JP2023131992A - 糸巻取機 - Google Patents

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Abstract

【課題】トラバース装置から糸が外れた状態のときにボビンホルダに保持された複数のボビンの軸方向の領域よりも広い範囲に複数の糸が広がることを抑制することで、糸をボビンホルダに掛ける作業を容易に行うことが可能であり、かつ、糸落ちに起因する糸切れを抑制可能な糸巻取機を提供する。【解決手段】糸巻取機は、規制ガイド60aと、移動機構70aと、を備える。規制ガイド60aは、糸外しガイドにより保持された複数の糸91に対して、糸91のボビンホルダ軸方向の位置がボビンホルダ42に保持された複数のボビン90の軸方向の領域の内側となるように糸91を規制する。移動機構70aは、糸91に作用して糸91を規制する規制位置と、規制位置から退避した退避位置との間で規制ガイド60aを移動可能とする。規制位置及び退避位置の両方において、作用部は、取付部よりも軸直交方向における糸道側に位置している。【選択図】図9

Description

本発明は、主として、糸送りローラから送り出された複数の糸を複数のボビンにそれぞれ巻き取ってパッケージを製造する糸巻取機に関する。
特許文献1の糸巻取機は、トラバース装置と、第1及び第2のボビンホルダと、を備える。トラバース装置は、ゴデットローラ(糸送りローラ)から供給された複数の糸をそれぞれトラバースする。第1及び第2のボビンホルダにはそれぞれ複数のボビンが取り付けられている。糸巻取機は、第1のボビンホルダの複数のボビンにそれぞれ糸を巻き取ることによりパッケージを製造し、パッケージの製造が完了する(満巻きのパーケージになる)と、糸巻取対象を第2のボビンホルダの複数のボビンに切り替えるようにする。
また、特許文献1で開示されるゴデットローラの軸方向の長さは、ボビンホルダの軸方向の長さよりも短い。そのため、ゴデットローラからボビンホルダに向かう複数の糸は下流に向かうに連れて糸同士の間隔が広くなる。そのため、ボビン切り替えの際に複数の糸をトラバース装置から外した場合、糸同士の間隔が狭くなって中央に寄ってしまう。これを解決するために特許文献1の糸巻取機は、糸道変更部材を備える。糸道変更部材は、複数の糸をトラバース装置から外した場合に、糸同士の間隔が狭くならないように各糸の動きを規制する。
特開2003-226469号公報
特許文献1の糸巻取機は、トラバース装置から複数の糸を外した場合に糸同士の間隔が狭くなることを抑制する。一方で、装置条件又は巻取条件に依っては、トラバース装置から複数の糸が外れた状態のときに糸同士の間隔が広くなる事態が発生することがある。例えば、糸送りローラの軸方向の長さがボビンホルダよりも長い場合、複数の糸をボビンホルダの複数のボビンに最初に掛ける際に、この事態が発生し得る。その結果、ボビンホルダの複数のボビン装着領域よりも広い範囲に複数の糸が広がるようになるため、複数の糸をボビンホルダの複数のボビンに掛ける作業が困難になる。また、複数の糸が広がることにより、巻取り時に糸がボビンの軸方向の外側に落ち、その結果、糸切れが発生する可能性がある。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、トラバース装置から糸が外れた状態のときにボビンホルダに保持された複数のボビンの軸方向の領域よりも広い範囲に複数の糸が広がることを抑制することで、糸をボビンホルダに掛ける作業を容易に行うことが可能であり、かつ、糸落ちに起因する糸切れを抑制可能な糸巻取機を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、糸送りローラから送り出された複数の糸を複数のボビンにそれぞれ巻き取ってパッケージを製造する。糸巻取機は、ボビンホルダと、複数のトラバースガイドと、糸外しガイドと、規制ガイドと、移動機構と、を備える。前記ボビンホルダは、複数の前記ボビンを保持する。前記トラバースガイドは、複数の糸にそれぞれ接触して当該糸をボビンホルダ軸方向にトラバースする。前記糸外しガイドは、複数の糸が複数の前記トラバースガイドから外れた状態で糸を保持する。前記規制ガイドは、前記糸外しガイドにより保持された複数の糸に対して、当該糸のボビンホルダ軸方向の位置が前記ボビンホルダに保持された複数のボビンの軸方向の領域の内側となるように当該糸を規制する。前記移動機構は、当該糸に作用して当該糸を規制する規制位置と、前記規制位置から退避した退避位置との間で前記規制ガイドを移動可能とする。前記糸外しガイドは、前記複数の糸を保持する保持位置と、前記保持位置から退避した退避位置と、の間で移動可能である。前記規制ガイドのうち前記移動機構に取り付けられる部分を取付部とし、糸に作用する部分を作用部とし、前記糸巻取機に対して前記糸送りローラが位置する方向を高さ方向とし、前記高さ方向及び前記ボビンホルダ軸方向の両方に直交する方向を軸直交方向としたときに、前記規制位置及び前記退避位置の両方において、前記作用部は、前記取付部よりも前記軸直交方向における糸道側に位置している。
これにより、規制ガイドが糸をボビンの軸方向の領域の内側に規制するため、トラバース装置から糸を外した場合における糸の広がりを抑制できる。そのため、糸をボビンホルダに掛ける糸掛け作業を容易にすることができる。また、糸の規制が不要となった場合には規制ガイドを退避位置に移動させればよいので、着脱が必要な構成と比較して取扱いが容易である。更に、規制ガイドの姿勢を大きく変更することなく、規制位置と退避位置の間で前記規制ガイドを移動させることができる。そのため、規制ガイドの移動軌跡が小さくなるので、他の部材の配置スペースを広くすることができる。また、トラバース装置から糸を外した場合における糸の広がりを抑制できるため、糸落ちが発生しにくくなる。その結果、糸落ちに起因する糸切れの発生を抑制できる。
前記の糸巻取機においては、前記移動機構は、少なくとも前記複数のボビンの軸方向の領域の内側において前記規制ガイドを前記ボビンホルダ軸方向にスライドさせるための機構を有することが好ましい。
糸掛け作業時において、規制位置にある規制ガイドをスライドさせることにより、規制ガイドによって規制された糸の巻取位置を分散させることができる。
前記の糸巻取機においては、前記規制ガイドが前記ボビンホルダ軸方向にスライドすることにより、前記規制ガイドの前記規制位置と、前記退避位置と、が切り替わることが好ましい。
これにより、簡単かつ移動軌跡が小さい動作で規制位置と退避位置を切り替えることができる。
前記の糸巻取機においては、前記規制ガイドに対して前記ボビンホルダ軸方向の端側に配置されるとともに前記規制ガイドに連結されており、前記規制ガイドをスライドさせる操作が可能な操作部を備えることが好ましい。
これにより、規制ガイドに直接触れて操作する場合と比較して、簡単に規制ガイドをスライドさせることができる。
前記の糸巻取機においては、前記規制ガイドは、前記高さ方向において前記作用部が前記糸送りローラから離れる方向に前記作用部が移動することにより、前記規制位置から前記退避位置に切り替わることが好ましい。
これにより、他の装置の動作の邪魔になりにくい。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動機構は、前記ボビンホルダ軸方向に沿って設けられるとともに前記規制ガイドが前記規制位置を維持するように当該規制ガイドを支持する支持レールを備える。前記規制ガイドは、前記支持レールに沿って、前記ボビンホルダ軸方向にスライド可能である。前記支持レールが配置された箇所を越えて前記規制ガイドがスライドすることにより、前記規制位置から前記退避位置に切り替わる。
これにより、スライドを補助する部材と、規制ガイドを規制位置で維持する部材と、を共通化できる。また、規制位置から退避位置への切替えを簡単に行うことができる。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動機構は、支持軸部材と、当該支持軸部材と前記規制ガイドと連結する連結部材と、を備える。前記規制位置では、前記連結部材は、前記支持軸部材から前記軸直交方向における糸道側に延びている。前記退避位置では、前記連結部材は、前記支持軸部材から前記軸直交方向における糸道の反対側に延びている。
これにより、規制ガイド自体を反転させる構成と比較して、規制ガイドの移動軌跡を小さくできる。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、第1ハウジングと、第2ハウジングと、を備える。前記第1ハウジングには、前記トラバースガイドが配置される。前記第2ハウジングは、糸道を挟んで前記第1ハウジングに対向して配置されている。前記糸外しガイドが前記第1ハウジングに配置されている。前記規制ガイドが前記第2ハウジングに配置されている。
これにより、糸外しガイドと規制ガイドとを好適な配置とすることができる。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、複数の糸を個別に分離して前記複数のトラバースガイドのそれぞれのトラバース領域に保持する分糸ガイドを備える。前記分糸ガイドは、複数の糸を分離して保持する分糸位置と、前記分糸位置から退避した退避位置と、の間で移動可能である。
これにより、複数の糸を規制ガイドで規制しながら、複数の糸のそれぞれを各トラバースガイドのトラバース領域に導いて各トラバースガイドに接触(係合)させることができ、糸掛け作業が容易になる。
前記の糸巻取機においては、前記ボビンホルダ上の複数の糸間のピッチが前記糸送りローラ上の複数の糸間のピッチより小さいことが好ましい。
ボビンホルダ上の複数の糸間のピッチが糸送りローラ上の複数の糸間のピッチより小さい場合、ボビンホルダに保持された複数のボビンの軸方向の領域よりも広い範囲に複数の糸が広がり易い傾向があるため、上記の規制ガイドを備える効果を有効に発揮させることができる。
第1実施形態に係る糸巻取機の正面図。 糸巻取機のブロック図。 糸巻取機の一部を切り取って示す斜視図。 糸掛け作業時の糸がボビンホルダの端部で局所的に巻き太ることを示す図。 規制ガイド及び移動機構の斜視図。 規制ガイド及び移動機構の側面図。 開閉ガイドの斜視図。 糸掛け作業を行うために糸送りローラの糸を分糸ガイドに掛けた状態を示す斜視図。 糸掛け作業時に規制ガイドで糸をボビンの軸方向の領域に規制する状態を示す斜視図。 糸掛け作業後に糸を巻き取ってパッケージを製造する状態を示す斜視図。 変形例の開閉ガイドの斜視図。 第2実施形態の規制ガイド及び移動機構の斜視図。 第2実施形態の規制ガイド及び移動機構の側面図。 第3実施形態の規制ガイド及び移動機構の斜視図。 第3実施形態の規制ガイド及び移動機構の側面図。
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、第1実施形態に係る糸巻取機1の正面図である。図2は、糸巻取機1のブロック図である。以下の説明では、糸の走行方向の上流又は下流を単に上流又は下流と称することがある。
図1に示す糸巻取機1の上流には図略の紡糸機が配置されている。紡糸機で製造された糸91は、糸送りローラ100を介して、糸巻取機1に供給される。糸巻取機1は、糸91をボビン90に巻き取ってボビン90上に糸層を形成しパッケージ92を製造する。糸91は、例えばスパンデックス等の弾性糸である。ただし、糸91の種類はこれに限定されず、例えばナイロン又はポリエステル等の合繊糸であってもよい。
図1に示すように、糸巻取機1は、上下に並んで配置された2つの巻取部10を備える。それぞれの巻取部10には糸91が個別に供給されており、それぞれの巻取部10で個別にパッケージ92が製造される。巻取部10には、パッケージ92の軸方向に並ぶ複数の糸91が供給される。巻取部10は、複数の糸91をそれぞれ巻き取って、複数のパッケージ92を製造する。
2つの巻取部10は、それぞれ同じ装置を備えるため、以下では上下の巻取部10をまとめて説明する。図1に示すように、巻取部10は、フレーム11と、第1ハウジング20と、第2ハウジング30と、ターレット板40と、を備える。
フレーム11は、巻取部10が備える各部を保持する部材である。第1ハウジング20には、トラバース装置21が取り付けられている。トラバース装置21は、後述するトラバースガイド23が糸91と係合した状態で巻幅方向(パッケージ92の軸方向)に往復動することにより、下流側に送られる糸91をトラバースさせる。図2に示すように、トラバース装置21は、トラバースカム22と、トラバースガイド23と、トラバースモータ24と、を備える。なお、図2は、1つの巻取部10のブロック図を示している。
トラバースカム22は、ボビン90と平行に配置されたローラ状の部材である。トラバースカム22の外周面には、螺旋状のカム溝が形成されている。トラバースカム22は、トラバースモータ24により回転駆動される。
トラバースガイド23は、糸91と係合する部分である。トラバースガイド23の先端は例えば略U字状のガイド部を有しており、糸91を巻幅方向で挟み込むようにして、糸91と係合する。トラバースガイド23の基端はトラバースカム22のカム溝に位置している。トラバースカム22を回転駆動することで、トラバースガイド23を巻幅方向に往復動させることができる。
また、トラバースモータ24は、制御装置50によって制御される。制御装置50は、CPU、ROM、RAM等を備える。CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、巻取部10に関する様々な制御を実行する。
第2ハウジング30には、接触ローラ31が回転可能に取り付けられている。接触ローラ31は、糸91の巻取り時において、パッケージ92の糸層に所定の圧力で接触しながら従動回転することにより、パッケージ92の糸層形状を整える。
第2ハウジング30には、操作パネル32が設けられている。操作パネル32は、オペレータによって操作される装置である。オペレータは、操作パネル32を操作することにより、巻取部10に対して指示を行う。オペレータが行う指示は、例えば、巻取りの開始、巻取りの停止、巻取条件の変更等である。
ターレット板40は、円板状の部材である。ターレット板40は、フレーム11に回転可能に取り付けられている。ターレット板40の回転軸の位置は、ターレット板40の中心位置と一致している。ターレット板40は、図2に示すターレットモータ41により回転駆動される。ターレットモータ41は、制御装置50により制御される。
ターレット板40のうち、中心位置を挟んで対向する2箇所には、それぞれボビンホルダ42が設けられている。ボビンホルダ42には、軸方向に並べて複数のボビン90を装着可能である。ターレット板40を回転させることにより、2つのボビンホルダ42の位置を変更することができる。各ボビンホルダ42は、ターレット板40に片持ち状態で支持されている。
ボビンホルダ42は、ボビンホルダ42の軸位置を回転中心として、ターレット板40に対して回転可能である。2つのボビンホルダ42は、図2に示すボビンホルダモータ43によりそれぞれ個別に回転駆動される。ボビンホルダモータ43は制御装置50により制御される。
2つのボビンホルダ42が上下に並んだ状態において、高い方のボビンホルダ42に対して糸91の巻取りが行われる。具体的には、一方のボビンホルダ42のボビン90に糸掛けが行われた後に、他方のボビンホルダ42が接触ローラ31に接触し、その状態で当該他方のボビンホルダ42が回転することにより、当該他方のボビンホルダ42のボビン90に糸91が巻き取られてパッケージ92が製造される。なお、接触ローラ31に接触する位置にあるボビンホルダ42に対して、当該ボビンホルダ42の自由端側の端部を支持するための先端支持部材45(図1)が設けられている。
また、所定量の糸91を巻き取ってパッケージ92が満巻となった場合、ターレット板40が回転することにより、2つのボビンホルダ42の位置が切り替わる。その後、満巻となったパッケージ92が回収されつつ、一方のボビンホルダ42に装着されたボビン90に対して糸91が巻き取られる。
次に、パッケージ92の製造の前段階でオペレータにより2つのボビンホルダ42の一方のボビンホルダ42のボビン90に糸91を巻き付ける糸掛け作業が行われ、その後に捨巻きが行われるが、その糸掛け作業及び捨巻きについて説明する。本実施形態では、巻幅方向、パッケージ92の軸方向、及びボビンホルダ42の軸方向(ボビンホルダ軸方向)は全て平行である。以下の説明では、これらの方向を併せて単に「軸方向」と称する。また、糸巻取機1に対して糸送りローラ100が位置する方向を「高さ方向」と称する。特に、高さ方向のうち糸送りローラ100に近い側を上側、その反対側を下側と称する。また、軸方向と高さ方向の両方に直交する方向を「軸直交方向」と称する。
オペレータによる糸掛けが行われる段階では、トラバースガイド23に糸91が係合されていない状態で糸91が巻き取られる。また、トラバースガイド23は通常よりも低速で駆動している。そのため、糸掛け後に糸91がトラバースガイド23に係合されても、トラバースガイド23が通常の速度となるまでは糸91の品質を確保できない。そのため、捨巻きを行うことで、品質が低い糸91を巻き取り、巻き取った糸91を廃棄する必要がある。
ここで、本実施形態では、ボビンホルダ42の軸方向の長さ(図3に符号L2で示す長さ)は、糸送りローラ100の軸方向の長さ(図3の符号L1で示す長さ)よりも小さい。そのため、ボビンホルダ42上での糸間のピッチは、糸送りローラ100上での糸間のピッチよりも小さくなる。このような条件で捨巻きを行う場合、以下の事態が発生し得る。即ち、糸送りローラ100からボビン90に糸91を掛ける際に、糸送りローラ100の軸方向の端部に位置する糸91が、軸方向の端部に配置されたボビン90の軸方向外側に落ちてしまう糸落ちが発生し、その結果、糸切れが発生する可能性がある。また、仮に、糸落ちが生じなかった場合でも、図4に示すように、ボビン90の軸方向の端部に複数の糸91が集中する可能性がある。その結果、軸方向の端部において捨巻き時に局所的に巻太りが生じるため、糸層が崩れて糸切れが発生する可能性がある。
糸落ち及び局所的な巻き太りに起因する糸切れを抑制するために、本実施形態の糸巻取機1は、規制ガイド60a及び移動機構70aを備える。規制ガイド60aが糸91の位置を規制する範囲を規制範囲(図3に符号L3で示す長さ)と称する。規制範囲は、複数のボビン90の軸方向の領域(複数のボビン90がボビンホルダ42に装着される領域)よりも内側である。本実施形態の規制ガイド60a及び移動機構70aは、第2ハウジング30の上面に配置されている。ただし、規制ガイド60a及び移動機構70aは、糸91を規制可能な他の位置に配置されてもよい。
以下、図3及び図5を参照して、規制ガイド60a及び移動機構70aの構成について説明する。
規制ガイド60aは、軸方向の両端にそれぞれ設けられている。一方の規制ガイド60aは軸方向の一端の1又は複数の糸91を規制し、他方の規制ガイド60aは軸方向の他端の1又は複数の糸91を規制する。2つの規制ガイド60aは、軸方向に垂直な面を挟んで対称形状であるため、以下では2つの規制ガイド60aをまとめて説明する。
規制ガイド60aは、糸91に直接作用して(糸91に接触して)糸91を規制する部材である。規制ガイド60aは、板材に打抜き加工及び曲げ加工等を行うことにより製造された部材である。ただし、規制ガイド60aは、複数の部材を取り付けて製造される構成であってもよい。
図3及び図5に示すように、規制ガイド60aは、取付部61と、中途部62と、作用部63と、を備える。取付部61は、移動機構70aに取り付けられる部分である。具体的には、取付部61は貫通孔が形成された部分である。中途部62は、取付部61と作用部63の間に形成された部分である。作用部63は、中途部62に対して傾斜した形状であり、糸91に接触する部分である。
移動機構70aは、軸方向の両端にそれぞれ設けられている。2つの移動機構70aは、軸方向に垂直な面を挟んで対称形状であるため、以下では2つの移動機構70aをまとめて説明する。図3及び図5に示すように、移動機構70aは、スライドレール(支持軸部材)71と、支持レール72と、を備える。
スライドレール71は、軸方向に沿って設けられた円柱状の部材である。スライドレール71は、取付部61の貫通孔を挿通している。これにより、規制ガイド60aはスライドレール71に沿ってスライド可能である。更に、スライドレール71の断面が円形であるため、規制ガイド60aは、スライドレール71を回転中心として、回転可能である。本実施形態の糸巻取機1では、オペレータが規制ガイド60aを手動でスライド又は回転させる。これに代えて、規制ガイド60aを駆動するアクチュエータを設けてもよい。本実施形態では、スライドレール71は、規制ガイド60aをスライドさせるレールと、規制ガイド60aを支持して回転させる回転軸(支持軸部材)と、の両方として機能する部材である。これに代えて、レールとして機能する部材と、回転軸として機能する部材と、が別体であってもよい。
支持レール72は、スライドレール71よりも第1ハウジング20側に位置している。支持レール72は、スライドレール71と同様に、軸方向に沿って設けられている。支持レール72は、中途部62を支持することにより、図5の上図に示すように、規制ガイド60aの下方への回転(言い換えれば作用部63の下方向への移動)を規制する。これにより、規制ガイド60aを規制位置で維持することができる。規制位置とは、規制ガイド60aが糸91を規制する位置である。規制ガイド60aは、支持レール72に中途部62が支持された状態で軸方向にスライドすることにより、規制位置を軸方向に変更することができる。
また、支持レール72は、軸方向の端部近傍には形成されていない。言い換えれば、移動機構70aには、スライドレール71が形成されるとともに、支持レール72が形成されない範囲が存在する。つまり、支持レール72が配置された箇所を越えて、支持レール72が形成されない範囲まで規制ガイド60aがスライドすることにより、中途部62が支持レール72に支持されなくなるので、規制ガイド60aが下方へ回転する(作用部63が下方向へ移動する)。これにより、規制ガイド60aが退避位置に移動する。退避位置とは、規制位置から退避した位置であり、糸91の規制を行わない(糸道と干渉しない)位置である。
本実施形態の規制ガイド60aは、軸方向の端部へのスライドにより糸道から軸方向の外側に退避するとともに、更に、下方への回転によっても糸道から退避する。つまり、本実施形態の規制ガイド60aは、規制位置及び退避位置の両方において、作用部63が取付部61よりも軸直交方向における糸道側に位置している。
この構成により、規制ガイド60aの移動軌跡を小さくできる。具体的に説明すると、仮に、規制ガイド60aを上方に180°以上回転させて退避させる場合(即ち、取付部61が作用部63よりも糸道側に位置する場合)、規制ガイド60aの移動軌跡が大きくなる。その結果、規制ガイド60aの上方に大きなスペースを大きく空けておく必要がある。
これに対し、本実施形態では、規制ガイド60aの移動軌跡には、規制ガイド60aの上方のスペースが含まれない。そのため、このスペースを有効に活用できる。図6に示すように、本実施形態では、このスペースに油滴トレイ12が配置されている。油滴トレイ12とは、第1ハウジング20、第2ハウジング30、その間の糸道等にオイルが掛からないように保護するための部材である。なお、このスペースには、油滴トレイ12以外の部材が配置されてもよい。
なお、振動等によって規制ガイド60aに軸方向の力が掛かった場合であっても、中途部62が支持レール72の端面と干渉するため、規制位置に戻ることはない。このように、支持レール72は、規制ガイド60aを規制位置で維持する機能と、規制ガイド60aを退避位置で維持する機能と、の両方を有する。なお、本実施形態では、軸方向のスライドのみで糸道から退避できるため、規制ガイド60aを下方に回転して退避させる機構は必須ではなく省略することもできる。また、本実施形態の規制ガイド60aは、捨巻き中に用いるための部材であるが、糸落ちが発生し得る別の状況(例えばボビン90に糸91を掛ける作業中)に用いることも可能である。
次に、図6及び図7を参照して、規制ガイド60a及び移動機構70aとともに捨巻きに用いられる開閉ガイド80について説明する。
開閉ガイド80は、第1ハウジング20の上面に配置されている。言い換えれば、軸直交方向で見たときに、開閉ガイド80と規制ガイド60aは糸道を挟んで対向するように配置されている。図7に示すように、開閉ガイド80は、開閉板81と、筒状部材82と、レール83と、糸外しガイド84と、分糸ガイド85と、掴み部86と、を備える。
開閉板81は、細長状の平板であり、長手方向と軸方向が一致する向きに配置されている。開閉板81の短手方向の端部には、筒状部材82が移動不能に固定されている。筒状部材82には貫通孔が形成されている。
レール83は、軸方向に沿って設けられた円柱状の部材である。レール83は、筒状部材82の貫通孔を挿通している。これにより、筒状部材82は、レール83に沿ってスライド可能である。筒状部材82は開閉板81に固定されているため、開閉板81はレール83に沿って軸方向にスライド可能である。また、レール83の断面が円形であるため、開閉板81は、レール83を回転中心として、回転可能である。本実施形態の糸巻取機1では、オペレータが開閉ガイド80を手動で動作させる。これに代えて、開閉ガイド80を駆動するアクチュエータを設けてもよい。
また、開閉板81には、糸外しガイド84及び分糸ガイド85が設けられている。これにより、糸外しガイド84及び分糸ガイド85を糸道に近接させたり、糸道から離間させたりすることができる。
糸外しガイド84は、開閉板81の短手方向の端部に設けられている。本実施形態では開閉板81と糸外しガイド84は一体的に構成されているが、後述するように別体であってもよい。糸外しガイド84は、開閉板81を規制ガイド60a側に回転させた糸外し位置(図7の上図の鎖線)と、開閉板81をその反対側に回転させた退避位置(糸外し位置から糸外しガイド84を退避させた退避位置)と、の間で移動可能である。糸外し位置にある糸外しガイド84は、トラバースガイド23が糸91を保持する際の糸道に干渉しており、トラバースガイド23から糸91を外すことができる。更に、糸外し位置にある糸外しガイド84は、トラバースガイド23から外した状態の糸91がトラバースガイド23側に戻らないように保持することができる。
分糸ガイド85は、開閉板81の短手方向の端部に配置されている。分糸ガイド85は、複数の板状の部材を並べて配置した構成である。2つの板状の部材の間に糸91を位置させることにより、糸91が保持される。分糸ガイド85は、糸91をトラバースガイド23に保持させる補助を行う部材である、そのため、分糸ガイド85が糸91を保持する間隔と、トラバースガイド23が配置される間隔と、は同じである。更に、分糸ガイド85が糸91を保持する位置は、対応するトラバースガイド23のトラバース領域内である。
分糸ガイド85は、開閉板81を規制ガイド60a側に回転させた分糸位置(図7の上図の鎖線)と、開閉板81をその反対側に回転させた(分糸位置から分糸ガイド85を退避させた)退避位置と、の間で移動可能である。分糸位置にある分糸ガイド85は、板状の部材の間に糸91を入れることにより、複数の糸91を個別に分離した状態で保持する。なお、分糸ガイド85の構成は一例であり、例えば1枚の板材に一定間隔で溝を形成した構成であってもよい。
掴み部86は、開閉板81の長手方向の一端部(正面側の端部)に形成されている。掴み部86は、オペレータが開閉板81を回転させる際に手で持つ部分である。
次に、図8から図10を参照して、規制ガイド60a、移動機構70a、及び開閉ガイド80等を用いて糸掛け作業、次いでパッケージ製造開始に至る工程について説明する。
初めに、オペレータは操作パネル32を操作して、ボビンホルダ42を回転駆動させるとともに、トラバース装置21を駆動させる。このとき、トラバース装置21のトラバースガイド23は、パッケージ製造時の通常の速度よりも低速で往復駆動される。図8に示すように、オペレータは、開閉ガイド80を規制ガイド60a側に回転させた後に、開閉ガイド80をボビンホルダ42の自由端側にスライド移動させる。オペレータは、糸送りローラ100に掛かっている複数の糸91をサクションガン等で保持している。なお、本実施例では、糸送りローラ100から上側の巻取部10と下側の巻取部10に糸91が供給される。そのため、オペレータは、糸送りローラ100からの糸91の全てをまずは上側の巻取部10に糸掛けし、その後、下側の巻取部10に供給される糸91のみを取り出してサクションガン等で再度保持するようにし、その保持した糸91を下側の巻取部10に糸掛けするようにするが、ここでは、説明を簡略化するため、糸送りローラ100から供給される糸91を上側の巻取部10と下側の巻取部10とに分けて糸掛けすることで説明する。そのため、オペレータは、糸送りローラ100に掛かっている上側の巻取部10に供給される複数の糸91をサクションガン等で保持している。次に、オペレータは、保持した糸91を分糸ガイド85に掛ける。この時点では、オペレータは、複数の糸91を分糸ガイド85に分離して掛ける必要はない。この時点において、規制ガイド60aは、退避位置にある。
次に、図9に示すように、オペレータは、開閉ガイド80をスライドさせて元の位置に戻す。この際、規制ガイド60aが退避位置にあるため、糸91が規制ガイド60aに干渉することがない。オペレータは、分糸ガイド85に掛かっている糸91を一方のボビンホルダ42のボビン90に巻き付ける。これにより、糸91がボビン90に巻き取られていく。次に、オペレータは、規制ガイド60aを規制位置にした後に、開閉板81を上下に少し回転させる。開閉板81を上側に回転させることにより、例えば糸外しガイド84により糸91が分糸ガイド85から外れて軸方向に広がる。このとき、規制ガイド60aが規制位置にあることで、糸91の位置が規制ガイド60aの規制位置の内側、即ち、ボビンホルダ42に保持された複数のボビン90の軸方向の領域(軸方向において複数のボビン90が配置される領域)の内側になるように糸91が規制される。同時に、規制ガイド60aを軸方向にスライド移動させる。これにより、規制ガイド60aの規制位置が軸方向に分散されるため、ボビンホルダ42の両端側のボビン90上に巻かれる複数の糸91が軸方向に分散されるようになり、局所的な巻太りを抑制できるので、それに起因する糸切れを抑制できる。その後に開閉板81を下側に回転させることにより、糸91が別の分糸ガイド85に保持される。これを繰り返すことにより、複数の糸91の位置を軸方向に広げる(バラけさせる)ことができる。最終的に、オペレータは、複数の糸91を個別に分糸ガイド85にそれぞれ保持させるようにして、各糸91が各ボビン90の軸方向の領域に一本ずつ配置されるようにする。なお、規制ガイド60aが規制位置にあるため、糸91はボビン90の軸方向の領域の外側には移動しないため、軸方向に広がった糸91がボビン90から糸落ちすることが抑制される。
上述の作業まで完了すると、上側の巻取部10と同様にして、下側の巻取部10の一方のボビンホルダ42への糸掛け作業を行う。
上側の巻取部10及び下側の巻取部10において、共に上述した作業まで完了すると、オペレータは、上側の巻取部10及び下側の巻取部10のそれぞれにおいて、操作パネル32を操作してターレット板40を回転駆動させ、ボビンホルダ42の位置の切り替え動作を開始させる。同時に、トラバース装置21のトラバースガイド23が通常の高速駆動に切り替わる。これとほぼ同時に、上側の巻取部10及び下側の巻取部10のそれぞれにおいて、図10に示すように、オペレータは、開閉ガイド80を回転させて元の位置に戻す。言い換えれば、糸外しガイド84及び分糸ガイド85を退避位置まで戻す。各糸91が各ボビン90の軸方向の領域に一本ずつ配置された状態になっているため、糸外しガイド84及び分糸ガイド85を退避位置にすると、複数のトラバースガイド23がそれぞれ糸91を保持することとなる。糸91がトラバースガイド23に保持されるようになると、規制ガイド60aによる糸91の規制はもはや不要となる。オペレータは、規制ガイド60aを退避位置まで移動させる。本実施形態では、規制ガイド60aが規制位置から退避位置に移動する際の移動軌跡が、分糸位置にある分糸ガイド85に干渉しない。そのため、分糸ガイド85に干渉することなく規制ガイド60aを退避位置に移動させることができる。そして、ターレット板40の回転によるボビンホルダ42の位置切り替えにより、他方のボビンホルダ42のボビン90が接触ローラ31に接触して、当該ボビン90に対して糸91が巻き取られてパッケージ92が製造されるようになる。なお、上述の糸掛け作業のために一方のボビンホルダ42のボビン90に巻かれた糸91は、ボビンホルダ42からボビン90ごと抜き取られ、除去される。一方のボビンホルダ42には、新たなボビン90が装着される。
本実施形態では、上段の開閉ガイド80と下段の開閉ガイド80は同じ構成である。これに代えて、上段の開閉ガイド80と下段の開閉ガイド80の構成が異なっていてもよい。例えば、上段の開閉ガイド80は、図11に示す構成であってもよい。図1に示すように、糸送りローラ100から下段の巻取部10までの糸道は鉛直方向に平行又は略平行であるのに対し、糸送りローラ100から上段の巻取部10までの糸道は鉛直方向に対して比較的大きく傾斜している。そのため、糸91を分糸ガイド85に掛けた後に開閉板81を上下に回転させても、糸91に対して分糸ガイド85あまり退避しないため、分糸ガイド85から糸91が外れず、糸91が軸方向に広がらないことがある。
この点、図11に示す開閉ガイド80は、糸外しガイド84と分糸ガイド85を個別に動作可能である。具体的には、開閉ガイド80は、第1開閉板81aと、第2開閉板81bと、を備える。第1開閉板81aと第2開閉板81bは、個別にレール83に回転可能に取り付けられている。なお、第1開閉板81aと第2開閉板81bはスライド機能を省略してもよい。第1開閉板81aには糸外しガイド84が取り付けられている。第2開閉板81bには分糸ガイド85が取り付けられている。
図11の上図に示すように、糸外しガイド84が糸外し位置にあって、かつ、分糸ガイド85が分糸位置にある状態において、糸外しガイド84は糸91に接触するが、分糸ガイド85は糸91に接触しない。そのため、この状態で第1開閉板81aを上下に回転することにより、糸91を軸方向に広げることができる。図11の上図に示すように、糸外しガイド84が糸外し位置にあっても規制位置にある規制ガイド60aは糸道と干渉しており、糸91を規制できる。
また、糸掛け作業中において、第1開閉板81aは第1ハウジング20側に回転しており、糸外しガイド84は退避位置にある。ここで、図11の下図に示すように、糸外しガイド84が退避位置にあっても、規制位置にある規制ガイド60aは糸道と重なっている。従って、糸掛け作業中においても規制ガイド60aは糸91を規制できる。
次に、図12及び図13を参照して、第2実施形態の規制ガイド60b及び移動機構70bについて説明する。なお、以後の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、前述の実施形態で説明した事項は、矛盾が生じない限り第2実施形態にも適用される。
第2実施形態は、主に以下の2点において、第1実施形態とは異なる。1点目は、規制ガイド60bを回転させることなくスライドさせるだけで規制ガイド60bを規制位置から退避位置まで移動させることである。2点目は、オペレータが操作部75を操作することで規制ガイド60bをスライドさせることである。
以下、第2実施形態の規制ガイド60b及び移動機構70bについて説明する。規制ガイド60bは、第2ハウジング30の軸方向の両端にそれぞれ配置されている。2つの規制ガイド60bは軸方向に垂直な面を挟んで対称形状であるため、以下では2つの規制ガイド60bをまとめて説明する。
規制ガイド60bは、取付部61と、中途部62と、作用部63と、を備える。取付部61は、第1実施形態と略同じ構成である。中途部62は、取付部61と作用部63の間に設けられた部分である。中途部62は、第2ハウジング30の表面に沿う形状である。作用部63は、第2ハウジング30の表面から立設する向きに設けられている。これにより、作用部63は第1ハウジング20に向かって延びるので、作用部63を糸道と干渉させることができる。
第2実施形態の移動機構70bは、2つの操作ロッド73と、複数のスライドガイド74と、2つの操作部75と、を備える。操作ロッド73は、軸方向に沿って設けられた円柱状の部材である。2つの操作ロッド73は、2つの取付部61に対してそれぞれ相対移動不能に固定されている。つまり、操作ロッド73は規制ガイド60bと一体的に移動可能である。
スライドガイド74は、軸方向に沿って複数設けられている。スライドガイド74には貫通孔が形成されている。スライドガイド74の貫通孔には、操作ロッド73が挿通されている。これにより、規制ガイド60b及び操作ロッド73は、軸方向に沿ってスライド可能である。
操作部75は、スライドガイド74の端部に設けられている。操作部75はオペレータが把持し易いようにスライドガイド74より径が大きい構造である。オペレータは、操作部75を軸方向に沿って移動させることで、規制ガイド60bを軸方向に沿ってスライドさせることができる。オペレータが操作し易いように、2つの操作部75は軸方向の同じ側の端部に設けられている。操作部75が設けられる側の端部は、糸巻取機1の正面側の端部であり、言い換えれば操作パネル32が設けられている側の端部である。
図12に実線で示す位置に操作部75がある場合、2つの規制ガイド60bは退避位置にある。このとき、2つの操作部75の軸方向の位置は同じである。この状態から2つの規制ガイド60bを鎖線で示す規制位置に移動させるためには、2つの操作部75を軸方向の異なる方向に移動させる必要がある。また、第2実施形態においても、規制位置及び退避位置の両方において、作用部63は、取付部61よりも軸直交方向における糸道側に位置している。
なお、規制ガイド60b及び移動機構70bを用いて糸掛け作業を行う工程は上記実施形態とほぼ同じであるため、以下の補足説明を行うのみとし、糸掛け作業全体の説明を省略する。第2実施形態において、オペレータが開閉ガイド80をスライドさせて元の位置に戻す際に、糸91は、規制ガイド60bの作用部63の外側から作用部63を乗り越えて作用部63の内側に移動する。このため、作用部63の外側の形状は、糸91を作用部63の内側に導き易いように滑らかな湾曲形状とされている。
次に、図14及び図15を参照して、第3実施形態の規制ガイド60c及び移動機構70cについて説明する。また、前述の実施形態で説明した事項は、矛盾が生じない限り第3実施形態にも適用される。
第3実施形態では、規制ガイド60cが規制位置から退避位置に移動するための構成が第1実施形態とは異なる。規制ガイド60c及び移動機構70cは、第2ハウジング30の軸方向の両端にそれぞれ配置されている。2組の規制ガイド60c及び移動機構70cは軸方向に垂直な面を挟んで対称形状であるため、以下では2組の規制ガイド60c及び移動機構70cをまとめて説明する。
図14及び図15に示すように、移動機構70cは、スライドレール71と、連結部材76と、を備える。スライドレール71は、軸方向に沿って設けられた円柱状の部材である。連結部材76は、貫通孔が形成された部材である。スライドレール71は連結部材76の貫通孔を挿通していて、連結部材の支持軸部材となっている。これにより、連結部材76はスライドレール71に沿ってスライド可能である。また、スライドレール71の断面が円形であるため、連結部材76は、スライドレール71を回転中心として、回転可能である。
規制ガイド60cは、取付部61と、作用部63と、ウェイト部65と、を備える。取付部61は、連結部材76に回転可能に取り付けられている。連結部材76に対する取付部61の回転方向は、スライドレール71に対する連結部材76の回転方向と平行である。作用部63は、上記実施形態と同様、糸91に作用して糸91を規制する部分である。ウェイト部65は、取付部61を挟んで作用部63の反対側に設けられている。ウェイト部65は、作用部63が下方に回転するのを阻止する。
この構成により、連結部材76をスライドレール71に対して回転させることにより、規制ガイド60cを糸道に近づけたり離したりすることができる。具体的には、連結部材76がスライドレール71から軸直交方向における糸道側に延びている場合は、規制ガイド60cを規制位置にすることができる。一方で、連結部材76がスライドレール71から軸直交方向における糸道の反対側に延びている場合は、規制ガイド60cを退避位置にすることができる。
また、規制ガイド60cが規制位置にある場合は、ウェイト部65が移動機構70cに支持されることにより、作用部63を略水平にする。一方で、規制ガイド60cが退避位置にある場合は、ウェイト部65が第2ハウジング30に支持されることで、作用部63を上方向に向けることができる。これにより、規制ガイド60cを軸直交方向に進退させるだけでなく、作用部63の向きによっても糸道から退避させることが可能となる。
また、第3実施形態においても、規制位置及び退避位置の両方において、作用部63は、取付部61よりも軸直交方向における糸道側に位置している。なお、規制ガイド60c及び移動機構70cを用いて糸掛け作業を行う工程は上記実施形態と同じであるため説明を省略する。
以上に説明したように、糸巻取機1は、糸送りローラ100から送り出された複数の糸91を複数のボビン90にそれぞれ巻き取ってパッケージ92を製造する。本実施形態の糸巻取機1は、ボビンホルダ42と、複数のトラバースガイド23と、糸外しガイド84と、規制ガイド60a,60b,60cと、移動機構70a,70b,70cと、を備える。ボビンホルダ42は、複数のボビン90を保持する。トラバースガイド23は、複数の糸91にそれぞれ接触して糸91をボビンホルダ軸方向にトラバースする。糸外しガイド84は、複数の糸91が複数のトラバースガイド23から外れた状態で糸91を保持する。規制ガイド60a,60b,60cは、糸外しガイド84により保持された複数の糸91に対して、糸91のボビンホルダ軸方向の位置がボビンホルダ42に保持された複数のボビン90の軸方向の領域の内側となるように糸91を規制する。移動機構70a,70b,70cは、糸91に作用して糸91を規制する規制位置と、規制位置から退避した退避位置との間で規制ガイド60a,60b,60cを移動可能とする。糸外しガイド84は、複数の糸91を保持する保持位置と、保持位置から退避した退避位置と、の間で移動可能である。規制ガイド60a,60b,60cのうち移動機構70a,70b,70cに取り付けられる部分を取付部61とし、糸91に作用する部分を作用部63とし、糸巻取機1に対して糸送りローラ100が位置する方向を高さ方向とし、高さ方向及びボビンホルダ軸方向の両方に直交する方向を軸直交方向としたときに、規制位置及び退避位置の両方において、作用部63は、取付部61よりも軸直交方向における糸道側に位置している。
これにより、規制ガイド60a,60b,60cが糸91をボビン90の軸方向の領域の内側に規制するため、トラバースガイド23から糸91を外した場合における糸91の広がりを抑制できる。そのため、糸91をボビンホルダ42に掛ける糸掛け作業を容易にすることができる。また、糸91の規制が不要となった場合には規制ガイド60a,60b,60cを退避位置に移動させればよいので、着脱が必要な構成と比較して取扱いが容易である。更に、規制ガイド60a,60b,60cの姿勢を大きく変更することなく、規制位置と退避位置の間で規制ガイド60a,60b,60cを移動させることができる。そのため、規制ガイド60a,60b,60cの移動軌跡が小さくなるので、他の部材の配置スペースを広くすることができる。また、トラバース装置21から糸91を外した場合における糸91の広がりを抑制できるため、糸落ちが発生しにくくなる。その結果、糸落ちに起因する糸切れの発生を抑制できる。
本実施形態の糸巻取機1において、移動機構70a,70b,70cは、少なくとも複数のボビン90の軸方向の領域の内側において規制ガイド60a,60b,60cをボビンホルダ軸方向にスライドさせるための機構を有する。
糸掛け作業時において、規制位置にある規制ガイド60a,60b,60cをスライドさせることにより、規制ガイド60a,60b,60cによって規制された糸91の巻取位置を分散させることができる。
本実施形態の糸巻取機1において、規制ガイド60a,60bがボビンホルダ軸方向にスライドすることにより、規制ガイド60a,60bの規制位置と、退避位置と、が切り替わる。
これにより、簡単かつ移動軌跡が小さい動作で規制位置と退避位置を切り替えることができる。
本実施形態の糸巻取機1において、規制ガイド60bに対してボビンホルダ軸方向の端側に配置されるとともに規制ガイド60bに連結されており、規制ガイド60bをスライドさせる操作が可能な操作部75を備える。
これにより、規制ガイド60bに直接触れて操作する場合と比較して、簡単に規制ガイドをスライドさせることができる。
本実施形態の糸巻取機1において、規制ガイド60aは、高さ方向において作用部63が糸送りローラ100から離れる方向に作用部63が移動することにより、規制位置から退避位置に切り替わる。
これにより、他の装置の動作の邪魔になりにくい。
本実施形態の糸巻取機1において、移動機構70aは、ボビンホルダ軸方向に沿って設けられるとともに規制ガイド60aが規制位置を維持するように規制ガイド60aを支持する支持レール72を備える。規制ガイド60aは、支持レール72に沿って、ボビンホルダ軸方向にスライド可能である。支持レール72が配置された箇所を越えて規制ガイド60aがスライドすることにより、規制位置から退避位置に切り替わる。
これにより、スライドを補助する部材と、規制ガイド60aを規制位置で維持する部材と、を共通化できる。また、規制位置から退避位置への切替えを簡単に行うことができる。
本実施形態の糸巻取機1において、移動機構70cは、スライドレール71と、スライドレール71と規制ガイド60cと連結する連結部材76と、を備える。規制位置では、連結部材76は、スライドレール71から軸直交方向における糸道側に延びている。退避位置では、連結部材76は、スライドレール71から軸直交方向における糸道の反対側に延びている。
これにより、規制ガイド60c自体を反転させる構成と比較して、規制ガイド60cの移動軌跡を小さくできる。
本実施形態の糸巻取機1は、第1ハウジング20と、第2ハウジング30と、を備える。第1ハウジング20は、トラバース装置21が配置される。第2ハウジング30は、糸道を挟んで第1ハウジング20に対向して配置されている。前記糸外しガイドが前記第1ハウジングに配置されている。規制ガイド60a,60b,60cが第2ハウジング30に配置されている。
これにより、糸外しガイド84と規制ガイド60a,60b,60cとを好適な配置とすることができる。
本実施形態の糸巻取機1は、糸91を個別に分離して複数のトラバースガイド23のそれぞれのトラバース領域に保持する分糸ガイド85を備える。分糸ガイド85は、複数の糸91を分離して保持する分糸位置と、分糸位置から退避した退避位置と、の間で移動可能である。
これにより、複数の糸91を規制ガイド60a,60b,60cで規制しながら、複数の糸91のそれぞれを各トラバースガイド23のトラバース領域に導いて各トラバースガイド23に接触(係合)させることができ、糸掛け作業が容易になる。
本実施形態の糸巻取機1において、ボビンホルダ42上の複数の糸間のピッチが糸送りローラ100上の複数の糸間のピッチより小さい。
ボビンホルダ42上の複数の糸間のピッチが糸送りローラ100上の複数の糸間のピッチより小さい場合、ボビンホルダ42に保持された複数のボビン90の軸方向の領域よりも広い範囲に複数の糸91が広がり易い傾向があるため、規制ガイド60a,60b,60cを備える効果を有効に発揮させることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態の糸巻取機1は、巻取部10が上下に並べて配置されている。これに代えて、巻取部10が水平方向に並べて配置されていてもよいし、糸巻取機1が備える巻取部10が1つだけであってもよい。
上記実施形態のトラバース装置21はカムドラム式であるが、トラバースガイド23を巻幅方向に往復動させることが可能であれば異なる構成であってもよい。例えば、トラバース装置21に代えて、ベルト式のトラバース装置を用いることもできる。
1 糸巻取機
20 第1ハウジング
23 トラバースガイド
30 第2ハウジング
60a,60b,60c 規制ガイド
61 取付部
63 作用部
70a,70b,70c 移動機構
71 スライドレール(支持軸部材)
72 支持レール
75 操作部
76 連結部材
42 ボビンホルダ
84 糸外しガイド
85 分糸ガイド
90 ボビン
91 糸
92 パッケージ
100 糸送りローラ

Claims (10)

  1. 糸送りローラから送り出された複数の糸を複数のボビンにそれぞれ巻き取ってパッケージを製造する糸巻取機において、
    複数の前記ボビンを保持するボビンホルダと、
    複数の糸にそれぞれ接触して当該糸をボビンホルダ軸方向にトラバースする複数のトラバースガイドと、
    複数の糸が複数の前記トラバースガイドから外れた状態で糸を保持する糸外しガイドと、
    前記糸外しガイドにより保持された複数の糸に対して、当該糸のボビンホルダ軸方向の位置が前記ボビンホルダに保持された前記複数のボビンの軸方向の領域の内側となるように当該糸を規制する規制ガイドと、
    当該糸に作用して当該糸を規制する規制位置と、前記規制位置から退避した退避位置との間で前記規制ガイドを移動可能とする移動機構と、
    を備え、
    前記糸外しガイドは、前記複数の糸を保持する保持位置と、前記保持位置から退避した退避位置と、の間で移動可能であり、
    前記規制ガイドのうち前記移動機構に取り付けられる部分を取付部とし、糸に作用する部分を作用部とし、前記糸巻取機に対して前記糸送りローラが位置する方向を高さ方向とし、前記高さ方向及び前記ボビンホルダ軸方向の両方に直交する方向を軸直交方向としたときに、
    前記規制位置及び前記退避位置の両方において、前記作用部は、前記取付部よりも前記軸直交方向における糸道側に位置していることを特徴とする糸巻取機。
  2. 請求項1に記載の糸巻取機であって、
    前記移動機構は、少なくとも前記複数のボビンの軸方向の領域の内側において前記規制ガイドを前記ボビンホルダ軸方向にスライドさせるための機構を有することを特徴とする糸巻取機。
  3. 請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
    前記規制ガイドが前記ボビンホルダ軸方向にスライドすることにより、前記規制ガイドの前記規制位置と、前記退避位置と、が切り替わることを特徴とする糸巻取機。
  4. 請求項3に記載の糸巻取機であって、
    前記規制ガイドに対して前記ボビンホルダ軸方向の端側に配置されるとともに前記規制ガイドに連結されており、前記規制ガイドをスライドさせる操作が可能な操作部を備えることを特徴とする糸巻取機。
  5. 請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
    前記規制ガイドは、前記高さ方向において前記作用部が前記糸送りローラから離れる方向に前記作用部が移動することにより、前記規制位置から前記退避位置に切り替わることを特徴とする糸巻取機。
  6. 請求項5に記載の糸巻取機であって、
    前記移動機構は、前記ボビンホルダ軸方向に沿って設けられるとともに前記規制ガイドが前記規制位置を維持するように当該規制ガイドを支持する支持レールを備え、
    前記規制ガイドは、前記支持レールに沿って、前記ボビンホルダ軸方向にスライド可能であり、
    前記支持レールが配置された箇所を越えて前記規制ガイドがスライドすることにより、前記規制位置から前記退避位置に切り替わることを特徴とする糸巻取機。
  7. 請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
    前記移動機構は、支持軸部材と、当該支持軸部材と前記規制ガイドと連結する連結部材と、を備え、
    前記規制位置では、前記連結部材は、前記支持軸部材から前記軸直交方向における糸道側に延びており、
    前記退避位置では、前記連結部材は、前記支持軸部材から前記軸直交方向における糸道の反対側に延びていることを特徴とする糸巻取機。
  8. 請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
    前記トラバースガイドが配置された第1ハウジングと、
    糸道を挟んで前記第1ハウジングに対向して配置された第2ハウジングと、
    を備え、
    前記糸外しガイドが前記第1ハウジングに配置され、
    前記規制ガイドが前記第2ハウジングに配置されていることを特徴とする糸巻取機。
  9. 請求項1から8までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
    複数の糸を個別に分離して前記複数のトラバースガイドのそれぞれのトラバース領域に保持する分糸ガイドを備え、
    前記分糸ガイドは、複数の糸を分離して保持する分糸位置と、前記分糸位置から退避した退避位置と、の間で移動可能であることを特徴とする糸巻取機。
  10. 請求項1から9までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
    前記ボビンホルダ上の複数の糸間のピッチが前記糸送りローラ上の複数の糸間のピッチより小さいことを特徴とする糸巻取機。
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