JP2023122417A - プロピレン系重合体組成物及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れ、割れない成形品を与えるプロピレン系重合体組成物を提供する。【解決手段】プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)、並びにプロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体(C)を所定の割合で含有するプロピレン系重合体組成物。プロピレン系重合体(A)のメルトフローレートは0.5~100g/10分であり;ポリエチレン(B)は、メルトフローレートが0.05~80g/10分であり、かつ、密度が0.920~0.965g/cm3であり;ランダム共重合体(C)のメルトフローレートは0.5~80g/10分であり;前記組成物のメルトフローレートは0.07~95g/10分である。【選択図】なし

Description

本発明は、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れる成形品を与えるプロピレン系重合体組成物に関する。さらに、ポリエチレンを含有しても滑り性に優れ、割れない成形品を与えるプロピレン系重合体組成物に関する。本発明において、「割れる」とは、力が加えられた場合、いくつかの部分に分かれることを意味する。また、「割れない」とは、力が加えられた場合、次のいずれかを意味する。
(1)割れ目(裂け目、クラック)ができずに、いくつかの部分に分かれない。
(2)割れ目(裂け目、クラック)ができるが、いくつかの部分に分かれない。
プロピレン系樹脂は、剛性、耐熱性、成形性、透明性及び耐薬品性に優れるという特徴により、各種工業材料、自動車関連部品、医療向けや化粧品向け等の各種容器、日用品、フィルム及び繊維等、様々な用途に幅広く使用されている。
このうち、化粧品容器においては、化粧品の長期保存に耐え得るような特性や、機械的な物性面での特性が求められている(例えば、特許文献1を参照)。なかでも、製品が落下した際に割れない特性(耐衝撃性)は、重要である。さらに、化粧品容器は、キャップ等の嵌合製品もあり、滑り性(摺動性)が要求される場合がある。滑り性があることで容器の表面に傷がつきにくくなることも期待できる。
一方、化粧品容器においては、イメージ商品としての側面もあることから、消費者に訴えるような外観、特に美観及び高級感を有していることが重要である。例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂製成形物において、美しい艶消し感等の付与を目的として、架橋ポリスチレンビーズ等を配合することが知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、容器の滑り性改善のために、合成樹脂製成形物に滑剤を配合することが知られている(例えば、特許文献3を参照)。しかしながら、高級感を出すために、容器に印刷を施したりする場合、架橋ビーズ等のアンチブロッキング剤又は滑剤が容器の材質に添加されていると、印刷適性が悪くなるという問題があった。また、滑剤が成形品表面にブリードすることで外観を損ねるという問題があった。
特開2020-182831号公報 特願昭63-297430号公報 特開2009-120798号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の状況において、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れ、割れない成形品を与えるプロピレン系重合体組成物を提供することにある。
本発明者は、鋭意検討を行い、特定のプロピレン系重合体組成物を用いることで、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れ、割れない成形品を与えるプロピレン系重合体組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のプロピレン系重合体組成物及びその成形品である。
[1]プロピレン単独重合体(a-1);プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が30重量%未満であるブロック共重合体(a-2);並びにプロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3重量%未満であるランダム共重合体(a-3)からなる群より選択されるプロピレン系重合体(A);ポリエチレン(B);並びに、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3~17重量%であるランダム共重合体(C);を含有するプロピレン系重合体組成物であって、
プロピレン系重合体(A)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分であり、
ポリエチレン(B)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.05~80g/10分であり、かつ、密度が0.920~0.965g/cmであり、
ランダム共重合体(C)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~80g/10分であり、
前記組成物は、プロピレン系重合体(A)15~85重量部及びポリエチレン(B)85~15重量部の合計100重量部に、ランダム共重合体(C)5重量部以上50重量部以下を含有し、
前記組成物は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.07~95g/10分である、プロピレン系重合体組成物。
[2]前記プロピレン系重合体組成物を成形温度200℃、金型温度40℃で、厚さ1mmに射出成形した試験片について、23℃50%RH下で24時間保管後、同環境下で、20mm四方の平面圧子を用い、総荷重200g、移動速度150mm/分で測定した2つの試験片間の動摩擦係数が0.7以下である、[1]に記載のプロピレン系重合体組成物。
[3]エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種が、エチレン又は1-ブテンである、[1]又は[2]に記載のプロピレン系重合体組成物。
[4]エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種が、エチレンである、[1]~[3]のいずれか1つに記載のプロピレン系重合体組成物。
[5]前記組成物が、滑剤及びアンチブロッキング剤を実質的に含有しない、[1]~[4]のいずれか1つに記載のプロピレン系重合体組成物。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載のプロピレン系重合体組成物を含む成形品。
[7]化粧品容器用である、[6]に記載の成形品。
[8]自動車関連部品用である、[6]に記載の成形品。
本発明のプロピレン系重合体組成物を用いて製造した成形品は、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れ、割れないため有用である。特に射出成形品は、非常に有用である。
図1は、120mm×120mm×2mmの射出試験片に切り込みを入れて実施するMD及びTD方向の割れ試験の図である。 図2は、実施例で使用したプロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)の温度昇温溶離分別(TREF)測定における溶出量及び溶出量積算を示す図である。
本発明のプロピレン系重合体組成物は、プロピレン単独重合体(a-1);プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が30重量%未満であるブロック共重合体(a-2);並びにプロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3重量%未満であるランダム共重合体(a-3)からなる群より選択されるプロピレン系重合体(A);ポリエチレン(B);並びに、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3~17重量%であるランダム共重合体(C);を含有する。プロピレン系重合体(A)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分であり;ポリエチレン(B)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.05~80g/10分であり、かつ、密度が0.920~0.965g/cmであり;ランダム共重合体(C)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~80g/10分である。そして、前記組成物は、プロピレン系重合体(A)15~85重量部及びポリエチレン(B)85~15重量部の合計100重量部に、ランダム共重合体(C)5重量部以上50重量部以下を含有し;前記組成物は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.07~95g/10分である。
プロピレン系重合体組成物は、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れ、割れない成形品を与えることができる。さらに、プロピレン系重合体組成物は、ポリエチレン(B)を含有しても、滑り性に優れ、割れない成形品を与えることができる。
<プロピレン系重合体(A)>
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体(a-1);プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が30重量%未満であるブロック共重合体(a-2)(以下、ブロック共重合体(a-2)ともいう。);並びにプロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3重量%未満であるランダム共重合体(a-3)(以下、ランダム共重合体(a-3)ともいう。)からなる群より選択される。プロピレン系重合体組成物がプロピレン系重合体(A)を含むことにより、剛性を高くしたり、耐衝撃性を高くすることができる。
プロピレン系重合体(A)は、成形品の剛性の観点ではプロピレン単独重合体(a-1)が好ましく、製品落下等の割れに対する耐衝撃性の点ではブロック共重合体(a-2)が好ましく、発色性に関連する透明性の観点ではランダム共重合体(a-3)が好ましい。プロピレン系重合体(A)は、(a-1)~(a-3)のいずれか1種であっても、これらの2種以上の混合物であってもよい。
ブロック共重合体(a-2)は、一般的に、海島構造を有する。海島構造は、電子顕微鏡観察で確認することができる。ブロック共重合体(a-2)が多段重合体である場合、2段目の重合におけるエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種の含有量が所定の割合、例えば20重量%付近になると、海島構造を形成し、透明性が極端に悪くなる傾向がある。
一方、ランダム共重合体(a-3)は、海島構造を形成しないため、透明性に優れる。
[プロピレン単独重合体(a-1)]
得られる成形品の剛性の観点から、プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体(a-1)であると好ましい。プロピレン単独重合体(a-1)において、立体規則性の指標であるアイソタクチックペンタッド分率は0.90以上が好ましく、より好ましくは0.94~0.98である。アイソタクチックペンタッド分率が0.90以上であると、成形品の剛性が向上する。ここで、アイソタクチックペンタッド分率は、13C-NMRを用いたプロトンデカップリング法で測定する値である。プロピレン単独重合体(a-1)は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
[ブロック共重合体(a-2)]
ブロック共重合体(a-2)は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種との共重合体であり、プロピレンの重合部分がブロックを構成する。プロピレン系重合体組成物がブロック共重合体(a-2)を含むことにより、成形品の耐衝撃性を向上させ、割れを抑制することができる。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を例示できる。プロピレンと共重合されるエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種は、一種類でも二種類以上であってもよい。このうち、エチレン及び1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。ブロック共重合体(a-2)は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
ブロック共重合体(a-2)の具体的な例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等のような、プロピレンに共単量体を任意に組み合わせた二元又は三元共重合体が例示できる。なかでも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
成形品の剛性の観点から、ブロック共重合体(a-2)において、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、30重量%未満であり、3~25重量%であることが好ましく、5~20重量%であることがより好ましい。
ブロック共重合体(a-2)は、多段重合体であることができる。例えば、二段重合体の場合、得られる成形品の剛性及び耐衝撃性のバランスの観点から、1段目は、ポリプロピレン単独重合体、又は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が2重量%以下であるランダム共重合体であり;2段目は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が20~80重量%、好ましくは30~70重量%であるランダム共重合体が好ましい。
前記ランダム共重合体を構成するエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンとしては、エチレン及び1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。
同様の理由で、多段階で重合させて製造する多段重合体であるブロック共重合体(a-2)の二段階以降のエチレンの含有量は、20重量%以上であることが好ましい。
[ランダム共重合体(a-3)]
ランダム共重合体(a-3)は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種との共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3重量%未満である。プロピレン系重合体組成物がランダム共重合体(a-3)を含むことにより、成形品の透明性、つまり、着色時の発色性を向上させることができる。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を例示できる。プロピレンと共重合されるエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種は、一種類でも二種類以上であってもよい。このうち、エチレン及び1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。ランダム共重合体(a-3)は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
ランダム共重合体(a-3)の具体的な例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等のような、プロピレンに共単量体を任意に組み合わせた二元又は三元共重合体が例示できる。なかでも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
透明性の観点から、ランダム共重合体(a-3)において、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、3重量%未満であり、0.5~2.5重量%であることが好ましく、1.0~2.0重量%であることがより好ましい。
ランダム共重合体(a-3)は、多段重合体であることができる。例えば、二段重合体の場合、剛性の観点から、1段目は、ポリプロピレン単独重合体、又は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上の含有量が3重量%以下であるランダム共重合体であり;2段目は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上の含有量が20重量%以下であるランダム共重合体が好ましい。
前記ランダム共重合体を構成するエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンとしては、エチン及び1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。
<<プロピレン系重合体(A)の物性>>
プロピレン系重合体(A)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分であり、5~60g/10分であると好ましく、10~40g/10分であるとより好ましい。メルトフローレートが0.5g/10分以上であると、成形加工性が向上し、成形品として満足できる性能を達成でき、100g/10分以下であると、成形品の機械的強度が向上する。
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、重合条件である温度及び圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法における水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
プロピレン系重合体(A)において、プロピレン並びにエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの各含有量は、下記の条件の13C-NMR法によって計測することができる。
装置:日本電子(株)製 JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
また、プロピレン-エチレン共重合体の場合、プロピレン及びエチレンの含有量は、実施例に記載のとおり、13C-NMR法により組成を検定した基準物質を用いて、赤外分光法により作成した検量線に基づき、赤外分光法によって計測することができる。
<<プロピレン系重合体(A)の触媒>>
プロピレン系重合体(A)の合成に用いる触媒としては、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用することが好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分と;アルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、さらにそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
メタロセン触媒としては、担持型のものが好ましい。
担持型メタロセン触媒の特に好ましい例としては、担体が助触媒の機能を兼ねたイオン交換性層状珪酸塩であるメタロセン触媒が挙げられる。このようなメタロセン触媒は、具体的には、以下に述べる成分[A]、成分[B]及び必要に応じて添加される成分[C]を組み合わせて得られる。
・成分[A]:メタロセン錯体
共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期表第4~6族の遷移金属化合物
・成分[B]:助触媒
イオン交換性層状珪酸塩
・成分[C]:有機アルミニウム化合物
・成分[A]:メタロセン錯体
上記の成分[A]としては、具体的には、次の式[I]で表される化合物を使用することができる。成分[A]は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
Q(C4-a )(C4-b )MXY ・・・[I]
式[I]において、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を表す。
Mは、周期表第4~6族の遷移金属を表し、中でもチタン、ジルコニウム及びハフニウムが好ましい。
X及びYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の酸素含有炭化水素基、炭素数1~20の窒素含有炭化水素基、炭素数1~20のリン含有炭化水素基又は炭素数1~20の珪素含有炭化水素基を示す。
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン、炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR又は2個のRがそれぞれ結合してC~C10環を形成していてもよい。特に、6員環又は7員環を形成して、上記共役五員環と共に、インデン環又はアズレン環を形成することが好ましい。
a及びbは、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Qは、例として、アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。特には、シリレン基が好ましい。
メタロセン錯体として、具体的には次の化合物を好ましく挙げることができる。
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5-ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(5)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(6)エチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(7)エチレン1,2-ビス(4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(14)メチルフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド
(15)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド
(16)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(17)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(18)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(19)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(20)ジフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(21)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(22)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(23)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物等の他の第4、5及び6族遷移金属化合物についても上記と同様の化合物が好ましく挙げられる。本発明の触媒成分及び触媒については、これらの化合物を併用してもよい。
・成分[B]:助触媒(イオン交換性層状珪酸塩)
イオン交換性層状珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。イオン交換性層状珪酸塩として粘土化合物を使用することができ、粘土化合物の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
(ア)1:1型構造が主要な構成層であるディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族
(イ)2:1型構造が主要な構成層であるモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群
本発明で使用する珪酸塩は、上記(ア)及び(イ)の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。
本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがさらに好ましく、モンモリロナイトであることが特に好ましい。主成分とは最も多い成分を意味する。成分[B]は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
これら珪酸塩を酸、塩、アルカリ、酸化剤、還元剤、有機溶剤等で化学処理することにより活性向上を図ることができる。
酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の表面の不純物を除く、又は層間陽イオンの交換を行うほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸が挙げられるが、特に好ましくは硫酸である。
酸処理条件に特に制限はないが、好ましくは5~50重量%の酸の水溶液を60~100℃の温度で1~24時間反応させるような条件であり、その途中で酸の濃度を変化させてもよい。酸処理した後、通常洗浄が行われる。洗浄とは処理系内に含まれる酸をイオン交換性層状珪酸塩から分離除去する操作である。
塩類処理で用いられる塩類としては、特定の陽イオンを含有するものを選択して使用することが好ましい。陽イオンの種類については1から4価の金属陽イオンが好ましく、特にLi、Ni、Zn及びHfの陽イオンが好ましい。
具体的な塩類としては、次のものを例示することができる。
陽イオンがLiのものとしては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、Li(ClO)、Li(C)、LiNO、Li(OOCCH)、Li(C)等を挙げることができる。
陽イオンがNiのものとしては、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等を挙げることができる。
陽イオンがZnのものとしては、Zn(OOCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnI等を挙げることができる。
陽イオンがHfのものとしては、Hf(OOCCH、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfOCl、HfF、HfCl、HfBr、HfI等を挙げることができる。
化学処理後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は100~800℃で実施可能であり、構造破壊を生じるような高温条件(加熱時間にもよるが、例えば800℃以上)は好ましくない。構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分~24時間、好ましくは5分~4時間であり、雰囲気は乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下である。乾燥方法に関しては特に限定されず各種方法で実施可能である。
・成分[C]:有機アルミニウム化合物
成分[C]の有機アルミニウム化合物は、必要に応じて任意的に使用される成分であり、下記式[II]で示される化合物が最適である。
(AlR 3-p・・・[II]
式[II]中、Rは、炭素数1~20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を示す。pは1~3の整数、qは1~2の整数である。
としては、アルキル基が好ましく、またXは、それがアルコキシ基の場合には炭素数1~8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1~8のアミノ基が好ましい。
これらのうち、好ましくは、p=3、q=1のトリアルキルアルミニウム並びにp=2、q=1及びX=水素のジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1~8であるトリアルキルアルミニウムである。
有機アルミニウム化合物は、単独又は複数種混合して使用することができる。また、有機アルミニウム化合物は、触媒調製時だけでなく、予備重合又は本重合時にも添加して使用することができる。
<<プロピレン系重合体(A)の製造方法>>
プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー重合法、溶液重合法、実質的に溶媒を用いない気相重合法又は重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常-80~150℃であり、好ましくは40~120℃である。重合圧力は、1~60気圧(0.10~6.08MPa)が好ましく、また得られるプロピレン系重合体(A)の分子量の調節は、水素又は他の公知の分子量調節剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
メタロセン触媒を用いる場合は、本重合が行われる前に予備重合処理することが望ましい。予備重合に供されるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等のα-オレフィン、1,3-ブタジエン等のジエン化合物、スチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物を用いることができる。
この予備重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒(成分[A]と成分[B]の合計)1g当たり、0.01~1,000g、好ましくは0.1~100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素、液化α-オレフィン等の溶媒存在下、又は不存在下に行われる。本発明においては、固体触媒(固体触媒を予備重合処理した場合は、予備重合で生成した重合体を含まない。)当たりのポリマー生成量をできるだけ大きくすることが望ましい。ポリマー生成量を大きくするために、重合温度及び重合圧力はいずれも高めに設定することが望ましい。
通常、重合温度は60~90℃、重合圧力は1.5~4MPa程度から選択される。特に、バルク重合法の場合、重合温度は60~80℃で、重合圧力は温度と相関して2.5~4MPa程度から選択することが好ましい。一方、気相重合法の場合は、重合温度は70~90℃で、重合圧力は1.5~4MPa程度から選択することが好ましい。
さらに、固体触媒の滞留時間を長くすることによっても、固体触媒当たりのポリマー生産量を上げることが可能であるが、あまり長くし過ぎると生産性に影響を与える。好ましい滞留時間は、1~8時間、さらに好ましくは1~6時間である。担体を含めた固体触媒1g当たりのポリマー生産量は20kg以上、好ましくは25kg以上、さらに好ましくは30kg以上となるように、重合条件を設定することが望ましい。
また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。さらに、重合温度、分子量調節剤の濃度等を変えて多段階で重合させてもよい。
本発明においては、重合終了後、得られたプロピレン系重合体(A)を、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の不活性飽和炭化水素溶剤、液状α-オレフィン等を用いて、さらに好ましくは炭素数3又は4の不活性炭化水素溶剤又は液状α-オレフィンを用いて、洗浄を行うことが好ましい。
洗浄方法としては、特に制限はなく、撹拌槽での接触処理後上澄みのデカンテーション、向流洗浄、サイクロンによる洗浄液との分離等、公知の方法を用いることができる。
また、洗浄前又は洗浄と同時に、失活剤を添加してもよい。失活剤に関しては、特に制限はなく、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等、又はこれらの混合物を用いることができる。
このようなプロピレン系重合体(A)としては、市販のものを用いることができ、例えば、日本ポリプロ(株)製の商品名:ノバテック PP(NOVATEC PP)等を挙げることができる。
<ポリエチレン(B)>
ポリエチレン(B)の原料モノマーは、石油由来のエチレンであっても、植物由来のエチレンでもよい。植物由来のエチレンは、サトウキビ等の植物原料に微生物を作用させて発酵させることにより生成したエタノールを、触媒存在下で加熱して分子内脱水反応を行うことにより得ることができる。
植物由来のポリエチレンの場合は、植物由来エチレンを主成分として含むモノマーを重合させて得られたポリマーである。植物由来の場合、ポリエチレン(B)の原料モノマーは、植物由来エチレンを100%含むものでなくてもよい。モノマーの一部を植物由来エチレンとすることによっても環境負荷を低減することができる。
ポリエチレン(B)は、エチレン単位を80~100モル%含有しており、85~100モル%含有することが好ましい。植物由来のポリエチレンとしては、植物由来エチレンを単独重合させて得られたホモポリマー、植物由来エチレンとα-オレフィンとを共重合させて得られたコポリマー等を使用することもできる。α-オレフィンの炭素数は特に限定されないが、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンであることが好ましい。さらに、石油由来エチレンを含んでいてもよい。
ポリエチレン(B)の密度は、0.920~0.965g/cmであり、この範囲であると、成形品の滑り性及び摺動性が向上する。密度が0.920g/cm未満では、滑り性及び摺動性の向上が期待できない。ポリエチレン(B)の密度は、0.930~0.965g/cmであることが好ましく、0.940~0.965g/cmであることがより好ましい。
ポリエチレン(B)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.05~80g/10分である。メルトフローレートを0.05g/10分以上とすることにより、成形性が良好となり、80g/10分以下とすることにより、成形品の耐衝撃性が良好になる。メルトフローレートは、1~60g/10分であることが好ましく、5~50g/10分であることがより好ましい。
ポリエチレン(B)の市販品としては、例えば、石油由来のものとして、「ノバテック」(日本ポリエチレン社製商品名)、植物由来のものとして、「Green PE」シリーズ(Braskem社製商品名)等が挙げられる。
<プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3~17重量%であるランダム共重合体(C)>(以下、ランダム共重合体(C)ともいう。)
ランダム共重合体(C)は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種との共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3~17重量%である。プロピレン系重合体組成物を構成するプロピレン系重合体(A)及びポリエチレン(B)は、互いに相溶性が悪く、それに起因するせいか、この2成分からなる組成物を用いて形成した成形体は、耐衝撃性に劣り、割れるという問題が生じていた。本発明者らは、鋭意検討した結果、プロピレン系重合体組成物にランダム共重合体(C)を所定量配合させることにより、プロピレン系重合体(A)及びポリエチレン(B)の相溶性が改善し、該組成物から得られる成形体の剛性を維持しながら、耐衝撃性を向上させ、割れを抑制できることを見出した。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を例示できる。プロピレンと共重合されるエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種は、一種類でも二種類以上であってもよい。このうち、エチレン及び1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。ランダム共重合体(C)は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
ランダム共重合体(C)の具体的な例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等のような、プロピレンに共単量体を任意に組み合わせた二元又は三元共重合体が例示できる。なかでも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
ランダム共重合体(C)において、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、3~17重量%であり、4~15重量%であることが好ましく、5~12重量%であることがより好ましい。エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量を3重量%以上とすることにより、成形品の耐衝撃性が十分となり、17重量%以下とすることにより、成形品の高い剛性を維持でき、射出成形時の離型性が良好となる。
ランダム共重合体(C)の合成に用いる触媒としては、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用することが好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。チーグラー触媒及びメタロセン触媒としては、プロピレン系重合体(A)の触媒で例示したものを使用できる。なかでも、ポリエチレン(B)を配合したことによる成形品の割れ抑制の観点から、メタロセン触媒を用いることが好ましい。
ランダム共重合体(C)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~80g/10分であり、2~50g/10分であると好ましく、5~30g/10分であるとより好ましい。メルトフローレートが0.5g/10分以上であると、成形加工性が向上し、80g/10分以下であると、ランダム共重合体(C)中の比較的低分子量の成分が成形品の表面にブリードしにくくなり、外観が良好となる。
ランダム共重合体(C)のメルトフローレート(MFR)は、重合条件である温度及び圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法における水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
得られる成形品の剛性及び耐衝撃性のバランスの観点から、ランダム共重合体(C)は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が1~5重量%であるランダム共重合体(c-1)、並びに、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が7重量%以上25重量%未満であるランダム共重合体(c-2)からなる多段重合体であって、(c-1)をブロック成分とするランダムブロック共重合体であると好ましい。この場合、ランダム共重合体(C)は、メタロセン系プロピレン-(エチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィン)ランダムブロック共重合体(c)であることが好ましい。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を例示できる。エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種は、一種類でも二種類以上であってもよい。このうち、エチレン及び1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。(c-1)及び(c-2)は、それぞれ、一種単独でも二種以上併用してもよい。
(c-1)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、1~5重量%であることが好ましく、1.5~4.0重量%であることがより好ましく、1.5~3.0重量%であることがさらに好ましい。(c-1)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が1重量%以上であると、プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)及びランダム共重合体(C)の相溶性が十分となりやすく、5重量%以下であると、成形品の剛性が十分となりやすい。
(c-2)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、7重量%以上25重量%未満であることが好ましく、7~20重量%であることがより好ましく、8~15重量%であることがさらに好ましい。(c-2)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が7重量%以上であると、プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)及びランダム共重合体(C)の相溶性が十分となりやすく、25重量%未満であると、成形品の剛性が十分となりやすい。
(c-1)及び(c-2)のランダム共重合体の具体的な例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等のような、プロピレンに共単量体を任意に組み合わせた二元又は三元共重合体が例示できる。なかでも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
同様の理由で、多段階で重合させて製造する多段重合体であるランダム共重合体(C)において、二段階以降のエチレンの含有量は、20重量%未満が好ましい。
ランダム共重合体(C)が、(c-1)及び(c-2)からなる多段重合体である場合、ランダム共重合体(C)は、下記条件(C-i)を満たすことが好ましい。
(C-i)(c-1)と(c-2)との割合は、(c-1)が30~70重量部、及び(c-2)が30~70重量部の合計100重量部である。
(c-1)と(c-2)との割合は、(c-1)が30~70重量部、及び(c-2)が30~70重量部の合計100重量部であると好ましく;(c-1)が30~60重量部、及び(c-2)が40~70重量部であるとより好ましく;(c-1)が40~60重量部、及び(c-2)が40~60重量部であるとさらに好ましい。(c-1)が30重量部以上であると、成形品の剛性が向上しやすく、(c-1)が70重量部以下であると、プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)及びランダム共重合体(C)の相溶性が良好となりやすい。
(c-1)及び(c-2)のJIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートは、それぞれ、0.5~80g/10分の範囲であると好ましい。(c-1)及び(c-2)のメルトフローレートが0.5g/10分以上であると、成形性が良好となり、80g/10分以下であると、(c-1)及び(c-2)中の比較的低分子量の成分が成形品の表面にブリードしにくくなり、外観が良好となる。(c-1)及び(c-2)のメルトフローレートは、それぞれ、2~50g/10分であることが好ましく、5~30g/10分であることがより好ましい。
なお、(c-2)のメルトフローレート(MFR)は、ランダムブロック共重合体(c)及び(c-1)のメルトフローレート(MFR)、並びにランダムブロック共重合体(c)中の(c-1)及び(c-2)の含有割合から、以下に示す式を用いて算出することができる。
Log[ランダムブロック共重合体(c)のMFR]=[(c-1)の含有割合]×Log[(c-1)のMFR]+[(c-2)の含有割合]×Log[(c-2)のMFR]
(c-1)及び(c-2)のメルトフローレート(MFR)は、重合条件である温度及び圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法における水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
ランダム共重合体(C)の融解ピーク温度(Tm)は、125~145℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは128~141℃、さらに好ましくは130~140℃である。融解ピーク温度(Tm)が125℃以上であると、成形性及び成形品の剛性が良好となりやすく、145℃以下であると、耐衝撃性が良好となりやすい。
融解ピーク温度(Tm)の測定は、示差走査熱量計(DSC)を用いて行う。サンプル量5.0mgにて、サンプルを200℃まで昇温し、熱履歴を消去した後、200℃で5分間保持し、その後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を下げて結晶化させる。次いで、10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
ランダム共重合体(C)(ランダムブロック共重合体(c)を含む)及び(c-1)において、プロピレン並びにエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの各含有量は、下記の条件の13C-NMR法によって計測することができる。
装置:日本電子(株)製 JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
また、プロピレン-エチレン共重合体の場合、プロピレン及びエチレンの含有量は、実施例に記載のとおり、13C-NMR法により組成を検定した基準物質を用いて、赤外分光法により作成した検量線に基づき、赤外分光法によって計測することができる。
ランダム共重合体(c-2)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、上記のようにして求めたランダムブロック共重合体(c)及び(c-1)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量、並びにランダムブロック共重合体(c)中の(c-1)及び(c-2)の含有割合から算出することができる。
[(c-1)及び(c-2)の含有量の算出]
ランダム共重合体(C)が、(c-1)及び(c-2)からなる多段重合体である場合、(c-1)及び(c-2)の各含有量は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するために、温度昇温溶離分別(TREF)を用いて算出することができる。
以下、プロピレン-エチレンランダム共重合体の評価法について説明するが、プロピレンと、炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体についても、同様に評価できる。プロピレン-エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当業者によく知られるものであり、例えば、次の文献等で詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1-24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1-47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639-1654(1995)
プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)において、プロピレン-エチレンランダム共重合体(c-1)及び(c-2)の結晶性に大きな違いがあり、また、メタロセン触媒を用いて製造されることで各々の結晶性分布が狭くなっていることから、双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
具体的な方法を、図2を用いて説明する。図2は、実施例で使用したプロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)のTREF測定における溶出量及び溶出量積算を示す図である。TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、プロピレン-エチレンランダム共重合体(c-1)及び(c-2)は結晶性の違いにより、各々T(β)及びT(α)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(α)+T(β)}/2)においてほぼ分離が可能である。
TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では-15℃であるが、成分(α)の結晶性が非常に低い又は非晶性成分の場合には、本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち-15℃)において溶媒に溶解した成分(α)の濃度は検出される。)
このとき、T(α)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することができないため、このような場合にはT(α)を測定温度下限である-15℃と定義する。ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量をW(α)重量%、T(C)以上で溶出する成分の積算量をW(β)重量%と定義すると、W(α)は結晶性が低い又は非晶性の成分(α)、すなわち(c-2)の量とほとんど対応しており、W(β)は結晶性が比較的高い成分(β)、すなわち(c-1)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線、並びにそこから求められる上記の各種の温度及び量の算出の方法は、図2に例示するように行う。
<<ランダム共重合体(C)の製造方法>>
ランダム共重合体(C)の製造方法としては、特に限定はなく、例えば、プロピレン系重合体(A)の製造方法で例示した方法を使用することができる。なかでも、ポリエチレン(B)を配合したことによる成形品の割れ抑制の観点から、メタロセン触媒を用いる方法が好ましい。メタロセン触媒としては、プロピレン系重合体(A)の触媒で例示したものを使用できる。ランダム共重合体(C)が多段重合体である場合、前記(c-1)及び(c-2)からなる多段重合体であることが好ましい。
ランダム共重合体(C)としては、市販のものを用いることができ、例えば、エクソン・モービル社製の商品名:ビスタマックス、日本ポリプロ(株)製の商品名:ウェルネクス(WELNEX)、ウィンテック(WINTEC)、ノバテック PP(NOVATEC PP)等を挙げることができる。
<プロピレン系重合体組成物>
プロピレン系重合体組成物は、プロピレン系重合体(A)15~85重量部及びポリエチレン(B)85~15重量部の合計100重量部に、ランダム共重合体(C)5重量部以上50重量部以下を含有する。プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)及びランダム共重合体(C)を上記範囲内とすることにより、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れ、割れない成形品を与えるプロピレン系重合体組成物を提供することができる。
プロピレン系重合体組成物は、プロピレン系重合体(A)15~85重量部及びポリエチレン(B)85~15重量部の合計100重量部であり、好ましくは、プロピレン系重合体(A)30~70重量部及びポリエチレン(B)70~30重量部の合計100重量部であり、より好ましくは、プロピレン系重合体(A)35~65重量部及びポリエチレン(B)65~35重量部の合計100重量部である。プロピレン系重合体(A)及びポリエチレン(B)の含有割合が上記範囲内であると、成形品の滑り性及び摺動性を向上させることができる。
プロピレン系重合体組成物において、プロピレン系重合体(A)及びポリエチレン(B)の合計100重量部に対する、ランダム共重合体(C)の含有量は、5重量部以上50重量部以下であり、好ましくは10~40重量部であり、より好ましくは10~30重量部である。ランダム共重合体(C)の含有量が5重量部以上であると、耐衝撃性が向上し、50重量部以下であると、剛性が向上する。
プロピレン系重合体組成物は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.07~95g/10分であり、好ましくは1~75g/10分であり、より好ましくは5~50g/10分である。メルトフローレートが0.07g/10分以上であると、成形性が向上し、95g/10分以下であると、耐衝撃性が向上する。
<添加剤>
プロピレン系重合体組成物は、上述した成分に加えて、プロピレン系重合体の安定剤等として使用されている各種酸化防止剤や、紫外線吸収剤、光安定剤、中和剤、造核剤等の添加剤を配合することができる。
酸化防止剤としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、ジ-ステアリル-ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ-ステアリル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ミリスチル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ラウリル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、n-ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル-2-(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6-〔(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ〕-1,3,5-トリアジン-2,4ジイル]〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕}、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス〔N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
さらに、耐NOxガス変色性が良好な下記式(1)及び下記式(2)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7-ジ-t-ブチル-3-(3,4-ジ-メチル-フェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン等のラクトン系酸化防止剤、下記式(3)等のビタミンE系酸化防止剤等を挙げることができる。


Figure 2023122417000003
中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト、例えば、商品名:DHT-4A(協和化学工業(株)製)の下記式(4)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩;ミズカラック(登録商標)(水澤化学工業(株)製)の下記式(5)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩;等が挙げられる。
Mg1-xAl(OH)(COx/2・mHO …(4)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の正の整数である。]
[AlLi(OH)X・mHO …(5)
[式中、Xは、無機又は有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下の正の整数である。]
なかでも、中和性能と経済的な観点から、ステアリン酸の金属塩が好ましく、ステアリン酸カルシウムが特に好ましい。プロピレン系重合体(A)及びポリエチレン(B)の合計100重量部に対する、ステアリン酸の金属塩の含有量は、0.01~0.1重量部であることが好ましく、より好ましくは0.02~0.08重量部であり、さらに好ましくは0.03~0.06重量部である。
造核剤としては、例えば、立体障害性アミド化合物、有機ジカルボン酸金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、芳香族カルボン酸系の化合物若しくはその誘導体、ソルビトール系化合物若しくはその誘導体、ノニトール系化合物若しくはその誘導体、ジテルペン酸類の金属塩又はポリマー核剤等が挙げられる。
プロピレン系重合体組成物は、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れ、割れない成形品を与えることができる。印刷適性及び成形品表面へのブリード抑制の観点から、プロピレン系重合体組成物は、滑剤及びアンチブロッキング剤を実質的に含有しないことが好ましい。
本発明において、「実質的に含有しない」とは、例えば工業用原料により不可避的に混入される場合を除き、意図的に含ませないことを意味する。具体的には、プロピレン系重合体組成物100重量%中の滑剤及びアンチブロッキング剤の含有割合がそれぞれ0.1重量%未満であることを意味し、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満、特に好ましくは0.001重量%未満である。
滑剤としては、モノアマイド類、置換アマイド類、ビスアマイド類等が挙げられる。
モノアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
不飽和脂肪酸モノアマイドとしては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。
置換アマイド類の具体例としては、N-ステアリルステアリン酸アマイド、N-オレイルオレイン酸アマイド、N-ステアリルオレイン酸アマイド、N-オレイルステアリン酸アマイド、N-ステアリルエルカ酸アマイド、N-オレイルパルチミン酸アマイド等が挙げられる。
ビスアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’-ジステアリルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’-ジオレイルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
芳香族系ビスアマイドとしては、m-キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アマイドなどが挙げられる。
なお、本明細書において、滑剤は、中和剤で例示した化合物を含まない。
アンチブロッキング剤としては、無機系顔料として、合成又は天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、ゼオライト、硼酸アルミニウム、硫酸カルシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。
また、有機系顔料として、ポリメチルメタクリレート、ホリメチルシリルトセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
さらに、プロピレン系重合体組成物は、既知の各種添加剤、例えば帯電防止剤、分散剤、染料、アンチブロッキング剤以外の顔料等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
プロピレン系重合体組成物の性質、機能等の特性を損なわない範囲で、プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)及びランダム共重合体(C)以外の他の重合体、例えば、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリレート共重合体、アクリレート重合体、のような一元、二元及び三元共重合体を含有してもよい。他の重合体の含有量は、例えば、プロピレン系重合体組成物100重量部に対して、1~30重量部であることができる。同様に、天然ゴム、ブチルゴム、ジエン系ゴム、EPR、EPDMのような、エラストマーをブレンドすることも可能である。さらに、添加量が1重量%以上のフィラーとして、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムのような汎用の無機フィラーを併用することも可能である。
<<プロピレン系重合体組成物の製造方法>>
プロピレン系重合体組成物は、プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)及びランダム共重合体(C)、並びに、必要に応じてその他の添加剤の各所定量を、ヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190~260℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
<<プロピレン系重合体組成物を含む成形品>>
プロピレン系重合体組成物を含む成形品は、プロピレン系重合体組成物を射出成形、押出成形、中空成形、真空成形、圧縮成形等の成形法により所望形状に成形することにより得られる。
プロピレン系重合体組成物を成形温度200℃、金型温度40℃で、厚さ1mmに射出成形した試験片について、23℃50%RH下で24時間保管後、同環境下で、20mm四方の平面圧子を用い、総荷重200g、移動速度150mm/分で測定した2つの試験片間の動摩擦係数は、0.7以下であることが好ましい。動摩擦係数を0.7以下とすることにより、成形品の滑り性は良好となる。動摩擦係数は、0.65以下であることがより好ましく、0.60以下であることがさらに好ましい。
プロピレン系重合体組成物のJIS K7171に準拠して測定される曲げ弾性率は、好ましくは700~2400MPaの範囲である。曲げ弾性率が700MPa以上であると射出成型時の金型からの離型性が良好となり、2400MPa以下であると成形品の耐衝撃性が良好となる。曲げ弾性率は、より好ましくは750~1800MPaであり、さらに好ましくは750~1600MPaである。
プロピレン系重合体組成物のJIS K7111に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度は、好ましくは3.0kJ/m以上の範囲である。シャルピー衝撃強度が3.0kJ/m以上であると、成形品の輸送時の破損が抑制される。シャルピー衝撃強度は、より好ましくは3.5kJ/m以上であり、さらに好ましくは4.0kJ/m以上である。
プロピレン系重合体組成物を含む成形品は、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性に優れ、割れないという優れた特徴を有する。成形品の用途としては、特に限定されないが、各種工業材料、自動車関連部品、医療向け及び化粧品向け等の各種容器、日用品、フィルム及び繊維等様々な用途に幅広く使用できる。なかでも、プロピレン系重合体組成物を含む成形品は、化粧品容器用及び自動車関連部品用に好適に使用できる。
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例を挙げて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例及び参考例において、プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)、プロピレン-エチレンランダム共重合体(C)及びプロピレン系重合体組成物の物性測定は下記の方法に従ったものである。
<1.測定の方法>
(1)メルトフローレート(MFR):
プロピレン-エチレンランダム共重合体(c-2)以外の樹脂について、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した。
プロピレン-エチレンランダム共重合体(c-2)のメルトフローレート(MFR)は、プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)及びプロピレン-エチレンランダム共重合体(c-1)のメルトフローレート(MFR)、並びに前記ランダムブロック共重合体(c)中の(c-1)及び(c-2)の含有割合から、以下の式を用いて算出した。
Log[ランダムブロック共重合体(c)のMFR]=[(c-1)の含有割合]×Log[(c-1)のMFR]+[(c-2)の含有割合]×Log[(c-2)のMFR]
(2)プロピレン系重合体(A)及びプロピレン-エチレンランダム共重合体(C)のエチレン含有量の算出
13C-NMRによりエチレン含有量を検定したエチレン-プロピレンランダム共重合体を基準物質として用い、赤外分光測定を行い、720~730cm-1付近に現れるエチレン由来のピークから、吸光度-エチレン含有量についての検量線を作成した。こうして得た検量線を用い、プロピレン系重合体(A)及びプロピレン-エチレンランダム共重合体(C)(プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)及びプロピレン-エチレンランダム共重合体(c-1)を含む)のエチレン含有量を算出した。赤外分光測定には、各共重合体のペレットをそれぞれプレス成形により約500μmの厚さのフィルムとしたものを用いた。
プロピレンーエチレンランダム共重合体(c-2)のエチレン含有量は、前記ランダムブロック共重合体(c)及び(c-1)のエチレン含有量、並びに前記ランダムブロック共重合体(b)中の(c-1)及び(c-2)の含有割合から算出した。
(3)融解ピーク温度(融点)(Tm、単位:℃):
プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)について、示差走査熱量計(DSC)を用い、融解ピーク温度を測定した。サンプル量5.0mgにて、サンプルを200℃まで昇温し、熱履歴を消去した後、200℃で5分間保持し、その後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を下げて結晶化させた。次いで、昇温速度10℃/分にてサンプルを融解させた際の、吸熱ピークのトップ温度を融解ピーク温度(融点)(Tm)とした。
(4)プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)の各成分量の算出
温度昇温溶離分別(TREF)を用いて、プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)中のプロピレン-エチレンランダム共重合体(c-1)及び(c-2)の含有量を算出した。装置及び測定条件は、以下のとおりである。
[装置]
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー製 デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC-IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4m m長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC-3461ポンプ
[測定条件]
溶媒:o-ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
(5)動摩擦係数
測定装置:新東科学株式会社製トライボギアTYPE14を使用。
プロピレン系重合体組成物を成形温度200℃、金型温度40℃で、厚さ1mmに射出成形して試験片を作製した。こうして得た試験片から、120mm×120mm×1mm及び20mm×20mm×1mmの2枚の試験片を切り出し、23℃50%RH下で24時間保管した。その後、同環境下で、120mm×120mm×1mmの試験片を装置の下側に、20mm×20mm×1mmの試験片を装置の上側にセットし、20mm四方の平面圧子を用い、総荷重200g、移動速度150mm/分で、2つの試験片間の動摩擦係数を測定した。
(6)曲げ弾性率
JIS K7171に準拠して、曲げ弾性率を測定した。
(7)シャルピー衝撃強度
JIS K7111に準拠して、23℃のシャルピー衝撃強度を測定した。
(8)MD及びTD方向の割れ試験
120mm×120mm×2mmの試験片を射出成形(成形温度:200℃、金型温度:40℃)により作製した。図1に示すように、試験片のMD及びTD方向に平行に、それぞれ、剪定ばさみで幅15mmとなるように長さ30mmほどの切り込みを2本入れ、その部分を手で折り曲げて、以下の基準で割れを評価した。
○:90度以上折り曲げた場合、割れ目(裂け目、クラック)又は白化が発生しても、いくつかの部分に分かれない(割れない)。
×:90度以上折り曲げるといくつかの部分に分かれる(割れる)。
<2.樹脂、添加剤>
2-1.プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)の製造
(1)製造例1(PP-1)
(i)予備重合触媒の製造
珪酸塩の化学処理:10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学工業社製、ベンクレイ(登録商標)SL;平均粒径=50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。
触媒の調製:内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調整した。次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウム〕(特開平10-226712号公報の実施例に従って合成した。)2177mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた。こうして得た反応物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌し、珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを得た。
予備重合:窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、ノルマルヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いて、デカント処理後の残留物にトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタン5.6リットルを添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄み5.6リットルを除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ、有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10-6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中のZr存在量(重量比)は、0.018重量%であった。続いて、デカント処理後の残留物にトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0mlを添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.16gを含む予備重合触媒(メタロセン触媒)が得られた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン-エチレンランダム共重合体(c-1)及び(c-2)からなる多段重合体であるプロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)の製造を行った。
(ii)プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)の製造
撹拌機を備えた2台の横型重合槽からなる連続気相重合反応器を用いた。第1の反応器(内容積40m)に上記で得た予備重合触媒を130g/Hr、またトリイソブチルアルミニウムを1.0kg/Hrで連続的に供給した。また、重合器内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比が1.6×10-4モル比となるように水素を、エチレン濃度のプロピレン濃度に対する比が5.8×10-4モル比となるようにエチレンを、重合器内の圧力が2.25MPa、温度が62℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ重合器内に供給し、第1の重合反応を行った。なお、反応熱は原料液化プロピレンの気化熱にて除去した。
重合器内で生成したプロピレン-エチレンランダム共重合体(c-1)は、重合体の保有レベルが反応容積の45容量%となるように連続的に抜出し、第2重合工程の重合器に供給した。
第1の重合反応で得られたプロピレン-エチレンランダム共重合体(c-1)を分析したところ、重合体の固体触媒1g当たりの収量は29kg、エチレン含有量=1.9重量%、MFR(230℃及び2.16kg荷重)=6.9g/10分、分子量分布(Mw/Mn)=2.3であった。
第2の反応器(内容積40m)では、第1重合工程からの重合体に加え、重合器内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比が4.3×10-4モル比となるように水素を、エチレン濃度のプロピレン濃度に対する比が0.36モル比となるようにエチレンを、重合器内の圧力が2.2MPa、温度が70℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ重合器内に供給し、第2の重合反応を行った。
なお、第1の重合反応と第2の重合反応より得られる各重合体の重合量は、重合活性抑制剤を供給することで調整した。また反応熱は原料液化プロピレンの気化熱にて除去した。
第2重合工程で生成したプロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)は、重合体の保有レベルが反応容積の55容量%となるように重合器から連続的に抜き出した。
得られたプロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)を分析したところ、重合体の固体触媒1g当たりの収量は52kg、MFR(230℃及び2.16kg荷重)は7.2g/10分、エチレン含有量は6.2重量%、Tm=133℃であった。
なお、第2の重合反応により得られたプロピレン-エチレンランダム共重合体(c-2)を分析したところ、MFR(230℃及び2.16kg荷重)は7.6g/10分、分子量分布(Mw/Mn)は2.4、エチレン含有量は11.6重量%であった。
ここで、ランダム共重合体(c-2)のエチレン含有量は、前記ランダムブロック共重合体(c)及び(c-1)のエチレン含有量、並びに前記ランダムブロック共重合体(b)中の(c-1)及び(c-2)の含有割合から算出した。
図2に、プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)の温度昇温溶離分別(TREF)測定における溶出量及び溶出量積算の結果を示す。T(α)は、結晶性が低い(c-2)の溶出ピーク温度に相当し、T(β)は、結晶性が高い(c-1)の溶出ピーク温度に相当するものである。図2に示すとおり、T(α)及びT(β)の溶出ピークは十分に分離可能であった。
T(C)までに溶出する成分の積算量W(α)が(c-2)の含有量であり、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(β)が(c-1)の含有量であると仮定し、各成分の含有量を算出した。その結果、プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)に占める(c-1)及び(c-2)の割合は、それぞれ、55.7重量%及び44.3重量%であった。
得られたプロピレン-エチレンランダムブロック共重合体をPP-1とした。PP-1の配合及び物性を表2に示す。
Figure 2023122417000004
2-2.プロピレン系重合体(A)
・プロピレン単独重合体(a-1)
(MA3)日本ポリプロ(株)製、商品名「NOVATEC PP MA3」、MFR=11g/10分、エチレン含有量=0重量%
・プロピレン-エチレンブロック共重合体(a-2)
(BC02NC)日本ポリプロ(株)製、商品名「NOVATEC PP BC02NC」、MFR=20g/10分、エチレン含有量=7.2重量%
・プロピレン-エチレンランダム共重合体(a-3)
(WFW4M)日本ポリプロ(株)製、商品名「WINTEC WFW4M」、MFR=7.0g/10分、エチレン含有量=1.9重量%
2-3.ポリエチレン(B)
(SGM9450F)Braskem社製、商品名「Green PE SGM9450F」、MFR=0.12g/10分、密度:0.952g/cm、バイオマス度:96%(メーカーカタログ値)
(HJ580N)日本ポリエチレン(株)製、商品名「NOVATEC HD HJ580N」、MFR=24g/10分、密度:0.960g/cm
(HJ340)日本ポリエチレン(株)製、商品名「NOVATEC HD HJ340」、MFR=3.0g/10分、密度:0.953g/cm
(UJ990)日本ポリエチレン(株)製、商品名「NOVATEC LL UJ990」、MFR=70g/10分、密度:0.937g/cm
(KF380)日本ポリエチレン(株)製、商品名「カーネル KF380」、MFR=8.0g/10分、密度:0.918g/cm
(KF370)日本ポリエチレン(株)製、商品名「カーネル KF370」、MFR=7.0g/10分、密度:0.905g/cm
(KM340T)日本ポリエチレン(株)製、商品名「カーネル KM340T」、MFR=7.0g/10分、密度:0.880g/cm
2-4.プロピレン-エチレンランダム共重合体(C)
(PP-1)製造例1で重合して得られたプロピレン-エチレンランダムブロック共重合体(c)、MFR=7.2g/10分、エチレン含有量=6.2重量%
(VF3200)Dowケミカル社製、商品名「Versify 3200」、MFR=8.0g/10分、エチレン含有量=9.0重量%
2-5.その他添加剤
(A-1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤「IR1010」
テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン。BASFジャパン(株)製、商品名「IRGANOX(登録商標)1010」。
(A-2)リン系酸化防止剤「IF168」
トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト。BASFジャパン(株)製、商品名「IRGAFOS(登録商標)168」。
(B-1)中和剤「CAST」
ステアリン酸カルシウム。日油(株)製。
実施例1~6並びに比較例1~4及び6~11
各重合体及び添加剤を表2及び3に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、芝浦機械株式会社製TEM-35B二軸押出機を用いて、窒素雰囲気下ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを用いて、物性を測定した。評価結果を表2及び3に示す。
比較例5及び12~15並びに参考例1
比較例5及び12~15並びに参考例1では、各ペレットをそのまま用いて試験片を作製し、物性を測定した。なお、MFRの低い参考例1は、成形温度230℃で、試験片を作製した。評価結果を表2及び3に示す。
Figure 2023122417000005
Figure 2023122417000006
表2及び3より明らかなように、実施例1~6のプロピレン系重合体組成物は、プロピレン系重合体(A)、ポリエチレン(B)及びランダム共重合体(C)を規定量含有し、該組成物のMFRは0.07~95g/10分であり、成形品の動摩擦係数が低く、滑り性及び摺動性が良好であった。実施例1~4の組成物から得られた成形品は、曲げ弾性率及び耐衝撃性に優れ、割れの発生はなかった。
一方、樹脂成分がプロピレン系重合体(A)のみからなる比較例1,6及び7、並びにポリエチレン(B)のみからなる比較例5は、成形品の動摩擦係数が高く、滑り性に劣る。また、プロピレン系重合体(A)及びポリエチレン(B)を含むものの、ランダム共重合体(C)を含まない比較例2~4、並びに、プロピレン系重合体(A)及びポリエチレン(B)の合計100重量部に対するランダム共重合体(C)の含有量が5重量部未満である比較例8は、成形品の動摩擦係数は良好であるものの、TD方向の割れ試験によって割れが発生した。
実施例5及び6並びに比較例9~11の比較より、ポリエチレンの密度が0.920g/cm未満である比較例9~11は、成形品の動摩擦係数が高く、滑り性に劣るのに対し、ポリエチレンの密度が0.920~0.965g/cmである実施例5及び6は、動摩擦係数が0.7以下であり、滑り性が良好である。比較例1~5の比較より、プロピレン単独重合体(a-1)が15~85重量部及びポリエチレン(B)が85~15重量部の合計100重量部である比較例2~4は、プロピレン単独重合体(a-1)100重量部である比較例1及びポリエチレン(B)100重量部である比較例5よりも、成形品の動摩擦係数が顕著に低下しており、本願発明のように、プロピレン系重合体(A)15~85重量部及びポリエチレン(B)85~15重量部の合計100重量部とすることが、成形品の動摩擦係数の低下に有効であることがわかる。
本発明のプロピレン系重合体組成物から得られる成形品は、滑剤及びアンチブロッキング剤の配合量を低減しても、滑り性、摺動性及び耐傷つき性に優れる。該成形品は、化粧品容器用及び自動車関連部品用に好適に使用できる。

Claims (8)

  1. プロピレン単独重合体(a-1);プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が30重量%未満であるブロック共重合体(a-2);並びにプロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3重量%未満であるランダム共重合体(a-3)からなる群より選択されるプロピレン系重合体(A);
    ポリエチレン(B);並びに
    プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が3~17重量%であるランダム共重合体(C);
    を含有するプロピレン系重合体組成物であって、
    プロピレン系重合体(A)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分であり、
    ポリエチレン(B)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.05~80g/10分であり、かつ、密度が0.920~0.965g/cmであり、
    ランダム共重合体(C)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~80g/10分であり、
    前記組成物は、プロピレン系重合体(A)15~85重量部及びポリエチレン(B)85~15重量部の合計100重量部に、ランダム共重合体(C)5重量部以上50重量部以下を含有し、
    前記組成物は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.07~95g/10分である、プロピレン系重合体組成物。
  2. 前記プロピレン系重合体組成物を成形温度200℃、金型温度40℃で、厚さ1mmに射出成形した試験片について、23℃50%RH下で24時間保管後、同環境下で、20mm四方の平面圧子を用い、総荷重200g、移動速度150mm/分で測定した2つの試験片間の動摩擦係数が0.7以下である、請求項1に記載のプロピレン系重合体組成物。
  3. エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種が、エチレン又は1-ブテンである、請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体組成物。
  4. エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種が、エチレンである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物。
  5. 前記組成物が、滑剤及びアンチブロッキング剤を実質的に含有しない、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含む成形品。
  7. 化粧品容器用である、請求項6に記載の成形品。
  8. 自動車関連部品用である、請求項6に記載の成形品。
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