本発明のベーカリー生地中の、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)以外の油脂や油脂組成物の含有量は、ベーカリー生地の種類にもよるが、例えば食パン生地である場合は、本発明のベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。なお、上記含有量の下限値は0質量部である。
本発明のベーカリー生地の油脂の含有量は、ベーカリー生地の種類にもよるが、例えば食パン生地である場合は、本発明のベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して1.0~30.0質量部であることが好ましく、2.0~25.0質量部であることがより好ましく、3.0~20.0質量部であることがさらに好ましい。
なお、本発明のベーカリー生地の油脂の含有量とは、本発明の油脂または油脂組成物(A)、本発明の油脂組成物(B)、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)以外の油脂や油脂組成物、後述する本発明のベーカリー生地のその他の原材料に含まれる油脂の合計量である。
また、本発明のベーカリー生地の油脂に占める、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)の含有量の合計値の割合は、0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。なお、上記割合の最大値は1である。
上記割合は、本発明のベーカリー生地の本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)の含有量の合計値を、本発明の油脂または油脂組成物(A)、本発明の油脂組成物(B)、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)以外の油脂や油脂組成物、後述する本発明のベーカリー生地のその他の原材料に含まれる油脂の合計値で除することにより求められる。
本発明のベーカリー生地は、本発明の油脂または油脂組成物(A)、本発明の油脂組成物(B)、澱粉類以外に、必要に応じて、一般的にベーカリー生地の原材料として用いられる、ベーカリー生地のその他の原材料を含有してもよい。
本発明のベーカリー生地のその他の原材料としては、例えば、水、イースト、イーストフード、乳化剤、糖類、糖アルコール、高甘味度甘味料、蛋白質類、増粘安定剤、酵素類、卵類、着色料、酸化防止剤、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、デキストリン、乳や乳製品、豆乳やアーモンドミルク等の植物乳やそれらを加工した製品、酒類、果実や果汁、食塩等の調味料、香辛料、香料、野菜類、肉類、魚介類、その他食品原料、食品添加物等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
上記水としては、例えば、水道水やミネラルウォーター等が挙げられる。また、本発明の油脂または油脂組成物(A)、本発明の油脂組成物(B)、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)以外の油脂組成物、並びに水以外の本発明のベーカリー生地のその他の原材料が水分を含む場合は、その水分も上記水に含むものとする。
本発明のベーカリー生地の水の含有量は、ベーカリー生地の種類にもよるが、例えば食パン生地である場合は、本発明のベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して30~150質量部であることが好ましく、40~120質量部であることがより好ましい。
本発明のベーカリー生地は、本発明のベーカリー生地のその他の原材料を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができるが、本発明のベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して合計200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましい。なお、上記含有量の下限値は0質量部である。
本発明のベーカリー生地は、通常のベーカリー生地と比較して、食塩の含有量を減じたベーカリー生地(以下、単に「減塩のベーカリー生地」とも記載する。)であってもよく、食塩を実質的に含有しないベーカリー生地(以下、単に「無塩のベーカリー生地」とも記載する。)であってもよい。なお、本発明における「食塩を実質的に含有しない」とは、食塩の含有量がベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して0.1質量部以下であることを指す。
本発明のベーカリー生地は、減塩または無塩のベーカリー生地であっても、本発明の効果を好ましく得ることができるが、減塩のベーカリー生地であることが好ましい。
本発明における、減塩のベーカリー生地は、ベーカリー生地の種類にもよるが、例えば、食パン生地の場合、食塩の含有量が、ベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して0.1質量部より大きく1.5質量部未満である。一方、通常の食パン生地の食塩の含有量は、ベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して1.5~3.0質量部である。
<<本発明のベーカリー生地の製造方法>>
本発明のベーカリー生地の製造方法は、以下の(条件A-1)および(条件A-2)を満たす油脂または油脂組成物(A)を添加する工程と、以下の(条件B-1)および(条件B-2)を満たす油脂組成物(B)を添加する工程とを有することを特徴とする。
(条件A-1):油脂が、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上である
(条件A-2):25℃における固体脂含量が5%以下である
(条件B-1):比重が0.87以下である
(条件B-2):25℃における固体脂含量が15~45%である
すなわち、本発明のベーカリー生地の製造方法においては、上記の油脂または油脂組成物(A)および上記の油脂組成物(B)は、ベーカリー生地またはその原材料に、事前に混合することなく別々のものとして添加される。
本発明のベーカリー生地の製造方法における、油脂または油脂組成物(A)、および油脂組成物(B)は上述の通りである。
本発明のベーカリー生地の製造方法における、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)を用いる方法は、従前知られた方法で行うことができ、例えば、ベーカリー生地に練り込んでもよく、折り込んでもよく、これらの方法を組み合わせてもよい。本発明のベーカリー生地においては、本発明の効果が好ましく得られるという観点から、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)をベーカリー生地に練り込むことが好ましい。
本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)は、澱粉類やベーカリー生地のその他の原材料に添加してもよく、澱粉類やベーカリー生地のその他の原材料を混合して生地の状態としたのちに添加してもよい。本発明においては、生地の状態としたのちに、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)を添加することが好ましい。
また、本発明の油脂または油脂組成物(A)を添加する工程と本発明の油脂組成物(B)を添加する工程の順番は特に制限されず、任意の順番で行うことができるが、本発明においては、得られるベーカリー製品のボリュームと食感がより良好なものとなり、ベーカリー製造時の作業性がより良好になるという観点から、本発明の油脂または油脂組成物(A)を添加する工程が、本発明の油脂組成物(B)を添加する工程より前にならないようにすることが好ましく、本発明の油脂または油脂組成物(A)を添加する工程、および本発明の油脂組成物(B)を添加する工程を同時に行うことがより好ましい。
これらの工程を同時に行う場合、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)とを直前に混合してからベーカリー生地等に添加してもよい。
本発明のベーカリー生地は、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)を用いていれば、従前知られた方法を用いて製造することができる。例えば、中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等の一般的なパン類の生地の製造方法や、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、溶かしバター法、別立て法、後粉法、後油法等の一般的な菓子類の生地の製造方法を適宜選択して製造することができる。
本発明の効果を得やすいという観点から、これらの中でも、中種法、直捏法、液種法、湯種法を用いて製造することが好ましく、中種法を用いて製造することがより好ましい。
なお、本発明のベーカリー生地の製造方法として中種法を選択した場合は、本発明の油脂または油脂組成物(A)と本発明の油脂組成物(B)は、中種生地に用いてもよく、本捏生地に用いてもよいが、本発明の効果が好ましく得られるという観点から、本捏生地に用いることが好ましい。
本発明のベーカリー生地の製造方法においては、必要に応じて、ベーカリー生地の製造工程において、任意のタイミングで、フロアタイム、分割、ベンチタイム、成形、ホイロ等の工程を行ってもよい。
また、得られた本発明のベーカリー生地を冷蔵保管や、冷凍保管してもよい。
なお、本発明における冷蔵保管とは0~10℃で保管することを指し、冷凍保管とは-20℃以上0℃未満で保管することを指す。
<ベーカリー製品>
本発明のベーカリー製品について述べる。
本発明のベーカリー製品は、本発明のベーカリー生地を加熱処理して得られる。
本発明のベーカリー製品は、風味が調和しており、ボリュームと食感が良好なものとなる。
また、本発明のベーカリー製品は、減塩または無塩のベーカリー製品であってもよい。
本発明における減塩のベーカリー製品とは、減塩のベーカリー生地を加熱処理して得られるものである。
また、本発明における無塩のベーカリー製品とは、無塩のベーカリー生地を加熱処理して得られるものである。
上記加熱処理としては、例えば、焼成、フライ、蒸し、蒸し焼き、電子レンジによる加熱等の、一般的に調理に用いられる加熱処理の方法が挙げられ、この中から選ばれた1種または2種以上を行うことができる。
また、上記加熱処理を行う条件は、加熱処理の種類や、得られるベーカリー製品の種類によっても異なるが、例えば、焼成の場合、160~260℃で5~40分が好ましく、180~240℃で8~35分がより好ましく、180~220℃で10~35分であることがさらに好ましい。
本発明のベーカリー製品は、加熱処理後に冷蔵保存したり、冷凍保存したりしてもよく、該保存後にさらに加熱処理してもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例により何ら制限されるものではない。
<エステル交換油脂の製造>
[製造例1:エステル交換油脂(1)]
構成脂肪酸残基中にラウリン酸残基を50質量%含有するパーム核油75質量部と、ヨウ素価が1のパーム極度硬化油25質量部とを混合した油脂配合物に対して、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して、エステル交換油脂(α)にあたる、構成脂肪酸残基中にラウリン酸残基を34.1質量%含有するエステル交換油脂(1)を得た。
[製造例2:エステル交換油脂(2)]
パーム油65質量部と、パーム極度硬化油35質量部とを混合した油脂配合物に対して、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して、エステル交換油脂(β)にあたる、構成脂肪酸残基中にラウリン酸残基を0.6質量%含有するエステル交換油脂(2)を得た。
[製造例3:エステル交換油脂(3)]
ヨウ素価が55のパームオレイン100質量部に対して、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して、エステル交換油脂(3)を得た。
[製造例4:エステル交換油脂(4)]
ヨウ素価が65のパームスーパーオレイン100質量部に対して、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して、エステル交換油脂(4)を得た。
<油脂組成物の製造>
表1の配合および後述の製造方法により、実施例・比較例に用いられる油脂組成物、および後述のコントロールの食パンに用いるショートニングを製造した。
[製造方法]
表1に示した油脂を加熱融解させて混合し、油脂混合物を得た。得られた油脂混合物を85℃で殺菌処理した後、油脂組成物(1)~(3)および(5)を製造するための油脂混合物は窒素ガスを吹き込みながら、-20℃/分の冷却温度で急冷可塑化し、油脂組成物(4)およびショートニングを製造するための油脂混合物は急冷可塑化のみを行い、本発明の油脂組成物(B)にあたる油脂組成物(1)~(3)と、油脂組成物(4)、(5)、およびショートニングを得た。
Figure 2023142249000001
<製パン試験・官能試験1>
表2の配合および後述の食パンの製法により、上記のショートニングを用いたコントロールの食パンと、実施例1、2および比較例1~3の食パンを製造した。
なお、オリーブ油は、酸価が2.0以下であるオリーブ油を使用し、25℃におけるSFCと15℃におけるSFCはともに0.1%であり、ヨウ素価は84であり、比重は0.92であった。オリーブ油の酸価は、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.3.1(2013)」に記載の方法で測定した。
[食パンの製法]
表2の中種生地の全原材料をミキサーボウルに投入し、フックを使用して、低速で2分間、中速で2分間混合して中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。次に、得られた中種生地を、28℃、相対湿度85%の恒温室で4時間発酵した。
発酵させた中種生地をミキサーボウルに投入し、ここにオリーブ油、油脂組成物(1)~(5)、ショートニング以外の本捏生地の原材料を加え、フックを使用して、低速で3分間、中速で3分間ミキシングした。ここで、本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油、本発明の油脂組成物(B)にあたる油脂組成物(1)~(3)、その他の原材料にあたる油脂組成物(4)、(5)、およびショートニングを投入し、さらに低速で3分間、中速で4分間ミキシングし、食パン生地を得た。捏ね上げ温度は28℃であった。
続いて、フロアタイムを20分間とり、390gに分割して丸めを行った。次に、ベンチタイムを20分間とったあとに、モルダー成形を使用してワンローフ成形し、ワンローフ型にいれ、38℃、相対湿度80%で40分間ホイロをとった。その後、200℃に設定したオーブンで30分間焼成し、コントロールの食パンと、実施例1、2および比較例1~3の食パンを得た。
Figure 2023142249000002
[評価方法]
実施例1、2および比較例1~3の食パン生地製造時の作業性、および食パンの外観を、後述の評価基準に沿って評価した。
また、実施例1、2および比較例1~3の食パンを5人の熟練したパネラーが試食し、それぞれの風味がコントロールの食パンの風味と比較してどうであったかと、食感とについて後述の評価基準に沿って採点した。その合計点により実施例1、2および比較例1~3の食パンの風味と食感をそれぞれ評価した。すべての評価において、○以上の評価を得たものを合格とした。
なお、評価基準については、あらかじめ全パネラー間で尺度をすり合わせており、パネラー間で評価基準に差が出ないようにしている。
(食パン生地製造時の作業性の評価基準)
◎:ベーカリー生地がちぎれず、全くべたつかなかった。
○:ベーカリー生地がちぎれず、少しべたつくが問題ない程度であった。
△:ベーカリー生地がちぎれてしまい、または、ベーカリー生地がべたついてしまい、作業性が悪かった。
×:ベーカリー生地が非常にちぎれてまとまらない、または、ベーカリー生地が非常にべたついてしまい、作業性が非常に悪かった。
(食パンの外観の評価基準)
◎:非常に嵩があってボリュームの大きい、非常に良好な外観であった。
○:嵩があってボリュームの大きい、良好な外観であった。
△:ボリュームがやや小さい、劣った外観であった。
×:ボリュームのない、非常に劣った外観であった。
(食パンの風味の評価基準)
5点:風味調和効果が極めて高く、コントロールの食パンと比較して非常に良好な風味であった。
4点:風味調和効果が高く、コントロールの食パンと比較して良好な風味であった。
3点:コントロールの食パンと同等の風味であった。
2点:風味調和効果が低く、コントロールの食パンと比較してやや劣った風味であった。
1点:風味調和効果が極めて低く、コントロールの食パンと比較して劣った風味であった。
(食パンの食感の評価基準)
5点:非常にソフトで、良好な食感であった。
4点:ソフトで良好な食感であった。
3点:少しくちゃつくが問題ない程度であった。
2点:ややくちゃつき、劣った食感であった。
1点:非常にくちゃつき、非常に劣った食感であった。
(食パンの風味および食感の評価)
◎:合計点が23~25点である。
○:合計点が18~22点である。
△:合計点が13~17点である。
×:合計点が12点以下である。
製パン試験・官能試験1の結果を表3に示した。
本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油と、本発明の油脂組成物(B)とを併用して製造した実施例1、2は、食パン生地製造時の作業性が良好であり、食パンのボリュームと食感も良好であった。また、風味調和効果が極めて高く、コントロールの食パンと比較して非常に良好な風味であった。
他方、本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油を含有せず、本発明の油脂組成物(B)にあたる油脂組成物(3)のみを用いた比較例1は、食パン生地製造時の作業性、食パンのボリュームと食感は問題なかったが、コントロールの食パンと同等の風味しか得られなかった。このことから、本発明の油脂組成物(B)中に本発明の油脂または油脂組成物(A)を含有していても、本発明の効果が得られないことが明らかとなった。
また、本発明の油脂組成物(B)の代わりに、比重が高い油脂組成物(4)を用いた比較例2の食パンは、風味調和効果が高く、コントロールの食パンよりも良好な風味を有していたが、オリーブ油と油脂組成物(4)が食パン生地に含有されにくく、食パンの外観と食感が劣ったものになっていた。
25℃のSFCが低い油脂組成物(5)を用いた比較例3の食パンも、風味調和効果が高く、コントロールの食パンよりも良好な風味を有していたが、食パン生地の捏ね上げ時に油脂組成物(5)が適度な硬さを持たないため、オリーブ油に溶け込んでしまい、食パン生地がべたついたり、ちぎれたりして、作業性が非常に悪かった。また、食パンの外観と食感も劣ったものになっていた。
Figure 2023142249000003
<製パン試験・官能試験2>
製パン試験・官能試験1で製造した食パンの配合を、表4の配合に変えた以外は、製パン試験・官能試験1と同様の製法により、実施例1、3~5および比較例4の食パンを製造した。
実施例1、3~5および比較例4の食パン生地製造時の作業性、および食パンの外観、風味、食感を、上記製パン試験・官能試験1と同様の方法、評価基準で評価した。
なお、大豆油の25℃におけるSFCと15℃におけるSFCはともに0.1%であり、ヨウ素価は131であった。菜種油の25℃におけるSFCと15℃におけるSFCはともに0.2%であり、ヨウ素価は118であった。米油の25℃におけるSFCと15℃におけるSFCはともに0.1%であり、ヨウ素価は106であった。パーム油の25℃におけるSFCは15.2%、15℃におけるSFCは35.2%であり、ヨウ素価は51であった。
また、大豆油、菜種油、米油の比重は0.92であり、パーム油の比重は0.90であった。
Figure 2023142249000004
製パン試験・官能試験2の結果を表5に示した。
本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油、大豆油、菜種油、米油をそれぞれ1種ずつと、本発明の油脂組成物(B)にあたる油脂組成物(1)とを併用して製造した実施例1および3~5は、食パン生地製造時の作業性が良好であり、食パンのボリュームと食感も良好であった。また、風味調和効果が高く、コントロールの食パンよりも良好な風味を有していた。
特に、本発明の油脂または油脂組成物(A)としてオリーブ油を用いた実施例1の食パンは、風味調和効果が極めて大きく、非常に良好な風味であった。
他方、本発明の油脂または油脂組成物(A)の代わりにパーム油を用いた比較例4は、食パン生地製造時の作業性や、食パンのボリュームと食感は問題ない程度であったが、コントロールの食パンと同等の風味調和効果しか得られなかった。
また、パネラーが、コントロールの食パンを、小皿に取った本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油に少量付けて食したが、実施例1の食パンのような風味調和効果は得られず、コントロールの食パンよりも劣った風味であった。このことから、本発明の効果を得るには、本発明の油脂または油脂組成物(A)をベーカリー生地中に含有させる必要があることが明らかになった。
Figure 2023142249000005
<製パン試験・官能試験3>
製パン試験・官能試験1で製造した食パンの配合を、表6の配合に変えた以外は、製パン試験・官能試験1と同様の製法により、実施例1、6~9および比較例5、6の食パンを製造した。
実施例1、6~9および比較例5、6の食パン生地製造時の作業性、および食パンの外観、風味、食感を、上記製パン試験・官能試験1と同様の方法、評価基準で評価した。
Figure 2023142249000006
製パン試験・官能試験3の結果を表7に示した。
食パン生地中の、本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油の含有量と本発明の油脂組成物(B)にあたる油脂組成物(1)の含有量との割合を変えた実施例1および6~9は、全て食パン生地製造時の作業性が良好であり、食パンのボリュームと食感も良好であった。また、風味調和効果が高く、コントロールの食パンよりも良好な風味を有していた。
これらの中でも、本発明の油脂または油脂組成物(A)の含有量に対して、本発明の油脂組成物(B)の含有量が低い実施例6、7においては、食パン生地製造時の作業性、および食パンのボリュームと食感を良好にする効果と比較して、風味調和効果の方が大きい傾向が見られた。また、本発明の油脂組成物(B)の含有量が高い実施例8、9においては、風味調和効果と比較して、食パン生地製造時の作業性、および食パンのボリュームと食感を良好なものとする効果の方が大きい傾向が見られた。
他方、本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油のみを用いた比較例5は、風味調和効果は高かったが、食パン生地がべたつき、ちぎれてしまって、食パン生地製造時の作業性が非常に悪かった。また、食パンの目が詰まっており、ボリュームと食感も非常に悪かった。
本発明の油脂組成物(B)にあたる油脂組成物(1)のみを用いた比較例6は、食パン生地製造時の作業性、食パンの外観と食感は良好であったが、コントロールの食パンと同等の風味調和効果しか得られなかった。
Figure 2023142249000007
<減塩の食パンの製パン試験・官能試験>
製パン試験・官能試験1で製造した食パンの配合を、表8の配合に変えた以外は、製パン試験・官能試験1と同様の製法により、通常の食塩の含有量であるコントロールの食パンと、コントロールの食パンよりも食塩の含有量が少ない、実施例10および比較例7、8の減塩の食パンを製造した。なお、比較例7は、従来の減塩の食パンにあたる例である。
実施例10および比較例7、8の減塩の食パン生地製造時の作業性、および減塩の食パンの外観、食感を、上記製パン試験・官能試験1と同様の方法、評価基準で評価した。
減塩の食パンの風味については、通常の食塩の含有量であるコントロールの食パンの風味と比較してどうであったか、5人の熟練したパネラーが後述の評価基準に沿って採点し、その合計点により減塩の食パンの風味を評価した。なお、評価基準については、あらかじめ全パネラー間で尺度をすり合わせており、パネラー間で評価基準に差が出ないようにしている。
Figure 2023142249000008
(減塩の食パンの風味の評価基準)
5点:風味調和効果が極めて高く、コントロールの食パンと比較して良好な風味であった。
4点:風味調和効果が得られ、コントロールの食パンと遜色ない風味であった。
3点:風味調和効果がやや低く、コントロールの食パンと比較して少し劣った風味であるが、問題ない程度であった。
2点:風味調和効果が低く、異味がやや感じられ、コントロールの食パンと比較してやや劣った風味であった。
1点:風味調和効果が極めて低く、異味が強く感じられ、コントロールの食パンと比較して劣った風味であった。
(減塩の食パンの風味評価)
◎:合計点が23~25点である。
○:合計点が18~22点である。
△:合計点が13~17点である。
×:合計点が12点以下である。
製パン試験・官能試験4の結果を表9に示した。
減塩の食パンにおいても、本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油と、本発明の油脂組成物(B)にあたる油脂組成物(1)を併用して製造した実施例10は、減塩の食パン生地製造時の作業性と、減塩の食パンの外観と食感も良好であった。そして、風味調和効果が得られ、通常の減塩の食パンで生じやすい異味もなく、コントロールの食パンと遜色ない良好な風味を有していた。
他方、本発明の油脂または油脂組成物(A)および本発明の油脂組成物(B)を用いずに、ショートニングを用いた、従来の減塩の食パンにあたる比較例7は、食塩の含有量が低いため、異味が感じられて、風味調和効果も低く、コントロールの食パンと比較して風味が劣っていた。
本発明の油脂または油脂組成物(A)にあたるオリーブ油の代わりにパーム油を用いた比較例8は、減塩の食パン生地製造時の作業性と、減塩の食パンのボリュームと食感は良好であったが、風味調和効果が低く、異味が感じられて、コントロールの食パンと比較して劣った風味であった。
Figure 2023142249000009

Claims (6)

  1. 以下の(条件A-1)および(条件A-2)を満たす油脂または油脂組成物(A)と、以下の(条件B-1)および(条件B-2)を満たす油脂組成物(B)とを含む、ベーカリー生地。
    (条件A-1):含まれる油脂が、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上である
    (条件A-2):25℃における固体脂含量が5%以下である
    (条件B-1):比重が0.87以下である
    (条件B-2):25℃における固体脂含量が15~45%である
  2. 油脂または油脂組成物(A)の含有量が、ベーカリー生地中の澱粉類100質量部に対して0.5~15.0質量部であり、かつ、油脂または油脂組成物(A)1質量部に対して、油脂組成物(B)を0.25~4.00質量部含有する、請求項1に記載のベーカリー生地。
  3. 油脂組成物(B)が、さらに以下の(条件B-3)を満たす、請求項1または請求項2に記載のベーカリー生地。
    (条件B-3):15℃における固体脂含量が25~55%である
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載のベーカリー生地を加熱処理してなる、ベーカリー製品。
  5. 減塩または無塩のベーカリー製品である、請求項4に記載のベーカリー製品。
  6. 以下の(条件A-1)および(条件A-2)を満たす油脂または油脂組成物(A)を添加する工程と、以下の(条件B-1)および(条件B-2)を満たす油脂組成物(B)を添加する工程とを有する、ベーカリー生地の製造方法。
    (条件A-1):油脂が、菜種油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、ごま油、コーン油、米油、綿実油、ならびにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上である
    (条件A-2):25℃における固体脂含量が5%以下である
    (条件B-1):比重が0.87以下である
    (条件B-2):25℃における固体脂含量が15~45%である

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