JP2023109655A - 窒化ケイ素焼結体、それを用いた機械部品、および軸受 - Google Patents

窒化ケイ素焼結体、それを用いた機械部品、および軸受 Download PDF

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文耶 中村
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【課題】機械的特性が良好であり、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有する窒化ケイ素焼結体、それを用いた機械部品、および軸受を提供する。【解決手段】窒化ケイ素焼結体は、鏡面研磨した切断面のXRD回析パターンから以下の式により求めた結晶化度が75%以上、90%以下であり、非結晶質相にY、Ce、Nd、およびEuからなる群より選ばれる1種以上を含み、表層部に、径が50μm超の介在物が存在せず、径が50μm超の空孔が存在しない。結晶化度(%)=結晶質のピーク面積/(結晶質のピーク面積+非結晶質のピーク面積)×100【選択図】図1

Description

本発明は、窒化ケイ素焼結体、それを用いた機械部品、および軸受に関する。
窒化ケイ素(Si)焼結体は、優れた機械特性、熱伝導性、および電気絶縁性を有することから、ベアリング部材、エンジン部品、工具材料、および放熱基板材料などへの適用が進められている。窒化ケイ素焼結体は窒化ケイ素粉末を出発原料として用いて製造することが知られている。窒化ケイ素粉末は難焼結性であるため、緻密化した窒化ケイ素焼結体を製造するためには、窒化ケイ素粉末とともに焼結助剤が用いられる。このような焼結助剤として、一般的には希土類元素の酸化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコンなどが挙げられる。
窒化ケイ素粉末は価格が高いため、窒化ケイ素粉末を用いて窒化ケイ素焼結体を製造すると、窒化ケイ素焼結体の価格も上昇する傾向にある。そこで、窒化ケイ素粉末に比較して低価格であるケイ素粉末(金属シリコン粉末)を出発原料として用い、これを反応焼結させることにより窒化ケイ素焼結体を製造する製造方法が注目されている(例えば、特許文献1~3)。このような製造方法として、PS-RBSN(Post-Sintering of Reaction Bonded Silicon-Nitride)法と称される方法が知られている。PS-RBSN法は、窒素ガスを含む環境下において、例えば温度1100℃~1450℃付近で熱処理することによりケイ素粉末を成形した圧粉体を窒化させる第1工程と、第1工程で得られた窒化体を、例えば温度1600℃~1950℃付近で熱処理することにより緻密化する第2工程とを含む。
特開2004-149328号公報 特開2008-247716号公報 特開2013-49595号公報
例えば、PS-RBSN法により窒化ケイ素焼結体を製造する場合、ケイ素粉末が十分に窒化されないと、窒化ケイ素焼結体中にケイ素が残存することになる。残存したケイ素は、窒化ケイ素焼結体の機械的特性の低下を引き起こす原因となり得るため、PS-RBSN法により製造された窒化ケイ素焼結体は、出発原料に窒化ケイ素粉末を用いて製造された窒化ケイ素焼結体に比較すると機械的特性に劣る場合があった。また、窒化ケイ素焼結体を転動体などの機械部品に加工した場合に製品寿命が短い場合があることも見出された。
本発明は、機械的特性が良好であり、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有する窒化ケイ素焼結体、それを用いた機械部品、および軸受の提供を目的とする。
本発明の窒化ケイ素焼結体は、結晶化度が75%以上、90%以下であることを特徴とする。
上記窒化ケイ素焼結体は、非結晶質相にY、Ce、Nd、およびEuからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。
上記窒化ケイ素焼結体は、希土類元素およびアルミニウム元素を含み、上記希土類元素の含有量は、上記窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、上記アルミニウム元素の含有量は、上記窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であることを特徴とする。
上記窒化ケイ素焼結体の表面から2mm以内の領域である表層部に介在物(I)を有し、上記介在物(I)の最大径が50μm以下であることを特徴とする。
上記窒化ケイ素焼結体の表面から2mm以内の領域である表層部に空孔を有し、該空孔の最大径が50μm以下であることを特徴とする。
本発明の機械部品は、本発明の窒化ケイ素焼結体を用いたことを特徴とする。また、上記機械部品は、転動体であることを特徴とする。
本発明の軸受は、上記転動体を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、機械的特性が良好であり、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有する窒化ケイ素焼結体、それを用いた機械部品、および軸受を提供することができる。
本発明の軸受の一例を示す縦断面図である。 本発明の軸受の他の例を示す縦断面図である。 本発明の軸受の他の例を示す縦断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の窒化ケイ素焼結体(以下、単に「焼結体」ともいう)は、結晶化度が75%以上、90%以下である。ここで、窒化ケイ素焼結体の結晶化度は、窒化ケイ素焼結体を構成する全成分中における結晶質相の比率を意味し、上記結晶化度は、窒化ケイ素焼結体を鏡面研磨した切断面のXRD回析パターンに基づき、以下の式から求められる。
結晶化度(%)=結晶質のピーク面積/(結晶質のピーク面積+非結晶質のピーク面積)×100
窒化ケイ素焼結体の結晶化度は、具体的には、「XRD回析パターンにおける結晶質窒化ケイ素およびその他の結晶質成分のピーク面積」/「XRD回析パターンにおける焼結体を構成する全成分の各ピーク面積の総和」である。ここで、結晶質窒化ケイ素は、α型、β型、またはγ型の結晶構造を有する結晶質窒化ケイ素である。また、焼結体を構成する全成分は、例えば、ケイ素、窒化ケイ素、窒化ケイ素を製造する際の熱処理時に焼結を促進する焼結助剤由来成分などである。
窒化ケイ素焼結体が、例えば、PS-RBSN法(2段階焼結法)により、ケイ素粉末と焼結助剤とを用いて製造される場合、所定の条件下では、焼結助剤は焼結体中の非結晶質相の主成分となる。PS-RBSN法は、ケイ素の窒化工程と、その後の焼結工程とを含む2段階焼結法をいう。例えば、PS-RBSN法によりケイ素粉末と焼結助剤とからなる圧粉体を窒素雰囲気中で熱処理し、ケイ素が完全に窒化され、焼結助剤のすべてが非晶質化した場合、上記結晶化度は、「XRD回析パターンにおける結晶質窒化ケイ素のピーク面積」/「XRD回析パターンにおける焼結体を構成する全成分の各ピーク面積の総和」である。また、ケイ素が完全に窒化され、焼結助剤の一部が結晶質化した場合、上記結晶化度は、「XRD回析パターンにおける結晶質窒化ケイ素および焼結助剤由来の結晶質成分のピーク面積」/「XRD回析パターンにおける焼結体を構成する全成分の各ピーク面積の総和」である。
窒化ケイ素焼結体の原料としては、窒化ケイ素粉末のみを用いてもよいし、ケイ素粉末および窒素ガスのみを用いてもよいし、ケイ素粉末、焼結助剤、および窒素ガスを用いてもよい。ケイ素粉末と焼結助剤を含む原料粉末を用いてPS-RBSN法により窒化ケイ素焼結体を製造する場合、原料粉末の焼結中、系中にガラス相(非結晶質相)が存在しやすく、ケイ素粉末(金属シリコン粉末)の窒化およびその後の焼結が促進されやすい。その結果、焼結体の結晶化度が75%以上、90%以下となりやすく、機械的特性が向上する。なお、窒化ケイ素焼結体の原料および製造方法は、窒化ケイ素焼結体が得られれば、粉末、気体にかかわらずどのような原料を用いてもよく、製造方法もPS-RBSN法に限定されない。
窒化ケイ素焼結体の結晶化度は、75%以上であり、78%以上であることが好ましく81%以上であってもよい。上記結晶化度は、90%以下であり、87%以下であってもよく、84%以下であってもよい。窒化ケイ素焼結体の結晶化度が上記の範囲内であることにより、機械的特性が良好であり、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有する窒化ケイ素焼結体が得られやすい。
窒化ケイ素焼結体の結晶化度は、ケイ素の窒化の程度や、焼結助剤由来の結晶質の影響を受け、焼結体中の窒化ケイ素の量とは必ずしも相関しない。例えば、窒化されていないケイ素が残存していても、焼結助剤由来の結晶質が存在するなどして、焼結体の結晶化度が75%以上、90%以下であることを満たしてもよい。
本実施形態の窒化ケイ素焼結体は、希土類元素および/またはアルミニウム元素を含むことができる。窒化ケイ素焼結体が希土類元素を含む場合、希土類元素の含有量は、窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であることが好ましい。また、窒化ケイ素焼結体がアルミニウム元素を含む場合、アルミニウム元素の含有量は、窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であることが好ましい。
希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、エルビウム(Er)などが挙げられる。このうち、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユウロピウム(Eu)が好ましい。特に、窒化をより促進させることができ、製造効率の向上を図れることからセリウム(Ce)を含むことがより好ましい。
窒化ケイ素焼結体は、非結晶質相に、希土類元素を含むことが好ましく、Y、Ce、Nd、およびEuからなる群より選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。なお、窒化ケイ素焼結体は、結晶質相に希土類元素を含んでもよい。
希土類元素の上記含有量は、窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6.5重量%以上であることがより好ましく、7.0重量%以上であってもよく、7.5重量%以上であってもよい。希土類元素の上記含有量は、12.5重量%以下であることがより好ましく、11.5重量%以下であってもよく、10.5重量%以下であってもよい。窒化ケイ素焼結体の結晶化度が75%以上、90%以下であるとともに、希土類元素の含有量が上記の範囲内にあることにより、焼結体中の結晶質相の大半が窒化ケイ素となりやすい。これにより、機械的特性が良好であり、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有するとともに、製造時のエネルギー効率に優れる窒化ケイ素焼結体が得られやすい。
希土類元素は、例えば窒化ケイ素焼結体の製造時に用いた希土類元素を含む焼結助剤(通常、希土類元素の酸化物)に由来するものである。窒化ケイ素焼結体中の希土類元素の含有量が上記の範囲内であることにより、PS-RBSN法により窒化ケイ素焼結体を製造する場合に、原料であるケイ素粉末(金属シリコン粉末)の窒化反応を促進し、その後の焼結を促進することができる。希土類元素の含有量は、原料に添加する希土類元素を含む焼結助剤(例えば、希土類元素の酸化物)の添加量によって調整することができる。
アルミニウム元素の上記含有量は、窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6.5重量%以上であることがより好ましく、7.0重量%以上であってもよく、7.5重量%以上であってもよい。アルミニウム元素の上記含有量は、12.5重量%以下であることがより好ましく、11.5重量%以下であってもよく、10.5重量%以下であってもよい。窒化ケイ素焼結体が、希土類元素およびアルミニウム元素を含む場合、アルミニウム元素の含有量(酸化物換算)は、希土類元素の含有量(酸化物換算)の±5重量%以内であってもよく、±2重量%以内であってもよく、±1重量%以内であってもよく、希土類元素の含有量と同じであってもよい。窒化ケイ素焼結体の結晶化度が75%以上、90%以下であるとともに、アルミニウム元素の含有量が上記の範囲内にあることにより、焼結体中の結晶質相の大半が窒化ケイ素となりやすい。これにより、機械的特性が良好であり、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有するとともに、製造時のエネルギー効率に優れる窒化ケイ素焼結体が得られやすい。
アルミニウム元素は、例えば窒化ケイ素焼結体の製造時に用いたアルミニウムを含む焼結助剤(通常、酸化アルミニウム)に由来するものである。窒化ケイ素焼結体中のアルミニウム元素の含有量が上記の範囲内であることにより、PS-RBSN法により窒化ケイ素焼結体を製造する場合に焼結を促進することができる。アルミニウム元素の含有量は、原料に添加するアルミニウム元素を含む焼結助剤(例えば、酸化アルミニウム)の添加量によって調整することができる。
希土類元素およびアルミニウム元素の上記含有量は、蛍光X線分析装置(XRF)、エネルギー分散型X線分析(EDX)、または高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて決定すればよい。具体的には、上記分析装置により、窒化ケイ素焼結体中の希土類元素およびアルミニウム元素の含有量を求め、希土類元素(RE)の酸化物(REまたはREO)および酸化アルミニウム(Al)に換算すればよい。窒化ケイ素焼結体を構成する他の成分の元素についても上記分析装置を用いて分析し、窒化ケイ素焼結体の総重量を算出して、希土類元素およびアルミニウム元素の上記含有量を決定すればよい。窒化ケイ素焼結体を製造するために用いる原料粉末にケイ素(金属シリコン粉末)が含まれ、当該ケイ素が窒化によりSiとなる場合、窒化ケイ素焼結体におけるSiの重量はケイ素の重量の1.67倍となる。したがって、ケイ素が窒化されたときの重量変化を考慮すれば、原料粉末の組成から希土類元素の酸化物および酸化アルミニウムの含有量を算出することができる。
本実施形態の窒化ケイ素焼結体は、表面から2mm以内の領域である表層部に介在物(I)を有することが好ましい。介在物(I)は、窒化ケイ素以外の成分を含むものであり、例えば、希土類元素や、アルミニウム元素、遷移金属元素を含む介在物(It)、窒化されていないケイ素元素を含む介在物(Is)などが挙げられる。介在物(It)は、遷移金属元素のケイ化物を含むことが好ましい。介在物(Is)は、例えば窒化されていないケイ素元素の凝集体である。介在物(I)は、介在物(It)を含むことが好ましく、介在物(Is)を含まないか、その存在割合が少ないことが好ましい。介在物は、窒化ケイ素焼結体の表面から2mm以内の領域である表層部に全体が存在するものをいう。
介在物(It)は、例えば窒化ケイ素焼結体の製造時に用いた焼結助剤(例えば、希土類元素の酸化物や、酸化アルミニウム、遷移金属元素の酸化物)に由来するものであり、例えば遷移金属元素のケイ化物は窒化ケイ素焼結体の製造時に形成される。例えばPS-RBSN法により窒化ケイ素焼結体を製造する場合、酸化クロム(Cr)などの遷移金属元素を含む焼結助剤を用いることにより、ケイ素粉末の窒化反応を促進することができ、また窒化ケイ素の針状結晶の成長を促進することができる。そのため、ケイ素を窒化するために要する熱処理時間を抑制することができ、窒化ケイ素焼結体の製造時のエネルギー効率を向上することができる。
介在物(Is)は、例えば、PS-RBSN法により窒化ケイ素焼結体を製造する際に、原料であるケイ素粉末(金属シリコン粉末)の窒化が不十分である場合などに形成されることがある。表層部に、径の大きい介在物(Is)が存在したり介在物(Is)の占める割合が増加したりすると、窒化ケイ素焼結体の破壊靱性などの機械的特性が低下しやすく、製品に加工したときの製品寿命が低下しやすい。窒化ケイ素焼結体の表層部に存在する介在物(Is)は少ない方が好ましく、存在していないことがより好ましい。
遷移金属元素は、IUPAC周期表の第3属から第11属までの間に含まれる元素であれば特に限定されない。遷移金属元素としては、Ti、Cr、Mnからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、Crを含むことがさらに好ましい。遷移金属元素としてCrを含むことにより、窒化ケイ素焼結体の破壊靱性をより一層向上することができる。
窒化ケイ素焼結体の表層部に存在する介在物(I)の最大径は特に限定されない。具体的には、介在物(I)の最大径は、50μm以下であることが好ましい。介在物(I)の最大径は、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、0.5μm以上であることが好ましい。表層部における介在物(I)の最大径は、表層部に存在する介在物(I)のうちの径が最大である介在物(I)の径をいう。介在物(I)の最大径が上記の範囲内であることにより、介在物(I)が破壊源となることを抑制しやすくなるため、良好な破壊靱性を有する窒化ケイ素焼結体が得られやすい。また、介在物(I)の最大径が上記の範囲内であることにより、窒化ケイ素焼結体から介在物が脱粒して欠陥となることを抑制しやすくなるため、窒化ケイ素焼結体を軸受の転動体などの製品に加工した場合に、良好な製品寿命を得やすい。介在物(I)の最大径は、例えば、原料であるケイ素粉末の窒化の程度、原料に添加する希土類元素や、アルミニウム元素、遷移金属元素を含む焼結助剤の添加量および/または粒径、焼結助剤が含む元素の種類によって調整することができる。窒化ケイ素焼結体の結晶化度が75%以上、90%以下の場合、非結晶質相が10%以上、25%以下となり、介在物の略全体を占める非結晶質相が焼結体中で少なくなるため、介在物(I)の最大径が50μm以下となりやすい。
また、本実施形態の窒化ケイ素焼結体は、表面から2mm以内の領域である表層部に空孔を有することが好ましい。さらに、該空孔の最大径は、窒化ケイ素焼結体の断面において50μm以下であることが好ましい。空孔の最大径は、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、空孔を有していなくてもよい。空孔の最大径が上記の範囲内であることにより、窒化ケイ素焼結体を軸受の転動体などの製品に加工した場合に、良好な製品寿命を得やすい。表層部における空孔は、窒化ケイ素焼結体の表面から2mm以内の領域である表層部に存在するものをいい、表層部に空孔全体が存在するものをいうものとする。表層部における空孔の最大径は、表層部に存在する空孔のうちの径が最大である空孔の径をいう。空孔の最大径は、例えばPS-RBSN法により窒化ケイ素焼結体を製造する場合に、原料として用いる窒化ケイ素の含有量および/または焼結助剤の添加量を調整することによって調整することができる。窒化ケイ素焼結体の結晶化度が75%以上、90%以下の場合、非結晶質相が10%以上、25%以下であることから、焼結中に結晶質相の間を非結晶質相が液相として充填しやすく、空孔の最大径が50μm以下となりやすい。
介在物(I)の最大径、および空孔の最大径は、後述する実施例に記載の方法によって作製した試験片の断面において、表層部に全体が存在する介在物(I)または空孔について測定した値である。介在物(I)の最大径、および空孔の最大径は、後述する実施例に記載の方法によって算出することができる。
本実施形態の窒化ケイ素焼結体の特に好ましい形態は、希土類元素およびアルミニウム元素を含む窒化ケイ素焼結体であって、結晶化度が75%以上、90%以下であり、非結晶質相にY、Ce、Nd、およびEuからなる群より選ばれる1種以上を含み、上記希土類元素の含有量は、上記窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、上記アルミニウム元素の含有量は、上記窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下である。さらに、上記窒化ケイ素焼結体の表面から2mm以内の領域である表層部に介在物(I)および空孔を有し、上記介在物(I)の最大径は50μm以下であり、上記空孔の最大径は50μm以下であることが好ましい。また、この形態に対して、上述した元素や、上述した数値範囲などを適宜組み合わせることができる。
本実施形態の窒化ケイ素焼結体の形状は特に限定されず、球状、円柱形状、円錐形状、円錐台形状、直方体形状など、用途によって適宜選択すればよいが、球状であることが好ましい。窒化ケイ素焼結体のサイズも特に限定されず、例えば、球状であれば直径を0.5cm~10cmとすることができ、円柱形状であれば底面の直径を0.5cm~15cmとし、高さを3cm~20cmとすることができる。
上記の窒化ケイ素焼結体は、例えば、PS-RBSN法(2段階焼結法)によって製造されることが好ましい。具体的には、以下の第1の手法および第2の手法によって製造できる。
(第1の手法)
PS-RBSN法では、粉末の流動性を向上するために造粒することが多い。第1の手法は、結晶化度が75%以上、90%以下である窒化ケイ素焼結体を製造する方法であって、例えば、ケイ素粉末と焼結助剤を含む原料粉末を用いて造粒粉を得る造粒工程と、得られた造粒粉を圧粉体に成形する成形工程と、脱脂工程と、脱脂された圧粉体を焼結する焼結工程とを含む。
造粒工程では、原料粉末とバインダ成分を、水および/または有機溶媒(例えばエタノール)で混合してスラリー化し、それをスプレードライなどで噴霧造粒乾燥することで造粒粉を得る。バインダ成分には有機バインダなどが用いられる。
続く成形工程で、造粒粉を所定の形状に成形して圧粉体を得る。脱脂工程において、得られた圧粉体を窒素雰囲気中で温度700℃~1000℃で加熱して脱脂させる。
焼結工程は、脱脂後の圧粉体を、例えば窒素雰囲気中で温度1200℃~1500℃で熱処理することにより窒化させる第1工程と、得られた窒化体を、例えば窒素雰囲気中で1600℃~1950℃(好ましくは1600℃~1900℃)で熱処理することにより焼結させる第2工程とを有する。
(第2の手法)
第2の手法は、結晶化度が75%以上、90%以下である窒化ケイ素焼結体を製造する方法であって、例えば、ケイ素粉末と焼結助剤を含む原料粉末を乾式で混合する混合工程と、混合された原料粉末を圧粉体に成形する成形工程と、圧粉体を焼結する焼結工程とを含む。第2の手法は、第1の手法と異なり、PS-RBSN法の全工程を乾式で行うことを特徴としている。なお、焼結工程後、必要に応じて窒化ケイ素焼結体に対して研磨などを行ってもよい。
混合工程は、原料粉末を水および有機溶媒を使用せずに乾式で混合する工程である。また、この工程ではバインダ成分を用いずに混合することが好ましい。混合後の粉末の粒径は、特に限定されないが、D90が10μm以上100μm以下であることが好ましい。また、D50が2μm以上10μm以下であることが好ましい。D90および/またはD50が上記の範囲内であることにより、良好な流動性および成形性を発揮させつつ、緻密な窒化ケイ素焼結体を得ることができる。なお、D50およびD90は、それぞれ体積基準の累積50%径および累積90%径であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定などによって得られる。
続く成形工程で、混合粉を所定の形状に成形して圧粉体を得る。焼結工程は、得られた圧粉体を、例えば窒素雰囲気中で温度1200℃~1500℃で熱処理することにより窒化させる第1工程と、例えば窒素雰囲気中で1600℃~1950℃(好ましくは1600℃~1900℃)で熱処理することにより焼結させる第2工程とを有する。上記第1工程は、製造効率の向上の観点から、温度1200℃~1500℃の範囲内の温度において1時間以上、温度保持しないことが好ましい。具体的には、例えば1100℃程度の温度から所定の昇温速度で上記第2工程の焼結温度まで昇温させることで窒化させることが好ましい。上記昇温速度は、例えば2℃/min以上であり、2.5℃/min以上であってもよく、5℃/min以上であってもよい。また、上記昇温速度は例えば20℃/min以下であり、15℃/min以下が好ましい。
第2の手法は、第1の手法に比べて、以下のような効果が得られる。
PS-RBSN法で全工程を乾式で行うことで、例えば、水溶媒を用いた場合のケイ素粉末の酸化を防止することができ、またエタノールなどの有機溶媒による環境負荷を軽減できる。
PS-RBSN法で有機バインダを用いずに、窒化ケイ素焼結体を作製することで、焼結による収縮を小さくし、焼結体の寸法精度を向上できる。第1の手法の場合、造粒するために有機バインダなどを用いていることから、その後に脱脂工程が必要になるが、脱脂工程によって有機バインダが抜けた後には空隙が生じるため、焼結による収縮がその分大きくなるおそれがある。
また、収縮が小さくなることで、後続の研磨工程の研磨時間の短縮化などを図ることができる。
一般的に、従来のSi粉末を原料に用いる方法で緻密な焼結体を得るためには、微細なSi粉末(D50が1μm以下)を使用することが好ましい。このような微細な粉末は、流動性および成形性が劣るので、原料粉末とバインダ成分を水またはエタノールなどでスラリー化し、それをスプレードライなどで噴霧造粒乾燥することで造粒体を得る必要がある。しかし、PS-RBSN法では、窒化工程中にSi粉末が体積膨張による破断で微細化するので、緻密な焼結体を得るために、Si粉末のように微細な粉末を原料に用いる必要がない。原料粉末が微細でないため、造粒粉でなくても成形体を得るために必要な流動性および成形性を確保することができる。
上記第1の手法および第2の手法を含む、上記の窒化ケイ素焼結体の製造において、原料粉末に用いる焼結助剤としては、希土類元素や、アルミニウム元素、遷移金属元素を含むものを用いることが好ましく、これらの酸化物を含むことがより好ましい。希土類元素を含む焼結助剤としては、Y、CeO、Nd、およびEuのうちのいずれかを含むことが好ましい。アルミニウム元素を含む焼結助剤としては、Alを含むことが好ましい。遷移金属元素を含む焼結助剤としては、Cr、TiO、MnO、およびFeのうちのいずれかを含むことが好ましい。
原料粉末は、ケイ素粉末および焼結助剤以外に、窒化ケイ素粉末および/または有機バインダを含んでいてもよく、希土類元素、アルミニウム元素、および遷移金属元素以外の元素を含む焼結助剤を含んでいてもよい。
原料粉末に含まれるケイ素粉末の含有量は、ケイ素粉末、窒化ケイ素粉末、および焼結助剤の総重量に対して、65重量%以上であることが好ましく、67重量%以上であることがより好ましく、69重量%以上であることがさらに好ましく、71重量%以上であってもよく、80重量%以下であることが好ましく、78重量%以下であってもよく、76重量%以下であってもよい。原料粉末は窒化ケイ素粉末を含んでいてもよく、窒化ケイ素粉末を含んでいなくてもよい。
原料粉末に含まれる希土類元素を含む焼結助剤(例えば、希土類元素の酸化物)の含有量は、上記総重量に対して、10重量%以上であることが好ましく、11重量%以上であることがより好ましく、12重量%以上であることがさらに好ましく、13重量%以上であってもよい。希土類元素の上記含有量は、17.5重量%以下であってもよく、16.5重量%以下であってもよく、15.5重量%以下であってもよい。原料粉末に含まれるアルミニウム元素を含む焼結助剤(例えば、酸化アルミニウム)の含有量は、上記総重量に対して、10重量%以上であることが好ましく、11重量%以上であることがより好ましく、12重量%以上であることがさらに好ましく、13重量%以上であってもよい。アルミニウム元素の上記含有量は、17.5重量%以下であってもよく、16.5重量%以下であってもよく、15.5重量%以下であってもよい。原料粉末に含まれる焼結助剤の含有量が少ないと緻密な窒化ケイ素焼結体が得られにくく、焼結助剤の含有量が多いと窒化ケイ素焼結体の機械的特性が低下しやすい。
原料粉末に含まれるケイ素粉末の平均粒径は、例えば5μm以下とすることができる。窒化ケイ素を含む場合、その平均粒径は、例えば0.5μm以下とすることができる。焼結助剤の平均粒径は、焼結助剤の種類にもよるが、10μm以下であることが好ましく、7μm以下であってよく、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよく、2μm以下であってよく、1μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。なお、平均粒径は、体積基準の累積50%径であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定などによって得られる。
上述した第2の手法の一形態は、例えば、希土類元素およびアルミニウム元素を含む窒化ケイ素焼結体を製造する方法であって、ケイ素粉末と焼結助剤を含む原料粉末を乾式で混合する混合工程と、混合された上記原料粉末を圧粉体に成形する成形工程と、上記圧粉体を焼結する焼結工程とを有し、上記ケイ素粉末は上記原料粉末全体に対して65重量%以上含まれ、上記焼結工程において上記窒化ケイ素焼結体の結晶化度が75%以上、90%以下となる。
さらに、第2の手法の上記一形態は、以下の(1)~(5)の特徴を1つまたは2つ以上有していてもよい。
(1)上記混合工程は、バインダ成分を使用せずに上記原料粉末を混合する工程である。
(2)上記焼結工程は、1000℃~1200℃の範囲内の温度から焼結温度まで昇温させる過程において、1時間以上所定の温度を保持せずに、15℃/min以下の速度で昇温させる工程を含む。
(3)上記焼結温度が1600℃~1900℃の範囲である。
(4)上記焼結助剤は希土類酸化物と酸化アルミニウムを含み、上記原料粉末は、上記希土類酸化物を上記原料粉末全体に対して10重量%以上17.5重量%以下含み、上記酸化アルミニウムを上記原料粉末全体に対して10重量%以上17.5重量%以下含む。
(5)上記希土類酸化物が、Y、CeO、Nd、およびEuからなる群より選ばれる1種以上を含む。
例えば、原料粉末に、焼結助剤として、希土類酸化物を10重量%以上17.5重量%以下、酸化アルミニウムを10重量%以上17.5重量%以下添加することで、ケイ素の窒化およびその後の焼結を促進させることができる(上記(4))。ケイ素の窒化を促進させることで、一般に行われる窒素雰囲気中1100℃~1450℃で長時間の温度保持が必要にならず、エネルギー効率に優れる方法となる。
(窒化ケイ素焼結体の用途)
本実施形態の窒化ケイ素焼結体の用途は特に限定されないが、機械特性などに優れることから、機械部品として用いられることが好ましい。機械部品は、例えば、転がり部位や滑り部位に使用される。本発明の機械部品は、本発明の窒化ケイ素焼結体を構成の一部または全部に用いた部品である。機械部品としては、例えば、摺動部材、軸受部材、圧延用ロール材、コンプレッサ用ベーン、ガスタービン翼などのエンジン部品、切削工具(チップ)などが挙げられる。軸受部材としては、例えば、内外輪などの軌道輪、軸受用転動体、保持器などが挙げられる。本発明の軸受は、この機械部品を軸受部材の一部または全部として備える軸受であり、例えば、転がり軸受、滑り軸受(球面ブッシュなど)、直動案内軸受、ボールねじ、直動ベアリングなどが挙げられる。特に、本発明の軸受としては、上記窒化ケイ素焼結体を軸受用転動体に用いた転がり軸受であることが好ましい。
本実施形態の軸受の一例について図1に基づいて説明する。図1は深溝玉軸受の断面図である。転がり軸受1は、外周面に内輪軌道面2aを有する内輪2と内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間に複数個の玉(転動体)4が配置される。これら玉4が、上述した窒化ケイ素焼結体で形成されている。玉4は、保持器5により保持される。また、内・外輪の軸方向両端開口部8a、8bがシール部材6によりシールされ、少なくとも玉4の周囲にグリース組成物7が封入される。グリース組成物7が玉4との軌道面に介在して潤滑される。
本実施形態の軸受の他の例について図2に基づいて説明する。図2は、ボールねじを示す断面図である。図2に示すように、ボールねじは、案内部材であるねじ軸11の外周面に形成したねじ溝12と、ボールナット13の内周面に形成したねじ溝14の間に複数のボール15を介在させたものであり、ねじ軸11(またはボールナット13)の回転動力をボール15を介してボールナット13(またはねじ軸11)に伝達し、ボールナット13を軸方向に移動させるものである。図2において、ボール15が、上述した窒化ケイ素焼結体で形成され、ねじ軸11およびボールナット13が鋼(例えば、軸受鋼や低炭素鋼など)で形成されている。また、ねじ軸11とボールナット13との間でボール15の周囲にグリース組成物が封入され、ボールねじ用シール部材16によってシールされている。
図2に示すボールねじにおいて、ボールの循環方式は特に限定されず、チューブ式、リターンチューブ(パイプ)式、デフレクタ式、エンドデフレクタ式、エンドキャップ式、こま式などのいずれの循環方式を採用することができる。なお、いずれの循環方式でも循環路は、ボールの円滑な循環に大きく影響する。
ボールねじは、具体的には、モーターの回転運動を直動運動に変換するものとして用いられる。例えば、電動アクチュエーター、位置決め装置用、電動ジャッキ用、サーボシリンダ用、電動サーボプレス機用、メカニカルプレス装置用、電動ブレーキ装置用、トランスミッション用、電動パワーステアリング装置用、電動射出成形機用などにおいて好適に用いることができる。
ここで、ボールねじでは、耐摩耗性や靭性、高負荷容量などが要求される。近年では、小型化などを背景に、高荷重に耐え得る性能がより求められており、また、滑りや高荷重負荷により潤滑剤から発生する水素に起因する水素脆化の抑制なども求められている。図2の例では、ボールとして上述した窒化ケイ素焼結体を用いているので、これらの要求を満たしやすく、ボールの製品寿命にも優れる。
また、ボールねじにおいては、ボールねじを取り付ける際に取り付け誤差などによるミスアライメントが大きいと、こじり(すなわち、ねじ軸とナットとの間の相対的な傾き)が発生するおそれがある。そして、こじりによるモーメントがボールねじに作用すると、ナット内での負荷バランスが崩れ、部分的に接触面圧の上昇する箇所が生じて、寿命が低下するおそれがある。これに対して、ボールとして上述した窒化ケイ素焼結体を用いることで、ボールの循環性能を良好にでき、寿命の低下を抑制しやすくなる。
さらに、本実施形態の軸受の他の例について図3に基づいて説明する。図3は、球面滑り軸受の一例を示す断面図である。図3に示すように、球面滑り軸受21は、球状の外周面22bを有し、内周面22aに支持軸を貫挿できる軸受孔24が形成されている内輪22と、該外周面22bに対応する凹面23aを有する外輪23との組合せからなる。球面滑り軸受21では、内輪22および外輪23の少なくともいずれかが、上述した窒化ケイ素焼結体で形成されている。他方の部材の材質は、特に限定されず、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄鋼などの金属製や、合成樹脂製、上述した窒化ケイ素焼結体以外のセラミックス製とすることができる。
球面滑り軸受は、滑り部が球面でラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重が負荷できる自動調心形の滑り軸受である。球面滑り軸受は、揺動運動や調心運動などに適しており、産業機械や建設機械などの関節部などに使用されている。球面滑り軸受としては、無給油式(図3参照)と給油式のいずれも採用でき、例えば給油式の場合には、内輪および外輪に油穴および油溝が設けられる。なお、球面滑り軸受の取り付けにおいて、滑り面にはグリースが塗布されてもよい。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実施例1~7、比較例1~2>
表2に示す配合比で原料粉末を準備し、メディアとして窒化ケイ素ボールを用いて、ボールミルにより回転数200rpmで48時間乾式混合した。乾式混合の結果、混合粉末を得た。なお、混合粉末を得るために用いた材料の仕様を表1に示す。用いた材料の製造元はすべて、株式会社高純度化学研究所である。平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%径である。
Figure 2023109655000002
Figure 2023109655000003
得られた混合粉末を用い、ゴム型を用いた冷間等圧加圧法により、直径11mmの球状の圧粉体に成形した。この圧粉体を、1550℃から、2.5℃/minの昇温速度で温度1800℃まで昇温し、窒素雰囲気中(圧力:0.9MPa)、1800℃で4時間保持して窒化ケイ素焼結体を得た。
得られた窒化ケイ素焼結体中の各酸化物の組成比について、原料粉末に含まれるケイ素(金属シリコン)が全て窒化され、窒化ケイ素の重量はケイ素の重量の1.67倍になるものとして、原料粉末の組成比から算出した値を表3に示す。
Figure 2023109655000004
得られた球状の窒化ケイ素焼結体を、JIS B 1563に準拠し、G5になるまで球研磨し、3/8インチ(直径9.525mm)の球状の試験片を作製した。
<結晶化度の算出>
窒化ケイ素焼結体の結晶化度は、上述の鏡面研磨した切断面のXRD回析パターンに基づき、以下の式で求めた。
結晶化度(%)=結晶質のピーク面積/(結晶質のピーク面積+非結晶質のピーク面積)×100
<介在物(I)の最大径および空孔の最大径の測定>
実施例および比較例で得た試験片を、その中心を通る断面で切断して、切断面を鏡面研磨した。鏡面研磨した切断面を、株式会社キーエンス製「VHX5000」を用いて撮影し、その撮影画像を、三谷商事株式会社製「WinRoof」を用いて解析し、球状の試験片の表面から2mm以内の範囲に相当する領域である表層部に存在する介在物(I)の最大径および空孔の最大径を測定した。介在物(I)および空孔の径は、介在物(I)および空孔の包絡面積の平方根として求めた(介在物(I)および空孔の径=√(介在物(I)および空孔の包絡面積))。表層部に、径が50μm超の介在物(I)が存在しないものを「A」と評価し、存在するものを「B」として評価した。また、表層部に径が50μm超の空孔が存在しないものを「A」と評価し、存在するものを「B」として評価した。介在物(I)および空孔は、表層部に介在物(I)および空孔の全体が存在するものを測定対象とした。結果を表4に示す。
<転動疲労試験>
実施例および比較例で得た試験片を用い、軸受外輪、軸受内輪、および保持器としてNTN株式会社製「6206」を用いて、回転数を3000rpm、負荷荷重1.5GPa、試験時間を168時間として転動疲労試験を行い、製品寿命を評価した。潤滑油は、JXTGエネルギー株式会社製の無添加タービンオイル「VG56」を用いた。試験時間内に試験片が剥離しなかったものを「a」と評価し、剥離したものを「b」と評価した。結果を表4に示す。
Figure 2023109655000005
評価の結果、結晶化度が75%以上、90%以下である実施例1~7は、転動疲労試験の結果はすべて「a」であり、剥離耐性に優れることが分かった。なお、実施例1~7は、介在物の最大径および空孔の最大径ともに「A」であり、試験片の表層部に、径が50μm超の介在物(I)が存在せず、かつ、径が50μm超の空孔も存在しなかった。一方で、比較例1(結晶化度91%)、比較例2(結晶化度71%)は、転動疲労試験において剥離が発生した。なお、比較例2は、介在物の最大径および空孔の最大径ともに「A」であった。本結果より、実施例1~7の窒化ケイ素焼結体は、製品に加工した場合に良好な製品寿命を有すると考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の窒化ケイ素焼結体は、転がり軸受、直動案内軸受、ボールねじ、直動ベアリングなどの軸受の転動体に好適に用いることができる。
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
8a、8b 開口部
11 ねじ軸
12 ねじ溝
13 ボールナット
14 ねじ溝
15 ボール
16 ボールねじ用シール部材
21 球面滑り軸受
22 内輪
23 外輪
24 軸受孔

Claims (8)

  1. 結晶化度が75%以上、90%以下であることを特徴とする窒化ケイ素焼結体。
  2. 前記窒化ケイ素焼結体は、非結晶質相にY、Ce、Nd、およびEuからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素焼結体。
  3. 前記窒化ケイ素焼結体は、希土類元素およびアルミニウム元素を含み、
    前記希土類元素の含有量は、前記窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であり、
    前記アルミニウム元素の含有量は、前記窒化ケイ素焼結体の総重量に対して、酸化物換算で6重量%以上13重量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の窒化ケイ素焼結体。
  4. 前記窒化ケイ素焼結体の表面から2mm以内の領域である表層部に介在物(I)を有し、前記介在物(I)の最大径が50μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の窒化ケイ素焼結体。
  5. 前記窒化ケイ素焼結体の表面から2mm以内の領域である表層部に空孔を有し、該空孔の最大径が50μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の窒化ケイ素焼結体。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の窒化ケイ素焼結体を用いたことを特徴とする機械部品。
  7. 前記機械部品は、転動体であることを特徴とする請求項6記載の機械部品。
  8. 請求項7記載の転動体を用いたことを特徴とする軸受。
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