以下に、本発明の農作業機の一例である施肥装置を装着した乗用型田植機について図面を参照しながら詳細に説明する。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
図1は、実施形態に係る農作業機としての乗用型田植機を示す斜視図、図2は、同乗用型田植機を示す正面図である。なお、以下においては、乗用型田植機を8条植としており、乗用型田植機を指して機体と記す場合がある。また、実施形態中、前後、左右の方向を規定するに際し、運転席31からみて走行車体2の走行方向を基準とする。
図1および図2に示すように、乗用型田植機は、走行車体2の後側に昇降リンク機構を介して作業部としての苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側には施肥装置100の本体部分が設けられる。なお、苗植付部4は作業装置の一例であり、図示するような肥沃度センサ700を有し、施肥作業を行うことのできる農作業機であればよい。例えば、農作業機としては、種子を供給する播種装置や、圃場を耕耘する耕耘ロータリを作業装置として備えるものでも構わない。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10および左右一対の後輪11を走行輪として備える四輪駆動車両である。機体の前部にはミッションケースが配置され、そのミッションケースの左右側方に、走行伝動ケースとしての前輪ファイナルケース13が設けられる。そして、かかる左右の前輪ファイナルケース13からそれぞれ外向きに突出する左右の前車軸に前輪10がそれぞれ取り付けられている。
また、走行車体2の前側左右両側で、かつ左右予備苗枠38よりも機体後側に、圃場に次工程の直進の目安となるガイド線を形成する左右線引マーカ16が各々設けられる。
左右線引マーカ16は、圃場に接触する水車マーカ16aと、水車マーカ16aを装着するガイドロッド16bと、ガイドロッド16bを機体外側および内側に回動させるマーカ回動モータ16cで構成されている。
左右線引マーカ16は、マーカ回動モータ16cの作動にて植付作業中は左右一側が下降して作業状態になると左右他側が上方に退避し、旋回走行すると左右一側が上方に退避し、左右他側が作業状態になる。旋回時や植付作業をしていないときは、左右線引マーカ16のいずれも上方に退避した状態になる。左右線引マーカ16が形成したガイド線に、走行車体2の前端部でかつ左右中央に設ける、センターマスコット17を合わせることで、前の作業位置に沿った植付作業を行なうことができるので、作業能率や植付精度が向上する。
なお、圃場の土質によっては、左右線引マーカ16により形成したガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このとき、左右線引マーカ16よりも機体後側に設ける左右のサイドマーカ19を機体外側方向に移動させ、植え付けられた苗の上方に該サイドマーカ19を位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能になる。
そして、特に、左右線引マーカ16には、各々左右肥沃度センサ700が設けられている。
肥沃度センサ700は、線引マーカ16のガイドロッド16bに基部が着脱自在に固定されたバネ材等の弾性体よりなる一対の電極棒701より構成される。なお、一対の電極棒701は、表面が電気を通さない物質で被覆され、先端部のみが電極が露出した構成となっている。
肥沃度センサ700の一対の電極棒701に電気を流すと、一対の電極棒701先端の電極間の土壌(泥土)に含有される肥料濃度によって電気抵抗が変化するので、電気抵抗の変化がその地点の肥料濃度の信号として後述するコントローラ210(図4)へ送られる。なお、電気抵抗は、肥料濃度が高い、即ち電解質が多い状態では電気が流れやすいので低くなり、肥料濃度が低い、即ち電解質が少ない状態では電気が流れにくいので高くなる。
図3に示すように、肥沃度センサ700の一対の電極棒701先端の電極は、左右線引マーカ16の何れかがマーカ回動モータ16cにて下降されて接地した作用状態になると、圃場の土壌(泥土)中に突入して上記のように土壌(泥土)の肥沃度を測定するが、一対の電極棒701がバネ材等の弾性体にて形成され先端側ほど進行方向後方に位置する弧状に構成されているので、圃場の土壌(泥土)の硬さに追従し且つ土壌(泥土)を弾性力で押さえつけるように適切に先端電極が土壌(泥土)に突入して適正な肥沃度の測定が行える。
また、肥沃度センサ700は、左右線引マーカ16に設けられているので、左右線引マーカ16のうちで非作業状態の方は、圃場から離れた上方に退避しており、従って、左右線引マーカ16も非作業状態のものは必然的に圃場から退避した状態となり、常時(土壌)泥土中に突入しおらず摩耗を防ぐことができる。
また、肥沃度センサ700は、一対の電極棒701が線引マーカ16のガイドロッド16bに基部が着脱自在に固定されているので、摩耗した時には容易に交換でき、メンテナンス性が良い。
また、肥沃度センサ700は、一対の電極棒701とハーネスで構成でき、安価に肥沃度を測定できる。
また、肥沃度センサ700は左右線引マーカ16に設けられているので、次工程の土壌(泥土)の肥沃度を前もって測定でき、コントローラ210が該測定した次工程の肥沃度を記憶して次工程で施肥量調節装置としての施肥量調節モータ400を制御して肥沃度に応じて施肥量を自動調節する。
即ち、図9に示すように、コントローラ210は、後述のGPS制御装置120で乗用型田植機の位置情報を取得し、受信アンテナ710と次工程の土壌(泥土)の肥沃度を測定する左右肥沃度センサ700の距離を勘案して、該次工程の肥沃度センサ700が検出した土壌(泥土)の肥沃度とその位置情報を順次記憶する。
そして、コントローラ210は、次工程においてGPS制御装置120で乗用型田植機の位置情報を取得し、受信アンテナ710と圃場中に施肥する施肥ガイドの距離を勘案して算出した施肥ガイドの位置に対応する記憶している肥沃度に応じて施肥量調節装置としての施肥量調節モータ400を制御して施肥量を自動調節する。
よって、正確なタイミングで肥沃度に応じた施肥制御が適切に行える。
なお、施肥量を自動調節する手法は、圃場で田植作業及び施肥作業を開始する準備段階として、図10に示すように、左右線引マーカ16を左右両方下降して作業状態として圃場の対角線を走行して左右肥沃度センサ700にて肥沃度を測定し、コントローラ210はその平均値を圃場の基準肥沃度と記憶する。
そして、田植作業及び施肥作業を開始して、上記のように施肥量調節装置としての施肥量調節モータ400を制御して施肥量を自動調節するが、基準肥沃度とその位置の測定した肥沃度が同じであれば施肥量は標準量に調節し、基準肥沃度よりもその位置の測定した肥沃度が低いと標準量よりも多い施肥量に調節し(測定した肥沃度が標準量よりも低い程度に対応して多く施肥量を調節して圃場全体の肥沃度が均一になるようにする)、基準肥沃度よりもその位置の測定した肥沃度が高いと標準量よりも少ない施肥量に調節する(測定した肥沃度が標準量よりも高い程度に対応して少なく施肥量を調節して圃場全体の肥沃度が均一になるようにする)。
また、圃場の最初の工程では肥沃度が測定されていないので、左右線引マーカ16を左右両方下降して作業状態とし、機体を作業しながら進行させて左右肥沃度センサ700の測定する平均値を当該位置の肥沃度として施肥量調節モータ400を制御して施肥量を自動調節する。
図1および図2に戻って説明を続ける。ミッションケースの背面部には、メインフレームの前端部が固着されており、メインフレームの後部の左右両側には後輪ギアケース18が設けられ、後輪ギアケース18からそれぞれ外向きに突出する左右の後車軸に後輪11が各々取り付けられている。
また、メインフレームの上にはエンジン20が搭載される。かかるエンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置および油圧無段変速装置(HST)を介してミッションケースに伝達される。ミッションケースに伝達された回転動力は、ミッションケース内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
ミッションケースに伝達された回転動力から分離して取り出される外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケースに伝達される。そして、かかる植付クラッチケースから植付伝動軸によって苗植付部4へ伝達される。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置される。運転席31の前方には各種操作機構を備えるボンネット32が設けられ、その上部に前輪10を操舵する操縦ハンドル34が設けられる。
また、ボンネット32には、走行車体2の走行伝動を圃場内で作業をする際の「作業速」と、路上を移動する際の「移動速」に切り替える副変速切替レバーが設けられている。
機体の前端部で左右中央位置に基部が固定されたフロントマスト33の上部には、GPS制御装置120を構成するGPS受信アンテナ(単に受信アンテナと記す場合がある)710が搭載されている。受信アンテナ710の受信信号はコントローラ210へ送られる(図4参照)。
かかるコントローラ210は、施肥装置100の動作等を制御する制御装置であり、ボンネット32の内部に収納される。なお、コントローラ210は、例えばCPU、ROMおよびRAMを有し、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、乗用型田植機の各部を制御する。
エンジンカバー30およびボンネット32の下部における左右両側は、略水平なフロアステップ35が形成されている。フロアステップ35は、一部格子状になっており、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
走行車体2の後部に連結される苗植付部4を昇降させる昇降リンク機構は、平行リンク構成であって、1本の上リンクと左右一対の下リンクを備える。上リンクおよび下リンクは、それらの基部側がメインフレームの後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレームに回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンクが連結されている。そして、縦リンクの下端部に、苗植付部4に回転自在に支承された連結軸が挿入連結され、連結軸を中心として苗植付部4がローリング自在に連結される。
メインフレームに設けたシリンダ支持部材(不図示)と上リンクに一体形成したスイングアーム(不図示)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられる。かかる昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンクが上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢を保持したまま昇降する。
苗植付部4は、前述したように8条植の構成であり、フレームを兼ねる植付伝動ケースと、苗載せ台51と、植付装置等を備えている。苗載せ台51は、マット苗(図示省略)を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口に供給するとともに、横一列分の苗を全て苗取出口に供給すると、苗送りベルト51aにより苗を下方に移送する。植付装置は、苗取出口に供給された苗を苗植付具によって圃場に植付ける。なお、苗植付具は、1条に付き2つ設けられ、回転ケースに装着されて交互に苗を取って圃場に植え付けることができる。
また、苗植付部4の下部には、中央のセンターフロートと、左右のサイドフロートが各々回動可能に設けられる。これらフロートを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロートが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に植付装置により苗が植え付けられる。
センターフロートには、圃場深さの変化によるセンターフロートの回動量を検出するフロートセンサ58が設けられる(図4)。かかるフロートセンサ58が角度変化を検出すると、コントローラ210は、圃場の深さが変化したと判断し、検出された角度に合わせて苗植付部4の高さが適切な高さとなるように昇降油圧シリンダ46を伸縮させ、苗植付部4の作業高さを自動的に調節する。
なお、フロートセンサ58の検出値は、センターフロートが圃場面に略水平姿勢で接地するときを0度としている。そして、検出値が仰角方向(上方)であるときは、コントローラ210は、圃場深さが浅くなり、苗植付部4と圃場面の間隔が狭くなったと判断し、昇降油圧シリンダ46を収縮させて苗植付部4を上昇させ、苗の植付深さが深くなり過ぎることを防止する。一方、検出値が俯角方向(下方)であるときは、コントローラ210は、圃場深さが深くなり、苗植付部4と圃場面の間隔が広くなったと判断し、昇降油圧シリンダ46を伸張させて苗植付部4を下降させ、苗の植付深さが浅くなり過ぎることを防止する。
次に、施肥装置100について説明する。図5は、施肥装置100と後輪ギアケース18間の施肥伝動機構を示す概略正面図、図6は、施肥装置100の繰出部の断面視による説明図、図7は、施肥装置100の平面視による説明図である。図1、図2および図5~図7に示すように、施肥装置100は、左側肥料ホッパ60Lと、右側肥料ホッパ60Rとに一定の隙間を空けて分離された肥料ホッパと、繰出部61と、施肥ホース62と、施肥ガイドと、エアダクト68とを備える。
左右側肥料ホッパ60L,60Rは、それぞれ4条分が共用であり、上部に開閉可能な蓋60aが取り付けられる。左右側肥料ホッパ60L,60Rの下部は施肥条数分(4条分)に分岐して漏斗状の流下部60bを形成しており、この流下部60bの下部が各繰出部61の上端に接続される。また、流下部60bの下方と繰出部61の間には、枠形状のシャッタケース80が各条に設けられ、かかるシャッタケース80の前後に形成された左右方向に長く上下方向に短いシャッタ穴に、板形状の施肥シャッタ81が摺動自在に設けられる。
肥料を施肥ホース62に移動させる搬送風が通過するエアダクト68の左端部はエア切替管(図示省略)を介して、ブロア用電動モータ66で駆動するブロア67に接続されている。そして、ブロア67からのエアがエアダクト68を経由し接続管から繰出部61の吐出口61aを通過する際に、肥料を巻き込みながら施肥ホース62側に吹き込まれる構成としている。
そして、肥料ホッパ60L,60Rに貯留されている粒状の肥料を、各苗植付条毎に設けられている繰出部61によって一定量ずつ繰り出すようにしている。繰り出した肥料は、施肥ホース62でセンターフロート、サイドフロートおよびアウタフロートの左右両側に取り付けた施肥ガイドまで導かれる。そして、施肥ガイドの前側に設けた作溝体により、苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むことができる。
繰出部61は、図6に示すように、例えば右側肥料ホッパ60R(あるいは左側肥料ホッパ60L)に収容された肥料を下方に繰り出す2個の第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bを内蔵している。第1および第2繰出ロール73A,73Bは、外周部に溝状の凹部74が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転する構成で嵌合する。
そして、第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bが、図6の矢印方向に回転することにより、左側肥料ホッパ60L(又は、右側肥料ホッパ60R)から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bにより繰り出された肥料は、下端の吐出口61aから吐出される。繰出部61の吐出口61aには、前端部がエアダクト68の背面部に前後方向に挿入連結されて、後端部が繰出部61の吐出口61aに連通する接続管(図示省略)が接続される。
また、図6に示すように、繰出部61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bの外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、第1繰出ロール73Aおよび第2繰出ロール73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
そして、図5に示すように、施肥伝動駆動ロッド462から駆動力の伝達方向を機体前後方向に変更する中継ロッド463を左右方向に配置する。また、施肥伝動駆動ロッド462と中継ロッド463の間には、施肥伝動駆動ロッド462の上下動に連動して連結支点ピン464aを支点として前後両端部が上下方向に揺動する連結プレート464を配置するとともに、中継ロッド463の他端部に駆動力を後述する繰出回動アーム467(図7)に伝達するサブ駆動ロッド465を配置することにより、施肥伝動機構300が構成される。
また、同じく図5に示すように、左側肥料ホッパ60Lの左右方向の中央部付近の下方には、施肥量調節装置として、正逆自在に高速回転する施肥量調節モータ400が配置されている。かかる施肥量調節モータ400は、図7に示すように、エンジン20の周囲を覆うエンジンカバー30の左側後方に間隔を空けて配置される。
このように、施肥量調節モータ400を、左側肥料ホッパ60Lの左右方向中央部付近の下方に配置したことにより、施肥量調節モータ400が左右側肥料ホッパ60L,60Rへの肥料の補給等の作業に干渉しない配置となるので、作業能率が向上する。また、左右側肥料ホッパ60L,60Rの前後方向の回動を規制しないので、肥料の排出時等に左右側肥料ホッパ60L,60Rを後方傾斜させて、残留している肥料を速やかに排出させることが妨げられることもない。
また、後輪ギアケース18の機体内側で、かつ後車軸よりも機体前側には、施肥装置100の施肥伝動機構300へ伝動する施肥伝動出力軸461と、この施肥伝動出力軸461への伝動を入切する施肥クラッチ機構460が設けられる。
後輪ギアケース18に設ける施肥伝動出力軸461から施肥伝動機構300に伝動することにより、後輪11への駆動力を用いて施肥装置100を作動させることができるので、施肥装置100への伝動経路を別に構成する必要がなく、部品点数の削減や構造の簡潔化が図られる。
ところで、図7及び図8に示すように、施肥量調節モータ400は、モータケース400aに周囲を覆われており、モータケース400aの上端面を施肥シャッタ81よりも機体下側に位置させて、右側肥料ホッパ60Rの左右方向の中央部付近に配置している。具体的には、機体右端から数えて2条目と3条目の繰出部61,61、および流下部60b,60bの左右間に生じている空間部に配置するものとする。また、施肥量調節モータ400には、ボールネジ420を回転可能に設け、このボールネジ420の表面に形成された螺旋形状の溝に螺合して高速で機体前後方向に移動するボールナット430を設けている。そして、ボールナット430に繰出回動ピン469を設ける。
さらに、繰出回動ピン469は、ボールナット430の上下方向中央部よりも機体上側寄りに配置し、側面視でボールネジ420とオフセットするとともに、ボールネジ420よりも上方に位置する構成とする。
かかる構成により、施肥量調節モータ400が施肥シャッタ81の開閉操作を妨げないので、施肥シャッタ81を作業状態に合わせて操作する際に部品の着脱等の作業を必要としないので、作業能率が向上する。
ここで、図8に基づいて、施肥量調節モータ400部の詳細構成を説明する。
施肥量調節モータ400は、左側肥料ホッパ60Lの上記位置に固定されたモータステー410に取付けられている。
施肥量調節モータ400のモータ駆動軸に設けた駆動ギヤ400bは、中間軸400cに設けた中間従動ギヤ400dに噛合し、中間軸400cには増速ギヤ400eが設けられている。
上記ボールネジ420を駆動回転する同一軸心で連結して設けた調節駆動軸420aに調節従動ギヤ420bを設けて、上記増速ギヤ400eに噛合させている。
従って、施肥量調節モータ400は、モータ駆動軸に設けた駆動ギヤ400b、中間従動ギヤ400d、中間軸400c、増速ギヤ400e、調節従動ギヤ420b及び調節駆動軸420aを介してボールネジ420を正逆駆動回転する。
上記施肥量調節モータ400を取付けたモータステー410には、回転センサ400fが設けられている。
回転センサ400fの検出軸400gには、シザーズギヤであるセンサギヤ400hが設けられ、中間軸400cに設けた中間従動ギヤ400dに噛合している。
回転センサ400fは、施肥量調節モータ400の回転数及び回転角度を検出する。
回転センサ400fは、回転数及び回転角度の検出値をコントローラ210(図4)に送る。コントローラ210は、該回転数及び回転角度の検出値からボールネジ420の回転数及び回転角度を計算し、施肥量を計算する。
従って、回転センサ400fは、施肥量調節モータ400を取付けたモータステー410に取付けられているので、各部品の軸間等の制度が向上し正確な施肥量調節モータ400の回転数及び回転角度が検出でき、換言すると、正確な施肥量を検出できる。
更に、センサギヤ400hは、正回転でも逆回転でもバックラッシュの影響がないシザーズギヤを用いたので、正確な施肥量調節モータ400の回転数及び回転角度が検出でき、換言すると、正確な施肥量を検出できる。
また、施肥量調節モータ400を取付けたモータステー410は、ボールネジ420を設けたステーに取付けている。従って、ボールネジ420の軸心と施肥量調節モータ400の駆動伝達系の軸心の同心度を向上せることができ、施肥量調節モータ400の駆動負荷の低減、施肥量調節スピードの向上を図ることができる。
図7に示すように、左右側肥料ホッパ60L,60Rの後側下部には、排出通路から排出された肥料を機体側方の排出口79aに移動させる排出ダクト79が左右方向に配置される。排出ダクト79の一側端部はブロア67に接続されており、前述の作業切替レバーを施肥側に操作するとエアダクト68に搬送風が吹き込まれ、排出側に操作すると排出ダクト79に搬送風が吹き込まれる。
かかる構成により、作業切替レバーを排出側に操作して各条の切替シャッタを開くと、肥料が各排出通路を通じて排出ダクト79に移動し、排出ダクト79内に吹き込む搬送風により肥料が排出口79aに運ばれて排出される。なお、排出口79aには回収用の袋やバケツを臨ませておくが、吹き出される肥料の拡散を抑えるために、細かい網目の排出ホースなどを設けておくと、肥料の散らばりが防止され、肥料の回収量が増加する。
次に、乗用型田植機の制御系について説明する。図4は、コントローラ210を中心としたブロック図である。コントローラ210は、CPU等を有する処理部、ROMやRAM等の記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、乗用型田植機を制御するコンピュータプログラムが格納される。例えば、コントローラ210は、肥沃度センサ700により取得した圃場の肥料濃度に基づいて、施肥量を自動調節することができる。
図示するように、コントローラ210には、モータ等のアクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が接続される。例えば、コントローラ210には、アクチュエータ類として、施肥量を調節するための施肥量調節モータ400、エンジン20の吸気量を調節するスロットル(図示省略)を作動させることにより、エンジン20の回転数を増減させるスロットルモータ201、線引きマーカ16を作動させるマーカ回動モータ16c、さらには苗植付部4を昇降させる昇降油圧シリンダ46などが接続される。
また、コントローラ210に接続されるセンサ類としては、肥沃度センサ700、回転センサ400f、深度センサ720、フロートセンサ58、および傾斜センサ830などが接続される。
肥沃度センサ700は、前述したように、左右線引マーカ16に設けられた一対の電極棒701により構成され、圃場の肥料濃度を検出する。回転センサ400fは、施肥量調節モータ400の回転数及び回転角度を検出する。深度センサ720は、圃場の深さを測定する。フロートセンサ58は、センターフロート前部の回動量を検出する。傾斜センサ830は、機体の左右傾斜を検出する。
図1および図2に示すように、深度センサ720は、機体前端部左右中央位置に設けられた超音波センサであり、超音波の反射により水面、または土壌表面までの深さを測定する。なお、深度センサ720は、圃場水面からの反射波を検出しているため、水面が高いほど反射時間は短くなり、コントローラ210は深度が「深い」と判定する。
なお、深度センサ720の深さ検出値は、コントローラ210が傾斜センサ830による機体の左右傾斜検出角度Aにより深さを補正する。
深度センサ720は、機体前端部左右中央位置に設けられているので、1個のみで正確な深さ検出が行えて、安価な構成となる。
畦際(枕地)の作業(植付作業及び施肥作業)では、畦際(枕地)以外の圃場は既に作業が終了して苗が植付けられているので、左右線引マーカ16を作業位置にすることができない。即ち、左右線引マーカ16に取付けられた肥沃度センサ700で肥沃度の検出ができない。
そこで、畦際(枕地)の作業(植付作業及び施肥作業)では、コントローラ210が深度センサ720による圃場深さの検出に基づいて施肥量調節モータ400を制御して施肥量調節を行う。なお、畦際(枕地)は耕盤が深く、深度センサ720による圃場深さの検出に基づく施肥量調節で問題はない。
また、乗用型田植機は、それぞれコントローラ210に接続されるGPS制御装置120およびタブレット端末などの情報記憶端末130を備える。
GPS制御装置120は、GPSを用いることにより地球上における乗用型田植機の位置情報、あるいは座標情報を取得することができ、GPS制御装置120で取得した位置情報は、コントローラ210に伝達することができる。GPS制御装置120は、このようにGPSを用いることにより乗用型田植機の位置情報を取得するため、GPSで使用される人工衛星からの信号を受信する受信アンテナ710を有する(図1および図2を参照)。
情報記憶端末130は、情報を表示する表示部と、各種の入力操作を行う入力操作部と、情報を記憶する記憶部とを有する。このうち、表示部と入力操作部とは、別体で構成されていてもよく、タッチパネル式のディスプレイによって一体で構成されていてもよい。なお、情報記憶端末130は、例えば、走行車体2の操縦座席31の近くに着脱自在に取付可能に構成するとよい。
なお、情報記憶端末130の記憶部は、一つまたは複数の圃場の位置情報、及び圃場での以前の作業時における位置情報から導出した所定個所の地点情報を記憶するとともに、GPS制御装置120で取得した最新の位置情報をコントローラ210を介して記憶することができる。
上述してきたように、本実施形態に係る乗用型田植機は、左右線引マーカ16に圃場の肥料濃度を検知する肥沃度センサ700(図1~図4)が各々設けられている。そして、肥沃度センサ700で検知された次工程の肥料濃度に基づいて、乗用型田植機のコントローラ210は、次工程の圃場へ供給する施肥量を決定し、決定した一定量の肥料が供給されるように次工程において施肥量調節モータ400の回転を制御する。
<他の実施形態>
(1)図11は、前もって圃場の肥沃度マップを作成し、作成された圃場の肥沃度マップに基づいて可変施肥を行う実施形態を示す。
即ち、肥沃度マップの作製手順は、次のとおりである。
先ず、稲の穂が出て稲が倒伏した圃場において、タブレット端末などの情報記憶端末(リモコン装置)130の圃場マップに小型飛行機(例えば、ドローン)の飛行ルートを記載して追加し、該飛行ルートを追加した圃場マップを小型飛行機に通信装置にて送信し、小型飛行機に飛行指令を出す。
小型飛行機は、受信した圃場マップの飛行ルートに沿って飛行してカメラにて近赤外線画像を撮り、該近赤外線画像により稲が倒伏している倒伏区を圃場マップに追加する。
小型飛行機は、倒伏区が追加された圃場マップを情報記憶端末(リモコン装置)130に通信装置にて送信する。
情報記憶端末(リモコン装置)130は、受信した倒伏区が追加された圃場マップを記憶する。なお、稲が倒伏するのは、その場所の肥沃度が高い為であり、倒伏区は高肥沃度区である。
次に、翌年に当該圃場で施肥装置付き乗用型田植機が田植作業及び施肥作業を行う際の施肥作業について説明する。
施肥装置付き乗用型田植機は、受信アンテナ710により測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて現在位置情報を算出しながら田植作業及び施肥作業を行う。
そして、情報記憶端末(リモコン装置)130から上記倒伏区が追加された圃場マップを受信し、コントローラ210は、倒伏区が追加された圃場マップの倒伏区にて乗用型田植機が作業を行う際に施肥量調節モータ400を作動させて繰出部61の肥料繰出し量を少なくする。
即ち、コントローラ210は、乗用型田植機が倒伏区以外で作業を行う際には施肥量調節モータ400を作動させて繰出部61の肥料繰出し量を標準とする。そして、コントローラ210は、乗用型田植機が倒伏区で作業を行う際には施肥量調節モータ400を作動させて繰出部61の肥料繰出し量を少なくする。
(2)図12及び図13は、稲が生育している圃場で除草機にて除草作業を行う実施形態を示す。
即ち、稲が生育している圃場において、タブレット端末などの情報記憶端末(リモコン装置)130の圃場マップに小型飛行機S(例えば、ドローン)の飛行ルート(圃場の長手方向を往復工程で飛行して圃場全体を飛行するルート)を記載して追加し、該飛行ルートを追加した圃場マップを小型飛行機Sに通信装置にて送信し、小型飛行機Sに飛行指令を出す。
小型飛行機Sは、受信した圃場マップの飛行ルートに沿って飛行してカメラにて近赤外線画像を撮り、該近赤外線画像により稲が生育している列を解析して、乗用型田植機が往復工程で植えた苗列と枕地工程で植付けた苗列を識別して、該稲の苗列を圃場マップに追加する。
小型飛行機Sは、稲の苗列が追加された圃場マップを情報記憶端末(リモコン装置)130に通信装置にて送信する。
情報記憶端末(リモコン装置)130は、受信した稲の苗列が追加された圃場マップを記憶し、往復工程で植えた苗列に沿って往復工程で除草作業をして枕地工程で機体を旋回させる作業工程を圃場マップに追加する。なお、枕地工程での機体旋回開始は、乗用型除草機の後輪車軸が枕地工程部分に入った時に行う作業工程とする。
次に、当該圃場で乗用型除草機が除草作業を行う手順を説明する。
乗用型除草機は、情報記憶端末(リモコン装置)130から上記作業工程が追加された圃場マップを受信し、コントローラ210が受信アンテナにより測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて現在位置情報を算出しながら作業工程に沿って自律走行制御して除草作業を行う。なお、往復工程で除草作業を行う際、乗用型除草機の左右前輪及び左右後輪は、苗列間を走行する。
なお、上記では除草機の例を示したが、他に除草剤散布機や殺虫剤散布機等の防除作業機、施肥作業機または中耕管理機等の如何なる作業機でも良い。
(3)図14は、ティーチング走行をして作業基準方位を記憶して自立直進走行を行う乗用型田植機の田植作業を行う作業手順を示すもので、以下に、その自律直進走行して田植作業を行う実施形態を示す。
即ち、操縦者は、圃場の一側の畦際の作業開始位置Aで苗植付部4を下降させて田植作業を開始し、他側の畦際の苗植付部4を上昇させて旋回開始する旋回開始位置Bまで機体を直進走行させて田植作業を行う(ティーチング走行)。
その時、コントローラ210は、作業開始位置Aと旋回開始位置Bの位置情報を受信アンテナにより測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて算出し、作業開始位置Aから旋回開始位置Bまでの距離と方位を算出して基準作業工程距離と基準作業方位として記憶する。
そして、操縦者が上記他側の畦際で機体を旋回させて苗植付部4を下降させて田植作業を開始すると、コントローラ210は、受信アンテナにより測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて現在位置情報を算出して走行距離及び走行方位を算出しながら左右前輪10を操向するアクチュエータを作動させて基準作業方位と逆方位に向けて直進するように自律直進制御をする。
そして、コントローラ210は、機体が基準作業工程距離進むと、上記の一側の畦際に到達したと認識してブザーや音声報知にて操縦者に苗植付部4を上昇させて旋回操作をすることを促す。
そこで、操縦者は、該報知により苗植付部4を上昇させて旋回操作をする。この時、他側の畦際で苗植付部4を下降させて田植作業を開始した位置を新たな作業開始位置Aとし一側の畦際に到達して苗植付部4を上昇させた位置を新たな旋回開始位置Bとして基準作業工程距離を算出して更新する。
以下、同様にして一側の畦際と他側の畦際間の往復作業を繰り返して田植作業を行うが、コントローラ210は、受信アンテナにより測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて現在位置情報を算出して走行距離及び走行方位を算出しながら左右前輪10を操向するアクチュエータを作動させて基準作業方位に基づいて直進するように自律直進制御をし、機体が基準作業工程距離進むと、畦際に到達したと認識してブザーや音声報知にて操縦者に苗植付部4を上昇させて旋回操作をすることを促すので、直進走行できれいな植付作業が行えて旋回時点も報知されるので適切な旋回ができて、良好な田植作業が行える。
また、直進での植付作業中に苗補給や機械の調整等で機体を停止させて苗植付部4を上昇させることがあるので、コントローラ210は、苗植付部4を下降させて田植作業を開始した作業開始位置Aから8m以内で苗植付部4を上昇させた場合には旋回開始位置Bとは認識せず、基準作業工程距離を更新しない。
また、畦際での旋回中に畦から機体への苗補給等の補助作業の為に畦際を畦沿いに移動して機体を停止させて苗植付部4を下降させることがあるので、コントローラ210は、苗植付部4を上昇させた旋回開始位置Bから8m以上走行した位置で苗植付部4を下降させた場合には作業開始位置Aとは認識しない。