JP2020198750A - ブラシレスdcモータの制御方法及び制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ロータの回転位置を検出するセンサを備えないセンサレスブラシレスDCモータの回転数を目標回転数に正確に制御できるようにする。【解決手段】モータの非通電相に発生する誘起電圧と基準電圧とを検出処理周波数に同期して比較し、比較結果に基づいてゼロクロス点を検出し、ゼロクロス点の相互間の時間間隔からモータの実際の回転数を求めてモータの制御を行うときに、目標回転数に基づいて適切な検出処理周波数を選択する。【選択図】図1
Description
本発明は、ブラシレスDC(直流)モータの制御に関し、特に、ロータの位置を検出するセンサを備えないセンサレスブラシレスDCモータの制御方法及び制御装置に関する。
ブラシレスDCモータは、そのロータ位置に応じてインバータによってモータのコイルに電流を流すことにより駆動される。例えば、U相、V相及びW相のコイルを備える三相ブラシレスDCモータでは、あるタイミングにおいてW相からU相に電流を流し、次のタイミングにおいてV相からU相に電流を流し、さらに次のタイミングにおいてV相からW相に電流を流すなどしてモータ内に回転磁界を形成し、この回転磁界によってロータが回転する。以下の説明において、モータのある相のコイルから別の相のコイルに電流を流して励磁を行なうとき、電流の方向も考慮したこれらの相の組み合わせのことを通電パターンと呼ぶ。ブラシレスDCモータを制御する場合には、ロータの位置に応じて適切の通電パターンの切り替え(転流ともいう)を行う必要がある。ホール素子などのロータの位置を検出するセンサを備えないセンサレスブラシレスDCモータでは、各相のコイルに発生する逆起電圧(速度起電力)からロータの回転位置を推定して各相のコイルへの通電を切り替えるセンサレス駆動方式が採用されている。特許文献1には、三相ブラシレスDCモータの制御方法として、モータの非通電相に発生する誘起電圧波形と基準電圧とを比較し、この比較結果のゼロクロス点に基づいて電機子巻線の通電パターンを切り替えることを開示している。またモータの速度制御に必要な現在のモータ回転数を、ゼロクロス間の時間から算出することも開示している。ここでゼロクロスとは、誘起電圧が基準電圧をまたがって変化すること、すなわち、誘起電圧から基準電圧を減算した値についての正負の符号が反転することを指す。基準電圧としては、例えば電源電圧の1/2が使用される。
マイクロコンピュータなどを用いて実際にブラシレスDCモータの制御を行う場合には、処理負荷の軽減を図るために、所定の周波数でプログラム割り込みをかけて割り込み処理を実施し、この割り込み処理において、非通電圧相の誘起電圧から基準電圧を減算して得られる差の符号を求め、この符号が前回の割り込み処理において同様に求めた符号から反転していれば、ゼロクロスが起こったと判断する。ゼロクロス検出のための割り込み処理を実行する周波数のことを検出処理周波数と呼ぶことにすると、ゼロクロス検出の処理は検出処理周波数に同期して行われることになる。このようにゼロクロスの判定を行った場合には、ゼロクロス間の時間として得られる値は、検出処理周波数の1周期の時間の整数倍ということになる。検出処理周波数が20kHzであれば、ゼロクロス検出処理の実行間隔は20μsであり、実際の誘起電圧の時間変化がどのようなものであったとしても、ゼロクロス間の時間として算出される値は20μsの整数倍となる。例えば、ロータを構成する磁石の磁極がN極、S極各1つである三相ブラシレスDCモータであれば、モータの1回転の間にゼロクロスは6回起こる。表1は、三相ブラシレスDCモータにおいて検出処理周波数を20kHzとしてプログラム割り込み処理によりゼロクロスを検出した場合に、検出処理周波数でのクロック数で数えたゼロクロス間隔と、ゼロクロス間の時間間隔と、このゼロクロス間隔から換算されるモータの回転数との関係を示している。
センサレスブラシレスDCモータにおいて検出処理周波数でのプログラム割り込み処理によってゼロクロスを検出する場合、上記の表1に示すように、換算される回転数がとびとびの値すなわち離散的な値となる。実際のモータの回転数は、このような離散的な値をとっているわけではなく、連続的に変化し得る。結局、特にモータの回転数が高い場合に、検出処理周波数でのクロックの数を単位として表されるゼロクロス間隔から換算される回転数と実際のモータの回転数との差が大きくなる。目標回転数を与えてモータの回転数制御を行うことを考えると、ゼロクロス間隔から換算される回転数が実際の回転数と大きく異なるのであれば、目標回転数にモータの回転数を正確に制御することが難しくなる。
本発明の目的は、センサレスブラシレスDCモータの回転数の制御を行うときに、モータの回転数を目標回転数に正確に制御することが可能な制御方法及び制御装置を提供することにある。
本発明のブラシレスDCモータの制御方法は、ロータの回転位置を検出するセンサを備えないブラシレスDCモータであるモータの回転数を目標回転数に制御する制御方法であって、モータの非通電相に発生する誘起電圧と基準電圧とを検出処理周波数に同期して比較し、比較結果に基づいてゼロクロス点を検出し、ゼロクロス点の相互間の時間間隔からモータの実際の回転数を求めてモータの制御を行うときに、目標回転数に基づいて適切な検出処理周波数を選択する。
検出処理周波数に同期してゼロクロス検出を行い、ゼロクロス間隔から換算によって回転数を求める場合、得られる回転数は離散値となる。本発明の制御方法では、離散値である回転数が目標回転数に近いものであるように検出処理周波数を選択することによって、目標周波数における回転数誤差が小さくなり、目標回転数の近傍における制御の精度が向上する。これにより、モータの回転数を目標回転数に正確に制御できるようになる。
本発明の制御方法においては、選択可能な複数の検出処理周波数を設定し、これら複数の検出処理周波数の中からゼロクロス点の検出に用いる検出処理周波数を選択することが好ましい。このように構成することで、検出処理周波数を発生する機構において連続的に検出処理周波数を変更できるようにする必要がなくなり、装置構成などを簡略化することができる。この場合、目標回転数ごとにその目標回転数に対する適切な検出処理周波数を示すテーブルを予め作成し、目標周波数が与えられたときにテーブルを参照して検出処理周波数を選択することが好ましい。テーブルを参照することによって検出処理周波数を選択することにより、目標周波数から検出処理周波数を決定するための複雑な演算処理が不要となり、処理負荷の軽減を図ることができる。また、複数の検出処理周波数の相互間の周波数間隔を変更可能としてもよい。周波数間隔を変更可能とすることで、モータの回転数に要求される精度に応じて適切に検出処理周波数を選択できるようになる。
本発明の制御装置は、ロータの回転位置を検出するセンサを備えないブラシレスDCモータであるモータの回転数を目標回転数に制御する制御装置であって、検出処理周波数を発生する検出処理制御部と、モータの非通電相に発生する誘起電圧を取得してA/D変換を行うA/D変換回路と、A/D変換回路で得られた値と基準電圧とを検出処理周波数に同期して比較し、比較結果に基づいてゼロクロス点を検出し、ゼロクロス点の相互間の時間間隔からモータの実際の回転数を求めてモータの制御を行う処理部と、を備え、目標回転数に基づいて適切な検出処理周波数を選択する。
本発明の制御装置においては、選択可能な複数の検出処理周波数が設定され、これらの複数の検出処理周波数の中からゼロクロス点の検出に用いる検出処理周波数が選択されるようにすることが好ましい。この場合、目標回転数ごとにその目標回転数に対する適切な検出処理周波数を示すテーブルが予め格納された記憶部をさらに設け、目標周波数が与えられたときにテーブルの中から検出処理制御部で発生すべき検出処理周波数を選択するようにすることが好ましい。テーブルを参照することによって検出処理周波数を選択することにより、目標周波数から検出処理周波数を決定するための複雑な演算処理が不要となり、処理負荷の軽減を図ることができる。さらに、選択可能な複数の検出処理周波数の組み合わせが異なる複数のテーブルを記憶部に格納し、必要とされる回転数精度に基づいて1つのテーブルを選択し、選択したテーブルの中から検出処理制御部で発生すべき検出処理周波数を選択するようにしてもよい。このように複数のテーブルの中から1つを選択することにより、モータの回転数に要求される精度に応じて適切に検出処理周波数を選択できるようになる。
本発明によれば、センサレスブラシレスDCモータの回転数の制御を行うときに、非通電相の誘起電圧と基準電圧とを比較しゼロクロスの検出を行う際に用いる検出処理周波数を目標周波数に応じて適切に選択することにより、目標回転数にモータの回転数を正確に制御することが可能になる。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の一形態の制御装置を備えるモータ駆動システムを示している。このモータ駆動システムは、三相ブラシレスDCモータであるモータ1を直流電源2からの電力によって駆動するものである。モータ1は、ロータの回転位置を検出する例えばホール素子センサなどのセンサを備えないものである。直流電源2はその一端から電源電圧VDDを発生し、他端は接地点GNDに接続している。モータ1は、三相(U相、V相及びW相)のコイルがY結線(スター結線)で接続したものであり、図1において点Nは、各相のコイルの一端が共通に接続する中性点である。
モータ駆動システムは、直流電源2に接続してモータ1を矩形波で駆動するインバータ11と、ソフトウェア処理によってモータ1に関する制御動作を行いインバータ11に対する指令値を発生する制御装置14と、制御装置14とインバータ11との間にあって制御装置14からの指令値をインバータ11の駆動信号に変換するゲート駆動回路15とを備えている。制御装置14からの指令値は例えばモータの各相のコイルに印加される電圧で表されるが、ゲート駆動回路15は、指令値をPWM(パルス幅変調;Pulse Width Modulation)駆動におけるオン/オフのデューティー比に変換してインバータ11に駆動信号を出力する。
インバータ11は、ブラシレスDCモータの駆動に用いられる一般的な構成を有するものであって、U相に関し、直流電源2からの電源電圧VDDが供給される電源線にドレインが接続するトランジスタTrUPと、トランジスタTrUPのソースにドレインが接続したトランジスタTrUNと、カソードとアノードがそれぞれトランジスタTrUPのドレインとソースに接続するダイオードDUPと、カソードとアノードがそれぞれトランジスタTrUNのドレインとソースに接続するダイオードDUNと、トランジスタTrUP,TrUNのゲートにそれぞれ接続したゲート抵抗RUP,RUNとから構成されている。モータ1のU相のコイルの他端がトランジスタTrUPのソースとトランジスタTrUNのドレインとの接続点に接続している。トランジスタTrUNのソースは接地点GNDに接続している。ゲート駆動回路15からの駆動信号は、ゲート抵抗RUP,RUNを介してトランジスタTrUP,TrUNのゲートに印加される。トランジスタTrUP,TrUNとしては、例えばパワー電界効果トランジスタ(パワーFET)が用いられる。ダイオードDUP,DUNは、モータ1のコイルの自己誘導による電流や回生電流を還流するために設けられている。同様にインバータ11は、V相に関し、トランジスタTrVP,TrVNと、ダイオードDVP,DVNと、ゲート抵抗RVP,RVNとを備え、トランジスタTrVP,TrVNの相互の接続点にV相のコイルの他端が接続している。インバータ11は、W相に関し、トランジスタTrWP,TrWNとダイオードDWP,DWNとゲート抵抗RWP,RWNとを備え、トランジスタTrWP,TrWNの相互の接続点にW相のコイルの他端が接続している。
制御装置14は、電源電圧VDDを検出するためのA/D(アナログ−デジタル)変換回路16と、モータ1のU相、V相及びW相のコイルの端子電圧をそれぞれ検出するためのA/D変換回路16U,16V,16Wを内蔵している。モータ駆動システムにおいて、抵抗R1,R2を直列接続した分圧回路が直流電源2に対して並列に接続し、抵抗R1,R2の接続点の電圧がA/D変換回路16に入力している。モータ1のU相のコイルの端子、すなわちU相のコイルの端部のうちトランジスタTrUP,TrUNに接続する方の端部に対し、抵抗RU1,RU2を直列接続した分圧回路の一端が接続し、この分圧回路の他端は接地され、抵抗RU1,RU2の接続点の電圧すなわち分圧された端子電圧がA/D変換回路16Uに入力している。同様に、V相に対応して抵抗RV1,RV2からなる分圧回路が設けられ、この分圧回路で分圧された端子電圧がA/D変換回路16Vに入力し、W相に対応して抵抗RW1,RW2からなる分圧回路が設けられ、この分圧回路で分圧された端子電圧がA/D変換回路16Wに入力している。A/D変換回路16で検出された電源電圧VDDは、制御装置14が電源電圧VDDに基づいた制御を行なうために使用されるが、特に、VDD/2を算出してゼロクロス検出時の基準電圧として使用することができる。また、A/D変換回路16U,16V,16Wは、無通電相における誘起電圧の検出に使用される。
制御装置14についてさらに詳しく説明する。制御装置14は、基本的にはセンサレスブラシレスDCモータの駆動と制御に使用される一般的なものであり、A/D変換回路16,16U,16V,16Wのほかに、演算処理を実行しゲート駆動回路15に対する指令値を発生する処理部17と、制御装置14の動作に必要な各種のデータ類を格納する記憶部19とを備えている。制御装置14にはモータ1の回転数の制御のために例えば上位機器から目標回転数が与えられており、制御装置14は、検出処理周波数に基づくトリガによるプログラム割り込み処理によってモータ1におけるゼロクロスを検出し、通電パターンの切り替えを行うとともに、ゼロクロス間の時間間隔から換算される回転数に基づいて、モータ1の回転数の制御を行う。
ゼロクロス間の時間間隔から換算される回転数と実際のモータ1の回転数との差を回転数誤差と呼ぶことにすると、表1を用いて上述したように、回転数誤差が大きい場合に目標回転数に対してモータ1の回転数を正確に制御することが難しくなり、例えば、モータ1によってポンプを駆動する場合であれば、ポンプからの吐出流量にずれが生じる。モータ1の実際の回転数が目標回転数から大きく外れているときは多少の回転数誤差があってもモータの回転数を目標回転数に近づけるように制御することは容易である。したがって、目標回転数への制御を正確に行うためには、モータ1の回転数が目標回転数に近いときに回転数誤差が小さいことが必要である。ゼロクロス間の間隔から換算される回転数は検出処理周波数に応じた離散値をとるが、本実施形態ではこのことを利用して、ゼロクロス間の間隔から換算される離散値である回転数が目標回転数に近づくように、目標回転数に応じて検出処理周波数を変化させる。そのために本実施形態では、制御装置14は、可変周波数で検出処理周波数を発生する検出処理制御部18を備えている。検出処理制御部18にって目標回転数に応じた適切な検出処理周波数を発生し、この検出処理周波数に基づいてゼロクロス検出の割り込み処理を行うことによって、目標回転数の近傍において回転数誤差が小さくなり、モータ1の回転数を目標回転数に正確に制御できるようになる。
以下、本実施形態でのゼロクロス検出について説明する。図2は、本実施形態でのゼロクロス検出と対比するために、ゼロクロスの検出から回転数への換算までの一般的な処理を示している。モータ1が起動すると、まず、ステップ101において、一定周期での割り込みによるゼロクロス検出処理を行い、ステップ102においてゼロクロスを検出したかどうかを判定する。ゼロクロスを検出していなければ、次の割り込みを待つためにステップ101に戻り、ゼロクロスを検出していたら、ステップ103において、前回のゼロクロスからの経過時間を算出する。経過時間は、検出処理周波数でのクロックの数によって算出される。経過時間が算出されたら、ステップ104においてそれを回転数に換算し、ステップ105において、制御装置14が実行する速度制御ルーチンに対し、換算された回転数が伝達される。その後、処理は、次のゼロクロスの検出のためにステップ101に戻る。
図3は、このような一般的なゼロクロス検出処理でどのようにゼロクロスが検出されるかを示している。図中、ゼロクロス検出処理のグラフは、検出処理周波数による割り込みによってゼロクロス検出処理が実行されるタイミングを示している。ここでは検出処理周波数を20kHzとしている。下向きの矢印は、実際にゼロクロスが発生するタイミングを示しており、このタイミングは、検出処理周波数による割り込みによってゼロクロス検出処理が実行されるタイミングとは非同期である。また、ゼロクロス検出処理によりゼロクロスを検出したことが、検出モニタにおいて太線で示しされている。ここでは実際のゼロクロス発生タイミングは正確に225μs間隔であるとしているが、割り込みによるゼロクロス検出処理の実行タイミングと実際のゼロクロス発生タイミングとの関係により、ゼロクロス検出処理による検出結果では、ゼロクロスの検出タイミング間の間隔は等間隔ではない。このようなずれが回転数誤差の原因となる。
図4は、本実施形態におけるゼロクロス検出処理を実行するための構成をブロック図として示したものである。図1において各相に対応してそれぞれ設けられているA/D変換回路16U,16V,16Wは、いずれも非通電相の誘起電圧を検出するために用いることができるものであるが、図4では、非通電相の誘起電圧を検出するものの代表として、A/D変換回路16Uが描かれている。また、基準電圧を検出するためのA/D変換回路16Rが設けられている。基準電圧として電源電圧VDDの1/2を使用するのであれば、A/D変換回路16Rを使用せずに、図1に示した回路におけるA/D変換回路16を用い、このA/D変換回路16の出力を1/2に(すなわち1ビット右シフト)すればよい。A/D変換回路16U,16Rの出力側には、非通電相の誘起電圧と基準電圧との差を算出する減算器21が設けられ、減算器21の出力は2つに分岐し、一方は、遅延素子22を介して検出回路23に供給され、他方は検出回路23に直接供給される。A/D変換回路16U,16Rと遅延回路22には、検出処理制御部18から検出処理周波数のクロックCLKが供給され、A/D変換回路16U,16RはクロックCLKに基づいてA/D変換動作を行い、遅延素子22は1クロック分の遅延を与える。検出回路23は、遅延素子22を介して入力する前回の割り込み時の減算結果の符号と、遅延素子22を介さずに入力する今回の割り込み時の減算結果の符号とを比較して、ゼロクロスの発生の有無を検出する。検出回路23の出力側には、検出処理制御部18から検出処理周波数のクロックCLKが供給され、クロックCLKを基準としてゼロクロス間の時間間隔を数えて出力するカウンタ24が設けられている。
図4では、減算器21、遅延素子22、検出回路23及びカウンタ24がそれぞれハードウェア要素であるかのように記載されているが、実際には、これらの要素は、制御装置14の処理部17においてソフトウェアによって実現されるものである。また検出処理制御部18から検出処理周波数のクロックCLKが供給されていることから、これらの要素は、クロックCLKをトリガとする割り込み処理によって動作するものであることがわかる。本実施形態では、検出処理制御部18が発生するクロックCLKの周波数すなわち検出処理周波数を目標回転数に応じて変化させることとしている。次に、目標回転数に応じた検出処理周波数の選択について説明する。
表2は、三相ブラシレスDCモータにおいてプログラム割り込み処理によってゼロクロスを検出するとして検出処理周波数を18kHz、19kHz、20kHz、21kHz及び22kHzのそれぞれとした場合における、検出されたゼロクロス間の検出処理周波数でのクロック数と、このクロック数からゼロクロス間隔を算出して換算を行うことによって得られるモータの回転数との関係を示している。モータの回転数は毎分の回転数すなわちmin-1を単位として記載されている。検出処理周波数が20kHzであるときの回転数は、表1に示したものと同一である。
表2からも明らかなように、ゼロクロス間隔から換算される回転数は離散値をとるが、検出処理周波数を変えることによっても変化する。ある目標回転数にモータ1の回転数を制御する場合、ゼロクロス間隔から換算された離散値である回転数と目標回転数とが近い方が正確な制御を行うことができる。一方、検出処理周波数そのものは、制御装置14での処理負荷や割り込み処理の実行に要する時間などの制約により、極端に高くすることはできない。検出処理周波数を低くしすぎると、制御特性の悪化につながる。また、検出処理周波数を連続的に変化させることができるようにすることは、ハードウェア構成やソフトウェアの複雑化につながる。そこで、標準の検出処理周波数が与えられたとして、これよりも高い方と低い方とにそれぞれ数種類の周波数を用意し、目標回転数に応じて標準の検出処理周波数も含めたこれらの周波数の中から1つを選択できるようにすることが好ましい。一例として、標準の検出処理周波数を20kHzとしたときに、これよりも低周波数側では18kHzと19kHzとを用意し、高周波数側では21kHzと22kHzとを用意し、これらの5通りの周波数の中から目標回転数に応じて1つの周波数を検出処理周波数として選択する場合を考える。この場合、表2に示す結果を利用することができ、表2において離散値として表されている回転数の中で最も目標回転数に近いものを選択し、選択された回転数に対応する検出処理周波数を選択すればよいことになる。
実際には検出処理周波数の選択のための計算処理量を削減するために、目標回転数とそれに対応した検出処理周波数とを記述するテーブルを予め用意して記憶部19に格納しておき、目標回転数が与えられたときにこのテーブルを参照して検出処理周波数が選択される構成とすることが好ましい。テーブルの容量が大きくなることと、目標回転数の変化にともなって過度に多数回にわたって検出処理周波数が変化することとを避けたいので、これらのことも考慮すると、目標回転数ごとに選択すべき検出処理周波数として、一例として、表3に示すような結果が得られる。表3に示す結果は、18kHzから22kHzまでの範囲で1kHz刻みで検出処理周波数を選択可能としたときに、目標回転数に応じてどの検出処理周波数を選択すべきかを示している。テーブルにおいて選択可能な検出処理周波数の周波数刻みは1kHzに限られるものではなく、例えば、500Hz刻みや2kHz刻みとすることができ、さらには、モータ1の制御に要求される回転数精度に基づき、検出処理周波数における周波数刻みを変化させてもよい。例えば、周波数刻みが1kHzであるテーブルのほかに周波数刻みが500Hzであるテーブルや2kHzであるテーブルも用意し、必要とされる回転数精度に応じてテーブルを選択した上で、選択したテーブルの中から目標回転数に応じて検出処理周波数を選択するようにしてもよい。
図5は検出処理周波数を20kHzとしたときの目標回転数ごとの回転数誤差を示しており、図6は、表3に示すように目標回転数に応じて検出処理周波数を選択したときの目標回転数ごとの回転数誤差を示している。目標回転数によらずに検出処理周波数を20kHzに固定した場合には、目標回転数が大きくなるにつれて回転数誤差も大きくなり、特に毎分45000回転付近では回転数誤差が±10%の範囲から逸脱するようになる。これに対し、目標回転数に応じて検出処理周波数を変化させた場合には、検出処理周波数を変化させない場合に比べ、全体的に回転数誤差が小さくて±3%の範囲内に収まり、特に、目標回転数が高い領域において著しく回転数誤差が小さくなる。
本実施形態によれば、目標回転数に応じた検出処理周波数を記述したテーブルを参照し、目標回転数が与えられたときに目標回転数に応じて検出処理周波数を変化させることにより、全体としての処理負荷の増大を避けつつ回転数誤差を小さくすることができ、モータ1の回転数を目標回転数により正確に制御できるようになる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明に基づく制御方法及び制御装置の対象となるセンサレスブラシレスDCモータは三相のものに限定されるものではなく、本発明は、任意の相数のセンサレスブラシレスDCモータに適用可能である。
1…モータ;2…直流電源;11…インバータ;14…制御装置;15…ゲート駆動回路;16,16R,16U,16V,16W…A/D変換回路;17…処理部;18…検出処理制御部;19…記憶部。
Claims (8)
- ロータの回転位置を検出するセンサを備えないブラシレスDCモータであるモータの回転数を目標回転数に制御する制御方法であって、
前記モータの非通電相に発生する誘起電圧と基準電圧とを検出処理周波数に同期して比較し、比較結果に基づいてゼロクロス点を検出し、ゼロクロス点の相互間の時間間隔から前記モータの実際の回転数を求めて前記モータの制御を行うときに、前記目標回転数に基づいて適切な前記検出処理周波数を選択する制御方法。 - 選択可能な複数の検出処理周波数が設定され、前記複数の検出処理周波数の中から前記ゼロクロス点の検出に用いる検出処理周波数を選択する、請求項1に記載の制御方法。
- 前記目標回転数ごとに当該目標回転数に対する適切な前記検出処理周波数を示すテーブルを予め作成し、前記目標周波数が与えられたときに前記テーブルを参照して前記検出処理周波数を選択する請求項2に記載の制御方法。
- 前記複数の検出処理周波数の相互間の周波数間隔が変更可能である、請求項3に記載の制御方法。
- ロータの回転位置を検出するセンサを備えないブラシレスDCモータであるモータの回転数を目標回転数に制御する制御装置であって、
検出処理周波数を発生する検出処理制御部と、
前記モータの非通電相に発生する誘起電圧を取得してA/D変換を行うA/D変換回路と、
前記A/D変換回路で得られた値と基準電圧とを前記検出処理周波数に同期して比較し、比較結果に基づいてゼロクロス点を検出し、ゼロクロス点の相互間の時間間隔から前記モータの実際の回転数を求めて前記モータの制御を行う処理部と、
を備え、
前記目標回転数に基づいて適切な前記検出処理周波数を選択する制御装置。 - 選択可能な複数の検出処理周波数が設定され、前記複数の検出処理周波数の中から前記ゼロクロス点の検出に用いる検出処理周波数が選択される、請求項5に記載の制御装置。
- 前記目標回転数ごとに当該目標回転数に対する適切な前記検出処理周波数を示すテーブルが予め格納された記憶部をさらに備え、
前記目標周波数が与えられたときに前記テーブルの中から前記検出処理制御部で発生すべき前記検出処理周波数を選択する、請求項6に記載の制御装置。 - 前記記憶部に、前記選択可能な複数の検出処理周波数の組み合わせが異なる複数の前記テーブルが格納され、
必要とされる回転数精度に基づいて前記複数のテーブルの中から1つの前記テーブルが選択され、前記選択されたテーブルの中から前記検出処理制御部で発生すべき前記検出処理周波数が選択される、請求項7に記載の制御装置。
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CN117792199A (zh) * | 2024-02-23 | 2024-03-29 | 潍柴动力股份有限公司 | 一种永磁同步电机控制方法、装置、车辆及存储介质 |
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