JP2023122778A - 含フッ素共重合体および皮革処理組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含まず、炭化水素系溶剤への溶解性を示し、優れた初期撥水性と撥水持続性を付与可能な、含フッ素共重合体および皮革処理組成物を提供する。【解決手段】含フッ素共重合体は、(A)式(1)の含フッ素単量体由来の構成単位および(B)非フッ素単量体由来の構成単位を含む。(B)が、(B-1)環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、(B-2)直鎖状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、(B-3)分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、および(B-4)式(2)の(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を含む。【選択図】 なし

Description

本発明は、被処理物に撥水性を付与可能な含フッ素共重合体に関する。
フッ素樹脂は、様々な被処理物に対して撥水性を付与することが可能である。例えば、パーフルオロアルキル基を有する含フッ素共重合体を利用することによって、繊維、皮革、紙等に撥水性を付与することができる。
しかしながら、近年、難分解性および高蓄積性を示すことから規制物質となったパーフルオロオクチルスルホン酸(PFOS)と構造が類似するパーフルオロオクタン酸(PFOA)、およびこの類似物質、前駆体についても全廃することが、米国環境保護庁(US EPA)から提案されている。このため、炭素数が8のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体の、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体への代替が進められている。
パーフルオロアルキル基を有する含フッ素共重合体による撥水性は、パーフルオロアルキル基の末端トリフルオロメチル基が表面に配列した場合に最も優れる。しかしながら、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下になると、炭素数が8のパーフルオロアルキル基を有する化合物と比較し、結晶性が低く、分子運動性が高い。そのため、トリフルオロメチル基の配列が崩れやすく、撥水性が発現しにくいという問題がある。
また含フッ素共重合体により撥水性を付与する際は、通常、溶剤に溶解させた組成物として用いられる。その際、溶剤は被処理物の材質への影響を考慮し、極性溶剤よりも低極性溶剤が用いられる場合がある。
そのような中で、特許文献1では、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を含む含フッ素(メタ)アクリル酸エステル単量体と、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体を含む表面処理組成物が低極性溶剤である炭化水素系溶剤に溶解し、高い撥水性を示すことが開示されている。
特開2011-99077号公報
撥水性の付与が要求される衣類や革製の製品等では、使用時に撥水性が長期的に持続することが求められる。しかしながら、上記の特許文献1で示された含フッ素共重合体は、初期は高い撥水性を示すが、被処理物が屈曲のような物理的な作用を繰り返し受けた場合に撥水性が持続しにくいことが分かった。
以上のような事情に鑑み、本発明の課題は、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含まず、炭化水素系溶剤への溶解性を示し、優れた初期撥水性と撥水持続性を付与可能な、含フッ素共重合体および皮革処理組成物を提供することにある。
本発明は[1]および[2]に係わるものである。
[1] (A)下記式(1)で表される含フッ素単量体由来の構成単位および(B)非フッ素単量体由来の構成単位を含む含フッ素共重合体であって、
(B)非フッ素単量体由来の構成単位が、
(B-1)炭素数3~20の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、
(B-2)炭素数10~30の直鎖状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、
(B-3)炭素数10~30の分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、および
(B-4)下記式(2)で表される(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を含み、
前記含フッ素共重合体において、(A)含フッ素単量体由来の構成単位と(B)非フッ素単量体由来の構成単位の質量比((A)/(B))が40/60~70/30であり、
(B)非フッ素単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、
前記構成単位(B-1)の質量が25~65質量部であり、前記構成単位(B-2)の質量が10~25質量部であり、前記構成単位(B-3)の質量が5~50質量部であり、前記構成単位(B-4)の質量が1~10質量部であることを特徴とする、含フッ素共重合体。

Figure 2023122778000001
(式(1)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
mは0~4の整数であり、
nは0~5の整数である。)

Figure 2023122778000002
(式(2)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
は水素原子、メチル基または(メタ)アクリロイル基を示し、
lは9~25の整数である。)

[2] 皮革を処理するための組成物であって、
脂肪族炭化水素、および
[1]の含フッ素共重合体を含有することを特徴とする、皮革処理組成物。
本発明によれば、炭化水素系溶剤への溶解性を示し、被処理物に優れた撥水持続性を付与可能な含フッ素共重合体および皮革処理組成物を提供することができる。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
[含フッ素共重合体]
本発明に係る含フッ素共重合体は、(A)式(1)で表される含フッ素単量体由来の構成単位と、(B)非フッ素単量体由来の構成単位を含む含フッ素共重合体である。なお、(B)非フッ素単量体由来の構成単位は、(B-1)炭素数3~20の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位と、(B-2)炭素数10~30の直鎖状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位と、(B-3)炭素数10~30の分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位と、(B-4)式(2)で表される(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位とを含むことを特徴とする。
<(A)含フッ素単量体>
(A)含フッ素単量体は、式(1)で表される含フッ素単量体である。式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を示し、mは0~4の整数、nは0~5の整数である。好ましくはmは1~2であり、nは3~5である。
(A)含フッ素単量体で表される化合物の具体例としては、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロヘキシル)ブチル(メタ)アクリレート、2,2,2トリフルオロエチル(メタ)アクリレ-トなどが挙げられる。好ましくは、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレートであるが、初期撥水性を高められる点から2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートがより好ましい。なお、(A)含フッ素単量体は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
<(B-1)環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体>
環状炭化水素基としては、飽和又は不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。また、この環状炭化水素基の炭素数は3~20であるが、6以上が好ましく、また、10以下が好ましい。
(B-1)炭素数3~20の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、初期撥水性を高められる点からシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、(B-1)シクロアルキル基含有単量体は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。含フッ素共重合体がこれらの単量体由来の構成単位を有することで、初期撥水性に優れる被膜を形成できる。
<(B-2)直鎖状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体>
直鎖状の炭化水素基の炭素数は、10以上とするが、12以上とすることが好ましい。また、直鎖状の炭化水素基の炭素数は、30以下とするが、22以下であることが好ましい。
(B-2)直鎖状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、炭化水素溶剤への溶解性を高められる点から、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(B-2)直鎖状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
<(B-3)分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体>
分岐状の炭化水素基の炭素数は、10以上とするが、12以上が好ましい。また、分岐状の炭化水素基の炭素数は、30以下とするが、22以下であることが好ましい。
(B-3)分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、被処理物への追随性が優れる被膜を形成でき、撥水持続性を高められる点から、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(B-3)分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
<(B-4)式(2)で表される(メタ)アクリレート単量体>
(B-4)は、式(2)で表される(メタ)アクリレート単量体である。式(2)において、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示し、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基または(メタ)アクリロイル基を示し、lは9~25の整数である。
含フッ素共重合体中の(B-4)式(2)で表される(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位により、親水性の高い被処理物の表面であっても含フッ素共重合体の均一な被膜を形成できる。lが9よりも小さい場合、親水性の高い被処理物では含フッ素共重合体の被膜が不均一となりやすく、撥水性が低下する傾向にある。一方、lが25よりも大きい場合、含フッ素共重合体の親水性が高まりすぎるため、撥水性の低下や炭化水素溶剤への溶解性が低下する傾向にある。より均一性の高い被膜が形成しやすい点から、Rは(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。またlは、12~18であることが好ましい。
式(2)で表される化合物の具体例としては、lが9~25の整数であるポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。lが12~18の整数であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
<組成比率>
含フッ素共重合体において、(A)含フッ素単量体由来の構成単位と、(B)非フッ素単量体由来の構成単位の質量比を(A)/(B)とした時、40/60~70/30の範囲とするが、50/50~70/30が好ましい。当該範囲の40/60より(A)含フッ素単量体由来の構成単位の含有量が小さい場合は、撥水性が低下する。一方、70/30より(A)含フッ素単量体由来の構成単位の含有量が大きい場合は、含フッ素共重合体が炭化水素溶剤への溶解性が著しく低下する傾向にある。
(B)非フッ素単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、構成単位(B-1)の量を25~65質量部、構成単位(B-2)の量を10~25質量部、構成単位(B-3)の量を5~50質量部、構成単位(B-4)の量を1~10質量部とする。
構成単位(B-1)の含有量が25質量部よりも小さい場合、フッ素共重合体のパーフルオロアルキル基の配向が保持されにくく、撥水性が低下する傾向にあるので、25質量部以上とするが、撥水持続性の観点からは、35重量部以上とすることが好ましく、40質量部以上が更に好ましい。
構成単位(B-2)の含有量が10質量部よりも小さい場合、炭化水素溶剤への溶解性が低下する傾向にあるので、10質量部以上とする。
構成単位(B-3)の含有量が5質量部よりも小さい場合、撥水性の持続性が低下する傾向にあるので、5質量部以上とするが、15質量部以上とすることが好ましい。また、構成単位(B-3)の量が50質量部よりも大きい場合、撥水性が低下する傾向にあるので、50質量部以下とするが、40質量部以下が更に好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
構成単位(B-4)の含有量が1質量部よりも小さい場合、親水性の高い被処理物では含フッ素共重合体の被膜が不均一となりやすく、撥水性が低下する傾向にあるので、1質量部以上とするが、2質量部以上が好ましく、3質量部以上が更に好ましい。また、構成単位(B-4)の含有量が10質量部よりも大きい場合、炭化水素溶剤への溶解性が低下する傾向にあるので、10質量部以下とするが、8質量部以下が好ましく、7質量部以下が特に好ましい。
含フッ素共重合体には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、(A)含フッ素単量体由来の構成単位、(B-1)炭素数3~20の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、(B-2)炭素数10~30の直鎖状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、(B-3)炭素数10~30の分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位および(B-4)式(2)で表される(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位に加えて、(C)その他の単量体由来の構成単位を含有してもよい。含フッ素共重合体における(C)その他の単量体由来の構成単位の含有量は、含フッ素共重合体において、重合させる単量体の全量を100質量部とした場合、10質量部以下とするが、5質量部以下とすることが好ましい。
構成単位(C)をもたらす単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
<重量平均分子量>
本発明の含フッ素共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000~300,000の範囲とすることが好ましいが、炭化水素溶剤への溶解性と撥水性のバランスを考慮すると、10,000~200,000の範囲であることが好ましく、30,000~100,000の範囲であることがより好ましい。
本発明の含フッ素共重合体は、被処理物に対して撥水性を付与するために用いることができる。含フッ素共重合体を適用可能な被処理物としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等の合成繊維、これらの混合繊維及びこれらによる布地、衣料、靴、その他、ガラス繊維、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、レンガ、セメント、金属、プラスチック等が挙げられる。その中でも、皮革に対して特に高い効果が発現する。
皮革の材料としては牛、豚、馬、羊、山羊、ワニ、ヘビなどが挙げられる。また、これらの皮革材料による皮革製品が、スエード、ヌバック等の起毛加工が施されていてもよい。
<含フッ素共重合体の重合方法>
上記した含フッ素共重合体の重合方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができるが、溶液重合を行うことが好ましい。
溶液重合による重合方法では、重合開始剤存在下、各種単量体を任意の溶剤に溶解させ、窒素置換後、加熱攪拌することで含フッ素共重合体が重合できる。
本発明の含フッ素共重合体は、上記の(A)含フッ素単量体由来の構成単位および(B)非フッ素単量体由来の構成単位、(C)その他単量体由来の構成単位の配列は、特に制限されず、ランダム、ブロック、グラフトなどのいずれでもよい。
重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等を用いることができる。重合開始剤の具体例としては、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
<皮革処理組成物>
得られた含フッ素共重合体は、下記に示す溶剤に溶解または、分散させたもの、あるいは界面活性剤等を添加して水に分散させたエマルションとして使用できる。また、微粉末状にしても使用できる。
含フッ素共重合体を用いた処理方法は、スプレーコート、バーコート、ディップコート等の一般的な方法により行うことができる。
含フッ素共重合体を下記に示す溶剤に溶解または、分散させる際は、皮革処理組成物を100質量部とした場合、含フッ素共重合体の含有量を、0.1~10質量部とすることが好ましく、1~10質量部とすることがより好ましい。含フッ素共重合体の含有量が10質量部より大きい場合には、被処理物の風合いや、外観が低下する傾向にある
重合溶媒および希釈溶剤としては、含フッ素共重合体を溶解または、分散できる溶剤であれば特に制限はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
特に皮革に対して撥水処理を施す場合の含フッ素共重合体を溶解または、分散させる溶剤としては、皮革製品の風合い低下を防げる点から、脂肪族炭化水素溶剤であることが好ましく、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤であることがより好ましく、n-ヘプタン、シクロヘキサン、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤であることが更に好ましい。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
最初に実施例1~10に係る含フッ素共重合体の製造例について説明する。
(実施例1)
はじめに、温度計、撹拌機及び還流冷却管を備えた500mLの4つ口フラスコに、n-ヘプタン150gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した。次に2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート〈FMAC6〉40g、シクロヘキシルメタクリレート〈CHMA〉38g、ステアリルメタクリレート〈SMA〉8.0g、イソステアリルメタクリレート〈ISMA〉12g、PDE600(日油株式会社製、ポリエチレングリコールジメタクリレート(l=14))2.0gとn-ヘプタン71gからなる単量体溶液とパーヘキシルND(日油株式会社製、tert-ヘキシルパーオキシネオデカネート)2.0gとn-ヘプタン10gからなる重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。反応容器内を55℃まで昇温し、単量体溶液および重合開始剤溶液を同時にそれぞれ2時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で5時間反応させた後、70℃に昇温し、さらに2時間反応させることで、含フッ素共重合体を含む溶液を得た。
(実施例2~10)
実施例2~10では、単量体を表1、表2に記載の種類または量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で含フッ素共重合体を製造した。
(比較例1~6)
比較例1~6では、単量体を表3に記載の種類または量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で含フッ素共重合体を製造した。
実施例1~10、比較例1~6で得られた含フッ素共重合体の重量平均分子量を測定した。具体的には、GPCシステムとしてTOSOH HLC-8320GPCを用い、カラムとしてTOSOH TSKgel Super Multipore HZ-Mを2本と、TOSOH TSKgel Super H-RCを1本連続装着し、カラム温度を40℃とし、基準物質をポリスチレンとし、展開溶剤をテトラヒドロフランとし、展開溶剤は、1ml/分の流速で流し、サンプル濃度0.1質量%のサンプル溶液0.1mlを注入し、EcoSEC-Work Station GPC計算プログラムを用いて測定した
(試験片の作製)
上記の各実施例及び各比較例に係る含フッ素共重合体の溶液をn-ヘプタンで希釈して濃度2.0質量%の溶液(皮革処理組成物)を調製した。調製した含フッ素共重合体の各溶液を、スプレーガンを用いて、ホースヌメ革にスプレー噴霧することで塗布し、その後、試験片を室温下で1時間以上乾燥させた。撥水持続性の評価には、実使用時を想定し、試験片を屈曲させた後の撥水性について評価した。屈曲させた試験片は、フレキシオメーターを用いて、屈曲角度22.5°、屈曲速度100回/分で1万回屈曲させることで作製した。
(含フッ素共重合体の溶解性)
上記の濃度2.0質量%に調製した溶液の外観について目視にて観察し、下記の基準により、評価した。

○:不溶成分がない
×:不溶成分がある
(初期撥水性および撥水持続性)
各試験片の初期撥水性および撥水持続性は、JIS L 1092の試験方法により評価した。試験機にはスプレー・テスター AW-5(インテック株式会社製)を用いた。試験片を試験機に取り付け、250mLの水を散布した。散布後の試験片の撥水度を以下に示す基準により評価した。撥水度は数値が高いほど、撥水性が良好であることを示し、屈曲前および屈曲後の試験片ともに撥水度が4級以上を合格とした。
ただし、屈曲前の試験片の撥水度を「初期撥水性」とし、屈曲後の試験片の撥水度を「撥水持続性」とする。

5級:表面に湿潤および水滴の付着がないもの
4級:表面にわずかに水滴の付着を示すもの
3級:表面に部分的な湿潤を示すもの
2級:表面の半分に湿潤を示しもの
1級:表面全体に湿潤を示すもの
[評価結果]
表1、表2は実施例1~10の評価結果を示し、表3は比較例1~6の評価結果を示している。
Figure 2023122778000003

Figure 2023122778000004

FMAC6: 2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
CHMA: シクロヘキシルメタクリレート
IBOMA: イソボルニルメタクリレート
SMA: ステアリルメタクリレート
SA: ステアリルアクリレート
ISMA: イソステアリルメタクリレート
ISA: イソステアリルアクリレート
PDE400:ポリエチレングリコールジメタクリレート(l=9)
PDE600:ポリエチレングリコールジメタクリレート(l=14)
PDE1000:ポリエチレングリコールジメタクリレート(l=23)PME550:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(l=13)
Figure 2023122778000005

FMAC6: 2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
CHMA: シクロヘキシルメタクリレート
SMA: ステアリルメタクリレート
ISMA: イソステアリルメタクリレート
PDE600:ポリエチレングリコールジメタクリレート(l=14)
表1、表2の結果から明らかなように、実施例1~10は、いずれも炭化水素溶剤への溶解性および撥水持続性に優れていた。
一方、表3から明らかなように、比較例1~6では、これらの性能のバランスが不十分であった。
具体的には、比較例1では、単量体(B-1)由来の構成単位が過少であるため、撥水性、撥水持続性が劣っていた。
比較例2では、単量体(B-3)由来の構成単位が過少であるため、屈曲後の撥水性、撥水持続性が劣っていた。
比較例3では、単量体(B-3)由来の構成単位が過大であるため、撥水性、撥水持続性が劣っていた。
比較例4では、単量体(B-4)由来の構成単位の比率が過大であるため、含フッ素共重合体が炭化水素溶剤に不溶であった。
比較例5では、単量体(A)由来の構成単位の比率が過小であるため、撥水性、撥水持続性が劣っていた。
比較例6では、単量体(A)由来の構成単位の比率が過大であるため、含フッ素共重合体が炭化水素溶剤に不溶であった。

Claims (2)

  1. (A)下記式(1)で表される含フッ素単量体由来の構成単位および(B)非フッ素単量体由来の構成単位を含む含フッ素共重合体であって、
    (B)非フッ素単量体由来の構成単位が、
    (B-1)炭素数3~20の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、
    (B-2)炭素数10~30の直鎖状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、
    (B-3)炭素数10~30の分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位、および
    (B-4)下記式(2)で表される(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を含み、
    前記含フッ素共重合体において、(A)含フッ素単量体由来の構成単位と(B)非フッ素単量体由来の構成単位の質量比((A)/(B))が40/60~70/30であり、
    (B)非フッ素単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、
    前記構成単位(B-1)の質量が25~65質量部であり、前記構成単位(B-2)の質量が10~25質量部であり、前記構成単位(B-3)の質量が5~50質量部であり、前記構成単位(B-4)の質量が1~10質量部であることを特徴とする、含フッ素共重合体。
    Figure 2023122778000006
    (式(1)中、
    は水素原子またはメチル基を示し、
    mは0~4の整数であり、
    nは0~5の整数である。)

    Figure 2023122778000007
    (式(2)中、
    は水素原子またはメチル基を示し、
    は水素原子、メチル基または(メタ)アクリロイル基を示し、
    lは9~25の整数である。)
  2. 皮革を処理するための組成物であって、
    脂肪族炭化水素、および
    請求項1記載の含フッ素共重合体を含有することを特徴とする、皮革処理組成物。
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