本発明は、コンクリートの二次製品として製造される新積木型枠ブロック、コンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法に関するものである。
コンクリート構造物は、一般的に、構造物の基礎や柱、壁、床ないし天井などを形作る型枠などを施工現場で組立て、この型枠内部に配筋を施した後にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に前記型枠を取り外して構築する。しかし、このような構築方法では、コンクリート打設の前後の型枠の組立てと取り外しが不可欠である。しかも、型枠の組立ておよび取り外しには多大な労力を必要であり、工期の長期化に大きく影響する原因の一つになっている。
例えば、建築の基礎は、砕石を敷設し、ベタ打ちコンクリート、鉄筋組立、型枠組立て、コンクリート打設、コンクリートの養生、型枠取り外しと、多くの作業手順が必要であり、一階の床面積が20坪~30坪程度の一般的な住宅の基礎の施工には20日間程度の施工日数を要している。
ところで、本願の発明者である中村は、コンクリート製の棒状部材を用いたコンクリート構造物に関する開発を行っており、特許第3240373号公報に示すように、特許権を得ている(特許文献1)。この特許文献1によれば、コンクリート構造物は、角形断面を有する横長のコンクリート製棒状部材に高さ方向に貫通する通孔を形成し、その棒状部材を複数段に積み重ね、前記通孔に通しボルトを挿入し、上下からナットで締結固定することにより構築するとされている。
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、通しボルト下端とナットとの締結作業は、架設台の上に最下段(一段目)の棒状部材を設置し、当該棒状部材の下面に凹状に形成された前記架設台との狭い隙間において行われている。そのため、作業性が悪く多くの時間を要している。
また、コンクリートの二次製品である棒状部材は、養生(硬化)時の収縮により通孔の内径が設計値より狭くなったり、棒状部材同士の接面(上端面や下端面)に凹凸状の歪みがあると通孔同士の位置がずれたりして、通しボルトの挿入作業が難航することもある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、ボルト締結時の下端側の締結作業を不要にし、コンクリート構造物の構築を短縮することのできる、新積木型枠ブロック、コンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法を提供することを目的としている。
本発明に係る新積木型枠ブロックは、ボルトの締結作業を容易にするという課題を解決するために、複数段に積み重ねてボルトで締結することによりコンクリート構造物を構築するための新積木型枠ブロックであって、角形断面を有する横長状に形成されたコンクリート製のブロック体と、前記ブロック体の長手方向に沿って所定間隔を隔てて上下方向に形成された複数本のボルト挿入孔と、前記ブロック体内であって前記ボルト挿入孔の下端位置に形成された中空のボルト係止室と、を有しており、前記ボルト挿入孔は、前記ブロック体の上端面から下端部手前まで連通されているとともに、平面視の断面形状が、挿入されるT字ボルトのT字形端部の寸法に対応して、当該T字形端部の長手方向長さより大きな寸法の縦幅を有するとともに、前記T字形端部の長手方向長さより小さな寸法の横幅を有しており、前記ボルト係止室は、前記T字ボルトを回転軸回りに約90度回転可能な空間を備えているとともに、前記T字形端部の上端面を当接させて係止する天井面を有している。
また、本発明の一態様として、積重ブロック同士の連結や丸鋼管など他の部材との連結を可能にするという課題を解決するために、前記新積木型枠ブロックは、前記ブロック体の上端面から下端面にかけて貫通されているとともに前記T字ボルトを挿通可能な断面形状に形成されたボルト貫通孔を有しており、当該ボルト貫通孔と前記ボルト挿入孔とが、前記ブロック体の長手方向に沿って交互に配置されるように形成されていてもよい。
本発明に係るコンクリート構造物は、ボルトの締結作業を容易にし、工期を短縮させるという課題を解決するために、前記新積木型枠ブロックが第一新積木型枠ブロックとして最下段に設置されているとともに、当該第一新積木型枠ブロックの上段には、前記各ボルト挿入孔と連通しうる位置にボルト貫通孔が形成されている第二新積木型枠ブロックが一段以上積み重ねられており、最上段にある前記第二新積木型枠ブロックの前記ボルト貫通孔から最下段にある前記第一新積木型枠ブロックの前記ボルト挿入孔を介して前記ボルト係止室まで前記T字ボルトが挿入されており、前記T字型端部の上端面を前記ボルト係止室の天井面に係止させた状態でナットを締め付けて締結固定されている。
本発明に係るコンクリート構造物は、ボルトの締結作業を容易にし、工期を短縮させるという課題を解決するために、前記ボルト挿入孔を有する前記新積木型枠ブロックを複数段積み重ねて構築されるコンクリート構造物であって、下段の前記新積木型枠ブロックの前記ボルト挿入孔に対して上段の前記新積木型枠ブロックの前記ボルト貫通孔が連通する位置で積み重ねられており、各上下段の前記新積木型枠ブロック間において、上段側の前記ボルト貫通孔から下段側の前記ボルト挿入孔を通って前記ボルト係止室まで前記T字ボルトが挿入されており、前記T字形端部の上端面を前記ボルト係止室の天井面に係止させた状態でナットで締め付けて上下段の前記新積木型枠ブロック同士を締結固定して構築される。
本発明に係るコンクリート基礎の施工方法は、施工に係る日数を短縮するという課題を解決するために、前記ボルト挿入孔を有する新積木型枠ブロックを第一新積木型枠ブロックとして用いたコンクリート基礎の施工方法であって、前記第一新積木型枠ブロックを設置する地面を平坦に整地する整地工程と、前記地面において前記第一新積木型枠ブロックの前記ボルト貫通孔を配置する位置に丸鋼管を埋設する丸鋼管埋設工程と、前記丸鋼管の上方に前記ボルト貫通孔を連通するように前記第一新積木型枠ブロックを設置する第一新積木型枠ブロック設置工程と、前記丸鋼管および前記ボルト貫通孔に長尺状の連結ボルトを挿入しモルタルで固定するとともに、硬化後にナットで締結して前記第一新積木型枠ブロックを前記地面に固定する第一新積木型枠ブロック地面固定工程と、地面に固定された前記第一新積木型枠ブロックの上段に、ボルト貫通孔を有する第二新積木型枠ブロックを、前記ボルト貫通孔が前記第一新積木型枠ブロックのボルト挿入孔に連通するようにして積み重ねるブロック積重工程と、前記T字ボルトを上段の第二新積木型枠ブロックの前記ボルト貫通孔から下段の第一新積木型枠ブロックの前記ボルト挿入孔を通して前記ボルト係止室にまで挿入し、前記T字ボルトを回転軸回りに約90度回転させるとともに、前記T字形端部の上端面を前記ボルト係止室の天井面に係止させた状態で上端をナットで締め付けることにより前記第一新積木型枠ブロックと前記第二新積木型枠ブロックとを締結固定するブロック締結工程とを有する。
本発明によれば、ボルト締結時の下端側の締結作業を不要にし、コンクリート構造物の構築を短縮することができる。
本発明に係るコンクリート構造物において積み重ねたブロックを(a)口型、(b)H形および(c)T型に組み合わせた状態を示す斜視図である。
本発明に係るコンクリート構造物の第1実施形態を示す断面図である。
本第1実施形態の第一新積木型枠ブロックを示す断面図である。
本第1実施形態の第一新積木型枠ブロックを示す平面図である。
図3におけるA-A線断面を示す断面図である。
第一新積木型枠ブロックの他の実施形態を示す平面図である。
本第1実施形態の第二新積木型枠ブロックを示す断面図である。
本第1実施形態の第二新積木型枠ブロックを示す平面図である。
本発明に係るコンクリート構造物の第2実施形態を示す断面図である。
本第2実施形態の新積木型枠ブロックを示す断面図である。
本第2実施形態の新積木型枠ブロックを示す平面図である。
本発明に係るコンクリート構造物(コンクリート基礎)の第3実施形態を示す断面図である。
本第3実施形態のコンクリート基礎の施工方法の各工程を示すフロー図である。
本第3実施形態のコンクリート基礎の施工方法における(a)整地工程、(b)丸鋼管埋設工程および(c)第一積重ブロック設置工程を示す模式図である。
本第3実施形態のコンクリート基礎の施工方法における(d)第一積重ブロック地面固定工程および(e)ブロック積重工程を示す模式図である。
本第3実施形態のコンクリート基礎の施工方法における(f)ブロック締結工程を示す模式図である。
実施例1における比較条件として設定したコンクリート基礎を示す斜視図である。
以下、本発明に係る新積木型枠ブロックおよびこれを用いたコンクリート構造物の第1実施形態について図面を用いて説明する。
コンクリート構造物1は、コンクリート製のブロックを積み重ねて構成される構造物であって、護岸、仮設道路の基礎、擁護壁、地下室および建築基礎などの用途に合わせて、図1(a)に示すように平面視で口型、図1(b)に示すように平面視でH型、図1(c)に示すように平面視でT型などに組み合わされて形成される構造物である。
本第1実施形態におけるコンクリート構造物1は、新積木型枠ブロック2を積み重ねて構築される構造物であって、図2に示すように、本発明に係る新積木型枠ブロック2である第一新積木型枠ブロック2と、この第一新積木型枠ブロック2の上方に積み重ねられる第二新積木型枠ブロック3と、第一新積木型枠ブロック2および第二新積木型枠ブロック3を締結するT字ボルト4とを有する。以下、各構成について詳細に説明する。
第一新積木型枠ブロック2は、コンクリート構造物1の最下段に配置されるコンクリートの二次製品として製造されるブロックであって、図3~図5に示すように、直方体状に形成されるブロック体21と、このブロック体21に形成されるボルト挿入孔22と、このボルト挿入孔22の下端位置に形成されるボルト係止室23とを有する。
ブロック体21は、角形断面を有する横長の直方体状に形成されたコンクリート製のブロックであり、図示しないが、内部には補強のための配筋が施されている。このブロック体21は、規格化された形状にすることができ、規格の基準として、長さ寸法は構造物の施設延長のスパン割が一般に500cm単位であること、幅寸法は鉄筋の被り寸法の最低値が港湾施設等では7cmであって複鉄筋を配筋するには25cm程度必要であること等が挙げられる。また、高さ寸法は任意であるが適用範囲が広いように幅寸法の1倍から2倍とするのが好ましい。よって、ブロック体21は、長さ550cm以下、幅は20cm~25cm、高さは25cm~50cmにすることが好ましい。
ボルト挿入孔22は、ブロック体21の長手方向に沿って所定間隔を隔てて上下方向に形成された複数本の孔であり、ブロック体21の上端面211から略垂直下方に向けて下端部手前まで連通されている。よって、下端面212まで貫通はしていない。
このボルト挿入孔22は、端部に略T字状の係止部分が備えられている、いわゆるT字ボルト4を挿入可能な形状に形成されている。具体的には、図4に示すように、平面視の断面形状が、T字ボルト4のT字型端部41の寸法に対応しており、当該T字形端部41の長手方向長さより大きな寸法の縦幅を有するとともに、前記T字形端部41の長手方向長さより小さな寸法の横幅を有している。本第1実施形態におけるボルト挿入孔22の平面視の断面形状は、略長方形状に形成されており、養生(硬化)時の収縮を考慮して、平面視におけるT字形端部41の長手方向の寸法60mmおよび短手方向の寸法25mmに対し、それぞれ10mm程度大きい設計寸法(長手方向の寸法70mm、短手方向の寸法35mm)に基づき形成されている。
なお、本第1実施形態におけるボルト挿入孔22は、平面視におけるその長手方向がブロック体21の長手方向に対して直交するように形成されているが、ボルト挿入孔22の長手方向の向きは特に限定されるものではなく、図6に示すように、ブロック体22の長手方向に沿うように形成してもよく、図示しないが、ブロック体22の長手方向に対して斜めに形成してもよい。
次に、ボルト係止室23は、ブロック体21の内部においてボルト挿入孔22の下端位置に形成される中空の空間であって、挿入されるT字ボルト4のT字形端部41を係止する内部空間である。よって、ボルト係止室23は、T字ボルト4のT字形端部41がボルトの回転軸回りに約90度回転可能な広さの空間を備えており、前記T字形端部41の上端面411を当接させて係止する天井面231を有している。本第1実施形態におけるボルト係止室23は、図4に示すように、平面視において一辺がボルト挿入孔22の長手方向の寸法と同程度の略正方形状であって、高さがT字形端部41の高さ寸法より高い寸法を有するように形成されている。
また、ボルト係止室23の側面および底面は外部とは連通していない。これによって、地下水や土壌に含まれる水分などの内部への浸入を防止し、コンクリート製のブロック体21の劣化やT字ボルト4の腐食などを抑制するとともに、室内にモルタルなどを注入する際には流し込んだモルタルが外部に流出しないようになっている。
なお、ボルト係止室23の形状は、平面視で略長方形状のものに限定されるものではなく、図示しないが、平面視で円形状のものなど、T字ボルト4のT字形端部41が回転可能な形状から適宜選択することができる。
第一新積木型枠ブロック2の製造方法は、横長の直方体状の型枠を形成し、その中に鉄筋を配筋した後にコンクリートを打設し、養生(硬化)させて形成する。また、ボルト係止孔22およびボルト係止室23は、コンクリート基礎の型枠工事やコンクリートの二次製品を製造する際に不要なところにコンクリートが入り込まないようにするための一般的な工法である「箱抜き」工法によって形成することができる。
次に、第二新積木型枠ブロック3について説明する。第二新積木型枠ブロック3は、第一新積木型枠ブロック2の上段に、所望する高さになるまで一段以上積み重ねられるコンクリートの二次製品として製造されるブロックであって、図7および図8に示すように、直方体状に形成されるブロック体31と、このブロック体31に形成されるボルト貫通孔32とを有する。
第二新積木型枠ブロック3のブロック体31は、第一新積木型枠ブロック2のブロック体21と同様に、角形断面を有する横長の直方体状に形成されたコンクリート製のブロックであり、内部には補強のための配筋が施されている。
ボルト貫通孔32は、T字ボルト4を挿通させるためブロック体31の上端面311から下端面312にかけて略垂直方向に貫通した孔であり、図2に示すように、複数のボルト貫通孔32が、前記ブロック体31の長手方向に沿って、第一新積木型枠ブロック2に形成された各ボルト挿入孔22と連通しうる位置に形成されている。本第1実施形態におけるボルト貫通孔32は、図8に示すように、平面視の断面形状がT字ボルト4のT字型端部41を挿入可能な略長方形状に形成されており、養生(硬化)時の収縮を考慮して、前記T字形端部41の長手方向および短手方向の寸法より一回り大きい寸法に設計されて形成されている。
なお、ボルト貫通孔32の平面視の断面形状は、略長方形状のものに限定されるものではなく、T字型端部41が挿通可能な形状であれば、楕円状や円状に形成されていてもよい。
また、第二新積木型枠ブロック3の製造方法は、第一新積木型枠ブロック2の製造方法と同様に、横長の立方体状の型枠を形成し、その中に鉄筋を配筋した後にコンクリートを打設し、養生(硬化)させて形成する。また、ボルト貫通孔32は「箱抜き」工法で形成する。
T字ボルト4は、積み重ねられたブロック同士を締結するための長尺状のボルトであり、上端側には雄ネジ山42が形成されているとともに、下端側には略T字型を逆さにしたような形状に形成されたT字形端部41を備えている。本第1実施形態におけるT字形端部41は、ボルトの直径と略同径でかつ当該ボルトの直径よりも長く形成させた円柱棒材を、ボルトの下端においてT字型に配置し、溶接等により固定することにより構成される。
このT字ボルト4は、図2に示すように、最上段にある第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32から最下段にある第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22を介してボルト係止室23まで挿入されており、T字型端部41はその上端面411をボルト係止室23の天井面231に係止させた状態でナット5を締め付けて締結固定されている。
なお、T字形端部41は、円柱棒材を固定してなるものに限定されるものではなく、平面視で長手方向の寸法と短手方向の寸法が異なる形状であれば、角柱などの棒材や平面視が略長方形状および略楕円状の板材、またはラグビーボールのような形状のものを固定して形成してもよい。
次に、本第1実施形態のコンクリート構造物1の構築工程について説明する。
まず最下段に第一新積木型枠ブロック2を設置する。次に第一新積木型枠ブロック2の上段に第二新積木型枠ブロック3を所定の高さまで積み上げる。このとき、第一新積木型枠ブロック2の上段(二段目)になる第二新積木型枠ブロック3は、各ボルト貫通孔32が第一新積木型枠ブロック2の各ボルト挿入孔22と連通するように積み重ねる。さらに、上段に第二新積木型枠ブロック3を積み重ねる場合は、下段のボルト貫通孔32と上段のボルト貫通孔32とが連通するように積み重ねる。これにより、各段の第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32と、最下段の第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22およびボルト係止室23が上下方向に連通した状態になる。
次に最上段にある第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32に対しT字ボルト4を挿入する。T字ボルト4は、T字型端部41が第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22を介してボルト係止室23に到達するまで挿入される。そして、T字ボルト4を回転軸回りに約90度回転させる。
そしてT字ボルト4の雄ネジ山42にナット5を螺合させて締結する。本第1実施形態では、ナット5とボルト貫通孔32との間にワッシャー51を入れている。
図2に示すように、T字形端部41の上端面411は、ボルト係止室23の天井面231に係止され、ナット5を締め付けてもT字ボルト4が抜け出ない。よって、各ブロックは締結固定され、コンクリート構造物1が構築される。
また、本第1実施形態におけるコンクリート構造物1では、ボルト貫通孔32やボルト挿入孔22、ボルト係止室23にモルタルを注入し、T字ボルト4と各ブロックとをモルタルによって固定する。
以上のような本第1実施形態によれば、以下のような作用、効果を奏することができる。
1.コンクリートの二次製品である第一積重ブロック2や第二積重ブロック3を用いてコンクリート構造物1を構築することができるため、施工現場における型枠の組立てや取り外し作業が不要になり、工期を短縮することができる。
2.最下段に設置された第一積重ブロック2の内部において、T字形端部41の上端面411をボルト係止室23の天井面231に当接させてT字ボルト4を係止させることができるため、従来技術のような狭い空間における締結作業が不要になり、工期を短縮することができる。
3.T字ボルト4を第一新積木型枠ブロック2に係止させる操作は、ボルト挿入孔22を介してボルト係止室23まで挿入し、ボルトの回転軸回りに約90度回転させという極めて容易な作業であり、特別な技術や経験を必要とせずに行うことができる。
4.第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32および第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22の設計寸法をT字形端部4より一回り大きくしたため、養生(硬化)時の縮みが生じたり各ブロックの接面に歪みがあっても、T字ボルト4をスムーズに挿入することができる。
次に、本発明に係る新積木型枠ブロックおよびコンクリート構造物の第2実施形態について図面を用いて説明する。なお、前述した第1実施形態で説明した構成と同一または相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
本第2実施形態におけるコンクリート構造物1は、図9に示すように、複数段積み重ねられる新積木型枠ブロック2と、積み重ねられた新積木型枠ブロック2同士を二段ずつ締結固定するT字ボルト4とを有する。
本第2実施形態の新積木型枠ブロック2は、図10および図11に示すように、ブロック体21と、このブロック体21に形成されるボルト挿入孔22と、このボルト挿入孔22の下端位置に形成されるボルト係止室23と、前記ブロック体21に貫通されたボルト貫通孔24とを有する。
ボルト貫通孔24は、下段の新積木型枠ブロック2や他の構造物等と連結するための孔であり、ブロック体21の上端面211から下端面212にかけて垂直方向に貫通している。この新積木型枠ブロック2に形成されているボルト貫通孔24は、ボルト挿入孔22と同様に、平面視の断面形状がT字ボルト4のT字型端部41の寸法に対応して略長方形状に形成されており、養生(硬化)による収縮を考慮して余裕のある設計寸法によって形成されている。
また、ボルト貫通孔24は、ボルト挿入孔22とブロック体22の長手方向に沿って交互に配置されるように形成されており、本第2実施形態では、ボルト貫通孔24とボルト挿入孔22との間隔が等間隔に形成されている。
また、本第2実施形態におけるボルト貫通孔24の上端面側には、T字ボルト4や当該T字ボルト4に螺合されるナット5がブロック体21の上端面211より上方に突出しないためのナット収容凹部25が形成されている。なお、ナット5等がブロック体21の上端面22より上方に突出させて良い場合は、このナット収容凹部25は形成しなくてもよい。
T字ボルト4は、第1実施形態と同様にブロック同士を締結固定するためのものであって、本第2実施形態では、上下に積み重ねられた新積木型枠ブロック2を二段ずつ締結固定するものである。よって、T字ボルト4は、T字形端部41の上端面411をボルト係止室23の天井面231に当接させた状態において、雄ネジ山42がブロック体21の上端面211から突出することなくナット収容凹部25内に配置される長さに形成されている。なお、ナット5等がブロック体21の上端面211より上方に突出させて良い場合は、T字ボルト4の長さをブロック体21の上端面211から突出し得る長さにしてもよい。
次に、本第2実施形態のコンクリート構造物1の構築工程について説明する。
まず最下段に新積木型枠ブロック2を設置する。このとき最下段に設置する新積木型枠ブロック2は、下方の構造物等との連結が必要無ければボルト貫通孔24を有さない第1実施形態の第一新積木型枠ブロック2であってもよい。
次に新積木型枠ブロック2の上段に、他の新積木型枠ブロック2を積み重ねる。このとき下段の新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22に対して上段の新積木型枠ブロック2のボルト貫通孔24が連通する位置で積み重ねる。これにより上段のボルト貫通孔24から下段のボルト係止室23まで上下方向に連通した状態になる。
T字ボルト4によるブロック同士の締結は、新積木型枠ブロック2を一段積み重ねる毎に行う。具体的には、T字ボルト4を上段の新積木型枠ブロック2のボルト貫通孔24からT字型端部41が下段のボルト係止室23に到達するまで挿入する。そして、T字ボルト4を回転軸回りに約90度回転させる。必要に応じてT字ボルト4にワッシャー51を入れ、雄ネジ山42にナット5を螺合させて締結する。ナット5やT字ボルト41の上端は、ナット収容凹部25に収容されるため上端面211からは突出しない。なお、仮にT字ボルト4の上端がブロック体21の上端面211より突出したときにはT字ボルト4の上端を切断してもよい。
二段目の締結作業を行った後は、一段ずつ新積木型枠ブロック2の積み重ねるとともにT字ボルト4による締結固定を行い、所定の高さになるまで繰り返し、コンクリート構造物1を構築する。
以上のような本第2実施形態の新積木型枠ブロック2およびコンクリート構造物1によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができるとともに、新積木型枠ブロック2同士を上下二段ずつ固定するため、T字ボルト4の長さが短くなって挿入・締結作業が容易になるとともに、締結箇所が増えるため強度を高めることができるという効果を奏することができる。
次に、本発明に係るコンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法の第3実施形態について図面を用いて説明する。なお、前述した第1実施形態および第2実施形態で説明した構成と同一または相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
本三実施形態におけるコンクリート構造物1は、主に、一般的な木造住宅やプレハブ住宅などにおける建築基礎なるコンクリート基礎であって、図12に示すように、、本発明に係る新積木型枠ブロック2である第一新積木型枠ブロック2と、第二新積木型枠ブロック3と、T字ボルト4と、地面Lに埋設される丸鋼管6と、この丸鋼管6と第一新積木型枠ブロック2とを連結する連結ボルト7とを有する。
丸鋼管6は、第一新積木型枠ブロック2を地面Lに固定するためのものであって、杭のように地中に埋設される鋼管である。本三実施形態における丸鋼管6は、連結ボルト7として使用されるT字ボルト4のT字型端部41が挿通可能な内径を有している。丸鋼管6の長さは特に限定されるものではないが、本三実施形態では約1mの長さに形成されている。
連結ボルト7は、丸鋼管6と第一新積木型枠ブロック2との連結に用いる長尺状のボルトであり、第一新積木型枠ブロック2のボルト貫通孔24を介して丸鋼管6まで挿入されたときに上端がナット収容凹部25の内部に位置する長さに形成されている。本三実施形態における連結ボルト7は、上述のとおり、T字ボルト4と同じものを使用している。
次に、本三実施形態のコンクリート基礎の施工方法について説明する。
本三実施形態のコンクリート基礎の施工方法は、図13に示すように、地面Lを平坦に整地する整地工程S1と、丸鋼管6を埋設する丸鋼管埋設工程S2と、第一新積木型枠ブロック2を地面Lに設置する第一新積木型枠ブロック設置工程S3と、第一新積木型枠ブロック2を地面Lに固定する第一新積木型枠ブロック地面固定工程S4と、第一新積木型枠ブロック2に第二新積木型枠ブロック3を積み重ねるブロック積重工程S5と、第一新積木型枠ブロック2と第二新積木型枠ブロック3とを締結固定するブロック締結工程S6とを有する。以下、各工程について詳細に説明する。
整地工程S1は、図14(a)に示すように、第一新積木型枠ブロック2を設置する地面L
を平坦に整地する工程である。本第3実施形態では油圧ショベルを用いて地面Lを平坦にする。必要に応じて元の地面Lより深く掘削してもよい。また、整地後の地面Lに切込砕石を敷設してもよい。
丸鋼管埋設工程S2は、図14(b)に示すように、整地した地面Lにおいて第一新積木型枠ブロック2のボルト貫通孔24を配置する位置に丸鋼管6を埋設する工程である。丸鋼管6の埋設は、油圧オーガ等の穴掘り機を用いて前記丸鋼管6の外径に応じた下孔を掘削し、その下孔に丸鋼管6を挿入して行う。
第一新積木型枠ブロック設置工程S3は、図14(c)に示すように、埋設した丸鋼管6の上方にボルト貫通孔24が連通するように第一新積木型枠ブロック2を地面Lに設置する工程である。この第一新積木型枠ブロック2が、コンクリート基礎における最下段のブロックになる。
第一新積木型枠ブロック地面固定工程S4は、図15(d)に示すように、丸鋼管6およびボルト貫通孔24に連結ボルト7を挿入しモルタル8で固定するとともに、硬化後にナット5で締結して第一新積木型枠ブロック2を地面Lに固定する工程である。本第3実施形態では、連結ボルト7としてT字ボルト4をT字形端部41を下方に向けた状態で挿入する。連結ボルト7の挿入後、ボルト貫通孔24からモルタル注入し、硬化させて連結ボルト7を丸鋼管6および第一新積木型枠ブロック2を固定する。さらに、連結ボルト7にワッシャー51を入れ、ナット5を螺合させて締結する。これにより、第一新積木型枠ブロック2は、地中に埋設された丸鋼管6に締結され、地面Lに固定される。また、本第3実施形態では、連結ボルト7にT字ボルト4を用いたことにより、T字形端部41が硬化した丸鋼管6内のモルタルに係止されるためボルト抜けを防止できる。
ブロック積重工程S5は、図15(e)に示すように、地面Lに固定された第一新積木型枠ブロック2の上段に、ボルト貫通孔32を有する第二新積木型枠ブロック3を、前記ボルト貫通孔32が第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22に連通するようにして積み重ねる工程である。なお、このとき第二新積木型枠ブロック3は必要な高さに応じて二段以上積み重ねてもよい。
ブロック締結工程S6は、図16(f)に示すように、T字ボルト4を用いて第一新積木型枠ブロック2と、第二積重ブロック3とを締結固定する工程である。具体的には、T字ボルト4を上段の第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32から下段の第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22を通してボルト係止室23にまで挿入する、次に、挿入したT字ボルト4を回転軸回りに約90度回転させる。そして、T字ボルト4のT字形端部41の上端面411をボルト係止室23の天井面231に係止させた状態で上端をナット2で締め付ける。これによって、第一新積木型枠ブロック2と第二新積木型枠ブロック3とが締結固定される。
なお、ブロック締結工程S6では、必要に応じてボルト貫通孔32からモルタルを注入し、T字ボルト4を第二積重ブロック3および第一積重ブロック2に固定してもよい。また、図12に示すように、T字ボルト4の締結前に第二積重ブロック3の上段に角形の製材(木材)Wを積み重ね、各ブロックとともに前記製材Wを締結固定してもよい。
本第3実施形態では、以上の工程によってコンクリート構造物1としてコンクリート基礎が完成する。ベタ基礎にする場合は、各ブロックで囲まれた内側に配筋しコンクリートを打設する。また、整地工程S1において元の地面より深く掘削した場合は、コンクリート基礎の周囲に土砂を埋め戻してもよい。
以上のような本第3実施形態のコンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法によれば、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏することができ、従来の建築基礎の施工に20日間程度の施工日数を要しているのに対し、型枠の組立て取り外しやコンクリートの養生(硬化)に係る日数を要しないため、約4~10日程度の施工日数でコンクリート基礎の施工を完了させることができる。
実施例1では、従来方法を用いた場合と、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法を用いた場合のコンクリート基礎の施工費用比較および施工日数比較を行った。
比較条件として、コンクリート基礎は、図17に示すように、整地を行った地面上に切込砕石を敷設し、ベタ打ちコンクリートを打設した上に、1辺が5m、高さ1メートルの基礎を施工する場合に設定した。ただし、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法においては、ブロック締結工程を行った後のベタ打ちは行わないとした。
まず、従来方法において掘削土、切込砕石、ベタ打ちコンクリートの体積およびコンクリート(鉄筋含む)の重量を算出した。算出結果は以下のとおりである。
掘削土=平均3.5m×0.4m×(6m×4ヶ所)=33.6m2
切込砕石=(1.2m+2.4m)×0.35m×1/2×(6m×4ヶ所)=15m2
ベタ打ちコンクリート=(1.0m×0.2m)×1/2×(6m×4ヶ所)=2.4m2
コンクリート(鉄筋含む)=(5m+4.7m)×0.12m×1m×2ヶ所=2.33m2×2.45=5700kg
これら算出した各体積および重量に基づき施工に係る費用を算出した。その結果、施工費用は下記の表1に示すとおり、72万7千円であった。
これに対し、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法を用いた場合の施工費用は下記の表2に示すとおり、64万9千円であった。
よって、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法による施工費用は、64万9千円であり、従来方法の72万7千円に比べて1割程度、安価に施工できる結果となった。仮に、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法において基礎を構築後にベタ打ちを行った場合であっても、施工費用はベタ打ちコンクリートの5万1千円が加算され70万円となり、従来方法と同程度か僅かに安価で施工できる。
次に、施工日数について検討した。従来方法による施工工程および各工程に係る日数は下記のとおりである。
(1)掘削・路床正整 2日
(2)切込砕石40mm級の敷き均 1日
(3)ベタ打ちコンクリート 1日
(4)コンクリート養生 5日
(5)鉄筋組立 2日
(6)型枠組立 2日
(7)コンクリート打設 1日
(8)コンクリート養生 5日
(9)型枠解体 1日
延べ日数 20日
これに対し、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法による施工工程および各工程に係る日数は下記のとおりである。
(1)掘削・路床正整 2日
(2)切込砕石40mm級の敷き均 1日
(3)丸棒埋設・ブロック積重・締結 1日
延べ日数 4日
よって、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法による施工日数は、4日程度であり、従来方法の20日程度に比べて大幅に短縮することができる。仮に、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法において基礎を構築後にベタ打ちを行った場合であっても10日程度であり、従来方法の半分程度の日数で施工できる。
以上より、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法は、従来の施工現場において型枠を用いて基礎を構築する方法に比べて、施工費用は安価か同程度であり、施工日数については大幅に短縮することができる結果となった。これにより、昨今の人手不足・熟練作業員不足といった問題も解決されるものと考えられる。
なお、本発明に係る新積木型枠ブロック、コンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、(第一)新積木型枠ブロック2および第二新積木型枠ブロック3は、特許第3240373号公報における棒状部材と同様に、側面に固定具を有していてもよい。また、図示しないが、第一)新積木型枠ブロック2および第二新積木型枠ブロック3を積み重ねたときの接面(上端面および下端面)に互いに噛み合わせることのできる凹凸を形成し、積み重ねられたブロック同士の位置がずれにくくしてもよい。さらに、コンクリート構造物1の裏側に土を埋め入れた場合、その裏埋土の含水分がブロック同士の隙間から表側に漏出しないように、各ブロック間にモルタルなどの接着剤を塗布して隙間を埋めてもよい。さらに、(第一)新積木型枠ブロック2は、縦置きにしてコンクリート構造物1の柱として使用してもよい。
1 コンクリート構造物
2 新積木型枠ブロック、第一新積木型枠ブロック
3 第二新積木型枠ブロック
4 T字ボルト
5 ナット
6 丸鋼管
7 連結ボルト
8 モルタル
21 ブロック体
22 ボルト挿入孔
23 ボルト係止室
24 ボルト貫通孔
25 ナット収容凹部
211 上端面
212 下端面
231 ボルト係止室の天井面
31 ブロック体
32 ボルト貫通孔
311 上端面
312 下端面
41 T字型端部
42 雄ネジ山
411 T字型端部の上端面
51 ワッシャー
L 地面L
W 製材(木材)
本発明は、コンクリートの二次製品として製造される新積木型枠ブロック、コンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法に関するものである。
コンクリート構造物は、一般的に、構造物の基礎や柱、壁、床ないし天井などを形作る型枠などを施工現場で組立て、この型枠内部に配筋を施した後にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に前記型枠を取り外して構築する。しかし、このような構築方法では、コンクリート打設の前後の型枠の組立てと取り外しが不可欠である。しかも、型枠の組立ておよび取り外しには多大な労力を必要であり、工期の長期化に大きく影響する原因の一つになっている。
例えば、建築の基礎は、砕石を敷設し、ベタ打ちコンクリート、鉄筋組立、型枠組立て、コンクリート打設、コンクリートの養生、型枠取り外しと、多くの作業手順が必要であり、一階の床面積が20坪~30坪程度の一般的な住宅の基礎の施工には20日間程度の施工日数を要している。
ところで、本願の発明者である中村は、コンクリート製の棒状部材を用いたコンクリート構造物に関する開発を行っており、特許第3240373号公報に示すように、特許権を得ている(特許文献1)。この特許文献1によれば、コンクリート構造物は、角形断面を有する横長のコンクリート製棒状部材に高さ方向に貫通する通孔を形成し、その棒状部材を複数段に積み重ね、前記通孔に通しボルトを挿入し、上下からナットで締結固定することにより構築するとされている。
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、通しボルト下端とナットとの締結作業は、架設台の上に最下段(一段目)の棒状部材を設置し、当該棒状部材の下面に凹状に形成された前記架設台との狭い隙間において行われている。そのため、作業性が悪く多くの時間を要している。
また、コンクリートの二次製品である棒状部材は、養生(硬化)時の収縮により通孔の内径が設計値より狭くなったり、棒状部材同士の接面(上端面や下端面)に凹凸状の歪みがあると通孔同士の位置がずれたりして、通しボルトの挿入作業が難航することもある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、ボルト締結時の下端側の締結作業を不要にし、コンクリート構造物の構築を短縮することのできる、新積木型枠ブロック、コンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法を提供することを目的としている。
本発明に係る新積木型枠ブロックは、ボルトの締結作業を容易にするという課題を解決するために、複数段に積み重ねてボルトで締結することによりコンクリート構造物を構築するための新積木型枠ブロックであって、角形断面を有する横長状に形成されたコンクリート製のブロック体と、前記ブロック体の長手方向に沿って所定間隔を隔てて上下方向に形成された複数本のボルト挿入孔と、前記ブロック体内であって前記ボルト挿入孔の下端位置に形成された中空のボルト係止室と、を有しており、前記ボルト挿入孔は、前記ブロック体の上端面から下端部手前まで連通されているとともに、平面視の断面形状が、挿入されるT字ボルトのT字形端部の寸法に対応して、当該T字形端部の長手方向長さより大きな寸法の縦幅を有するとともに、前記T字形端部の長手方向長さより小さな寸法の横幅を有しており、前記ボルト係止室は、前記T字ボルトを回転軸回りに約90度回転可能な空間を備えているとともに、前記T字形端部の上端面を当接させて係止する天井面を有している。
また、本発明の一態様として、積重ブロック同士の連結や丸鋼管など他の部材との連結を可能にするという課題を解決するために、前記新積木型枠ブロックは、前記ブロック体の上端面から下端面にかけて貫通されているとともに前記T字ボルトを挿通可能な断面形状に形成されたボルト貫通孔を有しており、当該ボルト貫通孔と前記ボルト挿入孔とが、前記ブロック体の長手方向に沿って交互に配置されるように形成されていてもよい。
本発明に係るコンクリート構造物は、ボルトの締結作業を容易にし、工期を短縮させるという課題を解決するために、前記新積木型枠ブロックが第一新積木型枠ブロックとして最下段に設置されているとともに、当該第一新積木型枠ブロックの上段には、前記各ボルト挿入孔と連通しうる位置にボルト貫通孔が形成されている第二新積木型枠ブロックが一段以上積み重ねられており、最上段にある前記第二新積木型枠ブロックの前記ボルト貫通孔から最下段にある前記第一新積木型枠ブロックの前記ボルト挿入孔を介して前記ボルト係止室まで前記T字ボルトが挿入されており、前記T字形端部の上端面を前記ボルト係止室の天井面に係止させた状態でナットを締め付けて締結固定されている。
本発明に係るコンクリート構造物は、ボルトの締結作業を容易にし、工期を短縮させるという課題を解決するために、前記ボルト挿入孔を有する前記新積木型枠ブロックを複数段積み重ねて構築されるコンクリート構造物であって、下段の前記新積木型枠ブロックの前記ボルト挿入孔に対して上段の前記新積木型枠ブロックの前記ボルト貫通孔が連通する位置で積み重ねられており、各上下段の前記新積木型枠ブロック間において、上段側の前記ボルト貫通孔から下段側の前記ボルト挿入孔を通って前記ボルト係止室まで前記T字ボルトが挿入されており、前記T字形端部の上端面を前記ボルト係止室の天井面に係止させた状態でナットで締め付けて上下段の前記新積木型枠ブロック同士を締結固定して構築される。
本発明に係るコンクリート基礎の施工方法は、施工に係る日数を短縮するという課題を解決するために、前記ボルト挿入孔を有する新積木型枠ブロックを第一新積木型枠ブロックとして用いたコンクリート基礎の施工方法であって、前記第一新積木型枠ブロックを設置する地面を平坦に整地する整地工程と、前記地面において前記第一新積木型枠ブロックの前記ボルト貫通孔を配置する位置に丸鋼管を埋設する丸鋼管埋設工程と、前記丸鋼管の上方に前記ボルト貫通孔を連通するように前記第一新積木型枠ブロックを設置する第一新積木型枠ブロック設置工程と、前記丸鋼管および前記ボルト貫通孔に長尺状の連結ボルトを挿入しモルタルで固定するとともに、硬化後にナットで締結して前記第一新積木型枠ブロックを前記地面に固定する第一新積木型枠ブロック地面固定工程と、地面に固定された前記第一新積木型枠ブロックの上段に、ボルト貫通孔を有する第二新積木型枠ブロックを、前記ボルト貫通孔が前記第一新積木型枠ブロックのボルト挿入孔に連通するようにして積み重ねるブロック積重工程と、前記T字ボルトを上段の第二新積木型枠ブロックの前記ボルト貫通孔から下段の第一新積木型枠ブロックの前記ボルト挿入孔を通して前記ボルト係止室にまで挿入し、前記T字ボルトを回転軸回りに約90度回転させるとともに、前記T字形端部の上端面を前記ボルト係止室の天井面に係止させた状態で上端をナットで締め付けることにより前記第一新積木型枠ブロックと前記第二新積木型枠ブロックとを締結固定するブロック締結工程とを有する。
本発明によれば、ボルト締結時の下端側の締結作業を不要にし、コンクリート構造物の構築を短縮することができる。
本発明に係るコンクリート構造物において積み重ねたブロックを(a)口型、(b)H形および(c)T型に組み合わせた状態を示す斜視図である。
本発明に係るコンクリート構造物の第1実施形態を示す断面図である。
本第1実施形態の第一新積木型枠ブロックを示す断面図である。
本第1実施形態の第一新積木型枠ブロックを示す平面図である。
図3におけるA-A線断面を示す断面図である。
第一新積木型枠ブロックの他の実施形態を示す平面図である。
本第1実施形態の第二新積木型枠ブロックを示す断面図である。
本第1実施形態の第二新積木型枠ブロックを示す平面図である。
本発明に係るコンクリート構造物の第2実施形態を示す断面図である。
本第2実施形態の新積木型枠ブロックを示す断面図である。
本第2実施形態の新積木型枠ブロックを示す平面図である。
本発明に係るコンクリート構造物(コンクリート基礎)の第3実施形態を示す断面図である。
本第3実施形態のコンクリート基礎の施工方法の各工程を示すフロー図である。
本第3実施形態のコンクリート基礎の施工方法における(a)整地工程、(b)丸鋼管埋設工程および(c)第一積重ブロック設置工程を示す模式図である。
本第3実施形態のコンクリート基礎の施工方法における(d)第一積重ブロック地面固定工程および(e)ブロック積重工程を示す模式図である。
本第3実施形態のコンクリート基礎の施工方法における(f)ブロック締結工程を示す模式図である。
実施例1における比較条件として設定したコンクリート基礎を示す斜視図である。
以下、本発明に係る新積木型枠ブロックおよびこれを用いたコンクリート構造物の第1実施形態について図面を用いて説明する。
コンクリート構造物1は、コンクリート製のブロックを積み重ねて構成される構造物であって、護岸、仮設道路の基礎、擁護壁、地下室および建築基礎などの用途に合わせて、図1(a)に示すように平面視で口型、図1(b)に示すように平面視でH型、図1(c)に示すように平面視でT型などに組み合わされて形成される構造物である。
本第1実施形態におけるコンクリート構造物1は、新積木型枠ブロック2を積み重ねて構築される構造物であって、図2に示すように、本発明に係る新積木型枠ブロック2である第一新積木型枠ブロック2と、この第一新積木型枠ブロック2の上方に積み重ねられる第二新積木型枠ブロック3と、第一新積木型枠ブロック2および第二新積木型枠ブロック3を締結するT字ボルト4とを有する。以下、各構成について詳細に説明する。
第一新積木型枠ブロック2は、コンクリート構造物1の最下段に配置されるコンクリートの二次製品として製造されるブロックであって、図3~図5に示すように、直方体状に形成されるブロック体21と、このブロック体21に形成されるボルト挿入孔22と、このボルト挿入孔22の下端位置に形成されるボルト係止室23とを有する。
ブロック体21は、角形断面を有する横長の直方体状に形成されたコンクリート製のブロックであり、図示しないが、内部には補強のための配筋が施されている。このブロック体21は、規格化された形状にすることができ、規格の基準として、長さ寸法は構造物の施設延長のスパン割が一般に500cm単位であること、幅寸法は鉄筋の被り寸法の最低値が港湾施設等では7cmであって複鉄筋を配筋するには25cm程度必要であること等が挙げられる。また、高さ寸法は任意であるが適用範囲が広いように幅寸法の1倍から2倍とするのが好ましい。よって、ブロック体21は、長さ550cm以下、幅は20cm~25cm、高さは25cm~50cmにすることが好ましい。
ボルト挿入孔22は、ブロック体21の長手方向に沿って所定間隔を隔てて上下方向に形成された複数本の孔であり、ブロック体21の上端面211から略垂直下方に向けて下端部手前まで連通されている。よって、下端面212まで貫通はしていない。
このボルト挿入孔22は、端部に略T字状の係止部分が備えられている、いわゆるT字ボルト4を挿入可能な形状に形成されている。具体的には、図4に示すように、平面視の断面形状が、T字ボルト4のT字形端部41の寸法に対応しており、当該T字形端部41の長手方向長さより大きな寸法の縦幅を有するとともに、前記T字形端部41の長手方向長さより小さな寸法の横幅を有している。本第1実施形態におけるボルト挿入孔22の平面視の断面形状は、略長方形状に形成されており、養生(硬化)時の収縮を考慮して、平面視におけるT字形端部41の長手方向の寸法60mmおよび短手方向の寸法25mmに対し、それぞれ10mm程度大きい設計寸法(長手方向の寸法70mm、短手方向の寸法35mm)に基づき形成されている。
なお、本第1実施形態におけるボルト挿入孔22は、平面視におけるその長手方向がブロック体21の長手方向に対して直交するように形成されているが、ボルト挿入孔22の長手方向の向きは特に限定されるものではなく、図6に示すように、ブロック体22の長手方向に沿うように形成してもよく、図示しないが、ブロック体22の長手方向に対して斜めに形成してもよい。
次に、ボルト係止室23は、ブロック体21の内部においてボルト挿入孔22の下端位置に形成される中空の空間であって、挿入されるT字ボルト4のT字形端部41を係止する内部空間である。よって、ボルト係止室23は、T字ボルト4のT字形端部41がボルトの回転軸回りに約90度回転可能な広さの空間を備えており、前記T字形端部41の上端面411を当接させて係止する天井面231を有している。本第1実施形態におけるボルト係止室23は、図4に示すように、平面視において一辺がボルト挿入孔22の長手方向の寸法と同程度の略正方形状であって、高さがT字形端部41の高さ寸法より高い寸法を有するように形成されている。
また、ボルト係止室23の側面および底面は外部とは連通していない。これによって、地下水や土壌に含まれる水分などの内部への浸入を防止し、コンクリート製のブロック体21の劣化やT字ボルト4の腐食などを抑制するとともに、室内にモルタルなどを注入する際には流し込んだモルタルが外部に流出しないようになっている。
なお、ボルト係止室23の形状は、平面視で略長方形状のものに限定されるものではなく、図示しないが、平面視で円形状のものなど、T字ボルト4のT字形端部41が回転可能な形状から適宜選択することができる。
第一新積木型枠ブロック2の製造方法は、横長の直方体状の型枠を形成し、その中に鉄筋を配筋した後にコンクリートを打設し、養生(硬化)させて形成する。また、ボルト係止孔22およびボルト係止室23は、コンクリート基礎の型枠工事やコンクリートの二次製品を製造する際に不要なところにコンクリートが入り込まないようにするための一般的な工法である「箱抜き」工法によって形成することができる。
次に、第二新積木型枠ブロック3について説明する。第二新積木型枠ブロック3は、第一新積木型枠ブロック2の上段に、所望する高さになるまで一段以上積み重ねられるコンクリートの二次製品として製造されるブロックであって、図7および図8に示すように、直方体状に形成されるブロック体31と、このブロック体31に形成されるボルト貫通孔32とを有する。
第二新積木型枠ブロック3のブロック体31は、第一新積木型枠ブロック2のブロック体21と同様に、角形断面を有する横長の直方体状に形成されたコンクリート製のブロックであり、内部には補強のための配筋が施されている。
ボルト貫通孔32は、T字ボルト4を挿通させるためブロック体31の上端面311から下端面312にかけて略垂直方向に貫通した孔であり、図2に示すように、複数のボルト貫通孔32が、前記ブロック体31の長手方向に沿って、第一新積木型枠ブロック2に形成された各ボルト挿入孔22と連通しうる位置に形成されている。本第1実施形態におけるボルト貫通孔32は、図8に示すように、平面視の断面形状がT字ボルト4のT字形端部41を挿入可能な略長方形状に形成されており、養生(硬化)時の収縮を考慮して、前記T字形端部41の長手方向および短手方向の寸法より一回り大きい寸法に設計されて形成されている。
なお、ボルト貫通孔32の平面視の断面形状は、略長方形状のものに限定されるものではなく、T字形端部41が挿通可能な形状であれば、楕円状や円状に形成されていてもよい。
また、第二新積木型枠ブロック3の製造方法は、第一新積木型枠ブロック2の製造方法と同様に、横長の立方体状の型枠を形成し、その中に鉄筋を配筋した後にコンクリートを打設し、養生(硬化)させて形成する。また、ボルト貫通孔32は「箱抜き」工法で形成する。
T字ボルト4は、積み重ねられたブロック同士を締結するための長尺状のボルトであり、上端側には雄ネジ山42が形成されているとともに、下端側には略T字形を逆さにしたような形状に形成されたT字形端部41を備えている。本第1実施形態におけるT字形端部41は、ボルトの直径と略同径でかつ当該ボルトの直径よりも長く形成させた円柱棒材を、ボルトの下端においてT字形に配置し、溶接等により固定することにより構成される。
このT字ボルト4は、図2に示すように、最上段にある第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32から最下段にある第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22を介してボルト係止室23まで挿入されており、T字形端部41はその上端面411をボルト係止室23の天井面231に係止させた状態でナット5を締め付けて締結固定されている。
なお、T字形端部41は、円柱棒材を固定してなるものに限定されるものではなく、平面視で長手方向の寸法と短手方向の寸法が異なる形状であれば、角柱などの棒材や平面視が略長方形状および略楕円状の板材、またはラグビーボールのような形状のものを固定して形成してもよい。
次に、本第1実施形態のコンクリート構造物1の構築工程について説明する。
まず最下段に第一新積木型枠ブロック2を設置する。次に第一新積木型枠ブロック2の上段に第二新積木型枠ブロック3を所定の高さまで積み上げる。このとき、第一新積木型枠ブロック2の上段(二段目)になる第二新積木型枠ブロック3は、各ボルト貫通孔32が第一新積木型枠ブロック2の各ボルト挿入孔22と連通するように積み重ねる。さらに、上段に第二新積木型枠ブロック3を積み重ねる場合は、下段のボルト貫通孔32と上段のボルト貫通孔32とが連通するように積み重ねる。これにより、各段の第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32と、最下段の第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22およびボルト係止室23が上下方向に連通した状態になる。
次に最上段にある第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32に対しT字ボルト4を挿入する。T字ボルト4は、T字形端部41が第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22を介してボルト係止室23に到達するまで挿入される。そして、T字ボルト4を回転軸回りに約90度回転させる。
そしてT字ボルト4の雄ネジ山42にナット5を螺合させて締結する。本第1実施形態では、ナット5とボルト貫通孔32との間にワッシャー51を入れている。
図2に示すように、T字形端部41の上端面411は、ボルト係止室23の天井面231に係止され、ナット5を締め付けてもT字ボルト4が抜け出ない。よって、各ブロックは締結固定され、コンクリート構造物1が構築される。
また、本第1実施形態におけるコンクリート構造物1では、ボルト貫通孔32やボルト挿入孔22、ボルト係止室23にモルタルを注入し、T字ボルト4と各ブロックとをモルタルによって固定する。
以上のような本第1実施形態によれば、以下のような作用、効果を奏することができる。
1.コンクリートの二次製品である第一積重ブロック2や第二積重ブロック3を用いてコンクリート構造物1を構築することができるため、施工現場における型枠の組立てや取り外し作業が不要になり、工期を短縮することができる。
2.最下段に設置された第一積重ブロック2の内部において、T字形端部41の上端面411をボルト係止室23の天井面231に当接させてT字ボルト4を係止させることができるため、従来技術のような狭い空間における締結作業が不要になり、工期を短縮することができる。
3.T字ボルト4を第一新積木型枠ブロック2に係止させる操作は、ボルト挿入孔22を介してボルト係止室23まで挿入し、ボルトの回転軸回りに約90度回転させという極めて容易な作業であり、特別な技術や経験を必要とせずに行うことができる。
4.第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32および第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22の設計寸法をT字形端部4より一回り大きくしたため、養生(硬化)時の縮みが生じたり各ブロックの接面に歪みがあっても、T字ボルト4をスムーズに挿入することができる。
次に、本発明に係る新積木型枠ブロックおよびコンクリート構造物の第2実施形態について図面を用いて説明する。なお、前述した第1実施形態で説明した構成と同一または相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
本第2実施形態におけるコンクリート構造物1は、図9に示すように、複数段積み重ねられる新積木型枠ブロック2と、積み重ねられた新積木型枠ブロック2同士を二段ずつ締結固定するT字ボルト4とを有する。
本第2実施形態の新積木型枠ブロック2は、図10および図11に示すように、ブロック体21と、このブロック体21に形成されるボルト挿入孔22と、このボルト挿入孔22の下端位置に形成されるボルト係止室23と、前記ブロック体21に貫通されたボルト貫通孔24とを有する。
ボルト貫通孔24は、下段の新積木型枠ブロック2や他の構造物等と連結するための孔であり、ブロック体21の上端面211から下端面212にかけて垂直方向に貫通している。この新積木型枠ブロック2に形成されているボルト貫通孔24は、ボルト挿入孔22と同様に、平面視の断面形状がT字ボルト4のT字形端部41の寸法に対応して略長方形状に形成されており、養生(硬化)による収縮を考慮して余裕のある設計寸法によって形成されている。
また、ボルト貫通孔24は、ボルト挿入孔22とブロック体22の長手方向に沿って交互に配置されるように形成されており、本第2実施形態では、ボルト貫通孔24とボルト挿入孔22との間隔が等間隔に形成されている。
また、本第2実施形態におけるボルト貫通孔24の上端面側には、T字ボルト4や当該T字ボルト4に螺合されるナット5がブロック体21の上端面211より上方に突出しないためのナット収容凹部25が形成されている。なお、ナット5等がブロック体21の上端面22より上方に突出させて良い場合は、このナット収容凹部25は形成しなくてもよい。
T字ボルト4は、第1実施形態と同様にブロック同士を締結固定するためのものであって、本第2実施形態では、上下に積み重ねられた新積木型枠ブロック2を二段ずつ締結固定するものである。よって、T字ボルト4は、T字形端部41の上端面411をボルト係止室23の天井面231に当接させた状態において、雄ネジ山42がブロック体21の上端面211から突出することなくナット収容凹部25内に配置される長さに形成されている。なお、ナット5等がブロック体21の上端面211より上方に突出させて良い場合は、T字ボルト4の長さをブロック体21の上端面211から突出し得る長さにしてもよい。
次に、本第2実施形態のコンクリート構造物1の構築工程について説明する。
まず最下段に新積木型枠ブロック2を設置する。このとき最下段に設置する新積木型枠ブロック2は、下方の構造物等との連結が必要無ければボルト貫通孔24を有さない第1実施形態の第一新積木型枠ブロック2であってもよい。
次に新積木型枠ブロック2の上段に、他の新積木型枠ブロック2を積み重ねる。このとき下段の新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22に対して上段の新積木型枠ブロック2のボルト貫通孔24が連通する位置で積み重ねる。これにより上段のボルト貫通孔24から下段のボルト係止室23まで上下方向に連通した状態になる。
T字ボルト4によるブロック同士の締結は、新積木型枠ブロック2を一段積み重ねる毎に行う。具体的には、T字ボルト4を上段の新積木型枠ブロック2のボルト貫通孔24からT字形端部41が下段のボルト係止室23に到達するまで挿入する。そして、T字ボルト4を回転軸回りに約90度回転させる。必要に応じてT字ボルト4にワッシャー51を入れ、雄ネジ山42にナット5を螺合させて締結する。ナット5やT字ボルト41の上端は、ナット収容凹部25に収容されるため上端面211からは突出しない。なお、仮にT字ボルト4の上端がブロック体21の上端面211より突出したときにはT字ボルト4の上端を切断してもよい。
二段目の締結作業を行った後は、一段ずつ新積木型枠ブロック2の積み重ねるとともにT字ボルト4による締結固定を行い、所定の高さになるまで繰り返し、コンクリート構造物1を構築する。
以上のような本第2実施形態の新積木型枠ブロック2およびコンクリート構造物1によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができるとともに、新積木型枠ブロック2同士を上下二段ずつ固定するため、T字ボルト4の長さが短くなって挿入・締結作業が容易になるとともに、締結箇所が増えるため強度を高めることができるという効果を奏することができる。
次に、本発明に係るコンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法の第3実施形態について図面を用いて説明する。なお、前述した第1実施形態および第2実施形態で説明した構成と同一または相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
本三実施形態におけるコンクリート構造物1は、主に、一般的な木造住宅やプレハブ住宅などにおける建築基礎なるコンクリート基礎であって、図12に示すように、、本発明に係る新積木型枠ブロック2である第一新積木型枠ブロック2と、第二新積木型枠ブロック3と、T字ボルト4と、地面Lに埋設される丸鋼管6と、この丸鋼管6と第一新積木型枠ブロック2とを連結する連結ボルト7とを有する。
丸鋼管6は、第一新積木型枠ブロック2を地面Lに固定するためのものであって、杭のように地中に埋設される鋼管である。本三実施形態における丸鋼管6は、連結ボルト7として使用されるT字ボルト4のT字形端部41が挿通可能な内径を有している。丸鋼管6の長さは特に限定されるものではないが、本三実施形態では約1mの長さに形成されている。
連結ボルト7は、丸鋼管6と第一新積木型枠ブロック2との連結に用いる長尺状のボルトであり、第一新積木型枠ブロック2のボルト貫通孔24を介して丸鋼管6まで挿入されたときに上端がナット収容凹部25の内部に位置する長さに形成されている。本三実施形態における連結ボルト7は、上述のとおり、T字ボルト4と同じものを使用している。
次に、本三実施形態のコンクリート基礎の施工方法について説明する。
本三実施形態のコンクリート基礎の施工方法は、図13に示すように、地面Lを平坦に整地する整地工程S1と、丸鋼管6を埋設する丸鋼管埋設工程S2と、第一新積木型枠ブロック2を地面Lに設置する第一新積木型枠ブロック設置工程S3と、第一新積木型枠ブロック2を地面Lに固定する第一新積木型枠ブロック地面固定工程S4と、第一新積木型枠ブロック2に第二新積木型枠ブロック3を積み重ねるブロック積重工程S5と、第一新積木型枠ブロック2と第二新積木型枠ブロック3とを締結固定するブロック締結工程S6とを有する。以下、各工程について詳細に説明する。
整地工程S1は、図14(a)に示すように、第一新積木型枠ブロック2を設置する地面L
を平坦に整地する工程である。本第3実施形態では油圧ショベルを用いて地面Lを平坦にする。必要に応じて元の地面Lより深く掘削してもよい。また、整地後の地面Lに切込砕石を敷設してもよい。
丸鋼管埋設工程S2は、図14(b)に示すように、整地した地面Lにおいて第一新積木型枠ブロック2のボルト貫通孔24を配置する位置に丸鋼管6を埋設する工程である。丸鋼管6の埋設は、油圧オーガ等の穴掘り機を用いて前記丸鋼管6の外径に応じた下孔を掘削し、その下孔に丸鋼管6を挿入して行う。
第一新積木型枠ブロック設置工程S3は、図14(c)に示すように、埋設した丸鋼管6の上方にボルト貫通孔24が連通するように第一新積木型枠ブロック2を地面Lに設置する工程である。この第一新積木型枠ブロック2が、コンクリート基礎における最下段のブロックになる。
第一新積木型枠ブロック地面固定工程S4は、図15(d)に示すように、丸鋼管6およびボルト貫通孔24に連結ボルト7を挿入しモルタル8で固定するとともに、硬化後にナット5で締結して第一新積木型枠ブロック2を地面Lに固定する工程である。本第3実施形態では、連結ボルト7としてT字ボルト4をT字形端部41を下方に向けた状態で挿入する。連結ボルト7の挿入後、ボルト貫通孔24からモルタル注入し、硬化させて連結ボルト7を丸鋼管6および第一新積木型枠ブロック2を固定する。さらに、連結ボルト7にワッシャー51を入れ、ナット5を螺合させて締結する。これにより、第一新積木型枠ブロック2は、地中に埋設された丸鋼管6に締結され、地面Lに固定される。また、本第3実施形態では、連結ボルト7にT字ボルト4を用いたことにより、T字形端部41が硬化した丸鋼管6内のモルタルに係止されるためボルト抜けを防止できる。
ブロック積重工程S5は、図15(e)に示すように、地面Lに固定された第一新積木型枠ブロック2の上段に、ボルト貫通孔32を有する第二新積木型枠ブロック3を、前記ボルト貫通孔32が第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22に連通するようにして積み重ねる工程である。なお、このとき第二新積木型枠ブロック3は必要な高さに応じて二段以上積み重ねてもよい。
ブロック締結工程S6は、図16(f)に示すように、T字ボルト4を用いて第一新積木型枠ブロック2と、第二積重ブロック3とを締結固定する工程である。具体的には、T字ボルト4を上段の第二新積木型枠ブロック3のボルト貫通孔32から下段の第一新積木型枠ブロック2のボルト挿入孔22を通してボルト係止室23にまで挿入する、次に、挿入したT字ボルト4を回転軸回りに約90度回転させる。そして、T字ボルト4のT字形端部41の上端面411をボルト係止室23の天井面231に係止させた状態で上端をナット2で締め付ける。これによって、第一新積木型枠ブロック2と第二新積木型枠ブロック3とが締結固定される。
なお、ブロック締結工程S6では、必要に応じてボルト貫通孔32からモルタルを注入し、T字ボルト4を第二積重ブロック3および第一積重ブロック2に固定してもよい。また、図12に示すように、T字ボルト4の締結前に第二積重ブロック3の上段に角形の製材(木材)Wを積み重ね、各ブロックとともに前記製材Wを締結固定してもよい。
本第3実施形態では、以上の工程によってコンクリート構造物1としてコンクリート基礎が完成する。ベタ基礎にする場合は、各ブロックで囲まれた内側に配筋しコンクリートを打設する。また、整地工程S1において元の地面より深く掘削した場合は、コンクリート基礎の周囲に土砂を埋め戻してもよい。
以上のような本第3実施形態のコンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法によれば、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏することができ、従来の建築基礎の施工に20日間程度の施工日数を要しているのに対し、型枠の組立て取り外しやコンクリートの養生(硬化)に係る日数を要しないため、約4~10日程度の施工日数でコンクリート基礎の施工を完了させることができる。
実施例1では、従来方法を用いた場合と、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法を用いた場合のコンクリート基礎の施工費用比較および施工日数比較を行った。
比較条件として、コンクリート基礎は、図17に示すように、整地を行った地面上に切込砕石を敷設し、ベタ打ちコンクリートを打設した上に、1辺が5m、高さ1メートルの基礎を施工する場合に設定した。ただし、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法においては、ブロック締結工程を行った後のベタ打ちは行わないとした。
まず、従来方法において掘削土、切込砕石、ベタ打ちコンクリートの体積およびコンクリート(鉄筋含む)の重量を算出した。算出結果は以下のとおりである。
掘削土=平均3.5m×0.4m×(6m×4ヶ所)=33.6m2
切込砕石=(1.2m+2.4m)×0.35m×1/2×(6m×4ヶ所)=15m2
ベタ打ちコンクリート=(1.0m×0.2m)×1/2×(6m×4ヶ所)=2.4m2
コンクリート(鉄筋含む)=(5m+4.7m)×0.12m×1m×2ヶ所=2.33m2×2.45=5700kg
これら算出した各体積および重量に基づき施工に係る費用を算出した。その結果、施工費用は下記の表1に示すとおり、72万7千円であった。
これに対し、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法を用いた場合の施工費用は下記の表2に示すとおり、64万9千円であった。
よって、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法による施工費用は、64万9千円であり、従来方法の72万7千円に比べて1割程度、安価に施工できる結果となった。仮に、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法において基礎を構築後にベタ打ちを行った場合であっても、施工費用はベタ打ちコンクリートの5万1千円が加算され70万円となり、従来方法と同程度か僅かに安価で施工できる。
次に、施工日数について検討した。従来方法による施工工程および各工程に係る日数は下記のとおりである。
(1)掘削・路床正整 2日
(2)切込砕石40mm級の敷き均 1日
(3)ベタ打ちコンクリート 1日
(4)コンクリート養生 5日
(5)鉄筋組立 2日
(6)型枠組立 2日
(7)コンクリート打設 1日
(8)コンクリート養生 5日
(9)型枠解体 1日
延べ日数 20日
これに対し、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法による施工工程および各工程に係る日数は下記のとおりである。
(1)掘削・路床正整 2日
(2)切込砕石40mm級の敷き均 1日
(3)丸棒埋設・ブロック積重・締結 1日
延べ日数 4日
よって、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法による施工日数は、4日程度であり、従来方法の20日程度に比べて大幅に短縮することができる。仮に、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法において基礎を構築後にベタ打ちを行った場合であっても10日程度であり、従来方法の半分程度の日数で施工できる。
以上より、本発明に係るコンクリート基礎の施工方法は、従来の施工現場において型枠を用いて基礎を構築する方法に比べて、施工費用は安価か同程度であり、施工日数については大幅に短縮することができる結果となった。これにより、昨今の人手不足・熟練作業員不足といった問題も解決されるものと考えられる。
なお、本発明に係る新積木型枠ブロック、コンクリート構造物およびコンクリート基礎の施工方法は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、(第一)新積木型枠ブロック2および第二新積木型枠ブロック3は、特許第3240373号公報における棒状部材と同様に、側面に固定具を有していてもよい。また、図示しないが、第一)新積木型枠ブロック2および第二新積木型枠ブロック3を積み重ねたときの接面(上端面および下端面)に互いに噛み合わせることのできる凹凸を形成し、積み重ねられたブロック同士の位置がずれにくくしてもよい。さらに、コンクリート構造物1の裏側に土を埋め入れた場合、その裏埋土の含水分がブロック同士の隙間から表側に漏出しないように、各ブロック間にモルタルなどの接着剤を塗布して隙間を埋めてもよい。さらに、(第一)新積木型枠ブロック2は、縦置きにしてコンクリート構造物1の柱として使用してもよい。
1 コンクリート構造物
2 新積木型枠ブロック、第一新積木型枠ブロック
3 第二新積木型枠ブロック
4 T字ボルト
5 ナット
6 丸鋼管
7 連結ボルト
8 モルタル
21 ブロック体
22 ボルト挿入孔
23 ボルト係止室
24 ボルト貫通孔
25 ナット収容凹部
211 上端面
212 下端面
231 ボルト係止室の天井面
31 ブロック体
32 ボルト貫通孔
311 上端面
312 下端面
41 T字形端部
42 雄ネジ山
411 T字形端部の上端面
51 ワッシャー
L 地面L
W 製材(木材)