JP2023130643A - 走査電磁石、走査電磁石制御システムおよび粒子線治療システム - Google Patents

走査電磁石、走査電磁石制御システムおよび粒子線治療システム Download PDF

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茂貴 高山
Shigeki Takayama
朝文 折笠
Tomofumi Origasa
邦彦 衣笠
Kunihiko Kinugasa
孝幸 小林
Takayuki Kobayashi
英之 中村
Hideyuki Nakamura
孝 矢澤
Takashi Yazawa
啓充 龍頭
Hiromitsu Ryuto
和之 風間
Kazuyuki Kazama
寛 平田
Hiroshi Hirata
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Abstract

【課題】複数の巻線の磁場に関する相互インダクタンスを回避し、荷電粒子ビームを高い精度で制御することができる走査電磁石を提供する。【解決手段】走査電磁石1は、荷電粒子ビーム90の軌道に沿って伸びる往路区間および復路区間をそれぞれが有し、荷電粒子ビーム90を通過させる柱状を成す柱状空間を囲む複数の巻線U,V,Wを備え、それぞれの巻線U,V,Wにおける往路区間および復路区間は、柱状空間の周方向に沿って間隔を空けて配置されており、複数の巻線U,V,Wのうちの1つにおける往路区間と復路区間との間に、他の巻線U,V,Wの往路区間または復路区間が配置されており、それぞれの巻線U,V,Wは、2つの巻線群に分けられるとともに、それぞれの巻線群により生じる磁場が互いに直交し、かつ同じ巻線群に属する複数の巻線U,V,Wが同じ駆動回路28U,28VWに直列に接続されている。【選択図】図4

Description

本発明の実施形態は、走査電磁石に関する。
荷電粒子ビームを患部に照射する粒子線治療を行う粒子線治療システムがある。この粒子線治療システムでは、加速器によって加速された荷電粒子ビームが、輸送装置によって照射ノズルまで輸送され、この照射ノズルから患部に照射される。ここで、荷電粒子ビームの照射位置を変更しながら患部に照射するスキャニング照射が行われることがある。このスキャニング照射では、荷電粒子ビームのエネルギーを変更することで荷電粒子ビームの照射位置の深さが変更される。また、荷電粒子ビームを横切る方向の磁場を発生させて荷電粒子ビームを偏向させることで、深さ方向に垂直な面内における照射位置が変更される。そのため、加速器は、荷電粒子ビームのエネルギーを制御する装置が設けられる。また、照射ノズルには、荷電粒子ビームを横切る磁場を発生させる走査電磁石が設けられる。
例えば、円筒形状の走査電磁石において、その長手方向を横切るXY平面に、X軸方向およびY軸方向の磁場、即ち2極磁場を発生させるものがある。ここで、荷電粒子ビームを2方向に走査するため、異なる方向に磁場を発生させる2つの走査電磁石が必要になる。そのため、照射ノズルが大型化してしまう。さらに、また、下流側の走査電磁石は、上流側の走査電磁石で走査された荷電粒子ビームの軌道を包含する磁場発生領域を形成する必要があるため、上流側の走査電磁石よりも大きくなってしまう。
また、XY平面内で2方向の走査が可能な8極の走査電磁石がある。この走査電磁石は、荷電粒子ビームを囲む周方向に等角度間隔で配置された8個の巻線を有している。対向する一対の巻線は、同一の駆動回路に直列接続されており、4対の巻線に流れる電流を調整することで2方向の走査が行われる。この走査電磁石では、1つの走査電磁石で2方向の走査が可能である。しかし、荷電粒子ビームを囲む周方向に沿った方向の磁場の分布が適切でないことによって、荷電粒子ビームが偏向する角度に誤差が生じることがある。
そこで、複数の巻線のうちの1つにおける往路区間と復路区間との間に、他の巻線の往路区間または復路区間が配置されることで、走査電磁石を小型化するとともに、荷電粒子ビームが偏向される角度の誤差を小さくする技術が知られている。例えば、3つの巻線が個別に駆動回路に接続されているものがある。しかし、この技術では、3つの巻線の磁場が互いに干渉し、相互インダクタンスの調整が必要になる。例えば、それぞれの駆動回路の運転の精度の違いにより、それぞれの巻線の磁場が落ち着く時間が異なってしまい、磁場の制御に時間がかかる。特に、粒子線治療システムにおける荷電粒子ビームの制御には、高い精度が要求される。
特開2013-206635号公報 特許第6613466号公報 米国特許第8378312号明細書 特開2021-19747号公報
本発明が解決しようとする課題は、複数の巻線の磁場に関する相互インダクタンスを回避し、荷電粒子ビームを高い精度で制御することができる走査電磁石を提供することである。
本発明の実施形態に係る走査電磁石は、荷電粒子ビームの軌道に沿って伸びる往路区間および復路区間をそれぞれが有し、前記荷電粒子ビームを通過させる柱状を成す柱状空間を囲む複数の巻線を備え、それぞれの前記巻線における往路区間および復路区間は、前記柱状空間の周方向に沿って間隔を空けて配置されており、複数の前記巻線のうちの1つにおける往路区間と復路区間との間に、他の前記巻線の往路区間または復路区間が配置されており、それぞれの前記巻線は、2つの巻線群に分けられるとともに、それぞれの前記巻線群により生じる磁場が互いに直交し、かつ同じ前記巻線群に属する複数の前記巻線が同じ駆動回路に直列に接続されている。
本発明の実施形態により、複数の巻線の磁場に関する相互インダクタンスを回避し、荷電粒子ビームを高い精度で制御することができる走査電磁石が提供される。
走査電磁石および荷電粒子ビームを概念的に示す説明図。 第1実施形態の走査電磁石を模式的に示す断面図。 複数の溝とこれらに配置される巻線の区間との対応関係を示す説明図。 走査電磁石制御システムを示す回路図。 照射位置・励磁電流変換テーブルを示す説明図。 磁束密度の分布を示すグラフ。 粒子線治療システムを示す構成図。 粒子線スキャニング用の照射ノズルを示す構成図。 患部における照射スポットを示す斜視図。 スキャニング照射における深さ方向の線量分布を示すグラフ。 照射時に実行される処理を示すフローチャート。 (A)は出射タイミング信号、(B)は荷電粒子線の強度、(C)は線量モニタ出力信号、(D)は線量モニタ制御装置によるカウント値、(E)は位置モニタ制御装置によるカウント値、(F)は巻線に流れる励磁電流を示すタイミングチャート。 第2実施形態の走査電磁石を模式的に示す断面図。 配置例としての複数の溝とこれらに配置される巻線の区間との対応関係を示す説明図。 別の配置例としての複数の溝とこれらに配置される巻線の区間との対応関係を示す説明図。 他の例の走査電磁石を模式的に示す断面図。 第3実施形態のヨークのティースの部分を拡大して示す断面図。 軸方向に延伸する穴が設けられた他の例のヨークを示す断面図。 第4実施形態の中心軸を通る面で走査電磁石を切断した状態を示す断面図。 第5実施形態の走査電磁石を模式的に示す断面図。
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、走査電磁石、走査電磁石制御システムおよび粒子線治療システムの実施形態について詳細に説明する。まず、第1実施形態について図1から図12を用いて説明する。
図1の符号1は、第1実施形態に係る走査電磁石である。この走査電磁石1は、円筒形状を成している。荷電粒子ビーム90は、走査電磁石1で囲まれる内部空間である柱状空間を通過する。走査電磁石1には、複数の巻線が設けられている。それぞれの巻線に流れる電流によって柱状空間(内部空間)に磁場が発生し、荷電粒子ビーム90が偏向される。後述するように、複数の巻線から発せられる磁場の向きおよび大きさを調整することで、荷電粒子ビーム90の向きが調整される。なお、以下の説明では、磁場を定量的に表す物理量として磁束密度[T]が用いられる。
図1に示されるように、照射中心であるアイソセンタを原点とするxy直交座標系が定義されている。アイソセンタが存在するアイソセンタ面と荷電粒子ビーム90の軌道との交点が照射位置として定義される。照射位置は、xy直交座標における座標値(x,y)によって表される。原点から照射位置までの距離は、キック量rとして定義される。原点から照射位置に向かう方向のx軸に対する角度は、走査角θとして定義される。走査電磁石1によって荷電粒子ビーム90が偏向される角度は、キック角ψとして定義される。
また、走査電磁石1における基準点からアイソセンタ面、即ちxy平面までの距離は、Dとして定義される。走査電磁石1における基準点は、例えば、柱状空間(内部空間)の重心に定められる。
図2には、走査電磁石1を軸方向に垂直な面で切断し、荷電粒子ビーム90の軌道の上流側から見たときの断面形状が模式的に示されている。この図2では、荷電粒子ビーム90が上流側から下流側に向かう向きが、γ軸正方向として定義され、図2の紙面左方向および紙面上方向が、それぞれ、α軸正方向およびβ軸正方向として定義されている。走査電磁石1は、円筒形状のヨーク10と、3系統の巻線U、巻線Vおよび巻線Wから構成されている。ヨーク10は、鉄などの磁性体で形成されている。
ヨーク10の内壁面には、外側に向かって凹む複数の溝SL1~SL6が形成されている。例えば、軸方向(γ軸方向)に伸びた6本の溝SL1~SL6が形成されている。これらは、溝SL1~SL6の順序で反時計回りに60°間隔で形成されている。隣接する溝の間には、ティース12が形成されている。溝SL1~溝SL6の最深部を基準として、それぞれのティース12は、ヨーク10の内側に突出した形状を成している。
なお、以下の説明において、γ軸正方向またはγ軸負方向に巻線が溝を通過するという表現をする場合がある。この表現は、巻線の構造を説明するための便宜上のものであり、巻線をヨーク10に配置する際の方法を限定するものではない。例えば、第1の溝をγ軸正方向に通過し、第2の溝をγ軸負方向に通過する導線は、第1の溝を通過して第2の溝を通過するループ構造を成す。このループ構造は、必ずしも導線を第1の溝を通過させた後、第2の溝を通過させて製造されなくても良い。
巻線Uは、対向する位置に設けられた溝SL1および溝SL4に設けられている。例えば、巻線Uを構成する導線が、溝SL1をγ軸正方向に通過するものとして、導線の通過方向を定義する。ここで、巻線Uを構成する導線は、溝SL4をγ軸負方向に通過する。即ち、巻線Uを構成する導線は、溝SL1をγ軸正方向に向かい、溝SL4をγ軸負方向に向かうループ経路SL1-SL4を周回する。
巻線Uを構成する導線は、1回だけ溝SL1および溝SL4を通っても良いし、複数回に亘って溝SL1および溝SL4を交互に通っても良い。即ち、巻線Uを構成する導線は、ループ経路SL1-SL4を1周しても良いし、複数周しても良い。例えば、溝SL1に配置された巻線区間U+に、γ軸正方向に電流が流れるときに、溝SL4に配置された巻線区間U-には、γ軸負方向に電流が流れる。
巻線Vは、対向する位置に設けられた溝SL3およびSL6に設けられている。例えば、巻線Vを構成する導線が、溝SL3をγ軸正方向に通過するものとして導線の通過方向を定義する。ここで、巻線Vを構成する導線は溝SL6をγ軸負方向に通過する。即ち、巻線Vを構成する導線は、溝SL3をγ軸正方向に向かい、溝SL6をγ軸負方向に向かうループ経路SL3-SL6を周回する。
巻線Vを構成する導線は、1回だけ溝SL3および溝SL6を通っても良いし、複数回に亘って溝SL3および溝SL6を交互に通っても良い。即ち、巻線Vを構成する導線は、ループ経路SL3-SL6を1周しても良いし、複数周しても良い。例えば、溝SL3に配置された巻線区間V+に、γ軸正方向に電流が流れるときに、溝SL6に配置された巻線区間V-には、γ軸負方向に電流が流れる。
巻線Wは、対向する位置に設けられた溝SL5およびSL2に設けられている。例えば、巻線Wを構成する導線が、溝SL5をγ軸正方向に通過するものとして導線の通過方向を定義する。ここで、巻線Wを構成する導線は、溝SL2をγ軸負方向に通過する。即ち、巻線Wを構成する導線は溝SL5をγ軸正方向に向かい、溝SL2をγ軸負方向に向かうループ経路SL5-SL2を周回する。
巻線Wを構成する導線は、1回だけ溝SL5および溝SL2を通っても良いし、複数回に亘って溝SL5および溝SL2を交互に通っても良い。即ち、巻線Wを構成する導線は、ループ経路SL5-SL2を1周しても良いし、複数周しても良い。例えば、溝SL5に配置された巻線区間W+に、γ軸正方向に電流が流れるときに、溝SL2に配置された巻線区間W-には、γ軸負方向に電流が流れる。
図3には、溝SL1~SL6のそれぞれに、巻線区間U+、U-、V+、V-、W+およびW-のうち、いずれが配置されているかが示されている。「(1)」~「(6)」の記号は、それぞれ、溝SL1~溝SL6を示す。図3に示されるように、溝SL1~SL6には、それぞれ、巻線区間U+、W-、V+、U-、W+およびV-が配置されている。
以下の説明では、巻線Uの両端のうち、巻線区間U+に、γ軸正方向の電流が流れるときに、電流が流入する一端が始端と定義され、電流が流出する他端が終端と定義される。また、巻線Vの両端のうち、巻線区間V+に、γ軸正方向の電流が流れるときに、電流が流入する一端が始端と定義され、電流が流出する他端が終端と定義される。さらに、巻線Wの両端のうち、巻線区間W+に、γ軸正方向の電流が流れるときに、電流が流入する一端が始端と定義され、電流が流出する他端が終端と定義される。
また、始端から電流が流入したときに、γ軸正方向に電流が流れる巻線区間U+、V+およびW+は、往路区間として定義される。そして、始端から電流が流入したときに、γ軸負方向に電流が流れる巻線区間U-、V-およびW-は、復路区間として定義される。
即ち、溝SL1、SL3およびSL5には、それぞれ、巻線U、VおよびWの往路区間が配置され、溝SL2、SL4およびSL6には、それぞれ、巻線U、VおよびWの復路区間が配置されている。
それぞれの巻線の往路区間および復路区間との間を結ぶコイルエンド導線は、走査電磁石1の端部において、荷電粒子ビーム90の軌道に与える影響が小さく、他の巻線と干渉しないように配置されている。
なお、「往路区間」および「復路区間」という用語は、巻線の構造を説明するための便宜上のものであり、それぞれの巻線に流れる電流の向きを限定するものではない。それぞれの巻線に流れる電流は、後述の走査電磁石制御装置22(図4)によって制御される。
このように、それぞれの巻線U、巻線Vおよび巻線Wは、走査電磁石1の軸方向(γ軸方向)に沿って、即ち、荷電粒子ビームの軌道に沿って伸びる往路区間および復路区間を備えている。それぞれの巻線が備える往路区間および復路区間は、ヨーク10に囲まれる柱状空間の外周方向を見て180°を隔てて配置されている。巻線U、巻線Vおよび巻線Wのうちの1つにおける往路区間と復路区間との間には、他の1つの巻線の往路区間と、他のもう1つの巻線の復路区間が配置されている。
ヨーク10、巻線U、巻線Vおよび巻線Wは、ヨーク10の中心軸に関して120°の回転対称構造を成している。即ち、巻線U、巻線Vおよび巻線Wは、ヨーク10に囲まれる柱状空間の軸を中心とした120°の回転対称構造を成している。
図4に示されるように、走査電磁石制御システム2は、直流電力源26、巻線U駆動回路28U、巻線VW駆動回路28VW、走査電磁石制御装置22および指令変換装置20を備えている。また、走査電磁石1の巻線Vと巻線Wは、直列に接続されている。例えば、巻線Vの終端(V-)と巻線Wの終端(W-)同士が接続されている。
直流電力源26において、負極端子は、接地導体に接続され、正極端子は、巻線U駆動回路28U、巻線VW駆動回路28VWに接続されている。巻線U駆動回路28Uは、巻線Uの両端に接続されている。巻線VW駆動回路28VWは、巻線Vの始端(V+)および巻線Wの始端(W+)に接続されている。なお、巻線U駆動回路28U、巻線VW駆動回路28VWのそれぞれは、接地導体に接続されている。
このように接続することで、巻線Vと巻線Wが同時に発生させる磁場の和が、巻線Uが発生させる磁場と直交されるようになる。このとき、巻線Uと巻線Vおよび巻線Wとの相互インダクタンスがほぼゼロとなる。これにより、巻線U駆動回路28Uを駆動した際に、巻線VW駆動回路28VWに自身の制御とは関係ない電圧が発生することを抑制することが可能となる。さらに、巻線U、巻線Vおよび巻線Wに流れる励磁電流Iu,Ivwが、励磁電流目標値Iu*,Ivw*により早く近付けることが可能となる。これにより、荷電粒子ビーム90(図1)が走査電磁石1を通過した後のビーム幅の変化が抑制される。
このように、3つのそれぞれの巻線U,V,Wが、2つの巻線群に分けられる。なお、1つの巻線群は、少なくとも1つの巻線を含む。例えば、巻線U,V,Wは、巻線U駆動回路28Uに接続される巻線Uを含む第1巻線群と、巻線VW駆動回路28VWに接続される、2つの巻線V,Wを含む第2巻線群とに分けられる。さらに、それぞれの巻線群により生じる磁場が互いに直交し、かつ同じ巻線群に属する複数の巻線が同じ駆動回路に直列に接続されている。
さらに、荷電粒子ビーム90(図1)の進行方向に対して垂直なX方向およびY方向が定義される場合に、それぞれの巻線U,V,Wは、荷電粒子ビーム90を、X方向に偏向させる第1巻線群(巻線U)と、Y方向に偏向させる第2巻線群(巻線V,W)とに分けられている。このようにすれば、荷電粒子ビーム90をX方向またはY方向に偏向させる制御が容易になる。
巻線Uと、巻線Vおよび巻線Wのそれぞれには、次の(数1)、(数2)で表される直流の励磁電流Iu=Iu*,Ivw=Ivw*が流される。これら励磁電流が流されることで、走査角θ、キック角ψ(I)で表される方向に、荷電粒子ビーム90を偏向させる磁束密度BL(I)が発生される。この磁束密度BL(I)は、ヨーク10の内部空間に発生される。
(数1)Iu*=I・cosθ
(数2)Ivw*=I・sinθ
(数1)、(数2)は、走査角θを角度変数とし、角度変数軸上で正弦・余弦関数である。磁束密度BL(I)は、γ軸に垂直な磁束密度であり、電流係数Iに対する増加関数によって表される。即ち、磁束密度BL(I)は、電流係数Iが増加するほど大きくなる。
なお、(数1)、(数2)は、正弦・余弦関数に替えて、余弦・正弦関数で表現しても良い。また、(数1)、(数2)は、正弦関数または余弦関数を角度変数軸上で一定値だけシフトした関数で表現しても良い。
荷電粒子ビーム90(図1)の磁気剛性率をBρとすると、キック角ψ(I)は、(数3)のように表される。
(数3)ψ(I)=arctan[BL(I)/Bρ]≒BL(I)/Bρ
従って、キック量rは、走査電磁石1の基準点からアイソセンタ面までの距離Dを用いて(数4)のように表される。
(数4)r=D・tan[ψ(I)]=D・BL(I)/Bρ
ここで、走査電磁石制御装置22は、次のような制御処理を実行する。即ち、走査電磁石制御装置22は、キック角ψおよび走査角θが指定されることで、巻線U,巻線Vおよび巻線Wのそれぞれに流すべき励磁電流の励磁電流目標値Iu*,Ivw*を求める。
走査電磁石制御装置22は、巻線U、巻線Vおよび巻線Wに流れる励磁電流Iu,Ivwが、励磁電流目標値Iu*,Ivw*に近付き、または一致するように、巻線U、巻線VWの駆動回路を制御する。このようにすれば、キック角ψおよび走査角θで定まる方向に荷電粒子ビーム90(図1)が向けられる。
走査電磁石制御装置22および指令変換装置20は、例えば、プロセッサによって構成されている。走査電磁石制御装置22は、さらに、ディジタル回路を備えても良い。走査電磁石制御装置22を構成するプロセッサは、走査電磁石制御システム2が備えるメモリに記憶されたプログラムまたは外部から読み込まれたプログラムを実行することでディジタル回路を制御する。このディジタル回路によって、巻線U駆動回路28U、巻線VW駆動回路28VWが制御される。
図5に示されるように、指令変換装置20は、照射位置・励磁電流変換テーブルを記憶している。この照射位置・励磁電流変換テーブルは、照射位置のxy座標値(X,Y)と、励磁電流目標値Iu*、Ivw*とが対応付けられたテーブルである。例えば、図5には、x軸方向にp個、y軸方向にq個の照射位置(X1,X1)、…(Xp,X1)、…(Xp,Xq)が定められている場合のテーブルが示されている。
それぞれの照射位置に対し、励磁電流目標値Iu*,Ivw*として、(Iu_1_1,Ivw_1_1)、…(Iu_p_1,Ivw_p_1)、…(Iu_p_q,Ivw_p_q)が対応付けられた例が示されている。
照射位置・励磁電流変換テーブルは、次の工程(i)~(iv)を実行することで予め求められている。
例えば、工程(i)は、xy座標値(X,Y)をrθ座標値(r,θ)に変換するものである。工程(ii)は、キック量rに基づいてキック角ψ(I)を求め、さらに電流係数Iを求めるものである。工程(iii)は、電流係数Iおよび走査角θを(数1)、(数2)に当てはめて、励磁電流目標値Iu*,Ivw*を求めるものである。工程(iv)は、xy座標値(X,Y)と励磁電流目標値Iu*,Ivw*とを対応付けるものである。
指令変換装置20は、照射位置・励磁電流変換テーブルを参照し、照射位置のxy座標値(X,Y)に対応する励磁電流目標値Iu*,Ivw*を求め、走査電磁石制御装置22に出力する。走査電磁石制御装置22は、励磁電流Iu,Ivwが、それぞれ、励磁電流目標値Iu*,Ivw*に近付き、または一致するように巻線U駆動回路28U、巻線VW駆動回路28VWを制御する。
巻線U駆動回路28Uは、走査電磁石制御装置22による制御に従い、直流電力源26から出力される電力に基づいて、励磁電流を巻線Uに流す。巻線VW駆動回路28VWは、走査電磁石制御装置22による制御に従い、直流電力源26から出力される電力に基づいて、励磁電流を巻線Vと巻線Wに流す。
なお、指令変換装置20は、照射位置・励磁電流変換テーブルによらず、演算処理によって励磁電流目標値Iu*,Ivw*を求めても良い。この場合、指令変換装置20は、プロセッサによる演算処理によって、前述の工程(i)~(iii)を実行し、励磁電流目標値Iu*,Ivw*を求める。
このように、走査電磁石1は、荷電粒子ビーム90(図1)の軌道に沿って伸びる往路区間および復路区間をそれぞれが有し、荷電粒子ビーム90を通過させる円柱状を成す柱状空間を囲む複数の巻線U,V,Wを備える。そして、それぞれの巻線U,V,Wにおける往路区間および復路区間は、柱状空間の周方向に沿って所定の間隔(例えば、180°の間隔)を空けて配置されている。さらに、複数の巻線U,V,Wのうちの1つにおける往路区間と復路区間との間に、他の巻線U,V,Wの往路区間または復路区間が配置されている。
それぞれの巻線U,V,Wを、このような分布巻構造とした上で、巻線U,巻線Vおよび巻線Wに、それぞれ、前述の(数1)、(数2)で表される直流の励磁電流が流される。ここで、柱状空間に発生される起磁力の分布は、柱状空間の外周方向を横軸にとり、起磁力を縦軸にとると、起磁力の分布は、正弦波に近似した分布となる。
このようにすれば、磁力線を横切る方向に観測したときの磁束密度の平坦度が向上される。この平坦度は、例えば、磁力線を横切る方向に観測したときの磁束密度の変動が所定範囲内である範囲の幅として定義される。柱状空間が円柱状である場合には、平坦度は、磁力線に垂直な径方向についての磁束密度の変動が、所定範囲内である範囲(径方向への長さ)として定義されても良い。磁束密度の平坦度が向上されることで、荷電粒子ビーム90(図1)が走査電磁石1を通過した後のビーム幅の変化が抑制される。
また、あらゆる走査角θに対して起磁力の周方向についての分布が正弦波に近似した分布となるため、走査角θの変化に対する平坦度の変化が抑制される。これによって、走査角θの違いによる荷電粒子ビームのキック角およびキック量のばらつきが抑制される。
なお、指令変換装置20は、次の(数5)、(数6)に従う励磁電流目標値Iu*_O、Ivw*_Oを走査電磁石制御装置22に出力しても良い。例えば、励磁電流目標値Iu*_O、Ivw*_Oは、(数1)、(数2)で表される励磁電流目標値Iu*、Ivw*に、オフセット値ΔIu、ΔIvwが、それぞれ加算された値である。オフセット値ΔIu、ΔIvwは、走査角θを変数とする関数であっても良い。オフセット値は、走査電磁石1に囲まれる内部空間における磁束密度の平坦度が向上するように、実験、シミュレーションなどによって予め決定される。
(数5)Iu*_O=I・cosθ+ΔIu
(数6)Iv*_O=I・sinθ+ΔIvw
巻線Uおよび巻線Vと巻線Wに流れる励磁電流が、オフセット値が加算された励磁電流目標値に近付き、または一致することで、走査電磁石1の内部空間における磁束密度の平坦度が向上するとともに、走査角θの変化に対する平坦度の変化が抑制される。
図6のグラフには、走査角θ=0°に対し、電流係数Iの2.5%の大きさを有する負の値に、オフセット値ΔIuが設定された場合、即ち、ΔIu=-0.025Iとした場合の磁束密度の分布が示されている。
横軸は、ヨーク10の中心軸を径方向に横切る直線上の位置を示す。縦軸は、ある基準値を100%としたときの磁束密度の規格化値を示す。丸印は、オフセット値ΔIu,ΔIvwをいずれもゼロとしたときの磁束密度を示す。菱形印は、オフセット値ΔIuを-0.025Iとし、オフセット値ΔIvwをいずれもゼロとしたときの磁束密度を示す。矢印102および104は、磁束密度の変動が±0.1%以内である平坦領域を示し、この平坦領域の長さが平坦度を示す。
図6のグラフに示されるように、それぞれのオフセット値をゼロとしたときに比べて、オフセット値ΔIuを-0.025Iとした方が、平坦領域が長く、平坦度が良好であることが認められる。
このように、巻線U、巻線Vおよび巻線Wに対する励磁電流目標値は、(数1)、(数2)に示されるように、走査角θを角度変数とする三角関数であっても良い。また、励磁電流目標値は、(数5)、(数6)に示されるように、走査角θを角度変数とする三角関数にオフセット値を加算した周期関数であっても良い。さらに、それぞれの巻線U,V,Wに対する励磁電流目標値は、走査電磁石1の内部空間における磁束密度の平坦度が向上するとともに、走査角θの変化に対する平坦度の変化が抑制されるように定義された、走査角θを角度変数とする一般的な周期関数であっても良い。
なお、走査電磁石1は、4つ以上の複数N個の巻線を備えても良い。例えば、複数N個の巻線は、荷電粒子ビーム90(図1)1の軌道に沿って伸びる往路区間および復路区間を有し、荷電粒子ビーム90を通過させる柱状空間を囲むように設けられる。それぞれの巻線における往路区間および復路区間は、柱状空間の外周方向を見て所定の間隔を隔てて配置される。また、複数の巻線のうちの1つにおける往路区間と復路区間との間には、他の巻線の往路区間または復路区間が配置される。
複数の巻線を、このような分布巻構造とした上で、複数N個の巻線を2つの巻線群に分け、それぞれの巻線群が発生する磁場が直交するよう、巻線を選択および接続する。さらに、それぞれの巻線群に流れる電流を(数1)、(数2)で表される励磁電流目標値に近づけ、または一致させる。このようにすれば、走査角θ、キック角ψ(I)で表される方向に荷電粒子ビーム90(図1)を偏向させる磁束密度が柱状空間に発生する。なお、複数の巻線の分布巻構造は、交流電動機または交流発電機の固定子巻線の分布巻構造を応用しても良い。
次に、走査電磁石1を用いた粒子線治療システム3について説明する。図7には、粒子線治療システム3の全体構成が示されている。この粒子線治療システム3は、患者52の患部60(図8)に対して照射ノズル50から治療用の放射線を照射するものである。また、粒子線治療システム3は、加速器40、ビーム輸送装置46、照射ノズル50および治療台54を備えている。
加速器40は、荷電粒子ビーム90(図1)を加速するものである。ビーム輸送装置46は、加速器40で加速された荷電粒子ビーム90を照射ノズル50まで輸送するものである。照射ノズル50は、ビーム輸送装置46で輸送された荷電粒子ビーム90を患部60(図9)に照射するものである。治療台54は、患者52が載置されるものである。
また、粒子線治療システム3は、さらに、全体制御装置32、加速器・ビーム輸送系制御装置34、照射ノズル制御装置36およびディスプレイ38を備えている。なお、照射ノズル制御装置36には、前述の指令変換装置20が含まれている。
全体制御装置32、加速器・ビーム輸送系制御装置34および照射ノズル制御装置36は、プロセッサによって構成されている。全体制御装置32、加速器・ビーム輸送系制御装置34および照射ノズル制御装置36を構成するプロセッサは、粒子線治療システム3が備えるメモリに記憶されたプログラムまたは外部から読み込まれたプログラムを実行することで、制御対象の装置を制御する処理を実行する。
加速器40は、入射器42およびシンクロトロン加速器44を備えている。荷電粒子ビーム90(図1)は、加速器40で光速の6割~7割程度まで加速される。この加速器40から取り出された荷電粒子ビーム90は、ビーム輸送装置46に配置された偏向電磁石48により真空中を偏向しながら照射ノズル50まで輸送される。この荷電粒子ビーム90は、照射ノズル50で照射領域の形状に合致するように整形され、照射対象に照射される。照射対象は、例えば、治療台54に横たえられた患者52の患部60(図9)である。
次に、照射ノズル50およびその周辺装置を図8から図10を参照して詳述する。図8には、粒子線スキャニング用の照射ノズル50の構成が示されている。図9には、患部60をスキャニング照射していくときの荷電粒子ビーム90、同じエネルギーで照射される層80および照射スポット82が示されている。図10のグラフには、患部60をスキャニング照射していくときの深さ方向の線量分布が示されている。
図8から図9に示されるように、照射ノズル50では、荷電粒子ビーム90の通過方向に対して垂直な2次元平面内に荷電粒子ビーム90が走査される。走査電磁石1によって走査された荷電粒子ビーム90は、患部60に照射される。
線量モニタ62は、それぞれの照射スポット82に照射される荷電粒子ビーム90の線量を演算するために、荷電粒子ビーム90の通過によって生じた電子を収集する。線量モニタ62の検出信号、例えば、電子を収集して得られたパルス信号が、線量モニタ制御装置70に出力される。
線量モニタ制御装置70および位置モニタ制御装置72は、プロセッサによって構成されている。線量モニタ制御装置70および位置モニタ制御装置72を構成するプロセッサは、粒子線治療システム3が備えるメモリに記憶されたプログラムまたは外部から読み込まれたプログラムを実行することで、それぞれの制御対象の装置を制御する処理を実行する。
線量モニタ制御装置70は、線量モニタ62から出力された検出信号に基づいて、それぞれの照射スポット82に照射される照射量を演算し、演算した照射量を照射ノズル制御装置36に出力する。
位置モニタ64は、それぞれの照射スポット82の位置、例えば、重心の位置を演算するために、荷電粒子ビーム90の通過によって生じた電子を収集する。位置モニタ64の検出信号、例えば、電子を収集して得られたパルス信号が、位置モニタ制御装置72に出力される。
位置モニタ制御装置72は、位置モニタ64から出力された検出信号に基づいて、それぞれの照射スポット82における線量をカウントし、演算したカウント値を照射ノズル制御装置36に出力する。
照射ノズル制御装置36は、位置モニタ制御装置72から出力された信号に基づき、荷電粒子ビーム90の通過位置を求める。照射ノズル制御装置36は、求めた通過位置のデータから照射スポット82の位置および幅の演算を行い、荷電粒子ビーム90の照射位置を確認する。さらに、照射ノズル制御装置36は、線量モニタ制御装置70から出力された検出信号に応じて荷電粒子ビーム90の照射の制御を進行する。
リッジフィルタ66は、ブラッグピークを広げることが必要な場合に使用される。また、レンジシフタ68は、荷電粒子ビーム90の到達位置を調整する際に挿入される。
スキャニング照射では、治療計画装置(図示略)を用いて、患部60を一様な線量で照射するためのそれぞれの照射スポット82の位置と、それぞれの照射スポット82に対する目標照射量が予め計算される。
図9に示されるように、スキャニング照射では、患部60が複数の層80に分割され、1つの層80内に照射スポット82が1つ以上配置される。それぞれの層80内では、同じエネルギーの荷電粒子ビーム90で、照射スポット82が順次照射される。
荷電粒子ビーム90のエネルギーが変化すると、荷電粒子ビーム90の到達位置が変化する。即ち、荷電粒子ビーム90は、エネルギーが高い程、体内のより深い位置まで到達する。そのため、荷電粒子ビーム90の進行方向、即ち、患部60の深さ方向の照射位置を変更する際には、荷電粒子ビーム90のエネルギーが変更される。
スキャニング照射では、SOBP(Spread Out Bragg Peak)で示される照射が行われる。SOBPは、異なるエネルギーを有する複数の荷電粒子ビーム90に対して照射量が適切に配分されることによって、深さ方向への線量を一様とした分布である。
図10のグラフには、患部60の深さ方向への線量分布としてSOBPが示されている。異なるエネルギーを有する複数の荷電粒子ビームのそれぞれに対して照射量が適切に配分されることで、それぞれのエネルギーについて、それぞれのブラッグカーブ84で示される照射が行われる。この患部60の深さ方向への線量分布がSOBPとなる。即ち、それぞれのエネルギーに対応するブラッグカーブ84が重ね合わせられ、図10のグラフに示されるように、深さ方向に一様な線量分布で示される照射が行われる。
次に、照射時に実行される処理について図11のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を適宜参照する。
なお、患者52(図7)ごとの治療計画データは、治療計画装置(図示略)で予め作成されている。この治療計画データは、治療計画装置からOIS(Oncology Information System)に送信され、このOISに保存されている。治療計画データは、OISから粒子線治療システム3(図7)の全体制御装置32に送信される。この全体制御装置32は、粒子線治療システム3の動作状態などを示す情報をディスプレイ38に表示しても良い。
まず、ステップS101において、全体制御装置32は、OISから送信された治療計画データを取得する。
次のステップS102において、全体制御装置32は、治療台54、加速器・ビーム輸送系制御装置34および照射ノズル制御装置36を制御するための機器パラメータを、治療計画データに基づいて設定する。この全体制御装置32は、機器パラメータに基づいて、治療台54、加速器・ビーム輸送系制御装置34、および照射ノズル制御装置36を制御する。
例えば、全体制御装置32(図7)は、機器パラメータとして、それぞれの照射スポット82(図9)のエネルギー、照射位置の座標値(X,Y)、照射量などを表すデータを照射ノズル制御装置36に送信する。また、照射ノズル制御装置36(図7)における指令変換装置20は、照射位置の座標値(X,Y)を励磁電流目標値Iu*、Ivw*に変換して、それぞれの励磁電流目標値を走査電磁石制御装置22に送信する。
次のステップS103において、加速器・ビーム輸送系制御装置34および照射ノズル制御装置36は、全体制御装置32の制御に従って、加速器40、ビーム輸送装置46および照射ノズル50を制御する。これにより、第i番目の層における第j番目の照射スポット82(図9)に荷電粒子ビーム90が照射される。
ここで、iは1~Kの整数であり、患部60に設定された層を特定する。jは1~M(K)の整数であり、第i番目の層における照射スポット82を特定する。例えば、最初の照射では、i=1、j=1となっている。整数M(K)は、最後の層における最後の照射スポット82を特定する。それぞれの照射スポット82に対する荷電粒子ビーム90の照射ごとに、治療台54は、全体制御装置32の制御に従って、患者52の位置および姿勢を適切な位置に設定する。
次のステップS104において、全体制御装置32は、患部60の層における最後の照射スポット82に対する照射が完了したか否かを判定する。ここで、照射が完了していない場合(ステップS104でNOの場合)は、jを1だけ増加し、ステップS103の制御に戻る。一方、照射が完了した場合(ステップS104でYESの場合)は、ステップS105に進む。
ステップS105において、全体制御装置32は、最後の層に対する照射が完了したか否かを判定する。ここで、照射が完了していない場合(ステップS105でNOの場合)は、iを1だけ増加させ、エネルギーを変更し、ステップS103に戻って次の層の照射を行う。一方、照射が完了した場合(ステップS105でYESの場合)は、ステップS106に進む。
ステップS106において、全体制御装置32は、照射の制御を終了する。
図12(A)から図12(F)には、スキャニング照射のタイミングチャートが概念的に示されている。照射スポット(1)から照射スポット(3)までの3つに荷電粒子ビーム90を照射する例が示されている。
図12(A)に示されるように、照射スポット(1)に対する照射では、時刻t1~t2に、加速器・ビーム輸送系制御装置34から加速器40に出射タイミング信号が出力され、荷電粒子ビーム90を放出すべき指令が加速器40に対してなされる。
照射スポット(2)に対する照射では、時刻t3~t4に、加速器・ビーム輸送系制御装置34から加速器40に出射タイミング信号が出力され、荷電粒子ビームを放出すべき指令が加速器40に対してなされる。
照射スポット(3)に対する照射では、時刻t5~t6に、加速器・ビーム輸送系制御装置34から加速器40に出射タイミング信号が出力され、荷電粒子ビームを放出すべき指令が加速器40に対してなされる。
このように、所定の強度を有する荷電粒子ビーム90によって患部60が照射されるように、加速器・ビーム輸送系制御装置34が加速器40に指令を出力する。
なお、照射スポット(1)から照射スポット(3)のそれぞれに対する照射は、同様の処理によって行われるため、ここでは、照射スポット(1)に対する照射を例示する。
図12(B)に示されるように、時刻t1に出射タイミング信号が立ち上がってから、荷電粒子ビーム90の強度が増加し、時刻t1から時間τ1だけ経過した時刻taに、荷電粒子ビーム90の強度が最大値に達する。時刻t2に出射タイミング信号が立ち下がってから、荷電粒子ビーム90の強度が減少し、時刻t2から時間τ2だけ経過した時刻tbに、荷電粒子ビーム90の強度がゼロとなる。
図12(C)に示されるように、時刻t1に、荷電粒子ビーム90の照射が開始されると、照射ノズル50における線量モニタ62が、電離出力を検出信号としてのパルス信号に変換されて線量モニタ制御装置70に出力される。
図12(D)に示されるように、荷電粒子ビーム90の照射に伴い、線量モニタ制御装置70で計数されるパルスカウント値が増加し、時刻tcに、パルスカウント値が所定値に達すると、線量モニタ制御装置70が満了信号を照射ノズル制御装置36に送信する。これによって照射ノズル制御装置36は、照射スポット(1)に対する荷電粒子ビームの照射を停止する。
図12(E)に示されるように、照射スポット(1)が荷電粒子ビーム90によって照射されている間、線量モニタ62と同様に、位置モニタ64も電離出力を検出信号としてのパルス信号に変換して位置モニタ制御装置72に出力する。
照射スポット(1)の照射が終了すると、位置モニタ制御装置72は、照射スポット一照射分のパルスカウント値を照射ノズル制御装置36に出力する。照射ノズル制御装置36は、位置モニタ制御装置72から出力されたカウント値に基づき、照射スポット(1)の位置および幅を演算し、所定の位置に荷電粒子ビーム90が照射されたかどうか判定する。判定した結果、スポット位置または幅のずれが所定値を超えるときは、照射スポット(1)に対する荷電粒子ビーム90の照射を停止する。
線量モニタ制御装置70が出力する満了信号により、照射ノズル制御装置36における指令変換装置20は、次の照射位置に対応する励磁電流目標値Iu*、Ivw*を求め、走査電磁石制御装置22に送信する。走査電磁石制御装置22は、励磁電流目標値Iu*、Ivw*を用いて、巻線U、巻線Vおよび巻線Wに流れる励磁電流を制御する。
図12(F)には、巻線U、巻線Vおよび巻線Wに流れる励磁電流の変化が示されている。出射タイミング信号が立ち上がった時刻t1から立ち下がり始める時刻tcまでの間、励磁電流が一定である。この時間帯では、照射位置のxy座標値(X,Y)が一定である。時刻tcから、次の照射スポット(2)に対する照射に向けて出射タイミング信号が立ち上がる時刻t3までの間、励磁電流の値が次の励磁電流目標値に近付き、励磁電流目標値に至る。この時間帯に照射位置のxy座標値(X,Y)が変化する。
ここでは、照射スポット(1)に対する荷電粒子ビーム90の照射が述べられているが、照射スポット(2)および照射スポット(3)に対する荷電粒子ビーム90の照射も同様の処理によって行われる。
第1実施形態の走査電磁石1は、2次元的に荷電粒子ビーム90を走査するため、一方向に荷電粒子ビーム90を走査する走査電磁石を2台用いた場合と比較して、照射ノズル50が小型となる。また、走査電磁石1をより上流に配置することで、一方向に荷電粒子ビーム90を走査する走査電磁石を2台用いた場合と比較して荷電粒子ビーム90の走査が迅速となり、照射野が拡大される。さらに、ある一定のキック量を得るための走査電磁石1が小型化されるため、それぞれの巻線に流す励磁電流が小さくなる。これによって、それぞれの巻線に流れる電流を制御する駆動回路が小型となる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図13から図16を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。前述の実施形態の図面を適宜参照する。
図13には、第2実施形態に係る走査電磁石4を荷電粒子ビームの軌道の上流側から見た断面形状が模式的に示されている。図14には、溝SL1~SL12のそれぞれに、巻線区間U+、U-、V+、V-、W+およびW-のうち、いずれが配置されているかが示されている。
ヨーク10の内壁面には、外側に向かって凹み、軸方向に伸びた12本の溝SL1~SL12が形成されている。これらは、溝SL1~SL12の順序で反時計回りに30°間隔で形成されている。隣接する溝の間には、ティース12が形成されている。溝SL1~溝SL12の最深部を基準として、それぞれのティース12は、ヨーク10の内側に突出した形状を成している。
巻線U(図4)は、溝SL1および溝SL2のそれぞれの外側および内側と、溝SL1および溝SL2に対向する溝SL7および溝SL8のぞれぞれの外側および内側に設けられている。巻線Uを構成する導線が、溝SL1および溝SL2をγ軸正方向に通過するものとして導線の通過方向を定義すると、巻線Uを構成する導線は溝SL7および溝SL8をγ軸負方向に通過する。
より詳細には、巻線Uを構成する導線は、溝SL1の内側をγ軸正方向に向かい、溝SL7の外側をγ軸負方向に向かうループ経路SL1(in)-SL7(out)を周回する。また、巻線Uを構成する導線は、溝SL1の外側をγ軸正方向に向かい、溝SL7の内側をγ軸負方向に向かうループ経路SL1(out)-SL7(in)を周回する。さらに、巻線Uを構成する導線は、溝SL2の内側をγ軸正方向に向かい、溝SL8の外側をγ軸負方向に向かうループ経路SL2(in)-SL8(out)の外側を周回する。また、巻線Uを構成する導線は、溝SL2の外側をγ軸正方向に向かい、溝SL8の内側をγ軸負方向に向かうループ経路SL2(out)-SL8(in)を周回する。溝SL1および溝SL2に配置された巻線区間U+にγ軸正方向に電流が流れるとき、溝SL7および溝SL8に配置された巻線区間U-には、γ軸負方向に電流が流れる。
なお、往路区間としての巻線区間U+にγ軸正方向に電流が流れるときに、復路区間としての巻線区間U-にγ軸負方向に電流が流れる。このような電流極性条件の下では、あらゆる態様で巻線U(図4)を構成する導線が配置される。即ち、このような電流極性条件の下では、溝SL1、溝SL2、溝SL7および溝SL8のそれぞれの内側および外側には、あらゆる順序で巻線Uを構成する導線が通過しても良い。
巻線V(図4)は、溝SL5および溝SL6のそれぞれの外側および内側と、溝SL5および溝SL6に対向する溝SL11および溝SL12のぞれぞれの外側および内側に設けられている。巻線Vを構成する導線が、溝SL5および溝SL6をγ軸正方向に通過するものとして導線の通過方向を定義すると、巻線Vを構成する導線は溝SL11および溝SL12をγ軸負方向に通過する。
より詳細には、巻線Vを構成する導線は、溝SL5の内側をγ軸正方向に向かい、溝SL11の外側をγ軸負方向に向かうループ経路SL5(in)-SL11(out)を周回する。また、巻線Vを構成する導線は、溝SL5の外側をγ軸正方向に向かい、溝SL11の内側をγ軸負方向に向かうループ経路SL5(out)-SL11(in)を周回する。さらに、巻線Vを構成する導線は、溝SL6の内側をγ軸正方向に向かい、溝SL12の外側をγ軸負方向に向かうループ経路SL6(in)-SL12(out)を周回する。また、巻線Vを構成する導線は、溝SL6の外側をγ軸正方向に向かい、溝SL12の内側をγ軸負方向に向かうループ経路SL6(out)-SL12(in)を周回する。溝SL5および溝SL6に配置された巻線区間V+にγ軸正方向に電流が流れるとき、溝SL11および溝SL12に配置された巻線区間V-には、γ軸負方向に電流が流れる。
なお、往路区間としての巻線区間V+にγ軸正方向に電流が流れるときに、復路区間としての巻線区間V-にγ軸負方向に電流が流れる。このような電流極性条件の下では、あらゆる態様で巻線Vを構成する導線が配置される。即ち、このような電流極性条件の下では、溝SL5、溝SL6、溝SL11および溝SL12のそれぞれの内側および外側には、あらゆる順序で巻線Vを構成する導線が通過しても良い。
巻線W(図4)は、溝SL3および溝SL4のそれぞれの外側および内側と、溝SL3および溝SL4に対向する溝SL9および溝SL10のぞれぞれの外側および内側に設けられている。巻線Wを構成する導線が、溝SL9および溝SL10をγ軸正方向に通過するものとして導線の通過方向を定義すると、巻線Wを構成する導線は溝SL3および溝SL4をγ軸負方向に通過する。
より詳細には、巻線Wを構成する導線は、溝SL10の内側をγ軸正方向に向かい、溝SL4の外側をγ軸負方向に向かうループ経路SL10(in)-SL4(out)を周回する。また、巻線Wを構成する導線は、溝SL10の外側をγ軸正方向に向かい、溝SL4の内側をγ軸負方向に向かうループ経路SL10(out)-SL4(in)を周回する。さらに、巻線Wを構成する導線は、溝SL9の内側をγ軸正方向に向かい、溝SL3の外側をγ軸負方向に向かうループ経路SL9(in)-SL3(out)を周回する。また、巻線Wを構成する導線は、溝SL9の外側をγ軸正方向に向かい、溝SL3の内側をγ軸負方向に向かうループ経路SL9(out)-SL3(in)を周回する。溝SL9および溝SL10に配置された巻線区間W+にγ軸正方向に電流が流れるとき、溝SL3および溝SL4に配置された巻線区間W-には、γ軸負方向に電流が流れる。
なお、往路区間としての巻線区間W+にγ軸正方向に電流が流れるときに、復路区間としての巻線区間W-にγ軸負方向に電流が流れる。このような電流極性条件の下では、あらゆる態様で巻線Wを構成する導線が配置される。即ち、このような電流極性条件の下では、溝SL3、溝SL4、溝SL9および溝SL10のそれぞれの内側および外側には、あらゆる順序で巻線Wを構成する導線が通過しても良い。
このように、ヨーク10、巻線U、巻線Vおよび巻線Wは、ヨーク10の中心軸に関して120°回転対称構造を成している。即ち、巻線U、巻線Vおよび巻線Wは、ヨーク10に囲まれる柱状空間の軸を中心とした120°回転対称構造を成している。
図14に示されるように、巻線構造では、それぞれの巻線における複数の往路区間が往路区間群として隣接して配置され、それぞれの巻線における複数の復路区間が復路区間群として隣接して配置されている。そして、巻線U、巻線Vおよび巻線Wのうちの1つにおける往路区間群と復路区間群との間に、他の巻線における往路区間群または復路区間群が配置されている。
具体的には、図14に示される巻線構造では、巻線Uの往路区間群は、溝SL1および溝SL2のそれぞれの外側および内側に配置された4つの往路区間U+から構成されている。また、巻線Uの復路区間群は、溝SL7および溝SL8のそれぞれの外側および内側に配置された4つの復路区間U-から構成されている。
巻線Vの往路区間群および復路区間群は、それぞれ、ヨーク10の中心軸を中心に、巻線Uの往路区間群および復路区間群を120°だけ反時計回りに回転させた構造を成す。巻線Wの往路区間群および復路区間群は、それぞれ、ヨーク10の中心軸を中心に、巻線Vの往路区間群および復路区間群を120°だけ反時計回りに回転させた構造を有する。
第2実施形態に係る走査電磁石4では、第1実施形態に係る走査電磁石1と比較して、巻線のループ経路の数が多い。従って、柱状空間の外周方向についての起磁力の分布は、正・余弦波により近似した分布となる。これによって、磁束密度の平坦度が向上するとともに、走査角θの変化に対する平坦度の変化が抑制される。そのため、走査角θの違いによる荷電粒子ビームのキック角のばらつきが抑制されるという効果が高まる。
図15には、溝SL1~SL12における巻線区間U+、U-、V+、V-、W+およびW-の別の配置例が示されている。巻線Uを構成する導線は、溝SL1の内側をγ軸正方向に向かい、溝SL6の外側をγ軸負方向に向かうループ経路SL1(in)-SL6(out)を周回する。また、巻線Uを構成する導線は、溝SL2の内側をγ軸正方向に向かい、溝SL7の外側をγ軸負方向に向かうループ経路SL2(in)-SL7(out)を周回する。また、巻線Uを構成する導線は、溝SL1の外側をγ軸正方向に向かい、溝SL8の内側をγ軸負方向に向かうループ経路SL1(out)-SL8(in)を周回する。さらに、巻線Uを構成する導線は、溝SL12の外側をγ軸正方向に向かい、溝SL7の内側をγ軸負方向に向かうループ経路SL12(out)-SL7(in)を周回する。
巻線Vは、ヨーク10の中心軸に関して、巻線Uを図15の反時計回りに120°だけ回転したものと同様の構造を成している。巻線Wは、ヨーク10の中心軸に関して、巻線Vを図15の反時計回りに120°だけ回転したものと同様の構造を成している。このように、ヨーク10、巻線U、巻線Vおよび巻線Wは、ヨーク10に囲まれる柱状空間の軸を中心とした120°回転対称構造を成している。
図15に示される巻線構造においても、図14と同様、それぞれの巻線における複数の往路区間が往路区間群として隣接して配置され、それぞれの巻線における複数の復路区間が復路区間群として隣接して配置されている。そして、巻線U、巻線Vおよび巻線Wのうちの1つにおける往路区間群と復路区間群との間に、他の巻線における往路区間群または復路区間群が配置されている。
具体的には、図15に示される巻線構造では、巻線Uの往路区間群は、溝SL12の外側、溝SL1の内側および外側、さらには、溝SL2の内側に配置された4つの往路区間U+から構成されている。また、巻線Uの復路区間群は、溝SL6の外側、溝SL7の内側および外側、さらには、溝SL8の内側に配置された4つの復路区間U-から構成されている。
巻線Vの往路区間群および復路区間群は、それぞれ、ヨーク10の中心軸を中心に、巻線Uの往路区間群および復路区間群を120°だけ反時計回りに回転させた構造を成す。巻線Wの往路区間群および復路区間群は、それぞれ、ヨーク10の中心軸を中心に、巻線Vの往路区間群および復路区間群を120°だけ反時計回りに回転させた構造を成す。
往路区間としての巻線区間U+にγ軸正方向に電流が流れるときに、復路区間としての巻線区間U-γ軸負方向に電流が流れる。このような電流極性条件の下では、あらゆる態様で巻線Uを構成する導線が配置される。巻線Vにおける巻線区間V+およびV-、ならびに、巻線Wにおける巻線区間W+およびW-についても同様に、あらゆる態様でそれぞれの巻線を構成する導線が配置される。
図15に示されるように、それぞれの巻線を配置した走査電磁石4では、起磁力の周方向についての分布は正弦波により近似した分布となる。これによって、磁束密度の平坦度が向上するとともに、走査角θの変化に対する平坦度の変化が抑制される。そのため、走査角θの違いによる荷電粒子ビームのキック角のばらつきが抑制されるという効果が高まる。
走査電磁石4は、ヨーク10の内壁における溝をさらに増加させても良い。ただし、溝の数は6の倍数とされる。図16に示されるように、他の例の走査電磁石4は、24本の溝SL1~SL24で構成される。
このように、溝によって形成されるループ経路を増加させることで、柱状空間の周方向についての起磁力の分布がより正弦波形状に近付く。これによって、磁束密度の平坦度が向上するとともに、走査角θの変化に対する平坦度の変化が抑制される。そのため、走査角θの違いによる荷電粒子ビームのキック角のばらつきが抑制されるという効果が高まる。
なお、1つの巻線が、複数のループ経路を周回する場合、1つの巻線のうち1つのループ経路を周回する区間と、他のループ経路を周回する区間とは、直列接続されても良いし、並列接続されても良い。
例えば、巻線U(図4)について、ループ経路SL1(in)-SL7(out)を通過する区間、ループ経路SL1(out)-SL7(in)を通過する区間、ループ経路SL2(in)-SL8(out)を通過する区間、およびループ経路SL2(out)-SL8(in)を通過する区間があるとする。これらの区間は、直列接続されても良いし、並列接続されても良い。なお、巻線Vおよび巻線Wについても同様である。
図15に示されている巻線Uについては、ループ経路SL1(in)-SL6(out)を通過する区間、ループ経路SL2(in)-SL7(out)を通過する区間、ループ経路SL1(out)-SL8(in)を通過する区間、およびループ経路SL12(out)-SL7(in)を通過する区間がある。これらの区間は、直列接続されても良いし、並列接続されても良い。なお、巻線Vおよび巻線Wについても同様である。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図17から図18を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。前述の実施形態の図面を適宜参照する。
図17には、第3実施形態の走査電磁石5を荷電粒子ビームの軌道の上流側から見た断面のうち、ティース12の部分が拡大して示されている。この図17に示されるように、隣接する溝の間に形成されるティース12の先端部は、ヨーク10の内壁の周方向に広げられている。これらティース12の先端部を周方向に広げた形状とすることで、磁束密度の平坦度が向上することがある。
また、図18に示されるように、隣接するティース12の間を塞いだ形状、即ち、溝に替えて、軸方向に延伸する穴88が設けられた構造とすることによっても同様の効果が得られる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図19を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。前述の実施形態の図面を適宜参照する。
図19には、第4実施形態に係る走査電磁石6において、中心軸を通る面で切断したときの断面図が模式的に示されている。また、最大のキック量で走査したときの荷電粒子ビームが通過する領域の外周面106(ビーム通過領域の外周面106)が実線で示されている。さらに、キック量をゼロとしたときの荷電粒子ビームの軌道108が破線で示されている。走査電磁石6のヨーク10の内壁は、ビーム通過領域の外周面106に応じた形状を成している。それぞれのティースの先端を通る円の直径である内直径、それぞれの溝の最深部を通る円の直径である外直径を定義すると、上流ほどヨーク10の内直径および外直径が小さく、下流ほどヨーク10の内直径および外直径が大きい。
ヨーク10の内部空間、即ち、柱状空間は、偏向する荷電粒子ビームの軌道に沿って、下流に向かうにつれて外側に広がる側面を有する。それぞれの巻線120の往路区間および復路区間は、柱状空間の側面に沿って、下流に向かうにつれて中心軸方向から外側に反れる。
このような構造によれば、上流側から下流側に沿って内直径および外直径を一定とした場合に比べて、磁束密度を発生させるべき領域が狭くなり、それぞれの巻線に流す励磁電流が小さくなる。これによって、それぞれの巻線に流れる電流を制御する駆動回路が小型となる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図20を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。前述の実施形態の図面を適宜参照する。
図20に示されるように、第5実施形態に係る走査電磁石7のヨーク10には、溝およびティースが形成されておらず、それぞれの巻線120がヨーク10の内壁面に配置されている。そのため、それぞれの巻線120を周方向に広げた構造とすることができ、磁束密度の平坦度が向上される。さらに、走査角θを変化させた場合の平坦度の変化が小さくなる。
走査電磁石、走査電磁石制御システムおよび粒子線治療システムを第1実施形態から第5実施形態に基づいて説明されているが、いずれか1の実施形態において適用された構成が他の実施形態に適用されても良いし、各実施形態において適用された構成が組み合わせても良い。
なお、前述の実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
前述の実施形態のシステムは、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)および専用のチップなどのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスおよびキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
なお、前述の実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。追加的または代替的に、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用回線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
なお、前述の実施形態では、照射スポット間でそれぞれの巻線に流れる電流を停止する離散スポット照射法が述べられているが、その他の態様であっても良い。例えば、照射スポット間でそれぞれの巻線に流れる電流を停止しない連続スポット照射法が用いられても良い。
なお、前述の実施形態では、シンクロトロン加速器44が用いられているが、その他の態様であっても良い。例えば、加速器40には、シンクロトロン加速器44の他に、サイクロトロン加速器またはシンクロサイクロトロン加速器などの様々な公知の加速器が用いられて良い。また、加速器40で加速する荷電粒子は、陽子または炭素などの重粒子などであっても良い。
また、前述の実施形態に係る走査電磁石1,4,5,6,7は、照射ノズル50の他、ビーム輸送装置46または加速器40に備えられても良い。即ち、前述の実施形態に係る走査電磁石1,4,5,6,7は、ビーム輸送装置46または加速器40の内部で荷電粒子ビーム90の軌道を補正する目的に使用されても良い。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、それぞれの巻線は、2つの巻線群に分けられるとともに、それぞれの巻線群により生じる磁場が互いに直交し、かつ同じ巻線群に属する複数の巻線が同じ駆動回路に直列に接続されていることにより、複数の巻線の磁場に関する相互インダクタンスを回避し、荷電粒子ビームを高い精度で制御することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1,4,5,6,7…走査電磁石、2…走査電磁石制御システム、3…粒子線治療システム、10…ヨーク、12…ティース、20…指令変換装置、22…走査電磁石制御装置、28U…巻線U駆動回路、28VW…巻線VW駆動回路、26…直流電力源、32…全体制御装置、34…加速器・ビーム輸送系制御装置、36…照射ノズル制御装置、38…ディスプレイ、40…加速器、42…入射器、44…シンクロトロン加速器、46…ビーム輸送装置、48…偏向電磁石、50…照射ノズル、52…患者、54…治療台、60…患部、62…線量モニタ、64…位置モニタ、66…リッジフィルタ、68…レンジシフタ、70…線量モニタ制御装置、72…位置モニタ制御装置、80…同じエネルギーで照射される層、82…照射スポット、84…ブラッグカーブ、88…穴、90…荷電粒子ビーム、106…ビーム通過領域の外周面、108…荷電粒子ビームの軌道、120…巻線。

Claims (8)

  1. 荷電粒子ビームの軌道に沿って伸びる往路区間および復路区間をそれぞれが有し、前記荷電粒子ビームを通過させる柱状を成す柱状空間を囲む複数の巻線を備え、
    それぞれの前記巻線における往路区間および復路区間は、前記柱状空間の周方向に沿って間隔を空けて配置されており、
    複数の前記巻線のうちの1つにおける往路区間と復路区間との間に、他の前記巻線の往路区間または復路区間が配置されており、
    それぞれの前記巻線は、2つの巻線群に分けられるとともに、それぞれの前記巻線群により生じる磁場が互いに直交し、かつ同じ前記巻線群に属する複数の前記巻線が同じ駆動回路に直列に接続されている、
    走査電磁石。
  2. 前記荷電粒子ビームの進行方向に対して垂直なX方向およびY方向が定義される場合に、それぞれの前記巻線は、前記荷電粒子ビームを前記X方向に偏向させる前記巻線群と前記Y方向に偏向させる前記巻線群とに分けられている、
    請求項1に記載の走査電磁石。
  3. 複数の前記巻線は、前記柱状空間の軸を中心として回転対称の配置となっている、
    請求項1または請求項2に記載の走査電磁石。
  4. 前記柱状空間を囲むヨークと、
    前記ヨークの内壁に形成された複数の溝であって、前記巻線の往路区間または復路区間がそれぞれに配置され、前記ヨークの軸方向に伸びる複数の溝と、
    を備え、
    隣接する前記溝の間に形成されるティースの先端部が、前記周方向に広げられている、
    請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の走査電磁石。
  5. 前記柱状空間を囲むヨークと、
    前記ヨークに形成された複数の穴であって、前記巻線の往路区間または復路区間がそれぞれに配置され、前記ヨークの軸方向に伸びる複数の穴と、
    を備える、
    請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の走査電磁石。
  6. 前記柱状空間は、
    偏向する前記荷電粒子ビームの軌道に沿って、下流に向かうにつれて外側に広がる側面を有し、
    それぞれの前記巻線の往路区間および復路区間は、
    前記柱状空間の側面に沿って、下流に向かうにつれて外側に反れている、
    請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の走査電磁石。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の走査電磁石と、
    前記巻線群に流れる電流を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、
    前記荷電粒子ビームが偏向される方向を定める励磁電流の目標値であって、前記巻線群の励磁電流目標値を取得し、
    それぞれ前記巻線群に対して取得された前記励磁電流目標値に基づいて、それぞれの前記巻線群に流れる電流を制御する、
    ように構成されている、
    走査電磁石制御システム。
  8. 前記荷電粒子ビームを加速する加速器と、
    前記加速器から取り出された前記荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送装置と、
    前記ビーム輸送装置によって輸送された前記荷電粒子ビームを患者に照射する照射ノズルと、
    を備え、
    前記ビーム輸送装置と前記照射ノズルの少なくとも一方は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の走査電磁石を備える、
    粒子線治療システム。
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