JP2023127845A - 窒化ケイ素素球、転動体、および転がり軸受 - Google Patents

窒化ケイ素素球、転動体、および転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】製品の生産性の向上に寄与でき、更には、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有する窒化ケイ素素球、それを用いた転動体、および転がり軸受を提供する。【解決手段】窒化ケイ素素球1は、直径不同(単位:μm)/平均直径(単位:mm)が0.015以下であり、希土類元素およびアルミニウム元素を含む窒化ケイ素焼結体であって、希土類元素の含有量は、窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、アルミニウム元素の含有量は、窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、窒化ケイ素素球、転動体、および転がり軸受に関する。
窒化ケイ素(Si)焼結体は、優れた機械特性、熱伝導性、および電気絶縁性を有することから、ベアリング部材、エンジン部品、工具材料、および放熱基板材料などへの適用が進められている。窒化ケイ素焼結体は窒化ケイ素粉末を出発原料として用いて製造することが知られている。窒化ケイ素粉末は難焼結性であるため、緻密化した窒化ケイ素焼結体を製造するためには、窒化ケイ素粉末とともに焼結助剤が用いられる。このような焼結助剤として、一般的には希土類元素の酸化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコンなどが挙げられるが、窒化ケイ素焼結体の機械特性を向上するために、遷移金属元素を含む材料を焼結助剤として用いることも検討されている(例えば、特許文献1、2)。
窒化ケイ素粉末は価格が高いため、窒化ケイ素粉末を用いて窒化ケイ素焼結体を製造すると、窒化ケイ素焼結体の価格も上昇する傾向にある。そこで、窒化ケイ素粉末に比較して低価格であるケイ素粉末(金属シリコン粉末)を出発原料として用い、これを反応焼結させることにより窒化ケイ素焼結体を製造する製造方法が注目されている(例えば、特許文献3~5)。このような製造方法として、PS-RBSN(Post-Sintering of Reaction Bonded Silicon-Nitride)法と称される方法が知られている。PS-RBSN法は、窒素ガスを含む環境下において、例えば温度1100℃~1450℃付近で熱処理することによりケイ素粉末を成形した圧粉体を窒化させる第1工程と、第1工程で得られた窒化体を、例えば温度1600℃~1950℃付近で熱処理することにより緻密化する第2工程とを含む。また、PS-RBSN法は、ケイ素が窒化する際に体積膨張するため、焼結の際の収縮が従来の窒化ケイ素製造方法と比較して小さくなる。
従来、軸受の転動体として窒化ケイ素球を製造する場合、未焼結の球(グリーン球)を成形し、これを焼結したもの(素球)に研磨を行って真球に近い形状に仕上げている。グリーン球は、素球に比べて硬度が低く加工が容易であるので、焼結後の研磨に比べて格段に高い能率で加工できる。
グリーン球を加工する方法(グリーン加工)については、例えば特許文献6に記載されている。特許文献6には、互いに平面で対向する一対の加工定盤間に複数個のグリーン球を挟み込み、両加工定盤の対向平面に沿う複数系統の相対移動で、グリーン球に公転と、各種方向に自転とを行わせながら、グリーン球を真球に近い形状に加工する方法である。複数系統の相対移動とは、例えば両加工定盤の互いに偏心した回転や、回転と直進との組み合わせなどである。この加工装置において、上下加工定盤における加工用の粗面は、加工粉の通過可能な格子目の粗面構成部材で形成し、かつこの粗面構成部材の下側の加工定盤部分に、上面に開口する多数の孔を設けている。
特開2013-234120号公報 国際公開第2015/099148号 特開2004-149328号公報 特開2008-247716号公報 特開2013-49595号公報 特開平7-314308号公報
PS-RBSN法により窒化ケイ素焼結体を製造する際にケイ素粉末が十分に窒化されないと、窒化ケイ素焼結体中にケイ素が残存することになる。残存したケイ素は、窒化ケイ素焼結体の機械的特性の低下を引き起こす原因となり得るため、PS-RBSN法により製造された窒化ケイ素焼結体は、出発原料に窒化ケイ素粉末を用いて製造された窒化ケイ素焼結体に比較すると機械的特性に劣る場合があった。また、窒化ケイ素焼結体を転動体などの製品に加工した場合に製品寿命が短い場合があることも見出された。
また、未窒化部分が存在する場合、窒化部分と未窒化部分で収縮に差が発生するため、未窒化部分が完全に均一に分布している場合を除いて、焼結体の寸法精度が悪化しやすい。また、窒化ケイ素は、高温で揮発(分解反応:Si→3Si+2N)を生じる場合がある。この揮発によって発生した空隙は、焼結の収縮により閉じることができるが、収縮率が大きくなるため、焼結体の寸法精度が悪化しやすい。寸法精度が悪化した場合、一段と研磨加工が必要になるが、窒化ケイ素素球は硬度が非常に高いため、加工時間が長くなることが懸念される。
本発明は、製品の生産性の向上に寄与でき、更には、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有する窒化ケイ素素球、それを用いた転動体、および転がり軸受の提供を目的とする。
本発明の窒化ケイ素素球は、直径不同(単位:μm)/平均直径(単位:mm)が0.015以下であることを特徴とする。
上記窒化ケイ素素球は、希土類元素およびアルミニウム元素を含む窒化ケイ素焼結体であって、上記希土類元素の含有量は、上記窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、上記アルミニウム元素の含有量は、上記窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であることを特徴とする。
上記希土類元素が、Y、Ce、NdおよびEuからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。また、上記希土類元素がCeを含むことを特徴とする。
上記窒化ケイ素素球の表面から2mm以内の領域である表層部に介在物(I)を有し、上記表層部の総断面積に対する上記介在物(I)の総断面積の割合が0.05%以上であることを特徴とする。
上記介在物(I)が、遷移金属元素を含む介在物(It)を含むことを特徴とする。また、上記介在物(It)が遷移金属元素のケイ化物であることを特徴とする。
上記遷移金属元素が、Ti、Cr、およびMnからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。また、上記遷移金属元素がCrを含むことを特徴とする。
上記介在物(I)の最大径が50μm以下であることを特徴とする。
上記窒化ケイ素素球の表面から2mm以内の領域である表層部に空孔を有し、該空孔の最大径が50μm以下であることを特徴とする。
本発明の転動体は、本発明の窒化ケイ素素球が研磨加工されたものであることを特徴とする。
本発明の転がり軸受は、本発明の転動体を用いたことを特徴とする。
本発明の窒化ケイ素素球は、直径不同(単位:μm)/平均直径(単位:mm)が0.015以下であるので、後工程の研磨にかかる時間を短縮でき、製品の生産性の向上に寄与できる。
また、窒化ケイ素素球は、希土類元素およびアルミニウム元素を含む窒化ケイ素焼結体であって、希土類元素の含有量は、窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、アルミニウム元素の含有量は、窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であるので、金属シリコンの窒化およびその後の焼結を促進することで、未窒化金属シリコンによる金属介在物の凝集体形成を抑制しつつ、緻密な焼結体としやすくなり、製品に加工した場合に良好な製品寿命を得ることができる。また、上記構成により、比較的低温での緻密な焼結体の作製を可能とし、高温で生じる窒化ケイ素の揮発を抑制する結果、揮発による空隙の発生および空隙の収縮がなくなる。これにより、収縮率が小さくなり、より真球に近い素球となり、直径不同(単位:μm)/平均直径(単位:mm)を0.015以下にしやすくなる。
また、窒化ケイ素素球は、遷移金属元素を含むので、窒化ケイ素の針状結晶の成長と金属シリコンの窒化を促進し、緻密な焼結体となり、ひいては寸法精度の向上や機械的特性の向上に繋がる。
窒化ケイ素素球の直径の測定方法を示す概略図である。 窒化ケイ素素球の製造工程の概略を示すフローチャートである。 グリーン加工装置の構造を示す概略断面図である。 本発明の転がり軸受の一例を示す縦断面図である。 本発明の転動体を適用したボールねじの一例を示す縦断面図である。
(窒化ケイ素素球)
本実施形態の窒化ケイ素素球は、窒化ケイ素焼結体であり、焼結助剤などを含む原料粉末の加圧成形などによって得られる球状の成形球を焼結することで得られる。なお、本発明において、窒化ケイ素素球は、焼結後に表面の研磨加工が行われていないものを指す。本実施形態の窒化ケイ素素球は、平均直径に対する直径不同の比である「直径不同(単位:μm)/平均直径(単位:mm)」が、0.015以下であり、好ましくは0.012以下であり、より好ましくは0.010以下であり、特に好ましくは0.005~0.010である。
ここで、窒化ケイ素素球の直径は、窒化ケイ素素球の実際の表面に接する平行二平面間の距離であり、JIS B 1501に準拠して測定できる。例えば、図1に示すように、窒化ケイ素素球1の直径dは、電気マイクロメータ2などの寸法測定機を用いて測定される。本発明において、窒化ケイ素素球の平均直径は、窒化ケイ素素球1の測定箇所を変えて直径dを10回測定し、その平均として求められる。
窒化ケイ素素球の直径不同は、窒化ケイ素素球の直径の最大値と最小値の差であり、JIS B 1501に準拠して測定できる。具体的には、上述の直径の測定結果(10回)における最大値と最小値の差から、直径不同が求められる。
窒化ケイ素素球の平均直径は、特に限定されないが、5mm~100mmが好ましく、5mm~50mmがより好ましい。また、窒化ケイ素素球の直径不同は、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、5μm~15μmがさらに好ましい。
窒化ケイ素素球は、窒化ケイ素を主成分として構成される。窒化ケイ素素球を構成する他の成分の元素は特に限定されないが、希土類元素およびアルミニウム元素の少なくともいずれかを含むことが好ましく、希土類元素およびアルミニウム元素の両方を含むことがより好ましい。
以下では、希土類元素およびアルミニウム元素の両方を含む形態について説明するが、いずれか一方を含む形態でも適宜採用できる。
上記形態の窒化ケイ素素球において、希土類元素の含有量は、窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、アルミニウム元素の含有量は、窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であることが好ましい。
希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、エルビウム(Er)などが挙げられる。このうち、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユウロピウム(Eu)が好ましい。特に、金属シリコンの窒化をより促進させることができ、製造効率の向上を図れることからセリウム(Ce)を含むことがより好ましい。
希土類元素の上記含有量は6.5重量%以上であることが好ましく、7重量%以上であってもよい。希土類元素の上記含有量は12重量%以下であってもよく、11重量%以下であってもよい。
希土類元素は、例えば窒化ケイ素素球の製造時に用いる希土類元素を含む焼結助剤(通常、希土類元素の酸化物)に由来するものである。窒化ケイ素素球中の希土類元素の含有量が上記の範囲内であることにより、例えば、PS-RBSN法により窒化ケイ素素球を製造する場合に、原料であるケイ素粉末(金属シリコン粉末)の窒化反応を促進し、その後の焼結を促進することができる。また、比較的低温での緻密な焼結体の作製を可能とし、高温で生じる窒化ケイ素の揮発を抑制することができる。PS-RBSN法は、ケイ素の窒化工程と、その後の焼結工程とを含む2段階焼結法をいう。希土類元素の含有量は、原料に添加する希土類元素を含む焼結助剤(例えば、希土類元素の酸化物)の添加量によって調整することができる。
アルミニウム元素の上記含有量は6.5重量%以上であることが好ましく、7重量%以上であってもよい。アルミニウム元素の上記含有量は12重量%以下であってもよく、11重量%以下であってもよい。アルミニウム元素の含有量(酸化物換算)は、希土類元素の含有量(酸化物換算)の±5重量%以内であってもよく、±2重量%以内であってもよく、±1重量%以内であってもよく、希土類元素の含有量と同じであってもよい。
アルミニウム元素は、例えば窒化ケイ素素球の製造時に用いたアルミニウムを含む焼結助剤(通常、酸化アルミニウム)に由来するものである。窒化ケイ素素球中のアルミニウム元素の含有量が上記の範囲内であることにより、例えば、PS-RBSN法により窒化ケイ素素球を製造する場合に、焼結を促進することができ、また、比較的低温での焼結も可能となる。アルミニウム元素の含有量は、原料に添加するアルミニウム元素を含む焼結助剤(例えば、酸化アルミニウム)の添加量によって調整することができる。
希土類元素およびアルミニウム元素の上記含有量は、蛍光X線分析装置(XRF)、エネルギー分散型X線分析(EDX)、または高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて決定すればよい。具体的には、上記分析装置により、窒化ケイ素素球中の希土類元素およびアルミニウム元素の含有量を求め、希土類元素(RE)の酸化物(REまたはREO)および酸化アルミニウム(Al)に換算すればよい。窒化ケイ素素球を構成する他の成分の元素についても上記分析装置を用いて分析し、窒化ケイ素素球の総重量を算出して、希土類元素およびアルミニウム元素の上記含有量を決定すればよい。窒化ケイ素素球を製造するために用いる原料粉末にケイ素(金属シリコン粉末)が含まれ、当該ケイ素が窒化によりSiとなる場合、窒化ケイ素素球におけるSiの重量はケイ素の重量の1.67倍となる。したがって、ケイ素が窒化されたときの重量変化を考慮すれば、原料粉末の組成から希土類元素の酸化物および酸化アルミニウムの含有量を算出することができる。
本実施形態の窒化ケイ素素球は、表面から2mm以内の領域である表層部に介在物(I)を有することが好ましい。介在物(I)は、窒化ケイ素以外の成分を含むものであり、例えば遷移金属元素を含む介在物(It)、窒化されていないケイ素元素を含む介在物(Is)などが挙げられる。介在物(It)は、遷移金属元素のケイ化物であることが好ましい。介在物(Is)は、例えば窒化されていないケイ素元素の凝集体である。介在物(I)は、介在物(It)を含むことが好ましく、介在物(Is)を含まないか、その存在割合が少ないことが好ましい。介在物は、窒化ケイ素素球の表面から2mm以内の領域である表層部に全体が存在するものをいう。
介在物(It)は、例えば窒化ケイ素素球の製造時に用いた遷移金属元素を含む焼結助剤(通常、遷移金属元素の酸化物)に由来するものであり、例えば遷移金属元素のケイ化物は窒化ケイ素素球の製造時に形成される。PS-RBSN法により窒化ケイ素素球を製造する場合、遷移金属元素を含む焼結助剤を用いることにより、ケイ素粉末の窒化反応を促進することができ、また窒化ケイ素の針状結晶の成長を促進することができる。そのため、ケイ素を窒化するために要する熱処理時間を抑制することができ、窒化ケイ素素球の製造時のエネルギー効率を向上することができる。
一方、窒化ケイ素素球を製造するための原料に窒化ケイ素粉末が含まれる場合、窒化ケイ素粉末と、酸化クロム(Cr)などの遷移金属元素を含む焼結助剤(遷移金属元素の酸化物)とを混合すると、焼結助剤が窒化ケイ素粉末を酸化することにより、原料の組成にズレが生じ、良好な焼結を行えなくなることがある。これに対し、PS-RBSN法により窒化ケイ素素球を製造する場合には、原料に主にケイ素粉末を用い、原料に含まれる窒化ケイ素粉末の含有量を低減することができるため、上記のような不具合が生じにくく、緻密な窒化ケイ素素球を得ることができる。
介在物(Is)は、PS-RBSN法により窒化ケイ素素球を製造する際に、原料であるケイ素粉末(金属シリコン粉末)の窒化が不十分である場合などに形成されることがある。表層部に、径の大きい介在物(Is)が存在したり介在物(Is)の占める割合が増加したりすると、窒化ケイ素素球の破壊靱性などの機械的特性が低下しやすく、製品に加工したときの製品寿命が低下しやすい。窒化ケイ素素球の表層部に存在する介在物(Is)は少ない方が好ましく、存在していないことがより好ましい。
遷移金属元素は、IUPAC周期表の第3属から第11属までの間に含まれる元素であれば特に限定されない。遷移金属元素としては、Ti、Cr、およびMnからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、Crを含むことがさらに好ましい。遷移金属元素としてCrを含むことにより、例えば、窒化ケイ素素球の破壊靱性を向上することができる。
窒化ケイ素素球において、遷移金属元素の含有量は、窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で0.1重量%以上であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であってもよく、通常5重量%以下であり、3重量%以下であってもよく、2重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であってもよい。遷移金属元素の上記含有量は、希土類元素およびアルミニウム元素の含有量を決定する方法と同様の方法で決定することができる。
窒化ケイ素素球の表層部に存在する介在物(I)の最大径は特に限定されない。具体的には、介在物(I)の最大径は、50μm以下であり、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、通常0.5μm以上である。表層部における介在物(I)の最大径は、表層部に存在する介在物(I)のうちの径が最大である介在物(I)の径をいう。介在物(I)の最大径が上記の範囲内であることにより、介在物(I)が破壊源となることを抑制しやすくなるため、良好な破壊靱性を有する窒化ケイ素素球が得られやすい。また、介在物(I)の最大径が上記の範囲内であることにより、窒化ケイ素素球から介在物が脱粒して欠陥となることを抑制しやすくなるため、窒化ケイ素素球を軸受の転動体などの製品に加工した場合に、良好な製品寿命を得やすい。介在物(I)の最大径は、例えば、原料であるケイ素粉末の窒化の程度、原料に添加する遷移金属元素を含む焼結助剤の添加量および/または粒径、遷移金属元素の種類によって調整することができる。
窒化ケイ素素球の断面において、表層部の総断面積に対する介在物(I)の総断面積の割合([介在物(I)の総断面積/表層部の総断面積]×100)は、0.05%以上であることが好ましく、0.1%以上であってもよく、0.15%以上であってもよく、0.3%以上であってもよく、0.6%以上であってもよい。上記割合は、通常7.0%以下であり、3.0%以下であってもよく、2.0%以下であってもよく、1.5%以下であってもよい。介在物(I)の上記割合は、表層部に存在するすべての介在物の断面積を合計した総断面積の、表層部の総断面積に対する割合である。上記割合が上記の範囲内であることにより、良好な破壊靱性を有し、製品に加工したときに良好な製品寿命を有する窒化ケイ素素球が得られやすい。また上記割合が大きすぎると、介在物が連なって脱粒することにより、軸受寿命試験の結果に悪影響を及ぼしやすい。介在物(I)の上記割合は、例えば、原料であるケイ素粉末の窒化の程度、原料に添加する遷移金属元素を含む焼結助剤の添加量および/または粒径、遷移金属元素の種類によって調整することができる。
また、本実施形態の窒化ケイ素素球は、表面から2mm以内の領域である表層部に空孔を有することが好ましい。さらに、該空孔の最大径は、窒化ケイ素素球の断面において50μm以下であることが好ましい。空孔の最大径は、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、空孔を有していなくてもよい。空孔の最大径が上記の範囲内であることにより、窒化ケイ素素球を軸受の転動体などの製品に加工した場合に、良好な製品寿命を得やすい。表層部における空孔は、窒化ケイ素素球の表面から2mm以内の領域である表層部に存在するものをいい、表層部に空孔全体が存在するものをいうものとする。表層部における空孔の最大径は、表層部に存在する空孔のうちの径が最大である空孔の径をいう。空孔の最大径は、例えばPS-RBSN法により窒化ケイ素素球を製造する場合に、原料として用いる窒化ケイ素の含有量および/または焼結助剤の添加量を調整することによって調整することができる。
介在物(I)の最大径、介在物(I)の上記割合、および空孔の最大径は、後述する実施例に記載の方法によって作製した試験片の断面において、表層部に全体が存在する介在物(I)または空孔について測定した値である。介在物(I)の最大径、介在物(I)の上記割合、および空孔の最大径は、後述する実施例に記載の方法によって算出することができる。
本実施形態の窒化ケイ素素球の特に好ましい形態は、直径不同(単位:μm)/平均直径(単位:mm)が0.015以下であり、希土類元素およびアルミニウム元素を含む窒化ケイ素焼結体であって、さらに、上記窒化ケイ素素球の表面から2mm以内の領域である表層部に介在物(I)および空孔を有し、上記希土類元素の含有量は、上記窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、上記アルミニウム元素の含有量は、上記窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、上記表層部に存在する上記介在物(I)の最大径は50μm以下であり、上記窒化ケイ素素球の断面において、上記表層部の総断面積に対する上記介在物(I)の総断面積の割合は0.1%以上であり、上記表層部に存在する上記空孔の最大径は50μm以下である。また、この形態に対して、上述した元素や、上述した数値範囲などを適宜組み合わせることができる。
(窒化ケイ素素球の製造)
上述した窒化ケイ素素球は、PS-RBSN法(2段階焼結法)によって製造されることが好ましい。図2には、その製造工程の概略を示すフローチャートの一例を示す。
図2に示すように、窒化ケイ素素球を製造する方法は、ケイ素粉末と焼結助剤を含む原料粉末を混合する混合工程(1)と、混合物を球状の成形球に成形する成形工程(2)と、該成形球を焼結する焼結工程(3)とを含む。また、焼結工程後、必要に応じて研磨工程(4)が行われ、製品としての窒化ケイ素球が得られる。なお、本発明の窒化ケイ素素球を、研磨せずに、必要に応じて仕上げなどを行うことで製品としてもよい。
(1)混合工程
混合工程では、例えば、原料粉末を水および有機溶媒を使用せずに乾式で混合する。この場合、バインダ成分を用いずに混合することが好ましい。混合後の粉末の粒径は、特に限定されないが、D90が10μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、D50が2μm以上10μm以下であることが好ましく、3μm以上9μm以下であることがより好ましい。D90および/またはD50が上記の範囲内であることにより、良好な流動性および成形性を発揮させつつ、緻密な窒化ケイ素素球を得ることができる。なお、D50およびD90は、それぞれ体積基準の累積50%径および累積90%径であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定などによって得られる。
なお、混合工程で湿式造粒を行い、混合物として造粒粉を得るようにしてもよい。この場合、原料粉末とバインダ成分を、水および/または有機溶媒(例えばエタノール)で混合してスラリー化し、それをスプレードライなどで噴霧造粒乾燥することで造粒粉を得ることができる。バインダ成分には有機バインダなどが用いられ、原料粉末全体に対して、例えば1重量%~10重量%添加される。
(2)成形工程
成形工程では、混合工程で得られた混合物を球状の成形球に成形する。成形工程は、例えば、図2に示すように、加圧成形工程とグリーン加工工程を有する。この場合、冷間等圧加圧法などのプレス成形を行って球状の圧粉体とした後、その圧粉体をグリーン加工装置で加工することでグリーン球が得られる。
図3には、グリーン加工工程を行うグリーン加工装置の概略を示す。図3に示すように、グリーン加工装置17は、第1の面を有する円盤状の第1定盤11と、第1の面と平行に対向する第2の面を有する円盤状の第2定盤12とを備えている。第1定盤11は、鉛直方向において下側に位置し、第2定盤12は上側に位置する。
第1定盤11は、第1の軸13に接続され、第1の軸13の中心軸αを回転軸として周方向に回転可能となっている。また、第1定盤11の第1の面を含む領域には、球状の圧粉体16を加工するための加工層11aが形成されている。加工層11aには砥石や金網などが用いられる。第2定盤12は、第2の軸14に接続され、第2の軸14の中心軸βを回転軸として周方向に回転可能となっている。中心軸αおよびβは、互いに偏心し、かつ平行になっている。第2定盤12の第2の面を含む領域には、圧粉体16を保持するための保持層12aが形成されている。保持層12aは、ゴムや樹脂などの弾性部材である。また、第2定盤12には、その外周を取り囲むように、第1定盤11に対向する側に突出する保持部15が形成されている。
グリーン加工装置17において、第1定盤11と第2定盤12の間に多数の圧粉体16を装入し、第2定盤12を回転させると、圧粉体16は遠心力によって、第2定盤12の保持部15の内周を自転しながら公転する。その後、第1定盤11を、圧粉体16の公転を妨げない程度に第2定盤12と同一方向に回転させる。上下の定盤11、12が回転すると、圧粉体16は第2定盤12の保持部15の内周を、あらゆる方向に自転しながら公転する。ここで、第2定盤12に下向きの荷重を加えると、第1定盤11の加工層11aによって圧粉体16が加工される。これによって、真球に近いグリーン球が得られる。図2のフローチャートでは、得られたグリーン球を成形球としている。
(3)焼結工程
焼結工程は、得られたグリーン球を、例えば窒素雰囲気中で温度1200℃~1500℃で熱処理することにより窒化させる第1工程と、例えば窒素雰囲気中で1600℃~1950℃(好ましくは1600℃~1800℃、より好ましくは1650℃~1750℃)で熱処理することにより焼結させる第2工程とを有する。上記第1工程は、製造効率の向上の観点から、温度1200℃~1500℃の範囲内の温度において1時間以上、温度保持しないことが好ましい。なお、本明細書において、温度保持とは一定時間その温度を維持することをいう。具体的には、例えば1100℃程度の温度から所定の昇温速度で上記第2工程の焼結温度まで昇温させることで窒化させることが好ましい。上記昇温速度は、例えば2.0℃/min以上であり、2.5℃/min以上であってもよく、5.0℃/min以上であってもよい。また、上記昇温速度は例えば20℃/min以下であり、15℃/min以下が好ましい。焼結工程によって、本実施形態の窒化ケイ素素球が得られる。
上記の窒化ケイ素素球の製造では、窒化ケイ素素球の寸法精度の向上の観点から、PS-RBSN法の全工程を乾式で行うことが好ましい。PS-RBSN法で有機バインダを用いずに、窒化ケイ素素球を作製することで、焼結による収縮を小さくし、焼結体の寸法精度を向上できる。すなわち、グリーン加工などによって得られる真球に近い形状を、焼結後も維持しやすくなる。造粒するために有機バインダなどを用いると、その後に脱脂工程が必要になるが、脱脂工程によって有機バインダが抜けた後には空隙が生じるため、焼結による収縮がその分大きくなる。
また、PS-RBSN法により製造された窒化ケイ素素球は、一度窒化されることで圧粉体の相対密度が上がるので、原料に窒化ケイ素粉末を用いた焼結体よりも収縮率が小さくなる。なお、収縮率は下記式より算出される。下記式中の未焼結の成形球としては、図2に示すようにグリーン加工工程を行った場合にはグリーン球が用いられる。
収縮率[%]=〔{(未焼結の成形球の直径)-(素球の直径)}/未焼結の成形球の直径〕×100
本実施形態の窒化ケイ素素球の収縮率は特に限定されないが、11.0%以下であることが好ましい。また、収縮率は例えば7.0%以上であり、8.0%以上であってもよい。
上記の窒化ケイ素素球の製造において、原料粉末に用いる焼結助剤としては、希土類元素、アルミニウム元素、および遷移金属元素を含むものを用いることが好ましく、これらの酸化物を含むことがより好ましい。希土類元素を含む焼結助剤としては、Y、CeO、Nd、およびEuのうちのいずれかを含むことが好ましい。遷移金属元素を含む焼結助剤としては、Cr、TiO、MnO、およびFeのうちのいずれかを含むことが好ましく、Cr、TiO、およびMnOのうちのいずれかを含むことがより好ましく、Crを含むことがさらに好ましい。
原料粉末は、ケイ素粉末および焼結助剤以外に、窒化ケイ素粉末および/または有機バインダを含んでいてもよく、希土類元素、アルミニウム元素、および遷移金属元素以外の元素を含む焼結助剤を含んでいてもよい。
原料粉末に含まれるケイ素粉末の含有量は、ケイ素粉末、窒化ケイ素粉末、および焼結助剤の総重量に対して、45重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、55重量%以上であることがさらに好ましく、60重量%以上であってもよく、通常、90重量%以下であり、85重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよい。原料粉末に含まれる窒化ケイ素粉末の含有量は、上記総重量に対して、通常30重量%以下であり、25重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であってもよく、窒化ケイ素粉末を含んでいなくてもよい。
原料粉末に含まれる希土類元素を含む焼結助剤(例えば、希土類元素の酸化物)の含有量は、上記総重量に対して、7重量%以上であり、9重量%以上であることが好ましく、9.5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であってもよい。希土類元素の上記含有量は、17重量%以下であり、15重量%以下であってもよく、14.5重量%以下であってもよい。原料粉末に含まれるアルミニウム元素を含む焼結助剤(例えば、酸化アルミニウム)の含有量は、上記総重量に対して、5重量%以上であり、9重量%以上であることが好ましく、9.5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であってもよい。アルミニウム元素の上記含有量は、17重量%以下であり、15重量%以下であってもよく、14.5重量%以下であってもよい。原料粉末に含まれる遷移金属元素を含む焼結助剤(例えば、遷移金属元素の酸化物)の含有量は、上記総重量に対して、通常0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、通常5重量%以下であり、3重量%以下であることがより好ましい。原料粉末に含まれる焼結助剤の含有量が少ないと緻密な窒化ケイ素素球が得られにくく、焼結助剤の含有量が多いと窒化ケイ素素球の破壊靱性などの機械的特性が低下しやすい。
原料粉末に含まれるケイ素粉末の平均粒径は、例えば5μm以下とすることができる。窒化ケイ素の平均粒径は、例えば0.5μm以下とすることができる。焼結助剤の平均粒径は、焼結助剤の種類にもよるが、通常10μm以下であり、7μm以下であってよく、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよく、2μm以下であってよく、1μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。
本実施形態の窒化ケイ素素球は、図2に示すように、続く研磨工程(4)において、直径不同や、真球度、算術平均粗さなどが所定の製品規格を満たすように研磨されて、窒化ケイ素球が得られる。
得られた窒化ケイ素球の用途は、特に限定されないが、転がり軸受の転動体や、ボールねじの転動体などに用いることができる。
本実施形態の転がり軸受について図4に基づいて説明する。図4は深溝玉軸受の断面図である。転がり軸受21は、外周面に内輪軌道面22aを有する内輪22と内周面に外輪軌道面23aを有する外輪23とが同心に配置され、内輪軌道面22aと外輪軌道面23aとの間に複数個の玉(転動体)24が配置される。これら玉24は、本実施形態の窒化ケイ素素球を研磨加工したものである。玉24は、保持器25により保持される。また、内・外輪の軸方向両端開口部28a、28bがシール部材26によりシールされ、少なくとも玉24の周囲にグリース組成物27が封入される。グリース組成物27が玉24との軌道面に介在して潤滑される。なお、転がり軸受の軸受形式は、深溝玉軸受に限定されず、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受などでもよい。
図5は、他の用途としてのボールねじを示す断面図である。図5に示すように、ボールねじは、案内部材であるねじ軸31の外周面に形成したねじ溝32と、ボールナット33の内周面に形成したねじ溝34の間に複数のボール35を介在させたものであり、ねじ軸31(またはボールナット33)の回転動力をボール35を介してボールナット33(またはねじ軸31)に伝達し、ボールナット33を軸方向に移動させるものである。図5において、ボール35は、本実施形態の窒化ケイ素素球を研磨加工したものであり、ねじ軸31およびボールナット33が鋼(例えば、軸受鋼や低炭素鋼など)で形成されている。また、ねじ軸31とボールナット33との間でボール35の周囲にグリース組成物が封入され、ボールねじ用シール部材36によってシールされている。
図5に示すボールねじにおいて、ボールの循環方式は特に限定されず、チューブ式、リターンチューブ(パイプ)式、デフレクタ式、エンドデフレクタ式、エンドキャップ式、こま式などのいずれの循環方式を採用することができる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実施例1~実施例20、比較例1~6>
表2に示す配合比で原料粉末を準備し、メディアとして窒化ケイ素ボールを用いて、ボールミルにより回転数200rpmで48時間、乾式混合した。なお、混合粉末を得るために用いた材料の仕様を表1に示す。得られた混合粉末を用い、ゴム型を用いた冷間等圧加圧法により、直径13mmの球状の圧粉体に成形した。この圧粉体を、図3に示したようなグリーン加工装置を用いてグリーン加工して、直径12mmおよび直径不同が20μm以下のグリーン球を得た。このグリーン球を室温から、表2に示す2.5℃/min~20℃/minの昇温速度で温度1550℃~1900℃まで昇温し、窒素雰囲気中(圧力:0.9MPa)、その焼結温度で4時間保持して窒化ケイ素素球を得た。
Figure 2023127845000002
Figure 2023127845000003
得られた窒化ケイ素素球中の各酸化物の組成比について、原料粉末に含まれるケイ素(金属シリコン)が全て窒化され、窒化ケイ素の重量はケイ素の重量の1.67倍になるものとして、原料粉末の組成比から算出した値を表3に示す。
Figure 2023127845000004
<収縮率、および、直径不同/平均直径の算出>
上記で得られたグリーン球の寸法、および、窒化ケイ素素球の寸法をJIS B 1501に準拠して測定し、下記式より収縮率を算出した。収縮率については、他の測定結果と併せて表4に示す。
収縮率[%]=〔{(グリーン球の直径)-(窒化ケイ素素球の直径)}/グリーン球の直径〕×100
また、上記の測定の際に、窒化ケイ素素球の直径不同も併せて算出した。具体的には、窒化ケイ素素球の直径をマイクロメータを用いて10箇所方向を変えて測定し、その平均を窒化ケイ素素球の平均直径とし、これらの測定結果(10箇所の直径)の中の最大値と最小値の差から直径不同を算出した。そして、得られた窒化ケイ素素球の平均直径および直径不同から、「直径不同(単位:μm)/平均直径(単位:mm)」の値を求めた。他の測定結果と併せて表4に示す。
<介在物(I)の最大径および面積割合の測定、並びに、空孔の最大径の測定>
実施例および比較例の窒化ケイ素素球を、その中心を通る断面で切断して、切断面を鏡面研磨した。鏡面研磨した切断面を、株式会社キーエンス製「VHX5000」を用いて撮影し、その撮影画像を、三谷商事株式会社製「WinRoof」を用いて解析し、球状の試験片の表面から2mm以内の範囲に相当する領域である表層部に存在する介在物(I)の最大径および空孔の最大径を測定した。介在物(I)および空孔の径は、介在物(I)および空孔の包絡面積の平方根として求めた(介在物(I)および空孔の径=√(介在物(I)および空孔の包絡面積))。表層部に、径が50μm超の介在物(I)が存在しないものを「A」と評価し、存在するものを「B」として評価した。また、表層部に径が50μm超の空孔が存在しないものを「A」と評価し、存在するものを「B」として評価した。介在物(I)および空孔は、表層部に介在物(I)および空孔の全体が存在するものを測定対象とした。また、表層部の総断面積に対する介在物(I)の総断面積の割合を算出した(介在物(I)の総断面積の割合=介在物(I)の包絡面積÷表層部の総断面積×100)。結果を表4に示す。
得られた球状の窒化ケイ素素球を、JIS B 1563に準拠し、G5になるまで球研磨し、3/8インチ(直径9.525mm)の球状の試験片を作製した。
<転動疲労試験>
得られた球状の試験片を用い、軸受外輪、軸受内輪、および保持器としてNTN株式会社製「6206」を用いて、回転速度を3000min-1、負荷荷重1.5GPa、試験時間を168時間として転動疲労試験を行い、製品寿命を評価した。潤滑油は、JXTGエネルギー株式会社製の無添加タービンオイル「VG56」を用いた。試験時間内に試験片が剥離しなかったものを「a」と評価し、剥離したものを「b」と評価した。結果を表4に示す。
Figure 2023127845000005
<介在物(I)の分析>
実施例2で得た試験片の切断面について、走査電子顕微鏡((株)日立製作所製、S300)を用い、EDX分析によって、表層部に含まれる介在物(I)の元素の種類および含有量を測定した。介在物(I)はクロムのケイ化物を含んでおり、介在物(I)に含まれる元素およびその含有量は、クロム(Cr)が57重量%であり、ケイ素(Si)が43重量%であった。
本発明の窒化ケイ素素球は、製品の生産性の向上に寄与でき、更には、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有するので、転がり軸受の転動体や、ボールねじの転動体などに好適に用いることができる。
1 窒化ケイ素素球
2 電気マイクロメータ
11 第1定盤
12 第2定盤
13 第1の軸
14 第2の軸
15 保持部
16 圧粉体
17 グリーン加工装置
21 転がり軸受
22 内輪
23 外輪
24 玉(転動体)
25 保持器
26 シール部材
27 グリース
28a、28b 開口部
31 ねじ軸
32 ねじ溝
33 ボールナット
34 ねじ溝
35 ボール(転動体)
36 ボールねじ用シール部材

Claims (13)

  1. 直径不同(単位:μm)/平均直径(単位:mm)が0.015以下であることを特徴とする窒化ケイ素素球。
  2. 前記窒化ケイ素素球は、希土類元素およびアルミニウム元素を含む窒化ケイ素焼結体であって、前記希土類元素の含有量は、前記窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、前記アルミニウム元素の含有量は、前記窒化ケイ素素球の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素素球。
  3. 前記希土類元素が、Y、Ce、NdおよびEuからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項2記載の窒化ケイ素素球。
  4. 前記希土類元素がCeを含むことを特徴とする請求項3記載の窒化ケイ素素球。
  5. 前記窒化ケイ素素球の表面から2mm以内の領域である表層部に介在物(I)を有し、前記表層部の総断面積に対する前記介在物(I)の総断面積の割合が0.05%以上であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の窒化ケイ素素球。
  6. 前記介在物(I)が、遷移金属元素を含む介在物(It)を含むことを特徴とする請求項5記載の窒化ケイ素素球。
  7. 前記介在物(It)が遷移金属元素のケイ化物であることを特徴とする請求項6記載の窒化ケイ素素球。
  8. 前記遷移金属元素が、Ti、Cr、およびMnからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項6または請求項7記載の窒化ケイ素素球。
  9. 前記遷移金属元素がCrを含むことを特徴とする請求項8記載の窒化ケイ素素球。
  10. 前記介在物(I)の最大径が50μm以下であることを特徴とする請求項5から請求項9までのいずれか1項記載の窒化ケイ素素球。
  11. 前記窒化ケイ素素球の表面から2mm以内の領域である表層部に空孔を有し、該空孔の最大径が50μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項記載の窒化ケイ素素球。
  12. 請求項1から請求項11までのいずれか1項記載の窒化ケイ素素球が研磨加工されたものであることを特徴とする転動体。
  13. 請求項12記載の転動体を用いたことを特徴とする転がり軸受。
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