1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1)は、少なくとも1相のコイルを有するモータ(5)を駆動するためのPWM信号である駆動制御信号(Sd,Suu,Sul,Svu,Svl,Swu,Swl)を生成する制御回路(2)と、前記モータの各相のコイル(Lu,Lv,Lw)に対応して設けられた互いに直列に接続されたハイサイドスイッチ(QuH,QvH,QwH)およびローサイドスイッチ(QuL,QvL,QwL)を含み、前記駆動制御信号に応じて前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互にオン・オフさせて、対応する相のコイルの通電方向を切り替える駆動回路(3)と、を備え、前記制御回路は、前記モータの所定の相(例えば、U相)のコイルの誘起電圧に同期し、且つ前記モータのロータの回転位置に対応する位置検出信号(Shu)に基づいて、前記所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点(P(tp))を決定する目標点決定部(12)と、前記PWM信号の1周期毎に、前記所定の相のコイルの駆動電圧(Vu)と、前記所定の相に対応する前記ハイサイドスイッチ(Suu)のオン期間(第2期間Th)およびオフ期間の少なくとも一方とを比較し、その比較結果に基づいて前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点(Q(tq))を推定する電流ゼロクロス点推定部(14)と、前記目標点決定部によって決定された前記目標点と前記電流ゼロクロス点推定部によって推定された前記ゼロクロス点との位相差(Δφ=tp-tq)に基づいて、前記コイル電流の位相調整の要否を判定する位相調整判定部(15)と、前記位相調整判定部による判定結果に基づいて、前記駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部(16)と、を有することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記電流ゼロクロス点推定部は、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間とが一致するか否かを判定するとともに、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間とが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミングと、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間とが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミングの少なくとも一方を検出し、検出したタイミングを前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点と推定してもよい。
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記電流ゼロクロス点推定部は、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間との差(|Th-Tv|)が閾値(Tth)未満の場合に、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間とが一致していると判定し、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間との差(|Th-Tv|)が閾値(Tth)以上の場合に、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間とが一致していないと判定してもよい。
〔4〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御信号生成部は、前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチのオン・オフ状態が切り替わるとき、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとが同時にオフするデッドタイム期間(Td)が形成されるように前記駆動制御信号を生成し、前記閾値は、前記デッドタイム期間に基づく値(Td)であってもよい。
〔5〕上記〔2〕乃至〔4〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記電流ゼロクロス点推定部は、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間とが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミングを、前記コイル電流の極性が正から負に切り替わるゼロクロス点と判定し、前記駆動電圧のオン期間と前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間とが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミングを、前記コイル電流の極性が負から正に切り替わるゼロクロス点であると判定してもよい。
〔6〕上記〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記位相調整判定部は、前記目標点と前記コイル電流のゼロクロス点との位相差を算出し、前記駆動制御信号の出力タイミングを前記位相差に応じた時間だけずらすように前記駆動制御信号生成部に指示してもよい。
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータユニット(100)は、上記〔1〕乃至〔6〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置(1)と、前記モータ(5)と、を備えることを特徴とする。
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係る方法は、少なくとも1相のコイルを有するモータを駆動するためのPWM信号である駆動制御信号を生成する制御回路(2)と、前記モータの各相のコイルに対応して設けられた互いに直列に接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを含み、前記駆動制御信号に応じて前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを交互にオン/オフさせて対応する相のコイルの通電方向を切り替える駆動回路(3)と、を備えるモータ駆動制御装置(1)によるモータ制御方法である。本方法は、前記制御回路が、前記モータの所定の相のコイルの誘起電圧に同期し、且つ前記モータのロータの回転位置に対応する位置検出信号に基づいて、前記所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点を決定する第1ステップ(S3)と、前記制御回路が、前記PWM信号の1周期毎に、前記所定の相のコイルの駆動電圧と、前記所定の相に対応する前記ハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間およびオフ期間の少なくとも一方とを比較し、その比較結果に基づいて前記所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する第2ステップ(S4)と、前記制御回路が、前記第1ステップにおいて決定された前記目標点と前記第2ステップにおいて推定された前記ゼロクロス点との位相差に基づいて、前記コイル電流の位相調整の要否を判定する第3ステップ(S52,S53)と、前記制御回路が、前記第3ステップにおける判定結果に基づいて、前記駆動制御信号を生成する第4ステップ(S54~S56)と、を含むことを特徴とする。
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
≪実施の形態≫
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えたモータユニットの構成を示す図である。
図1に示されるモータユニット100は、モータ5と、位置検出装置6と、モータ駆動制御装置1とを備えている。
モータ5は、少なくとも1つのコイルを有するモータである。例えば、モータ5は、3相(U相、V相、およびW相)のコイル(巻線)Lu,Lv,Lwを有するブラシレスDCモータである。
位置検出装置6は、モータ5の回転子(ロータ)の回転に応じた位置検出信号Shuを生成する装置である。位置検出装置6は、例えば、ホール(HALL)素子である。ホール素子は、ロータの磁極を検出し、ロータの回転に応じて電圧が変化するホール信号を出力する。ホール信号は、例えば、パルス信号であり、位置検出信号Shuとしてモータ駆動制御装置1に入力される。
モータユニット100において、位置検出装置6としての一つのホール素子が、モータ5のU相、V相、およびW相のコイルLu,Lv,Lwの何れか一つに対応する位置に配置されている。このため、位置検出装置6から出力されるホール信号は、モータ5のU相、V相、およびW相のコイルLu,Lv,Lwの何れか一つの誘起電圧に同期する信号となる。
本実施の形態では、位置検出装置6としての一つのホール素子は、例えば、U相のコイルに対応する位置に配置されている。これにより、位置検出信号(ホール信号)Shuは、モータ5のU相のコイルLuの誘起電圧に同期し、且つモータ5のロータの回転位置に対応する信号となる。
なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、具体例として、位置検出装置6は、位置検出装置6から出力される位置検出信号(ホール信号)Shuの立ち上がりエッジがU相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点から電気角30度遅れたタイミングで検出できる位置に配置されている。
モータ駆動制御装置1は、モータ5の駆動を制御する装置である。モータ駆動制御装置1は、例えば、U相のコイルLuに対応する位置に設けられた1つの位置検出装置6(ホール素子)からの位置検出信号Shuに基づく1センサ駆動方式により、モータ5の正弦波駆動を行う。
具体的には、モータ駆動制御装置1は、制御回路2と、駆動回路3と、相電圧検出回路4とを備えている。モータ駆動制御装置1は、外部の直流電源(不図示)から直流電圧Vddの供給を受ける。直流電圧Vddは、例えば、保護回路等を介してモータ駆動制御装置1内の電源ライン(不図示)に供給され、電源ラインを介して制御回路2および駆動回路3に電源電圧としてそれぞれ入力される。
なお、制御回路2には、直流電圧Vddが直接供給されるのではなく、例えば、レギュレータ回路によって直流電圧Vddを降圧した電圧が、電源電圧として制御回路2に供給されてもよい。
駆動回路3は、後述する制御回路2から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ5を駆動する回路である。駆動制御信号Sdは、モータ5の駆動を制御するための信号である。例えば、駆動制御信号Sdは、モータ5を正弦波駆動するためのPWM信号である。
駆動回路3は、駆動制御信号Sdに基づいて直流電圧Vddとグラウンド電位GNDとの間でモータ5のコイルの接続先を切り替えることにより、モータ電流の向きを切り替えてモータ5を回転させる。具体的に、駆動回路3は、モータ5の各相のコイルLu,Lu,Lwに対応して設けられ、互いに直列に接続されたハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHおよびローサイドスイッチQuL,QvL,QwLを含む。駆動回路3は、駆動制御信号SdとしてのPWM信号Suu,Sul,Svu,Svl,Swu,Swlに応じて、ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHとローサイドスイッチQuL,QvL,QwLをオン・オフさせて、各コイルLu,Lv,Lwの通電方向を切り替える。
PWM信号Suu,Sul,Svu,Svl,Swu,Swlは、ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHおよびローサイドスイッチQuL,QvL,QwLの6つのスイッチ毎に対応して入力され、対応するスイッチのオン・オフを切り替える。
例えば、ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHは、Pチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であり、ローサイドスイッチQuL,QvL,QwLは、Nチャネル型のMOSFETである。
なお、ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwH、およびローサイドスイッチQuL,QvL,QwLは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の種類のパワートランジスタであってもよい。
図1に示すように、U相のハイサイドスイッチQuHとローサイドスイッチQuLとは、直流電圧Vddとグラウンド電位GNDとの間に直列に接続されて、一つのスイッチングレグ(アーム)を構成している。ハイサイドスイッチQuHとローサイドスイッチQuLとの接続点は、コイルLuの一端に接続されている。ハイサイドスイッチQuHのオン・オフは、PWM信号Suuによって切り替えられる。ローサイドスイッチQuLのオン・オフは、PWM信号Sulによって切り替えられる。
V相のハイサイドスイッチQvHとローサイドスイッチQvLとは、直流電圧Vddとグラウンド電位GNDとの間に直列に接続されて、一つのスイッチングレグを構成している。ハイサイドスイッチQvHとローサイドスイッチQvLとの接続点は、コイルLvの一端に接続されている。ハイサイドスイッチQvHのオン・オフは、PWM信号Svuによって切り替えられる。ローサイドスイッチQvLのオン・オフは、PWM信号Svlによって切り替えられる。
W相のハイサイドスイッチQwHとローサイドスイッチQwLとは、直流電圧Vddとグラウンド電位GNDとの間に直列に接続されて、一つのスイッチングレグを構成している。ハイサイドスイッチQwHとローサイドスイッチQwLとの接続点は、コイルLwの一端に接続されている。ハイサイドスイッチQwHのオン・オフは、PWM信号Swuによって切り替えられる。ローサイドスイッチQwLのオン・オフは、PWM信号Swlによって切り替えられる。
なお、ハイサイドスイッチQuH,QvH,QwHおよびローサイドスイッチQuL,QvL,QwLとしての各トランジスタには寄生ダイオードが形成されており、これらのダイオードは、コイル電流を直流電圧Vddまたはグラウンド電位GNDに戻す還流ダイオードとして機能する。
なお、駆動回路3は、駆動制御信号Sdに基づいて各相のハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを駆動するためのプリドライブ回路を有していてもよい。また、図1に示すように、駆動回路3のグラウンド電位GND側には、モータ5の電流を検出するためのセンス抵抗が接続されていてもよい。
相電圧検出回路4は、モータ5の所定の相のコイルの駆動電圧を検出するための回路である。本実施の形態において、相電圧検出回路4は、例えば、U相のコイルLuの駆動電圧Vuを検出して、制御回路2に入力する。相電圧検出回路4は、例えば、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLが接続されるコイルLuの一端とグラウンド電位GNDとの間に接続された抵抗分圧回路である。
なお、図1には、相電圧検出回路4としての抵抗分圧回路によってコイルLuの駆動電圧Vuを分圧して制御回路2に入力する構成を一例として示しているが、相電圧検出回路4を設けることなく、制御回路2にコイルLuの駆動電圧Vuを直接入力してもよい。
制御回路2は、モータ駆動制御装置1の動作を統括的に制御するための回路である。本実施の形態において、制御回路2は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM、フラッシュメモリ等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力インターフェース回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置である。例えば、制御回路2は、マイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)である。
なお、制御回路2と駆動回路3とは、一つの半導体集積回路(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化された構成であってもよいし、個別の集積回路として夫々パッケージ化されて回路基板に実装され、回路基板上で互いに電気的に接続された構成であってもよい。
制御回路2は、駆動制御信号Sdを生成して駆動回路3に与えることにより、モータ5の通電制御を行う基本機能を有している。具体的に、制御回路2は、外部(例えば、上位装置)から入力された、モータ5の駆動に関する目標値を指示する駆動指令信号Scと、位置検出装置6から入力された位置検出信号Shuとに基づいて、モータ5が駆動指令信号Scで指定された駆動状態となるように駆動制御信号Sdを生成して駆動回路3に与える。
また、制御回路2は、上記基本機能に加えて、モータ5の駆動効率を向上させるために、モータ5の所定の相のコイルの誘起電圧の位相とコイル電流の位相とが一致するようにモータ5の通電タイミングを調整する機能(以下、「位相調整機能」とも称する。)を有する。
図1に示すように、制御回路2は、上述した各機能を実現するための機能部として、例えば、駆動指令解析部11、目標点決定部12、相電圧入力部13、電流ゼロクロス点推定部14、位相調整判定部15、および駆動制御信号生成部16を有している。
制御回路2の上述した各機能部は、例えば、制御回路2としてのMCUのプログラム処理によって実現される。具体的には、制御回路2としてのMCUを構成するプロセッサが、メモリに格納されたプログラムにしたがって各種の演算を行ってMCUを構成する各種周辺回路を制御することにより、上述した各機能部が実現される。
駆動指令解析部11は、例えば、上位装置(不図示)から出力された駆動指令信号Scを受信する。駆動指令信号Scは、モータ5の駆動に関する目標値を指示する信号であって、例えば、モータ5の目標回転速度を指示する速度指令信号である。
駆動指令解析部11は、駆動指令信号Scによって指定された目標回転速度を解析する。例えば、駆動指令信号Scが目標回転速度に対応するデューティ比を有するPWM信号である場合、駆動指令解析部11は、駆動指令信号Scのデューティ比を解析し、そのデューティ比に対応する回転速度の情報を目標回転速度S1として出力する。
駆動制御信号生成部16は、モータ5の回転速度が目標回転速度S1に一致するようにモータ5の操作量S3を算出し、算出した操作量S3に基づいて駆動制御信号Sdを生成する。なお、駆動制御信号生成部16の機能のうち位相調整に関する機能については、後述する。
駆動制御信号生成部16は、例えば、PWM指令部17およびPWM信号生成部18を有する。PWM指令部17は、駆動指令解析部11から出力された目標回転速度S1と、後述する位相調整判定部15からの判定結果S2とに基づいて、モータ5の操作量S3を算出する。
操作量S3は、モータ5を目標回転速度S1で回転させるために必要なモータ5の駆動量を指定する情報を含む。例えば、本実施の形態のようにモータ5をPWM駆動する場合には、操作量S3は、駆動制御信号SdとしてのPWM信号の周期(PWM周期)を指定する値と、PWM信号のオン期間を指定する値と、PWM信号の出力タイミングを指定する値とを含んでいる。なお、PWM信号の出力タイミングを指定する値の詳細については、後述する。
例えば、PWM指令部17は、駆動指令解析部11から出力された目標回転速度S1に基づいて、駆動制御信号SdのPWM周期を指定する値と、PWM信号のオン期間を指定する値とを算出し、操作量S3として出力する。
なお、モータ駆動制御装置1がフィードバック制御機能を有している場合には、例えば、PWM指令部17は、位置検出信号Shuに基づいてモータ5の実回転速度を算出し、算出した実回転速度が目標回転速度S1に一致するようにPID(Proportional-Integral-Differential)制御演算を行って、モータ5の操作量S3(PWM周期およびオン期間)を算出してもよい。
PWM信号生成部18は、PWM指令部17によって算出された操作量S3に基づいて、駆動制御信号Sdを生成する。具体的には、PWM信号生成部18は、操作量S3によって指定されたPWM周期およびオン期間を有する6種類のPWM信号Suu,Sul,Svu,Svl,Swu,Swlをそれぞれ生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。PWM信号Suuは、U相のハイサイドスイッチQuHのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Sulは、U相のローサイドスイッチQuLのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Svuは、V相のハイサイドスイッチQvHのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Svlは、V相のローサイドスイッチQvLのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Swuは、W相のハイサイドスイッチQwHのオン・オフを切り替える信号である。PWM信号Swlは、W相のローサイドスイッチQwLのオン・オフを切り替える信号である。
本実施の形態において、U相、V相、およびW相の各スイッチレグを構成するハイサイドスイッチとローサイドスイッチとが同時にオンしないようにするために、デッドタイム期間Tdが設けられている。すなわち、PWM信号生成部18は、U相、V相、およびW相の各スイッチレグを構成するハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチのオン/オフ状態が切り替わるとき、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとが同時にオフするデッドタイム期間Tdが形成されるように、駆動制御信号Sd(上記6種類のPWM信号)を生成する。なお、デッドタイム期間Tdの詳細については、後述する。
目標点決定部12、相電圧入力部13、電流ゼロクロス点推定部14、および位相調整判定部15は、上述したモータ5の位相調整機能を実現するための機能部である。各機能部について詳細に説明する前に、本実施の形態に係る位相調整機能の概要について説明する。
図2は、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1による位相調整機能を説明するための図である。
図2の上段には位置検出装置6から出力される位置検出信号(ホール信号)Shuの波形200が示され、中段には、U相のコイルLuの駆動電圧Vuの波形201とU相のコイルLuの誘起電圧の波形202が示され、下段には、U相のコイルLuのコイル電流Iuの波形203が示されている。
上述したように、一般に、モータの回転速度、モータの負荷、および温度によるモータ特性の変化等により、モータの誘起電圧の位相とコイル電流の位相との間にずれが生じる場合がある。例えば、図2には、U相のコイル電流Iuの位相が、U相のコイルLuの誘起電圧の位相に対して遅れている場合が示されている。
図2に示すように、コイル電流Iuと誘起電圧の間に位相のずれが生じた場合、モータ5の駆動効率が低下する。そこで、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、コイル電流Iuと誘起電圧の間のずれ(位相差)を検出し、その位相差が小さくなるように、モータの通電タイミングを調整する。
具体的には、先ず、モータ駆動制御装置1は、所定の相に対応して設けられた位置検出装置6(ホール素子)から出力される位置検出信号(ホール信号)Shuが所定の相のコイルの誘起電圧と同期することを利用して、誘起電圧のゼロクロス点を検出し、コイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pとする。
本実施の形態では、例えば、図2に示すように、位置検出装置6の位置検出信号Shuの立ち上がりエッジがU相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点から電気角30度遅れたタイミングで検出できる位置に位置検出装置6を予め配置しておく。これにより、モータ駆動制御装置1は、位置検出信号Shuのエッジを検出することにより、コイルLuの誘起電圧のゼロクロス点を検出(推定)することができる。
なお、位置検出装置6の設置場所は、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジが検出されるタイミングと所定の相のコイルの誘起電圧のゼロクロス点との位相差が分かっている位置であればよく、上述の例に限定されない。
モータ駆動制御装置1は、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを検出し、検出した少なくとも一方のエッジから誘起電圧のゼロクロス点を推定する。モータ駆動制御装置1は、推定した誘起電圧のゼロクロス点をコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pとして決定する。
次に、モータ駆動制御装置1は、所定の相(本実施の形態では、U相)のコイルの駆動電圧(相電圧)と、所定の相に対応するハイサイドスイッチをオン・オフするための信号のオン期間およびオフ期間の少なくとも一方とを比較し、その比較結果に基づいて、モータの所定の相のコイル電流のゼロクロス点Qを推定する。なお、コイル電流のゼロクロス点の推定方法の詳細は後述する。
そして、モータ駆動制御装置1は、推定したコイル電流Iuのゼロクロス点Qがコイル電流Iuのゼロクロスの目標点P(誘起電圧のゼロクロス点)に一致するように、コイル電流Iuの位相を調整する。例えば、図2に示すように、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qが目標点Pに一致するように、U相のコイルLuの駆動電圧Vuを印加するタイミングを調整する(進角制御または遅角制御を行う)ことにより、コイル電流Iuの位相を調整する。これにより、モータ駆動制御装置1は、モータ5の駆動効率を向上させることが可能となる。
以下、上述した位相調整機能を実現するための各機能部について、詳細に説明する。
目標点決定部12は、モータ5の所定の相のコイルの誘起電圧に同期し、且つモータ5のロータの回転位置に対応する位置検出信号Shuに基づいて、所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点を決定する。
本実施の形態では、目標点決定部12は、U相のコイルLuの誘起電圧に同期する位置検出信号Shuの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを検出し、検出したエッジに基づいて、U相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点、すなわちU相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pを決定する。例えば、図2において、目標点決定部12が時刻t1において位置検出信号Shuの立ち上がりエッジを検出した場合、目標点決定部12は、時刻t1よりも電気角30度だけ進んだ時刻(タイミング)t0を目標点Pと決定する。なお、位置検出信号Shuの立ち下がりエッジを検出する場合も同様の方法で目標点Pを決定する。
相電圧入力部13は、モータ5の所定の相の電圧の値を取得する。例えば、相電圧入力部13は、相電圧検出回路4によって検出されたU相のコイルLuの駆動電圧Vuを取得し、デジタル値に変換して電流ゼロクロス点推定部14に与える。
電流ゼロクロス点推定部14は、PWM信号である駆動制御信号Sdの1周期毎に、所定の相のコイルの駆動電圧(相電圧)と、所定の相に対応するハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間およびオフ期間の少なくとも一方とを比較し、その比較結果に基づいて、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定する機能部である。以下、電流ゼロクロス点推定部14によるコイル電流のゼロクロス点の推定方法について、図を用いて詳細に説明する。
図3Aは、U相のコイル電流Iuが正(+)極性から負(-)極性に切り替わるときのU相のPWM信号Suu,SulおよびコイルLuの駆動電圧Vuの変化を示すタイミングチャートである。
図3Bは、U相のコイル電流Iuが負(-)極性から正(+)極性に切り替わるときのU相のPWM信号Suu,SulおよびコイルLuの駆動電圧Vuの変化を示すタイミングチャートである。
図3Aおよび図3Bにおいて、上段から下段に向かって、U相のコイル電流Iu、U相のハイサイドスイッチQuHを駆動するためのPWM信号Suu、U相のローサイドスイッチQuLを駆動するためのPWM信号Sul、U相のコイルLuの駆動電圧Vuの順にそれぞれの波形が示されている。なお、図3Aおよび図3Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電流または電圧をそれぞれ表している。
図4Aは、U相のコイルLuに正(+)極性のコイル電流が流れている状態において、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLがオフしたときの状態を説明するための図である。
図4Bは、U相のコイルLuに負(-)極性のコイル電流が流れている状態において、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLがオフしたときの状態を説明するための図である。
例えば、図3Aに示すように、PWM信号Suuがハイレベルであり、PWM信号Sulがローレベルであるとき、U相のハイサイドスイッチQuHがオンし、且つU相のローサイドスイッチQuLがオフする。このとき、直流電圧VddからU相のハイサイドスイッチQuHを経由してU相のコイルLuに電流が流れ込むため、U相のコイル電流Iuは正(+)極性となる。
この状態、すなわちU相のコイルLuに正(+)極性のコイル電流Iuが流れている状態において、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLを共にオフしたとき、コイルLuは電流を流し続けようとする。そのため、図4Aに示すように、グラウンド電位GNDからローサイドスイッチQuLの寄生ダイオードを経由して、正極性のコイル電流Iuが流れる。その結果、コイルLuの駆動電圧Vuがグラウンド電位GND付近まで低下する。
したがって、図3Aに示すように、U相のコイル電流Iuが正(+)極性であるときのU相のハイサイドスイッチQuHとローサイドスイッチQuLとが共にオフするデッドタイム期間Tdでは、U相の駆動電圧Vuはローレベルとなる。
その結果、図3Aに示すように、U相のコイル電流Iuが正(+)極性となる期間では、PWM信号Suuの1周期において、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなる第1期間Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのオン・オフを切り替えるPWM信号Suuがハイレベルとなる第2期間Thとが一致する。
一方、図3Bに示すように、PWM信号Suuがローレベルであり、PWM信号Sulがハイレベルであるとき、U相のハイサイドスイッチQuHがオフし、U相のローサイドスイッチQuLがオンする。このとき、U相のコイルLuからU相のローサイドスイッチQuLを経由してグラウンド電位GND側に電流が流れ込むため、U相のコイル電流Iuは負(-)極性となる。
この状態、すなわちU相のコイルLuに負(-)極性のコイル電流Iuが流れている状態において、U相のハイサイドスイッチQuHおよびローサイドスイッチQuLを共にオフしたとき、コイルLuは電流を流し続けようとする。そのため、図4Bに示すように、U相のコイルLuから、ハイサイドスイッチQuHの寄生ダイオードを経由して、直流電圧Vdd側に負極性のコイル電流Iuが流れる。その結果、コイルLuの駆動電圧Vuが直流電圧Vdd付近まで上昇する。
したがって、図3Bに示すように、U相のコイル電流Iuが負(-)極性であるときのU相のハイサイドスイッチQuHとローサイドスイッチQuLとが共にオフするデッドタイム期間Tdでは、U相の駆動電圧Vuはハイレベルとなる。
その結果、図3Bに示すように、U相のコイル電流Iuが負(-)極性となる期間では、PWM信号Suuの1周期において、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなる第1期間Tvよりも、U相のハイサイドスイッチQuHのオン・オフを切り替えるPWM信号Suuがハイレベルとなる第2期間Thの方が長くなり、第1期間Tvと第2期間Thとが不一致となる。
以上説明したように、モータをPWM駆動するとき、PWM信号Suuの1周期において、所定の相のコイル電流が正極性となる期間では、第1期間Tvと第2期間Thとが一致し、コイル電流が負極性となる期間では、第1期間Tvと第2期間Thとが不一致となる。
したがって、図3Aおよび図3Bに示すように、第1期間Tvと第2期間Thとが一致する状態から第1期間Tvと第2期間Thとが不一致となる状態に遷移するタイミングと、第1期間Tvと第2期間Thとが不一致の状態から第1期間Tvと第2期間Thとが一致する状態に遷移するタイミングとを検出すれば、所定の相のコイル電流のゼロクロス点を推定することが可能となる。
そこで、電流ゼロクロス点推定部14は、相電圧入力部13によって取得したU相のコイルLuの駆動電圧VuとU相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuとを監視し、PWM信号Suuの1周期毎に、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなる第1期間Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがハイレベルとなる第2期間Thとを比較して、第1期間Tvと第2期間Thとが一致するか否かを判定する。
上述したように、駆動電圧Vuのハイレベルまたはローレベルへの切り替わり、およびPWM信号Suuのハイレベルまたはローレベルへの切り替わりは、U相のハイサイドスイッチQuHのオン・オフの切り替わりに対応している。したがって、以下の説明では、駆動電圧Vuがハイレベルとなる第1期間Tvを「オン期間Tv」と、PWM信号Suuがハイレベルとなる第2期間Thを「オン期間Th」と称する場合がある。
オン期間(第1期間)Tvとオン期間(第2期間)Thが一致しているか否かの判定は、以下のように行えばよい。
例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなるオン期間Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがハイレベルとなるオン期間Thとの差|Th-Tv|を算出し、その差|Th-Tv|が閾値Tth以上であるか否かを判定する。
差|Th-Tv|が閾値Tth以上である場合には、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致していないと判定し、U相のコイル電流Iuが負極性であると判定する。一方、差|Th-Tv|が閾値Tth未満である場合には、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致していると判定し、U相のコイル電流Iuが正極性であると判定する。
ここで、オン期間Tvおよびオン期間Thの一致/不一致を判定するための閾値Tthは、PWM信号である駆動制御信号Sdのデッドタイム期間Tdに基づいて設定すればよい。例えば、Tth=Tdとしてもよい。
電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミングと、オン期間Tvとオン期間Thとが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミングの少なくとも一方を検出し、検出したタイミングをU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qと推定する。
具体的には、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイルLuの駆動電圧Vuのオン期間(第1期間Tv)とU相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号のオン期間(第2期間Th)とが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミングを、コイル電流Iuの極性が正から負に切り替わるゼロクロス点Qと判定する。また、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミングを、コイル電流Iuの極性が負から正に切り替わるゼロクロス点Qであると判定する。
例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致する状態(コイル電流Iuが正極性)においてハイレベルとなり、オン期間Tvとオン期間Thとが一致しない状態(コイル電流Iuが負極性)においてローレベルとなるゼロクロス点検出信号Sctを位相調整判定部15に出力する。
これにより、位相調整判定部15は、ゼロクロス点検出信号Sctのエッジ(立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジ)を検出することにより、コイル電流Iuのゼロクロス点Qを知ることができる。例えば、ゼロクロス点検出信号Sctがハイレベルからローレベルに切り替わる立ち下がりエッジが検出されたタイミングが、コイル電流Iuが正極性から負極性に切り替わるゼロクロス点Qとなり、ゼロクロス点検出信号Sctがローレベルからハイレベルに切り替わる立ち上がりエッジが検出されたタイミングが、コイル電流Iuが負極性から正極性に切り替わるゼロクロス点Qとなる。
なお、本実施の形態では、上述したように、電流ゼロクロス点推定部14が、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなるオン期間(第1期間)Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがハイレベルとなるオン期間(第2期間)Thとを比較して、コイル電流Iuのゼロクロス点Qを決定する場合を例示したが、これに限られない。例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、PWM信号Suuの1周期毎に、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがローレベルとなるオフ期間と、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがローレベルとなるオフ期間とを比較し、2つのオフ期間が互いに一致するか否かを判定して、コイル電流Iuのゼロクロス点Qを決定してもよい。
位相調整判定部15は、目標点決定部12によって決定されたコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pと電流ゼロクロス点推定部14によって推定されたコイル電流Iuのゼロクロス点Qとの位相差Δφに基づいて、コイル電流の位相調整の要否を判定する。
例えば、図2に示すように、位相調整判定部15は、目標点決定部12によって決定された目標点P(U相のコイルLuの誘起電圧のゼロクロス点)の位相(時刻tp)から、電流ゼロクロス点推定部14によって推定されたコイル電流Iuのゼロクロス点Qの位相(時刻tq)を減算した位相差Δφ(=tp-tq)を算出する。
位相調整判定部15は、駆動制御信号Sdの出力タイミングを、位相差Δφ(=tp-tq)に応じた時間だけずらすように、駆動制御信号生成部16に指示する。
具体的には、位相調整判定部15は、位相差Δφが正(+)の値である場合、例えば、位相差Δφが+φth以上である場合には、コイル電流Iuの位相がU相のコイルLuの誘起電圧の位相より進んでいると判定し、コイル電流Iuの位相を遅らせる進角制御を駆動制御信号生成部16に指示する。例えば、位相調整判定部15は、コイル電流Iuを位相差Δφだけ遅角させる進角制御の実行を指示する判定結果S2を出力する。
位相差Δφが負(-)の値である場合、例えば、位相差Δφが-φth以下である場合には、位相調整判定部15は、コイル電流Iuの位相がU相のコイルLuの誘起電圧の位相より遅れていると判定し、コイル電流Iuの位相を進める進角制御の実行を駆動制御信号生成部16に指示する。例えば、位相調整判定部15は、コイル電流Iuを位相差Δφだけ進角させる進角制御の実行を指示する判定結果S2を出力する。
また、位相調整判定部15は、例えば、位相差Δφが-φthより大きく、且つ+φthより小さい(-φth<Δφ<+φth)場合には、コイル電流Iuの位相がU相のコイルLuの誘起電圧の位相と略一致していると判定し、進角制御および遅角制御のいずれも実行しないことを指示する判定結果S2を出力する。
駆動制御信号生成部16は、位相調整判定部15の判定結果S2に基づいて、コイル電流Iuのゼロクロス点Qとゼロクロスの目標点Pと差が小さくなるように駆動制御信号Sdを生成する。具体的には、PWM指令部17が、位相調整判定部15の判定結果S2に基づいて、PWM信号の出力タイミングを指定する値を生成し、PWM周期およびPWM信号のオン期間の値とともに操作量S3として出力する。
ここで、PWM信号の出力タイミングを指定する値とは、駆動制御信号SdとしてのPWM信号を出力するための基準時刻に対する時間的なずれ幅(オフセット時間)を指定する値である。
例えば、位相差Δφだけ進角させる進角制御の実行を指示する判定結果S2が位相調整判定部15から出力された場合には、PWM指令部17は、基準時刻よりも位相差Δφに相当する時間Δtφだけ早くPWM信号を出力させることを指示する値“-Δtφ”を算出し、PWM信号の出力タイミングを指定する値とする。
また、例えば、位相差Δφだけ遅角させる進角制御の実行を指示する判定結果S2が位相調整判定部15から出力された場合には、PWM指令部17は、基準時刻よりも位相差Δφに相当する時間Δtφだけ遅くPWM信号を出力させることを指示する値“+Δtφ”を算出し、PWM信号の出力タイミングを指定する値とする。
また、例えば、位相調整判定部15からの判定結果S2により、進角制御および遅角制御のいずれの実行も指示しない判定結果S2が出力された場合には、PWM指令部17は、PWM信号の出力タイミングを指定する値を“0(ゼロ)”とする。
PWM信号生成部18は、駆動制御信号Sdを出力するとき、操作量S3に含まれるPWM信号の出力タイミングを指定する値に基づいて、駆動制御信号Sdを出力するタイミングを変化させる。例えば、駆動制御信号Sdを出力するための基準時刻が予め設定されており、PWM信号生成部18は、基準時刻から、PWM信号の出力タイミングを指定する値によって指定された時間だけずらしたタイミングで、駆動制御信号Sdを出力する。
例えば、PWM信号の出力タイミングを指定する値が“+Δtφ”である場合、PWM信号生成部18は、操作量S3に含まれるPWM周期およびオン期間の情報に基づいて生成した駆動制御信号Sdを、基準時刻よりもΔtφだけ遅らせて出力する。
例えば、PWM信号の出力タイミングを指定する値が“-Δtφ”である場合、PWM信号生成部18は、操作量S3に含まれるPWM周期およびオン期間の情報に基づいて生成した駆動制御信号Sdを、基準時刻よりもΔtφだけ早く出力する。
また、例えば、PWM信号の出力タイミングを指定する値が“0(ゼロ)”である場合、PWM信号生成部18は、操作量S3に含まれるPWM周期およびオン期間の情報に基づいて生成した駆動制御信号Sdを、出力タイミングをずらすことなく、基準時刻に出力する。なお、出力タイミングをずらさないということは、その時点で位相調整(進角、遅角制御)が行われていれば、その位相調整を維持することを意味する。
次に、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によるモータ5の駆動制御の流れについて説明する。
図5は、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によるモータ駆動制御処理の流れを示すフローチャートである。
例えば、直流電圧Vddがモータ駆動制御装置1に投入され、モータ駆動制御装置1が起動したとき、先ず、モータ駆動制御装置1は、駆動指令信号Scが入力されているか否かを判定する(ステップS1)。駆動指令信号Scが入力されていない場合(ステップS1:NO)には、モータ駆動制御装置1は駆動指令信号Scが入力されるまで待機する。
駆動指令信号Scが入力された場合(ステップS1:YES)、モータ駆動制御装置1は、モータ5の駆動制御を開始する(ステップS2)。具体的には、駆動制御信号生成部16が、駆動指令解析部11によって解析されたモータ5の目標回転速度S1に基づいてPWM周期とオン期間とを決定し、決定したPWM周期およびオン期間を有する6種類のPWM信号Suu等を生成し、駆動制御信号Sdとして駆動回路3に入力する。これにより、駆動回路3がモータ5のコイルLu,Lv,Lwの通電方向を切り替えて、モータ5を回転させる。
次に、モータ駆動制御装置1は、U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点Pを決定する(ステップS3)。例えば、上述したように、目標点決定部12が、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジから電気角30度だけ進んだタイミングを目標点Pと決定する(図2参照)。
次に、モータ駆動制御装置1は、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点を推定する(ステップS4)。
図6は、図5におけるU相のモータ電流Iuのゼロクロス点を推定する処理(ステップS4)の流れを示すフローチャートである。
ステップS4において、先ず、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のハイサイドスイッチQuHを駆動するPWM信号Suuのデューティ比が0%であるか否かを判定する(ステップS41)。
PWM信号Suuのデューティ比が0%である場合(ステップS41:YES)、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイル電流Iuが負極性であると判定する(ステップS44)。PWM信号Suuのデューティ比が0%でない場合(ステップS41:NO)、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイルLuの駆動電圧Vuがハイレベルとなるオン期間Tvと、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suuがハイレベルとなるオン期間Thとの差|Th-Tv|を算出し、差|Th-Tv|が閾値Tth以上であるか否かを判定する(ステップS42)。
オン期間Tvとオン期間Thとの差|Th-Tv|が閾値Tth以上である場合には(ステップS42:YES)、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致していないと判定し、U相のコイル電流Iuが負極性であると判定する(ステップS44)。
一方、オン期間Tvとオン期間Thとの差|Th-Tv|が閾値Tth未満である場合には(ステップS42:NO)、電流ゼロクロス点推定部14は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致していると判定し、U相のコイル電流Iuが正極性であると判定する(ステップS43)。
ステップS43またはステップS44の後、電流ゼロクロス点推定部14は、モータ5のコイル電流Iuの極性が切り替わったか否かを判定する(ステップS45)。例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、ステップS43またはステップS44で判定したコイル電流Iuの極性と、その前のステップS43またはステップS44で判定したコイル電流Iuの極性とが相違するか否かを判定する。
コイル電流Iuの極性が切り替わっていない場合(ステップS45:NO)、すなわち、ステップS43またはステップS44で判定したコイル電流Iuの極性と、その前のステップS43またはステップS44で判定したコイル電流Iuの極性とが一致する場合、電流ゼロクロス点推定部14は、ステップS41に戻り、ステップS41~S45までの処理を再度実行する。
一方、コイル電流Iuの極性が切り替わっている場合(ステップS45:YES)、すなわち、ステップS43またはステップS44で判定したコイル電流Iuの極性と、その前のステップS43またはステップS44で判定したコイル電流Iuの極性とが一致しない場合、電流ゼロクロス点推定部14は、U相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qを推定する(ステップS46)。例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、ステップS43またはステップS44が実行された時刻とその直前のステップS43またはステップS44が実行された時刻との間の期間(ゼロクロス点存在範囲)Tz1(またはTz2)内の一点をU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qとする(図3Aまたは図3B参照)。これにより、ステップS4の処理が終了する。
図5に示すように、ステップS4の終了後、モータ駆動制御装置1は、モータ5の通電タイミングの調整を行う(ステップS5)。
図7は、図5におけるモータ5の通電タイミングの調整処理(ステップS5)の流れを示すフローチャートである。
ステップS5において、先ず、位相調整判定部15は、ステップS3で決定した目標点PとステップS4で推定したU相のコイル電流Iuのゼロクロス点Qとの位相差Δφ(=tp-tq)を算出する(ステップS51)。
次に、位相調整判定部15は、ステップS51で算出した位相差Δφが+φth以上であるか否かを判定する(ステップS52)。位相差Δφが+φth以上である場合には(ステップS52:YES)、位相調整判定部15は、コイル電流Iuの位相がU相のコイルLuの誘起電圧の位相より進んでいると判定し、コイル電流Iuの位相を遅らせる遅角制御の実行を駆動制御信号生成部16に指示する(ステップS54)。これにより、上述したように、駆動制御信号生成部16が、位相差Δφに相当する時間Δtφだけ基準時刻よりも遅らせたタイミングで駆動制御信号Sdを出力する。
一方、ステップS52において、位相差Δφが+φth未満の場合には(ステップS52:NO)、位相調整判定部15は、位相差Δφが-φth以下であるか否かを判定する(ステップS53)。位相差Δφが-φth以下である場合(ステップS53:YES)、位相調整判定部15は、コイル電流Iuの位相がU相のコイルLuの誘起電圧の位相より遅れていると判定し、コイル電流Iuの位相を進ませる進角制御の実行を駆動制御信号生成部16に指示する(ステップS55)。これにより、上述したように、駆動制御信号生成部16が、位相差Δφに相当する時間Δtφだけ基準時刻よりも早いタイミングで駆動制御信号Sdを出力する。
一方、ステップS53において、位相差Δφが-φthより大きい場合(ステップS53:NO)、位相調整判定部15は、コイル電流Iuのゼロクロス点Qが目標点Pの目標範囲内にあると判定し、コイル電流Iuの位相調整を駆動制御信号生成部16に指示しない(ステップS56)。これにより、上述したように、駆動制御信号生成部16が、出力タイミングをずらすことなく、基準時刻において駆動制御信号Sdを出力する。
以上により、ステップS5の処理が終了する。
図5に示すように、ステップS5の終了後、モータ駆動制御装置1は、ステップS2に戻り、ステップS2~S6の処理を繰り返し実行する。これにより、駆動効率が低下することなく、モータ5の回転が継続する。
図8は、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によってモータ5のコイル電流の位相調整を行ったときの各信号の電圧およびコイル電流の変化を表すタイミングチャートである。
同図には、モータ駆動制御装置1によってモータ5のU相のコイル電流Iuの位相調整が実行されたときのモータユニット100の各電圧および電流の状態が示されている。
図8において、上段から下段に向かって、位置検出信号(ホール信号)Shu、U相のハイサイドスイッチQuHのPWM信号Suu、U相の駆動電圧Vu、ゼロクロス点検出信号Sct、およびU相のコイル電流Iuの順に、それぞれの波形が示されている。また、図8において、横軸は時間を表し、縦軸は電圧または電流を表している。
図8に示されるように、時刻t1においてU相のコイル電流Iuが負から正に切り替わるゼロクロス点Qが検出され、そのゼロクロス点Qが、位置検出信号(ホール信号)Shuの立ち上がりエッジから電気角30度だけ位相が進んだ位置にある目標範囲(U相のコイル電流Iuのゼロクロスの目標点P)に一致するようにコイル電流Iuの位相が調整されていることが理解される。これにより、モータ5の誘起電圧とコイル電流Iuの位相が略一致することになるので、モータ5の駆動効率を向上させることが可能となる。
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、モータ5の所定の相のコイルの誘起電圧に同期する位置検出信号Shuに基づいて、所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点Pを決定するとともに、所定の相のコイルの駆動電圧のオン期間(第1期間)Tvと、所定の相のコイルを駆動するハイサイドスイッチをオン・オフさせる信号のオン期間(第2期間)Thとを比較し、その比較結果に基づいて所定の相のコイル電流のゼロクロス点Qを推定する。モータ駆動制御装置1は、推定した所定の相のコイル電流のゼロクロス点Qとゼロクロスの目標点Pとの位相差Δφ(=tp-tq)に基づいて、コイル電流の位相調整の要否を判定し、判定結果に基づいて、モータ5を駆動するための駆動制御信号Sd(PWM信号)を生成する。
上述したように、モータ5の所定の相のコイルに対応する位置に位置検出装置6(ホール素子)を配置することにより、所定の相のコイルの誘起電圧に同期した位置検出信号Shuを得ることができる。そして、位置検出信号Shuと誘起電圧との間の位相差が分かっていれば、位置検出信号Shuの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジに基づいて、誘起電圧のゼロクロス点、すなわち、モータ5の所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点Pを決定することが可能となる。
更に、上述したように、モータ5の所定の相(例えば、U相)のコイル電流が正(+)極性である期間ではオン期間Tvとオン期間Thとが一致し、コイル電流が負(-)極性である期間ではオン期間Tvとオン期間Thとが不一致となるので、オン期間Tvとオン期間Thとを比較することにより、コイル電流が正極性から負極性に切り替わるゼロクロス点またはコイル電流が負極性から正極性に切り替わるゼロクロス点を検出することが可能となる。
具体的には、モータ駆動制御装置1は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致するか否かを判定するとともに、オン期間Tvとオン期間Thが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミングと、オン期間Tvとオン期間Thが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミングの少なくとも一方を検出し、検出したタイミングを所定の相のコイル電流のゼロクロス点と推定する。
これによれば、モータ5のコイル電流を直接モニタしなくても、コイル電流のゼロクロス点を容易に推定することが可能となる。
そして、モータ駆動制御装置1は、所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点Pと所定の相のコイル電流のゼロクロス点Qとの位相差Δφに応じて位相調整を行うことにより、モータの所定の相のコイルの誘起電圧の位相とコイル電流の位相との位相差を小さくすることができる。
以上のように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、モータの駆動効率を向上させることが可能となる。
また、モータ駆動制御装置1は、オン期間Tvとオン期間Thとの差|Th-Tv|が閾値Tth未満場合に、オン期間Tvとオン期間Thとが一致していると判定し、オン期間Tvとオン期間Thとの差|Th-Tv|が閾値Tth以上の場合に、オン期間Tvとオン期間Thとが一致していないと判定する。
これによれば、オン期間Tvとオン期間Thとが理論上一致する条件であるにも関わらず、例えば、ハイサイドスイッチとしてのトランジスタの寄生ダイオード等の種々の要因によってオン期間Tvとオン期間Thとが完全に一致しない状態が発生した場合であっても、オン期間Tvとオン期間Thの一致・不一致を精度よく判定することが可能となる。
また、モータ駆動制御装置1は、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチのオン・オフ状態が切り替わるとき、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとが同時にオフするデッドタイム期間Tdが形成されるように駆動制御信号Sdを生成する。オン期間Tvとオン期間Thの一致・不一致を判定するための閾値Tthは、デッドタイム期間Tdに基づく値である。
図3Aおよび図3Bに示したように、オン期間Tvとオン期間Thとが不一致の場合、理論上、オン期間Tvは、デッドタイム期間Tdの2倍の時間だけオン期間Thよりも長くなる。すなわち、オン期間Tvとオン期間Thとの差はデッドタイム期間Tdに基づくので、例えば、Tth=Tdに設定することにより、オン期間Tvとオン期間Thの一致・不一致に関する判定精度を更に向上させることができる。
また、モータ駆動制御装置1は、オン期間Tvとオン期間Thとが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミングを、コイル電流の極性が正から負に切り替わるゼロクロス点と判定し、オン期間Tvとオン期間Thとが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミングを、コイル電流の極性が負から正に切り替わるゼロクロス点であると判定する。
これによれば、コイル電流の極性が正から負に切り替わるゼロクロス点とコイル電流の極性が負から正に切り替わるゼロクロス点とを容易に区別して検出することが可能となる。
また、モータ駆動制御装置1は、所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点Pとコイル電流のゼロクロス点Qとの位相差Δφ(=tp-tq)を算出し、駆動制御信号Sdの出力タイミングを、その位相差Δφに応じた時間Δtφ(=tp-tq)だけずらす。
これによれば、所定の相のコイル電流のゼロクロスの目標点Pとコイル電流のゼロクロス点Qとの位相差Δφ、すなわち誘起電圧の位相とコイル電流の位相とのずれ幅に応じた分だけコイル電流(コイルの駆動電圧)の位相を調整するので、コイル電流の位相を誘起電圧の位相により確実に近づけることが可能となる。すなわち、上述した特許文献1のようにコイル電流のゼロクロス点を正確に検出せずに進角制御または遅角制御を行う従来技術に比べて、より高精度な位相調整が可能となり、モータの駆動効率をより向上させることが可能となる。
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施の形態では、モータ5の3相(U相、V相、およびW相)のうちU相のコイルに対して位置検出装置6を配置するとともに、U相の駆動電圧Vuおよびコイル電流Iuのゼロクロス点を検出する場合を例示したが、これに限れず、V相のコイルLvに対して位置検出装置6を配置して、V相の駆動電圧Vvおよびコイル電流Ivのゼロクロス点を検出してコイル電流Ivの位相調整を行ってもよいし、W相のコイルLwに対して位置検出装置6を配置して、W相の駆動電圧Vwおよびコイル電流Iwのゼロクロス点を検出してコイル電流Iwの位相調整を行ってもよい。また、U相、V相、W相のうちの2つの相あるいは全ての相に対して位置検出装置6を配置し、いずれかの相の駆動電圧およびコイル電流のゼロクロス点を検出し、検出した相のコイル電流の位相調整を行ってもよい。
また上記実施の形態では、電流ゼロクロス点推定部14が、コイルLuの駆動電圧Vuのオン期間(第1期間Tv)とU相のハイサイドスイッチのPWM信号のオン期間(第2期間Th)とが一致する状態から一致しない状態に切り替わるタイミング(コイル電流Iuが正から負に切り替わるゼロクロス点Q)と、オン期間Tvオン期間Thとが一致しない状態から一致する状態に切り替わるタイミング(コイル電流Iuが負から正に切り替わるゼロクロス点Q)の両方を検出する場合を例示したが、何れか一方のゼロクロス点Qを検出するようにしてもよい。例えば、電流ゼロクロス点推定部14は、コイル電流Iuが負から正に切り替わるゼロクロス点Qのみを検出してもよい。
上記実施の形態において、モータ5の種類は、ブラシレスDCモータに限定されない。また、モータ5は、3相に限られず、例えば単相のブラシレスDCモータであってもよい。
上記実施の形態において、位置検出装置6としてホール素子を用いる場合を例示したが、これに限られない。例えば、位置検出装置6として、ホールIC、エンコーダ、レゾルバなどを設け、それらの検出信号を位置検出信号Shuとしてモータ駆動制御装置1に入力してもよい。
また、上述のフローチャートは一例であって、これらに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。