以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
<1.トンネル掘削機の全体構成>
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル掘削機1の構成について説明する。
図1は、トンネル掘削機1の全体構成を示す断面模式図である。なお、図1中の矢印Fはトンネル掘削機1の前方向(つまり、進行方向)を示し、矢印Bはトンネル掘削機1の後方向を示す。図1中の矢印Fは切羽側を向き、矢印Bは坑口側を向く。
トンネル掘削機1は、地盤を掘削可能な土圧式(泥土圧式を含む。)のシールド掘削機である。図1に示すように、トンネル掘削機1は、掘削機本体10を備える。掘削機本体10は、筒状(例えば、円筒状または矩形筒状等)である。掘削機本体10の軸方向は、トンネル掘削機1の前後方向と一致する。
以下では、トンネル掘削機1の軸方向(つまり、掘削機本体10の軸方向)を単に軸方向とも呼び、トンネル掘削機1の径方向(つまり、掘削機本体10の径方向)を単に径方向とも呼び、トンネル掘削機1の周方向(つまり、掘削機本体10の周方向)を単に周方向とも呼ぶ。
掘削機本体10の前端には、カッタヘッド11が設けられる。カッタヘッド11は、略円盤状の回転体である。カッタヘッド11の中心部には、カッタ回転軸12の前端が嵌入されており、カッタヘッド11は、カッタ回転軸12を中心に回転可能に軸支されている。
カッタヘッド11は、外周リング11aと、内周リング11bと、カッタスポーク11cと、フィッシュテールカッタ11dと、カッタビット11eなどを有する。このうち、外周リング11aは、カッタヘッド11の外周部を形成しており、内周リング11bは、外周リング11aよりも径方向内側に配置されている。また、複数のカッタスポーク11cは、カッタヘッド11の前面において、カッタ回転軸12を中心として放射状に配置されている。カッタヘッド11の前面の中心部には、フィッシュテールカッタ11dが装着されている。さらに、カッタスポーク11cの前面には、多数のカッタビット11eが装着されている。なお、フィッシュテールカッタ11dおよびカッタビット11eは、着脱可能であってもよく、着脱可能でなくてもよい。
そして、カッタヘッド11には、上記外周リング11a、内周リング11bおよびカッタスポーク11cの相互の間に、複数の開口部が形成されている。当該開口部は、カッタヘッド11によって地盤(切羽)を掘削した際に発生する掘削土砂を、掘削機本体10内(後述するチャンバ17内)に取り込むための掘削土砂取込口として機能する。
掘削機本体10におけるカッタヘッド11よりも後方には、隔壁13が配置されている。隔壁13は、軸方向(トンネル延伸方向)に対して垂直に配置される板状(例えば、円板状)の壁体であり、隔壁13の外周縁は掘削機本体10の内周面10aに取り付けられる。カッタヘッド11と隔壁13は、軸方向(トンネル延伸方向)に所定間隔を空けて配置される。隔壁13の後方側には、トンネル掘削機1の各種設備が配置されており、隔壁13は、切羽で生じる掘削土砂から当該設備を隔離する。隔壁13の下部には、掘削土砂を排出するための開口部である排出口13aが形成されている。
隔壁13の中心部には、カッタ回転軸12が回転可能に支持されている。さらに、隔壁13には、環状の回転リング14が、カッタ回転軸12を中心として回転可能に支持されている。回転リング14の前部には、複数の連結ビーム15が周方向に所定の間隔で設けられている。複数の連結ビーム15は、カッタヘッド11と回転リング14を連結する。連結ビーム15の前端は、カッタヘッド11の内周リング11bとカッタスポーク11cとの接続部に連結されている。一方、回転リング14の後部には、リングギヤ14aが設けられている。なお、リングギヤ14aは、外歯式であってもよく、内歯式であってもよい。さらに、隔壁13の後方にはカッタ旋回用モータ16が設けられている。このカッタ旋回用モータ16の駆動ギヤ16aは、回転リング14のリングギヤ14aと噛み合っている。
カッタ旋回用モータ16を駆動させることにより、その駆動ギヤ16aの回転がリングギヤ14aから回転リング14および連結ビーム15に伝達される。これにより、カッタヘッド11を、カッタ回転軸12を中心として回転させることができる。この結果、回転するカッタヘッド11の前面を後述するシールドジャッキ19を利用して地盤(切羽)に押し付けて、地盤を掘削することができる。
カッタヘッド11と隔壁13との間には、チャンバ17が画成されている。チャンバ17は、カッタヘッド11の後面と、隔壁13の前面と、掘削機本体10の内周面10aとにより区画された空間(例えば、略円柱状の空間)である。カッタヘッド11による地盤の掘削に伴って発生する掘削土砂は、カッタヘッド11に貫通形成された上記開口部(掘削土砂取込口)を通じて、チャンバ17内に取り込まれる。チャンバ17は、掘削土砂を一時的に蓄えるための空間(室)として機能する。チャンバ17内に取り込まれた掘削土砂は、隔壁13の下部にある排出口13aを通じて、チャンバ17からスクリューコンベヤ18内に排出される。
スクリューコンベヤ18は、掘削機本体10内における隔壁13の後方側に設けられる。スクリューコンベヤ18は、掘削機本体10内において、後方側に向かうにつれて上方に傾斜して配置される。スクリューコンベヤ18の前端の開口部は、隔壁13の排出口13aに接続されている。これにより、スクリューコンベヤ18の内部空間は、隔壁13の排出口13aを通じてチャンバ17と連通する。スクリューコンベヤ18内には、螺旋状の羽根を備えたスクリュー状の回転体であるスクリュー羽根18aが設けられている。スクリュー羽根18aを回転駆動させることで、チャンバ17内に蓄えられた掘削土砂をスクリューコンベヤ18内に取り込んで、掘削機本体10の後方に向けて運搬し、排出することができる。
また、掘削機本体10の隔壁13よりも後方側には、エレクタ装置(図示省略)が設けられる。エレクタ装置は、掘削機本体10の軸方向、径方向および周方向(すなわち、トンネル延伸方向、トンネル径方向およびトンネル周方向)に移動可能に設けられる。エレクタ装置は、覆工部材であるセグメントSを把持可能であり、把持したセグメントSをトンネルTの内壁面(坑壁)に沿って組み立てる。
セグメントSは、掘削されたトンネルTの内壁面に沿った湾曲形状を有する環片である。上記エレクタ装置を駆動させることにより、複数のセグメントSを周方向に沿ってリング状に組み立てることができる。これにより、トンネルTの内壁面が複数のセグメントSにより覆工され、内壁面の崩落を防止できる。
さらに、掘削機本体10内には、複数のシールドジャッキ19が、周方向に相互に間隔を空けて設けられている。各シールドジャッキ19は、掘削機本体10の内周面10aに沿って、掘削機本体10の軸方向に延びるように設けられる。シールドジャッキ19は、例えば、油圧ジャッキであるが、トンネル掘削機1の推力を発生可能であれば、他の種類のジャッキ、アクチュエータ等であってもよい。シールドジャッキ19の後端には、伸縮可能な駆動ロッド19aが設けられている。駆動ロッド19aの先端は、既設のセグメントSの前端面と対向している。シールドジャッキ19の駆動ロッド19aを、後方に向けて伸長し、既設のセグメントSを押圧することにより、掘削機本体10に推進反力(つまり、推力)を付与することができる。すなわち、シールドジャッキ19が既設のセグメントSを押圧したときに発生する推力によって、掘削機本体10は前進可能である。
上述したように、トンネル掘削機1では、地盤の掘削に伴って発生する掘削土砂が、カッタヘッド11からチャンバ17内に取り込まれる。そして、チャンバ17内に取り込まれた掘削土砂は、カッタヘッド11と一体的に回転する撹拌翼(図示せず。)と、隔壁13に固定された固定翼(図示せず。)とによって、チャンバ17内で攪拌される。本実施形態に係るトンネル掘削機1では、カッタヘッド11からチャンバ17に取り込まれた掘削土砂の性状が適切かどうかを確認する目的で、チャンバ17内の掘削土砂を採取(サンプリング)するための土砂サンプリング装置が設けられている。以下に、本実施形態に係る土砂サンプリング装置について説明する。
<2.土砂サンプリング装置の概要>
次に、図2~図11を参照して、本実施形態に係るトンネル掘削機1の隔壁13に設けられる土砂サンプリング装置100の概要について説明する。
本実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、掘削機本体10の機体内側(隔壁13の後方側)から、チャンバ17内の掘削土砂を採取(サンプリング)するための装置である。土砂サンプリング装置100を用いてチャンバ17内の実際の掘削土砂をサンプリングすることにより、カッタヘッド11により掘削した土砂がチャンバ17内でどのような性状になっているかを確認することができる。詳細には、チャンバ17内の実際の掘削土砂をサンプリングすることにより、切羽においてカッタビット11eまたはローラーカッタ等を用いて掘削した(削り取った)土砂が、「チャンバ17内に適切に取り込まれているかどうか」や、「掘削土砂と添加剤などとの混錬が妥当に行われ、掘削土砂が適切に塑性流動化されているかどうか」などを、確認することができる。
なお、サンプリングした掘削土砂の比重や水分含有量、空隙の有無(気泡含有量)などを確認することにより、掘削土砂がチャンバ17内に適切に取り込まれているかどうかをチェックすることができる。また、サンプリングした掘削土砂のスランプ値や添加剤の含有量などを確認することにより、掘削土砂が適切に塑性流動化されているかどうかをチェックすることができる。
<2.1.従来の土砂サンプリング装置の問題>
ところで、上記特許文献1に記載の従来の土砂サンプリング装置では、回転するスクリュー羽根を用いて、隔壁に形成された開口部からチャンバ内の掘削土砂を機内側に取り込む構造であった。しかし、かかる従来の構造であると、土砂サンプリング装置の機械構造が複雑であるという問題があった。また、スクリュー羽根により掘削土砂を取り込む過程で、チャンバ内の掘削土砂が混錬されてしまい、掘削土砂の性状が変化してしまう可能性があるという問題があった。さらに、スクリュー羽根を用いた従来の土砂サンプリング装置は、密閉構造としては弱いため、掘削土砂が噴発するおそれがあり、土圧式シールドマシンに適用できても、泥水式シールドマシンには適用不可または適用困難であるという問題があった。加えて、チャンバ内の掘削土砂を、隔壁に形成された開口部から取り込む構造であるため、隔壁の近辺の掘削土砂しかサンプリングできず、隔壁から前方に離隔した位置の掘削土砂をサンプリングすることができないという問題もあった。
そこで、上記従来の土砂サンプリング装置の問題を解決するため、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、簡易な機械構造で実現でき、チャンバ17内の掘削土砂のサンプリングを、掘削土砂の性状に変化を与えることなく、安全かつ確実に行うことができ、さらに、チャンバ17内の所望のサンプリング位置(隔壁13から前方に離隔した位置を含む。)から掘削土砂をサンプリング可能にすることを目的としている。
<2.2.土砂サンプリング装置の概略構成>
次に、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100の概略構成について説明する。
まず、土砂サンプリング装置100の設置位置について説明する。図2~図11に示すように、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、隔壁13よりも後方側の掘削機本体10の内部(以下、「機体内」という。)に設けられ、機体内側から隔壁13に取り付けられる。土砂サンプリング装置100は、隔壁13に貫通形成された開口13b付近に取り付けられており、当該開口13bを通じてチャンバ17内の掘削土砂をサンプリングする。
チャンバ17内において掘削土砂のサンプリングを所望する位置(以下、「所望のサンプリング位置」という。)に応じて、隔壁13における開口13bの形成位置と、隔壁13に対する土砂サンプリング装置100の取付位置が調整される。図2等の例では、隔壁13の上部側に開口13bが形成され、当該開口13bに対応する位置に土砂サンプリング装置100が取り付けられている。かかる配置により、土砂サンプリング装置100は、チャンバ17の上部側の掘削土砂をサンプリングすることができる。しかし、隔壁13に対する土砂サンプリング装置100の取付位置は、かかる例に限定されない。例えば、チャンバ17内の所望のサンプリング位置に応じて、隔壁13の下部側、右側、左側など、隔壁13の径方向および周方向の任意の位置に、土砂サンプリング装置100が取り付けられてもよい。また、図2等の例では、隔壁13に対して1つの土砂サンプリング装置100のみが設けられているが、チャンバ17内の所望のサンプリング位置が複数ある場合には、当該複数のサンプリング位置に対応して、複数の土砂サンプリング装置100を隔壁13に取り付けてもよい。
次に、土砂サンプリング装置100の構成要素について説明する。図2~図11に示すように、土砂サンプリング装置100は、開閉弁110と、筒状部材120と、ピストン130と、ケーシング140と、機体内とチャンバ17との間で筒状部材120を挿抜する挿抜機構と、筒状部材120内でピストン130を筒状部材120の軸方向に摺動させる摺動機構とを備える。
開閉弁110は、隔壁13の開口13b、または当該開口13bに連通する筒状部材120の移動通路を開閉可能に構成される。本実施形態の例では、開閉弁110は、開口13bに連通する筒状部材120の移動通路を開閉可能に構成される。
ここで、筒状部材120の移動通路は、筒状部材120を収容するケーシング140の内部空間である。後述するように、筒状部材120は、ケーシング140の内部を、筒状部材120の軸方向(以下、単に「軸方向」という場合もある。)に移動可能に設けられる。開閉弁110は、このケーシング140内の筒状部材120の移動通路を開閉する機能を有する。具体的には、開閉弁110は、例えば、ナイフゲート弁で構成され、隔壁13よりも若干後方側の位置でケーシング140に取り付けられる。開閉弁110は、ケーシング140の内部空間(即ち、筒状部材120の移動通路)を開放/遮断するように弁体112を動作させることにより、当該移動通路を開閉する。これにより、開閉弁110は、当該移動通路に連通する隔壁13の開口13bを間接的に開閉することができる。しかし、かかる例に限定されず、例えば、開閉弁110は、隔壁13の開口13bに配置されるゲート弁で構成されてもよく、隔壁13の開口13bを直接的に開閉するようにしてもよい。
筒状部材120は、軸方向に長い筒状を有する部材であり、チャンバ17内に挿入されるサンプリング管として機能する。筒状部材120は、例えば、円筒状の金属管などで構成される。筒状部材120は、円筒形状の筒状体であることが好ましい。しかし、かかる例に限定されず、筒状部材120は、内部空間を有する筒状であれば、楕円形、矩形、三角形、多角形などの任意の断面形状を有する筒状であってもよい。筒状部材120が隔壁13の開口13bを通過できるように、筒状部材120の外径は開口13bの径よりも小さい。また、筒状部材120の肉厚は、特に限定されないが、チャンバ17内の掘削土砂に挿入されるサンプリング管としての強度を維持しつつ、挿入抵抗を適度に抑制可能な肉厚であることが好ましい。
ピストン130は、筒状部材120の内部に設置される栓部材であり、筒状部材120の内部を、筒状部材120の軸方向に摺動可能に設けられる。ピストン130は、チャンバ17内の掘削土砂を筒状部材120の内部に吸引する機能と、筒状部材120の前端開口121を塞ぐ機能とを有する。ピストン130の材質は、例えば、金属であってもよいし、ゴム、プラスチックなどの樹脂であってもよい。ピストン130の外周面は、筒状部材120の内周面に対して密着しており、両者の隙間からエアーや液体が抜けないように、気密かつ液密になっている。ピストン130が筒状部材120の内部を前端側から後端側まで長いストロークL1で摺動できるように、ピストン130の厚み(軸方向の長さ)は、筒状部材120の軸方向の長さよりも十分に小さいことが好ましい。
ケーシング140は、筒状部材120を覆う収容体としての機能と、筒状部材120を軸方向に移動可能に支持する機能と、土砂サンプリング装置100を隔壁13に固定する機能とを有する。ケーシング140は、隔壁13の開口13b付近に取り付けられ、固定される。ケーシング140は、筒状部材120を収容可能な中空部材で構成される。ケーシング140の前端部は開放されており、当該前端部の略全面に前端開口141が形成されている。一方、ケーシング140の後端部は閉塞されており、その中央部に部分的に後端開口142が形成されている。
ケーシング140の内部空間は、隔壁13の開口13bを通じてチャンバ17と連通しており、筒状部材120の移動通路となる。筒状部材120は、ケーシング140の内部空間を軸方向に移動可能であり、ケーシング140は、この筒状部材120の軸方向の移動をガイドする。図2等に示す例のケーシング140は、筒状部材120よりも大径の円筒体で構成されている。そして、ケーシング140の内部空間を筒状部材120が軸方向に円滑に移動できるように、ケーシング140の内周面と筒状部材120の外周面との間には、適度なクリアランスが設けられている。しかし、かかる例に限定されず、ケーシング140は、筒状部材120を軸方向に移動可能に収容可能な内部空間を有する部材であれば、円筒体以外の任意の形状を有してもよい。
挿抜機構は、筒状部材120を軸方向に移動させて、機体内からチャンバ17に対して挿抜するための機構である。挿抜機構は、ケーシング140内に収容された筒状部材120を、軸方向前方に移動させることにより、筒状部材120を、機体内から隔壁13の開口13bを通じてチャンバ17内に挿入する。また、挿抜機構は、チャンバ17内に挿入された筒状部材120を、軸方向後方に移動させることにより、筒状部材120を、チャンバ17内から開口13bを通じて機体内に抜去する。
摺動機構は、筒状部材120の内部においてピストン130を軸方向に摺動させるための機構である。摺動機構は、筒状部材120の後端側に配置されたピストン130を、軸方向前方に摺動させて、筒状部材120の前端側に押し出す。また、摺動機構は、筒状部材120の前端側に配置されたピストン130を、軸方向後方に摺動させて、筒状部材120の後端側に引き込む。このように、摺動機構は、筒状部材120の内部においてピストン130を軸方向に前進または後退させる。
なお、上記の挿抜機構と摺動機構は、図2~図6に示す第1~第3の実施形態のように、共通の1つの移動機構(1つのジャッキ150、または、1つの空圧装置160など)で構成されてもよいし、図7~図11に示す第4~第6の実施形態のように、相異なる複数の移動機構の組合せ(例えば、ジャッキ150と空圧装置160の組合せ、または、複数のジャッキ180、190の組合せ、複数の油圧機構210、22の組合せなど)で構成されてもよい。挿抜機構と摺動機構の具体的な構成の詳細については、後述する。
<2.3.土砂サンプリング装置のサンプリング動作の概要>
次に、図2A~図2Dの例を参照して、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100による掘削土砂のサンプリング動作の概要について説明する。
隔壁13に形成された開口13bに装着された土砂サンプリング装置100を用いて、チャンバ17内の掘削土砂をサンプリングする前に、まず、図2Aに示すように、ケーシング140に設けられた開閉弁110の弁体112を閉じて、隔壁13の開口13bに連通するケーシング140の内部空間(筒状部材120の移動通路)を遮断する。これにより、チャンバ17内の掘削土砂が、開口13bおよび当該移動通路を通じて機体内に侵入することを防止できる。次いで、ケーシング140の内部空間の後部側に筒状部材120をセットする。このとき、予め摺動機構によりピストン130を筒状部材120内で軸方向前方に摺動させておくことによって、ピストン130は、筒状部材120内における前端開口121側に配置されている。
次いで、図2Bに示すように、開閉弁110の弁体112を開けて、ケーシング140内の筒状部材120の移動通路を開放し、隔壁13の開口13bと連通させる。その後、挿抜機構により筒状部材120を軸方向に前進させて、開口13bからチャンバ17内に挿入する。このとき、挿入された筒状部材120の前端開口121がチャンバ17内の所望のサンプリング位置に配置されるように、筒状部材120の挿入ストロークL2が調整される。また、チャンバ17内に筒状部材120を挿入するときには、ピストン130は筒状部材120の前端開口121側に配置されている。このため、ピストン130が筒状部材120の前端開口121を塞ぐ栓として機能するため、筒状部材120の前端開口121から内部に掘削土砂が侵入しない。
土砂サンプリング装置100は、上記のように、開閉弁110により筒状部材120の移動通路を開け、筒状部材120をチャンバ17内に挿入して固定した状態(図2B参照。)で、図2Cに示すように、摺動機構により、筒状部材120の前端側に配置されたピストン130を、軸方向後方に摺動させて、筒状部材120の後端側に引き込む。このピストン130の引き込みによる吸引力によって、チャンバ17内の掘削土砂が筒状部材120の前端開口121から筒状部材120の内部に取り込まれる。この結果、ピストン130の後退に伴い生じた筒状部材120の内部空間に、チャンバ17内の掘削土砂が入り込んで充満する。
次いで、図2Dに示すように、掘削土砂を取り込んだ筒状部材120を、挿抜機構により軸方向後方に移動させて、チャンバ17内から機体内に抜去し、ケーシング140内における開閉弁110よりも後方側に配置する。その後、開閉弁110の弁体112を閉めて、ケーシング140内の筒状部材120の移動通路を遮断する。これにより、チャンバ17内の掘削土砂が、隔壁13の開口13bおよび当該移動通路を通じて機体内に侵入することを防止できる。その上で、機体内で、掘削土砂を取り込んだ筒状部材120をケーシング140から取り外して、掘削土砂のサンプリング(採取)が完了する。
<2.4.土砂サンプリング装置の作用効果>
以上のように、本実施形態によれば、従来技術と比較してシンプルな機械構造の土砂サンプリング装置100を用いて、チャンバ17内の掘削土砂を安全かつ確実にサンプリングすることができる。さらに、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、隔壁13の開口13bに簡単に取り付け可能な構造であるので、取り扱いが簡便であり、低コストで汎用性も高く、既存のトンネル掘削機に対しても容易に追加設置できる。
また、本実施形態によれば、筒状部材120とピストン130を用いた吸引動作により、チャンバ17内の掘削土砂を筒状部材120の内部に自然に取り込んで、サンプリングすることができる。したがって、従来のスクリュー羽根式の土砂サンプリング装置のように掘削土砂を混錬することなく、チャンバ17内の掘削土砂を筒状部材120内に円滑に取り込んでサンプリングできる。よって、サンプリング時に掘削土砂の性状を変化させることがないので、チャンバ17内の掘削土砂の性状を正確に把握することが可能である。
さらに、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、比較的シンプルな構造であるとともに、開閉弁110やケーシング140等を備えており、構造的な密閉性に優れる。このため、チャンバ17内の掘削土砂が、土砂サンプリング装置100を通じて機体内に噴発することを防止できる。したがって、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、土圧式シールドマシンだけでなく、泥水式シールドマシン等にも好適に適用可能であり、サンプリング作業の安全性も高い。
加えて、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100によれば、チャンバ17内への筒状部材120の挿入ストロークL2を変更することにより、チャンバ17内の前後方向の任意の位置から掘削土砂をサンプリングすることができる。例えば、挿入ストロークL2を長くすれば、カッタヘッド11の背面近辺の掘削土砂をサンプリングでき、挿入ストロークL2を短くすれば、隔壁13付近の掘削土砂をサンプリングできる。したがって、隔壁13付近の掘削土砂だけでなく、隔壁13から前方に離隔した位置など、チャンバ17内の任意のサンプリング位置の掘削土砂を、容易かつ適切にサンプリングできる。よって、チャンバ17内におけるサンプリング位置の自由度が高く、チャンバ17内の各サンプリング位置での掘削土砂の性状を正確に把握することができる。
なお、本実施形態では、チャンバ17内への筒状部材120の挿入方向が、トンネル掘削機1の軸方向(トンネル延伸方向)と平行である例について説明するが、当該挿入方向は、トンネル掘削機1の軸方向に対して斜め方向に偏向してもよい。これにより、チャンバ17内のより多様な位置の掘削土砂を、多様な方向から容易にサンプリング可能となる。
以上、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100の概要について説明した。以下では、土砂サンプリング装置100の複数の具体例について詳述する。
<3.土砂サンプリング装置の具体例>
次に、図2~図11を参照して、本実施形態に係る土砂サンプリング装置100の複数の具体例について説明する。以下では、挿抜機構と摺動機構が共通の1つの移動機構で構成される場合(第1~第3の実施形態:図2~図6参照。)と、挿抜機構と摺動機構が別々の複数の移動機構の組合せで構成される場合(第4~第6の実施形態:図7~図11参照。)とに分けて説明する。
<3.1.挿抜機構と摺動機構が共通の移動機構の場合>
図2~図6に示すように、第1~第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100では、筒状部材120をチャンバ17に挿抜する挿抜機構と、筒状部材120内でピストン130を摺動させる摺動機構とが、共通の1つの移動機構で構成されている。
移動機構は、概略的には、動力付与装置と、係止部材とを備える。動力付与装置は、筒状部材120の内部においてピストン130を筒状部材120の軸方向に移動させるための動力をピストン130に付与する。ここで、動力付与装置は、第1の実施形態(図2、図3参照。)および第2の実施形態(図4参照。)のようにジャッキ150で構成されてもよいし、あるいは、第3の実施形態(図5、図6参照。)のように空圧装置160で構成されてもよい。
係止部材は、ピストン130とともに筒状部材120を軸方向に移動させるために、複数の部材を相互に係止する部材である。係止部材は、筒状部材120とピストン130とが連動して移動するように、筒状部材120とピストン130等を相互に係止する。係止部材は、第1の実施形態(図2、図3参照。)および第3の実施形態(図5、図6参照。)のように、筒状部材120とピストン130とを係止する前後1組のストッパー123、124で構成されてもよい。あるいは、係止部材は、第2の実施形態(図4参照。)のように、筒状部材120とピストン130とを係止する後方ストッパー124と、筒状部材120とジャッキ150とを係止するストッパー155との組合せであってもよい。
このように、挿抜機構と摺動機構とを共通の1つの移動機構で構成することにより、筒状部材120の挿抜動作と、ピストン130の摺動動作を1つの機構で実現できる。したがって、挿抜機構および摺動機構の部品点数を低減でき、機械構造を簡素化できるので、土砂サンプリング装置100による挿抜動作と摺動動作の信頼性を向上することができる。
<3.1.1.第1の実施形態>
次に、図2および図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る土砂サンプリング装置100について詳細に説明する。図2A~図2Dは、第1の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の動作を示す断面図である。図3は、第1の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の筒状部材120の周辺構成を示す拡大断面図である。
まず、第1の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の構成について説明する。図2および図3に示すように、第1の実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、共通の移動機構(挿抜機構および摺動機構)の動力付与装置として、1つのジャッキ150を備える。ジャッキ150は、例えば、油圧ジャッキで構成されることが好ましいが、エアージャッキなど他の種類のジャッキで構成されてもよい。
ジャッキ150は、筒状部材120の軸方向に伸縮可能な伸縮ロッド151と、当該伸縮ロッド151を収容および支持するジャッキ本体152とを有する。図3に示すように、ジャッキ150の伸縮ロッド151は、ケーシング140の後端部に貫通形成された後端開口142からケーシング140の内部に挿入されるとともに、筒状部材120の後端部に貫通形成された後端開口122から筒状部材120の内部に挿入される。伸縮ロッド151は、ケーシング140の後端開口142および筒状部材120の後端開口122に挿通されて、ピストン130に接続されており、ケーシング140および筒状部材120には接続されていない。
ジャッキ本体152は、筒状部材120を収容するケーシング140の後方に配置される。ジャッキ本体152の前端部は、ケーシング140の後端部に接続されて固定されている。ジャッキ150は、ケーシング140に対して固定されたジャッキ本体152に対して、伸縮ロッド151を伸縮させる。かかる伸縮ロッド151の伸縮により、筒状部材120の内部でピストン130を軸方向に摺動させるとともに、当該ピストン130の摺動動作に連動させて、ケーシング140の内部で筒状部材120を軸方向に摺動させることができる。
かかるピストン130と筒状部材120の連動を実現するために、第1の実施形態では、ピストン130と筒状部材120とを係止する係止部材として、筒状部材120に前後1組のストッパー123、124が形成されている。詳細には、係止部材は、筒状部材120の前端側に設けられる前方ストッパー123と、筒状部材120の後端側に設けられる後方ストッパー124とを有する。
筒状部材120の前端と後端にそれぞれ設けられた前方ストッパー123と後方ストッパー124により、筒状部材120内におけるピストン130の摺動可能範囲が規制される。ピストン130は、図2Aおよび図2Cに示す摺動ストロークL1の範囲内で、筒状部材120の内部を軸方向前方および後方に摺動可能である。
前方ストッパー123は、筒状部材120の前端開口121に設けられる。前方ストッパー123は、筒状部材120の前端部の内周面に沿って環状、または間欠的な部分円弧状に設けられ、当該内周面から筒状部材120の径方向中心に向けて張り出すように形成される。前方ストッパー123は、筒状部材120の前端側に摺動したピストン130を係止可能である(図2B参照。)。前方ストッパー123の径方向内側の開口部分が、筒状部材120の前端開口121となり、当該前端開口121は、後述する土砂サンプリング時における掘削土砂の流入口となる。この観点から、前方ストッパー123によりピストン130を係止可能な範囲内で、前方ストッパー123の大きさ(径方向の張り出し幅)をできるだけ小さくして、前方ストッパー123により筒状部材120の前端開口121を塞ぐ面積をできるだけ小さくすることが好ましい。これにより、掘削土砂の流入口である前端開口121の面積を広く確保することができ、掘削土砂を前端開口121から筒状部材120の内部に円滑に導入できようになる。
一方、後方ストッパー124は、筒状部材120の後端開口122に設けられる。後方ストッパー124は、筒状部材120の後端部の内周面に沿って環状に設けられ、当該内周面から筒状部材120の径方向中心に向けて張り出すように形成される。後方ストッパー124は、筒状部材120の後端側に摺動したピストン130を係止可能である(図2C参照。)。後方ストッパー124の径方向内側の開口部分が、筒状部材120の後端開口122となり、当該後端開口122は、前述のジャッキ150の伸縮ロッド151を挿通するための挿入孔として機能する。そして、後方ストッパー124は、上記のようにピストン130を係止する機能だけでなく、筒状部材120の後端部を塞ぐ遮蔽部材としても機能する。この観点から、後方ストッパー124の大きさ(径方向の張り出し幅)をできるだけ大きくして、後方ストッパー124により筒状部材120の後端部を塞ぐ面積をできるだけ大きくすることが好ましい。これにより、後述する土砂サンプリング時に筒状部材120の内部に取り込んだ掘削土砂が、筒状部材120の後端開口122から外部に漏れ出してしまうことを抑制できる。
以上のように、第1の実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、挿抜機構の機能と摺動機構の機能とを兼ね備えた移動機構を具備し、当該移動機構は、動力付与装置としてのジャッキ150と、係止部材としての前方ストッパー123および後方ストッパー124とを備える。
かかる構成により、土砂サンプリング装置100は、図2Aおよび図2Bに示すように、筒状部材120内で前進させたピストン130を、筒状部材120の前方ストッパー123に当接させた状態で、ジャッキ150によりピストン130に対して軸方向前方の動力を付与する。これにより、ピストン130とともに筒状部材120を軸方向前方に移動させて、チャンバ17内に挿入することができる。さらに、土砂サンプリング装置100は、図2Cおよび図2Dに示すように、後退したピストン130を筒状部材120の後方ストッパー124に当接させた状態で、ジャッキ150によりピストン130に対して軸方向後方の動力を付与する。これにより、ピストン130とともに筒状部材120を軸方向後方に移動させて、チャンバ17から機体内に抜去することができる。
このように、第1の実施形態によれば、ピストン130および筒状部材120と、ジャッキ150との接続関係を工夫し、かつ、ストッパー123、124によりピストン130と筒状部材120とを相互に係止可能な構造にする。これによって、1つのジャッキ150を用いて、ピストン130と筒状部材120を連動させて軸方向に前進および後退させることができる。したがって、筒状部材120内でピストン130を摺動させる動作と、筒状部材120をチャンバ17に対して挿抜する動作を、1つの移動機構(ジャッキ150)のみで実現できる。
次に、図2A~図2Dを参照して、第1の実施形態に係る土砂サンプリング装置100による掘削土砂のサンプリング動作について説明する。
図2Aは、土砂サンプリング動作前の待機状態を示す。図2Aに示すように、隔壁13の後方の機体内において、土砂サンプリング装置100が隔壁13の開口13b付近に装着される。具体的には、ケーシング140の先端部が隔壁13の開口13bに装着され、当該ケーシング140の内部に筒状部材120およびピストン130が設置される。ピストン130は、予めジャッキ150(摺動機構)により筒状部材120内における軸方向前方側(チャンバ17側)に摺動させられ、前方ストッパー123に当接する位置まで押し出されている。
図2Aに示す待機状態では、ケーシング140に装着された開閉弁110は、閉状態となっており、その弁体112によりケーシング140の内部空間(即ち、筒状部材120の移動通路)が遮断されている。このため、チャンバ17内の掘削土砂は、開閉弁110により遮断されるので、当該掘削土砂が隔壁13の開口13bやケーシング140の内部空間を通じて機体内に侵入することを防止できる。さらに、筒状部材120の内部にはピストン130が設置されており、当該ピストン130も、筒状部材120の内部空間を遮断して、機体内への掘削土砂の侵入を防ぐ栓として機能する。これら開閉弁110、筒状部材120、ピストン130およびケーシング140からなる複合的な遮蔽機能により、土砂サンプリング装置100を通じた機体内への掘削土砂の噴発を、より確実に防止できる。
次いで、土砂サンプリング動作を開始するとき、まず、図2Bに示すように、開閉弁110の弁体112を開けて、ケーシング140内の筒状部材120の移動通路を開放する。その後、ジャッキ150(挿抜機構)の伸縮ロッド151を伸張することにより、ピストン130を軸方向前方に押し出す。このとき、ピストン130は筒状部材120の前方ストッパー123に当接しているため、筒状部材120は、ピストン130とともに軸方向前方に移動する。この結果、筒状部材120が、ケーシング140内の移動通路を前進して、開閉弁110を通過し、隔壁13の開口13bからチャンバ17内に挿入される。この挿入時には、チャンバ17に挿入された筒状部材120の前端開口121がチャンバ17内の所望のサンプリング位置に配置されるように、筒状部材120の挿入ストロークL2が調整される。
その後、図2Cに示すように、ジャッキ150(摺動機構)の伸縮ロッド151を収縮することにより、筒状部材120内でピストン130を軸方向後方に摺動させて、筒状部材120の後端側に引き込む。このときのピストン130の摺動ストロークL1は、上記図2Aに示す摺動ストロークL1と同一である。この結果、ピストン130は、筒状部材120の後端開口122側に摺動して、後方ストッパー124に当接する。このようなピストン130の引き込みによる吸引力によって、チャンバ17内の掘削土砂が、筒状部材120の前端開口121から筒状部材120の内部に取り込まれて、充満する。
次いで、ピストン130が後方ストッパー124に当接した状態のまま、ジャッキ150(摺動機構および挿抜機構)の伸縮ロッド151をさらに収縮して、ピストン130を引き戻す。このとき、ピストン130は後方ストッパー124に当接しているため、筒状部材120は、ピストン130とともに軸方向後方に移動する。これにより、筒状部材120は、ケーシング140内の移動通路を後退して、開閉弁110を通過し、図2Dに示すように、チャンバ17から機体内に抜去されて、ケーシング140内に退避される。そして、筒状部材120の後端がケーシング140の後端に当接したときに(即ち、筒状部材120の抜去ストロークが上記図2Bの挿入ストロークL2と同一になったときに)、ジャッキ150の収縮を停止するとともに、開閉弁110を閉めて、弁体112によりケーシング140の内部空間(筒状部材120の移動通路)を遮断する。
これにより、チャンバ17内の掘削土砂を内部に取り込んだ筒状部材120を、隔壁13より後方の機体内に回収することができる。このとき、ケーシング140の前側に配置された開閉弁110が閉められているので、チャンバ17内の掘削土砂が、隔壁13の開口13bおよびケーシング140の内部空間を通じて機体内に侵入することを防止できる。その後、機体内において、掘削土砂を取り込んだ筒状部材120をピストン130とともに、ケーシング140から取り外す。そして、筒状部材120の内部から、掘削土砂を取り出すことにより、掘削土砂のサンプリングが完了する。
以上、第1の実施形態に係る土砂サンプリング装置100を用いた土砂サンプリング方法について説明した。第1の実施形態によれば、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作を、共通の1つの移動機構(ジャッキ150)で実現できる。よって、上述したように部品点数を低減でき、機械構造を簡素化でき、挿抜動作と摺動動作の信頼性を向上することができる。
さらに、第1の実施形態では、移動機構の動力付与装置を、1つのジャッキ150、例えば油圧ジャッキで構成する。これにより、動力付与装置として出力の大きいジャッキ150を用いることで、動力付与装置の確実な動作(挿抜動作、摺動動作)を実現することができる。
また、係止部材として、筒状部材120の両端に2つのストッパー(前方ストッパー123および後方ストッパー124)を設けるというシンプルな構造により、筒状部材120とピストン130を連動させて移動させることができる。これによっても、移動機構の部品点数を低減でき、機械構造を簡素化できる。
なお、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作の順序を、意図したものにするために、土砂サンプリング装置100の構造に配慮を加えてもよい。例えば、上記の本実施形態に係る動作順序においては、前進および後退の双方とも、ピストン130の摺動動作の方が筒状部材120の挿抜動作よりも先となる。このため、筒状部材120の挿抜動作が後になるように、例えば、当該挿抜動作の機構部に当該挿抜動作を鈍くするための抵抗を設けてもよいし、あるいは、当該挿抜動作の機構部に機械的なロック機構を設けて、ピストン130の摺動動作後に当該ロック機構を解除してもよい。これらの追加構成により、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作の順序を、意図したものにすることができる。
<3.1.2.第2の実施形態>
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係る土砂サンプリング装置100について詳細に説明する。図4A~図4Dは、第2の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の動作を示す断面図である。
第2の実施形態に係る土砂サンプリング装置100(図4参照。)は、上記第1の実施形態(図2、図3参照。)と比べて、係止部材の構成が相違し、その他の構成要素については、第1の実施形態と同様である。そこで、以下では、第2の実施形態の特徴である係止部材の相違点を中心に説明し、その他の構成要素については詳細説明を省略する。
図4に示すように、第2の実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、係止部材として、第1の実施形態に係る筒状部材120の前方ストッパー123(図3参照。)の代わりに、ジャッキ150の伸縮ロッド151にストッパー155を設ける点で相違する。
詳細には、第2の実施形態では、上記第1の実施形態と同様に筒状部材120の後端部に後方ストッパー124が設けられているが、筒状部材120の前端部には、上記第1の実施形態のような前方ストッパー123が設けられていない。第2の実施形態では、第1の実施形態の前方ストッパー123の代わりに、ジャッキ150の伸縮ロッド151の中程に、ストッパー155が設けられている。ストッパー155は、伸縮ロッド151から径方向外側に張り出すように形成された円盤状のストッパーである。ストッパー155は、筒状部材120の後端部(後方ストッパー124)を係止可能である。
ストッパー155は、ケーシング140の内部において、筒状部材120の後端部とケーシング140の後端部との間に配置される。図4A、図4Bに示すように、ジャッキ150の伸縮ロッド151を伸張させて、前進したピストン130が筒状部材120の前端開口121付近に位置するときに、ストッパー155が筒状部材120の後端部と当接するように、伸縮ロッド151におけるストッパー155の形成位置が調整されている。これにより、ジャッキ150の伸縮ロッド151を伸張させることで、ストッパー155により筒状部材120を軸方向前方に押し出して、筒状部材120をチャンバ17に挿入することができる。
また、図4C、図4Dに示すように、ジャッキ150の伸縮ロッド151を収縮させることにより、後退したピストン130を筒状部材120の後方ストッパー124に当接させ、ケーシング140内で筒状部材120をピストン130とともに後退させるときに、同じく後退したストッパー155がケーシング140の後端部と干渉しないようにする必要がある。このため、第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて、ケーシング140が後方側に長く延びるように形成されており、ケーシング140の内部に、後退したストッパー155が退避するためのスペースが確保されている。なお、この場合のケーシング140は、筒状部材120の収容部として水密が確保できていれば、ケーシング140のうちストッパー155が退避するためのスペースに対応する位置に、当該ストッパー155の点検用の窓(開口)が設けられてもよい。
以上のような第2の実施形態の場合でも、上記第1の実施形態と同様に、掘削土砂のサンプリング動作時に、ジャッキ150、後方ストッパー124およびストッパー155により、筒状部材120とピストン130とを連動させて、前進および後退させることができる。
即ち、図4Aに示す待機状態では、ストッパー155は、筒状部材120の後端部の後方ストッパー124に当接しており、ピストン130は、筒状部材120の前端開口121付近に配置されている。この待機状態から、ジャッキ150を伸張させると、ストッパー155の係止機能により、筒状部材120を前方に押し出すことができる。この結果、図4Bに示すように、ピストン130とともに筒状部材120を前進させて、チャンバ17内に挿入することができる。
次いで、ジャッキ150を収縮させると、図4Cに示すように、ピストン130が筒状部材120内を後退して、チャンバ17内の掘削土砂が筒状部材120の内部に取り込まれるとともに、ピストン130が筒状部材120の後端部の後方ストッパー124に当接して係止される。そして、この図4Cの状態から、ジャッキ150をさらに収縮させて、ピストン130を後退させると、図4Dに示すように、後方ストッパー124の係止機能により、ピストン130とともに筒状部材120も後退して、チャンバ17から機体内に抜去される。この抜去時には、ストッパー155は、後方に長く延びるケーシング140の内部空間を後退できるので、ケーシング140の後端部と干渉することがない。
以上のように、第2の実施形態では、ジャッキ150の伸縮ロッド151に設けられたストッパー155を用いて、上記第1の実施形態と同様にチャンバ17内の掘削土砂のサンプリング動作を実行することができる。したがって、第2の実施形態も、上記第1の実施形態と同様な作用効果を奏する。
なお、第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作の順序を、意図したものにするために、土砂サンプリング装置100の構造に配慮を加えてもよい。例えば、上記の本実施形態に係る動作順序においては、前進および後退の双方とも、ピストン130の摺動動作の方が筒状部材120の挿抜動作よりも先となる。このため、筒状部材120の挿抜動作が後になるように、例えば、当該挿抜動作の機構部に当該挿抜動作を鈍くするための抵抗を設けてもよいし、あるいは、当該挿抜動作の機構部に機械的なロック機構を設けて、ピストン130の摺動動作後に当該ロック機構を解除してもよい。これらの追加構成により、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作の順序を、意図したものにすることができる。
<3.1.3.第3の実施形態>
次に、図5、図6を参照して、本発明の第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100について詳細に説明する。図5A~図5Dは、第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の動作を示す断面図である。図6は、第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の筒状部材120の周辺および空圧装置160の構成を示す模式図である。なお、説明の便宜上、図6では、ワイヤー170および巻取装置172の図示を省略してある。
第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100(図5、図6参照。)は、上記第1の実施形態(図2、図3参照。)と比べて、筒状部材120およびピストン130を移動させる共通の移動機構(挿抜機構および摺動機構)の動力付与装置として、上記ジャッキ150に代えて空圧装置160を用いる点で相違し、その他の構成要素については、第1の実施形態と同様である。そこで、以下では、第3の実施形態の特徴である空圧装置160を中心に説明し、その他の構成要素については詳細説明を省略する。
まず、第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の構成について説明する。図5および図6に示すように、第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、共通の移動機構(挿抜機構および摺動機構)の動力付与装置として、1つの空圧装置160を備えており、さらに、当該動力付与装置の補助装置として、ワイヤー170および巻取装置172を備える。
空圧装置160は、エアーの圧力により筒状部材120およびピストン130を軸方向に移動させる機能を有する。図5および図6に示すように、土砂サンプリング装置100は、隔壁13の開口13b周辺に取り付けられ、筒状部材120を収容するケーシング140を有する。ケーシング140の内部空間は、隔壁13の開口13bと連通し、筒状部材120の移動通路を形成している。空圧装置160は、ケーシング140の内部空間のうち、筒状部材120の後方側の空間に対して、エアーを供給および吸引可能である。
ここで、図6を参照して、空圧装置160の構成について詳細に説明する。図6に示すように、空圧装置160は、コンプレッサ161と、圧力調整弁162と、切換弁163と、サイレンサー164と、流路165、166、167と、を有する。
コンプレッサ161は、モータの動力により、大気圧よりも高圧のエアーを生成する。圧力調整弁162は、流路166を介してコンプレッサ161に接続され、コンプレッサ161で生成されたエアーの圧力を調整する。切換弁163は、流路165を介してケーシング140に接続され、流路166を介して圧力調整弁162に接続され、流路167を介してサイレンサー164に接続されている。切換弁163は、流路165に連通する流路を、流路166または流路167に切り換える。かかる切換弁163の切換動作により、流路165と流路166を連通させることで、コンプレッサ161で生成された高圧のエアーをケーシング140に供給することができる。また、流路165と流路167を連通させることで、ケーシング140の内部空間からエアーを抜いて、サイレンサー164から大気に放出することができる。
ケーシング140の後端には、空圧装置160からのエアーをケーシング140の内部空間(筒状部材120よりも後方側の空間)に供給するための後端開口142が形成されている。さらに、筒状部材120の後端には、当該エアーを筒状部材120の内部空間(ピストン130よりも後方側の空間)に供給するための後端開口122が形成されている。後端開口142と後端開口122は、これら空間にエアーを送るための連通口として機能する。このように、空圧装置160の流路165と、ケーシング140の内部空間の後方部分と、筒状部材120の内部空間の後方部分とは、相互に連通しており、空圧装置160によりこれら空間にエアーを供給したり、当該空間からエアーを吸引したりできるようになっている。
ここで、図6を参照して、空圧装置160から供給されるエアーの圧力により、ピストン130および筒状部材120を軸方向に移動させる動作について説明する。なお、図6には、土砂サンプリング装置100の各部における圧力(P1、Patm、Px、P0)も示してある。P0は、チャンバ17内の土水圧である。Pxは、ケーシング140および筒状部材120の内部空間(以下、「エアー室」という場合もある。)の気圧である。P1は、コンプレッサ161から供給される高圧エアーの気圧である。Patmは、大気圧である。P1は、PatmおよびP0よりも大きい正圧である。
図6に示すように、チャンバ17内の土水圧P0と、ケーシング140内のエアー室の気圧Pxとの差圧により、筒状部材120内でピストン130を軸方向前方または後方に摺動させることができる。
例えば、コンプレッサ161からの高圧エアー(P1)を、ケーシング140内のエアー室に供給した場合、エアー室の気圧(Px)は、Px=P1>P0となる。このように、Px=P1>P0とすれば、エアー室の高圧エアー(Px)によりピストン130が軸方向前方に押圧されるので、筒状部材120内でピストン130を軸方向前方に摺動(前進)させることができる。さらに、前進するピストン130と筒状部材120の前方ストッパー123が当接するので、ケーシング140内でピストン130とともに筒状部材120を軸方向前方に摺動(前進)させて、筒状部材120を機体内からチャンバ17に挿入することができる。
一方、切換弁163を切り換えて、ケーシング140内のエアー室をサイレンサー164に連通させて、エアー室内の高圧エアーを抜いた場合、エアー室の気圧(Px)は、Px=Patm<P0となる。このように、Px=Patm<P0とすれば、チャンバ17内の土水圧(P0)とエアー室の気圧(Px)との差圧により、ピストン130が軸方向後方に吸引されるので、筒状部材120内でピストン130を軸方向後方に摺動(後退)させることができる。さらに、後退するピストン130と筒状部材120の後方ストッパー124が当接するので、ケーシング140内でピストン130とともに筒状部材120を軸方向後方に摺動(後退)させて、筒状部材120をチャンバ17から機体内に抜去することができる。
また、図6に示す空圧装置160において、サイレンサー164に替えて、バキュームポンプ(負圧発生ポンプ)を設置してもよい。これにより、バキュームポンプを用いてケーシング140内のエアー室に負圧(Px)を発生させて、Px<Patm<P0とすることができる。したがって、より強力な吸引力でピストン130を吸引できるので、より確実にピストン130を軸方向後方に摺動(後退)させることが可能になる。
続いて、図5を参照して、ワイヤー170および巻取装置172の構成について説明する。上述したように、ワイヤー170および巻取装置172は、ピストン130および筒状部材120を軸方向に移動させる移動機構(挿抜機構および摺動機構)の動力付与装置の補助装置として機能する。
図5に示すように、ワイヤー170の一端は、ケーシング140の後端開口142と筒状部材120の後端開口122を通じて、ピストン130に接続されており、筒状部材120には接続されていない。ワイヤー170の他端は、ケーシング140の外部に設置される巻取装置172に接続されている。巻取装置172は、ワイヤー170を巻き取ったり、送り出したりすることが可能な装置である。
かかる巻取装置172により、ワイヤー170を巻き取ることにより、筒状部材120内でピストン130を軸方向後方に牽引して、強制的に後退させることができる。したがって、上記空圧装置160のエアーによる吸引力が不足する場合に、巻取装置172を動作させることで、より確実にピストン130および筒状部材120を後退させることができる。なお、空圧装置160のエアーの圧力(P1)のみで、ピストン130および筒状部材120を前進および後退させることが可能である場合には、ワイヤー170および巻取装置172を設けなくてもよい。
以上のように、第3の実施形態によれば、ピストン130と筒状部材120の移動機構として、空圧装置160を用いて、ピストン130および筒状部材120を移動させる。さらに、第1の実施形態と同様に、筒状部材120に設けられた前方ストッパー123と後方ストッパー124により、ピストン130と筒状部材120とを相互に係止可能な構造にする。これによって、空圧装置160を用いて、ピストン130と筒状部材120を連動させて軸方向に前進および後退させることができる。したがって、筒状部材120内でピストン130を摺動させる動作と、筒状部材120をチャンバ17に挿抜する動作を、1つの移動機構(空圧装置160)のみで実現できる。
さらに、ワイヤー170と巻取装置172を、動力付与装置の補助装置として追加設置することにより、ピストン130および筒状部材120をより確実に後退させることが可能になる。
次に、図5A~図5Dを参照して、第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100による掘削土砂のサンプリング動作について説明する。
まず、図5Aに示す待機状態では、ケーシング140に装着された開閉弁110は、閉状態となっており、その弁体112によりケーシング140の内部空間(即ち、筒状部材120の移動通路)が遮断されている。当該ケーシング140の内部に筒状部材120およびピストン130が設置される。ピストン130は、予め空圧装置160(摺動機構)により筒状部材120内における軸方向前方側(チャンバ17側)に摺動させられ、前方ストッパー123に当接する位置まで押し出されている。
次いで、土砂サンプリング動作を開始するとき、まず、図5Bに示すように、開閉弁110を開けた後に、空圧装置160(挿抜機構)によりケーシング140内のエアー室に高圧エアーを供給する。この高圧エアーの圧力により、ピストン130を軸方向前方に押し出す。このとき、ピストン130は筒状部材120の前方ストッパー123に当接しているため、筒状部材120は、ピストン130とともに軸方向前方に移動する。この結果、筒状部材120が、ケーシング140内の移動通路を前進して、開閉弁110を通過し、隔壁13の開口13bからチャンバ17内に挿入される。この挿入時には、チャンバ17に挿入された筒状部材120の前端開口121がチャンバ17内の所望のサンプリング位置に配置されるように、筒状部材120の挿入ストロークL2が調整される。
その後、図5Cに示すように、空圧装置160(摺動機構)により、ケーシング140内のエアー室からエアーを抜いて、ピストン130を軸方向後方に吸引する。これにより、筒状部材120内でピストン130を軸方向後方に摺動させて、筒状部材120の後端側に引き込む。この結果、ピストン130は、筒状部材120の後端開口122側に摺動して、後方ストッパー124に当接する。このようなピストン130の引き込みによる吸引力によって、チャンバ17内の掘削土砂が、筒状部材120の前端開口121から筒状部材120の内部に取り込まれて、充満する。
次いで、図5Dに示すように、空圧装置160(摺動機構および挿抜機構)により、ケーシング140内のエアー室からエアーをさらに抜いて、ピストン130を軸方向後方に吸引して、ピストン130を引き戻す。このとき、ピストン130は後方ストッパー124に当接しているため、筒状部材120は、ピストン130とともに軸方向後方に移動する。これにより、筒状部材120は、ケーシング140内の移動通路を後退して、開閉弁110を通過し、チャンバ17から機体内に抜去されて、ケーシング140内に退避される。そして、筒状部材120の後端がケーシング140の後端に当接したときに、空圧装置160の吸引動作を停止するとともに、開閉弁110を閉めて、弁体112によりケーシング140の内部空間(筒状部材120の移動通路)を遮断する。
以上のようにして、チャンバ17内の掘削土砂を内部に取り込んだ筒状部材120を、隔壁13より後方の機体内に回収することができる。その後、機体内において、掘削土砂を取り込んだ筒状部材120をピストン130とともに、ケーシング140から取り外す。そして、筒状部材120の内部から、掘削土砂を取り出すことにより、掘削土砂のサンプリングが完了する。
なお、上記図5Cおよび図5Dに示す吸引工程において、例えば、ピストン130、筒状部材120およびケーシング140が相互に固着しているときには、空圧装置160のエアーによる吸引力だけでは、ピストン130や筒状部材120を後退させることが困難である場合も想定される。
この場合には、空圧装置160(動力付与装置)の補助装置として、ワイヤー170と巻取装置172を用いて、ピストン130を後退させればよい。つまり、巻取装置172によりワイヤー170を巻き取って、ピストン130を軸方向後方に牽引することにより、図5Cに示すように、筒状部材120内でピストン130を強制的に後退させて、筒状部材120内に掘削土砂を取り込むことができる。さらに、図5Dに示すように、巻取装置172によりワイヤー170をさらに巻き取ることで、ピストン130とともに筒状部材120を強制的に後退させて、筒状部材120をチャンバ17からケーシング140内に抜去することができる。
以上、第3の実施形態に係る土砂サンプリング装置100を用いた土砂サンプリング方法について説明した。第3の実施形態によれば、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作を、共通の1つの移動機構(空圧装置160)で実現できる。したがって、上述したように部品点数を低減でき、機械構造を簡素化でき、挿抜動作と摺動動作の信頼性を向上することができる。よって、第3の実施形態も、上記第1の実施形態と同様な作用効果を奏する。
また、第3の実施形態によれば、移動機構の動力付与装置として空圧装置160を用いているので、第1の実施形態のジャッキ150のような機械的な駆動装置を使用せずにすむ。したがって、第1の実施形態と比べて、動力付与装置の部品構成を簡略化でき、機体内における動力付与装置の設置スペースを低減することができる。
さらに、第3の実施形態によれば、軸方向前方へのピストン130の押し込みを、空圧装置160のエアーにより実行し、軸方向後方へのピストン130の引き戻しを、ワイヤー170の牽引により実行してもよい。これにより、ピストン130と筒状部材120との固着などが原因で、空圧装置160のエアーによるピストン130の吸引力が不足する場合であっても、巻取装置172によりワイヤー170を牽引するという機械的な動作により、ピストン130と筒状部材120をより確実に引き戻すことができる。
なお、第3の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作の順序を、意図したものにするために、土砂サンプリング装置100の構造に配慮を加えてもよい。例えば、上記の本実施形態に係る動作順序においては、前進および後退の双方とも、ピストン130の摺動動作の方が筒状部材120の挿抜動作よりも先となる。このため、筒状部材120の挿抜動作が後になるように、例えば、当該挿抜動作の機構部に当該挿抜動作を鈍くするための抵抗を設けてもよいし、あるいは、当該挿抜動作の機構部に機械的なロック機構を設けて、ピストン130の摺動動作後に当該ロック機構を解除してもよい。これらの追加構成により、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作の順序を、意図したものにすることができる。
<3.2.挿抜機構と摺動機構が別々の機構の組合せの場合>
次に、図7~図11を参照して、筒状部材120をチャンバ17に対して挿抜する挿抜機構と、筒状部材120内でピストン130を摺動させる摺動機構とが、別々の複数の移動機構の組合せで構成される例について説明する。
<3.2.1.第4の実施形態>
まず、図7、図8を参照して、本発明の第4の実施形態に係る土砂サンプリング装置100について説明する。図7A~図7Dは、第4の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の動作を示す断面図である。図8は、第4の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の筒状部材120の周辺および空圧装置160の構成を示す拡大断面図である。
第4の実施形態に係る土砂サンプリング装置100(図7、図8参照。)は、上記第1の実施形態(図2、図3参照。)と比べて、挿抜機構としてジャッキ150が設けられ、かつ、摺動機構として空圧装置160が設けられている点で相違し、その他の構成要素については、第1の実施形態と同様である。そこで、以下では、第4の実施形態の特徴であるジャッキ150(挿抜機構)と空圧装置160(摺動機構)の組合せ構造を中心に説明し、その他の構成要素については詳細説明を省略する。
図7および図8に示すように、第4の実施形態では、筒状部材120をチャンバ17に挿抜する挿抜機構は、筒状部材120の軸方向に伸縮可能なジャッキ150で構成される。一方、筒状部材120内でピストン130を摺動させる摺動機構は、筒状部材120内にエアーを供給および吸引可能な空圧装置160で構成される。このように、第4の実施形態では、動力付与装置として、ジャッキ150と空圧装置160という別々の機構が設けられている。
図8に示すように、第4の実施形態に係るジャッキ150(挿抜機構)は、筒状部材120の軸方向に伸縮可能な伸縮ロッド151と、当該伸縮ロッド151を収容および支持するジャッキ本体152とを有する。ジャッキ150の伸縮ロッド151は、ケーシング140の後端部に貫通形成された後端開口142からケーシング140の内部に挿入される。伸縮ロッド151は、ケーシング140の後端開口142に挿通されて、筒状部材120の後端部に接続されており、ケーシング140およびピストン130には接続されていない。
ジャッキ本体152は、筒状部材120を収容するケーシング140の後方に配置される。ジャッキ本体152の前端部は、ケーシング140の後端部に接続されて固定されている。ジャッキ150は、ケーシング140に対して固定されたジャッキ本体152に対して、伸縮ロッド151を伸縮させる。かかる伸縮ロッド151の伸縮により、ケーシング140の内部で筒状部材120を軸方向に摺動させることができ、これによって、筒状部材120をチャンバ17に対して挿抜することができる。
即ち、土砂サンプリング装置100は、ジャッキ150を伸長させることにより、ケーシング140内で筒状部材120を軸方向前方に移動させて、隔壁13の開口13bを通じてチャンバ17内に挿入できる。さらに、ジャッキ150を収縮させることにより、筒状部材120を軸方向後方に移動させて、チャンバ17内から開口13bを通じて機体内に抜去することができる。
また、第4の実施形態に係る筒状部材120は、その前端部が開放されており、前端開口121を有している。前端開口121の周囲には、上記第1の実施形態と同様の前方ストッパー123が、径方向中心に向けて張り出すように形成されている。この前方ストッパー123は、ピストン130を係止可能である。一方、筒状部材120の後端部は、閉塞されており、第1の実施形態のような後端開口(図3参照。)が形成されておらず、エアーが漏れ出さないようになっている。筒状部材120の後端部には、エアー用ホース168が導入されている。
第4の実施形態に係る空圧装置160(摺動機構)は、筒状部材120の内部空間のうちピストン130よりも後方側の空間(エアー室)に対して、エアーを供給および吸引可能である。図8に示すように、空圧装置160は、コンプレッサ161と、圧力調整弁162と、切換弁163と、サイレンサー164と、流路166、167と、エアー用ホース168とを有する。第4の実施形態に係る空圧装置160の構成は、上記第3の実施形態に係る空圧装置160(図6参照。)と略同一であるので、詳細説明は省略する。
ただし、第4の実施形態に係る空圧装置160は、エアー用ホース168を通じて筒状部材120に接続されている。エアー用ホース168は、可動部である筒状部材120に対してエアーを円滑に供給および吸引可能にするために、筒状部材120の前進および後退に伴って伸縮可能に構成されている。空圧装置160は、このエアー用ホース168により、筒状部材120の内部空間のうちピストン130の後方側の空間(エアー室)に対して、エアーを供給および吸引する。切換弁163は、エアー用ホース168に連通する流路を、流路166または流路167に切り換える。かかる切換弁163の切換動作により、エアー用ホース168と流路166を連通させることで、コンプレッサ161で生成された高圧のエアーを筒状部材120内のエアー室に供給することができる。また、エアー用ホース168と流路167を連通させることで、筒状部材120内のエアー室からエアーを抜いて、サイレンサー164から大気に放出することができる。
ここで、図8を参照して、空圧装置160から供給されるエアーの圧力により、筒状部材120内でピストン130を軸方向に摺動させる動作について説明する。図8に示すように、チャンバ17内の土水圧P0と、筒状部材120内のエアー室の気圧Pxとの差圧により、筒状部材120内でピストン130を軸方向前方または後方に摺動させることができる。
例えば、コンプレッサ161からの高圧エアー(P1)を、筒状部材120内のエアー室に供給して、Px=P1>P0とすれば、エアー室の高圧エアー(Px)によりピストン130を軸方向前方に押圧して、筒状部材120内でピストン130を摺動(前進)させることができる。一方、切換弁163を切り換えて、筒状部材120内のエアー室からエアーを抜いて、Px=Patm<P0とすれば、チャンバ17内の土水圧(P0)とエアー室の気圧(Px)との差圧により、ピストン130を軸方向後方に吸引して、筒状部材120内でピストン130を軸方向後方に摺動(後退)させることができる。
また、図8に示す空圧装置160において、サイレンサー164に替えて、バキュームポンプ(負圧発生ポンプ)を設置してもよい。これにより、バキュームポンプを用いてケーシング140内のエアー室に負圧(Px)を発生させて、Px<Patm<P0とすることができる。したがって、より強力な吸引力でピストン130を吸引できるので、より確実にピストン130を軸方向後方に摺動(後退)させることが可能になる。
次に、図7A~図7Dを参照して、第4の実施形態に係る土砂サンプリング装置100による掘削土砂のサンプリング動作について説明する。
まず、図7Aに示す待機状態では、ケーシング140に装着された開閉弁110は、閉状態となっている。当該ケーシング140の内部に筒状部材120およびピストン130が設置される。なお、この待機状態では予め、空圧装置160(摺動機構)によりエアー用ホース168を通じて筒状部材120内のエアー室に高圧エアーを供給する。これによって、ピストン130は、筒状部材120内で軸方向前方側に摺動して、前方ストッパー123に当接する位置まで押し出されている。
次いで、土砂サンプリング動作を開始するとき、まず、図7Bに示すように、開閉弁110を開けた後に、ジャッキ150(挿抜機構)の伸縮ロッド151を伸張することにより、筒状部材120を軸方向前方に押し出す。この結果、筒状部材120が、ケーシング140内の移動通路を前進して、開閉弁110を通過し、隔壁13の開口13bからチャンバ17内に挿入される。この挿入時には、チャンバ17に挿入された筒状部材120の前端開口121がチャンバ17内の所望のサンプリング位置に配置されるように、筒状部材120の挿入ストロークL2が調整される。
その後、図7Cに示すように、空圧装置160(摺動機構)により、筒状部材120内のエアー室からエアー用ホース168を通じてエアーを抜いて、ピストン130を軸方向後方に吸引する。これにより、筒状部材120内でピストン130を軸方向後方に摺動させて、筒状部材120内の後端側に引き込む。このようなピストン130の引き込みによる吸引力によって、チャンバ17内の掘削土砂が、筒状部材120の前端開口121から筒状部材120の内部に取り込まれて、充満する。筒状部材120内の後端側に引き込まれたピストン130は、筒状部材120の後端部により係止され、摺動ストロークL1以上の後退が制限される。
次いで、図7Dに示すように、ジャッキ150(挿抜機構)の伸縮ロッド151を収縮して、筒状部材120を引き戻す。これにより、筒状部材120は、ケーシング140内の移動通路を後退して、開閉弁110を通過し、チャンバ17から機体内に抜去されて、ケーシング140内に退避される。そして、筒状部材120の後端部がケーシング140の後端部に当接したときに、ジャッキ150の収縮を停止するとともに、開閉弁110を閉めて、弁体112によりケーシング140の内部空間(筒状部材120の移動通路)を遮断する。
以上のようにして、チャンバ17内の掘削土砂を内部に取り込んだ筒状部材120を、隔壁13より後方の機体内に回収することができる。その後、機体内において、掘削土砂を取り込んだ筒状部材120をピストン130とともに、ケーシング140から取り外す。そして、筒状部材120の内部から、掘削土砂を取り出すことにより、掘削土砂のサンプリングが完了する。
なお、上記図7Cに示す吸引工程において、例えば、ピストン130と筒状部材120が相互に固着しているときには、空圧装置160のエアーによる吸引力だけでは、ピストン130や筒状部材120を後退させることが困難である場合も想定される。この場合には、上記第3の実施形態と同様に、空圧装置160(動力付与装置)の補助装置としてワイヤー170と巻取装置172(図5参照。)を用いて、ピストン130を後方に牽引して後退させてもよい。
以上、第4の実施形態に係る土砂サンプリング装置100を用いた土砂サンプリング方法について説明した。第4の実施形態によれば、筒状部材120の挿抜機構としてジャッキ150を用いるとともに、ピストン130の摺動機構として空圧装置160を用いる。これによって、筒状部材120内でピストン130を摺動させる動作と、筒状部材120をチャンバ17に挿抜する動作を、独立した2つの機構(ジャッキ150と空圧装置160)で別々に実現できる。したがって、意図した動作を意図したタイミングで実施でき、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作を、それぞれ確実に実施することが可能になる。
<3.2.2.第5の実施形態>
次に、図9を参照して、本発明の第5の実施形態に係る土砂サンプリング装置100について詳細に説明する。図9A~図9Dは、第5の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の動作を示す断面図である。
第5の実施形態に係る土砂サンプリング装置100(図9A~図9D参照。)は、上記第1の実施形態(図2、図3参照。)と比べて、挿抜機構として第1ジャッキ180が設けられ、かつ、摺動機構として第2ジャッキ190が設けられている点で相違し、その他の構成要素については、第1の実施形態と同様である。そこで、以下では、第5の実施形態の特徴である第1ジャッキ180(挿抜機構)と第2ジャッキ190(摺動機構)の組合せ構造を中心に説明し、その他の構成要素については詳細説明を省略する。
図9に示すように、第5の実施形態では、筒状部材120をチャンバ17に挿抜する挿抜機構は、筒状部材120の軸方向に伸縮可能な第1ジャッキ180で構成される。また、筒状部材120内でピストン130を摺動させる摺動機構も、筒状部材120の軸方向に伸縮可能な第2ジャッキ190で構成される。これらの第1ジャッキ180および第2ジャッキ190はともに、例えば油圧ジャッキで構成されるが、他のタイプのジャッキで構成されてもよい。このように、第5の実施形態では、動力付与装置として、相異なる2つのジャッキ180、190が設けられている。
図9に示すように、第5の実施形態に係る第1ジャッキ180(挿抜機構)は、ケーシング140の外部に設置される。第2ジャッキ190(摺動機構)は、ケーシング140の内部であって、筒状部材120の外部に設置される。ケーシング140は、後方に長く延びるように形成されており、ケーシング140内には、筒状部材120に加えて、第2ジャッキ190を収容可能なスペースが確保されている。また、筒状部材120には、第1の実施形態のような前方ストッパー123や後方ストッパー124(図3参照。)が設けられておらず、筒状部材120はシンプルな円筒体で構成される。ただし、筒状部材120の後端部は、後端開口122の部分を除いて閉塞されている。
第1ジャッキ180は、筒状部材120の軸方向に伸縮可能な伸縮ロッド181と、当該伸縮ロッド181を収容および支持するジャッキ本体182とを有する。同様に、第2ジャッキ190は、筒状部材120の軸方向に伸縮可能な伸縮ロッド191と、当該伸縮ロッド191を収容および支持するジャッキ本体192とを有する。
第1ジャッキ180(挿抜機構)の伸縮ロッド181は、ケーシング140の後端部に貫通形成された後端開口142からケーシング140の内部に挿入される。第1ジャッキ180の伸縮ロッド181は、ケーシング140の後端開口142に挿通されて、第2ジャッキ190のジャッキ本体192の後端部に接続されており、ケーシング140および筒状部材120には接続されていない。
第1ジャッキ180のジャッキ本体182は、ケーシング140の外部であって、ケーシング140の後方に配置される。ジャッキ本体182の前端部は、ケーシング140の後端部に接続されて固定されている。第1ジャッキ180は、ケーシング140に対して固定されたジャッキ本体182に対して、伸縮ロッド181を伸縮させる。かかる伸縮ロッド181の伸縮により、ケーシング140の内部で、第2ジャッキ190とともに筒状部材120を軸方向に摺動させることができる。これによって、筒状部材120をチャンバ17に対して挿抜することができる。
なお、図9の例では、第1ジャッキ180の伸縮ロッド181は、第2ジャッキ190のジャッキ本体192に接続されており、筒状部材120に接続されていない。しかし、かかる例に限定されず、例えば、第1ジャッキ180の伸縮ロッド181は、筒状部材120に直接的に接続されてもよい。かかる接続構造であっても、第1ジャッキ180は、筒状部材120を軸方向に前進および後退させて、チャンバ17に対して挿抜することが可能である。
一方、第2ジャッキ190(摺動機構)の伸縮ロッド191は、筒状部材120の後端部に貫通形成された後端開口122から筒状部材120の内部に挿入される。第2ジャッキ190の伸縮ロッド191は、筒状部材120の後端開口122に挿通されて、ピストン130に接続されており、ケーシング140および筒状部材120には接続されていない。
第2ジャッキ190のジャッキ本体192は、ケーシング140の内部であって、筒状部材120の後方に配置される。ジャッキ本体192の前端部は、筒状部材120の後端部に接続されて固定されており、ジャッキ本体192の後端部は、前述の第1ジャッキ180の伸縮ロッド181の先端部に接続されている。第2ジャッキ190は、筒状部材120に対して固定されたジャッキ本体192に対して、伸縮ロッド191を伸縮させる。かかる伸縮ロッド191の伸縮により、筒状部材120の内部で、ピストン130を軸方向に摺動させることができる。
かかる構成の土砂サンプリング装置100は、第1ジャッキ180(挿抜機構)を伸長させることにより、ケーシング140内で第2ジャッキ190とともに筒状部材120を軸方向前方に移動させて、隔壁13の開口13bを通じてチャンバ17内に挿入できる。さらに、第1ジャッキ180を収縮させることにより、第2ジャッキ190とともに筒状部材120を軸方向後方に移動させて、チャンバ17内から開口13bを通じて機体内に抜去することができる。
また、土砂サンプリング装置100は、第2ジャッキ190(摺動機構)を伸長させることにより、筒状部材120内でピストン130を軸方向前方に摺動させることができる。さらに、第2ジャッキ190を収縮させることにより、筒状部材120内でピストン130を軸方向後方に摺動させることができる。
次に、図9A~図9Dを参照して、第5の実施形態に係る土砂サンプリング装置100による掘削土砂のサンプリング動作について説明する。
まず、図9Aに示す待機状態では、ケーシング140に装着された開閉弁110は、閉状態となっている。当該ケーシング140の内部に筒状部材120およびピストン130が設置される。なお、この待機状態では予め、第2ジャッキ190(摺動機構)により、ピストン130は、筒状部材120内で軸方向前方側に摺動して、前方ストッパー123に当接する位置まで押し出されている。
次いで、土砂サンプリング動作を開始するとき、まず、図9Bに示すように、開閉弁110を開けた後に、第1ジャッキ180(挿抜機構)の伸縮ロッド181を伸張することにより、第2ジャッキ190とともに筒状部材120を軸方向前方に押し出す。この結果、筒状部材120が、ケーシング140内の移動通路を前進して、開閉弁110を通過し、隔壁13の開口13bからチャンバ17内に挿入される。この挿入時には、チャンバ17に挿入された筒状部材120の前端開口121がチャンバ17内の所望のサンプリング位置に配置されるように、筒状部材120の挿入ストロークL2が調整される。
その後、図9Cに示すように、第2ジャッキ190(摺動機構)の伸縮ロッド191を収縮することにより、筒状部材120内でピストン130を軸方向後方に摺動させて、筒状部材120内の後端側に引き込む。このようなピストン130の引き込みによる吸引力によって、チャンバ17内の掘削土砂が、筒状部材120の前端開口121から筒状部材120の内部に取り込まれて、充満する。筒状部材120内の後端側に引き込まれたピストン130は、筒状部材120の後端部により係止されるため、摺動ストロークL1以上の後退が制限される。
次いで、図9Dに示すように、第1ジャッキ180(挿抜機構)の伸縮ロッド181を収縮して、第2ジャッキ190とともに筒状部材120を引き戻す。これにより、筒状部材120は、ケーシング140内の移動通路を後退して、開閉弁110を通過し、チャンバ17から機体内に抜去されて、ケーシング140内に退避される。そして、筒状部材120の後端部がケーシング140の後端部に当接したときに、第1ジャッキ180の収縮を停止するとともに、開閉弁110を閉めて、弁体112によりケーシング140の内部空間(筒状部材120の移動通路)を遮断する。
以上のようにして、チャンバ17内の掘削土砂を内部に取り込んだ筒状部材120を、隔壁13より後方の機体内に回収することができる。その後、機体内において、掘削土砂を取り込んだ筒状部材120をピストン130とともに、ケーシング140から取り外す。そして、筒状部材120の内部から、掘削土砂を取り出すことにより、掘削土砂のサンプリングが完了する。
以上、第5の実施形態に係る土砂サンプリング装置100を用いた土砂サンプリング方法について説明した。第5の実施形態によれば、筒状部材120の挿抜機構として第1ジャッキ180を用いるとともに、ピストン130の摺動機構として第2ジャッキ190を用いる。これによって、筒状部材120内でピストン130を摺動させる動作と、筒状部材120をチャンバ17に挿抜する動作を、独立した2つの機構(第1ジャッキ180と第2ジャッキ190)で別々に実現できる。したがって、意図した動作を意図したタイミングで実施でき、筒状部材120の挿抜動作とピストン130の摺動動作を、それぞれ確実に実施することが可能になる。
また、動力付与装置として出力の大きいジャッキ180、190を用いることで、上記空圧装置160と比べて、動力付与装置の確実な動作(挿抜動作、摺動動作)を実現することができる。
<3.2.3.第6の実施形態>
次に、図10を参照して、本発明の第6の実施形態に係る土砂サンプリング装置100について詳細に説明する。図10A~図10Cは、第6の実施形態に係る土砂サンプリング装置100の動作を示す断面図である。
第6の実施形態に係る土砂サンプリング装置100(図10A~図10C参照。)は、上記第1の実施形態(図2、図3参照。)と比べて、挿抜機構および摺動機構として第1油圧機構210と第2油圧機構220が設けられている点で相違し、その他の構成要素については、第1の実施形態と同様である。そこで、以下では、第6の実施形態の特徴である第1油圧機構210と第2油圧機構220の組合せ(挿抜機構および摺動機構)を中心に説明し、その他の構成要素については詳細説明を省略する。
図10に示すように、第6の実施形態では、筒状部材120をチャンバ17に挿抜する挿抜機構は、第1油圧機構210と第2油圧機構220の組合せで構成される。一方、筒状部材120内でピストン130を摺動させる摺動機構も、第1油圧機構210と第2油圧機構220の組合せで構成される。このように、第6の実施形態では、筒状部材120とピストン130を移動させるための動力を付与する動力付与装置として、第1油圧機構210と第2油圧機構220という2つの油圧式の移動機構が設けられている。
以下に、第6の実施形態に係る第1油圧機構210および第2油圧機構220の構成と、当該第1油圧機構210および第2油圧機構220に対応した筒状部材120、ピストン130およびケーシング140等の構成について詳述する。
図10に示すように、第6の実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、隔壁13の開口13b周辺に取り付けられ、筒状部材120を収容するケーシング140を有する。ケーシング140の軸方向の中央部には中央壁143が設けられている。この中央壁143により、ケーシング140の内部空間は、前方内部空間144と後方内部空間145とに区分されている。
ケーシング140の前方内部空間144は、ケーシング140の前方側に設けられた内部空間である。前方内部空間144は、隔壁13の開口13bと連通し、筒状部材120の移動通路を形成している。前方内部空間144の前方側は開放されており、チャンバ17と連通している。当該前方内部空間144の前方側の移動通路は、開閉弁110によって開閉可能である。前方内部空間144には、筒状部材120が配置される。筒状部材120は、ケーシング140内において、前方内部空間144を軸方向に摺動可能に設けられる。
また、ケーシング140のうち前方内部空間144の後端付近には、オイル供給口146が貫通形成されている。ケーシング140内の前方内部空間144のうち筒状部材120の後方側の空間(即ち、筒状部材120の後端と中央壁143との間の空間)には、後述する第2油圧機構220により、オイル供給口146を通じてオイルが供給される。前方内部空間144の当該後方側の空間(後方オイル室)は、オイルが充満している。
筒状部材120は、第2油圧機構220から前方内部空間144の後方オイル室に供給されるオイルの油圧によって、前方内部空間144内を前方に移動可能である。ケーシング140の前方内部空間144は、当該油圧で移動する筒状部材120を収容するシリンダとして機能する。筒状部材120の後部の外周面には、シール部材(図示せず。)が装着されている。また、ケーシング140の前方内部空間144の前側の内周面にも、シール部材(図示せず。)が装着されている。これらのシール部材は、筒状部材120とケーシング140との隙間を遮断して、前方内部空間144の後方オイル室から当該隙間を通じてオイルが漏れ出すことを防止する。
ケーシング140の後方内部空間145は、ケーシング140の後方側に設けられた内部空間であり、密閉空間である。ケーシング140のうち後方内部空間145の前端と後端付近にはそれぞれ、オイル供給口147、148が貫通形成されている。後方内部空間145には、後述する第1油圧機構210により、オイル供給口147、148を通じてオイルが供給される。後方内部空間145には、オイルが充満している。
後方内部空間145には、可動部材230が配置される。可動部材230は、後方内部空間145を軸方向に摺動可能に設けられる。可動部材230によって、後方内部空間145は、前後2つの空間(前方オイル室と後方オイル室)に区分されている。かかる可動部材230は、第1油圧機構210から供給されるオイルの油圧によって、後方内部空間145内を前後に移動するピストンとして機能する。また、ケーシング140の後方内部空間145は、当該ピストンとしての可動部材230を収容するシリンダとして機能する。可動部材230の外周面には、シール部材(図示せず。)が装着されている。当該シール部材は、可動部材230とケーシング140との隙間を遮断して、後方内部空間145の前方オイル室と後方オイル室との間でオイルが漏れることを防止する。
可動部材230は、軸部材240を介してピストン130に連結されている。軸部材240は、ピストン130と可動部材230とを連結する連結部材である。軸部材240は、ケーシング140の前方内部空間144から後方内部空間145にかけて軸方向に延びるように配置され、中央壁143に形成された貫通孔を貫通している。また、軸部材240は、ケーシング140の前方内部空間144内に配置される筒状部材120の後端開口122に挿通される。軸部材240は、ケーシング140および筒状部材120に接続されておらず、当該筒状部材120内に配置されるピストン130に接続されている。例えば、軸部材240の前端は、当該ピストン130の背面に接続されている。一方、軸部材240の後端は、ケーシング140の後方内部空間145内に配置される可動部材230の前面に接続されている。
かかる軸部材240によりピストン130と可動部材230を連結することによって、後方内部空間145内で可動部材230を前後に移動させたときに、これに連動して、前方内部空間144内でピストン130を前後に移動させることができる。このように、可動部材230、軸部材240およびピストン130は一体となって、ケーシング140内を軸方向に前進または後退する。
ケーシング140の中央壁143に設けられた貫通孔には、軸部材240が挿通されるが、この中央壁143の貫通孔の内周面の前側および後側にはそれぞれ、シール部材(図示せず。)が装着されている。これらのシール部材は、軸部材240と中央壁143との隙間を遮断して、前方内部空間144の後方オイル室と後方内部空間145の前方オイル室との間のオイルの流通を遮断する。
また、筒状部材120内のエアー室250は、筒状部材120の内部空間のうち、ピストン130よりも後方側の密閉空間である。この筒状部材120内のエアー室250と、ケーシング140の外部空間との間で、エアーを流通させるために、エアー流路252、エアー流路254およびエアー吸排口256が設けられている。エアー流路252は、ピストン130および軸部材240の内部に形成されている。このエアー流路252は、エアー流路254に連通している。エアー流路254は、ケーシング140の中央壁143の貫通孔の内周面に、軸部材240に沿って形成されている。このエアー流路254は、ケーシング140の中央壁143の外側に形成されたエアー吸排口256に連通している。
次に、第1油圧機構210について説明する。第1油圧機構210は、油圧を用いて、ケーシング140内の後方内部空間145で可動部材230を軸方向に移動させるための油圧式の移動機構である。第1油圧機構210は、ケーシング140の後方内部空間145に対して、オイルを供給および排出可能である。
図10に示すように、第1油圧機構210は、電動機により動作するポンプ211と、オイルを貯留するタンク212と、切換弁213と、流路214、215、216、217とを有する。また、上述したケーシング140、可動部材230、軸部材240、後方内部空間145、オイル供給口147、148も、第1油圧機構210の構成要素の一例である。
ポンプ211は、流路214を介して切換弁213に接続されている。ポンプ211は、タンク212に貯留されたオイルを、流路214を介して切換弁213に送出する。切換弁213は、流路216を介してケーシング140のオイル供給口148に接続され、流路217を介してケーシング140のオイル供給口147に接続されている。切換弁213は、流路214、215と、流路216、217との連通状態を切り換える。
かかる切換弁213の切換動作により、流路214と流路216を連通させることで、ポンプ211から送出されたオイルを、ケーシング140のオイル供給口148を通じて、後方内部空間145の後方オイル室に供給することができる。これと同時に、切換弁213により流路215と流路217を連通させることで、後方内部空間145の前方オイル室のオイルを、ケーシング140のオイル供給口147から排出して、流路217および流路215を通じてタンク212に回収することができる。これらの切換動作により、後方内部空間145の後方オイル室の油圧が前方オイル室の油圧よりも高まるため、後方内部空間145内で可動部材230を軸方向前方に押圧して移動させることができる。この結果、可動部材230に軸部材240を介して連結されたピストン130を、可動部材230とともに前進させることができる。
また、切換弁213の切換動作により、図10Cに示すように、流路214と流路217を連通させることで、ポンプ211から送出されたオイルを、ケーシング140のオイル供給口147を通じて、後方内部空間145の前方オイル室に供給することができる。これと同時に、切換弁213により流路215と流路216を連通させることで、後方内部空間145の後方オイル室のオイルを、ケーシング140のオイル供給口148から排出して、流路216および流路215を通じてタンク212に回収することができる。これらにより、後方内部空間145の前方オイル室の油圧が後方オイル室の油圧よりも高まるため、後方内部空間145内で可動部材230を軸方向後方に押圧して移動させることができる。この結果、可動部材230に軸部材240を介して連結されたピストン130を、可動部材230とともに後退させることができる。
このようにして、第1油圧機構210は、ケーシング140の後方内部空間145の後方オイル室に対して油圧を供給することにより、可動部材230および軸部材240を介してピストン130を軸方向前方に移動(前進)させることができる。また、第1油圧機構210は、ケーシング140の後方内部空間145の前方オイル室に対して油圧を供給することにより、可動部材230および軸部材240を介してピストン130を軸方向後方に移動(後退)させつつ、当該ピストン130とともに筒状部材120も後退させて、筒状部材120をチャンバ17から機体内に抜去することができる。
次に、第2油圧機構220について説明する。第2油圧機構220は、油圧を用いて、ケーシング140内の前方内部空間144で筒状部材120を軸方向に移動させるための油圧式の移動機構である。第2油圧機構220は、ケーシング140の前方内部空間144に対して、オイルを供給および排出可能である。
図10に示すように、第2油圧機構220は、上記ポンプ211と、上記タンク212と、切換弁223と、流路214、215、224、225、226とを有する。このように、図10の例では、第2油圧機構220と第1油圧機構210は、同じポンプ211およびタンク212を共有している。しかし、かかる例に限定されず、例えば、第1油圧機構210のポンプ211およびタンク212等とは別に、第2油圧機構220の専用のポンプおよびタンク等を設けてもよい。なお、上述したケーシング140、筒状部材120、前方内部空間144、オイル供給口146も、第2油圧機構220の構成要素の一例である。
ポンプ211は、流路214、224を介して切換弁223に接続されている。ポンプ211は、タンク212に貯留されたオイルを、流路214、224を介して切換弁223に送出する。切換弁223は、流路226を介してケーシング140のオイル供給口146に接続されている。切換弁223は、流路224、225と、流路226との連通状態を切り換える。
かかる切換弁223の切換動作により、図10Bに示すように、流路224と流路226を連通させることで、ポンプ211から送出されたオイルを、ケーシング140のオイル供給口146を通じて、前方内部空間144の後方オイル室に供給することができる。これにより、前方内部空間144の後方オイル室の油圧が、チャンバ17内の土圧よりも高まるため、図10Bに示すように、筒状部材120を軸方向前方に押圧して移動させて、チャンバ17内に挿入することができる。
また、切換弁223の切換動作により、図10Cに示すように、流路225と流路226を連通させることで、前方内部空間144の後方オイル室のオイルを、ケーシング140のオイル供給口146から排出して、流路226、流路225および流路215を通じてタンク212に回収することができる。これにより、前方内部空間144の後方オイル室の油圧が低下するため、筒状部材120が自由に後退できるようになる。したがって、図10Cに示すように、上記第1油圧機構210により可動部材230を後退させるときに、可動部材230とともにピストン130および筒状部材120を円滑に後退させることができる。
このようにして、第2油圧機構220は、ケーシング140の前方内部空間144のうち筒状部材120よりも後方側の空間(後方オイル室)に対して油圧を供給することにより、筒状部材120を軸方向前方に移動させて、チャンバ17に挿入することができる。
次に、図10A~図10Cを参照して、第6の実施形態に係る土砂サンプリング装置100による掘削土砂のサンプリング動作について説明する。
まず、土砂サンプリング動作前の待機状態(図示ぜす。)では、ケーシング140に装着された開閉弁110は、閉状態となっており、その弁体112によりケーシング140の前方内部空間144(即ち、筒状部材120の移動通路)が遮断されている。ピストン130は、第1油圧機構210(摺動機構)により筒状部材120内における軸方向前方側(チャンバ17側)に摺動して、筒状部材120の前端位置まで押し出されている。
次に、筒状部材120の挿入動作(図10Aの状態から図10Bの状態への切換動作)について説明する。
土砂サンプリング動作を開始するとき、まず、図10Aに示すように、開閉弁110を開ける。その後に、第2油圧機構220(挿抜機構)によりケーシング140の前方内部空間144の後方オイル室(筒状部材120の後端と中央壁143との間の空間)にオイルを供給する。このオイルの油圧により、図10Bに示すように、筒状部材120は、軸方向前方に押し出されて前進する。このとき、ピストン130は、絶対位置としては移動しないが、筒状部材120が前進するため、ピストン130は、前進する筒状部材120に対して相対的に摺動し、筒状部材120の後端側に相対的に移動する。この結果、筒状部材120が、ケーシング140内の移動通路を前進して、開閉弁110を通過し、隔壁13の開口13bからチャンバ17内に挿入される。この挿入時には、チャンバ17に挿入された筒状部材120の前端開口121がチャンバ17内の所望のサンプリング位置に配置されるように、筒状部材120の挿入ストロークが調整される。
このようにして、図10Aおよび図10Bに示すように、第2油圧機構220(挿抜機構)により筒状部材120をピストン130に対して相対的に前進させて、筒状部材120をチャンバ17内に挿入する。これにより、チャンバ17内の掘削土砂を筒状部材120で切り出すようにして、筒状部材120の内部に取り込む。
ここで、上記のような第2油圧機構220による筒状部材120の挿入動作(図10Aの状態から図10Bの状態への切換動作)について、より詳細に説明する。
図10Aに示す状態から筒状部材120をチャンバ17に挿入するときには、図10Bに示すように、第2油圧機構220の切換弁223を、電磁弁指令(SOLc)により切り換えて、ポンプ211に接続された流路224と、オイル供給口146に接続された流路226とを連通させる。これにより、ポンプ211からのオイルが、流路224、流路226およびオイル供給口146を通じて、ケーシング140の前方内部空間144の後方オイル室に供給され、当該後方オイル室の油圧を上昇させる。この結果、筒状部材120の背面側に油圧が作用するため、筒状部材120が前進して、チャンバ17に挿入される。
なお、上記のようにして筒状部材120を前進させるためには、筒状部材120内においてピストン130の後方側のエアー室250にあるエアーを外部に逃がす必要がある。この点、本実施形態では、上述したように、ピストン130および軸部材240の内部にエアー流路252が設けられ、ケーシング140の中央壁143にエアー流路254およびエアー吸排口256が設けられている。これにより、エアー室250にあるエアーは、エアー流路252およびエアー流路254を通じて、エアー吸排口256から外部に排出される。したがって、エアー室250にあるエアーを好適に外部に排出しつつ、筒状部材120を円滑に前進させることができる。
また、筒状部材120を前進させてチャンバ17に挿入し、所望のサンプリング位置に配置した後には、筒状部材120が不必要に前後に移動しないように固定することが好ましい。そこで、図示はしないが、筒状部材120の挿入後は、第2油圧機構220の切換弁223に対する上記の電磁弁指令(SOLc)をオフにして、切換弁223を切り換えて、オイル供給口146に接続された流路226を、ポンプ211に接続された流路224や、タンク212に接続された流路225に接続せずに、遮断した状態にすることが好ましい。これにより、所望のサンプリング位置まで挿入された筒状部材120に対して油圧を作用させずに、筒状部材120を所望のサンプリング位置に固定して、筒状部材120の不要な前後動を防止できる。
次に、筒状部材120の抜去動作(図10Bの状態から図10Cの状態への切換動作)について説明する。
上記のような筒状部材120の挿入動作後に、図10Cに示すように、第1油圧機構210(摺動機構、兼、挿抜機構)により、ケーシング140の後方内部空間145の前方オイル室(可動部材230の前端と中央壁143との間の空間)にオイルを供給する。このオイルの油圧により、可動部材230は、ケーシング140の後方内部空間145を軸方向後方に摺動して、後退する。この結果、可動部材230に軸部材240を介して連結されたピストン130も、前方内部空間144を後退するとともに、当該ピストン130により係止された筒状部材120も、当該ピストン130とともに後退する。これにより、筒状部材120は、ケーシング140の前方内部空間144の移動通路を後退して、開閉弁110を通過し、チャンバ17から機体内に抜去されて、ケーシング140の前方内部空間144に退避される。
ここで、上記のような第1油圧機構210による筒状部材120の抜去動作(図10Bの状態から図10Cの状態への切換動作)について、より詳細に説明する。
図10Bに示す状態から筒状部材120をチャンバ17から抜去するときには、図10Cに示すように、第2油圧機構220の切換弁223に対する電磁弁指令(SOLd)により、切換弁223を切り換えて、オイル供給口146に接続された流路226と、タンク212に接続された流路225とを連通させる。これにより、流路225、226およびオイル供給口146の油圧がなくなるので、ケーシング140の前方内部空間144の後方オイル室で筒状部材120の背面に作用していた油圧が低下する。
次いで、図10Cに示すように、第1油圧機構210の切換弁213を、電磁弁指令(SOLa)により切り換えて、ポンプ211に接続された流路214と、オイル供給口147に接続された流路217とを連通させる。これにより、ポンプ211からのオイルが、流路214、流路217およびオイル供給口147を通じて、ケーシング140の前方内部空間144の前方オイル室に供給され、当該前方オイル室の油圧を上昇させる。さらに、タンク212に接続された流路215と、オイル供給口148に接続された流路216とを連通させる。これにより、流路215、216およびオイル供給口148の油圧がなくなるので、ケーシング140の後方内部空間145の後方オイル室で可動部材230の背面に作用していた油圧が低下する。これらの結果、可動部材230の前面側に油圧が作用するため、可動部材230が後退する。すると、可動部材230の後退に連動して、軸部材240、ピストン130が後退するため、ピストン130に係止された筒状部材120も後退して、チャンバ17から抜去される。
その後、後退する筒状部材120の後端がケーシング140の中央壁143に当接したときに、第1油圧機構210によるオイル供給を停止するとともに、開閉弁110を閉めて、弁体112によりケーシング140の前方内部空間144(筒状部材120の移動通路)を遮断する。これにより、チャンバ17内の土圧が、ケーシング140内の筒状部材120等に作用しない状態となる。
以上のようにして、チャンバ17内の掘削土砂を内部に取り込んだ筒状部材120を、隔壁13より後方の機体内に回収することができる。その後、機体内において、土砂サンプリング装置100のうち開閉弁110より機内側の部分を切り離す。そして、筒状部材120の内部から掘削土砂を取り出すことにより、掘削土砂のサンプリングが完了する。
次に、上記サンプリングが完了した後に、第1油圧機構210によりピストン130を前進させて、サンプリング前の待機状態に戻す動作(図10Cの状態から図10Aの状態への切換動作)について、より詳細に説明する。
上記のようにサンプリングされた掘削土砂を回収すると、図10Cに示すような各部の配置において、筒状部材120内に掘削土砂がない状態となる。この状態で、図示はしないが、第1油圧機構210の切換弁213を、電磁弁指令(SOLb)により切り換えて、ポンプ211に接続された流路214と、オイル供給口148に接続された流路216とを連通させる。これにより、ポンプ211からのオイルが、流路214、流路216およびオイル供給口148を通じて、ケーシング140の前方内部空間144の後方オイル室に供給され、当該後方オイル室の油圧を上昇させる。さらに、タンク212に接続された流路215と、オイル供給口147に接続された流路217とを連通させる。これにより、流路215、217およびオイル供給口147の油圧がなくなるので、ケーシング140の後方内部空間145の前方オイル室で可動部材230の前面に作用していた油圧が低下する。これらの結果、可動部材230の背面側に油圧が作用するため、可動部材230が前進し、これに連動して、軸部材240、ピストン130も前進する。この際、筒状部材120には動力は作用しないので、ピストン130とともに前進しない。したがって、ピストン130は、筒状部材120内を軸方向前方に摺動して、図10Aに示すように、筒状部材120の前端付近まで前進する。
なお、上記のように筒状部材120内をピストン130が前進するときには、筒状部材120内のピストン130の後方側にエアー室250が形成される。この際、上述したエアー吸排口256、エアー流路254およびエアー流路252を通じて、筒状部材120のエアー室250に空気が供給される。したがって、エアー室250が問題なく形成されるので、ピストン130は筒状部材120内を円滑に前進することができる。
以上、第6の実施形態に係る土砂サンプリング装置100を用いた土砂サンプリング方法について説明した。第6の実施形態に係る土砂サンプリング装置100は、開閉弁110により、隔壁13の開口13bに連通する移動通路を開け、かつ、第1油圧機構210によりピストン130を筒状部材120内で軸方向前方に前進させた状態(図10A参照)で、第2油圧機構220により筒状部材120をピストン130に対して相対的に前進させて、筒状部材120をチャンバ17内に挿入することにより、チャンバ17内の掘削土砂を筒状部材120の内部に取り込む(図10B参照)。その後、第1油圧機構210により可動部材230とともにピストン130を軸方向後方に後退させることにより、掘削土砂を取り込んだ筒状部材120を、ピストン130とともに後退させて、チャンバ17内から機体内に抜去する(図10C参照)。
かかる土砂サンプリング方法によれば、チャンバ17内のサンプリング位置における掘削土砂を筒状部材120により切り出すようにして、筒状部材120内に取り込むことができる。その後、掘削土砂を取り込んだ筒状部材120とピストン130を一括して後退させることで、掘削土砂のサンプリングを完了する。このようなサンプリング方法によって、チャンバ17内の所望のサンプリング位置における掘削土砂を、前後方向に移動させることなくそのままの状態で切り出して、筒状部材120内に取り込むことができる。したがって、チャンバ17内の所望のサンプリング位置にあるままの状態の掘削土砂を、その性状を変えることなく好適にサンプリングすることが可能である。
なお、上記実施形態6の例では、筒状部材120の挿抜機構とピストン130の摺動機構として、2つの油圧装置の組合せ(図10に示す第1油圧機構210と第2油圧機構220)を用いたが、上記と同様の機能を満たすものであれば、例えば、空圧装置、電動機構装置、または、その他の各種の駆動手段などで代替してもよい。
ここで、図11を参照して、上記第6の実施形態の変更例について説明する。図11は、第6の実施形態の変更例に係る土砂サンプリング装置100の構成を示す断面図である。
図11に示すように、本変更例では、上記第6の実施形態(図10参照。)と比べて、ケーシング140と第1油圧機構210の構成が変更されている点で相違し、その他の構成要素については、第6の実施形態と同様である。そこで、以下では、本変更例の特徴であるケーシング140と第1油圧機構210について詳細に説明し、その他の構成要素については詳細説明を省略する。
本変更例に係るケーシング140(図11参照。)は、上記第6の実施形態に係るケーシング140(図10参照。)と比べて、前方内部空間144の周辺構成は同様であるが、後方内部空間145の周辺構成が相違している。図11に示すように、本変更例に係るケーシング140の後部側には、ブラケット149が設けられている。ブラケット149は、例えばL字型の断面形状を有する支持部材であり、後述する油圧ジャッキ260を支持する機能を有する。ブラケット149の背面壁149aには、貫通孔149bが形成されている。この貫通孔149bには、ピストン130に接続された軸部材240が挿通される。
油圧ジャッキ260は、ピストン130に接続された軸部材240を軸方向前後に移動させる移動機構として機能する。油圧ジャッキ260は、上記第6の実施形態に係る第1油圧機構210の可動部材230(図10参照。)およびその周辺構成の代替手段として設けられている。油圧ジャッキ260は、上記可動部材230を内包する構成要素である。油圧ジャッキ260は、ブラケット149の背面壁149aに固定されている。油圧ジャッキ260の伸縮ロッドは、ピストン130に接続された軸部材240と一体化されている。
油圧ジャッキ260には、前述した第1油圧機構210のオイル供給口147、148が設けられている。これらオイル供給口147、148は、前述した第1油圧機構210の切換弁213、流路214、215、流路216、217を介して、ポンプ211とタンク212に接続されている。第1油圧機構210のポンプ211から送出されるオイルは、オイル供給口147、148を通じて、油圧ジャッキ260の内部に供給される。油圧ジャッキ260は、かかる油圧を用いて、上記第6実施形態の可動部材230と同様な原理により、軸部材240を介してピストン130を軸方向に前進または後退させる。
ここで、図11に示すように、本変更例に係るブラケット149は、例えば断面形状がL字型の中空部材であるため、当該ブラケット149の内側は開放空間となっている。このため、ブラケット149とケーシング140に挿通される軸部材240のうち、ブラケット149の内側に存在する部分は、機体内の大気に露出している。そして、軸部材240の当該露出部分には、軸部材240の内部に形成されるエアー流路252の後端開口252aが配置されている。したがって、エアー流路252は、土砂サンプリング装置100の動作中は常時、機体内の大気に連通した状態となる。よって、当該エアー流路252を通じて、筒状部材120内のエアー室250に対して、エアーを自由に供給および排出できるようになる。
以上、図11を参照して、本変更例の構成について説明した。本変更例によれば、上記第6実施形態に係る第1油圧機構210の可動部材230を内包する構成要素を、油圧ジャッキ260として構成できるので、装置構成を簡易化できる。また、上記第6実施形態に係るケーシング140の中央壁143(図10参照。)のようなブロック状の部材に替えて、中空状のブラケット149を用いることで、ケーシング140を軽量化することができる。さらに、上記第6実施形態に係るケーシング140の中央壁143に設けられていたエアー流路254やエアー給排口256(図10参照。)などの流路構造が不要になるので、装置構成を簡略化できる。
このように本変更例によれば、上記第6実施形態と比べて装置構成を簡略化、軽量化できる一方で、筒状部材120の挿抜機構やピストン130の摺動機能などの機能面では、上記第6実施形態と同様な機能を発揮できる。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、土圧式(泥土圧式を含む。)のトンネル掘削機1について説明したが、本発明に係るトンネル掘削機は、泥水式のトンネル掘削機であってもよい。
また、上記実施形態に係る土砂サンプリング装置100では、チャンバ17に対する筒状部材120の出入口をケーシング140の前端開口141とし、当該前端開口141を隔壁13の開口13bの位置に合わせて配置して、当該前端開口141(筒状部材120の出入口)から筒状部材120をチャンバ17内に挿入する構成であった。しかし、本発明は、かかる例に限定されず、例えば、チャンバ17に対する筒状部材120の出入口を、隔壁13に設けられる固定翼(図示せず。)の先端部に設け、当該固定翼の内部に筒状部材120の移動通路を貫通形成してもよい。これにより、筒状部材120を、固定翼の先端部の開口(筒状部材120の出入口)からチャンバ17に対して挿入または抜去可能となる。
ここで、固定翼と撹拌翼は、チャンバ17内の掘削土砂を撹拌するために用いられる部材である。固定翼は、隔壁13の前面に固定され、隔壁13から前方に向けて突出して配置される。撹拌翼は、カッタヘッド11の背面から後方に向けて突出して配置され、カッタヘッド11と一体的に回転する。かかる固定翼に筒状部材120の移動通路と出入口を設けることによって、固定翼の先端部(筒状部材120の出入口)からチャンバ17に筒状部材120を挿入または抜去可能となる。かかる構成により、固定翼の長さを変えることで、筒状部材120によりチャンバ17内の掘削土砂をサンプリングする位置を変えることが可能になる。例えば、固定翼を長くすれば、カッタヘッド11の背面の位置の掘削土砂をサンプリングでき、固定翼を短くすれば、隔壁13付近の掘削土砂をサンプリング可能となる。よって、チャンバ17内のサンプリング位置の自由度を向上できる。
また、上記では、図面を参照して、トンネル掘削機1の各構成要素を説明したが、図面における各構成要素の寸法および位置関係はあくまでも例示に過ぎないので、トンネル掘削機1の各構成要素の寸法および位置関係は図面に示す例に限定されない。また、図面に例示されたトンネル掘削機1に対して構成要素が適宜追加、削除または変更されてもよい。