JP2023114962A - 表面処理液、表面処理樹脂及び樹脂フィルム積層体の製造方法 - Google Patents

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克彦 安
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敏憲 井上
Toshinori Inoue
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Mitsunobu Hirabayashi
和弘 光田
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Abstract

【課題】表面処理後の樹脂を非乾燥大気雰囲気下に数日間放置してから積層・圧着しても密着性がほとんど低下せず、且つSi原子を含まない表面処理液、表面処理樹脂基材及び樹脂フィルム積層体の製法を提供する。【解決手段】界面分子結合のために樹脂に塗布して用いる表面処理液であり、1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体と、化合物αを含み、化合物αは一分子内に、アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基と、ОH基又はアルコキシ基と、を有する化合物であり、25℃におけるpHが4.5以下である表面処理液である。好ましくは、表面処理液は更に酸解離定数pKaが4.0以下の酸又はその無水物を含み、化合物αはカルボニル基を有し、当該カルボニル基が前記ОH基又はアルコキシ基と直接結合している。化合物αはベンゼン環を有し、前記アジド基等が該ベンゼン環に直接結合していることが好ましい。【選択図】図3

Description

本発明は、樹脂に塗布して用いる表面処理液と、当該表面処理液を用いた、表面処理樹脂の製造方法、樹脂フィルム積層体の製造方法、及び金属被覆樹脂の製造方法に関する。
ポリイミドは高い耐熱性を有する熱硬化性樹脂であり、-269℃の低温から+300℃の高温まで広い温度領域にわたって物性変化が極めて少ないために、電気・電子分野での利用が拡大している。電気分野では、例えば、産業用モーターのコイルや超伝導電線の絶縁等に用いられ、電子分野では、例えば、フレキシブルプリント基板のベースフィルム、軽量なスペーサ、半導体試験装置のプローブソケット(試験用治具)等に利用されている。
ポリイミドは、主に流延による溶液成膜によりポリイミドフィルムとして製造されているため、厚いシートやボードを製造することはその製法上困難であり、仮に製造できても均質性に欠ける欠点がある。ポリイミド-ポリイミドブロック共重合体の粉末を高温圧縮成型で処理して厚いシートやブロックを製造する方法も存在するが、高価で量産性に劣る。そこで、厚みを確保するべく複数枚のポリイミドフィルムを積層して密着させてなるポリイミドフィルム積層体の種々の製法が提案されている。高温で圧着する方法や、圧着前にポリイミドフィルムの表面に特殊プラズマ処理を行う方法、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる接着剤で接合する方法、接着層として熱可塑性ポリイミドフィルムを介在させる方法等である。しかし、いずれの方法にも、量産に高価な設備を要する、揮発ガスが生じる、非熱可塑性樹脂としてのポリイミドの特性を損なう、等の欠点がある。
2種以上の官能基を有する化合物は、それぞれの官能基の特性を利用して化学結合を形成し得ることから、2つの物質の界面に介在させて化学結合により両物質を結合する界面分子結合(IMB;Interface molecular bonding)のための界面分子結合剤として有用である。界面分子結合剤は2つの物質を化学結合で結合するから、両物質の結合は強く、結合の形成に必ずしも高温を要しない。また、界面に少量の界面分子結合剤の分子が存在するだけであるから、揮発ガスの問題も生じにくい。
特許文献1には、界面分子結合剤を介して複数枚のポリイミドフィルムを積層し、200℃程度の温度で圧着してなるポリイミドフィルム積層体の製造方法が開示されている。この文献に開示された界面分子結合剤は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(以下、「ATES」と呼ぶ)等の、一分子内にアミノ基やシラノール基等の官能基を有するシラン化合物である。界面分子結合剤として上記のごとくシラン化合物を用いる場合には、自己縮合反応を生じやすいシラン化合物の性質が短所となり得る。すなわち、表面処理液中にて縮合物の粒子が形成され、それら粒子が塗布面での異物欠点や塗布ムラの原因となり、低い密着力に結びつきやすい。
特許文献2には、上記の短所を回避する目的で、シラン化合物ではなく、エチレンジアミン等の、分子量が概ね300以下の多価アミン化合物を界面分子結合剤として用いて、40℃から180℃の温度で圧着して、ポリイミドフィルム積層体を製造する技術が開示されている。しかし、この技術には、多価アミン化合物を付与したポリイミドフィルムをすぐに積層圧着せずに、大気雰囲気下で数日間引き置いてから積層圧着すると密着性が顕著に低下する欠点があるため、多価アミン化合物を付与した直後に圧着する必要があり、上記積層体の量産プロセスを構築する上で柔軟性がなく、コストがかかる。
特許文献3には、表面にシリカで構成された部分と金属で構成された部分の両方を有する基材において、2剤を順に付与又は塗布することにより、シリカで構成された部分だけに選択的に樹脂を積層することのできる2剤の組み合わせが開示されており、当該2剤のうち、第1の剤は、ポリエチレンイミン等の、カチオン性官能基を有するポリマーを含有する組成物であり、第2の剤は、芳香環を有する多価カルボン酸又はその無水物を含む塗布液であり、第1の剤が安息香酸等の芳香族モノカルボン酸を含んでもよいことと、第2の剤がマレイン酸等の有機酸を含んでもよいことが記載されている。この2剤は上記のごとく樹脂層を形成する目的で使用される剤(ワニス)であり、2つの物質の界面に介在させて両物質の結合体を形成する目的で使用する界面分子結合剤とは用途が異なっている。また、上記の通り、特許文献3に記載された2剤の組み合わせは、金属と樹脂の接合には適さない。
特許第6721041号公報 特開2020-163755号公報 特許第6438747号公報
本発明の一形態の目的は、樹脂に塗布して用いる、シラン化合物を含まない表面処理液であって、当該表面処理液で処理された樹脂を大気雰囲気で数日間引き置いても、他の物質との接合における密着性がほとんど低下しないような表面処理液を提供することである。本発明の他の形態の目的は、当該表面処理液を用いた、表面処理物質の製造方法、樹脂フィルム積層体の製造方法、又は金属被覆樹脂の製造方法を提供することである。
本発明の第1の形態は、複数枚の樹脂フィルムが一体的に結合されてなる樹脂フィルム積層体を製造する目的で、又は、樹脂の表面に金属被覆を形成する目的で、樹脂に塗布して用いる表面処理液であり、1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体と、化合物αと、を各々0.01質量%以上で、且つ合計5質量%以下の濃度で含み、前記化合物αは、一分子内に、アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基と、ОH基又はアルコキシ基と、を有する化合物であり、25℃におけるpHが4.5以下である表面処理液である。
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、前記表面処理液は、更に酸又は当該酸の無水物を含み、前記酸の25℃における酸解離定数pKaが4.0以下である表面処理液である。
本発明の第3の形態は、前記第1又は第2の形態において、前記ОH基又はアルコキシ基は、前記化合物αの有するカルボキシ基又はアルコキシカルボニル基に含まれる表面処理液である。
本発明の第4の形態は、前記第1又は第2の形態において、前記化合物αは、芳香環を含む表面処理液である。
本発明の第5の形態は、前記第4の形態において、前記芳香環はベンゼン環であり、前記アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基は、前記ベンゼン環に直接的に結合している表面処理液である。
本発明の第6の形態は、前記第1又は第2の形態において、前記繰り返し単位が、次の式(2)~式(7)のいずれかに示される繰り返し単位である表面処理液である。
Figure 2023114962000002
ただし、式中、aは0以上の整数、例えば1以上10以下の整数、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは1であり、R、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、H原
子、置換若しくは非置換のアルキル基(例えば炭素数が1以上25以下、又は、1以上5以下)又はアリール基(例えばフェニル基)であり、Z-は溶液中の陰イオンを表したも
ので前記重合体には含まれない。好ましくは各式において、R、R1、R2及びR3のうち
少なくとも1つはH原子である。
本発明の第7の形態は、前記第1の形態に係る表面処理液を樹脂の表面に塗布する工程と、前記表面処理液が塗布された前記樹脂の表面を加熱する工程と、を具える表面処理樹脂の製造方法である。
本発明の第8の形態は、前記第1の形態に係る表面処理液を樹脂の表面に塗布する工程と、前記表面処理液が塗布された前記樹脂の表面に紫外線を照射する工程と、を具える表面処理樹脂の製造方法である。
本発明の第9の形態は、前記第7又は第8の形態において、前記表面処理液を樹脂の表面に塗布する工程の前に、前記樹脂に対して、洗浄処理、酸処理、アルカリ処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、ケイ酸化炎処理及び脱フッ素化処理からなる群より選ばれる1つ以上の前処理を行う工程を更に具える、表面処理樹脂の製造方法である。
本発明の第10の形態は、複数枚の樹脂フィルムを用意して重ね合わせる工程を含み、重ね合わされた前記複数枚の樹脂フィルムにおいて、隣接する任意の2枚の樹脂フィルムAとBのうち、少なくとも一方の樹脂フィルムAは、樹脂フィルムAの表裏のうち、少なくとも樹脂フィルムBと対向する側の表面に、前記第7又は第8の形態に係る表面処理樹脂の製造方法により処理が行われてなる表面処理樹脂フィルムであり、力を加えることにより、重ね合わされた前記複数枚の樹脂フィルムが一体的に結合される工程を具える、樹脂フィルム積層体の製造方法である。
本発明の第11の形態は、複数枚の樹脂フィルムが、少なくとも1組の、隣接する2枚の前記樹脂フィルムの間に縮合物層を介して、積層してなる樹脂フィルム積層体であり、前記縮合物層は、化合物αと、1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体との脱水縮合物又は加水分解脱水縮合物を含み、前記化合物αは、一分子内に、アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基と、ОH基又はアルコキシ基と、を有する化合物である樹脂フィルム積層体である。
本発明の第12の形態は、前記第11の形態において、前記複数枚の樹脂フィルムは、すべてポリイミドフィルムである樹脂フィルム積層体である。
本発明の第13の形態は、前記第7又は第8の形態に係る表面処理樹脂の製造方法により製造された表面処理樹脂の、表面処理が行われた表面に、湿式めっき又は金属箔の貼り合わせにより金属被覆を形成する工程を有する金属被覆樹脂の製造方法である。
本発明の一形態によれば、樹脂に塗布して用いる、シラン化合物を含まない表面処理液であって、当該表面処理液で処理された樹脂を大気雰囲気で数日間引き置いても、他の物質との接合における密着性がほとんど低下しないような表面処理液を提供することができる。上記表面処理液は、紫外線の照射により、又は紫外線照射なく加熱処理のみにより、表面処理及び界面分子結合に係る化学反応が進行するような、複数の化合物の組み合わせを含んでいる。
本発明の別の一形態によれば、当該表面処理液を用いた、表面処理物質の製造方法、樹脂フィルム積層体の製造方法、又は金属被覆樹脂の製造方法を提供することができる。特に、本発明の更に別の一形態は、ポリイミドフィルム積層体の製造方法を提供することができる。
図1は、表面処理樹脂フィルムの何通りかの重ね合わせ方を示す説明図である。 図2は、縮合物層における界面分子結合メカニズムの説明図である。 図3は、表面処理樹脂の製造方法のフロー図である。 図4は、実験結果を示す表図である。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態や実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の及ぶ範囲において実施される各種の変形形態や変形例をも含むものとして理解されるべきである。
<表面処理液>
本発明の一形態によれば、複数枚の樹脂フィルムが一体的に結合されてなる樹脂フィルム積層体を製造する目的で、又は、樹脂の表面に金属被覆を形成する目的で、樹脂に塗布
して用いる表面処理液であり、化合物αと、1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体と、を各々0.01質量%以上で、且つ合計5質量%以下の濃度で含み、前記化合物αは、一分子内に、アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基と、ОH基又はアルコキシ基と、を有する化合物であり、25℃におけるpHが4.5以下である表面処理液を提供できる。
本表面処理液は、好ましくは、樹脂と樹脂、又は、樹脂と金属の結合体を形成するために、密着を確保する目的で樹脂に塗布して用いる。本表面処理液を用いると、紫外線の照射により、又は紫外線照射なく加熱処理のみにより、界面分子結合が可能な表面処理を行うことができる。その表面処理の効果は、遮光された大気雰囲気の下で3日間又は7日間引き置いてから結合体を形成しても、ほとんど失われない。また、本表面処理液は、Si原子を含まないことが好ましい。
(樹脂)
本明細書における「樹脂」としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、汎用樹脂、エンジニアリング樹脂、スーパーエンジニアリング樹脂等が挙げられる。汎用樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・スチレン(AS)、ポリメチルメタアクリル(PMMA)、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)等が挙げられる。エンジニアリング樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPO))、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、超高分子量ポリエチレン(U-PE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。スーパーエンジニアリング樹脂としては、例えば、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリイミド(PI)、変性ポリイミド(MPI)、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。また、熱硬化性樹脂の商品形態としては、例えば、ポリイミド等のCステージ(硬化)シートや、ビルドアップシート、プリプレグ、ダイボンドシート、ACF(異方性導電シート)等のBステージ(未硬化)シートや、導電性又は絶縁性の、コンパウンド、ペースト又はインク等のAステージ材料等が挙げられる。
本発明の表面処理液は、上記の樹脂の中でも特に、カルボキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基若しくは3級アミノ基を有する1以上の化合物を含む樹脂、又は、そのような1以上の化合物の重合体を含む樹脂、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂に適する。
(表面処理液の溶媒)
本表面処理液は溶媒を含む。当該溶媒としては、上記化合物α及び上記重合体を溶解することができればよく、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、セルソルブ、カルビトール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(以下、「SF」と呼ぶ)等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、フタル酸メチル等のエステル、テト
ラヒドロフラン(THF)、エチルブチルエーテル、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエーテル、水等を用いることができる。これらの中でも、アルコール、エーテル及び水が好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体)
本表面処理液は、1級アミノ基(-NH2)又はイミノ基(-NH-)を有する繰り返
し単位をもった重合体を含む。当該重合体は、OH基又はアルコキシ基を有する上記化合物αとイオン結合又はアミド結合を形成し、界面分子結合の形成に寄与する。上記繰り返し単位の例は、前記の式(2)~式(7)のいずれかに示される繰り返し単位である。
式(2)~式(7)において、R、R1、R2及びR3で表されるアルキル基またはアリ
ール基は1つ以上の置換基を有し得る。適切な置換基としては、例えば4級アンモニウム基であるカチオン基、又は、例えば1級、2級若しくは3級アルキルもしくはアリールアミンであるアミン基等が挙げられる。他の適切な置換基の例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基、ポリ(エチレンイミン)などのポリ(アルキレンイミン)等が挙げられる。
上記繰り返し単位は、好ましくは、ポリ低級アルキレンイミン([Cm2mNH]n,mは1以上4以下の整数、nは2以上の整数)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンからなる群から選択される1以上の重合体に含まれる繰り返し単位であり、更に好ましくは、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンからなる群から選択される1以上の重合体に含まれる繰り返し単位である。
上記1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体は、直鎖構造、分岐構造、デンドリマー構造のいずれであってもよい。また、エピクロロヒドリン等の二官能性架橋剤で架橋されていてもよい。このような、上記重合体の製法は公知であり、例えば、特開2016-047849号公報及び同文献が引用する特許文献等に開示されている。
(重合体の重量平均分子量)
上記1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体の重量平均分子量は、本表面処理液の塗布ムラを抑制する観点から、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、1500以下であることが更に好ましい。また、前記重量平均分子量は、塗布膜厚の不均一性を抑制する観点から、好ましくは200以上であり、より好ましくは450以上であり、更に好ましくは900以上である。なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により計測されるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
(重合体の濃度)
本表面処理液における上記重合体の濃度は、界面分子結合における密着性を確保する観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。また、前記濃度は、塗布ムラを抑制する観点から、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
(化合物α)
本表面処理液は化合物αを含む。化合物αは、一分子内に、アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基(X)と、ОH基又はアルコキシ基(Y)と、を有する化合物である。化合物αがアジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基(X)(以下、アジド基等(X)と呼ぶ。)を有するから、本表面処理液は、紫外線の照射又は加熱処理により、界面分子結合が可能な表面処理を行うことができる。化合物αは、次の式(8)に示す構造をもつことが好ましい。
(8) (X)m-A-(E-(Y)ln
ここで、m,nはそれぞれ1以上の整数である。Aは(m+n)価の有機基又は空基(直接結合)を表す。1又は複数のEは、それぞれ独立に(l+1)価の基を表す。1又は複数のYは、それぞれ独立にOH基又はアルコキシ基を表す。防爆性の観点からmは3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基又はベンジルオキシ基であることが好ましい。
基Eが空基でない場合には、基Eは、ОH基又はアルコキシ基(Y)が直接結合している基Eの原子が、当該原子と直接結合している基Eの他の原子に比べて電気陰性度が小さい基であることが好ましい。そのような場合には、ОH基又はアルコキシ基(Y)と、前記重合物の1級アミノ基又はイミノ基とが、低温でも結合を形成しやすい。そのような基Eは、例えば、カルボニル基(C=O)、スルホニル基(О=S=O)、リン酸基(P=O)等である。このうち、カルボニル基が更に好ましい。基Eがカルボニル基である場合には、基(E-(Y)l)は、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基であり、整数n
は1であることが好ましい。
(m+n)価の有機基Aは、アルカンにおいて、又は、芳香環に0以上のアルキル基が結合してなる化合物において、0以上の炭素-炭素1重結合(C-C)の炭素原子間に、エーテル結合(-O-)、チオエーテル結合(-S-)若しくはアミド結合を挿入してなる化合物、から(m+n)個のH原子を除いてなる有機基であることが好ましい。上記芳香環は、入手容易性の観点から好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環又はビフェニル等である。
(化合物αにおける芳香環とアジド基等)
樹脂の表面処理後の加圧プレスに伴う界面分子結合における密着性を確保する観点から、前記有機基Aは芳香環を含むことが好ましい。又、より高い密着性を確保する観点から、化合物αにおける前記アジド基等は、前記芳香環に直接的に結合していることが好ましい。芳香環に直接的に結合したアジド基等は、反応性に富むからである。更に、ポリイミド等の樹脂を劣化させにくい長波長の紫外線の照射により、又は紫外線照射なく低温の加熱処理のみにより、界面分子結合が可能な表面処理液を提供するという観点から、化合物αはベンゼン環を有することが好ましく、前記アジド基等は前記ベンゼン環に直接的に結合していることがより好ましい。
有機基Aが芳香環を有し、かつ、それがベンゼン環である場合に、化合物αの好ましい例は、2-アジド安息香酸、3-アジド安息香酸、4-アジド安息香酸、2-アジドベンゼンスルホン酸、3-アジドベンゼンスルホン酸、4-アジドベンゼンスルホン酸等である。
有機基Aが芳香環を有しない場合、化合物αの好ましい例は、アジド酢酸エチルエステル、ジエチルリン酸アジド等である。
有機基Aが芳香環を有し、かつ、化合物αがカルボニル基を有する場合に、化合物αの好ましい例は、次の式(9)又は式(10)で表される化合物である。
(9) X-A1-(CH2b-(C=O)-Y
(10) X-A1-J-(CH2b-(C=O)-Y
ここで、Xは上記アジド基等である。YはOH基又はアルコキシ基である。2価の有機基A1は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環又はビフェニル
、好ましくはベンゼン環又はナフタレン環、更に好ましくはベンゼン環、から芳香環に直接結合した水素原子を2つ除いてなる基である。A1において芳香環に直接結合した1又
は複数のH原子は、それぞれ独立に、ハロゲン、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、OH基又はホルミル基等の1価の有機基で置換されていてもよい。bは0以上12以下の整数、好ましくは0以上3以下の整数、更に好ましくは0である。Jはアミド結合であり、(C=O)NR又はNR(C=O)のいずれでもよく、ここでRは、H原子、
炭素数が3以下のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基である。
(化合物αの製法)
式(9)及び式(10)に示すような、化合物αの合成方法は特に限定されないが、例えば、アルコキシカルボニル基とアルコキシカルボニル基以外の官能基cをともに有する化合物Qと、上記官能基cと結合反応可能な反応性基dとベンゼン環等とアジド基等をともに有する化合物Lとを、公知の方法で反応させることにより得ることができる。官能基cと反応性基dの組合せとしては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基等と、カルボキシ基との組合せなどが考えられる。
(化合物αの濃度)
本表面処理液における化合物αの濃度は、界面分子結合における密着性を確保する観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。また、前記濃度は、塗布ムラを抑制する観点から、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
(表面処理液のpH)
界面分子結合の形成を促進する観点、及び、本表面処理液で処理した樹脂への大気中のCО2やSО2の影響を防ぐ観点から、本表面処理液の25℃におけるpHは5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。また、併存するアミド結合の形成反応と分解反応のうち、形成反応をより促進する観点から、本表面処理液の25℃におけるpHは1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることが更に好ましい。本表面処理液のpHが上記条件を満たす弱酸性から酸性の領域にある場合には、本表面処理液で処理された樹脂を温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置いても、他の物質(樹脂や金属)との接合における密着性がほとんど低下しない。それに対して、本表面処理液のpHが中性からアルカリ性の領域にある場合には、遮光された非乾燥大気雰囲気で7日間引き置くと、密着性が顕著に低下する。その理由は定かではないが、おそらく、本表面処理液のpHが中性からアルカリ性の領域にある場合には、大気中のCО2やSО2が本表面処理液で処理された樹脂表面の吸着水中に溶解し、生じた炭酸イオン等が前記重合体の1級アミノ基又はイミノ基とイオン結合するために、密着に寄与する1級アミノ基又はイミノ基の数が減少するからであろう。一方、本表面処理液のpHが弱酸性から酸性の領域にある場合には、大気中のCО2やSО2が本表面処理液で処理された樹脂表面の吸着水中に溶解しにくいので、密着に寄与する1級アミノ基又はイミノ基の数があまり減少せず、密着性が保たれるのであろう。
なお、本明細書において、表面処理液のpHは、25℃においてpH試験紙(UNIVERSAL試験紙,アドバンテック東洋株式会社製)で測定される値を意味し、その測定誤差は±0.5程度である。
(酸とその酸解離定数pKa)
本表面処理液には更に酸を添加することができる。化合物αがアレニウス酸であり、その酸解離定数(化合物が多段階で解離する場合にはその第1段解離の解離定数のこと。25℃の水中における値。以下も同じ。)pKaが約4.0以下である場合には、多くのケースで本表面処理液における化合物αの濃度を適切に選ぶと、酸を添加しなくても本表面処理液のpHを5.0以下、より好ましくは4.5以下にすることができる。そうでない場合には、本表面処理液に酸を添加して、本表面処理液のpHを5.0以下、より望ましくは4.5以下にすることが好ましく、その場合には添加する酸の酸解離定数pKaは、約4.0以下であることが好ましい。
本表面処理液に添加する酸としては、無機酸、有機酸等、無機酸、有機酸等の種々の酸が利用可能である。無機酸としては、限定されるものではないが、塩酸、硝酸、リン酸、
硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、炭酸等が挙げられる。有機酸としては、限定されるものではないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の短鎖モノカルボン酸や、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸等の長鎖モノカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸や、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸や、ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸や、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸や、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルリン酸エステル等が挙げられる。これらの中で、無機酸、短鎖モノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、酸性アミノ酸が一般的に用いられ、更に塩酸、硫酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、コハク酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタミン酸が特に用いられる。これらの酸から選ばれた1以上の酸を同時に用いてもよく、前記1以上の酸の無水物を添加してもよい。本表面処理液に前記1以上の酸の無水物を添加することにより、前記1以上の酸を添加する場合と比べて、接合における密着性が顕著に向上する。これは、酸に替えて酸の無水物を添加することにより、熱プレスの際に前記酸と前記重合体が脱水縮合する際に生成する、水蒸気を含むガスの発生量が抑制されるからであると考えられる。また、本表面処理液に前記1以上の酸の無水物を添加することにより、前記1以上の酸を添加する場合と比べて、塗布後の引き置きによる上記密着性の低下が更に抑制される。
(酸の濃度)
本表面処理液に前記酸又はその無水物を添加する場合、その濃度は、界面分子結合における密着性を確保する観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。また、前記濃度は、塗布ムラを抑制する観点から、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。なお、上記の通り、化合物αがある程度強いアレニウス酸である場合には、本表面処理液に前記酸又はその無水物を添加しなくてもよい。
<表面処理樹脂の製造方法>
図3のフロー図を参照して、本発明の一形態によれば、上記いずれかの形態の表面処理液を樹脂の表面に塗布する工程(塗布工程(S2))と、前記表面処理液が塗布された前記樹脂の表面を加熱する工程(加熱活性化工程(S4))と、を具える表面処理樹脂の製造方法を提供することができる。
(塗布工程)
塗布工程(S2)では、ポリイミドフィルム等の樹脂に本表面処理液等の処理液を塗布する。ここで「塗布する」とは、当該樹脂の表面に処理液を「付着させる」又は「接触状態で存在させる」ことを言う。塗布する方法としては、従来公知のコーティング方法、例えば、刷毛塗り方式、インクジェット方式、グラビアコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式が挙げられる。処理液を塗布したときの塗膜の厚さ(ウェット膜厚)の下限は、表面処理樹脂と他の物質(樹脂や金属)との密着性を確保する観点から、例えば0.5μmが好ましく、1.5μmがより好ましく、5μmが更に好ましい。同じく塗膜の厚さ(乾燥膜厚)の下限は、例えば1nmが好ましく、3nmがより好ましく、10nmが更に好ましい。一方、この塗膜の厚さ(ウェット膜厚)の上限は、塗布容易性及び塗布ムラ抑制の観点から、例えば500μmが好ましく、150μmがより好ましく、50μmが更に好ましい。同じく塗膜の厚さ(乾燥膜厚)の上限は、例えば1μmが好ましく、300nmがより好ましく、100nmが更に好ましい。ディップコート方式を用いた場合の浸漬時間としては、例えば3秒以上60秒以下が好ましい。「塗布」は、樹脂の表面の一部に対して行われてもよいし
、樹脂の表面の全面に対して行われてもよい。また、樹脂がフィルム状若しくはシート状の場合、「塗布」は、樹脂の表又は裏の片面に対してのみ行われてもよいし、樹脂の表及び裏の両面に対して行われてもよい。
なお、「塗布」の後には通常、処理液を塗布した樹脂の表面を、大気雰囲気での自然乾燥、風乾、又は40℃~70℃程度の温風吹付等により乾燥させる工程(乾燥工程)が行われる。上記の塗布工程及び乾燥工程により、本表面処理液が含有する化合物α、及び、1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体が、上記樹脂の表面に配置される。
(加熱活性化工程)
加熱活性化工程(S4)では、本表面処理液を塗布した樹脂の表面を加熱する。加熱により、当該表面は、他の樹脂との加熱圧着や金属めっき等の接合に適した状態となる。加熱時の樹脂の表面の温度は、例えば80~160℃、好ましくは90℃~120℃であり、樹脂の表面がその温度に保たれる時間は、例えば30秒~60分、好ましくは5~20分である。加熱活性化工程において生じている現象の解析は困難であるが、およそ次のような現象が生じているものと推測される。加熱処理により化合物αが有するアジド基が分解されてN2ガスが離脱し、ラジカルが生成して、化合物αが樹脂、金属及び前記重合物
との結合に適した状態になるであろう。また、加熱により、化合物αが有するОH基又はアルコキシ基が、前記重合体の有する1級アミノ基又はイミノ基と、脱水縮合反応又は加水分解脱水縮合反応によりアミド結合を形成して、化合物αと前記重合物が縮合してなる縮合物の極めて薄い層を形成するであろう。更に、化合物αが有するОH基又はアルコキシ基が、樹脂表面のOH基等と脱水縮合又は加水分解脱水縮合して、化合物αと樹脂表面との間に結合を形成するであろう。このようにして、加熱活性化工程では、樹脂の表面に密着した縮合物の極めて薄い層が形成され、当該縮合物の表面は、別の樹脂や金属との結合に適した状態になると考えられる。
本発明の本形態に係る表面処理樹脂の製造方法により作製された表面処理樹脂は、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置いても、活性化状態が保たれており、他の物質(樹脂や金属)との接合における密着性がほとんど低下しない。7日間の引き置きによるピール強度の低下割合は10%以内若しくは25%以内である。
(UV活性化工程)
本発明の別の一形態によれば、上記の塗布工程と、本発明のいずれかの形態の表面処理液が塗布された樹脂の表面に紫外線を照射する工程(UV活性化工程(S6))を具える表面処理樹脂の製造方法を提供することができる。上記の加熱活性化工程では、加熱により化合物αが有するアジド基が分解したのであるが、UV活性化工程においては、紫外線の照射処理により化合物αが有するアジド基が分解されてN2ガスが離脱し、ラジカルが
生成して、化合物αが樹脂、金属及び前記重合物との結合に適した状態になると考えられる。照射する紫外線の波長は、密着性の確保及び紫外線によるポリイミドフィルム等の樹脂の劣化防止の観点から、好ましくは260~350nm、更に好ましくは330~350nmである。紫外線光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ及びUV-LEDのいずれを用いてもよい。
本発明の本形態においては、UV活性化工程に加えて、上記の加熱活性化工程を行ってもよい。その場合、加熱活性化工程とUV活性化工程の順序は問わず、いずれが先でもよいし、同時に行ってもよい。又、塗布工程と加熱活性化工程とUV活性化工程を、副生成物除去のための活性化後洗浄処理工程(S8)等の他の処理と組み合わせて、或いは、組み合わせることなく、任意の順序で反復適用してもよい。
本発明の本形態に係る表面処理樹脂の製造方法により作製された表面処理樹脂も、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置いても、活性化状態が保たれており、他の物質(樹脂や金属)との接合における密着性がほとんど低下しない。7日間の引き置きによるピール強度の低下割合は10%以内若しくは25%以内である。
(前処理工程)
本発明の別の一形態によれば、本発明のいずれかの形態に係る表面処理液を樹脂の表面に塗布する工程の前に、前記樹脂に対して、洗浄処理、酸処理、アルカリ処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、ケイ酸化炎処理(「イトロ処理」とも呼ばれる。)及び脱フッ素化処理からなる群より選ばれる1つ以上の前処理を行う工程(前処理工程(S1))を更に具える、表面処理樹脂の製造方法を提供することができる。
前処理工程は、ポリイミドフィルム等の樹脂の表面に前処理を行う工程であり、後の塗布工程及び乾燥工程において樹脂の表面に配置される、化合物α、及び、1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体が、当該表面に固定され易くする目的で、並びに、さらに後の加熱活性化工程及び/又はUV活性化工程を効率的に行う目的で実施する。前処理工程を実施することにより、樹脂は、その表面にOH基、カルボキシ基、カルボニル基、1級アミノ基又はイミノ基等の官能基が存在する活性化された状態となり、化合物αと結合を形成し易くなる。前処理工程としては、洗浄処理、酸処理、アルカリ処理、当該樹脂の表面にコロナ放電照射を行うコロナ放電処理、当該樹脂の表面をアルゴンプラズマ、酸素プラズマ又は大気プラズマ等のプラズマで処理するプラズマ処理、紫外線照射処理、及び、当該樹脂の表面をシラン化合物等のカップリング剤を混入した燃焼ガスの燃焼炎にさらすケイ酸化炎処理(イトロ処理)からなる群から選ばれた1以上の処理を行うことができる。1つの処理のみを実施してもよく、これらの処理の複数を組み合わせて実施してもよい。
本発明の本形態に係る表面処理樹脂の製造方法により作製された表面処理樹脂も、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置いても、活性化状態が保たれており、他の物質(樹脂や金属)との接合における密着性がほとんど低下しない。7日間の引き置きによるピール強度の低下割合は10%以内若しくは25%以内である。
<樹脂フィルム積層体の製造方法>
本発明の一形態によれば、複数枚の樹脂フィルムを用意して重ね合わせる工程(重ね合わせ工程)を含み、重ね合わされた前記複数枚の樹脂フィルムにおいて、隣接する任意の2枚の樹脂フィルムAとBのうち、少なくとも一方の樹脂フィルムAは、樹脂フィルムAの表裏のうち、少なくとも樹脂フィルムBと対向する側の表面に、本発明のいずれかの形態に係る表面処理樹脂の製造方法により処理が行われてなる表面処理樹脂フィルムであり、力を加えることにより、重ね合わされた前記複数枚の樹脂フィルムが一体的に結合される工程(加圧工程)を具える、樹脂フィルム積層体の製造方法を提供することができる。前記加圧工程では、例えば、大気雰囲気下、窒素雰囲気下あるいは真空中で、平板プレス、ロールプレス等を行う。生産性向上及び加工コスト低減の観点からは、大気雰囲気下での平板プレス又はロールプレスが好ましい。製造される樹脂フィルム積層体の品質安定性の観点からは、窒素雰囲気下又は真空中でのプレスが好ましい。プレス圧力は1~100MPaが好ましく、30~70MPaであることが更に好ましい。一般にプレス圧力が大きいほど製造される積層体の密着強度が大きくなり好ましいが、プレス圧力が大きすぎると支持体を破損するおそれがある。上記の圧力を加える時間は、例えば5~60分、より好ましくは10~20分である。前記加圧工程においては、同時に加熱を行うことが好ましい。加圧工程における前記樹脂フィルムの温度は、その耐熱温度を越えない範囲内とする。前記温度は、例えば40℃以上350℃以下、好ましくは120℃以上250℃以下、より好ましくは150℃以上230℃以下である。
図1は、上記重ね合わせ工程において重ねあわされた4枚の表面処理樹脂フィルム(以下、単にフィルムと呼ぶ。)1、2、3及び4の、表面処理のいくつかの可能なパターンを示す。図(1A)では、フィルム1は上面のみに表面処理が施されたフィルム(U)であり、フィルム2及び3は、いずれも両面に表面処理が施されたフィルム(B)であり、フィルム4は下面のみに表面処理が施されたフィルム(D)である。このパターンは(U
BBD)と表すことができる。図(1B)では、同様に、そのパターンを(UUUN)と表すことができる。ここで、フィルム4はいずれの面にも表面処理を施していないフィルム(N)である。図(1C)では、そのパターンを(UUUD)と表すことができる。
なお、積層体を構成する樹脂フィルムの枚数と各フィルムの厚みは任意であり、2枚、3枚、4枚、5枚、又は6枚以上など、用途に応じて適切な枚数と厚みの樹脂フィルムを用いて、樹脂フィルム積層体を製造することができる。
<樹脂フィルム積層体>
本発明の一形態によれば、複数枚の樹脂フィルムが、少なくとも1組の、隣接する2枚の前記樹脂フィルムの間に縮合物層を介して、積層してなる樹脂フィルム積層体であり、前記縮合物層は、化合物αと、1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体との脱水縮合物又は加水分解脱水縮合物を含み、前記化合物αは、一分子内に、アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基と、ОH基又はアルコキシ基と、を有する化合物である樹脂フィルム積層体を提供することができる。
(界面分子結合メカニズムの推定)
本発明における界面分子結合のメカニズムを検証することは容易ではないが、縮合物層で、およそ図2に示すような化学結合が生じているものと推測される。化合物αとして4-アジド安息香酸(以下、単にアジド安息香酸と呼ぶ。)を、前記重合体としてポリエチレンイミンを例に説明するが、一般の場合も同様である。
図2は、3枚の樹脂フィルム5,6及び7が積層してなる樹脂フィルム積層体9を示す。樹脂フィルム5と6は、本発明に係る縮合物層8を介して接合している。樹脂フィルム6と7は、樹脂フィルム5と6と同様にして接合していてもよく、或いは、例えば高温プレスなどの他の方法で接合していてもよい。樹脂フィルム5及び6の表面には元々、又は前記前処理工程で生じた、OH基、カルボキシ基、カルボニル基、1級アミノ基又はイミノ基等が存在する。
アジド安息香酸由来部分A1は、アジド基が分解して生じたラジカルにより、樹脂フィルム5の表面とラジカル結合する。A1のカルボキシ基とポリエチレンイミン構造Pのイミノ基とは、脱水縮合して、アミド結合を形成している。
アジド安息香酸由来部分A2のカルボキシ碁と、樹脂フィルム6の表面のOH基とは、脱水縮合している。A2は、アジド基が分解して生じたラジカルにより、ポリエチレンイミン構造Pとラジカル結合する。
アジド安息香酸由来部分A3は、アジド基が分解して生じたラジカルにより、樹脂フィルム5の表面とラジカル結合する。A3のカルボキシ碁と、アジド安息香酸由来部分A4のカルボキシ基とは、脱水縮合により酸無水物を形成している。A4のアジド基は、アジド基が分解して生じたラジカルにより、ポリエチレンイミン構造Pとラジカル結合する。
アジド安息香酸由来部分A5のカルボキシ基は、樹脂フィルム6の表面のカルボキシ基と、脱水縮合により酸無水物を形成している。A5のアジド基と、アジド安息香酸由来部分A6のアジド基とは、いずれも分解した後、ラジカル結合して、ジアゾ結合(-N=N-)を形成する。A6のカルボキシ碁と、ポリエチレンイミン構造Pのイミノ基とは、脱水縮合して、アミド結合を形成する。また、図示は省略するが、樹脂フィルム6の表面にアミノ基が存在する場合、当該アミノ基と、アジド安息香酸由来部分A5のカルボキシ基とが、脱水縮合によりアミド結合を形成する結合形態もあり得る。
なお、ポリエチレンイミン構造Pを介さずに、アジド安息香酸2分子以上の結合により、樹脂フィルム5と6を結びつける結合形態も想定できるが、後述する実験結果を見る限り、そのような結合形態の寄与は小さいと考えられる。
<ポリイミドフィルム積層体>
本発明の一形態によれば、前記複数枚の樹脂フィルムが、すべてポリイミドフィルムである樹脂フィルム積層体(ポリイミドフィルム積層体)を提供できる。本形態のポリイミ
ドフィルム積層体は、高耐熱性の非熱可塑性樹脂としてのポリイミドの特性を損なうことなく引き継ぎ、また、ポリイミドフィルムを本発明の表面処理液を用いて表面処理した後に、非乾燥大気雰囲気で7日間引き置いてから加圧してポリイミドフィルム積層体を構成しても密着性が保たれているから、製造工程の自由度が増す利点を有する。7日間の引き置きによるピール強度の低下割合は10%以内若しくは25%以内である。
(ポリイミド)
本発明の一形態において、樹脂として使用されるポリイミドは公知の物質であり、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分を主成分として用いて重縮合反応により得ることができる。ポリイミドフィルムは一般に、溶媒中でジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を、支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルムとなし、さらに高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られる。原料として用いるジアミン成分及びテトラカルボン酸二無水物成分は、樹脂フィルム積層体や金属被覆樹脂の用途に応じて求められる諸特性を考慮の上、適宜最適なものが選択される。
ポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸二無水物成分としては、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族テトラカルボン酸二無水物類や、脂環式テトラカルボン酸二無水物類、脂肪族テトラカルボン酸二無水物類を用いることができる。中でも、芳香族テトラカルボン酸二無水物類、脂環式テトラカルボン酸二無水物類が好ましい。耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸二無水物類がより好ましく、光透過性の観点からは脂環式テトラカルボン酸二無水物類がより好ましい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物類としては、特に限定されないが、前記化合物αがベンゼン環を有する場合には、化合物αとの親和性及び結合容易性の観点から、ベンゼン環又は置換基を具えたベンゼン環を有する酸二無水物であることが好ましく、ベンゼン環又は置換基を具えたベンゼン環以外の芳香環を有しない酸二無水物であることがより好ましい。
ベンゼン環又は置換基を具えたベンゼン環以外の芳香環を有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、
p-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、m-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、
p-クアテルフェニル-3,4,3''',4'''-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物が挙げられる。
ベンゼン環又は置換基を具えたベンゼン環以外の芳香環を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無
水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-3,7-ジヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,5-ジヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
脂環式テトラカルボン酸二無水物類としては、例えば、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1-カルボキシメチル-シクロペンタン-2,3,5-カルボン酸-2,6:3,5-二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物類としては、例えば、エタン-1,1,2,2-テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、プロパン-1,1,3,3-テトラカルボン酸二無水物、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリアミド酸を構成するジアミン成分としては、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類や、脂環式ジアミン類、脂肪族ジアミン類を用いることができる。中でも、芳香族ジアミン類、脂環式ジアミン類が好ましい。耐熱性の観点からは芳香族ジアミン類がより好ましく、光透過性の観点からは脂環式ジアミン類がより好ましい。
芳香族ジアミン類としては、特に限定されないが、前記化合物αがベンゼン環を有する場合には、化合物αとの親和性及び結合容易性の観点から、ベンゼン環又は置換基を具えたベンゼン環を有する芳香族ジアミンであることが好ましく、ベンゼン環又は置換基を具えたベンゼン環以外の芳香環を有しない芳香族ジアミンであることがより好ましい。
ベンゼン環又は置換基を具えたベンゼン環以外の芳香環を有しない芳香族ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、
3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニル-ジフルオロメタン、ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)メタン、ビス(2-エチル-4-アミノフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-アミノフェニル)メタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-チオジアニリン、
3,3’-チオジアニリン、4,4’-スルホニルジアニリン、3,3’-スルホニルジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノ-1’-メトキシベンズアニリド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)n-ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)n-ペンタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、5-アミノ-1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、2,6-ジアミノアントラキノン、2,7-ジアミノアントラキノン、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、
1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、
9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセンが挙げられる。
ベンゼン環又は置換基を具えたベンゼン環以外の芳香環を有する芳香族ジアミンとしては、例えば、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレンが挙げられる。
脂環式ジアミン類としては、例えば、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノ-2,6-ジメチルシクロヘキシル)メタンが挙げられる。
脂肪族ジアミン類としては、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが挙げられる。
ジアミン成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するポリイミドフィルムとしては、耐熱性の観点から芳香環を含むものが好ましく、非熱可塑性であるか熱可塑性であるかを問わず、特にその種類は限定されないが、具体的に例を挙げると、例えば、東レ・デュポン株式会社製のカプトンシリーズ、宇部興産株式会社製のユーピレックスシリーズ、鐘淵化学工業株式会社製のアピカルシリーズ、日東電工株式会社製のU-フィルムシリーズ等の非熱可塑性のポリイミドフィルムを好適に用いることができる。前記化合物αがベンゼン環を有する場合には、化合物αとの親和性及び密着性確保の観点から、ベンゼン環を含むポリイミドからなるフィルム、特に芳香環としてベンゼン環のみを含むポリイミドからなるフィルムを好適に用いることができる。高耐熱性用途のフィルムを構成するポリイミドのガラス転移点温度は、好ましくは
300℃以上、より好ましくは350℃以上である。また、ポリイミドフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、12.5μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、125μm、250μm等が挙げられる。
<金属被覆樹脂の製造方法(湿式めっき)>
本発明の一形態によれば、本発明のいずれかの形態に係る表面処理樹脂の製造方法により製造された表面処理樹脂の、表面処理が行われた表面に、湿式めっきにより金属被覆を形成する工程を有する金属被覆樹脂の製造方法を提供できる。
本形態では、表面処理樹脂の表面に、例えば、無電解めっき、蒸着又はスパッタリングにより金属被覆を形成する(シード層形成工程)。その後、当該金属被覆を電解めっきにより厚膜化してもよい(電解めっき工程)。金属被覆は表面全体に形成してもよく、フォトリソグラフィー等の公知の手法によりパターン状に形成してもよい。本形態により製造される金属被覆樹脂は、フレキシブル金属張積層板やプリント配線板として好適である。処理時間や処理コストの観点から、無電解めっき、蒸着又はスパッタリングにより形成される金属被覆の厚みは、好ましくは0.1~2μm、より好ましくは0.2~1μmである。金属被覆を電解めっきにより厚膜化する場合には、厚膜化後の金属被覆の厚みは、好ましくは0.2~50μm、より好ましくは0.5~20μmである。無電解めっきされる金属は、例えば、Cu、Niなどである。蒸着又はスパッタにより形成される金属被覆の金属は、例えば、Al、Cr、Sn、Ti、Cu、In、Au、Pt、Agなどである。また、金属被覆が電解めっきにより形成された層を含む場合、電解めっきされる金属は、例えば、Cu,Ni,Ag,Pd,Au,Pt,Zn,Cr,Sn,Biなどである。金属被覆は、金属単体でもよく、合金であってもよい。好ましくは、シード層形成工程及び/又は電解めっき工程の後で、100℃~250℃の温度で5~60分間のアニール処理を行う。
本形態の製造方法により製造される金属被覆樹脂の、樹脂とめっき金属との間の密着性は、表面処理樹脂を、表面処理が行われた後に温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置いてから金属被覆を形成しても、引き置かずに金属被覆を形成した場合と比べて、ほとんど低下しない。7日間の引き置きによるピール強度の低下割合は10%以内若しくは25%以内である。
<金属被覆樹脂の製造方法(金属箔の貼り合わせ)>
本発明の一形態によれば、本発明のいずれかの形態に係る表面処理樹脂の製造方法により製造された表面処理樹脂の、表面処理が行われた表面に、金属箔の貼り合わせにより金属被覆を形成する工程を有する金属被覆樹脂の製造方法を提供できる。貼り合わせる金属箔の厚みは、好ましくは0.2~50μm、より好ましくは0.5~20μmである。金属箔を構成する金属は、例えば、Cu,Ni,Ag,Pd,Au,Pt,Zn,Cr,Sn,Bi,Al、Ti、Inであり、特に、Cu,Ag,Au,Pt,Al等が挙げられる。金属箔は、金属単体でもよく、合金であってもよい。金属箔の、樹脂と貼り合わせる表面は、粗化されていても、無粗化であってもよい。
本形態は、表面処理樹脂の表面処理が行われた表面に金属箔を重ね合わせる工程(重ね合わせ工程)と、力を加えることにより、両者が一体的に結合される工程(加圧工程)を具える。前記加圧工程では、例えば、大気雰囲気下、窒素雰囲気下あるいは真空中で、平板プレス、ロールプレス等を行う。生産性向上及び加工コスト低減の観点からは、大気雰囲気下での平板プレス又はロールプレスが好ましい。製造される金属被覆樹脂の品質安定性の観点からは、窒素雰囲気下又は真空中でのプレスが好ましい。プレス圧力は1~100MPaが好ましく、30~70MPaであることが更に好ましい。一般にプレス圧力が大きいほど製造される金属被覆樹脂の密着強度が大きくなり好ましいが、プレス圧力が大きすぎると支持体を破損するおそれがある。上記の圧力を加える時間は、例えば5~60分、より好ましくは10~20分である。前記加圧工程においては、同時に加熱を行うことが好ましい。加圧工程における前記樹脂の温度は、その耐熱温度を越えない範囲内とす
る。前記温度は、例えば40℃以上350℃以下、好ましくは120℃以上250℃以下、より好ましくは150℃以上230℃以下である。
本形態の製造方法により製造される金属被覆樹脂の、樹脂と金属箔との間の密着性は、表面処理樹脂を、表面処理が行われた後に温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置いてから金属箔を貼り合わせても、引き置かずに金属箔を貼り合わせた場合と比べて、ほとんど低下しない。7日間の引き置きによるピール強度の低下割合は10%以内若しくは25%以内である。
<実施例1>
(表面処理液の作製)
「化合物α」として4-アジド安息香酸の粉末、「1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体」としてポリエチレンイミン(商品名:エポミン(登録商標),品番:SP-012,株式会社日本触媒製)の液体、及び「酸」としてマレイン酸の粉末を、各々所要質量だけ秤量し、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(以下、「SF」と呼ぶ)に混合・溶解して、淡黄色~橙色の表面処理液を得た。各成分の濃度(表面処理液全体に占める質量%。以下では単に「%」と記載する。)は、4-アジド安息香酸0.10%、ポリエチレンイミ0.10%、マレイン酸0.15%であり、pH試験紙で測定した溶液のpHは4.0であった。なお、使用したポリエチレンイミンの平均分子量は約1200で、アミン比は、1級アミノ基35%、2級アミノ基(イミノ基)が35%、3級アミノ基が30%である。
(表面処理樹脂の製造)
樹脂として、3cm×6cmサイズのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名「カプトン500H」、厚み125μm)2枚を用意し、それぞれアセトンで洗浄後、片面にアルゴンプラズマ処理(アルゴン流量100mL/分,5分,200W)を施した(前処理工程)。次いで、バーコーターを用いて、先に調製した表面処理液をウェット膜厚25μmで、アルゴンプラズマ処理を施した面に塗布した(塗布工程)。その後、2枚のポリイミドフィルムを100℃の恒温槽で10分間保持した(加熱活性化工程)。重量変化と乾燥膜厚の測定値(TEM-EDSによる)の間の関係性に基づいて推定される乾燥膜厚は約88nmである。
(樹脂フィルム積層体の製造)
これら表面処理済みの2枚のポリイミドフィルムを、表面処理がなされた面どうしが対向するようにして重ね合せ、上下に添えたクッション板を介して、平板プレス機でプレス温度200℃、プレス時間5分、プレス圧56MPaで加熱圧着してポリイミドフィルム積層体を作製した(加圧工程)。このポリイミドフィルム積層体を300℃のオーブンに投入して30分間放置した(アニール工程)。
(ピール強度の測定)
自然冷却後、30mm幅のポリイミドフィルム積層体に対し、90°の剥離強度試験を行った。縦型電動計測スタンドMX2-500N(株式会社イマダ製)にフォースゲージZTA-50Nを取り付け、90°剥離のピール強度試験機を構成した。剥離速度は50mm/分とした。全長6cmのうち、両端の1cmを除く4cm分についてピール強度を連続的に計測し、その平均値を求めた。
<実施例2、3及び4>
作製する表面処理液の各成分の濃度を4-アジド安息香酸0.40%、ポリエチレンイミ0.40%、マレイン酸0.15%(実施例2)、又は、3成分すべて0.04%(実施例3)若しくは0.02%(実施例4)とし、実施例3及び実施例4については塗布直前に孔径0.22μmのフィルタで表面処理液を濾過した以外は、実施例1と同様にして、表面処理液のpHを測定し、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定し
た。
<実施例1’>
実施例1におけるアニール工程を実施しないことを除いては、実施例1と同様にして、表面処理液のpHを測定し、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。
<実施例1-A>
実施例1における表面処理液を、マレイン酸(0.15%)の代わりに無水マレイン酸(0.15%)を用いて調製することを除いては、実施例1と同様にして、表面処理液のpHを測定し、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。
<実施例1-B>
実施例1-Aにおける表面処理液を、ウェット膜厚25μmではなく1.5μmで塗布することを除いては、実施例1-Aと同様にして、表面処理液のpHを測定し、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。
<比較例1~8>
比較例1~8のそれぞれについて、作製する表面処理液の各成分の濃度を図4の表図に示す値にしたことを除いては、実施例1と同様にして、表面処理液のpHを測定し、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。
(実験結果と考察)
上記の測定結果等を図4の表図に記載した。
4-アジド安息香酸、ポリエチレンイミン、マレイン酸の3成分を含む表面処理液を用いて製造したポリイミドフィルム積層体において4.0N/3cm以上の高いピール強度を得るためには、表面処理液が上記3成分のすべてを、各々少なくとも0.01%以上の濃度で含むことが好ましい。比較例1~8はいずれもこの条件を満たしておらず、ピール強度は2.4N/3cm未満と小さい。また、実施例1と実施例1’の比較から、アニール工程を追加することで、ピール強度が約2倍に増加することがわかる。又、高いピール強度を得るためには、表面処理液のpHは5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましい。なお、実施例4の表面処理液をSFで更に2~10倍に薄めても、塗布工程及び活性化工程(及びオプションでの活性化後洗浄処理工程)を2回以上反復することで、実施例4と同程度のピール強度を得ることは可能である。しかし、3成分のうちいずれかの濃度が0.01質量%未満の濃度の表面処理液は量産面で実用的ではない。
実施例1-Aでは、ポリイミドフィルム内部で破壊が生じたため正確な値が測定できなかったものの、ピール強度は10N/3cm以上であると推定された。実施例1と実施例1-Aの比較から、本表面処理液に酸の代わりに酸無水物を添加することで、ピール強度が顕著に向上することがわかる。実施例1-Aでは、ピール試験時の剥離の様子を観察すると、破壊が接合層ではなく基材内部(ポリイミドフィルム内部)で生じており、界面分子結合が極めて強いことがわかる。
実施例1-Bでも基材内部で破壊が生じ、ピール強度は10N/3cm以上であると推定された。表面処理液に酸無水物を添加することで、塗布膜厚が1.5μmと薄くても、高いピール強度が得られることがわかる。
<実施例4-U>
実施例4における加熱活性化工程の代わりに、風乾及びUV活性化工程を実施することを除いては、実施例4と同様にして、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。UV活性化工程においては、UV-LEDから被照射エネルギー200mJ/cm2で塗布面に紫外線を照射した。
その結果、7.0N/3cmのピール強度を得た。
これは、実施例4におけるピール強度(6.8N/3cm)をわずかに上回る値である。
<参考例1>
実施例1において、4-アジド安息香酸の代わりに安息香酸を用いて表面処理液を作製し、表面処理液における各成分の濃度が、安息香酸0.10%、ポリエチレンイミン0.10%、マレイン酸0.15%であることを除いては、実施例1と同様にして、表面処理液のpHを測定し、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。
<参考例1’>
参考例1におけるアニール工程を実施しないことを除いては、参考例1と同様にして、表面処理液のpHを測定し、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。
(参考例1及び1’の実験結果と考察)
表面処理液のpHは、参考例1,1’ともに4.0であった。ピール強度は、参考例1が3.9N/3cm、参考例1’が3.8N/3cmであった。アニール工程を実施することによるピール強度の増加はほとんど見られなかった。このことから、実施例1におけるアニール工程の実施によるピール強度の増加には、4-アジド安息香酸におけるアジド基が関与していると考えられる。
<実施例1-L>
実施例1と同様にして、2枚の表面処理済みのポリイミドフィルムを作製したのち、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置いてから重ね合わせ工程及び加圧工程を実施することを除いては、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。
その結果、7.3N/3cmの値を得た。
これは引き置きをしていない実施例1(8.0N/3cm)をわずかに下回る値であり、引き置きによるピール強度の低下割合は9%である。
<実施例1-BL>
実施例1-Bと同様にして、2枚の表面処理済みのポリイミドフィルムを作製したのち、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間及び30日間引き置いてから重ね合わせ工程及び加圧工程を実施することを除いては、実施例1-Bと同様にして、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。その結果、7日間引き置き後のピール強度は9.0N/3cm、30日間引き置き後のピール強度も9.0N/3cmであり、いずれの場合にも端部では基材破壊も見られた。これは、引き置きをしていない実施例1-B(10N/3cm以上)とそれほど変わらない値であり、本表面処理液に酸に替えて酸無水物を添加した場合の、引き置きによるピール強度の低下割合は約10%と小さいことがわかる。
<実施例3-L>
実施例3と同様にして、2枚の表面処理済みのポリイミドフィルムを作製したのち、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で3日間引き置いてから重ね合わせ工程及び加圧工程を実施することを除いては、実施例3と同様にして、ポリイミドフィルム積層体を作製してピール強度を測定した。
その結果、8.7N/3cmの値を得た。
これは引き置きをしていない実施例3(9.0N/3cm)をわずかに下回る値であり、引き置きによるピール強度の低下割合は3%である。
<実施例5>
実施例1と同じポリイミドフィルムを4枚用意し、うち3枚の片面に実施例1と同じ表面処理液を用いて、実施例1と同様の表面処理を施した。これら表面処理済みの3枚のポリイミドフィルムを、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置いて後、表面処理がなされた面を上にして重ね合わせ、最後に、未処理のポリイミドフィルム1枚を一番上に重ねて、上下に添えたクッション板を介して、平板プレス機でプレス温度200℃、プレス時間10分、プレス圧56MPaで加熱圧着してポリイミドフィルム積層体を作製した(加圧工程)。このポリイミドフィルム積層体を300℃のオーブンに投入して30分間放置した(アニール工程)。
その結果、密着性の良好なポリイミドフィルム積層体を得た。
<実施例6>
実施例1と同じポリイミドフィルムを用意し、その片面に実施例1と同じ表面処理液を用いて、実施例1と同様の表面処理を施した。
次いで、表面処理済みの表面処理ポリイミドフィルムを試料として、無電解めっき工程を実施した。無電解めっき工程においては、試料をプレディップ液に浸漬するプレディップ処理と、続いて、試料をキャタポジット44(ローム&ハース電子材料株式会社製)に浸漬する触媒付与処理と、続いて、試料を1v/v%濃度の塩酸に浸漬するアクセラレータ処理と、続いて、試料に銅の無電解めっきを施す無電解めっき処理と、続いて、めっき応力を低減するために、試料を60分間100℃の温度に保つ無電解めっき後アニール処理と、が実施された。無電解めっきのめっき厚は0.2μmであった
次いで、厚付けめっきのために、試料に電解銅めっきを施す電解めっき処理工程が実施された。めっき皮膜の膜厚は20μmであった。続いて、めっき応力を低減するために、試料を60分間150℃の温度に保つ電解めっき後アニール処理を実施した。こうして、金属被覆ポリイミドフィルムを得た。その後、金属被覆ポリイミドフィルムを10mm幅に裁断し、実施例1と同様にしてピール強度を測定した。
その結果、7.0N/cmのピール強度が得られた。
<実施例6-L>
実施例6と同様にして、表面処理ポリイミドフィルムを作製したのち、無電解めっき工程を実施する前に、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置くことを除いては、実施例6と同様にして、金属被覆ポリイミドフィルムを作製して、ピール強度を測定した。
その結果、6.6N/cmの値を得た。
これは引き置きをしていない実施例6(7.0N/cm)よりわずかに低い値であり、引き置きによるピール強度の低下割合は6%である。
<実施例7>
実施例1と同じポリイミドフィルムを用意し、実施例1と同様の表面処理を施して表面処理ポリイミドフィルムを得た。
次いで、上記表面処理ポリイミドフィルムと銅箔の貼り合わせ工程を実施した。銅箔として18μm厚の圧延銅箔を用いた。表面処理ポリイミドフィルムの表面処理が施された面に上記圧延銅箔を重ねて、上下に添えたクッション板を介して、平板プレス機でプレス温度180℃、プレス時間5分、プレス圧56MPaで加熱圧着して金属被覆ポリイミドフィルムを作製した(加圧工程)。自然冷却後、アニール工程を実施しないで、金属被覆ポリイミドフィルムを10mm幅に裁断した後、実施例1と同様にしてピール強度を測定した。
その結果、8.0N/cmのピール強度が得られた。
<実施例7-L>
ポリイミドフィルムに表面処理を施して表面処理ポリイミドフィルムを作製した後、銅
箔の貼り合わせ工程を実施する前に、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で7日間引き置くことを除いては、実施例7と同様にして、金属被覆ポリイミドフィルムを作製して、ピール強度を測定した。
その結果、7.8N/cmの値を得た。
これは引き置きをしていない実施例7(8.0N/cm)とほぼ同じ値であり、引き置きによるピール強度の低下割合は3%である。
<参考例2>
実施例7における表面処理液の代わりに、1分子内に複数のアミノ基を有するシランカップリング剤(商品名:X-12-972F,信越化学工業株式会社製)の0.2%エタノール溶液を表面処理液として用いて、それ以外は実施例7と同様にして、表面処理液のpHを測定し、金属被覆ポリイミドフィルムを作製してピール強度を測定した。
その結果、pHは8.0、ピール強度は7.6N/cmであった。
<参考例2-L>
参考例2と同様にして2枚の表面処理済みのポリイミドフィルムをそれぞれ作製したのち、温度23℃,湿度50%の遮光された大気雰囲気の室内で3日間又は7日間引き置いてから重ね合わせ工程及び加圧工程を実施することを除いては、参考例2と同様にして、金属被覆ポリイミドフィルムを作製し、ピール強度を測定した。
その結果、ピール強度は4.0N/cm(3日間引き置きの場合)及び2.7N/cm(7日間引き置きの場合)であった。これを引き置きをしていない参考例2(7.6N/cm)と比べると、引き置きによるピール強度の低下割合は47%(3日間引き置きの場合)又は65%(7日間引き置きの場合)と大きい。
(考察)
参考例2及び2-Lからわかるように、表面処理液がアミノ基を含む化合物を含有している場合、表面処理液のpHが中性からアルカリ性であれば、当該表面処理液で表面処理を行った表面処理樹脂を、非乾燥大気雰囲気で数日間引き置きすると、他の物質と接合した際に、顕著な密着性の低下が見られる。
本発明の表面処理液を用いて作製されるポリイミドフィルム積層体は高い耐熱性を有し、ガラス、セラミックなどの無機物の代替として使用可能であり、積層を繰り返すことにより厚いシートや板状の物も製造可能であって、機械加工することによりエンジニアリングプラスチック的な使い方が可能となる。FPC基板の補強用途や軽量なスペーサ、半導体試験装置のプローブソケット(試験用治具)などの用途に好適に用いることができる。本発明の表面処理樹脂基材は、非乾燥大気雰囲気の下で数日間放置してから積層・圧着又は湿式めっきにより、樹脂又は金属と積層体を製造しても密着が保たれるから、製造工程に柔軟性を持たせることができ、製造プロセス設計や分業・協業管理の自由度が増す利点を有する。
1,2,3,4 表面処理樹脂フィルム(又は樹脂フィルム)
5,6,7 樹脂フィルム
8 縮合物層
A1~A6 4-アジド安息香酸由来構造
P ポリエチレンイミン構造
S1 前処理工程
S2 塗布工程
S4 加熱活性化工程
S6 UV活性化工程
S8 活性化後洗浄処理工程
S3,S5,S7,S9 分岐判断ステップ

Claims (11)

  1. 複数枚の樹脂フィルムが一体的に結合されてなる樹脂フィルム積層体を製造する目的で、又は、樹脂の表面に金属被覆を形成する目的で、樹脂に塗布して用いる表面処理液であり、
    1級アミノ基又はイミノ基を有する繰り返し単位をもった重合体と、
    化合物αと、
    を、各々0.01質量%以上で、且つ合計5質量%以下の濃度で含み、
    前記化合物αは、一分子内に、
    アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基と、
    ОH基又はアルコキシ基と、
    を有する化合物であり、
    25℃におけるpHが4.5以下である表面処理液。
  2. 前記表面処理液は、更に酸又は当該酸の無水物を含み、前記酸の25℃における酸解離定数pKaが4.0以下である請求項1に記載の表面処理液。
  3. 前記ОH基又はアルコキシ基は、前記化合物αの有するカルボキシ基又はアルコキシカルボニル基に含まれる請求項1又は2に記載の表面処理液。
  4. 前記化合物αは、芳香環を含む請求項1又は2に記載の表面処理液。
  5. 前記芳香環はベンゼン環であり、前記アジド基、ジアゾメチル基又はアジドスルホニル基は、前記ベンゼン環に直接的に結合している請求項4に記載の表面処理液。
  6. 前記繰り返し単位は、次の式(2)~式(7)のいずれかに示される繰り返し単位である請求項1又は2に記載の表面処理液。
    Figure 2023114962000003
    (式中、aは0以上の整数であり、R、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、H原子
    、置換若しくは非置換のアルキル基又はアリール基であり、Z-は陰イオンである。各式
    において、R、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つはH原子である。)
  7. 請求項1に記載の表面処理液を樹脂の表面に塗布する工程と、前記表面処理液が塗布された前記樹脂の表面を加熱する工程と、を具える表面処理樹脂の製造方法。
  8. 請求項1に記載の表面処理液を樹脂の表面に塗布する工程と、
    前記表面処理液が塗布された前記樹脂の表面に紫外線を照射する工程と、を具える表面処理樹脂の製造方法。
  9. 前記表面処理液を樹脂の表面に塗布する工程の前に、前記樹脂に対して、洗浄処理、酸処理、アルカリ処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、ケイ酸化炎処理及び脱フッ素化処理からなる群より選ばれる1つ以上の前処理を行う工程を更に具える、請求項7又は8に記載の表面処理樹脂の製造方法。
  10. 複数枚の樹脂フィルムを用意して重ね合わせる工程を含み、
    重ね合わされた前記複数枚の樹脂フィルムにおいて、隣接する任意の2枚の樹脂フィルムAとBのうち、少なくとも一方の樹脂フィルムAは、樹脂フィルムAの表裏のうち、少なくとも樹脂フィルムBと対向する側の表面に、請求項7又は8に記載の表面処理樹脂の製造方法により処理が行われてなる表面処理樹脂フィルムであり、
    力を加えることにより、重ね合わされた前記複数枚の樹脂フィルムが一体的に結合される工程を具える、樹脂フィルム積層体の製造方法。
  11. 請求項7又は8に記載の表面処理樹脂の製造方法により製造された表面処理樹脂の、表
    面処理が行われた表面に、湿式めっき又は金属箔の貼り合わせにより金属被覆を形成する工程を有する金属被覆樹脂の製造方法。
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