JP2023132143A - モータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の位置検出器を用いることなく、モータの回転方向を容易に判別することを可能とする。【解決手段】駆動制御信号Sdに応じて、モータ5のコイルの通電方向を切り替える駆動回路3と、駆動制御信号Sdを生成する制御回路2を有するモータ駆動制御装置1において、制御回路2は、U相のコイルLuの誘起電圧とU相のコイル電流Iuの位相差が所定の範囲内となるようにU相のコイル電流Iuの位相調整するための駆動制御信号Sdを生成する駆動制御信号生成部16と、位相調整が行われた後のU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qのタイミングとモータ5の所定の位置においてモータ5の回転を検出する位置検出信号Shuのレベル変化タイミングとU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを位相調整するための目標点Pのタイミングとの比較結果に基づいて、モータ5の回転方向を判定する回転方向判定部20とを有する。【選択図】図1
Description
本発明は、モータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法に関する。
一般に、所定相のコイルを有するモータを正弦波駆動する場合、モータの各相について、コイルの誘起電圧の位相とコイル電流(相電流)の位相とを合わせる、いわゆる進角制御をすることで、モータを効率良く駆動させることができることが知られている。
ところで、モータを駆動するにあたり、ロータの磁極位置を検出する位置検出器を1個だけ用いる、いわゆる1センサ駆動によりモータを駆動させるモータ駆動制御装置がある。例えば、特許文献1には、位置検出器として、ホールセンサを1個だけ用いてモータを駆動するファンモータ駆動制御装置が記載されている。
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように1センサ駆動によりモータを駆動する場合、複数の位置検出器を用いる場合とは異なり、磁極位置を特定することができない。このため、例えば、低速回転時に逆回転方向に強い負荷が連続的に加わり続けると、モータが逆回転し続けるような状態に陥ることがあるが、この場合、モータの回転方向を判別することができない。その結果、モータの回転方向を正回転に復帰させることができないという問題がある。
したがって、モータ駆動制御装置において、複数の位置検出器を用いることなく、モータの回転方向を容易に判別することを可能にする手法が求められている。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、複数の位置検出器を用いることなく、モータの回転方向を容易に判別することができるモータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法を提供することを目的とする。
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、少なくとも1相のコイルを有するモータを駆動するためのPWM信号である駆動制御信号を生成する制御回路と、前記駆動制御信号に応じて、対応する相のコイルの通電方向を切り替える駆動回路と、を備え、前記制御回路は、前記モータの所定の相のコイルに対応する位置に配置された1つの位置検出器により生成されるとともに、前記所定の相のコイルの誘起電圧に同期する位置検出信号に基づいて前記所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点を設定する目標点設定部と、前記PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、前記所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する電流ゼロクロス点推定部と、前記目標点設定部によって設定された前記目標点と前記電流ゼロクロス点推定部によって推定された前記ゼロクロス点との位相差が所定の範囲内となるように、前記所定の相のコイル電流の位相調整を指示する位相調整指示信号を生成する位相調整指示部と、前記位相調整指示部によって生成された前記位相調整指示信号に基づいて、前記所定の相のコイル電流の位相調整をするための前記駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、前記位相調整が行われた後の前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点のタイミングと前記位置検出信号のレベル変化タイミングと前記目標点のタイミングとの比較結果に基づいて、前記モータの回転方向を判別する回転方向判定部とを有することを特徴とする。
本発明の一態様によれば、複数の位置検出器を用いることなく、モータの回転方向を容易に判別することができるモータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法を提供することが可能となる。
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1)は、少なくとも1相のコイルを有するモータ(5)を駆動するためのPWM信号である駆動制御信号(Sd)を生成する制御回路(2)と、前記駆動制御信号(Sd)に応じて、対応する相のコイルの通電方向を切り替える駆動回路(3)と、を備え、前記制御回路(2)は、前記モータ(5)の所定の相に対応する位置に配置された1つの位置検出器により生成されるとともに、前記所定の相のコイルの誘起電圧に同期する位置検出信号(Shu)に基づいて前記所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点(P)を設定する目標点設定部(12)と、前記PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、前記所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点(Q)を推定する電流ゼロクロス点推定部(14)と、前記目標点設定部(12)によって設定された前記目標点(P)と前記電流ゼロクロス点推定部によって推定された前記ゼロクロス点(Q)との位相差が所定の範囲内となるように、前記所定の相のコイル電流の位相調整を指示する位相調整指示信号(S2)を生成する位相調整指示部(15)と、前記位相調整指示部(15)によって生成された前記位相調整指示信号(S2)に基づいて、前記所定の相のコイル電流の位相調整をするための前記駆動制御信号(Sd)を生成する駆動制御信号生成部(16)と、前記位相調整が行われた後の前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点(Q)のタイミングと前記位置検出信号(Shu)のレベル変化タイミングと前記目標点(P)のタイミングとの比較結果に基づいて、前記モータの回転方向を判定する回転方向判定部(20)とを有することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記回転方向判定部は、前記PWM信号の1周期毎に、前記比較結果に基づくモータの回転方向の判定を行い、所定回数連続して前記モータが異常状態であると判断された場合、前記モータが逆回転状態であると判定することとしてもよい。
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記回転方向判定部は、前記位相調整の後の前記位置検出信号のレベル変化タイミングが前記目標点のタイミングと前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点のタイミングとの間に存在するとき、前記モータが前記異常状態であると判断することとしてもよい。
〔4〕上記〔2〕または〔3〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記目標点設定部は、前記目標点のタイミングを前記位置検出信号のレベル変化タイミングよりも所定の第1電気角だけ進んだタイミングとなるように設定し、前記回転方向判定部は、前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点のタイミングが前記位置検出信号のレベル変化タイミングよりも所定の第2電気角だけ遅れたタイミングで検出したときに、前記モータが前記異常状態であると判断することとしてもよい。
〔5〕上記〔2〕乃至〔4〕のいずれか1つに記載のモータ駆動制御装置において、前記回転方向判定部は、前記モータが前記逆回転状態であると判定したとき、前記モータが前記逆回転状態であることを示す逆回転判定信号(S4)を生成することとしてもよい。
〔6〕上記〔5〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御信号生成部は、回転速度の指令値と現在の回転速度に基づいて回転速度の設定値を決定するとともに、前記位相調整指示信号に基づいて位相の設定値を決定し、決定された、前記回転速度の設定値と前記位相の設定値とに基づいて前記駆動制御信号(Sd)の操作量(S3)を生成するPWM指令部と、前記回転方向判定部から前記逆回転判定信号(S4)が入力すると、回転停止指令信号(S5)を出力する回転停止指令部と、前記回転停止指令信号(S5)を受け取ると、前記モータの回転を停止するための前記駆動制御信号(Sd)を生成するPWM信号生成部と、を備えることとしてもよい。
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータユニットは、上記〔1〕乃至〔6〕のいずれか1つに記載のモータ駆動制御装置と、前記モータと、を備える。
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御方法は、少なくとも1相のコイルを有するモータを駆動するためのPWM信号である駆動制御信号を生成する制御回路と、前記駆動制御信号に応じて、対応する相のコイルの通電方向を切り替える駆動回路と、を備えるモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、前記制御回路が、前記モータの所定の相のコイルに対応する位置に配置された1つの位置検出器により生成されるとともに、前記所定の相のコイルの誘起電圧に同期する位置検出信号に基づいて前記所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点を設定する第1ステップと、前記制御回路が、前記PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、前記所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する第2ステップと、前記制御回路が、前記第1ステップにおいて設定された前記目標点と前記第2ステップにおいて推定された前記ゼロクロス点との位相差が所定の範囲内となるように、前記所定の相のコイル電流の位相調整を指示する位相調整指示信号を生成する第3ステップと、前記制御回路が、前記第3ステップにおいて生成した前記位相調整指示信号に基づいて、前記所定の相のコイル電流の位相調整をするための前記駆動制御信号を生成する第4ステップと、前記位相調整が行われた後の前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点(Q)のタイミングと前記位置検出信号(Shu)のレベル変化タイミングと前記目標点(P)のタイミングとの比較結果に基づいて、前記モータの回転方向を判定する第5ステップと、を含むことを特徴とする。
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
≪実施の形態≫
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えたモータユニットの構成を示す図である。
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えたモータユニットの構成を示す図である。
図1に示されるモータユニット100は、モータ5と、位置検出器6と、モータ駆動制御装置1とを備えている。
モータ5は、少なくとも1つのコイルを有するモータである。例えば、モータ5は、3相(U相、V相、およびW相)のコイル(巻線)Lu,Lv,Lwを有するブラシレスDCモータである。
位置検出器6は、モータ5の回転子(ロータ)の回転に応じた位置を検出して、位置検出信号Shuを生成する検出器である。位置検出器6は、例えば、ホール(HALL)素子である。ホール素子は、ロータの磁極を検出し、ロータの回転に応じて電圧が変化するホール信号を出力する。ホール信号は、例えば、パルス信号であり、位置検出信号Shuとしてモータ駆動制御装置1に入力される。
モータユニット100において、位置検出器6としての一つのホール素子が、モータ5のU相、V相、およびW相のコイルLu,Lv,Lwの何れか一つに対応する位置に配置されている。このため、位置検出器6から出力される位置検出信号(ホール信号)は、モータ5のU相、V相、およびW相のコイルLu,Lv,Lwの何れか一つの誘起電圧に同期する信号となる。
本実施の形態では、位置検出器6としての一つのホール素子は、例えば、U相のコイルLuに対応する位置に配置されている。これにより、位置検出信号Shuは、モータ5のU相のコイルLuの誘起電圧に同期し、且つモータ5のロータの回転位置に対応する信号となる。
なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、具体例として、位置検出器6は、出力する位置検出信号Shuの立ち上がりエッジがU相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点から電気角30度遅れたタイミングで検出できる位置に配置されている。
モータ駆動制御装置1は、モータ5の駆動を制御する装置である。モータ駆動制御装置1は、例えば、U相のコイルLuに対応する位置に設けられた一つの位置検出器6(ホール素子)からの位置検出信号Shuに基づく1センサ駆動方式により、モータ5の正弦波駆動を行う。
具体的には、モータ駆動制御装置1は、制御回路2と、駆動回路3と、相電圧検出回路4とを備えている。モータ駆動制御装置1は、外部の直流電源(不図示)から直流電圧Vddの供給を受ける。直流電圧Vddは、例えば、保護回路等を介してモータ駆動制御装置1内の電源ライン(不図示)に供給され、電源ラインを介して制御回路2および駆動回路3に電源電圧としてそれぞれ入力される。
なお、制御回路2には、直流電圧Vddが直接供給されるのではなく、例えば、レギュレータ回路によって直流電圧Vddを降圧した電圧が、電源電圧として制御回路2に供給されてもよい。
駆動回路3は、後述する制御回路2から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ5を駆動する回路である。駆動制御信号Sdは、モータ5の駆動を制御するための信号である。例えば、駆動制御信号Sdは、モータ5を正弦波駆動するためのPWM信号である。
駆動回路3は、駆動制御信号Sdに基づいて直流電圧Vddとグラウンド電位GNDとの間でモータ5のコイルの接続先を切り替えることにより、モータ電流の向きを切り替えてモータ5を回転させる。具体的には、駆動回路3は、モータ5の各相のコイルLu,Lv,Lwに対応して設けられ、互いに直列に接続されたハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHおよびローサイドスイッチQuL,QvL,QwLを含む。駆動回路3は、駆動制御信号SdとしてのPWM信号Suu,Svu,Swu,Sul,Svl,Swlに応じて、ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHとローサイドスイッチQuL,QvL,QwLをオン・オフさせて、各コイルLu,Lv,Lwの通電方向を切り替える。
ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHは、例えば、Pチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であり、ローサイドスイッチQuL,QvL,QwLは、例えば、Nチャネル型のMOSFETである。
なお、ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwH、およびローサイドスイッチQuL,QvL,QwLは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の種類のパワートランジスタであってもよい。
図1に示すように、U相のハイサイドスイッチQuHとローサイドスイッチQuLとは、直流電圧Vddとグラウンド電位GNDとの間に直列に接続されて、一つのスイッチングレグ(アーム)を構成している。ハイサイドスイッチQuHとローサイドスイッチQuLとの接続点は、コイルLuの一端に接続されている。ハイサイドスイッチQuHのオン・オフは、PWM信号Suuによって切り替えられる。ローサイドスイッチQuLのオン・オフは、PWM信号Sulによって切り替えられる。
V相のハイサイドスイッチQvHとローサイドスイッチQvLとは、直流電圧Vddとグラウンド電位GNDとの間に直列に接続されて、一つのスイッチングレグを構成している。ハイサイドスイッチQvHとローサイドスイッチQvLとの接続点は、コイルLvの一端に接続されている。ハイサイドスイッチQvHのオン・オフは、PWM信号Svuによって切り替えられる。ローサイドスイッチQvLのオン・オフは、PWM信号Svlによって切り替えられる。
W相のハイサイドスイッチQwHとローサイドスイッチQwLとは、直流電圧Vddとグラウンド電位GNDとの間に直列に接続されて、一つのスイッチングレグを構成している。ハイサイドスイッチQwHとローサイドスイッチQwLとの接続点は、コイルLwの一端に接続されている。ハイサイドスイッチQwHのオン・オフは、PWM信号Swuによって切り替えられる。ローサイドスイッチQwLのオン・オフは、PWM信号Swlによって切り替えられる。
なお、ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHおよびローサイドスイッチQuL,QvL,QwLとしての各トランジスタには寄生ダイオードが形成されており、これらのダイオードは、コイル電流を直流電圧Vddまたはグラウンド電位GNDに戻す還流ダイオードとして機能する。
なお、駆動回路3は、駆動制御信号Sdに基づいて各相のハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを駆動するためのプリドライブ回路を有していてもよい。また、図1に示すように、駆動回路3のグラウンド電位GND側には、モータ5の電流を検出するためのセンス抵抗が接続されていてもよい。
相電圧検出回路4は、モータ5の所定の相のコイルの駆動電圧を検出するための回路である。本実施の形態において、相電圧検出回路4は、例えば、U相のコイルLuの駆動電圧Vuを検出して、制御回路2に入力する。相電圧検出回路4は、例えば、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLが接続されるコイルLuの一端とグラウンド電位GNDとの間に接続された抵抗分圧回路である。
なお、図1には、相電圧検出回路4としての抵抗分圧回路によってU相のコイルLuの駆動電圧Vuを分圧して制御回路2に入力する構成を一例として示しているが、相電圧検出回路4を設けることなく、制御回路2にU相のコイルLuの駆動電圧Vuを直接入力してもよい。
制御回路2は、モータ駆動制御装置1の動作を統括的に制御するための回路である。本実施の形態において、制御回路2は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM、フラッシュメモリ等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力インターフェース回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置である。例えば、制御回路2は、マイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)である。
なお、制御回路2と駆動回路3とは、一つの半導体集積回路(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化された構成であってもよいし、個別の集積回路として夫々パッケージ化されて回路基板に実装され、回路基板上で互いに電気的に接続された構成であってもよい。
制御回路2は、駆動制御信号Sdを生成して駆動回路3に与えることにより、モータ5の通電制御を行う基本機能を有している。具体的に、制御回路2は、外部(例えば、上位装置)から入力された、モータ5の駆動に関する目標値を指示する駆動指令信号Scと、位置検出器6から入力された位置検出信号Shuとに基づいて、モータ5が駆動指令信号Scで指定された駆動状態となるように駆動制御信号Sdを生成して駆動回路3に与える。
また、制御回路2は、上記基本機能に加えて、モータ5の駆動効率を向上させるために、モータ5の所定の相のコイルの誘起電圧の位相とコイル電流の位相とが一致するようにモータ5の通電タイミングを調整する機能(以下、「進角制御機能」とも称する。)とモータ5の回転方向を判定する機能(以下、「回転方向判定機能」とも称する。)と、モータ5の逆回転時に停止する機能(以下、「逆回転時停止機能」とも称する。)とを有する。なお、本実施の形態おいて、「一致する」とは、その誤差が所定の許容範囲内であることを含み、進角制御機能により、モータ5の所定の相のコイルの誘起電圧の位相とコイル電流の位相とが完全に一致させることに限定されない。
図1に示すように、制御回路2は、上述した各機能を実現するための機能部として、例えば、駆動指令解析部11、目標点設定部12、相電圧入力部13、電流ゼロクロス点推定部14、位相調整指示部15、駆動制御信号生成部16、および回転方向判定部20を有している。
制御回路2の上述した各機能部は、例えば、制御回路2としてのMCUのプログラム処理によって実現される。具体的には、制御回路2としてのMCUを構成するプロセッサが、メモリに格納されたプログラムにしたがって各種の演算を行ってMCUを構成する各種周辺回路を制御することにより、上述した各機能部が実現される。
駆動指令解析部11は、例えば、上位装置(不図示)から出力された駆動指令信号Scを受信する。駆動指令信号Scは、モータ5の駆動に関する目標値を指示する信号であって、例えば、モータ5の目標回転速度S1を指示する速度指令信号である。
駆動指令解析部11は、駆動指令信号Scによって指定された目標回転速度S1を解析する。例えば、駆動指令信号Scが目標回転速度S1に対応するデューティ比を有するPWM信号である場合、駆動指令解析部11は、駆動指令信号Scのデューティ比を解析し、そのデューティ比に対応する回転速度の情報を目標回転速度S1として出力する。
駆動制御信号生成部16は、モータ5の回転速度が目標回転速度S1に一致するようにモータ5の操作量S3を算出し、算出した操作量S3に基づいて駆動制御信号Sdを生成する。なお、駆動制御信号生成部16の機能のうち進角制御機能および逆回転時停止機能に関しては、後述する。
駆動制御信号生成部16は、例えば、PWM指令部17とPWM信号生成部18と回転停止指令部19とを有する。PWM指令部17は、位置検出器6から入力された位置検出信号Shuと、駆動指令解析部11から入力された目標回転速度S1と、後述する位相調整指示部15から入力された位相調整指示信号S2とに基づいて、モータ5の操作量S3を算出する。なお、回転停止指令部19は、逆回転時停止機能を実現する機能部であるので、その詳細は後述する。
操作量S3は、モータ5を目標回転速度S1で回転させるために必要なモータ5の駆動量を指定する情報を含む。例えば、本実施の形態のようにモータ5をPWM駆動する場合には、操作量S3は、駆動制御信号SdとしてのPWM信号の周期(PWM周期)を指定する値と、PWM信号のオン期間を指定する値と、PWM信号の出力タイミングを指定する値とを含んでいる。駆動制御信号SdとしてのPWM信号の周期(PWM周期)を指定する値と、PWM信号のオン期間を指定する値とは、設定する回転速度の設定値によって決まる。なお、PWM信号の出力タイミングを指定する値の詳細については、後述する。
例えば、先ず、PWM指令部17は、位置検出信号Shuに基づいてモータ5の実回転速度を算出する。PWM指令部17は、算出した実回転速度と駆動指令解析部11から入力された目標回転速度S1とに基づいて、算出した実回転速度が目標回転速度S1に一致するようにPID(Proportional-Integral-Differential)制御演算を行って、回転速度の設定値を算出し、駆動制御信号SdのPWM周期を指定する値とPWM信号のオン期間を指定する値とを含む操作量S3として出力する。
なお、図1のモータ駆動制御装置1はフィードバック制御機能を有しているが、フィードバック制御機能を有していない場合には、PWM指令部17は、駆動指令解析部11から出力された目標回転速度S1から、回転速度の設定値を算出し、駆動制御信号SdのPWM周期を指定する値と、PWM信号のオン期間を指定する値とを含む操作量S3として出力してもよい。
PWM信号生成部18は、PWM指令部17から入力された操作量S3に基づいて、駆動制御信号Sdを生成する。具体的には、PWM信号生成部18は、操作量S3によって指定されたPWM周期およびオン期間を有する6種類のPWM信号Suu,Sul,Svu,Svl,Swu,Swlをそれぞれ生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。PWM信号Suuは、U相のハイサイドスイッチQuHのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Sulは、U相のローサイドスイッチQuLのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Svuは、V相のハイサイドスイッチQvHのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Svlは、V相のローサイドスイッチQvLのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Swuは、W相のハイサイドスイッチQwHのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Swlは、W相のローサイドスイッチQwLのオン・オフを切り替える信号である。
本実施の形態において、U相、V相、およびW相の各スイッチレグを構成するハイサイドスイッチとローサイドスイッチとが同時にオンしないようにするために、デッドタイム期間Tdが設けられている。すなわち、PWM信号生成部18は、U相、V相、およびW相の各スイッチレグを構成するハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチのオン/オフ状態が切り替わるとき、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとが同時にオフするデッドタイム期間Tdが形成されるように、駆動制御信号Sd(上記6種類のPWM信号)を生成する。なお、デッドタイム期間Tdの詳細については、後述する。
図1において、目標点設定部12、相電圧入力部13、電流ゼロクロス点推定部14、および位相調整指示部15は、上述した進角制御機能を実現するための機能部の一例である。各機能部について詳細に説明する前に、本実施の形態に係る進角制御機能の概要について説明する。
図2は、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1による進角制御機能を説明するための図である。
図2の上段には位置検出器6から出力される位置検出信号(ホール信号)Shuの波形200が示され、中段には、U相のコイルLuの駆動電圧Vuの波形201とU相のコイルLuの誘起電圧の波形202が示され、下段には、U相のコイルLuのコイル電流Iuの波形203が示されている。
上述したように、一般に、モータの回転速度、モータの負荷、および温度によるモータ特性の変化等により、モータの誘起電圧の位相とコイル電流の位相との間にずれが生じる場合がある。例えば、図2には、U相のコイル電流Iuの位相が、U相のコイルLuの誘起電圧の位相に対して遅れている場合が示されている。
図2に示すように、U相のコイル電流Iuと誘起電圧の間に位相のずれが生じた場合、モータ5の駆動効率が低下する。そこで、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、進角制御機能により、U相のコイル電流Iuと誘起電圧の間のずれ(位相差)を検出し、その位相差が所定の範囲内になるように、モータ5の通電タイミング(PWM信号の出力タイミング)を調整(位相調整)する。具体的には、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1では、進角制御機能は、例えば、(1)U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pを設定することと、(2)U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを推定することと、(3)位相調整をすることとによって実現している。
<U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pの設定>
モータ駆動制御装置1は、U相のコイルLuの誘起電圧に同期する位置検出信号Shuに基づいてU相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pを設定する。具体的には、先ず、モータ駆動制御装置1は、U相のコイルLuに対応して設けられた位置検出器6(ホール素子)から出力される位置検出信号(ホール信号)ShuがU相のコイルLuの誘起電圧と同期することを利用して、誘起電圧のゼロクロス点を検出し、U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pとする。なお、U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pは、ある程度の許容範囲を持ったものとしてもよい。
モータ駆動制御装置1は、U相のコイルLuの誘起電圧に同期する位置検出信号Shuに基づいてU相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pを設定する。具体的には、先ず、モータ駆動制御装置1は、U相のコイルLuに対応して設けられた位置検出器6(ホール素子)から出力される位置検出信号(ホール信号)ShuがU相のコイルLuの誘起電圧と同期することを利用して、誘起電圧のゼロクロス点を検出し、U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pとする。なお、U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pは、ある程度の許容範囲を持ったものとしてもよい。
本実施の形態では、例えば、図2に示すように、位置検出器6の位置検出信号Shuの立ち上がりエッジがU相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点から電気角30度遅れたタイミングで検出できる位置に位置検出器6を予め配置しておく。これにより、モータ駆動制御装置1は、位置検出信号Shuのエッジを検出することにより、U相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点を検出(推定)することができる。
なお、位置検出器6の設置場所は、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが検出されるタイミングとU相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点のタイミングとの位相差が分かっている位置であればよく、上述の例に限定されない。
モータ駆動制御装置1は、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを検出し、検出した少なくとも一方のエッジから誘起電圧のゼロクロス点を推定する。モータ駆動制御装置1は、推定した誘起電圧のゼロクロス点をU相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pとして設定する。
<所定の相のコイル電流のゼロクロス点の推定>
次に、モータ駆動制御装置1は、PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する。PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する方法は様々な方法があり、特に限定されない。
次に、モータ駆動制御装置1は、PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する。PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する方法は様々な方法があり、特に限定されない。
例えば、所定の相(本実施の形態では、U相)のコイルの駆動電圧(相電圧)と、所定の相に対応するハイサイドスイッチをオン・オフするための信号のオン期間およびオフ期間の少なくとも一方とを比較し、その比較結果に基づいて、所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出して、モータの所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する方法、あるいは、所定の検出区間において、モータを停止して、所定の相のコイルの端子電圧を検出し、検出した端子電圧と閾値を比較してコイル電流の向き(位相)を判定することにより、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する方法、あるいは、駆動回路のローサイドスイッチがオンしている期間中に、ローサイドスイッチの両端の電圧を比較してコイル電流の向き(極性)を判定することにより、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する方法など、様々な方法がある。
<コイル電流の位相調整>
そして、モータ駆動制御装置1は、推定したU相のコイル電流Iuのゼロクロス点QがU相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点P(誘起電圧のゼロクロス点)に一致するように、U相のコイル電流Iuの位相を調整する。例えば、図2に示すように、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qが目標点Pに一致するように、U相のコイルLuの駆動電圧Vuを印加するタイミング(通電タイミング)を調整する(進角調整または遅角調整を行う)ことにより、U相のコイル電流Iuの位相を調整する。これにより、モータ駆動制御装置1は、モータ5の駆動効率を向上させることが可能となる。
そして、モータ駆動制御装置1は、推定したU相のコイル電流Iuのゼロクロス点QがU相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点P(誘起電圧のゼロクロス点)に一致するように、U相のコイル電流Iuの位相を調整する。例えば、図2に示すように、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qが目標点Pに一致するように、U相のコイルLuの駆動電圧Vuを印加するタイミング(通電タイミング)を調整する(進角調整または遅角調整を行う)ことにより、U相のコイル電流Iuの位相を調整する。これにより、モータ駆動制御装置1は、モータ5の駆動効率を向上させることが可能となる。
以下、上述した進角制御機能を実現するための各機能部について、詳細に説明する。
目標点設定部12は、モータ5の所定の相のコイルの誘起電圧に同期し、且つモータ5のロータの回転位置に対応する位置検出信号Shuに基づいて、所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点を決定する。
本実施の形態では、目標点設定部12は、U相のコイルLuの誘起電圧に同期する位置検出信号Shuの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを検出し、検出したエッジに基づいて、U相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点、すなわちU相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pを設定する。例えば、図2において、目標点設定部12が時刻t1において位置検出信号Shuの立ち上がりエッジを検出した場合、目標点設定部12は、時刻t1よりも電気角30度のみ進んだ時刻(タイミング)t0を目標点Pとして設定する。なお、位置検出信号Shuの立ち下がりエッジを検出する場合も同様の方法で目標点Pを設定できる。
目標点設定部12は、目標点Pを設定するための目標点情報信号Stを生成して、生成した目標点情報信号Stを位相調整指示部15に出力する。
相電圧入力部13は、モータ5の所定の相の電圧の値を取得する。例えば、相電圧入力部13は、相電圧検出回路4によって検出されたU相のコイルLuの駆動電圧Vuを取得し、デジタル値に変換して電流ゼロクロス点推定部14に与える。
電流ゼロクロス点推定部14は、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する機能部である。本実施の形態では、電流ゼロクロス点推定部14は、PWM信号である駆動制御信号Sdの1周期毎に、所定の相のコイルの駆動電圧(相電圧)と、所定の相に対応するハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間およびオフ期間の少なくとも一方とを比較し、その比較結果に基づいて、所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出し、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する手法を例に挙げて説明する。
図3Aは、U相のコイル電流Iuが正(+)極性から負(-)極性に切り替わるときのU相のPWM信号Suu,SulおよびU相のコイルLuの駆動電圧Vuの変化を示すタイミングチャートである。
図3Bは、U相のコイル電流Iuが負(-)極性から正(+)極性に切り替わるときのU相のPWM信号Suu,SulおよびU相のコイルLuの駆動電圧Vuの変化を示すタイミングチャートである。
図3Aおよび図3Bにおいて、上段から下段に向かって、U相のコイル電流Iu、U相のハイサイドスイッチQuHを駆動するためのPWM信号Suu、U相のローサイドスイッチQuLを駆動するためのPWM信号Sul、U相のコイルLuの駆動電圧Vuの順にそれぞれの波形が示されている。なお、図3Aおよび図3Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電流または電圧をそれぞれ表している。
図4Aは、U相のコイルLuに正(+)極性のコイル電流Iuが流れている状態において、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLがオフしたときの状態を説明するための図である。
図4Bは、U相のコイルLuに負(-)極性のコイル電流Iuが流れている状態において、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLがオフしたときの状態を説明するための図である。
例えば、図3Aに示すように、PWM信号Suuがハイレベルであり、PWM信号Sulがローレベルであるとき、U相のハイサイドスイッチQuHがオンし、且つU相のローサイドスイッチQuLがオフする。このとき、直流電圧VddからU相のハイサイドスイッチQuHを経由してU相のコイルLuに電流が流れ込むため、U相のコイル電流Iuは正(+)極性となる。
この状態、すなわちU相のコイルLuに正(+)極性のコイル電流Iuが流れている状態において、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLを共にオフしたとき、U相のコイルLuは電流を流し続けようとする。そのため、図4Aに示すように、グラウンド電位GNDからローサイドスイッチQuLの寄生ダイオードを経由して、正極性のコイル電流Iuが流れる。その結果、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがグラウンド電位GND付近まで低下する。
したがって、図3Aに示すように、U相のコイル電流Iuが正(+)極性であるときのU相のハイサイドスイッチQuHとローサイドスイッチQuLとが共にオフするデッドタイム期間Tdでは、U相のコイルLuの駆動電圧Vuはローレベルとなる。
その結果、図3Aに示すように、U相のコイル電流Iuが正(+)極性となる期間では、PWM信号Suuの1周期において、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなる第1期間Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのオン・オフを切り替えるPWM信号Suuがハイレベルとなる第2期間Thとが一致する。
一方、図3Bに示すように、PWM信号Suuがローレベルであり、PWM信号Sulがハイレベルであるとき、U相のハイサイドスイッチQuHがオフし、U相のローサイドスイッチQuLがオンする。このとき、U相のコイルLuからU相のローサイドスイッチQuLを経由してグラウンド電位GND側に電流が流れ込むため、U相のコイル電流Iuは負(-)極性となる。
この状態、すなわちU相のコイルLuに負(-)極性のコイル電流Iuが流れている状態において、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLを共にオフしたとき、U相のコイルLuは電流を流し続けようとする。そのため、図4Bに示すように、U相のコイルLuから、ハイサイドスイッチQuHの寄生ダイオードを経由して、直流電圧Vdd側に負極性のコイル電流Iuが流れる。その結果、U相のコイルLuの駆動電圧Vuが直流電圧Vdd付近まで上昇する。
したがって、図3Bに示すように、U相のコイル電流Iuが負(-)極性であるときのU相のハイサイドスイッチQuHとローサイドスイッチQuLとが共にオフするデッドタイム期間Tdでは、U相のコイルLuの駆動電圧Vuはハイレベルとなる。
その結果、図3Bに示すように、U相のコイル電流Iuが負(-)極性となる期間では、PWM信号Suuの1周期において、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなる第1期間Tvよりも、U相のハイサイドスイッチQuHのオン・オフを切り替えるPWM信号Suuがハイレベルとなる第2期間Thの方が長くなり、第1期間Tvと第2期間Thとが不一致となる。
以上説明したように、モータ5をPWM駆動するとき、PWM信号Suuの1周期において、所定の相のコイル電流が正極性となる期間では、第1期間Tvと第2期間Thとが一致し、コイル電流が負極性となる期間では、第1期間Tvと第2期間Thとが不一致となる。
したがって、図3Aおよび図3Bに示すように、第1期間Tvと第2期間Thとが一致する状態から第1期間Tvと第2期間Thとが不一致となる状態に遷移するタイミングと、第1期間Tvと第2期間Thとが不一致の状態から第1期間Tvと第2期間Thとが一致する状態に遷移するタイミングとを検出すれば、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定することが可能となる。
そこで、電流ゼロクロス点推定部14は、相電圧入力部13によって取得したU相のコイルLuの駆動電圧VuとU相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuとを監視し、PWM信号Suuの1周期毎に、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなる第1期間Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがハイレベルとなる第2期間Thとを比較して、第1期間Tvと第2期間Thとが一致するか否かを判定する。
上述したように、U相のコイルLuの駆動電圧Vuのハイレベルまたはローレベルへの切り替わり、およびPWM信号Suuのハイレベルまたはローレベルへの切り替わりは、U相のハイサイドスイッチQuHのオン・オフの切り替わりに対応している。したがって、以下の説明では、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなる第1期間Tvを「オン期間Tv」と、PWM信号Suuがハイレベルとなる第2期間Thを「オン期間Th」と称する場合がある。
オン期間(第1期間)Tvとオン期間(第2期間)Thが一致しているか否かの判定は、以下のように行えばよい。
例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなるオン期間Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがハイレベルとなるオン期間Thとの差|Th-Tv|を算出し、その差|Th-Tv|が閾値Tth以上であるか否かを判定する。
差|Th-Tv|が閾値Tth以上である場合には、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致していない(不一致である)と判定し、U相のコイル電流Iuが負極性であると判定する。一方、差|Th-Tv|が閾値Tth未満である場合には、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致していると判定し、U相のコイル電流Iuが正極性であると判定する。
ここで、オン期間Tvおよびオン期間Thの一致/不一致を判定するための閾値Tthは、PWM信号である駆動制御信号Sdのデッドタイム期間Tdに基づいて設定すればよい。例えば、Tth=Tdとしてもよい。
電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミングと、オン期間Tvとオン期間Thとが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミングの少なくとも一方を検出(以下、「ゼロクロス検出」とも称する。)し、検出したタイミングをU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qと推定する。なお、検出タイミングは制御回路2の所定のクロックタイミングに応じた所定間隔のタイミングである。
具体的には、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイルLuの駆動電圧Vuのオン期間(第1期間Tv)とU相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuのオン期間(第2期間Th)とが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミングを、U相のコイル電流Iuの極性が正から負に切り替わるゼロクロス点Qと判定する。また、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミングを、U相のコイル電流Iuの極性が負から正に切り替わるゼロクロス点Qであると判定する。
例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致する状態(U相のコイル電流Iuが正極性)においてハイレベルとなり、オン期間Tvとオン期間Thとが一致しない状態(U相のコイル電流Iuが負極性)においてローレベルとなるゼロクロス点検出信号Sctを位相調整指示部15に出力する。
これにより、位相調整指示部15は、ゼロクロス点検出信号Sctのエッジ(立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジ)を検出することにより、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを知ることができる。例えば、ゼロクロス点検出信号Sctがハイレベルからローレベルに切り替わる立ち下がりエッジが検出されたタイミングが、U相のコイル電流Iuが正極性から負極性に切り替わるゼロクロス点Qとなり、ゼロクロス点検出信号Sctがローレベルからハイレベルに切り替わる立ち上がりエッジが検出されたタイミングが、U相のコイル電流Iuが負極性から正極性に切り替わるゼロクロス点Qとなる。
なお、本実施の形態では、上述したように、電流ゼロクロス点推定部14が、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなるオン期間(第1期間)Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがハイレベルとなるオン期間(第2期間)Thとを比較して、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを決定する場合を例示したが、これに限られない。例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、PWM信号Suuの1周期毎に、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがローレベルとなるオフ期間と、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがローレベルとなるオフ期間とを比較し、2つのオフ期間が互いに一致するか否かを判定して、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを決定してもよい。
位相調整指示部15は、目標点設定部12によって設定されたU相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pと電流ゼロクロス点推定部14によって推定されたU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qとの位相差Δφに基づいて、位相調整の要否を決定する。
例えば、図2に示すように、位相調整指示部15は、目標点設定部12によって決定された目標点P(U相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点)の位相(時刻tp)から、電流ゼロクロス点推定部14によって推定されたU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qの位相(時刻tq)を減算した位相差Δφ(=時刻tpにおける位相-時刻tqにおける位相)を算出する。
位相調整指示部15は、駆動制御信号Sdの出力タイミングを、位相差Δφ(=tp-
tq)に応じた時間だけずらすように、駆動制御信号生成部16に指示する。具体的には、例えば、位相差Δφが正(+)の値である場合、位相調整指示部15は、U相のコイル電流Iuを位相差Δφだけ遅角させる位相調整(遅角調整)の実行を指示する位相調整指示信号S2を出力する。例えば、位相差Δφが負(-)の値である場合、位相調整指示部15は、U相のコイル電流Iuを位相差Δφだけ進角させる位相調整(進角調整)の実行を指示する位相調整指示信号S2を出力する。
tq)に応じた時間だけずらすように、駆動制御信号生成部16に指示する。具体的には、例えば、位相差Δφが正(+)の値である場合、位相調整指示部15は、U相のコイル電流Iuを位相差Δφだけ遅角させる位相調整(遅角調整)の実行を指示する位相調整指示信号S2を出力する。例えば、位相差Δφが負(-)の値である場合、位相調整指示部15は、U相のコイル電流Iuを位相差Δφだけ進角させる位相調整(進角調整)の実行を指示する位相調整指示信号S2を出力する。
駆動制御信号生成部16は、位相調整指示部15から出力される位相調整指示信号S2に基づいて、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qとゼロクロスの目標点Pとの位相差が所定の範囲内となるように駆動制御信号Sdを生成する。具体的には、PWM指令部17が、位相調整指示部15から出力される位相調整指示信号S2に基づいて、U相のコイル電流Iuの位相調整の設定値に応じたPWM信号Suuの出力タイミングを指定する値を生成し、PWM周期を指定する値およびPWM信号Suuのオン期間の値とともに操作量S3として出力する。
ここで、PWM信号Suuの出力タイミングを指定する値とは、駆動制御信号SdとしてのPWM信号Suuを出力するための基準時刻に対する時間的なずれ幅(オフセット時間)を指定する値である。
例えば、位相差Δφだけ進角させる進角調整(位相調整)の実行を指示する位相調整指示信号S2が位相調整指示部15から出力された場合には、PWM指令部17は、基準時刻よりも位相差Δφに相当する時間Δtφだけ早くPWM信号Suuを出力させることを指示する値“-Δtφ”を算出し、PWM信号Suuの出力タイミングを指定する値とする。
また、例えば、位相差Δφだけ遅角させる遅角調整(位相調整)の実行を指示する位相調整指示信号S2が位相調整指示部15から出力された場合には、PWM指令部17は、基準時刻よりも位相差Δφに相当する時間Δtφだけ遅くPWM信号Suuを出力させることを指示する値“+Δtφ”を算出し、PWM信号Suuの出力タイミングを指定する値とする。
また、例えば、位相調整指示部15から出力される位相調整指示信号S2により、進角調整および遅角調整のいずれの実行も指示しない位相調整指示信号S2が出力された場合には、PWM指令部17は、PWM信号Suuの出力タイミングを指定する値を“0(ゼロ)”とする。
PWM信号生成部18は、駆動制御信号Sdを出力するとき、操作量S3に含まれるPWM信号Suuの出力タイミングを指定する値に基づいて、駆動制御信号Sdを出力するタイミングを変化させる。例えば、駆動制御信号Sdを出力するための基準時刻が予め設定されており、PWM信号生成部18は、基準時刻から、PWM信号Suuの出力タイミングを指定する値によって指定された時間だけずらしたタイミングで、駆動制御信号Sdを出力する。
例えば、PWM信号Suuの出力タイミングを指定する値が“+Δtφ”である場合、PWM信号生成部18は、操作量S3に含まれるPWM周期およびオン期間の情報に基づいて生成した駆動制御信号Sdを、基準時刻よりもΔtφだけ遅らせて出力する。
例えば、PWM信号Suuの出力タイミングを指定する値が“-Δtφ”である場合、PWM信号生成部18は、操作量S3に含まれるPWM周期およびオン期間の情報に基づいて生成した駆動制御信号Sdを、基準時刻よりもΔtφだけ早く出力する。
また、例えば、PWM信号Suuの出力タイミングを指定する値が“0(ゼロ)”である場合、PWM信号生成部18は、操作量S3に含まれるPWM周期およびオン期間の情報に基づいて生成した駆動制御信号Sdを、出力タイミングをずらすことなく、基準時刻に出力する。なお、出力タイミングをずらさないということは、その時点で位相調整(進角調整、遅角調整)が行われていれば、その位相調整を維持することを意味する。
図1において、回転方向判定部20は、上述した回転方向判定機能を実現するための機能部である。本実施の形態における回転方向判定機能は、上述した進角制御機能を前提としたものである。本実施の形態における回転方向判定機能の概要についてまず説明する。
図5Aおよび図5Bは、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1による回転方向判定機能を説明するための図である。
図5Aは、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によってモータ5の正回転時にU相のコイル電流Iuについて進角制御を行ったときの各信号の電圧およびU相のコイル電流Iuの変化を表すタイミングチャートである。
図5Bは、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によってモータ5の逆回転時にU相のコイル電流Iuについて進角制御を行ったときの各信号の電圧およびU相のコイル電流Iuの変化を表すタイミングチャートである。
図5Aおよび図5Bには、モータ駆動制御装置1によってモータ5のU相のコイル電流Iuについて進角制御が実行されたときのモータユニット100の各電圧および電流の状態が示されている。
図5Aおよび図5Bにおいて、上段から下段に向かって、位置検出信号(ホール信号)Shu、ゼロクロス点検出信号Sct、およびU相のコイル電流Iuの順に、それぞれの波形が示されている。また、図5Aおよび図5Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電圧または電流を表している。
図5Aに示されるように、U相のコイル電流Iuについて進角制御を行った場合、モータ5の正回転時には、時刻t1においてU相のコイル電流Iuが負から正に切り替わるゼロクロス点Qが検出され、そのゼロクロス点Q1が、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジt2から所定の電気角のみ位相が進んだ位置にある目標範囲に一致するようにU相のコイル電流Iuの位相が調整されていることが理解される。すなわち、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Q1は、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジt2よりも先に取得される。
図5Bに示されるように、U相のコイル電流Iuについて進角制御を行った場合、モータ5の逆回転時には、時刻t3においてU相のコイル電流Iuが負から正に切り替わるゼロクロス点Qが検出され、そのゼロクロス点Q2が、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジt2から位相が遅れた位置にU相のコイル電流Iuの位相が調整されていることが理解される。すなわち、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Q2は、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジt2よりも後に取得される。
同様に、位置検出信号Shuの立ち下がりエッジt4付近についてみると、図5Aに示すように、モータ5が正回転時には、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Q3は、位置検出信号Shuの立ち下がりエッジt4よりも先に取得される。図5Bに示すように、モータ5が逆回転時には、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Q4は、位置検出信号Shuの立ち下がりエッジt4よりも後に取得される。
このように、U相のコイル電流Iuについて進角制御による位相調整後に、モータ5が図5Aに示される状態であるのかまたは図5Bに示される状態であるのかを検出することにより、モータ5が正回転で回転しているのかまたは逆回転で回転しているのかを判定することができる。具体的には、進角制御による位相調整後の所定の相のコイル電流のゼロクロス点が位置検出信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジに対して、先に取得されたか否かにより、モータ5が正回転で回転しているか逆回転で回転しているかを判定することができる。
回転方向判定機能は、進角制御による位相調整後の所定の相のコイル電流のゼロクロス点が、位置検出信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジに対して、先に取得されたか否かにより、モータ5が正回転で回転しているか逆回転で回転しているかを判定する機能である。
回転方向判定部20は、回転方向判定機能を実行する機能部であり、カウンタ21を備えている。
回転方向判定部20は、進角制御による位相調整後の所定の相のコイル電流のゼロクロス点のタイミングと位置検出信号のレベル変化タイミング(立ち上がりエッジ、または、立ち下がりエッジ)と目標点のタイミングとの比較結果に基づいて、モータ5の回転方向を判定する。
回転方向判定部20は、まずは、例えば、図5Bに相当する状態であるとき、すなわち位置検出信号Shuのレベル変化タイミングが目標点PのタイミングとU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Q2のタイミングとの間に存在するとき、モータ5が異常状態であると判断する。具体的には、回転方向判定部20は、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Q2が位置検出信号Shuの立ち上がりエッジよりも後に取得された場合にはモータ5が逆回転をしていると判定できる。また、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Q4が位置検出信号Shuの立ち下がりエッジよりも後に取得された場合でもモータ5が逆回転をしていると判定できるので、この場合にモータ5が異常状態であると判断する。
回転方向判定部20は、目標点設定部12において目標点Pを位置検出信号Shuの立ち上がりエッジよりも所定の第1電気角だけ進んだ位置に設定した場合は、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジよりも所定の第2電気角だけ遅れたタイミングでU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを検出したときに、モータ5が異常状態であると判断してもよい。このとき、第1電気角と第2電気角とを同じ値としてもよいし、異なる値としてもよい。また、第1電気角は例えば30度とすることができる。
回転方向判定部20は、PWM信号Suuの1周期毎に、位相調整が行われた後のU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qのタイミングと位置検出信号Shuのレベル変化タイミングと目標点Pのタイミングとの比較結果に基づくモータ5の回転方向の判定を行い、所定回数連続してモータ5が異常状態であると判断された場合、モータ5が逆回転状態であると判定する。例えば、5回連続してモータ5が異常状態であると判断された場合、モータ5が逆回転状態であると判定することができる。具体的には、回転方向判定部20は、モータ5が異常状態であると判断された場合にカウンタ21の値をインクリメントし、カウントの値が所定回数の値に達した場合に、モータ5が逆回転状態であると判定する。この構成により、一瞬の負荷によって発生する回転異常などの単発的な異常状態を排除でき、誤判定を防止できる。
回転方向判定部20は、モータ5が逆回転をしていると判定した場合に、モータ5が逆回転状態であることを示す逆回転判定信号S4を生成する。
回転方向判定部20は、生成した逆回転判定信号S4を駆動制御信号生成部16に出力する。駆動制御信号生成部16に出力された逆回転判定信号S4は、回転停止指令部19に入力される。
回転停止指令部19は、逆回転停止機能を実現するための機能部である。
回転停止指令部19は、逆回転判定信号S4を受け取ったことをトリガとして、PWM信号生成部18に対し、回転停止指令信号S5を入力する。回転停止指令信号S5を受け取ったPWM信号生成部18は、モータ5の回転を停止するための駆動制御信号Sdを生成することにより、モータ5の回転を停止させる。
次に、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によるモータ5の駆動制御の流れについて説明する。
図6は、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によるモータ駆動制御処理の流れを示すフローチャートである。
例えば、直流電圧Vddがモータ駆動制御装置1に投入され、モータ駆動制御装置1が起動したとき、先ず、モータ駆動制御装置1は、駆動指令信号Scが入力されているか否かを判定する(ステップS1)。駆動指令信号Scが入力されていないと判定した場合(ステップS1:NO)には、モータ駆動制御装置1は駆動指令信号Scが入力されるまで待機する。
駆動指令信号Scが入力されていると判定した場合(ステップS1:YES)には、モータ駆動制御装置1は、モータ5の駆動制御を開始する(ステップS2)。具体的には、駆動制御信号生成部16が、駆動指令解析部11によって解析されたモータ5の目標回転速度S1に基づいてPWM周期とオン期間とを決定し、決定したPWM周期およびオン期間を有する6種類のPWM信号Suu,Sul,Svu,Svl,Swu,Swlを生成し、駆動制御信号Sdとして駆動回路3に入力する。これにより、駆動回路3がモータ5のコイルLu,Lv,Lwの通電方向を切り替えて、モータ5を回転させる。
次に、モータ駆動制御装置1において、目標点設定部12は、U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pを設定する(ステップS3)。例えば、上述したように、目標点設定部12が、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジから電気角30度のみ進んだタイミングを目標点Pとして設定する(図2参照)。目標点設定部12は、目標点Pを設定するための目標点情報信号Stを生成して、生成した目標点情報信号Stを位相調整指示部15に出力する。
次に、モータ駆動制御装置1において、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを推定する(ステップS4)。例えば、モータ駆動制御装置1の電流ゼロクロス点推定部14は、PWM信号である駆動制御信号Sdの1周期毎に、U相のコイルLuの駆動電圧(相電圧)Vuと、U相に対応するハイサイドスイッチQuHをオン・オフさせる信号のオン期間およびオフ期間の少なくとも一方とを比較し、その比較結果に基づいて、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを推定する。すなわち、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qの推定タイミングに対応してレベルが切り替わるゼロクロス点検出信号Sctを生成して位相調整指示部15に出力する。
さらに、ステップS4の終了後、モータ駆動制御装置1において、位相調整指示部15は、モータ5の通電タイミングの調整を行う(ステップS5)。すなわち、モータ駆動制御装置1は、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qが目標点Pに一致するようにモータ5の通電タイミングの調整を行うことにより、位相調整を実行する。例えば、位相調整指示部15は、目標点設定部12によって生成された目標点情報信号Stと電流ゼロクロス点推定部14によって生成されたゼロクロス点検出信号Sctとに基づいて、位相調整の要否を決定し、必要な位相調整を実行する。
次に、ステップS5の終了後、モータ駆動制御装置1は、回転方向判定部20において、モータ5の回転方向の判定処理を行う(ステップS6)。
図7は、図6におけるモータ5の回転方向の判定処理(ステップS6)の流れを示すフローチャートである。
ステップS6において、先ず、回転方向判定部20は、位相調整後のU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを取得する(ステップS601)。位相調整後のU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qの取得方法については、特に限定されない。
回転方向判定部20は、位相調整後のU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを取得したときに、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジを検出済みであるか否かを判定する(ステップS602)。
回転方向判定部20は、位相調整後のU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを取得したときに、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジを検出済みであると判定した場合は(ステップS602:YES)、モータ5の回転が異常状態であると判断する(ステップS603)。具体的には、回転方向判定部20は、位置検出信号Shuのレベル立ち上がりエッジが目標点PとU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qとの間に存在するとき、モータ5が異常状態であると判断する。なお、検出するエッジは立ち下がりエッジでもよい。
回転方向判定部20は、モータ5の回転が異常状態であると判断した(ステップS603)後、カウンタ21をインクリメントし(ステップS604)、カウンタ21の値が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS605)。本実施の形態では、「5」以上である場合に、カウンタ21の値が所定値以上であると判定する。所定値としては、一瞬の負荷の変動に起因して発生する単発的な回転異常を異常状態として判定する、いわゆる誤判定を防止できるような値に設定することができるが、特に限定されない。
回転方向判定部20は、カウンタ21の値が一定値以上であると判定した場合は(ステップS605:YES)、モータ5が逆回転状態であると判定し(ステップS606)、逆回転判定信号S4を出力する(ステップS607)。回転方向判定部20は、逆回転判定信号S4を駆動制御信号生成部16へと出力する(ステップS607)と、モータ5の回転方向の判定処理(ステップS6)を終了する。
一方、駆動制御信号生成部16に出力された逆回転判定信号S4は、回転停止指令部19に入力される。回転停止指令部19は、逆回転判定信号S4を受け取ったことをトリガとして、PWM信号生成部18に対し、回転停止指令信号S5を入力する。回転停止指令信号S5を受け取ったPWM信号生成部18は、モータ5の回転を停止するための駆動制御信号Sdを生成することにより、モータ5の回転を停止させる。
ステップS602に戻って、回転方向判定部20は、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを取得したときに、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジを検出済みではないと判定した場合は(ステップS602:NO)、カウンタ21を0にリセットし(ステップS603)、正回転状態であると判定する(ステップS609)。なお、回転方向判定部20は、ステップS605において、カウンタ21の値が一定値以上ではないと判定した場合も(ステップS605:NO)、正回転状態であると判定する(ステップS609)。
本実施の形態において、回転方向判定部20は、正回転状態であると判定し(ステップS609)ても、その旨の信号を出力せずに、モータ5の回転方向の判定処理(ステップS6)を終了する。
図6に示すように、ステップS6の終了後、モータ駆動制御装置1は、ステップS2に戻り、ステップS2~S6の処理を繰り返し実行する。これにより、駆動効率が低下することなく、モータ5の回転が継続する。
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、複数の位置検出器を用いることなく、モータ5の回転方向を容易に判別することができる。
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施の形態では、モータ5の3相(U相、V相、およびW相)のうちU相のコイルLuに対して位置検出器6を配置するとともに、U相のコイルLuの駆動電圧VuおよびU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを検出する場合を例示したが、これに限れず、V相のコイルLvに対して位置検出器6を配置して、V相のコイルLvの駆動電圧VvおよびV相のコイル電流Ivのゼロクロス点Qを検出してV相のコイル電流Ivの位相調整を行ってもよいし、W相のコイルLwに対して位置検出器6を配置して、W相のコイルLwの駆動電圧VwおよびW相のコイル電流Iwのゼロクロス点Qを検出してW相のコイル電流Iwの位相調整を行ってもよい。
また上記実施の形態では、電流ゼロクロス点推定部14が、U相のコイルLuの駆動電圧Vuのオン期間(第1期間Tv)とU相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuのオン期間(第2期間Th)とが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミング(U相のコイル電流Iuが正から負に切り替わるゼロクロス点Q)と、オン期間Tvオン期間Thとが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミング(U相のコイル電流Iuが負から正に切り替わるゼロクロス点Q)の両方を検出する場合を例示したが、何れか一方のゼロクロス点Qを検出するようにしてもよい。例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイル電流Iuが負から正に切り替わるゼロクロス点Qのみを検出してもよい。
上記実施の形態において、モータ5の種類は、ブラシレスDCモータに限定されない。また、モータ5は、3相に限られず、例えば単相のブラシレスDCモータであってもよい。また、所定の相がU相である場合を例にあげて説明しているが、これに限定されない。モータ5の駆動方式は、正弦波駆動に限定されるが、変調方式(二相、三相など)は限定しない。
上記実施の形態において、位置検出器6としてホール素子を用いる場合を例示したが、これに限られない。例えば、位置検出器6として、ホールIC、エンコーダ、レゾルバなどを設け、それらの検出信号を位置検出信号としてモータ駆動制御装置1に入力してもよい。
また、上述のフローチャートは一例であって、これらに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。
例えば以上の実施の形態では、回転方向判定部20において、正回転方向と判定した場合は回転停止指令部19には信号を出力していなかった。しかしながら、回転方向判定部20において、正回転方向と判定した場合にも、その旨の信号を回転停止指令部19に出力することとしてもよい。この場合、回転停止指令部19は、受け取った信号がモータ5の逆回転を検出したことを示す信号であった場合のみPWM信号生成部18に対し、回転停止指令信号S5を入力することとすればよい。
以上の実施の形態では、各種信号が閾値を超えたか、下回ったかによりエッジ検出を行っていたが、これに限定されない。信号のレベル変化は、電圧値そのもので判定する態様も含む。
1…モータ駆動制御装置、2…制御回路、3…駆動回路、4…相電圧検出回路、5…モータ、6…位置検出器、11…駆動指令解析部、12…目標点設定部、13…相電圧入力部、14…電流ゼロクロス点推定部、15…位相調整指示部、16…駆動制御信号生成部、17…PWM指令部、18…PWM信号生成部、19…回転停止指令部、20・・・回転方向判定部、21…カウンタ、100…モータユニット、Lu,Lv,Lw…コイル、Iu…U相のコイル電流、S1…目標回転速度、S2…位相調整指示信号、S3…操作量、Sc…駆動指令信号、Sct…ゼロクロス点検出信号、Shu…位置検出信号、Sd…駆動制御信号、Suu,Sul,Svu,Svl,Swu,Swl…PWM信号、QuH,QvH,QwH…ハイサイドスイッチ、QuL,QvL,QwL…ローサイドスイッチ、Vu…U相のコイルLuの駆動電圧、Vv…V相のコイルLvの駆動電圧、Vw…W相のコイルLwの駆動電圧、Vdd…直流電圧、St…目標点情報信号、S4…逆回転判定信号、S5…回転停止指令信号、P…U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点、Q…U相のコイル電流Iuのゼロクロス点。
Claims (8)
- 少なくとも1相のコイルを有するモータを駆動するためのPWM信号である駆動制御信号を生成する制御回路と、
前記駆動制御信号に応じて、対応する相のコイルの通電方向を切り替える駆動回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記モータの所定の相のコイルに対応する位置に配置された1つの位置検出器により生成されるとともに、前記所定の相のコイルの誘起電圧に同期する位置検出信号に基づいて前記所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点を設定する目標点設定部と、
前記PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、前記所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する電流ゼロクロス点推定部と、
前記目標点設定部によって設定された前記目標点と前記電流ゼロクロス点推定部によって推定された前記ゼロクロス点との位相差が所定の範囲内となるように、前記所定の相のコイル電流の位相調整を指示する位相調整指示信号を生成する位相調整指示部と、
前記位相調整指示部によって生成された前記位相調整指示信号に基づいて、前記所定の相のコイル電流の位相調整をするための前記駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、
前記位相調整が行われた後の前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点のタイミングと前記位置検出信号のレベル変化タイミングと前記目標点のタイミングとの比較結果に基づいて、前記モータの回転方向を判定する回転方向判定部とを有する
モータ駆動制御装置。 - 請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記回転方向判定部は、前記PWM信号の1周期毎に、前記比較結果に基づく前記モータの回転方向の判定を行い、所定回数連続して前記モータが異常状態であると判断された場合、前記モータが逆回転状態であると判定する
モータ駆動制御装置。 - 請求項2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記回転方向判定部は、前記位相調整の後の前記位置検出信号のレベル変化タイミングが前記目標点のタイミングと前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点のタイミングとの間に存在するとき、前記モータが前記異常状態であると判断する
モータ駆動制御装置。 - 請求項2または3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記目標点設定部は、前記目標点のタイミングを前記位置検出信号のレベル変化タイミングよりも所定の第1電気角だけ進んだタイミングとなるように設定し、
前記回転方向判定部は、前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点のタイミングが前記位置検出信号のレベル変化タイミングよりも所定の第2電気角だけ遅れたタイミングで検出したときに、前記モータが前記異常状態であると判断する
モータ駆動制御装置。 - 請求項2乃至4の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記回転方向判定部は、前記モータが前記逆回転状態であると判定したとき、前記モータが前記逆回転状態であることを示す逆回転判定信号を生成する
モータ駆動制御装置。 - 請求項5に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御信号生成部は、
回転速度の指令値と現在の回転速度に基づいて回転速度の設定値を決定するとともに、前記位相調整指示信号に基づいて位相の設定値を決定し、決定された、前記回転速度の設定値と前記位相の設定値とに基づいて前記駆動制御信号の操作量を生成するPWM指令部と、
前記回転方向判定部から前記逆回転判定信号が入力すると、回転停止指令信号を出力する回転停止指令部と、
前記回転停止指令信号を受け取ると、前記モータの回転を停止するための前記駆動制御信号を生成するPWM信号生成部と、を備える
モータ駆動制御装置。 - 請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータと、を備える
モータユニット。 - 少なくとも1相のコイルを有するモータを駆動するためのPWM信号である駆動制御信号を生成する制御回路と、前記駆動制御信号に応じて、対応する相のコイルの通電方向を切り替える駆動回路と、を備えるモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、
前記制御回路が、前記モータの所定の相のコイルに対応する位置に配置された1つの位置検出器により生成されるとともに、前記所定の相のコイルの誘起電圧に同期する位置検出信号に基づいて前記所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点を設定する第1ステップと、
前記制御回路が、前記PWM信号の1周期毎の所定のタイミングで、前記所定の相のコイル電流の電流方向の変化を検出することによって前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する第2ステップと、
前記制御回路が、前記第1ステップにおいて設定された前記目標点と前記第2ステップにおいて推定された前記ゼロクロス点との位相差が所定の範囲内となるように、前記所定の相のコイル電流の位相調整を指示する位相調整指示信号を生成する第3ステップと、
前記制御回路が、前記第3ステップにおいて生成した前記位相調整指示信号に基づいて、前記所定の相のコイル電流の位相調整をするための前記駆動制御信号を生成する第4ステップと、
前記位相調整が行われた後の前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点のタイミングと前記位置検出信号のレベル変化タイミングと前記目標点のタイミングとの比較結果に基づいて、前記モータの回転方向を判定する第5ステップと、を含む
モータ駆動制御方法。
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